説明

画像形成装置

【課題】現像メモリ現象の発生を抑制し、高画質な画像を形成できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】磁性1成分現像方式の画像形成装置60であって、前記画像形成装置60に備えられるトナー担持体14が、表面がアルマイト処理されたものであり、前記画像形成装置60で用いるトナーが、結着樹脂及び鉄含有磁性粉を少なくとも含む磁性トナー粒子と、前記磁性トナー粒子に外添される外添剤とを含む磁性1成分現像剤であり、前記外添剤が、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子であり、前記トナー担持体14で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記画像形成装置60に備えられるクリーニング装置306で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上である画像形成装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等の電子写真方式を利用した画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を均一に帯電させる帯電装置と、帯電された像担持体の表面を露光することによって、前記像担持体の表面に静電潜像を形成させる露光装置と、前記静電潜像が形成された像担持体の表面にトナーを供給することによって、前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、前記トナー像を構成するトナーを、前記像担持体から記録媒体へ転写する転写装置と、転写されたトナー像を加熱及び加圧することによって、紙等の記録媒体に定着させる定着装置等を備える。このような画像形成装置は、上記各装置によって、像担持体上にトナー像を形成し、そのトナー像を記録媒体に転写し、その後、そのトナー像を記録媒体に定着させることによって、画像を記録媒体上に形成する。そして、記録媒体上にトナーを転写した後、像担持体上に残存したトナーを、像担持体である感光体ドラムに接触するクリーニングブレード等を有するクリーニング装置によって像担持体から除去する。
【0003】
このような電子写真方式を利用した画像形成装置に備えられる現像装置は、像担持体である感光体ドラムに対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送するトナー担持体である現像ローラを備え、その現像ローラによって搬送されたトナーを、静電潜像が形成された感光体ドラムの周面に向けて供給する。そうすることによって、現像装置は、前記感光体ドラム上にトナー像を形成する。
【0004】
このような現像装置としては、現像ローラによるトナー搬送性が優れていること等が求められている。そして、現像ローラとしては、トナー搬送性を高めるために、現像ローラとして、金属ローラの表面に凹凸を形成する処理を施したものを用いることが知られている。
【0005】
このような現像ローラとしては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のローラが挙げられる。
【0006】
特許文献1には、少なくとも表面層がアルミニウム材料からなり、サンドブラスト処理された後の表面にアルマイト処理層が形成されている粉体担持体が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、均一に粗面化された導電性基体表面上に被覆されたアルマイト層を備え、このアルマイト層が前記基体に達する微細孔を均一に備える円筒状現像剤担持体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−46008号公報
【特許文献2】特開2003−35992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現像ローラとして、上記のような、表面に凹凸を形成する処理を施した金属ローラを用いると、凹部にトナーが引っ掛かると考えられ、そのことにより、トナー搬送性が高まると考えられる。この凹凸形状が損なわれると、トナー搬送性が低下すると考えられ、現像ローラの交換が必要になる場合がある。このことから、現像ローラを長期間にわたって使用しても、この凹凸が維持されることが、現像ローラの長寿命化の観点から重要であると考えられる。
【0010】
しかしながら、現像ローラとして、比較的安価なアルミニウム製のローラを用いると、表面に凹凸を形成することにより、初期のトナー搬送性を高めることができたとしても、その優れたトナー搬送性を維持しにくいという問題があった。このことは、アルミニウム製のローラの耐摩耗性が低く、現像ローラとして使用することによって、表面に形成した凹凸形状が損なわれやすいことによると考えられる。
【0011】
また、特許文献1によれば、サンドブラストされた後の凹凸表面に、この表面がアルミニウム材料よりなることを利用したアルマイト処理層が形成されており、このアルマイト処理層がセラミック質であることによって、前記サンドブラストされた後の凹凸表面の摩耗を抑えることができるし、アルマイト層自体が持つポーラスな組織構造によって、サンドブラストされた後の凹凸表面をさらに粗して、粗面度を平均化することができることが開示されている。よって、粉体のむらのない担持及び搬送による粉体の安定した供給を長期に亘って保証することができることが開示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の粉体担持体を現像ローラに用いて、画像形成を行うと、記録媒体上に形成した画像に画像むらが発生するおそれがあった。このことは、以下のことによると考えられる。アルマイト処理層は、電気抵抗が比較的高い、すなわち、導電性が比較的低いので、現像ローラにより搬送されたトナーで、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像した後、現像ローラの表面に電荷が残留しやすくなると考えられる。このような残留電荷が、次の現像のために、現像ローラ上にトナー薄層を形成する際、そのトナーの帯電に影響すると考えられる。このことにより、現像ローラ上に均一なトナー薄層を形成することができず、現像する際、先の現像による影響を受けてしまうと考えられる。すなわち、現像ローラ上に形成されるトナー薄層に、先の現像の履歴が残る現像メモリ現象が発生すると考えられる。この現像メモリ現象の発生により、記録媒体上に形成した画像に画像むらが発生すると考えられる。
【0013】
また、特許文献2によれば、繰り返し使用後にも、トナーが現像スリーブ上で充分に摩擦帯電され、偏りのない均一な層として担持され搬送されることができ、かつ、現像履歴に応じた現像能力の差の生じない円筒状現像剤担持体が得られることが開示されている。
【0014】
このような円筒状現像剤担持体は、アルマイト層に、基体に達する微細孔を形成することで、前記残留電荷を逃して、画像メモリ現象の発生を抑制するものと考えられる。
【0015】
しかしながら、特許文献2に記載の円筒状現像剤担持体は、トナー搬送性が充分に高いものではなかった。このことは、一旦粗面処理し、アルマイト処理した後、微細孔を形成する処理を行うため、粗面処理した凹凸が失われるためと考えられる。また、処理工程が複数あり、複雑であるため、製造コストが高くなる。
【0016】
また、電子写真方式を利用した画像形成装置には、現像剤として、磁性トナーを含み、キャリアを含まない磁性1成分現像剤、すなわち、磁性トナーを用いるものが挙げられる。このような磁性トナーとしては、一般的には、結着樹脂と磁性粉とを含む磁性トナー粒子に対して、流動性及び帯電性等を調整するために、前記磁性トナー粒子に無機微粒子を外添させたものが用いられる。そして、この無機微粒子としては、外部環境の影響を受けにくくするために、疎水化処理を施したものが好適に用いられる。しかしながら、このような無機微粒子、例えば、酸化チタン粒子等は、磁性トナーの抵抗を調整することもできるが、疎水化処理を施すと、抵抗が高まってしまう場合があった。このため、スズを含む化合物やアンチモンを含む化合物等の導電材で表面処理した無機微粒子を疎水化処理することによって、得られた外添剤の抵抗が高くなりすぎることを抑制させることが考えられる。
【0017】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、現像メモリ現象の発生を抑制し、高画質な画像を形成できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者の検討によれば、現像メモリ現象の発生は、上述したように、前記トナー担持体の表面上の残留電荷によると考えられる。すなわち、前記トナー担持体のトナー搬送性を維持するために施すアルマイト処理によって得られたアルマイト層の抵抗が比較的高いことによると考えた。
【0019】
そして、本発明者は、トナーとして、スズを含む化合物やアンチモンを含む化合物等の導電材で表面処理した無機微粒子を外添したものを用いることに着目した。この導電材が、トナー担持体表面に好適に移行することによって、前記トナー担持体の表面上に電荷が残留することを抑制できると考えた。
【0020】
そこで、本発明者は、上記のことに着目し、現像メモリ現象の発生を充分に抑制できる条件を鋭意検討した結果、以下のような本発明に想到するに至った。
【0021】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送するトナー担持体を備え、前記トナー担持体によって搬送されたトナーによって、前記像担持体上に形成される静電潜像を現像させて、前記像担持体上にトナー像を形成する現像装置と、前記現像装置によって形成されたトナー像を、被転写材に転写する転写装置と、転写後、前記像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング装置とを備え、前記トナー担持体が、表面がアルマイト処理されたものであり、前記トナーが、結着樹脂及び鉄含有磁性粉を少なくとも含む磁性トナー粒子と、前記磁性トナー粒子に外添される外添剤とを含む磁性1成分現像剤であり、前記外添剤が、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子であり、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上であることを特徴とするものである。
【0022】
このような構成によれば、現像メモリ現象の発生を抑制し、高画質な画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【0023】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0024】
まず、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率や、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率における鉄は、磁性トナー粒子に含まれる磁性粉に由来するものであり、磁性トナー粒子の量に依存すると考えられる。そして、ここでのアンチモンは、外添剤の表面処理に寄与しているアンチモンを含む化合物に由来するものであり、外添剤の表面処理に寄与しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物の量に依存すると考えられる。
【0025】
よって、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上ということは、現像により、磁性トナー粒子が消費され、その量は減少するので、磁性トナー粒子の減少量に比べたら、外添剤の表面処理に寄与しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物の減少量が少ないことを表すと考えられる。このことから、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物が、無機微粒子に比較的弱く付着していると考えられる。そして、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物が、トナー担持体に移行している量が多いと考えられる。よって、トナー担持体の表面の抵抗を低下させ、現像メモリ現象の発生を抑制できると考えられる。
【0026】
以上のことから、トナー担持体として、表面をアルマイト処理したものを用いても、現像メモリ現象の発生を充分に抑制でき、さらに、トナー担持体の表面をアルマイト処理しているので、長期間にわたって画像形成を行っても、トナー搬送性を維持することができると考えられる。
【0027】
なお、ここでの鉄に対するアンチモンの比率は、例えば、トナー担持体で搬送される前のトナーとクリーニング装置によって像担持体から除去されたトナーとのそれぞれを、蛍光X線分析装置で分析して得られた、鉄に基づくピークと、アンチモンに基づくピークとの強度比から算出することができる。
【0028】
前記画像形成装置において、前記無機微粒子が、酸化チタン粒子であることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、現像メモリ現象の発生をより抑制することができる。このことは、以下のことによると考えられる。酸化チタン粒子は、磁性トナーの抵抗調整を担うものであり、疎水化処理等によって、その抵抗が高くなった場合等に、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物を表面処理で比較的多量に付着することができると考えられる。このことにより、上記の関係を満たしやすいことによると考えられる。
【0030】
前記画像形成装置において、前記像担持体が、アモルファスシリコン感光体であることが好ましい。
【0031】
このような構成によれば、現像メモリ現象の発生を抑制でき、トナー担持体のトナー搬送性の低下を長期間にわたって抑制できるとともに、像担持体の耐久性も高い画像形成装置が得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、現像メモリ現象の発生を抑制し、高画質な画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の画像形成部周辺を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられる現像装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図面に基づき詳細に説明する。画像形成装置としては、図面に示す構成の画像形成装置を例に挙げて説明するが、電子写真方式を用いた画像形成装置であれば、これに限定されない。例えば、複写機、ファクシミリ装置、及びプリンタ等が挙げられる。また、像担持体として、ドラム状の感光体である感光体ドラムを例に挙げて説明するが、これに限定するものではなく、ベルト状の感光体であっても、シート状の感光体であってもよい。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置(プリンタ)60の概略構成を示す模式図である。この画像形成装置60は、画像形成装置本体の下部に配設された給紙部200と、この給紙部200の上方に配設された画像形成部300と、この画像形成部300よりも排出側(用紙の搬送方向下流側)に配設された定着部400と、画像形成装置本体の上部に配設された排紙部600とを含む。また、画像形成装置本体には、前記給紙部200、画像形成部300、定着部400、及び排紙部600を繋ぐ用紙搬送部100が備えられている。
【0036】
前記画像形成部300は、電子写真方式によって記録媒体である用紙にトナー像を形成するためのものである。なお、画像形成部300の構成については、後述する。
【0037】
前記定着部400は、前記画像形成部300の用紙搬送方向下流側に配置される。そして、前記定着部400は、前記画像形成部300によって、トナー像が形成された用紙を、加熱ローラ401及び加圧ローラ402で挟んで加熱及び加圧することによって、用紙上に形成された未定着トナー像を用紙上に定着させる。
【0038】
前記給紙部200は、用紙を給紙するためのものである。そして、給紙部200は、複数の給紙カセット201,202,221を備える。このうちの給紙カセット221は、画像形成装置の側面から用紙を補充するバイパストレイになっており、蓋222により閉じることができる。
【0039】
それぞれの給紙カセット201,202,221には、用紙搬送路110が接続されている。この用紙搬送路110は、画像形成部300に向かい、さらに、定着部400を経て排紙部600に向かっている。これらの用紙搬送路110により、前記用紙搬送部100が構成されている。また、トナー像が転写され、定着された用紙は、排紙部600の排紙ローラ対605によって排紙トレイ610上に排紙される。
【0040】
図2は、前記画像形成装置60の画像形成部300周辺を示す模式図である。前記画像形成部300は、電子写真方式によって記録媒体である用紙115にトナー像を形成する部分である。また、前記画像形成部300は、図2に示すように、中央位置に像担持体としての感光体ドラム301が矢符A方向に回転可能に配置されている。また、感光体ドラム301の周囲に、感光体ドラム301の回転方向Aに沿って順に、帯電装置302、露光装置303、現像装置10、転写装置305、除電装置307、及びクリーニング装置306等を備えている。なお、除電装置307とクリーニング装置306とは、逆の配置であってもよい。
【0041】
前記感光体ドラム301は、電子写真方式を用いた画像形成装置に備えられるものであれば、特に限定されない。具体的には、アモルファスシリコン感光体等が挙げられる。
【0042】
前記帯電装置302は、矢符方向に回転されている感光体ドラム301の周面を帯電させるためのものである。帯電装置302としては、画像形成装置に備えられる帯電装置であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、帯電ローラを備え、その帯電ローラに所定の帯電バイアス電圧を印加することによって、感光体ドラムの周面を帯電させる接触帯電方式による帯電装置や、非接触放電方式のコロトロン型及びスコロトロン型の帯電装置等が挙げられる。
【0043】
前記露光装置303は、帯電装置302によって周面が帯電された感光体ドラム301の周面に、画像情報に基づくレーザ光又はLED光を照射し、感光体ドラム301の周面上に画像情報に基づく静電潜像を形成させるためのものである。露光装置303としては、画像形成装置に備えられる露光装置であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、LEDヘッドユニットやレーザ走査ユニット(LSU)等が挙げられる。
【0044】
前記現像装置10は、感光体ドラム301の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像して、トナー像を形成するためのものである。なお、現像装置10の構成については、後述する。
【0045】
前記転写装置305は、感光体ドラム301上に形成されたトナー像を用紙115上に転写するためのものである。
【0046】
前記除電装置307は、前記転写装置305によって、トナー像を用紙115上に転写させた後の感光体ドラム301の表面電荷を除電するためのものである。
【0047】
前記クリーニング装置306は、前記転写装置305によって、トナー像を用紙115上に転写させた後の感光体ドラム301上に残存したトナーを除去するためのものである。クリーニング装置306としては、例えば、ファーブラシ316とゴムブレード326とを備える。なお、図示例のクリーニング装置306は、ファーブラシ316とゴムブレード326とを両方備えるものであるが、一方のみを備えるものであってもよい。また、クリーニング装置306によって除去された廃トナーは、所定の経路を通って、図略のトナー回収ボトルに搬送され、貯留される。
【0048】
さらに、前記画像形成装置60は、上述したように、用紙115の搬送方向の、前記画像形成部300より下流側に、定着部400を備えている。この定着部400によって、トナー像が転写された用紙115に熱と圧力とを加え、トナー像を定着させる。そうすることによって、用紙115上に所望する画像を形成することができる。
【0049】
以下、前記画像形成装置60に備えられている現像装置10について説明する。図3は、前記現像装置10を示す概略断面図であり、感光体ドラム301とともに図示している。
【0050】
前記現像装置10は、磁性1成分現像剤である磁性トナーが収容されているトナー収容部354と、このトナーを攪拌する2つの攪拌ローラ314,324と、トナーを感光体ドラム301の表面に移行させるためのトナー担持体である現像ローラ14と、現像ローラ14に対峙して配置されるブレード16とが備えられている、すなわち、磁性1成分現像装置である。
【0051】
前記現像ローラ14は、円筒状の回転スリーブ13と、この回転スリーブ13に内包され、回転スリーブ13に非接触である固定磁石15とを備える。そして、前記現像ローラ14は、固定磁石15の位置が固定された状態で、その周囲を回転スリーブ13が回転する構成になっている。また、前記現像ローラ14の回転スリーブ13に対峙してブレード16が設けられている。
【0052】
また、トナー担持体である現像ローラ14は、表面がアルマイト処理されたものである。すなわち、前記回転スリーブ13として、その表面がアルマイト処理されたものを備えた現像ローラである。アルマイト処理とは、表面にアルマイト層を形成することができる処理であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、アルミニウム素管に対する陽極酸化処理等が挙げられる。より具体的には、例えば、硫酸水溶液等を電解液として用いた陽極酸化処理等が挙げられる。その際の処理時間としては、特に限定されないが、例えば、0.5〜300分程度が好ましい。また、電解液の濃度としては、特に限定されないが、例えば、電解液として硫酸水溶液を用いる場合、0.1〜80質量%程度が好ましい。また、陽極酸化処理時の化成電圧としては、特に限定されないが、例えば、10〜200V程度であることが好ましい。
【0053】
攪拌ローラ314,324は、らせん状羽根を有しており、互いに逆方向にトナーを攪拌しながら搬送する。さらに、攪拌ローラ324は、攪拌されたトナーを現像ローラ14に供給する。
【0054】
現像ローラ14に供給されたトナーは、固定磁石の磁力によって、回転スリーブ13の表面に吸着される。そして、トナーが吸着された状態で回転スリーブ13が回転することによって、トナーがブレード16による層厚規制位置まで搬送され、層厚規制位置を通過する。その際、回転スリーブ13上のトナー層の層厚が調整され、好適な厚みのトナー薄層が形成されるとともに、トナーが帯電される。この帯電されたトナーからなるトナー薄層が表面に形成された状態で、回転スリーブ13をさらに回転させることによって、感光体ドラム301近傍まで、トナー薄層を搬送する。そして、感光体ドラム301近傍まで搬送されたトナー薄層のトナーが、感光体ドラム301に形成された静電潜像と現像ローラ14に印加した現像バイアス電位との間に発生させた電位差によって、感光体ドラム301に移行する。このような動作によって、現像装置10は、感光体ドラム301上に形成されている静電潜像に基づく現像を行う。
【0055】
また、前記画像形成装置で用いるトナーとしては、結着樹脂及び鉄含有磁性粉を少なくとも含む磁性トナー粒子と、前記磁性トナー粒子に外添される外添剤とを含む磁性1成分現像剤であり、前記外添剤が、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子であるものであれば、特に限定されない。なお、トナーの構成については、後述する。
【0056】
本実施形態に係る画像形成装置は、上記のような、像担持体と、現像装置と、転写装置と、クリーニング装置とを備え、現像装置に備えられるトナー担持体が、その表面がアルマイト処理されたものであって、前述したような、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子を、磁性トナー粒子に外添した磁性1成分現像剤(磁性トナー)を用い、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上であるものである。
【0057】
なお、本発明においては、現像装置に備えられるトナー担持体が、その表面がアルマイト処理されたものであって、前述したような、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子を、磁性トナー粒子に外添した磁性1成分現像剤(磁性トナー)を用いる磁性1成分現像装置を備える画像形成装置であれば、上記の構成の画像形成装置に限定されない。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置は、静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送するトナー担持体を備え、前記トナー担持体によって搬送されたトナーによって、前記像担持体上に形成される静電潜像を現像させて、前記像担持体上にトナー像を形成する現像装置と、前記現像装置によって形成されたトナー像を、被転写材に転写する転写装置と、転写後、前記像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング装置とを備え、前記トナー担持体が、表面がアルマイト処理されたものであり、前記トナーが、結着樹脂及び鉄含有磁性粉を少なくとも含む磁性トナー粒子と、前記磁性トナー粒子に外添される外添剤とを含む磁性1成分現像剤であり、前記外添剤が、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子であり、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上であることを特徴とするものである。
【0058】
このような構成によれば、現像メモリ現象の発生を抑制し、高画質な画像を形成できる画像形成装置を提供することができる。
【0059】
このことは、以下のことによると推察される。
【0060】
まず、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率や、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率における鉄は、磁性トナー粒子に含まれる磁性粉に由来するものであり、磁性トナー粒子の量に依存すると考えられる。そして、ここでのアンチモンは、外添剤の表面処理に寄与しているアンチモンを含む化合物に由来するものであり、外添剤の表面処理に寄与しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物の量に依存すると考えられる。
【0061】
よって、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上ということは、現像により、磁性トナー粒子が消費され、その量は減少するので、磁性トナー粒子の減少量に比べたら、外添剤の表面処理に寄与しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物の減少量が少ないことを表すと考えられる。このことから、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物が、無機微粒子に比較的弱く付着していると考えられる。そして、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物が、トナー担持体に移行している量が多いと考えられる。よって、トナー担持体の表面の抵抗を低下させ、現像メモリ現象の発生を抑制できると考えられる。
【0062】
これに対して、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍未満ということは、現像により、磁性トナー粒子の量が減少する際、その減少にともなって、外添剤の表面処理に寄与しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物が減少する量も比較的多いことを表すと考えられる。このことから、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物が、無機微粒子に比較的強く付着していると考えられる。そして、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物が、トナー担持体に移行している量が少ないと考えられる。よって、トナー担持体の表面の抵抗低下が充分ではなく、現像メモリ現象の発生を充分に抑制できないと考えられる。
【0063】
以上のことから、トナー担持体として、表面をアルマイト処理したものを用いても、現像メモリ現象の発生を充分に抑制でき、さらに、トナー担持体の表面をアルマイト処理しているので、長期間にわたって画像形成を行っても、トナー搬送性を維持することができると考えられる。
【0064】
なお、ここでの鉄に対するアンチモンの比率は、例えば、以下のようにして求めることができる。
【0065】
まず、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率は、トナー担持体で搬送される前のトナー、例えば、トナー収容部354に収容されているトナーや、トナー収容部354に収容される前のトナーを、蛍光X線分析装置で分析して得られた、鉄に基づくピークと、アンチモンに基づくピークとの強度比から算出することができる。
【0066】
次に、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率は、クリーニング装置306によって感光体ドラム301から除去され、トナー回収ボトル(廃トナーボックス)に回収されたトナーを、蛍光X線分析装置で分析して得られた、鉄に基づくピークと、アンチモンに基づくピークとの強度比から算出することができる。
【0067】
鉄に対するアンチモンの比率を求めるために用いる蛍光X線分析装置としては、特に限定されず、例えば、株式会社リガク製のRIX2100等を用いることができる。
【0068】
なお、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上であるとは、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率をAとし、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率をBとしたとき、B/A≧2を満たすということである。
【0069】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上であればよいが、3倍以上であることが好ましい。すなわち、B/A≧3を満たすことが好ましい。そうすることによって、現像メモリ現象をより抑制することができ、より高画質な画像を形成することができる。このことは、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物が、現像ローラの表面により移行していることによると考えられる。
【0070】
そして、B/Aが大きければ大きいほど、現像メモリ現象をより抑制することができると考えられる。このことは、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物の、現像ローラの表面への移行量が増えることによると考えられる。
【0071】
一方、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が10倍未満であること、すなわちB/A≦10であることが、現像メモリ現象の発生とは別の観点から好ましい。具体的には、B/Aが大きすぎると、画像濃度が低下したり、かぶりが発生する可能性がある。このことは、B/Aが大きすぎると、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物の量が多すぎることになり、トナーの帯電を阻害したり、感光体ドラムの帯電に影響を及ぼしたりすることによると考えられる。
【0072】
また、前記画像形成装置において、前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率A、及び前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bが、上記関係を満たすように構成されていればよく、その方法は特に限定されない。具体的には、例えば、外添剤を製造する際に、導電材として無機微粒子に付着しているスズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物と、無機微粒子との付着力を調整するようにして得られた外添剤を用いること等が挙げられる。
【0073】
[トナー]
ここで用いられるトナーは、結着樹脂及び鉄含有磁性粉を少なくとも含む磁性トナー粒子(トナー母粒子)と、前記磁性トナー粒子に外添される外添剤とを含み、その外添剤が、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子である磁性1成分現像剤(磁性トナー)であって、前記B/Aが2以上となるようなものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0074】
<磁性トナー粒子>
前記磁性トナー粒子は、上述したように、結着樹脂及び鉄含有磁性粉を少なくとも含むトナー粒子である。また、その粒子径は、例えば、体積平均粒子径で、4.5〜9μmであることが好ましい。
【0075】
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、従来からトナー母粒子の結着樹脂として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等のポリスチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ビニルエーテル系樹脂;N−ビニル系樹脂等が挙げられる。この中でも、ポリエステル系樹脂やスチレン−アクリル系樹脂が、比較的軟化点が低く、低温定着性に優れ、非オフセット温度範囲が広い点から好ましく用いられる。また、前記結着樹脂としては、上記各結着樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合又は共縮重合によって得られるもの等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のものが挙げられる。
【0077】
前記アルコール成分としては、ポリエステル系樹脂を合成するためのアルコールとして使用可能なものであれば、特に限定されない。また、前記アルコール成分としては、分子内に水酸基が2個以上のアルコール(2価以上のアルコール)が含まれている必要がある。前記アルコール成分として用いられるもののうち、2価のアルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類等が挙げられる。また、前記アルコール成分として用いられるもののうち、3価以上のアルコールとしては、具体的には、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。また、前記アルコール成分としては、上記各成分を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
また、前記カルボン酸成分としては、ポリエステル系樹脂を合成するためのカルボン酸として使用可能なものであれば、特に限定されない。また、前記カルボン酸成分としては、カルボン酸だけではなく、カルボン酸の、酸無水物や低級アルキルエステル等も含まれる。そして、前記カルボン酸成分としては、カルボン酸の分子内に水酸基を2個以上有するカルボン酸(2価以上のカルボン酸)が含まれている必要がある。前記カルボン酸として用いられるもののうち、2価のカルボン酸としては、具体的には、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸等が挙げられる。アルキルコハク酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等が挙げられ、アルケニルコハク酸としては、例えば、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等が挙げられる。また、前記カルボン酸成分として用いられるもののうち、3価以上のカルボン酸としては、具体的には、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等が挙げられる。また、前記カルボン酸成分としては、上記各成分を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体でも、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。前記共重合モノマーとしては、p−クロロスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のオレフィン系炭化水素(アルケン);塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル等のアクリル酸エステル;メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。また、前記共重合モノマーとしては、上記各モノマーを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
前記結着樹脂としては、定着性の観点から、上記のような熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂のみである必要はなく、架橋剤や熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂に組み合わせて用いてもよい。このように結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、トナーの用紙への定着時における定着性の低下を抑制しつつ、耐オフセット性を向上させることができる。
【0081】
前記熱硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、シアネート樹脂等のシアネート系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(鉄含有磁性粉)
前記鉄含有磁性粉としては、鉄を含む磁性粉であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、フェライトやマグネタイト等を挙げることができる。また、その粒子径としては、個数平均粒子径で、0.1〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
【0083】
また、前記鉄含有磁性粉の含有量としては、特に限定されないが、磁性トナー粒子(トナー母粒子)100質量部に対して、35〜60質量部であることが好ましく、40〜60質量部であることがより好ましい。前記鉄含有磁性粉の含有量が少なすぎると、画像濃度が低下する可能性がある。また、前記鉄含有磁性粉の含有量が多すぎると、結着樹脂の含有量が少ないことになり、定着性が低下する可能性がある。
【0084】
(ワックス)
前記磁性トナー粒子(トナー母粒子)には、定着性やオフセット性を向上させるために、ワックスを含有させることが一般的である。
【0085】
前記ワックスとしては、従来からトナー母粒子のワックスとして用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。好ましくは、例えば、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、ポリテトラフルオロエチレン系ワックス等のフッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらワックスは単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。かかるワックスを添加することにより、オフセット性や像スミアリングをより効率的に防止することができる。
【0086】
前記ワックスの含有量としては、特に限定されないが、前記結着樹脂100質量部に対して、1〜5質量部であることが好ましい。ワックスの含有量が少なすぎる場合には、オフセット性や像スミアリング等を効率的に防止することができない可能性がある。一方、ワックスの配合量が多すぎる場合には、トナー同士が融着してしまい、保存安定性が低下する可能性がある。
【0087】
(電荷制御剤)
前記磁性トナー粒子(トナー母粒子)には、トナーの摩擦帯電性等の帯電性を制御するために、電荷制御剤を含有させることが一般的である。前記電荷制御剤は、帯電レベルや帯電立ち上がり特性(短時間で、一定の電荷レベルに帯電するかの指標)を著しく向上させ、耐久性や安定性に優れた特性等を得るために配合される。すなわち、トナーを正帯電させて現像に供する場合には、正帯電性の電荷制御剤(正帯電性電荷制御剤)を添加することができ、負帯電させて現像に供する場合には、負帯電性の電荷制御剤(負帯電性電荷制御剤)を添加することができる。
【0088】
前記電荷制御剤としては、従来からトナー母粒子の電荷制御剤として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0089】
正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリーンBH/C、アジンディープブラックEW及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。特に、ニグロシン化合物は、より迅速な立ち上がり性が得られる観点から、正帯電性トナーに含有させるものとして最適である。
【0090】
また、前記正帯電性電荷制御剤として、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂又はオリゴマ−等も使用することができる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
特に、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂は、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる観点から、最適である。この場合において、上記スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。誘導されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジ(低級アルキル)アミノエチル(メタ)アクリレート;ジメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが好ましく用いられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0092】
負帯電性を示す電荷制御剤としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効である。キレート化合物の例として、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等が挙げられる。有機金属錯体としては、アセチルアセトン金属錯体、サリチル酸系金属錯体又は塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が特に好ましい。
【0093】
前記電荷制御剤の含有量としては、前記結着樹脂100質量部に対して、0.5〜15質量部であることが好ましく、0.5〜8質量部であることがより好ましく、0.5〜7質量部であることがさらに好ましい。電荷制御剤の含有量が少なすぎる場合には、所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となる可能性がある。よって、このような所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となったトナーを用いて静電潜像の現像を行って画像形成を行ったとき、画像濃度が低くなったり、画像濃度を一定に維持しにくくなるおそれがある。また、電荷制御剤の分散不良が起こりやすく、いわゆるカブリの原因となったり、感光体汚染が激しくなる等の傾向がある。一方、電荷制御剤の添加量が多すぎる場合には、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良、画像不良の原因となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる可能性がある。
【0094】
(製造方法)
また、前記磁性トナー粒子(トナー母粒子)の製造方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、粉砕法や重合法等が挙げられる。前記粉砕法による前記磁性トナー粒子(トナー母粒子)の製造方法としては、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0095】
まず、上記の、結着樹脂及び磁性粉等の磁性トナー粒子(トナー母粒子)を構成する各成分を混合機等で混合する。前記混合機としては、公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル、ハイブリダイゼーションシステム、コスモシステム等が挙げられる。この中でも、ヘンシェルミキサが好ましい。
【0096】
次に、得られた混合物を混練機等で溶融混練する。前記混練機としては、公知のものを使用でき、例えば、2軸押出機等の押出機、三本ロールミル、ラボブラストミル等が挙げられ、押出機が好適に用いられる。また、溶融混練時の温度としては、前記結着樹脂の軟化点以上であって、前記結着樹脂の熱分解温度未満の温度であることが好ましい。
【0097】
次に、得られた溶融混練物を冷却機で冷却して固形物とし、その固形物を粉砕機等で粉砕する。前記冷却機としては、公知のものを使用でき、例えば、ドラムフレーカ等が挙げられる。また、前記粉砕機としては、公知のものを使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機(ジェットミル)等の気流式粉砕機、ターボミル等の機械式粉砕機、及びハンマーミル等の衝撃式粉砕機等が挙げられ、衝撃式粉砕機が好適に用いられる。
【0098】
最後に、得られた粉砕物を分級機等で分級する。分級することによって、過粉砕物や粗粉を除去することができ、所望のトナー母粒子を得ることができる。前記分級機としては、公知のものを使用でき、例えば、エルボージェット分級機等の旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)等の気流式分級機や遠心力分級機等が挙げられ、気流式分級機が好適に用いられる。
【0099】
(外添)
前記磁性1成分現像剤(磁性トナー)は、前記磁性トナー粒子(トナー母粒子)に対して、後述する外添剤を外添して得られるものである。すなわち、前記磁性トナー粒子に、後述する外添剤を用いて外添処理を施すことによって得られるものである。
【0100】
前記外添処理としては、従来公知の外添処理であれば、限定なく用いることができる。具体的には、例えば、前記トナー母粒子に外添剤を添加し、攪拌機等で攪拌させることによって、前記トナー母粒子の表面に外添剤を付着又は固着させる処理である。
【0101】
前記外添剤としては、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、酸化スズ及び酸化アンチモンが被着された無機微粒子等が挙げられる。
【0102】
前記無機微粒子、すなわち、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理する対象の無機微粒子としては、トナーの外添剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、酸化チタン粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、及びマグネタイト粒子、及び酸化ジルコニウム粒子等の無機微粒子等が挙げられる。この中でも、酸化チタン粒子が好ましく用いられる。そうすることによって、現像メモリ現象の発生をより抑制することができる。このことは、以下のことによると考えられる。酸化チタン粒子は、磁性トナーの抵抗調整を担うものであり、疎水化処理等によって、その抵抗が高くなった場合等に、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物を表面処理で比較的多量に付着することができると考えられる。このことにより、B/Aが上記の関係を満たしやすいことによると考えられる。また、酸化チタン粒子としては、例えば、アナターゼ型酸化チタン粒子、ルチル型酸化チタン粒子、及びアモルファス酸化チタン粒子等が挙げられ、アナターゼ型酸化チタン粒子が、酸化チタン粒子の中でも好ましく用いられる。また、前記無機微粒子の粒径としては、特に限定されないが、平均一次粒径で、0.1〜0.3μm程度であることが好ましい。また、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理をさせる際、用いる無機微粒子としては、前記無機微粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で無機微粒子を表面処理する方法としては、特に限定されない。具体的には、例えば、酸化スズ及び酸化アンチモンが被着された無機微粒子が得られる方法等が挙げられる。
【0104】
より具体的には、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0105】
まず、無機微粒子を水に分散させた分散液に、水溶性スズ化合物と水溶性アンチモン化合物とを含む溶液を添加し、混合する。その際、pHを調整することによって、無機微粒子が、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理されると考えられる。この混合により得られた分散液を濾過し、洗浄して得られた固形分(ケーキ)を焼成する。その後、焼成した固形分を粉砕する。そうすることによって、酸化スズ及び酸化アンチモンが被着された無機微粒子が得られる。
【0106】
なお、上記方法における各条件は、特に限定されないが、具体的には、例えば、以下のような条件等が挙げられる。ここで用いる水溶性スズ化合物とは、例えば、塩化スズが挙げられる。また、水溶性アンチモン化合物とは、塩化アンチモンが挙げられる。また、懸濁液の濃度は、20〜300g/l程度であることが好ましい。また、水溶性スズ化合物と水溶性アンチモン化合物とを含む溶液とは、例えば、水溶性スズ化合物と水溶性アンチモン化合物とを、2N−希塩酸に溶解させた溶液等が挙げられる。また、無機微粒子を水に分散させた分散液と、水溶性スズ化合物と水溶性アンチモン化合物とを含む溶液との混合の際のpH調整は、例えば、混合液のpHが2〜7程度、好ましくは2〜4程度、より好ましくは3〜4程度になるように、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を混合液に添加する方法等が挙げられる。水溶性スズ化合物の配合量は、無機微粒子100質量部に対して、6〜15質量部であることが好ましい。また。水溶性アンチモン化合物の配合量は、無機微粒子100質量部に対して、2〜10質量部であることが好ましい。また、水溶性スズ化合物と水溶性アンチモン化合物との配合比は、質量比で10:1〜10:5であることが好ましい。この混合時間としては、表面処理が充分に進行できる時間であれば、特に限定されないが、例えば、30〜120分間程度等が挙げられる。また、この混合時の混合液の温度は、特に限定されないが、40〜90℃程度等が挙げられる。そして、焼成温度としては、300〜800℃程度等が挙げられる。また、焼成時間としては、30〜120分間程度等が挙げられる。
【0107】
また、表面処理された無機微粒子に被着されているスズを含む化合物、具体的には、酸化スズ等の含有量は、表面処理する前の無機微粒子100質量部に対して、6〜15質量部であることが好ましい。表面処理された無機微粒子に被着されているアンチモンを含む化合物、具体的には、酸化アンチモン等の含有量は、表面処理する前の無機微粒子100質量部に対して、2〜10質量部であることが好ましい。また、表面処理された無機微粒子に被着されている、スズを含む化合物とアンチモンを含む化合物との被着量の比は、質量比で10:1〜10:5であることが好ましい。
【0108】
また、外添剤は、環境の影響を受けにくくするために、疎水化処理を施してもよい。この疎水化処理は、前記表面処理を施す前の無機微粒子に施してもよいし、前記表面処理を施した無機微粒子に施してもよい。そして、疎水化処理としては、外添剤の疎水化処理として用いることができる処理であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、チタネートカップリング剤を用いた処理等が挙げられる。
【0109】
また、前記外添剤としては、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子だけではなく、他の外添剤を併用してもよい。他の外添剤としては、前記表面処理を施していない無機微粒子等が挙げられる。
【0110】
また、前記外添剤の含有量は、前記磁性トナー粒子(トナー母粒子)100質量部に対して、0.2〜3質量部であることが好ましい。
【0111】
前記攪拌機としては、従来公知の攪拌機を限定なく使用できる。具体的には、例えば、タービン型攪拌機、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ等の一般的な攪拌機等が挙げられ、ヘンシェルミキサが好適に用いられる。
【実施例】
【0112】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
【0113】
[実施例1]
(磁性トナー粒子)
まず、結着樹脂として、ポリエステル樹脂(アルコール成分:ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、カルボン酸成分:テレフタル酸、Tg:60℃、軟化点:150℃、酸価:mgKOH/g、ゲル分率:30%)100質量部、磁性粉として、マグネタイト粒子(戸田工業株式会社製のMTSB−905)76質量部、電荷制御剤として、オリエント化学工業株式会社製のボントロンNo.1 3質量部、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル樹脂(藤倉化成株式会社製のFCA196)8質量部、ワックスとして、エステルワックス(日油株式会社製のWEP−5)3質量部を、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合した。その後、得られた混合物を2軸押出機(株式会社池貝製のPCM−30)を用い、シリンダ設定温度100℃の条件下で溶融混練した。そして、得られた溶融混練物を冷却させ、その後、フェザーミルで粗粉砕した。そして、粗粉砕した溶融混練物をターボミルで微粉砕し、気流式分級機で分級処理した。そうすることによって、体積平均粒子径8.0μmの磁性トナー粒子(トナー母粒子)が得られた。なお、磁性トナー粒子の体積平均粒子径は、粒度計(ベックマンコールター株式会社製のマルチサイザー3)によって、測定した。
【0114】
(外添処理)
まず、アナターゼ型酸化チタン粒子100gを、酸化チタン粒子の濃度が100g/lとなるように、水に分散させた。分散させることにより得られた懸濁液を70℃に加熱し、加熱した懸濁液に、塩化スズ10gと塩化アンチモン3gとを2N−希塩酸50mlに溶解させた溶液を添加し、60分間混合した。その際、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、混合液のpHが2〜3になるように調整した。その後、得られた混合液を、濾過し、洗浄することによって得られた固形分(ケーキ)を、600℃で1時間焼成した。そして、その焼成した固形分を粉砕し、粉砕物に対して3.0質量%のチタネートカップリング剤を添加して、カップリング処理を施した。このようにして得られた粒子を、無機微粒子P1とした。なお、無機微粒子P1は、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子であり、具体的には、酸化スズ及び酸化アンチモンが被着された無機微粒子であった。
【0115】
次に、得られた磁性トナー粒子2kgに対して、外添剤として、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製のREA200)とが0.5質量%と、前記無機微粒子P1が1質量%となるように添加し、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製)で、羽根速度30m/秒の条件で3分間混合した。そうすることによって、磁性1成分現像剤(磁性トナー:外添剤が外添された磁性トナー粒子)が得られた。
【0116】
(画像形成装置)
次に、モノクロプリンタ(京セラミタ株式会社製のLS−4020DN:磁性1成分現像方式の画像形成装置)を用い、その画像形成装置のトナー収容部に前記磁性1成分現像剤を収容した。このようにして得られた画像形成装置を用い、温度20〜23℃、相対湿度50〜65%RHの、常温常湿環境下で画像形成を行った。なお、モノクロプリンタ(京セラミタ株式会社製のLS−4020DN:磁性1成分現像方式の画像形成装置)には、表面がアルマイト処理された現像ローラを備え、感光体ドラムとして、アモルファスシリコン感光体を備えている。
【0117】
その際、まず、トナー収容部354に収容するトナーを、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のRIX2100)で分析して得られた、鉄に基づくピークと、アンチモンに基づくピークとの強度比から、鉄に対するアンチモンの比率を算出した。この結果、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Aは、0.10%であった。
【0118】
次に、まず、上記のようにして得られた画像形成装置を用いて、温度20〜23℃、相対湿度50〜65%RHの、常温常湿環境下で画像形成を行った。具体的には、まず、画像形成装置の電源を入れて安定させた。その後、印字率5%の画像を1万枚連続で印字した。その後、クリーニング装置306によって除去され、トナー回収ボトル(廃トナーボックス)に回収されたトナーを、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のRIX2100)で分析して得られた、鉄に基づくピークと、アンチモンに基づくピークとの強度比から、鉄に対するアンチモンの比率を算出した。クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bは、0.20%であった。
【0119】
これらから、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Aに対する、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bの割合、すなわちB/Aが、2.0であった。
【0120】
[実施例2]
前記無機微粒子P1の代わりに、以下のように製造した無機微粒子P2を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0121】
また、無機微粒子P2の製造は、懸濁液に、塩化スズ10gと塩化アンチモン10gとを2N−希塩酸50mlに溶解させた溶液を添加し、これらを混合する際の、混合液のpHを3〜4になるように調整したこと以外、無機微粒子P1と同様に製造した。
【0122】
また、実施例1と同様の方法で、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Aを算出した結果、比率Aは、0.12%であった。また、実施例1と同様の方法で、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bを算出した結果、比率Bは、0.37%であった。これらから、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Aに対する、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bの割合、すなわちB/Aが、約3.1であった。
【0123】
[比較例1]
前記無機微粒子P1の代わりに、以下のように製造した無機微粒子P3を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0124】
また、無機微粒子P3の製造は、懸濁液に、塩化スズ10gと塩化アンチモン10gとを2N−希塩酸50mlに溶解させた溶液を添加し、これらを混合する際の、混合液のpHを1.5〜2.5になるように調整したこと以外、無機微粒子P1と同様に製造した。
【0125】
また、実施例1と同様の方法で、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Aを算出した結果、比率Aは、0.08%であった。また、実施例1と同様の方法で、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bを算出した結果、比率Bは、0.09%であった。これらから、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Aに対する、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bの割合、すなわちB/Aが、約1.1であった。
【0126】
[比較例2]
前記無機微粒子P1の代わりに、以下のように製造した無機微粒子P4を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0127】
また、無機微粒子P4の製造は、懸濁液に、塩化スズ10gと塩化アンチモン10gとを2N−希塩酸50mlに溶解させた溶液を添加する代わりに、塩化スズ5gと塩化アンチモン1.5gとを2N−希塩酸50mlに溶解させた溶液を添加すること以外、無機微粒子P1と同様に製造した。
【0128】
また、実施例1と同様の方法で、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Aを算出した結果、比率Aは、0.08%であった。また、実施例1と同様の方法で、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bを算出した結果、比率Bは、0.12%であった。これらから、トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Aに対する、クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率Bの割合、すなわちB/Aが、1.5であった。
【0129】
(現像メモリ)
実施例1〜4に係る画像形成装置を用いて、温度20〜23℃、相対湿度50〜65%RHの、常温常湿環境下で画像形成を行った。具体的には、まず、画像形成装置の電源を入れて安定させた。その後、印字率5%の画像を1万枚連続で印字した。
【0130】
得られた画像を目視で確認し、1万枚目に印字した画像であっても、現像メモリ現象の発生が確認できなければ、「◎」と評価し、1万枚目に印字した画像には、現像メモリ現象の発生が確認できるが、5千枚目までであれば、現像メモリ現象の発生が確認できなければ、「○」と評価し、5千枚目に印字した画像であっても、現像メモリ現象の発生が確認できる場合は、「×」と評価した。
【0131】
その結果、実施例1に係る画像形成装置の場合、「○」と評価され、実施例2に係る画像形成装置の場合、「◎」と評価された。これに対して、比較例1及び比較例2に係る画像形成装置の場合、「×」と評価された。
【0132】
このことから、B/Aが2以上である画像形成装置を用いた場合(実施例1及び実施例2)は、B/Aが2未満である画像形成装置を用いた場合(比較例1及び比較例2)と比較して、表面がアルマイト処理された現像ローラを備えたものであっても、長期間にわたって、現像メモリ現象の発生を抑制できたことがわかった。
【0133】
さらに、B/Aが3以上である画像形成装置を用いた場合(実施例2)は、1万枚以上連続で印字した場合であっても、現像メモリ現象の発生を抑制できたことがわかった。
【符号の説明】
【0134】
10 現像装置
13 回転スリーブ
14 トナー担持体(現像ローラ)
15 固定磁石
16 ブレード
60 画像形成装置
100 用紙搬送部
115 用紙
200 給紙部
300 画像形成部
301 感光体ドラム
302 帯電装置
303 露光装置
305 転写装置
306 クリーニング装置
307 除電装置
354 トナー収容部
400 定着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送するトナー担持体を備え、前記トナー担持体によって搬送されたトナーによって、前記像担持体上に形成される静電潜像を現像させて、前記像担持体上にトナー像を形成する現像装置と、
前記現像装置によって形成されたトナー像を、被転写材に転写する転写装置と、
転写後、前記像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング装置とを備え、
前記トナー担持体が、表面がアルマイト処理されたものであり、
前記トナーが、結着樹脂及び鉄含有磁性粉を少なくとも含む磁性トナー粒子と、前記磁性トナー粒子に外添される外添剤とを含む磁性1成分現像剤であり、
前記外添剤が、スズを含む化合物及びアンチモンを含む化合物で表面処理された無機微粒子であり、
前記トナー担持体で搬送される前のトナーの、鉄に対するアンチモンの比率に対して、前記クリーニング装置で除去されたトナーの、鉄に対するアンチモンの比率が2倍以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記無機微粒子が、酸化チタン粒子である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体が、アモルファスシリコン感光体である請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−68334(P2012−68334A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211513(P2010−211513)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】