説明

移動車両利用者の所在位置特定システム

【課題】 送迎車両で移動する児童や要介護者の通学路(移動経路)における安全の確認を確実に行うことができる移動車両を利用した利用者の所在位置特定システムを提供すること。
【解決手段】 本発明の所在位置特定システムは、管理対象である利用者1の個人情報を記録するICカード11と、保護者2の設備と、管理者3の設備と、利用者を輸送する送迎車両4と、ファクシミリ通信を行うための電話回線50と、インターネット網を介した電子メールの送受信を行うためのインターネット電子メールシステム51と、送迎車両4の位置を測量する位置測量システム52とを備えて構成される。送迎車両4は、ICカード11の読み取りが可能なICカードリーダ41と、複数の通信機能を備えたPC42と、GPSシステムの通信機能を備えたGPS43と、経路誘導が可能なナビゲーションシステム44とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICカードを利用した移動車両利用者の所在位置特定システムに係り、特に、ICカードを用いて管理対象(児童を含む未成年者や要介護者)の入退出管理を行うと共に、利用者を送迎車から自宅まで送り届ける送迎の管理を、ICカードと、GPS(Global Positioning System)と、ナビゲーションシステムとを用いて行う移動車両利用者の所在位置特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用の所在位置特定システムとしては、例えば、児童(未成年者を含む)や要介護者等を管理対象として、その移動状況を管理するものが既に開発されているが、近年、これらの管理対象を狙った凶悪犯罪が多発している。
【0003】
従来の歩行者用の所在位置特定システムとしては、例えば特許文献1(特開平10−281801)に示すように、GPSによる位置測定、携帯電話またはPHSの基地局による位置測定、電波マーカによる位置測定機能等の複数の位置測定機能を補完的に利用することが可能な携帯端末を、歩行者に所持させることにより、歩行者の位置を特定できるようにしたものがある(特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、児童や要介護者等は、移動車両を利用することもあり、児童の通学路や要介護者の移動経路における安全を確認するために、移動車両利用者の所在位置特定システムの機能を充実させる必要性が益々高まっている。この事情は、前述の児童や要介護者等が、何らかの歩行者用の所在位置特定システムを利用する場合であっても変わるところがない。
【特許文献1】特開平10−281801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記背景技術で述べた従来の歩行者用の所在位置特定システムにあっては、例えば、特許文献1に開示された技術の場合、単に移動者(歩行者)の所在位置を特定するだけであり、この移動者が何らかの車両を利用して移動したとしても、その移動経路や移動状況までは分析されないので、この移動者の移動は果して正常なものであるのか、それとも何らかの異常が生じているのかといった状況までは判断できないという問題点があった。
【0006】
より具体的には、従来の歩行者用の所在位置特定システムでは、車両に乗車して移動していることを示す移動者が、誘拐または寄り道により移動しているのか、若しくは正規の送迎車両に乗車して自宅に向かって移動しているのかの状況判断ができないという問題点があった。
【0007】
周知のとおり、昨今の少年少女を狙った犯罪は、通学路においてなされることが多いため、この通学路における移動者の安全を確認することが課題であった。
また、従来の技術では、施設から自宅までの移動に送迎用車両を利用する利用者が、既に送迎用車両に乗り移ったのか、それとも送迎用車両には未だ乗り移らずに施設内に留まっているのかの区別ができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、送迎車両で移動する児童の通学路における安全の確認を確実に行うことができる移動車両利用者の所在位置特定システムを提供することを目的としている。
【0009】
また、本発明の目的は、送迎車両で移動する要介護者の移動経路における安全の確認を確実に行うことができる移動車両利用者の所在位置特定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記した従来の移動車両利用者の所在位置特定システムの課題に鑑みてなされたものであり、移動車両を利用する利用者の所在位置を管理センターで管理して、前記利用者の所在位置を特定する移動車両利用者の所在位置特定システムにおいて、前記移動車両は、ICカードの記録内容を読み取る車載ICカードリーダと、GPS装置と、前記管理センターと通信するための管理センター用通信手段と、車載PC(パーソナルコンピュータ)とを備え、前記管理センターは、管理者用PCと、前記利用者に関する情報を利用者リストとして記録するデータベースと、前記移動車両と通信するための第1の通信手段とを備え、前記移動車両の前記車載PCは、前記GPS装置からの情報に基づき、前記移動用車両の所在位置を演算する移動車両所在位置演算手段と、前記利用者が前記ICカードを前記車載ICカードリーダに読み取らせた利用者ID情報と、前記演算により求められた前記移動車両の所在位置情報と、時刻情報とから成るデータを、前記管理センター用通信手段を介して、前記管理センターへ送信する手段と、を備え、前記管理センターの前記管理者用PCは、前記移動車両から、前記第1の通信手段を介して前記データを受信した時に、前記受信データに含まれている前記利用者ID情報と前記データベースが記録する前記利用者とを照合する照合手段と、前記受信データに含まれている前記移動車両の所在位置情報、及び時刻情報を、前記照合により特定された利用者と対応付けて前記データベースに格納する格納手段と、を備え、前記移動車両利用者の所在位置を管理することを特徴とする移動車両利用者の所在位置特定システムを提供することにある。
【0011】
このように構成することで、移動車両(送迎車両)を利用する児童の通学路における安全の確認や、移動車両(送迎車両)を利用する要介護者の移動経路における安全の確認を確実に行うことができる移動車両利用者の所在位置特定システムを提供することができる。
【0012】
ここで、前記移動車両利用者の所在位置特定システムは、前記移動車両の前記車載PCは、当該移動車両を特定できる移動車両ID情報を、前記管理センター用通信手段を介して前記管理センターへ送信する手段をさらに備え、前記管理センターの前記管理者用PCは、前記送信された前記移動車両ID情報を、前記照合手段により特定された利用者と対応付けて前記データベースに格納する手段を、さらに備えたことを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、管理センターで管理される移動車両を複数台とすることが可能となり、それぞれの移動車両毎に、児童や要介護者の移動経路における安全の確認を確実に行うことができる移動車両利用者の所在位置特定システムを提供することができる。
【0014】
また、前記移動車両利用者の所在位置特定システムにおいて、前記管理センターの前記データベースは、前記移動車両利用者に関係する連絡先のファクシミリ番号・電子メールアドレスのうち少なくとも一方を含んで成る連絡先情報を記録し、前記管理センターは、前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通信するための第2の通信手段を備え、前記管理センターの前記管理者用PCは、前記移動用車両から、前記第1の通信手段を介して前記データを受信した時に、前記データに含まれている前記移動車両の所在位置情報と、時刻情報とを、前記第2の通信手段を介して前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知することを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、移動車両利用者に関係する連絡先(保護者等)は、自己に関係する利用者が移動車両に乗車する時、及び当該利用者が移動車両から下車(降車)する時のいずれにおいても、当該利用者が利用した移動車両の所在位置と、乗下車の時刻とを、常時確認することができる。
【0016】
また、前記移動車両利用者の所在位置特定システムにおいて、前記利用者が携帯する前記ICカードは、さらに当該利用者の移動目的地に関する情報を含み、前記利用者が前記移動車両へ乗車する際に前記ICカードを前記移動車両の前記車載ICカードリーダに読み取らせた時に、前記移動車両の前記車載PCまたは前記管理センターの前記管理者用PCにより、前記移動車両の前記移動目的地への到着予定時刻を演算すると共に、前記演算により求められた前記移動車両の到着予定時刻を、前記管理センターの前記管理者用PCから、前記第2の通信手段を介して前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知することを特徴とする。前記到着予定時刻は、前記移動車両の車載PCから、前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知する構成としてもよい。
【0017】
このように構成することで、移動車両利用者に関係する連絡先(保護者等)は、自己に関係する利用者が乗車した移動車両の移動目的地(自宅付近等)への到着予定時刻を確認することができる。
【0018】
また、前記移動車両利用者の所在位置特定システムにおいて、前記管理センターの前記データベースは、前記利用者の前記移動目的地に関する情報を記録し、前記利用者が前記移動車両へ乗車する際に前記ICカードを前記移動車両の前記車載ICカードリーダに読み取らせた時に、前記移動車両の前記車載PCまたは前記管理センターの前記管理者用PCにより、前記移動車両の前記移動目的地への到着予定時刻を演算すると共に、前記演算により求められた前記移動車両の到着予定時刻を、前記管理センターの前記管理者用PCから、前記第2の通信手段を介して前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知することを特徴とする。前記到着予定時刻は、前記移動車両の車載PCから、前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知する構成としてもよい。
【0019】
このように構成することで、前記ICカードに当該利用者の移動目的地に関する情報が含まれていない場合であっても、移動車両利用者に関係する連絡先(保護者等)は、自己に関係する利用者が乗車した移動車両の移動目的地(自宅等)への到着予定時刻を確認することができる。
【0020】
さらに、前記移動車両利用者の所在位置特定システムにおいて、前記利用者が使用する利用者用施設は、施設用ICカードリーダと、前記管理センターと通信するための利用者用施設通信手段を備え、前記管理センターは、前記利用者用施設と通信するための第3の通信手段を備え、前記利用者施設は、前記利用者が前記ICカードを前記施設用ICカードリーダに読み取らせた利用者ID情報と、当該利用者用施設の所在位置情報または施設名と、時刻情報とから成るデータを、前記利用者用施設通信手段を介して、前記管理センターへ送信することを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、管理者側の施設を、単独の管理センターを有する形態から、管理センターの下に複数の利用者用施設を配する形態に拡張し、この複数の利用者用施設の各々に対して、前述の移動車両と同様の管理を実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の移動車両利用者の所在位置特定システムによれば、移動車両(送迎車両)で移動する児童の通学路における安全の確認や、移動車両(送迎車両)で移動する要介護者の移動経路における安全の確認を確実に行うことができる効果がある。
【0023】
また、本システムで管理される移動車両は複数台であってもよく、それぞれの移動車両毎に、児童や要介護者の移動経路における安全の確認を確実に行うことができる効果がある。
【0024】
また、移動車両利用者に関係する連絡先(保護者等)は、自己に関係する利用者が移動車両に乗車する時、及び当該利用者が移動車両から下車(降車)する時のいずれにおいても、当該利用者が利用した移動車両の所在位置と、乗下車の時刻とを、常時確認することができる効果がある。
【0025】
また、移動車両利用者に関係する連絡先(保護者等)は、自己に関係する利用者が乗車した移動車両の移動目的地(自宅等)への到着予定時刻を確認することができる効果がある。
【0026】
さらに、管理者側の施設を、単独の管理センターを有する形態から、管理センターの下に複数の利用者用施設を配する形態に拡張し、この複数の利用者用施設の各々に対して、前述の移動車両と同様の管理を実施することが可能となる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の移動車両利用者の所在位置特定システムの最良の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る移動車両利用者の所在位置特定システムの全体構成を示す構成図である。
【0028】
同図において、本実施形態の移動車両利用者の所在位置特定システムは、管理対象である利用者1(請求項記載の利用者)が携帯するICカード(後述する)と、管理対象の保護者である保護者2(請求項記載の連絡先)側の設備(後述する)と、管理対象の利用者及びシステムを管理する管理者3(請求項記載の管理センター)側の設備(後述する)と、管理対象の利用者を輸送する送迎車両4(請求項記載の移動車両)と、ファクシミリ通信を可能にする電話回線50と、インターネット網を介した電子メールの送受信を可能にするインターネット電子メールシステム51と、送迎車両4の位置を測量する位置測量システム52とを備えて構成される。
【0029】
利用者1は、一般には1以上とすることが可能であり、それぞれ利用者の個人情報(詳細は後述する)を記録したICカード11を所持(携帯)するものとする。なお、このICカード11は、非接触型とすることが可能である。
【0030】
保護者2側の設備は、電話回線50を介したファクシミリ通信が可能なFAX(ファクシミリ装置)21と、インターネット網を介した電子メール交換が可能な携帯電話22と、同じく電子メール交換が可能に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)23と、を備える。
【0031】
管理者3側の設備は、ICカード11の読み取りが可能なICカードリーダ31と、管理者用の管理PC(パーソナルコンピュータ)32(請求項記載の管理者用PC)と、管理PCで利用するためのデータベース33を備える。ICカードリーダ31に利用者1のICカード11を読み取らせて所定の操作を行うことで、利用者を管理するためのデータベース33を構築できる。
【0032】
送迎車両4は、一般には1以上を設置することが可能であり、それぞれICカード11の読み取りが可能なICカードリーダ41と、PC(パーソナルコンピュータ)42(請求項記載の車載PC)と、GPSシステムにおける通信機能を備えたGPS43(請求項記載のGPS装置)と、経路誘導が可能なナビゲーションシステム44とを、保有設備として備える。なお、この他に、PC42からアクセスされる簡単な記憶装置を備えることができる。
【0033】
電話回線50は、公衆電話回線であり、管理者3の管理PC32および車載PC42と、保護者2のFAX21との間を、ファクシミリ通信が可能となるように接続する。
インターネット電子メールシステム51は、インターネット網を利用し、管理者の管理PC32と、保護者の携帯電話22、保護者のPC23、及び車両4のPC42との間を、メール機能を含む電話が可能となるように接続する。
【0034】
位置測量システム52は、より具体的にはGPSシステムの人工衛星であり、管理者の管理PC32、保護者のPC23、またはGPS43からの位置測量に関する要求を受けて、これらの装置に位置情報を伝達する。
【0035】
以下、本実施形態の所在位置特定システムの機能を説明する。
利用者1は、送迎車両4に乗車する時、及び送迎車両4から下車する時に、携帯するICカード11を送迎車両4に設置されたICカードリーダ41に翳すことにより、ICカード11の記録内容を読み取らせる。
【0036】
図2は、本発明の実施形態に係る所在位置特定システムで使用されるICカードが記録するデータの1例を示す説明図である。
同図に示すように、ICカード11には、少なくとも、利用者の個人情報(請求項記載の利用者ID情報)として、利用者1の住所、利用者1の氏名、及び利用者1の保護者である保護者2の携帯電話22の電話番号が記録されているものとする。さらに、ICカード11には、この他の利用者の個人情報(請求項記載の連絡先情報)として、同図に示すように、例えば、利用者1の保護者である保護者2のFAX21のファクシミリ番号、利用者1の保護者である保護者2の携帯電話22宛もしくはPC23宛の電子メールアドレス、利用者1の移動目的地、及び備考、等の情報を記録することができる。
【0037】
なお、前記利用者1の移動目的地は、必ずしも前記利用者1の居住地などの住所と一致するものであることは要求されない。
送迎車両4では、PC42が、ナビゲーションシステム44を起動させた後、ICカードリーダ41により、管理対象である1以上の利用者1が携帯するICカード11の記録内容を、複数の利用者1の各々が乗車または下車する際に、それぞれ読み取る。この読み取り内容の各々は、ICカードリーダ41からPC42に送出される。しかし、この段階では、ナビゲーションシステム44は、単に起動させるだけであり、移動目的地等の具体的な指示までは与えない。
【0038】
送迎車両4のPC42は、前述のICカード11の記録内容が読み取られる毎に、その記録内容(前述の利用者1の個人情報)を、PC42を使用した電子メール手段(請求項記載の管理センター用通信手段)により、インターネット電子メールシステム51を介して、管理者3の管理PC32に送信する。また、自己が備える記憶装置(若しくは管理者3側の設備であるデータベース33)にアクセスし、当該利用者の乗車または下車を判断するためのフラグを参照し(その後、このフラグを反転させる)、当該利用者が乗車する利用者であるか、それとも下車する利用者であるかを判断し、これにより、当該利用者の乗車または下車を確定する。但し、送迎車両4のPC42は、前記記憶装置を備えていない場合、若しくは記憶装置を備えていても、前記フラグをこの記憶装置に記憶しない方式を採用する場合は、前記確定した情報(即ち、乗車または下車の区別を示す情報)を、PC42を使用した前述の電子メール手段により、インターネット電子メールシステム51を介して、管理者3の管理PC32に送信する。
【0039】
その後、送迎車両4のPC42は、ICカードリーダ41により読み取られたICカード11の記録内容(前述の利用者1の個人情報)の内、管理対象である1以上の利用者の送迎に必要な情報を抽出して、ナビゲーションシステム44に送出する。この利用者の送迎に必要な情報は、例えば、ICカード11に記録されている利用者の住所とする。但し、ICカード11に移動目的地が記録されている場合は、前記利用者の送迎に必要な情報を、この移動目的地とする。
【0040】
送迎車両4のナビゲーションシステム44は、PC42から送出された前記情報及びGPS43からの位置情報を基に、自己の出発地点から1以上の利用者1の自宅を結ぶ最適経路を探索する。これにより、送迎車両4は、利用者1の各々を、その自宅まで、最適経路を辿って送り届けることができる。最適経路を探索する機能は、管理PC32や車載PC42に持たせることもできる。
【0041】
また、この時、送迎車両4のPC42は、GPS43からの情報に基づき、送迎車両4の現在位置を演算し(請求項記載の移動車両所在位置演算手段)、この現在位置情報(移動車両所在位置情報)と、前述の利用者1の個人情報と、前記演算された移動車両所在位置情報と、時刻情報と、送迎車両4の識別情報(請求項記載の移動車両ID情報)とから成るデータを、PC42を使用した前述の電子メール手段により、インターネット電子メールシステム51を介して、管理者3の管理PC32に送信する。
【0042】
さらに、送迎車両4のPC42は、ICカード11から読み取られた利用者1の個人情報から、この利用者1の前記住所または前記移動目的地への到着予定時刻を計算し、その計算結果を、前述のPC42を使用した電子メール手段により、インターネット電子メールシステム51を介して、管理者3のPC32に送信するものとする。但し、この到着予定時刻を計算する仕事は、管理者3側の設備である管理PC32に依託することも可能である。
【0043】
しかしながら、ICカード11から読み取られた利用者1の個人情報に、利用者1の移動目的地が含まれていない場合は、送迎車両4のPC42は、この利用者1の移動目的地をデータベース33から取得し、前記移動目的地への到着予定時刻の計算を行う。もちろん、到着予定時刻の計算は、管理者3側の設備である管理PC32に依託するものとすることもできる。
【0044】
管理者3の管理PC32は、管理対象である1以上の利用者1が携帯するICカード11の記録内容を、事前にデータベース33に利用者リストとして登録している。なお、この登録に際しては、ICカード11の記録内容をICカードリーダ31を介して読み取って、利用者リストに登録することが可能である。しかしながら、必ずしもICカード11に記録されているとは限らない情報(例えば、移動者1の移動先)については、他の適当な手段で登録するものとする。
【0045】
管理者3の管理PC32が備える電子メール手段(請求項記載の第1の通信手段)は、インターネット電子メールシステム51を介して、送迎車両4のPC42から、前述のデータ(即ち、利用者1の個人情報、前記演算された移動車両所在位置情報、時刻情報、及び送迎車両4の識別情報とから成るデータ)を受信すると、この受信データに含まれる前述の利用者1の個人情報と、前記データベース33に登録されている利用者リストとを照合し(請求項記載の照合手段)、この照合により特定された利用者(より具体的には、利用者1の氏名)と対応付けて、前記受信データに含まれている一部のデータ(即ち、移動車両所在位置情報、及び時刻情報とから成るデータ)を、前記データベース33に格納する(請求項記載の格納手段)。この時、前記情報の他に、前記受信データに含まれている送迎車両4の識別情報(請求項記載の移動車両ID情報)を、前記データベース33に格納することができる。
【0046】
この結果、データベース33に格納されるデータは、後述する図3のようになる。
図3は、本発明の実施形態に係る所在位置特定システムの管理者側設備のデータベースに格納されるデータの1例を示す説明図であり、図3(a)は利用者リストを示し、図3(b)はその他のデータを示す。
【0047】
また、管理者3の管理PC32は、データベース33に登録されている利用者1の個人情報から、利用者1の保護者である保護者2のFAX21のファクシミリ番号、及び利用者1の保護者である保護者2の携帯電話22もしくはPC23の電子メールアドレスを参照し、FAX21へのファクシミリ送信、及び携帯電話22もしくはPC23宛の電子メールの送信等の手段(請求項記載の第2の通信手段)を用いて、前述の移動車両所在位置情報、及び時刻情報とから成るデータを保護者2に通知することができる。なお、この他に、管理者3の管理PC32は、必要に応じて、送迎車両4の識別情報を、前記送信手段により、保護者2に通知することができる。
【0048】
さらに、管理者3の管理PC32は、送迎車両4のPC42から到着予定時刻の計算の依託を受けた時には、データベース33に登録されている利用者1の個人情報から、利用者1の移動目的地を参照し、利用者1の前記移動目的地への到着予定時刻の計算を行って、その結果を、前述のFAX21へのファクシミリ送信、及び携帯電話22もしくはPC23宛の電子メールの送信等の手段を用いて、保護者2に通知し、また、送迎車両4のPC42から到着予定時刻の計算結果データを受信した時は、これを前述のFAX21へのファクシミリ送信、及びPC22宛の電子メールの送信等の手段を用いて、保護者2に通知する。なお、車載PC42に保護者2と通信するための通信手段を設けることで、管理者PC32を介さずに、車載PC42から到着予定時刻を保護者2に通知することもできる。
【0049】
なお、管理者3の管理PC32は、送迎車両4に搭載されているGPS43を利用して、送迎車両4の現在位置を常時確認することが可能である。
このように構成したことにより、利用者1が送迎車両4に乗車する時、及び利用者1が送迎車両4から下車(降車)する時において、移動車両所在位置情報、及び時刻情報とから成るデータが、それぞれ利用者1の保護者2と、管理者3との双方に送信されるので、どの利用者が、どの送迎車両に乗っているのかを、利用者1の保護者2及び管理者3の双方において、常時確認することができる。
【0050】
図4は、本発明の実施形態に係る移動車両利用者の所在位置特定システムの送迎車両における処理の流れを示すフローチャートである。
以下、図1〜3を参照しながら、図4に示すフローチャートを使用して、本発明の実施形態に係る移動車両利用者の所在位置特定システムの送迎車両のPC42における処理の流れを説明する。
【0051】
まず、ナビゲーションシステム44を起動する(ステップS1)。但し、この段階では、未だ移動目的地等の具体的な指示は与えない。
次に、ICカード11が利用者によってICカードリーダ41に翳された時に、ICカードリーダ41によって読み取られたICカード11の記録内容を入力する(ステップS2)。
【0052】
次に、乗車または下車を確定するためのフラグを参照し(その後、このフラグは反転させる)、利用者が既に乗車済であるか否かを検証し、乗車済でなければステップS4に進み、利用者が既に乗車済であればステップS12に移る(ステップS3)。
【0053】
ステップS4では、当該利用者が乗車する利用者であることを確定する。
次に、前記データ(即ち、前記入力されたICカード11の記録内容、及び前記乗車/下車の区別を示す情報とから成るデータ)を、管理者3の管理PC32に送信する(ステップS5)。
【0054】
次に、当該利用者の移動目的地または住所をナビゲーションシステム44に送出する(ステップS6)。
次に、当該利用者が乗車または下車した時の送迎車両4の現在位置を、GPS43からの情報に基づいて演算する(ステップS7)。
【0055】
次に、前記演算で求めた現在位置を示す情報、当該利用者が乗車または下車した時の時刻を示す時刻情報、及び当該送迎車両の識別情報から成るデータを、管理者3の管理PC32に送信する(ステップS8)。
【0056】
次に、当該利用者が乗車の利用者であったか、それとも下車の利用者であったかを検証し、当該利用者が乗車の利用者であった場合はステップS10に進み、当該利用者が下車の利用者であった場合はステップS2に戻る。
【0057】
ステップS10では、当該利用者の移動目的地への到着予定時刻を計算する(但し、この計算は、必要に応じて管理者3の管理PC32に依託される)。
次に、計算された当該利用者の移動目的地への到着予定時刻を、管理者3の管理PC32に送信し(ステップS11)、その後、ステップS2に戻る。
【0058】
ステップS12では、当該利用者が下車する利用者であることを確定した後、ステップS5に移る。
なお、多数の利用者が一度に連続して乗車する場合に備えて、PC42の負荷を緩和する必要がある場合は、ステップS2で入力されるICカード11の記録内容を、適当な人数の乗車利用者分毎に、一旦記憶装置にスタックし、その後、ステップ3以下の処理を行うことができる。
【0059】
図5は、本発明の実施形態に係る移動車両利用者の所在位置特定システムの管理者側における処理の流れを示すフローチャートである。
以下、図1〜3を参照しながら、図5に示すフローチャートを使用して、本発明の実施形態に係る移動車両利用者の所在位置特定システムの管理者3の管理PC32における処理の流れを説明する。
【0060】
まず、送迎車両4のPC42から送信されるデータ(即ち、乗車または下車する利用者の個人情報、送迎車両4の現在位置情報、時刻情報、及び送迎車両4の識別情報とから成るデータ)を、受信する(ステップS21)。
【0061】
次に、このデータを利用者リストとしてデータベース33に格納する(ステップS22)。
次に、前記受信データの内、送迎車両4の現在位置情報と、時刻情報とを、電話回線50を介したファクシミリ送信手段や、インターネット電子メールシステム51を介した携帯電話22もしくはPC23宛の電子メール送信手段により、保護者2に通知する(ステップS23)。
【0062】
次に、PC42から、送迎車両4の到着予定時刻を受信しているか否かを検証し、送迎車両4の到着予定時刻を受信している場合はステップS25に進み、送迎車両4の到着予定時刻を受信していない場合はステップS26に移る(ステップS24)。
【0063】
ステップS25では、受信または計算した送迎車両4の到着予定時刻を、インターネット電子メールシステム51を介した携帯電話22もしくはPC23宛の電子メール送信手段により、保護者2に通知し、ステップS21に戻る。
【0064】
ステップS26では、送迎車両4の到着予定時刻の計算が依託されたことを確認した後、送迎車両4の到着予定時間を計算し、ステップS25に移る。
この実施形態では、管理者3側の施設を管理センターとしたが、管理センターの下に1以上の利用者用施設を配する構成も可能である。この場合、管理センター側の設備として、この利用者用施設と通信する通信手段(請求項記載の第3の通信手段)を設置し、また、利用者用施設の設備として、利用者1がICカード11を翳した時にICカード11の記録内容を読み取るICカードリーダ(請求項記載の施設用ICカードリーダ)と、利用者1の個人情報、利用者用施設の識別子(当該施設の所在位置情報または施設名)、及び時刻情報を、前記管理センターに送信する通信手段(請求項記載の利用者施設通信手段)とを設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の移動車両利用者の所在位置特定システムは、児童及び要介護者の移動経路における安全確認に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る移動車両利用者の所在位置特定システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る所在位置特定システムで使用されるICカードが記録するデータの1例を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る所在位置特定システムの管理者側設備のデータベースに格納されるデータの1例を示す説明図であり、図3(a)は利用者リストを示し、図3(b)はその他のデータを示す。
【図4】本発明の実施形態に係る移動車両利用者の所在位置特定システムの送迎車両における処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る移動車両利用者の所在位置特定システムの管理者側における処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 利用者(管理対象者)
2 保護者
3 管理者
4 送迎車両
11 ICカード
21 FAX(ファクシミリ装置)
22 携帯電話
23 PC(保護者側パーソナルコンピュータ)
31 ICカードリーダ(管理者側)
32 管理PC(管理者側パーソナルコンピュータ)
33 データベース
41 ICカードリーダ(送迎車両設置)
42 PC(送迎車両設置パーソナルコンピュータ)
43 GPS
44 ナビゲーションシステム
50 電話回線
51 インターネット電子メールシステム
52 位置測量システム(GPSの人工衛星)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動車両を利用する利用者の所在位置を管理センターで管理して、前記利用者の所在位置を特定する移動車両利用者の所在位置特定システムにおいて、
前記移動車両は、ICカードの記録内容を読み取る車載ICカードリーダと、GPS装置と、前記管理センターと通信するための管理センター用通信手段と、車載PC(パーソナルコンピュータ)とを備え、
前記管理センターは、管理者用PCと、前記利用者に関する情報を利用者リストとして記録するデータベースと、前記移動車両と通信するための第1の通信手段とを備え、
前記移動車両の前記車載PCは、
前記GPS装置からの情報に基づき、前記移動用車両の所在位置を演算する移動車両所在位置演算手段と、
前記利用者が前記ICカードを前記車載ICカードリーダに読み取らせた利用者ID情報と、前記演算により求められた前記移動車両の所在位置情報と、時刻情報とから成るデータを、前記管理センター用通信手段を介して、前記管理センターへ送信する手段と、
を備え、
前記管理センターの前記管理者用PCは、
前記移動車両から、前記第1の通信手段を介して前記データを受信した時に、前記受信データに含まれている前記利用者ID情報と前記データベースが記録する前記利用者とを照合する照合手段と、
前記受信データに含まれている前記移動車両の所在位置情報、及び時刻情報を、前記照合により特定された利用者と対応付けて前記データベースに格納する格納手段と、
を備え、前記移動車両利用者の所在位置を管理することを特徴とする移動車両利用者の所在位置特定システム。
【請求項2】
前記移動車両の前記車載PCは、当該移動車両を特定できる移動車両ID情報を、前記管理センター用通信手段を介して前記管理センターへ送信する手段をさらに備え、
前記管理センターの前記管理者用PCは、前記送信された前記移動車両ID情報を、前記照合手段により特定された利用者と対応付けて前記データベースに格納する手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項1記載の移動車両利用者の所在位置特定システム。
【請求項3】
前記管理センターの前記データベースは、前記移動車両利用者に関係する連絡先のファクシミリ番号、電子メールアドレスのうち少なくとも一方を含んで成る連絡先情報を記録し、
前記管理センターは、前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通信するための第2の通信手段を備え、
前記管理センターの前記管理者用PCは、前記移動車両から、前記第1の通信手段を介して前記データを受信した時に、前記データに含まれている前記移動車両の所在位置情報と、時刻情報とを、前記第2の通信手段を介して前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知することを特徴とする請求項1記載の移動車両利用者の所在位置特定システム。
【請求項4】
前記利用者が携帯する前記ICカードは、さらに当該利用者の移動目的地に関する情報を含み、前記利用者が前記移動車両へ乗車する際に前記ICカードを前記移動車両の前記車載ICカードリーダに読み取らせた時に、前記移動車両の前記車載PCまたは前記管理センターの前記管理者用PCにより、前記移動車両の前記移動目的地への到着予定時刻を演算すると共に、前記演算により求められた前記移動車両の到着予定時刻を、前記管理センターの前記管理者用PCから、前記第2の通信手段を介して前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知することを特徴とする請求項3記載の移動車両利用者の所在位置特定システム。
【請求項5】
前記移動車両は、さらに前記連絡先情報が示す前期連絡先と通信するための連絡先通信手段を有し、
前記利用者が携帯する前記ICカードは、さらに当該利用者の移動目的地に関する情報を含み、前記利用者が前記移動車両へ乗車する際に前記ICカードを前記移動車両の前記車載ICカードリーダに読み取らせた時に、前記移動車両の前記車載PCまたは前記管理センターの前記管理者用PCにより、前記移動車両の前記移動目的地への到着予定時刻を演算すると共に、
前記演算により求められた前記移動車両の到着予定時刻を、前記移動車両が有する前記車載PCから、前記連絡先通信手段を介して前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知することを特徴とする請求項3記載の移動車両利用者の所在位置特定システム。
【請求項6】
前記管理センターの前記データベースは、前記利用者の前記移動目的地に関する情報を記録し、前記利用者が前記移動車両へ乗車する際に前記ICカードを前記移動車両の前記車載ICカードリーダに読み取らせた時に、前記移動車両の前記車載PCまたは前記管理センターの前記管理者用PCにより、前記移動車両の前記移動目的地への到着予定時刻を演算すると共に、前記演算により求められた前記移動車両の到着予定時刻を、前記管理センターの前記管理者用PCから、前記第2の通信手段を介して前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知することを特徴とする請求項3記載の移動車両利用者の所在位置特定システム。
【請求項7】
前記移動車両は、さらに前記連絡先情報が示す前期連絡先と通信するための連絡先通信手段を有し、
前記管理センターの前記データベースは、前記利用者の前記移動目的地に関する情報を記録し、前記利用者が前記移動車両へ乗車する際に前記ICカードを前記移動車両の前記車載ICカードリーダに読み取らせた時に、前記移動車両の前記車載PCまたは前記管理センターの前記管理者用PCにより、前記移動車両の前記移動目的地への到着予定時刻を演算すると共に、
前記演算により求められた前記移動車両の到着予定時刻を、前記移動車両が有する前記車載PCから、前記連絡先通信手段を介して前記連絡先情報が示す前記連絡先へ通知することを特徴とする請求項3記載の移動車両利用者の所在位置特定システム。
【請求項8】
前記利用者が使用する利用者用施設は、施設用ICカードリーダと、前記管理センターと通信するための利用者用施設通信手段を備え、
前記管理センターは、前記利用者用施設と通信するための第3の通信手段を備え、
前記利用者施設は、前記利用者が前記ICカードを前記施設用ICカードリーダに読み取らせた利用者ID情報と、当該利用者用施設の所在位置情報または施設名と、時刻情報とから成るデータを、前記利用者用施設通信手段を介して、前記管理センターへ送信することを特徴とする請求項1記載の移動車両利用者の所在位置特定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−202148(P2006−202148A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14764(P2005−14764)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】