移動局測位システム
【課題】送信機における電波の送信出力が変化する場合においても電波の受信強度に基づいて移動局の位置を精度よく算出することのできる移動局測位システムを提供する
【解決手段】送信基地局12Tから送信された電波が受信基地局12Rおよび移動局10において受信されその受信強度検出部40(SE6)、28(SF3)により受信強度が検出され、測距部52(SA21)により受信基地局12Rおよび移動局10における電波の受信強度、送信基地局12Tと受信基地局12Rとの間の距離、および受信基地局12Rおよび移動局10のアンテナ32、22の利得に基づいて、送信基地局12Tと移動局10との距離が算出され、測位部58(SA22)により少なくとも3局の各送信基地局12Tと移動局10との距離に基づいて移動局10の位置が算出されるので、送信基地局12Tにおける送信出力の大きさを用いずに移動局10の位置を算出することができる。
【解決手段】送信基地局12Tから送信された電波が受信基地局12Rおよび移動局10において受信されその受信強度検出部40(SE6)、28(SF3)により受信強度が検出され、測距部52(SA21)により受信基地局12Rおよび移動局10における電波の受信強度、送信基地局12Tと受信基地局12Rとの間の距離、および受信基地局12Rおよび移動局10のアンテナ32、22の利得に基づいて、送信基地局12Tと移動局10との距離が算出され、測位部58(SA22)により少なくとも3局の各送信基地局12Tと移動局10との距離に基づいて移動局10の位置が算出されるので、送信基地局12Tにおける送信出力の大きさを用いずに移動局10の位置を算出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基地局および移動局の間で電波の送受信を行ない、その受信結果である受信した電波の受信強度を用いて移動局の位置を算出することのできる移動局測位システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信機から送信された電波を受信し、受信した電波の受信強度に基づいて、受信機と送信機との距離を求める方法が提案されている。このとき、例えば既知の位置にある複数の送信機のそれぞれと受信機との距離をそれぞれ算出することにより、受信機の位置を算出することができる。
【0003】
かかる方法においては、例えば予め得られている受信強度に対する電波の送信機と受信機との距離の関係に検出される受信強度を適用することにより送信機と受信機との距離を得ることができる。したがって、より正確な距離を得たり、あるいは受信機の位置の算出をより正確に行なうには、受信強度をより正確に検出することが望ましい。
【0004】
また、例えば特許文献1には位置検出すべき対象物から送信される信号と、予め既知の位置から送信される信号とを用いて対象物の位置を検出する位置検出システムが開示されている。かかる場合においても、対象物の位置検出の精度は受信強度の検出精度により左右されるので、受信強度を精度よく検出することが求められる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−98749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように受信強度に基づいて移動局の位置の算出を行なう場合には、電波の送信元における送信出力(送信電力)の大きさが一定であることが前提となる。しかしながら、例えば送信元となる送信機における供給電圧の変化や、気温などの送信機の周辺環境の変化、あるいは送信機の連続運用などによる性能の経時的な変化により、送信機の送信出力の大きさが変化することが発生しうる。このように送信機における送信出力が変化すると、受信強度に基づいて算出される移動局の位置は誤差を含むこととなり、移動局の位置を精度よく算出することができない。
【0007】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、送信機における電波の送信出力が変化する場合においても電波の受信強度に基づいて移動局の位置を算出することのできる移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)既知の位置に設置される複数の基地局と、移動可能な移動局との間で電波の送受信を行ない、該送受信における受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)該複数の基地局のうちいずれか1の送信基地局から送信された電波を他の前記基地局のうちの少なくとも1の受信基地局および前記移動局において受信し、該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離を算出する測距部と、(c)前記複数の基地局のうち少なくとも異なる3局を前記送信基地局とすることにより前記測距部によって得られる、前記3局の送信基地局のそれぞれと前記移動局との距離のそれぞれに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、該複数の基地局のうちいずれか1の送信基地局から送信された電波が他の前記基地局のうちの少なくとも1の受信基地局および前記移動局において受信されその受信強度が検出されるとともに、前記測距部により、該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離が算出され、前記測位部により、前記複数の基地局のうち少なくとも異なる3局を前記送信基地局とすることにより前記測距部によって得られる、前記3局の基地局のそれぞれと前記移動局との距離のそれぞれに基づいて前記移動局の位置が算出されるので、電波を送信する送信基地局における送信出力の大きさを用いずに前記移動局の位置を算出することができ、送信基地局における送信出力の大きさが変化する場合においても移動局の位置の算出への影響を受けることがない。
【0010】
好適には、(a)前記受信基地局は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の使用判定時間において使用中であるか否かを判断し、使用中でない場合に前記送信基地局に対し送信開始要求信号を送信する送信開始要求部を有し、(b)前記送信基地局は、該受信基地局の送信開始要求部からの該送信開始要求信号を受信した場合に電波の送信を開始する送信制御部を有する。このようにすれば、前記送信開始要求部により送信された送信開始要求信号が前記送信基地局により受信された場合に前記送信基地局からの電波の送信が開始されるので、前記受信基地局および前記移動局において前記送信基地局から送信される電波と他の電波との干渉が防止できる。
【0011】
また好適には、(a)前記送信基地局は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中であるか否かを判断する送信開始判定部を有し、(b)該送信開始判定部により使用中でないと判断される場合に電波の送信を開始する送信制御部を有する。このようにすれば、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中でないと前記送信開始判定部において判断される場合に、前記送信基地局からの電波の送信が開始されるので、前記受信基地局および前記移動局において前記送信基地局から送信される電波と他の電波との干渉が防止できる。
【0012】
また好適には、前記測距部は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との間の電波の送受信を複数回行なうことにより複数回得られる該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離を算出する。このようにすれば、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との間の電波の送受信において干渉などが生じた場合においても、その干渉が該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度の受信強度に与える影響を低減することができる。
【0013】
また好適には、前記移動局測位システムは、前記送信基地局から送信され前記受信基地局において受信された電波の前記受信強度の時系列的変化と、該送信基地局から送信され前記移動局において受信された電波の前記受信強度の時系列的変化との類似度を比較し、該類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、前記測距部における前記送信基地局と前記移動局との距離の算出を中止する実行中止部を有すること、を特徴とする。このようにすれば、前記類似度を比較し、その類似度が前記所定のしきい値よりも低いことに基づいて前記送信基地局から前記受信基地局への電波の伝搬、あるいは前記送信基地局から前記移動局への電波のすくなくとも一方に妨害電波が発生することを検出でき、かかる場合に算出される前記送信基地局と前記移動局との距離は誤差が多いものとして、その算出を中止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の一実施例である移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた移動局10と、その位置が既知とされた4局の基地局12A、12B、12C、12D(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。
【0016】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0017】
また、移動局10や各基地局12が送信する電波は、例えば各局に固有の符号などが付されることなどにより、その電波を受信した移動局10あるいは基地局12は、いずれの移動局10あるいは基地局12から送信されたものであるかを識別することができるものとされている。
【0018】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部26とを機能的に有する。
【0019】
ここで、移動局10から送信される電波を受信する基地局12において、移動局10から等しい距離にある基地局12は移動局10からの方向に関わらず等しい受信強度によりその電波を受信することが好ましく、従ってアンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0020】
無線部24は、移動局10における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部26により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部24は制御部26によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、前記アンテナ22により電波を送信する。このように、無線部24は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部24は、電波の受信時にはアンテナ22によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部24は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。
【0021】
制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、具体的には無線部24により取り出された情報を処理したり、前記無線部24の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。この信号波には、例えば後述する受信強度測定部28による測定結果などが含まれる。制御部26は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0022】
受信強度測定部28は、無線部24が受信した電波の受信強度を測定するものであって、例えば図示しない時計から供給されるクロック信号に基づいて所定の計測間隔ごとに所定の時間区間だけ受信した電波の受信強度の瞬時値を検出し、その平均を算出することなどにより、受信強度を測定する。前記電波の受信強度は、例えば受信した電波の強度を数値化した指標であるRSSI(receive signal strength indicator)が用いられ、具体的には電波の受信強度が予め定められた例えば8ビット(256段階)の数により表わされる。
【0023】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ32を有し、また、無線部34、制御部36、受信強度測定部40、通信インタフェース42などを機能的に有する。このうち、アンテナ32、無線部34、受信強度測定部40についてはその機能は移動局10のアンテナ22、無線部24、受信強度測定部28とそれぞれ同様であるので詳細な説明を省略する。
【0024】
制御部36は、基地局12の作動を制御するものであって、具体的には無線部34により受信された情報を処理したり、前記無線部34の作動、より具体的には送受の切り換え、送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。この信号波には、例えば後述する受信強度測定部28による測定結果などが含まれる。制御部36は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0025】
また、制御部36は、送信制御部37、送信開始要求部39を機能的に含んで構成される。このうち、送信制御部37は、基地局12から自局以外の基地局である他の基地局12および移動局10に対して送信される測位(位置の算出)のための電波の送信を制御するものであって、他の基地局12の後述する送信開始要求部39から送信される送信開始要求信号を受信した場合に、無線部34に対し前記測位のための電波の送信を開始させる。具体的には、少なくとも1つの受信基地局から前記送信開始要求信号を受信した場合に、測位のための電波の送信を開始させる。すなわち、送信制御部37が作動する基地局12は、測位のための電波を送信する送信基地局12Tとして振る舞う。すなわち、測位のための電波を送信する基地局12を送信基地局12Tという。また、この送信基地局12Tから送信される測位のための電波を受信する基地局12を受信基地局12Rという。この受信基地局12Rについては後述する。前記測位のための電波は予め定められた所定の送信時間だけ所定の送信出力により送信される。また、前記予め定められた所定の送信時間とは、移動局10の受信強度測定部28、および他の基地局12の受信強度測定部40において、電波の受信強度を測定するのに十分な時間となるように設定される。
【0026】
送信開始要求部39は、他の基地局12および移動局10との間で送受信を行なう電波の周波数が、予め定められた所定の使用判定時間において使用中であるか否かを判断する。そして、使用中でないと判断する場合には、送信基地局12Tとして振る舞う基地局12に対し、その周波数により測位のための電波の送信を要求する送信開始要求信号を送信する。すなわち、送信開始要求部39が作動する基地局12は、前記送信基地局12Tから送信される測位のための電波を受信する受信基地局12Rとして振る舞う。具体的には例えば、送信開始要求部39は、前記使用判定時間だけ前記周波数において電波の受信を行ない、他の基地局や移動局測位システム8を構成するものでない無線機器などから送信される電波を受信しなかった場合に、その周波数は使用中でないと判断する。また、この使用判定時間は、例えば、送信フレームの時間長さやバックオフ時間(衝突回避時間)を考慮して定められる。
【0027】
このようにすれば、送信基地局12Tにおいて使用中でないと判断される周波数の電波についてであっても、受信基地局12Rにおいては使用中であると判断される場合には、送信基地局12Tから受信基地局12Rに送信されることがなく、受信基地局12Rにおいて前記送信基地局12Tから送信された電波と他の基地局12や前記他の機器から送信される電波とが干渉するなどにより良好に受信できない、いわゆる隠れ端末問題を防止することができる。
【0028】
前述のように、基地局12は、送信制御部37および送信開始要求部39の両方の機能を有しておき、いずれかを有効に機能させることにより、送信基地局12Tおよび受信基地局12Rの何れとしても振る舞うことができる。
【0029】
通信インタフェース42は、基地局12からサーバ14や他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。例えば各基地局12からサーバ14へは受信強度測定部40によって算出された受信強度の値や、移動局10の受信強度測定部28によって算出され、いずれかの基地局12に電波によって伝達された移動局10における送信基地局12から送信された測位のための電波の受信強度についての情報などが通信インタフェース42を介して送信される。またサーバ14から基地局12へは基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信され、通信インタフェース42を介して受信される。
【0030】
図4はサーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は必要な情報を記憶するための記憶部50と、前記送信基地局12Tと前記移動局10との距離を算出する測距部52と、前記移動局10の位置の算出のための演算を行なう測位部58と、通信ケーブル18により接続された基地局12と情報通信を行なうための通信インタフェース48とを機能的に有する。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0031】
通信インタフェース48は、前述の基地局12の通信インタフェース42と同様に、サーバ14から他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。
【0032】
記憶部50は、後述する測位部58において測位に必要とされる情報などが記憶される。具体的には予め既知である各基地局12の位置についての情報や、各基地局12のアンテナ32の利得についての情報、さらに、測距部52によって算出される各送信基地局12Tと移動局10との距離についての情報などを記憶する。
【0033】
測距部52は、各基地局12からサーバ14に送信される、各基地局12が受信基地局12Rとして機能した場合に受信した、送信基地局12Tから送信された測位のための電波の受信強度の値と、前記記憶部50に記憶されるなどにより予め既知とされる各基地局12の位置についての情報、および各基地局12のアンテナ32の利得についての情報に基づいて、送信基地局12Tとされた各基地局12のそれぞれと移動局10との距離を算出する。
【0034】
測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離を算出について具体的に説明する。例えば図5に示すように、送信基地局12Tにおいて、アンテナ利得がGT(倍)のアンテナ32を用いて、送信出力(電力)PT(W)により測位のための電波が送信された場合を想定する。受信基地局12Rにおいて、アンテナ利得がGR(倍)のアンテナ32を用いて、受信電力PR(W)により測位のための電波が受信され、移動局10において、利得がGMS(倍)のアンテナ32を用いて、受信電力PMS(W)により測位のための電波が受信される。ここで、フリスの伝達公式によると、これらの関係は次式のように得られる。
【数1】
なお、λは送信基地局12Tから送信される測位のための電波の周波数であり、既知の値である。また、DT−Rは、送信基地局12Tから受信基地局12Rへの電波の伝搬距離を表わしており、前述のように送信基地局12Tおよび受信基地局12Rの位置は予め既知とされているので、両者の距離であるDT−Rも既知とされる。一方、DT−MSは、送信基地局12Tから移動局10への電波の伝搬距離を表わしており、未知の値である。
【0035】
上記(1)式の両式より、送信基地局12Tから移動局10への電波の伝搬距離DT−MSは、次式(2)のように得られる。
【数2】
ここで、受信基地局12Rのアンテナ32および移動局10のアンテナ22の利得GR、GMSはそれぞれ前述のように予め既知である。一方、受信基地局12Rにおける電波の受信強度PRは受信強度測定部40により測定され、通信ケーブル18等を介してサーバ14に送信される。また、移動局10における電波の受信強度PMSは、受信強度測定部28により測定され、その測定結果についての情報は移動局10からいずれかの基地局12に無線により送信され、さらにその測定結果についての情報を受信した基地局12から通信ケーブル18等を介してサーバ14に送信される。このようにして、測距部52は送信基地局12Tと移動局10との距離を算出するのに必要な、受信基地局12Rおよび移動局10における電波の受信強度PR、PMSを取得し、前記(2)式により送信基地局12Tと移動局10との距離を算出する。
【0036】
なお、前記(2)式は、送信基地局12Tの送信出力PTを含まない式となっていることから、例えば送信基地局12Tに電力を供給するバッテリが消耗するなどにより、送信基地局12Tの電波の送信出力が変動する場合などであっても、算出される送信基地局12Tと移動局10との距離は前記変動の影響が低減される。
【0037】
前述の図1に示したように、本実施例における移動局測位システム8は4局の基地局12A乃至12Dを含んで構成されている。かかる場合においては、いずれか1の基地局12、例えば第1基地局12Aが送信基地局12Tとされた場合に、他の基地局、すなわち第2基地局12B乃至第4基地局12Dの3つの基地局が受信基地局12Rとして機能しうる。したがって、前記測距部52は、第2基地局12B乃至第4基地局12Dの3つの基地局のそれぞれについてのアンテナ32の利得および送信基地局12Tから送信された電波の受信強度PRの値に基づいて、送信基地局12Tである第1基地局12Aと移動局10との距離をそれぞれ算出することができる。このように、複数の受信基地局12Rが存在する状況下においては、測距部52は例えば複数の受信基地局12Rのそれぞれについて、すなわち複数の受信基地局12Rのそれぞれについてのアンテナ32の利得および送信基地局12Tから送信された電波の受信強度PRの値に基づいて、送信基地局12Tである第1基地局12Aと移動局10との距離をそれぞれ算出し、それらの平均を送信基地局12Tと移動局10との距離とする。あるいは、複数算出される第1基地局12Aと移動局10との距離の中間値を送信基地局12Tと移動局10との距離としてもよい。また、送信基地局12T以外の基地局である第2基地局12B乃至第4基地局12Dのうち1局の基地局を受信基地局12Rとして選択した後、その受信基地局のアンテナ32の利得および送信基地局12Tから送信された電波の受信強度PRの値に基づいて、送信基地局12Tである第1基地局12Aと移動局10との距離を算出してもよい。測距部52は、少なくとも後述する測位部58において必要とされる基地局12の数だけ基地局12を送信基地局12Tとすることにより、それら送信基地局12Tと移動局10との距離を算出する。
【0038】
また、測位部52は、ある基地局12と移動局10との距離を算出しようとする場合には、各基地局12の作動を制御し、移動局との距離を算出しようとする基地局12を送信基地局12Tとして作動させるとともに、他の基地局の少なくとも1局を受信基地局12Rとして作動させる。また、受信基地局12Rおよび移動局10に対しては、送信基地局12Tから送信される測位のための電波を受信した際の受信強度についての情報をサーバ14に送信するように制御をする。
【0039】
測位部58は、前述の測距部52によって算出される基地局12と移動局10との距離と、予め既知である各基地局12の位置情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。
【0040】
図6は、測位部58による移動局10の位置の算出の原理を説明する図である。移動局10の位置を表わす座標を(x、y)とし、第1基地局12Aの位置を表わす座標が(xB1,yB1)、第2基地局12Bの位置を表わす座標が(xB2,yB2)、第3基地局12Cの位置を表わす座標が(xB3,yB3)、第4基地局12Dの位置を表す座標が(xB4,yB4)であるとすると、これらの関係は次式(3)により得られる。なお、図6における基地局12の配置は説明のため図1のものと異なっている。
(xB1 - x)2 + (yB1 - y)2= r12
(xB2 - x)2 + (yB2 - y)2= r22
(xB3 - x)2 + (yB3 - y)2= r32
(xB4 - x)2 + (yB4 - y)2= r42 ・・・(3)
ここで、r1、r2、r3およびr4(m)はそれぞれ、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、および第4基地局12Dのそれぞれから移動局10までの距離であって、前記測距部52によって算出される値である。測位部58は前記(3)式を解くことにより、移動局10の位置(x,y)を算出する。なお、前記(3)式を解くにあたり、それらの全ての式を連立させて解く必要はなく、解を算出するのに最低限の数の式により解いてもよい。すなわち、少なくとも前記(3)式の解を解くのに最低限必要となる式の数だけ、前記測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離の算出が行なわれればよく、具体的には移動局10が平面を移動する場合には、一般に前記(3)式は3本の式であればよいので、3局の基地局12のそれぞれと移動局10との距離ri(i=1,2,3)が測距部52により算出されればよい。同様に、移動局10が空間(3次元)を移動する場合には、一般に前記(3)式は少なくとも4本の式が必要であるので、4局の基地局12のそれぞれと移動局10との距離ri(i=1,2,3,4)が測距部52により算出されればよい。
【0041】
また、サーバ14は、測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離の算出を中止させる実行中止部56を含んで構成されている。実行中止部56は、送信基地局12Tから送信され受信基地局12Rにおいて受信された測位のための電波の受信強度PRの時系列的変化と、送信基地局12Tから送信され移動局10において受信された前記測位のための電波の受信強度PMSの時系列的変化との類似度を比較し、類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、測距部52における送信基地局12Tと移動局10との距離DT−MSの算出を中止する。
【0042】
送信基地局12Tから送信される測位のための電波は、移動局10および受信基地局12Rによってそれぞれ受信される。送信基地局12Tから受信基地局12Rあるいは移動局10までの電波の伝搬が干渉などの影響を受けることがない場合には、一般的に電波の受信強度はその伝搬距離に対応して減衰するものの、両者の時系列的変化は受信強度は送信基地局12Tにおける送信電力に対応して変化する。一方で、送信基地局12Tから受信基地局12Rあるいは移動局10までの電波の伝搬が、例えば妨害電波の送信源などが存在するなどにより干渉などの影響を受ける場合には、受信基地局12Rにおける電波の受信強度PRの時系列的変化と、移動局10における電波の受信強度PMSの時系列的変化とは異なった変化を生ずる。そこで実行中止部56は、受信基地局12Rにおける電波の受信強度PRの時系列的変化と、移動局10における電波の受信強度PMSの時系列的変化とを比較し、これらの類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、移動局10もしくは受信基地局12Rの少なくとも一方において、受信波に干渉などの影響が生じており、正確に受信強度を測定できていない可能性があるとして、その受信基地局12Rにおける受信強度PRを用いた前記測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離の算出を中止させる。
【0043】
受信基地局12Rにおける電波の受信強度PRの時系列的変化と、移動局10における電波の受信強度PMSの時系列的変化との比較は、例えば、音声認識で用いられる技術である、線形予測法によるスペクトル推定、ハミング距離やLPCケプストラム距離などによる判定、あるいはこれらの組み合わせによって行なわれる。また、前記しきい値は、前記測距部52において算出される距離に生ずる誤差として許容される値に対応して予め実験的に、あるいはシミュレーションにより決定される値である。
【0044】
図7は、本実施例の移動局測位システム8における移動局10、第1基地局12A乃至第4基地局12D、およびサーバ14の作動の一部であって、これらの作動の相互の関係を説明するタイムチャートである。図7においては、下向きに時間の経過を表わしている。なお、図7における各作動に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)Sの位置は、正確な時間間隔を示したものではない。
【0045】
まず、S1においては、サーバ14から送信基地局12Tとされた第1基地局12Aに対し、測位のための電波の送信を行なわせる指令(送信要求)が行なわれる。S2においては、この指令を受けた第1基地局12Aから測位のための電波が所定の送信出力により送信される。また、受信基地局12Rである第2基地局12B乃至第4基地局12D、および移動局10によりこの測位のための電波が受信され、受信強度が測定される。S3においては、第1基地局12Aからサーバ14に対し、S2の送信が行なわれた旨の通知(送信完了応答)が行なわれる。
【0046】
S4においては、S2で測位のための電波を受信した移動局10から第1基地局12Aに対し、受信した測位のための電波の受信強度についての情報(受信結果)が送信される。S5においては、第1基地局12Aに対し、移動局10における測位のための受信結果をサーバ14に通知させる指令(受信結果要求)が行なわれる。そして、S6において、この受信結果要求を受けた第1基地局12Aから測位サーバ14に対し移動局10における受信結果が通知される。なお、本実施例においては移動局10における受信結果は送信基地局12Tとしての第1基地局12Aによって受信され、第1基地局12Aからサーバ14へ通知されるものであったが、これに限られず、任意の基地局12によって行なわれることができる。
【0047】
S7においては、受信基地局12Rの一つである第2基地局12Bに対し、第2基地局12Bにおける測位のための受信結果をサーバ14に通知させる指令(受信結果要求)が行なわれる。そして、S8において、この受信結果要求を受けた第2基地局12Bから測位サーバ14に対し第2基地局12Bにおける受信結果が通知される。
【0048】
S9およびS11においては、他の受信基地局12Rである第3基地局12Cおよび第4基地局12Dのそれぞれに対し、S7と同様に第3基地局12Cおよび第4基地局12Dにおける測位のための受信結果をサーバ14に通知させる指令(受信結果要求)が行なわれ、S10およびS12においては、S8と同様に、この受信結果要求を受けた第3基地局12Cおよび第4基地局12Dから測位サーバ14に対し第3基地局12Cおよび第4基地局12Dにおける受信結果がそれぞれ通知される。
【0049】
図8は、本実施例の移動局測位システム8を構成するサーバ14の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、送信基地局12Tを識別するための変数iが1に初期化される。
【0050】
SA2においては、サーバ14からi番目の送信基地局12Tとされた基地局12に対して、測位のための電波の送信を行なわせる指示が送信される。またSA3においては、SA2の指示が送信されてからの経過時間を計測するための図示しないタイマーがスタートさせられる。
【0051】
SA4においては、送信基地局12Tから測位のための指令が行なわれた旨の応答が受信される。この応答は送信基地局12Tの作動を説明する後述する図10のSC5において送信されるものである。
【0052】
SA5においては、SA4で行なわれた受信で、送信基地局12Tから測位のための指令が行なわれた旨の応答が受信されたか否かが判断される。送信基地局12Tから測位のための指令が行なわれた旨の応答が受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SA7が実行される。一方、送信基地局12Tから測位のための指令が行なわれた旨の応答が受信されなかった場合にはSA5の判断は否定され、SA6が実行される。
【0053】
SA6においては、SA3でスタートされたタイマーにより計測される時間、すなわちSA2で送信の要求が行なわれてからの経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過したか否かが判断される。前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過した場合は、SA6の判断が肯定され、移動局10の測位を行なうのに十分な数の送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行なうことができなかったとして、移動局10の測位に失敗したとして本フローチャートは終了させられる。一方、前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過していない場合は、SA6の判断が否定され、SA4が実行され、引き続き送信基地局12Tからの応答が受信される。
【0054】
SA7においては、送信基地局12Tを識別するための変数iに1が加えられ、別の基地局12が送信基地局12Tとされる。また、SA8においては、変数iの値が予め定められた終了判定値iENDであるか否かが判断される。この終了判定値iENDは例えば、移動局10の測位を行なうのに用いられる基地局の数に1を加えた値とされる。変数iの値が終了判定値iENDである場合には、本ステップの判断は肯定され、必要な数の送信基地局12Tからの測位のための電波の送信が終了したとして、SA9以降が実行される。一方、変数iの値が終了判定値iENDでない、すなわち終了判定値iENDよりも小さい場合には、本ステップの判断は否定され、引き続きSA7で更新された変数iに対応するi番目の送信基地局12Tからの測位のための電波の送信が行なわれるために、SA2以降が実行される。
【0055】
SA9においては、移動局10との距離を算出可能な基地局12の数を表わす変数Sが0に、また、基地局12を識別するための変数jが1にそれぞれ初期化される。
【0056】
SA10においては、サーバ14からj番目の基地局12に対して、それまでに受信した測位のための電波の受信強度についての情報の送信を行なわせる指示が送信される。この受信強度についての情報は、電波の受信強度を示す情報に加え、電波の送信局である送信基地局12Tが何れの基地局12であるかを特定する情報や、電波の受信局である自局を特定する情報を含む。またSA11においては、SA10の指示が送信されてからの経過時間を計測するためのタイマーがスタートさせられる。
【0057】
SA12においては、基地局12から受信強度についての情報の受信が行なわれる。この受信強度についての情報は受信基地局12Rの作動を説明する後述する図12のSE8において送信されるものである。このとき、各基地局12からは、その基地局12が受信基地局12Rとして作動した際に送信基地局12Tから送信された電波の受信強度についての情報に加え、その基地局12が送信基地局12Tとして作動した際にその基地局12から送信された電波の移動局10における受信強度についての情報が送信される。
【0058】
SA13においては、SA12で行なわれた受信で、基地局12から受信強度についての情報が受信されたか否かが判断される。基地局12から受信強度についての情報が受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SA15が実行される。一方、基地局12から受信強度についての情報が受信されなかった場合にはSA13の判断は否定され、SA14が実行される。
【0059】
SA14においては、SA11でスタートされたタイマーにより計測される時間、すなわちSA10で受信結果の要求が行なわれてからの経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過したか否かが判断される。このタイムアウト判定時間はSA3のそれと同じであっても良いし、異なる値であってもよい。前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過した場合は、SA14の判断が肯定され、j番目の基地局12からは受信強度についての情報が受信されなかったとして、SA17以降が実行させられる。一方、前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過していない場合は、SA14の判断が否定され、SA12が実行され、引き続き基地局12からの応答が受信される。
【0060】
SA13の判断が肯定された場合に実行されるSA15においては、j番目の基地局12からは受信強度についての情報が得られたとして、移動局10との距離を算出可能な基地局12の数を表わす変数Sに1が加えられる。またSA16においては、得られたj番目の基地局12における受信強度についての情報が例えば記憶部50などに記憶させられる。
【0061】
SA17においては、基地局12を識別するための変数jに1が加えられ、受信強度についての情報を得るための対象となる基地局12が別の基地局12に切り換えられる。
【0062】
SA18においては、変数jの値が予め定められた終了判定値jENDであるか否かが判断される。この終了判定値jENDは例えば、移動局測位システム8を構成する基地局12の総数に1を加えた値とされる。変数jの値が終了判定値jENDである場合には、本ステップの判断は肯定され、全ての基地局12からの受信に関する情報の取得が終了したとして、SA19以降が実行される。一方、変数jの値が終了判定値jENDでない、すなわち終了判定値jENDよりも小さい場合には、本ステップの判断は否定され、引き続きSA17で更新された変数jに対応するj番目の基地局12からの受信強度についての情報の取得が行なわれるために、SA10以降が実行される。
【0063】
SA19においては、移動局10との距離を算出可能な基地局12の数を表わす変数Sの値が、移動局10の位置の算出を行なうのに必要となる最小の数SMIN以上であるか否かが判断される。変数Sの値が、SMIN以上である場合には本ステップの判断は肯定され、得られた受信強度についての情報に基づいて移動局10の位置の算出を行なうことができるとしてSA20以降が実行される。一方、変数Sの値が、SMINより小さい場合には、本ステップの判断は否定され、得られた受信強度についての情報だけでは移動局10の位置の算出を行なうことができないとして、本フローチャートは終了させられる。
【0064】
実行中止部56に対応するSC20においては、送信基地局12Tから送信された測位のための電波の受信基地局12Rおよび移動局10のそれぞれにおける受信強度の時系列的変化のそれぞれに基づいて、移動局の測位を中止するか否かを決定する測位中止判定ルーチンが実行される。図9はこの測位中止判定ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【0065】
まず、SB1においては、前記図8のSA12で得られた各基地局12における受信強度についての情報と、移動局10における受信強度についての情報から、同一の送信基地局12Tが送信した電波についての各受信基地局12Rおよび移動局10における受信強度の情報が抽出される。そして抽出された同一の送信基地局12Tが送信した電波についての各受信基地局12Rにおける受信強度の時系列変化と移動局10における受信強度の時系列変化とが比較され、その類似度が評価される。この類似度の評価は、例えば前述のように、音声認識で用いられる技術である、線形予測法によるスペクトル推定、ハミング距離やLPCケプストラム距離などによる判定、あるいはこれらの組み合わせによって行なわれる。
【0066】
SB2においては、SB1で評価された類似度の値が予め定められた所定のしきい値以上であるか否かが判断される。類似度が所定のしきい値以上である場合には、移動局測位システム8における電波の伝搬に、移動局10の位置の算出に大きな誤差などの影響を生ずる障害はないとして、移動局10の位置の算出を行なうものとして図8のSA21が実行される。一方、類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、移動局10もしくは受信基地局12Rの少なくとも一方において、受信波に干渉などの影響が生じており、正確に受信強度を測定できていない可能性があるとして、移動局10の位置の算出を中止し、図8のフローチャートは中止させられる。
【0067】
図8に戻って、測距部52に対応するSA21においては、各送信基地局12Tと移動局10との距離が算出される。具体的には、送信基地局12Tから送信された測位のための電波を受信した受信基地局12Rにおける受信強度PRおよび移動局10における受信強度PMSと、予め既知とされた受信基地局12Rのアンテナ32の利得GRおよび移動局10のアンテナ22の利得GMSを用いて、前述の式(1)を解くことにより得られる。なお、受信基地局12Rにおける受信強度および移動局10における受信強度が時系列的な変化として得られる場合には、その分布における平均値や中間値などが用いられればよい。また、送信基地局12Tから送信される測位のための電波が複数の受信基地局12Rによって受信される場合には、これら複数の受信基地局12Rにおける複数の受信強度PRの値のそれぞれを用いて送信基地局12Tと移動局10との距離が算出され、それらの平均が用いられてもよいし、あるいは例えば予め任意に選択された一局の受信基地局12Rにおける受信強度PRの値を用いて送信基地局12Tと移動局10との距離が算出されてもよい。
【0068】
測位部56に対応するSA22においては、SA11において算出された各送信基地局12Tと移動局10との距離と、予め既知である各基地局12の位置についての情報とに基づいて、移動局10の位置が算出される。具体的には前述の(3)式が導出され、この(3)式が解かれることにより移動局10の位置が解として得られる。
【0069】
図10は、基地局12が送信基地局12Tとして作動する場合の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、SC1においては、サーバ14からの測位のための電波の送信を行なわせる指示が受信されたか否かが判断される。このサーバ14からの指示は前述の図8のフローチャートにおけるSA2おいて行なわれるものであって、例えば通信ケーブル18を介して送受信される。サーバ14からの指示が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、SC2が実行される。また、サーバ14からの指示が受信されない場合には、SC8が実行される。
【0070】
SC2およびSC3は送信制御部37に対応する。SC2においては、測位のための電波の送信を開始するか否かを判定する送信開始判定ルーチンが実行される。図11はこの送信開始判定ルーチンおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まずSD1においては、受信基地局12RからのRTS(Request To Send)信号の受信が行なわれる。このRTS信号は、後述する受信基地局12Rの作動を説明する図12のフローチャートにおけるSE3において送信されるものであって、前述の送信開始要求信号に対応する。
【0071】
SD2においては、SD1で受信されたRTS信号がどれだけの受信基地局12Rから受信されたかが判断される。そして、RTS信号が予め定められた所定数、具体的には例えば、少なくとも1つの受信基地局からRTS信号を受信した場合には、本ステップの判断は肯定され、SD3が実行される。一方、RTS信号が予め定められた所定数、例えば少なくとも1つの受信基地局からのRTS信号を受信しなかった場合には、本ステップの判断は否定され、SD4が実行される。
【0072】
SD3においては、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行なうとして、送信開始フラグが1とされる。
【0073】
SD4においては、SD1で受信基地局12RからのRTS信号の受信が開始されてからの経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過したか否かが判断される。前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過した場合は、本ステップの判断が肯定され、SD5が実行される。一方、前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過していない場合は、本ステップの判断が否定され、SD1が実行され、引き続き受信基地局12RからのRTS信号の受信が行なわれる。このタイムアウト時間は、例えば、後述する図12のSE2における使用判定時間に、受信基地局12Rにおける処理時間や電波の伝搬に要する時間などを加えて算出される。
【0074】
SD5においては、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行わないとして、送信開始フラグが0とされる。
【0075】
図10に戻って、SC3においては、SC2の送信開始判定ルーチンにおいて設定された送信開始フラグの値が参照される。そして送信開始フラグの値が1である場合には本ステップの判断が肯定され、SC4が実行される。一方、送信開始フラグの値が0である場合には、本ステップの判断は否定され、SC7が実行される。
【0076】
無線部34などに対応するSC4においては、送信基地局12Tから測位のための電波の送信が行なわれる。この送信は予め設定された出力および周波数によって行なわれる。また送信される電波には、送信元となる送信基地局12Tを特定するための情報が含まれており、これを受信した移動局10や受信基地局12Rはいずれの送信基地局12Tが送信した電波であるかを識別できるようになっている。
【0077】
SC5においては、サーバ14に対し、測位のための電波の送信が完了した旨が通知される。
【0078】
SC6においては、SC4で送信された電波を受信した移動局10から、その移動局10における受信強度についての情報を受信するために、送信基地局12Tの無線部が電波を受信する状態に切り換えられる。
【0079】
SC3の判断が否定された場合に実行されるSC7においては、送信基地局12Tから測位のための電波の送信を行なうことができなかった旨がサーバ14に送信される。
【0080】
SC1の判断が否定された場合、すなわちサーバ14からの測位のための電波の送信の指令を受信しなかった場合に実行されるSC8においては、移動局10からの電波を受信したか否かが判断される。すなわち、SC4で送信された電波を受信した移動局10から、その移動局10における受信強度についての情報が受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SC9が実行される。一方、移動局10から受信強度についての情報が受信されない場合には本ステップの判断は否定され、SC10が実行される。
【0081】
SC9においては、SC8で受信された、移動局10における受信強度についての情報が図示しないメモリなどの記憶手段に一時記憶される。
【0082】
SC8の判断が否定された場合に実行されるSC10においては、サーバ14による受信した測位のための電波の受信強度についての情報の送信を行なわせる指示が受信されたか否かが判断される。この指示は前述の図8におけるSA10の指示に対応する。サーバ14からの指示が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、SC11が実行される。また、サーバ14からの指示が受信されない場合には、再びSC1に戻って本フローチャートが実行される。
【0083】
SC11においては、SC9で記憶された、移動局10における測位のための電波の受信強度についての情報がサーバ14に送信される。
【0084】
図12は、基地局12が受信基地局12Rとして作動する場合の制御作動の一例を説明するフローチャートである。SE1およびSE2は送信開始要求部39に対応する。まず、SE1においては、使用可能な周波数(チャンネル)の検索が行なわれる。具体的には例えば、送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定される周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数について、電波の受信を行ない、送信基地局12T以外の無線機器などから電波が送信されているか否かが検出される。この送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定される周波数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0085】
SE2においては、SE1において使用可能な周波数の検索が行なわれた結果、送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定された周波数が、所定の使用判定時間以上空いているかが判断される。すなわち、送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定された周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数において他の無線機器などからの電波の送信が検出されなかった場合には本ステップの判断は肯定され、SE3が実行される。一方、送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定された周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数において他の無線機器などからの電波の送信が検出された場合には本ステップの判断は否定され、再度SE1が実行される。
【0086】
SE3においては、送信基地局12Tが送信しようとする周波数は利用可能であるとして、送信基地局12Tに対し送信要求信号(RTS信号)が送信される。なお、送信基地局12Tが送信可能であるとして設定される周波数が複数である場合には、このRTS信号の送信に併せて、送信に用いられる周波数が指定されてもよい。RTS信号の送受は測位のための電波の周波数(チャンネル)とは異なる周波数(チャンネル)、例えば制御チャネルとして予め定められたチャンネルで行われるので他局のRTS信号により電波が使用中と判断されることはない。
【0087】
SE4においては、送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信が開始される。この測位のための電波の送信は、前述した図10のSC4において行なわれるものである。
【0088】
SE5においては、SE4における受信で送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信されたか否かが判断される。送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SE6が実行される。一方、送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信されなかった場合には本ステップの判断は否定されSE7が実行される。
【0089】
受信強度測定部40に対応するSE6においては、SE4で受信された送信基地局12Tから送信される測位のための電波について、受信強度の検出が行なわれ、検出された受信強度や、その電波に含まれる情報に基づいて識別された電波の送信元である送信基地局12Tについての情報、また、電波を受信した自局についての情報などとともに電波の受信強度についての情報として図示しないメモリなどの記憶手段に一時記憶される。なお、この受信強度の検出は、例えば予め定められた所定のサンプリングタイムごとに行なわれ、時系列的な受信強度の変化として得られる。
【0090】
SE7においては、サーバ14による受信した測位のための電波の受信強度についての情報の送信を行なわせる指示が受信されたか否かが判断される。この指示は前述の図8におけるSA10の指示に対応する。サーバ14からの指示が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、SE8が実行される。また、サーバ14からの指示が受信されない場合には、再びSE1に戻って本フローチャートが実行される。
【0091】
SE8においては、SE6で記憶された、受信基地局12Rにおける測位のための電波の受信強度についての情報がサーバ14に送信される。
【0092】
図13は、移動局10の制御作動の一例を説明するフローチャートである。SF1においては、送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信が開始される。この測位のための電波の送信は、前述した図10のSC4において行なわれるものである。
【0093】
SF2においては、SF1における受信で送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信されたか否かが判断される。送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SF3が実行される。一方、送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信されなかった場合には本ステップの判断は否定され再びSF1が実行され、引き続き電波の受信が行なわれる。
【0094】
受信強度測定部28に対応するSF3においては、SF1で受信された送信基地局12Tから送信される測位のための電波について、受信強度の検出が行なわれ、検出された受信強度や、その電波に含まれる情報に基づいて識別された電波の送信元である送信基地局12Tについての情報、また、電波を受信した自局についての情報などとともに電波の受信強度についての情報として図示しないメモリなどの記憶手段に一時記憶される。なお、この受信強度の検出は、例えば予め定められた所定のサンプリングタイムごとに行なわれ、時系列的な受信強度の変化として得られる。
【0095】
SF4においては、SF3で記憶された、移動局10における測位のための電波の受信強度についての情報が送信基地局12Tに送信される。この受信強度についての情報は前述の送信基地局12Tの作動を説明する図11のフローチャートのSC8において受信される。
【0096】
前述の実施例によれば、移動局測位システム8を構成する複数の基地局12のうちいずれか1の送信基地局12Tから送信された電波が他の基地局12のうちの少なくとも1の受信基地局12Rおよび移動局10において受信されその受信強度検出部40(SE6)および28(SF3)により受信強度が検出されるとともに、測距部52(SA21)により、受信基地局12Rにおける電波の受信強度および移動局10における電波の受信強度、送信基地局12Tと受信基地局12Rとの間の距離、および、受信基地局12Rおよび移動局10のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナ32および22の利得に基づいて、送信基地局12Tと移動局10との距離が算出され、測位部58(SA22)により、複数の基地局12のうち少なくとも異なる3局を送信基地局12Tとすることにより測距部52によって得られる、前記3局の基地局12のそれぞれと移動局10との距離のそれぞれに基づいて移動局10の位置が算出されるので、電波を送信する送信基地局12Tにおける送信出力の大きさを用いずに移動局10の位置を算出することができ、送信基地局12Tにおける送信出力の大きさが変化する場合においても移動局10の位置の算出への影響が低減される。
【0097】
また、前述の実施例によれば、受信基地局12Rは、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の使用判定時間において使用中であるか否かを判断し、使用中でない場合に送信基地局12Tに対し送信開始要求信号(RTS信号)を送信する送信開始要求部39(SE1〜3)を有し、送信基地局12Tは、受信基地局12Rの送信開始要求部39からの送信開始要求信号を受信した場合に電波の送信を開始する送信制御部37(SC2〜3)を有するので、送信開始要求部39により送信された送信開始要求信号が送信基地局12Tにより受信された場合に送信基地局12Tからの電波の送信が開始されるので、受信基地局12Rおよび移動局10において送信基地局12Tから送信される電波と他の電波との干渉が防止できる。
【0098】
また,前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、送信基地局12Tから送信され受信基地局12Rにおいて受信される電波の受信強度の時系列的変化と、同一の送信基地局12Tから送信され移動局10において受信される電波の受信強度の時系列的変化との類似度を比較し、該類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、測距部52における送信基地局12Tと移動局10との距離の算出を中止する実行中止部56(SA20)を有するので、前記類似度を比較し、その類似度が所定のしきい値よりも低いことに基づいて送信基地局12Tから受信基地局12Rへの電波の伝搬、あるいは送信基地局12Tから移動局10への電波のすくなくとも一方に妨害電波が発生することを検出でき、かかる場合に算出される送信基地局12Tと移動局10との距離は誤差が多いものとして、その算出を中止することができる。
【0099】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0100】
図14は本実施例における基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であって、前述の実施例の図3に対応するものである。本実施例の基地局12を説明する図14と前述の図3とを比較すると、本実施例の基地局12は、送信開始要求部39に代えて送信開始判定部38を有する点において前述の実施例の基地局12と異なる。
【0101】
すなわち、本実施例の基地局12の制御部36は、送信制御部37、送信開始判定部38を機能的に含んで構成される。このうち、送信制御部37は、基地局12から自局以外の基地局である他の基地局12および移動局10に対して送信される測位(位置の算出)のための電波の送信を制御するものであって、後述する送信開始判定部38により送信開始が判断される場合に、無線部34に対し前記測位のための電波の送信を開始させる。すなわち、送信制御部37および送信開始判定部38が作動する基地局12は、測位のための電波を送信する送信基地局12Tとして振る舞う。前記測位のための電波は予め定められた所定の送信時間だけ所定の送信出力により送信される。
【0102】
送信開始判定部38は、送信基地局12Tが送信しようとする前記測位のための電波の周波数が、予め定められた所定の送信待機時間において使用中であるか否かを判断する。そして、使用中でないと判断する場合には、前記送信制御部37に対し、その周波数により測位のための電波の送信が可能であると判断する。具体的には例えば、送信開始判定部38は、前記送信待機時間だけ前記周波数において電波の受信を行ない、他の基地局や移動局測位システム8を構成するものでない無線機器などから送信される電波を受信しなかった場合に、その周波数は使用中でないと判断する。また、この使用判定時間は、例えば、送信フレームの時間長さやバックオフ時間(衝突回避時間)を考慮して定められる。
【0103】
このようにすれば、送信基地局12Tの周囲において、送信基地局12Tが送信しようとする電波の周波数が、他の無線機器などによって使用されているか否かを判断できる。
【0104】
なお、基地局12が図14のように構成される場合においては、送信基地局12Tとして機能させられる場合には送信制御部37および送信開始判定部38の両方が有効に機能させられ、受信基地局12Rとして機能させられる場合には、送信制御部37および送信開始判定部38はいずれも有効に機能させられる必要がない。
【0105】
図15は、本実施例における送信開始判定ルーチンの制御作動の一例を説明するフローチャートであって、送信開始判定部38に対応する。この図15のフローチャートは、前述の実施例の図11に代えて、図10のフローチャートのSC2において実行される。
【0106】
SG1においては、測位のための電波を送信しようとする周波数(チャンネル)の使用状況の検出が行なわれる。具体的には例えば、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数やその周波数と干渉を生ずる周波数について、電波の受信を行ない、送信基地局12T以外の無線機器などから電波が送信されているか否かが検出される。この送信基地局12Tが送信する測位のための電波をの周波数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0107】
SG2においては、SG1において使用状況の検出が行なわれた結果、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数が、所定の送信待機時間以上空いているかが判断される。すなわち、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数において他の無線機器などからの電波の送信が検出されなかった場合には本ステップの判断は肯定され、SG3が実行される。一方、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数において他の無線機器などからの電波の送信が検出された場合には、本ステップの判断は否定され、SG4が実行される。
【0108】
SG3においては、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行なうとして、送信開始フラグが1とされる。なお、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数として複数の周波数が設定されている場合には、本ステップにおいて、測位のための電波の周波数が、前記SE2で判断が肯定された周波数に指定されてもよい。
【0109】
SG4においては、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行わないとして、送信開始フラグが0とされる。
【0110】
また、受信基地局12Rの制御作動に関しては、前述の実施例の図12に示したフローチャートに従ってその制御作動が行なわれるが、本実施例においては、受信基地局12Rは送信開始要求部39を有しないので、これに対応するSE1乃至SE3は実行されない。すなわち、受信基地局12Rは、前述の図12にフローチャートのSE4乃至SE8に示す制御作動が実行される。
【0111】
前述の実施例によれば、送信基地局12Tは、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中であるか否かを判断する送信開始判定部38(SG1〜SG4)を有し、送信開始判定部38により使用中でないと判断される場合に測位のための電波の送信を開始する送信制御部37(SC3)を有するので、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中でないと送信開始判定部38において判断される場合に、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信が開始されるので、受信基地局12Rおよび移動局10において送信基地局12Tから送信される電波と他の電波との干渉が防止できる。
【0112】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0113】
例えば、前述の実施例においては移動局10が平面を移動する場合について説明したが、同様の方法により移動局10が空間(3次元)を移動する場合についてもその位置の算出を行なうことが可能である。
【0114】
また、前述の実施例においては、サーバ14は、測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離の算出を中止させる実行中止部56を有するものとされたが、この実行中止部56を有さなくても移動局測位システム8としての一定の効果が得られる。すなわち移動局10の位置の算出を行なうことができる。
【0115】
また、前述の実施例1においては、基地局12は送信制御部37および送信開始要求部39を有し、送信制御部37を機能させることによる送信基地局12Tとして振る舞う一方、送信開始要求部39を機能させることにより受信基地局12Tとして振る舞うことができるものとされたが、これに限られない。すなわち、送信制御部37のみを有し、送信開始要求部39を有しないことにより専ら送信基地局12Tとして機能する基地局と、送信開始要求部39のみを有し、送信制御部37を有しないことにより専ら受信基地局12Rとして機能する基地局とにより移動局測位システム8が構成されてもよい。実施例2においても同様である。
【0116】
また、前述の実施例1においては、受信基地局12Rが測位のための電波が使用中であるか否かを判断し、使用中でないと判断される場合に送信基地局12Tに送信要求信号(RTS信号)を送信する送信開始要求部39を有し、送信基地局12Tの送信制御部37は前記送信開始要求部39から送信要求信号を受信する場合に測位のための電波の送信の開始を制御するものとされた。また、前述の実施例2においては、送信基地局12Tが測位のための電波が使用中であるか否かを判断する送信開始判定部38を有し、送信制御部37は前記送信開始判定部38において電波が使用中でないと判断される場合に測位のための電波の送信の開始を制御するものとされた。本発明の移動局測位システム8はかかる態様に限られず、これらが同時に機能させられる態様も可能である。すなわち、受信基地局12Rが測位のための電波が使用中であるか否かを判断し、使用中でないと判断される場合に送信基地局12Tに送信要求信号(RTS信号)を送信する送信開始要求部39を有し、送信基地局12Tが測位のための電波が使用中であるか否かを判断する送信開始判定部38を有し、送信基地局12Tの送信制御部37は前記送信開始要求部39から送信要求信号が受信され、かつ前記送信開始判定部38において電波が使用中でないと判断される場合に測位のための電波の送信の開始を制御するものとされてもよい。
【0117】
また、サーバ14の制御作動については、その一例を図8のフローチャートに示したが、それに限られない。例えば、図8のフローチャートにおいては、サーバ14は全ての送信基地局12Tとされる基地局12に対し電波の送信を行なわせるとともに、受信基地局12Rおよび移動局10に対しその電波の受信および受信強度の算出を行なわせた後に(SA1乃至SA8)、各基地局12に対しそれまでに受信した電波の受信強度についての情報を送信させ、これを受信するものとされた(SA9乃至SA18)が、これにかぎられない。例えば、図7のタイムチャートに示したように、送信基地局12Tが送信を行なうごとに、その送信により送信された電波の受信結果についての情報を送信させ、これを受信するものとされてもよい。
【0118】
また、前述の実施例においては送信基地局12Tが送信する測位のための電波については限定されないが、特に送信基地局12Tによる測位のための電波の送信が、複数回の電波の送信から構成されるものとすることができる。具体的には例えば、送信基地局12Tは測位のための電波の送信を、所定の送信時間における送信と、所定の休止時間だけ送信中止とを所定回数繰り返すことができ、更に前記送信基地局12Tによる複数回の電波の送信は、その電波の周波数を送信ごとに異なるものとして行なうことができるとともに、前記所定の送信時間は送信ごとに異なるものとすることができる。この場合、この測位のための電波を受信する移動局10および受信基地局12Rにおいては、前記送信基地局12Tにより送信される電波の周波数や送信時間に対応して電波の受信を行なうものとされ、移動局10および受信基地局12Rの受信強度検出部28および40においては、前記繰り返し行なわれる前記複数回の送信のそれぞれについて電波の受信強度の算出が行われる。そして、算出された前記複数回の送信のそれぞれについて電波の受信強度のうち、例えばその受信強度が所定の想定範囲を上回る、もしくは下回ることなどに基づいて電波の干渉などの影響を受けたと判断される受信強度を除外してそれらの平均を算出し、算出される平均を測位のための電波の受信強度とすることができる。このようにすれば、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との間の電波の送受信を複数回行なうことにより複数回得られる受信基地局12Rにおける電波の受信強度および移動局10における電波の受信強度、送信基地局12Tと受信基地局12Rとの間の距離、および、受信基地局12Rおよび移動局10のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナ32、22の利得に基づいて、送信基地局12Tと移動局10との距離を算出する測距部58を有する移動局測位システム8において、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との間の電波の送受信において干渉などが生じた場合においても、その干渉が受信基地局12Rにおける電波の受信強度および移動局10における電波の受信強度の受信強度に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施例である移動局測位システムの構成の概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の概要を説明する図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の概要を説明する図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の概要を説明する図である。
【図5】測距部による送信基地局と移動局との距離の算出作動を説明する図である。
【図6】測位部による移動局の位置の算出作動を説明する図である。
【図7】サーバ、送信基地局、受信基地局、および移動局10の間における信号および電波の送受信の一例を表わすタイムチャートである。
【図8】サーバの制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図9】図8の測位中止判定ルーチンの制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図10】送信基地局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図11】図10の送信開始判定ルーチンの制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図12】受信基地局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図13】移動局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の別の実施例における移動局の有する機能の概要を説明する図であって、図2に対応する図である。
【図15】図14の移動局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
8:測位システム
10:移動局
12:基地局
12T:送信基地局
12R:受信基地局
22:アンテナ(移動局)
32:アンテナ(基地局)
37:送信制御部
38:送信開始判定部
39:送信開始要求部
52:測距部
56:実行中止部
58:測位部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基地局および移動局の間で電波の送受信を行ない、その受信結果である受信した電波の受信強度を用いて移動局の位置を算出することのできる移動局測位システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
送信機から送信された電波を受信し、受信した電波の受信強度に基づいて、受信機と送信機との距離を求める方法が提案されている。このとき、例えば既知の位置にある複数の送信機のそれぞれと受信機との距離をそれぞれ算出することにより、受信機の位置を算出することができる。
【0003】
かかる方法においては、例えば予め得られている受信強度に対する電波の送信機と受信機との距離の関係に検出される受信強度を適用することにより送信機と受信機との距離を得ることができる。したがって、より正確な距離を得たり、あるいは受信機の位置の算出をより正確に行なうには、受信強度をより正確に検出することが望ましい。
【0004】
また、例えば特許文献1には位置検出すべき対象物から送信される信号と、予め既知の位置から送信される信号とを用いて対象物の位置を検出する位置検出システムが開示されている。かかる場合においても、対象物の位置検出の精度は受信強度の検出精度により左右されるので、受信強度を精度よく検出することが求められる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−98749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように受信強度に基づいて移動局の位置の算出を行なう場合には、電波の送信元における送信出力(送信電力)の大きさが一定であることが前提となる。しかしながら、例えば送信元となる送信機における供給電圧の変化や、気温などの送信機の周辺環境の変化、あるいは送信機の連続運用などによる性能の経時的な変化により、送信機の送信出力の大きさが変化することが発生しうる。このように送信機における送信出力が変化すると、受信強度に基づいて算出される移動局の位置は誤差を含むこととなり、移動局の位置を精度よく算出することができない。
【0007】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、送信機における電波の送信出力が変化する場合においても電波の受信強度に基づいて移動局の位置を算出することのできる移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)既知の位置に設置される複数の基地局と、移動可能な移動局との間で電波の送受信を行ない、該送受信における受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)該複数の基地局のうちいずれか1の送信基地局から送信された電波を他の前記基地局のうちの少なくとも1の受信基地局および前記移動局において受信し、該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離を算出する測距部と、(c)前記複数の基地局のうち少なくとも異なる3局を前記送信基地局とすることにより前記測距部によって得られる、前記3局の送信基地局のそれぞれと前記移動局との距離のそれぞれに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、該複数の基地局のうちいずれか1の送信基地局から送信された電波が他の前記基地局のうちの少なくとも1の受信基地局および前記移動局において受信されその受信強度が検出されるとともに、前記測距部により、該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離が算出され、前記測位部により、前記複数の基地局のうち少なくとも異なる3局を前記送信基地局とすることにより前記測距部によって得られる、前記3局の基地局のそれぞれと前記移動局との距離のそれぞれに基づいて前記移動局の位置が算出されるので、電波を送信する送信基地局における送信出力の大きさを用いずに前記移動局の位置を算出することができ、送信基地局における送信出力の大きさが変化する場合においても移動局の位置の算出への影響を受けることがない。
【0010】
好適には、(a)前記受信基地局は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の使用判定時間において使用中であるか否かを判断し、使用中でない場合に前記送信基地局に対し送信開始要求信号を送信する送信開始要求部を有し、(b)前記送信基地局は、該受信基地局の送信開始要求部からの該送信開始要求信号を受信した場合に電波の送信を開始する送信制御部を有する。このようにすれば、前記送信開始要求部により送信された送信開始要求信号が前記送信基地局により受信された場合に前記送信基地局からの電波の送信が開始されるので、前記受信基地局および前記移動局において前記送信基地局から送信される電波と他の電波との干渉が防止できる。
【0011】
また好適には、(a)前記送信基地局は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中であるか否かを判断する送信開始判定部を有し、(b)該送信開始判定部により使用中でないと判断される場合に電波の送信を開始する送信制御部を有する。このようにすれば、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中でないと前記送信開始判定部において判断される場合に、前記送信基地局からの電波の送信が開始されるので、前記受信基地局および前記移動局において前記送信基地局から送信される電波と他の電波との干渉が防止できる。
【0012】
また好適には、前記測距部は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との間の電波の送受信を複数回行なうことにより複数回得られる該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離を算出する。このようにすれば、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との間の電波の送受信において干渉などが生じた場合においても、その干渉が該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度の受信強度に与える影響を低減することができる。
【0013】
また好適には、前記移動局測位システムは、前記送信基地局から送信され前記受信基地局において受信された電波の前記受信強度の時系列的変化と、該送信基地局から送信され前記移動局において受信された電波の前記受信強度の時系列的変化との類似度を比較し、該類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、前記測距部における前記送信基地局と前記移動局との距離の算出を中止する実行中止部を有すること、を特徴とする。このようにすれば、前記類似度を比較し、その類似度が前記所定のしきい値よりも低いことに基づいて前記送信基地局から前記受信基地局への電波の伝搬、あるいは前記送信基地局から前記移動局への電波のすくなくとも一方に妨害電波が発生することを検出でき、かかる場合に算出される前記送信基地局と前記移動局との距離は誤差が多いものとして、その算出を中止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の一実施例である移動局測位システム8の概要を表わす図である。図1において移動局測位システム8は、例えば図と平行な平面内を移動可能とされた移動局10と、その位置が既知とされた4局の基地局12A、12B、12C、12D(以下、基地局のそれぞれを区別しない場合、「基地局12」という。)、およびこれら基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されるなどにより情報通信可能とされたサーバ14を含んで構成されている。なお、移動局測位システム8においては例えば図1に示すような座標が定義されることにより、移動局10、基地局12の位置などを表わすことができるようにされている。
【0016】
移動局10と基地局12とは相互に無線通信が可能とされている。また複数の基地局12のそれぞれも同様に相互に無線通信が可能とされている。例えば、移動局10および基地局12のそれぞれが送信する電波に含まれる識別符号などにより、その電波を受信した場合に移動局10またはいずれの基地局12によって送信された電波であるかが識別可能とされている。また、共通する符号化および復号化の手順を有することにより、移動局10と基地局12との間、および複数の基地局12の相互間において情報の受け渡しが可能とされている。
【0017】
また、移動局10や各基地局12が送信する電波は、例えば各局に固有の符号などが付されることなどにより、その電波を受信した移動局10あるいは基地局12は、いずれの移動局10あるいは基地局12から送信されたものであるかを識別することができるものとされている。
【0018】
図2は、移動局10の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図2に示すように、移動局10は電波を送受信するためのアンテナ22を有し、また、電波の送受信のための機能を有する無線部24と前記無線部24を制御するための制御部26とを機能的に有する。
【0019】
ここで、移動局10から送信される電波を受信する基地局12において、移動局10から等しい距離にある基地局12は移動局10からの方向に関わらず等しい受信強度によりその電波を受信することが好ましく、従ってアンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0020】
無線部24は、移動局10における電波の送受信を行なうものであり、後述する制御部26により送信状態と受信状態とが切り換えられる。電波の送信時には、無線部24は制御部26によって指示される制御内容、すなわち信号波の内容、搬送波の周波数、送信出力などにより、前記アンテナ22により電波を送信する。このように、無線部24は、搬送波生成回路、変調機、送信アンプ等を含んで構成されている。また無線部24は、電波の受信時にはアンテナ22によって受信された電波を増幅し、所定の復調処理などを行なうことにより信号波を取り出す。すなわち、無線部24は、受信アンプ、復調機などをも含んで構成される。
【0021】
制御部26は、移動局10の作動を制御するものであって、具体的には無線部24により取り出された情報を処理したり、前記無線部24の作動、より具体的には送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。この信号波には、例えば後述する受信強度測定部28による測定結果などが含まれる。制御部26は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0022】
受信強度測定部28は、無線部24が受信した電波の受信強度を測定するものであって、例えば図示しない時計から供給されるクロック信号に基づいて所定の計測間隔ごとに所定の時間区間だけ受信した電波の受信強度の瞬時値を検出し、その平均を算出することなどにより、受信強度を測定する。前記電波の受信強度は、例えば受信した電波の強度を数値化した指標であるRSSI(receive signal strength indicator)が用いられ、具体的には電波の受信強度が予め定められた例えば8ビット(256段階)の数により表わされる。
【0023】
図3は基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図3に示すように、基地局12は電波を送受信するためのアンテナ32を有し、また、無線部34、制御部36、受信強度測定部40、通信インタフェース42などを機能的に有する。このうち、アンテナ32、無線部34、受信強度測定部40についてはその機能は移動局10のアンテナ22、無線部24、受信強度測定部28とそれぞれ同様であるので詳細な説明を省略する。
【0024】
制御部36は、基地局12の作動を制御するものであって、具体的には無線部34により受信された情報を処理したり、前記無線部34の作動、より具体的には送受の切り換え、送信出力や送信周波数などの制御や、無線により送信される信号波の生成などを行なう。この信号波には、例えば後述する受信強度測定部28による測定結果などが含まれる。制御部36は例えば既知のマイコンなどによって実装される。
【0025】
また、制御部36は、送信制御部37、送信開始要求部39を機能的に含んで構成される。このうち、送信制御部37は、基地局12から自局以外の基地局である他の基地局12および移動局10に対して送信される測位(位置の算出)のための電波の送信を制御するものであって、他の基地局12の後述する送信開始要求部39から送信される送信開始要求信号を受信した場合に、無線部34に対し前記測位のための電波の送信を開始させる。具体的には、少なくとも1つの受信基地局から前記送信開始要求信号を受信した場合に、測位のための電波の送信を開始させる。すなわち、送信制御部37が作動する基地局12は、測位のための電波を送信する送信基地局12Tとして振る舞う。すなわち、測位のための電波を送信する基地局12を送信基地局12Tという。また、この送信基地局12Tから送信される測位のための電波を受信する基地局12を受信基地局12Rという。この受信基地局12Rについては後述する。前記測位のための電波は予め定められた所定の送信時間だけ所定の送信出力により送信される。また、前記予め定められた所定の送信時間とは、移動局10の受信強度測定部28、および他の基地局12の受信強度測定部40において、電波の受信強度を測定するのに十分な時間となるように設定される。
【0026】
送信開始要求部39は、他の基地局12および移動局10との間で送受信を行なう電波の周波数が、予め定められた所定の使用判定時間において使用中であるか否かを判断する。そして、使用中でないと判断する場合には、送信基地局12Tとして振る舞う基地局12に対し、その周波数により測位のための電波の送信を要求する送信開始要求信号を送信する。すなわち、送信開始要求部39が作動する基地局12は、前記送信基地局12Tから送信される測位のための電波を受信する受信基地局12Rとして振る舞う。具体的には例えば、送信開始要求部39は、前記使用判定時間だけ前記周波数において電波の受信を行ない、他の基地局や移動局測位システム8を構成するものでない無線機器などから送信される電波を受信しなかった場合に、その周波数は使用中でないと判断する。また、この使用判定時間は、例えば、送信フレームの時間長さやバックオフ時間(衝突回避時間)を考慮して定められる。
【0027】
このようにすれば、送信基地局12Tにおいて使用中でないと判断される周波数の電波についてであっても、受信基地局12Rにおいては使用中であると判断される場合には、送信基地局12Tから受信基地局12Rに送信されることがなく、受信基地局12Rにおいて前記送信基地局12Tから送信された電波と他の基地局12や前記他の機器から送信される電波とが干渉するなどにより良好に受信できない、いわゆる隠れ端末問題を防止することができる。
【0028】
前述のように、基地局12は、送信制御部37および送信開始要求部39の両方の機能を有しておき、いずれかを有効に機能させることにより、送信基地局12Tおよび受信基地局12Rの何れとしても振る舞うことができる。
【0029】
通信インタフェース42は、基地局12からサーバ14や他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。例えば各基地局12からサーバ14へは受信強度測定部40によって算出された受信強度の値や、移動局10の受信強度測定部28によって算出され、いずれかの基地局12に電波によって伝達された移動局10における送信基地局12から送信された測位のための電波の受信強度についての情報などが通信インタフェース42を介して送信される。またサーバ14から基地局12へは基地局12や移動局10の作動に関する指令などが送信され、通信インタフェース42を介して受信される。
【0030】
図4はサーバ14の有する機能の要部を説明する機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ14は必要な情報を記憶するための記憶部50と、前記送信基地局12Tと前記移動局10との距離を算出する測距部52と、前記移動局10の位置の算出のための演算を行なう測位部58と、通信ケーブル18により接続された基地局12と情報通信を行なうための通信インタフェース48とを機能的に有する。このサーバ14は例えば、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、必要な演算などを実行するようになっている。
【0031】
通信インタフェース48は、前述の基地局12の通信インタフェース42と同様に、サーバ14から他の基地局12に対して通信ケーブル18を介して情報の送受信を行なう。
【0032】
記憶部50は、後述する測位部58において測位に必要とされる情報などが記憶される。具体的には予め既知である各基地局12の位置についての情報や、各基地局12のアンテナ32の利得についての情報、さらに、測距部52によって算出される各送信基地局12Tと移動局10との距離についての情報などを記憶する。
【0033】
測距部52は、各基地局12からサーバ14に送信される、各基地局12が受信基地局12Rとして機能した場合に受信した、送信基地局12Tから送信された測位のための電波の受信強度の値と、前記記憶部50に記憶されるなどにより予め既知とされる各基地局12の位置についての情報、および各基地局12のアンテナ32の利得についての情報に基づいて、送信基地局12Tとされた各基地局12のそれぞれと移動局10との距離を算出する。
【0034】
測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離を算出について具体的に説明する。例えば図5に示すように、送信基地局12Tにおいて、アンテナ利得がGT(倍)のアンテナ32を用いて、送信出力(電力)PT(W)により測位のための電波が送信された場合を想定する。受信基地局12Rにおいて、アンテナ利得がGR(倍)のアンテナ32を用いて、受信電力PR(W)により測位のための電波が受信され、移動局10において、利得がGMS(倍)のアンテナ32を用いて、受信電力PMS(W)により測位のための電波が受信される。ここで、フリスの伝達公式によると、これらの関係は次式のように得られる。
【数1】
なお、λは送信基地局12Tから送信される測位のための電波の周波数であり、既知の値である。また、DT−Rは、送信基地局12Tから受信基地局12Rへの電波の伝搬距離を表わしており、前述のように送信基地局12Tおよび受信基地局12Rの位置は予め既知とされているので、両者の距離であるDT−Rも既知とされる。一方、DT−MSは、送信基地局12Tから移動局10への電波の伝搬距離を表わしており、未知の値である。
【0035】
上記(1)式の両式より、送信基地局12Tから移動局10への電波の伝搬距離DT−MSは、次式(2)のように得られる。
【数2】
ここで、受信基地局12Rのアンテナ32および移動局10のアンテナ22の利得GR、GMSはそれぞれ前述のように予め既知である。一方、受信基地局12Rにおける電波の受信強度PRは受信強度測定部40により測定され、通信ケーブル18等を介してサーバ14に送信される。また、移動局10における電波の受信強度PMSは、受信強度測定部28により測定され、その測定結果についての情報は移動局10からいずれかの基地局12に無線により送信され、さらにその測定結果についての情報を受信した基地局12から通信ケーブル18等を介してサーバ14に送信される。このようにして、測距部52は送信基地局12Tと移動局10との距離を算出するのに必要な、受信基地局12Rおよび移動局10における電波の受信強度PR、PMSを取得し、前記(2)式により送信基地局12Tと移動局10との距離を算出する。
【0036】
なお、前記(2)式は、送信基地局12Tの送信出力PTを含まない式となっていることから、例えば送信基地局12Tに電力を供給するバッテリが消耗するなどにより、送信基地局12Tの電波の送信出力が変動する場合などであっても、算出される送信基地局12Tと移動局10との距離は前記変動の影響が低減される。
【0037】
前述の図1に示したように、本実施例における移動局測位システム8は4局の基地局12A乃至12Dを含んで構成されている。かかる場合においては、いずれか1の基地局12、例えば第1基地局12Aが送信基地局12Tとされた場合に、他の基地局、すなわち第2基地局12B乃至第4基地局12Dの3つの基地局が受信基地局12Rとして機能しうる。したがって、前記測距部52は、第2基地局12B乃至第4基地局12Dの3つの基地局のそれぞれについてのアンテナ32の利得および送信基地局12Tから送信された電波の受信強度PRの値に基づいて、送信基地局12Tである第1基地局12Aと移動局10との距離をそれぞれ算出することができる。このように、複数の受信基地局12Rが存在する状況下においては、測距部52は例えば複数の受信基地局12Rのそれぞれについて、すなわち複数の受信基地局12Rのそれぞれについてのアンテナ32の利得および送信基地局12Tから送信された電波の受信強度PRの値に基づいて、送信基地局12Tである第1基地局12Aと移動局10との距離をそれぞれ算出し、それらの平均を送信基地局12Tと移動局10との距離とする。あるいは、複数算出される第1基地局12Aと移動局10との距離の中間値を送信基地局12Tと移動局10との距離としてもよい。また、送信基地局12T以外の基地局である第2基地局12B乃至第4基地局12Dのうち1局の基地局を受信基地局12Rとして選択した後、その受信基地局のアンテナ32の利得および送信基地局12Tから送信された電波の受信強度PRの値に基づいて、送信基地局12Tである第1基地局12Aと移動局10との距離を算出してもよい。測距部52は、少なくとも後述する測位部58において必要とされる基地局12の数だけ基地局12を送信基地局12Tとすることにより、それら送信基地局12Tと移動局10との距離を算出する。
【0038】
また、測位部52は、ある基地局12と移動局10との距離を算出しようとする場合には、各基地局12の作動を制御し、移動局との距離を算出しようとする基地局12を送信基地局12Tとして作動させるとともに、他の基地局の少なくとも1局を受信基地局12Rとして作動させる。また、受信基地局12Rおよび移動局10に対しては、送信基地局12Tから送信される測位のための電波を受信した際の受信強度についての情報をサーバ14に送信するように制御をする。
【0039】
測位部58は、前述の測距部52によって算出される基地局12と移動局10との距離と、予め既知である各基地局12の位置情報に基づいて、移動局10の位置を算出する。
【0040】
図6は、測位部58による移動局10の位置の算出の原理を説明する図である。移動局10の位置を表わす座標を(x、y)とし、第1基地局12Aの位置を表わす座標が(xB1,yB1)、第2基地局12Bの位置を表わす座標が(xB2,yB2)、第3基地局12Cの位置を表わす座標が(xB3,yB3)、第4基地局12Dの位置を表す座標が(xB4,yB4)であるとすると、これらの関係は次式(3)により得られる。なお、図6における基地局12の配置は説明のため図1のものと異なっている。
(xB1 - x)2 + (yB1 - y)2= r12
(xB2 - x)2 + (yB2 - y)2= r22
(xB3 - x)2 + (yB3 - y)2= r32
(xB4 - x)2 + (yB4 - y)2= r42 ・・・(3)
ここで、r1、r2、r3およびr4(m)はそれぞれ、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、および第4基地局12Dのそれぞれから移動局10までの距離であって、前記測距部52によって算出される値である。測位部58は前記(3)式を解くことにより、移動局10の位置(x,y)を算出する。なお、前記(3)式を解くにあたり、それらの全ての式を連立させて解く必要はなく、解を算出するのに最低限の数の式により解いてもよい。すなわち、少なくとも前記(3)式の解を解くのに最低限必要となる式の数だけ、前記測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離の算出が行なわれればよく、具体的には移動局10が平面を移動する場合には、一般に前記(3)式は3本の式であればよいので、3局の基地局12のそれぞれと移動局10との距離ri(i=1,2,3)が測距部52により算出されればよい。同様に、移動局10が空間(3次元)を移動する場合には、一般に前記(3)式は少なくとも4本の式が必要であるので、4局の基地局12のそれぞれと移動局10との距離ri(i=1,2,3,4)が測距部52により算出されればよい。
【0041】
また、サーバ14は、測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離の算出を中止させる実行中止部56を含んで構成されている。実行中止部56は、送信基地局12Tから送信され受信基地局12Rにおいて受信された測位のための電波の受信強度PRの時系列的変化と、送信基地局12Tから送信され移動局10において受信された前記測位のための電波の受信強度PMSの時系列的変化との類似度を比較し、類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、測距部52における送信基地局12Tと移動局10との距離DT−MSの算出を中止する。
【0042】
送信基地局12Tから送信される測位のための電波は、移動局10および受信基地局12Rによってそれぞれ受信される。送信基地局12Tから受信基地局12Rあるいは移動局10までの電波の伝搬が干渉などの影響を受けることがない場合には、一般的に電波の受信強度はその伝搬距離に対応して減衰するものの、両者の時系列的変化は受信強度は送信基地局12Tにおける送信電力に対応して変化する。一方で、送信基地局12Tから受信基地局12Rあるいは移動局10までの電波の伝搬が、例えば妨害電波の送信源などが存在するなどにより干渉などの影響を受ける場合には、受信基地局12Rにおける電波の受信強度PRの時系列的変化と、移動局10における電波の受信強度PMSの時系列的変化とは異なった変化を生ずる。そこで実行中止部56は、受信基地局12Rにおける電波の受信強度PRの時系列的変化と、移動局10における電波の受信強度PMSの時系列的変化とを比較し、これらの類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、移動局10もしくは受信基地局12Rの少なくとも一方において、受信波に干渉などの影響が生じており、正確に受信強度を測定できていない可能性があるとして、その受信基地局12Rにおける受信強度PRを用いた前記測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離の算出を中止させる。
【0043】
受信基地局12Rにおける電波の受信強度PRの時系列的変化と、移動局10における電波の受信強度PMSの時系列的変化との比較は、例えば、音声認識で用いられる技術である、線形予測法によるスペクトル推定、ハミング距離やLPCケプストラム距離などによる判定、あるいはこれらの組み合わせによって行なわれる。また、前記しきい値は、前記測距部52において算出される距離に生ずる誤差として許容される値に対応して予め実験的に、あるいはシミュレーションにより決定される値である。
【0044】
図7は、本実施例の移動局測位システム8における移動局10、第1基地局12A乃至第4基地局12D、およびサーバ14の作動の一部であって、これらの作動の相互の関係を説明するタイムチャートである。図7においては、下向きに時間の経過を表わしている。なお、図7における各作動に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)Sの位置は、正確な時間間隔を示したものではない。
【0045】
まず、S1においては、サーバ14から送信基地局12Tとされた第1基地局12Aに対し、測位のための電波の送信を行なわせる指令(送信要求)が行なわれる。S2においては、この指令を受けた第1基地局12Aから測位のための電波が所定の送信出力により送信される。また、受信基地局12Rである第2基地局12B乃至第4基地局12D、および移動局10によりこの測位のための電波が受信され、受信強度が測定される。S3においては、第1基地局12Aからサーバ14に対し、S2の送信が行なわれた旨の通知(送信完了応答)が行なわれる。
【0046】
S4においては、S2で測位のための電波を受信した移動局10から第1基地局12Aに対し、受信した測位のための電波の受信強度についての情報(受信結果)が送信される。S5においては、第1基地局12Aに対し、移動局10における測位のための受信結果をサーバ14に通知させる指令(受信結果要求)が行なわれる。そして、S6において、この受信結果要求を受けた第1基地局12Aから測位サーバ14に対し移動局10における受信結果が通知される。なお、本実施例においては移動局10における受信結果は送信基地局12Tとしての第1基地局12Aによって受信され、第1基地局12Aからサーバ14へ通知されるものであったが、これに限られず、任意の基地局12によって行なわれることができる。
【0047】
S7においては、受信基地局12Rの一つである第2基地局12Bに対し、第2基地局12Bにおける測位のための受信結果をサーバ14に通知させる指令(受信結果要求)が行なわれる。そして、S8において、この受信結果要求を受けた第2基地局12Bから測位サーバ14に対し第2基地局12Bにおける受信結果が通知される。
【0048】
S9およびS11においては、他の受信基地局12Rである第3基地局12Cおよび第4基地局12Dのそれぞれに対し、S7と同様に第3基地局12Cおよび第4基地局12Dにおける測位のための受信結果をサーバ14に通知させる指令(受信結果要求)が行なわれ、S10およびS12においては、S8と同様に、この受信結果要求を受けた第3基地局12Cおよび第4基地局12Dから測位サーバ14に対し第3基地局12Cおよび第4基地局12Dにおける受信結果がそれぞれ通知される。
【0049】
図8は、本実施例の移動局測位システム8を構成するサーバ14の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、送信基地局12Tを識別するための変数iが1に初期化される。
【0050】
SA2においては、サーバ14からi番目の送信基地局12Tとされた基地局12に対して、測位のための電波の送信を行なわせる指示が送信される。またSA3においては、SA2の指示が送信されてからの経過時間を計測するための図示しないタイマーがスタートさせられる。
【0051】
SA4においては、送信基地局12Tから測位のための指令が行なわれた旨の応答が受信される。この応答は送信基地局12Tの作動を説明する後述する図10のSC5において送信されるものである。
【0052】
SA5においては、SA4で行なわれた受信で、送信基地局12Tから測位のための指令が行なわれた旨の応答が受信されたか否かが判断される。送信基地局12Tから測位のための指令が行なわれた旨の応答が受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SA7が実行される。一方、送信基地局12Tから測位のための指令が行なわれた旨の応答が受信されなかった場合にはSA5の判断は否定され、SA6が実行される。
【0053】
SA6においては、SA3でスタートされたタイマーにより計測される時間、すなわちSA2で送信の要求が行なわれてからの経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過したか否かが判断される。前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過した場合は、SA6の判断が肯定され、移動局10の測位を行なうのに十分な数の送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行なうことができなかったとして、移動局10の測位に失敗したとして本フローチャートは終了させられる。一方、前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過していない場合は、SA6の判断が否定され、SA4が実行され、引き続き送信基地局12Tからの応答が受信される。
【0054】
SA7においては、送信基地局12Tを識別するための変数iに1が加えられ、別の基地局12が送信基地局12Tとされる。また、SA8においては、変数iの値が予め定められた終了判定値iENDであるか否かが判断される。この終了判定値iENDは例えば、移動局10の測位を行なうのに用いられる基地局の数に1を加えた値とされる。変数iの値が終了判定値iENDである場合には、本ステップの判断は肯定され、必要な数の送信基地局12Tからの測位のための電波の送信が終了したとして、SA9以降が実行される。一方、変数iの値が終了判定値iENDでない、すなわち終了判定値iENDよりも小さい場合には、本ステップの判断は否定され、引き続きSA7で更新された変数iに対応するi番目の送信基地局12Tからの測位のための電波の送信が行なわれるために、SA2以降が実行される。
【0055】
SA9においては、移動局10との距離を算出可能な基地局12の数を表わす変数Sが0に、また、基地局12を識別するための変数jが1にそれぞれ初期化される。
【0056】
SA10においては、サーバ14からj番目の基地局12に対して、それまでに受信した測位のための電波の受信強度についての情報の送信を行なわせる指示が送信される。この受信強度についての情報は、電波の受信強度を示す情報に加え、電波の送信局である送信基地局12Tが何れの基地局12であるかを特定する情報や、電波の受信局である自局を特定する情報を含む。またSA11においては、SA10の指示が送信されてからの経過時間を計測するためのタイマーがスタートさせられる。
【0057】
SA12においては、基地局12から受信強度についての情報の受信が行なわれる。この受信強度についての情報は受信基地局12Rの作動を説明する後述する図12のSE8において送信されるものである。このとき、各基地局12からは、その基地局12が受信基地局12Rとして作動した際に送信基地局12Tから送信された電波の受信強度についての情報に加え、その基地局12が送信基地局12Tとして作動した際にその基地局12から送信された電波の移動局10における受信強度についての情報が送信される。
【0058】
SA13においては、SA12で行なわれた受信で、基地局12から受信強度についての情報が受信されたか否かが判断される。基地局12から受信強度についての情報が受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SA15が実行される。一方、基地局12から受信強度についての情報が受信されなかった場合にはSA13の判断は否定され、SA14が実行される。
【0059】
SA14においては、SA11でスタートされたタイマーにより計測される時間、すなわちSA10で受信結果の要求が行なわれてからの経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過したか否かが判断される。このタイムアウト判定時間はSA3のそれと同じであっても良いし、異なる値であってもよい。前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過した場合は、SA14の判断が肯定され、j番目の基地局12からは受信強度についての情報が受信されなかったとして、SA17以降が実行させられる。一方、前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過していない場合は、SA14の判断が否定され、SA12が実行され、引き続き基地局12からの応答が受信される。
【0060】
SA13の判断が肯定された場合に実行されるSA15においては、j番目の基地局12からは受信強度についての情報が得られたとして、移動局10との距離を算出可能な基地局12の数を表わす変数Sに1が加えられる。またSA16においては、得られたj番目の基地局12における受信強度についての情報が例えば記憶部50などに記憶させられる。
【0061】
SA17においては、基地局12を識別するための変数jに1が加えられ、受信強度についての情報を得るための対象となる基地局12が別の基地局12に切り換えられる。
【0062】
SA18においては、変数jの値が予め定められた終了判定値jENDであるか否かが判断される。この終了判定値jENDは例えば、移動局測位システム8を構成する基地局12の総数に1を加えた値とされる。変数jの値が終了判定値jENDである場合には、本ステップの判断は肯定され、全ての基地局12からの受信に関する情報の取得が終了したとして、SA19以降が実行される。一方、変数jの値が終了判定値jENDでない、すなわち終了判定値jENDよりも小さい場合には、本ステップの判断は否定され、引き続きSA17で更新された変数jに対応するj番目の基地局12からの受信強度についての情報の取得が行なわれるために、SA10以降が実行される。
【0063】
SA19においては、移動局10との距離を算出可能な基地局12の数を表わす変数Sの値が、移動局10の位置の算出を行なうのに必要となる最小の数SMIN以上であるか否かが判断される。変数Sの値が、SMIN以上である場合には本ステップの判断は肯定され、得られた受信強度についての情報に基づいて移動局10の位置の算出を行なうことができるとしてSA20以降が実行される。一方、変数Sの値が、SMINより小さい場合には、本ステップの判断は否定され、得られた受信強度についての情報だけでは移動局10の位置の算出を行なうことができないとして、本フローチャートは終了させられる。
【0064】
実行中止部56に対応するSC20においては、送信基地局12Tから送信された測位のための電波の受信基地局12Rおよび移動局10のそれぞれにおける受信強度の時系列的変化のそれぞれに基づいて、移動局の測位を中止するか否かを決定する測位中止判定ルーチンが実行される。図9はこの測位中止判定ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【0065】
まず、SB1においては、前記図8のSA12で得られた各基地局12における受信強度についての情報と、移動局10における受信強度についての情報から、同一の送信基地局12Tが送信した電波についての各受信基地局12Rおよび移動局10における受信強度の情報が抽出される。そして抽出された同一の送信基地局12Tが送信した電波についての各受信基地局12Rにおける受信強度の時系列変化と移動局10における受信強度の時系列変化とが比較され、その類似度が評価される。この類似度の評価は、例えば前述のように、音声認識で用いられる技術である、線形予測法によるスペクトル推定、ハミング距離やLPCケプストラム距離などによる判定、あるいはこれらの組み合わせによって行なわれる。
【0066】
SB2においては、SB1で評価された類似度の値が予め定められた所定のしきい値以上であるか否かが判断される。類似度が所定のしきい値以上である場合には、移動局測位システム8における電波の伝搬に、移動局10の位置の算出に大きな誤差などの影響を生ずる障害はないとして、移動局10の位置の算出を行なうものとして図8のSA21が実行される。一方、類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、移動局10もしくは受信基地局12Rの少なくとも一方において、受信波に干渉などの影響が生じており、正確に受信強度を測定できていない可能性があるとして、移動局10の位置の算出を中止し、図8のフローチャートは中止させられる。
【0067】
図8に戻って、測距部52に対応するSA21においては、各送信基地局12Tと移動局10との距離が算出される。具体的には、送信基地局12Tから送信された測位のための電波を受信した受信基地局12Rにおける受信強度PRおよび移動局10における受信強度PMSと、予め既知とされた受信基地局12Rのアンテナ32の利得GRおよび移動局10のアンテナ22の利得GMSを用いて、前述の式(1)を解くことにより得られる。なお、受信基地局12Rにおける受信強度および移動局10における受信強度が時系列的な変化として得られる場合には、その分布における平均値や中間値などが用いられればよい。また、送信基地局12Tから送信される測位のための電波が複数の受信基地局12Rによって受信される場合には、これら複数の受信基地局12Rにおける複数の受信強度PRの値のそれぞれを用いて送信基地局12Tと移動局10との距離が算出され、それらの平均が用いられてもよいし、あるいは例えば予め任意に選択された一局の受信基地局12Rにおける受信強度PRの値を用いて送信基地局12Tと移動局10との距離が算出されてもよい。
【0068】
測位部56に対応するSA22においては、SA11において算出された各送信基地局12Tと移動局10との距離と、予め既知である各基地局12の位置についての情報とに基づいて、移動局10の位置が算出される。具体的には前述の(3)式が導出され、この(3)式が解かれることにより移動局10の位置が解として得られる。
【0069】
図10は、基地局12が送信基地局12Tとして作動する場合の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、SC1においては、サーバ14からの測位のための電波の送信を行なわせる指示が受信されたか否かが判断される。このサーバ14からの指示は前述の図8のフローチャートにおけるSA2おいて行なわれるものであって、例えば通信ケーブル18を介して送受信される。サーバ14からの指示が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、SC2が実行される。また、サーバ14からの指示が受信されない場合には、SC8が実行される。
【0070】
SC2およびSC3は送信制御部37に対応する。SC2においては、測位のための電波の送信を開始するか否かを判定する送信開始判定ルーチンが実行される。図11はこの送信開始判定ルーチンおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まずSD1においては、受信基地局12RからのRTS(Request To Send)信号の受信が行なわれる。このRTS信号は、後述する受信基地局12Rの作動を説明する図12のフローチャートにおけるSE3において送信されるものであって、前述の送信開始要求信号に対応する。
【0071】
SD2においては、SD1で受信されたRTS信号がどれだけの受信基地局12Rから受信されたかが判断される。そして、RTS信号が予め定められた所定数、具体的には例えば、少なくとも1つの受信基地局からRTS信号を受信した場合には、本ステップの判断は肯定され、SD3が実行される。一方、RTS信号が予め定められた所定数、例えば少なくとも1つの受信基地局からのRTS信号を受信しなかった場合には、本ステップの判断は否定され、SD4が実行される。
【0072】
SD3においては、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行なうとして、送信開始フラグが1とされる。
【0073】
SD4においては、SD1で受信基地局12RからのRTS信号の受信が開始されてからの経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過したか否かが判断される。前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過した場合は、本ステップの判断が肯定され、SD5が実行される。一方、前記経過時間が所定のタイムアウト判定時間を経過していない場合は、本ステップの判断が否定され、SD1が実行され、引き続き受信基地局12RからのRTS信号の受信が行なわれる。このタイムアウト時間は、例えば、後述する図12のSE2における使用判定時間に、受信基地局12Rにおける処理時間や電波の伝搬に要する時間などを加えて算出される。
【0074】
SD5においては、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行わないとして、送信開始フラグが0とされる。
【0075】
図10に戻って、SC3においては、SC2の送信開始判定ルーチンにおいて設定された送信開始フラグの値が参照される。そして送信開始フラグの値が1である場合には本ステップの判断が肯定され、SC4が実行される。一方、送信開始フラグの値が0である場合には、本ステップの判断は否定され、SC7が実行される。
【0076】
無線部34などに対応するSC4においては、送信基地局12Tから測位のための電波の送信が行なわれる。この送信は予め設定された出力および周波数によって行なわれる。また送信される電波には、送信元となる送信基地局12Tを特定するための情報が含まれており、これを受信した移動局10や受信基地局12Rはいずれの送信基地局12Tが送信した電波であるかを識別できるようになっている。
【0077】
SC5においては、サーバ14に対し、測位のための電波の送信が完了した旨が通知される。
【0078】
SC6においては、SC4で送信された電波を受信した移動局10から、その移動局10における受信強度についての情報を受信するために、送信基地局12Tの無線部が電波を受信する状態に切り換えられる。
【0079】
SC3の判断が否定された場合に実行されるSC7においては、送信基地局12Tから測位のための電波の送信を行なうことができなかった旨がサーバ14に送信される。
【0080】
SC1の判断が否定された場合、すなわちサーバ14からの測位のための電波の送信の指令を受信しなかった場合に実行されるSC8においては、移動局10からの電波を受信したか否かが判断される。すなわち、SC4で送信された電波を受信した移動局10から、その移動局10における受信強度についての情報が受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SC9が実行される。一方、移動局10から受信強度についての情報が受信されない場合には本ステップの判断は否定され、SC10が実行される。
【0081】
SC9においては、SC8で受信された、移動局10における受信強度についての情報が図示しないメモリなどの記憶手段に一時記憶される。
【0082】
SC8の判断が否定された場合に実行されるSC10においては、サーバ14による受信した測位のための電波の受信強度についての情報の送信を行なわせる指示が受信されたか否かが判断される。この指示は前述の図8におけるSA10の指示に対応する。サーバ14からの指示が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、SC11が実行される。また、サーバ14からの指示が受信されない場合には、再びSC1に戻って本フローチャートが実行される。
【0083】
SC11においては、SC9で記憶された、移動局10における測位のための電波の受信強度についての情報がサーバ14に送信される。
【0084】
図12は、基地局12が受信基地局12Rとして作動する場合の制御作動の一例を説明するフローチャートである。SE1およびSE2は送信開始要求部39に対応する。まず、SE1においては、使用可能な周波数(チャンネル)の検索が行なわれる。具体的には例えば、送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定される周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数について、電波の受信を行ない、送信基地局12T以外の無線機器などから電波が送信されているか否かが検出される。この送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定される周波数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0085】
SE2においては、SE1において使用可能な周波数の検索が行なわれた結果、送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定された周波数が、所定の使用判定時間以上空いているかが判断される。すなわち、送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定された周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数において他の無線機器などからの電波の送信が検出されなかった場合には本ステップの判断は肯定され、SE3が実行される。一方、送信基地局12Tが送信可能であるとして予め設定された周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数において他の無線機器などからの電波の送信が検出された場合には本ステップの判断は否定され、再度SE1が実行される。
【0086】
SE3においては、送信基地局12Tが送信しようとする周波数は利用可能であるとして、送信基地局12Tに対し送信要求信号(RTS信号)が送信される。なお、送信基地局12Tが送信可能であるとして設定される周波数が複数である場合には、このRTS信号の送信に併せて、送信に用いられる周波数が指定されてもよい。RTS信号の送受は測位のための電波の周波数(チャンネル)とは異なる周波数(チャンネル)、例えば制御チャネルとして予め定められたチャンネルで行われるので他局のRTS信号により電波が使用中と判断されることはない。
【0087】
SE4においては、送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信が開始される。この測位のための電波の送信は、前述した図10のSC4において行なわれるものである。
【0088】
SE5においては、SE4における受信で送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信されたか否かが判断される。送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SE6が実行される。一方、送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信されなかった場合には本ステップの判断は否定されSE7が実行される。
【0089】
受信強度測定部40に対応するSE6においては、SE4で受信された送信基地局12Tから送信される測位のための電波について、受信強度の検出が行なわれ、検出された受信強度や、その電波に含まれる情報に基づいて識別された電波の送信元である送信基地局12Tについての情報、また、電波を受信した自局についての情報などとともに電波の受信強度についての情報として図示しないメモリなどの記憶手段に一時記憶される。なお、この受信強度の検出は、例えば予め定められた所定のサンプリングタイムごとに行なわれ、時系列的な受信強度の変化として得られる。
【0090】
SE7においては、サーバ14による受信した測位のための電波の受信強度についての情報の送信を行なわせる指示が受信されたか否かが判断される。この指示は前述の図8におけるSA10の指示に対応する。サーバ14からの指示が受信された場合には、本ステップの判断が肯定され、SE8が実行される。また、サーバ14からの指示が受信されない場合には、再びSE1に戻って本フローチャートが実行される。
【0091】
SE8においては、SE6で記憶された、受信基地局12Rにおける測位のための電波の受信強度についての情報がサーバ14に送信される。
【0092】
図13は、移動局10の制御作動の一例を説明するフローチャートである。SF1においては、送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信が開始される。この測位のための電波の送信は、前述した図10のSC4において行なわれるものである。
【0093】
SF2においては、SF1における受信で送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信されたか否かが判断される。送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信された場合には本ステップの判断は肯定され、SF3が実行される。一方、送信基地局12Tから送信される測位のための電波の受信されなかった場合には本ステップの判断は否定され再びSF1が実行され、引き続き電波の受信が行なわれる。
【0094】
受信強度測定部28に対応するSF3においては、SF1で受信された送信基地局12Tから送信される測位のための電波について、受信強度の検出が行なわれ、検出された受信強度や、その電波に含まれる情報に基づいて識別された電波の送信元である送信基地局12Tについての情報、また、電波を受信した自局についての情報などとともに電波の受信強度についての情報として図示しないメモリなどの記憶手段に一時記憶される。なお、この受信強度の検出は、例えば予め定められた所定のサンプリングタイムごとに行なわれ、時系列的な受信強度の変化として得られる。
【0095】
SF4においては、SF3で記憶された、移動局10における測位のための電波の受信強度についての情報が送信基地局12Tに送信される。この受信強度についての情報は前述の送信基地局12Tの作動を説明する図11のフローチャートのSC8において受信される。
【0096】
前述の実施例によれば、移動局測位システム8を構成する複数の基地局12のうちいずれか1の送信基地局12Tから送信された電波が他の基地局12のうちの少なくとも1の受信基地局12Rおよび移動局10において受信されその受信強度検出部40(SE6)および28(SF3)により受信強度が検出されるとともに、測距部52(SA21)により、受信基地局12Rにおける電波の受信強度および移動局10における電波の受信強度、送信基地局12Tと受信基地局12Rとの間の距離、および、受信基地局12Rおよび移動局10のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナ32および22の利得に基づいて、送信基地局12Tと移動局10との距離が算出され、測位部58(SA22)により、複数の基地局12のうち少なくとも異なる3局を送信基地局12Tとすることにより測距部52によって得られる、前記3局の基地局12のそれぞれと移動局10との距離のそれぞれに基づいて移動局10の位置が算出されるので、電波を送信する送信基地局12Tにおける送信出力の大きさを用いずに移動局10の位置を算出することができ、送信基地局12Tにおける送信出力の大きさが変化する場合においても移動局10の位置の算出への影響が低減される。
【0097】
また、前述の実施例によれば、受信基地局12Rは、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の使用判定時間において使用中であるか否かを判断し、使用中でない場合に送信基地局12Tに対し送信開始要求信号(RTS信号)を送信する送信開始要求部39(SE1〜3)を有し、送信基地局12Tは、受信基地局12Rの送信開始要求部39からの送信開始要求信号を受信した場合に電波の送信を開始する送信制御部37(SC2〜3)を有するので、送信開始要求部39により送信された送信開始要求信号が送信基地局12Tにより受信された場合に送信基地局12Tからの電波の送信が開始されるので、受信基地局12Rおよび移動局10において送信基地局12Tから送信される電波と他の電波との干渉が防止できる。
【0098】
また,前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、送信基地局12Tから送信され受信基地局12Rにおいて受信される電波の受信強度の時系列的変化と、同一の送信基地局12Tから送信され移動局10において受信される電波の受信強度の時系列的変化との類似度を比較し、該類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、測距部52における送信基地局12Tと移動局10との距離の算出を中止する実行中止部56(SA20)を有するので、前記類似度を比較し、その類似度が所定のしきい値よりも低いことに基づいて送信基地局12Tから受信基地局12Rへの電波の伝搬、あるいは送信基地局12Tから移動局10への電波のすくなくとも一方に妨害電波が発生することを検出でき、かかる場合に算出される送信基地局12Tと移動局10との距離は誤差が多いものとして、その算出を中止することができる。
【0099】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0100】
図14は本実施例における基地局12の有する機能の要部を説明する機能ブロック図であって、前述の実施例の図3に対応するものである。本実施例の基地局12を説明する図14と前述の図3とを比較すると、本実施例の基地局12は、送信開始要求部39に代えて送信開始判定部38を有する点において前述の実施例の基地局12と異なる。
【0101】
すなわち、本実施例の基地局12の制御部36は、送信制御部37、送信開始判定部38を機能的に含んで構成される。このうち、送信制御部37は、基地局12から自局以外の基地局である他の基地局12および移動局10に対して送信される測位(位置の算出)のための電波の送信を制御するものであって、後述する送信開始判定部38により送信開始が判断される場合に、無線部34に対し前記測位のための電波の送信を開始させる。すなわち、送信制御部37および送信開始判定部38が作動する基地局12は、測位のための電波を送信する送信基地局12Tとして振る舞う。前記測位のための電波は予め定められた所定の送信時間だけ所定の送信出力により送信される。
【0102】
送信開始判定部38は、送信基地局12Tが送信しようとする前記測位のための電波の周波数が、予め定められた所定の送信待機時間において使用中であるか否かを判断する。そして、使用中でないと判断する場合には、前記送信制御部37に対し、その周波数により測位のための電波の送信が可能であると判断する。具体的には例えば、送信開始判定部38は、前記送信待機時間だけ前記周波数において電波の受信を行ない、他の基地局や移動局測位システム8を構成するものでない無線機器などから送信される電波を受信しなかった場合に、その周波数は使用中でないと判断する。また、この使用判定時間は、例えば、送信フレームの時間長さやバックオフ時間(衝突回避時間)を考慮して定められる。
【0103】
このようにすれば、送信基地局12Tの周囲において、送信基地局12Tが送信しようとする電波の周波数が、他の無線機器などによって使用されているか否かを判断できる。
【0104】
なお、基地局12が図14のように構成される場合においては、送信基地局12Tとして機能させられる場合には送信制御部37および送信開始判定部38の両方が有効に機能させられ、受信基地局12Rとして機能させられる場合には、送信制御部37および送信開始判定部38はいずれも有効に機能させられる必要がない。
【0105】
図15は、本実施例における送信開始判定ルーチンの制御作動の一例を説明するフローチャートであって、送信開始判定部38に対応する。この図15のフローチャートは、前述の実施例の図11に代えて、図10のフローチャートのSC2において実行される。
【0106】
SG1においては、測位のための電波を送信しようとする周波数(チャンネル)の使用状況の検出が行なわれる。具体的には例えば、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数やその周波数と干渉を生ずる周波数について、電波の受信を行ない、送信基地局12T以外の無線機器などから電波が送信されているか否かが検出される。この送信基地局12Tが送信する測位のための電波をの周波数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0107】
SG2においては、SG1において使用状況の検出が行なわれた結果、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数が、所定の送信待機時間以上空いているかが判断される。すなわち、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数において他の無線機器などからの電波の送信が検出されなかった場合には本ステップの判断は肯定され、SG3が実行される。一方、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数や、その周波数と干渉を生ずる周波数において他の無線機器などからの電波の送信が検出された場合には、本ステップの判断は否定され、SG4が実行される。
【0108】
SG3においては、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行なうとして、送信開始フラグが1とされる。なお、送信基地局12Tが送信する測位のための電波の周波数として複数の周波数が設定されている場合には、本ステップにおいて、測位のための電波の周波数が、前記SE2で判断が肯定された周波数に指定されてもよい。
【0109】
SG4においては、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信を行わないとして、送信開始フラグが0とされる。
【0110】
また、受信基地局12Rの制御作動に関しては、前述の実施例の図12に示したフローチャートに従ってその制御作動が行なわれるが、本実施例においては、受信基地局12Rは送信開始要求部39を有しないので、これに対応するSE1乃至SE3は実行されない。すなわち、受信基地局12Rは、前述の図12にフローチャートのSE4乃至SE8に示す制御作動が実行される。
【0111】
前述の実施例によれば、送信基地局12Tは、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中であるか否かを判断する送信開始判定部38(SG1〜SG4)を有し、送信開始判定部38により使用中でないと判断される場合に測位のための電波の送信を開始する送信制御部37(SC3)を有するので、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中でないと送信開始判定部38において判断される場合に、送信基地局12Tからの測位のための電波の送信が開始されるので、受信基地局12Rおよび移動局10において送信基地局12Tから送信される電波と他の電波との干渉が防止できる。
【0112】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0113】
例えば、前述の実施例においては移動局10が平面を移動する場合について説明したが、同様の方法により移動局10が空間(3次元)を移動する場合についてもその位置の算出を行なうことが可能である。
【0114】
また、前述の実施例においては、サーバ14は、測距部52による送信基地局12Tと移動局10との距離の算出を中止させる実行中止部56を有するものとされたが、この実行中止部56を有さなくても移動局測位システム8としての一定の効果が得られる。すなわち移動局10の位置の算出を行なうことができる。
【0115】
また、前述の実施例1においては、基地局12は送信制御部37および送信開始要求部39を有し、送信制御部37を機能させることによる送信基地局12Tとして振る舞う一方、送信開始要求部39を機能させることにより受信基地局12Tとして振る舞うことができるものとされたが、これに限られない。すなわち、送信制御部37のみを有し、送信開始要求部39を有しないことにより専ら送信基地局12Tとして機能する基地局と、送信開始要求部39のみを有し、送信制御部37を有しないことにより専ら受信基地局12Rとして機能する基地局とにより移動局測位システム8が構成されてもよい。実施例2においても同様である。
【0116】
また、前述の実施例1においては、受信基地局12Rが測位のための電波が使用中であるか否かを判断し、使用中でないと判断される場合に送信基地局12Tに送信要求信号(RTS信号)を送信する送信開始要求部39を有し、送信基地局12Tの送信制御部37は前記送信開始要求部39から送信要求信号を受信する場合に測位のための電波の送信の開始を制御するものとされた。また、前述の実施例2においては、送信基地局12Tが測位のための電波が使用中であるか否かを判断する送信開始判定部38を有し、送信制御部37は前記送信開始判定部38において電波が使用中でないと判断される場合に測位のための電波の送信の開始を制御するものとされた。本発明の移動局測位システム8はかかる態様に限られず、これらが同時に機能させられる態様も可能である。すなわち、受信基地局12Rが測位のための電波が使用中であるか否かを判断し、使用中でないと判断される場合に送信基地局12Tに送信要求信号(RTS信号)を送信する送信開始要求部39を有し、送信基地局12Tが測位のための電波が使用中であるか否かを判断する送信開始判定部38を有し、送信基地局12Tの送信制御部37は前記送信開始要求部39から送信要求信号が受信され、かつ前記送信開始判定部38において電波が使用中でないと判断される場合に測位のための電波の送信の開始を制御するものとされてもよい。
【0117】
また、サーバ14の制御作動については、その一例を図8のフローチャートに示したが、それに限られない。例えば、図8のフローチャートにおいては、サーバ14は全ての送信基地局12Tとされる基地局12に対し電波の送信を行なわせるとともに、受信基地局12Rおよび移動局10に対しその電波の受信および受信強度の算出を行なわせた後に(SA1乃至SA8)、各基地局12に対しそれまでに受信した電波の受信強度についての情報を送信させ、これを受信するものとされた(SA9乃至SA18)が、これにかぎられない。例えば、図7のタイムチャートに示したように、送信基地局12Tが送信を行なうごとに、その送信により送信された電波の受信結果についての情報を送信させ、これを受信するものとされてもよい。
【0118】
また、前述の実施例においては送信基地局12Tが送信する測位のための電波については限定されないが、特に送信基地局12Tによる測位のための電波の送信が、複数回の電波の送信から構成されるものとすることができる。具体的には例えば、送信基地局12Tは測位のための電波の送信を、所定の送信時間における送信と、所定の休止時間だけ送信中止とを所定回数繰り返すことができ、更に前記送信基地局12Tによる複数回の電波の送信は、その電波の周波数を送信ごとに異なるものとして行なうことができるとともに、前記所定の送信時間は送信ごとに異なるものとすることができる。この場合、この測位のための電波を受信する移動局10および受信基地局12Rにおいては、前記送信基地局12Tにより送信される電波の周波数や送信時間に対応して電波の受信を行なうものとされ、移動局10および受信基地局12Rの受信強度検出部28および40においては、前記繰り返し行なわれる前記複数回の送信のそれぞれについて電波の受信強度の算出が行われる。そして、算出された前記複数回の送信のそれぞれについて電波の受信強度のうち、例えばその受信強度が所定の想定範囲を上回る、もしくは下回ることなどに基づいて電波の干渉などの影響を受けたと判断される受信強度を除外してそれらの平均を算出し、算出される平均を測位のための電波の受信強度とすることができる。このようにすれば、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との間の電波の送受信を複数回行なうことにより複数回得られる受信基地局12Rにおける電波の受信強度および移動局10における電波の受信強度、送信基地局12Tと受信基地局12Rとの間の距離、および、受信基地局12Rおよび移動局10のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナ32、22の利得に基づいて、送信基地局12Tと移動局10との距離を算出する測距部58を有する移動局測位システム8において、送信基地局12Tと受信基地局12Rおよび移動局10との間の電波の送受信において干渉などが生じた場合においても、その干渉が受信基地局12Rにおける電波の受信強度および移動局10における電波の受信強度の受信強度に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施例である移動局測位システムの構成の概要を説明する図である。
【図2】図1の移動局測位システムを構成する移動局の有する機能の概要を説明する図である。
【図3】図1の移動局測位システムを構成する基地局の有する機能の概要を説明する図である。
【図4】図1の移動局測位システムを構成するサーバの有する機能の概要を説明する図である。
【図5】測距部による送信基地局と移動局との距離の算出作動を説明する図である。
【図6】測位部による移動局の位置の算出作動を説明する図である。
【図7】サーバ、送信基地局、受信基地局、および移動局10の間における信号および電波の送受信の一例を表わすタイムチャートである。
【図8】サーバの制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図9】図8の測位中止判定ルーチンの制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図10】送信基地局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図11】図10の送信開始判定ルーチンの制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図12】受信基地局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図13】移動局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の別の実施例における移動局の有する機能の概要を説明する図であって、図2に対応する図である。
【図15】図14の移動局の制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
8:測位システム
10:移動局
12:基地局
12T:送信基地局
12R:受信基地局
22:アンテナ(移動局)
32:アンテナ(基地局)
37:送信制御部
38:送信開始判定部
39:送信開始要求部
52:測距部
56:実行中止部
58:測位部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の位置に設置される複数の基地局と、移動可能な移動局との間で電波の送受信を行ない、該送受信における受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
該複数の基地局のうちいずれか1の送信基地局から送信された電波を他の前記基地局のうちの少なくとも1の受信基地局および前記移動局において受信し、該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離を算出する測距部と、
前記複数の基地局のうち少なくとも異なる3局を前記送信基地局とすることにより前記測距部によって得られる、前記3局の送信基地局のそれぞれと前記移動局との距離のそれぞれに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記受信基地局は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の使用判定時間において使用中であるか否かを判断し、使用中でない場合に前記送信基地局に対し送信開始要求信号を送信する送信開始要求部を有し、
前記送信基地局は、該受信基地局の送信開始要求部からの該送信開始要求信号を受信した場合に電波の送信を開始する送信制御部を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記送信基地局は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中であるか否かを判断する送信開始判定部を有し、
該送信開始判定部により使用中でないと判断される場合に電波の送信を開始する送信制御部を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記測距部は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との間の電波の送受信を複数回行なうことにより複数回得られる該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離を算出すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記送信基地局から送信され前記受信基地局において受信された電波の前記受信強度の時系列的変化と、該送信基地局から送信され前記移動局において受信された電波の前記受信強度の時系列的変化との類似度を比較し、該類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、前記測距部における前記送信基地局と前記移動局との距離の算出を中止する実行中止部を有すること、
を特徴とする請求項4に記載の移動局測位システム。
【請求項1】
既知の位置に設置される複数の基地局と、移動可能な移動局との間で電波の送受信を行ない、該送受信における受信結果に基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
該複数の基地局のうちいずれか1の送信基地局から送信された電波を他の前記基地局のうちの少なくとも1の受信基地局および前記移動局において受信し、該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離を算出する測距部と、
前記複数の基地局のうち少なくとも異なる3局を前記送信基地局とすることにより前記測距部によって得られる、前記3局の送信基地局のそれぞれと前記移動局との距離のそれぞれに基づいて前記移動局の位置を算出する測位部と、
を有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記受信基地局は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の使用判定時間において使用中であるか否かを判断し、使用中でない場合に前記送信基地局に対し送信開始要求信号を送信する送信開始要求部を有し、
前記送信基地局は、該受信基地局の送信開始要求部からの該送信開始要求信号を受信した場合に電波の送信を開始する送信制御部を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記送信基地局は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との電波の送受信に用いられる電波の周波数が予め定められた所定の送信待機時間において使用中であるか否かを判断する送信開始判定部を有し、
該送信開始判定部により使用中でないと判断される場合に電波の送信を開始する送信制御部を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記測距部は、前記送信基地局と前記受信基地局および前記移動局との間の電波の送受信を複数回行なうことにより複数回得られる該受信基地局における電波の受信強度および前記移動局における電波の受信強度、前記送信基地局と前記受信基地局との間の距離、および、前記受信基地局および前記移動局のそれぞれにおいて電波の受信に用いられるアンテナの利得に基づいて、前記送信基地局と前記移動局との距離を算出すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記送信基地局から送信され前記受信基地局において受信された電波の前記受信強度の時系列的変化と、該送信基地局から送信され前記移動局において受信された電波の前記受信強度の時系列的変化との類似度を比較し、該類似度が所定のしきい値よりも低い場合には、前記測距部における前記送信基地局と前記移動局との距離の算出を中止する実行中止部を有すること、
を特徴とする請求項4に記載の移動局測位システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−85273(P2010−85273A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255388(P2008−255388)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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