説明

発電装置

【課題】発電装置の変速機における変速動作の繰り返し現象を抑え、変速機の各部品の寿命を延ばす。
【解決手段】エンジン1が減速傾向で、変速機3の閾値(例えば回転数900rpm)以下になっても、遅延時間t(例えば15秒)が経過するまで電磁クラッチ34のON・OFFを行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電装置に関し、より詳細にはエンジンの回転を利用して発電機を駆動させる、主に船舶用に用いる発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漁船などの船舶では、搭載されている魚群探知機やレーダ、ソナーなど電気機器への給電は通常、エンジンの回転を利用して発電機を駆動させることによって行っていた。しかし、例えば1KWの発電機の場合、発電機の発電可能な回転域はおおよそ1,000〜4,000rpmの範囲であるのに対し、小型船舶の場合にはエンジンの回転はおおよそ500〜2,500rpmの範囲であるため、エンジンが1,000rpm以下の低速回転の場合には発電機での発電ができなかった。
【0003】
そこで本出願人は、エンジンが高速回転の場合のみならず低速回転の場合であっても発電できるようにすべく、エンジンの出力軸と発電機の入力軸との間に変速装置を設け、入力軸の回転数が所定範囲となるよう変速装置を制御することを提案した(特許文献1)。これにより、船舶の燃費を低下させ、居住性や作業性をも低下させる大きな要因となっていたバッテリの積載個数を減らすことができるようになった。
【特許文献1】実用新案登録第3097549号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、例えば漁船の場合、漁法および操船者によってエンジンの回転数が1,000rpm前後のところで増減を繰り返すことがある。このような場合に、変速装置における変速切り換え閾値が増減幅の範囲内であると、変速装置の変速が繰り返し起こる現象(変速繰り返し現象)が生じ、変速装置に使用しているクラッチ等の部品の寿命が短くなるなどの不具合が生じる。
【0005】
図4に、このような変速装置の変速繰り返し現象の説明図を示す。同図(a)はエンジンの回転数の経時変化を示し、同図(b)は変速装置における電磁クラッチのON・OFFの経時変化を示す。変速装置の変速比は電磁クラッチがONのとき4倍となり、OFFのとき2倍となる。この変速装置において、エンジンの始動し回転数が1,200rpm以下のときは、電磁クラッチがONとなり変速比は4倍となる。そしてエンジンの回転数が1,200rpmを超えると、電磁クラッチはOFFとなり変速比は4倍から2倍になる。一方、エンジンが減速し回転数が900rpm以下になると、電磁クラッチがONとなり変速比は2倍から4倍になる。
【0006】
漁船は出港すると漁場へ全速力で向かう(同図(a)の(イ)→(ロ)→(ハ))。そして漁場に到着すると速度を落とし((ハ)→(ニ))、所定の漁法によって漁を行う((ニ)→(ホ))。このとき、エンジンの回転数は900rpmと1,200rpmを含む範囲で増減する。このため同図(b)に示すように、電磁クラッチのON、OFFが頻繁に繰り返されるようになり、電磁クラッチの消耗が激しくなる。
【0007】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発電装置の変速装置における変速繰り返し現象を抑え、変速装置の各部品の寿命を延ばすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明の発電装置では、発電機と、エンジンの出力軸と前記発電機の入力軸との間に介在し、前記出力軸からの回転数を多段階に変速させて前記入力軸に伝える変速装置と、前記変速装置を制御する制御手段と、前記出力軸又は前記入力軸の回転数を測定する測定手段とを設け、前記出力軸の回転数が所定値以下となり、変速装置の変速比を大きくする時、変速比を変える動作を所定時間遅らせる構成とした。
【0009】
船舶用の発電装置の場合、エンジンの回転数が増加傾向のときは、低回転域で増減することが少なく、変速繰り返し現象が起こりにくいから、前記出力軸の回転数が所定値以上となった時には、直ちに変速装置の変速比を小さくするのが好ましい。
【0010】
また、装置の小型・軽量化を図る観点から、変速装置として、エンジンの出力軸と接続した、少なくとも1つのプーリが取り付けられた第1回転軸と、発電機の入力軸と接続した、少なくとも2つのプーリが取り付けられた第2回転軸とを備え、第1回転軸のプーリと第2回転軸のプーリとはベルト又はチェーンによって直接又は間接的に接続され、第2回転軸に取り付けられたプーリの中から、第2回転軸に回転を伝達するプーリを選択することによって、エンジンの出力軸からの回転数を多段階に変化させて発電機に伝えるものが好ましい。
【0011】
ここで変速装置の構造を一層簡単にする観点から、第1回転軸と第2回転軸に2対のプーリを取り付け、一方のプーリ対を電磁クラッチを介して前記回転軸に取り付け、もう一方のプーリ対を一方向クラッチを介して前記回転軸に取り付け、電磁クラッチの入切によって第2回転軸に回転を伝えるプーリを選択するようにしてもよい。
【0012】
あるいは、エンジンの出力軸への変速機の取り付け裕度を大きくする観点から、少なくとも2つのプーリが取り付けられた第3回転軸をさらに設け、これらのプーリの1つを第1回転軸のプーリと接続し、他の1つ以上のプーリを第2回転軸のプーリと接続するようにしてもよい。このとき、第2回転軸と第3回転軸に2対のプーリを取り付け、一方のプーリ対を電磁クラッチを介して前記回転軸に取り付け、もう一方のプーリ対を一方向クラッチを介して前記回転軸に取り付け、電磁クラッチの入切によって第2回転軸に回転を伝えるプーリを選択するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発電装置では、エンジンの出力軸の回転数が所定値以下となり、変速装置の変速比を大きくする時、変速比を大きくする動作を所定時間遅らせる構成としたので、変速装置における変速切り換え閾値がエンジン回転数の増減幅の範囲内であっても、変速装置における変速繰り返し現象を抑えることができ、変速装置の各部品の寿命を延ばすことができる。
【0014】
また、出力軸の回転数が所定値以上となった時には、直ちに変速装置の変速比を小さくするようにすると、発電機の回転数を迅速に好適範囲とすることができ、効率的な発電が行えるようになる。
【0015】
そしてまた、変速装置が、エンジンの出力軸と接続した、少なくとも1つのプーリが取り付けられた第1回転軸と、発電機の入力軸と接続した、少なくとも2つのプーリが取り付けられた第2回転軸とを備え、第1回転軸のプーリと第2回転軸のプーリとはベルト又はチェーンによって直接又は間接的に接続され、第2回転軸に取り付けられたプーリの中から、第2回転軸に回転を伝達するプーリを選択することによって、エンジンの出力軸からの回転数を多段階に変化させて発電機に伝えるものであると、装置の小型・軽量化が図れる。
【0016】
このとき前記2つの回転軸に2対のプーリ対を取り付け、一方のプーリ対を電磁クラッチを介して前記回転軸に取り付け、もう一方のプーリ対を一方向クラッチを介して前記回転軸に取り付けると、装置の構造を一層簡単にできる。また、少なくとも2つのプーリが取り付けられた第3回転軸をさらに設け、これらのプーリの1つを第1回転軸のプーリと接続し、他の1つ以上のプーリを第2回転軸のプーリと接続するようにすると、エンジンの出力軸に変速機を取り付け裕度が大きくなる。さらに、第2回転軸と第3回転軸に2対のプーリを取り付け、一方のプーリ対を電磁クラッチを介して前記回転軸に取り付け、もう一方のプーリ対を一方向クラッチを介して前記回転軸に取り付け、電磁クラッチの入切によって第2回転軸に回転を伝えるプーリを選択するようにすると、装置の構造を簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の発電装置について図に基づいて説明する。なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0018】
本発明に係る発電装置の一実施形態を示す概説図を図1に示す。図1の発電装置は、離隔対向して配置された支持部材36a,36bに支持された第1回転軸31と第2回転軸32を備えた変速機(変速装置)3と、発電機2とを備える。第1回転軸31には3つのプーリa2,b1,c1が取り付けられている。具体的には、プーリa2,b1は第1回転軸31に固定され、プーリc1は電磁クラッチ34を介して第1回転軸31に取り付けられている。また第2回転軸32にも3つのプーリd1,b2,c2が取り付けられている。ここでプーリd1,c2は第2回転軸32に固定され、プーリb2は一方向クラッチ35を介して第2回転軸32に取り付けられている。一方向クラッチ35は、プーリb2の回転速度が第2回転軸32の回転速度よりも速いときには、プーリb2の動力を第2回転軸32に伝え、反対にプーリb2の回転速度が第2回転軸32の回転速度よりも遅いときには、プーリb2の動力を第2回転軸32に伝えないよう作動する。
【0019】
エンジン1の出力軸11に取り付けられたプーリa1と第1回転軸31のプーリa2との間にはベルトB1が掛架され、エンジン1の出力軸11の回転はベルトB1を介して第1回転軸31に伝えられる。同様に、第1回転軸31のプーリb1,c1と第2回転軸32のプーリb2,c2との間にもそれぞれベルトB2,B3が掛架され、第1回転軸31の回転は第2回転軸32に伝えられる。そして、第2回転軸32のプーリd1と発電機2の入力軸21に取り付けられたプーリd2との間に掛架されたベルトB4によって第2回転軸32の回転は発電機2の入力軸21に伝えられ、発電機2において発電がなされる。
【0020】
このような構成の発電装置において、エンジン1の作動によって出力軸11が回転するとプーリa1が回転し、この回転がベルトB1を介してプーリa2に伝えられ第1回転軸31が回転する。第1回転軸31が回転すると、第1回転軸31に固定されているプーリb1が回転し、ベルトB2によってプーリb2も回転し、一方向クラッチ35を介して第2回転軸32が回転する。一方、電磁クラッチ34がONとなると、プーリc1も第1回転軸31と共に回転する。そしてプーリc1の回転がベルトB3を介してプーリc2に伝えられ第2回転軸32が回転する。
【0021】
ここで、この変速機では、プーリb1とプーリb2との直径比を1:1、プーリc1とプーリc2との直径比を2:1としている。すなわち、第2回転軸32の回転数はプーリb1とプーリb2による駆動伝達では1倍となり、プーリc1とプーリc2による駆動伝達では2倍となる。前述のように、プーリb2は一方向クラッチを介して第2回転軸32に取り付けられているため、第2回転軸32の回転がプーリb2の回転よりも速くなると、プーリb2は空回りする。したがって、電磁クラッチ34がONになると、プーリc1とプーリc2とによって第2回転軸32に駆動が伝えられ、その回転数は2倍となる。なお、一方向クラッチ35を用いる代わりに、プーリb1に電磁クラッチを設けて、この電磁クラッチのON・OFFによって駆動伝達するプーリを切り換えるようにしてもよい。ただし、組立および制御の容易性の観点からは一方向クラッチを用いることが推奨される。
【0022】
そして、第2回転軸32が回転すると、これによってプーリd1が回転し、このプーリd1に掛架されたベルトB4によってプーリd2が回転し発電機2の入力軸21が回転する。ここで、この発電装置では、プーリd1とプーリd2との直径比を2:1としている。これにより、入力軸21の回転数は第2回転軸32の2倍となる。したがって、入力軸21の回転数はエンジン1の出力軸11の回転数に対して、電磁クラッチ34を作動させない場合には2倍、作動させた場合には4倍となる。
【0023】
このようにこの発電装置では、エンジン1の出力軸11に対する発電機2の入力軸21の回転数を2倍、4倍に切り換えることが可能であるが、この倍率に特に限定はなく、プーリ対の直径比を適宜選択して好適な倍率とすればよい。また、いずれのプーリ対で回転倍率を上げるかは装置の取り付け場所や倍率などから適宜決定すればよい。第1回転軸と第2回転軸に取り付けるプーリ対の数に限定はなく、プーリ対の取り付け数を多くするほど選択できる倍率が多くなり、より細かな入力軸の回転制御ができるようになる。
【0024】
なお、発電機には3相星形のステータコイルが内蔵され、エンジン1の作動によって発電機の入力軸21が回転すると、入力軸21に取り付けられたロータマグネット(不図示)が回転し、3相のステータコイルに2π/3づつ位相のずれた3相交流電圧が発生する。発生した交流電圧は整流器(不図示)に印加され、ここで直流電圧に変換される。そして整流器からバッテリに対して直流電流が出力され充電が行われる。
【0025】
次に、この発電装置の回転制御について説明する。図2に、図1の発電装置のブロック図の一例を示す。エンジン1の出力軸11の回転数は、センサ(測定手段)Sによって測定され制御手段4に送られる。出力軸11の回転数が1,200rpm以下の場合は、制御手段4から電磁クラッチ34へON信号が出力され、出力軸の回転数は4倍にされて入力軸21に伝えられる。そして出力軸11の回転数が1,200rpm超えると、制御手段4から電磁クラッチ34へOFF信号が出力され、出力軸11の回転数は2倍にされて入力軸21に伝えられる。一方、出力軸11の回転数が減少し900rpm以下になると、制御手段4から電磁クラッチ34へON信号が送られる。しかし、このON信号は遅延回路5の働きによって所定時間経過後に、例えば15秒後に電磁クラッチ34へ送られ、電磁クラッチ34がONとなる。これによって電磁クラッチ34のON・OFF動作の繰り返しが抑えられる。
【0026】
なお、遅延時間は、出力軸11の回転数の増減が繰り返される状態を把握して、回転数の増減が収まる時間以上に設定するの望ましい。また、変速機3を変速させる、出力軸11の回転数の閾値は、発電機2の入力軸21の好適な回転範囲および変速機3の変速比などから適宜決定すればよい。
【0027】
図3に、図1の発電装置の制御例を示すフローチャートを示す。エンジン1が駆動すると、エンジン1の回転数が300rpm以下かどうかが判断される(ステップS101)。そしてエンジン1の回転数が300rpmを超えていれば、エンジン1が停止しているかどうかが次に判定され(ステップS102)、エンジン1が停止していなければ電磁クラッチ34がONとなり、出力軸11の回転数は変速機3で4倍にされて発電機2の入力軸21に伝えられる(ステップS103)。次にエンジン1の回転数が1,200rpmを超えているかどうかが判断される(ステップS104)。エンジン1の回転数が1,200rpm以下であれば、ステップS102、S103を巡回して電磁クラッチ34はONのままとなる。他方、エンジン1の回転数が1,200rpmを超えると(ステップS104)、電磁クラッチ34はOFFとなりエンジン1の回転数は変速機3で2倍にされて発電機2の入力軸21に伝えられる(ステップS105)。
【0028】
次に、エンジン1の回転数が900rpm以下かどうかが判断される(ステップS106)。エンジン1の回転数が900rpmを超えていると電磁クラッチ34はOFF状態のままとなる。他方、エンジン1の回転数が900rpm以下になると、タイマーtがスタートし(ステップS107)、タイマーtが15秒経過するまで電磁クラッチ34のOFF状態が維持される(ステップS108)。そしてタイマーtが15秒経過すると、エンジンが停止していないか判断された後(ステップS102)、電磁クラッチ34がONとなる(ステップS103)。これにより出力軸11の回転数が変速機3で4倍にされて発電機2の入力軸21に伝えられる。そしてまた、エンジン1の回転数が1,200rpmを超えているかどうかが判断され(ステップS104)、エンジン1の回転数が1,200rpmを超えると前記ステップが繰り返される。一方、この間にエンジン1が停止すると(ステップS102)、電磁クラッチはOFFとなり(ステップS109)、制御は終了する。
【0029】
図4に、エンジンの回転数と、電磁クラッチのON・OFF制御との関係を示す図を示す。同図(a)はエンジンの回転数の経時変化を示す図である。同図(b)は従来の変速機の動作図、同図(c)は本発明で使用する変速機の動作図である。前述のように、従来の変速機ではエンジンの回転数が900rpmを含む範囲で増減すると、電磁クラッチのON、OFFが頻繁に繰り返される変速繰り返し現象が生じ、電磁クラッチの消耗が激しくなる。これに対し、同図(c)に示すように、本発明で使用する変速機では、エンジンの回転数が900rpmを含む範囲で増減しても、電磁クラッチのON・OFFは遅延時間tが経過するまで行われてないので、変速繰り返し現象は効果的に抑制される。
【0030】
次に、本発明に係る発電装置の他の実施形態を図5に示す。この実施形態の変速機では、発電装置の取り付け裕度を大きくするために回転軸を3つとしている。変速機の構造の簡略化のみを考えるならば前記実施形態のように回転軸を2つにするのがよい。しかし、船舶のエンジンの近傍には発電装置を取り付けるのに十分な場所がないのが現状であり、船舶ごとに発電装置の設置場所を工夫する必要がある。そこで、この実施形態の変速機では回転軸を1つ増やして3つとし、エンジンの出力軸と接続する、変速機の回転軸には、着脱が煩雑な電磁クラッチや一方向クラッチを取り付けないようにして、プーリの回転軸への着脱を容易にできるようにしている。具体的には図5に示すように、エンジン1の出力軸11に取り付けられたプーリa1と接続するプーリa2の、第1回転軸31との着脱を容易にすることによって、発電装置の取付位置をエンジン1の出力軸方向にずらすことが容易にできるようにした。
【0031】
以下、図5の発電装置の構造について説明すると、この発電装置の変速機3’は3つの回転軸31,32,33を備える。3つの回転軸31,32,33は離隔対向して配置された支持部材36a,36bに回転可能に支持されている。第1回転軸31には2つのプーリa2,b1が固定されている。第2回転軸32にはプーリc2,d1が固定され、プーリb3は一方向クラッチ35を介して取り付けられている。そして第3回転軸33には、プーリb2が固定され、プーリc1は電磁クラッチ34を介して取り付けられている。前記実施形態と同様に、一方向クラッチ35は、プーリb3の回転速度が第2回転軸32の回転速度よりも速いときには、プーリb3の回転動力を第2回転軸32に伝え、反対にプーリb3の回転速度が第2回転軸32の回転速度よりも遅いときには、プーリb3の回転動力を第2回転軸32に伝えないように作動する。
【0032】
エンジン1の出力軸11に取り付けられたプーリa1と第1回転軸11のプーリa2との間にベルトB1が掛架され、エンジン1の出力軸11の回転はベルトB1を介して第1回転軸11に伝えられる。また、第1回転軸11のプーリb1と第3回転軸33のプーリb2、第2回転軸32のプーリb3との間にベルトB2が掛架され、第1回転軸11の回転は、第3回転軸33と第2回転軸32に同時に伝えられる。一方、第3回転軸33のプーリc1と第2回転軸32のプーリc2の間にもベルトB3が掛架され、第3回転軸33の回転が第2回転軸32に伝えられるようになっている。そして、第2回転軸32のプーリd1と発電機2の入力軸21に取り付けられたプーリd2との間に掛架されたベルトB4によって、第2回転軸32の回転は発電機2の入力軸21に伝えられ、発電機2において発電がなされる。
【0033】
各プーリの直径比は、a1:a2=1:1、プーリb1:b2:b3=1:1:1、プーリc1:c2=2:1、プーリd1:d2=2:1である。したがって、エンジン1の回転数に対する発電機2の入力軸21の回転数は、プーリb1,b2,b3による駆動伝達では2倍となり、プーリc1,c2による駆動伝達では4倍となる。発電機22の入力軸21に伝える回転数を2倍とするか4倍とするかの切替は、前記実施形態と同様に、電磁クラッチ34のON・OFFにより行う。すなわち、電磁クラッチ34をOFFにすると、プーリc1は回転しないから、第2回転軸32はプーリb1,b2,b3による駆動伝達で回転し、エンジン1の回転数に対する発電機2の入力軸21の回転数は2倍となる。一方、電磁クラッチ34をONにすると、第3回転軸33と共にプーリc1が回転し、第2回転軸32はプーリc1,c2による駆動伝達で回転する。これにより、エンジン1の回転数に対する発電機2の入力軸21の回転数は4倍となる。このとき、プーリb3は一方向クラッチ35によって空回りし、プーリb1,b2,b3による駆動は第2回転軸32に伝達されない。
【0034】
なお、この実施形態では変速倍率を2倍と4倍にしているが、これに限定されるものではない。また変速機3’が備える回転軸は3つに限定されるものではなく、4つ以上であってももちろん構わない。
【0035】
以上説明した実施形態では、変速機における回転伝達手段としてプーリとベルトを用いた構造を例示したが、これに限定されるものではなく、ベルトの代わりにチェーンを用いても構わない。またギアなど従来公知の回転伝達手段を用いて回転を伝達させても構わない。ただし、駆動時の騒音や点検、修理などの観点からはプーリとベルトを用いた回転伝達構造が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る発電装置の一実施形態を示す概説図である。
【図2】図1の発電装置のブロック図例である。
【図3】図1の変速機の変速制御例のフローチャートである。
【図4】エンジンの回転数と電磁クラッチのON・OFF制御例を示す図である。
【図5】本発明に係る発電装置の他の実施形態を示す概説図である。
【符号の説明】
【0037】
1 エンジン
2 発電機
3、3’ 変速機(変速装置)
4 制御手段
5 遅延回路
S センサ(測定手段)
11 出力軸
21 入力軸
31 第1回転軸
32 第2回転軸
33 第3回転軸
34 電磁クラッチ
35 一方向クラッチ
1,a2,b1,b2,b3,c1,c2,d1,d2 プーリ
1,B2,B3,B4 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機と、エンジンの出力軸と前記発電機の入力軸との間に介在し、前記出力軸からの回転数を多段階に変速させて前記入力軸に伝える変速装置と、前記変速装置を制御する制御手段と、前記出力軸又は前記入力軸の回転数を測定する測定手段とを備えた発電装置であって、
前記出力軸の回転数が所定値以下となり、変速装置の変速比を大きくする時、変速比を変える動作を所定時間遅らせることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記出力軸の回転数が所定値以上となった時、直ちに変速装置の変速比を小さくする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記変速装置が、エンジンの出力軸と接続した、少なくとも1つのプーリが取り付けられた第1回転軸と、発電機の入力軸と接続した、少なくとも2つのプーリが取り付けられた第2回転軸とを備え、第1回転軸のプーリと第2回転軸のプーリとはベルト又はチェーンによって直接又は間接的に接続され、第2回転軸に取り付けられたプーリの中から、第2回転軸に回転を伝達するプーリを選択することによって、エンジンの出力軸からの回転数を多段階に変化させて発電機に伝えるものである請求項1又は2記載の発電装置。
【請求項4】
第1回転軸と第2回転軸に2対のプーリが取り付けられ、一方のプーリ対は電磁クラッチを介して前記回転軸に取り付けられ、もう一方のプーリ対は一方向クラッチを介して前記回転軸に取り付けられ、電磁クラッチの入切によって第2回転軸に回転を伝えるプーリを選択する請求項3記載の発電装置。
【請求項5】
前記変速装置が、少なくとも2つのプーリが取り付けられた第3回転軸をさらに備え、これらのプーリの1つが第1回転軸のプーリと接続し、他の1つ以上のプーリが第2回転軸のプーリと接続している請求項3記載の発電装置。
【請求項6】
第2回転軸と第3回転軸に2対のプーリが取り付けられ、一方のプーリ対は電磁クラッチを介して前記回転軸に取り付けられ、もう一方のプーリ対は一方向クラッチを介して前記回転軸に取り付けられ、電磁クラッチの入切によって第2回転軸に回転を伝えるプーリを選択する請求項5記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−100774(P2007−100774A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289758(P2005−289758)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(505370501)
【出願人】(505370512)
【出願人】(503160179)関西電装機器株式会社 (1)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】