磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリ
【課題】信頼性の高い低消費電力不揮発性メモリを提供する。
【解決手段】磁気メモリセルを構成する巨大磁気抵抗効果素子やトンネル磁気抵抗効果素子402の強磁性固定層202の磁化方向と反平行又は平行に磁化された強磁性配線101を記録層である強磁性自由層200に非磁性層401を介して接続させ、スピントランスファートルクにより記録層の磁化反転を行う。
【解決手段】磁気メモリセルを構成する巨大磁気抵抗効果素子やトンネル磁気抵抗効果素子402の強磁性固定層202の磁化方向と反平行又は平行に磁化された強磁性配線101を記録層である強磁性自由層200に非磁性層401を介して接続させ、スピントランスファートルクにより記録層の磁化反転を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子を装備した磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高集積磁気メモリの記録再生セルに出力の大きなトンネル磁気抵抗効果素子を適用することが試みられている。トンネル磁気抵抗効果素子としては、絶縁体にAlの酸化物を用いたトンネル磁気抵抗効果素子や絶縁膜に酸化マグネシウムを用いたトンネル磁気抵抗効果素子が開示されている(T. Miyazaki and N. Tezuka, J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995),S. Yuasa. et al., Nature Material 3, 868(2004))。従来の不揮発性磁気メモリは、MOSFET上にトンネル磁気抵抗効果素子を形成したメモリセルにより構成される。スイッチングにMOSFETを利用し、ビット線とワード線に通電させることにより発生する電流誘起の空間磁場を使ってトンネル磁気抵抗効果素子の磁化方向を回転させて情報を書込み、トンネル磁気抵抗効果素子の出力電圧により情報を読み出す方式である。また、上記電流誘起の空間磁場を使った磁化回転のほかに、直接、磁気抵抗効果素子に電流を流すことにより磁化を回転させるいわゆるスピントランスファートルク磁化反転方式があり、例えば米国特許第5,695,864号明細書や特開2002−305337号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995)
【非特許文献2】Nature Material 3, 868(2004)
【非特許文献3】Appl.Phys.Lett.85,5358-5360(2004)
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,695,864号明細書
【特許文献2】特開2002−305337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピントランスファートルク磁化反転による書込み方式は、図20に示すように、一般的なメモリの書込み動作時間である10ナノ秒以下においては、スピントランスファートルク磁化反転の閾値電流が大幅に増大し、磁化反転に誤りが生じることが知られている。図20(a)は、Appl. Phys. Lett. 85, 5358-5360 (2004)から引用した書込み電流に対する反転確率のプロット図である。この図から反転確率が0,1にならない領域が存在し、且つ書込み時間の短い領域で、反転確率を1にする書込み電流の値が著しく増大していることがわかる。図20(b)は、書込み時間に対する書込み電流の大きさを示した図であり、10ナノ秒以下の書込み時間において、書込み電流が増大することがわかる。図20(c)は、書込み電流に対して書込み確率をプロットした図であり、書込み確率が0,1にならない電流領域(I1以上I2以下)が存在することがわかる。
【0006】
磁気メモリの情報の書込みは、通常10ナノ秒以下の時間において行われる必要がある。低消費電力かつ高信頼性をもつ高集積不揮発性磁気メモリの実現には、そのような短い時間においてトンネル磁気抵抗効果素子の記録層の磁化を低電流で誤りなく確実に反転させる必要がある。
【0007】
本発明は、このような要請に応えることのできる磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、磁気メモリセルを構成する巨大磁気抵抗効果素子やトンネル磁気抵抗効果素子の強磁性固定層の磁化方向に対して所定の角度に磁化された強磁性配線を記録層である強磁性自由層に非磁性層を介して接続させ、スピントランスファートルクにより記録層の磁化反転を行う。また、強磁性配線と分離して非磁性層に接続する非磁性配線を具備し、強磁性配線と非磁性配線に非磁性層を介して電流を流す手段を具備し、適当な電流パルス信号あるいは高周波電流を印加した状態でスピントランスファートルクにより記録層の磁化反転を行う。
【0009】
本発明による磁気メモリセルは、第一の非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層とを有する磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極と、強磁性自由層に接続された第二の非磁性層と、第二の非磁性層に接続する強磁性配線とを有し、磁気抵抗効果素子に電流を流してスピントランスファートルクによって前記強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行う。
【0010】
第1の態様の磁気メモリセルでは、強磁性配線を介して前記磁気抵抗効果素子に電流を流す。また、第2の態様の磁気メモリセルでは、第二の非磁性層に接続する非磁性配線、及び前記非磁性配線と前記強磁性配線との間に電流を流す手段を有する。
【0011】
強磁性自由層が単層の強磁性膜からなる場合には、強磁性配線の磁化方向は強磁性固定層の磁化方向と反平行であるのが好ましい。また、強磁性自由層が積層フェリ構造を有する積層膜である場合には、強磁性配線の磁化方向は強磁性固定層の磁化方向と平行であるのが好ましい。
【0012】
本発明によるランダムアクセスメモリは、第一の非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層を有する磁気抵抗効果素子、及び前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極を各々備える磁気メモリセルが2次元アレイ状に配列された磁気メモリセル群と、磁気メモリセル群の中の所望の磁気メモリセルを選択する選択手段と、2次元アレイを構成する磁気メモリセルの一列毎に、当該列に属する複数の磁気メモリセルに含まれる複数の強磁性自由層の磁化容易軸方向に平行になるように配置された複数の強磁性配線とを有し、強磁性配線は、第二の非磁性層を介して各列に属する複数の磁気メモリセルの強磁性自由層に接続され、選択手段によって選択された磁気メモリセルに電流を流し、スピントランスファートルクによって当該メモリセルが有する磁気抵抗効果素子の強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行う。
【0013】
第1の態様のランダムアクセスメモリは、強磁性配線を介して磁気抵抗効果素子に電流を流す。また、第2の態様のランダムアクセスメモリは、強磁性配線と平行に配置されて第二の非磁性層に接続する非磁性配線、及び非磁性配線と強磁性配線との間に電流を流す手段を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、スピントランスファートルクによる書き込み電流を低減して、書き込みの誤り率を低減することができ、信頼性の高い低消費電力不揮発性メモリを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図2】図1に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図3】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図4】図3に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図5】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図6】図5に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図7】本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図。
【図8】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図9】図8に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図10】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図11】図10に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図12】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図13】図12に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図14】本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図。
【図15】書込み電流と書込み時間の関係を示した図。
【図16】書込み電流と書込み時間の関係を示した図。
【図17】強磁性配線と強磁性固定層の磁化配列の例を示した図。
【図18】磁化歳差運動と電流印加のタイミングを説明した図。
【図19】強磁性自由層と強磁性固定層に用いられる材料の例について示した図。
【図20】スピントランスファートルク磁化反転による書込み方式の問題点を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、磁気抵抗効果素子としてトンネル磁気抵抗効果素子を用いる例によって本発明を説明するが、トンネル磁気抵抗効果素子の代わりに巨大磁気抵抗効果素子を用いても同様の効果を得ることができる。
【0017】
図1は、トンネル磁気抵抗効果素子を搭載した本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図である。C−MOS 500は、2つのn型半導体410,413と一つのp型半導体411からなる。n型半導体413に接続されたドレイン電極414は、電極415,416を介して接地されている。n型半導体410にはソース電極409が接続されている。ゲート電極412のON/OFFにより、ソース電極409とドレイン電極414の間に流れる電流のON/OFFが制御される。ソース電極409に電極408〜405が積層され、電極403を介してトンネル磁気抵抗効果素子402が接続されている。電極405と電極403の間には何層かの電極が存在してもかまわない。非磁性層401がトンネル磁気抵抗効果素子402に接続されているが、非磁性層401に強磁性自由層が直接接続されていることが望ましい。
【0018】
本発明の磁気メモリセルは、更に非磁性層401に接続する強磁性配線101を有する。強磁性配線101は、磁気メモリセルのビット線100と積層の配線を構成していることが望ましいが、強磁性配線101をそのままビット線として使用することも可能である。強磁性配線101は、CoFe,NiFe,CoFeBなどのようなCo,Fe,Niなどの強磁性元素を含む材料が使用される。磁気メモリセルへの情報書き込みに当たっては、ゲート電極412をONすると、スピントランスファートルクを発生させる電流が、非磁性層401と電極403の間のトンネル磁気抵抗効果素子402に流れる。スピントランスファートルクは、強磁性自由層、絶縁障壁層、強磁性固定層で構成されるトンネル磁気抵抗効果素子に電流を流すことで発生し、強磁性自由層の磁化を反転させる作用を有する。情報の読み出しは、強磁性自由層と強磁性固定層の磁化方向の相対角度で生ずるトンネル磁気抵抗効果を検出することにより行う。
【0019】
図2は図1に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図2(a)は平面模式図、図2(b)は図2(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が形成され、強磁性配線101が非磁性層401に接続されている。
【0020】
ここで強磁性自由層200が単層の強磁性膜で形成されているときの強磁性配線101と強磁性固定層202の磁化方向について図17(a)を用いて述べる。図17(a)に示したθ1が、強磁性配線101の磁化方向と強磁性固定層202の磁化方向がなす角度を表す。θ1は、強磁性配線101と強磁性固定層202の磁化が反平行配列をとるときに0度と定義される。−90°≦θ1≦90°のときにスピントランスファートルクによる書込み電流の低減と書込み誤り率を大幅に低減できる。特にθ1を0度に配置するときに最大の効果が得られる。次に、強磁性自由層200が、積層フェリ構造である場合について、図17(b)を用いて述べる。この場合、図17(b)に示したθ2が、強磁性配線101の磁化方向と強磁性固定層202の磁化方向がなす角度を表す。θ2は、強磁性配線101と強磁性固定層202の磁化が平行配列をとるときに0度と定義される。この場合には、−90°≦θ2≦90°のときにスピントランスファートルクによる書込み電流の低減と書込み誤り率を大幅に低減でき、特にθを0度に配置することが最も望ましい。ここで、積層フェリ構造とは、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層から成り、2層の強磁性層の磁化が反平行結合する構造をいう。
【0021】
ここで、本発明のように強磁性自由層に非磁性層を介して強磁性配線を接続し、その磁化方向を強磁性固定層に対して適当な相対角を作ることによってスピントランスファートルク磁化反転の書込み電流の低減と書込み誤り率の低減を達成できる理由について図18を用いて述べる。図18(a)は、強磁性自由層の磁化の歳差運動の様子の一例を示す。図18(a)のz軸方向が、強磁性自由層の磁化容易軸を示し、矢印600は、強磁性自由層の磁化のベクトルを表す。通常のスピントランスファートルク磁化反転の場合、磁化反転閾値電流値の大きさの電流を印加した直後、図18(a)のように強磁性自由層の磁化600はz軸方向(自由層の容易軸方向)の周りに軌跡601に沿った歳差運動を始め、その後軌跡602に沿ってz軸方向の正座標から負座標へと反転にいたる。しかし、この初期の歳差運動の振幅や位相が安定しないと強磁性自由層の磁化600は、軌跡602に沿う運動を実現できず、z軸正座標方向から負座標方向に反転ができない場合が生じる。初期の歳差運動の振幅や位相の安定性は確率的であるため、つまりはスピントランスファートルクによる磁化反転が確率的に発生してしまう。
【0022】
そこで、本発明のように強磁性自由層に非磁性層を介して強磁性配線を接続し、その磁化方向を強磁性固定層に対して適当な相対角(図17参照)にすると、スピントランスファートルク磁化反転の確率を増大させることが期待できる。この理由は以下である。強磁性自由層に非磁性層を介して強磁性配線を接続し、その磁化方向を強磁性固定層に対して適当な相対角とすると非磁性層内にスピン流が発生し、そのスピン流が強磁性自由層へ伝播作用し、強磁性自由層の歳差運動を安定化させることができる。その歳差運動が安定している状態のときに、非磁性層401と電極403の間のトンネル磁気抵抗効果素子402に電流を流し、強いスピントランスファートルクを作用させると、閾値電流が低減し、且つ反転の確率を増大させることが可能となる。図18(b)は、強磁性自由層の歳差運動を安定させ、非磁性層401と電極403の間のトンネル磁気抵抗効果素子402に電流を流し、強いスピントランスファートルクを作用させる場合の説明図を示す。ここで、mxは、図18(a)に示すように強磁性自由層の磁化のベクトルのx座標成分を示す。I1、I2、はそれぞれ図15(a)、(b)に示した電流を示す。まず、I1を図18(b)2段目の図のように流し、その後しばらくして図18(b)の3段目のようにI2を印加する。I1を流すことにより、図18(a)のようにmxは周期性の良好な振動を描き安定な歳差運動が可能となる。
【0023】
図3は、図1に示した磁気メモリセルにおいて、強磁性配線101と非磁性層401の間に絶縁層102を挟んだ構成例を示す。絶縁層102は、強磁性配線101から非磁性層401に注入されるスピン流の大きさを増大させることと、効率のよいスピンを選択的に注入することを可能とする。ここで、効率がよいという意味は、スピン分極の大きいスピンにより構成されるスピン流という意味である。スピン分極率の大きいスピン流により強磁性自由層200の歳差運動をより安定化でき、ひいては閾値電流の更なる低減が可能となる。絶縁層102は、MgO、AlO、SiO2のような酸化物により構成されるが、GaAsやZnSeなどの半導体材料、AlN、SiNなどの窒化物を用いてもよい。特に、絶縁層102にMgOを用いた場合、強磁性配線101にはCoFeBを用いることが望ましい。絶縁層102の膜厚は、絶縁層102を介した電流がトンネル的電流として発生する3nm以下の膜厚に設定されることが望ましい。
【0024】
図4は図3に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図4(a)は平面模式図、図4(b)は図4(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が形成され、強磁性配線101が絶縁層102を介して非磁性層401に接続されている。
【0025】
図5は、図3に示した磁気メモリセルにおいて、さらに強磁性自由層200と非磁性層401の間に絶縁層104を備えた構成例を示す。本構成例を用いることにより、強磁性自由層200に伝播作用するスピン流の大きさを、より増大させることができ、強磁性自由層200の磁化の歳差運動をより安定化でき、ひいては閾値電流の更なる低減が可能となる。絶縁層104の材料、膜厚については絶縁層102と同様である。
【0026】
図6は図5に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図6(a)は平面模式図、図6(b)は図6(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が絶縁層104を介して形成され、強磁性配線101が絶縁層102を介して非磁性層401に接続されている。
【0027】
図7は、図1〜図6に示した磁気メモリセルを複数個アレイ状に配置して構成した本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図であり、各配線や層を100nm以下にすることによりギガビット級の容量をもつ磁気ランダムアクセスメモリが実現可能になる。ゲート電極412とビット線100がメモリセルに電気的に接続されている。ビット線100を制御するドライバーとしてビット線ドライバー1001が設置され、ゲート電極412を制御するドライバーとしてゲートドライバー1002が設置されている。
【0028】
図8は、本発明による磁気メモリセルの他の構成例を示す図である。本実施例の磁気メモリセルは、図1に示した磁気メモリセルにおいて、さらに非磁性配線103を非磁性層401に接続させ、強磁性配線101と非磁性配線103の間に電流を流す機能を有するという点で図1に示した磁気メモリセルと異なる。
【0029】
図9は図8に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図9(a)は平面模式図、図9(b)は図9(a)のA−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が形成され、強磁性配線101が非磁性層401に接続されている。さらに、非磁性配線103が、非磁性層401に強磁性配線101と分離して接続されている。
【0030】
図10は、図8に示した磁気メモリセルにおいて、強磁性配線101が新たに設けた絶縁層102を介して非磁性層401に接続した構成を示す。
【0031】
図11は図10に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図11(a)は平面模式図、図11(b)は図11(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が形成され、強磁性配線101が絶縁層102を介して非磁性層401に接続されている。さらに、非磁性配線103が、非磁性層401に強磁性配線101と分離して接続されている。非磁性配線103の材料としては、例えばCuやAlなどの電気抵抗の小さくかつプロセス耐性の大きい材料を用いることができる。
【0032】
図12は、図10に示した磁気メモリセルにおいて、非磁性層401と強磁性自由層200の間に新たに絶縁層103を設けた構成を示す。
【0033】
図13は図12に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図13(a)は平面模式図、図13(b)は図13(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に絶縁層104を介して非磁性層401が形成され、強磁性配線101が絶縁層102を介して非磁性層401に接続されている。さらに、非磁性配線103が、非磁性層401に強磁性配線101と分離して接続されている。
【0034】
図14は、図8〜図13に示した磁気メモリセルを複数個アレイ状に配置して構成した本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図であり、各配線や層を100nm以下にすることによりギガビット級の容量をもつ磁気ランダムアクセスメモリが実現可能になる。ゲート電極412とビット線100がメモリセルに電気的に接続されている。ビット線100を制御するドライバーとしてビット線ドライバー1001が設置され、ゲート電極412を制御するドライバーとしてゲートドライバー1002が設置されている。本実施例に示したランダムアクセスメモリでは、非磁性配線103を制御するドライバー1003が新たに具備される。
【0035】
ここで、図8〜図13に示した磁気メモリセル及び図14に示した磁気ランダムアクセスメモリにおいて、書込み電流制御の一例を図15と図16を用いて説明する。ここでは、強磁性自由層200が単層の強磁性層で構成される場合を示した。
【0036】
まず図15(a)により、強磁性自由層200と強磁性固定層202の磁化方向がスピントランスファートルクにより平行から反平行にスイッチする場合を説明する。強磁性配線101と強磁性固定層202の磁化方向は反平行となっている。すなわち、図17のθ1が0度の場合である。電流I1は、強磁性配線101から非磁性層401を通って非磁性配線103に流れる電流を示す。電流I1は、ビット線ドライバー1001とドライバー1003を動作させることにより制御する。電流I2は、強磁性配線101から非磁性層401を通過してトンネル磁気抵抗効果素子402に流す電流を示す。あるいは、非磁性配線103から非磁性層401を通過して、トンネル磁気抵抗効果素子402に流してもよい。電流I2は、電流I1と独立分離してトンネル磁気抵抗効果素子402に流れることが重要であり、I2が強磁性自由層200のスピントランスファートルク磁化反転を起こす原因となる電流として作用する。電流I2の制御は、ゲートドライバー1002とビット線ドライバー1001及びドライバー1003の電圧関係を調整して行われる。
【0037】
次に、電流I1とI2の電流印加のタイミングの一例を図15(b)、(c)に示す。まずは、図15(b)に示した例を説明する。強磁性自由層200がスピントランスファートルクにより磁化反転する閾値電流以下の電流I1を与え、その直後に電流I2を流す。電流I2を印加するタイミングは、電流I1を印加後1ns以内が望ましい。はじめのI1の電流印加は、ビット線ドライバーとドライバー1003に電圧差を発生させて図15(a)の矢印603の方向に電流を発生させる。電流I2は、ゲートドライバー1002を開くことにより、トンネル磁気抵抗効果402への電流パス(矢印604)が発生するようになる。
【0038】
他の電流印加のタイミング例を図15(c)に示す。この場合、強磁性自由層200がスピントランスファートルクにより磁化反転する閾値電流以下の振幅を有する電流I1を交流により常時与え、磁化反転を行いたい適当な時間のときに電流I2を流す。交流の周波数としては1GHz以上が望ましい。特に、電流I2を流すタイミングは、電流I1の振幅が最大となるときが望ましい。図16は、強磁性自由層200の磁化方向を強磁性固定層202の磁化方向に対して反平行から平行にスイッチする場合を説明したものであり、電流の向きを図15と逆に設定して、図15と同様の制御を行う。
【0039】
図19は、本発明の磁気メモリセルに用いられる強磁性自由層200と強磁性固定層202に用いられる材料の例について示した図である。強磁性自由層200及び強磁性固定層202には、CoFeB,CoFe,CoB,CoFe,Co,Fe,NiFeなどの磁性材料を単層で用いることができる。また、強磁性自由層200及び強磁性固定層202は、それぞれ第一の強磁性層210と第二の強磁性層211、第三の強磁性層212と第四の強磁性層213を、図19に示した材料の組み合わせに従って、反平行結合するRuなどの中間層214を選択して3層の構成で使用してもかまわない。絶縁障壁層201には、酸化マグネシウム,アルミニウム酸化物、酸化シリコンなどの材料を用いることができる。
【0040】
本発明によると、信頼性の高い低消費電力不揮発性メモリを実現することが可能であり、従来構造に比べて、閾値電流密度が5分の1、書込みエラー率の一桁低減が可能である。本発明によると、ギガビット級の高密度磁気メモリを実現可能である。
【符号の説明】
【0041】
101…強磁性配線、102…絶縁層、103…非磁性配線、104…絶縁層、200…強磁性自由層、201…絶縁膜、202…強磁性固定層、401…非磁性層、402…磁気抵抗効果素子、403〜408…電極、409…ソース電極、412…ゲート電極、414…ドレイン電極、500…トランジスタ、1001…ビット線ドライバー、1002…ゲートドライバー、1003…電流制御ドライバー、210…強磁性自由層、211…強磁性固定層、212…強磁性固定層、213…強磁性固定層、214…中間層
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子を装備した磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高集積磁気メモリの記録再生セルに出力の大きなトンネル磁気抵抗効果素子を適用することが試みられている。トンネル磁気抵抗効果素子としては、絶縁体にAlの酸化物を用いたトンネル磁気抵抗効果素子や絶縁膜に酸化マグネシウムを用いたトンネル磁気抵抗効果素子が開示されている(T. Miyazaki and N. Tezuka, J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995),S. Yuasa. et al., Nature Material 3, 868(2004))。従来の不揮発性磁気メモリは、MOSFET上にトンネル磁気抵抗効果素子を形成したメモリセルにより構成される。スイッチングにMOSFETを利用し、ビット線とワード線に通電させることにより発生する電流誘起の空間磁場を使ってトンネル磁気抵抗効果素子の磁化方向を回転させて情報を書込み、トンネル磁気抵抗効果素子の出力電圧により情報を読み出す方式である。また、上記電流誘起の空間磁場を使った磁化回転のほかに、直接、磁気抵抗効果素子に電流を流すことにより磁化を回転させるいわゆるスピントランスファートルク磁化反転方式があり、例えば米国特許第5,695,864号明細書や特開2002−305337号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995)
【非特許文献2】Nature Material 3, 868(2004)
【非特許文献3】Appl.Phys.Lett.85,5358-5360(2004)
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,695,864号明細書
【特許文献2】特開2002−305337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピントランスファートルク磁化反転による書込み方式は、図20に示すように、一般的なメモリの書込み動作時間である10ナノ秒以下においては、スピントランスファートルク磁化反転の閾値電流が大幅に増大し、磁化反転に誤りが生じることが知られている。図20(a)は、Appl. Phys. Lett. 85, 5358-5360 (2004)から引用した書込み電流に対する反転確率のプロット図である。この図から反転確率が0,1にならない領域が存在し、且つ書込み時間の短い領域で、反転確率を1にする書込み電流の値が著しく増大していることがわかる。図20(b)は、書込み時間に対する書込み電流の大きさを示した図であり、10ナノ秒以下の書込み時間において、書込み電流が増大することがわかる。図20(c)は、書込み電流に対して書込み確率をプロットした図であり、書込み確率が0,1にならない電流領域(I1以上I2以下)が存在することがわかる。
【0006】
磁気メモリの情報の書込みは、通常10ナノ秒以下の時間において行われる必要がある。低消費電力かつ高信頼性をもつ高集積不揮発性磁気メモリの実現には、そのような短い時間においてトンネル磁気抵抗効果素子の記録層の磁化を低電流で誤りなく確実に反転させる必要がある。
【0007】
本発明は、このような要請に応えることのできる磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、磁気メモリセルを構成する巨大磁気抵抗効果素子やトンネル磁気抵抗効果素子の強磁性固定層の磁化方向に対して所定の角度に磁化された強磁性配線を記録層である強磁性自由層に非磁性層を介して接続させ、スピントランスファートルクにより記録層の磁化反転を行う。また、強磁性配線と分離して非磁性層に接続する非磁性配線を具備し、強磁性配線と非磁性配線に非磁性層を介して電流を流す手段を具備し、適当な電流パルス信号あるいは高周波電流を印加した状態でスピントランスファートルクにより記録層の磁化反転を行う。
【0009】
本発明による磁気メモリセルは、第一の非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層とを有する磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極と、強磁性自由層に接続された第二の非磁性層と、第二の非磁性層に接続する強磁性配線とを有し、磁気抵抗効果素子に電流を流してスピントランスファートルクによって前記強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行う。
【0010】
第1の態様の磁気メモリセルでは、強磁性配線を介して前記磁気抵抗効果素子に電流を流す。また、第2の態様の磁気メモリセルでは、第二の非磁性層に接続する非磁性配線、及び前記非磁性配線と前記強磁性配線との間に電流を流す手段を有する。
【0011】
強磁性自由層が単層の強磁性膜からなる場合には、強磁性配線の磁化方向は強磁性固定層の磁化方向と反平行であるのが好ましい。また、強磁性自由層が積層フェリ構造を有する積層膜である場合には、強磁性配線の磁化方向は強磁性固定層の磁化方向と平行であるのが好ましい。
【0012】
本発明によるランダムアクセスメモリは、第一の非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層を有する磁気抵抗効果素子、及び前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極を各々備える磁気メモリセルが2次元アレイ状に配列された磁気メモリセル群と、磁気メモリセル群の中の所望の磁気メモリセルを選択する選択手段と、2次元アレイを構成する磁気メモリセルの一列毎に、当該列に属する複数の磁気メモリセルに含まれる複数の強磁性自由層の磁化容易軸方向に平行になるように配置された複数の強磁性配線とを有し、強磁性配線は、第二の非磁性層を介して各列に属する複数の磁気メモリセルの強磁性自由層に接続され、選択手段によって選択された磁気メモリセルに電流を流し、スピントランスファートルクによって当該メモリセルが有する磁気抵抗効果素子の強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行う。
【0013】
第1の態様のランダムアクセスメモリは、強磁性配線を介して磁気抵抗効果素子に電流を流す。また、第2の態様のランダムアクセスメモリは、強磁性配線と平行に配置されて第二の非磁性層に接続する非磁性配線、及び非磁性配線と強磁性配線との間に電流を流す手段を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、スピントランスファートルクによる書き込み電流を低減して、書き込みの誤り率を低減することができ、信頼性の高い低消費電力不揮発性メモリを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図2】図1に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図3】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図4】図3に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図5】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図6】図5に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図7】本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図。
【図8】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図9】図8に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図10】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図11】図10に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図12】本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図。
【図13】図12に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図。
【図14】本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図。
【図15】書込み電流と書込み時間の関係を示した図。
【図16】書込み電流と書込み時間の関係を示した図。
【図17】強磁性配線と強磁性固定層の磁化配列の例を示した図。
【図18】磁化歳差運動と電流印加のタイミングを説明した図。
【図19】強磁性自由層と強磁性固定層に用いられる材料の例について示した図。
【図20】スピントランスファートルク磁化反転による書込み方式の問題点を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、磁気抵抗効果素子としてトンネル磁気抵抗効果素子を用いる例によって本発明を説明するが、トンネル磁気抵抗効果素子の代わりに巨大磁気抵抗効果素子を用いても同様の効果を得ることができる。
【0017】
図1は、トンネル磁気抵抗効果素子を搭載した本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図である。C−MOS 500は、2つのn型半導体410,413と一つのp型半導体411からなる。n型半導体413に接続されたドレイン電極414は、電極415,416を介して接地されている。n型半導体410にはソース電極409が接続されている。ゲート電極412のON/OFFにより、ソース電極409とドレイン電極414の間に流れる電流のON/OFFが制御される。ソース電極409に電極408〜405が積層され、電極403を介してトンネル磁気抵抗効果素子402が接続されている。電極405と電極403の間には何層かの電極が存在してもかまわない。非磁性層401がトンネル磁気抵抗効果素子402に接続されているが、非磁性層401に強磁性自由層が直接接続されていることが望ましい。
【0018】
本発明の磁気メモリセルは、更に非磁性層401に接続する強磁性配線101を有する。強磁性配線101は、磁気メモリセルのビット線100と積層の配線を構成していることが望ましいが、強磁性配線101をそのままビット線として使用することも可能である。強磁性配線101は、CoFe,NiFe,CoFeBなどのようなCo,Fe,Niなどの強磁性元素を含む材料が使用される。磁気メモリセルへの情報書き込みに当たっては、ゲート電極412をONすると、スピントランスファートルクを発生させる電流が、非磁性層401と電極403の間のトンネル磁気抵抗効果素子402に流れる。スピントランスファートルクは、強磁性自由層、絶縁障壁層、強磁性固定層で構成されるトンネル磁気抵抗効果素子に電流を流すことで発生し、強磁性自由層の磁化を反転させる作用を有する。情報の読み出しは、強磁性自由層と強磁性固定層の磁化方向の相対角度で生ずるトンネル磁気抵抗効果を検出することにより行う。
【0019】
図2は図1に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図2(a)は平面模式図、図2(b)は図2(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が形成され、強磁性配線101が非磁性層401に接続されている。
【0020】
ここで強磁性自由層200が単層の強磁性膜で形成されているときの強磁性配線101と強磁性固定層202の磁化方向について図17(a)を用いて述べる。図17(a)に示したθ1が、強磁性配線101の磁化方向と強磁性固定層202の磁化方向がなす角度を表す。θ1は、強磁性配線101と強磁性固定層202の磁化が反平行配列をとるときに0度と定義される。−90°≦θ1≦90°のときにスピントランスファートルクによる書込み電流の低減と書込み誤り率を大幅に低減できる。特にθ1を0度に配置するときに最大の効果が得られる。次に、強磁性自由層200が、積層フェリ構造である場合について、図17(b)を用いて述べる。この場合、図17(b)に示したθ2が、強磁性配線101の磁化方向と強磁性固定層202の磁化方向がなす角度を表す。θ2は、強磁性配線101と強磁性固定層202の磁化が平行配列をとるときに0度と定義される。この場合には、−90°≦θ2≦90°のときにスピントランスファートルクによる書込み電流の低減と書込み誤り率を大幅に低減でき、特にθを0度に配置することが最も望ましい。ここで、積層フェリ構造とは、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層から成り、2層の強磁性層の磁化が反平行結合する構造をいう。
【0021】
ここで、本発明のように強磁性自由層に非磁性層を介して強磁性配線を接続し、その磁化方向を強磁性固定層に対して適当な相対角を作ることによってスピントランスファートルク磁化反転の書込み電流の低減と書込み誤り率の低減を達成できる理由について図18を用いて述べる。図18(a)は、強磁性自由層の磁化の歳差運動の様子の一例を示す。図18(a)のz軸方向が、強磁性自由層の磁化容易軸を示し、矢印600は、強磁性自由層の磁化のベクトルを表す。通常のスピントランスファートルク磁化反転の場合、磁化反転閾値電流値の大きさの電流を印加した直後、図18(a)のように強磁性自由層の磁化600はz軸方向(自由層の容易軸方向)の周りに軌跡601に沿った歳差運動を始め、その後軌跡602に沿ってz軸方向の正座標から負座標へと反転にいたる。しかし、この初期の歳差運動の振幅や位相が安定しないと強磁性自由層の磁化600は、軌跡602に沿う運動を実現できず、z軸正座標方向から負座標方向に反転ができない場合が生じる。初期の歳差運動の振幅や位相の安定性は確率的であるため、つまりはスピントランスファートルクによる磁化反転が確率的に発生してしまう。
【0022】
そこで、本発明のように強磁性自由層に非磁性層を介して強磁性配線を接続し、その磁化方向を強磁性固定層に対して適当な相対角(図17参照)にすると、スピントランスファートルク磁化反転の確率を増大させることが期待できる。この理由は以下である。強磁性自由層に非磁性層を介して強磁性配線を接続し、その磁化方向を強磁性固定層に対して適当な相対角とすると非磁性層内にスピン流が発生し、そのスピン流が強磁性自由層へ伝播作用し、強磁性自由層の歳差運動を安定化させることができる。その歳差運動が安定している状態のときに、非磁性層401と電極403の間のトンネル磁気抵抗効果素子402に電流を流し、強いスピントランスファートルクを作用させると、閾値電流が低減し、且つ反転の確率を増大させることが可能となる。図18(b)は、強磁性自由層の歳差運動を安定させ、非磁性層401と電極403の間のトンネル磁気抵抗効果素子402に電流を流し、強いスピントランスファートルクを作用させる場合の説明図を示す。ここで、mxは、図18(a)に示すように強磁性自由層の磁化のベクトルのx座標成分を示す。I1、I2、はそれぞれ図15(a)、(b)に示した電流を示す。まず、I1を図18(b)2段目の図のように流し、その後しばらくして図18(b)の3段目のようにI2を印加する。I1を流すことにより、図18(a)のようにmxは周期性の良好な振動を描き安定な歳差運動が可能となる。
【0023】
図3は、図1に示した磁気メモリセルにおいて、強磁性配線101と非磁性層401の間に絶縁層102を挟んだ構成例を示す。絶縁層102は、強磁性配線101から非磁性層401に注入されるスピン流の大きさを増大させることと、効率のよいスピンを選択的に注入することを可能とする。ここで、効率がよいという意味は、スピン分極の大きいスピンにより構成されるスピン流という意味である。スピン分極率の大きいスピン流により強磁性自由層200の歳差運動をより安定化でき、ひいては閾値電流の更なる低減が可能となる。絶縁層102は、MgO、AlO、SiO2のような酸化物により構成されるが、GaAsやZnSeなどの半導体材料、AlN、SiNなどの窒化物を用いてもよい。特に、絶縁層102にMgOを用いた場合、強磁性配線101にはCoFeBを用いることが望ましい。絶縁層102の膜厚は、絶縁層102を介した電流がトンネル的電流として発生する3nm以下の膜厚に設定されることが望ましい。
【0024】
図4は図3に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図4(a)は平面模式図、図4(b)は図4(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が形成され、強磁性配線101が絶縁層102を介して非磁性層401に接続されている。
【0025】
図5は、図3に示した磁気メモリセルにおいて、さらに強磁性自由層200と非磁性層401の間に絶縁層104を備えた構成例を示す。本構成例を用いることにより、強磁性自由層200に伝播作用するスピン流の大きさを、より増大させることができ、強磁性自由層200の磁化の歳差運動をより安定化でき、ひいては閾値電流の更なる低減が可能となる。絶縁層104の材料、膜厚については絶縁層102と同様である。
【0026】
図6は図5に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図6(a)は平面模式図、図6(b)は図6(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が絶縁層104を介して形成され、強磁性配線101が絶縁層102を介して非磁性層401に接続されている。
【0027】
図7は、図1〜図6に示した磁気メモリセルを複数個アレイ状に配置して構成した本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図であり、各配線や層を100nm以下にすることによりギガビット級の容量をもつ磁気ランダムアクセスメモリが実現可能になる。ゲート電極412とビット線100がメモリセルに電気的に接続されている。ビット線100を制御するドライバーとしてビット線ドライバー1001が設置され、ゲート電極412を制御するドライバーとしてゲートドライバー1002が設置されている。
【0028】
図8は、本発明による磁気メモリセルの他の構成例を示す図である。本実施例の磁気メモリセルは、図1に示した磁気メモリセルにおいて、さらに非磁性配線103を非磁性層401に接続させ、強磁性配線101と非磁性配線103の間に電流を流す機能を有するという点で図1に示した磁気メモリセルと異なる。
【0029】
図9は図8に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図9(a)は平面模式図、図9(b)は図9(a)のA−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が形成され、強磁性配線101が非磁性層401に接続されている。さらに、非磁性配線103が、非磁性層401に強磁性配線101と分離して接続されている。
【0030】
図10は、図8に示した磁気メモリセルにおいて、強磁性配線101が新たに設けた絶縁層102を介して非磁性層401に接続した構成を示す。
【0031】
図11は図10に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図11(a)は平面模式図、図11(b)は図11(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に非磁性層401が形成され、強磁性配線101が絶縁層102を介して非磁性層401に接続されている。さらに、非磁性配線103が、非磁性層401に強磁性配線101と分離して接続されている。非磁性配線103の材料としては、例えばCuやAlなどの電気抵抗の小さくかつプロセス耐性の大きい材料を用いることができる。
【0032】
図12は、図10に示した磁気メモリセルにおいて、非磁性層401と強磁性自由層200の間に新たに絶縁層103を設けた構成を示す。
【0033】
図13は図12に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図13(a)は平面模式図、図13(b)は図13(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に絶縁層104を介して非磁性層401が形成され、強磁性配線101が絶縁層102を介して非磁性層401に接続されている。さらに、非磁性配線103が、非磁性層401に強磁性配線101と分離して接続されている。
【0034】
図14は、図8〜図13に示した磁気メモリセルを複数個アレイ状に配置して構成した本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図であり、各配線や層を100nm以下にすることによりギガビット級の容量をもつ磁気ランダムアクセスメモリが実現可能になる。ゲート電極412とビット線100がメモリセルに電気的に接続されている。ビット線100を制御するドライバーとしてビット線ドライバー1001が設置され、ゲート電極412を制御するドライバーとしてゲートドライバー1002が設置されている。本実施例に示したランダムアクセスメモリでは、非磁性配線103を制御するドライバー1003が新たに具備される。
【0035】
ここで、図8〜図13に示した磁気メモリセル及び図14に示した磁気ランダムアクセスメモリにおいて、書込み電流制御の一例を図15と図16を用いて説明する。ここでは、強磁性自由層200が単層の強磁性層で構成される場合を示した。
【0036】
まず図15(a)により、強磁性自由層200と強磁性固定層202の磁化方向がスピントランスファートルクにより平行から反平行にスイッチする場合を説明する。強磁性配線101と強磁性固定層202の磁化方向は反平行となっている。すなわち、図17のθ1が0度の場合である。電流I1は、強磁性配線101から非磁性層401を通って非磁性配線103に流れる電流を示す。電流I1は、ビット線ドライバー1001とドライバー1003を動作させることにより制御する。電流I2は、強磁性配線101から非磁性層401を通過してトンネル磁気抵抗効果素子402に流す電流を示す。あるいは、非磁性配線103から非磁性層401を通過して、トンネル磁気抵抗効果素子402に流してもよい。電流I2は、電流I1と独立分離してトンネル磁気抵抗効果素子402に流れることが重要であり、I2が強磁性自由層200のスピントランスファートルク磁化反転を起こす原因となる電流として作用する。電流I2の制御は、ゲートドライバー1002とビット線ドライバー1001及びドライバー1003の電圧関係を調整して行われる。
【0037】
次に、電流I1とI2の電流印加のタイミングの一例を図15(b)、(c)に示す。まずは、図15(b)に示した例を説明する。強磁性自由層200がスピントランスファートルクにより磁化反転する閾値電流以下の電流I1を与え、その直後に電流I2を流す。電流I2を印加するタイミングは、電流I1を印加後1ns以内が望ましい。はじめのI1の電流印加は、ビット線ドライバーとドライバー1003に電圧差を発生させて図15(a)の矢印603の方向に電流を発生させる。電流I2は、ゲートドライバー1002を開くことにより、トンネル磁気抵抗効果402への電流パス(矢印604)が発生するようになる。
【0038】
他の電流印加のタイミング例を図15(c)に示す。この場合、強磁性自由層200がスピントランスファートルクにより磁化反転する閾値電流以下の振幅を有する電流I1を交流により常時与え、磁化反転を行いたい適当な時間のときに電流I2を流す。交流の周波数としては1GHz以上が望ましい。特に、電流I2を流すタイミングは、電流I1の振幅が最大となるときが望ましい。図16は、強磁性自由層200の磁化方向を強磁性固定層202の磁化方向に対して反平行から平行にスイッチする場合を説明したものであり、電流の向きを図15と逆に設定して、図15と同様の制御を行う。
【0039】
図19は、本発明の磁気メモリセルに用いられる強磁性自由層200と強磁性固定層202に用いられる材料の例について示した図である。強磁性自由層200及び強磁性固定層202には、CoFeB,CoFe,CoB,CoFe,Co,Fe,NiFeなどの磁性材料を単層で用いることができる。また、強磁性自由層200及び強磁性固定層202は、それぞれ第一の強磁性層210と第二の強磁性層211、第三の強磁性層212と第四の強磁性層213を、図19に示した材料の組み合わせに従って、反平行結合するRuなどの中間層214を選択して3層の構成で使用してもかまわない。絶縁障壁層201には、酸化マグネシウム,アルミニウム酸化物、酸化シリコンなどの材料を用いることができる。
【0040】
本発明によると、信頼性の高い低消費電力不揮発性メモリを実現することが可能であり、従来構造に比べて、閾値電流密度が5分の1、書込みエラー率の一桁低減が可能である。本発明によると、ギガビット級の高密度磁気メモリを実現可能である。
【符号の説明】
【0041】
101…強磁性配線、102…絶縁層、103…非磁性配線、104…絶縁層、200…強磁性自由層、201…絶縁膜、202…強磁性固定層、401…非磁性層、402…磁気抵抗効果素子、403〜408…電極、409…ソース電極、412…ゲート電極、414…ドレイン電極、500…トランジスタ、1001…ビット線ドライバー、1002…ゲートドライバー、1003…電流制御ドライバー、210…強磁性自由層、211…強磁性固定層、212…強磁性固定層、213…強磁性固定層、214…中間層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の非磁性膜と、前記第一の非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層とを有する磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極と、
前記強磁性自由層に接続された第二の非磁性層と、
前記第二の非磁性層に接続する強磁性配線と、
前記第二の非磁性層に接続する非磁性配線と、
前記非磁性配線と前記強磁性配線との間に第1の電流を流すための手段とを有し、
前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に前記第1の電流と独立分離して第2の電流を流してスピントランスファートルクによって前記強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行うことを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項2】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記強磁性自由層は単層の強磁性膜からなり、前記強磁性配線の磁化方向が前記強磁性固定層の磁化方向と反平行であることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項3】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記強磁性自由層は積層フェリ構造を有する積層膜であり、前記強磁性配線の磁化方向が前記強磁性固定層の磁化方向と平行であることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項4】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記第一の非磁性膜は絶縁膜であることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項5】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記強磁性配線は絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続していることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項6】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記強磁性自由層は、第一の絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続し、前記強磁性配線は、第二の絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続していることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項7】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記磁気抵抗効果素子に流れる前記第2の電流をオン・オフ制御するスイッチング素子を有することを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項8】
第一の非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層を有する磁気抵抗効果素子、及び前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極を各々備える磁気メモリセルが2次元アレイ状に配列された磁気メモリセル群と、
前記磁気メモリセル群の中の所望の磁気メモリセルを選択する選択手段と、
前記2次元アレイを構成する磁気メモリセルの一列毎に、当該列に属する複数の磁気メモリセルに含まれる複数の強磁性自由層の磁化容易軸方向に平行になるように配置された複数の強磁性配線とを有し、
前記強磁性配線は、第二の非磁性層を介して各列に属する複数の磁気メモリセルの前記強磁性自由層に接続され、
更に、前記強磁性配線と平行に配置されて前記第二の非磁性層に接続する非磁性配線と、
前記非磁性配線と前記強磁性配線との間に第1の電流を流す手段とを有し、
前記選択手段によって選択された磁気メモリセルの膜厚方向に前記第1の電流と独立分離して第2の電流を流し、スピントランスファートルクによって当該磁気メモリセルが有する磁気抵抗効果素子の強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行うことを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項9】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記強磁性自由層は単層の強磁性膜からなり、前記強磁性配線の磁化方向が前記強磁性固定層の磁化方向と反平行であることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項10】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記強磁性自由層は積層フェリ構造を有する積層膜であり、前記強磁性配線の磁化方向が前記強磁性固定層の磁化方向と平行であることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項11】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記第一の非磁性膜は絶縁膜であることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項12】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記強磁性配線は絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続していることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項13】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記強磁性自由層は、第一の絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続し、前記強磁性配線は、第二の絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続していることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項14】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記選択手段は前記磁気抵抗効果素子に流れる前記第2の電流をオン・オフ制御するスイッチング素子を有することを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項1】
第一の非磁性膜と、前記第一の非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層とを有する磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極と、
前記強磁性自由層に接続された第二の非磁性層と、
前記第二の非磁性層に接続する強磁性配線と、
前記第二の非磁性層に接続する非磁性配線と、
前記非磁性配線と前記強磁性配線との間に第1の電流を流すための手段とを有し、
前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に前記第1の電流と独立分離して第2の電流を流してスピントランスファートルクによって前記強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行うことを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項2】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記強磁性自由層は単層の強磁性膜からなり、前記強磁性配線の磁化方向が前記強磁性固定層の磁化方向と反平行であることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項3】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記強磁性自由層は積層フェリ構造を有する積層膜であり、前記強磁性配線の磁化方向が前記強磁性固定層の磁化方向と平行であることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項4】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記第一の非磁性膜は絶縁膜であることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項5】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記強磁性配線は絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続していることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項6】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記強磁性自由層は、第一の絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続し、前記強磁性配線は、第二の絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続していることを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項7】
請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記磁気抵抗効果素子に流れる前記第2の電流をオン・オフ制御するスイッチング素子を有することを特徴とする磁気メモリセル。
【請求項8】
第一の非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層を有する磁気抵抗効果素子、及び前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極を各々備える磁気メモリセルが2次元アレイ状に配列された磁気メモリセル群と、
前記磁気メモリセル群の中の所望の磁気メモリセルを選択する選択手段と、
前記2次元アレイを構成する磁気メモリセルの一列毎に、当該列に属する複数の磁気メモリセルに含まれる複数の強磁性自由層の磁化容易軸方向に平行になるように配置された複数の強磁性配線とを有し、
前記強磁性配線は、第二の非磁性層を介して各列に属する複数の磁気メモリセルの前記強磁性自由層に接続され、
更に、前記強磁性配線と平行に配置されて前記第二の非磁性層に接続する非磁性配線と、
前記非磁性配線と前記強磁性配線との間に第1の電流を流す手段とを有し、
前記選択手段によって選択された磁気メモリセルの膜厚方向に前記第1の電流と独立分離して第2の電流を流し、スピントランスファートルクによって当該磁気メモリセルが有する磁気抵抗効果素子の強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行うことを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項9】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記強磁性自由層は単層の強磁性膜からなり、前記強磁性配線の磁化方向が前記強磁性固定層の磁化方向と反平行であることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項10】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記強磁性自由層は積層フェリ構造を有する積層膜であり、前記強磁性配線の磁化方向が前記強磁性固定層の磁化方向と平行であることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項11】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記第一の非磁性膜は絶縁膜であることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項12】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記強磁性配線は絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続していることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項13】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記強磁性自由層は、第一の絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続し、前記強磁性配線は、第二の絶縁膜を介して前記第二の非磁性層に接続していることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【請求項14】
請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記選択手段は前記磁気抵抗効果素子に流れる前記第2の電流をオン・オフ制御するスイッチング素子を有することを特徴とするランダムアクセスメモリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−209573(P2012−209573A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142897(P2012−142897)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【分割の表示】特願2007−338525(P2007−338525)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、文部科学省、高機能・超低消費電力メモリの開発 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【分割の表示】特願2007−338525(P2007−338525)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、文部科学省、高機能・超低消費電力メモリの開発 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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