説明

畝立装置

【課題】従来の畝立装置で畝立幅を変更する場合は、左右方向に配するツールバーに対し、側板(培土板)の位置を手動により付け替える構成であったので、これら培土板に泥土が付着している場合は衣類を汚したり、可動部に土が詰まっている場合は、大きな労力を要するという課題が有った。
【解決手段】左右培土板1,2を取付けるツールバー3の一端をスライド式に構成する。ツールバー3全体をトラクタ後方のフレーム部材5に対し左右方向にスライド自在に設ける。前記フレーム部材5にアクチュエータ4を備え、このピストン部を前記ツールバー3のスライド部33に連結する。スライド部33を固定して前記アクチュエータを駆動すると、ツールバー全体が左右に移動し畝立位置(中心位置F)を調整できる。また前記スライド部33の固定を解除して前記アクチュエータを駆動すると、ツールバーの一端が伸縮し畝立幅を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等に牽引して圃場に畝を立てる畝立装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに牽引された耕耘装置の後方に、左右方向に延設するツールバーを備え、このツールバーに左右対称形状の培土板を有する畝立器を装着し、前記ツールバーをアクチュエータの駆動によって左右へ移動させて畝立位置を調節するものが知られている。
【特許文献1】特開2003-153601号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のような畝立装置は、ツールバーをアクチュエータにより移動させ、畝立位置、詳しくは畝立中心位置を調整可能としているが、この畝立幅は、前記ツールバーに対する側板(培土板)の取付位置を手動により付け替える構成であったので、例えばこれら培土板に泥土が付着している場合は衣類を汚したり、可動部に土が詰まっている場合は、大きな労力を要するという課題が有った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題に鑑みて、この畝立装置は以下のように構成した。
即ち請求項1に記載の発明では、トラクタ(T)後方に左右方向に延設するツールバー(3)を備え、このツールバー(3)の左右に左右対称形状の培土板(1,2)を取り付ける畝立装置において、前記培土板(1,2)を取付けるツールバー(3)を伸縮自在に構成すると共に、このツールバー(3)全体をトラクタ(T)後方の固定部位(5)に対し左右方向へ移動自在に設け、前記固定部位(5)若しくはこれと一体の部位に装着したアクチュエータ(4)の駆動により、前記ツールバー(3)を伸縮させる状態と、左右方向に移動させる状態とに変更可能に構成したことを特徴とする畝立装置とする。
(請求項1の作用)
以上のように構成した畝立装置では、畝立幅を変更する際には、アクチュエータ(4)の作動によって左右何れか一方の培土板(1)(2)を移動させる。また、畝立位置、詳しくは畝立中心位置を調整する際には、両方の培土版(1,2)を一体的に移動させる。
【発明の効果】
【0005】
これにより、請求項1に記載の発明では、アクチュエータ(4)の駆動によって畝立幅と畝立位置とを変更することができるので、前記のように、衣類を汚したり、大きな労力を要することが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面に基づいて、この発明の畝立装置Bについて説明する。
この畝立装置Bは、図2に示すように、トラクタTの車体後部に備える構成となっている。詳しくは、左右前輪及び左右後輪10を有したトラクタTの車体後部に、トップリンク11と左右ロアリンク12,12とから成る三点リンク機構と、これを上下回動操作する左右リフトアーム13,13を設け、前記リンク機構後端部に接続するヒッチ機構14を介して、耕耘爪18をアップカット方向に回転して耕耘できるロータリ耕耘装置Aを装着する。そして、この耕耘装置Aの後部に畝立装置Bを装備し、該耕耘装置Aによって耕耘された土壌面の左右両側縁部を培土して所定幅の畦を形成する構成となっている。
【0007】
また前記耕耘装置Aは、耕耘爪18を有した耕耘軸21と耕耘フレーム16の左右両側端に、伝動ケース19及びサイドプレート20を備え、この伝動ケース19内の伝動機構を経て前記耕耘軸21を駆動する構成となっている。またこの耕耘爪18の耕耘幅上方を覆うロータリカバー22が、前記耕耘フレーム16の下側に取付けられる。
【0008】
尚、図中符号17はトラクタTのPTO軸で、前記耕耘フレーム16の中央部に設けられる入力軸との間を連動軸で連結して、耕耘軸21を伝動回転する構成となっている。また符号25は掘削ディスクで、耕耘爪18による耕耘幅の外側前部に設けられ、耕耘土壌面の左右両側縁部に切り込んで、ロータリカバー22の内側へ引き込まれる草木類を切断する構成となっている。
【0009】
また前記ロータリカバー22の後側には上下回動自在のリヤカバー23が設けられ、耕耘土壌の後方飛散を防止すると共に耕耘土壌面を均平する構成となっている。
また前記耕耘フレーム16の後側には、アーム30を後方へ延設して、この発明の固定部位となる作業フレーム5を取り付ける。前記アーム30は、連結ピン28の周りに上下回動自在で、耕耘フレーム16上のリンクアーム27の回動によって上下回動操作可能に構成し、また前記耕耘フレーム16に対して伸縮杆24によって上下調節可能に構成している。
【0010】
また前記リンクアーム27は、ワイヤー29を介してトラクタTの運転席近傍の操作レバーで遠隔操作可能に構成すると共に、伸縮杆24はこの上端のハンドル26によって伸縮操作する構成となっている。
【0011】
また前記作業フレーム5の上部には、図1に示すように、左右中心位置Fから左側にオフセットさせて、電動モータM及びシリンダを有するアクチュエータ4を設ける構成となっている。
【0012】
またこの作業フレーム5の下側には、左右両側に二又状に形成されたガイドブラケット31を設け、同ブラケット31には、ツールバー3全体を左右へ移動させるように案内穴を形成すると共に、この案内穴に前記ガイドローラ32を備える構成となっている。そして前記ガイドローラ32,32上に、左右方向に延設するツールバー3を支架する構成となっている。
【0013】
また前記ツールバー3は、角チューブ部材から構成され、このツールバー3の右側端部に、右培土板2を有した取付アーム35上端部のソケット37を嵌合させて、ボルト締め等で一体的に取付ける。また同ツールバー3の一側部には、左培土板1の取付アーム35上端部に一体構成したスライドバー部(以下、スライドバー33)を備える構成となっている。
【0014】
また前記スライドバー33は、前記ツールバー3同様、角チューブ部材から構成されて、図3に示すように、該ツールバー3の左端内部に挿通支持し、左右へ移動することにより、ツールバー3全体の長さを伸縮する構成としている。また前記スライドバー33には、左右所定間隔でピン穴42,42…が複数設けられ、これらのピン穴41とツールバー3側のピン穴にロックピン43を貫通することによってスライドバー33の伸縮位置を固定する構成となっている。
【0015】
また前記ガイドブラケット31にも、ピン穴44を開口し、同穴44とこれに対向するツールバー3に開口したピン穴45とに亘ってロックピン46を貫通することにより、前記ツールバー3の作業フレーム5に対する左右位置を固定する構成となっている。
【0016】
即ち、アクチュエータ4の伸縮によって、左側の取付アーム35を内外へ移動することができるが、前記作業フレーム5側のロックピン46を装着し、ツールバー3側のロックピン43を外した状態では、このスライドバー33をツールバー3に対してスライドさせることができる。また前記作業フレーム5側のロックピン46を外し、ツールバー3側のロックピン43を装着した状態では、同ツールバー3とスライドバー33とを連結した状態でスライドすることができる。
【0017】
また前記各取付アーム35の下端部のソケット38には、左右の培土板1,2と転輪34を有した畝立フレーム39を着脱可能に設ける。またこの培土板1,2の外方には、畝溝部で接地させる転輪34を配置し、これら畝立装置Bを支持する構成となっている。
【0018】
またリヤカバー23の後方には、左右方向の支持軸49の周りに鎮圧板47を上下回動自在に設け、この鎮圧板47の後端部を作業フレーム5に対してスプリング48を介して弾発する構成となっている。
【0019】
以上のように構成した畝立装置Bでは、トラクタTを走行するに従い、耕耘装置Aによって耕耘される耕耘土壌面を、左右の培土板1,2によって培土し、この培土の畝立上面Rは鎮圧板47で均平に鎮圧される。
【0020】
そしてこの畝立位置を前記作業フレーム5乃至耕耘装置Aに対して左側、または右側寄りに移動するときは、前記アクチュエータ4を伸縮させて、培土板1,2を有したツールバー3全体を左側、または右側へ移動させる。このとき前記ツールバー3とスライバー33との間のロックピン43を装着することにより左右の培土板1,2間の畝立間隔Dを変えないで、中心位置Cを左右に移動調節することができる。また、左右の畝立間隔Dを広狭に変更調節するときは、前記ロックピン43を外して、アクチュエータ4を伸縮させると、このスライドバー33全体がツールバー3に対して左右へ移動される。
【0021】
このようにロックピン43,46の抜き差しは直接手動操作で行うが、左培土板1、または左右培土板1,2を左右へ移動するときは、モータM駆動によって共通且つ単一アクチュエータ4を伸縮することによって行わせることができ、例えばルーツバー伸縮用と左右移動用の二つのアクチュエータを備える場合と比較して、構成が簡素化され備品コストを削減することができ、また前記培土板1(2)に泥土が付着している場合でも衣類を汚すことが無く、更にツールバー3とスライドバー33間またはツールバー3と31ガイドブラケットといった可動部に土が詰まっている場合でも作業者自ら大きな労力を要することが無い。
【0022】
尚、前記畝立装置Bの別形態としては、ツールバー3の左側にスライドバーを備える構成に代え、右側に備える構成としたり、中央部でスライドさせる構成としても良い。またツールバー3とスライドバー33、ツールバー3と作業フレーム5を固定する構成としては、前記ロックピンに代え摩擦材を利用したり、シリンダ自体またはガイドブラケット31のローラ32にロック機構を備える構成としても良い。また前記アクチュエータの別形態としては、回転モータを利用する構成としたり、この取付位置を前記アーム30等の他の固定部材に取り付ける構成としても良い。
【0023】
次に図4に基づいて、前記畝立板1,2の左右内側面に突設させる砕土ツース(以下、サイドツース52)について説明する。
前記左右の培土板1,2の内側には、この培土板によって成形される畝法面Sの土壌を細砕するサイドツース52,52…を後退角を形成して複数突設する構成としている。
【0024】
これにより、従来逆回転させる耕耘爪18によって形成される畝法面Sには、荒い土塊が集中するが、このサイドツース52,52…によって、畝法面Sをも細かく砕土することができる。ひいては畝法面Sを細土化することによって土壌強度を高めて、雨水による畝崩れや雑草繁茂等を軽減し、また保水力を向上することができる。
【0025】
次に図5と図6に基づいて、前記左右の培土板1,2により成形される畝上面Rを砕土する砕土ツース(以下、アッパーツース54)について説明する。
前記耕耘フレーム16には左右一対のフレームプレート55に前後方向円弧状の長穴56を形成し、このフレームプレート55に沿わせて取付プレート57を有した取付アーム58を重ねて、ボルト59締めで固定する構成となっている。この取付プレート57は耕耘軸21方向にわたって平行状に設けられ、耕耘カバー22の後端部上に位置してアッパーツース54を複数本併設した状態で取付ける。また取付プレート57には上下方向の長穴60が設けられ、下部には各ツース54をツース穴61に挿通させて支持する支持パイプ62を有する。また前記アッパーツース54の上部同士は、前記取付プレート57に対し上下スライドするスライドプレート63にて一体的に構成される。
【0026】
以上のように構成したアッパーツースは、各ツース54を支持パイプ62のツース穴61に挿通して、スライドプレート63部を取付プレート57面に重合させて、該長穴60に挿通するボルト64締めで固定する。また前記長穴60に沿ってスライドプレート63を移動することによってアッパーツース54の下端部の突出長さを調節する。
【0027】
これにより、耕耘爪18と培土板1,2との間に設けるアッパーツース54により、畝表層面Rは細く、下層Mは荒い土塊の二層形態として、移植、播種に適した畝作りを行うことができ、このアッパーツース54の出代を調節することにより、表層細砕層の深さを作付けに適したものとすることができ、発芽性、活着性の向上を図ることができる。
【0028】
尚、前記アッパーツース54は、ツースプレート63を上下に移動調節する形態に代えて、図6に示すように、ツース54の上端を固定するツース軸65の周りに回動させて、畝上面Rに作用する砕土深さを調節可能に構成する構成としても良い。詳しくはツース軸65上にはアーム66を突出し、前記フレームプレート55に形成の円弧状の長穴67に挿通するボルト68締めで調節位置を固定することができる。調節操作を回動形態にして容易にすることができる。
【0029】
次に図7に基づき前記耕耘装置Aに関し、耕耘爪18の耕耘軸21に対する取付構成について説明する。
ここでは、一つの爪ホルダ71内に、二本の耕耘爪18A,18Bの基部72、73を重合させて嵌合させて、ボルト74締めする。砕土用耕耘爪18は単一耕耘軸21上に沿って多数本配置することが多い。この場合は、各爪ホルダ71に対して二本の耕耘爪18A、18Bを差し込んで保持させる形態では、各耕耘爪18,18Bの基部72、73断面を鉤形状に形成して、先端部に沿って互に対向面側へ略直角状に折曲げた形態の曲げ部75,76を形成する。これらの基部72,73を重合させるとき、曲げ部75、76を相互に対向側基部73,72の対向端縁部に接合させる形態として、爪ホルダ71内に嵌合させる。これら爪ホルダ71のボルト穴77と各重合する基部72,73のボルト穴78,79とにわたってボルト74を挿通してナットで締めつける。耕耘爪18の基部72,73は曲げ部75,76を形成して鉤形状に形成されるため、強度を高めることができ、爪ホルダ71をも補強することができる。
【0030】
次に図8に基づき、前記耕耘装置Aのプレッシャーロッド84について説明する。
前記耕耘装置Aでは、前記リヤカバー23を上下回動自在にして装着すると共に、ロータリカバー22上のブラケット81と、リヤカバー22上のブラケット82との間にスプリング83とプレッシャロッド84を介装する。これにより、この耕耘カバー22の後端を耕耘土壌面に押圧させて均平することができる。
【0031】
またこの土壌面押圧によってロータリカバー22が上動するとスプリング83の上端部のカラー85がブラケット81で係止されて、スプリング83が圧縮されて均平圧が強くなる。このプレッシャロッド84の下部にはラック86を形成して、このラック86に噛合するピニオン87を有したストッパリング88を、このプレッシャロッド84に嵌合させて、上下移動可能に構成している。またこのストッパリング88にはステッピングモータ89を取付けて、該ピニオン87を回転する構成となっている。
【0032】
尚、このモータ89は運転席部の操作スイッチによって駆動する。
以上のように構成した耕耘装置Aでは、トラクタ作業で耕耘装置Aを上昇させて非作業位置になると、ストッパリング88を上方へ移動させてスプリング83を働かせるように作動する。
【0033】
これによりトラクタTが路上走行する際、リヤカバー23の上下揺動を少なくすることができ、このモータ89の駆動操作を遠隔操作で行わせて、操作を簡単にして迅速に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】畝立装置の背面図。
【図2】トラクタ後部及び畝立装置の側面図。
【図3】ツールバーの動きを説明する図。
【図4】畝立器部の平面図とサイドツースのレイアウトを示す図。
【図5】(A)アッパーツースの側面図。
【0035】
(B)アッパーツースの一部拡大斜視図。
【図6】アッパーツースの別形態を示す側面図。
【図7】(A)耕耘爪の配置を示す展開正面図。
【0036】
(B)耕耘爪の側面図。
(C)耕耘爪の取付基部を示す断面図。
(D)一対の耕耘爪の斜視図。
【図8】(A)ロータリ耕耘機の斜視図。
【0037】
(B)プレッシャーロッドの側面図。
【符号の説明】
【0038】
A 耕耘装置
B 畝立装置
T トラクタ
1 培土板
2 培土板
3 ツールバー
4 アクチュエータ
5 作業フレーム(固定部位)
33 スライドバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側部に畝立器(1)、(2)を取付けるツールバー(3)を、アクチュエータ(4)により作業フレーム(5)に対して横方向へ移動可能に設け、この左右の畝立器(1)、(2)間の畝立間隔(D)と、この作業フレーム(5)に対するこの畝立間隔(D)の中心位置(C)を変更可能に設けたことを特徴とする畝立装置。
【請求項2】
前記ツールバー(3)の一側端部の畝立器(1)を、アクチュエータ(4)によって横方向へ移動可能に設け、この畝立器(1)をツールバー(3)に対して単独移動させる状態と、ツールバー(3)と共に一体移動させる状態とに切替可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の畝立装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−191812(P2006−191812A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4003(P2005−4003)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】