説明

移動体駆動装置

【課題】一定速走行中における操作者の負担を軽減し、快適に移動体を駆動することができるようにする。
【解決手段】車速マップ記憶部34には、操作者の手が把持部20に載せられたときに力センサ22によって計測された重力方向の荷重と標準速度とが対応し、かつ、重力方向の荷重が大きくなるに従って、車速が速くなるように定められた重力方向の荷重と車速との関係を示す車速マップが記憶されている。操作者の手を把持部20に載せた状態で、操作者側から把持部20に荷重を作用させると、力センサ22によって、把持部20に作用する重力方向の荷重を計測する。そして、速度変換部40によって、車速マップに基づいて、力センサ22によって計測された重力方向の荷重を車速に変換し、駆動制御部42によって、速度変換部40によって変換された速度で電動車椅子10が移動するように、駆動部16を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体駆動装置に係り、特に、操作部を操作することにより、移動体を駆動させる移動体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のアクセルペダルの操作性を改善し、安全性を向上させる自動車運転用アクセル操作装置が知られている(特許文献1)。この自動車運転用アクセル操作装置では、アクセル操作は左右で入力し、ブレーキ操作は前後で入力するように、入力方向毎に異なる運動に割り当てることで、アクセルとブレーキの踏み間違いを減らしている。また、アクセルペダルに足を掛けてペダルが最下位に位置するように旋回させたとき、自動車が低速安定走行状態となるようにエンジンのスロットル開度が調節されるように設定することで、ペダルに掛る運転者の右足の自重により、自然に自動車を低速安定走行状態に落ち着かせることができ、運転も楽になるようになっている。
【0003】
また、手首及び指に負担がかからないマウスが知られている(特許文献2)。このマウスでは、ユーザがマウスに手の自重をかけるか否かによって、有効状態と無効状態とを切り換えることができる。
【0004】
また、電動車椅子などの低速移動体の速度入力方法としては、ジョイスティック(角度入力)が一般的である。
【特許文献1】特開平7−63074号公報
【特許文献2】特開2007−122475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ジョイスティックを用いた速度入力方法では、長時間の一定速走行を行なう場合、ジョイスティックの傾斜を保つ必要があり、操作者に負担がかかってしまう、という問題がある。
【0006】
また、上記の特許文献1に記載の技術では、速度を変える時には足を動かす必要があるため、低速走行時以外は、自身の足の自重を支えるか、力を発揮する必要があり、長時間運転の際に、操作者に負担がかかってしまう、という問題がある。
【0007】
また、上記の特許文献2に記載の技術では、手の自重をマウスにかけることにより、オンオフ的な入力のみが可能であり、アクセル操作のようなアナログ的な入力には対応することができない、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、一定速走行中における操作者の負担を軽減し、快適に移動体を駆動することができる移動体駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る移動体駆動装置は、操作者の特定部位を載せた状態で操作者側から荷重を作用させることが可能な操作部と、前記操作部に作用する所定方向の荷重を計測する計測部と、前記操作者の前記特定部位が前記操作部に載せられたときに前記計測部によって計測された前記所定方向の荷重と標準速度とが対応し、かつ、前記所定方向の荷重が大きくなるに従って、速度が速くなるように定められた前記所定方向の荷重と前記速度との関係に基づいて、前記計測部によって計測された前記所定方向の荷重を前記速度に変換する変換手段と、前記変換手段によって変換された速度で操作対象の移動体が移動するように、前記移動体を駆動する駆動部を制御する制御手段とを含んで構成されている。
【0010】
本発明に係る移動体駆動装置によれば、操作者の特定部位を操作部に載せた状態で、操作者側から操作部に荷重を作用させると、計測部によって、操作部に作用する所定方向の荷重を計測する。
【0011】
そして、変換手段によって、所定方向の荷重と速度との関係に基づいて、計測部によって計測された所定方向の荷重を速度に変換し、制御手段によって、変換手段によって変換された速度で操作対象の移動体が移動するように、移動体を駆動する駆動部を制御する。
【0012】
このように、所定方向の荷重と速度との関係で、操作者の特定部位が操作部に載せられたときに作用する荷重と標準速度とが対応しており、操作者の特定部位を操作部に載せることによって、標準速度で移動体を駆動させることができるため、一定速走行中における操作者の負担を軽減し、快適に移動体を駆動することができる。
【0013】
本発明に係る制御手段は、計測部によって所定値以上の所定方向の荷重が計測された場合には、速度が増加しないように、駆動部及び移動体を制動する制動部の少なくとも一方を制御することができる。これによって、操作者が大きな荷重を操作部に作用させてしまった場合であっても、移動体を安全に駆動させることができる。
【0014】
例えば、所定方向の荷重と速度との関係について、荷重が所定値以上となる領域において、荷重が大きくなるに従って、速度が低下するように定めておけばよい。
【0015】
本発明に係る制御手段は、計測部によって計測された所定方向の荷重の所定時間当たりの変化量が所定値以上であった場合には、速度が増加しないように、駆動部及び移動体を制動する制動部の少なくとも一方を制御することができる。これによって、操作者が大きな変化量の荷重を操作部に作用させるような場合に、移動体を安全に駆動させることができる。
【0016】
例えば、変換手段は、所定方向の荷重の所定時間当たりの変化量が所定値以上であった場合、荷重と速度との関係において計測された荷重に対応する速度より低い速度に変換することができる。
【0017】
本発明に係る計測部は、操作部に作用する前記所定方向の荷重を計測すると共に、所定方向とは異なる特定方向の荷重を計測し、移動体駆動装置は、特定方向の荷重が大きくなるに従って、操舵角が大きくなるように定められた特定方向の荷重と操舵角との関係に基づいて、計測部によって計測された特定方向の荷重を操舵角に変換する操舵角変換手段と、操舵角変換手段によって変換された操舵角に応じた移動方向となるように移動体を制御する移動方向制御手段とを更に含むことができる。これによって、操作部に特定方向の荷重を作用させることによって、移動体の操舵角を操作することができるため、快適に移動体の移動方向を制御することができる。
【0018】
上記の操舵角変換手段及び移動方向制御手段を含む移動体駆動装置は、操舵角が大きくなるに従って速度の上限値が低くなるように定められた操舵角と速度の上限値との関係に基づいて、操舵角変換手段によって変換された操舵角に対応する速度の上限値を特定する上限値特定手段を更に含み、制御手段は、移動体の速度が、特定された速度の上限値を超えないように、駆動部及び移動体を制動する制動部の少なくとも一方を制御することができる。これによって、操舵角が大きくなると、速度の上限値が低くなるため、移動体の移動方向を制御すると共に、安全に移動体を駆動させることができる。
【0019】
上記の移動体を、電動車椅子又はシニアカーとすることができる。
【0020】
上記の所定方向を、重力方向とすることができる。また、上記の特定部位を、手又は足とすることができる。
【0021】
上記の所定方向の荷重と速度との関係を、所定方向の荷重が大きくなるに従って、所定方向の荷重の変化に対する速度の変化が小さくなるように定めることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の移動体駆動装置によれば、所定方向の荷重と速度との関係で、操作者の特定部位が操作部に載せられたときに作用する荷重と標準速度とが対応しており、操作者の特定部位を操作部に載せることによって、標準速度で移動体を駆動させることができるため、一定速走行中における操作者の負担を軽減し、快適に移動体を駆動することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本実施の形態では、電動車椅子に本発明を適用した場合について説明する。
【0024】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る電動車椅子10は、操作者の手によって加えられる荷重が入力される入力部12と、入力された荷重に基づいて、駆動信号及び操舵指令信号を生成して出力する制御部14と、モータから構成され、駆動信号に基づいて、モータを駆動する駆動部16と、操舵指令信号に基づいて、操舵を行う操舵部18とを備えている。
【0025】
図2に示すように、入力部12は、手の自重をかけやすい形状(例えば、半球状)であって、かつ、手を載せた状態で操作者側から荷重を作用させることが可能な操作部としての把持部20と、操作者の手から把持部20に作用する重力方向(図2のZ方向(上下方向)参照)の荷重及び左右方向(図2のY方向参照)の荷重を計測する計測部としての力センサ22と、把持部20に組み込まれ、かつ、把持部20に生じる重力方向の加速度を検出する加速度センサ24とを備えている。
【0026】
図3(A)、(B)に示すように、入力部12は、回転可能に構成されており、入力部12が回転することにより、操作者の感覚的な前後方向と、力センサ22の前後軸を合わせることができる。例えば、Z軸中心に10°回転し、左右方向の入力を操作者が入力しやすいように、入力部12の前後軸を設定する。
【0027】
力センサ22は、6分力計から構成され、操作者の手から把持部20に作用した荷重を6操作方向(左右、前後、上下、左右軸周りの回転方向、前後軸周りの回転方向、上下軸周りの回転方向)毎に計測し、6操作方向の各々の荷重(左右方向の並進力Fx、前後方向の並進力Fy、上下方向の並進力Fz、左右軸周りの回転方向のトルクTx、前後軸周りの回転方向のトルクTy、上下軸周りの回転方向のトルクTz)に応じた検知信号を出力する。本実施の形態では、上下方向(重力方向)の荷重を、車速入力に割り当て、左右方向の荷重を、操舵入力に割り当てる。なお、把持部20は、変位しないため、加えられる荷重のみが入力となる。
【0028】
なお、従来既知のコンピュータのマウスと同様に、把持部20にスイッチ類を付加し、ライト点灯やウィンカのオンオフを入力することができるようにしてもよい。
【0029】
制御部14は、CPUと、RAMと、後述する駆動操舵制御処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。制御部14は、加速度センサ24によって検出された重力方向の加速度に基づいて、外乱により発生した力を算出し、力センサ22により計測された重力方向の荷重から、外乱によって発生した力を差し引いて、計測された重力方向の荷重を補正する外乱補正部26と、外乱補正部26によって補正された重力方向の荷重に基づいて、操作者の手から把持部20に作用した重力方向の荷重の微分量(単位時間当たりの変化量)を算出する微分量算出部28と、力センサ22により計測された左右方向の荷重を、操舵角に変換する操舵角変換部30と、操舵角変換部30によって変換された操舵角に基づいて、操舵角指令信号を操舵部18に出力し、電動車椅子10が、変換された操舵角に応じた移動方向となるように操舵部18を制御する操舵制御部32とを備えている。
【0030】
外乱補正部26は、以下に説明するように、計測された重力方向の荷重を補正する。まず、随意的な入力によって力センサ22から出力された検知信号と、随意的な入力ではなく外乱により力センサ22から出力されたノイズ信号とを分離するために、加速度センサ24によって検出された重力方向の加速度に、操作者の手の自重と把持部20の質量との和を掛け合わせて、誤入力分の荷重を計算する。そして、力センサ22から検出された重力方向の荷重から、計算された誤入力分の荷重を差し引いて、計測された重力方向の荷重を補正する。
【0031】
操舵角変換部30は、左右方向の荷重が大きくなるに従って電動車椅子10の操舵角が大きくなるように予め定められた左右方向の荷重と操舵角との関係に基づいて、力センサ22によって計測された左右方向の荷重を、操舵角に変換する。
【0032】
また、制御部14は、重力方向の荷重と車速との関係を示す車速マップを記憶した車速マップ記憶部34と、重力方向の荷重の微分量と入力係数との関係を示す入力係数マップを記憶した入力係数マップ記憶部36と、操舵角変換部30によって変換された操舵角に応じた車速の上限値係数を特定する上限値特定部38と、微分量算出部28によって算出された重力方向の荷重の微分量、車速マップ、入力係数マップ、及び上限値特定部38によって特定された車速の上限値係数に基づいて、補正された重力方向の荷重を車速に変換する速度変換部40と、速度変換部40によって変換された車速に基づいて、車速指令信号を駆動部16に出力し、電動車椅子10の車速が、変換された車速となるように、駆動部16を制御する駆動制御部42とを備えている。
【0033】
速度変換部40は、補正された重力方向の荷重に応じて車速マップから得られる車速目標値、算出された重力方向の荷重の微分量に応じて入力係数マップから得られる入力係数、及び特定された車速の上限値係数に基づいて、以下の(1)式に従って、車速を求める。
車速 = 車速目標値 × 入力係数 × 上限値係数 ・・・(1)
【0034】
図4に示すように、車速マップ記憶部34に記憶されている車速マップには、重力方向の入力荷重と車速目標値との関係が定められ、重力方向の入力荷重が大きくなるに従って、最高速度(例えば、6km/h)まで車速目標値が大きくなるように定められている。また、車速マップには、通常の一定速走行時の標準速度としての車速目標値(例えば、3km/h)に対する重力方向(Z軸方向)の入力荷重として、操作者の手の自重分の値(例えば、成人男性で約800g)が定められている。
【0035】
上述した車速マップにより、標準速度での一定速走行を行なう場合は、把持部20に楽に手を載せ、手の自重により把持部20に荷重を作用させる。これによって、標準速度での一定速走行時に、自動車のアクセルのように力を出し続ける(維持し続ける)必要がなくなるため、標準速度での一定速走行時の速度維持のための操作が、操作者にとって楽になる。なお、標準速度より速度をアップさせる場合には、力センサ22の重力方向にさらに荷重を加え、標準速度より減速する場合には、把持部20に作用させる重力方向の荷重を軽くする(手を浮かす)。また、ブレーキをかける場合には、手を把持部20から離して、把持部20に作用させる荷重を0にする。
【0036】
また、車速マップでは、重力方向の入力荷重が閾値以上となる領域において、重力方向の荷重が大きくなるに従って、低下する車速目標値が定められている。これによって、緊急時やパニック時などに操作者が思わず力を入れてしまい、重力方向の入力荷重が大きくなっても、減速するため、加速してしまうことを防止することができる。なお、上記の閾値については、実験的又は統計的に、通常走行時における重力方向の入力荷重を予め求めておき、例えば、重力方向の入力荷重の最大値に相当する値(手の自重の2〜3倍の値)を、閾値として設定しておけばよい。
【0037】
図5に示すように、入力係数マップ記憶部36に記憶されている入力係数マップには、重力方向の入力荷重の微分量と入力係数との関係が定められ、予め定められた閾値(例えば、4N/sec)未満の入力荷重の微分量に対して、入力係数1が定められている。また、入力係数マップでは、重力方向の入力荷重の微分量が閾値以上となる領域において、減速するように1未満の低い入力係数が割り当てられ、入力荷重の微分量が大きくなるに従って、低くなる入力係数が定められている。また、閾値より大きい所定の微分量(例えば、手の自重と同じ入力(8N)が1秒間に入力された場合の微分量8N/sec)において、入力係数が0(ブレーキ状態)となるように定められている。なお、上記の閾値については、実験的又は統計的に、通常走行時における重力方向の入力荷重の微分量を予め求めておき、例えば、手で把持部20を重力方向に押さえつけたときに測定される重力方向の入力荷重の微分量の最大値に相当する値を、閾値として設定しておけばよい。
【0038】
低速時にも緊急制動が必要になる場面が想定されることから、ある程度の以上の変化量で重力方向に荷重が把持部20に作用した場合、上記の入力係数マップによって、電動車椅子10を減速させる。また、操作者が思わず力を入れてしまう場合は、短時間に重力方向の入力荷重が増加することから、人間の自然な反応と入力とを対応付けて、重力方向の入力荷重の微分量が大きい場合に、入力係数を低くして、電動車椅子10の速度が減少するように制御する。
【0039】
また、従来既知のジョイスティックでは、機構的にガイドを設け、傾斜角を制限することで、旋回中の速度を抑えることが可能であるが、本実施の形態に係る入力部12において車速の入力と左右操舵の入力とを単純に組み合わせた場合、旋回中に最高速が出て高速回転となり、転倒してしまう可能性がある。
【0040】
そこで、上限値特定部38では、図6に示すような上限値係数マップに基づいて、操舵角に応じた車速の上限値係数を特定する。上限値係数マップには、操舵角と車速の上限値係数との関係が定められ、操舵角が大きくなるに従って、車速の上限値を低くするために、上限値係数が低くなるように定められている。
【0041】
ここで、上限値係数マップは、以下の(2)式で表される。
【0042】
【数1】

【0043】
ただし、xは、操舵角を示す操舵指令値であり、最大値が1になるように正規化されている値である。また、yは、上限値係数である。
【0044】
また、上記(2)式より、以下の(3)式、(4)式が得られる。
【0045】
【数2】

【0046】
上限値特定部38では、上記(3)式、(4)式に従って、操舵角変換部30によって変換された操舵角xに応じた上限値係数yを特定する。
【0047】
ここで、力センサ22の分解能について説明する。発明者らの実験結果から、人間が能動的に出せる最小の力の変化は、並進方向(Fx、Fy、Fz)について約0.2Nであり、トルク方向(Tx、Ty、Tz)について約0.02Nmであることが分かった。そこで、力センサ22には、この力の変化を検出できる程度の分解能があればよい。例えば、並進方向については0.1N程度の分解能があり、トルク方向については0.01Nm程度の分解能があれば十分である。また、入力荷重が大きくなるほど、人間が制御できる最小の力の変化も大きくなるので(後述する図12参照)、入力荷重が大きくなるに従って、力センサ22の分解能を粗く(大きく)してもよい。
【0048】
次に、第1の実施の形態に係る電動車椅子10の作用について説明する。まず、操作者が初めて操作する場合に、操作ボタン(図示省略)によってキャリブレーションが指示され、制御部14において、以下に説明するキャリブレーション処理が実行される。
【0049】
まず、把持部20に何も載せていない状態でキャリブレーションを行ない、力センサ22で計測される重力方向の荷重を、重力方向の入力荷重0とし、操作者が手を離すことで重力方向の入力荷重が0になったときに、ブレーキがかかるように、車速マップを定める。
【0050】
次に、手を把持部20に載せ、この状態で力センサ22によって計測される重力方向の入力荷重(手の自重による荷重)を、車速マップにおける標準速度に対応する入力荷重として設定して、車速マップを生成する。
【0051】
更に、左右方向の入力を、操作者に対して入力しやすいように、入力部12を回転させて前後軸を設定する。
【0052】
次に、制御部14において図7に示す駆動操舵制御処理ルーチンが実行される。まず、ステップ100において、力センサ22より計測された重力方向及び左右方向の各々の入力荷重を取得し、ステップ102において、加速度センサ24より検出された重力方向の加速度を取得する。
【0053】
そして、ステップ104において、上記ステップ102で取得した加速度を用いて、上記ステップ100で取得した重力方向の入力荷重から外乱成分を差し引いて補正する。次のステップ106では、上記ステップ100で取得した左右方向の入力荷重を、操舵角に変換し、ステップ108において、上記ステップ104で補正された重力方向の入力荷重に基づいて、重力方向の入力荷重の微分量を算出する。
【0054】
次のステップ110では、上限値係数マップに基づいて、上記ステップ106で変換された操舵角に応じた車速の上限値係数を特定し、ステップ112において、上記ステップ104で補正された重力方向の入力荷重を、車速に変換する。上記ステップ112では、車速マップに基づいて、上記ステップ104で補正された重力方向の入力荷重に応じた車速目標値を取得し、入力係数マップに基づいて、上記ステップ108で算出された重力方向の入力荷重の微分量に応じた入力係数を取得し、取得した車速目標値、入力係数、及び上記ステップ110で特定した車速の上限値係数に基づいて、上記(1)式に従って、車速を算出する。
【0055】
そして、ステップ114では、上記ステップ106で変換された操舵角に基づいて、操舵部18を制御して、電動車椅子10の移動方向を制御すると共に、上記ステップ112で変換された車速に基づいて、駆動部16を制御して、電動車椅子10の車速を制御し、ステップ100へ戻る。
【0056】
上記のように駆動操舵制御処理ルーチンを実行すると、操作者が手を把持部20に載せて、手の自重により把持部20に荷重を作用させ続けた場合には、標準速度(例えば、3km/h)で一定速走行するように、駆動部16が制御され、電動車椅子10が標準速度で一定速走行する。
【0057】
また、操作ボタン(図示省略)によって標準速度の再設定が指示された場合には、操作ボタンによって、標準速度を、基本設定の3km/hから、例えば、0km(停止)又は6km/h(最高速度)に変更することができる。例えば、人ごみの中など、障害物が多く停車が多い走行環境では、車速マップにおいて手の自重分の荷重に対応して定められる標準速度としての車速目標値を、0km/hと設定することにより、把持部20に手を載せたまま停車でき、かつ最高速度も低く抑えられることができる。また、郊外など障害物が少なく長距離を移動する必要がある走行環境では、車速マップにおいて手の自重分の荷重に対応して定められる標準速度としての車速目標値を、6km/hと設定することにより、高速での移動を楽に行なうことができるようになる。
【0058】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る電動車椅子によれば、重力方向の荷重と車速との関係を示す車速マップで、操作者の手が把持部に載せられたときに作用する重力方向の荷重と標準速度とが対応しており、操作者の手を把持部に載せることによって、標準速度で電動車椅子を駆動させることができるため、一定速での走行が多く、加減速をあまり必要としない電動車椅子において、標準速度での一定速走行中における操作者の負担を軽減し、快適に電動車椅子を駆動することができる。
【0059】
また、緊急時やパニック時に操作者が大きな荷重を把持部に作用させてしまった場合であっても、電動車椅子を安全に駆動させることができる。また、難しい走行パターン時に、操作者が思わず力を入れてしまった場合であっても、電動車椅子を安全に駆動させることができる。
【0060】
また、緊急制動が必要となる場合には、操作者が大きな微分量で荷重を把持部に作用させることにより、車速を減速させることができるため、電動車椅子を安全に駆動させることができる。
【0061】
また、把持部に左右方向の荷重を作用させることによって、電動車椅子の操舵角を操作することができるため、快適に電動車椅子の移動方向を制御することができる。また、操舵角が大きくなると、車速の上限値が低くなるため、電動車椅子の移動方向を制御すると共に、安全に電動車椅子を駆動させることができる。
【0062】
また、操作者の手の自重分の重力方向の荷重を、最もよく使う標準速度に割り当て、加減速をする回数を減らすことで、手の負担を軽減し、さらに緊急時など無意識に力が入った場合には、車速マップ及び入力係数マップを用いて速度を減少させるため、電動車椅子など低速走行車両を、快適かつ安全に操作することを可能にする。
【0063】
また、加速と減速との入力を1軸上で行なえるため、システムをコンパクトに構成することが出来る。
【0064】
また、ジョイスティックなどの角度入力方式と比較して、本実施の形態のような力入力方式は変位を伴わないため、操作の切り換えを速く行なうことができる。
【0065】
なお、上記の実施の形態では、車速マップにおいて、閾値以上の重力方向の入力荷重に対応して、低い車速が定められている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、重力方向の入力荷重が閾値以上となったときに、減速させるように駆動部を制御するようにしてもよい。また、重力方向の入力荷重が閾値以上となったときに、閾値以上となったときからの経過時間に応じて、車速を低下させるように駆動部を制御してもよい。
【0066】
また、入力係数マップにおいて、閾値以上の重力方向の入力荷重の微分量に対応して、1より小さい入力係数が定められている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、重力方向の入力荷重の微分量が閾値以上となったときに、減速させるように駆動部を制御するようにしてもよい。また、重力方向の入力荷重の微分量が閾値以上となったときに、閾値以上となったときからの経過時間に応じて、車速を低下させるように制御してもよい。
【0067】
また、上限値係数マップに基づいて、車速の上限値係数を特定して、操舵角が大きい場合に、速くない車速に変換する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、操舵角に応じた車速の上限値を特定し、速度が特定された上限値を超えないように駆動部を制御するようにしてもよい。
【0068】
次に、第2の実施の形態に係る電動車椅子について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0069】
第2の実施の形態では、制動部によって電動車椅子にブレーキをかけている点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0070】
図8に示すように、第2の実施の形態に係る電動車椅子210は、入力部12と、入力された荷重に基づいて、駆動信号、制動指令信号、及び操舵指令信号を生成して出力する制御部214と、駆動部16と、操舵部18と、制動指令信号に基づいて、制動を行う制動部216とを備えている。
【0071】
制御部214は、外乱補正部26と、微分量算出部28と、操舵角変換部30と、操舵制御部32と、車速マップ記憶部34と、入力係数マップ記憶部36と、上限値特定部38と、速度変換部40と、駆動制御部42と、重力方向の荷重とブレーキ量との関係を示すブレーキマップを記憶したブレーキマップ記憶部234と、重力方向の荷重の微分量とブレーキ係数との関係を示すブレーキ係数マップを記憶したブレーキ係数マップ記憶部236と、微分量算出部28によって算出された重力方向の荷重の微分量、ブレーキマップ、及びブレーキ係数マップに基づいて、補正された重力方向の荷重をブレーキ量に変換するブレーキ変換部240と、ブレーキ変換部240によって変換されたブレーキ量に基づいて、制動指令信号を制動部216に出力し、変換されたブレーキ量の制動を行うように、制動部216を制御する制動制御部242とを備えている。
【0072】
ブレーキ変換部240は、補正された重力方向の荷重に応じてブレーキマップから得られるブレーキ指令値、及び算出された重力方向の荷重の微分量に応じてブレーキ係数マップから得られるブレーキ係数に基づいて、以下の(5)式から、ブレーキ量を求める。
ブレーキ量 = ブレーキ指令値× ブレーキ係数 ・・・(5)
【0073】
図9(B)に示すように、ブレーキマップ記憶部234に記憶されているブレーキマップには、重力方向の入力荷重とブレーキ指令値との関係が定められ、重力方向の入力荷重が閾値未満となる領域において、ブレーキ指令値0が定められている。また、ブレーキマップでは、重力方向の入力荷重が閾値以上となる領域(図9(A)に示すように、車速マップにおける重力方向の入力荷重が閾値以上となる領域と同じ領域)において、重力方向の荷重が大きくなるに従って、ブレーキ量が大きくなるように定められている。
【0074】
図10(B)に示すように、ブレーキ係数マップ記憶部236に記憶されているブレーキ係数マップには、重力方向の入力荷重の微分量とブレーキ係数との関係が定められ、閾値未満の入力荷重の微分量に対して、ブレーキ係数0が定められている。また、ブレーキ係数マップでは、重力方向の入力荷重の微分量が閾値以上となる領域(図10(A)に示すように、入力係数マップにおける重力方向の入力荷重が閾値以上となる領域と同じ領域)において、入力荷重の微分量が大きくなるに従って、ブレーキ係数が大きくなるように定められている。
【0075】
次に、第2の実施の形態に係る駆動操舵制御処理ルーチンでは、力センサ22より計測された重力方向及び左右方向の各々の入力荷重を取得し、加速度センサ24から検出された重力方向の加速度を取得し、そして、取得した重力方向の入力荷重を補正する。
【0076】
そして、取得した左右方向の入力荷重を、操舵角に変換し、補正された重力方向の入力荷重に基づいて、重力方向の入力荷重の微分量を算出する。
【0077】
次に、上限値係数マップに基づいて、変換された操舵角に応じた上限値係数を特定し、そして、車速マップに基づいて、補正された重力方向の入力荷重に応じた車速目標値を取得し、入力係数マップに基づいて、算出された重力方向の入力荷重の微分量に応じた入力係数を取得し、取得した車速目標値、入力係数、及び特定した上限値係数に基づいて、車速を算出する。
【0078】
また、ブレーキマップに基づいて、補正された重力方向の入力荷重に応じたブレーキ指令値を取得し、ブレーキ係数マップに基づいて、算出された重力方向の入力荷重の微分量に応じたブレーキ係数を取得し、取得したブレーキ指令値、及びブレーキ係数に基づいて、上記(5)式に従って、補正された重力方向の入力荷重を、ブレーキ量に変換する。
【0079】
そして、変換された操舵角に基づいて、操舵部18を制御して、電動車椅子210の移動方向を制御すると共に、変換された車速に基づいて、駆動部16を制御して、電動車椅子210の車速を制御する。また、変換されたブレーキ量に基づいて、制動部216を制御して、電動車椅子210のブレーキを制御する。
【0080】
このように、緊急時やパニック時に操作者が大きな荷重を把持部に作用させてしまった場合であっても、制動部に制動させることができるため、電動車椅子を安全に駆動させることができる。
【0081】
また、操作者が大きな微分量で荷重を把持部に作用させた場合には、制動部に制動させて、車速を減速することができるため、電動車椅子を安全に駆動させることができる。
【0082】
なお、上記の実施の形態では、ブレーキマップにおいて、閾値以上の重力方向の入力荷重に対応して、大きいブレーキ量が定められている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、重力方向の入力荷重が閾値以上となったときに、減速させるように制動部を制御してもよい。また、重力方向の入力荷重が閾値以上となったときに、閾値以上となったときからの経過時間に応じて、ブレーキ量が増加するように制御してもよい。
【0083】
また、ブレーキ係数マップにおいて、閾値以上の重力方向の入力荷重の微分量に対応して、0より大きいブレーキ係数が定められている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、重力方向の入力荷重の微分量が閾値以上となったときに、減速させるように制動部を制御してもよい。また、重力方向の入力荷重の微分量が閾値以上となったときに、閾値以上となったときからの経過時間に応じて、ブレーキ量が大きくなるように制御してもよい。
【0084】
次に、第3の実施の形態に係る電動車椅子について説明する。なお、第3の実施の形態に係る電動車椅子は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して、説明を省略する。
【0085】
第3の実施の形態では、入力荷重の変化の感覚量と速度変化とが直線的になるように車速マップが定められている点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0086】
第3の実施の形態に係る電動車椅子の制御部14の車速マップ記憶部34には、図11に示すような、重力方向の入力荷重が大きくなるに従って、重力方向の入力荷重の変化に対する車速目標値の変化が小さくなるように定められた車速マップが記憶されている。
【0087】
ここで、本実施の形態の原理について説明する。発明者らの実験により、操作者が重力方向に荷重をかけている場合、意図的に操作できる(力を入れたり抜いたりすることができる)荷重の大きさの変化は、入力荷重の10〜20%であることが分かった。例えば、入力荷重が1kgである場合には、100〜200gの荷重を調整することができる。図12に示すように、入力荷重が大きくなるに従って、人間が出せる最小の力の変化(制御できる最小の力の変化)は大きくなり、人間が出せる最小の力の変化Yは、以下の式で表される。
Y=kX+C
ここで、k、Cは、定数であり、0.1≦k≦0.2である。
【0088】
従って、操作者が入力した入力荷重の変化の感覚量は同じでも、入力荷重の大きさによって、実際に入力した入力荷重の変化量が異なる。一方、操作者にとっての最小発揮量(最小の力を出したときの力の変化の感覚量)に対応する出力(車速の変化)が直線的であると、操作の違和感が少なくなる。
【0089】
そこで、本実施の形態では、入力荷重が大きくなるほど大きくなる人間がさせる最小の入力荷重の変化量(入力荷重の10〜20%)に対して、同じ車速目標値の変化量を定めることにより、結果として、重力方向の入力荷重が大きくなるに従って、重力方向の入力荷重の変化に対する車速目標値の変化が小さくなるように、車速マップが定められている。
【0090】
また、車速マップには、上記の第1の実施の形態と同様に、通常の一定速走行時の標準速度としての車速目標値に対する重力方向の入力荷重として、操作者の手の自重分の値が定められている。
【0091】
なお、電動車椅子の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0092】
このように、入力荷重の変化の感覚量と速度変化とが直線的になるように車速マップを定めておくことにより、操作者は、入力荷重を変化させて、違和感なく車速を操作することができる。
【0093】
なお、上記の第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、把持部に作用する左右方向の荷重を、操舵角に変換していた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、把持部の左右方向の変位を、操舵角に変換させるようにしてもよい。この場合には、入力部について、把持部を左右方向に変位可能に構成し、把持部の左右方向の変位を計測する構成を備えるようにすればよい。また、把持部の他の操作方向の変位を、操舵角に変換させるように割り当ててもよい。
【0094】
また、左右方向の荷重を、操舵角に変換する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、力センサによって計測された他の操作方向(重力方向以外の方向)の荷重を、操舵角に変換するように割り当ててもよい。
【0095】
また、操作者の手から入力部の把持部に荷重を作用させる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、操作者の特定部位から入力部の把持部に荷重を作用させるようにすればよい。例えば、操作者の足から入力部の把持部に荷重を作用させるようにしてもよい。この場合には、車速マップにおいて、通常の一定速走行時の標準速度に対する重力方向の入力荷重として、操作者の足の自重分の値を定めておけばよい。
【0096】
また、重力方向の荷重を、車速に変換する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、力センサによって計測された他の方向の荷重を、車速に変換するように割り当ててもよい。例えば、重力方向と前後方向との合力方向の荷重を、車速に変換するように割り当ててもよい。
【0097】
また、前進時の駆動を制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、後進時の駆動も制御するようにしてもよい。この場合には、前進と後進との切り替えスイッチを設け、前進時と同じ駆動制御を後進時にも適用することにより、後進時であっても安全かつ快適な走行を実現することができる。例えば、前進スイッチがオンされている場合には、手の自重をかけると、標準速度(例えば3km/h)で前進し、後進スイッチがオンされている場合には、手の自重をかけると、標準速度(例えば、3km/h)で後進するように制御すればよい。また、後進時は操作がやや難しい場面もあるため、後進時の標準速度を前進時の標準速度よりも低速(例えば、1.5km/h)に設定してもよい。
【0098】
また、操作対象の移動体として、電動車椅子を用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、一定速走行が多い他の種類の移動体を、操作対象の移動体としてもよい。例えば、シニアカーを操作対象の移動体としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電動車椅子の構成を示す概略図である。
【図2】入力部の把持部に手を載せた状態を示すイメージ図である。
【図3】操作者の感覚に合わせて、入力部を回転させた様子を示すイメージ図である。
【図4】入力荷重と車速目標値との関係を示す車速マップを示すグラフである。
【図5】入力荷重の微分量と入力係数との関係を示す入力係数マップを示すグラフである。
【図6】操舵角と上限値係数との関係を示す上限値係数マップを示すイメージ図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る電動車椅子の制御部で実行される駆動操舵制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る電動車椅子の構成を示す概略図である。
【図9】(A)車速マップを示すグラフ、及び(B)入力荷重とブレーキ指令値との関係を示すブレーキマップを示すグラフである。
【図10】(A)入力係数マップを示すグラフ、及び(B)入力荷重の微分量とブレーキ係数との関係を示すブレーキ係数マップを示すグラフである。
【図11】第3の実施の形態に係る電動車椅子の車速マップ記憶部に記憶されている車速マップを示すグラフである。
【図12】入力荷重と人間が出せる最小の力の変化との関係を表わすグラフである。
【符号の説明】
【0100】
10、210 電動車椅子
12 入力部
14、214 制御部
16 駆動部
18 操舵部
20 把持部
22 力センサ
24 加速度センサ
26 外乱補正部
28 微分量算出部
30 操舵角変換部
32 操舵制御部
34 車速マップ記憶部
36 入力係数マップ記憶部
38 上限値特定部
40 速度変換部
42 駆動制御部
216 制動部
234 ブレーキマップ記憶部
236 ブレーキ係数マップ記憶部
240 ブレーキ変換部
242 制動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の特定部位を載せた状態で操作者側から荷重を作用させることが可能な操作部と、
前記操作部に作用する所定方向の荷重を計測する計測部と、
前記操作者の前記特定部位が前記操作部に載せられたときに前記計測部によって計測された前記所定方向の荷重と標準速度とが対応し、かつ、前記所定方向の荷重が大きくなるに従って、速度が速くなるように定められた前記所定方向の荷重と前記速度との関係に基づいて、前記計測部によって計測された前記所定方向の荷重を前記速度に変換する変換手段と、
前記変換手段によって変換された速度で操作対象の移動体が移動するように、前記移動体を駆動する駆動部を制御する制御手段と、
を含む移動体駆動装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記計測部によって所定値以上の前記所定方向の荷重が計測された場合には、前記速度が増加しないように、前記駆動部及び前記移動体を制動する制動部の少なくとも一方を制御する請求項1記載の移動体駆動装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記計測部によって計測された前記所定方向の荷重の所定時間当たりの変化量が所定値以上であった場合には、前記速度が増加しないように、前記駆動部及び前記移動体を制動する制動部の少なくとも一方を制御する請求項1又は2記載の移動体駆動装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記操作部に作用する前記所定方向の荷重を計測すると共に、前記所定方向とは異なる特定方向の荷重を計測し、
前記特定方向の荷重が大きくなるに従って、操舵角が大きくなるように定められた前記特定方向の荷重と前記操舵角との関係に基づいて、前記計測部によって計測された前記特定方向の荷重を前記操舵角に変換する操舵角変換手段と、
前記操舵角変換手段によって変換された操舵角に応じた移動方向となるように前記移動体を制御する移動方向制御手段とを更に含む請求項1〜請求項3の何れか1項記載の移動体駆動装置。
【請求項5】
前記操舵角が大きくなるに従って前記速度の上限値が低くなるように定められた前記操舵角と前記速度の上限値との関係に基づいて、前記操舵角変換手段によって変換された前記操舵角に対応する前記速度の上限値を特定する上限値特定手段を更に含み、
前記制御手段は、前記移動体の速度が、前記特定された前記速度の上限値を超えないように、前記駆動部及び前記移動体を制動する制動部の少なくとも一方を制御する請求項4記載の移動体駆動装置。
【請求項6】
前記移動体を、電動車椅子又はシニアカーとした請求項1〜請求項5の何れか1項記載の移動体駆動装置。
【請求項7】
前記所定方向を、重力方向とした請求項1〜請求項6の何れか1項記載の移動体駆動装置。
【請求項8】
前記所定方向の荷重と前記速度との関係は、前記所定方向の荷重が大きくなるに従って、前記所定方向の荷重の変化に対する前記速度の変化が小さくなるように定められた請求項1〜請求項7の何れか1項記載の移動体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−254220(P2009−254220A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103380(P2008−103380)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】