説明

磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法

【課題】ポリッシュ工程において酸化セリウムを用いることなく、又はその使用量を低減しつつ、十分な耐衝撃強度が得られると共に、そのような磁気記録媒体用ガラス基板を高い生産性で製造できる磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】中心孔を有する円盤状のガラス基板の内外周端面に対して、少なくとも研削加工を施す工程を含み、研削加工を施す工程は、ダイヤモンド砥粒を金属からなる結合剤で固定したメタルボンドダイヤ砥石を用いて、ガラス基板の内外周端面を研削する1次研削加工と、ダイヤモンド砥粒を樹脂からなる結合剤で固定したレジンボンドダイヤ砥石を用いて、ガラス基板の内外周端面を研削する2次研削加工とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)に用いられる磁気記録媒体は、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特に、MRヘッドやPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇は更に激しさを増し、近年ではGMRヘッドやTMRヘッドなども導入されて、1年に約1.5倍ものペースで増加を続けており、今後更に高記録密度化を達成することが要求されている。
【0003】
また、このような磁気記録媒体の記録密度の向上に伴って、その磁気記録媒体用基板に対する要求も高まっている。磁気記録媒体用基板としては、従来よりアルミニウム合金基板とガラス基板が用いられている。このうち、ガラス基板は、その硬度、表面平滑性、剛性、耐衝撃性に関して、一般にアルミニウム合金基板よりも優れている。このため、高記録密度化を図ることが可能な磁気記録媒体用ガラス基板の注目度が高まっている。
【0004】
磁気記録媒体用ガラス基板を製造する際は、大きな板状のガラス板から円盤状のガラス基板を切り出す、又は、溶融ガラスから成形型を用いて円盤状のガラス基板を直接プレス成形することにより得られたガラス基板の主面及び端面に対して、ラップ(研削)加工とポリッシュ(研磨)加工とを施す。
【0005】
また、従来の磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程では、ガラス基板の主面に対して、1次ラップ加工(研削)、2次ラップ加工(研削)、1次ポリッシュ加工(研磨)、2次ポリッシュ加工(研磨)の順で行う。そして、これらの加工工程の間にガラス基板の内外周の端面に対する研削加工とポリッシュ加工が加わることになる。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術文献としては、例えば下記特許文献1,2がある。具体的に、下記特許文献1には、砥石を用いた内外周端面研削加工と、内外周エッジ部面取り加工、研磨砥粒として酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた内外周研磨加工を施すことによるガラス基板の製造方法が開示されている。
【0007】
一方、下記特許文献2には、磁気ディスク用のガラス基板の製造方法として、ドーナツ状ガラスブロックの内周及び外周の端面を研削する内外周端面研削工程、研削したドーナツ状ガラスブロックの内周及び外周の端面をエッチングするエッチング工程、エッチングしたドーナツ状ガラスブロックを個々のドーナツ状ガラス基板に分離して分離したドーナツ状ガラス基板を洗浄する分離洗浄工程、洗浄したドーナツ状ガラス基板の内周及び外周のエッジ部を面取りする内外周面取り工程、面取りしたドーナツ状ガラス基板の内周及び外周の端面、並びに面取り部を研磨する内外周研磨工程をこの順で行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−30807号公報
【特許文献2】特開2010−3365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したHDDの更なる高記録密度化を図るためには、HDD内の限られたスペースに配置される磁気記録媒体の枚数を増加させる必要がある。その一手段として、磁気記録媒体用ガラス基板の薄肉化が考えられるが、その場合も磁気記録媒体用ガラス基板には、これまでと同等か又はそれ以上の衝撃強度が求められる。
【0010】
このため、磁気記録媒体用ガラス基板の製造では、衝撃強度が低下する大きな因子となっている、ガラス基板の内外周端面又はチャンファー面に発生するクラックを除去する目的で、酸化セリウムを用いた化学機械研磨(CMP)が必須の工程として一般的に行われている。
【0011】
しかしながら、近年では、磁気記録媒体用ガラス基板のポリッシュ工程において不可欠となっている酸化セリウムの入手が困難になりつつある。このため、磁気記録媒体用ガラス基板のポリッシュ工程において酸化セリウムを用いることなく、又は使用量を低減しつつ、従来のものと同程度の耐衝撃強度が得られる磁気記録媒体用ガラス基板の製造技術の確立が求められている。また、そのような磁気記録媒体用ガラス基板を高い生産性で製造することが望まれる。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、ポリッシュ工程において酸化セリウムを用いることなく、又はその使用量を低減しつつ、十分な耐衝撃強度が得られると共に、そのような磁気記録媒体用ガラス基板を高い生産性で製造できる磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下の手段を提供する。
(1) 中心孔を有する円盤状のガラス基板の内外周端面に対して、少なくとも研削加工を施す工程を含み、
前記研削加工を施す工程は、ダイヤモンド砥粒を金属からなる結合剤で固定したメタルボンドダイヤ砥石を用いて、前記ガラス基板の内外周端面を研削する1次研削加工と、ダイヤモンド砥粒を樹脂からなる結合剤で固定したレジンボンドダイヤ砥石を用いて、前記ガラス基板の内外周端面を研削する2次研削加工とを含むことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(2) 更に、前記ガラス基板の内外周端面に対してエッチング加工を施す工程を含むことを特徴とする前項(1)に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(3) 前記エッチング加工を施す工程は、前記1次又は2次研削加工の後に行うことを特徴とする前項(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(4) 更に、前記ガラス基板の内外周端面に対してポリッシュ加工を施す工程を含むことを特徴とする前項(1)〜(3)の何れか一項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(5) 前記ポリッシュ加工を施す工程は、前記2次研削加工の後に行うことを特徴とする前項(4)に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(6) 前記ポリッシュ加工は、研磨剤として酸化セリウムを用いずに行うことを特徴とする前項(4)又は(5)に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(7) 前記メタルボンドダイヤ砥粒は、前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径が10μm以上60μm以下であり、
前記レジンボンドダイヤ砥粒は、前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径が2μm以上20μm以下であることを特徴とする前項(1)〜(6)の何れか一項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(8) 前記メタルボンドダイヤ砥粒は、前記結合剤がニッケル又はニッケル合金であり、
前記レジンボンドダイヤ砥粒は、前記結合剤がフェノール樹脂であることを特徴とする前項(1)〜(7)の何れか一項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明では、酸化セリウムを用いたポリッシュ加工を行うことなく、又はその使用量を低減しつつ、十分な耐衝撃強度が得られる磁気記録媒体用ガラス基板を高い生産性で製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明を適用した磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程を説明するための図であり、主面ラッピング工程を示す斜視図である。
【図2】図2は、主面ラッピング工程において用いられるダイヤモンドパッドのパッド面を拡大して示す平面図である。
【図3】図3は、本発明を適用した磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程を説明するための図であり、1,2次内外周端面研削工程を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明を適用した磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程を説明するための図であり、内周端面ポリッシュ工程を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明を適用した磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程を説明するための図であり、外周端面ポリッシュ工程を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明を適用した磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程を説明するための図であり、主面ポリッシュ工程を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明で用いられるラッピングマシーン又はポリッシングマシーンの別の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明を適用して製造される磁気記録媒体用ガラス基板は、中心孔を有する円盤状のガラス基板であり、磁気記録媒体は、このガラス基板の面上に、磁性層、保護層及び潤滑膜等を順次積層したものからなる。また、磁気記録再生装置(HDD)では、この磁気記録媒体の中心部をスピンドルモータの回転軸に取り付けて、スピンドルモータにより回転駆動される磁気記録媒体の面上を磁気ヘッドが浮上走行しながら、磁気記録媒体に対して情報の書き込み又は読み出しを行う。
【0017】
なお、磁気記録媒体用ガラス基板については、例えば、SiO―Al―RO(Rは、アルカリ金属元素の中から選ばれる少なくとも1種以上を表す。)系化学強化ガラス、SiO―Al―LiO系ガラスセラミックス、SiO―Al―MgO―TiO系ガラスセラミックスなどを用いることができる。その中でも特に、SiO―Al―MgO―CaO―LiO―NaO―ZrO―Y―TiO―As系化学強化ガラス、SiO―Al―LiO―NaO―ZrO―As系化学強化ガラス、SiO―Al―MgO―ZnO―LiO―P―ZrO―KO―Sb系ガラスセラミックス、SiO―Al―MgO―CaO―BaO―TiO―P―As系ガラスセラミックス、SiO―Al―MgO―CaO―SrO―BaO―TiO―ZrO―Bi―Sb系ガラスセラミックスなどを好適に用いることができる。さらに、例えば、二珪酸リチウム、SiO系結晶(石英、クリストバライト、トリジマイト等)、コージェライト、エンスタタイト、チタン酸アルミニウムマグネシウム、スピネル系結晶([Mg及び/又はZn]Al、[Mg及び/又はZn]TiO、並びにこれら2結晶間の固溶体)、フォルステライト、スポジューメン、並びにこれら結晶の固溶体などを結晶相として含有するガラスセラミックスが磁気記録媒体用ガラス基板として適している。
【0018】
そして、この磁気記録媒体用ガラス基板を製造する際は、先ず、大きな板状のガラス板からガラス基板を切り出す、又は、溶融ガラスから成形型を用いてガラス基板を直接プレス成形することにより、中心孔を有する円盤状のガラス基板を得る。
【0019】
次に、得られたガラス基板の端面を除く表面(主面)に対して、ラップ(研削)加工とポリッシュ(研磨)加工とを施す。また、これらの工程の間には、ガラス基板の内外周の端面に対して研削加工を施す工程を少なくとも含み、さらに、エッチング加工を施す工程と、ポリッシュ加工を施す工程とを含むことが好ましい。また、本発明では、ガラス基板の内外周端面に対する研削加工を2段階(1次及び2次研削加工)とする。なお、本発明では、ガラス基板の内外周端面に対する面取り加工を上記研削加工と同一工程で行うこともできる。
【0020】
本発明を適用した磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法では、ダイヤモンド砥粒を含有する内外周砥石を用いて、ガラス基板の内外周端面を同時に研削加工(1次研削加工)を施すことができる。その際に生じるおそれのあるマイクロクラックを、次いで行う研削加工(2次研削加工)やエッチング加工により除去する。これにより、ガラス基板の内外周端面に対して最後に行うポリッシュ加工を行わなくても、又は、ポリッシュ加工を簡略化しても、これまでと同等の耐衝撃強度を有する磁気記録媒体用ガラス基板を得ることが可能となる。
【0021】
すなわち、従来の磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程では、ガラス基板の内外周端面に対するポリッシュ加工において、酸化セリウムスラリーを用いた化学機械的研磨(CMP)が行われている。このポリッシュ加工において、酸化セリウムスラリーによる加工を例えば酸化ケイ素スラリーによる加工に置き換えた場合や、ポリッシュ加工を省略した場合には、CMPによる化学的な研磨作用が不十分となる。
【0022】
そこで、本発明では、この化学的な研磨作用をエッチング加工に置き換えて、ガラス基板の内外周端面に生じたマイクロクラックを除去する、又は、2次研削加工としてダイヤモンド砥粒を樹脂からなる結合剤で固定したレジンボンドダイヤ砥石を用いることによって、1次研削加工で発生したマイクロクラックを除去したり、新たなマイクロクラックが発生するのを防止したりすることが可能である。
【0023】
これにより、従来のポリッシュ加工で使用されている(高価な)酸化セリウムスラリーを用いずに、又はその使用量を低減しつつ、ガラス基板の内外周端面に対する加工を行うことが可能となる。
【0024】
また、本発明のガラス基板の内外周端面に対するポリッシュ加工では、従来の酸化セリウムスラリーを用いたポリッシュ加工が不要となり、酸化ケイ素スラリーを用いたポリッシュ加工のみとすることができる。又は、酸化セリウムスラリーを用いるポリッシュ加工の時間を減らし、酸化セリウムスラリーの使用量を低減することができる。これにより、本発明では、磁気記録媒体用ガラス基板の研磨コストを低減し、高い生産性を得ることが可能である。
【0025】
以下、本発明を適用した磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法について、実施形態の例を参照しながら具体的に説明する。
(実施形態の例)
実施形態の例では、1次主面ラップ工程と、1次内外周端面研削工程と、2次内外周端面研削工程と、内外周端面エッチング工程と、内周端面ポリッシュ工程と、2次主面ラップ工程と、3次主面ラップ工程と、外周端面ポリッシュ工程と、主面ポリッシュ工程とをこの順で行う。
【0026】
このうち、1次主面ラップ工程では、図1に示すようなラッピングマシーン10を用いて、ガラス基板Wの両主面(最終的に磁気記録媒体の記録面となる面)に1次ラップ加工を施す。すなわち、このラッピングマシーン10は、上下一対の定盤11,12を備え、互いに逆向きに回転する定盤11,12の間で複数枚のガラス基板Wを挟み込みながら、これらガラス基板Wの両主面を定盤11,12に設けられた研削パッドにより研削する。
【0027】
1次ラップ加工に用いる研削パッドは、図2(a),(b)に示すように、ダイヤモンド砥粒が結合剤(ボンド)で固定されたダイヤモンドパッド20Aであり、さらに、そのラップ面20aには、平坦な頂部を有するタイル状の凸部21が複数並んで設けられている。また、このダイヤモンドパッド20Aは、ダイヤモンド砥粒が結合剤で固定された凸部21を基材22の表面に複数並べて形成されている。
【0028】
ここで、1次ラップ加工に用いるダイヤモンドパッド20Aには、凸部21の外形寸法Sが1.5〜5mm角、高さTが0.2〜3mm、隣接する凸部21の間の間隔Gが0.5〜3mmの範囲にあるものを用いることが好ましい。本発明では、上記範囲を満足するダイヤモンドパッド20Aを用いることで、冷却液や研削液等が均等に行き渡り、且つ、ラップ面20aの凸部21の間から研削屑等を円滑に排出することが可能である。
【0029】
また、1次ラップ加工に用いるダイヤモンドパッド20Aは、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が4μm以上12μm以下であり、凸部21におけるダイヤモンド砥粒の含有量が5〜70体積%の範囲にあるものを用いることが好ましく、より好ましくは20〜30体積%の範囲にあるものを用いる。ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を下回ると、加工時間の増大を招くため、コスト高となり、一方、ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を上回ると、所望の表面粗度を得ることが困難となる。なお、ダイヤモンドパッド20Aの結合剤には、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂を用いることができる。
【0030】
1次内外周端面研削工程では、図3に示すような研削加工装置30を用いて、ガラス基板Wの中心孔の内周端面及びガラス基板Wの外周端面に対して研削加工を施す。すなわち、この研削加工装置30は、第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aを備え、互いの中心孔を一致させた状態でスペーサSを挟んで複数枚のガラス基板Wを積層した積層体Xを軸回りに回転させながら、各ガラス基板Wの中心孔に挿入された第1の内周砥石31aと、各ガラス基板Wの外周に配置された第1の外周砥石32aとで各ガラス基板Wを径方向に挟み込み、これら第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aを積層体Xとは逆向きに回転させる。そして、第1の内周砥石31aにより各ガラス基板Wの内周端面を研削すると同時に、第1の外周砥石32aにより各ガラス基板Wの外周端面を研削する。
【0031】
また、第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aの表面は、軸方向に凸部と凹部とが交互に並ぶ波形形状を有しているため、各ガラス基板Wの内周端面及び外周端面を研削すると共に、各ガラス基板Wの両主面と内周端面及び外周端面との間のエッヂ部分(チャンファー面)に対して面取り加工を施すことが可能である。
【0032】
第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aには、ダイヤモンド砥粒を金属からなる結合剤で固定したメタルボンドダイヤ砥石が用いられる。また、金属からなる結合剤としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、炭化タングステンなどを挙げることができ、その中でもニッケル又はニッケル合金を用いることが好ましい。第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aに含まれるダイヤモンド砥粒は、平均粒径が10μm以上60μm以下であることが好ましい。また、第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aは、上記ダイヤモンド砥粒を30〜95体積%の範囲で含有するものを用いることが好ましく、より好ましくは50〜85体積%の範囲である。ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を下回ると、加工時間の増大を招くため、コスト高となる。一方、ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を上回ると、所望の表面粗度を得ることが困難となる。
【0033】
2次内外周端面研削工程では、上記図3に示すような研削加工装置30を用いて、ガラス基板Wの中心孔の内周端面及びガラス基板Wの外周端面に対して2次研削加工を施す。すなわち、この研削加工装置30は、上記第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aと軸線方向に連続して配置された第2の内周砥石31b及び第2の外周砥石32bを備え、互いの中心孔を一致させた状態でスペーサSを挟んで複数枚のガラス基板Wを積層した積層体Xを軸回りに回転させながら、各ガラス基板Wの中心孔に挿入された第2の内周砥石31bと、各ガラス基板Wの外周に配置された第2の外周砥石32bとで各ガラス基板Wを径方向に挟み込み、これら第2の内周砥石31b及び第2の外周砥石32bを積層体Xとは逆向きに回転させる。そして、第2の内周砥石31bにより各ガラス基板Wの内周端面を研削すると同時に、第2の外周砥石32bにより各ガラス基板Wの外周端面を研削する。さらに、各ガラス基板Wの両主面と内周端面及び外周端面との間のエッヂ部分(チャンファー面)に対して面取り加工を施す。
【0034】
すなわち、上記1次内外周端面研削工程と2次内外周端面研削工程とは、上述した第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aと、第2の内周砥石31b及び第2の外周砥石32bとのガラス基板Wの内周端面及び外周端面に対する位置を変更することで、1,2次研削加工を連続的に行うことが可能である。
【0035】
第2の内周砥石31b及び第2の外周砥石32bは、ダイヤモンド砥粒を樹脂からなる結合剤で固定したレジンボンドダイヤが用いられる。また、樹脂からなる結合剤としては、フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ポリイミド樹脂、アセタール樹脂、弾性ゴムなどを挙げることができ、その中でもフェノール樹脂を用いることが好ましい。第2の内周砥石31b及び第2の外周砥石32bに含まれるダイヤモンド砥粒は、平均粒径が2μm以上20μm以下の範囲で、上記第1の内周砥石31a及び第1の外周砥石32aよりも平均粒径が小さいものを用いることが好ましい。また、第2の内周砥石31b及び第2の外周砥石32bは、上記ダイヤモンド砥粒を30〜95体積%の範囲で含有するものを用いることが好ましく、より好ましくは50〜85体積%の範囲である。ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を下回ると、加工時間の増大を招くため、コスト高となる。一方、ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を上回ると、所望の表面粗度を得ることが困難となる。
【0036】
内外周端面エッチング工程では、ガラス基板Wをエッチング溶液に浸漬して、ガラス基板Wの内外周端面に対してエッチング処理を行う。このエッチング処理は、上述した従来の酸化セリウムスラリーを用いたCMPによる化学的な研磨作用を補完し、ガラス基板Wの内外周端面に生じたマイクロクラックを除去する。なお、実施形態の例のように、エッチング加工の前に既に面取り加工が行われている場合には、内外周端面だけではなく、この面取り加工された面(チャンファー面)に生じたマイクロクラックも除去することが可能である。
【0037】
具体的に、この内外周端面エッチング工程では、図示を省略するものの、上記内外周端面研削工程において面取り加工が施されたガラス基板Wの積層体Xを、エッチング槽に貯留したエッチング溶液に浸漬させることによって、各ガラス基板Wの内外周端面をエッチング処理する。
【0038】
このエッチング処理によって、上記内外周端面研削工程においてガラス基板Wに発生したマイクロクラックにエッチング溶液が浸入し、マイクロクラックの先端がエッチングされて丸底形状となる。これにより、この部分に応力が加わっても、それ以上クラックが進行しない状態となる。また、深さの浅いマイクロクラックについては、エッチングにより除去される。その結果、マイクロクラックが除去されたガラス基板Wは、機械的強度(耐衝撃性)が高まり、このガラス基板Wを用いた磁気記録媒体の耐衝撃性も向上することになる。
【0039】
また、内外周端面エッチング工程では、上記内外周端面研削工程において面取り加工が施された各ガラス基板Wを、エッチング槽に貯留したエッチング溶液に浸漬させることによって、各ガラス基板Wの内外周端面をエッチング処理することも可能である。
【0040】
このようにエッチング加工は、ガラス基板Wをエッチング溶液に浸漬にして行うことが可能であるが、このような浸漬によるエッチング加工に限定されるものではなく、ガラス基板Wの内外周端面にエッチング溶液を塗布する方法などによって、エッチング加工を行うことも可能である。
【0041】
エッチング溶液としては、ガラス基板Wに対するエッチング作用がある溶液であればよく、例えばフッ酸(HF)や珪フッ酸(HSiF)などを主成分とするフッ酸系エッチング溶液を用いることができ、その中でもフッ酸溶液が好適である。また、このようなフッ酸系エッチング溶液に、硫酸や硝酸、塩酸などの無機酸を添加することによって、エッチング力やエッチング特性を調整することも可能である。また、フッ酸系エッチング溶液は、ガラス基板Wの内外周端面を研削加工した後の表面を荒らすことなく、ガラス基板Wの表面に生じたマイクロクラックを除去できる濃度を選択して使用すればよく、特に限定されないものの、例えば0.01〜10質量%の範囲で使用することが可能である。
【0042】
ガラス基板Wの浸漬条件は、例えばエッチング溶液の種類や、濃度、ガラス基板Wの材質などに依存するものの、エッチング溶液の温度としては、例えば15〜65℃の範囲に設定し、エッチング(浸漬)時間としては、例えば0.5〜30分の範囲に設定することが好ましい。具体的には、液温30℃、濃度0.5質量%のフッ酸水溶液で15分程度の浸漬条件、又は、液温30℃、濃度1.5質量%のフッ酸及び濃度0.5質量%の硫酸の混合水溶液で10分程度の浸漬条件が例示できる。なお、この内外周端面エッチング工程では、ガラス基板Wの全表面をエッチングしてもよく、内外周端面のみを局部的にエッチングしてもよい。また、エッチング処理後は、ガラス基板Wに付着しているエッチング溶液を除去するため、ガラス基板Wを洗浄することが好ましい。
【0043】
内周端面ポリッシュ工程では、図4に示すようなポリッシングマシーン40を用いて、ガラス基板Wの中心孔の内周端面に対してポリッシュ加工を施す。すなわち、このポリッシングマシーン40は、内周研磨ブラシ41を備え、上記積層体Xを軸回りに回転させると共に、各ガラス基板Wの中心孔に挿入された内周研磨ブラシ41をガラス基板Wとは逆向きに回転させながら上下方向に移動操作する。このとき、内周研磨ブラシ41に研磨液を滴下する。そして、この内周研磨ブラシ41により各ガラス基板Wの内周端面を研磨する。同時に、上記内外周端面研削工程において面取り加工が施された内周端面のエッヂ部分(チャンファー面)も研磨される。なお、研磨液については、例えば酸化ケイ素(コロイダルシリカ)砥粒や酸化セリウム砥粒を水に分散してスラリー化したものなどを用いることができる。
【0044】
また、ポリッシュ加工は、その性質上スピードアップが容易ではなく、研削加工に比べて長い加工時間を要する。また、ガラス基板Wの内周端面(チャンファー面を含む)に求められる平滑性は、ガラス基板Wの主面に求められる平滑性(Ra0.3〜0.5nm)に比べて低く、Ryが10μm以下(数μm)のレベルである。このため、研磨条件にもよるが、通常使用される酸化ケイ素(コロイダルシリカ)砥粒(粒径0.3μm以下)では細かすぎて、研磨に掛かる時間が長くなりやすい傾向にある。このような理由から、酸化ケイ素(コロイダルシリカ)砥粒は、平均粒径が0.4μm以上1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.45μm以上0.6μm以下である。
【0045】
また、本発明では、上述したガラス基板Wの内周端面に対するエッチング加工を施すことで、この内周端面に発生したマイクロクラックを除去できるため、酸化セリウムスラリーを用いたポリッシュ加工を施す場合は、従来よりも加工時間を短縮することが可能となる。
【0046】
2次主面ラップ工程では、1次主面ラップ工程と同様に、上記図1に示すようなラッピングマシーン10を用いて、ガラス基板Wの両主面に2次ラップ加工を施す。すなわち、互いに逆向きに回転する上下一対の定盤11,12の間で複数枚のガラス基板Wを挟み込みながら、これらガラス基板Wの両主面を定盤11,12に設けられた研削パッドにより研削する。
【0047】
2次ラップ加工に用いる研削パッドは、上記図2(a),(b)に示す研削パッド20Aと同様に、ダイヤモンド砥粒が結合剤(ボンド)で固定されたダイヤモンドパッド20Bであり、さらに、そのラップ面20aには、平坦な頂部を有するタイル状の凸部21が複数並んで設けられている。また、このダイヤモンドパッド20Bは、ダイヤモンド砥粒が結合剤で固定された凸部21を基材22の表面に複数並べて形成されている。
【0048】
ここで、2次ラップ加工に用いるダイヤモンドパッド20Bには、上記図2(a),(b)に示すダイヤモンドパッド20Aと同様に、凸部21の外形寸法Sが1.5〜5mm角、高さTが0.2〜3mm、隣接する凸部21の間の間隔Gが0.5〜3mmの範囲にあるものを用いることが好ましい。本発明では、上記範囲を満足するダイヤモンドパッド20Bを用いることで、冷却液や研削液等が均等に行き渡り、且つ、ラップ面20aの凸部21の間から研削屑等を円滑に排出することが可能である。
【0049】
また、2次ラップ加工に用いるダイヤモンドパッド20Bは、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が1μm以上5μm以下であり、凸部21におけるダイヤモンド砥粒の含有量が5〜80体積%の範囲にあるものを用いることが好ましく、より好ましくは50〜70体積%の範囲にあるものを用いる。ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を下回ると、加工時間の増大を招くため、コスト高となり、一方、ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を上回ると、所望の表面粗度を得ることが困難となる。なお、ダイヤモンドパッド20Bの結合剤には、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂を用いることができる。
【0050】
3次主面ラップ工程では、1,2次主面ラップ工程と同様に、上記図1に示すようなラッピングマシーン10を用いて、ガラス基板Wの両主面に3次ラップ加工を施す。すなわち、互いに逆向きに回転する上下一対の定盤11,12の間で複数枚のガラス基板Wを挟み込みながら、これらガラス基板Wの両主面を定盤11,12に設けられた研削パッドにより研削する。
【0051】
3次ラップ加工に用いる研削パッドは、上記図2(a),(b)に示す研削パッド20Aと同様に、ダイヤモンド砥粒が結合剤(ボンド)で固定されたダイヤモンドパッド20Cであり、さらに、そのラップ面20aには、平坦な頂部を有するタイル状の凸部21が複数並んで設けられている。また、このダイヤモンドパッド20Cは、ダイヤモンド砥粒が結合剤で固定された凸部21を基材22の表面に複数並べて形成されている。
【0052】
ここで、3次ラップ加工に用いるダイヤモンドパッド20Cには、上記図2(a),(b)に示すダイヤモンドパッド20Aと同様に、凸部21の外形寸法Sが1.5〜5mm角、高さTが0.2〜3mm、隣接する凸部21の間の間隔Gが0.5〜3mmの範囲にあるものを用いることが好ましい。本発明では、上記範囲を満足するダイヤモンドパッド20Cを用いることで、冷却液や研削液等が均等に行き渡り、且つ、ラップ面20aの凸部21の間から研削屑等を円滑に排出することが可能である。
【0053】
また、3次ラップ加工に用いるダイヤモンドパッド20Cは、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が0.2μm以上2μm未満であり、凸部21におけるダイヤモンド砥粒の含有量が5〜80体積%の範囲にあるものを用いることが好ましく、より好ましくは50〜70体積%の範囲にあるものを用いる。ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を下回ると、加工時間の増大を招くため、コスト高となり、一方、ダイヤモンド砥粒の粒径及び含有量が上記範囲を上回ると、所望の表面粗度を得ることが困難となる。なお、ダイヤモンドパッド20Bの結合剤には、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂を用いることができる。
【0054】
外周端面ポリッシュ工程では、図5に示すようなポリッシングマシーン50を用いて、ガラス基板Wの外周端面に対してポリッシュ加工を施す。すなわち、このポリッシングマシーン50は、回転シャフト51及び外周研磨ブラシ52を備え、互いの中心孔を一致させた状態でスペーサSを挟んで複数枚のガラス基板Wを積層した積層体Xを、各ガラス基板Wの中心孔に挿入された回転シャフト51によって軸回りに回転させると共に、各ガラス基板Wの外周端面に接触させた外周研磨ブラシ52を積層体Xとは逆向きに回転させながら上下方向に移動操作する。このとき、外周研磨ブラシ52に研磨液を滴下する。そして、この外周研磨ブラシ52により各ガラス基板Wの外周端面を研磨する。同時に、上記内外周ラップ工程において面取り加工が施された外周端面のエッヂ部分(チャンファー面)も研磨される。なお、研磨液については、例えば酸化ケイ素(コロイダルシリカ)砥粒や酸化セリウム砥粒を水に分散してスラリー化したものなどを用いることができる。
【0055】
また、ポリッシュ加工は、その性質上スピードアップが容易ではなく、研削加工に比べて長い加工時間を要する。また、ガラス基板Wの外周端面(チャンファー面を含む)に求められる平滑性は、ガラス基板Wの主面に求められる平滑性(Ra0.3〜0.5nm)に比べて低く、Ryが10μm以下(数μm)のレベルである。このため、研磨条件にもよるが、通常使用される酸化ケイ素(コロイダルシリカ)砥粒(粒径0.3μm以下)では細かすぎて、研磨に掛かる時間が長くなりやすい傾向にある。このような理由から、酸化ケイ素(コロイダルシリカ)砥粒は、平均粒径が0.4μm以上1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.45μm以上0.6μm以下である。
【0056】
また、本発明では、上述したガラス基板Wの外周端面に対するエッチング加工を施すことで、この外周端面に発生したマイクロクラックを除去できるため、酸化セリウムスラリーを用いたポリッシュ加工を施す場合は、従来よりも加工時間を短縮することが可能となる。
【0057】
主面ポリッシュ工程では、図6に示すようなポリッシングマシーン60を用いて、ガラス基板Wの両主面にポリッシュ加工を施す。すなわち、このポリッシングマシーン60は、上下一対の定盤61,62を備え、互いに逆向きに回転する定盤61,62の間で複数枚のガラス基板Wを挟み込みながら、これらガラス基板Wの両主面を定盤61,62に設けられた研磨パッドにより研磨する。
【0058】
ポリッシュ加工に用いる研磨パッドは、例えばウレタンにより形成された硬質研磨布である。また、この研磨パッドによりガラス基板Wの両主面を研磨(ポリッシング)する際は、ガラス基板Wに研磨液を滴下する。研磨液については、例えば酸化ケイ素(コロイダルシリカ)砥粒を水に分散してスラリー化したものなどを用いることができる。
【0059】
以上のようにして、ラップ加工、研削加工及びポリッシュ加工が施されたガラス基板Wは、最終洗浄工程及び検査工程に送られる。そして、最終洗浄工程では、例えば超音波を併用した洗剤(薬品)による化学的洗浄などの方法を用いて、ガラス基板Wを洗浄し、上記工程において使用した研磨剤等の除去を行う。また、検査工程では、例えばレーザを用いた光学式検査器により、ガラス基板Wの表面(主面、端面及びチャンファー面)の傷やひずみの有無等の検査を行う。
【0060】
本発明では、上述した実施形態の各ラップ加工及び研削加工で使用される研削液としては、市販のものを用いることができる。研削液としては、大別して、水性の研削液と油性の研削液とがある。水性の研削液は、純水、適量のアルコール、粘度調整剤としてのポリエチレングリコール、アミン、界面活性剤等を添加したものである。一方、油性の研削液は、オイル、極圧添加剤としてステアリン酸等を適量添加したものである。市販の研削液としては、例えば水性のSabrelube 9016(Chemetall社製)、COOLANT D3(ネオス社製)等を用いることができる。
【0061】
なお、本発明では、上述した実施形態の各ラップ加工及び研削加工で使用される研削液、並びにポリッシュ加工で使用される研磨液に、研磨助剤や防食剤を添加してもよい。
【0062】
具体的に、研磨助剤は、少なくともスルホン酸基又はカルボン酸基を有する有機重合物を含むものであり、その中でもスルホン酸ナトリウム又はカルボン酸ナトリウムを有する平均分子量が4000〜10000の有機重合物を用いることが好ましい。これにより、上記工程においてガラス基板Wの表面(主面、端面及びチャンファー面)をより平滑化することができる。
【0063】
また、スルホン酸ナトリウム又はカルボン酸ナトリウムを含む有機重合物としては、例えば、GEROPON SC/213(商品名/Rhodia)、GEROPON T/36(商品名/Rhodia)、GEROPON TA/10(商品名/Rhodia)、GEROPON TA/72(商品名/Rhodia)、ニューカルゲンWG−5(商品名/竹本油脂(株))、アグリゾールG−200(商品名/花王(株))、デモールEPパウダー(商品名/花王(株))、デモールRNL(商品名/花王(株))、イソバン600−SF35(商品名/(株)クラレ)、ポリスターOM(商品名/日本油脂(株))、Sokalan CP9(商品名/ビーエーエスエフジャパン(株))、Sokalan PA−15(商品名/ビーエーエスエフジャパン(株))、トキサノンGR−31A(商品名/三洋化成工業(株))、ソルポール7248(商品名/東邦化学工業(株))、シャロールAN−103P(商品名/第一工業製薬(株))、アロンT−40(商品名/東亞合成化学工業(株))、パナカヤクCP(商品名/日本化薬(株))、ディスロールH12C(商品名/日本乳化剤(株))などを挙げることができる。また、研磨助剤としては、この中で特に、デモールRNL(商品名/花王(株))、ポリスターOM(商品名/日本油脂(株))を用いることが好ましい。
【0064】
また、このガラス基板Wを用いて作製される磁気記録媒体は、一般的に磁性層においてCo、Ni、Feなどの腐食しやすい物質を含んでいる。したがって、上述した研削液や研磨液に防食剤を添加することによって、磁性層の腐食を防止し、電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を得ることが可能となる。
【0065】
防食剤としては、ベンゾトリアゾール又はその誘導体を用いることが好ましい。また、ベンゾトリアゾールの誘導体としては、ベンゾトリアゾールの有する1個又は2個以上の水素原子を、例えば、カルボキシル基、メチル基、アミノ基、ヒドロキシル基等で置換したものなどを用いることができる。さらに、ベンゾトリアゾールの誘導体としては、4−カルボキシルベンゾトリアゾール又はその塩、7−カルボキシベンゾトリアゾール又はその塩、ベンゾトリアゾールブチルエステル、1−ヒドロキシメチルベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどを用いることができる。防食剤の添加量は、ダイヤモンドスラリーの使用時における総量に対して、1質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態の各ラップ工程で用いられるラッピングマシーン、並びにポリッシュ工程で用いられるポリッシングマシーンについては、例えば図7に示すように、上下一対の下定盤71及び上定盤72と、下定盤71の上定盤72と対向する面に配置された複数のキャリア73とを備え、各キャリア73に設けられた複数(本実施形態では35つ。)の開口部74にガラス基板(図示せず。)をセットし、これら複数のガラス基板の両主面を下定盤71及び上定盤72に設けられた研削パッドにより研削する又は研磨パッドにより研磨する構成とすることも可能である。
【0067】
具体的に、下定盤71及び上定盤72は、それぞれの中心部に設けられた回転軸71a,72aを駆動モータ(図示せず。)により回転駆動することで、互いの中心軸を一致させた状態で互いに逆向きに回転可能となっている。また、下定盤71の上定盤72と対向する面には、複数(本実施形態では5つ。)のキャリア73を配置するための凹部75が設けられている。
【0068】
複数のキャリア73は、例えばアラミド繊維やガラス繊維を混入することで強化されたエポキシ樹脂などを円盤状に形成したものからなる。そして、これら複数のキャリア73は、凹部75の内側において回転軸71aの周囲に並んで配置されている。また、各キャリア73の外周部には、全周に亘って遊星ギア部76が設けられている。一方、凹部75の内周部には、各キャリア73の遊星ギア部76と噛合された状態で、回転軸71aと共に回転する太陽ギア部77と、凹部75の外周部には、各キャリア73の遊星ギア部76と噛合される固定ギア部78とが、それぞれ設けられている。
【0069】
これにより、複数のキャリア73は、回転軸71aと共に太陽ギア部77が回転すると、太陽ギア部77及び固定ギア部78と遊星ギア部76との噛合によって、凹部75内で回転軸71aの周囲を当該回転軸71aと同一方向に回転(公転)しながら、互いの中心軸回りに回転軸71aとは逆方向に回転(自転)する、いわゆる遊星運動を行う。
【0070】
したがって、上述した実施形態の各ラップ工程で用いられるラッピングマシーン、並びにポリッシュ工程で用いられるポリッシングマシーンでは、上記構成を採用することにより、各キャリア73の開口部75に保持された複数のガラス基板を遊星運動させながら、その両主面を下定盤71及び上定盤72に設けられた研削パッドにより研削する又は研磨パッドにより研磨することが可能である。また、この構成の場合、ガラス基板に対する研削又は研磨をより精度良く、また迅速に行うことが可能である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0072】
(実施例1)
実施例1では、先ず、外径48mm、中央孔12mm、厚さ0.560mmのガラス基板(オハラ社製、TS−10SX)を用いた。
【0073】
そして、このガラス基板に対して、1次主面ラップ工程と、1次内外周端面研削工程と、2次内外周端面研削工程と、内外周端面エッチング工程と、内周端面ポリッシュ工程と、2次主面ラップ工程と、3次主面ラップ工程と、外周端面ポリッシュ工程と、主面ポリッシュ工程とをこの順で行った。
【0074】
具体的に、1次主面ラップ工程では、上下一対の定盤を備えるラッピングマシーンを用いて、互いに逆向きに回転する定盤の間で複数枚のガラス基板を挟み込みながら、これらガラス基板の両主面を定盤に設けられた研削パッドにより研削した。このとき、1次ラップ加工の研削パッドには、ダイヤモンドパッド(住友3M社製トライザクト(商品名))を使用した。このダイヤモンドパッドは、凸部の外形寸法が2.6mm角、高さが2mm、隣接する凸部の間の間隔が1mm、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が9μmであり、凸部におけるダイヤモンド砥粒の含有量が約20体積%であり、結合剤としてアクリル系樹脂を用いている。また、ラッピングマシーンには、4ウエイタイプ両面研磨機(浜井産業株式会社製16B型)を用い、定盤の回転数を25rpm、加工圧力を120g/cmとして、15分間研削を行った。研削液には、COOLANT D3(ネオス社製)を水で10倍に希釈して使用し、ガラス基板の片面あたりの研削量は約100μmとした。
【0075】
1次内外周端面研削工程では、内周砥石及び外周砥石を備える研削加工装置を用いて、互いの中心孔を一致させた状態でスペーサを挟んで複数枚のガラス基板を積層した積層体を軸回りに回転させながら、各ガラス基板の中心孔に挿入された内周砥石と、各ガラス基板Wの外周に配置された外周砥石とで各ガラス基板を径方向に挟み込み、これら内周砥石及び外周砥石を積層体とは逆向きに回転させながら、内周砥石により各ガラス基板の内周端面を研削すると同時に、外周砥石により各ガラス基板の外周端面を研削した。このとき、内周砥石及び外周砥石には、平均粒径20μmのダイヤモンド砥粒を80体積%含有し、結合剤としてニッケル合金を用いた砥石を使用した。そして、内周砥石の回転数を1200rpm、外周砥石の回転数を600rpmとして、30秒間研削を行い、研削量を約100μmとした。
【0076】
2次内外周端面研削工程では、内周砥石及び外周砥石に、平均粒径が10μmのダイヤモンド砥粒を70体積%含有し、結合剤としてフェノール樹脂を用いた砥石を使用した。そして、内周砥石の回転数を900rpm、外周砥石の回転数を600rpmとして、20秒間研削を行い、研削量を約10μmとした。それ以外は、上記1次内外周端面研削工程と同じ研削加工装置及び同じ方法を用いて研削加工を行った。なお、研削後の研削面の中心線平均粗さRaは0.18μm、最大高さRmaxは1.2μmであった。
【0077】
内外周端面エッチング工程では、ガラス基板をエッチング溶液に浸漬して、ガラス基板Wの内外周端面に対してエッチング処理を施した。エッチング溶液には、濃度1.5質量%のフッ酸と0.5質量%の硫酸との混合水溶液を使用し、液温は30℃、浸漬時間は10分間とした。エッチング処理は、25枚のガラス基板をスペーサを挟んで積層した状態で、各ガラス基板の内外周端面のみをエッチング溶液に接触させて行った。そして、エッチング処理後に純水を用いてガラス基板を洗浄した。
【0078】
内周端面ポリッシュ工程では、内周研磨ブラシを備えるポリッシングマシーンを用いて、内周研磨ブラシに研磨液を滴下しながら、上記積層体を軸回りに回転させると共に、各ガラス基板の中心孔に挿入された内周研磨ブラシをガラス基板とは逆向きに回転させながら上下方向に移動操作することにより、各ガラス基板の内周端面を研磨した。このとき、内周研磨ブラシには、ナイロンブラシを用い、研磨液には、固形分含有率40質量%のシリカ研磨材溶液(平均粒子径0.5μm、フジミ社製Compol)を水に加え、シリカ含有率が1質量%となるように調製した酸化ケイ素スラリーを用いた。そして、内周研磨ブラシの回転数を300rpmとして、10分間研磨を行った。
【0079】
2次主面ラップ工程では、上下一対の定盤を備えるラッピングマシーンを用いて、互いに逆向きに回転する定盤の間で複数枚のガラス基板を挟み込みながら、これらガラス基板の両主面を定盤に設けられた研削パッドにより研削した。このとき、2次ラップ加工の研削パッドには、ダイヤモンドパッド(住友3M社製トライザクト(商品名))を使用した。このダイヤモンドパッドは、凸部の外形寸法が2.6mm角、高さが2mm、隣接する凸部の間の間隔が1mm、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が3μmであり、凸部におけるダイヤモンド砥粒の含有量が約50体積%であり、結合剤としてアクリル系樹脂を用いている。また、ラッピングマシーンには、4ウエイタイプ両面研磨機(浜井産業株式会社製16B型)を用い、定盤の回転数を25rpm、加工圧力を120g/cmとして、10分間研削を行った。研削液には、COOLANT D3(ネオス社製)を水で10倍に希釈して使用し、ガラス基板の片面あたりの研削量は約30μmとした。
【0080】
3次主面ラップ工程では、上下一対の定盤を備えるラッピングマシーンを用いて、互いに逆向きに回転する定盤の間で複数枚のガラス基板を挟み込みながら、これらガラス基板の両主面を定盤に設けられた研削パッドにより研削した。このとき、3次ラップ加工の研削パッドには、ダイヤモンドパッド(住友3M社製トライザクト(商品名))を使用した。このダイヤモンドパッドは、凸部の外形寸法が2.6mm角、高さが2mm、隣接する凸部の間の間隔が1mm、ダイヤモンド砥粒の平均粒径が0.5μmであり、凸部におけるダイヤモンド砥粒の含有量が約60体積%であり、結合剤としてアクリル系樹脂を用いている。また、ラッピングマシーンには、4ウエイタイプ両面研磨機(浜井産業株式会社製16B型)を用い、定盤の回転数を25rpm、加工圧力を120g/cmとして、10分間研削を行った。研削液には、COOLANT D3(ネオス社製)を水で10倍に希釈して使用し、ガラス基板の片面あたりの研削量は約10μmとした。
【0081】
外周端面ポリッシュ工程では、外周研磨ブラシを備えるポリッシングマシーンを用いて、外周研磨ブラシに研磨液を滴下しながら、再び互いの中心孔を一致させた状態でスペーサを挟んで複数枚のガラス基板を積層した積層体を、各ガラス基板の中心孔に挿入された回転シャフトによって軸回りに回転させると共に、各ガラス基板の外周端面に接触させた外周研磨ブラシを積層体とは逆向きに回転させながら上下方向に移動操作することにより、各ガラス基板の外周端面を研磨した。このとき、外周研磨ブラシには、ナイロンブラシを用い、研磨液には、固形分含有率40質量%のシリカ研磨材溶液(平均粒子径0.5μm、フジミ社製Compol)を水に加え、シリカ含有率が1質量%となるように調製した酸化ケイ素スラリーを用いた。そして、研磨ブラシの回転数を300rpmとして、10分間研磨を行った。
【0082】
主面ポリッシュ工程では、上下一対の定盤を備えるポリッシングマシーンを用いて、互いに逆向きに回転する定盤の間で複数枚のガラス基板を挟み込み、ガラス基板に研磨液を滴下しながら、これらガラス基板の両主面を定盤に設けられた研磨パッドにより研磨した。このとき、ポリッシュ加工の研磨パッドには、スウエードタイプ(Filwel製)を用い、研磨液には、固形分含有率40質量%のシリカ研磨材溶液(平均粒子径0.08μm、フジミ製Compol)を水に加え、シリカ含有率が0.5質量%となるように調製した研磨スラリーを用いた。また、ポリッシングマシーンには、4ウエイタイプ両面研磨機(浜井産業株式会社製16B型)を用い、研磨液を7リットル/分で供給しながら、定盤の回転数を25rpm、加工圧力を110g/cmとして、30分間研磨を行った。ガラス基板の片面あたりの研磨量は約2μmとした。
【0083】
そして、得られたガラス基板に対して超音波を併用したアニオン性界面活性剤による化学的洗浄と、純水による洗浄を行い、実施例1の磁気記録媒体用ガラス基板を製造した。
【0084】
(実施例2)
実施例2では、上記実施例1の内外周端面エッチング工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体用ガラス基板の製造を行った。
【0085】
(実施例3)
実施例3では、上記実施例1の内外周端面ポリッシュ工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体用ガラス基板の製造を行った。
【0086】
(実施例4)
実施例4では、上記実施例1の内外周端面エッチング工程及び内外周端面ポリッシュ工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体用ガラス基板の製造を行った。
【0087】
(比較例1)
比較例1では、2次内外周端面研削工程において、内周砥石及び外周砥石に、平均粒径が10μmのダイヤモンド砥粒を70体積%含有し、結合剤としてニッケル合金を用いた砥石を使用した。そして、内周砥石の回転数を600rpm、外周砥石の回転数を300rpmとして、10秒間研削を行い、研削量を約10μmとした。なお、研削後の研削面の中心線平均粗さRaは0.34μm、最大高さRmaxは1.98μmであった。それ以外は、実施例1と同様にして磁気記録媒体用ガラス基板の製造を行った。
【0088】
そして、これら実施例1〜4及び比較例1により得られた磁気記録媒体用ガラス基板に対する耐衝撃強度の評価を行った。この耐衝撃度の評価では、各磁気記録媒体用ガラス基板をモータのスピンドルにチャッキングし、このガラス基板を0rpm〜20000rpmの範囲で急加減速を繰り返しながら回転させ、ガラス基板の破損率を調べることにより行った。その結果、実施例1のガラス基板の破損率は4%、実施例2のガラス基板の破損率は6%、実施例3のガラス基板の破損率は7%、実施例4のガラス基板の破損率は9%、比較例1のガラス基板の破損率は19%であった。
【符号の説明】
【0089】
10…ラッピングマシーン 11,12…定盤 20A,20B…ダイヤモンドパッド 20a…ラップ面 21…凸部 22…基材 30…研削加工装置 31a…第1の内周砥石 32a…第1の外周砥石 31b…第2の内周砥石 32b…第2の外周砥石 40…ポリッシングマシーン 41…内周研磨ブラシ 50…ポリッシングマシーン 51…回転シャフト 52…外周研磨ブラシ 60…ポリッシングマシーン 61,62…定盤 71…下定盤 72…上定盤 73…キャリア 74…開口部 75…凹部 76…遊星ギア部 77…太陽ギア部 78…固定ギア部 W…ガラス基板 X…積層体 S…スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔を有する円盤状のガラス基板の内外周端面に対して、少なくとも研削加工を施す工程を含み、
前記研削加工を施す工程は、ダイヤモンド砥粒を金属からなる結合剤で固定したメタルボンドダイヤ砥石を用いて、前記ガラス基板の内外周端面を研削する1次研削加工と、ダイヤモンド砥粒を樹脂からなる結合剤で固定したレジンボンドダイヤ砥石を用いて、前記ガラス基板の内外周端面を研削する2次研削加工とを含むことを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
更に、前記ガラス基板の内外周端面に対してエッチング加工を施す工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング加工を施す工程は、前記1次又は2研削加工の後に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
更に、前記ガラス基板の内外周端面に対してポリッシュ加工を施す工程を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記ポリッシュ加工を施す工程は、前記2次研削加工の後に行うことを特徴とする請求項4に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記ポリッシュ加工は、研磨剤として酸化セリウムを用いずに行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記メタルボンドダイヤ砥粒は、前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径が10μm以上60μm以下であり、
前記レジンボンドダイヤ砥粒は、前記ダイヤモンド砥粒の平均粒径が2μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記メタルボンドダイヤ砥粒は、前記結合剤がニッケル又はニッケル合金であり、
前記レジンボンドダイヤ砥粒は、前記結合剤がフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−169024(P2012−169024A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30986(P2011−30986)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】