説明

画像表示装置

【課題】ラスター走査における主走査方向の歪みを簡易に補正できる画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、互いに直交する第1軸および第2軸の回りにミラー部(可動部)を揺動させる第1および第2のアクチュエータを備え、ミラー部の揺動振動に関する共振周波数近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき第1のアクチュエータを駆動して第1軸回りにミラー部を揺動振動させることにより、ミラー部で反射される光線をラスター走査に係る水平方向に走査する。そして、駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき第1のアクチュエータを駆動してミラー部を揺動振動させた場合に生じる表示画像の歪みに関して、この歪みを補正するための補正信号(b)に基づき基準駆動信号(a)を調製して駆動信号(c)を生成する。その結果、水平方向(主走査方向)の歪みを簡易に補正できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光等の光線を偏向・走査する光スキャナは、例えばバーコードリーダーやレーザープリンタ、ディスプレイ等の光学機器に利用されている。この光スキャナについては、多角柱ミラーをモータで回転させて反射光を走査するポリゴンミラーや、平面ミラーを電磁アクチュエータによって回転振動させるガルバノミラー等を有するものがある。しかし、このような光スキャナにおいては、ミラーをモータや電磁アクチュエータで駆動する機械的な駆動機構が必要であるが、その駆動機構はサイズが比較的大きく、また高価であることから、光スキャナの小型化を阻害するとともに高価格化を招くといった問題がある。
【0003】
そこで、光スキャナの小型化、低価格化および生産性の向上を図るために、半導体製造技術を応用したシリコンやガラスを微細加工するマイクロマシニング技術を用いてミラーや弾性梁等の構成部品が一体成形されたマイクロ光スキャナの開発が進んでいる。
【0004】
そして、上述の光スキャナを2組配置し、各々のミラーで反射される光線をラスター走査することにより投影面に2次元画像を表示させる画像表示装置がある。
【0005】
このような画像表示装置では、水平走査方向のミラーの揺動駆動におけるラスター走査の細り現象、いわゆるラスターピンチが生じるが、このラスターピンチは、表示画像についての垂直方向の歪みであるため、垂直走査に関する電気的な歪み補正を行って改善することが可能である(例えば特許文献1参照)。
【0006】
一方、上記の画像表示装置においては、走査線の軌跡が描く形状は予め定められたアスペクト比を持つ矩形(図12(b)参照)となるのが理想的であるが、使用している光学素子の特性や光線に対しての投影面の角度等により、上記の矩形が歪んでしまう場合(例えば図12(a)参照)がある。このようなラスター走査における水平走査方向(主走査方向)の歪みを補正する技術としては、例えば歪みを打ち消す光学特性を持った光学素子による歪み補正技術がある。
【0007】
【特許文献1】特表2003−513332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の歪み補正技術では、上述した光学素子を設ける必要があるため、その分、構成が複雑となって画像表示装置全体の大型化および高コスト化を招いてしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ラスター走査における主走査方向の歪みを簡易に補正できる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置であって、(a)所定の光源から発せられた光線を反射する反射面を有する可動部を、第1軸の回りに揺動させる第1のアクチュエータと、(b)前記可動部を、前記第1軸と略直角に交差する第2軸の回りに揺動させる第2のアクチュエータと、(c)前記可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき前記第1のアクチュエータを駆動して前記第1軸回りに前記可動部を揺動振動させることにより、前記反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る主走査方向に走査する主走査手段と、(d)前記第2のアクチュエータを駆動して前記第2軸回りに前記可動部を揺動させることにより、前記反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る副走査方向に走査する副走査手段とを備え、前記主走査手段は、(c-1)前記駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき前記第1のアクチュエータを駆動して前記可動部を揺動振動させた場合に生じる前記所定の投影面での表示画像の歪みに関して、前記歪みを補正するための補正信号を生成する補正信号生成手段と、(c-2)前記補正信号に基づき前記基準駆動信号を調製し、前記駆動信号を生成する調製手段とを有する。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る画像表示装置において、前記補正信号の周波数成分に関して支配的な周波数帯域fcは、前記共振周波数をfomとし、前記共振周波数に係る共振特性の品質係数をQとすると、fc≒fom/(2Q)、またはfc<fom/(2Q)を満たしている。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る画像表示装置において、前記補正信号の周波数成分に関して支配的な周波数帯域fcは、前記第1のアクチュエータを駆動する駆動回路の電気特性と前記可動部の揺動振動に係る機械特性とを合成した周波数特性において規定される所定の周波数通過帯域をfaとすると、fc≒fa/2、またはfc<fa/2を満たしている。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係る画像表示装置において、前記第1のアクチュエータおよび/または前記第2のアクチュエータは、圧電アクチュエータを含んでいるとともに、前記圧電アクチュエータを駆動する駆動回路は、少なくとも1の受動素子を有し、前記少なくとも1の受動素子と前記圧電アクチュエータの電気特性とにより前記共振周波数に略等しい共振周波数を有する共振回路として構成されている。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る画像表示装置において、前記1の受動素子は、インダクタンス素子である。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明に係る画像表示装置において、前記副走査手段では、前記所定の投影面への画像表示を行う表示期間の走査と、前記画像表示を行わない非表示期間の走査とが繰り返されるとともに、前記補正信号生成手段は、前記非表示期間の走査から前記表示期間の走査への切替えの際に生じる過渡的な応答を前記非表示期間内に収束させる特定の信号を含んだ補正信号を生成する手段を有する。
【0016】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明に係る画像表示装置において、前記特定の信号により、前記表示期間における応答が前記表示期間の開始時点から前記駆動信号に追従する。
【0017】
また、請求項8の発明は、光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置であって、(a)所定の光源から発せられた光線を反射する第1の反射面を有する第1可動部を、第1軸の回りに揺動させる第1のアクチュエータと、(b)前記第1の反射面で反射された光線を反射する第2の反射面を有する第2可動部を、第2軸の回りに揺動させる第2のアクチュエータと、(c)前記第1可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき前記第1のアクチュエータを駆動して前記第1軸回りに前記第1可動部を揺動振動させることにより、前記第1の反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る主走査方向に走査する主走査手段と、(d)前記第2のアクチュエータを駆動して前記第2軸回りに前記第2可動部を揺動させることにより、前記第2の反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る副走査方向に走査する副走査手段とを備え、前記主走査手段は、(c-1)前記駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき前記第1のアクチュエータを駆動して前記第1可動部を揺動振動させた場合に生じる前記所定の投影面での表示画像の歪みに関して、前記歪みを補正するための補正信号を生成する補正信号生成手段と、(c-2)前記補正信号に基づき前記基準駆動信号を調製し、前記駆動信号を生成する調製手段とを有する。
【0018】
また、請求項9の発明は、光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置であって、(a)所定の光源から発せられた光線を反射する第1の反射面を有する第1可動部を、第1軸の回りに揺動させる第1のアクチュエータと、(b)前記第1の反射面で反射された光線を反射する第2の反射面を有する第2可動部を、第2軸の回りに揺動させる第2のアクチュエータと、(c)前記第2可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき前記第2のアクチュエータを駆動して前記第2軸回りに前記第2可動部を揺動振動させることにより、前記第2の反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る主走査方向に走査する主走査手段と、(d)前記第1のアクチュエータを駆動して前記第1軸回りに前記第1可動部を揺動させることにより、前記第1の反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る副走査方向に走査する副走査手段とを備え、前記主走査手段は、(c-1)前記駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき前記第2のアクチュエータを駆動して前記第2可動部を揺動振動させた場合に生じる前記所定の投影面での表示画像の歪みに関して、前記歪みを補正するための補正信号を生成する補正信号生成手段と、(c-2)前記補正信号に基づき前記基準駆動信号を調製し、前記駆動信号を生成する調製手段とを有する。
【0019】
また、請求項10の発明は、光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置であって、(a)所定の光源から発せられた光線を反射する反射面を有する可動部を第1軸の回りに揺動させる第1揺動手段と、前記可動部を前記第1軸と略直角に交差する第2軸の回りに揺動させる第2揺動手段とを有するアクチュエータ部と、(b)前記可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき前記第1揺動手段を用いて前記第1軸回りに前記可動部を揺動振動させることにより、前記反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る主走査方向に走査する主走査手段と、(c)前記第2揺動手段を用いて前記第2軸回りに前記可動部を揺動させることにより、前記反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る副走査方向に走査する副走査手段とを備え、前記主走査手段は、(b-1)前記駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき前記第1揺動手段を用いて前記可動部を揺動振動させた場合に生じる前記所定の投影面での表示画像の歪みに関して、前記歪みを補正するための補正信号を生成する補正信号生成手段と、(b-2)前記補正信号に基づき前記基準駆動信号を調製し、前記駆動信号を生成する調製手段とを有する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1から請求項7の発明によれば、可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき第1のアクチュエータを駆動して第1軸回りに可動部を揺動振動させることにより、可動部の反射面で反射される光線をラスター走査に係る主走査方向に走査する。そして、駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき第1のアクチュエータを駆動して可動部を揺動振動させた場合に生じる所定の投影面での表示画像の歪みに関して、この歪みを補正するための補正信号を生成するとともに、補正信号に基づき基準駆動信号を調製して駆動信号を生成する。その結果、ラスター走査における主走査方向の歪みを簡易に補正できる。
【0021】
特に、請求項2の発明においては、補正信号の周波数成分に関して支配的な周波数帯域fcは、共振周波数をfomとし共振周波数に係る共振特性の品質係数をQとすると、fc≒fom/(2Q)またはfc<fom/(2Q)を満たしているため、主走査方向の歪みを精度良く補正できる。
【0022】
また、請求項3の発明においては、補正信号の周波数成分に関して支配的な周波数帯域fcは、第1のアクチュエータを駆動する駆動回路の電気特性と可動部の揺動振動に係る機械特性とを合成した周波数特性において規定される所定の周波数通過帯域をfaとすると、fc≒fa/2またはfc<fa/2を満たしているため、主走査方向の歪みを精度良く補正できる。
【0023】
また、請求項4の発明においては、圧電アクチュエータを駆動する駆動回路は、少なくとも1の受動素子を有し、この少なくとも1の受動素子と圧電アクチュエータの電気特性とにより共振周波数に略等しい共振周波数を有する共振回路として構成されているため、共振周波数による可動部の揺動振動を簡易に行える。
【0024】
また、請求項5の発明においては、1の受動素子がインダクタンス素子であるため、共振回路を簡易に構成できる。
【0025】
また、請求項6の発明においては、ラスター走査に係る副走査では、所定の投影面への画像表示を行う表示期間の走査と画像表示を行わない非表示期間の走査とが繰り返されるとともに、非表示期間の走査から表示期間の走査への切替えの際に生じる過渡的な応答を非表示期間内に収束させる特定の信号を含んだ補正信号を生成するため、非表示期間の終了までに応答が駆動信号(目標値)にセトリングできる。
【0026】
また、請求項7の発明においては、特定の信号により表示期間における応答が表示期間の開始時点から駆動信号に追従するため、表示期間において適切な画像表示を行える。
【0027】
また、請求項8の発明によれば、第1可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき第1軸回りに第1可動部を揺動振動させることにより、第1可動部の第1の反射面で反射される光線をラスター走査に係る主走査方向に走査する。そして、駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき第1軸回りに第1可動部を揺動振動させた場合に生じる所定の投影面での表示画像の歪みに関して、この歪みを補正するための補正信号を生成するとともに、補正信号に基づき基準駆動信号を調製して駆動信号を生成する。その結果、ラスター走査における主走査方向の歪みを簡易に補正できる。
【0028】
また、請求項9の発明によれば、第2可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき第2軸回りに第2可動部を揺動振動させることにより、第2可動部の第2の反射面で反射される光線をラスター走査に係る主走査方向に走査する。そして、駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき第2軸回りに第2可動部を揺動振動させた場合に生じる所定の投影面での表示画像の歪みに関して、この歪みを補正するための補正信号を生成するとともに、補正信号に基づき基準駆動信号を調製して駆動信号を生成する。その結果、ラスター走査における主走査方向の歪みを簡易に補正できる。
【0029】
また、請求項10の発明によれば、可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき第1軸回りに可動部を揺動振動させることにより、可動部の反射面で反射される光線をラスター走査に係る主走査方向に走査する。そして、駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき第1軸回りに可動部を揺動振動させた場合に生じる所定の投影面での表示画像の歪みに関して、この歪みを補正するための補正信号を生成するとともに、補正信号に基づき基準駆動信号を調製して駆動信号を生成する。その結果、ラスター走査における主走査方向の歪みを簡易に補正できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
<第1実施形態>
<画像表示装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置100Aの外観を示す図である。
【0031】
画像表示装置100Aは、箱型の形状を有しており、スクリーン9に映像(画像)を投影するプロジェクタ装置として構成されている。この画像表示装置100Aでは、投影面であるスクリーン9に向けて照射される光線のラスター走査RSを行うことにより、スクリーン9への2次元画像の表示が可能となっている。このラスター走査RSでは、例えば表示画像の上端における開始位置Qaから、表示画像の下端における終了位置Qbまで光線が連続的に走査されることで、1回の画像表示が完了することとなる。
【0032】
画像表示装置100Aの内部には、図2に示す光スキャナ1と、光スキャナ1に向けて光線(例えばレーザ光)LTを発する光源50とが設けられている。
【0033】
光スキャナ1は、Y軸に平行な第1軸Ayと、X軸に平行で第1軸Ayと略直角に交差する第2軸Axとを中心とした回動が可能なミラー部11を備えている。このミラー部11が第1軸Ayおよび第2軸Axにおいて2次元的に回動することにより、ミラー部11で反射された光源50からの光線LTをラスター走査RSすることができる。光スキャナ1の具体的な構成については、後で詳述する。
【0034】
図3は、画像表示装置100Aの機能構成を示すブロック図である。
【0035】
画像表示装置100Aは、上述した光スキャナ1および光源50を備えるとともに、光スキャナ1の駆動制御を行う光スキャナ制御部6と、光源50を駆動する光源駆動回路51と、光源駆動回路51を制御する画像信号制御部52とを有している。
【0036】
光スキャナ制御部6は、ミラー部11に関する第1軸Ay(図2)回りの回動、つまり水平方向の駆動を制御する水平駆動制御部6aと、ミラー部11に関する第2軸Ax(図2)回りの回動、つまり垂直方向の駆動を制御する垂直駆動制御部6bとを有している。なお、水平駆動制御部6aについては、後で詳述する。
【0037】
画像信号制御部52は、例えば画像表示装置100Aの外部から入力された画像信号に基づき光源50を制御するための制御信号を生成する。そして、この制御信号に基づき光源駆動回路51を介して光源50の制御(例えば点灯・消灯の制御や発光強度の制御)を行うことにより、入力された画像信号に基づく適切な画像表示がスクリーン9で行える。
【0038】
また、画像表示装置100Aは、第1軸Ay(図2)を中心に揺動するミラー部11の角度を検出する角度検出部55と、角度検出部55で検出された角度に基づきミラー部11の揺動振動に関する共振点(共振周波数)を検出する共振点検出部56とを備えている。
【0039】
角度検出部55は、例えばトーションバー(後述)に貼付された圧電素子などの変位角検出センサからの出力信号に基づき、Y軸方向の第1軸Ay回りに関するミラー部11の変位角の検出を行う。
【0040】
以下では、光スキャナ1の要部構成を説明する。
【0041】
<光スキャナ1の要部構成>
図4は、光スキャナ1の要部構成を示す平面図である。また、図5は、図4のV−V位置から見た断面図である。
【0042】
光スキャナ1は、「ロ」字状の板状部材として構成され不図示の筐体等に固定されているフレーム部10と、フレーム部10に内包されミラー部11を弾性的に保持する「ロ」字状の保持部材12とを備えている。また、光スキャナ1では、弾性変形を行うトーションバー部13、14により、保持部材12が加振部2を介してフレーム10に連結するとともに、ミラー部11が保持部材12に連結する。
【0043】
ミラー部11は、円板状の形状を有しており、その表面Saおよび裏面Sbは、光源50から発せられた光線LTを反射する反射面として機能する。すなわち、ミラー部11の表面Saおよび裏面Sbには、例えば金やAl(アルミニウム)等の金属薄膜による反射膜が形成されており、入射光線の反射率を向上させる構成となっている。
【0044】
トーションバー部13は、Y軸と平行なミラー部11の第1軸Ayに沿って保持部材12から加振部2まで伸びている2つのトーションバー13a、13bからなっている。このようなトーションバー部13により、ミラー部11を保持する保持部材12は、加振部2に対して弾性的に支持されることとなる。
【0045】
同様にトーションバー部14についても、X軸と平行なミラー部11の第2軸Axに沿ってミラー部11の両端部から保持部材12まで伸びている2つのトーションバー14a、14bからなっている。
【0046】
加振部2は、トーションバー13aに接続する板状部材としての曲がり梁21、22と、トーションバー13bに接続する板状部材としての曲がり梁23、24とを有している。これらの曲がり梁21〜24、フレーム部10、ミラー部11、保持部材12、および各トーションバー13a、13b、14a、14bについては、例えばシリコン基板の異方性エッチングにより一体的に形成されている。
【0047】
また、加振部2は、曲がり梁21〜24の各上面に例えば接着剤によって貼付されている電気−機械変換素子としての圧電素子31〜34を備えている。この圧電素子31〜34は、ミラー部11を第1軸Ayの回りに揺動させる圧電振動子(圧電アクチュエータ)として構成されており、各圧電素子31〜34と各曲がり梁21〜24とによって4つのユニモルフ部Ua〜Udが形成される。
【0048】
また、圧電素子31〜34それぞれは、表面および裏面に上部電極Euおよび下部電極Edが設けられている(図5)。そして、圧電素子31〜34の上部電極Euには、それぞれフレーム部10に設けられた電極パッド31u〜34uが例えばワイヤを介して電気的に接続されているとともに、圧電素子31〜34の下部電極Edには、それぞれフレーム部10に設けられた電極パッド31d〜34dが例えばワイヤを介して電気的に接続されている。このような電極パッドを介して光スキャナ1の外部から圧電素子31〜34それぞれに駆動電圧を印加できることとなる。
【0049】
以上のような光スキャナ1の構成により、電極パッド31u〜34u、31d〜34dを介して圧電素子31〜34に駆動電圧を印加することで曲がり梁21〜24において曲げ変形が生じることとなる。このように曲がり梁21〜24で曲がりが生じることにより、トーションバー13a、13bおよび保持部材12を介しミラー部11に対して第1軸Ay回りに回転トルクが与えられ、可動部として働くミラー部11を第1軸Ayを中心に揺動振動を行わせることが可能となる。このミラー部11の揺動振動動作について、詳しく説明する。
【0050】
図6は、ミラー部11の揺動振動動作を説明するための図である。ここで、図6(a)および図6(b)は、図4のV−V位置から見た断面を示す図5に対応している。なお、図6(a)および図6(b)においては、説明の便宜上、保持部材12の図示を省略している。
【0051】
光スキャナ1においては、圧電素子31〜34に対して上部電極Euと下部電極Edとの間に分極反転が生じない範囲の交流電圧を印加することにより、圧電素子31〜34は伸縮し、ユニモルフ的に厚み方向に変位することとなる。
【0052】
そこで、圧電素子31に対して長手方向(X軸方向)に伸長させる駆動電圧を印加するとともに、この駆動電圧と逆位相の駆動電圧を圧電素子32に印加して圧電素子32を収縮させることにより、一端がフレーム部10に連結するユニモルフ部Ua、Ubにおいて、図6(a)に示すように曲がり梁21を下方に湾曲させる一方、曲がり梁22を上方に湾曲させる。同様に、圧電素子33および圧電素子34に対しても、圧電素子31および圧電素子32それぞれと同位相の駆動電圧を印加することにより、曲がり梁23を下方に湾曲させる一方、曲がり梁24を上方に湾曲させる。これにより、トーションバー13a、13bを介しミラー部11において第1軸Ay回りの回転トルクが生じるため、図6(a)に示すようにミラー部11は第1軸Ayを中心として方向Daに傾くこととなる。
【0053】
また、圧電素子32に対して長手方向(X軸方向)に伸長させる駆動電圧を印加するとともに、この駆動電圧と逆位相の駆動電圧を圧電素子31に印加して圧電素子31を収縮させることにより、一端がフレーム部10に連結するユニモルフ部Ua、Ubにおいて、図6(b)に示すように曲がり梁21を上方に湾曲させる一方、曲がり梁22を下方に湾曲させる。同様に、圧電素子33および圧電素子34に対しても、圧電素子31および圧電素子32それぞれと同位相の駆動電圧を印加することにより、曲がり梁23を上方に湾曲させる一方、曲がり梁24を下方に湾曲させる。これにより、トーションバー13a、13bを介しミラー部11において第1軸Ay回りの回転トルクが生じるため、図6(b)に示すようにミラー部11は第1軸Ayを中心として回動方向Dbに傾斜することとなる。
【0054】
このようにミラー部11を方向Da(図6(a))および方向Db(図6(b))に回動させる交流の駆動電圧を圧電素子31〜34に印加するようにすれば、この印加電圧に追従した上下方向の振動がユニモルフ部Ua〜Udで繰り返されるため、トーションバー13a、13bにシーソー的な回転トルクが生じ、保持部材12を介してミラー部11は所定の角度範囲で揺動振動することとなる。すなわち、圧電素子31〜34を駆動して第1軸Ay回りにミラー部11を揺動振動させることにより、ミラー部11の反射面で反射される光線LTをラスター走査RS(図2)に係る水平方向(主走査方向)に走査できる。
【0055】
ここで、ミラー部11の揺動角度が小さい場合には、圧電素子31〜34に印可する交流電圧の周波数を、光スキャナ1に関する機械振動系の共振周波数に設定することにより、ミラー部11が共振振動されるため、光スキャナ1として大きな偏向角度(光走査角度)が得られるようになる。
【0056】
また、図4に示すように、光スキャナ1には圧電素子31〜34に対応する4つの圧電素子(圧電アクチュエータ)35〜38が保持部材12上に設けられており、これにより上述した第1軸Ayと同様に第2軸Axの回りにミラー部11を揺動させることが可能である。すなわち、保持部材12上の圧電素子35〜38を駆動して第2軸Ax回りにミラー部11を揺動させることにより、ミラー部11の反射面で反射される光線をラスター走査RS(図1)に係る垂直方向(副走査方向)に走査できる。このようにミラー部11を第2軸Axの回りに揺動させる手段(第2揺動手段)として機能する圧電素子35〜38と、上述のようにミラー部11を第1軸Ayの回りに揺動させる手段(第1揺動手段)として機能する圧電素子31〜34とにより、光線のラスター走査RSに必要なアクチュエータ部が構成されることとなる。
【0057】
以下では、光スキャナ1のミラー部11を、その機械共振に関する共振周波数で水平方向(第1軸Ayの回り)に駆動する水平駆動系について以下で説明する。
【0058】
<水平駆動系について>
図7は、光スキャナ1を水平方向に駆動する水平駆動系40を説明するための図である。
【0059】
水平駆動系40は、光スキャナ1における圧電素子31〜34を合成結合した圧電素子30と、圧電素子31〜34に駆動電圧を印加し光スキャナ1のミラー部11を水平方向に駆動するための水平駆動回路61(後述)を等価変換した電圧電源41およびインダクタ42とを備えている。そして、圧電素子30は、インダクタンス値Laを有するインダクタ42を通じて電圧電源41により駆動される。
【0060】
図8は、水平駆動系40に関する各機械要素を電気素子に等価変換した等価回路30cを示す図である。この等価回路30cは、光スキャナ1における圧電素子31〜34を合成結合した圧電素子30(図7)の両端Pa、Pbから見た回路である。
【0061】
コンデンサ43は、圧電素子30の静電容量を表しており、圧電素子31〜34を形成する誘電体の誘電率および形状から決定される容量値Caを有している。
【0062】
コンデンサ471は、圧電素子31〜34の弾性と、圧電素子31〜34が貼付される曲がり梁21〜24の弾性とを合成して決定されるバネの等価素子である。このコンデンサ471の容量値Cpは、バネ定数の逆数となっている。
【0063】
インダクタ472は、圧電素子31〜34の質量と曲がり梁21〜24の質量とを合成して決定される等価素子であり、インダクタンス値Lpを有している。
【0064】
抵抗473は、圧電素子31〜34および曲がり梁21〜24の加振振動に関する内部損失を表す等価素子であり、抵抗値Rpを有している。
【0065】
以上のコンデンサ471、インダクタ472および抵抗473によって直列共振回路Wpが形成されることとなる。
【0066】
コンデンサ481は、トーションバー12a、12bに関するバネの等価素子であり、容量値Cmを有している。
【0067】
インダクタ482は、ミラー部11および保持部材12の慣性モーメントに対応した等価素子であり、インダクタンス値Lmを有している。ここで、インダクタ482を流れる電流Imは、ミラー部11の揺動振動に関する角速度に対応している。
【0068】
抵抗483は、コンデンサ481とインダクタ482とを含んで構成される共振回路での損失を表す等価素子であり、主にミラー部11の揺動振動による空気との摩擦損失を表している。
【0069】
以上のような等価回路30cにおいては、等価回路30cの両端Pa、Pbに印加された電圧(回転トルクに対応)が、上述の直列共振回路Wpと、コンデンサ481、インダクタ482および抵抗483で構成される並列共振回路Wmとで分圧されてインダクタ482にミラー部11の角速度ωに対応した電流Imが流れることとなる。
【0070】
次に、等価回路30cの動作について説明する。
【0071】
図9は、等価回路30cに関する周波数特性を説明するための図であり、等価回路30cに係るリアクタンスXと周波数fとの関係を示している。なお、図9では、直列共振回路Wpおよび並列共振回路Wmの損失を無視した場合(十分に高いQ値)の周波数特性を表している。
【0072】
リアクタンスXの周波数特性について、以下で考察する。なお、ユニモルフ部Ua〜Udに対応する直列共振回路Wpの共振周波数fopは、通常、ミラー部11に関連した並列共振回路Wmの共振周波数frmよりも十分に高く設定されているため、並列共振回路Wmに関する共振周波数frm付近の周波数特性を考察する場合には、直列共振回路Wpのインダクタ472を省略して考える。同様に、直列共振回路Wpに関する共振周波数fop付近の周波数特性を考察する場合には、並列共振回路Wmのインダクタ482を省略して考える。
【0073】
図9に示される各周波数fo1、fr1、frm、fop、fo2、fr2は、次の式(1)〜(6)で算出される。
【0074】
【数1】

【0075】
【数2】

【0076】
【数3】

【0077】
【数4】

【0078】
【数5】

【0079】
【数6】

【0080】
ここで、上記の周波数fo1では、ミラー部11に関連した並列共振回路Wmがインダクタンス性(L性)となってコンデンサ471との間で直列共振が生じるため、並列共振回路Wmの両端には大きい共振電圧が発生し、インダクタ482に大きな共振電流Imが流れることとなる。すなわち、後述する機械共振周波数fomに相当する周波数fo1においては、ミラー部11の揺動振動について比較的大きな角速度が生じる。
【0081】
これが、水平方向に関するミラー部11の機械共振動作(直列共振動作)である。換言すれば、各素子(コンデンサ471、インダクタ472、抵抗473、コンデンサ481、インダクタ482および抵抗483)は、周波数fo1に対応した機械共振周波数fomの機械直列共振素子であるとも言える。
【0082】
そして、インダクタ42(図7)とコンデンサ43(図8)とで構成される直列共振回路において、その共振周波数が機械共振周波数fomに合致するように、インダクタ(インダクタンス素子)42のインダクタンス値Laが設定されている。換言すれば、圧電素子31〜34を駆動する水平駆動回路61(後述)は、少なくとも1つの受動素子、例えばインダクタンス素子43を有し、このインダクタンス素子43と圧電素子31〜34の静電容量(電気特性)とにより機械共振周波数fomに略等しい共振周波数を有する直列共振回路として構成されている。
【0083】
次に、以上のような水平駆動系40を制御するための水平駆動制御部6aの構成および動作を説明する。
【0084】
<水平駆動制御部6aについて>
図10は、水平駆動制御部6aの要部構成を示すブロック図である。
【0085】
水平駆動制御部6aは、圧電素子31〜34に電圧印加を行って光スキャナ1を水平方向(第1軸Ayの回り)に駆動する水平駆動回路61を備えるとともに、駆動信号発生部62と、補正信号発生部63と、掛算部64とを有している。
【0086】
駆動信号発生部62は、光スキャナ1の水平方向の駆動について、例えば図11(a)に示すような単振動の基準駆動信号を出力する。この基準駆動信号は、ミラー部11の揺動振動に関する機械共振周波数fomの近傍の周波数成分を有する信号として構成されている。これにより、ミラー部11を第1軸Ay回りに共振振動できることとなる。
【0087】
補正信号発生部63は、図2に示すラスター走査RSにおいて垂直方向の位置に依存した水平方向の振幅に関する歪み(以下では「ラスター走査水平歪み」ともいう)を補正するための補正信号を出力する。ここで、光学系の設計上、ラスター走査水平歪みの状態が予め把握されていれば、この歪みをキャンセルする補正信号の生成は可能である。例えば等間隔のクロスハッチパターン(格子状のパターン)をスクリーン9(図1)に表示させたい場合に、図12(a)のように表示画像が下に行くほど横幅が徐々に小さくなるという歪みが生じるときには、図11(b)に示すようにラスター走査RSに係る画像表示期間Taにおいて時間tの経過とともに徐々に出力を上昇させる補正信号WHを補正信号発生部63で生成すれば、図12(b)に示す正常な等間隔クロスハッチパターンを表示させることが可能となる。
【0088】
この補正信号発生部63から出力された補正信号WHは、掛算部64で駆動信号発生部62からの基準駆動信号に乗算され、図11(c)に示すような駆動信号WFが水平駆動回路61に入力される。例えば、図11(a)の基準駆動信号と図11(b)の補正信号WHとが掛算部64で掛け合わされて、振幅変調(AM変調)された駆動信号WFが生成される。この駆動信号WFは、図11(b)に示す補正信号WHの波形を時間軸tに関して上下対称に配置したエンベロープ(包絡線)ENを有している。具体的には、駆動信号WFにおいては、ラスラー走査RSによってスクリーン9に画像表示する画像表示期間Taの振幅が時間tの経過とともに徐々に大きくなる一方、画像表示を行わずラスター走査RSの終了位置Qbから開始位置Qa(図1)に光線を垂直方向(下から上)に復帰させる垂直ブランキング期間Tbの振幅が時間tの経過とともに小さくなる。
【0089】
このような駆動信号WFでは、画像表示期間Taにおいて振幅が徐々に大きくなるが、これによりラスター走査RSにおいて表示画像の下部の横幅を上部に対して拡げることが可能となる。その結果、図12(a)に示す画像歪み(ラスター走査水平歪み)が生じる場合でも図12(b)に示す正常な表示状態に補正できることとなる。
【0090】
以上のように駆動信号として標準的に用いられる基準駆動信号(図11(a))に基づき圧電素子31〜34を駆動してミラー部11を揺動振動させた場合に生じるスクリーン9での表示画像の歪みに関して、この歪みを補正するための補正信号WH(図11(b))を補正信号発生部63で生成するとともに、この補正信号に基づき基準駆動信号を調製して駆動信号WF(図11(c))を生成することにより、ラスター走査における水平方向の歪みを簡易に補正できる。
【0091】
次に、図11(c)に示すような駆動信号WFに基づき水平駆動制御部6aから光スキャナ1に電圧印加する場合の水平駆動系40の動作について考察する。
【0092】
図11(b)の補正信号WHをフーリエ展開すると、画像表示期間Taと垂直ブランキング期間Tbとの合計時間(1周期)の逆数に相当する垂直同期周波数(以下では「基本周波数」ともいう)fvと、この基本周波数fvの倍数となる高調波群と、直流成分とからなるスペクトルが得られる(図13)。なお、補正信号においては、基本周波数fvに関するn次高調波(n・fv)までの周波数成分が支配的であるとし、この支配的な周波数域をfc(=n・fv)とする。
【0093】
一方、光スキャナ1におけるミラー部11の水平駆動においては、上述した機械共振周波数fomを有する機械共振系が形成されている。
【0094】
したがって、この機械共振系と上記の水平駆動制御部6aとからなる水平駆動系40では、補正信号WHに関するスペクトル(図13)が、図14に示すように機械共振周波数fomにピークを持つ機械共振特性Hmの影響を受けることとなる。具体的には、図13に示す補正信号WHのスペクトルは、水平駆動系40の全体において、図14に示すように機械共振周波数fomの上側波帯および下側波帯に図13の周波数帯域fcを有するものとして表される。そして、補正信号WHのスペクトルは、上・下側波帯において機械共振特性Hmによるフィルタリング(レベルの低下や除去)を受けるため、一種のバンドパスフィルタ(BPF)を通したように機械共振周波数fomから離れるほど振幅レベルの低下が大きくなって鈍った形となる。
【0095】
すなわち、駆動信号WFにおいては、ミラー部11に関する機械共振特性Hmの影響で補正信号WHに対応するエンベロープEN(図11(c))の変形を受けることとなり、図11(b)に示す補正信号WHによる意図したラスター走査水平歪みの補正が難しくなる。以下では、このエンベロープENの変形を抑制するための本実施形態の手法を説明する。
【0096】
画像表示装置100Aでは、機械共振特性Hmによる駆動信号WFのエンベロープENの変形を抑えるため、機械共振周波数fomの上・下側波帯において補正信号WHのスペクトルの状態が変化しないように側波帯でのレベルを略一定化させるようにする。
【0097】
機械共振特性Hmの品質係数Qについては、一般に機械共振周波数fomと(−3dB)通過周波数帯域fbを用いて、次の式(7)のように概算される。
【0098】
【数7】

【0099】
また、上述した側波帯におけるレベルの略一定化のため、上・下側波帯に相当する周波数帯域2fcを、上記の(−3dB)通過周波数帯域fbに収める必要がある。これを数式で表すと、次の式(8)のようになる。
【0100】
【数8】

【0101】
以上の式(7)および式(8)から、ミラー部11に関する機械共振周波数fomと、機械共振周波数fomに係る共振特性の品質係数Qと、補正信号WHの支配的な周波数帯域fcとの関係は、次の式(9)で表されることとなる。換言すれば、上述した側波帯におけるレベルの略一定化のためには、補正信号WHに係る周波数帯域fcが共振周波数fomと品質係数Qとを用いた次の式(9)の条件を満たす必要がある。
【0102】
【数9】

【0103】
なお、補正信号WHの支配的な周波数帯域fcについては、上述した側波帯におけるレベルの更なる一定化のためには、fc<fom/(2Q)の条件を満たしていても良い。
【0104】
ここで、上記の周波数帯域fcが比較的広い場合(例えば時間に対して急峻なラスター走査水平歪みの補正を必要とする場合等)には、上記の(−3dB)通過周波数帯域fbを拡大させる必要があるが、この周波数帯域fbを拡大させるには、上式(7)において機械共振周波数fomを増加させる、もしくは品質係数Qを減少させれば良い。しかし、画像信号の規格からほぼ決定されてしまう機械共振周波数fomの増加の自由度は少なく、また品質係数Qを減少させ過ぎると感度の低下や外乱等による機械共振の振動状態を招くこととなる。
【0105】
そこで、機械共振特性Hmに関する(−3dB)通過周波数帯域fbが比較的狭い場合には、水平駆動回路61の内部(または外部)に設けた補償回路(例えばバンド・パス・フィルタ(BPF))により、ミラー部11に関する機械共振特性Hmとの合成特性において(−3dB)通過周波数帯域が拡大するようにする。この場合、拡大された(−3dB)通過周波数帯域faと上・下側波帯2fcとの関係は、上式(8)に対応する次の式(10)に示される条件を満たす必要がある。換言すれば、補正信号WHの周波数成分に関して支配的な周波数帯域fcは、圧電素子31〜34を駆動する水平駆動回路61の電気特性とミラー部11の揺動振動に係る機械特性とを合成した周波数特性において規定される周波数通過帯域faを用いた次の式(10)の条件を満足させるようにする。
【0106】
【数10】

【0107】
なお、補正信号WHの支配的な周波数帯域fcについては、fc<fa/2の条件を満たしていても、上式(10)と同様の効果を奏することとなる。
【0108】
ところで、図7に示す水平駆動系40において電圧電源41の電圧印加により圧電素子30の両端Pa、Pbに発生する電圧(電位差)Vabの周波数特性については、直列共振回路Wp(図8)の特性(共振特性)により機械共振周波数fomで最大の電圧上昇(電圧電源41の印加電圧より高電圧)が生じるが、並列共振回路Wm(図8)の共振も同時に発生するためインピーダンスが低下する。これにより、図15(b)のような双峰特性となって比較的広い(−3dB)通過周波数帯域faが得られることとなる。なお、図15(a)は、電圧電源41による電圧印加時の電流(ミラー部11の角速度に対応)Im(図8)の共振周波数特性を示しており、比較的狭い(−3dB)通過周波数帯域fsとなっている。
【0109】
そして、図15(b)に示す双峰特性においては、(−3dB)通過周波数帯域frが、機械共振周波数fomを中心とした上・下側波帯の周波数帯域2fcにおいて可能な限りフラットな特性とするのが好ましい。また、図15(b)の双峰特性に関する群遅延特性(図15(c))もフラットな特性とするのが望ましい。
【0110】
このような双峰特性に関する特性の改善が必要な場合には、水平駆動回路61(図7)に対して調整用のコンデンサ44や抵抗45を並列に追加した水平駆動回路61A(図16)にて実現可能である。
【0111】
例えば、図16に示す水平駆動系40Aにおいてコンデンサ44の容量値Cbを調整することにより、次の式(11)に示す機械共振周波数fomを変化させられるため、(−3dB)通過周波数帯域faが上・下側波帯の周波数帯域2fcに適合するような特性に設定できる。
【0112】
【数11】

【0113】
また、例えば水平駆動系40A(図16)において抵抗45の抵抗値Rbを調整することにより、直列共振回路Wp(図8)の損失を変化させられるため、上記の双峰特性に関する振幅特性および群遅延特性を一層フラットな特性に改善できる。
【0114】
以上のような画像表示装置100Aの動作により、単純な単振動に係る基準駆動信号(図11(a))に基づき圧電素子31〜34を駆動してミラー部11を揺動振動させた場合に生じる表示画像の歪み(図12(a)参照)に関して、この歪みを補正するための補正信号WH(図11(b))を生成するとともに、補正信号WHに基づき基準駆動信号(図11(a))を調製して駆動信号WF(図11(c))を生成する。その結果、ラスター走査における水平方向(主走査方向)の歪みを簡易に補正できる。
【0115】
また、画像表示装置100Aでは、補正信号発生部63で生成する補正信号WHを変更することにより、ラスター走査水平歪みに関する歪み補正の微調整、走査歪の温度補償等による補正特性の変更や更新対応を簡易に行える。
【0116】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る画像表示装置100Bは、図1〜3に示す第1実施形態の画像表示装置100Aと類似の構成を有しているが、水平駆動制御部の構成が異なっている。
【0117】
すなわち、画像表示装置1Bの水平駆動制御部60aは、次で説明する動作を行うプログラム等が格納された構成を有してる。
【0118】
<水平駆動制御部60aの動作について>
一般に時定数が大きい共振特性を有する機械振動系においても同様であるが、画像表示装置100Bにおいて、駆動信号発生部62(図10)から図11(a)に示す単振動の駆動信号が出力されるとともに、補正信号発生部63から例えば図17(a)に示すステップ状の補正信号が出力される場合には、図17(b)に示すように機械振動系に関する機械時定数τの応答遅れを持つ光スキャナ1の光走査出力に係るエンベロープENaの応答が得られる。
【0119】
すなわち、図17(a)に示すステップ状の補正信号のように急激に変化する部分を有する補正信号が補正信号発生部63で生成された場合には、画像表示装置の機械振動系に関する光走査出力の応答が目標値に追従するまでの時間遅れが生じてしまう。画像表示装置100Bについて言えば、例えば図11(b)に示すように垂直ブランキング期間Tbから画像表示期間Taに移行する移行時には補正信号WHの急激な変化(不連続性)が生じるため、図18(a)に示すように補正信号WHに対して緩慢な光走査出力に係るエンベロープENbの期間Tcが生じる。すなわち、図18(a)の垂直ブランキング期間Tbから画像表示期間Taに移行しても一定の期間Tcは、機械振動系の応答としてのエンベロープENbが補正信号(目標値)にセトリングせず、画像表示期間Taの開始時点において目標値への追従性が悪い状態となる。このような状況を改善させるため画像表示装置100Bでは水平駆動制御部60aの動作に工夫が加えられているが、この手法について説明する。
【0120】
図19は、水平駆動制御部60aの動作を説明するための図である。
【0121】
画像表示装置100Bでは、水平駆動制御部60aの補正信号発生部63において、画像表示期間Taから垂直ブランキング期間Tbへの移行直後に光走査出力のエンベロープが急激に減衰するような調整用の信号を与えるようにする。具体的には、図19(a)に示すように垂直ブランキング期間Tbにおいて調整用の信号(以下では「調整信号」と略称する)Gaにより出力応答のエンベロープEaを次の画像表示期間Taの開始時点までに補正信号に追従させるようにし、次の画像表示期間Taの開始時点には目標値(補正信号)に滑らかに繋がるようにする。これにより、垂直ブランキング期間Tbの間に出力応答のエンベロープが目標値(補正信号)にセトリングし、補正信号による歪補正の効果が向上することとなる。
【0122】
すなわち、スクリーン9への画像表示を行う画像表示期間Taの走査と画像表示を行わない垂直ブランキング期間(非表示期間)Tbの走査とが繰り返されるラスター走査において、垂直ブランキング期間Tbの走査から画像表示期間Taの走査への切替えの際に生じる過渡的な応答を垂直ブランキング期間Tb内に収束させる調整信号(特定の信号)Gaを含んだ補正信号を補正信号発生部63で生成することにより、垂直ブランキング期間Tbの終了までに応答が駆動信号(目標値)にセトリングできる。
【0123】
なお、垂直ブランキング期間Tb内に与えられる調整信号としては、図19(a)に示すような調整信号Gaを採用するのは必須でなく、図19(b)に示す調整信号Gbや図19(c)に示す調整信号Gcを採用するようにしても良い。すなわち、図19(b)のように画像表示期間Taの終了直後から直ちに出力応答のエンベロープが急激に減衰するような調整信号Gbを与えてエンベロープEbが画像表示期間Taの開始時点から目標値(補正信号)に繋がるようにする。また、エンベロープの応答性が悪い場合には、図19(c)のように瞬間的に補正信号の出力をゼロに低下させる調整信号Gcを画像表示期間Taの終了直後から直ちに与えてエンベロープEcを次の画像表示期間Taの開始時点から目標値(補正信号)に繋がるようにする。なお、調整信号として瞬間的にゼロより小さい逆位相の信号を与えても良い。以上のような調整信号Gb、Gcにより、垂直ブランキング期間Tbの間に出力応答のエンベロープが目標値(補正信号)にセトリングし、補正信号による歪補正の効果が向上する。
【0124】
以上のような画像表示装置100Bの動作により、第1実施形態の画像処理装置100Aと同様の効果を奏する。さらに、画像表示装置100Bでは、画像表示期間Taの開始時点から駆動目標値に出力応答を追従させるための調整信号を垂直ブランキング期間Tbの補正信号に与える。このような調整信号により画像表示期間Taにおける光走査出力の応答が画像表示期間Taの開始時点から駆動信号(補正信号)に追従するため、画像表示期間Taにおいて適切な画像表示を行える。
【0125】
なお、画像表示装置100Bでは、画像表示期間Taにおいて時間tの経過とともに徐々に出力レベルを低下させる補正信号が補正信号発生部63で生成される場合にも、図18(b)に示すように補正信号に対して緩慢なエンベロープENbの期間Tcが生じることとなる。このような場合にも、上述した調整信号Ga〜Gcと同様に、図20(a)〜(c)に示す調整信号Gd〜Gfを与えるようにすれば良い。すなわち、図20(a)および図20(b)に示すように画像表示期間Taの終了直後から直ちに出力応答のエンベロープが急激に立ち上がるような調整信号Gd、Geを与えてエンベロープEd、Eeが画像表示期間Taの開始時点から目標値(補正信号)に繋がるようにする。また、エンベロープの応答性が悪い場合には、図20(c)のように瞬間的に補正信号の出力を急峻に上昇させる調整信号Gfを画像表示期間Taの終了直後から直ちに与えてエンベロープEfを次の画像表示期間Taの開始時点から目標値(補正信号)に繋がるようにする。以上のような調整信号Gd〜Gfにより、垂直ブランキング期間Tbの間に出力応答のエンベロープが目標値(補正信号)にセトリングし、補正信号による歪補正の効果が向上する。
【0126】
また、第1・第2実施形態の画像表示装置100A、100Bにおいては、図2に示す光スキャナ1を正面に対して90度回転させた姿勢、具体的には図21に示すような光スキャナ1の姿勢で光源50からの光線LTをラスター走査するようにしても良い。このような光スキャナ1(図21)により、ラスター走査RSにおいて垂直方向より高速駆動となる水平方向に関しての可動部の慣性モーメントを小さくできる。
【0127】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る画像表示装置100Cは、図1、3に示す第1・第2実施形態の画像表示装置100A、100Bと類似の構成を有しているが、光スキャナの構成が異なっている。
【0128】
<光スキャナの要部構成>
図22は、本発明の第3実施形態に係る光スキャナ101の要部構成を示す平面図である。
【0129】
光スキャナ101は、シリコンのチップに対して微細加工が施された、所謂MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーによって構成されている。なお、以下では、光スキャナ101を適宜MEMSミラー101とも称する。
【0130】
光スキャナ101は、主にミラー部110、2本のトーションバー121,122、可動枠130、4つの圧電素子(圧電アクチュエータ)151〜154からなるアクチュエータ部150、4本の架設部141〜144、4本の細連結部130a〜130d、および固定枠170を備えている。
【0131】
固定枠170は、画像表示装置100Cの筐体に対して固定され、4本の板状の部分が略矩形状に配置された4辺からなる枠であり、外縁および内縁が、対角線が略直交するa軸およびb軸である略正方形状の形状を有し、内縁が略正方形状の空間を形成している。
【0132】
そして、固定枠170の角部の内側のうち、b軸上の+b方向(図22では上方)の部分に、2本の架設部141,143が連結されて、架設部141は、固定枠170の−aおよび+b方向(図22では左上方)に位置する1辺に沿って配置され、架設部143は、固定枠170の+aおよび+b方向(図22では右上方)に位置する1辺に沿って配置されている。また、固定枠170の角部の内側のうち、b軸上の−b方向(図22では下方)の部分に、2本の架設部142,144が連結されて、架設部142は、固定枠170の−aおよび−b方向(図22では左下方)に位置する1辺に沿って配置され、架設部144は、固定枠170の+aおよび−b方向(図22では右下方)に位置する1辺に沿って配置されている。
【0133】
また、架設部141〜144には、各架設部141〜144の延設方向に沿って圧電素子151〜154がそれぞれ貼り付けられている。したがって、架設部141と圧電素子151とが固定枠170の+b方向(図22では上方)に位置する角部の内側から−aおよび−b方向(図22では左下方)に向けて延設された伸縮架設部161を構成し、架設部142と圧電素子152とが固定枠170の−b方向(図22では下方)に位置する角部の内側から−aおよび+b方向(図22では左上方)に向けて延設された伸縮架設部162を構成し、架設部143と圧電素子153とが固定枠170の+b方向(図22では上方)に位置する角部の内側から+aおよび−b方向(図22では右下方)に向けて延設された伸縮架設部163を構成し、架設部144と圧電素子154とが固定枠170の−b方向(図22では下方)に位置する角部の内側から+aおよび+b方向(図22では右上方)に向けて延設された伸縮架設部164を構成している。
【0134】
そして、伸縮架設部161と伸縮架設部162とがa軸を挟んで所定距離だけ離隔配置され、伸縮架設部163と伸縮架設部164とがa軸を挟んで所定距離だけ離隔配置されている。
【0135】
また、伸縮架設部161のa軸側の端部が細連結部130aによって可動枠130に対して連結され、伸縮架設部162のa軸側の端部が細連結部130bによって可動枠130に対して連結され、伸縮架設部163のa軸側の端部が細連結部130cによって可動枠130に対して連結され、伸縮架設部164のa軸側の端部が細連結部130dによって可動枠130に対して連結されている。
【0136】
また、可動枠130は、固定枠170と同様に、4本の板状の部分が略矩形状に配置された4辺からなる枠であり、外縁が、対角線が直交するa軸およびb軸である略正方形状の形状を有し、内縁が、六角形状の空間を形成している。
【0137】
そして、可動枠130の角部の内側のうち、b軸上の+b方向(図22では上方)の部分に、トーションバー121が−b方向(図22では下方)に向けて延設され、可動枠130の角部の内側のうち、b軸上の−b方向(図22では下方)の部分に、トーションバー122が+b方向(図22では上方)に向けて延設されている。
【0138】
トーションバー121の可動枠130に連結されていない側の端部にミラー部110が連結され、トーションバー122の可動枠130に連結されていない側の端部にミラー部110が連結されている。つまり、トーションバー121,122が、ミラー部110を+Y方向および−Y方向から挟み込むように支持する。つまり、可動枠130は、トーションバー121,122をミラー部110ごと支持している。
【0139】
ミラー部110は、a軸に対して略平行な2辺とb軸に対して略平行な2辺とを外縁として有する略正方形状の反射鏡であり、光スキャナ101の略中央に配置されて、投影するための光線を反射させるものである。
【0140】
なお、2本のトーションバー121,122は、厚みが薄く且つ細長い形状を有するため、比較的容易に弾性変形を行う。また、細連結部130a〜130dも、厚みが薄く細いため、比較的容易に弾性変形を行う。
【0141】
ミラー部110の具体的な回動動作としては、圧電素子151〜154に適宜電圧を印加すると、圧電素子151〜154の長さが印加された電圧に応じて変化するため、該圧電素子151〜154が貼り付けられている架設部141〜144が、延設方向に沿って伸縮する。つまり、伸縮架設部161〜164がそれぞれ延設方向に沿って伸縮する。したがって、例えば、圧電素子151,153に印加する電圧と、圧電素子152,154に印加する電圧とを正負を交互に入れ換えること、すなわち圧電素子151,153と圧電素子152,154とに逆位相の電圧を印加することで、ミラー部110はa軸を中心として回動する。一方、例えば、圧電素子151,152に印加する電圧と、圧電素子153,154に印加する電圧とを正負を交互に入れ換えること、すなわち圧電素子151,152と圧電素子153,154とに逆位相の電圧を印加することで、ミラー部110はb軸を中心として回動する。
【0142】
そして、4つの圧電素子151〜154に対し、a軸を中心としたミラー部110の回動を実現するための駆動信号と、b軸を中心としたミラー部110の回動を実現するための駆動信号とを重畳させて印加させることで、ミラー部110は、トーションバー121,122を支点にしたb軸を中心とする共振駆動と、可動枠130をミラー部110およびトーションバー121,122ごとa軸を中心として回動させる駆動とを行う。したがって、1つのミラー部110を有する1つの素子でありながら、a軸を中心とした低速の回動と、共振駆動を利用したb軸を中心とした高速の回動とを同時に行うことができる。つまり、光源50からの光線LT(図2)を異なる2方向に沿って偏向させることで、スクリーン9(図1)上における光線LT(図2)の水平走査と垂直走査とを同時に行うことができる。換言すれば、4つの圧電素子151〜154を備えたアクチュエータ部150は、光源50から発せられた光線LTを反射するミラー部(可動部)110をb軸の回りに揺動させて光線LTの水平方向の走査を行う第1揺動手段と、前記可動部を前記第1軸と略直角に交差するa軸の回りに揺動させて光線LTの垂直方向の走査を行う第2揺動手段とを有することとなる。なお、水平走査と垂直走査とを同時に行う2次元的な走査を1つの素子で行うことは、光スキャナ101の部品点数を低減させる上で好ましく、製造コストの低減や素子の調整に要する作業を低減することができるといった面からも好ましい。
【0143】
以上のような構成の光スキャナ101においても、上述した第1実施形態や第2実施形態と同じ水平制御部6a、60aの動作を行うことで、第1実施形態や第2実施形態と同様の効果を奏することとなる。
【0144】
なお、第3実施形態では、光スキャナ101において、1つのミラー部110を略直交する2つの軸(a軸およびb軸)を中心にそれぞれ回動させることで、光源50(図1)からの光線LT(図2)を2次元的に走査したが、これに限られず、水平方向の光線の走査と、垂直方向の光線の走査とを、別々に設けた2つのミラー部の回動によって実現することで、光源50からの光線LTを2次元的に走査するようにしても良い。このような構成の具体例としては、光源50から発せられた光線LTを反射する第1のミラー部(第1可動部)をa’軸の回りに揺動させる第1のアクチュエータと、第1のミラー部で反射された光線LTを反射する第2のミラー部(第2可動部)をb’軸の回りに揺動させる第2のアクチュエータとを、光源50からスクリーン9(図1)に至る光路中に、空間順次に配置したような態様が挙げられる。但し、水平および垂直走査を実現するためには、a’軸およびb’軸をそれぞれ、光源50からスクリーン9に至る光路に沿った当該光路中の線(好ましくは光路の中心の線、すなわち中心線)に対して略直交するように設定し、更に、a’軸とb’軸との位置および角度関係については、例えば、上記光路の中心線に沿って所定距離だけ離隔させ、かつ上記光路の中心線を中心として、約90°回転させた関係とすることが好ましい。換言すれば、b’軸は、a’軸を基準にして、a’軸と略直交する所定の直線に沿って所定距離だけ離隔し、且つその所定の直線を中心として略90°回転させたものであることが好ましい。
【0145】
<変形例>
・上記の各実施形態においては、図11(a)に示すような単振動の基準駆動信号を用いるのは必須でなく、図23(a)に示すような一定の周波数を有する矩形状の基準駆動信号を用いるようにしても良い。このような矩形状の基準駆動信号を用いる場合には、図11(c)の駆動信号WFに対応する駆動信号として図23(b)に示すパルス幅変調(PWM)の信号を用いることで、ラスター走査における水平方向(主走査方向)の歪みを補正できることとなる。
【0146】
・上記の各実施形態における光スキャナでは、ミラー部11、110を揺動変位させるアクチュエータとして圧電素子を使用するのは必須でなく、VCM等の電磁アクチュエータや、静電型振動子等の静電アクチュエータ、高分子樹脂(ポリマー)を用いたアクチュエータを使用しても良い。
【0147】
・上記の各実施形態においては、揺動可能な2本の軸を持つ光スキャナを用いて光線のラスター走査を行うのは必須でなく、揺動可能な1本の軸を持つ2組の光スキャナを用いて光線のラスター走査を行っても良い。この場合にも、2組の光スキャナそれぞれに可動部として設けられた各ミラー部を略直角に交差する光スキャナの軸の回りに揺動させることで光線のラスター走査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置100Aの外観を示す図である。
【図2】光スキャナ1と光源50との位置関係を説明するための図である。
【図3】画像表示装置100Aの機能構成を示すブロック図である。
【図4】光スキャナ1の要部構成を示す平面図である。
【図5】図4のV−V位置から見た断面図である。
【図6】ミラー部11の揺動振動動作を説明するための図である。
【図7】光スキャナ1を水平方向に駆動する水平駆動系40を説明するための図である。
【図8】水平駆動系40に関する各機械要素を電気素子に等価変換した等価回路30cを示す図である。
【図9】等価回路30cに関する周波数特性を説明するための図である。
【図10】水平駆動制御部6aの要部構成を示すブロック図である。
【図11】水平駆動制御部6aの動作を説明するための図である。
【図12】ラスター走査水平歪みを説明するための図である。
【図13】補正信号WHをフーリエ展開した場合の基本周波数fvと、その高調波群を示す図である。
【図14】補正信号WHに関するスペクトルが機械共振特性Hmの影響を受けることを説明する図である。
【図15】双峰特性となる周波数特性を説明するための図である。
【図16】水平駆動系40Aを説明するための図である。
【図17】ステップ状の補正信号に対するエンベロープENaの応答遅れを説明するための図である。
【図18】補正信号WHに対して緩慢なエンベロープENbの期間Tcが生じる様子を示す図である。
【図19】本発明の第2実施形態に係る水平駆動制御部60aの動作を説明するための図である。
【図20】水平駆動制御部60aの他の動作を説明するための図である。
【図21】他の姿勢の光スキャナ1を説明するための図である。
【図22】本発明の第3実施形態に係る光スキャナ101の要部構成を示す平面図である。
【図23】本発明の変形例に係る矩形状の基準駆動信号を説明するための図である。
【符号の説明】
【0149】
1、101 光スキャナ
6 光スキャナ制御部
6a、60a 水平駆動制御部
6b 垂直駆動制御部
9 スクリーン
11、110 ミラー部
13a、13b、14a、14b、121、122 トーションバー
30 圧電素子31〜34を合成結合した圧電素子
30c 等価回路
31〜38 圧電素子
40、40A 水平駆動系
50 光源
61 水平駆動回路
62 駆動信号発生部
63 補正信号発生部
100A〜100C 画像表示装置
150 アクチュエータ部
EN、ENa、ENb エンベロープ
fom 機械共振周波数
Ga〜Gf 調整信号
RS ラスター走査
Ta 画像表示期間
Tb 垂直ブランキング期間
WF 駆動信号
WH 補正信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置であって、
(a)所定の光源から発せられた光線を反射する反射面を有する可動部を、第1軸の回りに揺動させる第1のアクチュエータと、
(b)前記可動部を、前記第1軸と略直角に交差する第2軸の回りに揺動させる第2のアクチュエータと、
(c)前記可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき前記第1のアクチュエータを駆動して前記第1軸回りに前記可動部を揺動振動させることにより、前記反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る主走査方向に走査する主走査手段と、
(d)前記第2のアクチュエータを駆動して前記第2軸回りに前記可動部を揺動させることにより、前記反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る副走査方向に走査する副走査手段と、
を備え、
前記主走査手段は、
(c-1)前記駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき前記第1のアクチュエータを駆動して前記可動部を揺動振動させた場合に生じる前記所定の投影面での表示画像の歪みに関して、前記歪みを補正するための補正信号を生成する補正信号生成手段と、
(c-2)前記補正信号に基づき前記基準駆動信号を調製し、前記駆動信号を生成する調製手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記補正信号の周波数成分に関して支配的な周波数帯域fcは、前記共振周波数をfomとし、前記共振周波数に係る共振特性の品質係数をQとすると、
fc≒fom/(2Q)、またはfc<fom/(2Q)
を満たしていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記補正信号の周波数成分に関して支配的な周波数帯域fcは、前記第1のアクチュエータを駆動する駆動回路の電気特性と前記可動部の揺動振動に係る機械特性とを合成した周波数特性において規定される所定の周波数通過帯域をfaとすると、
fc≒fa/2、またはfc<fa/2
を満たしていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像表示装置において、
前記第1のアクチュエータおよび/または前記第2のアクチュエータは、圧電アクチュエータを含んでいるとともに、
前記圧電アクチュエータを駆動する駆動回路は、少なくとも1の受動素子を有し、前記少なくとも1の受動素子と前記圧電アクチュエータの電気特性とにより前記共振周波数に略等しい共振周波数を有する共振回路として構成されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像表示装置において、
前記1の受動素子は、インダクタンス素子であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像表示装置において、
前記副走査手段では、前記所定の投影面への画像表示を行う表示期間の走査と、前記画像表示を行わない非表示期間の走査とが繰り返されるとともに、
前記補正信号生成手段は、
前記非表示期間の走査から前記表示期間の走査への切替えの際に生じる過渡的な応答を前記非表示期間内に収束させる特定の信号を含んだ補正信号を生成する手段、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像表示装置において、
前記特定の信号により、前記表示期間における応答が前記表示期間の開始時点から前記駆動信号に追従することを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置であって、
(a)所定の光源から発せられた光線を反射する第1の反射面を有する第1可動部を、第1軸の回りに揺動させる第1のアクチュエータと、
(b)前記第1の反射面で反射された光線を反射する第2の反射面を有する第2可動部を、第2軸の回りに揺動させる第2のアクチュエータと、
(c)前記第1可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき前記第1のアクチュエータを駆動して前記第1軸回りに前記第1可動部を揺動振動させることにより、前記第1の反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る主走査方向に走査する主走査手段と、
(d)前記第2のアクチュエータを駆動して前記第2軸回りに前記第2可動部を揺動させることにより、前記第2の反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る副走査方向に走査する副走査手段と、
を備え、
前記主走査手段は、
(c-1)前記駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき前記第1のアクチュエータを駆動して前記第1可動部を揺動振動させた場合に生じる前記所定の投影面での表示画像の歪みに関して、前記歪みを補正するための補正信号を生成する補正信号生成手段と、
(c-2)前記補正信号に基づき前記基準駆動信号を調製し、前記駆動信号を生成する調製手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置であって、
(a)所定の光源から発せられた光線を反射する第1の反射面を有する第1可動部を、第1軸の回りに揺動させる第1のアクチュエータと、
(b)前記第1の反射面で反射された光線を反射する第2の反射面を有する第2可動部を、第2軸の回りに揺動させる第2のアクチュエータと、
(c)前記第2可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき前記第2のアクチュエータを駆動して前記第2軸回りに前記第2可動部を揺動振動させることにより、前記第2の反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る主走査方向に走査する主走査手段と、
(d)前記第1のアクチュエータを駆動して前記第1軸回りに前記第1可動部を揺動させることにより、前記第1の反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る副走査方向に走査する副走査手段と、
を備え、
前記主走査手段は、
(c-1)前記駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき前記第2のアクチュエータを駆動して前記第2可動部を揺動振動させた場合に生じる前記所定の投影面での表示画像の歪みに関して、前記歪みを補正するための補正信号を生成する補正信号生成手段と、
(c-2)前記補正信号に基づき前記基準駆動信号を調製し、前記駆動信号を生成する調製手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
光線のラスター走査により所定の投影面への画像表示が可能な画像表示装置であって、
(a)所定の光源から発せられた光線を反射する反射面を有する可動部を第1軸の回りに揺動させる第1揺動手段と、前記可動部を前記第1軸と略直角に交差する第2軸の回りに揺動させる第2揺動手段とを有するアクチュエータ部と、
(b)前記可動部の揺動振動に関する共振周波数の近傍の周波数成分を有する駆動信号に基づき前記第1揺動手段を用いて前記第1軸回りに前記可動部を揺動振動させることにより、前記反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る主走査方向に走査する主走査手段と、
(c)前記第2揺動手段を用いて前記第2軸回りに前記可動部を揺動させることにより、前記反射面で反射される光線を前記ラスター走査に係る副走査方向に走査する副走査手段と、
を備え、
前記主走査手段は、
(b-1)前記駆動信号として用いられる基準駆動信号に基づき前記第1揺動手段を用いて前記可動部を揺動振動させた場合に生じる前記所定の投影面での表示画像の歪みに関して、前記歪みを補正するための補正信号を生成する補正信号生成手段と、
(b-2)前記補正信号に基づき前記基準駆動信号を調製し、前記駆動信号を生成する調製手段と、
を有することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−310295(P2008−310295A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80721(P2008−80721)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】