説明

真空処理装置

【課題】被処理体に付着する異物粒子数を低減させた半導体製造装置を提供する。
【解決手段】本発明では、被処理体を処理するための処理室と、該処理室にガスを供給するガス供給手段と、被処理体を戴置するための戴置電極と、前記処理室を減圧するターボ分子ポンプと、前記処理室の圧力を調整するために前記ターボ分子ポンプと前記処理室の間に設置されたバタフライバルブとを有する半導体製造装置において、前記バタフライバルブのフラッパーに異物粒子落下防止用のストッパーを設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に係り、特に、真空排気用のターボ分子ポンプの上流側に配置されたバタフライバルブを備えた真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAMやマイクロプロセッサ等の半導体装置の製造工程において、プラズマエッチングやプラズマCVDが広く用いられている。
【0003】
一般に、真空処理装置は、処理室を減圧するためのターボ分子ポンプと、処理室の圧力を調整するために真空処理室の下流側でかつターボ分子ポンプの上流側に配置されたバタフライバルブなどの調圧バルブとを備えている。処理ガスはガスボンベやレギュレーターなどからなるガス供給系から処理ガス供給系へ供給される。例えば特許文献1に開示されているように、処理ガスは主ガスと添加ガスの2種類を混合させて処理室内に供給され、さらに下流側のターボ分子ポンプにより減圧、排気される。
【0004】
プラズマを用いた半導体装置の加工における課題の1つに、ウエハ等の被処理体に付着する異物粒子数を低減することが挙げられる。例えばエッチング処理中や処理前に被処理体の微細パターン上に異物粒子が落下すると、その部位は局所的にエッチングが阻害される。その結果、被処理体の微細パターンには断線などの不良が生じ歩留まり低下を引き起こす。そのため、ガス粘性力や熱泳動力、クローン力などを用いて異物粒子の輸送を制御し、被処理体に付着する異物数を低減する方法が多数考案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−41088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ターボ分子ポンプにより高速で跳ね返される異物粒子による汚染が問題になっている。処理ガスやキャリアガスの流れに乗ってターボ分子ポンプに流入する異物粒子の速度は、おおむねガスの流体としての速度と同等となり、例えば1m/s〜10m/sである。対して、ターボ分子ポンプのブレードの回転速度は数百m/sにもなる。そのため、異物粒子はターボ分子ポンプのブレードをすり抜けることができず、ブレードの先端部で高速ではじき飛ばれる。このようにして跳ね返された高速異物粒子は真空処理室内に飛散し、一部はウエハに付着することになる。このようなメカニズムによる異物粒子の飛散を防ぐためには、ターボ分子ポンプに異物粒子が落下・流入しないようにすることが重要である。
【0007】
本発明の目的は、被処理体に付着する異物粒子数を低減させた真空処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、処理室と、該処理室に処理ガスを供給するためのガス供給手段と、被処理体を戴置するための戴置電極と、前記処理室内でプラズマを生成するためのプラズマ生成手段と、前記処理室を減圧するためのターボ分子ポンプと、前記処理室の圧力を調整するために前記ターボ分子ポンプの上流側に配置されたバタフライバルブとを有する真空処理装置において、前記バタフライバルブは、回転可能に支持されたフラッパーと、該フラッパー上に落下した異物粒子が前記ターボ分子ポンプに落下しないように該フラッパーの一端に設置された異物粒子落下防止用のストッパーと、前記フラッパーの開度を調整可能なアクチュエータとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バタフライバルブのフラッパーに異物落下防止用のストッパーを設けることにより、バタフライバルブのフラッパー上に落下した異物粒子が、調圧動作中にフラッパーからターボ分子ポンプ内へ落下することを阻止することができる。これによりターボ分子ポンプによる異物粒子の飛散を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、被処理体を処理するための処理室と、該処理室にガスを供給するガス供給手段と、被処理体を戴置するための戴置電極と、前記処理室を減圧するターボ分子ポンプと、前記処理室の圧力を調整するために前記ターボ分子ポンプと前記処理室の間に設置されたバタフライバルブとを有する半導体製造装置において、前記バタフライバルブのフラッパーに異物粒子落下防止用のストッパーを設置したものである。
以下、図に基いて、実施例を詳細に説明する。
本発明になる真空処理装置の実施例について、プラズマ処理装置を例に図面を参照しながら説明する。最初に、図2により本発明が適用されるプラズマ処理装置の全体構成の概要について説明する。本プラズマ処理装置は図2に示すとおり、1つの真空搬送室61に4つの処理室1が接続されている。この真空搬送室内には、ウエハ等の被処理体2を搬送するための真空搬送ロボット62が設置されている。また真空搬送室61には2つのロック室65を介して大気側搬送室63が接続されている。大気側搬送室63には、被処理体を搬送するための大気搬送ロボット64と、被処理体2を回転させながら被処理体のノッチ位置や、被処理体の中心を検出するためのウエハアライナー66が設置されている。また、大気側搬送室のロック室65に対して反対側には被処理体を収納するフープ68を設置するためのウエハステーション67が設置されている。さらに、大気側搬送室には被処理体の裏面外周部に付着した堆積物を除去するためのウエハエッジクリーナー69が接続されている。
また、本プラズマ処理装置全体を制御するための制御コンピューター79が設置されている。以下に述べるバタフライバルブの開度もこの制御コンピューター79により制御される。
【0011】
図3は、図2に示した構成のうち、処理室1と真空搬送室61とロック室65の構成をより詳細に示したものである。まず処理室1から説明する。処理室1の上方にはプラズマ生成用の高周波電力を供給するためのアンテナ3が設置されている。該アンテナには整合器22−1を介してプラズマ生成のための高周波電源(ソース電源)20が接続されている。また、該アンテナには処理ガスを径方向に分散させるためのガス分散板3と、処理ガスを処理室内に導入するための小さなガス孔が多数設けられたシャワープレート5が設置されている。該分散板は内側の領域と外側の領域の2つに分割されており、シャワープレートの中心付近と外周付近で組成や流量の異なる処理ガスを独立に供給できるようにしている。処理ガスはガスボンベやレギュレーターなどからなるガス供給系(詳細構成は図示せず)49から処理ガス供給系92へ供給される。処理ガスは主ガスと添加ガスの2種類を混合させて処理室内に供給される。主ガスはガス供給源49から供給されたガスをマスフローコントローラー50−1〜50−6を介して所定の流量を流し、合流させて生成される。該主ガスはガス分配機51にて所定の流量比で2つに分岐し、一方は分散板の内側の領域、他方は分散板の外側の領域に供給されるようになっている。添加ガスはガス供給源49から供給され、マスフローコントローラー50−7、50−8を介して所定の流量比で前記2つに分岐した主ガスそれぞれに混合させるようになっている。このようなガス供給系の機能や効果については特許文献1に詳しく説明されている。なお、被処理体の搬送中等に、処理室内にキャリアガスを供給する際は、処理ガス供給系92を介して窒素ガスや、Arガス等を流すため、処理ガス供給系はキャリアガス供給機能も兼ねている。ここでキャリアガスとは、異物粒子や、腐食性ガス、堆積性ガスの輸送を制御するために供給するガスのことを言う。
【0012】
処理室1には被処理体2を戴置して処理するための戴置電極4、及び戴置電極4の上下駆動機構73を備えている。該戴置電極には、被処理体に入射するイオンを加速する等の目的でバイアス電力を印加するためのバイアス電源21が整合器22-2を介して接続されている。
【0013】
また、処理室1には処理室内を減圧するための排気手段としてターボ分子ポンプ41が取り付けられている。さらに、処理室内の圧力を制御するため、バタフライバルブ43がターボ分子ポンプ41の上部に取り付けられている。ターボ分子ポンプ41の下流にはドライポンプ42−1が接続されている。また、処理室1を前記ターボ分子ポンプや前記ドライポンプ等から構成される排気系から遮断するため、メインバルブ44がバタフライバルブ43の上方に設置されている。
【0014】
また、処理室内をベントするため、窒素や乾燥空気などのベントガスが、ガス供給源49から、バルブ52−5及びレギュレーター53−3を介して供給されるようになっている。さらに、前記メインバルブ44を閉じた状態でバタフライバルブ及びターボ分子ポンプをベントできるようにするため、バルブ52−4及びレギュレーター53−2を介してベントガスを供給できるようになっている。制御コンピューター79により、モータ等のアクチュエータ430を介して、バタフライバルブ43の開度が制御される。
【0015】
また、処理室1には、磁場を形成するためのコイル26とヨーク27が設置されている。また、処理室1には処理室内の圧力を測定するための真空計54−1が設置されている。なお、処理室に接続されたアンテナにバイアス電力を印加するための高周波電源や被処理体を戴置電極に固定するための静電吸着用の電源等は図示を省略した。
【0016】
処理室1は、2つのゲートバルブ70−1と70−2を介して真空搬送室61と接続されている。処理室側のゲートバルブ70−1は主に、処理室内壁が高周波電力から見て同軸(回転対称)になっているようにするため、及び処理室と真空搬送室の接続部が堆積性のガスや腐食性のガスで汚染されるのを防止することを目的としており、別名でプロセスバルブとも呼ぶ。対して真空搬送室側のゲートバルブ70−2は処理室と真空搬送室の間のガスの流れを完全に遮断する機能を持ち、例えば片方が大気、もう片方が真空であってもガスの流れを遮断できる。
【0017】
次に、真空搬送室61について説明する。真空搬送室61にはキャリアガス供給系93が接続されている。キャリアガスはガス供給源49から供給される窒素ガス、Arガス、乾燥空気などを用いるものとし、マスフローコントローラー50−9によって真空搬送室内に所定の流量で供給される。真空搬送室には該真空搬送室内を減圧するためドライポンプ42−2がバルブ52−1を介して接続されている。また、真空搬送室内の圧力を測定するため、圧力計54−2が設置されている。
【0018】
次に、ロック室65の構成について述べる。ロック室65にはバルブ(スローOPENバルブ)52−2とドライポンプ42−3から成る真空排気系が設置されている。ここでスローOPENバルブとは、バルブ内の弁体の移動速度を調整できるタイプのバルブであり、弁体がCLOSE位置からOPEN位置まで移動するのにかかる時間を長くすることで、排気ラインのコンダクタンスが徐々に大きくすることができ、ロック室内の真空引きにおいて急減圧を抑制できるメリットがある。急減圧を抑制するメリットとしては、急激なガスの流れによる異物粒子の発生の抑制、被処理体の微細パターンの倒れの抑制、結露の抑制が挙げられる。
【0019】
また、ロック室65にはベントガスを供給するためのベントガス供給系46が設置されている。ここでベントガスとは真空から大気へ圧力を上げる際に真空チャンバー内に供給するガスのことを言う。ベントガスはガス供給源49から供給される窒素や乾燥空気を用いる。ベントガス供給系46は異物舞上げ防止のためのガスディフューザー84と、ベントガスの供給量を調節するためのレギュレーター53−1と、バルブ52−3からなる。また、ロック室内の圧力を測定するため、圧力計54−3が設置されている。
【0020】
次に、バタフライバルブ43の構成について図1を参照に説明する。図1Aはバタフライバルブ43を横から見た概略、図1Bはバタフライバルブのフラッパー87を立体的に示した斜視図である。図1に示したバタフライバルブ43では、2枚のフラッパー87が設置されており、アクチュエータ430で駆動される回転軸171を中心として回転するようになっている。このフラッパー87の端には異物粒子落下防止用のストッパー88が設置されている。さらにストッパーの両脇には取り外し可能な蓋172が設置されている。
次にバタフライバルブの開度について図4を参照に説明する。図4は図1Aと同じ構成である。図4Aが全閉(開度0%)、図4Cが全開(開度100%)であり、図4Bの開度が例えば20%(ここでθ/90°×100=20%であると仮定した。)である。
【0021】
次にフラッパーに設置された異物粒子落下防止用のストッパー88の役割について説明する。図5Aはプラズマ処理中や処理前後において、バタフライバルブの上方で発生した異物粒子80がバタフライバルブのフラッパー87に落下・付着している様子を示している。異物粒子の発生要因としては、例えば処理室のプラズマ処理中におけるパーツの削れや、搬送動作における各種駆動機構の摩耗、内壁の温度の変化に伴って発生した熱応力による内壁付着物の剥離が挙げられる。図5Aのように、フラッパー上に異物粒子が落下した状態で、図5Bのようにフラッパーを開ける(開度を上げる)と、フラッパー上の異物粒子は下の方に落下するが、異物粒子落下防止用のストッパー88がこの異物粒子を受け止め、ターボ分子ポンプ内に落下するのを防ぐことができる。また、蓋172はストッパー88の中に溜まった異物粒子が横から漏れ出すのを防ぐためのものである。
【0022】
図6は、ストッパーが無い場合を示したものである。図6Aに示したように、異物流がフラッパー上に落下・付着した状態で、図6Bのように開度を上げると、異物粒子はターボ分子ポンプ41に落下し、落下した異物粒子はターボ分子ポンプ内で高速で回転しているブレード173ではじき飛ばされ、高速異物粒子としてチャンバー内を飛散する。この高速異物粒子は複数回処理室内壁で反射しながら、一部は戴置電極上に戴置されたウエハ上等に落下して付着する。以上よりバタフライバルブのフラッパーに異物粒子落下防止用のストッパーを設置することにより、ターボ分子ポンプ41に落下する異物粒子数を低減することができる。
【0023】
なお、これまでは2枚のフラッパーで構成されるバタフライバルブについて述べてきたが、フラッパーの枚数がこれよりも多いバタフライバルブでも同様な効果が得られる。図7にはフラッパーが4枚(87−1〜87−4)設置されたバタフライバルブ43に本発明を適用した例を示している。なお、異物粒子落下防止用のストッパー88は、フラッパーが全開となったとき、下流側(ターボ側)となる端に取り付けるようにする。
【0024】
また、図8に示したように、異物落下防止用ストッパー88はフラッパー87の表面(全閉時に処理室側となる面)と裏面(全閉時にターボ側となる面)の両方に設置してもよい。この場合、バタフライバルブが全開となったとき、何らかの理由でフラッパーの裏面に付いていた異物粒子が剥離したとき、この異物粒子がターボ分子ポンプに落下するのを阻止することができる。
【0025】
また、図9に示したように、異物落下防止用のストッパー88に一旦溜まった異物粒子が、ストッパー88から漏れ出さないようにするため、ストッパーの入り口部にかえし174を設置するとよい。加えて、フラッパー上や、フラッパーに設けた異物落下防止用のストッパー内には真空グリスなど、粘りのある部材を塗布しておくと大きな異物粒子が落下した際に、フラッパーから剥離してターボ分子ポンプ内に落下するリスクを低減できる。
【0026】
次に異物落下防止ストッパーの大きさの制限について述べる。図10Aは望ましい場合、図10Bは望ましくない場合を示している。点線の円αはフラッパー87が軸171を中心に回転したとき、フラッパーの先端部分の軌跡を示したものである。図10Aでは異物落下防止用のストッパー88の底面がフラッパー面に垂直な線分よりも内側に傾斜しており、フラッパーがどの位置にあっても点線αで示す円をはみ出していない。これに対して図10Bでは、異物落下防止用のストッパー88の底面がフラッパー面に垂直であるため、図中のXの部分が円αをはみ出している。この場合、例えば図7において、フラッパー87−2と87−3がぶつかる恐れが生じる。そのため、異物落下防止用のストッパーはフラッパーが回転したときに、他のフラッパーや、バタフライバルブの内壁等に衝突しないような構造としなければならない。
【0027】
次に、バタフライバルブの開度の最適な制御方法について述べる。例えばバタフライバルブに異物落下防止用のストッパーが付いていても、装置の運用全般において、バタフライバルブの開度が全開の状況が大半を占めていることは望ましくない。即ち、異物粒子がバタフライバルブ内に落下しても、フラッパーがこの異物粒子を受け止め、ターボ分子ポンプに流入しないようにできるだけ開度を小さくしなければならない。これを図11と図12を参照に説明する。
【0028】
図11、図12はある1枚のウエハの処理する場合を例として、ウエハの位置、ゲートバルブの開閉、ロック室と処理室と真空搬送室におけるガス供給量と圧力、及びバタフライバルブの開度の時間変化を示している。なお、図12は図11の続きであり、プラズマ処理中を含めた前半が図11、プラズマ処理中を含めた後半が図12である。まず、全体の流れを説明する。
【0029】
まず、ウエハを大気搬送室からロック室へ搬送するため、ロック室のベントを開始し(t1)、ベント完了後(t2)、大気側搬送室とロック室の間のゲートバルブ70−4を開け(t3)、ウエハをロック室に搬入する(t4)。次に、ゲートバルブ70−4を閉め(t5)、ロック室の真空引きを開始する(t6)。ロック室内の圧力が所定の値に到達したら真空引きを中断し(t7)、ロック室と真空搬送室の間のゲートバルブ70−3を開け(t8)、ウエハをロック室から真空搬送室へ搬送し(t9)、ゲートバルブ70−3を閉じる(t10)。次に、真空搬送室と処理室の間のゲートバルブ70−2を開け(t11)、続けて真空搬送室と処理室の間にあるもう1つのゲートバルブ(プロセスバルブ)70−1を開け(t12)、ウエハを真空搬送室から処理室へ搬送し(t13)、ゲートバルブ70−1を閉じ(t14)、続けてゲートバルブ70−2を閉じる(t15)。次に処理室内にキャリアガスとして供給していた窒素ガスの供給を中止すると共に、処理ガスの供給を開始し、これと同時にバタフライバルブによる調圧を開始する(t16)。処理室内の調圧とキャリアガスから処理ガスへの置換が完了したら(t17)、プラズマを着け所定の処理を開始する(t18)。所定のプラズマ処理が終わったら(t19)、処理ガスの供給を止め、キャリアガスの供給を開始し、さらにバタフライバルの開度を下げる(t20)。調圧及びガスの置換が終わったら(t21)、ゲートバルブ70−2を開け(t22)、続けてゲートバルブ70−1を開け(t23)、ウエハを処理室から真空搬送室へ搬送し(t24)、ゲートバルブ70−1を閉じ(t25)、続けてゲートバルブ70−2を閉じる(t26)。その後、ゲートバルブ70−3を開け(t27)、ウエハを真空搬送室からロック室へ搬送し(t28)、ゲートバルブ70−3を閉じる(t29)。その後、ロック室のベントを開始し(t30)、ベント完了後(t31)、ゲートバルブ70−4を開け(t32)、ウエハをロック室から大気側搬送室へ搬送し(t33)、ゲートバルブ70−4を閉じる(t34)。その後、ロック室の真空引きを開始し(t34)、ロック室の圧力が所定の値に到達したら真空引きを終了する(t35)。
【0030】
ここで、図11、図12におけるバタフライバルブの開度を見てみると分かるように、基本的にはt1〜t35の間で、開度が全開になっているタイミングが無いようにしている。放電中(t18〜t19)は所定の処理圧力に調圧する必要があり、バタフライバルブの開度は一般に50%以下である。これはバタフライバルブの開度が50%を大きく超えると、バタフライバルブの開度が変化してもコンダクタンスはほとんど変化せず、実質的には調圧することは難しいためである。また、被処理体の搬送中(t1〜t17,t20〜t35)においては、バタフライバルブの開度は次の2つの理由からも小さい方がよい。
【0031】
その1つ目の理由は、例えば図11、図12では処理室内にキャリアガスを1000ccm(ml/min)流し、圧力を20Paとしているが、一般に1000ccmの流量ではバタフライバルブの開度が50%以上では圧力が例えば1−2Pa程度になってしまう。処理室内の圧力が例えば20Paなどの高い値の方が、異物粒子に働くガス粘性力が大きくなり、ターボ分子ポンプで反射した異物粒子がウエハに到達する前に大きく減速し、結果として、ウエハまで到達するのを抑制する効果がある。
【0032】
2つ目の理由はロック室と真空搬送室の差圧、及び真空搬送室と処理室の差圧による異物粒子舞上げ防止のためである。
【0033】
図11、図12では真空搬送室の圧力は例えば30Paとしているが、もし、処理室の圧力を例えば1Paとすると、ゲートバルブが70−1が開いたときに、約30Paの差圧で急激なガスの流れが発生し、異物粒子が舞い上がり、ウエハに付着するリスクが高い。異物舞上げ防止のためには差圧は10Pa以下が望ましい。また、処理室内から真空搬送室へ堆積性のガスや腐食性の残留ガスあるいは異物粒子が流れ込むと、真空搬送室を汚染する恐れがあるため、処理室内に対して真空搬送室の圧力の方が陽圧である方が望ましい。従って、処理室の圧力をP1、真空搬送室の圧力をP2とすると、処理室と真空搬送室の間のゲートバルブを開ける直前の圧力は、次の関係を満たしていることが望ましい。
【0034】
P2―P1≦10[Pa] (1)
これと同様に、真空搬送室とロック室の間のゲートバルブを開ける直前は真空搬送室とロック室の圧力差も小さい方が良い。望ましくは10Pa以下が良い。また、差圧がゼロでない場合には、ロック室の方が真空搬送室に対して陽圧である方が望ましい。即ち、ロック室の圧力をP3としたとき、真空搬送室とロック室の間のゲートバルブを開ける直前は
P3−P2≦10[Pa] (2)
の関係が成り立つのが望ましい。この理由を次に述べる。
図11、図12の例に示したように、ロック室の真空引きについては、例えば40Paに到達した時点で真空引きが完了したものとしている。即ち、
P1=20[Pa]、P2=30[Pa]、P3=40[Pa] (3)
となっている。
【0035】
ここで、例えば
P1=5[Pa]、P2=15[Pa]、P3=25[Pa] (4)
である場合を考える。この場合、ロック室の真空引き完了圧力が低くなるため、真空引きにかかる時間が長くなり、スループットが低下するデメリットが生じる。
【0036】
逆に、
P1=50、P2=60、P3=70
である場合、処理室内において、キャリアガスから処理ガスへ変換する時間と、処理ガスからキャリアガスに変換する時間が長くなり、処理室内での調圧時間に起因してスループットが低下するデメリットが生じる。このような理由から式(1)と式(2)を満たす範囲で、
P3=30〜50[Pa]
P2=20〜40[Pa]
P1=10〜30[Pa]
とすることが望ましい。そして、P1を10〜30Paにするためにはバタフライバルブの開度を下げる必要が生じ、結果的に異物粒子がバタフライバルブのフラッパー上に落下し、ターボ分子ポンプ内に落下するのを防止する効果がある。
【0037】
なお、近年、スループットの向上のため、ロック室の真空引き時間をより短くする必要が生じる場合がある。この場合、例えばロック室の真空引き完了圧力を100Pa前後とやや高めに設定することも選択肢としてあり得る。この場合の各圧力は例えば、
P3=140[Pa]
P2=40[Pa]
P1=30[Pa]
とし、真空搬送室と処理室の差圧に比べて真空搬送室とロック室の差圧の方を大きくするのが望ましい。即ち
P2−P1≦P3−P2
である。これは処理室内の方がロック室内や真空搬送室内に比べて異物による汚染のリスクが高いためである。ただし、異物舞上げ防止よりスループット向上を優先する場合であっても、ロック室と真空搬送室の差圧は100Pa以下とするのが望ましい。
【0038】
なお、フラッパーは、例えば放電時間換算で500時間毎に行われる全掃時に洗浄済みのものと交換することが望ましい。ここで全掃とは、処理室内等を大気開放し、スワップパーツの交換・洗浄等のクリーニング作業を言う。
【0039】
また、簡易メンテや簡易全掃時にはターボ分子ポンプを停止して、図13に示したように、異物落下防止用のストッパーが上方になるようにフラッパーを回転させて、ターボ分子ポンプ内に異物粒子を落とし、フラッパー上に落下した異物粒子を除去する運用を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1A】本発明の一実施例になるバタフライバルブを横から見た概略図である。
【図1B】図1Aのバタフライバルブのフラッパーを立体的に示した斜視図である。
【図2】本発明が適用されるプラズマ処理装置の全体構成の概要について説明する図である。
【図3】図2に示した構成のうち、処理室と真空搬送室とロック室の構成をより詳細に示した図である。
【図4A】本発明の一実施例になるバタフライバルブが全閉(開度θ=0%)の状態を示す図である。
【図4B】本発明の一実施例になるバタフライバルブの開度が20%の状態を示す図である。
【図4C】本発明の一実施例になるバタフライバルブの開度が全開(開度θ=100%)の状態を示す図である。
【図5A】プラズマ処理中や処理前後において、本発明の一実施例になるバタフライバルブの上方で発生した異物粒子がバタフライバルブのフラッパーに落下・付着している様子を示している図である。
【図5B】フラッパー上に異物粒子が落下した状態で、フラッパーを開けたときの物粒子落下防止用のストッパーの作用を説明する図である。
【図6A】比較例として、ストッパーが無い場合の、異物流がフラッパー上に落下・付着した状態を示している図である。
【図6B】図6Aの状態から開度を上げたときの、異物流がフラッパー上に落下・付着する状態を示す図である。
【図7】フラッパーが4枚設置されたバタフライバルブに本発明を適用した例を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例になるバタフライバルブの構成を示す図である。
【図9】本発明の他の実施例になるバタフライバルブの構成を示す図である。
【図10A】異物落下防止ストッパーの大きさの制限について説明する図であり、望ましい場合を示している。
【図10B】異物落下防止ストッパーの大きさの制限について説明する図であり、望ましくない場合を示している。
【図11】本発明を採用した真空処理装置でウエハの処理する場合を例として、ウエハの位置、ゲートバルブの開閉、ロック室と処理室と真空搬送室におけるガス供給量と圧力、及びバタフライバルブの開度の時間変化を示す図である。
【図12】本発明を採用した真空処理装置でウエハの処理する場合を例として、ウエハの位置、ゲートバルブの開閉、ロック室と処理室と真空搬送室におけるガス供給量と圧力、及びバタフライバルブの開度の時間変化を示す図である。
【図13】本発明の異物落下防止用のストッパー付きフラッパーの、運用例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1:処理室、2:被処理体、3:アンテナ、4:戴置電極、5:シャワープレート、6:分散板、7:ガス孔、20:ソース電源、21:バイアス電源、22:整合器、26:コイル、27:ヨーク、39:制御コンピューター、41:ターボ分子ポンプ、42:ドライポンプ、43:バタフライバルブ、44:メインバルブ、46:ベントガス供給系、49:ガス供給源、50:マスフローコントローラー、51:ガス分配器、52:バルブ、53:レギュレーター、54:真空計、60:プラズマ処理ユニット、61:真空搬送室、62:真空搬送ロボット、63:大気搬送室、64:大気搬送ロボット、65:ロック室、66:ウエハアライナー、67:ウエハステーション、68:フープ、69:ウエハエッジクリーナー 、70:ゲートバルブ、73:上下駆動機構、80:異物粒子、84:ガスディフューザー、87:フラッパー、88:ストッパー、2:処理ガス供給系、93:キャリアガス供給系、171:回転軸、172:蓋、173:ブレード、174:かえし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、該処理室に処理ガスを供給するためのガス供給手段と、被処理体を戴置するための戴置電極と、前記処理室内でプラズマを生成するためのプラズマ生成手段と、前記処理室を減圧するためのターボ分子ポンプと、前記処理室の圧力を調整するために前記ターボ分子ポンプの上流側に配置されたバタフライバルブとを有する真空処理装置において、
前記バタフライバルブは、回転可能に支持されたフラッパーと、該フラッパー上に落下した異物粒子が前記ターボ分子ポンプに落下しないように該フラッパーの一端に設置された異物粒子落下防止用のストッパーと、前記フラッパーの開度を調整可能なアクチュエータとを有することを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記フラッパーは、交換可能であり、かつ、前記被処理体の処理時に、前記ストッパーの設置された側が下流側になるようにして開度が制御されることを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
処理室と、前記処理室に処理ガスまたはキャリアガスを供給するためのガス供給手段と、被処理体を戴置するための戴置電極と、前記処理室内でプラズマを生成するためのプラズマ生成手段と、前記処理室を減圧するためのターボ分子ポンプと、前記処理室の圧力を調節するために前記ターボ分子ポンプの上流側に配置されたバタフライバルブと、前記バタフライバルブのフラッパーに設置された異物粒子落下防止用のストッパーと、真空搬送室と、前記真空搬送室にキャリアガスを供給するためのガス供給手段と、前記真空搬送室を減圧するための排気手段と、ロック室と、前記ロック室にベントガスを供給するためのガス供給手段と、前記ロック室を減圧するための排気手段とを有する真空処理装置において、
前記処理室の圧力をP1、前記真空搬送室の圧力をP2、前記ロック室の真空引き完了圧力をP3としたとき、被処理体の搬送中は、次の圧力の関係が成り立つように制御することを特徴とする真空処理装置。
P1 < P2 < P3
P2−P1≦P3−P2
30[Pa] ≦ P3 ≦ 140[Pa]
【請求項4】
請求項3において、前記バタフライバルブの開度は水平状態で全閉とし、前記被処理体の搬送中は、前記ストッパーの設置された側が下流側になるようにして前記バタフライバルブの開度を50%以下に制御することを特徴とする真空処理装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−40746(P2010−40746A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201694(P2008−201694)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】