説明

画像形成装置

【課題】確実に転写電圧を発生させることができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置は、帯電を利用して、現像剤によって現像された現像剤像を担持する感光体28と、転写電圧Vtの印加に応じて現像剤像を被記録媒体に転写する転写ローラ14と、転写電圧Vtを生成し、転写電圧Vtを転写ローラ14に印加する印加手段55と、感光体28の帯電に起因して感光体28と印加手段55との間に発生する電流Irを制限する電流制限手段(40、60)とを備える。印加手段55を起動する場合に、電流制限手段(40、60)は、感光体28と印加手段55との間の抵抗を通常時と比べて増加させることによって感光体28の帯電に起因する電流Irを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、詳しくは、その転写電圧の起動に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置において、良好な画像形成を行うために転写電圧を適切に制御する方法として定電流制御という技術が知られている(先行技術文献1)。文献1では、高圧制御装置により、転写ローラに流れる転写電流が検出され、その電流値が所定範囲内に収まるように転写電圧が制御される。なお、画像形成装置において、感光体が帯電していない状態で転写電圧を印加すると感光体を痛めるおそれがあるため、通常は転写電圧の生成以前に感光体を帯電させている。
【特許文献1】特開2008−76750公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、文献1に記載された画像形成装置において、転写電圧の生成以前に感光体が正帯電している状態で転写電圧を生成して、転写電圧を転写ローラに印加しようとした場合、感光体の帯電に起因して転写ローラに電流(以下、流入電流という)が流れ込んでいる。そのため、高圧(転写電圧)発生回路は、その流入電流に起因して、好適に起動することが出来ないという虞があった。
【0004】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、確実に転写電圧を発生させることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
帯電を利用して、現像剤によって現像された現像剤像を担持する感光体と、転写電圧の印加に応じて前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写ローラと、前記転写電圧を生成し、前記転写電圧を前記転写ローラに印加する印加手段と、前記印加手段を起動する場合に、前記帯電に起因して前記感光体と前記印加手段との間に発生する電流を、前記感光体と前記印加手段との間の抵抗を通常時と比べて増加させることによって低減させる電流制限手段とを備える。
【0006】
本構成によれば、印加手段を起動する場合に、感光体と印加手段との間で発生する電流、例えば、感光体から印加手段への流入電流を低減することができる。従って、確実に印加手段を起動させ、転写電圧を転写ローラに印加することができる。ここで「通常時」とは、印加手段の起動後であって、転写電流が定電流制御されている場合、あるいは転写電圧が定電圧制御されている場合を意味する。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の画像形成装置において、前記電流制限手段は、前記転写ローラと前記印加手段との間に接続され、前記転写ローラと前記印加手段との間に流れる電流を調整する電流調整手段と、前記印加手段を起動する場合に、前記電流調整手段の抵抗値を最大にするように前記電流調整手段を制御する制御手段とを含む。
【0008】
本構成によれば、印加手段を起動する場合に、転写ローラと印加手段との間に接続される電流調整手段の抵抗値を最大にしておくので、感光体の帯電に起因して感光体と印加手段との間に発生する電流を好適に低減することができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明の画像形成装置において、前記転写ローラに流れる電流を検出するための検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記印加手段の起動後において、前記検出手段によって検出される電流値に基づいて前記電流調整手段を制御する。
【0010】
本構成によれば、電流調整手段を、印加手段起動後の転写電流の定電流制御に利用することができる。従って、電流調整手段を、印加手段を起動する場合の感光体の帯電に起因する電流を低減するための手段と印加手段起動後の定電流制御のための手段とに兼用できる。
【0011】
第4の発明は、第1〜第3の発明のうちのいずれか一つの発明の画像形成装置において、前記感光体は複数の感光体を含み、前記転写ローラおよび前記電流調整手段は、前記複数の感光体のそれぞれに対応して設けられ、前記印加手段は、前記複数の転写ローラに対して共通に接続されている。
【0012】
本構成によれば、画像形成装置が複数の感光体を含むカラー画像形成装置である場合において、一つの印加手段を起動させればよい。そのため、各転写ローラに対して個別に印加手段が設けられる場合と比べて、印加手段の起動制御が簡略化される。すなわち、最初の一つの転写ローラに対応して、感光体の帯電に起因する電流に抗して印加手段を起動させさえすれば、他の転写ローラに対応して印加手段を起動させる手間が省ける。
【0013】
第5の発明は、第1の発明の画像形成装置において、前記電流制限手段は、前記転写ローラを前記感光体に対して接離する転写ローラ接離手段を含み、前記転写ローラ接離手段は、前記印加手段を起動する場合に、前記感光体から前記転写ローラを離間させた状態にする。
【0014】
本構成によれば、印加手段を起動する場合に、帯電した感光体から転写ローラを離間させることで、感光体と印加手段との間の抵抗を大幅に増加させることができる。そのため、印加手段を起動する場合に、感光体の帯電に起因する電流を大幅に減少させることができ、印加手段を確実に起動することができる。
【0015】
第6の発明に係る画像形成装置は、静電潜像が表面に形成される感光体と、帯電電圧の印加に応じた放電によって前記感光体を帯電させる帯電器と、前記感光体に対して光を照射して、前記感光体表面に前記静電潜像を形成する露光手段と、前記感光体に当接され、前記感光体表面に形成された静電潜像を、現像剤によって現像して現像剤像を形成する現像ローラと、転写電圧の印加に応じて前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写ローラと、前記帯電電圧を生成し、前記帯電電圧を前記帯電器に印加する帯電電圧印加手段と、前記転写電圧を生成し、前記転写電圧を前記転写ローラに印加する転写電圧印加手段と、前記露光手段の光照射強度を制御するとともに、前記帯電電圧印加手段および前記転写電圧印加手段の起動および電圧生成を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記転写電圧印加手段の起動に先立って、前記帯電電圧印加手段を起動させて前記帯電器によって前記感光体を帯電させ、前記転写電圧印加手段の起動に先立って前記感光体を帯電させる際に、前記転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、前記感光体の帯電量を減少させる制御を行う。
【0016】
本構成によれば、感光体が事前帯電される際に、転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、感光体の帯電量が減少される。そのため、所定期間と対応して転写電圧印加手段を起動させることによって、帯電量が減少された感光体の部分が転写ローラに到達する時に、転写電圧印加手段を起動させることができる。その結果、転写電圧印加手段の起動時に、感光体の帯電に起因する電流を減少させることができ、転写電圧印加手段を確実に起動させることができる。
【0017】
なお、ここで「転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間」とは、所定期間において帯電量が減少された感光体の部分が、転写電圧印加手段の起動時に転写ローラと対抗する位置に到達していることを意味する。
【0018】
第7の発明は、第6の発明の画像形成装置において、前記制御手段は、前記帯電電圧を、前記所定期間、前記現像剤が前記感光体に付着しない程度に通常帯電電圧から低下させるように、前記帯電電圧印加手段を制御する、あるいは、前記光の照射強度を、前記現像剤が前記感光体に付着しない程度に通常印字照射強度から低下させて、前記所定期間、前記光を前記感光体に対して照射するように前記露光手段を制御する。
【0019】
本構成によれば、転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、帯電電圧が、現像剤が感光体に付着しない程度に低下される。あるいは、照射強度が、現像剤が感光体に付着しない程度に低下された光が、転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、感光体に照射される。そのため、転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、感光体の帯電量が好適に減少されるとともに、現像ローラが感光体に圧接され所定の現像バイアスが印加されている場合であっても、感光体に不要に現像剤(トナー)が付着することも防止される。なお、「通常帯電電圧」とは、印加手段の起動後であって、転写電流が定電流制御されている場合、あるいは転写電圧が定電圧制御されている場合に、帯電電圧印加手段により印加される帯電電圧を意味する。また、「通常印字照射強度」とは、画像データに基づき感光体表面に静電潜像を形成する場合に、露光手段により照射される光の強度を意味する。
【0020】
第8の発明は、第6の発明の画像形成装置において、前記制御手段の制御に応じて、前記感光体に対して前記現像ローラを接離させる接離手段をさらに備え、前記制御手段は、前記帯電電圧の生成を、前記所定期間、オフさせるように前記帯電電圧印加手段を制御する、あるいは、光の照射強度を通常印字照射強度以上として、前記所定期間、前記光を前記感光体に対して照射するように前記露光手段を制御するとともに、前記所定期間の後の少なくとも一定期間において、前記接離手段によって前記現像ローラを前記感光体から離間させる。
【0021】
本構成によれば、転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、帯電電圧がオフされる、あるいは、通常印字照射強度以上の光が、転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、前記感光体に対して照射される。また、転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間の後の少なくとも一定期間において、接離手段によって現像ローラが感光体から離間させる。そのため、転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、感光体の帯電量が大幅に減少される。所定期間において感光体の表面電位が現像バイアス以下に低下した場合であっても、少なくとも、表面電位が低下した感光体の部分が現像ローラに当接する期間(一定期間)において現像ローラを感光体から離間させることによって、感光体への不要な現像剤(トナー)の付着が回避される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の画像形成装置よれば、確実に転写電圧を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<実施形態1>
次に本発明の実施形態1について図1から図7を参照して説明する。
1.プリンタの全体構成
図1は、本発明の画像形成装置の一例であるカラーレーザプリンタ1の概略構成を示す側断面図である。なお、以下の説明においては、図1における右側を前方とする。また、画像形成装置はカラーレーザプリンタに限られず、例えば、モノクロレーザプリンタであってもよいし、カラーあるいはモノクロLEDプリンタであってもよい。さらに、コピー機能およびファクシミリ機能等を備えた複合機であってもよい。
【0024】
なお、以下の説明において、説明の便宜上、4色に対応した構成を代表して示す場合、特に事情がある場合を除き、単に部材番号のみを付すものとする。例えば、転写ローラ14と記載する場合、4色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)に対応した4つの転写ローラ(14K,14Y,14M,14C)を意味する。
【0025】
カラーレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)1は、本体ケーシング2を備えており、本体ケーシング2の下部には、用紙3(被記録媒体の一例)が積載される供給トレイ4が設けられている。供給トレイ4の前端上方には、ピックアップローラ5が設けられ、その上方に一対のレジストローラ8が設けられている。
【0026】
供給トレイ4の最上位にある用紙3は、ピックアップローラ5の回転によって分離され、レジストローラ8に送られる。レジストローラ8は、用紙3の斜行補正を行った後、その用紙3を画像形成部10のベルトユニット11上へ送り出す。
【0027】
画像形成部10は、ベルトユニット11、スキャナ部19、プロセス部20、定着部31、回路基板34等を備えている。
ベルトユニット11は、前後一対のベルト支持ローラ12間に、ベルト13を張架した構成となっている。そして、後側のベルト支持ローラ12が回転駆動されることにより、ベルト13が図示反時計周り方向に循環移動し、ベルト13上面に載せられた用紙3が後方へ搬送される。
【0028】
また、ベルト13の内側には、後述するプロセス部20の各感光ドラム28とベルト13を挟んで対向する位置にそれぞれ転写ローラ14が設けられている。転写ローラ14は、金属製のローラ軸を導電性のゴム材で被覆することにより構成されている。また、転写ローラ14は感光ドラム(感光体の一例)28に対して付勢されており、ベルト13上に搬送される用紙3を感光ドラム28との間に挟み付ける。
【0029】
スキャナ部19は、レーザダイオード(露光手段の一例)33から出射された各色毎のレーザ光Lを対応する感光ドラム28の表面に照射する。
プロセス部20は、本体ケーシング2から引き出し可能なフレーム21と、このフレーム21に対して着脱可能な例えば4色(用紙3の搬送方向の上流側から順にブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)に対応した4つの現像カートリッジ(22K,22Y,22M,22C)とを備えている。また、フレーム21の下部には、各現像カートリッジ22に対応して、感光ドラム28と、帯電器29とが設けられている。
【0030】
各現像カートリッジ22は、トナー収容室23を備え、その下側に供給ローラ24、現像ローラ25および層厚規制ブレード26を備えている。各トナー収容室23には、各色の正帯電性のトナー(現像剤の一例)がそれぞれ収容される。
【0031】
トナー収容室23から放出されたトナーは、供給ローラ24の回転により現像ローラ25に供給され、供給ローラ24と現像ローラ25との間で正に摩擦帯電される。さらに、現像ローラ25上に供給されたトナーは、現像バイアスが印加された現像ローラ25の回転に伴って、層厚規制ブレード26と現像ローラ25との間に進入し、ここでさらに十分に摩擦帯電されて、一定厚さの薄層として現像ローラ25上に担持される。
【0032】
感光ドラム28は、接地された金属製のドラム本体を備え、その表層をポリカーボネート等からなる正帯電性の感光層で被覆することにより構成されている。
帯電器29は、スコロトロン型のものであって、感光ドラム28と所定間隔を隔てて対向配置された放電ワイヤ29aと、放電ワイヤ29aと感光ドラム28との間に設けられ、放電ワイヤ29aから感光ドラム28への放電量を制御するためのグリッド29bとを備えている。この帯電器29では、放電ワイヤ29aに高電圧を印加して、放電ワイヤ29aをコロナ放電させ、放電ワイヤ29aからグリッド29bに流れる電流を一定にする、すなわちグリッド電圧を一定にすることにより、感光ドラム28の表面を一様に正極性に帯電させることができる。
【0033】
画像形成時には、感光ドラム28が図示時計回り方向に回転駆動され、それに伴って感光ドラム28の表面が帯電器29により一様に正帯電される。そして、その正帯電された部分がスキャナ部19からのレーザ光の高速走査により露光されて、感光ドラム28の表面に用紙3に形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。
【0034】
次いで、現像ローラ25の回転により、現像ローラ25上に担持され正帯電されているトナーが、感光ドラム28に対向して接触するときに、感光ドラム28の表面上に形成されている静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム28の静電潜像は、可視像化され、感光ドラム28の表面には、現像ローラ25に印加される現像バイアスと感光ドラム28の表面電位との差に基づいて、現像バイアスより低い電位である露光部分にのみトナーが付着したトナー像(現像剤像)が担持される。
【0035】
その後、各感光ドラム28の表面上に担持されたトナー像は、ベルト13によって搬送される用紙3が、感光ドラム28と転写ローラ14との間の各転写位置(転写ローラ14の用紙ニップ部)を通る間に、転写ローラ14に印加される負極性の転写電圧によって、用紙3に順次転写される。こうしてトナー像が転写された用紙3は、次いで定着器31に搬送される。
【0036】
定着器31は、熱源を有する加熱ローラ31Aと、用紙3を加熱ローラ31A側へ押圧する加圧ローラ31Bとを備えており、用紙3上に転写されたトナー像を紙面に熱定着させる。そして、定着器31によりトナー像が熱定着された用紙3は、上方へ搬送され、本体ケーシング2の上面に設けられた排出トレイ32上に排出される。
【0037】
2.電気的構成
次に、図2を参照して、プリンタ1の本発明に関連する電気的構成を説明する。図2は、回路基板34に実装される電気回路50の概略的なブロック図および電気回路50に関連する構成を示す。
【0038】
電気回路50は、CPU(本発明における制御部の一例)60、CPU60に接続された帯電電圧印加回路(帯電電圧印加手段の一例)51、LD(レーザダイオード)駆動回路52、現像バイアス印加回路53、モータ駆動回路54、転写電圧印加回路(印加手段、転写電圧印加手段の一例)55、転写電流検出回路(検出手段の一例)56、ROM61およびRAM62を含む。
【0039】
CPU60はプリンタ全体の制御を司る。ROM61は、プリンタ全体の動作プログラム等を記憶し、RAM62は印刷処理に用いる画像データ等を記憶する。
【0040】
帯電電圧印加回路51は、帯電器29の放電ワイヤ29aに印加する帯電電圧Vcgwおよび帯電器29のグリッド29bに印加するグリッド電圧Vcggを生成する。ここで、帯電電圧Vcgwの通常電圧(「通常帯電電圧」に相当)は、例えば、5.5kV〜8kVであり、グリッド電圧Vcggの通常電圧(「通常帯電電圧」に相当)は、例えば、約700Vである。
【0041】
LD駆動回路52は、レーザダイオード33から所定強度のレーザ光Lを感光ドラム28の表面に照射するために、CPU60の制御にしたがって、レーザダイオード33に供給するLD駆動電流Idを生成する。ここで、所定強度の通常レーザ光Lに対応するLD駆動電流(「通常印字照射強度」に対応するLD駆動電流)Idは、例えば、約30mAである。
【0042】
現像バイアス印加回路53は、現像ローラ25に印加する現像バイアスVdevを生成する。現像バイアスVdevは、例えば、300V〜500Vである。
【0043】
モータ駆動回路(現像ローラ接離手段の一例)54は、感光ドラム28に対する現像ローラ25の圧接離間用に設けられたモータ(現像ローラ接離手段の一例)25aに接続される。プリンタ1の印字動作中において、モータ駆動回路54は、CPU60の制御にしたがってモータ25aを駆動し、トナーを感光ドラム28に付着させるために現像ローラ25を感光ドラム28に圧接する。また、モータ駆動回路(転写ローラ接離手段の一例)54は、感光ドラム28に対する転写ローラ14の圧接離間用に設けられたモータ(転写ローラ接離手段の一例)35に接続される。プリンタ1の印字動作中において、モータ駆動回路54は、CPU60の制御にしたがってモータ35を駆動し、トナー像を用紙3に転写させるために転写ローラ14を感光ドラム28に圧接する。
【0044】
転写電圧印加回路55は、CPU60の制御にしたがって、転写ローラ14に印加する転写電圧Vtを生成する。転写電圧Vtは、例えば、約−7kVである。転写電流検出回路56は、転写電圧Vtの印加によって生じる転写電流Itを検出する。CPU60は、転写電流検出回路56による検出信号(フィードバック信号)にしたがって転写電流Itを所定の電流値とする、定電流制御を行う。なお、転写電圧印加回路55の起動時に、先に帯電された感光ドラム28から、転写ローラ14を介して転写電圧印加回路55に流入電流(本発明における「帯電に起因して感光体と印加手段との間に発生する電流」の一例)Irが流れ込む場合、転写電流検出回路56はこの流入電流Irの検出も行う。
【0045】
3.流入電流の流入低減手段
次に、図3〜図7を参照して、実施形態1における転写電圧印加回路55への流入電流の低減手段を説明する。
【0046】
実施形態1においては、転写電圧印加回路55を起動する場合に、帯電に起因して感光ドラム28から転写電圧印加回路55に流れ込む流入電流Irを、感光ドラム28と転写電圧印加回路55との間の抵抗を通常時と比べて増加させることによって低減させる。ここで「通常時」とは、転写電圧印加回路55の起動後であって、転写電流Itが定電流制御されている場合を意味する。
【0047】
3−1. 実施例1 (電流調整回路による流入電流低減例1)
図3は、電流調整回路によって流入電流Irを低減する実施例1を示す概略的な回路図である。図4は、その制御の処理手順を示すフローチャートである。なお、図3には4色に対応した構成が示されるが、各色に係る構成は同一のため、ブラック(K)に係る構成を代表して説明する。
【0048】
図3に示されるように、転写電圧印加回路55は各転写ローラ(14K、14Y、14M、14C)に対して共通に設けられる。転写電圧印加回路55と転写ローラ14Kとの間には、転写電圧印加回路55を起動する場合に流入電流Irを制限する電流調整回路(電流制限手段および電流調整手段の一例)40Kが設けられている。電流調整回路40Kは、転写電圧印加回路55の起動後において、転写電圧Vtの転写ローラ14Kへの印加中における転写電流Itの値を調整する。
【0049】
CPU60は、PWM(パルス幅変調)信号生成部63およびADC(アナログ−デジタルコンバータ)部64を含む。PWM信号生成部63は、PWM信号(PWM_K、PWM_Y、PWM_M、PWM_C)を生成する。ADC部64は転写電流検出回路56の検出信号(FB_0、FB_K、FB_Y、FB_M、FB_C)を受け取り、デジタル信号に変換する。
【0050】
また、転写電流検出回路56は電流検出抵抗41K、第1電圧検出抵抗42K、43Kおよび第2電圧検出抵抗44、45を含む。第1電圧検出抵抗42K、43Kは電流検出抵抗41Kの一端(電流調整回路40K側)の電圧を分圧して、検出信号FB_Kを生成する。第2電圧検出抵抗44、45は電流検出抵抗41Kの他端(転写電圧印加回路55側)の電圧を分圧して、検出信号FB_0を生成する。CPU60は、検出信号FB_Kと検出信号FB_0との差(電圧値)と、電流検出抵抗41Kの抵抗値とから転写電流Itを検出する。
【0051】
電流調整回路40Kは、例えば、可変直流電圧源VS、抵抗R1、ホトカプラPCおよびトランジスタTrを含む。可変直流電圧源VSは、例えば抵抗とコンデンサからなる平滑回路によって構成される。可変直流電圧源VSはCPU60からPWM信号PWM_Kを受け取り、PWM信号PWM_Kのパルス幅に応じた直流電圧を生成する。生成された直流電圧は、抵抗R1を介してホトカプラPCのホトダイオードに印加される。ホトダイオードは、直流電圧に基づいて流れる電流に応じて発光する。ホトダイオードの発光量に応じてホトトランジスタのコレクタ電流が生成され、コレクタ電流がトランジスタTrのベースに供給される。トランジスタTrは、ベースに供給されるホトトランジスタのコレクタ電流に応じて、トランジスタTrのコレクタ電流である転写電流Itを制御する。すなわち、CPU60は、PWM信号PWM_Kによって電流調整回路40Kを制御し、転写電流Itを制御する。
【0052】
次に、図4のフローチャートを参照して、実施例1における転写電圧印加処理を説明する。CPU60は、所定の印字命令にしたがって、転写電圧印加処理を開始する。
【0053】
図4のフローチャートのステップS100において、CPU60は、まず、転写出力抵抗を最大に設定する。ここでは、例えば、PWM信号PWM_Kのパルス幅をゼロにして、電流調整回路40KのホトカプラPCのホトダイオードによる発光をオフする。このとき電流調整回路40KのトランジスタTrはオフし、電流調整回路40Kの流入電流Irに対する抵抗値を最大にする。
【0054】
次いで、ステップS110において、転写電圧印加回路(転写高圧電源)55を起動する。このとき、トランジスタTrがオフされているため、感光ドラム28Kがそれ以前に帯電されている場合であっても、感光ドラム28Kから転写ローラ14Kを介して転写電圧印加回路55に流入する流入電流Irが大幅に低減される。その結果、転写電圧印加回路55は、流入電流Irの影響を受けずに好適に起動される。
【0055】
次いで、ステップS120において所定時間、例えば20msの間、待機する。そして、ステップS130において、CPU60は、転写電圧Vtの印加が終了したかどうかを判定する。転写電圧Vtの印加が終了したと判定した場合には(ステップS130:YES)、ステップS140において、転写電圧印加回路55の動作を停止させる。
【0056】
一方、ステップS130において、転写電圧Vtの印加が終了していないと判定した場合、ステップS135において、検出信号FB_Kおよび検出信号FB_0等に基づいて、転写電流Itを測定し、ステップS150において、測定された転写電流Itが目標最小値以下かどうかを判定する。転写電流Itが目標最小値以下であると判定された場合(ステップS150:YES)、ステップS155において、転写電流Itを増加させるために、転写出力抵抗を下げる。具体的には、PWM信号PWM_Kのパルス幅を現在より増加させ、トランジスタTrのコレクタ電流、すなわち、転写電流Itを増加させる。そして、ステップS130に移行する。
【0057】
一方、ステップS150において、測定された転写電流Itが目標最小値以下でないと判定された場合、ステップS160において、転写電流Itが目標最大値以上かどうかを判定する。転写電流Itが目標最大値以上であると判定された場合(ステップS160:YES)、ステップS165において、転写電流Itを減少させるために、転写出力抵抗を上げる。具体的には、PWM信号PWM_Kのパルス幅を現在より減少させ、トランジスタTrのコレクタ電流、すなわち、転写電流Itを減少させる。そして、ステップS130に移行する。一方、ステップS160において、転写電流Itが目標最大値以上でないと判定された場合、転写電流Itが所定範囲内にあるとしてステップS130に移行する。
【0058】
このように、実施例1においては、転写電圧印加回路55を起動する場合に、帯電に起因して感光ドラム28から転写電圧印加回路55に流れ込む流入電流Irを、電流調整回路40KのトランジスタTrをオフすることによって、流入電流Irが大幅に低減される。そのため、感光ドラム28Kが事前に帯電されている場合であっても、転写電圧印加回路55は、流入電流Irの影響を受けずに好適に起動される。
【0059】
その際、電流調整回路40Kは、転写電圧印加回路55を起動する場合の流入電流Irを低減するための手段と転写電圧印加回路55の起動後の定電流制御のための手段とに兼用されるため、構成的に有利である。
【0060】
また、転写電圧印加回路55が各転写ローラ14に対して共通化されているため、各転写ローラ14に対して個別に転写電圧印加回路55が設けられる場合と比べて、転写電圧印加回路55の起動制御が簡略化される。すなわち、例えば、最初の一つの転写ローラ14Kに対応して、流入電流Irに抗して転写電圧印加回路55を起動させさえすれば、他の転写ローラ(14Y、14M、14C)に対応して転写電圧印加回路55を起動させる手間が省ける。
【0061】
3−2. 実施例2 (電流調整回路による流入電流低減例2)
図5は、電流調整回路によって流入電流Irを低減する実施例2を示す概略的な回路図である。実施例2は、転写電流検出回路56である抵抗46Kが感光ドラム28K側に設けられている例を示す。
【0062】
この構成では、転写電流検出回路56の構成を簡略化することができるとともに転写電流Itの検出が容易となる。
【0063】
3−3. 実施例3 (電流調整回路による流入電流低減例3)
図6は、電流調整回路によって流入電流Irを低減する実施例3を示す概略的な回路図である。実施例3は、転写電圧印加回路(55K、55Y、55M、55C)が各転写ローラ(14K、14Y、14M、14C)に対して設けられている例を示す。転写ローラ14Kに対して転写電圧印加回路55Kが接続されている。次いで、転写電圧印加回路55Kに電流調整回路40Kが接続され、電流調整回路40Kに、転写電流検出回路56である抵抗47Kが接続されている。
【0064】
この例では、転写電圧印加回路55が共通化されないが、転写電流検出回路56の構成を簡略化することができるとともに転写電流Itの検出が容易となる。
【0065】
3−4. 実施例4 (転写ローラ離間による流入電流低減)
図7は、転写ローラ14の離間に係る構造を示す概略的な説明図である。図8は、その制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0066】
図7に示されるように、プリンタ1は、転写ローラ(14K、14Y、14M、14C)をベルト13に対して離間および圧着させるためのモータ35と、転写ローラ(14K、14Y、14M、14C)およびモータ35に連結されたシャフト(転写ローラ接離手段の一例)36とを備える。CPU60によるモータ駆動回路54の制御によってモータ35が回転制御されることによって、シャフト36が移動する。シャフト36の移動に伴って、転写ローラ(14K、14Y、14M、14C)がベルト13に対して離間および圧着するように移動される。
【0067】
実施例4では、転写電圧印加回路55を起動する場合の流入電流Irの低減手段として、実施例1〜実施例3の電流調整回路40に代えて、モータ35およびシャフト36が使用される。すなわち、印刷命令にしたがって印刷動作が開始され、帯電電圧(VcgwおよびVcgg)が帯電器29に印加され、感光ドラム28が帯電される。その際、例えば、所定値以上の流入電流Irが転写電流検出回路56によって検出された場合、CPU60は、モータ駆動回路54を介してモータ35を駆動して転写ローラ(14K、14Y、14M、14C)をベルト13から離間させる。そして、その後、CPU60は、転写電圧印加回路55を起動させる。
【0068】
このように、実施例4においては、転写電圧印加回路55を起動する場合に、転写ローラ14をベルト13から離間させることによって、感光ドラム28と転写電圧印加回路55との間の抵抗を通常時と比べて大幅に増加させる。そのため、流入電流Irを好適に低減させ、転写電圧印加回路55を確実に起動させることができる。
【0069】
<実施形態2>
次に、図8〜図15を参照して、実施形態2における転写電圧印加回路55への流入電流Irの低減方法を説明する。実施形態2においては、CPU60は、転写電圧印加回路55の起動に先立って感光ドラム28を帯電させる際に、転写電圧印加回路55の起動に対応した所定期間、感光ドラム28の帯電量を減少させる制御を行うことによって、転写電圧印加回路55の起動時の流入電流Irを減少させる。
【0070】
すなわち、転写電圧印加回路55を確実に起動させるために、実施形態1においては流入電流Irが流入する側において流入電流Irを低減する手段を示したが、実施形態2においては、流入電流Irを発生させる側において流入電流Irの発生を低減する手段を示す。
【0071】
4.流入電流の発生低減手段
4−1. 実施形態2の実施例1 (帯電電圧の低下による例1)
図8は、流入電流Irの発生を低減させるための実施例1による処理手順を示すフローチャートである。図9は、その処理に係る概略的なタイムチャートである。実施形態2の実施例1においては、帯電電圧(VcgwおよびVcgg)を、転写電圧印加回路55の起動に対応した所定期間、通常電圧より低下させる。帯電電圧(VcgwおよびVcgg)の低下によって、転写電圧印加回路55の起動時における感光ドラム表面の帯電量を減少させるとともに、感光ドラム表面の帯電電位を減少させる。それによって流入電流Irの発生を低減させる。
【0072】
CPU60は、印字命令によって図8の処理を開始し、図8のステップS210において、メインモータ(図示せず)を駆動させて、感光ドラム28、現像ローラ25およびベルトユニット11の動作を開始する。次いで、ステップS220において、帯電電圧印加回路51を起動させて、通常の帯電電圧Vcgwを帯電器29の放電ワイヤ29aに印加し、通常のグリッド電圧Vcggを帯電器29のグリッド29bに印加する(図9の時刻t0参照)。
【0073】
次いで、ステップS230において、転写電流検出回路56によって検出された流入電流Irが所定値以上であるかどうかを判定する。ここで、所定値とは、感光体の材質や回路構成に依存して決められる値であって、転写電流検出回路56を好適に起動させるのに十分小さい値を意味する。流入電流Irが所定値以上でないと判断された場合(ステップS230:NO)には、流入電流Irが少ないため、そのまま転写電圧印加回路55を起動させるためにステップS250に移行する。
【0074】
一方、ステップS230において、流入電流Irが所定値以上であると判断された場合には(図9の時刻t1に相当)、ステップS240において、CPU60は、帯電電圧印加回路51によって帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggを所定期間K1の間、通常よりも低い値で生成させる(図9参照)。
【0075】
なお、帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggを低下させる際、現像剤が感光ドラム28に付着しない程度に通常電圧から低下させるようにする。言い換えれば、感光ドラム表面の帯電電位が現像バイアスVdev以下とならない程度であって、感光ドラム28の所望の事前帯電が得られる程度に通常電圧から低下させるようにする。
【0076】
次いで、ステップS250において、用紙3をピックアップローラ5によってピックアップさせ、用紙3の搬送を開始させる。そして、ステップS260において、帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggが通常電圧値となるように帯電電圧印加回路51を動作させる(図9の時刻t2に相当)。
【0077】
なお、帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggが通常電圧に戻され、通常電圧によって帯電された感光ドラム28の部分が現像ローラ25に接触する位置に到達する時刻(図9の矢印Y2参照)である図9の時刻t3において、現像バイアスVdevが現像ローラ25に印加される。
【0078】
次いで、ステップS270において、CPU60は、転写電圧印加回路55を起動させて、転写電圧印加回路55によって転写電圧Vtを転写ローラ14に印加させる(図9の時刻t4に相当)。そして、図9の時刻t4以降において転写電流Itの定電流制御が行われる。ここで、図9の時刻t4は、通常よりも低い電圧の帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggによって所定期間K1の間、帯電された感光ドラム28の部分が、転写ローラ14に対向している時刻である。好ましくは、図9の時刻t4は、所定期間K1の中間時点において帯電された感光ドラム28の部分が、ベルト13を介して転写ローラ14と当接する時刻である(図9の矢印Y1参照)。このように、所定期間K1は、感光ドラム28の回転速度を考慮して、転写電圧印加回路55の起動に対応させた期間である。
【0079】
通常、帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggを低減させることによって帯電電流(放電電流)が減少する。その結果、対応した感光ドラム表面の帯電量も減少し、感光ドラム表面の帯電電位が減少する。そのため、通常よりも低い電圧の帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggによって帯電された感光ドラム28の部分が転写ローラ14とベルト13を介して接触する図9の時刻t4においては、感光ドラム28の帯電に起因する感光ドラム28から転写電圧印加回路55への流入電流Irが低減する。このときに転写電圧印加回路55を起動させることにより、転写電圧印加回路55を確実に起動させることができる。
【0080】
4−2. 実施形態2の実施例2 (レーザ光の照射による例1)
図10は、流入電流Irの発生を低減させるための実施例2による処理手順を示すフローチャートである。図11は、その処理に係る概略的なタイムチャートである。なお、図8と同一の処理には同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0081】
実施形態2の実施例2においては、通常帯電された感光ドラム28に、転写電圧印加回路55の起動に対応した所定期間、通常LD出力(通常印字照射強度に相当)より低下された出力のレーザ光Lを照射することによって、転写電圧印加回路55の起動時における感光ドラム表面の帯電量を減少させるとともに、感光ドラム表面の帯電電位を減少させる。それによって流入電流Irの発生を低減させる。なお、ここで、通常LD出力は、画像データに基づき感光体表面に静電潜像を形成する場合のLD出力である。
【0082】
すなわち、図10のステップS230において流入電流Irが所定値以上であると判定された場合(ステップS230:YES)、ステップS240Aにおいて、CPU60は、LD駆動回路52を制御して、図11の時刻t1〜時刻t2の所定期間K2の間、通常の印字動作のときよりも低い値の駆動電流Idを生成させレーザダイオード33に供給させる(図11参照)。それに応じて、レーザダイオード33は、通常の印字動作に先立って、通常LD出力より低下された出力のレーザ光Lを、感光ドラム表面の帯電量を減少させるために感光ドラム28に対して照射する。
【0083】
なお、LD出力(LD照射強度)を低下させる際、現像剤が感光ドラム28に付着しない程度に通常LD出力から低下させるようにする。言い換えれば、感光ドラム表面の帯電電位が現像バイアスVdev以下とならない程度であって、感光ドラム28の所望の予備帯電が得られる程度に通常LD出力から低下させるようにする。なお、レーザ光の照射が終了することによって、帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggが通常電圧に戻され、通常電圧によって帯電された感光ドラム28の部分が現像ローラ25に接触する位置に到達する時刻である図11の時刻t3において、現像バイアスVdevが現像ローラ25に印加される。
【0084】
そして、ステップS260Aにおいて、CPU60は、通常の印字動作のために、通常LD出力のレーザ光Lをレーザダイオード33から照射させる。次いで、ステップS270において、CPU60は、転写電圧印加回路55を起動させて、転写電圧印加回路55によって転写電圧Vtを転写ローラ14に印加させる(図11の時刻t4に相当)。ここで、図11の時刻t4は、通常LD出力より低下された出力のレーザ光Lによって所定期間K2の間、露光された感光ドラム28の部分が、ベルト13を介して転写ローラ14と接触している時刻である。好ましくは、図11の時刻t4は、所定期間K2の中間時点において露光された部分が、転写ローラ14と接触する時刻である(図11の矢印Y3参照)。ここで、所定期間K2は、感光ドラム28の回転速度を考慮して、転写電圧印加回路55の起動に対応させた期間である。
【0085】
このように、実施形態2の実施例2においても、通常LD出力より低下された出力のレーザ光Lを、転写電圧印加回路55の起動に対応させた所定期間K2、通常帯電された感光ドラム28に照射することによって、転写電圧印加回路55の起動時に、流入電流Irを低減することができる。その結果、転写電圧印加回路55の起動時における流入電流Irの影響が低減され、転写電圧印加回路55を確実に起動させることができる。
【0086】
4−3. 実施形態2の実施例3 (帯電電圧の低下による例2)
図12は、流入電流Irの発生を低減させるための、実施形態2の実施例3による処理手順を示すフローチャートである。図13は、その処理に係る概略的なタイムチャートである。なお、図8と同一の処理には同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0087】
実施形態2の実施例3においては、帯電電圧の発生を、転写電圧印加回路55の起動に対応した所定期間、オフすることによって、転写電圧印加回路55の起動時における感光ドラム表面の帯電量を減少させるとともに、感光ドラム表面の帯電電位を減少させる。それによって流入電流Irの発生を低減させる。
【0088】
すなわち、図12のステップS230において流入電流Irが所定値以上であると判定された場合(ステップS230:YES、図13の時刻t1に相当)、ステップS245において、CPU60は、帯電電圧印加回路51による帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggの生成を、所定期間K3の間、停止させる(図13参照)。
【0089】
次いで、ステップS246において、CPU60は、帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggのオフによって帯電されなかった感光ドラム28の非帯電部分が現像ローラ25と接触しないように、少なくとも非帯電部分が現像ローラ25を通過する間(本発明における「一定期間」に相当する)、現像ローラ25を感光ドラム28から離間させる。具体的には、CPU60は、モータ25aを駆動して、現像ローラ25を感光ドラム28から離間させる。これは、トナーを感光ドラム28の非帯電部分(電位が現像バイアスより低い部分)に不要に付着させないためである。
【0090】
なお、図13においては、帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggが通常電圧に戻され、通常電圧によって帯電された感光ドラム28の部分が現像ローラ25と接触する位置に到達する時刻である図13の時刻t3において、現像ローラ25を感光ドラム28に圧接する例が示される。
【0091】
次いで、ステップS270において、CPU60は、転写電圧印加回路55を起動させて、転写電圧印加回路55によって転写電圧Vtを転写ローラ14に印加させる(図13の時刻t4に相当)。ここで、図13の時刻t4は、感光ドラム28の非帯電部分が、転写ローラ14に接触している時刻である。好ましくは、図13の時刻t4は、所定期間K3の中間時点における感光ドラム28の非帯電部分が、ベルト13を介して転写ローラ14と当接する時刻である(図13の矢印Y4参照)。ここで、所定期間K3は、感光ドラム28の回転速度を考慮して、転写電圧印加回路55の起動に対応させた期間である。
【0092】
このように、実施形態2の実施例3においては、帯電電圧Vcgwおよびグリッド電圧Vcggを、転写電圧印加回路55の起動に対応させた所定期間K3、オフすることによって、転写電圧印加回路55の起動時に、流入電流Irをさらに低減することができる。その結果、転写電圧印加回路55の起動時における流入電流Irの影響が低減され、転写電圧印加回路55をより確実に起動させることができる。なお、その際、少なくとも非帯電部分が現像ローラ25を通過する間、現像ローラ25が感光ドラム28から離間されるため、感光ドラム28の非帯電部分へのトナーの付着が、回避される。
【0093】
4−4. 実施形態2の実施例4 (レーザ光の照射による例2)
図14は、流入電流Irの発生を低減させるための、実施形態2の実施例4による処理手順を示すフローチャートである。図15は、その処理に係る概略的なタイムチャートである。なお、図8と同一の処理には同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0094】
実施形態2の実施例4においては、通常帯電された感光ドラム28に、転写電圧印加回路55の起動に対応した所定期間、通常LD出力(通常印字照射強度)のレーザ光Lを照射することによって、転写電圧印加回路55の起動時における感光ドラム表面の帯電量を減少させるとともに、感光ドラム表面の帯電電位を減少させる。それによって流入電流Irの発生を低減させる。
【0095】
すなわち、図14のステップS230において流入電流Irが所定値以上であると判定された場合(ステップS230:YES)、ステップS245Aにおいて、CPU60は、LD駆動回路52を制御して、図15の時刻t1〜時刻t2の所定期間K4の間、通常の印字動作時の駆動電流Idを生成させ、レーザダイオード33に供給させる(図15参照)。それに応じて、レーザダイオード33は、通常の印字動作に先立って、通常LD出力のレーザ光Lを、所定期間K4、感光ドラム28に対して照射する。なお、ここで、レーザ光Lの出力強度は、通常印字照射強度に限られず、通常印字照射強度以上であればよい。
【0096】
次いで、ステップS246において、図12と同様に、トナーを感光ドラム28の非帯電部分に不要に付着させないために、CPU60は、モータ駆動回路54を介してモータ25aを駆動して、少なくとも感光ドラム28のレーザ光照射部分が現像ローラ25を通過する間(本発明における「一定期間」に相当する)、現像ローラ25を感光ドラム28から離間させる。
【0097】
なお、図15においては、感光ドラム28のレーザ光照射部分が現像ローラ25と接触する位置を通過した以降の時刻である図15の時刻t3において、現像ローラ25を感光ドラム28に圧接する例が示される。
【0098】
次いで、ステップS270において、CPU60は、転写電圧印加回路55を起動させて、転写電圧印加回路55によって転写電圧Vtを転写ローラ14に印加させる(図15の時刻t4に相当)。ここで、図15の時刻t4は、感光ドラム28のレーザ光照射部分が、転写ローラ14の用紙ニップ部に到達する時刻である。好ましくは、図15の時刻t4は、所定期間K4の中間時点における感光ドラム28のレーザ光照射部分が、ベルト13を介して転写ローラ14と当接する時刻である(図15の矢印Y5参照)。ここで、所定期間K4は、感光ドラム28の回転速度を考慮して、転写電圧印加回路55の起動に対応させた期間である。
【0099】
このように、実施形態2の実施例4においては、通常LD出力のレーザ光Lを、転写電圧印加回路55の起動に対応させた所定期間K4、感光ドラム28に照射することによって、レーザ光照射部分の帯電電位を大幅に低下させることができる。そのため、転写電圧印加回路55の起動時に、流入電流Irをさらに低減することができる。その結果、転写電圧印加回路55の起動時における流入電流Irの影響が低減され、転写電圧印加回路55をより確実に起動させることができる。なお、その際、少なくとも感光ドラム28のレーザ光照射部分が現像ローラ25を通過する間、現像ローラ25が感光ドラム28から離間されるため、感光ドラム28のレーザ光照射部分へのトナーの付着が、回避される。
【0100】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0101】
(1)実施形態1において、電流調整回路40をデジタルポテンショメータによって構成し、その抵抗値をCPU60によって変更して、転入電流および転写電流を制御するようにしてもよい。
【0102】
(2)実施形態2において、所定期間(K1、K2、K3およびK4)は、それぞれ、印字条件に応じて決定されればよく、各所定期間の長さは任意である。所定期間は、要は、感光ドラム28の回転速度等を考慮して、転写電圧印加回路55が起動されるタイミングに対応した期間であればよい。すなわち、所定期間の処理によって帯電量が低減された感光ドラム28の部分が、転写電圧印加回路55の起動タイミングに、転写ローラ14と対抗する位置に到達しているように、所定期間の開始時刻およびその長さが決定されればよい。
【0103】
(3)各実施形態においては、感光ドラム(感光体)28が正帯電される例を示したが、本発明は、感光体が負帯電される場合にも適用できる。すなわち、感光体の帯電に起因して感光体と印加手段との間に発生する電流は、感光ドラム28側から転写電圧印加回路(印加手段)55に流入する流入電流Irに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成を示す側断面図
【図2】画像形成装置に設けられる電気回路の概略的なブロック図
【図3】本発明の実施形態1における、流入電流の流入を低減させる実施例1を示す概略的な回路図
【図4】実施例1の処理手順を示すフローチャート
【図5】流入電流の流入を低減させる実施例2を示す概略的な回路図
【図6】流入電流の流入を低減させる実施例3を示す概略的な回路図
【図7】流入電流の流入を低減させる実施例4を示す概略的な構成図
【図8】本発明の実施形態2における、流入電流の発生を低減させる実施例1の処理手順を示すフローチャート
【図9】実施形態2の実施例1に係る信号の推移を示すタイムチャート
【図10】流入電流の発生を低減させる実施例2の処理手順を示すフローチャート
【図11】実施形態2の実施例2に係る信号の推移を示すタイムチャート
【図12】流入電流の発生を低減させる実施例3の処理手順を示すフローチャート
【図13】実施形態2の実施例3に係る信号の推移を示すタイムチャート
【図14】流入電流の発生を低減させる実施例4の処理手順を示すフローチャート
【図15】実施形態2の実施例4に係る信号の推移を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0105】
1…レーザプリンタ(画像形成装置)
14…転写ローラ
25…現像ローラ
28…感光ドラム(感光体)
29…帯電器
33…レーザダイオード(露光手段)
40…電流調整回路(電流制限手段、電流調整手段)
51…帯電電圧印加回路(帯電電圧印加手段)
54…モータ駆動回路(転写ローラ接離手段、接離手段)
55…転写電圧印加回路(印加手段、転写電圧印加手段)
56…転写電流検出回路(検出手段)
60…CPU(電流制限手段、制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電を利用して、現像剤によって現像された現像剤像を担持する感光体と、
転写電圧の印加に応じて前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写ローラと、
前記転写電圧を生成し、前記転写電圧を前記転写ローラに印加する印加手段と、
前記印加手段を起動する場合に、前記帯電に起因して前記感光体と前記印加手段との間に発生する電流を、前記感光体と前記印加手段との間の抵抗を通常時と比べて増加させることによって低減させる電流制限手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記電流制限手段は、
前記転写ローラと前記印加手段との間に接続され、前記転写ローラと前記印加手段との間に流れる電流を調整する電流調整手段と、
前記印加手段を起動する場合に、前記電流調整手段の抵抗値を最大にするように前記電流調整手段を制御する制御手段と、
を含む。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記転写ローラに流れる電流を検出するための検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記印加手段の起動後において、前記検出手段によって検出される電流値に基づいて前記電流調整手段を制御する。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記感光体は複数の感光体を含み、
前記転写ローラおよび前記電流調整手段は、前記複数の感光体のそれぞれに対応して設けられ、
前記印加手段は、前記複数の転写ローラに対して共通に接続されている。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記電流制限手段は、前記転写ローラを前記感光体に対して接離する転写ローラ接離手段を含み、
前記転写ローラ接離手段は、前記印加手段を起動する場合に、前記感光体から前記転写ローラを離間させた状態にする。
【請求項6】
静電潜像が表面に形成される感光体と、
帯電電圧の印加に応じた放電によって前記感光体を帯電させる帯電器と、
画像データに基づき前記感光体に対して光を照射して、前記感光体表面に前記静電潜像を形成する露光手段と、
前記感光体に当接され、前記感光体表面に形成された静電潜像を、現像剤によって現像して現像剤像を形成する現像ローラと、
転写電圧の印加に応じて前記現像剤像を被記録媒体に転写する転写ローラと、
前記帯電電圧を生成し、前記帯電電圧を前記帯電器に印加する帯電電圧印加手段と、
前記転写電圧を生成し、前記転写電圧を前記転写ローラに印加する転写電圧印加手段と、
前記露光手段の光照射強度を制御するとともに、前記帯電電圧印加手段および前記転写電圧印加手段の起動および電圧生成を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記転写電圧印加手段の起動に先立って、前記帯電電圧印加手段を起動させて前記帯電器によって前記感光体を帯電させ、
前記転写電圧印加手段の起動に先立って前記感光体を帯電させる際に、前記前記転写電圧印加手段の起動に対応した所定期間、前記感光体の帯電量を減少させる制御を行う、画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、
前記帯電電圧を、前記所定期間、前記現像剤が前記感光体に付着しない程度に通常帯電電圧から低下させるように、前記帯電電圧印加手段を制御する、あるいは、
前記光の照射強度を、前記現像剤が前記感光体に付着しない程度に通常印字照射強度から低下させて、前記所定期間、前記光を前記感光体に対して照射するように前記露光手段を制御する。
【請求項8】
請求項6に記載の画像形成装置において、
前記制御手段の制御に応じて、前記感光体に対して前記現像ローラを接離させる接離手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記帯電電圧の生成を、前記所定期間、オフさせるように前記帯電電圧印加手段を制御する、あるいは、
光の照射強度を通常印字照射強度以上として、前記所定期間、前記光を前記感光体に対して照射するように前記露光手段を制御するとともに、
前記所定期間の後の少なくとも一定期間において、前記接離手段によって前記現像ローラを前記感光体から離間させる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−44205(P2010−44205A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208050(P2008−208050)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】