説明

異方性導電接着剤

【課題】配線板に電子部品を無圧力乃至低圧力の印加で異方性導電接続できる異方性導電接着剤を提供することである
【解決手段】配線板に電子部品を無圧力乃至低圧力で異方性導電接続するための異方性導電接着剤は、導電粒子がバインダー樹脂組成物に分散されてなるものである。その導電粒子として、長径10〜40μm、厚みが0.5〜2μm、アスペクト比が5〜50の金属フレーク粉が使用される。しかも導電粒子の異方性導電接着剤中の含有量は、5〜35質量%である。この異方性導電接着剤を、配線板の接続端子に供給し、電子部品の接続端子を、異方性導電接着剤が介在する基板の接続端子に仮接続し、電子部品に対し圧力を印加することなく若しくは低圧力を印加しながら加熱することにより基板と電子部品とを異方性導電接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板に電子部品を無圧力乃至低圧力で異方性導電接続するための異方性導電接着剤、及びそれを用いた異方性導電接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂と硬化剤とからなるバインダー樹脂組成物に球状の導電粒子を分散させた異方性導電接着剤は、リジッド基板等の配線板にフレキシブル印刷回路フィルムやICチップ等の電子部品を接続する際に広く用いられている(例えば、特許文献1)。この場合、配線板と電子部品との間に異方性導電接着剤を介在させ、電子部品をヒートボンダーでバインダー樹脂の硬化温度(例えば、150℃)以上に加熱すると共に、良好な接続信頼性を確保すべく、1MPa以上の圧力を印加している。これは、ある程度の広さの接触面積を確保するためには、球状の導電粒子を配線板や電子部品の接続端子領域に食い込ませる必要があり、そのために比較的大きな加圧が必須となるからである。
【0003】
【特許文献1】特公平5−47922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リジッド基板等の配線板にフレキシブル印刷回路フィルム等を異方性導電接続する際、結果的に配線板にも圧力が印加されるため、配線板がダメージを被る場合がある。特に、高密度実装を実現するために、配線板の裏面にも電子部品が実装されている場合には、配線板だけでなく、裏面の電子部品やそれらを接続する配線もダメージを被る場合があった。
【0005】
本発明の目的は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、配線板に電子部品を無圧力乃至低圧力の印加で異方性導電接続できる異方性導電接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、異方性導電接着剤に使用する導電粒子として、特定の大きさ、厚み、更にアスペクト比を有する金属フレーク粉を使用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、配線板に電子部品を無圧力乃至低圧力で異方性導電接続するための異方性導電接着剤であって、導電粒子がバインダー樹脂組成物に分散されなる異方性導電接着剤において、該導電粒子が、長径10〜40μm、厚みが0.5〜2μm、アスペクト比が5〜50の金属フレーク粉であり、且つ導電粒子の異方性導電接着剤中の含有量が、5〜35質量%であることを特徴とする異方性導電接着剤を提供する。
【0008】
また、本発明は、配線板の接続端子に上述の異方性導電接着剤を供給し、電子部品の接続端子を、異方性導電接着剤を介在させつつ基板の接続端子に仮接続し、電子部品に対し圧力を印加することなく若しくは低圧力を印加しながら加熱することにより基板と電子部品とを接続する異方性導電接続方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の異方性導電接着剤は、導電粒子として、特定の大きさ、厚さ、アスペクト比を有する金属フレーク粉を使用する。導電粒子がこのような形状・寸法の金属フレーク粉であることは、金属フレーク粉を配線板や電子部品のそれぞれの接続端子に食い込ませずとも、接続端子と導電粒子との間で面接触が可能となる。従って、配線板の接続端子と電子部品の接続端子とを、異方性導電接着剤を介在させつつ位置合わせし、比較的低圧で仮接続した後には、無圧力(即ち、圧力を印加することなく)又は従来に比べて比較的低い圧力の印加という条件下で加熱することにより、良好な接続信頼性を示す異方性導電接続が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、配線板に電子部品を無圧力乃至低圧力で異方性導電接続するための異方性導電接着剤であって、導電粒子がバインダー樹脂組成物に分散されてなる異方性導電接着剤である。本発明の特徴は、導電粒子として、長径10〜40μm、厚みが0.5〜2μm、アスペクト比が5〜50の金属フレーク粉を使用することである。
【0011】
金属フレーク粉としては、ニッケル、銀等の金属のフレーク粉を使用することができるが、中でも、低コストと良好な導電性の点でニッケルフレーク粉を好ましく使用できる。
【0012】
本発明で使用する金属フレーク粉は、その長径が10〜40μm、好ましくは10〜30μmであり、厚みが0.5〜2μm、好ましくは0.5〜1.5μmのものである。長径に関し、10μm未満であると接続後の導通抵抗が高くなる傾向があり、40μmを超えると絶縁抵抗が低くなる傾向があるからである。また、厚みに関し、0.5μm未満であると絶縁抵抗が低くなる傾向があり、2μmを超えると接続後の導通抵抗が高くなる傾向があるからである。金属フレーク粉の長径、厚さは、電子顕微鏡等による外観観察により測定される数値である。なお、金属のフレーク粉の短径は、通常、長径の10〜50%程度の長さである。
【0013】
更に、本発明で使用する金属フレーク粉は、アスペクト比(即ち、長径を厚みで除した数値)が5〜50、好ましくは5〜42のものを使用する。アスペクト比に関し、5未満であると接続後の導通抵抗が高くなる傾向があり、50を超えると絶縁抵抗が低くなる傾向があるからである。
【0014】
本発明において、導電粒子の異方性導電接着剤中の含有量は、5〜35質量%、好ましくは7〜30質量%である。その含有量が5質量%未満であると、接続信頼性が十分でなく、35質量%を超えると導電接続の異方性が失われるおそれや接続強度の低下があるからである。
【0015】
本発明の異方性導電接着剤を構成するバインダー樹脂組成物としては、従来の異方性導電接着剤において用いられている熱硬化性のバインダー樹脂組成物の中から適宜選択して使用することができる。例えば、熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型尿素樹脂、熱硬化型メラミン樹脂、熱硬化型フェノール樹脂等に、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤等の硬化剤を配合したバインダー樹脂組成物を挙げることができる。中でも、硬化後の接着強度が良好な点を考慮すると、熱硬化型エポキシ樹脂をバインダー樹脂として使用したバインダー樹脂組成物を好ましく使用することができる。
【0016】
このような熱硬化型エポキシ樹脂としては、液状でも固体状でもよく、エポキシ当量が通常100〜4000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、エステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物等を好ましく使用することができる。また、これらの化合物にはモノマーやオリゴマーが含まれる。
【0017】
本発明のバインダー樹脂組成物には、必要に応じてシリカ、マイカなどの充填剤、顔料、帯電防止剤などを含有させることができる。着色料、防腐剤、ポリイソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤なども配合することもできる。
【0018】
また、公知の球状導電粒子を配合することもできる。金属フレーク粉に加えて球状導電粒子を配合すると、導通抵抗値をより安定化できるという効果や、金属フレーク粉の使用量を減少させて異方性導電接着剤の製造コストを抑制できるという効果が得られる。このような球状導電粒子の大きさとしては、平均粒径が1〜10μmのものであり且つ導電粒子の長径より小さいことが好ましい。また、球状導電粒子の配合量は、金属フレーク粉の配合量(質量部)の0.1〜1倍であることが好ましい。
【0019】
本発明の異方性導電接着剤の粘度は、低すぎると仮圧着から本硬化の工程で流動してしまい接続不良を起こし易い。高すぎても塗布時に不良を発生し易いので、コーンプレート型粘度計で測定した25℃の粘度が、好ましくは50〜200Pa・s、より好ましくは50〜150Pa・sである。
【0020】
本発明の異方性導電接着剤は、導電粒子である金属フレーク粉を、熱硬化性のバインダー樹脂組成物に常法に従って均一に分散することにより製造することができる。
【0021】
本発明の異方性導電接着剤は、以下に説明するように、配線板と電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく使用することができる。
【0022】
まず、配線板の接続端子にこの異方性導電接着剤を供給する。ここで、配線板としては、透明電極が形成されたガラス配線基板、ガラスエポキシ配線基板、ポリイミド印刷回路フィルム基板等を挙げることができる。接続端子としては、それぞれの基板に適した端子を利用することができる。
【0023】
また、異方性導電接着剤の供給方法としては、シリンジから供給する方法が一般的であるが、それに限定されない。異方性導電接着剤を成膜し、異方性導電フィルムとして供給することもできる。供給された異方性導電接着剤の厚みは、通常30〜50μmである。
【0024】
次に、電子部品の接続端子を、異方性導電接着剤を介在させつつ配線板の接続端子に仮接続する。具体的には、電子部品の接続端子を、異方性導電接着剤を介在させつつ配線板の接続端子に位置合わせする。そして、電子部品に、好ましくは0.1〜1MPaの圧力を印加して仮接続する。この場合、バインダー樹脂組成物を完全硬化させるには至らない程度に加熱してもよい。ここで、電子部品としては、ICチップ、フレキシブル印刷回路フィルムなどを挙げることができる。
【0025】
次に、電子部品に対し、圧力を印加することなく若しくは低圧力(即ち、1MPa以下)を印加しつつ加熱し、バインダー樹脂組成物をほぼ完全〜完全に硬化させる。これにより、安定で良好な接続信頼性を示す異方性導電接続が可能となる。
【0026】
本発明の異方性導電接着剤は前述の異方性導電接続用途のみでなく、異方性を要しない導電接続用途としても好ましく使用する事ができる。例えば抵抗やコンデンサ、ピエゾ素子等の電子部品の接続が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0028】
実施例1〜7、比較例1〜9
表1の成分をミキサーにて均一に混合することにより、異方性導電接着剤を調製した。得られた異方性導電接着剤の粘度を、レオメータ(ハーケ社製コーンプレート型粘度計)を用い、温度25℃、シアレート10(1/s)で測定した。得られた結果を表1に示す。また、使用したニッケルフレーク及び球状ニッケル粒子の大きさについては、電子顕微鏡にて直接観察した結果を表1に示す。
【0029】
(異方性導電接続評価)
また、得られた異方性導電接着剤を、リジッド印刷配線基板(ガラスエポキシ基材1.1mm厚/Cu配線35μm厚/表面金メッキ:2mmピッチ、L/S=1/1)の接続端子部に、シリンジから35μm厚となるように塗布した。その異方性導電接着剤の上から、リジッド印刷配線基板の接続端子に対し、フレキシブル配線回路フィルム(ポリイミドフィルム基材22μm厚/Cu配線18μm厚/表面金メッキ:2mmピッチ、L/S=1/1)の接続端子を位置合わせし、常温で0.5MPaの圧力を印加して仮接続した。
【0030】
仮接続したものを120℃のオーブン中に入れ、接続部に圧力を印加することなく10分間加熱し、バインダー樹脂組成物を硬化させることにより、異方性導電接続を行い、得られた接続構造体について、以下に説明するように、導通抵抗値、絶縁抵抗値、ピール強度を試験評価した。
【0031】
<導通抵抗値>
異方性導電接続して得られた接続構造体について、デジタルマルチメーター(アドバンテスト社)を使用して4端子法により導通抵抗値(最大(Max.)、最小(Min.)、平均(Ave.))を測定した。得られた結果を表1に示す。実用上、最大値は10Ω以下、最小値は0.5Ω以下、平均は1〜5Ωであることが望まれる。
【0032】
<絶縁抵抗値>
異方性導電接続して得られた接続構造体の隣接端子間の絶縁抵抗を、20V印加条件下で測定した。絶縁抵抗値が10Ω以上をAと評価し、10〜10ΩをBと評価し、10Ω未満をCと評価した。実用上、評価がA又はBであることが望まれる。
【0033】
<ピール強度>
異方性導電接続して得られた接続構造体のリジッド印刷配線基板を固定し、フレキシブル配線回路フィルムを90度方向に、50mm/分の速度で引き剥がし、その際のピール強度を引張試験機を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。実用上、5N/cm以上であることが望まれる。













【0034】
【表1】



【0035】
表1から、特定の大きさとアスペクト比を有する金属フレーク粉を導電粒子として使用した本発明の異方性導電接着剤は、導通抵抗値、絶縁抵抗値及びピール強度について実用上問題のない特性を示した。一方、比較例1の異方性導電接着剤は、ニッケルフレークの含有量が5質量%を下回っていたので、導通抵抗値(最大)が高すぎて実用に向かないものであった。比較例2〜6の異方性導電接着剤は、ニッケルフレークの含有量が35質量%を超えていたので、隣接端子間で絶縁抵抗が保たれず、実用に向かないものであった。比較例7の異方性導電接着剤は、使用した金属フレークのアスペクト比が5を下回っていたので、導通抵抗値(最大)が高すぎて実用に向かないものであった。また、比較例8の異方性導電接着剤は、使用した金属フレークのアスペクト比が50を超えていたので、隣接端子間で絶縁抵抗が保たれず、実用に向かないものであった。そして比較例9の異方性導電接着剤は、金属フレークではなく球状導電粒子を使用したので、導通抵抗値(最大)が高く、実用に供せるものではなかった。
【0036】
実施例8、比較例10
実施例4又は比較例9の異方性導電接着剤を用い、仮接続後の異方性導電接続の際に、フレキブル印刷回路フィルムをコンスタントヒートボンダー(2mm幅)にて180℃で10秒間、以下の表2に示す接続圧力で異方性導電接続した。得られた接続構造体について、実施例1と同様に、導通抵抗値及び絶縁抗について試験評価した。得られた結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
表2から、本発明の異方性導電接着剤は、接続部に圧力を印加せずに、もしくは1MPa以下、特に0.5MPa以下の低圧条件下でも、良好な接続信頼性を確保できることがわかる。それに対し、球状導電粒子を使用した比較例10の場合には、実施例8の場合に比べて導通抵抗値が高く、低圧条件では良好な接続信頼性が確保することが困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の異方性導電接着剤は、導電粒子として、特定の大きさ、厚さ、アスペクト比を有する金属フレーク粉を使用する。従って、配線板の接続端子と電子部品の接続端子とを、この異方性導電接着剤を介在させて位置合わせして比較的低圧で仮接続した後、圧力を印加することなく又は従来に比べて比較的低い圧力の印加という条件下で加熱することにより、良好な接続信頼性を示す異方性導電接続が可能となる。よって、本発明の異方性導電接着剤は、接続部に対し、圧力フリー乃至低圧印加条件での異方性導電接続に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線板に電子部品を無圧力乃至低圧力で異方性導電接続するための異方性導電接着剤であって、導電粒子がバインダー樹脂組成物に分散されてなる異方性導電接着剤において、該導電粒子が、長径10〜40μm、厚みが0.5〜2μm、アスペクト比が5〜50の金属フレーク粉であり、且つ導電粒子の異方性導電接着剤中の含有量が、5〜35質量%であることを特徴とする異方性導電接着剤。
【請求項2】
金属フレーク粉が、ニッケルフレーク粉である請求項1記載の異方性導電接着剤。
【請求項3】
該バインダー樹脂組成物が、エポキシ樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有する請求項1又は2記載の異方性導電接着剤。
【請求項4】
25℃における粘度が、50〜200Pa・sである請求項1〜3のいずれかに記載の異方性導電接着剤。
【請求項5】
配線板の接続端子に請求項1記載の異方性導電接着剤を供給し、電子部品の接続端子を、異方性導電接着剤を介在させつつ基板の接続端子に仮接続し、電子部品に対し圧力を印加することなく若しくは低圧力を印加しながら加熱することにより基板と電子部品とを接続する異方性導電接続方法。
【請求項6】
加熱の際に電子部品に、1MPa以下の低圧力を印加する請求項5記載の異方性導電接続方法。
【請求項7】
仮接続の際に電子部品に、0.1〜1MPaの圧力を印加する請求項5又は6記載の異方性導電接続方法。

【公開番号】特開2009−105117(P2009−105117A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273612(P2007−273612)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】