説明

発電機

【課題】風や水などの流体の運動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換する発電機を提供することを目的とする。
【解決手段】、ケース2の内部に円形断面を有するコイル10と、このコイル10の回転軸と同じ回転軸上に設けられた磁石20とを具備してなるもので、第一の回転体31が風から回転エネルギーを得てコイル10を従動回転させる第一の回転機構30と、第二の回転体41が風から回転エネルギーを得て磁石20をコイル10の回転方向とは逆方向に従動回転させる第二の回転機構40とを備える。そして、これら第一の回転体31の回転軸と第二の回転体41の回転軸を風の流れ方向に沿って設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風や水などの流体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風や水などの流体の運動エネルギーをもとに発電する発電機としては、下記の特許文献1や特許文献2に記載されるようなものが存在する。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図5に示すように、ケース2c内に複数の傘歯車60を設け、従動ローラ61が自転車の車輪や風車などの円板状の外部回転体80から駆動力を受けることによって(図6参照)コイル10cと磁石20cをそれぞれ逆方向に回転させる発電機1cが開示されている。また、下記の特許文献2には、図7に示すように、第一の従動ローラ71と第二の従動ローラ72を自転車の車輪の対称となるそれぞれ接触させ、コイル10dと磁石20dとをそれぞれ逆方向に回転させることによって大きな誘導起電力を発生させるようにした発電機1dが開示されている。
【特許文献1】実開平5−78179号公報
【特許文献2】特開2003−235223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の発電機においては、自転車などの車輪に接触する発電機として利用した場合、エネルギー変換効率の観点からすると、自転車の車輪の回転が重くなるだけであって、エネルギーの変換効率は良くならない。また、このような発電機を風車の発電機として用いた場合、例えば、10m/sの風が風車に当たって、風車を回転させ、その下流側で8m/sへと変化した場合、2m/sの風の運動エネルギーが電気エネルギーへと変換されることになるが、この場合、まだ8m/sの風の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換することができない。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決するために、風や水などの流体を用いて発電する発電機において、効率よく流体の運動エネルギーを電気エネルギーに変換することのできる発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、ケース内にコイルと磁石を有し、コイルを一方向に回転させ、磁石をコイルと逆方向に回転させることによって誘導起電力を発生させる発電機において、風や水などの流体の運動エネルギーによりコイルを一方向に回転させる第一の回転体と、流体の運動エネルギーにより磁石をコイルの回転方向とは逆方向に回転させる第二の回転体とを備え、第一の回転体の回転軸と第二の回転体の回転軸とを流体の流れ方向に沿って設けるようにしたものである。
【0007】
このように構成すれば、流体の運動エネルギーの一部が第一の回転体の回転エネルギーに変換され、次に、下流側に設けられた第二の回転体によってその運動エネルギーを回転エネルギーへと変換させることができるため、効率的に流体の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換することができる。具体的には、例えば、図1に示すように、10m/sの風が第一の回転体に当たって8m/sの風速に変化し、さらに、その下流側の第二の回転体で6m/sの風速へと変化した場合、4m/sの風力の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換することができる。
【0008】
また、このような発明において、流れの下流側に設けた回転体の面積を上流側に設けた回転体の面積よりも大きくする。
【0009】
このように構成すれば、上流側の第一の回転体によって乱れた風を下流側の大きな回転体で効率よく回転させることができるようになる。
【0010】
さらには、このように下流側の回転体の面積を大きくするとともに、ケースを流れ方向に沿って自由に回転させる首振り機構を設けるようにする。
【0011】
このように構成すれば、下流側の大きな回転体による空気抵抗が大きくなるため、矢羽根などを設けなくても、常にそれぞれの回転体を風位に立てることができるようになる。
【0012】
また、第二の発明では、分流された一方の流体の運動エネルギーによりコイルを回転させる第一の回転体と、分流された他方の流体の運動エネルギーにより磁石を回転させる第二の回転体とを設けるようにする。
【0013】
このように構成した場合も、分流されたそれぞれの流体を二つの回転体に流体を当ててコイルと磁石とを逆回転させることができるため、流体の運動エネルギーを効率よく電気エネルギーへと変換して、大きな誘導起電力を発生させることができるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケース内にコイルと磁石を有し、コイルを一方向に回転させ、磁石をコイルの回転方向と逆方向に回転させることによって誘導起電力を発生させる発電機において、風や水などの流体の運動エネルギーによりコイルを一方向に回転させる第一の回転体と、流体の運動エネルギーにより磁石をコイルと逆方向に回転させる第二の回転体とを備えるようにしたので、効率的に流体の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一実施形態を示す発電機1の斜視図であり、図2は、図1におけるA−A断面を示した図、また、図3は、図1におけるB−B断面を示した図である。なお、図面では理解を容易にするために、第一の回転体31と第二の回転体41を実際の寸法よりも小さく表示している。
【0016】
この発電機1は、ケース2の内部に略円柱状をなすコイル10と、このコイル10の回転軸と同じ軸方向に回転する磁石20とを備えてなるもので、プロペラ状に構成された第一の回転体31にコイル10を連結するとともに、プロペラ状に構成された第二の回転体41に磁石20を連結している。そして、風などの流体の運動エネルギーを得て第一の回転体31と第二の回転体41をそれぞれ逆方向に回転させ、ケース2内に設けられたコイル10と磁石20をそれぞれ逆方向に回転させることによって、大きな誘導起電力を発生させるようにしたものである。以下、この発電機1の構成について具体的に説明する。
【0017】
ケース2は、内部にコイル10と磁石20をそれぞれ回転可能に保持するもので、円柱状をなす両端中央部に設けられた開口端部2aを介して、コイル10を回転させる第一の回転機構30と磁石20を回転させる第二の回転機構40を保持するようにしている。そして、このケース2の下端部分には、首振り機構4を介して地面に立脚させる支持部材5が取り付けられている。この首振り機構4は、支持部材5の軸方向にケース2を自由に回転させるもので、内部に図示しないベアリングなどを設けて回転自由に構成される。なお、この首振り機構4については、ベアリングなどによって自由に回転させる機構だけでなく、例えば、風向や風力を計測することによってケース2の方向を自動で制御するヨー駆動装置を設けるようにしてもよい。
【0018】
このケース2に保持される第一の回転機構30は、風から運動エネルギーを得て回転する第一の回転体31と、図3に示すように、略円形断面を有する鉄芯11に導線12を巻き付けて構成されたコイル10と、この第一の回転体31の回転中心とコイル10の回転中心とを連結する軸部材32と、ブラシ部材3との接触によって整流する分離された整流子33とを具備して構成され、固定金具34を介して軸部材32をケース2の開口端部2aなどによって回転可能に支持してコイル10の回転を許容している。この第一の回転体31は、複数枚のプロペラ要素31aと、このプロペラ要素31aと軸部材32を連結するハブ31bとを具備してなり、第一の回転体31の回転軸に沿って流れる風からの運動エネルギーを得て第一の回転体31を一方向に回転させる。このコイル10は、略円形断面を有する鉄芯11と導線12とを備えてなり、図3に示すように、鉄芯11に導線12を巻き付けて構成される。そして、導線12のそれぞれの端部を分離した二つ整流子33に接続し、ケース2に取り付けられた2つのブラシ部材3を介して誘導起電力を外部に出力する。この整流子33は、一般的なモータに取り付けられている整流子と同様に、軸部材32上に絶縁部材を介して取り付けられる。そして、コイル10を回転させることによって、交互にブラシ部材3との接触を切り替え、誘導起電力を外部出力端子から出力する。
【0019】
また、第二の回転機構40は、風から運動エネルギーを得て回転する第二の回転体41と、図2に示すように、円柱二極磁石21上にヨーク22を立脚させた磁石20と、この第二の回転体41の回転中心と磁石20の回転中心とを連結する軸部材42とを備えて構成され、この軸部材42をケース2の他方側の開口端部2aや固定金具34などで回転可能に支持して磁石20の回転を許容している。この第二の回転体41は、第一の回転体31よりも相対的に大きく構成された複数枚のプロペラ要素41aと、このプロペラ要素41aと軸部材42を連結するハブ41bとを具備してなり、このプロペラ要素41aを第一の回転体31の回転方向とは逆方向に回転させるようにしている。なお、第二の回転体41を第一の回転体31よりも大きくすれば、風が吹いてきた場合に、第二の回転体41の空気抵抗が大きくなるため、必然的に第二の回転体41が下流側に位置するようになり、常に、第一の回転体31と第二の回転体41の回転軸を流体の流れ方向に沿わせるようにすることができる。
【0020】
次に、このように構成した発電機1の使用状態について説明する。
【0021】
まず、このような発電機1を設置する場合、地面上に支持部材5を立脚させ、さらに、首振り機構4を介して発電機1を取り付ける。この発電機1の取り付け位置としては、比較的高い所、もしくは、風通しの良い場所を選んで取り付ける。
【0022】
そして、このように設置された発電機1に風が当たると、まず、接触面積の大きな第二の回転体41に風が大きく当たってケース2が支持部材5を中心に回転する。このとき、第二の回転体41の空気抵抗が大きくなるために、第二の回転体41が下流側に位置し、また、第一の回転体31が上流側に位置するように回転する。そして、このように第一の回転体31と第二の回転体41を風位に立てた状態で、第一の回転体31と第二の回転体41がそれぞれ逆方向に回転し始める。この時、第一の回転体31を通過した風は、その第一の回転体31やケース2などによって風力が弱められ、次に、第二の回転体41に当たる。そこで、今度は、相対的に大きく構成されたプロペラ要素41aによって第二の回転体41を逆方向に回転させる。これにより、コイル10と磁石20とは相対的に逆方向に回転し、大きな誘導起電力を発生させる。
【0023】
上述のように本実施の形態によれば、ケース2の内部に円形断面を有するコイル10と、このコイル10の回転軸と同じ回転軸上に設けられた磁石20とを設け、第一の回転体31と第二の回転体41を流れ方向に沿って逆方向に回転させるようにしたので、流体の運動エネルギーを効率的に回転エネルギーに変換することができ、その回転エネルギーから効率よく電気エネルギーへと変換することができるようになる。このため、例えば、図1に示すように、10m/sの風を受けて第一の回転体31を回転し、その下流側で8m/sの風となったとしても、さらにその下流側の第二の回転体41を回転させるこことができるので、その下流側で風速が6m/sとなっている場合は、40%のエネルギー変換効率を得ることができる。
【0024】
また、上記の実施形態では、下流側に設けた第二の回転体41の面積を上流側の第一の回転体31の面積よりも大きくするようにしたので、効果的に風の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換することができる。
【0025】
さらに、この実施の形態では、ベアリングなどにより自由に回転する首振り機構4を設けるようにしたので、相対的に大きく構成された第二の回転体41の空気抵抗が大きくなり、風を受けた場合、常に第一の回転体31と第二の回転体41の回転軸を風位に立てることができるようになる。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施できる。
【0027】
例えば、上記実施の形態では、第一の回転体31と第二の回転体41の回転軸方向に沿って流体が流れる場合について説明したが、次に示す第二の実施の形態のように構成することもできる。
【0028】
図4は、第二の実施の形態における発電機1aを示している。この実施の形態における発電機1aにおいて、第一の実施の形態と同じ構成を有する要素については同じ番号を付している。この実施の形態における発電機1aは、タービンや排気ダクトなどを流れる流体を分流器50を介して分流し、一方側の流体を第一の回転体310側へ吹き付け、他方側の流体を第二の回転体410側に逆方向から吹き付けるようにしたものである。この際、第一の回転体310や第二の回転体410は、流体の流れ方向が第一の実施形態と異なり、垂直な方向に風が当たるため、回転体の羽根の形状を板羽根状としている。なお、この形状に関しては、流体を受け止めるカップ状としてもよい。この第二の実施の形態によれば、分流されたそれぞれの流体を第一の回転体310と第二の回転体410に逆方向に吹き付けることによって、第一の実施の形態と同様に、流体の運動エネルギーを効率よく電気エネルギーへと変換することができる。
【0029】
また、上記実施の形態では、第二の回転体41の方を第一の回転体31よりも大きくするようにしているが、それぞれの第一の回転体31と第二の回転体41を同じ形状・同じ大きさとしてもよく、あるいは、第一の回転体31側を大きくしてもよい。また、大きさだけでなく、プロペラ要素の数を増やすなどして流体との接触面積を大きくするようにしてもよい。
【0030】
さらに、上記実施の形態では、ケース2の形状を円柱形状としているが、下流側への流体の流れを効率よくするためには、ケース2の形状を流線形としてもよい。
【0031】
加えて、上記実施の形態では、風力における発電機を例に挙げて説明したが、例えば、水などの流体を動力とする発電機としても用いることもできる。
【0032】
また、上記実施の形態では、第一の回転体31側にコイル10を設け、第二の回転体41側に磁石20を設けるようにしたが、これと逆に構成するようにしてもよい。すなわち、第一の回転体31側に磁石20を設け、第二の回転体41側にコイル10を設けるようにしてもよい。ただし、一般的に、下流側の流れは第一の回転体31やケース2などによって乱され、効率的に第二の回転体41を回転させることができない。このため、可能な限り上流側での回転を確保するのが好ましい。このため、例えば、それぞれの回転体における回転モーメントの小さい方を上流側に設けるようにすることもできる。このようにすれば、弱い風が吹いてきた場合であっても、回転モーメントの小さな上流側の回転体31によって確実かつ迅速に回転を確保することができ、効率的に誘導起電力を発生させることができる。この回転モーメントについては、コイル10の材質や重さ、磁石20の材質や重さなどに依存するものであるため、適宜材料などを選択して用いるとよい。
【0033】
また、上記実施の形態では、コイル10や磁石20を図3に示すように構成しているが、これに限らず、種々の形状、構成のコイルや磁石を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一実施形態を示す発電機の斜視図
【図2】図1におけるA−A断面を示した状態図
【図3】図1におけるB−B断面を示した状態図
【図4】本発明の第二実施形態を示す発電機の斜視図
【図5】特許文献1の発電機を示す斜視図
【図6】特許文献1における使用状態を示す斜視図
【図7】特許文献2の発電機を示す斜視図
【符号の説明】
【0035】
1、1a・・・発電機
2・・・ケース
2a・・・開口端部
3・・・ブラシ部材
4・・・首振り機構
5・・・支持部材
10・・・コイル
11・・・鉄芯
12・・・導線
20・・・磁石
21・・・円柱二極磁石
22・・・ヨーク
30・・・第一の回転機構
31・・・第一の回転体
31a・・・プロペラ要素
31b・・・ハブ
32・・・軸部材
33・・・整流子
34・・・固定金具
40・・・第二の回転機構
41・・・第二の回転体
41a・・・プロペラ要素
41b・・・ハブ
42・・・軸部材
50・・・分流器
60・・・傘歯車
61・・・回転機構
71・・・第一の回転機構
72・・・第二の回転機構
80・・・円板状の外部回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内にコイルと磁石を有し、コイルを一方向に回転させ、磁石をコイルと逆方向に回転させることによって誘導起電力を発生させる発電機において、風や水などの流体の運動エネルギーによりコイルを一方向に回転させる第一の回転体と、流体の運動エネルギーにより磁石をコイルの回転方向とは逆方向に回転させる第二の回転体とを備え、第一の回転体の回転軸と第二の回転体の回転軸とを流体の流れ方向に沿って設けたことを特徴とする発電機。
【請求項2】
流体の流れ方向の下流側に設けた回転体の面積を上流側に設けた回転体の面積よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
請求項2に記載の発電機において、ケースを流体の流れ方向に沿って自由に回転させる首振り機構を設けたことを特徴とする発電機。
【請求項4】
ケース内にコイルと磁石を有し、コイルを一方向に回転させ、磁石をコイルと逆方向に回転させることによって誘導起電力を発生させる発電機において、流体の分流された一方の流体の運動エネルギーによりコイルを回転させる第一の回転体と、分流された他方の流体の運動エネルギーにより磁石を回転させる第二の回転体とを設けたことを特徴とする発電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−215329(P2007−215329A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33148(P2006−33148)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(502045378)
【Fターム(参考)】