移載システム
【課題】横移載時にも被搬送物を載置台の所定位置に移載する。
【解決手段】移載システム(100)は、天井に敷設された軌道(1)に沿って走行しつつ被搬送物(3)を搬送する搬送車(2)と、軌道より下方に設けられる載置台(4)との間で被搬送物が横移載方式で移載可能である。移載システムは、(i)搬送車に把持される被搬送物を載置台の所定位置に載置する載置動作を行う際の被搬送物の移載位置を表す載置位置情報、及び(ii)載置台上の被搬送物を搬送車が把持する把持動作を行う際の被搬送物の移載位置を表す把持位置情報を記憶する記憶手段(101)と、載置動作を行う場合、載置位置情報の移載位置で移載が行われるように、他方、把持動作を行う場合、把持位置情報の移載位置で移載が行われるように搬送車を制御する制御手段(102)とを備える。
【解決手段】移載システム(100)は、天井に敷設された軌道(1)に沿って走行しつつ被搬送物(3)を搬送する搬送車(2)と、軌道より下方に設けられる載置台(4)との間で被搬送物が横移載方式で移載可能である。移載システムは、(i)搬送車に把持される被搬送物を載置台の所定位置に載置する載置動作を行う際の被搬送物の移載位置を表す載置位置情報、及び(ii)載置台上の被搬送物を搬送車が把持する把持動作を行う際の被搬送物の移載位置を表す把持位置情報を記憶する記憶手段(101)と、載置動作を行う場合、載置位置情報の移載位置で移載が行われるように、他方、把持動作を行う場合、把持位置情報の移載位置で移載が行われるように搬送車を制御する制御手段(102)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を、ビークル等の搬送車とポート等の載置台との間で移載する移載システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、支持台毎に吊上げ用位置調整量及び下ろし用位置調整量が設定されており、ワーク(即ち、被搬送物)を吊下状態で昇降させる際に、ワーク吊上げ又はワーク下ろしの作業に応じて、設定されている位置調整量だけ、吊下状態にあるワークの位置調整を行うワークハンドを備える吊下搬送設備が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−192269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のシステムでは、搬送用走行体の走行経路真下に配設されたポートとの間でワークを積み下ろす、所謂、縦移載を可能にしている。しかしながら、該システムは、搬送用走行体(言い換えれば、走行経路)に対して左右横方向に配設されたポートとの間でワークを積み下ろす、所謂、横移載には対応していない。これは、特許文献1における位置調整用横動台をどう駆動させても、走行経路真下のポートに対向する位置調整用横動台の左右横方向のずれを調整するに過ぎないからである。
【0005】
ここで、本願発明者による研究或いは実験の成果又は経験によれば、仮に、特許文献1のシステムにて横移載を行う場合、位置調整用横動台(以下、単に「横動台」と称する)が左右横方向における例えば右方向に移動すると、横動台と、この下方に連なる昇降ユニット及びワークハンドとが右方向に大きく張り出した状態となる。すると、この張り出し度合いによっては、横動台が昇降ユニット及びワークハンドの重みでたわみ、ワークハンド及びこれに把持されるワークが、走行経路を軸とする回転の方向に傾く。特に、ワークを下ろす(即ち載置する)際には、ワークの重みに起因して横動台のたわみが顕著になり、ワークが大きく傾きやすい。このようなワークの傾きは、横移載時のワークの移載位置について、ずれを生じさせることとなる。このため、横移載を行う場合、ワークを所望の位置に移載できず、横移載を失敗し兼ねない旨の技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、横移載時にも被搬送物を所望の位置に移載し得る移載システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る移載システムは、天井又は該天井側に敷設された軌道に沿って走行しつつ被搬送物を搬送する搬送車と、前記軌道より下方に設けられており前記被搬送物を載置可能である載置台との間で前記被搬送物が横移載方式で移載可能である移載システムであって、(i)前記搬送車に把持される前記被搬送物を前記載置台の所定位置に載置する載置動作を行う際の前記被搬送物の移載位置を表す載置位置情報、及び(ii)前記載置台上の前記被搬送物を前記搬送車が把持する把持動作を行う際の前記被搬送物の移載位置を表す把持位置情報を記憶する記憶手段と、前記載置動作を行う場合、前記記憶される載置位置情報の移載位置で移載が行われるように、他方、前記把持動作を行う場合、前記記憶される把持位置情報の移載位置で移載が行われるように前記搬送車を制御する制御手段とを備える。
【0008】
本発明に係る搬送車は、例えばFOUPを搬送するOHT(Overhead Hoist Transfer)等であって、半導体素子製造用の製造装置及びストッカの内外に出し入れするためのロードポート、或いは搬送コンベア上に設置されたバッファ等の載置台との間で、縦移載方式のみならず横移載方式で被搬送物を移載可能である。ここに、搬送車本体の鉛直方向に設置される載置台との間でFOUPを移載する「縦移載方式」に対し「横移載方式」とは、軌道の方向に直交する横方向にFOUPを移動可能とし、搬送車本体の横方向に設置される載置台との間でFOUPを移載することを示す。即ち、横方向にFOUPを移動させる工程を経て移載が行われることを示す。
【0009】
ここで、上述したように、搬送車本体の横方向にFOUPを移動させた場合、FOUPと、該FOUPを把持する把持部と、該把持部を鉛直方向や横方向等に移動させる移動部との重みで搬送車本体の重心がずれる。この時、軌道に沿って走行する走行ローラが変形したり移動部の一部がたわんで、搬送車本体が、軌道の方向を軸中心として回転する回転方向に傾く。搬送車本体の傾きは、把持部の傾きともなり、これに把持されるFOUPも傾くこととなる。こうした傾き状態で、この状態が考慮されない移載位置で横移載を行おうとすれば、FOUPは、載置台に傾いた状態で載置されたり載置台から食み出して、載置台に予め設定される位置(即ち、所定位置)からずれてしまう。FOUPがその所定位置からずれると、半導体素子製造用の製造工程、該製造工程に含まれる搬送工程又は該搬送工程の一部を停止せざるを得ない。逆に、このようなFOUPの傾き(言い換えれば、重み)に起因する移載動作(即ち、載置動作)の際に(即ち、厳密にはFOUPを下ろす前に)ずれをなくすように予め位置決めを行っておくと、今度は、FOUPの重みがない把持動作の際に(即ち、厳密にはFOUPを把持する前に)ずれが生じてしまう。そこで、本発明では、横移載を行う際に、載置動作及び把持動作のいずれにおいても、FOUPを確実に載置台の所定位置に載置する、或いは該所定位置にあるFOUPを把持するように搬送車を制御する。
【0010】
本発明によれば、ROM或いはメモリ等の記憶手段は、例えば搬送車に備えられている。記憶手段は、載置動作に対応する載置位置情報、及び把持動作に対応する把持位置情報を記憶する。CPU等の制御手段は、例えば、記憶手段と同様に搬送車に備えられている。制御手段は、記憶手段から、実行しようとする動作(即ち、載置動作及び把持動作)に対応する位置情報(即ち、載置位置情報又は把持位置情報)を読み出し、読み出した位置情報の移載位置でその動作が行われるように搬送車を制御する。
【0011】
このように、載置動作を行う場合、載置位置情報の移載位置で載置動作を行い、把持動作を行う場合、把持位置情報の移載位置で把持動作を行う。即ち、載置動作では、移載に伴い発生し得る、被搬送物のずれを解消するべく、把持動作の場合と移載位置を異ならせる。これにより、被搬送物の重みに起因した移動部等のたわみの大小によらずに、被搬送物を載置台の所定位置たる所望の位置に載置する横移載を行うことが可能である。
【0012】
尚、上述の作用効果(即ち、載置動作と把持動作とで移載位置を異ならせて、被搬送物を常時所望の位置に載置する)は、横移載方式での移載に限定されず、縦移載方式での移載においても有効である。これは、軌道、搬送車における走行ローラ、把持部を吊り下げる一対のベルト、及び載置又は把持される被搬送物の状態(例えば、軌道の変形、走行ローラの傾き、ベルト長さの違い、FOUP重心の偏り)等に起因して、縦移載においても載置動作と把持動作とで移載位置にずれが生じ兼ねないためである。
【0013】
尚、本発明に係る記憶手段及び制御手段は、搬送車に備えられる代わりに、当該移載システムを統括的に制御する主制御部に備えられてもよい。この場合、主制御部は、例えば、搬送車の認証番号と搬送車固有の位置情報とを対応付けて記憶する記憶手段たるデータベースと、該データベースから読み出した、載置動作又は把持動作に対応する位置情報に従って搬送車を制御する制御手段たる搬送車制御部とを備える。
【0014】
尚、当該移載システムは、複数の搬送車及び複数の載置台を備えることが可能である。
【0015】
本発明に係る移載システムの一の態様では、前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々は、複数の前記搬送車に共通する移載位置を表す共通データと、前記搬送車に固有の移載位置を表す機差データとの和として示される。
【0016】
ここに、載置位置情報及び把持位置情報に係る「共通データ」とは、複数の載置台の各々における、複数の搬送車に共通のデータを表す。この共通データは、例えば載置位置情報及び把持位置情報の場合で同一である。また、「機差データ」とは、複数の載置台の各々における、各搬送車に固有のデータを表す。この機差データは、例えば載置位置情報及び把持位置情報の場合で異なる。この態様によれば、載置位置情報及び把持位置情報の各々を、共通データ及び機差データの2つのデータから構成することで、例えば、共通データを主として管理しこれを定期的に更新するようにすれば、記憶手段で常時精度の高い移載位置に係るデータを保持することが可能である。また特に、複数の搬送車に共通する共通データの取得時間を、極めて短くすることが可能となる。当該移載システムには、多数の搬送車及び多数の移載位置が存在することを考えると、このようにデータ取得時間を短くすることは移載時間の短縮に繋がり、実践上極めて有益である。
【0017】
この態様では、前記載置位置情報の前記機差データと前記把持位置情報の前記機差データとの差は、前記被搬送物の前記移載位置での傾き度合い及び前記被搬送物の高さに基づく、前記被搬送物のずれ量に相当してもよい。
【0018】
ここに、被搬送物に係る「傾き度合い」とは、載置台に対する、移載位置にある被搬送物の傾き角度を示す。また、被搬送物に係る「ずれ量」について、縦移載での載置動作及び把持動作並びに横移載での把持動作を行う際に、移載位置で水平状態にある被搬送物の位置を零点とする。この場合、「ずれ量」とは、前記零点から、横移載での載置動作を行う際に移載位置で傾いた状態にある被搬送物までの距離を表す。このようなずれ量σは、例えば下記(1)式にて、傾き度合いΦ及び被搬送物の高さhに基づいて、一義的に算出することが可能である。このようなずれ量σが特定されると、ずれ量σを表す例えばずれ量情報を、機差データにおける把持位置情報に加算することで、機差データにおける載置位置情報が決定する。
【0019】
σ = h × sinΦ (1)
このように構成すれば、機差データとして、把持位置情報及びずれ量情報の2つのデータから構成し、記憶手段のデータ容量を最小限に抑えることも可能である。
【0020】
本発明に係る移載システムの他の態様では、前記搬送車は、前記被搬送物を把持する把持状態及び前記被搬送物を解放する解放状態の間で変位可能な把持部と、前記把持部を鉛直方向に昇降可能な鉛直移動部と、前記把持部を前記軌道の方向に直交する横方向に水平移動可能な横水平移動部と、前記把持部をその鉛直軸を中心とする鉛直軸回転方向に回転可能な回転移動部とを備え、前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々は、前記軌道の方向、前記横方向、前記鉛直方向及び前記鉛直軸回転方向の四方向での位置を表す。
【0021】
この態様によれば、搬送車は、被搬送物を把持可能なグリッパ等の把持部を、鉛直方向、横方向及び鉛直軸回転方向の三方向に移動可能である。載置位置情報及び把持位置情報の各々は、前記三方向に、軌道の方向を加えた四方向での位置を表す。四方向での位置について、例えば座標として、把持位置情報を(X**1,Y**1,Z**1,Θ**1)、載置位置情報を(X**2,Y**2,Z**2,Θ**2)と表す。これにより、載置位置情報及び把持位置情報に係るデータを、高い精度で構築することが可能である。
【0022】
尚、四方向での位置が上記座標として表される場合、上記ずれ量情報が(σX,σY,σZ,σΘ)とすれば、載置位置情報及び把持位置情報の関係は、下記(2)式となる。
【0023】
(X**2,Y**2,Z**2,Θ**2)
=(X**1,Y**1,Z**1,Θ**1)+(σX,σY,σZ,σΘ) (2)
【0024】
本発明に係る移載システムの他の態様では、前記被搬送物は、その底面に規定の凹部を有し、前記載置台は、その上面に前記凹部に係合可能な凸部を有し、前記載置動作では、前記凹部及び前記凸部の係合により前記載置台に対し前記被搬送物が位置決めされる前記所定位置に前記被搬送物が載置される。
【0025】
ここに、被搬送物に係る「凹部」は、被搬送物の底面に逆V字型に形成された例えばV溝と称される凹みであって、載置台に係る「凸部」は、載置台の上面に、被搬送物の凹部に係合可能に形成された例えばキネマピンと称される出っ張りである。これら凹部と凸部とか係合状態にある場合、載置台に対し被搬送物が位置決めされた位置決め状態となる。載置台に係る「所定位置」とは、被搬送物が位置決め状態となる位置を示す。
【0026】
前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々が前記共通データと前記機差データとの和として示される当該移載システムは、複数の前記搬送車の間で相互に前記共通データを教示する教示手段を更に備えてもよい。
【0027】
ここに、無線或いは赤外線等による通信手段を少なくとも含む教示手段は、例えば、記憶手段及び制御手段と同様にして、搬送車に備えられている。教示手段は、記憶手段が記憶する共通データを配信することで、他の搬送車に対し共通データの教示を行う。このように構成すれば、一の搬送車から複数の搬送車への教示が容易となり、通信可能領域とされる教示領域にある全ての搬送車が最新の共通データを保持することが可能である。これにより、移載位置を知るための載置位置情報及び把持位置情報の取得が短時間で行え、移載時間を短縮することが可能である。
【0028】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る移載システムの構成及び該移載システムにおける搬送車の構造を模式的に表す正面図である。
【図2】実施形態に係る横移載方式での移載を行う際の、図1の搬送車の状態を説明する正面図である。
【図3】実施形態に係る把持動作時に図1の搬送車に把持される被搬送物の移載位置を示す正面図である。
【図4】実施形態に係る載置動作時に図1の搬送車に把持される被搬送物の移載位置を説明する正面図である。
【図5】実施形態に係る各種載置台の設置を模式的に表す上面図である。
【図6】実施形態に係る共通データを読み出すための表である。
【図7】実施形態に係る機差データを読み出すための表である。
【図8】本発明の機差データの他の例を表す表である。
【図9】実施形態に係る横移載方式での移載処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の実施形態に係る移載システム100の構成について説明する。ここに、図1は、移載システム100の構成及び移載システム100におけるビークル2の構造を模式的に表す正面図である。
【0031】
図1において、移載システム100は、半導体素子製造用基板たるFOUP3を搬送するための搬送システム200に含まれており、搬送システム200における搬送指示部201からの指示信号に従って、FOUP3をビークル2と載置台4との間で移載可能に構成されている。移載システム100は、主として、レール1、ビークル2、載置台4を備える。
【0032】
FOUP3は、本発明に係る「被搬送物」の一例として、ビークル2が把持する際の取っ手となるフランジ3aを備える。FOUP3は、その下面に、載置台4のキネマピン4aと係合可能であるV溝3b(即ち、本発明に係る「凹部」の一例)を有する。V溝3bは、載置台4に対するFOUP3本体の位置決めに用いられる。
【0033】
載置台4は、製造装置ポート、UTB(Under Track Baffer)及び左右のSTB(Side Table Baffer)といった各種様々な形態でレール1より下方に設置される。各載置台4は、その上面に、FOUP3のV溝3bと係合可能であるキネマピン4a(即ち、本発明に係る「凸部」の一例)を備える。キネマピン4aは、載置台4に対するFOUP3の位置決めに用いられる。
【0034】
レール1は、本発明に係る「軌道」の一例であって、搬送システム200が設置される半導体素子製造工場等の建物内部の天井に敷設されている。レール1について、その内部はビークル2の走行路の一部となっている。レール1の下面について、その中央部はビークル2の走行部20と本体部とを接続する部位を避けるために開放されている。
【0035】
ビークル2は、本発明に係る「搬送車」の一例であって、走行部20と、グリッパ21、昇降機構22、ラテラル機構23及び回転機構24を備える本体部と、メモリ101、ビークルコントローラ102及び送受信部103を備える制御部とから成る。走行部20は、動力源たる不図示のモータと、一対のローラ20aとを備えており、モータの動力により一対のローラ20aを駆動することで、走行部20より本体部をレール1に沿って移動させる。
【0036】
グリッパ21は、本発明に係る「把持部」の一例であって、動力源たる不図示のモータと、一対のフィンガ21aとを備える。グリッパ21は、モータの動力により一対のフィンガ21aを駆動することで、FOUP3を把持する把持状態と、FOUP3を解放する解放状態との間で一対のフィンガ21aを変位させる。
【0037】
昇降機構22は、本発明に係る「鉛直移動部」の一例であって、動力源たる不図示のモータと、巻取部22aと、ベルト22bとを備える。昇降機構22は、モータの動力により巻取部22aを巻取方向又は巻出方向に回転させることで、グリッパ21の上面に一端が固定されるベルト22bの巻き取り又は巻き出しを行う。このようにして、昇降機構22は、グリッパ21を鉛直方向に移動させる。
【0038】
ラテラル機構23は、本発明に係る「横水平移動部」の一例であって、駆動源たる不図示のモータと、スライド部23aとを備える。ラテラル機構23は、モータの動力によりスライド部23aを、レール1に直交する横方向(即ち、図1における左右方向)にスライドさせることで、スライド部23aの下面に固定される昇降機構22を横方向に移動させる。
【0039】
回転機構24は、本発明に係る「回転移動部」の一例であって、昇降機構22に含まれており、駆動源たる不図示のモータを備える。回転機構24は、モータの動力により、回転機構24本体の下面に固定される巻取部22aを、鉛直軸を中心とする鉛直軸回転方向に回転させることで、巻取部22a及びベルト22bを介して接続されるグリッパ21を鉛直軸回転方向に移動させる。
【0040】
<横移載での把持動作及び載置動作>
ここで、メモリ101、ビークルコントローラ102及び送受信部103を説明する前に、図2を参照し、移載システム100における横移載について説明する。ここに、図2は、横移載を行うビークル2の状態を説明する正面図である。
【0041】
移載システム100では、ビークル2と載置台4との間で、FOUP3が縦移載のみならず横移載される。図2において、ビークル2は横移載を行う場合、スライド部23aをスライドさせ、昇降機構22を横方向に移動させる。この時、横方向に移動した昇降機構22の重みで、一対の走行ローラ20aのうち、昇降機構22から遠い一方が浮き上がると共に、昇降機構22に近い他方が昇降機構22側に押圧されて変形する。また、昇降機構22の重みで、ラテラル機構23がたわみ、ビークル2本体が傾くこととなる。この傾き方向は、レール1を軸中心として回転する軌道回転方向であり、昇降機構22がΦ1度傾く場合、昇降機構22にベルト22bを介して連結されるグリッパ21、及びグリッパ21に把持されるFOUP3もまたΦ1度傾いた状態となる。しかも、このような傾きは、ビークル2が空荷であるか(即ち、FOUP3を取りに行く場合であるのか)又はFOUP3を把持しているか(即ち、FOUP3を下ろしに行く時であるのか)に応じて、即ち、FOUP3の重量に応じて、グリッパ21或いはFOUP3の位置を決める上で、無視し得ない程度に異なる。
【0042】
メモリ101は、本発明に係る「記憶手段」の一例であって、ビークル2と載置台4との間でFOUP3が移載される際に、グリッパ21が取るべき位置たる移載位置を表すデータを記憶している。但し、このデータは、ビークル2から載置台4への横移載を行う載置動作時と、載置台4からビークル2への横移載を行う把持動作時とで異なる。
【0043】
ここで、図3及び図4を参照し、把持動作及び載置動作について説明する。ここに、図3は、把持動作時の移載位置を説明する正面図であり、図4は、載置動作時の移載位置を説明する正面図である。
【0044】
図3には、右STBとして機能する載置台4と、この載置台4に対し位置決めされた位置(即ち、本発明に係る「所定位置」の一例であって、適宜「位置決め位置」と称する)にあるFOUP3と、このFOUP3を把持した状態にあるグリッパ21とが示されている。位置決め位置にあるFOUP3は、通常載置台4に水平に載置される。また、図3には、FOUP3(言い換えれば、載置台4)に対するグリッパ21の傾き角度(即ち、本発明に係る「傾き度合い」の一例)Φが示されている。本実施形態では、グリッパ21の中心とFOUP3のフランジ3aの中心とが同一鉛直線上にある移載位置で、ビークル2がFOUP3を把持する把持動作が行われる。即ち、FOUP3を把持しないグリッパ21を、横方向へ移動せずとも、把持動作を行うことが可能である。
【0045】
図4には、右STBとして機能する載置台4と、この載置台4に移載しようとするFOUP3と、このFOUP3を把持した状態にあるグリッパ21とが示されている。また、載置台4に対するFOUP3(言い換えれば、グリッパ21)の傾き角度Φ1と、FOUP3の高さhとが示されている。本実施形態では、傾き角度Φ1及びFOUP高さhに基づいて算出されるずれ量σY分、横方向(即ち、図4における矢印方向)へ移動させた位置を移載位置として、ビークル2がFOUP3を載置台4の位置決め位置に載置する載置動作を行う。
【0046】
仮に、ずれ量σY分の横方向への移動がなされない位置(即ち、図4に示される状態)を移載位置として載置動作を行った場合、載置台4のキネマピン4aの中央部に、FOUP3のV溝3bの端部が鉛直方向で対向し、FOUP3が載置台4の位置決め位置から外れて載置されてしまう。
【0047】
そこで、下記(3)式にて、キネマピン4aの中央部と、V溝3bの中央部とが鉛直方向で一致する位置決め位置にFOUP3を載置するべく、FOUP3の横方向でのずれ量σYを算出する。例えば、FOUP高さhが330mm、傾き角度Φ1が0.5度である場合、σYは2.9mmである。
【0048】
σY = h × sinΦ1 (3)
本実施形態では、把持動作を行う際に、グリッパ21中心とフランジ3a中心とが同一鉛直線上にあれば移載位置の変更を必要としないのに対し、載置動作を行う際には、FOUP3(言い換えれば、グリッパ21)の傾き角度Φ1及び高さhに基づくずれ量σY分、移載位置をずらす。即ち、把持動作時の移載位置と、載置動作時の移載位置とは、横方向にずれ量σYだけ差異を有することとなる。
【0049】
メモリ101に接続されるビークルコントローラ102は、本発明に係る「制御手段」の一例であって、実行しようとする把持動作又は載置動作に対応するデータをメモリ101から読み取り、読み取ったデータが示す移載位置で、実行すべき把持動作又は載置動作を実行する。
【0050】
メモリ101及びビークルコントローラ102に接続される送受信部103は、本発明に係る「教示手段」の一例であって、メモリ101に記録されているデータが更新された場合、更新されたデータを他のビークル2に送信する。他方、他のビークル2から送信された更新データを受信する。この場合、ビークルコントローラ102は、受信した更新データをメモリ101に記憶させる。
【0051】
<移載位置を表すデータの構造>
次に、図5から図7を参照し、移載位置を表すデータについて説明する。ここに、図5は、当該移載システムに設置される各種載置台4を説明する上面図であり、図6及び図7は、メモリ101に記憶されるデータの構造を説明する表である。
【0052】
図5には、レール1の鉛直下方に設置される製造装置ポート:A及びB、並びにUTB:Aと、レール1より下方且つその左横方向に設置される左STB:Aと、レール1の下方且つその右横方向に設置される右STB:Aとが示されている。本実施形態では、把持動作時及び載置動作時の各移載位置は、全てのビークル2に共通する共通データを表す座標と、ビークル2に固有の機差データを表す座標との和で示される。
【0053】
図6には、共通データが示されている。共通データは、各載置台4と、各載置台4に対応する共通座標とが紐付けされたデータを示す。図7には、機差データが示されている。機差データは、製造装置ポート、UTB及び左右STBの四種の載置台4と、各種載置台4上のFOUP3の有無と、FOUP3が有る場合及び無い場合の機差座標とが紐付けされたデータを示す。ここに、「FOUPが無い」場合とは、グリッパ21がFOUP3を把持しない解放状態で移載を行う把持動作を示し、「FOUPが有る」場合とは、グリッパ21がFOUP3を把持する把持状態で移載を行う載置動作を示す。
【0054】
図6において、共通座標及び機差座標の各々は、レール1の延伸方向での位置X、横方向での位置Y、鉛直方向での位置Z、及び鉛直軸回転方向での位置或いは傾きΘの四方向での位置たる座標として示される。ここに、共通座標(X**,Y**,Z**,Θ**)における、各方向での位置に付された添え字について、左側に位置する第1の添え字は、載置台の種別を表しており、製造装置ポート「1」、UTB「2」、右STB「3」及び左STB「4」のうちのいずれかである。また、右側に位置する第2の添え字は、載置台の識別番号を表しており、各載置台4に付された「1」以上の数字である。他方、機差座標(X***,Y***,Z***,Θ***)における、各方向での位置に付された添え字について、左側に位置する第1の添え字は、共通座標と同様にして載置台の種別を表している。中央に位置する第2の添え字は、ビークル2の識別番号を表しており、各ビークル2に付された「1」以上の数字である。また、右側に位置する第3の添え字は、FOUP3の有無を表しており、FOUP:有の場合「1」FOUP3:無の時「2」の数字である。この場合、例えば製造装置ポート:Aについて、把持動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と機差座標(X111,Y111,Z111,Θ111)との和で示される。また、載置動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と機差座標(X112,Y112,Z112,Θ112)との和で示される。
【0055】
把持動作時と載置動作時とのFOUP3のずれ量σは、四方向の座標として示される。ここに、ずれ量σを示す座標(σx*,σy*,σz*,σΘ*)における、各方向での位置に付された添え字について、左側に位置する第1の添え字は、X、Y、Z及びΘの四方向のうちのいずれかの方向を表しており、右側に位置する第2の添え字は、製造装置ポート「1」、UTB「2」、右STB「3」及び左STB「4」のうちのいずれかの載置台の種別を表す。この場合、例えば製造装置ポート:Aについて、把持動作時と載置動作時との移載位置の差たるずれ量σは(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)である。
【0056】
尚、機差データについて、図7に示すように、FOUP3の有無に夫々対応する機差座標を示すことに限定されない。例えば、図8(a)に示すように、機差データについて、把持動作時に、言い換えればFOUP:無の場合、基準ビークルとの差異を機差座標(X111,Y111,Z111,Θ111)として示し、載置動作時に、言い換えればFOUP:有の場合、FOUP:無時の機差座標との差異を機差座標(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)として示してもよい。この場合、例えば製造装置ポート:Aについて、把持動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と機差座標(X111,Y111,Z111,Θ111)との和で示される。また、載置動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と把持動作時の機差座標(X111,Y111,Z111,Θ111)との和に、ずれ量σに値する機差座標(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)を加算することで示される。
【0057】
他方、例えば、図8(b)に示すように、機差データについて、載置動作時に、言い換えればFOUP:有の場合、基準ビークルとの差異を機差座標(X112,Y112,Z112,Θ112)として示し、把持動作時に、言い換えればFOUP:無の場合、FOUP:有時の機差座標との差異を機差座標(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)として示してもよい。この場合、例えば製造装置ポート:Aについて、載置動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と機差座標(X112,Y112,Z112,Θ112)との和で示される。また、把持動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と載置動作時の機差座標(X112,Y112,Z112,Θ112)との和から、ずれ量σに値する機差座標(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)を減算することで示される。
【0058】
<実施形態の動作>
次に、図9を参照し、本発明の本実施形態に係る移載システム100の動作について説明する。ここに、図9は、移載システム100における移載処理を示すフローチャートである。尚、移載システム100における全てのビークル2は、送受信部103を介してビークル2間で共通データを教示し、常時最新の共通データを保持するものとする。
【0059】
図9において、ビークルコントローラ102は、先ず、搬送指示部201からの指示信号に従って、実行される動作が把持動作であるか載置動作であるかを判定する(ステップS51)。この判定の結果、把持動作である場合(ステップS51:把持)、メモリ101から、移載先たる一の載置台4に紐付く共通データ及び機差データを読み取り、読み取ったこれらのデータから、把持動作時の移載位置を算出する(ステップS52)。すると、算出した移載位置で把持動作を実行する(ステップS53)。これにより、一連の移載処理を終了する。
【0060】
他方、ステップS51の判定の結果、載置動作である場合(ステップS51:載置)、メモリ101から、移載先たる一の載置台4に紐付く共通データ及び機差データを読み取り、読み取ったこれらのデータから、載置動作時の移載位置を算出する(ステップS54)。すると、算出した移載位置で載置動作を実行する(ステップS55)。これにより、一連の移載処理を終了する。
【0061】
本実施形態の移載処理によれば、把持動作を行う際に、把持動作に対応する移載位置で把持動作を行い、載置動作を行う際に、載置動作に対応する移載位置で載置動作を行う。即ち、載置動作では、縦移載又は横移載に伴い発生し得る、FOUP3のずれを解消するべく、把持動作の場合と移載位置を異ならせる。これにより、FOUP3を載置台4の位置決め位置に確実に移載することが可能である。
【0062】
また、把持動作時及び載置動作時の各移載位置を、共通データ及び機差データの2つのデータから構成する。このように構成することで、全てのビークル2に共通する共通データを、移載システム100における全てのビークル2間で教示し、これを常時更新する。これにより、各ビークル2において、常時高精度の移載位置情報を保持可能である。これにより、移載動作前に最新の共通データを取得する時間を節約でき、移載時間を最小限に抑えることが可能である。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う移載システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…レール、2…ビークル、3…FOUP、4…載置台、100…移載システム、101…メモリ、102…ビークルコントローラ、103…送受信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を、ビークル等の搬送車とポート等の載置台との間で移載する移載システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、支持台毎に吊上げ用位置調整量及び下ろし用位置調整量が設定されており、ワーク(即ち、被搬送物)を吊下状態で昇降させる際に、ワーク吊上げ又はワーク下ろしの作業に応じて、設定されている位置調整量だけ、吊下状態にあるワークの位置調整を行うワークハンドを備える吊下搬送設備が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−192269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のシステムでは、搬送用走行体の走行経路真下に配設されたポートとの間でワークを積み下ろす、所謂、縦移載を可能にしている。しかしながら、該システムは、搬送用走行体(言い換えれば、走行経路)に対して左右横方向に配設されたポートとの間でワークを積み下ろす、所謂、横移載には対応していない。これは、特許文献1における位置調整用横動台をどう駆動させても、走行経路真下のポートに対向する位置調整用横動台の左右横方向のずれを調整するに過ぎないからである。
【0005】
ここで、本願発明者による研究或いは実験の成果又は経験によれば、仮に、特許文献1のシステムにて横移載を行う場合、位置調整用横動台(以下、単に「横動台」と称する)が左右横方向における例えば右方向に移動すると、横動台と、この下方に連なる昇降ユニット及びワークハンドとが右方向に大きく張り出した状態となる。すると、この張り出し度合いによっては、横動台が昇降ユニット及びワークハンドの重みでたわみ、ワークハンド及びこれに把持されるワークが、走行経路を軸とする回転の方向に傾く。特に、ワークを下ろす(即ち載置する)際には、ワークの重みに起因して横動台のたわみが顕著になり、ワークが大きく傾きやすい。このようなワークの傾きは、横移載時のワークの移載位置について、ずれを生じさせることとなる。このため、横移載を行う場合、ワークを所望の位置に移載できず、横移載を失敗し兼ねない旨の技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、横移載時にも被搬送物を所望の位置に移載し得る移載システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る移載システムは、天井又は該天井側に敷設された軌道に沿って走行しつつ被搬送物を搬送する搬送車と、前記軌道より下方に設けられており前記被搬送物を載置可能である載置台との間で前記被搬送物が横移載方式で移載可能である移載システムであって、(i)前記搬送車に把持される前記被搬送物を前記載置台の所定位置に載置する載置動作を行う際の前記被搬送物の移載位置を表す載置位置情報、及び(ii)前記載置台上の前記被搬送物を前記搬送車が把持する把持動作を行う際の前記被搬送物の移載位置を表す把持位置情報を記憶する記憶手段と、前記載置動作を行う場合、前記記憶される載置位置情報の移載位置で移載が行われるように、他方、前記把持動作を行う場合、前記記憶される把持位置情報の移載位置で移載が行われるように前記搬送車を制御する制御手段とを備える。
【0008】
本発明に係る搬送車は、例えばFOUPを搬送するOHT(Overhead Hoist Transfer)等であって、半導体素子製造用の製造装置及びストッカの内外に出し入れするためのロードポート、或いは搬送コンベア上に設置されたバッファ等の載置台との間で、縦移載方式のみならず横移載方式で被搬送物を移載可能である。ここに、搬送車本体の鉛直方向に設置される載置台との間でFOUPを移載する「縦移載方式」に対し「横移載方式」とは、軌道の方向に直交する横方向にFOUPを移動可能とし、搬送車本体の横方向に設置される載置台との間でFOUPを移載することを示す。即ち、横方向にFOUPを移動させる工程を経て移載が行われることを示す。
【0009】
ここで、上述したように、搬送車本体の横方向にFOUPを移動させた場合、FOUPと、該FOUPを把持する把持部と、該把持部を鉛直方向や横方向等に移動させる移動部との重みで搬送車本体の重心がずれる。この時、軌道に沿って走行する走行ローラが変形したり移動部の一部がたわんで、搬送車本体が、軌道の方向を軸中心として回転する回転方向に傾く。搬送車本体の傾きは、把持部の傾きともなり、これに把持されるFOUPも傾くこととなる。こうした傾き状態で、この状態が考慮されない移載位置で横移載を行おうとすれば、FOUPは、載置台に傾いた状態で載置されたり載置台から食み出して、載置台に予め設定される位置(即ち、所定位置)からずれてしまう。FOUPがその所定位置からずれると、半導体素子製造用の製造工程、該製造工程に含まれる搬送工程又は該搬送工程の一部を停止せざるを得ない。逆に、このようなFOUPの傾き(言い換えれば、重み)に起因する移載動作(即ち、載置動作)の際に(即ち、厳密にはFOUPを下ろす前に)ずれをなくすように予め位置決めを行っておくと、今度は、FOUPの重みがない把持動作の際に(即ち、厳密にはFOUPを把持する前に)ずれが生じてしまう。そこで、本発明では、横移載を行う際に、載置動作及び把持動作のいずれにおいても、FOUPを確実に載置台の所定位置に載置する、或いは該所定位置にあるFOUPを把持するように搬送車を制御する。
【0010】
本発明によれば、ROM或いはメモリ等の記憶手段は、例えば搬送車に備えられている。記憶手段は、載置動作に対応する載置位置情報、及び把持動作に対応する把持位置情報を記憶する。CPU等の制御手段は、例えば、記憶手段と同様に搬送車に備えられている。制御手段は、記憶手段から、実行しようとする動作(即ち、載置動作及び把持動作)に対応する位置情報(即ち、載置位置情報又は把持位置情報)を読み出し、読み出した位置情報の移載位置でその動作が行われるように搬送車を制御する。
【0011】
このように、載置動作を行う場合、載置位置情報の移載位置で載置動作を行い、把持動作を行う場合、把持位置情報の移載位置で把持動作を行う。即ち、載置動作では、移載に伴い発生し得る、被搬送物のずれを解消するべく、把持動作の場合と移載位置を異ならせる。これにより、被搬送物の重みに起因した移動部等のたわみの大小によらずに、被搬送物を載置台の所定位置たる所望の位置に載置する横移載を行うことが可能である。
【0012】
尚、上述の作用効果(即ち、載置動作と把持動作とで移載位置を異ならせて、被搬送物を常時所望の位置に載置する)は、横移載方式での移載に限定されず、縦移載方式での移載においても有効である。これは、軌道、搬送車における走行ローラ、把持部を吊り下げる一対のベルト、及び載置又は把持される被搬送物の状態(例えば、軌道の変形、走行ローラの傾き、ベルト長さの違い、FOUP重心の偏り)等に起因して、縦移載においても載置動作と把持動作とで移載位置にずれが生じ兼ねないためである。
【0013】
尚、本発明に係る記憶手段及び制御手段は、搬送車に備えられる代わりに、当該移載システムを統括的に制御する主制御部に備えられてもよい。この場合、主制御部は、例えば、搬送車の認証番号と搬送車固有の位置情報とを対応付けて記憶する記憶手段たるデータベースと、該データベースから読み出した、載置動作又は把持動作に対応する位置情報に従って搬送車を制御する制御手段たる搬送車制御部とを備える。
【0014】
尚、当該移載システムは、複数の搬送車及び複数の載置台を備えることが可能である。
【0015】
本発明に係る移載システムの一の態様では、前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々は、複数の前記搬送車に共通する移載位置を表す共通データと、前記搬送車に固有の移載位置を表す機差データとの和として示される。
【0016】
ここに、載置位置情報及び把持位置情報に係る「共通データ」とは、複数の載置台の各々における、複数の搬送車に共通のデータを表す。この共通データは、例えば載置位置情報及び把持位置情報の場合で同一である。また、「機差データ」とは、複数の載置台の各々における、各搬送車に固有のデータを表す。この機差データは、例えば載置位置情報及び把持位置情報の場合で異なる。この態様によれば、載置位置情報及び把持位置情報の各々を、共通データ及び機差データの2つのデータから構成することで、例えば、共通データを主として管理しこれを定期的に更新するようにすれば、記憶手段で常時精度の高い移載位置に係るデータを保持することが可能である。また特に、複数の搬送車に共通する共通データの取得時間を、極めて短くすることが可能となる。当該移載システムには、多数の搬送車及び多数の移載位置が存在することを考えると、このようにデータ取得時間を短くすることは移載時間の短縮に繋がり、実践上極めて有益である。
【0017】
この態様では、前記載置位置情報の前記機差データと前記把持位置情報の前記機差データとの差は、前記被搬送物の前記移載位置での傾き度合い及び前記被搬送物の高さに基づく、前記被搬送物のずれ量に相当してもよい。
【0018】
ここに、被搬送物に係る「傾き度合い」とは、載置台に対する、移載位置にある被搬送物の傾き角度を示す。また、被搬送物に係る「ずれ量」について、縦移載での載置動作及び把持動作並びに横移載での把持動作を行う際に、移載位置で水平状態にある被搬送物の位置を零点とする。この場合、「ずれ量」とは、前記零点から、横移載での載置動作を行う際に移載位置で傾いた状態にある被搬送物までの距離を表す。このようなずれ量σは、例えば下記(1)式にて、傾き度合いΦ及び被搬送物の高さhに基づいて、一義的に算出することが可能である。このようなずれ量σが特定されると、ずれ量σを表す例えばずれ量情報を、機差データにおける把持位置情報に加算することで、機差データにおける載置位置情報が決定する。
【0019】
σ = h × sinΦ (1)
このように構成すれば、機差データとして、把持位置情報及びずれ量情報の2つのデータから構成し、記憶手段のデータ容量を最小限に抑えることも可能である。
【0020】
本発明に係る移載システムの他の態様では、前記搬送車は、前記被搬送物を把持する把持状態及び前記被搬送物を解放する解放状態の間で変位可能な把持部と、前記把持部を鉛直方向に昇降可能な鉛直移動部と、前記把持部を前記軌道の方向に直交する横方向に水平移動可能な横水平移動部と、前記把持部をその鉛直軸を中心とする鉛直軸回転方向に回転可能な回転移動部とを備え、前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々は、前記軌道の方向、前記横方向、前記鉛直方向及び前記鉛直軸回転方向の四方向での位置を表す。
【0021】
この態様によれば、搬送車は、被搬送物を把持可能なグリッパ等の把持部を、鉛直方向、横方向及び鉛直軸回転方向の三方向に移動可能である。載置位置情報及び把持位置情報の各々は、前記三方向に、軌道の方向を加えた四方向での位置を表す。四方向での位置について、例えば座標として、把持位置情報を(X**1,Y**1,Z**1,Θ**1)、載置位置情報を(X**2,Y**2,Z**2,Θ**2)と表す。これにより、載置位置情報及び把持位置情報に係るデータを、高い精度で構築することが可能である。
【0022】
尚、四方向での位置が上記座標として表される場合、上記ずれ量情報が(σX,σY,σZ,σΘ)とすれば、載置位置情報及び把持位置情報の関係は、下記(2)式となる。
【0023】
(X**2,Y**2,Z**2,Θ**2)
=(X**1,Y**1,Z**1,Θ**1)+(σX,σY,σZ,σΘ) (2)
【0024】
本発明に係る移載システムの他の態様では、前記被搬送物は、その底面に規定の凹部を有し、前記載置台は、その上面に前記凹部に係合可能な凸部を有し、前記載置動作では、前記凹部及び前記凸部の係合により前記載置台に対し前記被搬送物が位置決めされる前記所定位置に前記被搬送物が載置される。
【0025】
ここに、被搬送物に係る「凹部」は、被搬送物の底面に逆V字型に形成された例えばV溝と称される凹みであって、載置台に係る「凸部」は、載置台の上面に、被搬送物の凹部に係合可能に形成された例えばキネマピンと称される出っ張りである。これら凹部と凸部とか係合状態にある場合、載置台に対し被搬送物が位置決めされた位置決め状態となる。載置台に係る「所定位置」とは、被搬送物が位置決め状態となる位置を示す。
【0026】
前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々が前記共通データと前記機差データとの和として示される当該移載システムは、複数の前記搬送車の間で相互に前記共通データを教示する教示手段を更に備えてもよい。
【0027】
ここに、無線或いは赤外線等による通信手段を少なくとも含む教示手段は、例えば、記憶手段及び制御手段と同様にして、搬送車に備えられている。教示手段は、記憶手段が記憶する共通データを配信することで、他の搬送車に対し共通データの教示を行う。このように構成すれば、一の搬送車から複数の搬送車への教示が容易となり、通信可能領域とされる教示領域にある全ての搬送車が最新の共通データを保持することが可能である。これにより、移載位置を知るための載置位置情報及び把持位置情報の取得が短時間で行え、移載時間を短縮することが可能である。
【0028】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る移載システムの構成及び該移載システムにおける搬送車の構造を模式的に表す正面図である。
【図2】実施形態に係る横移載方式での移載を行う際の、図1の搬送車の状態を説明する正面図である。
【図3】実施形態に係る把持動作時に図1の搬送車に把持される被搬送物の移載位置を示す正面図である。
【図4】実施形態に係る載置動作時に図1の搬送車に把持される被搬送物の移載位置を説明する正面図である。
【図5】実施形態に係る各種載置台の設置を模式的に表す上面図である。
【図6】実施形態に係る共通データを読み出すための表である。
【図7】実施形態に係る機差データを読み出すための表である。
【図8】本発明の機差データの他の例を表す表である。
【図9】実施形態に係る横移載方式での移載処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の実施形態に係る移載システム100の構成について説明する。ここに、図1は、移載システム100の構成及び移載システム100におけるビークル2の構造を模式的に表す正面図である。
【0031】
図1において、移載システム100は、半導体素子製造用基板たるFOUP3を搬送するための搬送システム200に含まれており、搬送システム200における搬送指示部201からの指示信号に従って、FOUP3をビークル2と載置台4との間で移載可能に構成されている。移載システム100は、主として、レール1、ビークル2、載置台4を備える。
【0032】
FOUP3は、本発明に係る「被搬送物」の一例として、ビークル2が把持する際の取っ手となるフランジ3aを備える。FOUP3は、その下面に、載置台4のキネマピン4aと係合可能であるV溝3b(即ち、本発明に係る「凹部」の一例)を有する。V溝3bは、載置台4に対するFOUP3本体の位置決めに用いられる。
【0033】
載置台4は、製造装置ポート、UTB(Under Track Baffer)及び左右のSTB(Side Table Baffer)といった各種様々な形態でレール1より下方に設置される。各載置台4は、その上面に、FOUP3のV溝3bと係合可能であるキネマピン4a(即ち、本発明に係る「凸部」の一例)を備える。キネマピン4aは、載置台4に対するFOUP3の位置決めに用いられる。
【0034】
レール1は、本発明に係る「軌道」の一例であって、搬送システム200が設置される半導体素子製造工場等の建物内部の天井に敷設されている。レール1について、その内部はビークル2の走行路の一部となっている。レール1の下面について、その中央部はビークル2の走行部20と本体部とを接続する部位を避けるために開放されている。
【0035】
ビークル2は、本発明に係る「搬送車」の一例であって、走行部20と、グリッパ21、昇降機構22、ラテラル機構23及び回転機構24を備える本体部と、メモリ101、ビークルコントローラ102及び送受信部103を備える制御部とから成る。走行部20は、動力源たる不図示のモータと、一対のローラ20aとを備えており、モータの動力により一対のローラ20aを駆動することで、走行部20より本体部をレール1に沿って移動させる。
【0036】
グリッパ21は、本発明に係る「把持部」の一例であって、動力源たる不図示のモータと、一対のフィンガ21aとを備える。グリッパ21は、モータの動力により一対のフィンガ21aを駆動することで、FOUP3を把持する把持状態と、FOUP3を解放する解放状態との間で一対のフィンガ21aを変位させる。
【0037】
昇降機構22は、本発明に係る「鉛直移動部」の一例であって、動力源たる不図示のモータと、巻取部22aと、ベルト22bとを備える。昇降機構22は、モータの動力により巻取部22aを巻取方向又は巻出方向に回転させることで、グリッパ21の上面に一端が固定されるベルト22bの巻き取り又は巻き出しを行う。このようにして、昇降機構22は、グリッパ21を鉛直方向に移動させる。
【0038】
ラテラル機構23は、本発明に係る「横水平移動部」の一例であって、駆動源たる不図示のモータと、スライド部23aとを備える。ラテラル機構23は、モータの動力によりスライド部23aを、レール1に直交する横方向(即ち、図1における左右方向)にスライドさせることで、スライド部23aの下面に固定される昇降機構22を横方向に移動させる。
【0039】
回転機構24は、本発明に係る「回転移動部」の一例であって、昇降機構22に含まれており、駆動源たる不図示のモータを備える。回転機構24は、モータの動力により、回転機構24本体の下面に固定される巻取部22aを、鉛直軸を中心とする鉛直軸回転方向に回転させることで、巻取部22a及びベルト22bを介して接続されるグリッパ21を鉛直軸回転方向に移動させる。
【0040】
<横移載での把持動作及び載置動作>
ここで、メモリ101、ビークルコントローラ102及び送受信部103を説明する前に、図2を参照し、移載システム100における横移載について説明する。ここに、図2は、横移載を行うビークル2の状態を説明する正面図である。
【0041】
移載システム100では、ビークル2と載置台4との間で、FOUP3が縦移載のみならず横移載される。図2において、ビークル2は横移載を行う場合、スライド部23aをスライドさせ、昇降機構22を横方向に移動させる。この時、横方向に移動した昇降機構22の重みで、一対の走行ローラ20aのうち、昇降機構22から遠い一方が浮き上がると共に、昇降機構22に近い他方が昇降機構22側に押圧されて変形する。また、昇降機構22の重みで、ラテラル機構23がたわみ、ビークル2本体が傾くこととなる。この傾き方向は、レール1を軸中心として回転する軌道回転方向であり、昇降機構22がΦ1度傾く場合、昇降機構22にベルト22bを介して連結されるグリッパ21、及びグリッパ21に把持されるFOUP3もまたΦ1度傾いた状態となる。しかも、このような傾きは、ビークル2が空荷であるか(即ち、FOUP3を取りに行く場合であるのか)又はFOUP3を把持しているか(即ち、FOUP3を下ろしに行く時であるのか)に応じて、即ち、FOUP3の重量に応じて、グリッパ21或いはFOUP3の位置を決める上で、無視し得ない程度に異なる。
【0042】
メモリ101は、本発明に係る「記憶手段」の一例であって、ビークル2と載置台4との間でFOUP3が移載される際に、グリッパ21が取るべき位置たる移載位置を表すデータを記憶している。但し、このデータは、ビークル2から載置台4への横移載を行う載置動作時と、載置台4からビークル2への横移載を行う把持動作時とで異なる。
【0043】
ここで、図3及び図4を参照し、把持動作及び載置動作について説明する。ここに、図3は、把持動作時の移載位置を説明する正面図であり、図4は、載置動作時の移載位置を説明する正面図である。
【0044】
図3には、右STBとして機能する載置台4と、この載置台4に対し位置決めされた位置(即ち、本発明に係る「所定位置」の一例であって、適宜「位置決め位置」と称する)にあるFOUP3と、このFOUP3を把持した状態にあるグリッパ21とが示されている。位置決め位置にあるFOUP3は、通常載置台4に水平に載置される。また、図3には、FOUP3(言い換えれば、載置台4)に対するグリッパ21の傾き角度(即ち、本発明に係る「傾き度合い」の一例)Φが示されている。本実施形態では、グリッパ21の中心とFOUP3のフランジ3aの中心とが同一鉛直線上にある移載位置で、ビークル2がFOUP3を把持する把持動作が行われる。即ち、FOUP3を把持しないグリッパ21を、横方向へ移動せずとも、把持動作を行うことが可能である。
【0045】
図4には、右STBとして機能する載置台4と、この載置台4に移載しようとするFOUP3と、このFOUP3を把持した状態にあるグリッパ21とが示されている。また、載置台4に対するFOUP3(言い換えれば、グリッパ21)の傾き角度Φ1と、FOUP3の高さhとが示されている。本実施形態では、傾き角度Φ1及びFOUP高さhに基づいて算出されるずれ量σY分、横方向(即ち、図4における矢印方向)へ移動させた位置を移載位置として、ビークル2がFOUP3を載置台4の位置決め位置に載置する載置動作を行う。
【0046】
仮に、ずれ量σY分の横方向への移動がなされない位置(即ち、図4に示される状態)を移載位置として載置動作を行った場合、載置台4のキネマピン4aの中央部に、FOUP3のV溝3bの端部が鉛直方向で対向し、FOUP3が載置台4の位置決め位置から外れて載置されてしまう。
【0047】
そこで、下記(3)式にて、キネマピン4aの中央部と、V溝3bの中央部とが鉛直方向で一致する位置決め位置にFOUP3を載置するべく、FOUP3の横方向でのずれ量σYを算出する。例えば、FOUP高さhが330mm、傾き角度Φ1が0.5度である場合、σYは2.9mmである。
【0048】
σY = h × sinΦ1 (3)
本実施形態では、把持動作を行う際に、グリッパ21中心とフランジ3a中心とが同一鉛直線上にあれば移載位置の変更を必要としないのに対し、載置動作を行う際には、FOUP3(言い換えれば、グリッパ21)の傾き角度Φ1及び高さhに基づくずれ量σY分、移載位置をずらす。即ち、把持動作時の移載位置と、載置動作時の移載位置とは、横方向にずれ量σYだけ差異を有することとなる。
【0049】
メモリ101に接続されるビークルコントローラ102は、本発明に係る「制御手段」の一例であって、実行しようとする把持動作又は載置動作に対応するデータをメモリ101から読み取り、読み取ったデータが示す移載位置で、実行すべき把持動作又は載置動作を実行する。
【0050】
メモリ101及びビークルコントローラ102に接続される送受信部103は、本発明に係る「教示手段」の一例であって、メモリ101に記録されているデータが更新された場合、更新されたデータを他のビークル2に送信する。他方、他のビークル2から送信された更新データを受信する。この場合、ビークルコントローラ102は、受信した更新データをメモリ101に記憶させる。
【0051】
<移載位置を表すデータの構造>
次に、図5から図7を参照し、移載位置を表すデータについて説明する。ここに、図5は、当該移載システムに設置される各種載置台4を説明する上面図であり、図6及び図7は、メモリ101に記憶されるデータの構造を説明する表である。
【0052】
図5には、レール1の鉛直下方に設置される製造装置ポート:A及びB、並びにUTB:Aと、レール1より下方且つその左横方向に設置される左STB:Aと、レール1の下方且つその右横方向に設置される右STB:Aとが示されている。本実施形態では、把持動作時及び載置動作時の各移載位置は、全てのビークル2に共通する共通データを表す座標と、ビークル2に固有の機差データを表す座標との和で示される。
【0053】
図6には、共通データが示されている。共通データは、各載置台4と、各載置台4に対応する共通座標とが紐付けされたデータを示す。図7には、機差データが示されている。機差データは、製造装置ポート、UTB及び左右STBの四種の載置台4と、各種載置台4上のFOUP3の有無と、FOUP3が有る場合及び無い場合の機差座標とが紐付けされたデータを示す。ここに、「FOUPが無い」場合とは、グリッパ21がFOUP3を把持しない解放状態で移載を行う把持動作を示し、「FOUPが有る」場合とは、グリッパ21がFOUP3を把持する把持状態で移載を行う載置動作を示す。
【0054】
図6において、共通座標及び機差座標の各々は、レール1の延伸方向での位置X、横方向での位置Y、鉛直方向での位置Z、及び鉛直軸回転方向での位置或いは傾きΘの四方向での位置たる座標として示される。ここに、共通座標(X**,Y**,Z**,Θ**)における、各方向での位置に付された添え字について、左側に位置する第1の添え字は、載置台の種別を表しており、製造装置ポート「1」、UTB「2」、右STB「3」及び左STB「4」のうちのいずれかである。また、右側に位置する第2の添え字は、載置台の識別番号を表しており、各載置台4に付された「1」以上の数字である。他方、機差座標(X***,Y***,Z***,Θ***)における、各方向での位置に付された添え字について、左側に位置する第1の添え字は、共通座標と同様にして載置台の種別を表している。中央に位置する第2の添え字は、ビークル2の識別番号を表しており、各ビークル2に付された「1」以上の数字である。また、右側に位置する第3の添え字は、FOUP3の有無を表しており、FOUP:有の場合「1」FOUP3:無の時「2」の数字である。この場合、例えば製造装置ポート:Aについて、把持動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と機差座標(X111,Y111,Z111,Θ111)との和で示される。また、載置動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と機差座標(X112,Y112,Z112,Θ112)との和で示される。
【0055】
把持動作時と載置動作時とのFOUP3のずれ量σは、四方向の座標として示される。ここに、ずれ量σを示す座標(σx*,σy*,σz*,σΘ*)における、各方向での位置に付された添え字について、左側に位置する第1の添え字は、X、Y、Z及びΘの四方向のうちのいずれかの方向を表しており、右側に位置する第2の添え字は、製造装置ポート「1」、UTB「2」、右STB「3」及び左STB「4」のうちのいずれかの載置台の種別を表す。この場合、例えば製造装置ポート:Aについて、把持動作時と載置動作時との移載位置の差たるずれ量σは(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)である。
【0056】
尚、機差データについて、図7に示すように、FOUP3の有無に夫々対応する機差座標を示すことに限定されない。例えば、図8(a)に示すように、機差データについて、把持動作時に、言い換えればFOUP:無の場合、基準ビークルとの差異を機差座標(X111,Y111,Z111,Θ111)として示し、載置動作時に、言い換えればFOUP:有の場合、FOUP:無時の機差座標との差異を機差座標(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)として示してもよい。この場合、例えば製造装置ポート:Aについて、把持動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と機差座標(X111,Y111,Z111,Θ111)との和で示される。また、載置動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と把持動作時の機差座標(X111,Y111,Z111,Θ111)との和に、ずれ量σに値する機差座標(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)を加算することで示される。
【0057】
他方、例えば、図8(b)に示すように、機差データについて、載置動作時に、言い換えればFOUP:有の場合、基準ビークルとの差異を機差座標(X112,Y112,Z112,Θ112)として示し、把持動作時に、言い換えればFOUP:無の場合、FOUP:有時の機差座標との差異を機差座標(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)として示してもよい。この場合、例えば製造装置ポート:Aについて、載置動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と機差座標(X112,Y112,Z112,Θ112)との和で示される。また、把持動作時の移載位置は、共通座標(X1A,Y1A,Z1A,Θ1A)と載置動作時の機差座標(X112,Y112,Z112,Θ112)との和から、ずれ量σに値する機差座標(σX1,σY1,σZ1,σΘ1)を減算することで示される。
【0058】
<実施形態の動作>
次に、図9を参照し、本発明の本実施形態に係る移載システム100の動作について説明する。ここに、図9は、移載システム100における移載処理を示すフローチャートである。尚、移載システム100における全てのビークル2は、送受信部103を介してビークル2間で共通データを教示し、常時最新の共通データを保持するものとする。
【0059】
図9において、ビークルコントローラ102は、先ず、搬送指示部201からの指示信号に従って、実行される動作が把持動作であるか載置動作であるかを判定する(ステップS51)。この判定の結果、把持動作である場合(ステップS51:把持)、メモリ101から、移載先たる一の載置台4に紐付く共通データ及び機差データを読み取り、読み取ったこれらのデータから、把持動作時の移載位置を算出する(ステップS52)。すると、算出した移載位置で把持動作を実行する(ステップS53)。これにより、一連の移載処理を終了する。
【0060】
他方、ステップS51の判定の結果、載置動作である場合(ステップS51:載置)、メモリ101から、移載先たる一の載置台4に紐付く共通データ及び機差データを読み取り、読み取ったこれらのデータから、載置動作時の移載位置を算出する(ステップS54)。すると、算出した移載位置で載置動作を実行する(ステップS55)。これにより、一連の移載処理を終了する。
【0061】
本実施形態の移載処理によれば、把持動作を行う際に、把持動作に対応する移載位置で把持動作を行い、載置動作を行う際に、載置動作に対応する移載位置で載置動作を行う。即ち、載置動作では、縦移載又は横移載に伴い発生し得る、FOUP3のずれを解消するべく、把持動作の場合と移載位置を異ならせる。これにより、FOUP3を載置台4の位置決め位置に確実に移載することが可能である。
【0062】
また、把持動作時及び載置動作時の各移載位置を、共通データ及び機差データの2つのデータから構成する。このように構成することで、全てのビークル2に共通する共通データを、移載システム100における全てのビークル2間で教示し、これを常時更新する。これにより、各ビークル2において、常時高精度の移載位置情報を保持可能である。これにより、移載動作前に最新の共通データを取得する時間を節約でき、移載時間を最小限に抑えることが可能である。
【0063】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う移載システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…レール、2…ビークル、3…FOUP、4…載置台、100…移載システム、101…メモリ、102…ビークルコントローラ、103…送受信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井又は該天井側に敷設された軌道に沿って走行しつつ被搬送物を搬送する搬送車と、前記軌道より下方に設けられており前記被搬送物を載置可能である載置台との間で前記被搬送物が横移載方式で移載可能である移載システムであって、
(i)前記搬送車に把持される前記被搬送物を前記載置台の所定位置に載置する載置動作を行う際の前記被搬送物の移載位置を表す載置位置情報、及び(ii)前記載置台上の前記被搬送物を前記搬送車が把持する把持動作を行う際の前記被搬送物の移載位置を表す把持位置情報を記憶する記憶手段と、
前記載置動作を行う場合、前記記憶される載置位置情報の移載位置で移載が行われるように、他方、前記把持動作を行う場合、前記記憶される把持位置情報の移載位置で移載が行われるように前記搬送車を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする移載システム。
【請求項2】
前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々は、複数の前記搬送車に共通する移載位置を表す共通データと、前記搬送車に固有の移載位置を表す機差データとの和として示される
ことを特徴とする請求項1に記載の移載システム。
【請求項3】
前記載置位置情報の前記機差データと前記把持位置情報の前記機差データとの差は、前記移載位置での前記被搬送物の傾き度合い及び前記被搬送物の高さに基づく、前記被搬送物のずれ量に相当する
ことを特徴とする請求項2に記載の移載システム。
【請求項4】
前記搬送車は、
前記被搬送物を把持する把持状態及び前記被搬送物を解放する解放状態の間で変位可能な把持部と、
前記把持部を鉛直方向に昇降可能な鉛直移動部と、
前記把持部を前記軌道の方向に直交する横方向に水平移動可能な横水平移動部と、
前記把持部をその鉛直軸を中心とする鉛直軸回転方向に回転可能な回転移動部と
を備え、
前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々は、前記軌道の方向、前記横方向、前記鉛直方向及び前記鉛直軸回転方向の四方向での位置を表す
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の移載システム。
【請求項5】
前記被搬送物は、その底面に規定の凹部を有し、
前記載置台は、その上面に前記凹部に係合可能な凸部を有し、
前記載置動作では、前記凹部及び前記凸部の係合により前記載置台に対し前記被搬送物が位置決めされる前記所定位置に前記被搬送物が載置される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の移載システム。
【請求項6】
当該移載システムは、
複数の前記搬送車の間で相互に前記共通データを教示する教示手段
を更に備えることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の移載システム。
【請求項1】
天井又は該天井側に敷設された軌道に沿って走行しつつ被搬送物を搬送する搬送車と、前記軌道より下方に設けられており前記被搬送物を載置可能である載置台との間で前記被搬送物が横移載方式で移載可能である移載システムであって、
(i)前記搬送車に把持される前記被搬送物を前記載置台の所定位置に載置する載置動作を行う際の前記被搬送物の移載位置を表す載置位置情報、及び(ii)前記載置台上の前記被搬送物を前記搬送車が把持する把持動作を行う際の前記被搬送物の移載位置を表す把持位置情報を記憶する記憶手段と、
前記載置動作を行う場合、前記記憶される載置位置情報の移載位置で移載が行われるように、他方、前記把持動作を行う場合、前記記憶される把持位置情報の移載位置で移載が行われるように前記搬送車を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする移載システム。
【請求項2】
前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々は、複数の前記搬送車に共通する移載位置を表す共通データと、前記搬送車に固有の移載位置を表す機差データとの和として示される
ことを特徴とする請求項1に記載の移載システム。
【請求項3】
前記載置位置情報の前記機差データと前記把持位置情報の前記機差データとの差は、前記移載位置での前記被搬送物の傾き度合い及び前記被搬送物の高さに基づく、前記被搬送物のずれ量に相当する
ことを特徴とする請求項2に記載の移載システム。
【請求項4】
前記搬送車は、
前記被搬送物を把持する把持状態及び前記被搬送物を解放する解放状態の間で変位可能な把持部と、
前記把持部を鉛直方向に昇降可能な鉛直移動部と、
前記把持部を前記軌道の方向に直交する横方向に水平移動可能な横水平移動部と、
前記把持部をその鉛直軸を中心とする鉛直軸回転方向に回転可能な回転移動部と
を備え、
前記載置位置情報及び前記把持位置情報の各々は、前記軌道の方向、前記横方向、前記鉛直方向及び前記鉛直軸回転方向の四方向での位置を表す
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の移載システム。
【請求項5】
前記被搬送物は、その底面に規定の凹部を有し、
前記載置台は、その上面に前記凹部に係合可能な凸部を有し、
前記載置動作では、前記凹部及び前記凸部の係合により前記載置台に対し前記被搬送物が位置決めされる前記所定位置に前記被搬送物が載置される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の移載システム。
【請求項6】
当該移載システムは、
複数の前記搬送車の間で相互に前記共通データを教示する教示手段
を更に備えることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の移載システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−76852(P2012−76852A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221953(P2010−221953)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(309031466)ムラテックオートメーション株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(309031466)ムラテックオートメーション株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
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