説明

発毛の低減

哺乳類の発毛は、ファルネソイドX受容体の作用物質を適用することによって低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の、特に美容上の目的において発毛を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の毛の主要機能は、環境からの保護の提供である。しかし、その機能は、ヒトではほとんど失われており、毛は、本質的に美容上の理由から、身体の様々な部分で維持又は除去されている。例えば、一般に、頭皮に毛髪を有することは好まれるが、顔面に毛を有することは好まれない。
【0003】
剃毛、電解、脱毛クリーム又はローション、ワックス除毛、抜き毛、及び治療用抗アンドロゲン剤を含む種々の手順が、不必要な毛を除去するために使用されてきた。一般に、これらの従来の手順は、これらに伴う欠点を有する。例えば、剃毛は、切り傷をもたらすことがあり、毛の再生の速度が速まる感覚を残すことがありうる。また、剃毛は、望ましくない刈り株を残すことがありうる。一方電解は、処置領域を毛がない状態に長期間保つことができるが、高価で痛みを伴い、時には瘢痕を残すことがありうる。脱毛クリームは、非常に有効であるが、典型的には、それらの高い刺激可能性がゆえに頻繁な使用は推奨されない。ワックス除毛及び抜き毛は、痛み、不快感、及び短い毛の不十分な除去をもたらすこともありうる。最後に、抗アンドロゲン剤―これは、女性の多毛症を処置するために使用されてきた―は、望ましくない副作用をもたらすことがありうる。
【0004】
発毛の速度及び性質は、特定の酵素の皮膚阻害物質の適用によって変わりうることが、以前に開示されている。これらの阻害物質としては、5−αレダクターゼの阻害物質(例えば、ブルューア(Breuer)ら、米国特許第4,885,289号を参照)、オルニチンデカルボキシラーゼ(例えば、シャンダー(Shander)、米国特許第4,720,489号を参照)、S−アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ(例えばシャンダー(Shander)の米国特許第5,132,293号を参照)、アデニロスクシネートシンターゼ(例えばオールワリア(Ahluwalia)、米国特許第5,095,007号を参照)、アスパルテートトランスカルバミラーゼ(例えばオールワリア(Ahluwalia)、米国特許第5,095,007号を参照)、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(例えば、オールワリア(Ahluwalia)ら、米国特許第5,096,911号を参照)、トランスグルタミナーゼ(例えばシャンダー(Shander)ら、米国特許第5,143,925号を参照)、L−アスパラギンシンセターゼ(例えばオールワリア(Ahluwalia)、米国特許第5,444,090号を参照)、5−リポキシゲナーゼ(例えばオールワリア(Ahluwalia)ら、米国特許第6,239,170号を参照)、シクロオキシゲナーゼ(例えば、オールワリア(Ahluwalia)ら、米国特許第6,248,751号を参照)、酸化窒素シンターゼ(例えばオールワリア(Ahluwalia)ら、米国特許第5,468,476号を参照)、オルニチンアミノトランスフェラーゼ(例えばシャンダー(Shander)ら、米国特許第5,474,763号を参照)、L−メチオニンS−アデノシルトランスフェラーゼ、L−ホモシステインS−メチルトランスフェラーゼ、S−アデノシルホモシステインヒドロリアーゼ、シスタチオニンシンターゼ及びシスタチオナーゼを含むシステイン合成経路酵素(例えばオールワリア(Ahluwalia)ら、米国特許第5,455,234号を参照)、HMGCoAレダクターゼ及びスクアレンシンセターゼを含むコレステロール合成経路酵素(例えばヘンリー(Henry)ら、米国特許第5840752号を参照)、プロテインキナーゼC(例えばオールワリア(Ahluwalia)ら、米国特許第5,554,608号を参照)、アルギナーゼ(例えばシャンダー(Shander)ら、米国特許第5,728,736号を参照)、マトリックスメタロプロテナーゼ(例えば、スティツィンスキー(Styczynski)ら、米国特許第5,962,466号を参照)、DNAトポイソメラーゼ(DNA topoisomerase)(例えば、スティツィンスキー(Styczynski)ら、米国特許第6,037,326号を参照)、アミノアシル−tRNAシンセターゼ(例えばヘンリー(Henry)ら、米国特許第5,939,458号を参照)、デオキシハイプシンシンターゼ及びデオキシハイプシンヒドロキシラーゼを含むハイプシン生合成経路酵素(例えばスティツィンスキー(Styczynski)ら、米国特許第6,060,471号を参照)、アルカリホスファターゼ(例えばスティツィンスキー(Styczynski)ら、米国特許第6,020,006号を参照)、及びタンパク質−チロシンキナーゼ(例えばヘンリー(Henry)ら、米国特許第6,121,269号を参照)が挙げられる。
【0005】
米国特許第5,908,867号(ヘンリー(Henry)ら)は、糖蛋白質類、プロテオグリカン類(proteglycans)又はグリコサミノグリカン類の形成を阻害することによって、例えばN−アセチルグルコサミン−ピロホスホリル−ドリチル、コンドロイチン(chondrotin)スルフェート、ケラチンスルフェート、デルマタンスルフェート、ヘパランスルフェート、ヘパリン、ヒアルロン酸の合成の阻害物質、Glc3Man9−(GlcNAc)2−PP−ドリコール又はグリコサミノグリカンヒアルロン酸の形成の阻害物質、Glc3Man9−(GlcNAc)2の転写の阻害物質、酵素:グルコシダーゼI、グルコシダーゼII、マンノシダーゼI、マンノシダーゼII、及びβ−ガラクトシダーゼの阻害物質、並びにプロテオグリカン類のエクソサイトーシスに影響を及ぼす化合物を使用することによって、哺乳類の発毛を低減する方法を記載する。
【0006】
米国特許第5,652,273号、米国特許第5,824,665号及び米国特許第6,218,435号(全て、ヘンリー(Henry)らに対して発行)は、グルコースのアセチル−Co−Aへの転化のための代謝経路の抑制によって哺乳類の発毛を低減する方法を記載する。これは、とりわけ、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、アルドラーゼ、ホスホグリセレートキナーゼ、エノラーゼ、ピルベートキナーゼ又はピルベートデヒドロゲナーゼの阻害によって、又はグルコース転写の阻害物質によって行うことができる。
【0007】
発毛を調節するための他の方法としては、例えばスティツィンスキー(Styczynski)らによる米国特許第5,958,946号に記載されるように、アンドロゲンの抱合を誘導又は活性化する化合物の使用、例えばスティツィンスキー(Styczynski)らによる米国特許第6,235,737号に記載されるような、細胞セラミドレベルを増大させる化合物の使用、例えばオールワリア(Ahluwalia)による米国特許第6,093,748号に記載される脈管形成の非ステロイド性抑制剤の使用、例えば米国特許第5,674,477号及び米国特許第5,776,442号(オールワリア(Ahluwalia))に記載されるようなカテキン化合物の使用、例えばシャンダー(Shander)らによる米国特許第5,411,991号に記載されるようなスルフヒドリル反応性化合物の使用、及び例えばオールワリア(Ahluwalia)らによる米国特許第5,364,885号に記載されるようなパントテン酸又はそれらの類縁体の使用が挙げられる。PCT国際公開特許WO03086331(オールワリア(Ahluwalia)ら)は、脂肪酸代謝の阻害物質の局所適用によって哺乳類の発毛を低減できることを開示する。PCT国際公開特許WO2005/051335(ハン(Hwang)ら)は、発毛の低減のためのプロスタグランジンDP受容体の作用物質の使用を記載する。
【0008】
ファルネソイドX受容体(「FXR」、「RIP14」、「胆汁酸受容体」、「BAR」、「HRR1」及び「NR1H4」としても知られる)は、対象とする遺伝子のプロモーターにおいて特定のシス作用型調節エレメントに結合し、配位子に応じて遺伝子発現を調節する配位子活性化転写因子群の1つである。二量体としてその対象遺伝子に結合するこれらの受容体の一部は、同じ受容体2分子(ホモ二量体)から成る一方で、二量体として結合する他のものは、2つの異なる受容体それぞれ一分子(ヘテロ二量体)から成る。ファルネソイドX受容体は、レチノイドX受容体(RXR)と共にヘテロ二量体を形成し、その対象遺伝子のプロモーターにおいて1つのヌクレオチドに対して隔てた逆方向ヘキサヌクレオチド反復に結合する。ファルネソイドX受容体は、ファルネソイド類及び胆汁酸類のような配位子との相互作用によって活性化される。さらに、配位子活性化ファルネソイドX受容体と基本転写機構とを繋ぎ、及び/又はクロマチン構造に影響を及ぼすコアクチベーター(DRIP205/TRAP220、SRC−1及びPGC−1α)は、ファルネソイドX受容体の転写活性を向上できる。
【0009】
ファルネソイドX受容体は、胆汁酸の合成及び転写に含まれる遺伝子の発現を調節することによって胆汁酸のホメオスタシスを維持するのを助ける。胆汁酸類は、コレステロール異化作用の最終生成物である。胆汁酸の合成は、過剰のコレステロールの排出のために優勢な機構である。ヒトにおいて大部分の胆汁酸類は、ケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸及びリトコール酸である。胆汁酸類の濃度が増大すると同時に、ファルネソイドX受容体は活性化され、胆汁酸排出に関与する胆汁酸塩の排出ポンプの発現を促進する。胆汁酸排出に加えて、胆汁酸活性化ファルネソイドX受容体は、胆汁酸生合成経路における速度制限酵素であるコレステロール7α−ヒドロキシラーゼ(CYP7A1)の転写を抑制する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの態様において本発明は、発毛を低減するのに有効な量でファルネソイドX受容体の作用物質を皮膚に適用することによって、哺乳類(好ましくはヒト)の不必要な発毛を低減する方法(典型的には、美容方法)を提供する。好ましくは、作用物質はファルネソイドX受容体と強く相互作用する。不必要な発毛は、美容的観点から望ましくない場合がある。
【0011】
別の態様では、本発明は、胆汁酸類、胆汁酸類の類縁体、及び胆汁酸類の誘導体から成る群から選択される化合物を皮膚に適用することによって、哺乳類の不必要な発毛を低減する方法を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、ファルネソイド類、ファルネソイド類の類縁体、及びファルネソイド類の誘導体から成る群から選択される化合物を皮膚に適用することによって、哺乳類の不必要な発毛を低減する方法を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、FXR−RXRヘテロ二量体の形成、ファルネソイドX受容体の発現を増大させ、又はコアクチベーター補充及びFXR−RXRヘテロ二量体との相互作用を促す化合物を、皮膚に適用することによって不必要な哺乳類の発毛を低減する方法を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、上記の作用物質/化合物のいずれかを適用することによって肌の角質を取り除いた皮膚に利益をもたらす方法を提供する。
【0015】
典型的には、上記の方法を実践するにあたり、作用物質/化合物は、皮膚科学的に又は美容上許容可能なビヒクルと共に局所適用組成物の中に含まれるであろう。それ故に、本発明はまた、皮膚科学的に又は美容上許容可能なビヒクル及びファルネソイドX受容体の作用物質を含む局所適用組成物に関する。本発明はさらに、皮膚化学的に又は美容上許容可能なビヒクル、並びに(a)胆汁酸類、胆汁酸類の類縁体及び誘導体から成る群から選択される化合物、(b)ファルネソイド類、ファルネソイド類の類縁体及び誘導体から成る群から選択される化合物、及び/又は(c)FXR−RXRヘテロ二量体の形成を増大させる、ファルネソイドX受容体の発現を増大させる、又はコアクチベーターの補助及びFXR−RXRヘテロ二量体との相互作用を促す化合物を含む局所適用組成物に関する。
【0016】
さらに、本発明は、発毛を低減するための治療的局所適用組成物の製造のための、ファルネソイドX受容体の作用物質の使用に関する。本発明はさらに、発毛を低減する治療的局所適用組成物を製造するための化合物の使用に関し、ここでこの化合物は、(a)胆汁酸類、胆汁酸類の類縁体及び誘導体から成る群から選択される化合物、(b)ファルネソイド類、ファルネソイド類の類縁体及び誘導体から成る群から選択される化合物、及び/又は(c)FXR−RXRヘテロ二量体の形成を増大させる、ファルネソイドX受容体の発現を増大させる、又はコアクチベーターの補助及びFXR−RXRヘテロ二量体との相互作用を促す化合物である。
【0017】
一部の実施形態では、作用物質/化合物は、E−ジフルオロメチルオルニチンのカルバメート又はエステルではない。E−ジフルオロメチルオルニチンのカルバメート類、エステル類、及びその他の共役体は、本願と同一の所有者に所有され、本明細書に参考として組み込まれる、2003年3月26日に出願されたU.S.S.N.10/397,132に記載されている。
【0018】
本明細書で使用する時、「ファルネソイドX受容体の作用物質」とは、ファルネソイドX受容体を活性化する化合物を意味する。
【0019】
ファルネソイドX受容体と「強く相互作用する」作用物質は、ファルネソイド類によって誘発される場合と(大きさにおいて)少なくともほぼ同様の応答を誘発するような親和性を持って受容体と結合するものである。
【0020】
特定の化合物には、化合物自体と、その化合物の薬理学上許容可能な塩類との両方が含まれる。
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、発明を実施するための最良の形態及び請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
好ましい組成物の例は、美容上及び/又は皮膚科学的に許容可能なビヒクル中のファルネソイドX受容体の少なくとも1つの作用物質を含む。組成物は、固体、半固体、又は液体であってもよい。組成物は、例えば、軟膏、ローション、フォーム、クリーム、ゲル、又は溶液の形態の、例えば、美容及び皮膚用製品であってもよい。組成物はまた、剃毛調製物、アフターシェーブ又は制汗剤の形態であってもよい。ビヒクル自体は、不活性であることができるか、あるいはそれ自体の美容的、生理学的及び/又は薬学的利益を有することができる。
【0023】
ファルネソイドX受容体の作用物質の例としては、胆汁酸類、ファルネソイド類、それらの類縁体及び誘導体、並びにその他の化合物が挙げられる。
【0024】
胆汁酸類の誘導体及び類縁体は既知である。例えば、J.Med.Chem.(2004)、47、4559−4569は胆汁酸誘導体を記載する。J.Biol.Chem(2004)、279(10)、8856−8861は種々の胆汁酸類を記載する。ファルネソイド類の誘導体及び類縁体は既知である。例えば米国特許第6187814号は、ファルネソイド誘導体を記載する。ファルネソイドX受容体の作用物質のその他の例は、PCT国際公開特許WO2004007521、PCT国際公開特許WO03015771、PCT国際公開特許WO2004048349、PCT国際公開特許WO03076418、PCT国際公開特許WO2004046162、PCT国際公開特許WO03060078、PCT国際公開特許WO02072598、PCT国際公開特許WO03080803、PCT国際公開特許WO2003086303、PCT国際公開特許WO2004046068、米国特許第20030187042号、米国特許第0040176426号、米国特許第20040180942号、米国特許第6452032号、米国特許第2003203939号、米国特許第2005004165、J.med.Chem.(2000)、43(6)、2971−2974、Mol.Gen.Met.(2004)、83、184−187、Drug for the future91999)、24(4)、431−438、Current Pharmaceutical Design(2001)、7、231−259に開示されている。FXR−RXRヘテロ二量体(hetrodimer)に含まれるコアクチベーターの例は、Genes&Dev.(2004)、18、157−169及びJ.Biol.Chem.(2004)、279(35)、36184−36191に開示されている。これらの参照文献の全ては、参考として組み込まれる。
【0025】
ファルネソイドX受容体の作用物質の特定例を表Iに示す。
【0026】
【表1】

【0027】
組成物は、1を越えるファルネソイドX受容体を含んでいてもよい。加えて、組成物は1つ以上の他の種類の発毛の低減剤を含んでもよく、例えば、米国特許第4,885,289号、米国特許第4,720,489号、米国特許第5,132,293号、米国特許第5,096,911号、米国特許第5,095,007号、米国特許第5,143,925号、米国特許第5,328,686号、米国特許第5,440,090号、米国特許第5,364,885号、米国特許第5,411,991号、米国特許第5,648,394号、米国特許第5,468,476号、米国特許第5,475,763号、米国特許第5,554,608号、米国特許第5,674,477号、米国特許第5,728,736号、米国特許第5,652,273号、PCT国際公開特許WO94/27586、PCT国際公開特許WO94/27563、及びPCT国際公開特許WO98/03149で記載されているものであり、これらは全て参考として本明細書に組み込まれる。
【0028】
前記組成物中の前記作用物質の濃度は、飽和溶液までの広範囲にわたって変えることができ、好ましくは0.1重量%〜30重量%まで、又は更にそれ以上であり、発毛の低減は、皮膚の単位面積当たりに適用される作用物質の量が増加すると、増強する。効果的に適用される最大量は、作用物質が皮膚に浸透する速さによってのみ限定される。有効量は、例えば、皮膚の1平方センチメートル当たり10〜3000マイクログラム、又はそれよりも上の範囲であってもよい。
【0029】
ビヒクルは、不活性であることができるか、又は、それ自体の美容的、生理学的及び/又は薬学的利益を有することができる。ビヒクルは、液体又は固体皮膚軟化剤、溶媒、増粘剤、保湿剤、及び/又は粉末と共に配合できる。皮膚軟化剤としては、ステアリルアルコール、ミンク油、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ポリエチレングリコール、石油ゼリー、パルミチン酸、オレイン酸、及びミリスチルミリステートが挙げられる。溶媒としては、エチルアルコール、イソプロパノール、アセトン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0030】
組成物は任意に、皮膚への及び/又は作用部位への作用物質の浸透を増進させる構成成分を含むことができる。浸透増進剤の例としては、尿素、ポリオキシエチレンエーテル類(例えば、ブリジ(Brij)−30及びラウレス(Laureth)−4)、3−ヒドロキシ−3,7,11−トリメチル−1,6,10−ドデカトリエン、テルペン類、シス−脂肪酸類(例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸)、アセトン、ラウロカプラム(laurocapram)、ジメチルスルホキシド、2−ピロリドン、オレイルアルコール、グリセリル−3−ステアレート、プロパン−2−オール、ミリスチン酸イソプロピルエステル、コレステロール、及びプロピレングリコールが挙げられる。浸透増進剤は、例えば、0.1重量%〜20重量%、又は0.5重量%〜5重量%の濃度で添加できる。
【0031】
また、組成物は、作用物質を連続的に持続放出するために、皮膚の内部又は表面上に貯蔵所(reservoir)を提供するように調製できる。また、前記組成物は、皮膚からゆっくり蒸発するように調製し、作用物質が更に時間をかけて皮膚に浸透可能になるようにすることもできる。
【0032】
ファルネソイドX受容体の作用物質を含有する局所適用クリーム組成物は、水及び全ての水溶性構成成分を混合容器−Aにて共に混合することによって調製されてもよい。pHは、約3.5〜8.0の所望の範囲に調整される。成分を完全に溶解するために、容器の温度を45℃まで上げてもよい。pH及び温度の選択は、作用物質の安定性に依存するであろう。防腐剤及び香料構成成分を除く油溶性構成成分を、別の容器(B)内で一緒に混合し、構成成分を溶融及び混合するために70℃まで加熱する。容器Bの加熱された内容物を、水相(容器A)に、勢いよく攪拌しながら注ぐ。混合は、約20分間続ける。防腐剤構成成分を、約40℃の温度で添加する。8Pa・s(8,000cps)〜12Pa・s(12,000cps)の粘度又は所望の粘度の軟質クリームを得るため、温度が約25℃に達するまで攪拌を続ける。内容物がまだ混合されており、粘度は所望の範囲まで高まっていない状態で、香料構成成分を約25℃〜30℃で添加する。得られるエマルションの粘度を上げることが望まれる場合、従来のホモジナイザー、例えば、角穴高剪断スクリーンを有するシルバーソン(Silverson)L4Rホモジナイザーを使用して、剪断を行なうことができる。局所適用組成物は、製剤調製の間に水相に作用物質を含ませることにより作製することができるか、又は製剤(ビヒクル)調製が完了した後で添加することができる。また、作用物質は、ビヒクル調製のいずれかの工程で添加することもできる。一部のクリーム製剤の構成成分は、下記の実施例に記載されている。
【実施例】
【0033】
実施例1
【0034】
【表2】

aポリクオタニウム(Polyquartinium)−51(コラボレイティブ・ラボ(Collaborative Labs)、ニューヨーク)。
bグリセリン、水、ナトリウムPCA、尿素、トレハロース、ポリクオタニウム(polyqauternium)−51、及びヒアルロン酸ナトリウム(コラボレイティブ・ラボ(Collaborative Labs)、ニューヨーク)。
【0035】
実施例2
【0036】
【表3】

【0037】
実施例3
【0038】
【表4】

【0039】
実施例4
【0040】
【表5】

【0041】
ファルネソイドX受容体の作用物質は、実施例4の製剤に添加され、溶解するまで混合される。
【0042】
実施例5
【0043】
【表6】

【0044】
ファルネソイドX受容体の作用物質は、実施例5の製剤に添加され、溶解するまで混合される。
【0045】
実施例6
【0046】
【表7】

【0047】
ファルネソイドX受容体の作用物質は、実施例6の製剤に添加され、溶解するまで混合される。
【0048】
実施例7
【0049】
【表8】

【0050】
ファルネソイドX受容体の作用物質は、実施例7の製剤に添加され、溶解するまで混合される。
【0051】
実施例8
【0052】
【表9】

【0053】
ファルネソイドX受容体の作用物質は、実施例8の製剤に添加され、溶解するまで混合される。
【0054】
ファルネソイドX受容体の作用物質を含有するヒドロアルコール性製剤は、混合容器にて製剤構成成分を混合することによって調製される。
【0055】
製剤のpHは、3.5〜8.0の範囲の所望の値に調整される。このpH調整は、製剤成分を完全に溶解するためにも実施することができる。加えて、作用物質の安定性に応じて、製剤成分の溶解を達成するために、加熱を45℃まで、更には70℃まで適用することができる。2つのヒドロアルコール性製剤の構成成分を以下に列挙する。
【0056】
実施例9
【0057】
【表10】

aカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(アビテック社(Abitec Corp.)、オハイオ州)。
【0058】
実施例10
【0059】
【表11】

【0060】
実施例11
【0061】
【表12】

【0062】
ファルネソイドX受容体の作用物質は、実施例11の製剤に添加され、溶解するまで混合される。
【0063】
組成物は、発毛を低減することが望まれる、身体の選択された領域に局所的に適用されるべきである。例えば、組成物は、顔、特に顔の髭領域、すなわち、頬、首、上唇及び顎に適用できる。組成物は、また、剃毛、ワックス除毛、機械式脱毛、化学的除毛、電解及びレーザー補助脱毛を含む、他の脱毛法の補助剤として使用されてもよい。こうした概念を現実化するための他の作用も、発毛の低減と共に皮膚利益をもたらす。
【0064】
また、組成物は、脚、腕、胴体、又は腋の下にも適用できる。組成物は、例えば女性の不必要な毛の成長を低減するために適している。ヒトにおいては、発毛の低減を感知できることを達成するために、組成物は、1日1回又は2回、あるいは更により頻繁に適用されるべきである。発毛の低減の感知は、早くも使用後24時間又は48時間(例えば、通常の剃毛の間隔)で起こることがあり得るか、あるいは、例えば最大3か月までかかることがあり得る。発毛の低減は、例えば、発毛の速度が遅くなるか、除去の必要性が軽減されるか、対象者が処置部位に毛が少ないことを感知するか、又は定量的には、除去された毛の重量(すなわち、毛の量)が減少するときに実証される。
【0065】
ヒトの毛嚢成長試験法:
解剖用スコープの下で、外科用メス及び時計製造用ピンセットを用いて、しわ取りを行った組織(形成外科医から取得したもの)からヒトの増殖期(成長期)の毛嚢を分離させた。皮膚を薄い細片にスライスし、分析しやすそうな毛嚢の2〜3列を露出させた。毛嚢に、2mMのL−グルタミン、10μg/mLのインスリン、10ng/mLのヒドロコルチゾン、100単位のペニシリン、0.1mg/mLのストレプトマイシン及び0.25μg/mLのアンホテリシンBを補充したウィリアムE培地(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)(メリーランド州、ガイサーズバーグ(Gaithersburg))0.5mLに配置した。毛嚢は、5%CO2及び95%空気の雰囲気下、24ウェルプレート(1毛嚢/ウェル)において37℃でインキュベートした。化合物は、100倍の原液としてジメチルスルホキシドに溶解する。対照の毛嚢は、プロスタグランジンなしでジメチルスルホキシドで処理した。解剖用スコープの下で前記毛嚢を24ウェルプレート内で倍率10倍で撮影した。典型的には、0日目(毛嚢を培養物内に配置した日)に画像記録を行い、7日目に再度行った。画像分析ソフトウェアシステムを用いて毛嚢の長さを算定した。0日目の毛嚢の長さを7日目に測定した長さから減じることによって、毛の繊維の成長度合を算出した。
【0066】
ハムスターの毛量試験法
ハムスターの毛量を、先行特許(US2004/0198821)に記載されるものと同様の方法を用いて測定した。
【0067】
ファルネソイドX受容体の作用物質は、ヒトの毛嚢成長の顕著な低減を示した。試験されたファルネソイドX受容体の作用物質の6つ全てが、毛の成長の顕著な低減を示した。結果を表IIに示す。ファルネソイドX受容体の作用物質による発毛阻害特性は、用量依存性であることがわかった。結果を表IIIに示す。
【0068】
【表13】

【0069】
【表14】

【0070】
さらに、ファルネソイド(farnestoid)X受容体の作用物質は、ハムスターの毛量試験法にて試験した。作用物質は、表IVに示されるようにインビボにて毛量を低減した。
【0071】
【表15】

*ビヒクルは、90%のエタノール及び10%のプロピレングリコールを含有する。
【0072】
それ故、その他の実施形態は以下の請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の発毛を低減する美容方法であって、
発毛の低減が望まれる皮膚の領域を選択する工程、及び
発毛を低減するのに有効な量でファルネソイドX受容体の作用物質を含む皮膚科学的に許容可能な組成物を前記皮膚の領域に適用する工程を含み、
前記作用物質が、E−ジフルオロメチルオルニチン及びファルネソールのカルバメート又はエステルでないことを特徴とする美容方法。
【請求項2】
前記作用物質が胆汁酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作用物質が胆汁酸の類縁体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記作用物質が胆汁酸の誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記作用物質がファルネソイドX受容体と強く相互作用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記作用物質が、リトコール酸、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、6−α−エチルケノデオキシコール酸又はこれら2種以上の混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記作用物質がファルネソイドであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記作用物質がファルネソイドの類縁体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記作用物質がファルネソイドの誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記作用物質が、ファルネソール、ファルネサール、ファルネシルアセテート、ファルネシル酸、メチルファルネシルエーテル、メチルファルネソエート、エチルファルネシルエーテル、エチルファルネソエート又はこれら2種以上の混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記作用物質が、7−メチル−9−(3,3−ジメチルオキシバニル)−3−メチル−2,6−ノナジエン酸メチルエステル(幼若ホルモンIII)であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記作用物質が、7−メチル−9−(3,3−ジメチルオキシバニル)−3−メチル−2,6−ノナジエン酸エチルエステルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記作用物質が、3α,7α−ジヒドロキシ−6α−エチル−5p−コラン−24−酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記作用物質が、3α,7α−ジヒドロキシ−6α−プロピル−5p−コラン−24−酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記作用物質が、3α,7α−ジヒドロキシ−6α−アリル−5p−コラン−24−酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記作用物質が、ベンゼンスルホンアミド,N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−N−[4−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]−であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記作用物質が、安息香酸,3−[2−[2−クロロ−4−[[3−(2,6−ジクロロフェニル)−5−(l−メチルエチル)−4−イソキサゾリル]メトキシ]フェニル]エテニル]−であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記作用物質が、ホスホン酸,[[3,5−ビス(l,l−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]エテニリデン]ビス−,テトラエチルエステルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記作用物質が、ホスホン酸,[2−[3,5−ビス(l,l−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]エチリデン]ビス−,テトラキス(l−メチルエチル)エステルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記作用物質が、ホスホン酸,[2−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]エチリデン]ビス−,テトラエチルエステルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記作用物質が、ホスホン酸,[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]エテニリデン]ビス−,テトラキス(1−メチルエチル)エステルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物中の前記作用物質の濃度が0.1%〜30%であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、ヒトの毛嚢試験法にて試験される場合に、少なくとも30%の発毛を低減することを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記作用物質が、皮膚1平方センチメートル当たり前記作用物質10〜3000マイクログラムの量で前記皮膚に適用されることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記皮膚領域がヒトの顔面であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、剃毛と併せて前記皮膚領域に適用されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記皮膚領域がヒトの脚又は腕上であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記皮膚領域が腋の下であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記皮膚領域がヒトの胴体上であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記発毛がアンドロゲン刺激発毛を含むことを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、同じく発毛の低減を引き起こす第2の構成成分をさらに含むことを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
哺乳類の発毛を低減する美容方法であって、
発毛の低減が所望される毛嚢を含む皮膚領域を選択する工程、及び
胆汁酸類、胆汁酸類縁体、及び胆汁酸誘導体から成る群から選択される化合物を含む皮膚科学的に許容可能な組成物を、発毛を低減するのに有効な量で前記皮膚領域に適用する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
哺乳類の発毛を低減する美容方法であって、
発毛の低減が所望される毛嚢を含む皮膚領域を選択する工程、及び
E−ジフルオロメチルオルニチン及びファルネソールのカルバメート又はエステル以外の化合物を含む皮膚科学的に許容可能な組成物を発毛を低減するのに有効な量で前記皮膚領域に適用する工程を含み、
前記化合物は、FXR−RXRヘテロ二量体の形成を増大させる化合物、コアクチベーター補充及びFXR−RXRとの相互作用を促す化合物、及びファルネソイドX受容体の発現を増大させる化合物から成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項34】
ファルネソイドX受容体の作用物質を、肌の角質を取り除いた皮膚領域に適用する工程を含むことを特徴とする肌の角質を取り除いた皮膚領域を処置する方法。
【請求項35】
前記肌の角質を取り除いた皮膚領域が、ファルネソイドX受容体の作用物質を適用する前に剃毛されていることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記薬剤を適用する領域にて発毛を阻害するための薬剤の調製におけるファルネソイドX受容体の作用物質の使用。

【公表番号】特表2008−542372(P2008−542372A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514674(P2008−514674)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/018663
【国際公開番号】WO2006/130330
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(500006524)ザ ジレット コンパニー (14)
【Fターム(参考)】