磁気記録ヘッド、磁気記録方法、磁気記録装置および磁気メモリ
【課題】アシスト用のマイクロ波磁場を適切な条件で印加することにより、記録磁場を低減できる磁気記録ヘッドを提供する。
【解決手段】磁気記録媒体に記録磁場を印加する記録磁極と、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録ヘッド。
【解決手段】磁気記録媒体に記録磁場を印加する記録磁極と、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッド、磁気記録方法、磁気記録装置、および磁気メモリ(MRAM)に関する。
【背景技術】
【0002】
読み出し用磁気ヘッドとして巨大磁気抵抗効果(GMR効果)を利用したGMRヘッドの登場以来、磁気記録の記録密度は、年率100%で向上している。GMR素子は、強磁性層/非磁性層/強磁性層のサンドイッチ構造の積層膜を含み、約10%の磁気抵抗効果を示し、200Gbit/inch2程度の記録密度まで対応可能であろうと考えられている。
【0003】
より高密度な磁気記録に対応するため、トンネル磁気抵抗効果(TMR効果)を利用したTMR素子の開発が進められている。TMR素子は強磁性層/絶縁体/強磁性層の積層膜を含み、最大で50%程度のMR比が得られており、300Gbit/inch2の記録密度に対応できると考えられている。
【0004】
さらに、500Gbpsi以上の高密度記録に対応可能な読み出し用磁気ヘッドとして、垂直通電型のGMR素子(CPP−GMR素子)、スピンバルブトランジスタ、共鳴磁気抵抗効果素子などの新しい素子の開発が進められている。
【0005】
一方、500Gbpsi以上の磁気記録ではビットサイズが50nm以下になるので、微小磁化の熱ゆらぎを低減するため媒体の保磁力が極めて大きくなる。そのため、書き込み時には磁場と熱を同時に供給する熱アシストなどのアシスト法が必要になると考えられている。熱アシスト法においてはGHzの高速性と数十nmの局所性を併せ持つ大きなパワー密度の熱照射が必要になるため、レーザー熱アシストなどの方法が提案されている。
【0006】
記録書き込みの問題は固体磁気メモリ(MRAM)においても存在する。従来のMRAMにおける2本の電流線による書き込み法では、高集積化に伴い書き込み磁場(電流)の増大が指摘されており、新規な書き込み法の開発が必要になっている。
【0007】
本発明者らはすでに、アシスト用のマイクロ波磁場を印加するスピン波発振器を備えた磁気記録ヘッドおよび磁気メモリを提案している(特許文献1)。
【0008】
しかし、従来はアシスト用のマイクロ波磁場の適切な条件を考慮しておらず、磁気記録ヘッドの記録磁場や磁気メモリの書き込み電流を低減できる余地があることがわかってきた。
【特許文献1】特開2005−285242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アシスト用のマイクロ波磁場を適切な条件で印加することにより、磁気記録ヘッドの記録磁場や磁気メモリの書き込み電流を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、磁気記録媒体に記録磁場を印加する記録磁極と、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録ヘッドが提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、磁気記録媒体に記録磁極から記録磁場を印加して磁気記録を行う方法において、前記記録磁極の近傍に、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源を設け、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応する周波数のマイクロ波磁場を印加することを特徴とする磁気記録方法が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体の1ビットの領域に記録磁場を印加する記録磁極と、前記磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加するマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の1ビットの磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、磁化フリー層、トンネル絶縁層および磁化固定層を有する磁性トンネル接合素子を含むメモリセルと、前記磁性トンネル接合素子に対してパルス磁場を印加する電流ラインと、前記磁性トンネル接合素子にマイクロ波磁場を印加して前記磁化フリー層の磁化反転をアシストするマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から前記磁化フリー層に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記パルス磁場が印加された前記磁化フリー層の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気メモリが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アシスト用のマイクロ波磁場を適切な条件で印加することにより、磁気記録ヘッドの記録磁場や磁気メモリの書き込み電流を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置の断面図を示す。
【0017】
磁気記録媒体10は基板11上に磁気記録層12を成膜した構造を有する。なお、下地層や保護層は省略している。磁気記録層12はたとえば垂直磁気異方性を有する材料からなり、磁気記録層12の各ビット15に相当する領域は上向きまたは下向きに磁化されている。
【0018】
磁気記録媒体10上には磁気ヘッド20が配置される。この磁気ヘッド20は再生ヘッド30と記録ヘッド40とを含む。
【0019】
再生ヘッド30は、GMR素子31とその前後に設けられた磁気シールド32、33を含む。GMR素子31は、磁化フリー層、スペーサ層および磁化固定層を含む。
【0020】
記録ヘッド40は、記録磁極41と、記録磁極41を励磁するコイル42を含む。図1では、再生ヘッド30の磁気シールド33がリターン磁極を兼ねているが、磁気シールド33とは独立してリターン磁極を形成してもよい。さらに、図1の記録ヘッド40は、磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源として、マイクロ波電流配線51を含む。マイクロ波電流配線51はマイクロ波発振器52に接続されている。
【0021】
本発明者らは、記録磁極41から磁気記録層12の1つのビット15に記録磁場が印加されたとき、そのビット15の磁化の共鳴周波数が変わることを見出した。すなわち、磁気記録層12の1つのビット15の磁化を反転させるために、そのビット15の磁化に対して反平行に記録磁場が印加されたとき、記録磁場ゼロの場合と比較して、磁化の共鳴周波数が低下することを見出した。
【0022】
一方、マイクロ波発振器52からマイクロ波電流配線51にマイクロ波電流を流すと、図1に破線で示すように、磁気記録媒体10に対して垂直方向成分をもつマイクロ波磁場を発生させることができる。電流磁場の空間分布は、電流の周りの透磁率の分布に依存し、透磁率の大きい部分に磁束が集中することが知られている。
【0023】
本発明においては、マイクロ波電流配線51から磁気記録媒体10に印加されるマイクロ波磁場の周波数を、記録磁場が印加されたことによって低下する磁気記録層12の磁化の共鳴周波数と一致させるかその近傍の値に設定する。この結果、記録磁場が印加された記録磁極41直下のビット15の磁化はマイクロ波磁場と共鳴状態にあるが、それ以外の他のビット15の磁化はマイクロ波磁場と非共鳴状態にある。磁化が共鳴状態にあるビット15の透磁率は、磁化が非共鳴状態のビットの透磁率に比較して大きいので、図1に示したように記録磁極41直下のビット15に磁束が集中する。一方、磁化が非共鳴状態にあるビット15に磁束が集中することはない。この結果、記録磁極41直下のビット15のみを選択的かつ容易に反転させることができる。
【0024】
上述したように、マイクロ波電流配線51から磁気記録媒体10に印加されるマイクロ波磁場の周波数を適切に設定することによって、記録磁極41直下のビット15のみを選択的に反転させることができ、それ以外の他のビット15を反転させることがないので、マイクロ波磁場発生源(図1ではマイクロ波電流配線51)の大きさ(面積)が、磁気記録層12の1つのビット15の大きさ(面積)より大きくてもよいし、マイクロ波磁場発生源(図1ではマイクロ波電流配線51)の位置が記録磁極41の位置と一致していなくてもよい。
【0025】
図2に示すように、記録磁極41に対して複数(この場合2つ)のマイクロ波磁場発生源(マイクロ波電流配線51)を設けてもよい。
【0026】
したがって、マイクロ波磁場発生源の大きさ、位置、数に対する制限が少ないため、実施形態に係る磁気記録ヘッドは設計および製造の自由度(マージン)が大きく、実用上有利である。たとえば、マイクロ波電流配線51の面積が大きくてもよいということは、通電する電流値を小さくしてもよいことを意味し、マイクロ波発振器52の性能に対する要求を低減できる。
【0027】
マイクロ波磁場の印加による磁気記録へのアシスト作用は、次の2つの原理に基づいて発生すると考えられる。
【0028】
第1の原理は、マイクロ波磁場の印加により、磁化の磁気共鳴を起こして反転することによるものである。第2の原理は、マイクロ波磁場の印加により、磁化が磁気共鳴吸収を起こし、磁気記録層が加熱されて磁化が反転することによるものである。
【0029】
前者は減衰定数αの小さな磁性材料で形成された磁気記録層において主要な原理となる。後者は減衰定数αの大きな磁性材料で形成された磁気記録層において主要な原理となる。
【0030】
図3を参照して、第1の原理によるマイクロ波磁場のアシスト作用を説明する。磁気記録層が大きな異方性磁場Hkを有することを想定し、磁化Mと逆向きに記録磁場Hextを印加した場合を考える。HextはHkより小さいのでこの状態では磁化反転は生じない。しかし、記録磁場を印加すると同時に、(1)式で表される共鳴周波数f0に対応する周波数のマイクロ波磁場hを印加すると、磁化Mは矢印で示すように歳差運動を始める。(1)式のγは磁気回転比である。
【0031】
f0=(γ/2π)(Hk−Hext) (1)
マイクロ波磁場hが十分大きく、
(γ/2π)h>αf0 (2)
で表される(2)式の関係が満たされれば、図3に示すように歳差運動の振幅は時間とともに増大し、磁化Mは反転する。
【0032】
たとえば、FePtからなる磁気記録層ではHk〜2×104Oeであり、記録磁場ゼロのときの共鳴周波数は約50GHzである。記録磁極からHext=1×104Oeの記録磁場を印加したとき、記録磁極直下のビットの共鳴周波数は約25GHzに低下する。f0=25GHz,α=0.05の場合、(2)式から反転に必要なマイクロ波磁場はh>450Oeとなる。数値シミュレーションによれば、1ns以下の時間で磁化を反転させるには、1000Oe程度の磁場が必要なことが予測されている。図1のマイクロ波電流配線51と記録すべきビットとの距離を10nmとすると、そのビットに1000Oeのマイクロ波磁場を発生させるために必要なマイクロ波電流は1mA程度となる。第1の原理に基づいた磁化反転は、磁化の歳差運動に伴うスピン系のエネルギーが格子系に緩和する程度の時間内で生じるため、格子系の温度(媒体ビットの温度)はほとんど上昇しない。
【0033】
磁気記録媒体の減衰定数αが大きい場合には(2)式から明らかなように共鳴反転に必要なマイクロ波磁場hが増大し、たとえばα=0.2では5000Oeを大きく超えるマイクロ波磁場が必要になることが予測される。
【0034】
しかし、減衰定数αが大きい磁気記録媒体に関しても上述した第2の原理、すなわちマイクロ波磁場の印加による共鳴吸収加熱を利用した磁化反転が可能である。磁気記録媒体に吸収されるマイクロ波パワーは媒体の帯磁率の虚数部χ”に依存し、マイクロ波磁場をhとすると、
P=(1/2)χ”h2ω (3)
と表される。χ”(ω)は周波数に強く依存し、磁気記録媒体の共鳴周波数から離れた周波数では1以下と小さいが、共鳴周波数またはその近傍では10〜100程度に増大する。磁気記録媒体の加熱効率は吸収パワーに依存するので、媒体の共鳴周波数近くの周波数で加熱することが重要である。
【0035】
垂直磁化媒体では、共鳴周波数f0は(1)式で表される。上述したように、書き換えを行う場合、磁気記録層の磁化と逆向きに記録磁場が印加されるので、共鳴周波数はHkとHextの差に比例して低下する。
【0036】
上記の例では図1の記録磁極直下のビットの共鳴周波数は、記録磁場がゼロである他のビットの共鳴周波数(50GHz)に比較して、大幅に低下し25GHzとなっている。すなわち、30GHz以下のマイクロ波磁場により記録磁極直下のビットのみが選択的に加熱されるが、他のビットでは共鳴吸収が起こらずほとんど加熱されない。
【0037】
図4に、第2の原理による書き込みのプロセスを示す。
マイクロ波磁場発生源(マイクロ波電流配線51)が発生するマイクロ波磁場のエネルギーを吸収することにより、磁化は歳差運動を開始する。しかし、減衰定数αが大きいと、磁化反転は生じない(図4a)。
【0038】
歳差運動に伴う磁気的エネルギーは速やかに格子系に流れ込み磁性材料の温度を上昇させる。たとえば、α=0.2、f0=25GHzの場合の格子系への緩和時間は僅かに0.2nsである。マイクロ波磁場を4000〜5000Oeとすると、毎秒1018erg/s程度のエネルギーが格子系へ供給される。FePt層の熱容量は約3×107erg/Kcm3なので、マイクロ波磁気エネルギーの吸収により1nsの間に、媒体温度を数十K〜100K程度上昇させることができる。媒体温度が上昇すると通常のレーザーアシストと同様にKu1が減少し、記録ヘッドの磁場により磁化反転すなわち書き込みがなされる(図4b)。
【0039】
記録磁極が次のビットに進むと、反転したビットにはマイクロ波磁場のエネルギーが供給されなくなり、熱伝導および輻射により温度が低下し、書き込みが完了する(図4c)。
【0040】
上述した第1および第2の原理は典型的な例を示したものであり、多くの現実の系では第1および第2の原理が共存した状態で磁化反転が生じる。以上の説明から明らかなように、実施形態に係る磁気記録ヘッドでは、マイクロ波磁場によるアシスト作用がない場合に比較して、数分の1の記録磁場により磁気記録が可能になる。現実の磁気記録媒体の共鳴スペクトルは種々の原因で幅を持っているので、アシスト用マイクロ波磁場のスペクトルも同程度の幅を持っていることが好ましい。
【0041】
図1および図2の磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置では、マイクロ波磁場発生源としてマイクロ波電流配線51を用いているが、これに限定されない。
【0042】
図5の磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置では、マイクロ波電流配線51の代わりに、マイクロ波磁場発生源として微小な磁性発振素子55を設けている。磁性発振素子55は、磁化フリー層、非磁性層および磁化固定層を有する。磁性発振素子55には直流電源56が接続されている。磁性発振素子55は、膜面垂直方向に電流を通電することにより、たとえば磁化フリー層の磁化が歳差運動を起こしてマイクロ波磁場が発生する。この場合、磁性発振素子55から磁気記録媒体10に印加されるマイクロ波磁場の周波数を、記録磁場が印加されたことによって低下する磁気記録層12の磁化の共鳴周波数と一致させるかその近傍の値に設定する。
【0043】
以上で説明したマイクロ波磁場によるアシスト作用は、磁気記録に限らず、固体磁気メモリ(MRAM)の書き換えにも適用することができる。
【0044】
図6に、本発明の一実施形態に係る固体磁気メモリ(MRAM)の断面図を示す。図6において、下部電極101と上部電極102との間に、メモリセルを構成する磁性トンネル接合素子110が形成されている。磁性トンネル接合素子110は、磁化固定層111、トンネル絶縁膜112、および磁化フリー層113が積層された構造を有する。磁性トンネル接合素子110の上部には、マイクロ波電流配線120が形成されている。また、磁性トンネル接合素子110の近傍に、書き込みのためにパルス磁場を発生する電流ライン150が設けられている。磁性トンネル接合素子110の選択は、図示しないMOSトランジスタによりなされる。マイクロ波電流配線120からのマイクロ波磁場の周波数は、電流ライン150から印加されたパルス磁場により変化する磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の共鳴周波数またはその近傍の値に設定される。
【0045】
図6のMRAMでは、マイクロ波電流配線120とパルス磁場発生用の電流ライン150とを組み合わせることにより、電流ライン150に流す電流を従来の数分の1に設定しても、磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化を反転させることができる。
【0046】
MRAMと磁気記録とで最も異なる点は、磁気記録媒体と比較して、磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の異方性エネルギーが2桁程度小さく、減衰定数αも0.01〜0.02程度と小さいことである。したがって、(1)式で与えられる磁化フリー層の共鳴周波数f0を数GHz程度に低下させることができ、(2)式の反転条件を満たすマイクロ波磁場hを僅か数Oeにすることができる。数値シミュレーションによれば、数十Oeのマイクロ波磁場の下で数nsの時間内での磁化反転が可能である。この場合、マイクロ波電流配線120と磁化フリー層113との距離が10nmであるとすると、磁化反転させるのに必要なマイクロ波電流は数百μAとなる。すなわち、図6のマイクロ波電流配線120に数百μAのマイクロ波電流を流し、パルス磁場発生用の電流ライン150により数百Oeの磁場を印加することにより、数nsの時間内で磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化を反転させることができる。マイクロ波電流配線120によるマイクロ波磁場は、電流ライン150からのパルス磁場により共鳴周波数が低下した磁化フリー層113に対してのみ共鳴条件を満たすように設定されており、その磁化フリー層113にのみ作用する。このため、通常のMRAMと異なり、パルス磁場発生用の電流ライン150を1セル当り1本設けるだけで十分である。
【0047】
図7に、本発明の他の実施形態に係る固体磁気メモリ(MRAM)の断面図を示す。図7では、図6のマイクロ波電流配線120の代わりに、磁性発振素子130が設けられている。この磁性発振素子130は、磁性トンネル接合素子110の上部電極102上に積層された、磁化フリー層131、非磁性中間層132、磁化固定層133を含む。このMRAMでは、磁性発振素子130に膜面垂直方向に電流を通電することにより、たとえば磁化フリー層131の磁化が歳差運動を起こしてマイクロ波磁場が発生する。磁性発振素子130からのマイクロ波磁場の周波数は、電流ライン150から印加されるパルス磁場により変化する磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の共鳴周波数またはその近傍の値に設定される。
【0048】
図7のMRAMでも、磁性発振素子130とパルス磁場発生用の電流ライン150とを組み合わせることにより、電流ライン150に流す電流を従来の数分の1に設定しても、磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化を反転させることができる。
【実施例】
【0049】
実施例1
磁気記録層(FePt薄膜)に記録磁極から記録磁場を印加したときに磁化の共鳴周波数がどのように変化するかを調べるために、以下のようなモデル実験を行った。
【0050】
図8に本実施例において作製した導波路(コプレナーガイド)200の断面図を示す。サファイア基板201上に、厚さ100nmのFePt膜202、厚さ500nmのCu膜203をスパッタリングにより成膜した。光リソグラフィーにより、中央に位置するラインの幅が10μmとなり、その両側にグランドプレーン204が配置されるように加工した。
【0051】
FePt膜202は、容易軸が膜面垂直方向に向いた垂直磁気異方性を示し、飽和磁化Msが800emu/cm3、異方性磁場Hkが18kOeであった。この導波路200の一端にマイクロ波発振器を接続し、他端にプリアンプを介してスペクトラムアナライザーを接続した。そして、FePt膜202に記録磁極からの記録磁場に相当する外部磁場を印加し、磁気共鳴吸収を測定した。
【0052】
図9に、外部磁場H=0およびH=10kOeの下での吸収スペクトルを示す。このとき外部磁場はFePt膜202の磁化と逆向きに印加した。図9から、H=0での共鳴周波数は約50GHzであり、H=10kOeでの共鳴周波数は約22GHzであることがわかる。共鳴線幅から求めた減衰定数αは0.01である。
【0053】
実施例2
磁気記録層(FePt薄膜)にアシスト用のマイクロ波磁場を印加しながら記録磁極から記録磁場を印加したときの磁化反転を調べるために、以下のようなモデル実験を行った。
【0054】
図10(a)に本実施例において作製した導波路(コプレナーガイド)300の平面図、図10(b)に断面図を示す。
【0055】
光リソグラフィーおよび電子線リソグラフィーを用いて図10(a)および(b)に示す導波路(コプレナーガイド)300を作製した。この導波路300は、その一部が長さL(約1μm)にわたって幅W(200nm)の細線となっている。図10(b)に示すように、細線部分は厚さt1(100nm)のCu膜301と厚さt2(10nm)のFePt膜302との積層膜である。細線部分以外の他の部分は厚さt1(100nm)のCu膜301からなる単層膜である。
【0056】
作製した試料を市販の磁気ヘッドを搭載したスピンスタンドに設置した。導波路300の一端にマイクロ波発振器に接続し、他端に50Ωの無反射終端を接続した。記録磁極はサイズが100×60nm2である。記録磁極からの記録磁場を10kOeに設定した。読出しヘッドはサイズが80×60nm2のGMRヘッドである。
【0057】
導波路300に接続したマイクロ波発振器の出力(マイクロ波電流値)を所定値に設定してアシスト用のマイクロ波磁場を印加し、記録磁極から(1010101010)という書込み信号に対応する記録磁場を印加して、FePt膜302に信号を書き込んだ。次に、電流値FePt膜302に書き込まれた信号を、GMRヘッドにより読み出した。このような実験を、マイクロ波電流値を逐次変化させて行った。
【0058】
表1に、マイクロ波電流値、書込み信号、および読出し信号を示す。表1に示されるように、マイクロ波電流が0.6mAを超えると、書込み信号と読出し信号とが一致していることから、記録磁極からの信号が正しく書き込まれたことがわかる。
【表1】
【0059】
実施例3
図7に示すMRAMを作製し、磁性発振素子により磁性トンネル接合素子のフリー層の磁化を反転させる実験を行った。
【0060】
光リソグラフィーおよび電子線リソグラフィーを用いて図7に示すMRAMを作製した。
【0061】
メモリセルを構成する磁性トンネル接合素子110は、IrMn/CoFeB/Ru/CoFeの積層膜からなる磁化固定層111、厚さ1nmのMgOからなるトンネル絶縁膜112、厚さ1nmのCoFeBからなる磁化フリー層113を含む。
【0062】
磁性発振素子130については、磁化フリー層131および磁化固定層133に磁性トンネル接合素子110に用いたのと同じ材料を用い、非磁性中間層132に厚さ5nmのCuを用いた。
【0063】
磁性トンネル接合素子110および磁性発振素子130のサイズは、いずれも50×100nm2である。50Oeのパルス磁場の下で、磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化の共鳴周波数は3.5GHzであり、磁性発振素子130に通電したときの磁化フリー層131の磁化の歳差運動による発振周波数も3.5GHzに対応するように設定される。
【0064】
図11に、磁性発振素子130に流す電流を変化させて、磁性トンネル接合素子110の抵抗値の変化を測定した結果を示す。図11に示されるように、電流が6mAを超えると磁性トンネル接合素子110の抵抗が増大している。これは、磁性発振素子130の磁化フリー層131の磁化の歳差運動に伴うマイクロ波磁場が電流とともに増大し、6mAで磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化が反転したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置の断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置の断面図。
【図3】マイクロ波磁場のアシスト作用の第1の原理を説明する図。
【図4】マイクロ波磁場のアシスト作用の第2の原理を説明する図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置の断面図。
【図6】本発明の一実施形態に係るMRAMの断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るMRAMの断面図。
【図8】実施例1で作製した導波路の断面図。
【図9】実施例1の導波路の吸収スペクトルを示す図。
【図10】実施例2で作製した導波路の平面図および断面図。
【図11】実施例3のMRAMの抵抗値の変化を測定した結果を示す図。
【符号の説明】
【0066】
10…磁気記録媒体、11…基板、12…磁気記録層、15…ビット、20…磁気ヘッド、30…再生ヘッド、31…GMR素子、32、33…磁気シールド、40…記録ヘッド、41…記録磁極、42…コイル、51…マイクロ波電流配線、52…マイクロ波発振器、55…磁性発振素子、56…直流電源、101…下部電極、102…上部電極、110…磁性トンネル接合素子、111…磁化固定層、112…トンネル絶縁膜、113…磁化フリー層、120…マイクロ波電流配線、130…磁性発振素子、131…磁化フリー層、132…非磁性中間層、133…磁化固定層、150…電流ライン、200…導波路(コプレナーガイド)、201…サファイア基板、202…FePt膜、203…Cu膜、204…グランドプレーン、300…導波路(コプレナーガイド)、301…Cu膜、302…FePt膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッド、磁気記録方法、磁気記録装置、および磁気メモリ(MRAM)に関する。
【背景技術】
【0002】
読み出し用磁気ヘッドとして巨大磁気抵抗効果(GMR効果)を利用したGMRヘッドの登場以来、磁気記録の記録密度は、年率100%で向上している。GMR素子は、強磁性層/非磁性層/強磁性層のサンドイッチ構造の積層膜を含み、約10%の磁気抵抗効果を示し、200Gbit/inch2程度の記録密度まで対応可能であろうと考えられている。
【0003】
より高密度な磁気記録に対応するため、トンネル磁気抵抗効果(TMR効果)を利用したTMR素子の開発が進められている。TMR素子は強磁性層/絶縁体/強磁性層の積層膜を含み、最大で50%程度のMR比が得られており、300Gbit/inch2の記録密度に対応できると考えられている。
【0004】
さらに、500Gbpsi以上の高密度記録に対応可能な読み出し用磁気ヘッドとして、垂直通電型のGMR素子(CPP−GMR素子)、スピンバルブトランジスタ、共鳴磁気抵抗効果素子などの新しい素子の開発が進められている。
【0005】
一方、500Gbpsi以上の磁気記録ではビットサイズが50nm以下になるので、微小磁化の熱ゆらぎを低減するため媒体の保磁力が極めて大きくなる。そのため、書き込み時には磁場と熱を同時に供給する熱アシストなどのアシスト法が必要になると考えられている。熱アシスト法においてはGHzの高速性と数十nmの局所性を併せ持つ大きなパワー密度の熱照射が必要になるため、レーザー熱アシストなどの方法が提案されている。
【0006】
記録書き込みの問題は固体磁気メモリ(MRAM)においても存在する。従来のMRAMにおける2本の電流線による書き込み法では、高集積化に伴い書き込み磁場(電流)の増大が指摘されており、新規な書き込み法の開発が必要になっている。
【0007】
本発明者らはすでに、アシスト用のマイクロ波磁場を印加するスピン波発振器を備えた磁気記録ヘッドおよび磁気メモリを提案している(特許文献1)。
【0008】
しかし、従来はアシスト用のマイクロ波磁場の適切な条件を考慮しておらず、磁気記録ヘッドの記録磁場や磁気メモリの書き込み電流を低減できる余地があることがわかってきた。
【特許文献1】特開2005−285242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アシスト用のマイクロ波磁場を適切な条件で印加することにより、磁気記録ヘッドの記録磁場や磁気メモリの書き込み電流を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、磁気記録媒体に記録磁場を印加する記録磁極と、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録ヘッドが提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、磁気記録媒体に記録磁極から記録磁場を印加して磁気記録を行う方法において、前記記録磁極の近傍に、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源を設け、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応する周波数のマイクロ波磁場を印加することを特徴とする磁気記録方法が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体の1ビットの領域に記録磁場を印加する記録磁極と、前記磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加するマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の1ビットの磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、磁化フリー層、トンネル絶縁層および磁化固定層を有する磁性トンネル接合素子を含むメモリセルと、前記磁性トンネル接合素子に対してパルス磁場を印加する電流ラインと、前記磁性トンネル接合素子にマイクロ波磁場を印加して前記磁化フリー層の磁化反転をアシストするマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から前記磁化フリー層に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記パルス磁場が印加された前記磁化フリー層の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気メモリが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アシスト用のマイクロ波磁場を適切な条件で印加することにより、磁気記録ヘッドの記録磁場や磁気メモリの書き込み電流を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係る磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置の断面図を示す。
【0017】
磁気記録媒体10は基板11上に磁気記録層12を成膜した構造を有する。なお、下地層や保護層は省略している。磁気記録層12はたとえば垂直磁気異方性を有する材料からなり、磁気記録層12の各ビット15に相当する領域は上向きまたは下向きに磁化されている。
【0018】
磁気記録媒体10上には磁気ヘッド20が配置される。この磁気ヘッド20は再生ヘッド30と記録ヘッド40とを含む。
【0019】
再生ヘッド30は、GMR素子31とその前後に設けられた磁気シールド32、33を含む。GMR素子31は、磁化フリー層、スペーサ層および磁化固定層を含む。
【0020】
記録ヘッド40は、記録磁極41と、記録磁極41を励磁するコイル42を含む。図1では、再生ヘッド30の磁気シールド33がリターン磁極を兼ねているが、磁気シールド33とは独立してリターン磁極を形成してもよい。さらに、図1の記録ヘッド40は、磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源として、マイクロ波電流配線51を含む。マイクロ波電流配線51はマイクロ波発振器52に接続されている。
【0021】
本発明者らは、記録磁極41から磁気記録層12の1つのビット15に記録磁場が印加されたとき、そのビット15の磁化の共鳴周波数が変わることを見出した。すなわち、磁気記録層12の1つのビット15の磁化を反転させるために、そのビット15の磁化に対して反平行に記録磁場が印加されたとき、記録磁場ゼロの場合と比較して、磁化の共鳴周波数が低下することを見出した。
【0022】
一方、マイクロ波発振器52からマイクロ波電流配線51にマイクロ波電流を流すと、図1に破線で示すように、磁気記録媒体10に対して垂直方向成分をもつマイクロ波磁場を発生させることができる。電流磁場の空間分布は、電流の周りの透磁率の分布に依存し、透磁率の大きい部分に磁束が集中することが知られている。
【0023】
本発明においては、マイクロ波電流配線51から磁気記録媒体10に印加されるマイクロ波磁場の周波数を、記録磁場が印加されたことによって低下する磁気記録層12の磁化の共鳴周波数と一致させるかその近傍の値に設定する。この結果、記録磁場が印加された記録磁極41直下のビット15の磁化はマイクロ波磁場と共鳴状態にあるが、それ以外の他のビット15の磁化はマイクロ波磁場と非共鳴状態にある。磁化が共鳴状態にあるビット15の透磁率は、磁化が非共鳴状態のビットの透磁率に比較して大きいので、図1に示したように記録磁極41直下のビット15に磁束が集中する。一方、磁化が非共鳴状態にあるビット15に磁束が集中することはない。この結果、記録磁極41直下のビット15のみを選択的かつ容易に反転させることができる。
【0024】
上述したように、マイクロ波電流配線51から磁気記録媒体10に印加されるマイクロ波磁場の周波数を適切に設定することによって、記録磁極41直下のビット15のみを選択的に反転させることができ、それ以外の他のビット15を反転させることがないので、マイクロ波磁場発生源(図1ではマイクロ波電流配線51)の大きさ(面積)が、磁気記録層12の1つのビット15の大きさ(面積)より大きくてもよいし、マイクロ波磁場発生源(図1ではマイクロ波電流配線51)の位置が記録磁極41の位置と一致していなくてもよい。
【0025】
図2に示すように、記録磁極41に対して複数(この場合2つ)のマイクロ波磁場発生源(マイクロ波電流配線51)を設けてもよい。
【0026】
したがって、マイクロ波磁場発生源の大きさ、位置、数に対する制限が少ないため、実施形態に係る磁気記録ヘッドは設計および製造の自由度(マージン)が大きく、実用上有利である。たとえば、マイクロ波電流配線51の面積が大きくてもよいということは、通電する電流値を小さくしてもよいことを意味し、マイクロ波発振器52の性能に対する要求を低減できる。
【0027】
マイクロ波磁場の印加による磁気記録へのアシスト作用は、次の2つの原理に基づいて発生すると考えられる。
【0028】
第1の原理は、マイクロ波磁場の印加により、磁化の磁気共鳴を起こして反転することによるものである。第2の原理は、マイクロ波磁場の印加により、磁化が磁気共鳴吸収を起こし、磁気記録層が加熱されて磁化が反転することによるものである。
【0029】
前者は減衰定数αの小さな磁性材料で形成された磁気記録層において主要な原理となる。後者は減衰定数αの大きな磁性材料で形成された磁気記録層において主要な原理となる。
【0030】
図3を参照して、第1の原理によるマイクロ波磁場のアシスト作用を説明する。磁気記録層が大きな異方性磁場Hkを有することを想定し、磁化Mと逆向きに記録磁場Hextを印加した場合を考える。HextはHkより小さいのでこの状態では磁化反転は生じない。しかし、記録磁場を印加すると同時に、(1)式で表される共鳴周波数f0に対応する周波数のマイクロ波磁場hを印加すると、磁化Mは矢印で示すように歳差運動を始める。(1)式のγは磁気回転比である。
【0031】
f0=(γ/2π)(Hk−Hext) (1)
マイクロ波磁場hが十分大きく、
(γ/2π)h>αf0 (2)
で表される(2)式の関係が満たされれば、図3に示すように歳差運動の振幅は時間とともに増大し、磁化Mは反転する。
【0032】
たとえば、FePtからなる磁気記録層ではHk〜2×104Oeであり、記録磁場ゼロのときの共鳴周波数は約50GHzである。記録磁極からHext=1×104Oeの記録磁場を印加したとき、記録磁極直下のビットの共鳴周波数は約25GHzに低下する。f0=25GHz,α=0.05の場合、(2)式から反転に必要なマイクロ波磁場はh>450Oeとなる。数値シミュレーションによれば、1ns以下の時間で磁化を反転させるには、1000Oe程度の磁場が必要なことが予測されている。図1のマイクロ波電流配線51と記録すべきビットとの距離を10nmとすると、そのビットに1000Oeのマイクロ波磁場を発生させるために必要なマイクロ波電流は1mA程度となる。第1の原理に基づいた磁化反転は、磁化の歳差運動に伴うスピン系のエネルギーが格子系に緩和する程度の時間内で生じるため、格子系の温度(媒体ビットの温度)はほとんど上昇しない。
【0033】
磁気記録媒体の減衰定数αが大きい場合には(2)式から明らかなように共鳴反転に必要なマイクロ波磁場hが増大し、たとえばα=0.2では5000Oeを大きく超えるマイクロ波磁場が必要になることが予測される。
【0034】
しかし、減衰定数αが大きい磁気記録媒体に関しても上述した第2の原理、すなわちマイクロ波磁場の印加による共鳴吸収加熱を利用した磁化反転が可能である。磁気記録媒体に吸収されるマイクロ波パワーは媒体の帯磁率の虚数部χ”に依存し、マイクロ波磁場をhとすると、
P=(1/2)χ”h2ω (3)
と表される。χ”(ω)は周波数に強く依存し、磁気記録媒体の共鳴周波数から離れた周波数では1以下と小さいが、共鳴周波数またはその近傍では10〜100程度に増大する。磁気記録媒体の加熱効率は吸収パワーに依存するので、媒体の共鳴周波数近くの周波数で加熱することが重要である。
【0035】
垂直磁化媒体では、共鳴周波数f0は(1)式で表される。上述したように、書き換えを行う場合、磁気記録層の磁化と逆向きに記録磁場が印加されるので、共鳴周波数はHkとHextの差に比例して低下する。
【0036】
上記の例では図1の記録磁極直下のビットの共鳴周波数は、記録磁場がゼロである他のビットの共鳴周波数(50GHz)に比較して、大幅に低下し25GHzとなっている。すなわち、30GHz以下のマイクロ波磁場により記録磁極直下のビットのみが選択的に加熱されるが、他のビットでは共鳴吸収が起こらずほとんど加熱されない。
【0037】
図4に、第2の原理による書き込みのプロセスを示す。
マイクロ波磁場発生源(マイクロ波電流配線51)が発生するマイクロ波磁場のエネルギーを吸収することにより、磁化は歳差運動を開始する。しかし、減衰定数αが大きいと、磁化反転は生じない(図4a)。
【0038】
歳差運動に伴う磁気的エネルギーは速やかに格子系に流れ込み磁性材料の温度を上昇させる。たとえば、α=0.2、f0=25GHzの場合の格子系への緩和時間は僅かに0.2nsである。マイクロ波磁場を4000〜5000Oeとすると、毎秒1018erg/s程度のエネルギーが格子系へ供給される。FePt層の熱容量は約3×107erg/Kcm3なので、マイクロ波磁気エネルギーの吸収により1nsの間に、媒体温度を数十K〜100K程度上昇させることができる。媒体温度が上昇すると通常のレーザーアシストと同様にKu1が減少し、記録ヘッドの磁場により磁化反転すなわち書き込みがなされる(図4b)。
【0039】
記録磁極が次のビットに進むと、反転したビットにはマイクロ波磁場のエネルギーが供給されなくなり、熱伝導および輻射により温度が低下し、書き込みが完了する(図4c)。
【0040】
上述した第1および第2の原理は典型的な例を示したものであり、多くの現実の系では第1および第2の原理が共存した状態で磁化反転が生じる。以上の説明から明らかなように、実施形態に係る磁気記録ヘッドでは、マイクロ波磁場によるアシスト作用がない場合に比較して、数分の1の記録磁場により磁気記録が可能になる。現実の磁気記録媒体の共鳴スペクトルは種々の原因で幅を持っているので、アシスト用マイクロ波磁場のスペクトルも同程度の幅を持っていることが好ましい。
【0041】
図1および図2の磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置では、マイクロ波磁場発生源としてマイクロ波電流配線51を用いているが、これに限定されない。
【0042】
図5の磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置では、マイクロ波電流配線51の代わりに、マイクロ波磁場発生源として微小な磁性発振素子55を設けている。磁性発振素子55は、磁化フリー層、非磁性層および磁化固定層を有する。磁性発振素子55には直流電源56が接続されている。磁性発振素子55は、膜面垂直方向に電流を通電することにより、たとえば磁化フリー層の磁化が歳差運動を起こしてマイクロ波磁場が発生する。この場合、磁性発振素子55から磁気記録媒体10に印加されるマイクロ波磁場の周波数を、記録磁場が印加されたことによって低下する磁気記録層12の磁化の共鳴周波数と一致させるかその近傍の値に設定する。
【0043】
以上で説明したマイクロ波磁場によるアシスト作用は、磁気記録に限らず、固体磁気メモリ(MRAM)の書き換えにも適用することができる。
【0044】
図6に、本発明の一実施形態に係る固体磁気メモリ(MRAM)の断面図を示す。図6において、下部電極101と上部電極102との間に、メモリセルを構成する磁性トンネル接合素子110が形成されている。磁性トンネル接合素子110は、磁化固定層111、トンネル絶縁膜112、および磁化フリー層113が積層された構造を有する。磁性トンネル接合素子110の上部には、マイクロ波電流配線120が形成されている。また、磁性トンネル接合素子110の近傍に、書き込みのためにパルス磁場を発生する電流ライン150が設けられている。磁性トンネル接合素子110の選択は、図示しないMOSトランジスタによりなされる。マイクロ波電流配線120からのマイクロ波磁場の周波数は、電流ライン150から印加されたパルス磁場により変化する磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の共鳴周波数またはその近傍の値に設定される。
【0045】
図6のMRAMでは、マイクロ波電流配線120とパルス磁場発生用の電流ライン150とを組み合わせることにより、電流ライン150に流す電流を従来の数分の1に設定しても、磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化を反転させることができる。
【0046】
MRAMと磁気記録とで最も異なる点は、磁気記録媒体と比較して、磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の異方性エネルギーが2桁程度小さく、減衰定数αも0.01〜0.02程度と小さいことである。したがって、(1)式で与えられる磁化フリー層の共鳴周波数f0を数GHz程度に低下させることができ、(2)式の反転条件を満たすマイクロ波磁場hを僅か数Oeにすることができる。数値シミュレーションによれば、数十Oeのマイクロ波磁場の下で数nsの時間内での磁化反転が可能である。この場合、マイクロ波電流配線120と磁化フリー層113との距離が10nmであるとすると、磁化反転させるのに必要なマイクロ波電流は数百μAとなる。すなわち、図6のマイクロ波電流配線120に数百μAのマイクロ波電流を流し、パルス磁場発生用の電流ライン150により数百Oeの磁場を印加することにより、数nsの時間内で磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化を反転させることができる。マイクロ波電流配線120によるマイクロ波磁場は、電流ライン150からのパルス磁場により共鳴周波数が低下した磁化フリー層113に対してのみ共鳴条件を満たすように設定されており、その磁化フリー層113にのみ作用する。このため、通常のMRAMと異なり、パルス磁場発生用の電流ライン150を1セル当り1本設けるだけで十分である。
【0047】
図7に、本発明の他の実施形態に係る固体磁気メモリ(MRAM)の断面図を示す。図7では、図6のマイクロ波電流配線120の代わりに、磁性発振素子130が設けられている。この磁性発振素子130は、磁性トンネル接合素子110の上部電極102上に積層された、磁化フリー層131、非磁性中間層132、磁化固定層133を含む。このMRAMでは、磁性発振素子130に膜面垂直方向に電流を通電することにより、たとえば磁化フリー層131の磁化が歳差運動を起こしてマイクロ波磁場が発生する。磁性発振素子130からのマイクロ波磁場の周波数は、電流ライン150から印加されるパルス磁場により変化する磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の共鳴周波数またはその近傍の値に設定される。
【0048】
図7のMRAMでも、磁性発振素子130とパルス磁場発生用の電流ライン150とを組み合わせることにより、電流ライン150に流す電流を従来の数分の1に設定しても、磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化を反転させることができる。
【実施例】
【0049】
実施例1
磁気記録層(FePt薄膜)に記録磁極から記録磁場を印加したときに磁化の共鳴周波数がどのように変化するかを調べるために、以下のようなモデル実験を行った。
【0050】
図8に本実施例において作製した導波路(コプレナーガイド)200の断面図を示す。サファイア基板201上に、厚さ100nmのFePt膜202、厚さ500nmのCu膜203をスパッタリングにより成膜した。光リソグラフィーにより、中央に位置するラインの幅が10μmとなり、その両側にグランドプレーン204が配置されるように加工した。
【0051】
FePt膜202は、容易軸が膜面垂直方向に向いた垂直磁気異方性を示し、飽和磁化Msが800emu/cm3、異方性磁場Hkが18kOeであった。この導波路200の一端にマイクロ波発振器を接続し、他端にプリアンプを介してスペクトラムアナライザーを接続した。そして、FePt膜202に記録磁極からの記録磁場に相当する外部磁場を印加し、磁気共鳴吸収を測定した。
【0052】
図9に、外部磁場H=0およびH=10kOeの下での吸収スペクトルを示す。このとき外部磁場はFePt膜202の磁化と逆向きに印加した。図9から、H=0での共鳴周波数は約50GHzであり、H=10kOeでの共鳴周波数は約22GHzであることがわかる。共鳴線幅から求めた減衰定数αは0.01である。
【0053】
実施例2
磁気記録層(FePt薄膜)にアシスト用のマイクロ波磁場を印加しながら記録磁極から記録磁場を印加したときの磁化反転を調べるために、以下のようなモデル実験を行った。
【0054】
図10(a)に本実施例において作製した導波路(コプレナーガイド)300の平面図、図10(b)に断面図を示す。
【0055】
光リソグラフィーおよび電子線リソグラフィーを用いて図10(a)および(b)に示す導波路(コプレナーガイド)300を作製した。この導波路300は、その一部が長さL(約1μm)にわたって幅W(200nm)の細線となっている。図10(b)に示すように、細線部分は厚さt1(100nm)のCu膜301と厚さt2(10nm)のFePt膜302との積層膜である。細線部分以外の他の部分は厚さt1(100nm)のCu膜301からなる単層膜である。
【0056】
作製した試料を市販の磁気ヘッドを搭載したスピンスタンドに設置した。導波路300の一端にマイクロ波発振器に接続し、他端に50Ωの無反射終端を接続した。記録磁極はサイズが100×60nm2である。記録磁極からの記録磁場を10kOeに設定した。読出しヘッドはサイズが80×60nm2のGMRヘッドである。
【0057】
導波路300に接続したマイクロ波発振器の出力(マイクロ波電流値)を所定値に設定してアシスト用のマイクロ波磁場を印加し、記録磁極から(1010101010)という書込み信号に対応する記録磁場を印加して、FePt膜302に信号を書き込んだ。次に、電流値FePt膜302に書き込まれた信号を、GMRヘッドにより読み出した。このような実験を、マイクロ波電流値を逐次変化させて行った。
【0058】
表1に、マイクロ波電流値、書込み信号、および読出し信号を示す。表1に示されるように、マイクロ波電流が0.6mAを超えると、書込み信号と読出し信号とが一致していることから、記録磁極からの信号が正しく書き込まれたことがわかる。
【表1】
【0059】
実施例3
図7に示すMRAMを作製し、磁性発振素子により磁性トンネル接合素子のフリー層の磁化を反転させる実験を行った。
【0060】
光リソグラフィーおよび電子線リソグラフィーを用いて図7に示すMRAMを作製した。
【0061】
メモリセルを構成する磁性トンネル接合素子110は、IrMn/CoFeB/Ru/CoFeの積層膜からなる磁化固定層111、厚さ1nmのMgOからなるトンネル絶縁膜112、厚さ1nmのCoFeBからなる磁化フリー層113を含む。
【0062】
磁性発振素子130については、磁化フリー層131および磁化固定層133に磁性トンネル接合素子110に用いたのと同じ材料を用い、非磁性中間層132に厚さ5nmのCuを用いた。
【0063】
磁性トンネル接合素子110および磁性発振素子130のサイズは、いずれも50×100nm2である。50Oeのパルス磁場の下で、磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化の共鳴周波数は3.5GHzであり、磁性発振素子130に通電したときの磁化フリー層131の磁化の歳差運動による発振周波数も3.5GHzに対応するように設定される。
【0064】
図11に、磁性発振素子130に流す電流を変化させて、磁性トンネル接合素子110の抵抗値の変化を測定した結果を示す。図11に示されるように、電流が6mAを超えると磁性トンネル接合素子110の抵抗が増大している。これは、磁性発振素子130の磁化フリー層131の磁化の歳差運動に伴うマイクロ波磁場が電流とともに増大し、6mAで磁性トンネル接合素子110の磁化フリー層113の磁化が反転したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置の断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置の断面図。
【図3】マイクロ波磁場のアシスト作用の第1の原理を説明する図。
【図4】マイクロ波磁場のアシスト作用の第2の原理を説明する図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る磁気記録ヘッドおよびこれを用いた磁気記録装置の断面図。
【図6】本発明の一実施形態に係るMRAMの断面図。
【図7】本発明の他の実施形態に係るMRAMの断面図。
【図8】実施例1で作製した導波路の断面図。
【図9】実施例1の導波路の吸収スペクトルを示す図。
【図10】実施例2で作製した導波路の平面図および断面図。
【図11】実施例3のMRAMの抵抗値の変化を測定した結果を示す図。
【符号の説明】
【0066】
10…磁気記録媒体、11…基板、12…磁気記録層、15…ビット、20…磁気ヘッド、30…再生ヘッド、31…GMR素子、32、33…磁気シールド、40…記録ヘッド、41…記録磁極、42…コイル、51…マイクロ波電流配線、52…マイクロ波発振器、55…磁性発振素子、56…直流電源、101…下部電極、102…上部電極、110…磁性トンネル接合素子、111…磁化固定層、112…トンネル絶縁膜、113…磁化フリー層、120…マイクロ波電流配線、130…磁性発振素子、131…磁化フリー層、132…非磁性中間層、133…磁化固定層、150…電流ライン、200…導波路(コプレナーガイド)、201…サファイア基板、202…FePt膜、203…Cu膜、204…グランドプレーン、300…導波路(コプレナーガイド)、301…Cu膜、302…FePt膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に記録磁場を印加する記録磁極と、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録ヘッド。
【請求項2】
磁気記録媒体に記録磁極から記録磁場を印加して磁気記録を行う方法において、前記記録磁極の近傍に、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源を設け、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応する周波数のマイクロ波磁場を印加することを特徴とする磁気記録方法。
【請求項3】
磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体の1ビットの領域に記録磁場を印加する記録磁極と、前記磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加するマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の1ビットの磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項4】
前記マイクロ波磁場発生源の大きさが、前記磁気記録媒体の1ビットの大きさよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項5】
前記記録磁極に対して前記マイクロ波磁場発生源が複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項6】
前記マイクロ波磁場発生源から前記磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数は、前記磁気記録媒体の1ビットの磁化に対して前記記録磁場が反平行に印加されるときの磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項7】
前記マイクロ波磁場の印加により、前記磁気記録媒体の1ビットの磁化が磁気共鳴を起こして反転することを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項8】
前記マイクロ波磁場の印加により、前記磁気記録媒体の1ビットの磁化が磁気共鳴吸収を起こし、前記磁気記録媒体が加熱されて磁化が反転することを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項9】
前記マイクロ波磁場発生源は、マイクロ波電流配線を含むことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項10】
前記マイクロ波磁場発生源は、磁化フリー層、非磁性層および磁化固定層を有する磁性発振素子を含むことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項11】
磁化フリー層、トンネル絶縁層および磁化固定層を有する磁性トンネル接合素子を含むメモリセルと、
前記磁性トンネル接合素子に対してパルス磁場を印加する電流ラインと、
前記磁性トンネル接合素子にマイクロ波磁場を印加して前記磁化フリー層の磁化反転をアシストするマイクロ波磁場発生源と
を有し、前記マイクロ波磁場発生源から前記磁化フリー層に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記パルス磁場が印加された前記磁化フリー層の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気メモリ。
【請求項12】
前記マイクロ波磁場発生源から前記磁化フリー層に印加されるマイクロ波磁場の周波数は、前記磁化フリー層の磁化に対して前記パルス磁場が反平行に印加されるときの磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ。
【請求項13】
前記マイクロ波磁場発生源は、マイクロ波電流配線を含むことを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ。
【請求項14】
前記マイクロ波磁場発生源は、磁化フリー層、非磁性層および磁化固定層を有する磁性発振素子を含むことを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ。
【請求項15】
1つのメモリセルの磁性トンネル接合素子に対して1本の電流ラインからパルス磁場が印加されることを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ。
【請求項1】
磁気記録媒体に記録磁場を印加する記録磁極と、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録ヘッド。
【請求項2】
磁気記録媒体に記録磁極から記録磁場を印加して磁気記録を行う方法において、前記記録磁極の近傍に、磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加して磁気記録をアシストするマイクロ波磁場発生源を設け、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の磁化の共鳴周波数に対応する周波数のマイクロ波磁場を印加することを特徴とする磁気記録方法。
【請求項3】
磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体の1ビットの領域に記録磁場を印加する記録磁極と、前記磁気記録媒体にマイクロ波磁場を印加するマイクロ波磁場発生源とを有し、前記マイクロ波磁場発生源から磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記記録磁場が印加された磁気記録媒体の1ビットの磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項4】
前記マイクロ波磁場発生源の大きさが、前記磁気記録媒体の1ビットの大きさよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項5】
前記記録磁極に対して前記マイクロ波磁場発生源が複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項6】
前記マイクロ波磁場発生源から前記磁気記録媒体に印加されるマイクロ波磁場の周波数は、前記磁気記録媒体の1ビットの磁化に対して前記記録磁場が反平行に印加されるときの磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項7】
前記マイクロ波磁場の印加により、前記磁気記録媒体の1ビットの磁化が磁気共鳴を起こして反転することを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項8】
前記マイクロ波磁場の印加により、前記磁気記録媒体の1ビットの磁化が磁気共鳴吸収を起こし、前記磁気記録媒体が加熱されて磁化が反転することを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項9】
前記マイクロ波磁場発生源は、マイクロ波電流配線を含むことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項10】
前記マイクロ波磁場発生源は、磁化フリー層、非磁性層および磁化固定層を有する磁性発振素子を含むことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録装置。
【請求項11】
磁化フリー層、トンネル絶縁層および磁化固定層を有する磁性トンネル接合素子を含むメモリセルと、
前記磁性トンネル接合素子に対してパルス磁場を印加する電流ラインと、
前記磁性トンネル接合素子にマイクロ波磁場を印加して前記磁化フリー層の磁化反転をアシストするマイクロ波磁場発生源と
を有し、前記マイクロ波磁場発生源から前記磁化フリー層に印加されるマイクロ波磁場の周波数が、前記パルス磁場が印加された前記磁化フリー層の磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする磁気メモリ。
【請求項12】
前記マイクロ波磁場発生源から前記磁化フリー層に印加されるマイクロ波磁場の周波数は、前記磁化フリー層の磁化に対して前記パルス磁場が反平行に印加されるときの磁化の共鳴周波数に対応することを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ。
【請求項13】
前記マイクロ波磁場発生源は、マイクロ波電流配線を含むことを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ。
【請求項14】
前記マイクロ波磁場発生源は、磁化フリー層、非磁性層および磁化固定層を有する磁性発振素子を含むことを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ。
【請求項15】
1つのメモリセルの磁性トンネル接合素子に対して1本の電流ラインからパルス磁場が印加されることを特徴とする請求項11に記載の磁気メモリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−80024(P2010−80024A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249950(P2008−249950)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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