説明

発電機

【課題】内部の異常過熱に対し、簡易に過熱対策を施して、高い信頼性の下に作動させ得るようにした発電機を実現する。
【解決手段】ケーシング3内に、外部から動力入力部6に入力される動力によって回転駆動されるシャフト1と、このシャフト1の周囲に構成される発電部4と、シャフト1の回転時に外部から冷却液を導入し発電部4の冷却に供した後に外部に排出する冷却液循環路Lの少なくとも一部とを備えた発電機Gにおいて、動力入力部6とシャフト1との間に断接切替可能な接合部9を設けるとともに、ケーシング3内に更に、昇温した場合に形状が変化する材料を用いたスペーサ10と、このスペーサ10の形状変化を接合部9に伝えて動力入力部6とシャフト1の間を接続状態から遮断状態に切り替える伝達部Dとを設けることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内部の異常過熱、それに起因する破損や二次故障に善処した発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーシング内に、外部から動力入力部に入力される動力によって回転駆動されるシャフトと、このシャフトの周囲に構成される発電部と、シャフトの回転時に外部から冷却液を導入し発電部の冷却に供した後に外部に排出する冷却液循環路とを具備する発電機が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図5は、本出願人がこれまでに開発した冷却液循環式の発電機gを示している。この発電機gは、シャフト1が中空状をなし、軸受2を介してケーシング3に回転可能に支持されている。シャフト1の中央部外周にはロータ4aが軸着され、ケーシング3側に設けたステータ4bとの間に発電部4が構成されている。シャフト1は、一端がパイプ状の導入路5を介してケーシング3に設けた液流入口3aに接続され、他端に、外部から回転力を入力するための動力入力部6が設けてある。図示例の動力入力部6はシャフト1の中空部を封止する役割を兼ねている。この動力入力部6にエンジン等の外部駆動源が接続されて回転力を供給されることにより、発電部4から例えば交流電力を出力することができるものである。
【0004】
ケーシング3には前記液流入口3aと対をなす液排出口3bが設けられ、ケーシング3の底部に設けた液貯留部3cはこの液排出口3bに連通しているとともに、シャフト1の周壁に肉厚方向に導出口(図示せず)が設けられて、シャフト1の回転時に図6に矢印で示すように外部から冷却液を導入し、発電部4の冷却に供した後、当該発電部4に臨む位置に設けた液貯留部3cに貯留し、この液貯留部3c内の冷却液を外部に排出する冷却液循環路Lを構成している。冷却液としては潤滑性を有した油等が使用される。冷却液循環路Lの一部には循環用ポンプ7が設置されている。同図例では循環用ポンプ7は発電機gの外部に設置してあるが、ケーシング3内にあってシャフト1の動力の一部を利用して液貯留部3cの冷却液を排出口3bに汲み出すように構成されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−163090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような構成において、冷却液循環路Lの一部に設けられる循環用ポンプ7が故障すると、液貯留部3cの冷却液が排出されなくなり、ケーシング3の内部に充満する。そして、この冷却液が発電部4を構成するロータ4a等に接触し攪拌されて、異常過熱が起こり、その結果、発電機gの破損とともに更に二次破損につながる恐れがある。
【0007】
かかる恐れは、実際には極めて低いものであるが、より安全性を高めるためにも、攪拌に伴う異常過熱から発電機gの破損に至るまでの間に、何らかの過熱対策を施しておくことが望まれる。
【0008】
本発明は、このような発電機内部の異常過熱に対し、簡易に過熱対策を施して、高い信頼性の下に作動させ得るようにした発電機を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち本発明の発電機は、ケーシング内に、外部から動力入力部に入力される動力によって回転駆動されるシャフトと、このシャフトの周囲に構成される発電部と、シャフトの回転時に外部から冷却液を導入し発電部の冷却に供した後に外部に排出する冷却液循環路の少なくとも一部とを具備しているものにおいて、前記動力入力部と前記シャフトとの間に断接切替可能な接合部を設けるとともに、ケーシング内に更に、昇温した場合に形状が変化する材料を用いた温度感知部と、この温度感知部の形状変化を前記接合部に伝えて動力入力部とシャフトの間を接続状態から遮断状態に切り替える伝達部とを設けたことを特徴とする。
【0011】
ここで、昇温した場合に形状が変化するとは、昇温に伴って連続的に形状が変化する態様や、昇温に伴って不連続に形状が変化する態様(例えばある温度まで形状が変化しその後は形状が変化しない態様等)、昇温した場合に溶融して一定形状をとどめなくなる態様、さらには昇温した場合に蒸発して形状が無くなる態様等が挙げられる。
【0012】
このように構成したものにおいて、ケーシング内が昇温すると、温度感知部の形状が変化し、これに連動して接合部がシャフトと動力入力部の接続状態を遮断状態に切り替えるので、シャフトに対する駆動が停止し、ケーシング内の昇温が抑えられる。このため、ケーシング内の昇温による発電機の破損、それに起因した二次故障を未然に防止することができる。しかも、温度感知部が材料の形状変化によって温度を検知するものであるため、電気的な検出手段等を採用する場合のように複雑な制御系統を構築する必要がなく、構成が簡単であり、また、機械的に温度を検出することで、過酷な条件下に使用しても信頼性を有効に高めることができる。
【0013】
接合部及び伝達部をシャフトにコンパクトに組み付けるためには、接合部が、前記シャフトに軸心方向に沿って移動可能な補助シャフトの一部に構成され、温度感知部が、軸方向の形状変化を引き起こすものであり、伝達部が、前記シャフトに軸心方向に沿って移動可能なブレーキシャフトを具備するものであって、温度感知部の形状変化によりブレーキシャフトが補助シャフトに係合して当該補助シャフトの接合部を遮断方向に変位させるように関連づけてあることが望ましい。
【0014】
ガタつきの少ない確実な作動を実現するためには、補助シャフトおよびブレーキシャフトが、対向端部に互いに螺合可能なねじ部を有し、このブレーキシャフトには温度感知部に係止させた状態で補助シャフトに向かうバネ力が作用させてあり、温度感知部の形状変化前はねじ部同士が温度感知部を介して離間位置に規制され、温度感知部の形状変化に伴い前記規制が外れてねじ部同士が接近し、ブレーキシャフトと補助シャフトの回転差によってブレーキシャフトが補助シャフトに螺合してこれを軸方向にねじ送りするように構成されていることが有効である。
【0015】
熱の汲み出し等に適した構造としては、外部からシャフト内部に冷却液を導入し、シャフトの周壁に設けた導出口を介して発電部に供するように構成し、それにあたり、前記補助シャフト及びブレーキシャフトがシャフト内に冷却液の循環を妨げないように配置されていることが好ましい。
【0016】
以上のような過熱防止構造は、冷却液循環路が、循環用ポンプを利用して外部から冷却液を導入し、発電部の冷却に供した後に当該発電部に臨む位置に設けた液貯留部に貯留し、この液貯留部内の冷却液を外部に排出するように構成されている場合に特に有用となる。
【0017】
温度感知部に、溶融又は軟化によって形状が変化する材料を採用する場合には、ケーシング内の汚染を防止し且つ発電機の再利用を容易にするために、その温度感知部を閉空間に閉じ込めて溶融後に材料をケーシング内に漏出させないように組み付けていることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る発電機は、以上説明した構成により、発電機内部の異常過熱が発生したときに確実に作動して動力入力部とシャフトの間の接続状態を断ち切るディスコネクト機構を簡易に構成することができるので、発電機が破損に至り、更には破損に起因して二次的故障につながることを大幅なコスト増を招くことなく防止して、信頼性と安全性を有効に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る発電機を外部動力を受けて回転可能な状態で示す全体断面図。
【図2】同発電機を外部動力が切断された状態で示す図1に対応した全体断面図。
【図3】同発電機の要部を作用とともに示す部分拡大図。
【図4】本発明の変形例を示す図1及び図3に対応した断面図。
【図5】本発明と対比される発電機の全体断面図。
【図6】同発電機における冷却構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図5及び図6と基本的に共通する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0021】
図1に示す発電機Gが図5及び図6に示した発電機gと大きく異なるのは、シャフト1の内部に補助シャフトであるインターナルシャフト8を配置している点、図1に矢印で示すような動力入力部6からインターナルシャフト8の接合部9を介してシャフト1に向かう外部動力入力経路Zをインターナルシャフト8が図1→図2のように左行することによって同図P部に示すように遮断状態(外部動力入力経路Zが消失した状態)とする点、ケーシング3内の温度上昇をQ部において感知することによりインターナルシャフト8を図1→図2のように左行させて前述したP部における外部動力の切り離しを行う点である。
【0022】
図3(a)はP部及びQ部の温度上昇前の状態であり、同図(b)はP部及びQ部の温度上昇後の状態を示している。
【0023】
具体的に説明すると、前記シャフト1の内部には軸心方向に沿って摺動可能に補助シャフトたるインターナルシャフト8が配置してあり、このインターナルシャフト8の一端側に図3(a)右部に示すように接合部9を構成するとともに、動力入力部6の内方端部6dとシャフト1の一端部1dとの間を図3(b)右図に示すように相対回転自在に構成して、動力入力部6とシャフト1の境界部分に前記結合部9を配している。すなわち、接合部9には外周に雄スプライン9sが設けられ、動力入力部6の内方端部6dとシャフト1の内方端部1dの各内周には前記雄スプライン9sの対応位置に雌スプライン6s、1sが設けてある。そして、インターナルシャフト8の接合部9の雄スプライン9sが動力入力部6及びシャフト1の雌スプライン1sに同時に噛み合った図1及び図3(a)右図の位置で接合部9が動力入力部6とシャフト1の間を接続状態に保ち、インターナルシャフトが図1→図2のように左方に変位して図3(b)右図のように接合部9の雄スプライン9sと動力入力部6の雌スプライン6sとのスプライン結合が解離したときに動力入力部6とシャフト1との接続状態を解除するようにしている。
【0024】
一方、図3(a)左図等に示すように、Q部には、温度上昇に伴い形状が変化する温度感知部たるスペーサ10が設けてあり、このスペーサ10の形状変化を伝達部Dを介して前記接合部9に伝えるように構成してある。伝達部Dは、前記シャフト1の一端側に軸心方向に沿って一部を摺動可能に嵌挿されたブレーキシャフト11を主体とするもので、このブレーキシャフト11は筒状本体11aをケーシング3のカバー3dから突出させた液導入路を兼ねるガイド筒3eにスライド可能に嵌合させてあるとともに、筒状本体11aよりも径の大きい当て板部11bを介して内筒11c1、底部11c2、外筒11c3からなるカップ状の拡径部11cがガイド筒3eとの間に所定隙間を保って形成してあり、拡径部11cは図1等にも示すようにブレーキカバー12に覆われている。ブレーキカバー12は、底板12a及び外筒12bを具備し前記拡径部11cと向き合うようなカップ状をなし、外筒12bの更に外側のフランジ部12cが図1等に示すようにケーシング3のカバー3dに固定してある。ブレーキカバー12の外筒12bには拡径部11cの外筒11c3が摺動可能に嵌装してあり、ブレーキシャフト11の拡径部11cとブレーキカバー12との間に閉空間Sが形成されている。前記ブレーキシャフト11の当て板部11bには、前記ケーシング3のカバー3dとの間にバネ13が断接してあり、さらに当て板部11bとブレーキカバー12の底板12aとの間にはスペーサ10が介在されて、ブレーキシャフト11をスペーサ10に係止させた状態でブレーキカバー12の底板12aに向かって弾性付勢している。スペーサ10は、所要の温度域に融点を有する材料、例えばビスマス等の低融点合金からなるもので、非融解時には円筒状の固体をなしてブレーキシャフト11の拡径部11cとブレーキカバー12の底壁12aとに両端面を当接させて軸方向に突っ張った状態で介在するが、ロータ4a等からの伝熱によってスペーサ10が所要温度に達すると、溶解して流動性をもつことにより図3左図(a)→(b)に示すように閉空間Sの下方に流れ落ちるようにして移動し、スペーサ10が存在していた隙間を埋めるように拡径部11cがバネ13に付勢されて、図3左図(a)→(b)に示すように拡径部11cがブレーキカバー12の底板12aに突き当たる停止位置まで移動するようにしてある。
【0025】
ブレーキシャフト11及びインターナルシャフト8の対向端部には雌状のねじ部11xと雄状のねじ部8xが形成してあり、図3(a)左図に示すスペーサ10の形状変化前は当該スペーサ10によってねじ部11x、8x同士が所定の離間位置にあるように規制されている。そして、スペーサ10の形状変化に伴い前記規制が外れてブレーキシャフト11が図3(b)左図に示す停止位置まで移動することによって、ねじ部11x、8x同士が螺合する位置まで移動するように構成してある。
【0026】
すなわち、通常の動作では、外部駆動源より得られる回転動力は図1に矢印で示すように動力入力部6→接合部9を有するインターナルシャフト8→シャフト1の順で伝達され、発電部4が駆動されて発電が行われる。
【0027】
一方、冷却液循環部Lに設けられた循環用ポンプ7が故障するなどして、発電機Gに供給される冷却液を外部に排出できなくなると、冷却液がケーシング3の内部に充満する。この場合にシャフト1が回転し続けると、冷却液が高速回転する回転部4のロータ4a等と接触して、攪拌され、異常過熱が起こる。
【0028】
しかしながら、上記のように構成した本実施形態の発電機Gは、内部の温度が低融点合金材料の融点に達すると、図3(a)左図に示したブレーキカバー12とブレーキシャフト11の拡径部11cとの間に配置してある温度感知部たるスペーサ10が図3左図(a)→(b)のように溶融し、バネ13が伸びてブレーキシャフト11のねじ部11xがインターナルシャフト8のねじ部8xに向かって押し出される。
【0029】
そして、回転していないブレーキシャフト11のねじ部11xに対して、外部駆動源により回転駆動されているインターナルシャフト8のねじ部8xが接触すると、互いに螺合した後、ねじ送り作用によってブレーキシャフト11がブレーキカバー12を足場にしてインターナルシャフト8を引き込み、これに伴い図3右図(a)→(b)のようにインターナルシャフト8の接合部9でスプライン結合されていた動力入力部6とシャフト1との結合が解除(ディスコネクト)され、動力入力部6のみが引き続き外部駆動源により回転し、シャフト1は外部動力から切り離されて、ロータ4a等とともに回転抵抗を受けつつ慣性により回転した後にやがて停止し、攪拌による異常過熱が避けられる。ブレーキシャフト11の雌状のねじ部11xは一定領域のみに設けてあり、図3左図(a)→(b)のようにインターナルシャフト8の雄状のねじ部8xを一定深さまで引き込んだ後は、ねじ送り作用は終了する。ブレーキシャフト11の変位はインターナルシャフト8の軸心方向の移動を経て接合部9の変位として実現されるため、インターナルシャフト8はブレーキシャフト11とともに伝達部Dの一部を構成している。前記インターナルシャフト8及びブレーキシャフト11は、少なくともディスコネクト前には図3(a)左図等に示すように冷却液の循環経路を塞がないようにシャフト1内に配置されている。
【0030】
外部駆動源を停止するまでの間、図3(b)右図に示す動力入力部6の内方端部6dはシャフト1の端部1dに設けたスリーブベアリング1eで摺動しながら円滑に空回りするため、焼き付きによる結合で再びシャフト1が回転することが防止される。
【0031】
以上のように、本実施形態は、ケーシング3内に、外部から動力入力部6に入力される動力によって回転駆動されるシャフト1と、このシャフト1の周囲に構成される発電部4と、シャフト1の回転時に外部から冷却液を導入し発電部4の冷却に供した後に外部に排出する冷却液循環路Lの少なくとも一部とを具備する発電機Gにおいて、前記動力入力部6と前記シャフト1との間に断接切替可能な接合部9を設けるとともに、ケーシング3内に更に、昇温した場合に形状が変化する材料を用いた温度感知部たるスペーサ10と、このスペーサ10の形状変化を前記接合部9に伝えて動力入力部6とシャフト1の間を接続状態から遮断状態に切り替える伝達部Dとを設けたものであり、ケーシング3内が昇温すると、温度感知部であるスペーサ10の形状が変化し、これに連動して接合部9がシャフト1と動力入力部6の接続状態を遮断状態に切り替え、シャフト1に対する駆動が停止し、ケーシング3内の昇温が抑えられるようにしている。
【0032】
このため、ケーシング3内の昇温による発電機Gの破損、それに起因した二次故障を未然に防止することができる。しかも、スペーサ10が材料の形状変化によって温度を検知するものであるため、電気的な検出手段等を採用する場合のように複雑な制御系統を構築する必要がなく、構成が簡単であり、しかも、機械的に温度を検出することで、過酷な条件下に使用しても信頼性を有効に高めることができる。
【0033】
具体的には、接合部9が、前記シャフト1に軸心方向に沿って移動可能な補助シャフトたるインターナルシャフト8の一部に構成され、温度感知部たるスペーサ10が、軸方向の形状変化を引き起こすものであり、伝達部Dが、前記シャフト1に軸心方向に沿って移動可能なブレーキシャフト11を具備するものであって、スペーサ10の形状変化によりブレーキシャフト11がインターナルシャフト8に係合して当該インターナルシャフト8の接合部9を遮断方向に変位させるように関連づけるようにしているため、接合部9及び伝達部Dのブレーキシャフト11をシャフト1にコンパクトに組み付けて構成することができる。
【0034】
この場合、インターナルシャフト8およびブレーキシャフト11が、対向端部に互いに螺合可能なねじ部8x、11xを有し、このブレーキシャフト11にはスペーサ10に係止させた状態でインターナルシャフト8に向かうバネ力が作用させてあり、スペーサ10の形状変化前はねじ部8x、11x同士がスペーサ10を介して離間位置に規制され、スペーサ10の形状変化に伴い前記規制が外れてねじ部8x、11x同士が接近し、ブレーキシャフト11とインターナルシャフト8の回転差によってブレーキシャフト11がインターナルシャフト8に螺合してこれを軸方向にねじ送りするように構成しており、ブレーキシャフト11がバネ力によりスペーサ10に弾接された状態にあるため、昇温前にはガタつきを防止し、昇温後には確実にバネ力でブレーキシャフト11を作動させることができる。
【0035】
特に、外部からシャフト1の内部に冷却液を導入し、シャフト1の周壁に設けた導出口を介して発電部4に供するようにしたものであり、前記インターナルシャフト8及びブレーキシャフト11がシャフト1内に冷却液の循環を妨げないように配置してあるため、蓄熱し易い部位に冷却液を効果的に導入することができるとともに、潤滑性の冷却液が導入されるシャフト1の内部で接合の解除やねじ送り等が行われるため、過熱時にディスコネクトのために作動する部位を適切に潤滑して円滑な作動を確保することができる。
【0036】
とりわけ、本実施形態の発電機Gに備えられる冷却液循環路Lは、循環用ポンプ7を利用して外部から冷却液を導入し、発電部4の冷却に供した後に当該発電部4に臨む位置に設けた液貯留部3cに貯留し、この液貯留部3c内の冷却液を外部に排出するように構成されていて、循環用ポンプ7が故障すると、液貯留部3cの冷却液が排出されなくなり、回転体との接触、攪拌によって異常過熱が起こり、その結果、発電機が破損し、二次破損につながる恐れがあるものであるため、上記のようなディスコネクト機構が信頼性や安全性の向上のために極めて効果的なものとなる。
【0037】
さらにまた、温度感知部であるスペーサ10は、材料の溶融によって形状が変化するものであり、そのスペーサ10を閉空間Sに閉じ込めて溶融後に材料をケーシング1内に漏出させないように組み付けているため、温度感知部であるスペーサ10の材料の溶融による汚染箇所を限定してケーシング1内へ汚染が広がることを防止することができ、ブレーキシャフト11やブレーキカバー12等の必要な部分のみを取り替え、新たにスペーサ10を組み込むことで発電機を再利用に資することができる。
【0038】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。例えば、上記実施形態に係る温度感知部たるスペーサ10は、非融解時に円筒状の固体をなし、スペーサ10が所要温度に達すると溶解して閉空間Sの下方に流れ落ちるように構成したが、図4に示すように、温度感知部として円環状のスペーサ110を採用し、この円環状のスペーサ110の一方の面にブレーキシャフト11に設けた拡径部11cの外筒11c3の端面を当接させ、他方の面を前記拡径部11cの外筒11c3の端面よりも内径側を支持するブレーキカバー12の底板12aに支持させて、スペーサ110が所要温度に達すると、軟化とともに外筒11c3の端面とブレーキカバー12の底板12aとの間で破断させてブレーキカバー12の軸方向に対する移動規制を解除するように構成してもよい。要は、材料の溶融や軟化その他の事象によって形状が変化し、その形状変化を前記接合部に伝え得るものであれば、形態や素材等は問わない。
【0039】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…シャフト
3…ケーシング
3c…液貯留部
4…発電部
6…動力入力部
7…循環用ポンプ
8…補助シャフトたるインターナルシャフト
8x…ねじ部
9…接合部
10…温度感知部たるスペーサ
11…ブレーキシャフト
11x…ねじ部
D…伝達部
L…冷却液循環路
S…閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に、外部から動力入力部に入力される動力によって回転駆動されるシャフトと、このシャフトの周囲に構成される発電部と、シャフトの回転時に外部から冷却液を導入し発電部の冷却に供した後に外部に排出する冷却液循環路の少なくとも一部とを具備しているものにおいて、
前記動力入力部と前記シャフトとの間に断接切替可能な接合部を設けるとともに、ケーシング内に更に、昇温した場合に形状が変化する材料を用いた温度感知部と、この温度感知部の形状変化を前記接合部に伝えて動力入力部とシャフトの間を接続状態から遮断状態に切り替える伝達部とを設けたことを特徴とする発電機。
【請求項2】
接合部が、前記シャフトに軸心方向に沿って移動可能な補助シャフトの一部に構成され、温度感知部が、軸方向の形状変化を引き起こすものであり、伝達部が、前記シャフトに軸心方向に沿って移動可能なブレーキシャフトを具備するものであって、温度感知部の形状変化によりブレーキシャフトが補助シャフトに係合して当該補助シャフトの接合部を遮断方向に変位させるように関連づけてある請求項1記載の発電機。
【請求項3】
補助シャフトおよびブレーキシャフトが、対向端部に互いに螺合可能なねじ部を有し、このブレーキシャフトには温度感知部に係止させた状態で補助シャフトに向かうバネ力が作用させてあり、温度感知部の形状変化前はねじ部同士が温度感知部を介して離間位置に規制され、温度感知部の形状変化に伴い前記規制が外れてねじ部同士が接近し、ブレーキシャフトと補助シャフトの回転差によってブレーキシャフトが補助シャフトに螺合してこれを軸方向にねじ送りするように構成されている請求項2記載の発電機。
【請求項4】
外部からシャフト内部に冷却液を導入し、シャフトの周壁に設けた導出口を介して発電部に供するようにしたものであり、前記補助シャフト及びブレーキシャフトがシャフト内に冷却液の循環を妨げないように配置されている請求項2又は3記載の発電機。
【請求項5】
冷却液循環路は、循環用ポンプを利用して外部から冷却液を導入し、発電部の冷却に供した後に当該発電部に臨む位置に設けた液貯留部に貯留し、この液貯留部内の冷却液を外部に排出するように構成されている請求項1〜4記載の発電機。
【請求項6】
温度感知部は、材料の溶融又は軟化によって形状が変化するものであり、その温度感知部を閉空間に閉じ込めて溶融後に材料をケーシング内に漏出させないように組み付けている請求項1〜5記載の発電機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−254685(P2011−254685A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128816(P2010−128816)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】