磁気抵抗素子
【課題】 磁気抵抗素子を構成する、磁性体/非磁性体界面の物性が、素子特性を劣化させている。例えば、TMR素子では、スピン分極率が100%近いと予想されているハ−フメタルを磁性体として用いた場合でも、室温で、高々10数%程度のMRしか報告されていない。
【解決手段】 少なくとも1種からなる磁性体中に、磁化方向が略揃った磁化領域Aと磁化方向が略揃った磁化領域Bと、前記磁化領域Aと前記磁化領域Bに挟まれた磁化接合領域Mがあり、前記磁化領域Aの少なくとも一部、または前記磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁化接合領域Mまたは前記磁化領域Aまたは前記磁化領域Bの磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子である。
【解決手段】 少なくとも1種からなる磁性体中に、磁化方向が略揃った磁化領域Aと磁化方向が略揃った磁化領域Bと、前記磁化領域Aと前記磁化領域Bに挟まれた磁化接合領域Mがあり、前記磁化領域Aの少なくとも一部、または前記磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁化接合領域Mまたは前記磁化領域Aまたは前記磁化領域Bの磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報通信端末などに使用される光磁気ディスク、ハ−ドディスク、デジタルデ−タストリ−マ(DDS)、デジタルVTR等の磁気記録装置の再生ヘッド、またシリンダ−や、自動車などの回転速度検出用の磁気センサ−、磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)、応力変化、加速度変化などを検知する応力または加速度センサ−あるいは熱センサ−や化学反応センサ−等に広く使用される磁気抵抗素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】強磁性体/中間層/強磁性体を基本構成とする多層膜に中間層を横切るように電流を流した場合、中間層が絶縁層であるときスピントンネル効果、また中間層がCuなどの導電性金属であるときCPP(Current perpendicular to the plane) GMR効果による磁気抵抗効果が生じることが知られており、磁気ヘッドなどへの応用研究が活発に行われている(日本応用磁気学会 第112回研究会資料)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの磁気抵抗素子を構成する、磁性体/非磁性体界面の物性が、素子特性を劣化させている可能性があり、例えば、TMR素子では、スピン分極率が100%近いと予想されているハ−フメタルを磁性体として用いた場合でも、室温で、高々10数%程度のMRしか報告されていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明は、少なくとも1種からなる磁性体中に、磁化方向が略揃った磁化領域Aと磁化方向が略揃った磁化領域Bと、前記磁化領域Aと前記磁化領域Bに挟まれた磁化接合領域Mがあり、前記磁化領域Aの少なくとも一部、または前記磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁化接合領域Mまたは前記磁化領域Aまたは前記磁化領域Bの磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子である。ここで、磁化接合領域Mとは、磁化領域Aと磁化領域Bの磁化領域にいたる状態の中間領域を指し、両領域の磁化の交換結合による磁化結合領域あるいは(量子的な)伝導スピンによる磁化の結合領域等を意味する。また、外部からの磁気的エネルギ−により、磁化領域Aと磁化領域Bが完全に平行である場合等、実質的に磁化結合領域の厚みが0である場合も含む。さらに磁化領域、磁化接合領域の領域の大きさあるいはスピンの伝導状態は、外部から与えられた磁気的エネルギ−の大きさによって変化し、固定されたものとは限らない。また、外部から与えられた磁気的エネルギ−とは、磁界、スピン注入あるいは磁気誘電体や、磁性半導体、反強磁性体、積層フェリ構造などを用いた、交換結合を介した磁気バイアスなどの磁気エネルギ−および光、圧力、加速度、熱などにより素子の磁化状態に影響を与えるものを総称する。
【0005】一般に、磁性体は単磁区でない場合、外部から磁気的エネルギ−が与えられると、磁性体内部の磁気的エネルギ−を最小にするために、磁区構造が変化する。この磁区構造の変化は、磁性体の抵抗値を変化させるが、これらの変化は、外部からの磁界などの変化に対して、安定した履歴を持たない。本発明は、最小単位として、磁化領域A、磁化領域B、磁化接合領域Mがあり、磁化領域の内、少なくとも何れかが、少なくともその一部を磁気的に固定することで、外部からの磁気的エネルギ−に対する応答の可逆性を高めることができる。この磁化領域A、磁化接合領域M、磁化領域Bの一対の組は、例えば、磁化領域1/磁化接合領域2/磁化領域3/磁化接合領域4/磁化領域5のように2組の対あるいはそれ以上の組で構成されていてもよい。
【0006】また本発明は、磁化領域Aおよび磁化領域Bの各平均磁化方向が互いに略反平行または略平行で、電気抵抗の変化が、主として磁化接合領域Mの厚み変化による磁気抵抗素子である。これは、外部からの磁気エネルギ−に対して、磁化領域Aと磁化領域Bが、それぞれの領域の大きさを変化させるものの、これらの磁化の方向を反転するような大きな磁化変化がない場合に観察される。電気抵抗を支配する伝導スピンと磁化方向は、伝導スピンがマジョリティかマイノリティかで反対となるために、伝導スピンの向きとして表しこの現象を考察する。
【0007】例えば磁化領域Aと磁化領域Bの伝導スピンが互いに反平行の場合、磁化接合領域Mが無視できるほど薄いあるいは実質的に厚みが0であれば、伝導スピンは、両領域の界面で直接的伝導し、主にそれぞれの分極率に応じた散乱(あるいはスピン伝導の禁止)を受け高抵抗となるであろう。一方、磁化接合領域が磁化領域Aと磁化領域Bの伝導スピンが直接それぞれの領域で散乱しない程度の厚みであり、特に磁化領域Aから領域Bへの変化が、遷移的であれば、抵抗値が上記場合に比較し低下するものと思われる。また一つには、例えば、磁化領域Aおよび磁化領域Bの伝導スピンが互いに平行の時、磁化接合領域Mの厚みが無視できる程度に薄い、あるいは実質的厚みが0であれば、低抵抗となり、一方、磁化接合領域が十分厚い場合には磁化接合領域でのスピン散乱により、上記状態よりも高抵抗となるだろう。以上のように外部からの磁気的エネルギ−が、磁化接合領域Mの幅を変化させることで抵抗値が変化するものと思われるが、実際には複数の要因が混在する場合もある。
【0008】また本発明は、外部からの磁気的エネルギ−がないとき、磁化接合領域Mの厚みdが0nm≦d≦200nmなる範囲である磁気抵抗素子である。磁化接合領域Mの値が上記範囲である場合、高抵抗あるいは低抵抗を実現しやすく、この結果、高い抵抗変化を得ることができる。これは、上記範囲では磁化領域Aと磁化領域Bを磁化接合領域の磁化の影響をほとんど受けず直接的に伝導するスピンを少なくとも一部持つためであると思われる。特に、磁化接合領域の厚みが0でない場合においても、磁化接合領域をバリステックに伝導する、あるいはトンネル的に伝導する、あるいはフェルミ波長等の量子波長の規制のみを受けて伝導するなど、様々な直接的な伝導状態が実現するもの思われるが詳細なメカニズムは不明である。dの値は、磁性体種類の組み合わせ、形状、伝導のメカニズムにより異なるが、同じ種類の磁性体の組み合わせである場合、より薄い場合に大きな抵抗変化が得られる傾向がある。
【0009】また本発明は、電気抵抗の変化が、主として磁化領域Aおよび磁化領域Bの磁化相対角の変化による磁気抵抗素子である。
【0010】この現象は、磁化領域AとBが外部からの磁気エネルギ−に対して大きな変化を受ける場合に観察される。これは、磁化接合領域Mの厚みが、磁化領域Aと磁化領域Bの間の直接的なスピン伝導を行う電子がある程度存在できる程度に薄く、且つ外部からの磁気的エネルギ−により、磁化接合領域Mの厚みが大きな変化を伴わない場合、磁化領域Aと磁化領域Bの磁化相対角の変化によるスピン依存散乱などの確率が変化するためにおこるものと思われる。
【0011】また本発明は、磁化領域Aと磁化領域Bの磁化方向が略反平行あるとき磁化接合領域Mの厚みをdapとすると0≦dap≦200nmなる関係を持つ磁気抵抗素子である。
【0012】これは、外部磁気エネルギ−に対して、磁化領域Aおよび、磁化領域Bが大きく変化する素子において観察されるものであり、磁化領域と伝導スピンの向きが同じである場合をマジョリティ、磁化領域と伝導スピンの向きが反対であるときをマイノリティとすると以下のように大別するメカニズムが働いているものと思われる。
【0013】まず、磁化領域Aと磁化領域Bの伝導スピンが何れもマジョリティあるいはマイノリティである場合での抵抗変化のメカニズムは以下のようであると思われる。
【0014】2つの磁化領域の磁化の向きと伝導スピンの向きが何れも平行である、また何れも反平行であるとき、外部からの磁気エネルギ−により、2つの磁化領域の磁化の向きが互いに平行(伝導スピン同士のスピンの向きも互いに平行)であると、スピン依存散乱等が無いために低抵抗値をとり、一方、2つの磁化領域の磁化の向きが互いに反平行(即ち、伝導スピンの向きが互いに反平行)であると高抵抗となる。特にdapが上記範囲であれば、直接的なスピン散乱(あるいはスピンの伝導禁止)が行われる伝導電子数が増え、結果として高い抵抗変化を得るものと思われる。ここでdapが、200nmより大きくなると、伝導電子の直接的な散乱が弱くなるために、伝導スピンが互いに反平行時の抵抗が低くなるため、抵抗変化そのものは小さくなると思われる。
【0015】次に、磁化領域Aと磁化領域Bの伝導スピンの何れか一方がマジョリティで残りがマイノリティである場合の抵抗変化のメカニズムは、以下のようであると思われる。
【0016】磁化領域Aと磁化領域Bの磁化方向が平行である場合(即ち、伝導スピンの向きが互いに反平行であるとき)、スピン散乱などにより高抵抗となり、また、2つの磁化領域の磁化方向が反平行(即ち、伝導スピンの向きが互いに平行)であるとき、前記状態よりも低抵抗となる。特にdapが上記範囲であれば、直接的な伝導を行う電子数が増え、低抵抗となり、結果として高い抵抗変化を得るものと思われる。ここでdapが、200nmより大きくなると、伝導電子の直接的な伝導数が少なくなるために、伝導スピンが互いに平行時の抵抗が高くなるため、抵抗変化そのものは小さくなると思われる。
【0017】尚、以上のdapの値は、実際には、磁性体種類の組み合わせ、形状、伝導のメカニズムにより異なるが、同じ種類の磁性体の組み合わせである場合、より薄い場合に大きな抵抗変化が得られる傾向がある。
【0018】また本発明は、磁化領域A及び磁化領域Bが互いに略反平行であるとき、磁化接合領域Mの実効磁化をMm、体積をVm、また前記磁化領域Aの実効磁化をMa、体積をVa、また前記磁化領域Bの実効磁化をMb、体積をVbとすると、Mm×Vm<Ma×Va、Mb×Vbなる関係を持つ磁気抵抗素子である。ここで、磁化領域とは、磁化接合領域Mと接しない強磁性体であっても、磁気的に結合することで、磁化方向を決定する磁性体であれば、この領域を含む。磁化領域Aと磁化領域Bが略反平行であるとき、磁化接合領域Mの実効磁化×体積が、磁化領域A、磁化領域Bよりも小さいことで、抵抗変化を大きくするのに必要な薄い磁化接合領域が形成しやすい。特に、磁化領域Aと磁化領域Bの相対磁化の変化が主とする磁気抵抗素子においては、外部からの磁気エネルギ−に対する抵抗変化の応答性が高くなる傾向がある。
【0019】また本発明は、磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体から選ばれた磁化固定体と磁気的に結合すること、または形状異方性エネルギ−を用いることで、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定されることを特徴とする磁気抵抗素子である。磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定された領域は、磁化領域Aまたは、磁化領域Bを構成する磁性体の保持力を大きく選ぶことでも実現できる。しかしながら、本発明のように磁化領域Aまたは、磁化領域Bの、少なくとも一方を、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体、あるいはこれらの組み合わせたものと磁気的結合すること、また形状異方性を用いることで、磁化領域を構成する材料自身の保持力にとらわれず、容易に実現できる。ここで、磁気的結合とは、磁化領域を構成する磁性体と直接接することで行われる交換結合、あるいは、非磁性体、非磁性空隙などを挟んで行われる静磁結合、またはこれらの組み合わせ等を意味する。ここで、反強磁性体としては、室温以上のネ−ル温度を持つものであれば、何れでも良く、例えば、金属合金であるPtMn、PtPdMn、FeMn、IrMn、NiMnや酸化物反強磁性体等でもよい。また磁化領域AまたはB/第2の強磁性体/反強磁性体の構造で用いられる第2の強磁性体とは、CoまたはCoを含んだFeCo, CoFeNi, CoNi, CoZrTa, CoZrB CoZrNbなどの強磁性金属が好ましい。また、強磁性体と非磁性体の積層構造を持つ、積層フェリ構造に用いられる好ましい非磁性体としては、導電性を持つ金属、あるいは金属化合物であれば何れでも良いが、特にCu, Ag, Au, Ru, Rh, Ir, Re, Osがよい。またはこれらの金属の合金、酸化物が良い。また積層フェリの用いられる磁性体としてはCoを含有する、例えばCo、FeCo、FeCoNi、CoNi、FeCoNi, CoZrTa, CoZrNb, CoZrBなどの強磁性体が好ましい。また、高保持力磁性体としては、特に限定は無いが、保持力が100 Oe以上であるCoPt, FePt, CoCrPt, CoTaPt, FeTaPt, FeCrPtなどが望ましい。
【0020】また本発明は、磁化接合領域Mの少なくとも一部、磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部から選ばれた少なくとも一つの領域が、軟磁性体と磁気的に結合した磁気抵抗素子である。それぞれの領域が軟磁性体と磁気的に結合することで、磁化接合領域、磁化領域を形成する材料の保持力にとらわれず低保持力化が可能なため、外部磁気エネルギ−に対する応答性を高めることができる。
【0021】また本発明は、磁化領域Aまたは磁化領域Bを形成する磁性材料のうち少なくとも一方が、高スピン分極材料である磁気抵抗素子である。高スピン分極材料とは、スピン分極率が40%以上のものを指し、前記本発明ではスピン分極率が高いものであるほど、磁気抵抗変化が大きくなる傾向が見られる。スピン分極率の大きさは、フェルミ面近傍で高いことが望ましいが、伝導電子が、バリステック的である場合、伝導電子のポテンシャルの高さ近傍での分極率が高くてもよい。
【0022】また本発明は、少なくとも一組の磁化領域A、磁化領域Bおよび磁化接合領域Mが同一の強磁性体よりなり、且つ前記強磁性体が高スピン分極材料であることを特徴とする磁気抵抗素子である。磁化領域、磁化接合領域の磁性体が異なる場合、これらの界面での磁気構造の変化、界面ポテンシャル等により、好ましい抵抗変化を得られない場合がある。従って、それぞれの磁化領域が同一の磁性体であることで、スピン分極率を反映した好ましい抵抗変化を得られる。
【0023】また本発明は、磁性体2が、磁性体1と磁性体3に挟まれた一対の構成を少なくとも一組持ち、前記磁性体2が、磁性体1および磁性体3に対して、形状的または磁気的に、くびれ部を形成し、前記磁性体1の少なくとも一部、または前記磁性体3の少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁性体1と前記磁性体2および前記磁性体3の磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子である。ここで、磁性体2が形状的または磁気的くびれを持つとは、磁性体1から磁性体2または磁性体3から磁性体2へ移るに従い、形状的に狭くなる、あるいは、例えば、磁気モ−メントなどが小さくなることを意味する。外部からの磁気的エネルギ−を受けた場合、磁気的に固定されていない磁性体内部において磁化変化が行われ、この変化が、素子の抵抗値を変化させる。例えばくびれ部を形成する磁性体2の内部、あるいはその近傍に、磁性体2の形状あるいは磁気的な特徴から、比較的、幅が薄い磁化接合領域が生じる。この磁化接合領域の幅の変化あるいは磁性体2から磁性体1あるいは磁性体3への磁化接合領域の移動による幅の増大は大きな抵抗変化を生じる。また磁気的に固定された磁性体は、外部の磁気的エネルギ−に対する抵抗変化の可逆性を高める働きを持つ。また、この磁性体1、磁性体2、磁性体3の一対の組は、例えば、磁性体1/磁性体2/磁性体3(磁性体1‘)/磁性体2’/磁性体3‘のように2組の対あるいはそれ以上の組で構成されていてもよい。
【0024】また本発明は、磁性体1と磁性体3が、くびれ部を構成する磁性体2および絶縁体を介して接し、前記絶縁体が前記磁性体2の側面部を被覆する構造を持つ磁気抵抗素子である。素子体積が小さくなるにつれ、くびれ部を持つ磁性体2では、磁性体2の体積に対する表面積が大きくなり、磁性体1から磁性体3へ電流を流したときに、表面電流の影響が無視できなくなる。磁性体1および磁性体3と接するくびれ部の側面部を絶縁体で覆うことで、このリ−ク電流を抑制することができ、本来の抵抗変化を得ることができる。また、本構成のようにくびれ部に絶縁体を設けることで、例えば、通常の薄膜プロセスとリソグラフィ技術を用いて、磁性体1/磁性体2/磁性体3の多層構造を容易に形成できる。
【0025】また本発明は、磁性体2の長さが0.5nm以上2000nm以下、また磁性体2の幅の最短長が1nm以上100nm以下である磁気抵抗素子である。磁性体2の長さ、即ち、くびれ部の長さとは、磁性体1から磁性体3に至る方向での長さを表し、また磁性体2の幅、即ちくびれ部の幅とは、前記長さ方向と直交する方向の幅を表す。くびれ部の長さが2000nmより大きい、あるいはくびれ部の幅の最短長が100nmより大きいと抵抗変化が小さくなる。また、くびれ部の長さが0.5nmより小さい、あるいはくびれ部の幅の最短長が1nmより小さいと、検出用の電流値が小さくなりすぎ、検出電流回路形成費が高くなる。
【0026】また本発明は、磁性体1の磁化をM1、体積をV1、また磁性体2の磁化をM2、体積をV2、また磁性体3の磁化をM3、体積をV3とすると、M2×V2<M1×V1、M3×V3なる関係を持つ磁気抵抗素子である。ここで、磁性体1または磁性体2が別の強磁性体Aと直接結合している場合、この磁性体Aの磁化Maと体積Vaを合わせ持つものとする。この領域を含む。磁性体1と磁性体3の実効磁化×体積が、磁性体2の実効磁化×体積よりも大きいことで、磁性体2の内部あるいはその近傍に、抵抗変化を大きくするのに必要な十分に薄い磁化接合領域が形成できる。
【0027】また本発明は、磁性体1の少なくとも一部、または磁性体3の少なくとも一部のうち少なくとも一方が、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体から選ばれた磁化固定体と磁気的に結合すること、または形状異方性エネルギ−を用いることで、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定されることを特徴とする磁気抵抗素子である。
【0028】本発明のように磁性体1または、磁性体3の、少なくとも一方を、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体。積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体、あるいはこれらの組み合わせたものと磁気的結合すること、また形状異方性を用いることで、磁化領域を構成する材料自身の保持力にとらわれず、磁性体の磁気的な固定を容易に実現できる。
【0029】また本発明は、磁性体1の少なくとも一部、磁性体2の少なくとも一部、または磁性体3の少なくとも一部から選ばれた少なくとも一つの磁性体が、軟磁性体と磁気的に結合した磁気抵抗素子である。それぞれの磁性体が軟磁性体と磁気的に結合することで、磁性体の保持力にとらわれず低保持力化が可能なため、外部磁気エネルギ−に対する応答性を高めることができる。
【0030】また本発明は、磁性体1または磁性体3を形成する磁性材料のうち少なくとも一方が、高スピン分極材料である磁気抵抗素子である。スピン分極率が高いものであるほど、磁気抵抗変化が大きくなる傾向が見られる。スピン分極率の大きさは、フェルミ面近傍で高いことが望ましいが、伝導電子が、バリステック的である場合、伝導電子のポテンシャルの高さ近傍での分極率高くてもよい。
【0031】また本発明は、磁性体1、磁性体2及び磁性体3が同一の強磁性体よりなり、且つ前記強磁性体が高スピン分極材料であることを特徴とする磁気抵抗素子である。磁性体1、磁性体2、磁性体3のそれぞれの材料が異なる場合、これらの界面での磁気構造の変化、界面ポテンシャル等により、好ましい抵抗変化を得られない場合がある。従って、それぞれが同一の磁性体であることで、スピン分極率を反映した好ましい抵抗変化を得られる。
【0032】また本発明は、磁性体の少なくとも一部が、マグネタイトである磁気抵抗素子である。磁気抵抗素子に用いられる高スピン分極材料としては、FeCo合金, NiFe合金、NiFeCo合金、その他、FeCr、FeSiAl, FeSi,FeAl, FeCoSi, FeCoAl, FeCoSiAl, FeCoTi, Fe(Ni)Co)Pt, Fe(Ni)(Co)Pd, Fe(Ni)(Co)Rh, Fe(Ni)(Co)Ir, Fe(Ni)(Co)Ru, FePt, (Fe,Co,Ni)L (Lは,La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu) 等の強磁性、あるいは希薄磁性合金,またFeN, FeTiN, FeAlN, FeSiN, FeTaN, FeCoN,FeCoTiN, FeCo(Al,Si)N, FeCoTaN 等の窒化物、Fe3O4あるいは水マンガン鉱、X2MnY(Xは、Co, Ni, Cu, Pt, Pdから選ばれた少なくとも一つ Yは、Al, Sn, In, Sb)、LaSrMnO, LaCaSrMnO等のLa1-xDxMnO(Dはアルカリ土類金属), CrO2、,ZnDO(Dは、V、Cr、Fe、Co、Niから選ばれた少なくとも一つ) NiEO (Eは、V、Cr、Fe、Coから選ばれた少なくとも一つ),GaMnN, AlMnN, GaAlMnN, AlBMnN,等、あるいは、ペロブスカイト型酸化物、フェライト等のスピネル型酸化物、ガ−ネット型酸化物があり、それぞれ優れた特性を得るが、中でもFe3O4 (マグネタイト)が安価に作製でき、また高抵抗変化を示す。
【0033】また本発明は、磁性体1が磁化領域Aの少なくとも一部、または磁性体3が磁化領域Bの少なくとも一部であることを特徴とする磁気抵抗素子である。前述の好ましい磁化領域Aと磁化領域Bの関係が、磁性体1と磁性体3内で実現することで、好ましい磁化接合領域を実現しうる磁性体2との組み合わせで、高い抵抗変化が容易に実現できる。
【0034】また本発明は、外部磁界の変化を、前記本発明の磁気抵抗素子の抵抗変化として検出する磁気センサ−である。素子に電流を流し、その際の電圧の変化を検知することで、外部磁界の変化による磁化状態を検出する。
【0035】また本発明は、前記本発明の磁気抵抗素子に加わる応力の変化を抵抗変化として検出する応力センサ−である。磁性体に応力を加えることで、磁歪に基づく磁化状態の変化を検出する。
【0036】また本発明は、磁気情報の変化を、前記本発明の磁気抵抗素子に含まれる磁化変化が容易な磁性体に記録し、この記録情報を磁気抵抗素子の抵抗値変化として検出する磁気メモリである。磁化変化が容易な磁性体に形状異方性、あるいは保持力により磁気情報を記憶させ、この記録情報を検知するメモリ素子である。ここで磁気情報は、電圧駆動された強磁性誘電体、磁性半導体、スピン注入、あるいは信号電流磁界などから供給される。
【0037】
【発明の実施の形態】各磁性層、反強磁性層、層間絶縁層、電極等の形成には、パルスレ−ザデポジション(PLD)、イオンビ−ムデポジション(IBD)、クラスタ−イオンビ−ムまたはRF、DC、ECR、ヘリコン、ICPまたは対向タ−ゲットなどのスパッタリング法、MBE、イオンプレ−ティング法等、通常薄膜形成に用いられるPVD法や、CVD、メッキ法あるいはゾルゲル法で作製することができる。また特に作製する対象が、化合物である場合には、化学ビ−ムエピタキシや、ガスソ−スMBE、反応性蒸着、反応性スパッタを用いて作製してもよく、またPVDで形成後、反応元素の原子、分子、イオン(プラズマ)、ラジカル等を、適当な分圧、反応温度、時間を制御することで反応させて作製してもよい。ここで、プラズマや、ラジカル作製には、ECR放電、グロ−放電、RF放電、ヘリコンあるいはICP等により発生できる。また素子の微細加工や、センサ−や、メモリ等のデバイス化のためのプロセスは通常、半導体プロセスや、GMRヘッド作製プロセス等で用いられるイオンミリング、RIE、FIB等の物理的あるいは化学的エッチング法、また微細パタ−ン形成のためにステッパ−、EB法等を用いたフォトリソグラフィ−技術を用いて達成できる。また多層配線時の電極の平坦化のために、CMP法や、クラスタ−イオンビ−ムエッチングを用いることもMR向上に効果的である。
【0038】図1に基本的な素子構成例を示す。磁性体1、磁性体2、磁性体3は直列に接続され、磁性体2は磁性体1および磁性体3に対してくびれた構造を持つ。磁性体1には磁化固定体、また磁性体3には軟磁性体あるいは磁化固定体が磁気的に結合している。磁性体1と磁性体3の間には電流が流され、その電圧変化を読みとる素子が接続されている。電圧変化は、差動増幅器等を用いて、素子の最小抵抗、あるいは最大抵抗とほぼ同じ抵抗値を有する参照抵抗に対する変化分として検出する場合もある。図1(a)は、磁性体2が三角形状の頂点、あるいはこれに類する構造となっており、また図1(b)では細線形状の例を示している。
【0039】また磁性体2の形状は、図2(a)で示すように、一方向のみにくびれを持つ形状でもよく、さらに図2(b)に示すように、2組以上の素子が直列に接続された構成でもよい。
【0040】図3に、磁性体1、磁性体2、磁性体3の直列形状の作成方法例について示す。磁性体1〜磁性体3は同一の結晶配向性を持つ同一材料で、それぞれ厚みが異なる場合、あるいは3種とも異なる材料である場合、例えば図(1−1)〜(1−5)に示す手順で作製できる。ここで、図3(1−1)は、基板上に薄膜形成法により作製した磁性体1を示す。薄膜形成法としては、パルスレ−ザデポジション(PLD)、イオンビ−ムデポジション(IBD)、クラスタ−イオンビ−ムまたはRF、DC、ECR、ヘリコン、ICPまたは対向タ−ゲットなどのスパッタリング法、MBE、イオンプレ−ティング法等の気相法、あるいはメッキ法あるいはゾルゲル法などで作製することができる。(1−2)は、この磁性体1をイオンミリングやRIEを用いた通常のフォトリソグラフィで加工し、磁性体2を成膜した後、リフトオフし、(1−3)の形状を作製し、続いて、(1−4)のように磁性体2を加工したのち、磁性体3を成膜し、リフトオフにより(1−5)のような形状にする。また特殊な場合として、磁性体1〜磁性体3が全て同じで、且つ磁性体2と、磁性体3、磁性体1の結晶配向性が異なるような場合では、(2−1)〜(2−3)あるいは(3−1)〜(3−3)に示すような作成方法を用いる。図中、下地とは結晶配向性制御層を指し、基板とは異なる結晶配向をしやすい材料から選択される。(2−1)〜(2−3)は、まず下地の形状を規制し、その上に磁性体を形成する方法である。また(3−1)〜(3−3)は、下地の上に磁性体2を形成し、その後、微細加工によりくびれた磁性体を形成後、磁性体1と磁性体3を形成する方法である。
【0041】以上のように形成された磁性体1〜磁性体3は、さらにその上に図4に示す(1−1)〜(1−4)、(2−1)〜(2−4)または(3−1)〜(3−4)の手順を用いて、磁化固定体あるいは軟磁性体の形成、さらにはくびれ形状の加工を行う。
【0042】図5は、面に垂直方向に電流を流す素子である。図5の素子は、基板上に電極などを形成後(図中基板と電極は略している)引き続き、磁化固定体、磁性体1、磁性体2を形成し、微細加工技術を用い、磁性体2の素子形状を規制する。磁性体2の周辺に絶縁体を形成後、磁性体2上に、磁性体3と磁化固定体または軟磁性体を形成することで作製する。
【0043】磁性体3に軟磁性体が磁気的に結合される場合、軟磁性体および磁性体3からの漏れ磁界が、磁性体1からの漏れ磁界と相互作用を起こす。図6は、磁性体1が磁性体1または磁性体4と非磁性体を介して静磁結合的、あるいは反強磁性的に結合することで、磁性体1からの漏れ磁界を抑制する構成である。また、図7は、さらに磁性体3および軟磁性体からの漏れ磁界を抑制する構成をしめす。また、図7の構成では、漏れ磁界が抑制されることで、素子が微細化された場合、磁性体3の磁化回転に要するエネルギ−が小さくなる。
【0044】次に、磁性体3が磁化固定体と結合される場合、磁性体1と磁性体3は互いの磁化の向きにより異なる静磁的な相互作用を行う。図8は、磁性体2を挟む磁性体1と磁性体3の磁化方向が異なる場合で、特に、磁性体1と磁性体3の磁気モ−メントの大きさが同程度で、互いに磁化をうち消しあう構成を示す。また図9は磁性体2を挟む磁性体1と磁性体3の磁化方向が互いに平行の場合、あるいは反平行の場合で、漏れ磁界が十分キャンセルできない場合の構成で、磁性体1と磁性体3がそれぞれ、非磁性体1または非磁性体2を挟んで別の磁性体1または磁性体4、あるいは磁性体3または5と静磁結合的、あるいは反強磁性的な磁気結合を行うことで、磁性体1と磁性体3の磁気的干渉を減少させている。尚、これらの非磁性体を挟んだ磁化干渉の減少は、図1または図2で示した素子において、膜面垂直方向に非磁性体を挟んだ磁性体の多層化を行うことで同様に効果がある。
【0045】図10は、例えば単結晶基板に異方性エッチング等を施した、特定の形状規制をもつ基板上に、斜め成膜などの技術により、同一磁性体でくびれ形状を持つ磁気抵抗素子について示したものである。図10では、磁化固定は形状異方性により施された場合について示しているが、磁化固定体との磁気的結合や、磁性体の結晶配向性の選択などによっても実現できる。
【0046】図11〜図13に、基本素子についての基本的な動作原理を示す。図11では、磁性体1と磁性体3にそれぞれ磁化固定体と軟磁性体が磁気的に結合されている。また、外部の磁気的エネルギ−に対し、磁化固定体と結合した磁性体1は磁化が固定された状態にあり、軟磁性体と結合した磁性体3は磁化回転が可能である。磁性体3は、図11(a)に示すように、初期状態では形状異方性などにより、所定の方向に磁化が向いているものとする。磁化領域がともに平行である場合、磁化結合領域Mは、図11(a)のように狭くなり、また反平行である場合、図11(b)のように広くなる。今、磁性体1と磁性体3の伝導スピンの向きと磁化の向きの関係が、何れの磁性体においても平行、あるいは反平行あるとすると、図11(a)での電気抵抗は低くなり、図11(b)での電気抵抗は高くなる傾向がある。また、磁性体1、磁性体3で、一方の伝導スピンの向きが磁化と平行で、他方の伝導スピンの向きが磁化と反平行である場合、図11(a)の伝導スピンは互いに反平行となるために、電気抵抗は高くなり、図11(b)での電気抵抗はそれより低下する傾向がある。電気抵抗の変化の大きさは、磁化結合領域の厚みや、磁化結合領域内での磁化の遷移状態に依存する。
【0047】図12では磁性体1と磁性体3にそれぞれ磁化固定体が磁気的に結合されており、磁化方向が互いに平行に固定された状態にある。
【0048】磁化領域がともに平行であるために、初期状態の磁化結合領域Mは、図7(a)のように狭く、外部から磁気的エネルギ−を与えることで、図7(b)のように広くなる。
【0049】磁性体1と磁性体3の伝導スピンの向きと、磁化の向きが平行、あるいは反平行あるとすると、図12(a)での電気抵抗は低くなり、図12(b)での電気抵抗は高くなる傾向がある。また、磁性体1、磁性体3で、一方の伝導スピンの向きが磁化と平行で、他方の伝導スピンの向きが磁化と反平行である場合、図12(a)での、電気抵抗は高くなり、図7(b)での電気抵抗はそれより低下する傾向がある。電気抵抗の変化の大きさは、磁化結合領域の厚みや、磁化結合領域内での磁化の遷移状態に依存する。
【0050】図13では磁性体1と磁性体3にそれぞれ磁化固定体が磁気的に結合されており、磁化方向が互いに反平行に固定された状態にある。互いに反平行な磁化の固定は、例えば磁性体1を反強磁性体とのカップリング、磁性体3を積層フェリを介した反強磁性体とのカップリングなどにより行う。磁化領域が互いに反平行であるために、初期状態の磁化結合領域Mは、比較的広く、これに外部から磁気的エネルギ−を与えることで、図13R>3(b)のように、磁化結合領域がくびれから移動する。磁性体1と磁性体3の伝導スピンの向きと、磁化の向きが平行、あるいは反平行あるとすると、図13(a)での電気抵抗は高くなり、図12(b)での電気抵抗は低くなる傾向がある。また、磁性体1、磁性体3で、一方の伝導スピンの向きが磁化と平行で、他方の伝導スピンの向きが磁化と反平行である場合、図13(a)での、電気抵抗は低くなり、図7(b)での電気抵抗はそれより高くなる傾向がある。電気抵抗の変化の大きさは、磁化結合領域の厚みや、磁化結合領域内での磁化の遷移状態に依存する。
【0051】図14に、これらの素子を用いたランダムアクセスメモリ例を示す。メモリとして使用される磁気抵抗素子としては、特に、磁性体1もしくは磁性体2が磁化反転可能な構造を持つ、図1、2、5、6、7、10等で代表される素子をメモリセルとして用いるのがよい。素子は例えば図14、A1に代表されるように、CuやAlをベ−スに作られたビット線とワ−ド線の交点に配置され、それぞれのラインに信号電流を流した時に発生する合成磁界を用いた2電流一致方式により信号情報が記録される。図15(a)は、交点に配置された面内抵抗変化を行う素子の上面図である。また図15(b)は、面垂直方向の抵抗変化を行う素子の断面図を示している。図1616及び図17に、面垂直方向の素子の電流による書き込み動作と、読み込み動作について例示する。図16では、素子の磁化状態を個別に読みとるためには、素子毎にFETに代表されるスイッチ素子を設けた構成を示している。また図17では、素子毎に非線形素子、あるいは整流素子を用いた構成を示している。ここで、非線形素子は、バリスタや、トンネル素子などでも良い。図16及び図17では、それぞれ、ビット線は素子に電流を流して抵抗変化を読みとるセンス線と併用する場合について示しているが、センス線を別途設ける場合、ビット線は、素子と電気的に絶縁されていても良い。また、電流書き込みの場合、ワ−ド線、ビット線とメモリセル間の距離は消費電力の点から500nm程度以下である。
【0052】図18に、多値メモリとしてのセル構造例を示す。図のメモリセルは、2組の磁気抵抗素子を組み合わせたもので、且つ、組み合わせた素子内に、磁化回転可能な磁性体を、2つ持ち、これらが異なる反転磁界、もしくは保持力を持つ構成となっている。組み合わせる磁気抵抗素子数は2組以上でも良いが、記録に電流磁界を用いる場合、素子全体の厚みは、500nm以下であることが良い。このとき多値記録は、信号電流値の振幅を変え、記録磁界の強度を変えることで行う。また、記録可能な多値信号は、図18で、2組の磁気抵抗素子の最小素子抵抗と抵抗変化の大きさが同じである場合は3値、また、最小抵抗値あるいは抵抗変化の大きさが異なる同じ場合は4値となる。また、2つの磁化回転可能な磁性体の反転磁界、あるいは保持力が等しく、さらに2組の磁気抵抗素子の最小抵抗と抵抗変化の大きさが同じである場合、多値化は行えないが、メモリセル自体の抵抗を直列にできるため、出力電圧を大きくすることができる。
【0053】図19に、電流磁界による書き込みを行う、多値メモリの多層配線のセル構造例を示す。図19(a)はFETに代表されるスイッチ素子上に作製した多層配線で、また図19(b)はダイオ−ドやトンネル素子に代表される整流素子あるいは非線形素子を介して形成した多層配線を示す。スイッチ素子や整流素子または非線形素子は、隣接する素子同士の電気的分離を行う働きをする。これらの電気的分離素子がない場合、即ち、素子が、図14に示したワ−ド線とビット線の配列において電気的に並列に接続されている場合、センス感度から、並列接続できる素子の最大個数は256個以下となる。
【0054】図19(a)で、素子1〜素子3は電気的に直列に接続され、またワ−ド線1、ワ−ド線2およびビット線1は素子1および素子2と電気的に絶縁されている。それぞれの素子への記録は、素子1に対しては、ワ−ド線1及びビット線1、素子2に対しては、ビット線1及びワ−ド線2、また素子3に対してはビット線2及びワ−ド線2にそれぞれ流した信号電流がつくる合成磁界を用いて記録する。読み出し方法にはいくつかあるが、例えば、一つには配線抵抗を含む、3つの素子に流した電流から発生する電圧を直接に読み出し、その出力の大きさにより最大6値のメモリ情報を得る方法がある。ここで、配線抵抗や、素子の基準抵抗(例えば最小抵抗)を相殺するために、差動アンプ等を用い、別の参照抵抗との差動出力を検知してもよい。またこの方法では、非破壊読み出しであるが、6値のメモリ情報を得るためには、素子1〜3はそれぞれ異なる最小抵抗、あるいは抵抗変化を持つことが必要である。また一つには、3つの素子に電流を流し、電圧を検知しながら、読み出しを行う素子(例えば素子1)に、記録を行うときと同様に、(ワ−ド線1およびビット線1により)磁界を発生させ、磁界発生前後で抵抗変化が起こった場合と起こらない場合で、磁化方向を推定する手法がある。この場合、素子の情報は破壊されることがあるために、再度記録が必要となるが、素子1〜3は同じ抵抗値と抵抗変化を持ったものでもよい。また図では素子が3つの場合の多層化について示しているがこれ以上でもよい。
【0055】図19(b)では素子1〜素子3は順方向では電気的に接続されている。図で用いた整流素子の向きは、必ずしも同じ向きである必要はない。素子への記録は、素子1に対しては、ワ−ド線1とビット線1から、また、素子2に対しては、ビット線1とワ−ド線2から、また素子3に対しては、ワ−ド線2とビット線2に流した信号電流が作る合成磁界を用いて記録する。読み出し方法としては、素子1については、ワ−ド線1とビット線1間の抵抗変化、素子2については、ビット線1とワ−ド線2の間の抵抗変化、素子3については、ビット線2とワ−ド線2の間の抵抗変化から読みとれる。ここで、それぞれの抵抗変化は、別に設けられた参照抵抗との差動出力により検知してもよい。また、この参照抵抗は、互いの素子同士であってもよい。また図では素子が3つの場合の多層化について示しているがこれ以上でもよい。
【0056】図20および図21に、面内抵抗の素子を用いたメモリセル配置を示す。ビット線とワ−ド線は、それぞれ素子から電気的に独立した構成を持ち、それぞれの素子には、これらに流した信号電流がつくる合成磁界により磁気情報を記録する。また読み出しは、センス電流を流すことで、それぞれの素子抵抗の変化を読み出す。図20では素子が個別に分離されている場合で、図2121は素子そのものがセンス線を兼ねている場合について示している。具体的な読み出し方法は、図19(a)と基本的に同じで、例え例えば、一つには配線抵抗を含む、3つの素子に流した電流から発生する電圧を直接に読み出し、その出力の大きさにより最大6値のメモリ情報を得る方法がある。ここで、配線抵抗や、素子の基準抵抗(例えば最小抵抗)を相殺するために、差動アンプ等を用い、別の参照抵抗との差動出力を検知してもよい。またこの方法では、非破壊読み出しであるが、6値のメモリ情報を得るためには、素子1〜3はそれぞれ異なる最小抵抗、あるいは抵抗変化を持つことが必要である。また一つには、3つの素子に電流を流し、電圧を検知しながら、読み出しを行う素子(例えば素子1)に、記録を行うときと同様に、(ワ−ド線1およびビット線により)磁界を発生させ、磁界発生前後で抵抗変化が起こった場合と起こらない場合で、磁化方向を推定する手法がある。この場合、素子の情報は破壊されることがあるために、再度記録が必要となるが、素子1〜3は同じ抵抗値と抵抗変化を持ったものでもよい。また図では、紙面の都合上、素子数が3つの場合を示しているがこれ以上でもよい。
【0057】図22〜図25は、外部磁界からの情報を読みとる磁気センサ−あるいは磁気ヘッドの例である。図22〜24においては、外部磁界は、磁気ギャップから軟磁性体で構成されたヨ−クを通じて、磁気抵抗素子の磁化状態を変化させる。図22および図24(b)では、磁気抵抗素子として、図2(a)に代表される面内抵抗の素子を用いている。図22では、ヨ−クは基板面内に、図24(b)ではヨ−クは基板面に対して立体的に配置されている。図23および図24(a)では、磁気抵抗素子として、図5に代表される面垂直抵抗の素子を用いており、図23では、ヨ−クが基板面内にあり、また図24ではヨ−クが基板面に対して立体的に構成されている。それぞれの図では磁気抵抗素子の軟磁性体部はヨ−クの一部を形成しているが、ヨ−クと空隙、あるいは非磁性体を介して、磁気的に結合した状態でもよい。
【0058】ヨ−クは、単一の磁性体でもよいが、実効的な磁性薄膜の厚みを薄くする積層フェリ構造、あるいは漏れ磁界を抑制する静磁結合構造とするために、磁性体と非磁性体の積層構造を成していてもよい。また、図2525では、外部磁界が、軟磁性体で構成されたフラックスガイドを通じて導入され、磁気抵抗素子の磁化状態を変化させるシ−ルド型の磁気センサ−あるいは磁気ヘッドの例を示す。フラックスガイドを磁気的にシ−ルドする共通、あるいは下部シ−ルドは、NiFeや、FeSiAlのような軟磁性体で、且つ電極として用いるに足る導電性を持っている。なお、図22〜25に用いられる磁気抵抗素子は、磁区構造によるバルクハウゼンノイズなどを抑制するために、Pt(Pd)Mn、IrMn、FeMn、NiMnなどの反強磁性体、CoPt等の高保持力磁性体あるいは電流バイアスにより、それぞれ、導入する磁束方向に対して垂直方向にバイアス磁界をかけることも望ましい。
【0059】図26は、外部からの応力または加速度による磁化状態の変化を抵抗変化として検出するセンサ−である。図26(a)では、磁性体3に強磁歪材料(磁歪定数が10-6以上)が積層され、応力変化により変化する強磁歪材料の磁化変化を磁性体3に伝えることで、磁気抵抗変化を検知する構成を示している。ここで磁性体3が、強磁歪材料である場合、強磁歪材料と積層する必要はない。また図26(b)では、磁性体1または磁性体3に磁化固定層が接続され、応力が主として磁性体2にかかることで、磁気抵抗変化が生じる構成について示している。
【0060】以上の構成で、磁性体1〜3として用いられる材料としては、Fe, Co, Ni, FeCo合金, NiFe合金、CoNi合金、NiFeCo合金、FeCr、FeSiAl, FeSi,FeAl, FeCoSi,FeCoAl, FeCoSiAl, FeCoTi, Fe(Ni)Co)Pt, Fe(Ni)(Co)Pd, Fe(Ni)(Co)Rh, Fe(Ni)(Co)Ir, Fe(Ni)(Co)Ru, FePt, (Fe,Co,Ni)L (Lは,La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm,Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu) 等の強磁性、あるいは希薄磁性合金,またFeN, FeTiN, FeAlN, FeSiN, FeTaN, FeCoN, FeCoTiN, FeCo(Al,Si)N, FeCoTaN等の窒化物磁性体、あるいは炭化物、硼化物、フッ化物磁性体、あるいは、Fe3O4あるいは水マンガン鉱、X2MnY(Xは、Co, Ni, Cu, Pt, Pdから選ばれた少なくとも一つ Yは、Al, Sn, In, Sb) , LaSrMnO, LaCaSrMnO等のLa1-xDxMnO(Dはアルカリ土類金属), CrO2、,ZnDO(Dは、V、Cr、Fe、Co、Niから選ばれた少なくとも一つ) NiEO (Eは、V、Cr、Fe、Coから選ばれた少なくとも一つ),GaMnN, AlMnN, GaAlMnN, AlBMnN,等、あるいは、ペロブスカイト型酸化物、フェライト等のスピネル型酸化物、ガ−ネット型酸化物があり、それぞれ優れた特性が得られる。
【0061】また以上の構成で用いられる軟磁性体としては、NiFe、FeSiAl、FeSi、FeTA(Tは、Ta, Al, Ti, Nb, Zr, Hf, Si, Mg,Ge,Ga等)また(Aは、N, B, O, F, C)、あるいは(Co, Fe)M (Mは Nb, Zr, Ta, B)等が良い。
【0062】また以上の構成で用いられる磁化固定体としては、PtMn、PtPdMn、FeMn、IrMn、NiMnや酸化物等の反強磁性体、あるいは第2の強磁性体として、CoまたはCoを含んだFeCo, CoFeNi, CoNi, CoZrTa, CoZrB CoZrNb合金等を用いた、第2の強磁性体/反強磁性体の積層構造、あるいは、非磁性体としてCu, Ag, Au, Ru, Rh,Ir, Re, Osまたはこれらの金属の合金、酸化物を用い、また、磁性体としてCo、FeCo、FeCoNi、CoNi、FeCoNi, CoZrTa, CoZrNb, CoZrBなどの強磁性体を用い、これらの強磁性体と非磁性体を積層した、積層フェリ磁性体、あるいは、積層フェリ磁性体/反強磁性体の積層構造、あるいは、保持力が100 Oe以上であるCoPt, FePt, CoCrPt, CoTaPt, FeTaPt, FeCrPtなどの高保持力磁性体、または、磁性体の形状異方性を用いた構成が良い。
【0063】以下、磁化遷移領域や、磁化領域は、電子線ホログラフィl、MFM、ロ−レンツ顕微鏡などを用いた観察から求めた値である。
【0064】(実施例1)図27の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁化固定体1と磁化固定体2をそれぞれFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、lの深さを変えた素子を作製した。図でWは1μm、L2は、100nmである。280℃、5kOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1と磁性体3に、図12(a)のように同一方向の異方性を付与した。外部磁界を異方性の向きと反対方向から加えた時に主として、磁化の固定を受けていない磁性体2近傍で磁化変化が起こり、磁性体1と磁性体3間の抵抗変化が観察された。
【0065】外部磁界が無い状態で、磁性体1と磁性体3の平均的な磁化方向とのずれが大きい領域を磁化結合領域と定義し、その抵抗測定方向に対する厚みdと、磁気抵抗変化の関係を調べた。結果を(表1)に示す。ここで、MRは最大抵抗値と最小抵抗値の差を最小抵抗値で割ったものである。
【0066】
【表1】
【0067】(実施例2)図27の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁化固定体2をFe3O4側から、CoFe(3)/Ru(0.8)/CoFe(3)/PtMn(30)とし、lの深さを変えた素子を作製した。図でWは1μm、L2は、100nmである。280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1と磁性体3に、図13(a)のように互いに反平行の一方向異方性を付与した。
【0068】外部磁界を異方性の向きと反対方向から加えた時に主として、磁化の固定を受けていない磁性体2近傍で磁化変化が起こり、磁性体1と磁性体3間の抵抗の変化が観察された。
【0069】外部磁界が無い状態で、磁性体1と磁性体3の平均的な磁化方向とのずれが大きい領域を磁化結合領域と定義し、その抵抗測定方向に対する厚みdと、磁気抵抗変化の関係を調べた。結果を(表2)に示す。
【0070】
【表2】
【0071】(実施例3)図27の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、lの深さを変えた素子を作製した。図でWは1μm、L2は、100nmである。280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に図11R>1(a)のような一方向異方性を付与した。
【0072】外部磁界を加え、図11(a)の状態から図11(b)のように磁化を反転させ、外部磁場を取り除いた状態で、磁性体1と磁性体3の平均的な磁化方向とのずれが大きい領域を磁化結合領域と定義し、その抵抗測定方向に対する厚みdapと、磁化反転前後での磁気抵抗変化の関係を調べた。結果を(表3)に示す。
【0073】
【表3】
【0074】(実施例4)図28の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、磁化固定体1と軟磁性体の長さであるL1とL3を変えた素子を作製した。Wは1μm、L2は、100nmである。これらの素子を280℃、5KOeの磁場中で熱処理し磁性体1に一方向異方性を付与した。
【0075】外部磁界を加え、磁性体3の少なくとも一部を磁化反転させ、外部磁場を取り除いた状態で、抵抗の変化を測定した。また磁性体1と磁性体3それぞれにおいて磁化方向が揃った領域をそれぞれ磁化領域A、磁化領域Bとし、さらに磁化領域Aとほぼ同じ方向に磁化を揃えたCoFeの磁化領域を磁化領域A'、また磁化領域Bとほぼ同じ方向に磁化を揃えた軟磁性体の磁化領域を磁化領域B'とした。磁化領域Aと磁化領域A'のそれぞれの体積と飽和磁化の積の和からもとめた値をMa×Va、また、磁化領域Bと磁化領域B'から同様に求めた値をMb×Vb、また磁化遷結合領域の大きさから求めた値をMm×Vmとし、それぞれの値の大小と抵抗変化を調べた。結果を(表4)に示す。
【0076】
【表4】
【0077】(実施例5)図27の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべて同一の磁性体Aとし、磁性体Aとして、Ni、Co、Fe、Fe50Co50、Fe25Co75、Ni60Fe40、NiFeCo、Fe50Cr50、FeN、Fe3O4、NiMnSb、CuMnSb、PtMnSb、LaSrMnO、LaCaSrMnO、CrO2を用い、また、磁化固定体1を磁性体A側から、CoFe(3)/IrMn(50)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とした素子を作製した。図でWは1μm、L2は、100nmである。ここでIrMnは100 Oeの磁界中で成膜し、磁性体1に図11(a)のような一方向異方性を付与した。
【0078】外部磁界を加え、図11(a)の状態から図11(b)のように磁化を反転させ磁化反転前後での抵抗変化を調べた。結果を(表5)に示す。
【0079】
【表5】
【0080】(実施例6)図29の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、W2、lおよび長さL2を変えた素子を作製した。図でW1は1μmである。280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に図11R>1(a)のような一方向異方性を付与した。外部磁界を加え、図11(a)の状態から図11(b)のように磁化を反転させた前後での抵抗変化を調べた。結果を(表6)に示す。
【0081】
【表6】
【0082】(実施例7)図30の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、W2、l2および長さL2を変えた素子を作製した。図でW1は1μm、W3は2μmである。W3の方向に沿って、280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に一方向異方性を付与した。外部磁界を加え、磁性体3を反転させた前後での抵抗変化を調べた。結果を(表7)に示す。
【0083】
【表7】
【0084】(実施例8)図30の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、W2、l2および長さL2をそれぞれ、20、20、10nmとし、W1とl1、l3および、磁性体1、磁性体3、軟磁性体のサイズを変えた素子を作製した。W3の方向に沿って、280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に一方向異方性を付与した。
【0085】磁性体3と軟磁性体それぞれの体積と飽和磁化の積の和からもとめた値をM3×V3、また、磁性体1の体積と飽和磁化の積からもとめた値をM1×V1、また磁性体2の体積と飽和磁化の積をMm×Vmとし、外部磁界を加え、磁性体3を反転させた前後での抵抗変化との関係を調べた。結果を(表8)に示す。
【0086】
【表8】
【0087】(実施例9)図30の構成で、磁性体1、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体2として、Ni、Co、Fe、Fe50Co50、Fe25Co75、Ni60Fe40、NiFeCo、Fe50Cr50、FeN、Fe3O4、NiMnSb、CuMnSb、PtMnSb、LaSrMnO、LaCaSrMnO、CrO2を用い、また、磁化固定体1を磁性体2側から、CoFe(3)/IrMn(50)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とした素子を作製した。
【0088】W2、l2および長さL2をそれぞれ、20、20、3nmとしW1は1μm、W3は2μmとした素子を作製した。W3の方向に沿って、280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に一方向異方性を付与した。外部磁界を加え、磁性体3を反転させた前後での抵抗変化を調べた。結果を(表9)に示す。
【0089】
【表9】
【0090】(実施例10)CMOS基板上に、図16に示すような基本構成のメモリ素子で集積メモリを作製した。素子配列は、16×16素子のメモリブロックが合計8ブロックとした。ここで、1ブロック当たり256個の素子中、255個の素子には、図5の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、また磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(3)とし、磁気抵抗変化率が60%のものを用いた。また、各部ロックの残りの1素子は、磁性体2の素子幅を他の素子よりも大きくすることで、磁気抵抗変化率を3%以下に押さえ、配線抵抗や、素子最低抵抗、FET抵抗をキャンセルするためのダミ−素子とした。なお、ワ−ド線およびビット線などは全てCuを用いた。
【0091】ワ−ド線とビット線の合成磁界により、8つのブロックの、8素子にそれぞれの磁性体3の磁化反転を同時に行い、8ビットずつの信号を記録した。次に、CMOSで作製されたFETのゲ−トをそれぞれのブロックに付き1素子ずつONし、センス電流を流した。このとき、各ブロック内でのビット線、素子、及びFETに発生する電圧と、ダミ−電圧をコンパレ−タにより比較し、それぞれの素子の出力電圧から、同時に8ビットの情報を読みとった。
【0092】(実施例11)ガラス基板上に、図19(b)に示すような基本構成のメモリ素子で集積メモリを作製した。素子配列は、一段当たり、16×16素子が3段あるものを1ブロックとし、合計8ブロックとした。ここで、第1段と第3段は、メモリ素子で、第2段はダミ−素子である。1ブロック当たり、256×3個の素子は、図5の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、また磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(3)としている。512個のメモリ素子の磁気抵抗変化率が60%とし、また256個のダミ−素子は、磁性体2の素子幅を他の素子よりも大きくすることで、磁気抵抗変化率を1%以下に押さえている。なお、ワ−ド線およびビット線などには全てCuを用いた。
【0093】ワ−ド線とビット線の合成磁界により、各ブロック毎に1素子ずつに同時書き込みを行い、8ビット信号を記録した。各ブロックで、第1段に記録したメモリ情報は、ビット線1から2つのワ−ド線(1および2)に電流を流し、同一ビット線上にある第1段の素子と第2段のダミ−素子に生じた電圧を、コンパレ−タにより比較し、それぞれのビット情報を読みとった。また、第3段に記録したメモリ情報は、2つのビット線(2および3)からワ−ド線2に電流を流し、同一ワ−ド線上にある第3段の素子と第2段のダミ−素子に生じた電圧をコンパレ−タにより比較し、それぞれのビット情報を読みとった。これらの読みとり動作を8ブロック毎に行い8ビット情報を同時に読みとった。
【0094】(実施例12)CMOS基板上に、図21に示すような基本構成の集積メモリを作製した。図で、素子は、図15(a)に示す基本メモリが3つ、直列に接続された1列の構成のみ示している。この直列に接続された列を、合計3列とする3×3配列を1ブロックとし、合計8ブロックから成る集積メモリを用いて8ビットの記録と読み出しを行った。ここで、1ブロック当たり、9個の素子には、図2(a)の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、また磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(3)とし、磁気抵抗変化率が70%のものを用いた。また、ワ−ド線およびビット線などには全てCuを用いた。
【0095】ビット情報に基づく、ワ−ド線とビット線の合成磁界により、8つのブロックの、8素子の磁性体3を磁化反転し、8ビット信号を同時に記録した。次に、CMOSで作製されたFETのゲ−トをそれぞれのブロックに付き1列ずつONし、センス電流を流し、各列の基準電圧を検知した後、ワ−ド線、ビット線が直交したれぞれの素子に関して合成磁界をかけ、電圧の変化をしらべることで、1ブロック当たり1ビット、合計8ビットの情報を同時に読みとった。読みとり動作終了後、バッファメモリの読み出し信号に基づき、読み出し時に、磁化反転が行われた素子に対して、再び反転磁界を印可し、再書き込みを行った。
【0096】(実施例13)図31に示すような、面内抵抗型磁気抵抗素子を用いたヨ−ク型磁気ヘッドを作製した。素子は、図2(a)を基本構成としており、図31R>1中の矢印で示すように、軟磁性体の磁化容易軸は形状異方性により、磁化固定体による磁化固定方向に対して90度の向きにしている。素子配置は、下部フロントヨ−クと下部バックヨ−クの間にギャップを介して挟まれた位置である。またバックヨ−クは、フロントヨ−クに比べ広い面積とすることで、磁気的な回路抵抗を下げている。
【0097】ヨ−クにはFeTaNを用いており、素子には、図2(a)の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、また磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(3)とし、磁気抵抗変化率が70%のものを用いた。
【0098】このような磁気ヘッドを用いて、トラック密度が90kTPI(tracks per inch),線記録密度は550kBPI(bits per inch)で記録されたHDD記録媒体をデータ転送速度211Mビット/秒で再生実験を行った。ヘッドの浮上量は10nmとした。へッドのビット誤り率は1×10-8であった。
【0099】またこの磁気ヘッドのギャップを200nmとし、MEテ−プでの再生を行ったところ、従来のMIGヘッドに比較し40dB高い出力を得た。
【0100】(実施例14)ステンレス基板上に、図26R>6(b)に示す構成を持つ磁気抵抗素子で、磁性体1側を機械的に固定した片持ち梁構造とした加速度センサ−を作製した。磁性体2近傍では、基板をくびれ形状とすることで、可動できる自由度を高めている。
【0101】素子には、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1および磁性体3に接続された、磁化固定体はFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)とした。また、このような加速度センサ−を用いて、1Gでの加速度試験を行ったところ、従来のピエゾ型加速度センサ−に比較して20dB高い出力を得た。
【0102】
【発明の効果】本発明の磁気抵抗素子を用いることで、従来のTMR素子と同等以上の磁気抵抗効果を得ることができる。このため、従来の情報通信端末などに使用される光磁気ディスク、ハ−ドディスク、デジタルデ−タストリ−マ(DDS)、デジタルVTR等の磁気記録装置の再生ヘッド、またシリンダ−や、自動車などの回転速度検出用の磁気センサ−、磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)、応力変化、加速度変化などを検知する応力または加速度センサ−あるいは熱センサ−や化学反応センサ−等の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基本構成例1−1を示す図
【図2】基本構成例1−2を示す図
【図3】素子形成方法を示す図
【図4】素子形成方法を示す図
【図5】基本構成例2−1を示す図
【図6】基本構成例2−2を示す図
【図7】基本構成例2−3を示す図
【図8】基本構成例2−4を示す図
【図9】基本構成例2−5を示す図
【図10】基本構成例3を示す図
【図11】磁化結合領域と抵抗変化の基本動作1を示す図
【図12】磁化結合領域と抵抗変化の基本動作2を示す図
【図13】磁化結合領域と抵抗変化の基本動作3を示す図
【図14】ランダムアクセスメモリ例を示す図
【図15】メモリセル配置1を示す図
【図16】メモリ構成1を示す図
【図17】メモリ構成2を示す図
【図18】メモリ構成3を示す図
【図19】メモリ構成4を示す図
【図20】メモリ構成5を示す図
【図21】メモリ構成6を示す図
【図22】ヨ−ク型磁気ヘッド1を示す図
【図23】ヨ−ク型磁気ヘッド2を示す図
【図24】ヨ−ク型磁気ヘッド3を示す図
【図25】シ−ルド型磁気ヘッドを示す図
【図26】応力センサ−1を示す図
【図27】基本構成例1−3を示す図
【図28】基本構成例1−4を示す図
【図29】基本構成例1−5を示す図
【図30】基本構成例2−6を示す図
【図31】ヨ−ク型磁気ヘッド4を示す図
【図32】応力センサ−2を示す図
【符号の説明】
1 磁性体
2 磁性体
3 磁性体
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報通信端末などに使用される光磁気ディスク、ハ−ドディスク、デジタルデ−タストリ−マ(DDS)、デジタルVTR等の磁気記録装置の再生ヘッド、またシリンダ−や、自動車などの回転速度検出用の磁気センサ−、磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)、応力変化、加速度変化などを検知する応力または加速度センサ−あるいは熱センサ−や化学反応センサ−等に広く使用される磁気抵抗素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】強磁性体/中間層/強磁性体を基本構成とする多層膜に中間層を横切るように電流を流した場合、中間層が絶縁層であるときスピントンネル効果、また中間層がCuなどの導電性金属であるときCPP(Current perpendicular to the plane) GMR効果による磁気抵抗効果が生じることが知られており、磁気ヘッドなどへの応用研究が活発に行われている(日本応用磁気学会 第112回研究会資料)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの磁気抵抗素子を構成する、磁性体/非磁性体界面の物性が、素子特性を劣化させている可能性があり、例えば、TMR素子では、スピン分極率が100%近いと予想されているハ−フメタルを磁性体として用いた場合でも、室温で、高々10数%程度のMRしか報告されていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明は、少なくとも1種からなる磁性体中に、磁化方向が略揃った磁化領域Aと磁化方向が略揃った磁化領域Bと、前記磁化領域Aと前記磁化領域Bに挟まれた磁化接合領域Mがあり、前記磁化領域Aの少なくとも一部、または前記磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁化接合領域Mまたは前記磁化領域Aまたは前記磁化領域Bの磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子である。ここで、磁化接合領域Mとは、磁化領域Aと磁化領域Bの磁化領域にいたる状態の中間領域を指し、両領域の磁化の交換結合による磁化結合領域あるいは(量子的な)伝導スピンによる磁化の結合領域等を意味する。また、外部からの磁気的エネルギ−により、磁化領域Aと磁化領域Bが完全に平行である場合等、実質的に磁化結合領域の厚みが0である場合も含む。さらに磁化領域、磁化接合領域の領域の大きさあるいはスピンの伝導状態は、外部から与えられた磁気的エネルギ−の大きさによって変化し、固定されたものとは限らない。また、外部から与えられた磁気的エネルギ−とは、磁界、スピン注入あるいは磁気誘電体や、磁性半導体、反強磁性体、積層フェリ構造などを用いた、交換結合を介した磁気バイアスなどの磁気エネルギ−および光、圧力、加速度、熱などにより素子の磁化状態に影響を与えるものを総称する。
【0005】一般に、磁性体は単磁区でない場合、外部から磁気的エネルギ−が与えられると、磁性体内部の磁気的エネルギ−を最小にするために、磁区構造が変化する。この磁区構造の変化は、磁性体の抵抗値を変化させるが、これらの変化は、外部からの磁界などの変化に対して、安定した履歴を持たない。本発明は、最小単位として、磁化領域A、磁化領域B、磁化接合領域Mがあり、磁化領域の内、少なくとも何れかが、少なくともその一部を磁気的に固定することで、外部からの磁気的エネルギ−に対する応答の可逆性を高めることができる。この磁化領域A、磁化接合領域M、磁化領域Bの一対の組は、例えば、磁化領域1/磁化接合領域2/磁化領域3/磁化接合領域4/磁化領域5のように2組の対あるいはそれ以上の組で構成されていてもよい。
【0006】また本発明は、磁化領域Aおよび磁化領域Bの各平均磁化方向が互いに略反平行または略平行で、電気抵抗の変化が、主として磁化接合領域Mの厚み変化による磁気抵抗素子である。これは、外部からの磁気エネルギ−に対して、磁化領域Aと磁化領域Bが、それぞれの領域の大きさを変化させるものの、これらの磁化の方向を反転するような大きな磁化変化がない場合に観察される。電気抵抗を支配する伝導スピンと磁化方向は、伝導スピンがマジョリティかマイノリティかで反対となるために、伝導スピンの向きとして表しこの現象を考察する。
【0007】例えば磁化領域Aと磁化領域Bの伝導スピンが互いに反平行の場合、磁化接合領域Mが無視できるほど薄いあるいは実質的に厚みが0であれば、伝導スピンは、両領域の界面で直接的伝導し、主にそれぞれの分極率に応じた散乱(あるいはスピン伝導の禁止)を受け高抵抗となるであろう。一方、磁化接合領域が磁化領域Aと磁化領域Bの伝導スピンが直接それぞれの領域で散乱しない程度の厚みであり、特に磁化領域Aから領域Bへの変化が、遷移的であれば、抵抗値が上記場合に比較し低下するものと思われる。また一つには、例えば、磁化領域Aおよび磁化領域Bの伝導スピンが互いに平行の時、磁化接合領域Mの厚みが無視できる程度に薄い、あるいは実質的厚みが0であれば、低抵抗となり、一方、磁化接合領域が十分厚い場合には磁化接合領域でのスピン散乱により、上記状態よりも高抵抗となるだろう。以上のように外部からの磁気的エネルギ−が、磁化接合領域Mの幅を変化させることで抵抗値が変化するものと思われるが、実際には複数の要因が混在する場合もある。
【0008】また本発明は、外部からの磁気的エネルギ−がないとき、磁化接合領域Mの厚みdが0nm≦d≦200nmなる範囲である磁気抵抗素子である。磁化接合領域Mの値が上記範囲である場合、高抵抗あるいは低抵抗を実現しやすく、この結果、高い抵抗変化を得ることができる。これは、上記範囲では磁化領域Aと磁化領域Bを磁化接合領域の磁化の影響をほとんど受けず直接的に伝導するスピンを少なくとも一部持つためであると思われる。特に、磁化接合領域の厚みが0でない場合においても、磁化接合領域をバリステックに伝導する、あるいはトンネル的に伝導する、あるいはフェルミ波長等の量子波長の規制のみを受けて伝導するなど、様々な直接的な伝導状態が実現するもの思われるが詳細なメカニズムは不明である。dの値は、磁性体種類の組み合わせ、形状、伝導のメカニズムにより異なるが、同じ種類の磁性体の組み合わせである場合、より薄い場合に大きな抵抗変化が得られる傾向がある。
【0009】また本発明は、電気抵抗の変化が、主として磁化領域Aおよび磁化領域Bの磁化相対角の変化による磁気抵抗素子である。
【0010】この現象は、磁化領域AとBが外部からの磁気エネルギ−に対して大きな変化を受ける場合に観察される。これは、磁化接合領域Mの厚みが、磁化領域Aと磁化領域Bの間の直接的なスピン伝導を行う電子がある程度存在できる程度に薄く、且つ外部からの磁気的エネルギ−により、磁化接合領域Mの厚みが大きな変化を伴わない場合、磁化領域Aと磁化領域Bの磁化相対角の変化によるスピン依存散乱などの確率が変化するためにおこるものと思われる。
【0011】また本発明は、磁化領域Aと磁化領域Bの磁化方向が略反平行あるとき磁化接合領域Mの厚みをdapとすると0≦dap≦200nmなる関係を持つ磁気抵抗素子である。
【0012】これは、外部磁気エネルギ−に対して、磁化領域Aおよび、磁化領域Bが大きく変化する素子において観察されるものであり、磁化領域と伝導スピンの向きが同じである場合をマジョリティ、磁化領域と伝導スピンの向きが反対であるときをマイノリティとすると以下のように大別するメカニズムが働いているものと思われる。
【0013】まず、磁化領域Aと磁化領域Bの伝導スピンが何れもマジョリティあるいはマイノリティである場合での抵抗変化のメカニズムは以下のようであると思われる。
【0014】2つの磁化領域の磁化の向きと伝導スピンの向きが何れも平行である、また何れも反平行であるとき、外部からの磁気エネルギ−により、2つの磁化領域の磁化の向きが互いに平行(伝導スピン同士のスピンの向きも互いに平行)であると、スピン依存散乱等が無いために低抵抗値をとり、一方、2つの磁化領域の磁化の向きが互いに反平行(即ち、伝導スピンの向きが互いに反平行)であると高抵抗となる。特にdapが上記範囲であれば、直接的なスピン散乱(あるいはスピンの伝導禁止)が行われる伝導電子数が増え、結果として高い抵抗変化を得るものと思われる。ここでdapが、200nmより大きくなると、伝導電子の直接的な散乱が弱くなるために、伝導スピンが互いに反平行時の抵抗が低くなるため、抵抗変化そのものは小さくなると思われる。
【0015】次に、磁化領域Aと磁化領域Bの伝導スピンの何れか一方がマジョリティで残りがマイノリティである場合の抵抗変化のメカニズムは、以下のようであると思われる。
【0016】磁化領域Aと磁化領域Bの磁化方向が平行である場合(即ち、伝導スピンの向きが互いに反平行であるとき)、スピン散乱などにより高抵抗となり、また、2つの磁化領域の磁化方向が反平行(即ち、伝導スピンの向きが互いに平行)であるとき、前記状態よりも低抵抗となる。特にdapが上記範囲であれば、直接的な伝導を行う電子数が増え、低抵抗となり、結果として高い抵抗変化を得るものと思われる。ここでdapが、200nmより大きくなると、伝導電子の直接的な伝導数が少なくなるために、伝導スピンが互いに平行時の抵抗が高くなるため、抵抗変化そのものは小さくなると思われる。
【0017】尚、以上のdapの値は、実際には、磁性体種類の組み合わせ、形状、伝導のメカニズムにより異なるが、同じ種類の磁性体の組み合わせである場合、より薄い場合に大きな抵抗変化が得られる傾向がある。
【0018】また本発明は、磁化領域A及び磁化領域Bが互いに略反平行であるとき、磁化接合領域Mの実効磁化をMm、体積をVm、また前記磁化領域Aの実効磁化をMa、体積をVa、また前記磁化領域Bの実効磁化をMb、体積をVbとすると、Mm×Vm<Ma×Va、Mb×Vbなる関係を持つ磁気抵抗素子である。ここで、磁化領域とは、磁化接合領域Mと接しない強磁性体であっても、磁気的に結合することで、磁化方向を決定する磁性体であれば、この領域を含む。磁化領域Aと磁化領域Bが略反平行であるとき、磁化接合領域Mの実効磁化×体積が、磁化領域A、磁化領域Bよりも小さいことで、抵抗変化を大きくするのに必要な薄い磁化接合領域が形成しやすい。特に、磁化領域Aと磁化領域Bの相対磁化の変化が主とする磁気抵抗素子においては、外部からの磁気エネルギ−に対する抵抗変化の応答性が高くなる傾向がある。
【0019】また本発明は、磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体から選ばれた磁化固定体と磁気的に結合すること、または形状異方性エネルギ−を用いることで、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定されることを特徴とする磁気抵抗素子である。磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定された領域は、磁化領域Aまたは、磁化領域Bを構成する磁性体の保持力を大きく選ぶことでも実現できる。しかしながら、本発明のように磁化領域Aまたは、磁化領域Bの、少なくとも一方を、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体、あるいはこれらの組み合わせたものと磁気的結合すること、また形状異方性を用いることで、磁化領域を構成する材料自身の保持力にとらわれず、容易に実現できる。ここで、磁気的結合とは、磁化領域を構成する磁性体と直接接することで行われる交換結合、あるいは、非磁性体、非磁性空隙などを挟んで行われる静磁結合、またはこれらの組み合わせ等を意味する。ここで、反強磁性体としては、室温以上のネ−ル温度を持つものであれば、何れでも良く、例えば、金属合金であるPtMn、PtPdMn、FeMn、IrMn、NiMnや酸化物反強磁性体等でもよい。また磁化領域AまたはB/第2の強磁性体/反強磁性体の構造で用いられる第2の強磁性体とは、CoまたはCoを含んだFeCo, CoFeNi, CoNi, CoZrTa, CoZrB CoZrNbなどの強磁性金属が好ましい。また、強磁性体と非磁性体の積層構造を持つ、積層フェリ構造に用いられる好ましい非磁性体としては、導電性を持つ金属、あるいは金属化合物であれば何れでも良いが、特にCu, Ag, Au, Ru, Rh, Ir, Re, Osがよい。またはこれらの金属の合金、酸化物が良い。また積層フェリの用いられる磁性体としてはCoを含有する、例えばCo、FeCo、FeCoNi、CoNi、FeCoNi, CoZrTa, CoZrNb, CoZrBなどの強磁性体が好ましい。また、高保持力磁性体としては、特に限定は無いが、保持力が100 Oe以上であるCoPt, FePt, CoCrPt, CoTaPt, FeTaPt, FeCrPtなどが望ましい。
【0020】また本発明は、磁化接合領域Mの少なくとも一部、磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部から選ばれた少なくとも一つの領域が、軟磁性体と磁気的に結合した磁気抵抗素子である。それぞれの領域が軟磁性体と磁気的に結合することで、磁化接合領域、磁化領域を形成する材料の保持力にとらわれず低保持力化が可能なため、外部磁気エネルギ−に対する応答性を高めることができる。
【0021】また本発明は、磁化領域Aまたは磁化領域Bを形成する磁性材料のうち少なくとも一方が、高スピン分極材料である磁気抵抗素子である。高スピン分極材料とは、スピン分極率が40%以上のものを指し、前記本発明ではスピン分極率が高いものであるほど、磁気抵抗変化が大きくなる傾向が見られる。スピン分極率の大きさは、フェルミ面近傍で高いことが望ましいが、伝導電子が、バリステック的である場合、伝導電子のポテンシャルの高さ近傍での分極率が高くてもよい。
【0022】また本発明は、少なくとも一組の磁化領域A、磁化領域Bおよび磁化接合領域Mが同一の強磁性体よりなり、且つ前記強磁性体が高スピン分極材料であることを特徴とする磁気抵抗素子である。磁化領域、磁化接合領域の磁性体が異なる場合、これらの界面での磁気構造の変化、界面ポテンシャル等により、好ましい抵抗変化を得られない場合がある。従って、それぞれの磁化領域が同一の磁性体であることで、スピン分極率を反映した好ましい抵抗変化を得られる。
【0023】また本発明は、磁性体2が、磁性体1と磁性体3に挟まれた一対の構成を少なくとも一組持ち、前記磁性体2が、磁性体1および磁性体3に対して、形状的または磁気的に、くびれ部を形成し、前記磁性体1の少なくとも一部、または前記磁性体3の少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁性体1と前記磁性体2および前記磁性体3の磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子である。ここで、磁性体2が形状的または磁気的くびれを持つとは、磁性体1から磁性体2または磁性体3から磁性体2へ移るに従い、形状的に狭くなる、あるいは、例えば、磁気モ−メントなどが小さくなることを意味する。外部からの磁気的エネルギ−を受けた場合、磁気的に固定されていない磁性体内部において磁化変化が行われ、この変化が、素子の抵抗値を変化させる。例えばくびれ部を形成する磁性体2の内部、あるいはその近傍に、磁性体2の形状あるいは磁気的な特徴から、比較的、幅が薄い磁化接合領域が生じる。この磁化接合領域の幅の変化あるいは磁性体2から磁性体1あるいは磁性体3への磁化接合領域の移動による幅の増大は大きな抵抗変化を生じる。また磁気的に固定された磁性体は、外部の磁気的エネルギ−に対する抵抗変化の可逆性を高める働きを持つ。また、この磁性体1、磁性体2、磁性体3の一対の組は、例えば、磁性体1/磁性体2/磁性体3(磁性体1‘)/磁性体2’/磁性体3‘のように2組の対あるいはそれ以上の組で構成されていてもよい。
【0024】また本発明は、磁性体1と磁性体3が、くびれ部を構成する磁性体2および絶縁体を介して接し、前記絶縁体が前記磁性体2の側面部を被覆する構造を持つ磁気抵抗素子である。素子体積が小さくなるにつれ、くびれ部を持つ磁性体2では、磁性体2の体積に対する表面積が大きくなり、磁性体1から磁性体3へ電流を流したときに、表面電流の影響が無視できなくなる。磁性体1および磁性体3と接するくびれ部の側面部を絶縁体で覆うことで、このリ−ク電流を抑制することができ、本来の抵抗変化を得ることができる。また、本構成のようにくびれ部に絶縁体を設けることで、例えば、通常の薄膜プロセスとリソグラフィ技術を用いて、磁性体1/磁性体2/磁性体3の多層構造を容易に形成できる。
【0025】また本発明は、磁性体2の長さが0.5nm以上2000nm以下、また磁性体2の幅の最短長が1nm以上100nm以下である磁気抵抗素子である。磁性体2の長さ、即ち、くびれ部の長さとは、磁性体1から磁性体3に至る方向での長さを表し、また磁性体2の幅、即ちくびれ部の幅とは、前記長さ方向と直交する方向の幅を表す。くびれ部の長さが2000nmより大きい、あるいはくびれ部の幅の最短長が100nmより大きいと抵抗変化が小さくなる。また、くびれ部の長さが0.5nmより小さい、あるいはくびれ部の幅の最短長が1nmより小さいと、検出用の電流値が小さくなりすぎ、検出電流回路形成費が高くなる。
【0026】また本発明は、磁性体1の磁化をM1、体積をV1、また磁性体2の磁化をM2、体積をV2、また磁性体3の磁化をM3、体積をV3とすると、M2×V2<M1×V1、M3×V3なる関係を持つ磁気抵抗素子である。ここで、磁性体1または磁性体2が別の強磁性体Aと直接結合している場合、この磁性体Aの磁化Maと体積Vaを合わせ持つものとする。この領域を含む。磁性体1と磁性体3の実効磁化×体積が、磁性体2の実効磁化×体積よりも大きいことで、磁性体2の内部あるいはその近傍に、抵抗変化を大きくするのに必要な十分に薄い磁化接合領域が形成できる。
【0027】また本発明は、磁性体1の少なくとも一部、または磁性体3の少なくとも一部のうち少なくとも一方が、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体から選ばれた磁化固定体と磁気的に結合すること、または形状異方性エネルギ−を用いることで、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定されることを特徴とする磁気抵抗素子である。
【0028】本発明のように磁性体1または、磁性体3の、少なくとも一方を、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体。積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体、あるいはこれらの組み合わせたものと磁気的結合すること、また形状異方性を用いることで、磁化領域を構成する材料自身の保持力にとらわれず、磁性体の磁気的な固定を容易に実現できる。
【0029】また本発明は、磁性体1の少なくとも一部、磁性体2の少なくとも一部、または磁性体3の少なくとも一部から選ばれた少なくとも一つの磁性体が、軟磁性体と磁気的に結合した磁気抵抗素子である。それぞれの磁性体が軟磁性体と磁気的に結合することで、磁性体の保持力にとらわれず低保持力化が可能なため、外部磁気エネルギ−に対する応答性を高めることができる。
【0030】また本発明は、磁性体1または磁性体3を形成する磁性材料のうち少なくとも一方が、高スピン分極材料である磁気抵抗素子である。スピン分極率が高いものであるほど、磁気抵抗変化が大きくなる傾向が見られる。スピン分極率の大きさは、フェルミ面近傍で高いことが望ましいが、伝導電子が、バリステック的である場合、伝導電子のポテンシャルの高さ近傍での分極率高くてもよい。
【0031】また本発明は、磁性体1、磁性体2及び磁性体3が同一の強磁性体よりなり、且つ前記強磁性体が高スピン分極材料であることを特徴とする磁気抵抗素子である。磁性体1、磁性体2、磁性体3のそれぞれの材料が異なる場合、これらの界面での磁気構造の変化、界面ポテンシャル等により、好ましい抵抗変化を得られない場合がある。従って、それぞれが同一の磁性体であることで、スピン分極率を反映した好ましい抵抗変化を得られる。
【0032】また本発明は、磁性体の少なくとも一部が、マグネタイトである磁気抵抗素子である。磁気抵抗素子に用いられる高スピン分極材料としては、FeCo合金, NiFe合金、NiFeCo合金、その他、FeCr、FeSiAl, FeSi,FeAl, FeCoSi, FeCoAl, FeCoSiAl, FeCoTi, Fe(Ni)Co)Pt, Fe(Ni)(Co)Pd, Fe(Ni)(Co)Rh, Fe(Ni)(Co)Ir, Fe(Ni)(Co)Ru, FePt, (Fe,Co,Ni)L (Lは,La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu) 等の強磁性、あるいは希薄磁性合金,またFeN, FeTiN, FeAlN, FeSiN, FeTaN, FeCoN,FeCoTiN, FeCo(Al,Si)N, FeCoTaN 等の窒化物、Fe3O4あるいは水マンガン鉱、X2MnY(Xは、Co, Ni, Cu, Pt, Pdから選ばれた少なくとも一つ Yは、Al, Sn, In, Sb)、LaSrMnO, LaCaSrMnO等のLa1-xDxMnO(Dはアルカリ土類金属), CrO2、,ZnDO(Dは、V、Cr、Fe、Co、Niから選ばれた少なくとも一つ) NiEO (Eは、V、Cr、Fe、Coから選ばれた少なくとも一つ),GaMnN, AlMnN, GaAlMnN, AlBMnN,等、あるいは、ペロブスカイト型酸化物、フェライト等のスピネル型酸化物、ガ−ネット型酸化物があり、それぞれ優れた特性を得るが、中でもFe3O4 (マグネタイト)が安価に作製でき、また高抵抗変化を示す。
【0033】また本発明は、磁性体1が磁化領域Aの少なくとも一部、または磁性体3が磁化領域Bの少なくとも一部であることを特徴とする磁気抵抗素子である。前述の好ましい磁化領域Aと磁化領域Bの関係が、磁性体1と磁性体3内で実現することで、好ましい磁化接合領域を実現しうる磁性体2との組み合わせで、高い抵抗変化が容易に実現できる。
【0034】また本発明は、外部磁界の変化を、前記本発明の磁気抵抗素子の抵抗変化として検出する磁気センサ−である。素子に電流を流し、その際の電圧の変化を検知することで、外部磁界の変化による磁化状態を検出する。
【0035】また本発明は、前記本発明の磁気抵抗素子に加わる応力の変化を抵抗変化として検出する応力センサ−である。磁性体に応力を加えることで、磁歪に基づく磁化状態の変化を検出する。
【0036】また本発明は、磁気情報の変化を、前記本発明の磁気抵抗素子に含まれる磁化変化が容易な磁性体に記録し、この記録情報を磁気抵抗素子の抵抗値変化として検出する磁気メモリである。磁化変化が容易な磁性体に形状異方性、あるいは保持力により磁気情報を記憶させ、この記録情報を検知するメモリ素子である。ここで磁気情報は、電圧駆動された強磁性誘電体、磁性半導体、スピン注入、あるいは信号電流磁界などから供給される。
【0037】
【発明の実施の形態】各磁性層、反強磁性層、層間絶縁層、電極等の形成には、パルスレ−ザデポジション(PLD)、イオンビ−ムデポジション(IBD)、クラスタ−イオンビ−ムまたはRF、DC、ECR、ヘリコン、ICPまたは対向タ−ゲットなどのスパッタリング法、MBE、イオンプレ−ティング法等、通常薄膜形成に用いられるPVD法や、CVD、メッキ法あるいはゾルゲル法で作製することができる。また特に作製する対象が、化合物である場合には、化学ビ−ムエピタキシや、ガスソ−スMBE、反応性蒸着、反応性スパッタを用いて作製してもよく、またPVDで形成後、反応元素の原子、分子、イオン(プラズマ)、ラジカル等を、適当な分圧、反応温度、時間を制御することで反応させて作製してもよい。ここで、プラズマや、ラジカル作製には、ECR放電、グロ−放電、RF放電、ヘリコンあるいはICP等により発生できる。また素子の微細加工や、センサ−や、メモリ等のデバイス化のためのプロセスは通常、半導体プロセスや、GMRヘッド作製プロセス等で用いられるイオンミリング、RIE、FIB等の物理的あるいは化学的エッチング法、また微細パタ−ン形成のためにステッパ−、EB法等を用いたフォトリソグラフィ−技術を用いて達成できる。また多層配線時の電極の平坦化のために、CMP法や、クラスタ−イオンビ−ムエッチングを用いることもMR向上に効果的である。
【0038】図1に基本的な素子構成例を示す。磁性体1、磁性体2、磁性体3は直列に接続され、磁性体2は磁性体1および磁性体3に対してくびれた構造を持つ。磁性体1には磁化固定体、また磁性体3には軟磁性体あるいは磁化固定体が磁気的に結合している。磁性体1と磁性体3の間には電流が流され、その電圧変化を読みとる素子が接続されている。電圧変化は、差動増幅器等を用いて、素子の最小抵抗、あるいは最大抵抗とほぼ同じ抵抗値を有する参照抵抗に対する変化分として検出する場合もある。図1(a)は、磁性体2が三角形状の頂点、あるいはこれに類する構造となっており、また図1(b)では細線形状の例を示している。
【0039】また磁性体2の形状は、図2(a)で示すように、一方向のみにくびれを持つ形状でもよく、さらに図2(b)に示すように、2組以上の素子が直列に接続された構成でもよい。
【0040】図3に、磁性体1、磁性体2、磁性体3の直列形状の作成方法例について示す。磁性体1〜磁性体3は同一の結晶配向性を持つ同一材料で、それぞれ厚みが異なる場合、あるいは3種とも異なる材料である場合、例えば図(1−1)〜(1−5)に示す手順で作製できる。ここで、図3(1−1)は、基板上に薄膜形成法により作製した磁性体1を示す。薄膜形成法としては、パルスレ−ザデポジション(PLD)、イオンビ−ムデポジション(IBD)、クラスタ−イオンビ−ムまたはRF、DC、ECR、ヘリコン、ICPまたは対向タ−ゲットなどのスパッタリング法、MBE、イオンプレ−ティング法等の気相法、あるいはメッキ法あるいはゾルゲル法などで作製することができる。(1−2)は、この磁性体1をイオンミリングやRIEを用いた通常のフォトリソグラフィで加工し、磁性体2を成膜した後、リフトオフし、(1−3)の形状を作製し、続いて、(1−4)のように磁性体2を加工したのち、磁性体3を成膜し、リフトオフにより(1−5)のような形状にする。また特殊な場合として、磁性体1〜磁性体3が全て同じで、且つ磁性体2と、磁性体3、磁性体1の結晶配向性が異なるような場合では、(2−1)〜(2−3)あるいは(3−1)〜(3−3)に示すような作成方法を用いる。図中、下地とは結晶配向性制御層を指し、基板とは異なる結晶配向をしやすい材料から選択される。(2−1)〜(2−3)は、まず下地の形状を規制し、その上に磁性体を形成する方法である。また(3−1)〜(3−3)は、下地の上に磁性体2を形成し、その後、微細加工によりくびれた磁性体を形成後、磁性体1と磁性体3を形成する方法である。
【0041】以上のように形成された磁性体1〜磁性体3は、さらにその上に図4に示す(1−1)〜(1−4)、(2−1)〜(2−4)または(3−1)〜(3−4)の手順を用いて、磁化固定体あるいは軟磁性体の形成、さらにはくびれ形状の加工を行う。
【0042】図5は、面に垂直方向に電流を流す素子である。図5の素子は、基板上に電極などを形成後(図中基板と電極は略している)引き続き、磁化固定体、磁性体1、磁性体2を形成し、微細加工技術を用い、磁性体2の素子形状を規制する。磁性体2の周辺に絶縁体を形成後、磁性体2上に、磁性体3と磁化固定体または軟磁性体を形成することで作製する。
【0043】磁性体3に軟磁性体が磁気的に結合される場合、軟磁性体および磁性体3からの漏れ磁界が、磁性体1からの漏れ磁界と相互作用を起こす。図6は、磁性体1が磁性体1または磁性体4と非磁性体を介して静磁結合的、あるいは反強磁性的に結合することで、磁性体1からの漏れ磁界を抑制する構成である。また、図7は、さらに磁性体3および軟磁性体からの漏れ磁界を抑制する構成をしめす。また、図7の構成では、漏れ磁界が抑制されることで、素子が微細化された場合、磁性体3の磁化回転に要するエネルギ−が小さくなる。
【0044】次に、磁性体3が磁化固定体と結合される場合、磁性体1と磁性体3は互いの磁化の向きにより異なる静磁的な相互作用を行う。図8は、磁性体2を挟む磁性体1と磁性体3の磁化方向が異なる場合で、特に、磁性体1と磁性体3の磁気モ−メントの大きさが同程度で、互いに磁化をうち消しあう構成を示す。また図9は磁性体2を挟む磁性体1と磁性体3の磁化方向が互いに平行の場合、あるいは反平行の場合で、漏れ磁界が十分キャンセルできない場合の構成で、磁性体1と磁性体3がそれぞれ、非磁性体1または非磁性体2を挟んで別の磁性体1または磁性体4、あるいは磁性体3または5と静磁結合的、あるいは反強磁性的な磁気結合を行うことで、磁性体1と磁性体3の磁気的干渉を減少させている。尚、これらの非磁性体を挟んだ磁化干渉の減少は、図1または図2で示した素子において、膜面垂直方向に非磁性体を挟んだ磁性体の多層化を行うことで同様に効果がある。
【0045】図10は、例えば単結晶基板に異方性エッチング等を施した、特定の形状規制をもつ基板上に、斜め成膜などの技術により、同一磁性体でくびれ形状を持つ磁気抵抗素子について示したものである。図10では、磁化固定は形状異方性により施された場合について示しているが、磁化固定体との磁気的結合や、磁性体の結晶配向性の選択などによっても実現できる。
【0046】図11〜図13に、基本素子についての基本的な動作原理を示す。図11では、磁性体1と磁性体3にそれぞれ磁化固定体と軟磁性体が磁気的に結合されている。また、外部の磁気的エネルギ−に対し、磁化固定体と結合した磁性体1は磁化が固定された状態にあり、軟磁性体と結合した磁性体3は磁化回転が可能である。磁性体3は、図11(a)に示すように、初期状態では形状異方性などにより、所定の方向に磁化が向いているものとする。磁化領域がともに平行である場合、磁化結合領域Mは、図11(a)のように狭くなり、また反平行である場合、図11(b)のように広くなる。今、磁性体1と磁性体3の伝導スピンの向きと磁化の向きの関係が、何れの磁性体においても平行、あるいは反平行あるとすると、図11(a)での電気抵抗は低くなり、図11(b)での電気抵抗は高くなる傾向がある。また、磁性体1、磁性体3で、一方の伝導スピンの向きが磁化と平行で、他方の伝導スピンの向きが磁化と反平行である場合、図11(a)の伝導スピンは互いに反平行となるために、電気抵抗は高くなり、図11(b)での電気抵抗はそれより低下する傾向がある。電気抵抗の変化の大きさは、磁化結合領域の厚みや、磁化結合領域内での磁化の遷移状態に依存する。
【0047】図12では磁性体1と磁性体3にそれぞれ磁化固定体が磁気的に結合されており、磁化方向が互いに平行に固定された状態にある。
【0048】磁化領域がともに平行であるために、初期状態の磁化結合領域Mは、図7(a)のように狭く、外部から磁気的エネルギ−を与えることで、図7(b)のように広くなる。
【0049】磁性体1と磁性体3の伝導スピンの向きと、磁化の向きが平行、あるいは反平行あるとすると、図12(a)での電気抵抗は低くなり、図12(b)での電気抵抗は高くなる傾向がある。また、磁性体1、磁性体3で、一方の伝導スピンの向きが磁化と平行で、他方の伝導スピンの向きが磁化と反平行である場合、図12(a)での、電気抵抗は高くなり、図7(b)での電気抵抗はそれより低下する傾向がある。電気抵抗の変化の大きさは、磁化結合領域の厚みや、磁化結合領域内での磁化の遷移状態に依存する。
【0050】図13では磁性体1と磁性体3にそれぞれ磁化固定体が磁気的に結合されており、磁化方向が互いに反平行に固定された状態にある。互いに反平行な磁化の固定は、例えば磁性体1を反強磁性体とのカップリング、磁性体3を積層フェリを介した反強磁性体とのカップリングなどにより行う。磁化領域が互いに反平行であるために、初期状態の磁化結合領域Mは、比較的広く、これに外部から磁気的エネルギ−を与えることで、図13R>3(b)のように、磁化結合領域がくびれから移動する。磁性体1と磁性体3の伝導スピンの向きと、磁化の向きが平行、あるいは反平行あるとすると、図13(a)での電気抵抗は高くなり、図12(b)での電気抵抗は低くなる傾向がある。また、磁性体1、磁性体3で、一方の伝導スピンの向きが磁化と平行で、他方の伝導スピンの向きが磁化と反平行である場合、図13(a)での、電気抵抗は低くなり、図7(b)での電気抵抗はそれより高くなる傾向がある。電気抵抗の変化の大きさは、磁化結合領域の厚みや、磁化結合領域内での磁化の遷移状態に依存する。
【0051】図14に、これらの素子を用いたランダムアクセスメモリ例を示す。メモリとして使用される磁気抵抗素子としては、特に、磁性体1もしくは磁性体2が磁化反転可能な構造を持つ、図1、2、5、6、7、10等で代表される素子をメモリセルとして用いるのがよい。素子は例えば図14、A1に代表されるように、CuやAlをベ−スに作られたビット線とワ−ド線の交点に配置され、それぞれのラインに信号電流を流した時に発生する合成磁界を用いた2電流一致方式により信号情報が記録される。図15(a)は、交点に配置された面内抵抗変化を行う素子の上面図である。また図15(b)は、面垂直方向の抵抗変化を行う素子の断面図を示している。図1616及び図17に、面垂直方向の素子の電流による書き込み動作と、読み込み動作について例示する。図16では、素子の磁化状態を個別に読みとるためには、素子毎にFETに代表されるスイッチ素子を設けた構成を示している。また図17では、素子毎に非線形素子、あるいは整流素子を用いた構成を示している。ここで、非線形素子は、バリスタや、トンネル素子などでも良い。図16及び図17では、それぞれ、ビット線は素子に電流を流して抵抗変化を読みとるセンス線と併用する場合について示しているが、センス線を別途設ける場合、ビット線は、素子と電気的に絶縁されていても良い。また、電流書き込みの場合、ワ−ド線、ビット線とメモリセル間の距離は消費電力の点から500nm程度以下である。
【0052】図18に、多値メモリとしてのセル構造例を示す。図のメモリセルは、2組の磁気抵抗素子を組み合わせたもので、且つ、組み合わせた素子内に、磁化回転可能な磁性体を、2つ持ち、これらが異なる反転磁界、もしくは保持力を持つ構成となっている。組み合わせる磁気抵抗素子数は2組以上でも良いが、記録に電流磁界を用いる場合、素子全体の厚みは、500nm以下であることが良い。このとき多値記録は、信号電流値の振幅を変え、記録磁界の強度を変えることで行う。また、記録可能な多値信号は、図18で、2組の磁気抵抗素子の最小素子抵抗と抵抗変化の大きさが同じである場合は3値、また、最小抵抗値あるいは抵抗変化の大きさが異なる同じ場合は4値となる。また、2つの磁化回転可能な磁性体の反転磁界、あるいは保持力が等しく、さらに2組の磁気抵抗素子の最小抵抗と抵抗変化の大きさが同じである場合、多値化は行えないが、メモリセル自体の抵抗を直列にできるため、出力電圧を大きくすることができる。
【0053】図19に、電流磁界による書き込みを行う、多値メモリの多層配線のセル構造例を示す。図19(a)はFETに代表されるスイッチ素子上に作製した多層配線で、また図19(b)はダイオ−ドやトンネル素子に代表される整流素子あるいは非線形素子を介して形成した多層配線を示す。スイッチ素子や整流素子または非線形素子は、隣接する素子同士の電気的分離を行う働きをする。これらの電気的分離素子がない場合、即ち、素子が、図14に示したワ−ド線とビット線の配列において電気的に並列に接続されている場合、センス感度から、並列接続できる素子の最大個数は256個以下となる。
【0054】図19(a)で、素子1〜素子3は電気的に直列に接続され、またワ−ド線1、ワ−ド線2およびビット線1は素子1および素子2と電気的に絶縁されている。それぞれの素子への記録は、素子1に対しては、ワ−ド線1及びビット線1、素子2に対しては、ビット線1及びワ−ド線2、また素子3に対してはビット線2及びワ−ド線2にそれぞれ流した信号電流がつくる合成磁界を用いて記録する。読み出し方法にはいくつかあるが、例えば、一つには配線抵抗を含む、3つの素子に流した電流から発生する電圧を直接に読み出し、その出力の大きさにより最大6値のメモリ情報を得る方法がある。ここで、配線抵抗や、素子の基準抵抗(例えば最小抵抗)を相殺するために、差動アンプ等を用い、別の参照抵抗との差動出力を検知してもよい。またこの方法では、非破壊読み出しであるが、6値のメモリ情報を得るためには、素子1〜3はそれぞれ異なる最小抵抗、あるいは抵抗変化を持つことが必要である。また一つには、3つの素子に電流を流し、電圧を検知しながら、読み出しを行う素子(例えば素子1)に、記録を行うときと同様に、(ワ−ド線1およびビット線1により)磁界を発生させ、磁界発生前後で抵抗変化が起こった場合と起こらない場合で、磁化方向を推定する手法がある。この場合、素子の情報は破壊されることがあるために、再度記録が必要となるが、素子1〜3は同じ抵抗値と抵抗変化を持ったものでもよい。また図では素子が3つの場合の多層化について示しているがこれ以上でもよい。
【0055】図19(b)では素子1〜素子3は順方向では電気的に接続されている。図で用いた整流素子の向きは、必ずしも同じ向きである必要はない。素子への記録は、素子1に対しては、ワ−ド線1とビット線1から、また、素子2に対しては、ビット線1とワ−ド線2から、また素子3に対しては、ワ−ド線2とビット線2に流した信号電流が作る合成磁界を用いて記録する。読み出し方法としては、素子1については、ワ−ド線1とビット線1間の抵抗変化、素子2については、ビット線1とワ−ド線2の間の抵抗変化、素子3については、ビット線2とワ−ド線2の間の抵抗変化から読みとれる。ここで、それぞれの抵抗変化は、別に設けられた参照抵抗との差動出力により検知してもよい。また、この参照抵抗は、互いの素子同士であってもよい。また図では素子が3つの場合の多層化について示しているがこれ以上でもよい。
【0056】図20および図21に、面内抵抗の素子を用いたメモリセル配置を示す。ビット線とワ−ド線は、それぞれ素子から電気的に独立した構成を持ち、それぞれの素子には、これらに流した信号電流がつくる合成磁界により磁気情報を記録する。また読み出しは、センス電流を流すことで、それぞれの素子抵抗の変化を読み出す。図20では素子が個別に分離されている場合で、図2121は素子そのものがセンス線を兼ねている場合について示している。具体的な読み出し方法は、図19(a)と基本的に同じで、例え例えば、一つには配線抵抗を含む、3つの素子に流した電流から発生する電圧を直接に読み出し、その出力の大きさにより最大6値のメモリ情報を得る方法がある。ここで、配線抵抗や、素子の基準抵抗(例えば最小抵抗)を相殺するために、差動アンプ等を用い、別の参照抵抗との差動出力を検知してもよい。またこの方法では、非破壊読み出しであるが、6値のメモリ情報を得るためには、素子1〜3はそれぞれ異なる最小抵抗、あるいは抵抗変化を持つことが必要である。また一つには、3つの素子に電流を流し、電圧を検知しながら、読み出しを行う素子(例えば素子1)に、記録を行うときと同様に、(ワ−ド線1およびビット線により)磁界を発生させ、磁界発生前後で抵抗変化が起こった場合と起こらない場合で、磁化方向を推定する手法がある。この場合、素子の情報は破壊されることがあるために、再度記録が必要となるが、素子1〜3は同じ抵抗値と抵抗変化を持ったものでもよい。また図では、紙面の都合上、素子数が3つの場合を示しているがこれ以上でもよい。
【0057】図22〜図25は、外部磁界からの情報を読みとる磁気センサ−あるいは磁気ヘッドの例である。図22〜24においては、外部磁界は、磁気ギャップから軟磁性体で構成されたヨ−クを通じて、磁気抵抗素子の磁化状態を変化させる。図22および図24(b)では、磁気抵抗素子として、図2(a)に代表される面内抵抗の素子を用いている。図22では、ヨ−クは基板面内に、図24(b)ではヨ−クは基板面に対して立体的に配置されている。図23および図24(a)では、磁気抵抗素子として、図5に代表される面垂直抵抗の素子を用いており、図23では、ヨ−クが基板面内にあり、また図24ではヨ−クが基板面に対して立体的に構成されている。それぞれの図では磁気抵抗素子の軟磁性体部はヨ−クの一部を形成しているが、ヨ−クと空隙、あるいは非磁性体を介して、磁気的に結合した状態でもよい。
【0058】ヨ−クは、単一の磁性体でもよいが、実効的な磁性薄膜の厚みを薄くする積層フェリ構造、あるいは漏れ磁界を抑制する静磁結合構造とするために、磁性体と非磁性体の積層構造を成していてもよい。また、図2525では、外部磁界が、軟磁性体で構成されたフラックスガイドを通じて導入され、磁気抵抗素子の磁化状態を変化させるシ−ルド型の磁気センサ−あるいは磁気ヘッドの例を示す。フラックスガイドを磁気的にシ−ルドする共通、あるいは下部シ−ルドは、NiFeや、FeSiAlのような軟磁性体で、且つ電極として用いるに足る導電性を持っている。なお、図22〜25に用いられる磁気抵抗素子は、磁区構造によるバルクハウゼンノイズなどを抑制するために、Pt(Pd)Mn、IrMn、FeMn、NiMnなどの反強磁性体、CoPt等の高保持力磁性体あるいは電流バイアスにより、それぞれ、導入する磁束方向に対して垂直方向にバイアス磁界をかけることも望ましい。
【0059】図26は、外部からの応力または加速度による磁化状態の変化を抵抗変化として検出するセンサ−である。図26(a)では、磁性体3に強磁歪材料(磁歪定数が10-6以上)が積層され、応力変化により変化する強磁歪材料の磁化変化を磁性体3に伝えることで、磁気抵抗変化を検知する構成を示している。ここで磁性体3が、強磁歪材料である場合、強磁歪材料と積層する必要はない。また図26(b)では、磁性体1または磁性体3に磁化固定層が接続され、応力が主として磁性体2にかかることで、磁気抵抗変化が生じる構成について示している。
【0060】以上の構成で、磁性体1〜3として用いられる材料としては、Fe, Co, Ni, FeCo合金, NiFe合金、CoNi合金、NiFeCo合金、FeCr、FeSiAl, FeSi,FeAl, FeCoSi,FeCoAl, FeCoSiAl, FeCoTi, Fe(Ni)Co)Pt, Fe(Ni)(Co)Pd, Fe(Ni)(Co)Rh, Fe(Ni)(Co)Ir, Fe(Ni)(Co)Ru, FePt, (Fe,Co,Ni)L (Lは,La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm,Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu) 等の強磁性、あるいは希薄磁性合金,またFeN, FeTiN, FeAlN, FeSiN, FeTaN, FeCoN, FeCoTiN, FeCo(Al,Si)N, FeCoTaN等の窒化物磁性体、あるいは炭化物、硼化物、フッ化物磁性体、あるいは、Fe3O4あるいは水マンガン鉱、X2MnY(Xは、Co, Ni, Cu, Pt, Pdから選ばれた少なくとも一つ Yは、Al, Sn, In, Sb) , LaSrMnO, LaCaSrMnO等のLa1-xDxMnO(Dはアルカリ土類金属), CrO2、,ZnDO(Dは、V、Cr、Fe、Co、Niから選ばれた少なくとも一つ) NiEO (Eは、V、Cr、Fe、Coから選ばれた少なくとも一つ),GaMnN, AlMnN, GaAlMnN, AlBMnN,等、あるいは、ペロブスカイト型酸化物、フェライト等のスピネル型酸化物、ガ−ネット型酸化物があり、それぞれ優れた特性が得られる。
【0061】また以上の構成で用いられる軟磁性体としては、NiFe、FeSiAl、FeSi、FeTA(Tは、Ta, Al, Ti, Nb, Zr, Hf, Si, Mg,Ge,Ga等)また(Aは、N, B, O, F, C)、あるいは(Co, Fe)M (Mは Nb, Zr, Ta, B)等が良い。
【0062】また以上の構成で用いられる磁化固定体としては、PtMn、PtPdMn、FeMn、IrMn、NiMnや酸化物等の反強磁性体、あるいは第2の強磁性体として、CoまたはCoを含んだFeCo, CoFeNi, CoNi, CoZrTa, CoZrB CoZrNb合金等を用いた、第2の強磁性体/反強磁性体の積層構造、あるいは、非磁性体としてCu, Ag, Au, Ru, Rh,Ir, Re, Osまたはこれらの金属の合金、酸化物を用い、また、磁性体としてCo、FeCo、FeCoNi、CoNi、FeCoNi, CoZrTa, CoZrNb, CoZrBなどの強磁性体を用い、これらの強磁性体と非磁性体を積層した、積層フェリ磁性体、あるいは、積層フェリ磁性体/反強磁性体の積層構造、あるいは、保持力が100 Oe以上であるCoPt, FePt, CoCrPt, CoTaPt, FeTaPt, FeCrPtなどの高保持力磁性体、または、磁性体の形状異方性を用いた構成が良い。
【0063】以下、磁化遷移領域や、磁化領域は、電子線ホログラフィl、MFM、ロ−レンツ顕微鏡などを用いた観察から求めた値である。
【0064】(実施例1)図27の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁化固定体1と磁化固定体2をそれぞれFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、lの深さを変えた素子を作製した。図でWは1μm、L2は、100nmである。280℃、5kOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1と磁性体3に、図12(a)のように同一方向の異方性を付与した。外部磁界を異方性の向きと反対方向から加えた時に主として、磁化の固定を受けていない磁性体2近傍で磁化変化が起こり、磁性体1と磁性体3間の抵抗変化が観察された。
【0065】外部磁界が無い状態で、磁性体1と磁性体3の平均的な磁化方向とのずれが大きい領域を磁化結合領域と定義し、その抵抗測定方向に対する厚みdと、磁気抵抗変化の関係を調べた。結果を(表1)に示す。ここで、MRは最大抵抗値と最小抵抗値の差を最小抵抗値で割ったものである。
【0066】
【表1】
【0067】(実施例2)図27の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁化固定体2をFe3O4側から、CoFe(3)/Ru(0.8)/CoFe(3)/PtMn(30)とし、lの深さを変えた素子を作製した。図でWは1μm、L2は、100nmである。280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1と磁性体3に、図13(a)のように互いに反平行の一方向異方性を付与した。
【0068】外部磁界を異方性の向きと反対方向から加えた時に主として、磁化の固定を受けていない磁性体2近傍で磁化変化が起こり、磁性体1と磁性体3間の抵抗の変化が観察された。
【0069】外部磁界が無い状態で、磁性体1と磁性体3の平均的な磁化方向とのずれが大きい領域を磁化結合領域と定義し、その抵抗測定方向に対する厚みdと、磁気抵抗変化の関係を調べた。結果を(表2)に示す。
【0070】
【表2】
【0071】(実施例3)図27の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、lの深さを変えた素子を作製した。図でWは1μm、L2は、100nmである。280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に図11R>1(a)のような一方向異方性を付与した。
【0072】外部磁界を加え、図11(a)の状態から図11(b)のように磁化を反転させ、外部磁場を取り除いた状態で、磁性体1と磁性体3の平均的な磁化方向とのずれが大きい領域を磁化結合領域と定義し、その抵抗測定方向に対する厚みdapと、磁化反転前後での磁気抵抗変化の関係を調べた。結果を(表3)に示す。
【0073】
【表3】
【0074】(実施例4)図28の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、磁化固定体1と軟磁性体の長さであるL1とL3を変えた素子を作製した。Wは1μm、L2は、100nmである。これらの素子を280℃、5KOeの磁場中で熱処理し磁性体1に一方向異方性を付与した。
【0075】外部磁界を加え、磁性体3の少なくとも一部を磁化反転させ、外部磁場を取り除いた状態で、抵抗の変化を測定した。また磁性体1と磁性体3それぞれにおいて磁化方向が揃った領域をそれぞれ磁化領域A、磁化領域Bとし、さらに磁化領域Aとほぼ同じ方向に磁化を揃えたCoFeの磁化領域を磁化領域A'、また磁化領域Bとほぼ同じ方向に磁化を揃えた軟磁性体の磁化領域を磁化領域B'とした。磁化領域Aと磁化領域A'のそれぞれの体積と飽和磁化の積の和からもとめた値をMa×Va、また、磁化領域Bと磁化領域B'から同様に求めた値をMb×Vb、また磁化遷結合領域の大きさから求めた値をMm×Vmとし、それぞれの値の大小と抵抗変化を調べた。結果を(表4)に示す。
【0076】
【表4】
【0077】(実施例5)図27の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべて同一の磁性体Aとし、磁性体Aとして、Ni、Co、Fe、Fe50Co50、Fe25Co75、Ni60Fe40、NiFeCo、Fe50Cr50、FeN、Fe3O4、NiMnSb、CuMnSb、PtMnSb、LaSrMnO、LaCaSrMnO、CrO2を用い、また、磁化固定体1を磁性体A側から、CoFe(3)/IrMn(50)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とした素子を作製した。図でWは1μm、L2は、100nmである。ここでIrMnは100 Oeの磁界中で成膜し、磁性体1に図11(a)のような一方向異方性を付与した。
【0078】外部磁界を加え、図11(a)の状態から図11(b)のように磁化を反転させ磁化反転前後での抵抗変化を調べた。結果を(表5)に示す。
【0079】
【表5】
【0080】(実施例6)図29の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、W2、lおよび長さL2を変えた素子を作製した。図でW1は1μmである。280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に図11R>1(a)のような一方向異方性を付与した。外部磁界を加え、図11(a)の状態から図11(b)のように磁化を反転させた前後での抵抗変化を調べた。結果を(表6)に示す。
【0081】
【表6】
【0082】(実施例7)図30の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、W2、l2および長さL2を変えた素子を作製した。図でW1は1μm、W3は2μmである。W3の方向に沿って、280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に一方向異方性を付与した。外部磁界を加え、磁性体3を反転させた前後での抵抗変化を調べた。結果を(表7)に示す。
【0083】
【表7】
【0084】(実施例8)図30の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とし、W2、l2および長さL2をそれぞれ、20、20、10nmとし、W1とl1、l3および、磁性体1、磁性体3、軟磁性体のサイズを変えた素子を作製した。W3の方向に沿って、280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に一方向異方性を付与した。
【0085】磁性体3と軟磁性体それぞれの体積と飽和磁化の積の和からもとめた値をM3×V3、また、磁性体1の体積と飽和磁化の積からもとめた値をM1×V1、また磁性体2の体積と飽和磁化の積をMm×Vmとし、外部磁界を加え、磁性体3を反転させた前後での抵抗変化との関係を調べた。結果を(表8)に示す。
【0086】
【表8】
【0087】(実施例9)図30の構成で、磁性体1、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体2として、Ni、Co、Fe、Fe50Co50、Fe25Co75、Ni60Fe40、NiFeCo、Fe50Cr50、FeN、Fe3O4、NiMnSb、CuMnSb、PtMnSb、LaSrMnO、LaCaSrMnO、CrO2を用い、また、磁化固定体1を磁性体2側から、CoFe(3)/IrMn(50)(単位はnm)の構成とし、磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(30)とした素子を作製した。
【0088】W2、l2および長さL2をそれぞれ、20、20、3nmとしW1は1μm、W3は2μmとした素子を作製した。W3の方向に沿って、280℃、5KOeの磁場中で素子を熱処理し、磁性体1に一方向異方性を付与した。外部磁界を加え、磁性体3を反転させた前後での抵抗変化を調べた。結果を(表9)に示す。
【0089】
【表9】
【0090】(実施例10)CMOS基板上に、図16に示すような基本構成のメモリ素子で集積メモリを作製した。素子配列は、16×16素子のメモリブロックが合計8ブロックとした。ここで、1ブロック当たり256個の素子中、255個の素子には、図5の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、また磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(3)とし、磁気抵抗変化率が60%のものを用いた。また、各部ロックの残りの1素子は、磁性体2の素子幅を他の素子よりも大きくすることで、磁気抵抗変化率を3%以下に押さえ、配線抵抗や、素子最低抵抗、FET抵抗をキャンセルするためのダミ−素子とした。なお、ワ−ド線およびビット線などは全てCuを用いた。
【0091】ワ−ド線とビット線の合成磁界により、8つのブロックの、8素子にそれぞれの磁性体3の磁化反転を同時に行い、8ビットずつの信号を記録した。次に、CMOSで作製されたFETのゲ−トをそれぞれのブロックに付き1素子ずつONし、センス電流を流した。このとき、各ブロック内でのビット線、素子、及びFETに発生する電圧と、ダミ−電圧をコンパレ−タにより比較し、それぞれの素子の出力電圧から、同時に8ビットの情報を読みとった。
【0092】(実施例11)ガラス基板上に、図19(b)に示すような基本構成のメモリ素子で集積メモリを作製した。素子配列は、一段当たり、16×16素子が3段あるものを1ブロックとし、合計8ブロックとした。ここで、第1段と第3段は、メモリ素子で、第2段はダミ−素子である。1ブロック当たり、256×3個の素子は、図5の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、また磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(3)としている。512個のメモリ素子の磁気抵抗変化率が60%とし、また256個のダミ−素子は、磁性体2の素子幅を他の素子よりも大きくすることで、磁気抵抗変化率を1%以下に押さえている。なお、ワ−ド線およびビット線などには全てCuを用いた。
【0093】ワ−ド線とビット線の合成磁界により、各ブロック毎に1素子ずつに同時書き込みを行い、8ビット信号を記録した。各ブロックで、第1段に記録したメモリ情報は、ビット線1から2つのワ−ド線(1および2)に電流を流し、同一ビット線上にある第1段の素子と第2段のダミ−素子に生じた電圧を、コンパレ−タにより比較し、それぞれのビット情報を読みとった。また、第3段に記録したメモリ情報は、2つのビット線(2および3)からワ−ド線2に電流を流し、同一ワ−ド線上にある第3段の素子と第2段のダミ−素子に生じた電圧をコンパレ−タにより比較し、それぞれのビット情報を読みとった。これらの読みとり動作を8ブロック毎に行い8ビット情報を同時に読みとった。
【0094】(実施例12)CMOS基板上に、図21に示すような基本構成の集積メモリを作製した。図で、素子は、図15(a)に示す基本メモリが3つ、直列に接続された1列の構成のみ示している。この直列に接続された列を、合計3列とする3×3配列を1ブロックとし、合計8ブロックから成る集積メモリを用いて8ビットの記録と読み出しを行った。ここで、1ブロック当たり、9個の素子には、図2(a)の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、また磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(3)とし、磁気抵抗変化率が70%のものを用いた。また、ワ−ド線およびビット線などには全てCuを用いた。
【0095】ビット情報に基づく、ワ−ド線とビット線の合成磁界により、8つのブロックの、8素子の磁性体3を磁化反転し、8ビット信号を同時に記録した。次に、CMOSで作製されたFETのゲ−トをそれぞれのブロックに付き1列ずつONし、センス電流を流し、各列の基準電圧を検知した後、ワ−ド線、ビット線が直交したれぞれの素子に関して合成磁界をかけ、電圧の変化をしらべることで、1ブロック当たり1ビット、合計8ビットの情報を同時に読みとった。読みとり動作終了後、バッファメモリの読み出し信号に基づき、読み出し時に、磁化反転が行われた素子に対して、再び反転磁界を印可し、再書き込みを行った。
【0096】(実施例13)図31に示すような、面内抵抗型磁気抵抗素子を用いたヨ−ク型磁気ヘッドを作製した。素子は、図2(a)を基本構成としており、図31R>1中の矢印で示すように、軟磁性体の磁化容易軸は形状異方性により、磁化固定体による磁化固定方向に対して90度の向きにしている。素子配置は、下部フロントヨ−クと下部バックヨ−クの間にギャップを介して挟まれた位置である。またバックヨ−クは、フロントヨ−クに比べ広い面積とすることで、磁気的な回路抵抗を下げている。
【0097】ヨ−クにはFeTaNを用いており、素子には、図2(a)の構成で、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1に接続された、磁化固定体1をFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)の構成とし、また磁性体3に接続された軟磁性体をNiFe(3)とし、磁気抵抗変化率が70%のものを用いた。
【0098】このような磁気ヘッドを用いて、トラック密度が90kTPI(tracks per inch),線記録密度は550kBPI(bits per inch)で記録されたHDD記録媒体をデータ転送速度211Mビット/秒で再生実験を行った。ヘッドの浮上量は10nmとした。へッドのビット誤り率は1×10-8であった。
【0099】またこの磁気ヘッドのギャップを200nmとし、MEテ−プでの再生を行ったところ、従来のMIGヘッドに比較し40dB高い出力を得た。
【0100】(実施例14)ステンレス基板上に、図26R>6(b)に示す構成を持つ磁気抵抗素子で、磁性体1側を機械的に固定した片持ち梁構造とした加速度センサ−を作製した。磁性体2近傍では、基板をくびれ形状とすることで、可動できる自由度を高めている。
【0101】素子には、磁性体1、磁性体2、磁性体3をすべてFe3O4とし、磁性体1および磁性体3に接続された、磁化固定体はFe3O4側から、CoFe(3)/ PtMn(30)(単位はnm)とした。また、このような加速度センサ−を用いて、1Gでの加速度試験を行ったところ、従来のピエゾ型加速度センサ−に比較して20dB高い出力を得た。
【0102】
【発明の効果】本発明の磁気抵抗素子を用いることで、従来のTMR素子と同等以上の磁気抵抗効果を得ることができる。このため、従来の情報通信端末などに使用される光磁気ディスク、ハ−ドディスク、デジタルデ−タストリ−マ(DDS)、デジタルVTR等の磁気記録装置の再生ヘッド、またシリンダ−や、自動車などの回転速度検出用の磁気センサ−、磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)、応力変化、加速度変化などを検知する応力または加速度センサ−あるいは熱センサ−や化学反応センサ−等の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基本構成例1−1を示す図
【図2】基本構成例1−2を示す図
【図3】素子形成方法を示す図
【図4】素子形成方法を示す図
【図5】基本構成例2−1を示す図
【図6】基本構成例2−2を示す図
【図7】基本構成例2−3を示す図
【図8】基本構成例2−4を示す図
【図9】基本構成例2−5を示す図
【図10】基本構成例3を示す図
【図11】磁化結合領域と抵抗変化の基本動作1を示す図
【図12】磁化結合領域と抵抗変化の基本動作2を示す図
【図13】磁化結合領域と抵抗変化の基本動作3を示す図
【図14】ランダムアクセスメモリ例を示す図
【図15】メモリセル配置1を示す図
【図16】メモリ構成1を示す図
【図17】メモリ構成2を示す図
【図18】メモリ構成3を示す図
【図19】メモリ構成4を示す図
【図20】メモリ構成5を示す図
【図21】メモリ構成6を示す図
【図22】ヨ−ク型磁気ヘッド1を示す図
【図23】ヨ−ク型磁気ヘッド2を示す図
【図24】ヨ−ク型磁気ヘッド3を示す図
【図25】シ−ルド型磁気ヘッドを示す図
【図26】応力センサ−1を示す図
【図27】基本構成例1−3を示す図
【図28】基本構成例1−4を示す図
【図29】基本構成例1−5を示す図
【図30】基本構成例2−6を示す図
【図31】ヨ−ク型磁気ヘッド4を示す図
【図32】応力センサ−2を示す図
【符号の説明】
1 磁性体
2 磁性体
3 磁性体
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1種からなる磁性体中に、磁化方向が略揃った磁化領域Aと磁化方向が略揃った磁化領域Bと、前記磁化領域Aと前記磁化領域Bに挟まれた磁化接合領域Mがあり、前記磁化領域Aの少なくとも一部、または前記磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁化接合領域Mまたは前記磁化領域Aまたは前記磁化領域Bの磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子。
【請求項2】 磁化領域Aおよび磁化領域Bの各平均磁化方向が互いに略反平行または略平行で、電気抵抗の変化が、主として磁化接合領域Mの厚み変化による請求項1記載の磁気抵抗素子。
【請求項3】 外部からの磁気的エネルギ−がないとき、磁化接合領域Mの厚みdが0nm≦d≦200nmなる範囲である請求項2記載の磁気抵抗素子。
【請求項4】 電気抵抗の変化が、主として磁化領域Aおよび磁化領域Bの磁化相対角の変化による請求項1記載の磁気抵抗素子。
【請求項5】 磁化領域Aと磁化領域Bの磁化方向が略反平行あるとき磁化接合領域Mの厚みをdapとすると0≦dap≦200nmなる関係を持つ請求項4記載の磁気抵抗素子。
【請求項6】 磁化領域A及び磁化領域Bが互いに略反平行であるとき、磁化接合領域Mの実効磁化をMm、体積をVm、また前記磁化領域Aの実効磁化をMa、体積をVa、また前記磁化領域Bの実効磁化をMb、体積をVbとすると、Mm×Vm<Ma×Va、Mb×Vbなる関係を持つ請求項1〜5のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項7】 磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体から選ばれた磁化固定体と磁気的に結合すること、または形状異方性エネルギ−を用いることで、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項8】 磁化接合領域Mの少なくとも一部、磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部から選ばれた少なくとも一つの領域が、軟磁性体と磁気的に結合した請求項1〜7のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項9】 磁化領域Aまたは磁化領域Bを形成する磁性材料のうち少なくとも一方が、高スピン分極材料である請求項1〜8のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項10】 少なくとも一組の磁化領域A、磁化領域Bおよび磁化接合領域Mが同一の強磁性体よりなり、且つ前記強磁性体が高スピン分極材料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項11】 磁性体2が、磁性体1と磁性体3に挟まれた一対の構成を少なくとも一組持ち、前記磁性体2が、磁性体1および磁性体3に対して、形状的または磁気的に、くびれ部を形成し、前記磁性体1の少なくとも一部、または前記磁性体3の少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁性体1と前記磁性体2および前記磁性体3の磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子。
【請求項12】 磁性体1と磁性体3が、くびれ部を構成する磁性体2および絶縁体を介して接し、前記絶縁体が前記磁性体2の側面部を被覆する構造を持つ請求項11記載の磁気抵抗素子。
【請求項13】 磁性体2の長さが0.5nm以上、2000nm以下、また磁性体2の幅の最短長が1nm以上100nm以下である請求項11または12記載の磁気抵抗素子。
【請求項14】 磁性体1の磁化をM1、体積をV1、また磁性体2の磁化をM2、体積をV2、また磁性体3の磁化をM3、体積をV3とすると、M2×V2<M1×V1、M3×V3なる関係を持つ請求項11〜13のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項15】 磁性体1の少なくとも一部、または磁性体3の少なくとも一部のうち少なくとも一方が、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体から選ばれた磁化固定体と磁気的に結合すること、または形状異方性エネルギ−を用いることで、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定されることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項16】 磁性体1の少なくとも一部、磁性体2の少なくとも一部、または磁性体3の少なくとも一部から選ばれた少なくとも一つの磁性体が、軟磁性体と磁気的に結合した請求項11〜15のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項17】 磁性体1または磁性体3を形成する磁性材料のうち少なくとも一方が、高スピン分極材料である請求項11〜16のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項18】 磁性体1、磁性体2及び磁性体3が同一の強磁性体よりなり、且つ前記強磁性体が高スピン分極材料であることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項19】 請求項1〜18のいずれかに記載の磁性体の少なくとも一部が、マグネタイトである磁気抵抗素子。
【請求項20】 磁性体1が磁化領域Aの少なくとも一部、または磁性体3が磁化領域Bの少なくとも一部であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項21】 外部磁界の変化を、請求項1〜20のいずれかに記載の磁気抵抗素子の抵抗変化として検出する磁気センサ−。
【請求項22】 請求項1〜20のいずれかに記載の磁気抵抗素子に加わる応力の変化を抵抗変化として検出する応力センサ−
【請求項23】 磁気情報の変化を、請求項1〜20のいずれかに記載の磁気抵抗素子に含まれる磁化変化が容易な磁性体に記録し、この記録情報を磁気抵抗素子の抵抗変化として検出する磁気メモリ。
【請求項1】 少なくとも1種からなる磁性体中に、磁化方向が略揃った磁化領域Aと磁化方向が略揃った磁化領域Bと、前記磁化領域Aと前記磁化領域Bに挟まれた磁化接合領域Mがあり、前記磁化領域Aの少なくとも一部、または前記磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁化接合領域Mまたは前記磁化領域Aまたは前記磁化領域Bの磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子。
【請求項2】 磁化領域Aおよび磁化領域Bの各平均磁化方向が互いに略反平行または略平行で、電気抵抗の変化が、主として磁化接合領域Mの厚み変化による請求項1記載の磁気抵抗素子。
【請求項3】 外部からの磁気的エネルギ−がないとき、磁化接合領域Mの厚みdが0nm≦d≦200nmなる範囲である請求項2記載の磁気抵抗素子。
【請求項4】 電気抵抗の変化が、主として磁化領域Aおよび磁化領域Bの磁化相対角の変化による請求項1記載の磁気抵抗素子。
【請求項5】 磁化領域Aと磁化領域Bの磁化方向が略反平行あるとき磁化接合領域Mの厚みをdapとすると0≦dap≦200nmなる関係を持つ請求項4記載の磁気抵抗素子。
【請求項6】 磁化領域A及び磁化領域Bが互いに略反平行であるとき、磁化接合領域Mの実効磁化をMm、体積をVm、また前記磁化領域Aの実効磁化をMa、体積をVa、また前記磁化領域Bの実効磁化をMb、体積をVbとすると、Mm×Vm<Ma×Va、Mb×Vbなる関係を持つ請求項1〜5のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項7】 磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部のうち少なくとも一方が、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体から選ばれた磁化固定体と磁気的に結合すること、または形状異方性エネルギ−を用いることで、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項8】 磁化接合領域Mの少なくとも一部、磁化領域Aの少なくとも一部、または磁化領域Bの少なくとも一部から選ばれた少なくとも一つの領域が、軟磁性体と磁気的に結合した請求項1〜7のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項9】 磁化領域Aまたは磁化領域Bを形成する磁性材料のうち少なくとも一方が、高スピン分極材料である請求項1〜8のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項10】 少なくとも一組の磁化領域A、磁化領域Bおよび磁化接合領域Mが同一の強磁性体よりなり、且つ前記強磁性体が高スピン分極材料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項11】 磁性体2が、磁性体1と磁性体3に挟まれた一対の構成を少なくとも一組持ち、前記磁性体2が、磁性体1および磁性体3に対して、形状的または磁気的に、くびれ部を形成し、前記磁性体1の少なくとも一部、または前記磁性体3の少なくとも一部のうち少なくとも一方が、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定され、前記磁性体1と前記磁性体2および前記磁性体3の磁化状態の変化を、電気抵抗の変化として検知する磁気抵抗素子。
【請求項12】 磁性体1と磁性体3が、くびれ部を構成する磁性体2および絶縁体を介して接し、前記絶縁体が前記磁性体2の側面部を被覆する構造を持つ請求項11記載の磁気抵抗素子。
【請求項13】 磁性体2の長さが0.5nm以上、2000nm以下、また磁性体2の幅の最短長が1nm以上100nm以下である請求項11または12記載の磁気抵抗素子。
【請求項14】 磁性体1の磁化をM1、体積をV1、また磁性体2の磁化をM2、体積をV2、また磁性体3の磁化をM3、体積をV3とすると、M2×V2<M1×V1、M3×V3なる関係を持つ請求項11〜13のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項15】 磁性体1の少なくとも一部、または磁性体3の少なくとも一部のうち少なくとも一方が、反強磁性体、第2の強磁性体を介した反強磁性体、積層フェリ磁性体、積層フェリ磁性体を介した反強磁性体、または高保持力磁性体から選ばれた磁化固定体と磁気的に結合すること、または形状異方性エネルギ−を用いることで、外部から導入された磁気的エネルギ−に対し、磁気的に略固定されることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項16】 磁性体1の少なくとも一部、磁性体2の少なくとも一部、または磁性体3の少なくとも一部から選ばれた少なくとも一つの磁性体が、軟磁性体と磁気的に結合した請求項11〜15のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項17】 磁性体1または磁性体3を形成する磁性材料のうち少なくとも一方が、高スピン分極材料である請求項11〜16のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項18】 磁性体1、磁性体2及び磁性体3が同一の強磁性体よりなり、且つ前記強磁性体が高スピン分極材料であることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項19】 請求項1〜18のいずれかに記載の磁性体の少なくとも一部が、マグネタイトである磁気抵抗素子。
【請求項20】 磁性体1が磁化領域Aの少なくとも一部、または磁性体3が磁化領域Bの少なくとも一部であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の磁気抵抗素子。
【請求項21】 外部磁界の変化を、請求項1〜20のいずれかに記載の磁気抵抗素子の抵抗変化として検出する磁気センサ−。
【請求項22】 請求項1〜20のいずれかに記載の磁気抵抗素子に加わる応力の変化を抵抗変化として検出する応力センサ−
【請求項23】 磁気情報の変化を、請求項1〜20のいずれかに記載の磁気抵抗素子に含まれる磁化変化が容易な磁性体に記録し、この記録情報を磁気抵抗素子の抵抗変化として検出する磁気メモリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図8】
【図32】
【図4】
【図6】
【図7】
【図21】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図22】
【図26】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図23】
【図19】
【図20】
【図24】
【図25】
【図30】
【図27】
【図28】
【図29】
【図31】
【図2】
【図3】
【図5】
【図8】
【図32】
【図4】
【図6】
【図7】
【図21】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図22】
【図26】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図23】
【図19】
【図20】
【図24】
【図25】
【図30】
【図27】
【図28】
【図29】
【図31】
【公開番号】特開2002−270922(P2002−270922A)
【公開日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−69949(P2001−69949)
【出願日】平成13年3月13日(2001.3.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年3月13日(2001.3.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]