説明

窒化物半導体レーザ、及びエピタキシャル基板

【課題】光閉じ込め性の低下を縮小しながら駆動電圧の低減を可能にする窒化物半導体レーザを提供する。
【解決手段】半導体領域19では、発光層13の活性層25、第1のクラッド領域21及び第2のクラッド領域23は主面17a上に設けられる。第2のクラッド領域23は、第1p型III族窒化物半導体層27及び第2p型III族窒化物半導体層29を含む。第1p型III族窒化物半導体層27はInAlGaN層からなり、第2p型III族窒化物半導体層29は該InAlGaN層と異なる半導体からなる。このInAlGaN層は非等方的な歪みを内包する。第1p型III族窒化物半導体層27は第2p型III族窒化物半導体層29と活性層25との間に設けられる。第2p型III族窒化物半導体層29の比抵抗ρ29は第1p型III族窒化物半導体層27の比抵抗ρ27より低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体レーザ、及び、窒化物半導体レーザのためのエピタキシャル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、窒化物半導体レーザ素子を開示する。窒化物半導体レーザ素子は、ガイド層や活性層等の結晶性を向上できると共に長波長のレーザ光を発光する。また、特許文献2は、酸化物半導体レーザ素子を開示する。この酸化物半導体レーザ素子は、狭い放射角や低い発振閾値電流の素子特性を有し、かつ、導波モードの安定性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000―299532号公報
【特許文献2】特開2005−39107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、p型クラッド層が、AlGa1−aN(0≦a<1)を有する第1の窒化物半導体から構成され、このAlGa1−aNのAl組成が、活性層に接近するにつれて少なくなるように組成傾斜されている。活性層が、InGa1−bN(0≦b<1)を含んでなる量子井戸構造であり、p型ガイド層が、活性層に接近するにつれて、Inの組成が多くなるように組成傾斜されている。これ故に、p型ガイド層の屈折率が、活性層に近づくに大きくなり、結果的に活性層からクラッド層に光が拡がる。また、p型クラッド層の屈折率も、活性層に近づくにつれて大きくなり、クラッド層に伝搬光が浸み出す。
【0005】
特許文献2では、n型ZnO単結晶基板上に、n型クラッド層及びノンドープ量子井戸活性層を設けている。n型クラッド層は、厚さ1μmを有するn型Mg0.08Zn0.92O第1クラッド層と、厚さ0.1μmのn型Mg0.1Zn0.9O第2クラッド層(低屈折率)との2層で構成される。低い屈折率の第2クラッド層が第1クラッド層よりノンドープ量子井戸活性層に近い。この酸化物半導体レーザ素子では、導波モードを安定化している。しかしながら、特許文献2は、III族窒化物と異なる半導体のレーザ素子を関連しており、また電気的特性の改善については何も触れていない。活性層に近いMgZnO層の屈折率が、活性層から遠いMgZnO層の屈折率より小さい。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたのであり、光閉じ込めの低下を縮小しながら駆動電圧の低減を可能にする窒化物半導体レーザを提供することを目的とする。また、本発明は、この窒化物半導体レーザのためのエピタキシャル基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る窒化物半導体レーザは、(a)窒化ガリウム系半導体からなる主面を有する導電性の支持基体と、(b)前記主面の上に設けられた活性層と、(c)前記主面の上に設けられたp型クラッド領域とを備える。前記支持基体の前記主面は、前記窒化ガリウム系半導体のc軸方向に延在する基準軸に直交する基準面に対して傾斜し、前記活性層は前記支持基体と前記p型クラッド領域との間に設けられ、前記p型クラッド領域は、第1p型III族窒化物半導体層及び第2p型III族窒化物半導体層を含み、前記第1p型III族窒化物半導体層はInAlGaN層からなり、前記第2p型III族窒化物半導体層は該InAlGaN層の材料と異なる半導体からなり、前記InAlGaN層は非等方的な歪みを内包し、前記第1p型III族窒化物半導体層は前記第2p型III族窒化物半導体層と前記活性層との間に設けられ、前記第2p型III族窒化物半導体層の比抵抗は、前記第1p型III族窒化物半導体層の比抵抗より低い。
【0008】
この窒化物半導体レーザによれば、p型クラッド領域は、互いに異なる材料の第1及び第2p型III族窒化物半導体層を含むので、第1及び第2p型III族窒化物半導体層の各々は組成傾斜ではなく、p型クラッド領域は、光閉じ込め性を優れたものにできる。また、この第1p型III族窒化物半導体層は第2p型III族窒化物半導体層と活性層との間に設けられている。正孔は、第1p型III族窒化物半導体層の比抵抗より低い第2p型III族窒化物半導体層を伝導した後に、第1p型III族窒化物半導体層に到達する。
【0009】
また、第1p型III族窒化物半導体層のInAlGaN層は非等方的な歪みを内包するので、このInAlGaN層における正孔は、c面上に成長されるInAlGaNに比べて、小さい有効質量を有する。これ故に、第1p型III族窒化物半導体層のInAlGaN層の比抵抗は第2p型III族窒化物半導体層の比抵抗より高いけれども、InAlGaN層における伝導を、小さい有効質量の正孔が担う。したがって、第2p型III族窒化物半導体層からの正孔が、第1p型III族窒化物半導体層に到達してそこで伝導するとき、InAlGaN層における動的な電気抵抗が、第1p型III族窒化物半導体層の比抵抗から期待される値より優れたものになる。この結果、順方向駆動電圧が低減される。
【0010】
本発明の別の側面に係る、窒化物半導体レーザのためのエピタキシャル基板は、(a)窒化ガリウム系半導体からなる主面を有する導電性の基板と、(b)前記主面の上に設けられた活性層と、(c)前記主面の上に設けられたp型クラッド領域とを備える。前記主面は、前記窒化ガリウム系半導体のc軸方向に延在する基準軸に直交する基準面に対して傾斜し、前記活性層は前記支持基体と前記p型クラッド領域との間に設けられ、前記p型クラッド領域は、第1p型III族窒化物半導体層及び第2p型III族窒化物半導体層を含み、前記第1p型III族窒化物半導体層はInAlGaN層からなり、前記第2p型III族窒化物半導体層は該InAlGaN層の材料と異なる半導体からなり、前記InAlGaN層は、非等方的な歪みを内包し、前記第1p型III族窒化物半導体層は前記第2p型III族窒化物半導体層と前記活性層との間に設けられ、前記第2p型III族窒化物半導体層の比抵抗は、前記第1p型III族窒化物半導体層の比抵抗より低い。
【0011】
このエピタキシャル基板によれば、p型クラッド領域は、互いに異なる材料からなる第1及び第2p型III族窒化物半導体層を含むので、第1及び第2p型III族窒化物半導体層の各々は組成傾斜を含まず、これ故に、p型クラッド領域の光閉じ込めを優れたものにできる。また、この第1p型III族窒化物半導体層は第2p型III族窒化物半導体層と活性層との間に設けられている。p型クラッド領域の正孔は、第1p型III族窒化物半導体層より低い第2p型III族窒化物半導体層の比抵抗を伝導した後に、第1p型III族窒化物半導体層に到達する。
【0012】
また、第1p型III族窒化物半導体層のInAlGaN層は非等方的な歪みを内包するので、このInAlGaN層における正孔は、c面上に成長されるInAlGaNに比べて、小さい有効質量を有する。これ故に、第1p型III族窒化物半導体層のInAlGaN層の比抵抗は第2p型III族窒化物半導体層の比抵抗より高いけれども、小さい有効質量の正孔が、InAlGaN層における伝導を担う。したがって、正孔が、第2p型III族窒化物半導体層から第1p型III族窒化物半導体層に到達してそこで伝導するとき、InAlGaN層における動的な電気抵抗が、第1p型III族窒化物半導体層の比抵抗から期待される値より優れたものになる。この結果、このエピタキシャル基板を用いた窒化物半導体レーザの順方向駆動電圧が低減可能になる。
【0013】
本発明の上記側面では、前記第1p型III族窒化物半導体層のバンドギャップエネルギは前記第2p型III族窒化物半導体層のバンドギャップエネルギより大きいことが好ましい。上記側面によれば、p側領域における光閉じ込めを良好にできる。
【0014】
本発明の上記側面に係る発明では、前記第1p型III族窒化物半導体層のバンドギャップは3.47エレクトロンボルト以上であり、3.63エレクトロンボルト以下であることが好ましい。上記側面によれば、第1p型III族窒化物半導体層は第2p型III族窒化物半導体層より活性層に近く、上記のバンドギャップ値は、GaN系発光素子に良好な光閉じ込めを可能にする。
【0015】
本発明の上記側面に係る発明では、前記p型クラッド領域の厚さは300nm以上であり、1000nm以下であり、前記第1及び第2p型III族窒化物半導体層は、それぞれ、厚さd1及びd2を有し、前記第2p型III族窒化物半導体層の厚さd2は、0.2≦d2/(d1+d2)≦0.6を満たすことが好ましい。
【0016】
上記の側面によれば、第2p型III族窒化物半導体層の厚さが上記範囲の値を有するとき、第2p型III族窒化物半導体層が、残りの厚みを有する第1p型III族窒化物半導体層と一緒になって、良好な光閉じ込め及び低い駆動電圧を提供できる。例えば、上記範囲の厚さを有する第2p型III族窒化物半導体層はその低比抵抗により、また上記範囲の残りの厚さを有する第1p型III族窒化物半導体層はその低い有効質量により、駆動電圧の低減に役立つ。上記の範囲内の厚さをそれぞれ有する第1及び第2p型III族窒化物半導体層は、電極と良好な接触を成すために必要なコンタクト層の厚さより厚い。
【0017】
本発明の上記側面に係る発明では、前記第1及び第2p型III族窒化物半導体層にはマグネシウム(Mg)が添加されており、前記第1p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度は前記第2p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度より小さいことが好ましい。
【0018】
上記の側面によれば、活性層に近い第1p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度が第2p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度より小さいので、ドーパントの光吸収に起因する吸収ロスの増大およびドーパントのイオン散乱に起因する移動度の低減を抑制できる。
【0019】
本発明の上記側面に係る発明では、前記第1p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度は8×1017cm−3以上であることができる。マグネシウム濃度がこの範囲であるとき、第1p型III族窒化物半導体層の比抵抗が低くなる。また、前記第1p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度は2×1019cm−3以下であることができる。マグネシウム濃度がこの範囲を超えるとき、ドーパントの光吸収に起因する吸収ロスが、しきい値電流の増大へ顕著に影響する。また、ドーパントのイオン散乱による移動度の低減が顕著になる。
【0020】
本発明の上記側面に係る発明では、前記支持基体の前記主面と前記基準軸との成す角度は、10度以上80度以下又は100度以上170度以下であることが好ましい。上記側面によれば、支持基体又は基板の主面の傾斜がこの角度範囲であるとき、正孔の有効質量が十分に小さくなり、第1及び第2p型III族窒化物半導体層を含むp型クラッド領域の効果が有効に発現する。
【0021】
本発明の上記側面に係る発明では、前記支持基体の前記主面と前記基準軸との成す角度は、63度以上80度以下又は100度以上117度以下であることが好ましい。また、このとき、前記窒化ガリウム系半導体のc軸は、該c軸から前記窒化ガリウム系半導体のm軸への方向に傾斜することが好ましい。上記側面によれば、支持基体又は基板の主面の傾斜がこの角度範囲であるとき、InAlGaN層の成長のための下地の半極性面は、該InAlGaN成長におけるインジウム取り込みに優れる。優れたIn取り込みのおかげで、良好な結晶性のInAlGaNを成長でき、良好な電気伝導のInAlGaN層を2層クラッド領域に提供することを容易にする。
【0022】
本発明の上記側面に係る発明は、前記p型クラッド領域に接合を成すように設けられたp型コンタクト領域と、前記p型コンタクト領域に接合を成すように設けられた電極とを更に備えることができる。前記p型コンタクト領域の厚さは300nm未満であり、前記p型クラッド領域のバンドギャップエネルギは前記p型コンタクト領域のバンドギャップエネルギ以上であることができる。上記側面によれば、低比抵抗の第2p型III族窒化物半導体層に、バンドギャップエネルギが小さくアクセプタの活性化エネルギが小さいp型コンタクト領域から正孔が供給されて、駆動電圧の低減に役立つ。
【0023】
本発明の上記側面に係る発明は、前記p型クラッド領域に接合を成すように設けられたp型コンタクト領域と、前記p型コンタクト領域に接合を成すように設けられた電極とを更に備えることができる。前記p型コンタクト領域の厚さは300nm未満であり、前記p型クラッド領域のp型ドーパント濃度は前記p型コンタクト領域のp型ドーパント濃度より低いことができる。上記側面によれば、低比抵抗の第2p型III族窒化物半導体層に、p型コンタクト領域から正孔が供給されて、駆動電圧の低減に役立つ。また、電極の接触抵抗を低くすることができる。
【0024】
本発明の上記側面に係る発明では、前記第2p型III族窒化物半導体層は、歪みを内包するInAlGaN層及び歪みを内包するAlGaN層のいずれか一方であることが好ましい。
【0025】
上記側面によれば、第2p型III族窒化物半導体層がAlGaN層を含むとき、このAlGaN層は、InAlGaN層に接合を成しており、また非等方的な歪みを内包する。この歪みにより、第2p型III族窒化物半導体層のAlGaN層における正孔の有効質量が小さくできる。これ故に、第1p型III族窒化物半導体層への正孔の流入を容易にできる。
【0026】
また、上記側面によれば、第2p型III族窒化物半導体層がInAlGaN層を含むとき、このInAlGaN層は、下地のInAlGaN層に接合を成しており、また非等方的な歪みを内包する。この歪みにより、第2p型III族窒化物半導体層のInAlGaN層における正孔の有効質量が小さくできる。また、第1及び第2p型III族窒化物半導体層間の格子整合と独立して、所望のバンドギャップを第2p型III族窒化物半導体層に提供できる。
【0027】
本発明の上記側面に係る発明では、前記第2p型III族窒化物半導体層はGaN層からなることができる。上記側面によれば、GaNによる低い比抵抗とInAlGaN層による小さい有効質量との技術的寄与を得ることができる。
【0028】
本発明の上記側面に係る発明では、前記活性層は、480nm以上550nm以下の光を発生するように設けられることが好ましい。上記側面によれば、上記の波長範囲において良好な光閉じ込め及び低い駆動電圧を提供できる。
【0029】
本発明の上記側面に係る発明では、前記c軸は、該c軸から前記窒化ガリウム系半導体のm軸への方向に傾斜し、前記活性層はInGaN層を含むことが好ましい。上記側面によれば、活性層の発光において、低しきい値のレーザ発振を可能にするバンド間遷移が選択される。
【0030】
本発明の上記側面に係る発明は、前記活性層と前記支持基体との間に設けられたn側InGaN光ガイド層と、前記活性層と前記p型クラッド層との間に設けられたp側InGaN光ガイド層とを更に備えることができる。前記n側InGaN光ガイド層の厚さは、前記p側InGaN光ガイド層の厚さより大きいことが好ましい。
【0031】
上記側面によれば、n側InGaN光ガイド層の厚さをp側InGaN光ガイド層の厚さより大きくするので、活性層を含む光導波路を伝搬する光の電界分布のピークがn型領域に寄り、低駆動電圧のためにp型クラッド領域の屈折率が、光閉じ込めに所望の値に比べて僅かに高くなるときでも、光導波路全体として良好な光閉じ込めを発光素子に提供できる。
【0032】
本発明の上記側面に係る発明は、前記活性層と前記支持基体との間に設けられたn側InGaN光ガイド層と、前記活性層と前記p型クラッド層との間に設けられたp側InGaN光ガイド層とを更に備えることができる。前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成は、前記p側InGaN光ガイド層のインジウム組成より大きいことが好ましい。
【0033】
上記側面によれば、n側InGaN光ガイド層のインジウム組成をp側InGaN光ガイド層のインジウム組成より大きくするので、活性層を含む光導波路を伝搬する光の電界分布のピークがn型領域に寄り、低駆動電圧のためにp型クラッド領域の屈折率が、光閉じ込めに所望の値に比べて僅かに高くなるときでも、光導波路全体として良好な光閉じ込めを発光素子に提供できる。
【0034】
本発明の上記側面に係る発明は、前記活性層と前記支持基体との間に設けられたn側InGaN光ガイド層と、前記活性層と前記p型クラッド層との間に設けられたp側InGaN光ガイド層とを更に備えることができる。前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成は0.04以上であることが好ましい。
【0035】
上記側面によれば、n側及びp側InGaN光ガイド層のインジウム組成が共に0.04以上であるので、これらInGaN光ガイド層の屈折率を高くできる。したがって、光導波路全体として良好な光閉じ込めを発光素子に提供できる。
【0036】
本発明の上記側面に係る発明は、前記活性層と前記支持基体との間に設けられたn側InGaN光ガイド層と、前記活性層と前記p型クラッド領域との間に設けられたp側InGaN光ガイド層とを更に備えることができる。前記n側InGaN光ガイド層の厚さと前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成との積は、前記p側InGaN光ガイド層の厚さと前記p側InGaN光ガイド層とのインジウム組成の積より大きく、前記n側InGaN光ガイド層の厚さと前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成の積は2以上10以下であり、ここで、前記n側InGaN光ガイド層の厚さの単位はnmで表され、前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成はIII族構成元素に対するモル比で表される。
【0037】
上記側面によれば、n側InGaN光ガイド層の厚さとインジウム組成との積をp側InGaN光ガイド層の厚さとインジウム組成との積より大きくするので、活性層を含む光導波路を伝搬する光の電界分布のピークがn型領域に寄り、低駆動電圧のためにp型クラッド領域の屈折率が、光閉じ込めに所望の値に比べて僅かに高くなるときでも、光導波路全体として良好な光閉じ込めを発光素子に提供できる。
【0038】
本発明の上記側面に係る発明では、前記支持基体はGaN基板であり、前記GaN基板のc軸の格子定数D1(GaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D1(GaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D1(GaN)nとを有し、前記InAlGaN層におけるc軸の格子定数D1(InAlGaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D1(InAlGaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D1(InAlGaN)nとを有し、前記InAlGaN層における格子不整合度R1pは、(D1(InAlGaN)p−D1(GaN)p)/D1(GaN)pにより規定され、前記格子不整合度R1pは、−0.15%以上+0.2%以下である。
【0039】
上記側面によれば、大きなバンドギャップを有する第1p型III族窒化物半導体層にミスフィット転位が入らない。格子整合に係る2つの結晶軸のうちc軸に係る格子定数を格子整合させることを意図しており、もう片方の軸(a軸又はm軸)は歪んでいる。この非等方的な歪みによって上記有効質量低減の効果を発現させる。
【0040】
本発明の上記側面に係る発明では、前記支持基体はGaN基板であり、前記c軸は、前記窒化ガリウム系半導体のa軸及びm軸のいずれか一方の結晶軸に傾斜しており、前記GaN基板のc軸の格子定数D1(GaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D1(GaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D1(GaN)nとを有し、前記InAlGaN層におけるc軸の格子定数D1(InAlGaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D1(InAlGaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D1(InAlGaN)nとを有し、前記InAlGaN層における格子不整合度R1pは、(D1(InAlGaN)p−D1(GaN)p)/D1(GaN)pにより規定され、前記格子不整合度R1pは、−0.15%以上0%以下であり、前記a軸及びm軸のいずれか他方の結晶軸に関して、前記InAlGaN層における格子不整合度R2pは、(D2(InAlGaN)p−D2(GaN)p)/D2(GaN)pにより規定され、前記格子不整合度R2pは、0%以上0.2%以下を満たし、前記D2(InAlGaN)pは前記D1(InAlGaN)pに直交し、前記D2(GaN)pは前記D1(GaN)pに直交する。
【0041】
上記側面によれば、格子整合に係る2つの結晶軸のうちどちらか一方の結晶軸に格子整合させるのではない。つまり、2つの結晶軸とも、小さいある程度の範囲で歪んでいる。大きいバンドギャップのInAlGaNでは、結晶軸の片方に関する格子整合を行うとき、もう片方の格子不整合度が大きくなり、第1p型III族窒化物半導体層のInAlGaNが緩和する可能性がある。このようなInAlGaNを用いるとき、両結晶軸とも格子整合しないが、InAlGaNに格子不整合度を低い組成を提供することが、緩和を避けるために有効である。両軸に関する歪みによって、上記有効質量低減が提供できる。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、光閉じ込め性の低下を縮小しながら駆動電圧の低減を可能にする窒化物半導体レーザが提供される。また、本発明の別の側面によれば、この窒化物半導体レーザのためのエピタキシャル基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザの構造を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、p型クラッド領域における比抵抗、バンドギャップEg及びp型ドーパント濃度の関係を示す図面である。
【図3】図3は、p型クラッド領域における第1及び第2p型III族窒化物半導体層の可能な構造を示す図面である。
【図4】図4は、実施例1において作製されたIII族窒化物半導体レーザの構造を概略的に示す図面である。
【図5】図5は、実施例1におけるIII族窒化物半導体レーザを作製する工程フローを示す図面である。
【図6】図6は、実施例1の半導体レーザLD1と半導体レーザLC1との駆動特性(I−Vカーブ)を示す図面である。
【図7】図7は、実施例2において作製されたIII族窒化物半導体レーザの構造を概略的に示す図面である。
【図8】図8は、実施例3において作製されたIII族窒化物半導体レーザの構造を概略的に示す図面である。
【図9】図9は、実施例4において作製されたIII族窒化物半導体レーザの特性に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の窒化物半導体レーザ、エピタキシャル基板、並びに窒化物半導体レーザ及びエピタキシャル基板を製造する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0045】
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物半導体レーザの構造を概略的に示す図面である。III族窒化物半導体レーザ11は、利得ガイド型の構造を有するけれども、本発明の実施の形態は、利得ガイド型の構造に限定されるものではなく、例えばリッジ構造を有することもできる。III族窒化物半導体レーザ11は、支持基体17及び半導体領域19を含む。III族窒化物半導体レーザ11のためのエピタキシャル基板EPは、支持基体17に替えて基板を含むと共に、半導体領域19に替えて半導体積層を有する。この半導体積層の層構造は半導体領域19の層構造と同じである。エピタキシャル基板EPは電極を含まない。
【0046】
引き続いて、III族窒化物半導体レーザ11を説明するが、この記述はIII族窒化物半導体レーザ11のためのエピタキシャル基板EPにも適用される。支持基体17は導電性を有しており、この導電性は、例えば当該半導体レーザ11に電流を流すために必要な程度の値である。支持基体17は主面17a及び裏面17bを有する。主面17aは窒化ガリウム系半導体からなり、例えば六方晶系GaNからなる。好適な実施例では、支持基体17は六方晶系III族窒化物半導体からなり、更には窒化ガリウム系半導体からなることができる。主面17aは、窒化ガリウム系半導体のc軸方向(c軸ベクトルVCの方向)に延在する基準軸に直交する基準面(例えば、代表的なc面Sc)に対して傾斜する。また、主面17aは半極性を示す。半導体領域19は、支持基体17の主面17a上に設けられている。
【0047】
半導体領域19は、発光層13と、第1のクラッド領域21と、第2のクラッド領域23とを含む。発光層13は活性層25を含むことができ、活性層25は主面17a上に設けられる。第1のクラッド領域(n型クラッド領域)21及び第2のクラッド領域(p型クラッド領域)23は主面17a上に設けられる。活性層25は支持基体17と第2のクラッド領域23との間に設けられる。第1のクラッド領域21は、一又は複数の窒化ガリウム系半導体層からなり、例えばn型GaN、n型AlGaN、n型InAlGaN等からなる。第2のクラッド領域23は、第1p型III族窒化物半導体層27及び第2p型III族窒化物半導体層29を含む。第1p型III族窒化物半導体層27はInAlGaN層からなり、このInAlGaN層は非等方的な歪みを内包する。第2p型III族窒化物半導体層29は、該InAlGaN層の材料と異なる半導体からなり、例えば構成元素は同じで組成が異なる材料、や構成元素数の異なる材料からなることができる。第2のクラッド領域23では、第2p型III族窒化物半導体層29はp型窒化ガリウム系半導体からなり、例えばp型GaN、p型AlGaN、p型InAlGaN等からなる。第1p型III族窒化物半導体層27は第2p型III族窒化物半導体層29と活性層25との間に設けられる。第2p型III族窒化物半導体層29の比抵抗ρ29は第1p型III族窒化物半導体層27の比抵抗ρ27より低い。
【0048】
この窒化物半導体レーザ11によれば、第2クラッド領域23は、互いに異なる材料の第1及び第2p型III族窒化物半導体層27、29を含むので、第1及び第2p型III族窒化物半導体層27、29の各々は組成傾斜ではなく、第2クラッド領域23は光閉じ込め性を優れたものにできる。また、この第1p型III族窒化物半導体層27は第2p型III族窒化物半導体層29と活性層25との間に設けられている。正孔は、第1p型III族窒化物半導体層27より低い比抵抗の第2p型III族窒化物半導体層29を伝導した後に、第1p型III族窒化物半導体層27に到達する。
【0049】
また、第1p型III族窒化物半導体層27のInAlGaN層は非等方的な歪みを内包するので、このInAlGaN層における正孔は、c面上に成長されるInAlGaNに比べて、小さい有効質量を有する。これ故に、第1p型III族窒化物半導体層27のInAlGaN層の比抵抗は第2p型III族窒化物半導体層29の比抵抗より高いけれども、InAlGaN層における伝導を、小さい有効質量の正孔が担うので、正孔が、第1p型III族窒化物半導体層27に到達してそこで伝導するとき、InAlGaN層における動的な電気抵抗が、第1p型III族窒化物半導体層27の比抵抗から期待される値より優れたものになる。この結果、順方向駆動電圧が低減される。
【0050】
したがって、本実施の形態によれば、光閉じ込め性の低下を縮小しながら駆動電圧の低減を可能にする窒化物半導体レーザ11が提供され、またこの窒化物半導体レーザ11のためのエピタキシャル基板EPが提供される。
【0051】
図2は、p型クラッド領域における2つのクラッド層における歪み、比抵抗、バンドギャップEg及びp型ドーパント濃度の関係を示す図面である。図2の(a)部を参照すると、歪み及び比抵抗の関係が示される。2層クラッド層の比抵抗及び有効質量に起因する電気的伝導の技術的寄与を得ながら、2層クラッド層の採用により光閉じ込めも確保している。
【0052】
III族窒化物半導体レーザ素子11では、半導体領域19は、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する第1端面28a及び第2端面28bを含む。また、電極15は半導体領域19上に設けられ、電極41は支持基体17の裏面17b上に設けられる。
【0053】
第1のクラッド層21、第2のクラッド層23及び活性層25は、半極性の主面17aの法線軸NXに沿って配列されている。活性層25は、第1のクラッド層21と第2のクラッド層23との間に設けられる。活性層25は窒化ガリウム系半導体層を含み、この窒化ガリウム系半導体層は例えば井戸層25aである。活性層25は窒化ガリウム系半導体からなる障壁層25bを含み、井戸層25a及び障壁層25bは交互に配列されている。井戸層25aは、例えばInGaN等からなり、障壁層25bは例えばGaN、InGaN等からなる。活性層25は、半極性面の利用により、波長430nm以上570nm以下の光を発生するように設けられた量子井戸構造を含むことができる。また、半導体レーザ素子11は、波長480nm以上550nm以下の光の発生に好適である。上記の波長範囲において良好な光閉じ込め及び低い駆動電圧を提供できる。
【0054】
図1を参照すると、直交座標系S及び結晶座標系CRが描かれている。法線軸NXは、直交座標系SのZ軸の方向に向く。主面17aは、直交座標系SのX軸及びY軸により規定される所定の平面に平行に延在する。また、図1には、代表的なc面Scが描かれている。図1に示される実施例では、支持基体17のIII族窒化物半導体のc軸は、III族窒化物半導体のm軸の方向に法線軸NXに対して有限な角度ALPHAで傾斜している。
【0055】
III族窒化物半導体レーザ11は、絶縁膜31及びp型コンタクト領域33を更に備える。p型コンタクト領域33は、p型クラッド領域23上に設けられる。p型クラッド領域23のバンドギャップエネルギはp型コンタクト領域33のバンドギャップエネルギ以上である。また、第2p型III族窒化物半導体層29のp型ドーパント濃度はp型コンタクト領域33のp型ドーパント濃度より低い。絶縁膜31は半導体領域19(p型コンタクト領域33)の表面19aを覆っている。絶縁膜31は開口31aを有し、開口31aは半導体領域19の表面19aと上記のm−n面との交差線LIXの方向に延在し、例えばストライプ形状を成す。電極15は、開口31aを介して半導体領域19の表面19a(例えばp型コンタクト領域33)に接触を成しており、上記の交差線LIXの方向に延在する。III族窒化物半導体レーザ11では、レーザ導波路は、第1のクラッド層21、第2のクラッド層23及び活性層25を含み、また上記の交差線LIXの方向に延在する。
【0056】
III族窒化物半導体レーザ11では、第1端面28a及び第2端面28bは、六方晶系III族窒化物半導体のm軸及び法線軸NXによって規定されるm−n面に交差する。III族窒化物半導体レーザ素子11のレーザ共振器は第1及び第2端面28a、28bを含み、第1及び第2端面28a、28bの一方から他方に、レーザ導波路が延在している。第1及び第2の端面28a、28bは、c面、m面又はa面といったこれまでのへき開面とは異なる。このIII族窒化物半導体レーザ11によれば、レーザ共振器を構成する第1及び第2の端面28a、28bがm−n面に交差する。レーザ導波路は、m−n面と半極性面17aとの交差線の方向に延在する。III族窒化物半導体レーザ11は、低しきい値電流を可能にするレーザ共振器を有し、活性層25の発光において、低しきい値のレーザ発振を可能にするバンド間遷移が選択される。
【0057】
また、図1に示されるように、第1及び第2の端面28a、28bのそれぞれに誘電体多層膜43a、43bが設けられることができる。端面28a、28bにも端面コートを適用できる。端面コートにより反射率を調整できる。
【0058】
III族窒化物半導体レーザ素子11は、n側光ガイド領域35及びp側光ガイド領域37を含む。n側光ガイド領域35は一又は複数のn側光ガイド層を含むことができる。p側光ガイド領域37は一又は複数のp側光ガイド層を含むことができる。n側光ガイド領域35は、例えばn側第1光ガイド層35a及びn側第2光ガイド層35bを含み、n側光ガイド領域35は例えばGaN、InGaN等からなる。p側光ガイド領域37はp側第1光ガイド層37a及びp側第2光ガイド層37bを含み、p側光ガイド領域37は例えばGaN、InGaN等からなる。電子ブロック層39は、例えばp側第1光ガイド層37aとp側第2光ガイド層37bとの間に設けられる。
【0059】
第2のクラッド領域23を説明する。図1の(b)部を参照すると、第1p型III族窒化物半導体層27は単一のバンドギャップエネルギE1を有し、第2p型III族窒化物半導体層29が単一のバンドギャップエネルギE2を有する。バンドギャップエネルギE1はバンドギャップエネルギE2より大きいことが好ましい。第1p型III族窒化物半導体層27の屈折率n1は第2p型III族窒化物半導体層29の屈折率n2より小さいので、p側領域における光閉じ込めを良好にできる。
【0060】
第1及び第2p型III族窒化物半導体層27、29には、p型ドーパント、例えばマグネシウム(Mg)が添加されており、第1p型III族窒化物半導体層27のマグネシウム濃度は第2p型III族窒化物半導体層29のマグネシウム濃度より小さいことが好ましい。第1p型III族窒化物半導体層27のマグネシウム濃度が、第2p型III族窒化物半導体層29のマグネシウム濃度より小さいので、ドーパントの光吸収に起因する吸収ロスの増大及びドーパントイオンのイオン散乱に起因する移動度の低減を抑制できる。
【0061】
第1p型III族窒化物半導体層27のバンドギャップエネルギE1を第2p型III族窒化物半導体層29のバンドギャップエネルギE2より大きくして、光閉じ込め性を向上させる。また、第1p型III族窒化物半導体層27のマグネシウム濃度を第2p型III族窒化物半導体層29のマグネシウム濃度より小さくして、第1p型III族窒化物半導体層27における吸収ロスの増大と移動度の低下を小さくする。
【0062】
例えば、第1p型III族窒化物半導体層27のバンドギャップは3.47エレクトロンボルト以上であり、3.63エレクトロンボルト以下であることが好ましい。バンドギャップEgの範囲は波長342nm〜357nmに相当する。この範囲であれば、波長480nm〜550nmの光を閉じ込めるために好適な屈折率が得られる。この素子では、第1p型III族窒化物半導体層27が第2p型III族窒化物半導体層29より活性層25に近く、上記のバンドギャップ値はGaN系発光素子に良好な光閉じ込めを可能にする。
【0063】
また、例えば第1p型III族窒化物半導体層27のマグネシウム濃度は8×1017cm−3以上であることができる。マグネシウム濃度がこの範囲であるとき、第1p型III族窒化物半導体層27の比抵抗が低くなる。また、第1p型III族窒化物半導体層27のマグネシウム濃度は2×1019cm−3以下であることができる。マグネシウム濃度がこの範囲であるとき、イオン散乱による移動度低下が大きくなく、また吸収ロスによるしきい値電流の増大へ顕著に影響することはない。
【0064】
第2p型III族窒化物半導体層29のマグネシウム濃度は7×1018cm−3以上であることができる。マグネシウム濃度がこの範囲であるとき、自由ホール濃度を高くすることができる。また、第1p型III族窒化物半導体層27のマグネシウム濃度は5×1019cm−3以下であることができる。マグネシウム濃度がこの範囲を超えるとき、結晶性が悪化しやすくなり光閉じ込めに十分な膜厚を有するクラッド層を結晶性良く成長することが困難になる。
【0065】
図2の(b)部を参照すると、歪み、比抵抗及びバンドギャップEgの関係が示される。2層クラッド層の採用により比抵抗及び有効質量に起因する電気的伝導の技術的寄与を得ながら、バンドギャップEg(屈折率)のプロファイルに基づき光閉じ込めも確保している。
【0066】
図2の(c)部を参照すると、p型クラッド領域における歪み、比抵抗、バンドギャップEg及びp型ドーパント濃度の関係が示されている。2層クラッド層の採用により比抵抗及び有効質量に起因する電気的伝導の技術的寄与を得ながら、バンドギャップEg(屈折率)のプロファイルに基づき光閉じ込めを確保し、さらにMgドーパント濃度プロファイルに基づきしきい値電流の増加を抑え、なおかつ駆動電圧の低減を図っている。
【0067】
第1p型III族窒化物半導体層27に高バンドギャップ及び低ドーパント濃度を付与する。これらに加えて、第1p型III族窒化物半導体層27に低い比抵抗を付与することは難しい。なぜなら、第1p型III族窒化物半導体層27の正孔密度を高めるとき、p型ドーパント濃度を増加して比抵抗を下げることは、p型ドーパントイオンによるキャリア散乱を増加させる。
【0068】
第1p型III族窒化物半導体層27の比抵抗が高めであるけれども、圧縮歪みを内包するInAlGaN層の移動度が高いので、動的に正孔濃度を高めることによって動的な電気抵抗を下げることができる。正孔濃度を高めることは、レーザ駆動時には、低い比抵抗の第2p型III族窒化物半導体層29から正孔を第1p型III族窒化物半導体層27に流すことによって可能である。レーザ駆動時においては、第1p型III族窒化物半導体層27の正孔濃度が高まり、電気抵抗が下がる。
【0069】
以上説明したように、第1p型III族窒化物半導体層27のp型ドーパント濃度を第2p型III族窒化物半導体層29のp型ドーパント濃度より低くして、p型ドーパントによるイオン散乱を低減することになる。これは、移動度の向上のために有効である。このp型ドーパント濃度低減は、また、第1p型III族窒化物半導体層27の光吸収を低減している。
【0070】
図3は、p型クラッド領域における第1及び第2p型III族窒化物半導体層の可能な構造を示す図面である。半極性面上に設けられたInAlGaNは、緩和せずに非等方的な歪みを内包するとき、この歪みにより価電子帯の縮退が解けて、正孔の有効質量が小さくなると考えられる。
【0071】
図3の(a)部に示されるように、第2p型III族窒化物半導体層29がGaNからなるとき、第2p型III族窒化物半導体層29の比抵抗を小さくすることは三元系や四元系窒化物半導体に比べて容易である。つまり、GaNによる低い比抵抗とInAlGaN層による小さい有効質量との技術的寄与を得ることができる。
【0072】
図3の(b)部に示されるように、第2p型III族窒化物半導体層29がAlGaNからなり、このAlGaNが非等方的な歪みを内包する。これにより、第2p型III族窒化物半導体層29から第1p型III族窒化物半導体層27への正孔流入を容易にする。
【0073】
第2p型III族窒化物半導体層29が、歪みを内包するAlGaN層を含むとき、このAlGaN層は、下地のInAlGaN層27に接合を成しており、また非等方的な歪みを内包する。この歪みにより、第2p型III族窒化物半導体層29のAlGaN層における正孔の有効質量が小さくできる。これ故に、第1p型III族窒化物半導体層27への正孔の流入を容易にできる。
【0074】
図3の(c)部に示されるように、第2p型III族窒化物半導体層29がInAlGaNからなり、下地のInAlGaN層27に接合を成しており、このInAlGaNが非等方的な歪みを内包するとき、第2p型III族窒化物半導体層29における正孔の有効質量も小さくなる。この有効質量低減は、第2p型III族窒化物半導体層29から第1p型III族窒化物半導体層27への正孔流入を容易にする点で有効である。つまり、InAlGaN層の低い比抵抗とInAlGaN層による小さい有効質量との技術的寄与を得ることができる。
【0075】
四元系窒化物半導体では、三元系窒化物半導体に比べて、バンドギャップ及び格子定数を互いに独立して決定できる。これは、格子不整の調整に役立つ。バンドギャップEgを大きくするためには、InAlGaNのAl組成及びIn組成を高くすることが必要であり、第1p型III族窒化物半導体層27のInAlGaNでは、格子整合が複雑である。半極性面上に設けられたInAlGaNは、c軸の傾斜方向(以下、「オフ方向」と記す)とこのオフ方向に垂直な方向との両方を同時にGaNに対して格子整合させることはできない。なぜなら、格子定数の比c/aがGaN、AlN、InNのそれぞれで異なるからである。InAlGaNの緩和により、有効質量の低減効果を得られなくなる。
【0076】
第1及び第2p型III族窒化物半導体層27、29が共にInAlGaNからなる構造は、他の2つの構造に比べて、光閉じ込め及び駆動電圧の低減の点で好適である。
【0077】
図3の(a)部、(b)部及び(c)部に示されるp型クラッド領域において、第1及び第2p型III族窒化物半導体層27、29の界面には、緩和を引き起こす程の実質的なミスフィット転位は形成されていない。また、第2クラッド領域23は、発光層13上に成長されるけれども、第2クラッド領域23と発光層13との界面には、緩和を引き起こす程の実質的なミスフィット転位は形成されていない。
【0078】
支持基体17上の半導体領域19は、支持基体17の主面17aの法線軸NXの方向に配列された複数のIII属窒化物半導体層(21、13、23、33)を含む。半導体領域19内には、これらのIII族窒化物半導体層が形成する複数の接合(界面)があり、これらの界面には緩和を引き起こす程のミスフィット転位は形成されていない。故に、支持基体17の主面17aが例えばGaNからなるとき、半導体領域19のIII族窒化物半導体層の各々は、その格子定数とGaNの格子定数との違いに応じた歪みを内包する。
【0079】
既に説明したように、半極性面上に設けられたInAlGaNは、格子定数の比c/aがGaN、AlN、InNのそれぞれで異なるからであるので、c軸の傾斜方向(つまり、オフ方向)とこのオフ方向に垂直な方向との両方を同時にGaNに対して格子整合させることはできない。この点について、GaN基板上のInAlGaNを例にして説明する。
【0080】
(格子整合の形態1)
支持基体17がGaN基板であるとき、このGaN基板のc軸の格子定数D1(GaN)は、支持基体17の主面17aに平行な成分D1(GaN)pと支持基体17の主面17aに垂直な成分D1(GaN)nとを有する。第1p型III族窒化物半導体層27のInAlGaN層におけるc軸の格子定数D1(InAlGaN)は、支持基体17の主面17aに平行な成分D1(InAlGaN)pと支持基体17の主面17aに垂直な成分D1(InAlGaN)nとを有する。InAlGaN層における格子不整合度R1pを(D1(InAlGaN)p−D1(GaN)p)/D1(GaN)pとして規定するとき、この格子不整合度R1pは、−0.15%以上+0.2%以下である。
【0081】
この構造では、大きなバンドギャップを有する第1p型III族窒化物半導体層27にミスフィット転位が入らない。上記の条件は、格子整合に係る2つの結晶軸のうちc軸に係る格子定数を格子整合させることを意図しており、第1p型III族窒化物半導体層27は、もう片方の軸(a軸又はm軸)は歪んでいる。この非等方的な歪みによって上記有効質量の低減効果を達成できる。
【0082】
(格子整合の形態2)
支持基体17がGaN基板であるとき、このGaN基板のc軸に直交する結晶軸(a軸又はm軸)の格子定数D2(GaN)は、支持基体17の主面17aに平行な成分D2(GaN)pと支持基体17の主面17aに垂直な成分D2(GaN)nとを有する。第1p型III族窒化物半導体層27のInAlGaN層のc軸に直交する結晶軸の格子定数D2(InAlGaN)は、支持基体17の主面17aに平行な成分D2(InAlGaN)pと支持基体17の主面17aに垂直な成分D2(InAlGaN)nとを有する。InAlGaN層における格子不整合度R2pを(D2(InAlGaN)p−D2(GaN)p)/D2(GaN)pとして規定するとき、この格子不整合度R2pは、−0.15%以上+0.2%以下である。なお、オフ方向が正確にa軸あるいはm軸であるとき、D2(GaN)nとD2(InAlGaN)nはゼロである。オフ方向がわずかにa軸あるいはm軸からずれたとき、D2(GaN)nとD2(InAlGaN)nはゼロに近い非常に小さい値である。
【0083】
この構造では、大きなバンドギャップを有する第1p型III族窒化物半導体層27にミスフィット転位が入らない。格子整合に係る2つの結晶軸のうちc軸に直交する格子定数を格子整合させることを意図しており、第1p型III族窒化物半導体層27は、もうc軸方向には歪んでいる。この非等方的な歪みによって上記有効質量の低減効果を達成できる。
【0084】
(格子整合の形態3)
支持基体17はGaN基板であり、このGaN基板のc軸は、GaN基板のa軸及びm軸のいずれか一方の結晶軸(ここでは、m軸)に傾斜している。GaN基板のc軸の格子定数D1(GaN)は、支持基体17の主面17aに平行な成分D1(GaN)pと支持基体17の主面17aに垂直な成分D1(GaN)nとを有する。第1p型III族窒化物半導体層27のInAlGaN層におけるc軸の格子定数D1(InAlGaN)は、支持基体17の主面17aに平行な成分D1(InAlGaN)pと支持基体17の主面17aに垂直な成分D1(InAlGaN)nとを有する。このInAlGaN層における格子不整合度R1pは、(D1(InAlGaN)p−D1(GaN)p)/D1(GaN)pとして規定される。この格子不整合度R1pは、−0.15%以上0%以下である。
c軸がm軸の方向に傾斜している形態ではa軸に関して、第1p型III族窒化物半導体層27のInAlGaN層における格子不整合度R2pは、(D2(InAlGaN)p−D2(GaN)p)/D2(GaN)pとして規定される。この格子不整合度R2pは0%以上0.2%以下を満たす。ここで、D2(InAlGaN)pはD1(InAlGaN)pに直交し、D2(GaN)pはD1(GaN)pに直交する。
【0085】
この構造では、格子整合に係る2つの結晶軸のうちどちらか一方の結晶軸に格子整合させるのではない。つまり、2つの結晶軸とも、小さいある程度の範囲で歪んでいる。大きいバンドギャップを有する第1p型III族窒化物半導体層27のInAlGaNでは、結晶軸の片方に関する格子整合を行うとき、もう片方の格子不整合度が大きくなり、第2p型III族窒化物半導体層29のInAlGaNが緩和する可能性がある。このようなInAlGaNを用いるとき、両結晶軸とも格子整合しないが、InAlGaNに格子不整合度を低くする組成を提供することが、緩和を避けるために有効である。両軸に関する非等方的な歪みによって、上記有効質量低減が提供できる。
【0086】
クラッド領域は内側の光導波路に光を閉じ込めるように働く。第2クラッド領域23(p型クラッド領域)が2つの半導体層からなるとき、このp型クラッド領域の一方の半導体層のみでは十分な光閉じ込めが提供されないけれども、第2クラッド領域23の2つの半導体層の総厚が光閉じ込めに十分なほど厚く、これら2層によって十分な光閉じ込めが提供される。
【0087】
例えば、第2クラッド領域23の厚さd23は300nm以上であり、1000nm以下であることが好ましい。第2クラッド領域23の厚さd23が300nm以上であるとき、発光層13への光閉じ込めが良好になり、p型コンタクト領域33及び電極15への光の漏れが抑制される。また、第2クラッド領域23の厚さd23が1000nm以下であるとき、直列抵抗成分増加に伴う駆動電圧の増加が抑制される。
【0088】
第1及び第2p型III族窒化物半導体層27、29は、それぞれ、厚さd1及びd2を有する。第2p型III族窒化物半導体層29の厚さd2は、0.2≦d2/(d1+d2)≦0.6を満たすことが好ましい。第2p型III族窒化物半導体層29の厚さd2が上記範囲の値を有するとき、第2p型III族窒化物半導体層29が、残りの厚みd1を有する第1p型III族窒化物半導体層27と一緒になって、良好な光閉じ込め及び低い駆動電圧を提供できる。例えば、上記範囲の厚さd2を有する第2p型III族窒化物半導体層29はその低い比抵抗により、また上記範囲の残りの厚さを有する第1p型III族窒化物半導体層27はその低い有効質量により、駆動電圧の低減に役立つ。上記の範囲内の厚さをそれぞれ有する第1及び第2p型III族窒化物半導体層27、29は、電極15と良好な接触を成すために必要なコンタクト領域33の厚さより大きい。
【0089】
第1p型III族窒化物半導体層27の厚さは、その材料に基づく臨界膜厚より小さい。これにより、第1p型III族窒化物半導体層27が緩和することを避けることができる。また、第2p型III族窒化物半導体層29の厚さは、その材料に基づく臨界膜厚より小さい。これにより、第2p型III族窒化物半導体層29が緩和することを避けることができる。
【0090】
既に説明したように、支持基体17(エピタキシャル基板EPの基板)の主面17aは半極性を示す。主面(エピタキシャル基板EPの基板主面)17aと基準軸Cxとの成す角度ALPHAは10度以上80度以下又は100度以上170度以下であることが好ましい。支持基体17の主面17aの傾斜がこの角度範囲であるとき、正孔の有効質量が十分に小さくなり、第1及び第2p型III族窒化物半導体層27、29を含むp型クラッド領域23の効果が有効に発現する。
【0091】
また、主面17aと基準軸Cxとの成す角度ALPHAは63度以上80度以下又は100度以上117度以下であることが好ましい。主面17aの傾斜がこの角度範囲であるとき、InAlGaN層の成長のための下地の半極性面(つまり、主面17a)は、該InAlGaN成長におけるインジウム取り込みに優れる。優れたIn取り込みのおかげで、良好な結晶性のInAlGaNを成長でき、良好な電気伝導のInAlGaN層を2層クラッド構造に提供することを容易にする。このとき、c軸は、該c軸から窒化ガリウム系半導体のm軸への方向に傾斜していることが好ましい。
【0092】
再び図1を参照すると、p型コンタクト領域33は、第2クラッド領域23に接合を成すように設けられ、電極15がp型コンタクト領域33に接合を成すように設けられる。p型コンタクト領域33の厚さは例えば300nm未満であり、p型コンタクト領域33の厚さは例えば10nm以上であることができる。
【0093】
第2クラッド領域23では、第2p型III族窒化物半導体層29のバンドギャップエネルギE2はp型コンタクト領域33のバンドギャップエネルギEc以上であることが好ましい。この構造によれば、バンドギャップエネルギが小さくアクセプタの活性化エネルギが小さいp型コンタクト領域33から正孔が、低い比抵抗の第2p型III族窒化物半導体層29に供給されて、駆動電圧の低減に役立つ。
【0094】
また、第2クラッド領域23では、p型コンタクト領域33のp型ドーパント濃度は第2クラッド領域23のp型ドーパント濃度より高いことが好ましい。この構造によれば、低い比抵抗の第2p型III族窒化物半導体層29に、高いドーパント濃度のp型コンタクト領域33から正孔が供給されて、駆動電圧の低減に役立つ。また、電極の接触抵抗を低くすることができる。
【0095】
(実施例1)
図4は、実施例1において作製されたIII族窒化物半導体レーザの構造を概略的に示す図面である。このIII族窒化物半導体レーザは、図5に示される工程フローに従って作製される。
【0096】
工程S101では、半極性主面を有するIII族窒化物基板を準備する。本実施例では、m軸方向に75度の角度で傾斜した半極性主面を有するGaN基板51を準備する。この半極性主面の面方位は、(20−21)面に対応する。このGaN基板51の半極性主面上に、発振波長520nm帯で動作するLD構造LD1を有する半導体領域を成長する。
【0097】
工程S102では、成長炉にGaN基板51を配置した後に、GaN基板51の前処理(サーマルクリーニング)を行う。この前処理は、アンモニア及び水素を含む雰囲気中、摂氏1050度の熱処理温度、10分間の処理時間の条件で行われる。
【0098】
この前処理の後に、工程S103では、摂氏1050度の成長温度でGaN基板51上にn型GaN層53といった窒化ガリウム系半導体層を成長する。n型GaN層53の厚さは例えば500nmである。工程S104では、この窒化ガリウム系半導体層上にn型クラッド領域を成長する。n型クラッド領域は、例えば摂氏840度の成長温度で成長されたInAlGaN層55を含む。このn型クラッド領域の厚さは例えば2μmである。n型InAlGaN層55は非等方的な歪みを内包する。工程S105では、n型クラッド領域上のn側光ガイド層を成長する。本実施例では、n側光ガイド層は、例えば摂氏840度の成長温度で成長されたn型InGaN層57を含む。n型InGaN層57の厚さは、例え200nmである。n型InGaN層57は圧縮歪みを内包する。
【0099】
工程S106では、n側光ガイド層上に活性層59を成長する。活性層59は、障壁層及び井戸層を含む。本実施例では、障壁層は、例えば摂氏840度の成長温度で成長されたGaN層59aを含み、このGaN層59aの厚さは例えば15nmである。井戸層は、例えば摂氏790度の成長温度で成長されたIn0.3Ga0.7N層59bを含み、InGaN層59bの厚さは例えば3nmである。このInGaN層59bは圧縮歪みを内包する。
【0100】
工程S107では、活性層59上のp側光ガイド層を成長する。本実施例では、p側光ガイド層は、例えば摂氏840度の成長温度で成長されたInGaN層61を含む。p側InGaN層61の厚さは、例え200nmである。p側InGaN層61は圧縮歪みを内包する。
【0101】
工程S108では、p側光ガイド層上に電子ブロック層を成長する。本実施例では、電子ブロック層は、例えば摂氏1000度の成長温度で成長されたp型Al0.12Ga0.88N層63を含む。Al0.12Ga0.88N層63の厚さは、例え20nmである。Al0.12Ga0.88N層63は引っ張り歪みを内包する。
【0102】
工程S109では、電子ブロック層上にp型クラッド領域65を成長する。p型クラッド領域65の成長では、工程S110において、まず、電子ブロック層上に第1クラッド層を成長する。第1クラッド層はp型In0.03Al0.14Ga0.83N層67である。このp型In0.03Al0.14Ga0.83N層67は、例えば摂氏840度の成長温度で成長される。このp型In0.03Al0.14Ga0.83N層67の厚さは例えば200nmである。p型In0.03Al0.14Ga0.83N層67は、電子ブロック層に接合を成し、また非等方的な歪みを内包する。
【0103】
p型クラッド領域の成長では、次いで、工程S111において、第1クラッド層上に第2クラッド層をコヒーレントに成長する。第2クラッド層はp型In0.02Al0.07Ga0.91N層69を成長する。このp型In0.02Al0.07Ga0.91N層69は、例えば摂氏840度の成長温度で成長される。このp型In0.02Al0.07Ga0.91N層69の厚さは例えば200nmである。p型In0.02Al0.07Ga0.91N層69は、第1クラッド層に接合を成し、また非等方的な歪みを内包する。
【0104】
本実施例においては、第1クラッド層のIn0.03Al0.14Ga0.83Nの比抵抗は例えば50Ω・cmであり、第2クラッド層のIn0.02Al0.07Ga0.91Nの比抵抗は例えば8Ω・cmである。第1クラッド層のMg濃度は例えば6×1018cm−3であり、第2クラッド層のMg濃度は例えば1×1019cm−3である。第1クラッド層のバンドギャップエネルギは例えば3.54エレクトロンボルト(eV)であり、第2クラッド層の比抵抗は例えば3.48eVである。1eVは、1.602×10−19ジュールで換算される。第1クラッド層のInAlGaNは、a軸方向に関してGaNにほぼ格子整合しており、c軸の傾斜方向に関してGaNに対して−0.24%の格子不整合度を有する。第2クラッド層のInAlGaNは、a軸方向に関してGaNに対して+0.05%の格子不整合度を有しており、c軸の傾斜方向に関して−0.08%の格子不整合度を有する。
【0105】
工程S112では、p型クラッド領域65上にp型コンタクト層71を成長する。本実施例では、p型コンタクト層71は、例えば摂氏1000度の成長温度で成長されたGaN層を含む。p型コンタクト層71の厚さは、例え50nmである。これらの工程により、エピタキシャル基板EP1が作製される。
【0106】
工程S113では、p型コンタクト層71上に絶縁膜を成膜し、またこの絶縁膜に、レーザ導波路の方向に延在するストライプ窓をウエットエッチングにより形成して、保護絶縁層73を形成する。ストライプ窓の幅は例えば10μmである。p型コンタクト層71及び保護絶縁層73上にアノード電極75を形成すると共にGaN基板の裏面にカソード電極を形成する。アノード電極75はストライプ窓を介してp型コンタクト層71に接触を成す。アノード電極75は、Ni/Auからなるオーミック電極とTi/Auからなるパッド電極とを含み、これらは蒸着により形成される。カソード電極77は、Ti/Alからなるオーミック電極とTi/Auからなるパッド電極とを含み、これらは蒸着により形成される。これらの工程により、エピタキシャル基板EP1から基板生産物が作製される。
【0107】
工程S114では、基板生産物からレーザバーを作製する。レーザバーの共振器長は600μmである。レーザバーのレーザ端面上には、誘電体多層膜を成膜する。誘電体多層膜は例えばSiO/TiOの多層膜からなる。
【0108】
上記のLD構造の作製とは別に、単一のp型クラッド層(p型In0.03Al0.14Ga0.83N層、厚さ400nm)からなるpクラッド領域を含むLD構造LC1を作製する。LD構造LC1は、p型クラッド領域の構造を除いて、LD構造LD1と同様の構造を有する。
【0109】
図6は、実施例1の半導体レーザLD1と半導体レーザLC1との駆動特性(I−Vカーブ)を示す図面である。実施例1の半導体レーザLD1のI−Vカーブは、半導体レーザLC1のI−Vカーブの下側にあり、これは半導体レーザLD1の駆動電圧が低減されたことを示している。半導体レーザLD1の駆動電圧Vf(駆動電流600mAでの電圧)は例えば7.3ボルトであり、半導体レーザLC1の駆動電圧Vfは例えば8.4ボルトである。実施例1の半導体レーザLD1と半導体レーザLC1とのしきい値電流は、共に600mA〜700mA程度であり、両者に有意差は認められない。図6を参照すると、実施例1の半導体レーザLD1の2層クラッド層の構造は、光閉じ込めが悪化することなく、駆動電圧(Vf)を低減できることを示している。
【0110】
実施例1のエピタキシャル基板を断面TEM法により観察するとき、半導体レーザLD1の電子ブロック層と第1クラッド層の界面、第2クラッド層とコンタクト層の界面、第1及び第2クラッド層の界面のいずれにもミスフィット転位は認められない。したがって、電子ブロック層並びに第1及び第2クラッド層のいずれも歪みを内包している。
【0111】
発明者らの知見によれば、クラッド層に用いる半導体の比抵抗として50Ω・cmの値は比較的大きい値である。しかしながら、レーザ動作の際の駆動電圧(Vf)が低減される。これは、非等方的な歪みを内包するIn0.03Al0.14Ga0.83Nの有効質量が半極性面においては低減されて、In0.03Al0.14Ga0.83Nに流入した正孔が効率的に伝導しているためと考えられる。また、このIn0.03Al0.14Ga0.83Nを良好な結晶品質で成長できることは、均一なインジウム取り込みの半極性面が提供する技術的寄与であり、c面では得られない。
【0112】
この半極性面上における非等方的な歪みを内包するInAlGaN層と、この層の比抵抗より小さい比抵抗の窒化ガリウム系半導体層とを含むp型クラッド領域において、低比抵抗による伝導と高移動度による伝導との組み合わせにより、低駆動電圧への技術的寄与が顕著に引き出されたものと考えられる。
【0113】
(実施例2)
図7は、実施例2において作製されたIII族窒化物半導体レーザの構造を概略的に示す図面である。実施例2における半導体レーザLD2は、半導体レーザLD1における第2クラッド層のInAlGaN層69に替えて、p型GaN層68を成長する。第2クラッド層のp型GaN層68の比抵抗は例えば3Ω・cmであり、p型GaN層68のMg濃度は例えば1×1019cm−3である。半導体レーザLD2の駆動電圧Vfは半導体レーザLD1の駆動電圧Vfより0.8ボルト低減される。半導体レーザLD2のしきい値電流は800mA〜900mA程度である。
【0114】
(実施例3)
図8は、実施例3において作製されたIII族窒化物半導体レーザの構造を概略的に示す図面である。図8の(a)部、(b)部及び(c)部を参照すると、p型クラッド領域は、発光層に接合を成すp型InAlGaN層と、このp型InAlGaN層に接合を成すGaN層とを含む。
【0115】
第2クラッド層にp型GaN層を用いた実施例2における光ガイド層から該光ガイド層の構造を変更することによって、しきい値電流の低減の効果を得ることができる。図8の(a)部に示されるように、p側及びn側の光ガイド層のInGaNにおけるインジウム組成を0.03より大きな値、例えば0.04以上にすることが好ましい。この実施例によれば、n側及びp側InGaN光ガイド層のインジウム組成が共に上記の値以上であるので、これらInGaN光ガイド層の屈折率を高くできる。したがって、光導波路全体として良好な光閉じ込めを発光素子に提供できる。
【0116】
別の実施例では、図8の(b)部に示されるように、n側InGaN光ガイド層のインジウム組成はp側InGaN光ガイド層のインジウム組成より大きいことが好ましい。なお、ここでn側InGaN光ガイド層の厚さとインジウム組成との積は8、p側InGaN光ガイド層の厚さとインジウム組成との積は4であり、n側InGaN光ガイド層の方が値が大きい。この実施例によれば、n側InGaN光ガイド層のインジウム組成をp側InGaN光ガイド層のインジウム組成より大きくするので、活性層を含む光導波路を伝搬する光の電界分布のピークがn型領域に寄り、低駆動電圧のためにp型クラッド領域の屈折率が、光閉じ込めに所望の値に比べて僅かに高くなるときでも、光導波路全体として良好な光閉じ込めを発光素子に提供できる。この構造では、p型クラッド領域の屈折率が多少高い場合でも十分な光閉じ込めを実現できる。光ガイド層のインジウム組成を大きくする構造に比べて、非対称なインジウム組成をp側及びn側の光ガイド層に用いることは、設計値からのズレに関する許容範囲を広くできる。
【0117】
更なる別の実施例では、図8の(c)部に示されるように、n側InGaN光ガイド層の厚さは、p側InGaN光ガイド層の厚さより大きいことが好ましい。なお、ここでn側InGaN光ガイド層の厚さとインジウム組成との積は7.5、p側InGaN光ガイド層の厚さとインジウム組成との積は4.5であり、n側InGaN光ガイド層の方が値が大きい。この実施例によれば、n側InGaN光ガイド層の厚さをp側InGaN光ガイド層の厚さより大きくするので、活性層を含む光導波路を伝搬する光の電界分布のピークがn型領域に寄り、低駆動電圧のためにp型クラッド領域の屈折率が、光閉じ込めに所望の値に比べて僅かに高くなるときでも、光導波路全体として良好な光閉じ込めを発光素子に提供できる。
【0118】
実施例3については、第2クラッド層がGaN層であることを例にして説明しているけれども、第2クラッド層がAlGaNやInAlGaNにおいても同様な技術的寄与が得られる。
【0119】
実施例3の図8の(c)部の構造をベースに、p型クラッド領域のp型InAlGaN層とp型GaN層の膜厚比を変化させたLDを作製する。図9は、実施例4において作製されたIII族窒化物半導体レーザの特性に示す図面である。図9の(a)部はしきい値電流Ithの膜厚比d2/(d1+d2)依存性を示す。図9の(a)部から、膜厚比の増加に従い、しきい値電流Ithが上昇していることが分かる。この理由として、膜厚比の増加によって光閉じ込めが悪化したこと、およびMg濃度の高いp型GaN層の割合が増え吸収ロスが増加したことが原因と考えられる。膜厚比が0.6以下であれば、膜厚比ゼロに対するしきい値電流Ithの上昇率は1割以下に抑制することができる。また、図9の(b)部は駆動電圧Vf(駆動電流600mA)の膜厚比d2/(d1+d2)依存性を示す。図9の(b)部から、膜厚比の増加に従いVfが低減していることが分かる。この効果はp型GaN層をわずかに含ませただけでも現れており、膜厚比が0.2以上であれば顕著なVf低減効果が得られる。これは、小さい有効質量を有するp型InAlGaN層に正孔を注入するためのp型GaN層を組み合わせた効果と考えられる。
【0120】
本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、光閉じ込め性の低下を縮小しながら駆動電圧の低減を可能にする窒化物半導体レーザが提供される。また、本発明の実施の形態によれば、この窒化物半導体レーザのためのエピタキシャル基板が提供される。
【符号の説明】
【0122】
11…III族窒化物半導体レーザ素子、13…発光層、15…電極、17…支持基体、17a…支持基体主面、17b…支持基体裏面、19…半導体領域、19a…半導体領域表面、21…第1のクラッド層、23…第2のクラッド層、25…活性層、25a…井戸層、25b…障壁層、28a、28b…端面、ALPHA…角度、Sc…c面、NX…法線軸、31…絶縁膜、31a…絶縁膜開口、35…n側光ガイド領域、37…p側光ガイド領域、39…電子ブロック層、41…電極、43a、43b…誘電体多層膜、51…基板、51a…半極性主面、53…バッファ層、55…n型クラッド領域、57…InGaN層、59…活性層、61…InGaN層、63…電子ブロック層。65…p型クラッド領域、67…p型In0.03Al0.14Ga0.83N層、69…p型In0.02Al0.07Ga0.91N層69、71…p型コンタクト層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体レーザであって、
窒化ガリウム系半導体からなる主面を有する導電性の支持基体と、
前記主面の上に設けられた活性層と、
前記主面の上に設けられたp型クラッド領域と、
を備え、
前記主面は、前記窒化ガリウム系半導体のc軸方向に延在する基準軸に直交する基準面に対して傾斜し、
前記活性層は前記支持基体と前記p型クラッド領域との間に設けられ、
前記p型クラッド領域は、第1p型III族窒化物半導体層及び第2p型III族窒化物半導体層を含み、
前記第1p型III族窒化物半導体層はInAlGaN層からなり、
前記第2p型III族窒化物半導体層は該InAlGaN層の材料と異なる半導体からなり、
前記InAlGaN層は、非等方的な歪みを内包し、
前記第1p型III族窒化物半導体層は前記第2p型III族窒化物半導体層と前記活性層との間に設けられ、
前記第2p型III族窒化物半導体層の比抵抗は、前記第1p型III族窒化物半導体層の比抵抗より低い、窒化物半導体レーザ。
【請求項2】
前記第1p型III族窒化物半導体層のバンドギャップエネルギは前記第2p型III族窒化物半導体層のバンドギャップエネルギより大きい、請求項1に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項3】
前記第1p型III族窒化物半導体層のバンドギャップは3.47エレクトロンボルト以上であり、3.63エレクトロンボルト以下である、請求項1又は請求項2に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項4】
前記第1及び第2p型III族窒化物半導体層にはマグネシウム(Mg)が添加されており、
前記第1p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度は前記第2p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度より小さい、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項5】
前記第1p型III族窒化物半導体層のマグネシウム濃度は8×1017cm−3以上であり、2×1019cm−3以下である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項6】
前記p型クラッド領域の厚さは300nm以上であり、1000nm以下であり、
前記第1及び第2p型III族窒化物半導体層は、それぞれ、厚さd1及びd2を有し、前記第2p型III族窒化物半導体層の厚さは、0.2≦d2/(d1+d2)≦0.6を満たす、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項7】
前記支持基体の前記主面と前記基準軸との成す角度は、10度以上80度以下又は100度以上170度以下である、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項8】
前記支持基体の前記主面と前記基準軸との成す角度は、63度以上80度以下又は100度以上117度以下である、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項9】
前記p型クラッド領域の上に設けられたp型コンタクト領域と、
前記p型コンタクト領域に接合を成すように設けられた電極と、
を更に備え、
前記p型コンタクト領域の厚さは300nm未満であり、
前記p型クラッド領域のバンドギャップエネルギは前記p型コンタクト領域のバンドギャップエネルギ以上である、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項10】
前記p型クラッド領域の上に設けられたp型コンタクト領域と、
前記p型コンタクト領域に接合を成すように設けられた電極と、
を更に備え、
前記第2p型III族窒化物半導体層のp型ドーパント濃度は前記p型コンタクト領域のp型ドーパント濃度より低い、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項11】
前記第2p型III族窒化物半導体層は、歪みを内包するInAlGaN層及び歪みを内包するAlGaN層のいずれか一方である、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項12】
前記第2p型III族窒化物半導体層はGaN層からなる、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項13】
前記活性層は、480nm以上550nm以下の光を発生するように設けられる、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項14】
前記活性層と前記支持基体との間に設けられたn側InGaN光ガイド層と、
前記活性層と前記p型クラッド領域との間に設けられたp側InGaN光ガイド層と、
を更に備え、
前記n側InGaN光ガイド層の厚さは、前記p側InGaN光ガイド層の厚さより大きい、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項15】
前記活性層と前記支持基体との間に設けられたn側InGaN光ガイド層と、
前記活性層と前記p型クラッド領域との間に設けられたp側InGaN光ガイド層と、
を更に備え、
前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成は、前記p側InGaN光ガイド層のインジウム組成より大きい、請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項16】
前記活性層と前記支持基体との間に設けられたn側InGaN光ガイド層と、
前記活性層と前記p型クラッド領域との間に設けられたp側InGaN光ガイド層と、
を更に備え、
前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成は0.04以上である、請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項17】
前記活性層と前記支持基体との間に設けられたn側InGaN光ガイド層と、
前記活性層と前記p型クラッド領域との間に設けられたp側InGaN光ガイド層と、
を更に備え、
前記n側InGaN光ガイド層の厚さと前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成との積は、前記p側InGaN光ガイド層の厚さと前記p側InGaN光ガイド層とのインジウム組成の積より大きく、
前記n側InGaN光ガイド層の厚さと前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成の積は2以上10以下であり、ここで、前記n側InGaN光ガイド層の厚さの単位はnmで表され、前記n側InGaN光ガイド層のインジウム組成はIII族構成元素に対するモル比で表される、請求項1〜請求項16のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項18】
前記c軸は、前記窒化ガリウム系半導体のa軸及びm軸のいずれか一方の結晶軸に傾斜しており、
前記支持基体はGaN基板であり、前記GaN基板のc軸の格子定数D1(GaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D1(GaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D1(GaN)nとを有し、
前記InAlGaN層におけるc軸の格子定数D1(InAlGaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D1(InAlGaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D1(InAlGaN)nとを有し、
前記InAlGaN層における格子不整合度R1pは、(D1(InAlGaN)p−D1(GaN)p)/D1(GaN)pにより規定され、
前記格子不整合度R1pは、−0.15%以上+0.2%以下である、請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項19】
前記c軸は、前記窒化ガリウム系半導体のa軸及びm軸のいずれか一方の結晶軸に傾斜しており、
前記支持基体はGaN基板であり、前記GaN基板のc軸に直交する結晶軸の格子定数D2(GaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D2(GaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D2(GaN)nとを有し、
前記InAlGaN層のc軸に直交する結晶軸の格子定数D2(InAlGaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D2(InAlGaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D2(InAlGaN)nとを有し、
前記InAlGaN層における格子不整合度R2pは、(D2(InAlGaN)p−D2(GaN)p)/D2(GaN)pにより規定され、
前記格子不整合度R2pは、−0.15%以上+0.2%以下である、請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項20】
前記c軸は、前記窒化ガリウム系半導体のa軸及びm軸のいずれか一方の結晶軸に傾斜しており、
前記支持基体はGaN基板であり、
前記GaN基板のc軸の格子定数D1(GaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D1(GaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D1(GaN)nとを有し、
前記InAlGaN層におけるc軸の格子定数D1(InAlGaN)は、前記支持基体の前記主面に平行な成分D1(InAlGaN)pと前記支持基体の前記主面に垂直な成分D1(InAlGaN)nとを有し、
前記InAlGaN層における格子不整合度R1pは、(D1(InAlGaN)p−D1(GaN)p)/D1(GaN)pにより規定され、
前記格子不整合度R1pは、−0.15%以上0%以下であり、
前記a軸及びm軸のいずれか他方の結晶軸に関して、前記InAlGaN層における格子不整合度R2pは、(D2(InAlGaN)p−D2(GaN)p)/D2(GaN)pにより規定され、
前記格子不整合度R2pは、0%以上0.2%以下を満たし、
前記D2(InAlGaN)pは前記D1(InAlGaN)pに直交し、
前記D2(GaN)pは前記D1(GaN)pに直交する、請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載された窒化物半導体レーザ。
【請求項21】
窒化物半導体レーザのためのエピタキシャル基板であって、
窒化ガリウム系半導体からなる主面を有する基板と、
前記主面の上に設けられた活性層と、
前記主面の上に設けられたp型クラッド領域と、
を備え、
前記主面は、前記窒化ガリウム系半導体のc軸方向に延在する基準軸に直交する基準面に対して傾斜し、
前記活性層は前記支持基体と前記p型クラッド領域との間に設けられ、
前記p型クラッド領域は、第1p型III族窒化物半導体層及び第2p型III族窒化物半導体層を含み、
前記第1p型III族窒化物半導体層はInAlGaN層からなり、
前記第2p型III族窒化物半導体層は該InAlGaN層の材料と異なる半導体からなり、
前記InAlGaN層は、非等方的な歪みを内包し、
前記第1p型III族窒化物半導体層は前記第2p型III族窒化物半導体層と前記活性層との間に設けられ、
前記第2p型III族窒化物半導体層の比抵抗は、前記第1p型III族窒化物半導体層の比抵抗より低い、エピタキシャル基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−227492(P2012−227492A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96443(P2011−96443)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】