説明

画像形成装置

【課題】駆動モータを作動させることなく、像担持体からベルト部材が離間する回転位置へ確実にカム部材を復帰させて、像担持体とベルト部材の摺擦を阻止できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】駆動モータ12でワンウェイクラッチ11を介して加圧カム2を回転させることで、感光ドラム101に対する転写ユニット105の着脱を自動的に切り替える。搬送ユニット200は、画像形成装置本体から正面側へ引き出し可能である。電源停止状態で、搬送ユニット200を画像形成装置本体にロックするハンドル5をロック解除方向に90度回転させると、加圧カム2が駆動モータ12に回転駆動される場合とは逆方向に回転して、感光ドラム101から転写ユニット105が離間する。同時に、搬送ユニット200が画像形成装置本体から引き出し可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カム部材をモータ駆動して像担持体に対してベルト部材を当接・離間させる画像形成装置、詳しくは、ベルト部材が当接状態で電源停止した際に、手動操作でベルト部材を離間状態に移行させる機構に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体にベルト部材(中間転写ベルト、記録材搬送ベルト、転写ベルト)を当接させて画像形成を行う画像形成装置が広く用いられている。ベルト部材を用いる画像形成装置では、ベルト部材の点検、交換、ジャム処理等のために、ベルト部材が組み立てられたベルトユニットを画像形成装置本体から引き出し可能に構成している(図2参照)。
【0003】
ベルト部材を用いる画像形成装置では、像担持体にベルト部材を当接させたまま放置すると、転写ローラやベルト部材の当接部分が変形したり、吸湿等で当接部分の電気的性質が他の部分と違ってきたりする可能性がある。このため、像担持体からベルト部材を自動で離間させる機構を備え、画像形成の終了後には、像担持体からベルト部材を離間させた後に電源停止している(特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1には、転写ベルトと複数の支持回転体を一体に組み立てた転写ユニットを、感光ドラムに対して自動的に当接・離間させる画像形成装置が示される。ここでは、転写ユニットに組み込まれたソレノイドを作動させることにより、転写ユニットを、その駆動ローラを中心に回動させて、転写ベルトを感光ドラムから離間している。
【0005】
しかし、自己保持ができないソレノイドを用いた場合、画像形成中を通じてソレノイドに通電し続ける必要があるため、かなりの電力消費となる。この点、カム部材であれば自己保持機能があるため、自己保持のための電力消費を節約できる。
【0006】
特許文献2では、転写ユニットに組み込まれたカム部材を、駆動モータで作動させることにより、転写ユニットを、駆動ローラを中心にして回動させて、転写ベルトを感光ドラムから離間させている。ここでは、このような自動機構とは別に、手動操作で転写ユニットを手前側に引き倒して、転写ベルトを感光ドラムから大きく離間させる機構を設けている。ジャム処理に際しては、電源停止した画像形成装置の像担持体とベルト部材との間から記録材を取り出すために、駆動モータを利用できないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−98840号公報
【特許文献2】特開2003−43828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の画像形成装置では、画像形成中は、カム部材の駆動モータを停止させて電力消費を節約できる。しかし、その反面、停電等の異常に起因して画像形成装置が停止した場合、カム部材がどの位相位置で停止しているか不明である。カム部材のモータ駆動機構とは独立したベルト部材の当接解除のための機構を設けた場合も事情は全く同じである。カム部材を、ベルト部材が像担持体から離間する回転位置へ戻すためには、いずれにせよ画像形成装置を復旧させて、電源を再投入して、駆動モータを作動させる必要がある。
【0009】
しかし、像担持体とベルト部材とが確実に離間していないと不都合な場合がある。ベルトユニットを画像形成装置本体から引き出す場合(図2参照)、像担持体にベルト部材が当接した状態だと引き出し負荷が大きくなる。像担持体とベルト部材が摺擦して摺擦面に擦り傷が形成される可能性がある。
【0010】
特許文献2のようにベルトユニットを手前側へ倒す場合も同様であって、カム部材が像担持体とベルト部材とを当接させた回転位置のまま、手動でベルトユニットを元の位置へ戻すと、最後のところで大きな抵抗がある。大きな抵抗に逆らってベルトユニットを戻すと、機構のガタつきの範囲で像担持体とベルト部材が摺擦して擦り傷が形成される可能性がある。
【0011】
本発明は、駆動モータを作動させることなく、像担持体からベルト部材が離間する回転位置へ確実にカム部材を復帰させて、像担持体とベルト部材の摺擦を阻止できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体に当接して回転するベルト部材を有して画像形成装置本体から引き出し可能なベルトユニットと、前記ベルトユニットに配置されて前記像担持体に対する前記ベルト部材の位置を移動させるカム部材と、前記カム部材を回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータを制御して前記像担持体に対する前記ベルト部材の当接状態と離間状態とを切り替える制御手段と、前記ベルトユニットが画像形成装置本体に固定されている状態に対応させた第一位置と前記ベルトユニットが画像形成装置本体から引き出し可能な状態に対応させた第二位置との間で手動操作されるレバー部材とを有するものである。そして、前記ベルト部材が前記像担持体と当接しているときに、前記レバー部材の第一位置から第二位置に移動する駆動力を前記カム部材に伝達することで、前記ベルト部材を前記像担持体から離間させる伝達機構を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置では、レバー部材を第一位置から第二位置へ手動操作すると、その過程で、伝達機構がカム部材を回転させて、ベルト部材を当接状態から離間状態へ移行させて像担持体から確実に離間させる。
【0014】
従って、駆動モータを作動させることなく、像担持体からベルト部材が離間する回転位置へ確実にカム部材を復帰させて、像担持体とベルト部材の摺擦を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】搬送ユニットの引き出し構造の説明図である。
【図3】転写ユニットの構成の説明図である。
【図4】実施例1の転写ユニット昇降機構の斜視図である。
【図5】カム部材の動作の説明図である。
【図6】当接状態における伝達機構の説明図である。
【図7】離間状態における伝達機構の空転状態の説明図である。
【図8】離間状態でハンドル操作した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、カム部材を駆動モータで回転させて像担持体にベルト部材を着脱させる限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0017】
従って、帯電方式、静電像形成方式、現像方式の区別無く、また、中間転写方式、記録材搬送方式、転写ベルト方式の区別無く、ベルト部材を用いる画像形成装置で実施できる。
【0018】
本実施形態では、トナー像の形成に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0019】
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0020】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図2は搬送ユニットの引き出し構造の説明図である。図3は転写ユニットの構成の説明図である。
【0021】
図1に示すように、画像形成装置100は、感光ドラム101に形成したトナー像を転写ベルト105aに担持した記録材Pに転写するモノクロ高速プリンタである。
【0022】
像担持体の一例である感光ドラム101の周囲に、コロナ帯電器102、露光装置103、現像装置104、転写ユニット105、ドラムクリーニング装置106が配置される。感光ドラム101は、アルミニウムシリンダの外周面に感光層が形成され、700mm/secのプロセススピードで矢印R1方向に回転する。
【0023】
コロナ帯電器102は、コロナ放電に伴う荷電粒子を照射して感光ドラム101の表面を一様な負極性の電位に帯電させる。露光装置103は、入力画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム101の表面に画像の静電像を書き込む。現像装置104は、感光ドラム101に形成された静電像をトナー像に現像する。
【0024】
転写ユニット105は、感光ドラム101と転写ベルト105aとの間に転写部T1を形成する。記録材カセット110に格納された記録材Pは、分離ローラ1111で1枚ずつに分離してレジストローラ205へ送り出される。レジストローラ205は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、感光ドラム101のトナー像にタイミングを合わせて転写部T1へ記録材Pを送り込む。
【0025】
転写ユニット105へ正極性の直流電圧が印加されることにより、感光ドラム101に担持されたトナー像が、転写ベルト105aに担持されて転写部T1を通過する記録材Pへ転写される。
【0026】
トナー像を転写された記録材Pは、転写ベルト105aから曲率分離して定着装置107へ送り込まれ、定着装置107で加熱加圧を受けて表面にトナー像を熱定着された後に画像形成装置本体120外へ排出される。ドラムクリーニング装置106は、感光ドラム101にクリーニングブレードを摺擦させて、記録材Pへの転写を逃れて感光ドラム101に残った転写残トナーを回収する。
【0027】
制御手段の一例である制御部112、ワンウェイクラッチ11、駆動モータ12は、加圧カム2の回転を制御して、感光ドラム101に対する転写ユニット105の当接状態と離間状態とを切り替える。
【0028】
制御部112は、駆動モータ12を制御して加圧カム2を一方向に回転駆動することにより、当接状態と離間状態とを交互に切り替える。
【0029】
<引き出し構造>
図2に示すように、搬送ユニット200は、左右のスライドガイド201に支持されて画像形成装置本体120から正面側(感光ドラム101の長手方向)へ挿抜可能に支持されている。搬送ユニット200を正面側へ引き出した状態で、転写ユニット105は、上方へ取り出し可能である。
【0030】
ベルトユニットの一例である搬送ユニット200は、感光ドラム101に当接して回転する転写ベルト105aを有して感光ドラム101が配置された画像形成装置本体120から引き出し可能である。
【0031】
搬送ユニット200は、感光ドラム101の長手方向へ引き出し可能である。操作部材(又はレバー部材)の一例であるハンドル5は、第一位置と第二位置との間で手動操作される。ハンドル5は、搬送ユニット200の引き出し方向の正面側に配置されて、第一位置と第二位置との間で回転操作される。
【0032】
搬送ユニット200の正面に配置されたハンドル5を、図1に示す第一位置から左回りに90度回転させると、搬送ユニット200を画像形成装置本体120に固定するロック機構が解除されて、搬送ユニット200が正面側へ引き出し可能となる。そして、ハンドル5を第一位置から第二位置まで左回りに90度回転させる動作に伴って、転写ユニット105が下降して、感光ドラム101から離間する。このため、搬送ユニット200を正面側へ引き出す時点で、感光ドラム101から転写ユニット105が離間しており、感光ドラム101と転写ユニット105の摺擦が回避される。
【0033】
図3に示すように、ベルト部材の一例である転写ベルト105aは、複数の支持回転体の支持回転体の一例である駆動ローラ105b及び張架ローラ105cと一体に転写ユニット105に組み立てられている。ベルトユニットの一例である転写ユニット105は、一つの支持回転体の一例である駆動ローラ105bを中心にして回動可能であって、加圧カム2は、転写ユニット105の回動端を昇降移動させる。
【0034】
転写ユニット105は、駆動ローラ105bと張架ローラ105cとによって転写ベルト105aを張架しており、転写ベルト105aの内側には、転写ローラ105dが設けられている。転写ローラ105dは、感光ドラム101に支持された転写ベルト105aの内側面に所定の押圧力で圧接して、転写ベルト105aと感光ドラム101との間に転写部T1の圧接ニップを形成する。転写ベルト105aは、駆動ローラ105bに駆動されて、感光ドラム101の周速とほぼ等しい周速度で搬送される。
【0035】
ところで、転写ベルト105aを感光ドラム101に対して加圧状態のまま長期間放置すると、転写ベルト105aのゴム材料中の物質が表面に析出し、転写ベルト105a当接する相手部材の感光ドラム101に付着して不良画像となる場合がある。このため、画像形成装置100では、画像形成時以外は、転写ベルト105aの加圧を解除する機構が要求される。
【0036】
上述したように、特許文献1では、転写ベルトの着脱にソレノイドが使用される。画像形成時は、ソレノイドが通電状態となって転写部ベルトを感光ドラムに加圧し、画像形成後は、ソレノイドの通電が止まって転写ベルトの加圧が解除される。
【0037】
しかし、画像形成装置の小型化、高速化が進むにつれ、ソレノイドを使用した場合、長い時間の画像形成ではソレノイドへ通電したままとなり、ソレノイドの温度上昇で周囲が高温となってしまう。これにより、ドラムクリーニング装置等でトナー詰まりが発生したり、画像不良が発生したりする。
【0038】
これに対して、特許文献2では、カム部材を回転させて転写ベルトを昇降させているため、画像形成時の通電が不要である。
【0039】
しかし、カム部材によって転写ベルトを加圧状態に保持している場合、通常の電源ON状態では着脱自在であるが、異常事態(電源停止時)には加圧状態を維持したまま止まってしまう。そして、そのまま搬送ユニットを抜き差しすると、感光ドラムを傷つけてしまう可能性がある。
【0040】
そのため、特許文献2に示すように、転写ベルトを手動で当接状態と離間状態とに切り替える二段階の手動着脱機構を併設することが提案された。しかし、カム部材による転写ベルトの着脱動作とレバー部材の手動操作による二段階の着脱動作を持つことは、画像形成装置本体内に大きなスペースを確保しなければならず、その結果、大きくて高価な製品となってしまう。
【0041】
また、手動着脱機構によって当接状態に復帰させる際には転写ユニット全体を持ち上げる動作をユーザーに行わせることになるため、操作力が重くなり、ユーザーに不親切となってしまう。
【0042】
そこで、以下の実施例では、カム部材を駆動モータで回転させて、転写ユニット105を昇降させることにより、感光ドラム101に対して自動的に着脱可能としている。そして、画像形成の終了後、転写ユニット105を感光ドラム101から離間状態にした後に電源を停止させ、画像形成の開始前には、転写ユニット105を感光ドラム101に当接状態に戻している。
【0043】
また、上記の課題を解決するために、手動でレバー部材を操作してカム部材を回転させることにより、転写ユニット105を感光ドラム101から離間状態に移行させる伝達機構を設けている。そして、レバー部材が少なくとも第一位置のときは、伝達機構が駆動モータによるカム部材の回転を妨げないように工夫して、共通のカム部材に対して自動回転と手動回転とを共存させた。これにより、駆動モータによる転写ユニット105の当接状態と離間状態とを自在に設定できる。
【0044】
<実施例1>
図4は実施例1の転写ユニット昇降機構の斜視図である。図5はカム部材の動作の説明図である。図6は当接状態における伝達機構の説明図である。図7は離間状態における伝達機構の空転状態の説明図である。図8は離間状態でハンドル操作した状態の説明図である。
【0045】
図4では、加圧板4と転写ユニット105との間隔を拡大して図示しているが、実際には、図5に示すように、加圧板4が転写ユニット105のフレームに当接して転写ユニット105の回動端を昇降させる構成となっている。
【0046】
図4に示すように、搬送ユニット200にハンドル軸6が回転自在に支持され、ハンドル軸6の一端(搬送ユニット200の正面側)にハンドル5が固定されている。ハンドル5及びハンドル軸6は、第一位置(図6参照)と第二位置(図7参照)の間で手動回転される。
【0047】
ハンドル軸6には、デイテント14を設けて、ハンドル5が第一位置と第二位置の中間位置で停止しないように、ストロークの両端に向かってばね付勢している。ハンドル軸6には、画像形成装置本体120と係合して搬送ユニット200を画像形成装置本体120に引き出し不可能に位置決め固定するためのロック部材13が固定されている。画像形成装置本体120は、ロック部材13の回転に伴って作動するインターロックスイッチを含み、ハンドル5が第一位置にない場合にはモータ12への電力供給が禁止される。第一位置(固定位置)は、搬送ユニット200が画像形成装置本体に取り付けられており、搬送ユニットを画像形成装置本体に固定する位置である。
【0048】
ロック機構の一例であるロック部材13は、ハンドル5が第一位置のとき、画像形成装置本体120に対して搬送ユニット200を引き出し不可能に固定する。しかし、ハンドル5を矢印B方向へ90度回転させる、すなわち、ハンドル5を第二位置(解除位置)に移動させることで、ロック部材13による搬送ユニット200を引き出し不可能な状態が解除される。
【0049】
上述したように、搬送ユニット200を正面側へ挿抜する場合には、ハンドル5をB方向に90度回転させて、画像形成装置本体120に対する搬送ユニット200のロック状態を解除する。これにより、図2に示すように、搬送ユニット200が正面側へ引き出し可能になると同時に、図7に示すように、転写ユニット105の回動端が下降して、感光ドラム101から離間するので、感光ドラム101を傷つけない。
【0050】
転写ユニット105の下方に加圧軸1が配置され、加圧軸1の両端部に、加圧板4を回動させて転写ユニット105を昇降させる加圧カム2が固定されている。カム部材の一例である加圧カム2は、搬送ユニット200に配置されて、感光ドラム101に対する転写ユニット105の位置を移動させる。
【0051】
加圧軸1には、駆動モータ12から、加圧軸1を回転させるための駆動力を伝える加圧ギア3が固定されている。加圧ギア3にはワンウェイクラッチ11が配され、駆動モータ12からの一方向の回転駆動のみを加圧軸1へ伝え、逆方向の回転駆動を空転させる。
【0052】
図5の(a)に示すように、転写ユニット105は、駆動ローラ105bを中心にして張架ローラ105c側を上下方向へ回動可能に構成される。実際には図4に示すようにギア列が配置されているが、ここでは、加圧ギア3、ワンウェイクラッチ11、駆動モータ12の関係を簡略に図示している。
【0053】
駆動モータ12は、加圧カム2を矢印A方向へ一方向に回転させることにより、転写ユニット105の回動端を昇降させて、感光ドラム101に対する転写ベルト105の当接状態と離間状態とを自動的に切り替える。そして、転写ベルト105aを感光ドラム101に対する当接状態にして画像形成動作が始まる
【0054】
このときの離間状態から当接状態に移行する動作について説明する。図5の(b)に示す離間状態にあるときに、駆動モータ12が作動することで、加圧ギア3が加圧軸1、加圧カム2とともにA方向へ回転する。加圧カム2に押圧されて加圧板4が上方へ回動すると、加圧板4に押圧されて、転写ユニット105の回動端が上昇して、感光ドラム101へ当接し、加圧される。
【0055】
加圧板4は、回動軸4aを中心に回動可能な二重構造に構成され、二重構造の間にバネ4bを有している。バネ4bは、転写ユニット105が感光ドラム101側に設けられた不図示の突き当て規制部まで加圧された際に、前後一対の加圧カム2が転写ユニット105をそれぞれ押し込む距離のばらつきを吸収する。
【0056】
図5の(a)に示す当接状態で画像形成動作を終えると、再び、駆動モータ12が作動して、加圧ギア3が加圧軸1、加圧カム2とともにA方向へ回転し、図5の(b)に示すように、転写ユニット105を感光ドラム101から離間させる。ここで、加圧ギア3の回転方向は、離間状態から当接状態に移行するときの回転方向と、当接状態から離間状態に移行するときの回転方向と同じ方向である。
【0057】
図6に示すように、感光ドラム101と転写ベルト105とが当接しているときに画像形成装置の電源が停止した場合に、感光ドラム101から転写ベルト105を離間させるために、伝達機構(8、9)が設けられている。伝達機構(8、9)は、図5の(a)に示す駆動モータ12が駆動していないくても、加圧カム2を図5の(a)に示す駆動モータ12とは逆方向に回転させて、感光ドラム101に当接状態の転写ベルト105を離間状態に移行させる。
【0058】
ハンドル軸6にはアーム7が固定され、アーム7はハンドル軸6と共に回転する。加圧軸1には解除欠歯ギア9が設けられ、解除欠歯ギア9は加圧軸1と一体に回動する。搬送ユニット200の枠体には、アーム7と連結してスライド可能に保持されたアームラック8が配置される。
【0059】
アームラック8は、図6に示す画像形成時の位置と図7に示す搬送ユニットを引き出し可能な位置との間でスライド移動する。アームラック8は、スライド移動の過程で、解除欠歯ギア9に噛み合って加圧カム2を図5の(a)に示す加圧カム2の回転方向Aとは逆方向に手動回転させる。加圧カム2の回転に伴って、感光ドラム101に対する転写ユニット105の当接状態が離間状態に移行する。ここで、加圧カム2の回転方向は駆動モータ12による回転方向とは逆方向である。
【0060】
図4に示すように、搬送ユニット200は、駆動モータ12から二方向へ分岐した駆動列を有している。まず、第一駆動列について説明する。第一駆動列は、駆動モータ12からの駆動力を加圧ギア3に伝達する駆動列である。本実施例では、駆動モータ12と加圧ギア3との間にワンウェイクラッチ11を介して加圧カム2を駆動することにより、転写ユニット105を感光ドラム101に対して当接・離間させる。
【0061】
駆動モータ12と加圧カム2との間に、一方向の回転を伝達して逆方向の回転を空転させるワンウェイクラッチ11を設けている。制御部112は、駆動モータ12の第一方向の回転駆動をワンウェイクラッチ11を介して加圧軸1に伝達することにより、加圧カム2を回転させて、転写ユニット105の当接状態と離間状態とを交互に切り替える。このように、ワンウェイクラッチ11は、駆動モータ12が第一方向に回転する際には、駆動モータ12から加圧ギア3に駆動力を伝達する。しかし、駆動モータ12が第二方向に回転する際には、ワンウェイクラッチ11は空転し、駆動力が加圧ギア3に伝わらないようにしている。
【0062】
次に、第二駆動列について説明する。第二駆動列は、ワンウェイクラッチ16を介して、反転パスの搬送ローラ206(図1参照)を駆動する。駆動モータ12は、加圧カム2をA方向に回転駆動させる場合の第一方向とは逆方向である第二方向に回転することにより、搬送ローラ206を回転させて記録材を搬送可能である。制御部112は、ワンウェイクラッチ11が加圧カム2を空転させる方向に駆動モータ12を回転駆動させることにより、記録材の搬送ローラ206を所定方向に回転させる。また、駆動モータ12が第一方向に回転するときは、ワンウェイクラッチ16は空転することになるため、搬送ローラ206に駆動力が伝達しない。
【0063】
このため、駆動モータ12を一方向に回転させた場合には、加圧カム2が回転する一方で搬送ローラ206は回転しない。しかし、駆動モータ12を逆方向に回転させた場合、搬送ローラ206が回転する一方で加圧カム2は回転しない。このような構成を採用することで、駆動モータ12を一つにしても、転写ベルト105の当接離間動作と、転写ユニット105が感光ドラム101に当接しているときに記録材を搬送する記録材搬送動作とを独立して行うことができる。
【0064】
<伝達機構>
図6に示すように、実施例1の伝達機構は、加圧カム2と一体に回転するピニオンギアの一例である解除欠歯ギア9と、ハンドル5の回転に駆動されて直線移動して解除欠歯ギア9を回転させるラックギアの一例であるアームラック8とを有する。
【0065】
アームラック8のラックギア8aは、第一位置と第二位置に対応する噛み合い範囲で欠歯されている。このため、アームラック8と解除欠歯ギア9は、当接状態でハンドル5が第一位置のときは、加圧カム2とハンドル5との連動を解除している。
【0066】
したがって、駆動モータ12は、アームラック8に拘束されることなく、加圧カム2を一方向に回転させて、転写ユニット105の当接状態と離間状態とを交互に切り替えられる。
【0067】
アームラック8と解除欠歯ギア9は、ハンドル5が第一位置から第二位置へ操作される過程で、解除欠歯ギア9とラックギア8aが噛み合う。その結果、ハンドル5の移動に伴いアームラック8が移動することで、解除欠歯ギア9は回転を行う。
【0068】
本実施例では加圧カム2と解除欠歯ギア9とは加圧軸1に取り付けられている。そのため、解除欠歯ギア9が回転すると、加圧軸1が回転し、加圧カム2が回転を始める。そして、解除欠歯ギア9のギア部がラックギア8aと対向する位置にあるときには、加圧カム2は転写ベルト105を感光ドラム101に当接させる位置にあるように、加圧カム2と解除欠歯ギア9とは加圧軸1に固定されている。
【0069】
その結果、解除欠歯ギア9が半回転すると、加圧カム2が半回転して、加圧カム2は加圧位置から解除位置に移動可能となる。このように、ハンドル5に加圧カム2を連動させることができるため、手動操作で、加圧カム2を離間状態に相当する基準位置へ復帰させると同時に転写ユニット105が離間状態へ移行する。
【0070】
アームラック8と解除欠歯ギア9は、ハンドル5が第二位置でも、加圧カム部材と前記レバー部材との連動を解除している。これにより、ハンドル5が第二位置にあるときでも、駆動モータ12を作動させて加圧カム2を回転させることができる。
【0071】
図7に示すように、アームラック8と解除欠歯ギア9は、転写ユニット105の離間状態では、ハンドル5がいかなる位置でも、加圧カム2とハンドル5との連動を解除している。加圧カム2は、転写ユニット105に作用する重力によって、欠歯領域をアームラック8側へ向けた状態で安定した回転位置を保つ。
【0072】
このため、一度離間状態とした後は、図8に示すように、ハンドル5を誤って操作しても、転写ユニット105の離間状態が安定して保たれ、転写ユニット105と感光ドラム101の意図しない接触を回避できる。
【0073】
図6に示すように、転写ユニット105が感光ドラム101に当接した転写加圧状態にあるとき、解除欠歯ギア9とアームラック8とは噛み合わないので、アームラック8が加圧軸1の回転を妨げない。
【0074】
したがって、図4に示すように、駆動モータ12がワンウェイクラッチ11を介して加圧ギア3を矢印A方向に回転させると、アームラック8に噛み合うことなく、解除欠歯ギア9が回転して、転写ユニット105の回動端が昇降する。
【0075】
図6に示す転写加圧状態において、ハンドル5を操作して矢印B方向に回転させると、図7に示すロック解除位置まで回動する。これに伴い、アーム7も同様に矢印B方向に回動して、アームラック8が矢印D方向にスライド移動する。
【0076】
このとき、最初は噛み合っていなかった解除欠歯ギア9とアームラック8とが、アームラック8の移動によって噛み合う。その後、解除欠歯ギア9がアームラック8に駆動されて加圧軸1が回転し、図7に示すように、転写ユニット105の回動端が下降して感光ドラム101から離間する。
【0077】
図7に示すように、転写ユニット105が感光ドラム101から離間して搬送ユニット200を引き出し可能な状態で、ハンドル5を操作して矢印E方向に回転させると、図8に示すロック位置まで回動する。これに伴い、アーム7が矢印E方向に回転し、アームラック8が矢印C方向にスライド移動する。
【0078】
しかし、この過程を通じて、解除欠歯ギア9の欠歯領域がアームラック8に向いているため、解除欠歯ギア9とアームラック8は噛み合わず、加圧軸1は回転しないので、転写ユニット105は感光ドラム101に対して離間状態を保つ。
【0079】
図8に示すように、転写ユニット105が感光ドラム101から離間しているが搬送ユニット200は引き出し不可能なロック状態で、ハンドル5を操作して矢印B方向に回転させると、図7に示すロック解除位置まで回動する。これに伴い、アーム7が矢印B方向に回転し、アームラック8が矢印D方向にスライド移動する。
【0080】
ところで、記録材のジャムが発生した場合や、停電で電源が瞬断した場合には、図6に示すように、転写ユニット105を感光ドラム101に圧接させた状態で画像形成装置100が止まっている。
【0081】
このような場合、ハンドル5を矢印B方向に回動させると、アームラック8が矢印Dの方向へスライドして解除欠歯ギア9と噛み合う。そのまま図7に示すロック解除位置までハンドル5を回転すると、アームラック8が解除欠歯ギア9を駆動して加圧軸1及び加圧カム2を回転させ、転写ユニット105が感光ドラム101から離間する。
【0082】
同時に、図4に示すロック部材13による搬送ユニット200のロックが解除されて、図2に示すように、搬送ユニット200が画像形成装置本体120の正面側へ引き出し可能になる。
【0083】
実施例1の画像形成装置100は、ハンドル5を矢印B方向にロック解除位置まで回動するとき、加圧軸1を駆動する駆動系が、ワンウェイクラッチ11の作用で加圧ギア3と駆動モータ12の間の駆動伝達を遮断する。すなわち、ハンドル5に伴う加圧カムの回転方向は、駆動モータ12に伴う加圧カムの回転方向と逆方向とする。そのため、ハンドル5の駆動力はワンウェイクラッチ11が空回転することにより、駆動モータ側に伝わらない。そのため、駆動モータ12からの駆動力の伝達が二系統有する構成であるにもかかわらず、ハンドル5を移動させた際の駆動力はワンウェイクラッチ11で遮断されるため、ハンドル5を移動させる負荷を小さくできる。このため、駆動モータ12側がどんな状態であっても、ハンドル5を小さい一定の負荷で操作して、転写ユニット105を感光ドラム101から離間させることができる。
【0084】
実施例1の画像形成装置100は、感光ドラム101に対する転写ユニット105の当接・離間を、駆動モータ12の回転により、ワンウェイクラッチ11を介して作動する加圧カム2で行う。そして、搬送ユニット200の挿脱用のハンドル5を手動回転させてロックを解除する一段階の操作で、加圧カム2をワンウェイクラッチ11の空転方向へ回転させて、感光ドラム101から転写ユニット105を離間させる。
【0085】
このため、通常のハンドル5の回動に際しては、転写ユニット105の加圧機構(2)を動作させることがないので、ハンドル5の操作力が低く押えられる。また、電源が停止した状態でも、ハンドル5は、ワンウェイクラッチ11が空転する方向へ加圧軸1を回転させるために、駆動モータ12側の反力を受けることなく、操作力を低く押えられる。
【0086】
また、転写ユニット105の当接・離間動作は、加圧カム2の動作範囲の1段階となるため、機械の内部動作スペースを小さく、簡素にできる。このため、搬送ユニット200をより小さく構成して、小型の製品を低コストに提供できる。
【0087】
これにより、高信頼性でありながらコンパクト性と低コストが両立し、更には、停電等による異常終了した場合でも軽い力で転写ユニット105を強制的に脱状態にできる画像形成装置を提供できる。
【0088】
<実施例2>
実施例1では、ベルト部材を、記録材を担持して感光ドラムからトナー像を転写させる転写ベルトで構成した実施例を説明した。しかし、転写ベルト以外の無端ベルトを画像形成装置本体から引き出し可能に配置した画像形成装置でも本発明は実施できる。
【0089】
すなわち、中間転写ベルトを支持回転体と一体に組み立てた中間転写ユニットを画像形成装置の画像形成装置本体から引き出し可能に配置した中間転写方式の画像形成装置でも実施できる。
【0090】
中間転写方式の画像形成装置において中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する二次転写部に実施例1と同様な転写ベルトの転写ユニットを配置した画像形成装置でも実施できる。
【0091】
それぞれ現像色を異ならせた複数の感光ドラムに当接する記録材搬送ベルトを有するフルカラー画像形成装置でも実施できる。複数の感光ドラムから記録材搬送ベルトを同時に離間させて記録材搬送ベルトの搬送ユニットを画像形成装置の画像形成装置本体から引き出し可能な画像形成装置でも実施できる。
【符号の説明】
【0092】
1 加圧軸、2 加圧カム、3 加圧ギア、4 加圧板
5 ハンドル、6 ハンドル軸、7 アーム、8 アームラック
9 解除欠歯ギア、11 ワンウェイクラッチ、12 駆動モータ
13 ロック部材、100 画像形成装置、101 感光ドラム
102 コロナ帯電器、103 露光装置、104 現像装置
105 転写ユニット、105a 転写ベルト、105b 駆動ローラ
105c 張架ローラ、105d 転写ローラ、107 定着装置
200 搬送ユニット、201 スライドガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
前記像担持体に当接して回転するベルト部材を有して画像形成装置本体から引き出し可能なベルトユニットと、
前記ベルトユニットに配置されて前記像担持体に対する前記ベルト部材の位置を移動させるカム部材と、
前記カム部材を回転駆動する駆動モータと、
前記駆動モータを制御して前記像担持体に対する前記ベルト部材の当接状態と離間状態とを切り替える制御手段と、
前記ベルトユニットが画像形成装置本体に固定されている状態に対応させた第一位置と前記ベルトユニットが画像形成装置本体から引き出し可能な状態に対応させた第二位置との間で手動操作されるレバー部材と、を有する画像形成装置において、
前記ベルト部材が前記像担持体と当接しているときに、前記レバー部材の第一位置から第二位置に移動する駆動力を前記カム部材に伝達することで、前記ベルト部材を前記像担持体から離間させる伝達機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、前記当接状態で前記レバー部材が前記第一位置のときは前記カム部材と前記レバー部材との連動を解除し、前記レバー部材が前記第一位置から前記第二位置へ操作される過程で前記レバー部材に前記カム部材を連動させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記伝達機構は、前記レバー部材が前記第二位置にあるときには、前記カム部材と前記レバー部材との連動を解除していることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記伝達機構は、前記離間状態では、前記レバー部材がいかなる位置にあるときは、前記カム部材と前記レバー部材との連動を解除していることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ベルトユニットは、前記像担持体の長手方向へ引き出し可能であって、
前記レバー部材は、前記ベルトユニットの引き出し方向の正面側に配置されて、前記第一位置と前記第二位置との間で回転操作されることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記レバー部材が前記第一位置のときに前記画像形成装置本体に対して前記ベルトユニットを引き出し不可能に固定するロック機構を備え、
前記レバー部材が前記第二位置のときに前記ロック機構による前記固定が解除されることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記カム部材を一方向に回転駆動することにより、前記当接状態と前記離間状態とを交互に切り替え、
前記伝達機構は、前記カム部材を前記駆動モータとは逆方向に手動回転させて、前記当接状態を前記離間状態に移行させ、
前記駆動モータと前記カム部材との間に、前記一方向の回転を伝達して前記逆方向の回転を空転させるワンウェイクラッチを設けたことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記ワンウェイクラッチが前記カム部材を空転させる方向に前記駆動モータを回転駆動させることにより、記録材の搬送ローラを所定方向に回転させることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記伝達機構は、前記カム部材と一体に回転するピニオンギアと、前記レバー部材の回転に駆動されて直線移動して前記ピニオンギアを回転させるラックギアとを有し、
前記第一位置と前記第二位置に対応する噛み合い範囲で前記ラックギアが欠歯され、前記離間状態に対応する噛み合い範囲で前記ピニオンギアが欠歯されていることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ベルト部材は、複数の支持回転体と一体に組み立てられるとともに一つの支持回転体を中心にして回動可能なベルトユニットを構成し、
前記カム部材は、前記ベルトユニットの回動端を昇降移動させることを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−180370(P2011−180370A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44327(P2010−44327)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】