窒化物系化合物半導体装置
【課題】ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる窒化物系化合物半導体装置を提供する。
【解決手段】III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層2と、半導体層2上に配置されたソース電極3及びドレイン電極4と、半導体層2上にソース電極3とドレイン電極4との間に配置された絶縁膜6と、絶縁膜6に設けられた開口部で半導体層2に接する有機半導体層7と、開口部の有機半導体層7上に配置されたゲート電極5とを備える。
【解決手段】III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層2と、半導体層2上に配置されたソース電極3及びドレイン電極4と、半導体層2上にソース電極3とドレイン電極4との間に配置された絶縁膜6と、絶縁膜6に設けられた開口部で半導体層2に接する有機半導体層7と、開口部の有機半導体層7上に配置されたゲート電極5とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に係り、特に高耐圧が要求される窒化物系化合物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物系化合物半導体は絶縁破壊電圧が高い。このため、例えばエピタキシャル成長等によって形成された窒化物系化合物半導体からなる結晶半導体の主面上にソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等を配置した電界効果トランジスタ(FET)として、窒化物系化合物半導体装置が高耐圧パワーデバイス等に応用されている。これらの窒化物系化合物半導体装置では、高耐圧が必要とされるデバイスほど、ゲート電極−ドレイン電極間等の電極間を長くする必要がある。III族窒化物系化合物半導体の例としては、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)等がある。代表的なIII族窒化物系化合物半導体は、AlxMyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される。ここで、Mはインジウム(In)或いはボロン(B)等である。
【0003】
しかし、窒化物系化合物半導体装置では、ゲート電極とドレイン電極が逆バイアスされた状態(FETがオフの状態)において、電流コラプス現象のために逆バイアス印加後のオン抵抗が増大するという問題がある。例えばFETでは、ゲート電極とドレイン電極間で結晶表面にトラップされる電子等のキャリアにより、高電圧印加直後のオン状態においてソース電極−ドレイン電極間に流れる電流が減少してしまう。
【0004】
一般的に、電流コラプス現象を抑制して耐圧を改善するために以下のような対策が採られている(例えば、特許文献1参照。):
(1)酸化膜、窒化膜等で結晶表面をパッシベーションコーティングする。
【0005】
(2)フィールドプレート構造を採用する。
【0006】
(3)上記(1)と(2)を組み合わせる。
【0007】
(4)格子欠陥の少ない結晶表面を実現する。
【特許文献1】特開2004−214471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えばガリウム砒素(GaAs)を使用したFETの場合、高耐圧化に伴って問題化してくる周波数分散の対策として、上記対策のいずれかが採用される場合がある。しかしながら、より高耐圧のデバイスが要求されてゲート電極とドレイン電極間がより長くなる場合、パッシベーションコーティングしても表面準位の影響が残りやすい。また、フィールドプレート構造を採用した場合には、フィールドプレートとして用いる金属膜の端部に電界集中する問題が生じる。したがって、上記の耐圧改善策だけでは大きな効果は期待できない。
【0009】
特に高耐圧が期待されている窒化ガリウム(GaN)系のワイドギャップ化合物半導体材料は、シリコン(Si)やGaAsに比べて結晶欠陥が多いため、電流コラプス現象がより顕著になるという問題がある。更に、ショットキーゲート構造のGaN系化合物半導体装置は、ゲートリーク電流が大きいという問題がある。
【0010】
上記問題点を鑑み、本発明は、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる窒化物系化合物半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、(イ)III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層と、(ロ)半導体層上に配置されたソース電極及びドレイン電極と、(ハ)ソース電極とドレイン電極との間に配置された有機半導体層と、(ニ)有機半導体層上に配置されたゲート電極とを備える窒化物系化合物半導体装置が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、(イ)III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層と、(ロ)半導体層上に配置されたソース電極及びドレイン電極と、(ハ)半導体層上にソース電極とドレイン電極との間に配置された絶縁膜と、(ニ)絶縁膜に設けられた開口部で半導体層に接する有機半導体層と、(ホ)開口部の有機半導体層上に配置されたゲート電極とを備える窒化物系化合物半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる窒化物系化合物半導体装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
又、以下に示す第1乃至第3の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置は、図1に示すように、III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層2と、半導体層2上に配置されたソース電極3及びドレイン電極4と、半導体層2上にソース電極3とドレイン電極4との間に配置された絶縁膜6と、絶縁膜6に設けられた開口部で半導体層2に接する有機半導体層7と、開口部の有機半導体層7上に配置されたゲート電極5とを備える。
【0017】
図1に示すように、有機半導体層7のソース端とゲート電極5のソース端は一致するように配置され、有機半導体層7のドレイン端がゲート電極5のドレイン端よりドレイン電極4側に位置する。ここで、「ソース端」とは、ゲート電極5及び有機半導体層7それぞれのソース電極3側の端部である。また、「ドレイン端」とは、ゲート電極5及び有機半導体層7それぞれのドレイン電極4側の端部である。
【0018】
図1に示すように、半導体層2は基板1上に配置される。基板1は、サファイア基板、シリコンカーバイト(SiC)基板、シリコン(Si)基板等が採用可能である。例えば、基板1に大口径化が容易なシリコン基板を採用することにより、図1に示す窒化物系化合物半導体装置の製造コストを低減できる。
【0019】
半導体層2は、それぞれが窒化物系化合物半導体からなるバッファ層21、キャリア走行層22及びキャリア供給層23がこの順に積層された構造である。図1に示すように、キャリア走行層22とキャリア供給層23とのヘテロ接合面近傍のキャリア走行層22に、電流通路(チャネル)としての2次元キャリアガス層221が形成される。以下では、キャリア供給層23がキャリア走行層22に供給するキャリアが電子である場合について例示的に説明する。つまり、2次元キャリアガス層221は2次元電子ガス層(2DEG層)であり、窒化物系化合物半導体装置がオンしたときにソース電極3から2DEG層221を介してドレイン電極4に電子が供給される。
【0020】
バッファ層21は、周知の有機金属気相成長(MOCVD)法等のエピタキシャル成長法で形成できる。図1では、バッファ層21を1つの層として図示しているが、バッファ層21を複数の層で形成してもよい。例えば、バッファ層21を窒化アルミニウム(AlN)からなる第1のサブレイヤー(第1の副層)と窒化ガリウム(GaN)からなる第2のサブレイヤー(第2の副層)とを交互に積層した多層構造バッファとしてもよい。また、図1に示した窒化物系化合物半導体装置が高電子移動度トランジスタ(HEMT)として動作する場合、バッファ層21はHEMTの動作に直接には関係しないため、バッファ層21を省いてよい。また、バッファ層21の材料として、AlN、GaN以外のIII族化合物半導体を採用してもよい。また、基板1とバッファ層21とを組み合わせた構造を基板とみなすこともできる。
【0021】
バッファ層21上に配置されたキャリア走行層22は、例えば不純物が添加されていないアンドープGaNを1〜3μm程度の厚さに、MOCVD法等でエピタキシャル成長させて形成する。
【0022】
キャリア走行層22上に配置されたキャリア供給層23は、キャリア走行層22よりもバンドギャップが大きく、且つキャリア走行層22と格子定数の異なる窒化物半導体からなる。キャリア供給層23は、AlxMyGa1-x-yN(0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y≦1、Mはインジウム(In)或いはボロン(B)等)で表される。組成比xは0.2〜0.4が好ましく、より好ましくは0.3である。キャリア供給層23としてはアンドープのAlxGa1-xNが採用可能であるが、n型不純物を添加したAlxGa1-xNからなる窒化物半導体も採用可能である。
【0023】
キャリア供給層23は、MOCVD法等によるエピタキシャル成長によってキャリア走行層22上に形成される。キャリア供給層23とキャリア走行層22は格子定数が異なるため、格子歪みによるピエゾ分極が生じる。このピエゾ分極とキャリア供給層23の結晶が有する自発分極によりヘテロ接合付近に高密度のキャリアが生じ、2DEG層221が形成される。キャリア供給層23の膜厚は、キャリア走行層22とキャリア供給層23との間のヘテロ接合により2DEG層221が生じるように設定される。具体的には、キャリア供給層23の膜厚は、キャリア走行層22よりも薄く、例えば5〜50nm程度、好ましくは5〜30nm程度である。
【0024】
なお、キャリア供給層23としてn型不純物を添加したAlxGa1-xNを採用し、このキャリア供給層23とGaNからなるキャリア走行層22との間にアンドープAlNからなるスペーサ層を配置し、且つソース電極3及びドレイン電極4とキャリア供給層23との間に例えばn型GaNからなるコンタクト層を配置してもよい。スペーサ層は、キャリア供給層23の不純物散乱の影響を抑制する効果がある。コンタクト層は、ソース電極3及びドレイン電極4と半導体層2との接触抵抗の低減に寄与する。
【0025】
ソース電極3及びドレイン電極4は、キャリア供給層23との間でオーミックコンタクト(低抵抗接触)を形成している。ソース電極3及びドレイン電極4は、例えばチタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層体等として形成可能である。ゲート電極5は、例えばニッケル(Ni)と金(Au)の積層体からなる金属膜等が採用可能である。
【0026】
絶縁膜6は、例えば200〜500nmの厚みの酸化シリコン(SiO2)膜、窒化シリコン(SiN)膜、若しくはこれらの膜を積層した構造が採用可能である。絶縁膜6によって半導体層2の表面をパッシベーションコーティングすることにより表面準位が低減され、窒化物系化合物半導体装置が受ける電流コラプス現象の影響を緩和することができる。特に、絶縁膜6はキャリア供給層23よりも制御しやすく、キャリア供給層23より厚い酸化シリコンを圧縮応力が生じる成膜条件にて形成すると、キャリア供給層23に応力が伝わり、キャリア供給層23とキャリア走行層22との間のピエゾ効果が高まり、絶縁膜6直下の2DEG層221の濃度を高め、オン抵抗を下げることができる。つまり、低オン抵抗を保ちながら後述する電流コラプス現象を抑制できる。
【0027】
有機半導体層7は、半導体と同様の特性を示す有機材料からなる。ただし、有機半導体層7は、エピタキシャル成長等の結晶成長によって形成される結晶半導体に比べて移動度が十分に小さくなるように形成される。具体的には、例えばp型の有機半導体層7の移動度を10-2〜10cm2/Vs、例えば5cm2/Vs程度にすることにより、通常の結晶半導体、例えば2DEG層221の移動度1500cm2/Vs以上に比べて有機半導体層7の移動度が十分に小さく、有機半導体層7を実質的に絶縁膜とみなせる。したがって、図1に示す窒化物系化合物半導体装置は、半導体層2上に有機半導体層7を介してゲート電極5が配置されたMIS構造を有する。
【0028】
図1に示した例では、有機半導体層7が絶縁膜6上に形成され、有機半導体層7上にゲート電極5が形成されているが、絶縁膜6はなくてもよいし、また、有機半導体層7及びゲート電極5が、絶縁膜6上まで延伸していなくてもよい。つまり、本発明の効果を得るためには、III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層2と、半導体層2上に配置されたソース電極3及びドレイン電極4と、ソース電極3とドレイン電極4との間に配置された有機半導体層7と、有機半導体層7上に配置されたゲート電極とを備える窒化物系化合物半導体装置であってもよい。尚、絶縁膜6上に有機半導体層7を形成すると、キャリア供給層23の上に有機半導体層7を形成する場合に比較して、有機半導体層7の不純物濃度を高めることができる。よって、本発明の効果をより高めることができる。
【0029】
正孔(ホール)をキャリアとして伝導するp型有機半導体としては、ペンタセン系、テトラセン系、アントラセン系の誘電体からなるアセン類、ペリレン、ルプレン、フタロシアニン、オリゴチオフェン等が採用可能である。また、錫(Sn)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)等の金属とフタロシアニンを結合させた有機無機複合金属錯体である金属フタロシアニンも、p型有機半導体として採用可能である。電子をキャリアとして伝導するn型有機半導体としては、C60、C70等のフラーレンや、Cu等の金属フタロシアニン等が採用可能である。
【0030】
有機半導体層7の導電型は、半導体層2と異なる導電型にすることが好ましい。つまり、例えば半導体層2が第1導電型である場合には、有機半導体層7を第2導電型とする。より具体的には、例えば半導体層2が2DEG層221を有するn型である場合は、有機半導体層7はp型にする。n型の半導体層2の表面上にp型の有機半導体層7を配置することにより、有機半導体層7から半導体層2に正孔が常時供給され、半導体層2の表面上にトラップされた電子が供給された正孔と結合して消滅する。
【0031】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、ドレイン電極4とソース電極3間に高電圧を印加した状態でゲート電極5にオフとなる電圧を印加後オンに切り換えた際にオン抵抗が増大する、いわゆる電流コラプス現象が以下のように抑制される。即ち、電流コラプス現象によるオン抵抗の増大は、オフ時にゲート電極5とドレイン電極4の間の半導体層2の表面、特にゲート電極5のドレイン端又は絶縁膜6の開口部近傍にキャリアがトラップされ、トラップされたキャリアによって2DEG層221が部分的に空乏化されることにより生じる。しかし、図1に示した窒化物系化合物半導体装置では、半導体層2の表面にトラップされた第1導電型のキャリアが、有機半導体層7から供給される第2導電型のキャリアにより相殺されて消滅する。その結果、半導体層2の材料の性質や結晶性に関わらず、電流コラプス現象による逆バイアス印加後のオン抵抗の増大を抑制できる。特に第1の実施の形態では有機半導体層7のドレイン端がゲート電極5のドレイン端よりもドレイン電極4側にあり、ゲート電極5のドレイン端における電界集中を抑制し、電流コラプス現象を良好に抑制することができる。
【0032】
更に、図1に示した窒化物系化合物半導体装置は、ゲート電極5と半導体層2との間に、絶縁膜とみなせる有機半導体層7が配置されるため、MIS構造となる。そのため、ゲートリーク電流が低減される。
【0033】
以下に、図2〜図5を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる窒化物系化合物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0034】
(イ)先ず、図2に示すように、基板1上に、MOCVD法等によりバッファ層21、キャリア走行層22及びキャリア供給層23をこの順にエピタキシャル成長させて積層して、半導体層2を形成する。バッファ層21は、例えばAlN層とGaN層を交互に積層した構造である。キャリア走行層22は、例えば膜厚1〜3μmのアンドープGaN膜である。キャリア供給層23は、キャリア走行層22よりもバンドギャップが大きく、且つ格子定数の異なる窒化物半導体からなり、例えばアンドープのAlGaN膜が採用可能である。
【0035】
(ロ)半導体層2上に、ソース電極3及びドレイン電極4となる第1の導電体層を蒸着する。第1の導電体層は、例えばTiとAlの積層構造が採用可能である。次いで、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしたフォトレジスト膜をマスクにして第1の導電体層をウェットエッチングし、図3に示すように、ソース電極3及びドレイン電極4を形成する。そして、例えば500℃、30分間のオーミックアニールにより、半導体層2とソース電極3及びドレイン電極4とをオーミック接触させる。
【0036】
(ハ)次に、キャリア供給層23、ソース電極3及びドレイン電極4上に、例えばSiO2膜、SiN膜、若しくはこれらの膜を積層した絶縁膜6をプラズマ化学気相成長(p−CVD)法等により膜厚200〜500nm程度形成する。そして、絶縁膜6上に塗布したフォトレジスト膜を露光現像して形成したエッチングマスク(図示せず)を用いて、フッ化水素(HF)系のウェットエッチング法等の技術により、ゲート電極5が形成される半導体層2の表面の一部が露出するまで絶縁膜6の一部を選択的にエッチング除去して開口部60を形成する。開口部60の形成と同時にソース電極3及びドレイン電極4上の絶縁膜6をエッチング除去して、図4に示すように、ソース電極3及びドレイン電極4の上面を露出させる。
【0037】
(ニ)次いで、抵抗加熱蒸着法を用いて膜厚30nm程度のp型フタロシアニン等の有機半導体層7を絶縁膜6上に開口部60を埋め込むように形成し、図5の構造断面図を得る。なお、有機半導体層7の形成方法として、ゾルゲル法やスピンオン法等も採用可能である。
【0038】
(ホ)新たなフォトレジスト膜を全面に塗布した後、フォトリソグラフィ技術によってゲート電極5を形成する部分のフォトレジスト膜を除去して有機半導体層7を露出させる。次いで、フォトレジスト膜及び有機半導体層7上に、ゲート電極5となる第2の導電体層をスパッタ法等により形成する。第2の導電体層としては、例えばNiとAuの積層体等が採用可能である。その後、フォトレジスト膜を用いたリフトオフ法により、ゲート電極5を形成する。
【0039】
上記のような本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法によれば、有機半導体層7を半導体層2とゲート電極5間に形成することにより、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる窒化物系化合物半導体装置を提供することができる。
【0040】
<変形例>
図6〜図10に、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置を示す。図6〜図10に示した窒化物系化合物半導体装置は、図1に示した窒化物系化合物半導体装置と有機半導体層7の配置が異なる。その他の構成については、図1に示す実施の形態と同様である。
【0041】
図6に示した窒化物系化合物半導体装置は、有機半導体層7がゲート電極5とドレイン電極4間全体に絶縁膜6上に配置されている例(第1の変形例)である。
【0042】
図7に示した窒化物系化合物半導体装置は、有機半導体層7が、ドレイン端及びソース端がゲート電極5と一致している第1の有機半導体層7a、及び第1の有機半導体層7aと離間してゲート電極5とドレイン電極4間に配置された第2の有機半導体層7bを有する例(第2の変形例)である。つまり、図7に示した窒化物系化合物半導体装置では、ゲート電極5側の半導体層2上方に有機半導体層7が配置されていない。
【0043】
図8に示した窒化物系化合物半導体装置は、有機半導体層7が、ドレイン端及びソース端がゲート電極5と一致している第1の有機半導体層7a、及び第1の有機半導体層7aと離間してゲート電極5とドレイン電極4間に配置された第2の有機半導体層7bを有する例(第3の変形例)である。図8に示した窒化物系化合物半導体装置では、ゲート電極5側及びドレイン電極4側の半導体層2上方に有機半導体層7が配置されていない。
【0044】
図9に示した窒化物系化合物半導体装置は、有機半導体層7が、ゲート電極5とドレイン電極4間のほぼ全面にわたって絶縁膜6上に配置された例(第4の変形例)である。
【0045】
図10に示した窒化物系化合物半導体装置は、ゲート電極5が有機半導体層7上だけでなく、更に有機半導体層7の外側において絶縁膜6上にも延伸している例(第5の変形例)である。つまり、有機半導体層7はゲート電極5直下のみに配置される。
【0046】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置は、図11に示すように、絶縁膜6及び有機半導体層7上に層間絶縁膜10が配置され、ゲート電極5とドレイン電極4間の上方の層間絶縁膜10上にフィールドプレート電極11が配置されていることが、図1と異なる点である。フィールドプレート電極11は、少なくともゲート電極5のドレイン端の上方を含んで配置される。その他の構成については、図1に示す第1の実施の形態と同様である。
【0047】
図11に示す構成において、フィールドプレート電極11に電圧を印加することにより、ゲート電極5のドレイン端に集中するバイアス電界を緩和し、耐圧を向上することができる。通常、ソース電極3−ドレイン電極4間に印加した電圧によるバイアス電界は、ゲート電極5のドレイン端に集中する。図11に示す窒化物系化合物半導体装置によれば、フィールドプレート電極11に電圧を印加することにより、ゲート電極5の端部の空乏層の曲率を制御してバイアス電界を緩和することが可能である。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0048】
図11に示した窒化物系化合物半導体装置の製造方法の例を以下に説明する。
【0049】
(イ)先ず、図2〜図5を参照して説明した製造方法によって得られた図1に示した窒化物系化合物半導体装置上に、例えば化学気相成長(CVD)法等により、層間絶縁膜10を形成する。層間絶縁膜10は、化学的機械研磨(CMP)法等の技術により平坦化される。
【0050】
(ロ)次に、フォトレジスト膜を層間絶縁膜10の上面全体に塗布した後、フォトリソグラフィ技術によってフィールドプレート電極11を形成する部分のフォトレジスト膜を除去して層間絶縁膜10を露出させる。次いで、フォトレジスト膜及び層間絶縁膜10上に、フィールドプレート電極11となる導電体層をスパッタ法等により形成する。その後、フォトレジスト膜を用いたリフトオフ法により、フィールドプレート電極11を形成する。
【0051】
上記の窒化物系化合物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0052】
本発明の第2の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、有機半導体層7を半導体層2とゲート電極5間に形成することにより、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制するとともに、フィールドプレート電極11を配置することよりにゲート電極5の端部に集中するバイアス電界を緩和して、耐圧を向上することができる。
【0053】
なお、本発明の第2の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置においても、図6〜図10に示した第1の実施の形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置と同様に、有機半導体層7の配置を変更した変形例が採用可能であることは勿論である。
【0054】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置は、図12に示すように、ゲート電極5とドレイン電極4間の半導体層2と絶縁膜6間に抵抗性ショットキーフィールドプレート(RESP)20が配置されていることが図1と異なる点である。RESP20は、半導体層2の主面にショットキー接触して配置される。その他の構成については、図1に示す第1の実施の形態と同様である。
【0055】
図12に示した例では、RESP20は、ドレイン電極4に接続し、ゲート電極5とは離間して配置される。RESP20は、リーク電流が流れないように高抵抗であることが好ましく、例えば100MΩ/sq.以上のシート抵抗を有するチタン酸化物、ニッケル酸化物等が採用可能である。また、長さやシート抵抗が互いに異なる複数の層を積層してRESP20を構成してもよい。
【0056】
図12に示した窒化物系化合物半導体装置では、リーク電流が流れない程度にRESP20のシート抵抗が大きければ、半導体層2との接触面と平行にRESP20に沿って電位が緩やかに降下する。その結果、ドレイン電極4とゲート電極5との間に生じる電界集中が緩和され、耐圧を向上することができる。ただし、RESP20のシート抵抗が小さく、RESP20端の電位を十分に低くできない場合には、RESP20にリーク電流が流れてしまい、耐圧が低下する。
【0057】
RESP20は、例えば膜厚5〜20nm程度のTi膜を真空蒸着法等により形成した後、空気中で約300℃、5〜30分間の熱処理によってTi膜を酸化することにより得られる。このとき、RESP20は完全な絶縁膜とみなせる2酸化チタン(TiO2)ではなく、TiO2よりも酸素が少ない所謂酸素プアーなチタン酸化物TiOX(Xは2より小さい数値)となっていると考えられる。
【0058】
以上に説明したように、本発明の第3の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、有機半導体層7を半導体層2とゲート電極5間に形成することにより、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制するとともに、RESP20を配置することよりにドレイン電極4−ゲート電極5間に集中するバイアス電界を緩和して、耐圧を向上することができる。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であるので、重複した記載を省略する。
【0059】
なお、本発明の第3の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置においても、図6〜図10に示した第1の実施の形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置と同様に、有機半導体層7の配置を変更した変形例が採用可能であることは勿論である。また、図13に示すように、RESP20をゲート電極5直下の有機半導体層7と接触させ、ドレイン電極4から離間して配置してもよい。図13に示した構造によっても、ドレイン電極4とゲート電極5間の電界集中を緩和することができる。
【0060】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第3の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0061】
既に述べた第1乃至第3の実施の形態の説明においては、キャリア供給層23が電子を供給したが、キャリア供給層23をp型半導体からなる正孔(ホール)供給層に置き換えることができる。この場合、2DEG層221に対応する領域に2次元キャリアガス層として2次元正孔ガス層が生じる。
【0062】
また、既に述べた第1乃至第3の実施の形態において2DEG層221を有するHEMTを例に示してきたが、MESFETにおいても本発明によってゲート電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる。
【0063】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例(第1の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例(第2の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の変形例(第3の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の変形例(第4の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の変形例(第5の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1…基板
2…半導体層
3…ソース電極
4…ドレイン電極
5…ゲート電極
6…絶縁膜
7、7a、7b…有機半導体層
10…層間絶縁膜
11…フィールドプレート電極
20…抵抗性ショットキーフィールドプレート(RESP)
21…バッファ層
22…キャリア走行層
23…キャリア供給層
60…開口部
221…2次元電子ガス層(2DEG層)
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に係り、特に高耐圧が要求される窒化物系化合物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物系化合物半導体は絶縁破壊電圧が高い。このため、例えばエピタキシャル成長等によって形成された窒化物系化合物半導体からなる結晶半導体の主面上にソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等を配置した電界効果トランジスタ(FET)として、窒化物系化合物半導体装置が高耐圧パワーデバイス等に応用されている。これらの窒化物系化合物半導体装置では、高耐圧が必要とされるデバイスほど、ゲート電極−ドレイン電極間等の電極間を長くする必要がある。III族窒化物系化合物半導体の例としては、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)等がある。代表的なIII族窒化物系化合物半導体は、AlxMyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される。ここで、Mはインジウム(In)或いはボロン(B)等である。
【0003】
しかし、窒化物系化合物半導体装置では、ゲート電極とドレイン電極が逆バイアスされた状態(FETがオフの状態)において、電流コラプス現象のために逆バイアス印加後のオン抵抗が増大するという問題がある。例えばFETでは、ゲート電極とドレイン電極間で結晶表面にトラップされる電子等のキャリアにより、高電圧印加直後のオン状態においてソース電極−ドレイン電極間に流れる電流が減少してしまう。
【0004】
一般的に、電流コラプス現象を抑制して耐圧を改善するために以下のような対策が採られている(例えば、特許文献1参照。):
(1)酸化膜、窒化膜等で結晶表面をパッシベーションコーティングする。
【0005】
(2)フィールドプレート構造を採用する。
【0006】
(3)上記(1)と(2)を組み合わせる。
【0007】
(4)格子欠陥の少ない結晶表面を実現する。
【特許文献1】特開2004−214471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えばガリウム砒素(GaAs)を使用したFETの場合、高耐圧化に伴って問題化してくる周波数分散の対策として、上記対策のいずれかが採用される場合がある。しかしながら、より高耐圧のデバイスが要求されてゲート電極とドレイン電極間がより長くなる場合、パッシベーションコーティングしても表面準位の影響が残りやすい。また、フィールドプレート構造を採用した場合には、フィールドプレートとして用いる金属膜の端部に電界集中する問題が生じる。したがって、上記の耐圧改善策だけでは大きな効果は期待できない。
【0009】
特に高耐圧が期待されている窒化ガリウム(GaN)系のワイドギャップ化合物半導体材料は、シリコン(Si)やGaAsに比べて結晶欠陥が多いため、電流コラプス現象がより顕著になるという問題がある。更に、ショットキーゲート構造のGaN系化合物半導体装置は、ゲートリーク電流が大きいという問題がある。
【0010】
上記問題点を鑑み、本発明は、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる窒化物系化合物半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、(イ)III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層と、(ロ)半導体層上に配置されたソース電極及びドレイン電極と、(ハ)ソース電極とドレイン電極との間に配置された有機半導体層と、(ニ)有機半導体層上に配置されたゲート電極とを備える窒化物系化合物半導体装置が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、(イ)III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層と、(ロ)半導体層上に配置されたソース電極及びドレイン電極と、(ハ)半導体層上にソース電極とドレイン電極との間に配置された絶縁膜と、(ニ)絶縁膜に設けられた開口部で半導体層に接する有機半導体層と、(ホ)開口部の有機半導体層上に配置されたゲート電極とを備える窒化物系化合物半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる窒化物系化合物半導体装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
又、以下に示す第1乃至第3の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置は、図1に示すように、III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層2と、半導体層2上に配置されたソース電極3及びドレイン電極4と、半導体層2上にソース電極3とドレイン電極4との間に配置された絶縁膜6と、絶縁膜6に設けられた開口部で半導体層2に接する有機半導体層7と、開口部の有機半導体層7上に配置されたゲート電極5とを備える。
【0017】
図1に示すように、有機半導体層7のソース端とゲート電極5のソース端は一致するように配置され、有機半導体層7のドレイン端がゲート電極5のドレイン端よりドレイン電極4側に位置する。ここで、「ソース端」とは、ゲート電極5及び有機半導体層7それぞれのソース電極3側の端部である。また、「ドレイン端」とは、ゲート電極5及び有機半導体層7それぞれのドレイン電極4側の端部である。
【0018】
図1に示すように、半導体層2は基板1上に配置される。基板1は、サファイア基板、シリコンカーバイト(SiC)基板、シリコン(Si)基板等が採用可能である。例えば、基板1に大口径化が容易なシリコン基板を採用することにより、図1に示す窒化物系化合物半導体装置の製造コストを低減できる。
【0019】
半導体層2は、それぞれが窒化物系化合物半導体からなるバッファ層21、キャリア走行層22及びキャリア供給層23がこの順に積層された構造である。図1に示すように、キャリア走行層22とキャリア供給層23とのヘテロ接合面近傍のキャリア走行層22に、電流通路(チャネル)としての2次元キャリアガス層221が形成される。以下では、キャリア供給層23がキャリア走行層22に供給するキャリアが電子である場合について例示的に説明する。つまり、2次元キャリアガス層221は2次元電子ガス層(2DEG層)であり、窒化物系化合物半導体装置がオンしたときにソース電極3から2DEG層221を介してドレイン電極4に電子が供給される。
【0020】
バッファ層21は、周知の有機金属気相成長(MOCVD)法等のエピタキシャル成長法で形成できる。図1では、バッファ層21を1つの層として図示しているが、バッファ層21を複数の層で形成してもよい。例えば、バッファ層21を窒化アルミニウム(AlN)からなる第1のサブレイヤー(第1の副層)と窒化ガリウム(GaN)からなる第2のサブレイヤー(第2の副層)とを交互に積層した多層構造バッファとしてもよい。また、図1に示した窒化物系化合物半導体装置が高電子移動度トランジスタ(HEMT)として動作する場合、バッファ層21はHEMTの動作に直接には関係しないため、バッファ層21を省いてよい。また、バッファ層21の材料として、AlN、GaN以外のIII族化合物半導体を採用してもよい。また、基板1とバッファ層21とを組み合わせた構造を基板とみなすこともできる。
【0021】
バッファ層21上に配置されたキャリア走行層22は、例えば不純物が添加されていないアンドープGaNを1〜3μm程度の厚さに、MOCVD法等でエピタキシャル成長させて形成する。
【0022】
キャリア走行層22上に配置されたキャリア供給層23は、キャリア走行層22よりもバンドギャップが大きく、且つキャリア走行層22と格子定数の異なる窒化物半導体からなる。キャリア供給層23は、AlxMyGa1-x-yN(0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y≦1、Mはインジウム(In)或いはボロン(B)等)で表される。組成比xは0.2〜0.4が好ましく、より好ましくは0.3である。キャリア供給層23としてはアンドープのAlxGa1-xNが採用可能であるが、n型不純物を添加したAlxGa1-xNからなる窒化物半導体も採用可能である。
【0023】
キャリア供給層23は、MOCVD法等によるエピタキシャル成長によってキャリア走行層22上に形成される。キャリア供給層23とキャリア走行層22は格子定数が異なるため、格子歪みによるピエゾ分極が生じる。このピエゾ分極とキャリア供給層23の結晶が有する自発分極によりヘテロ接合付近に高密度のキャリアが生じ、2DEG層221が形成される。キャリア供給層23の膜厚は、キャリア走行層22とキャリア供給層23との間のヘテロ接合により2DEG層221が生じるように設定される。具体的には、キャリア供給層23の膜厚は、キャリア走行層22よりも薄く、例えば5〜50nm程度、好ましくは5〜30nm程度である。
【0024】
なお、キャリア供給層23としてn型不純物を添加したAlxGa1-xNを採用し、このキャリア供給層23とGaNからなるキャリア走行層22との間にアンドープAlNからなるスペーサ層を配置し、且つソース電極3及びドレイン電極4とキャリア供給層23との間に例えばn型GaNからなるコンタクト層を配置してもよい。スペーサ層は、キャリア供給層23の不純物散乱の影響を抑制する効果がある。コンタクト層は、ソース電極3及びドレイン電極4と半導体層2との接触抵抗の低減に寄与する。
【0025】
ソース電極3及びドレイン電極4は、キャリア供給層23との間でオーミックコンタクト(低抵抗接触)を形成している。ソース電極3及びドレイン電極4は、例えばチタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層体等として形成可能である。ゲート電極5は、例えばニッケル(Ni)と金(Au)の積層体からなる金属膜等が採用可能である。
【0026】
絶縁膜6は、例えば200〜500nmの厚みの酸化シリコン(SiO2)膜、窒化シリコン(SiN)膜、若しくはこれらの膜を積層した構造が採用可能である。絶縁膜6によって半導体層2の表面をパッシベーションコーティングすることにより表面準位が低減され、窒化物系化合物半導体装置が受ける電流コラプス現象の影響を緩和することができる。特に、絶縁膜6はキャリア供給層23よりも制御しやすく、キャリア供給層23より厚い酸化シリコンを圧縮応力が生じる成膜条件にて形成すると、キャリア供給層23に応力が伝わり、キャリア供給層23とキャリア走行層22との間のピエゾ効果が高まり、絶縁膜6直下の2DEG層221の濃度を高め、オン抵抗を下げることができる。つまり、低オン抵抗を保ちながら後述する電流コラプス現象を抑制できる。
【0027】
有機半導体層7は、半導体と同様の特性を示す有機材料からなる。ただし、有機半導体層7は、エピタキシャル成長等の結晶成長によって形成される結晶半導体に比べて移動度が十分に小さくなるように形成される。具体的には、例えばp型の有機半導体層7の移動度を10-2〜10cm2/Vs、例えば5cm2/Vs程度にすることにより、通常の結晶半導体、例えば2DEG層221の移動度1500cm2/Vs以上に比べて有機半導体層7の移動度が十分に小さく、有機半導体層7を実質的に絶縁膜とみなせる。したがって、図1に示す窒化物系化合物半導体装置は、半導体層2上に有機半導体層7を介してゲート電極5が配置されたMIS構造を有する。
【0028】
図1に示した例では、有機半導体層7が絶縁膜6上に形成され、有機半導体層7上にゲート電極5が形成されているが、絶縁膜6はなくてもよいし、また、有機半導体層7及びゲート電極5が、絶縁膜6上まで延伸していなくてもよい。つまり、本発明の効果を得るためには、III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層2と、半導体層2上に配置されたソース電極3及びドレイン電極4と、ソース電極3とドレイン電極4との間に配置された有機半導体層7と、有機半導体層7上に配置されたゲート電極とを備える窒化物系化合物半導体装置であってもよい。尚、絶縁膜6上に有機半導体層7を形成すると、キャリア供給層23の上に有機半導体層7を形成する場合に比較して、有機半導体層7の不純物濃度を高めることができる。よって、本発明の効果をより高めることができる。
【0029】
正孔(ホール)をキャリアとして伝導するp型有機半導体としては、ペンタセン系、テトラセン系、アントラセン系の誘電体からなるアセン類、ペリレン、ルプレン、フタロシアニン、オリゴチオフェン等が採用可能である。また、錫(Sn)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)等の金属とフタロシアニンを結合させた有機無機複合金属錯体である金属フタロシアニンも、p型有機半導体として採用可能である。電子をキャリアとして伝導するn型有機半導体としては、C60、C70等のフラーレンや、Cu等の金属フタロシアニン等が採用可能である。
【0030】
有機半導体層7の導電型は、半導体層2と異なる導電型にすることが好ましい。つまり、例えば半導体層2が第1導電型である場合には、有機半導体層7を第2導電型とする。より具体的には、例えば半導体層2が2DEG層221を有するn型である場合は、有機半導体層7はp型にする。n型の半導体層2の表面上にp型の有機半導体層7を配置することにより、有機半導体層7から半導体層2に正孔が常時供給され、半導体層2の表面上にトラップされた電子が供給された正孔と結合して消滅する。
【0031】
以上に説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、ドレイン電極4とソース電極3間に高電圧を印加した状態でゲート電極5にオフとなる電圧を印加後オンに切り換えた際にオン抵抗が増大する、いわゆる電流コラプス現象が以下のように抑制される。即ち、電流コラプス現象によるオン抵抗の増大は、オフ時にゲート電極5とドレイン電極4の間の半導体層2の表面、特にゲート電極5のドレイン端又は絶縁膜6の開口部近傍にキャリアがトラップされ、トラップされたキャリアによって2DEG層221が部分的に空乏化されることにより生じる。しかし、図1に示した窒化物系化合物半導体装置では、半導体層2の表面にトラップされた第1導電型のキャリアが、有機半導体層7から供給される第2導電型のキャリアにより相殺されて消滅する。その結果、半導体層2の材料の性質や結晶性に関わらず、電流コラプス現象による逆バイアス印加後のオン抵抗の増大を抑制できる。特に第1の実施の形態では有機半導体層7のドレイン端がゲート電極5のドレイン端よりもドレイン電極4側にあり、ゲート電極5のドレイン端における電界集中を抑制し、電流コラプス現象を良好に抑制することができる。
【0032】
更に、図1に示した窒化物系化合物半導体装置は、ゲート電極5と半導体層2との間に、絶縁膜とみなせる有機半導体層7が配置されるため、MIS構造となる。そのため、ゲートリーク電流が低減される。
【0033】
以下に、図2〜図5を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる窒化物系化合物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0034】
(イ)先ず、図2に示すように、基板1上に、MOCVD法等によりバッファ層21、キャリア走行層22及びキャリア供給層23をこの順にエピタキシャル成長させて積層して、半導体層2を形成する。バッファ層21は、例えばAlN層とGaN層を交互に積層した構造である。キャリア走行層22は、例えば膜厚1〜3μmのアンドープGaN膜である。キャリア供給層23は、キャリア走行層22よりもバンドギャップが大きく、且つ格子定数の異なる窒化物半導体からなり、例えばアンドープのAlGaN膜が採用可能である。
【0035】
(ロ)半導体層2上に、ソース電極3及びドレイン電極4となる第1の導電体層を蒸着する。第1の導電体層は、例えばTiとAlの積層構造が採用可能である。次いで、フォトリソグラフィ技術によりパターニングしたフォトレジスト膜をマスクにして第1の導電体層をウェットエッチングし、図3に示すように、ソース電極3及びドレイン電極4を形成する。そして、例えば500℃、30分間のオーミックアニールにより、半導体層2とソース電極3及びドレイン電極4とをオーミック接触させる。
【0036】
(ハ)次に、キャリア供給層23、ソース電極3及びドレイン電極4上に、例えばSiO2膜、SiN膜、若しくはこれらの膜を積層した絶縁膜6をプラズマ化学気相成長(p−CVD)法等により膜厚200〜500nm程度形成する。そして、絶縁膜6上に塗布したフォトレジスト膜を露光現像して形成したエッチングマスク(図示せず)を用いて、フッ化水素(HF)系のウェットエッチング法等の技術により、ゲート電極5が形成される半導体層2の表面の一部が露出するまで絶縁膜6の一部を選択的にエッチング除去して開口部60を形成する。開口部60の形成と同時にソース電極3及びドレイン電極4上の絶縁膜6をエッチング除去して、図4に示すように、ソース電極3及びドレイン電極4の上面を露出させる。
【0037】
(ニ)次いで、抵抗加熱蒸着法を用いて膜厚30nm程度のp型フタロシアニン等の有機半導体層7を絶縁膜6上に開口部60を埋め込むように形成し、図5の構造断面図を得る。なお、有機半導体層7の形成方法として、ゾルゲル法やスピンオン法等も採用可能である。
【0038】
(ホ)新たなフォトレジスト膜を全面に塗布した後、フォトリソグラフィ技術によってゲート電極5を形成する部分のフォトレジスト膜を除去して有機半導体層7を露出させる。次いで、フォトレジスト膜及び有機半導体層7上に、ゲート電極5となる第2の導電体層をスパッタ法等により形成する。第2の導電体層としては、例えばNiとAuの積層体等が採用可能である。その後、フォトレジスト膜を用いたリフトオフ法により、ゲート電極5を形成する。
【0039】
上記のような本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法によれば、有機半導体層7を半導体層2とゲート電極5間に形成することにより、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる窒化物系化合物半導体装置を提供することができる。
【0040】
<変形例>
図6〜図10に、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置を示す。図6〜図10に示した窒化物系化合物半導体装置は、図1に示した窒化物系化合物半導体装置と有機半導体層7の配置が異なる。その他の構成については、図1に示す実施の形態と同様である。
【0041】
図6に示した窒化物系化合物半導体装置は、有機半導体層7がゲート電極5とドレイン電極4間全体に絶縁膜6上に配置されている例(第1の変形例)である。
【0042】
図7に示した窒化物系化合物半導体装置は、有機半導体層7が、ドレイン端及びソース端がゲート電極5と一致している第1の有機半導体層7a、及び第1の有機半導体層7aと離間してゲート電極5とドレイン電極4間に配置された第2の有機半導体層7bを有する例(第2の変形例)である。つまり、図7に示した窒化物系化合物半導体装置では、ゲート電極5側の半導体層2上方に有機半導体層7が配置されていない。
【0043】
図8に示した窒化物系化合物半導体装置は、有機半導体層7が、ドレイン端及びソース端がゲート電極5と一致している第1の有機半導体層7a、及び第1の有機半導体層7aと離間してゲート電極5とドレイン電極4間に配置された第2の有機半導体層7bを有する例(第3の変形例)である。図8に示した窒化物系化合物半導体装置では、ゲート電極5側及びドレイン電極4側の半導体層2上方に有機半導体層7が配置されていない。
【0044】
図9に示した窒化物系化合物半導体装置は、有機半導体層7が、ゲート電極5とドレイン電極4間のほぼ全面にわたって絶縁膜6上に配置された例(第4の変形例)である。
【0045】
図10に示した窒化物系化合物半導体装置は、ゲート電極5が有機半導体層7上だけでなく、更に有機半導体層7の外側において絶縁膜6上にも延伸している例(第5の変形例)である。つまり、有機半導体層7はゲート電極5直下のみに配置される。
【0046】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置は、図11に示すように、絶縁膜6及び有機半導体層7上に層間絶縁膜10が配置され、ゲート電極5とドレイン電極4間の上方の層間絶縁膜10上にフィールドプレート電極11が配置されていることが、図1と異なる点である。フィールドプレート電極11は、少なくともゲート電極5のドレイン端の上方を含んで配置される。その他の構成については、図1に示す第1の実施の形態と同様である。
【0047】
図11に示す構成において、フィールドプレート電極11に電圧を印加することにより、ゲート電極5のドレイン端に集中するバイアス電界を緩和し、耐圧を向上することができる。通常、ソース電極3−ドレイン電極4間に印加した電圧によるバイアス電界は、ゲート電極5のドレイン端に集中する。図11に示す窒化物系化合物半導体装置によれば、フィールドプレート電極11に電圧を印加することにより、ゲート電極5の端部の空乏層の曲率を制御してバイアス電界を緩和することが可能である。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0048】
図11に示した窒化物系化合物半導体装置の製造方法の例を以下に説明する。
【0049】
(イ)先ず、図2〜図5を参照して説明した製造方法によって得られた図1に示した窒化物系化合物半導体装置上に、例えば化学気相成長(CVD)法等により、層間絶縁膜10を形成する。層間絶縁膜10は、化学的機械研磨(CMP)法等の技術により平坦化される。
【0050】
(ロ)次に、フォトレジスト膜を層間絶縁膜10の上面全体に塗布した後、フォトリソグラフィ技術によってフィールドプレート電極11を形成する部分のフォトレジスト膜を除去して層間絶縁膜10を露出させる。次いで、フォトレジスト膜及び層間絶縁膜10上に、フィールドプレート電極11となる導電体層をスパッタ法等により形成する。その後、フォトレジスト膜を用いたリフトオフ法により、フィールドプレート電極11を形成する。
【0051】
上記の窒化物系化合物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0052】
本発明の第2の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、有機半導体層7を半導体層2とゲート電極5間に形成することにより、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制するとともに、フィールドプレート電極11を配置することよりにゲート電極5の端部に集中するバイアス電界を緩和して、耐圧を向上することができる。
【0053】
なお、本発明の第2の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置においても、図6〜図10に示した第1の実施の形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置と同様に、有機半導体層7の配置を変更した変形例が採用可能であることは勿論である。
【0054】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置は、図12に示すように、ゲート電極5とドレイン電極4間の半導体層2と絶縁膜6間に抵抗性ショットキーフィールドプレート(RESP)20が配置されていることが図1と異なる点である。RESP20は、半導体層2の主面にショットキー接触して配置される。その他の構成については、図1に示す第1の実施の形態と同様である。
【0055】
図12に示した例では、RESP20は、ドレイン電極4に接続し、ゲート電極5とは離間して配置される。RESP20は、リーク電流が流れないように高抵抗であることが好ましく、例えば100MΩ/sq.以上のシート抵抗を有するチタン酸化物、ニッケル酸化物等が採用可能である。また、長さやシート抵抗が互いに異なる複数の層を積層してRESP20を構成してもよい。
【0056】
図12に示した窒化物系化合物半導体装置では、リーク電流が流れない程度にRESP20のシート抵抗が大きければ、半導体層2との接触面と平行にRESP20に沿って電位が緩やかに降下する。その結果、ドレイン電極4とゲート電極5との間に生じる電界集中が緩和され、耐圧を向上することができる。ただし、RESP20のシート抵抗が小さく、RESP20端の電位を十分に低くできない場合には、RESP20にリーク電流が流れてしまい、耐圧が低下する。
【0057】
RESP20は、例えば膜厚5〜20nm程度のTi膜を真空蒸着法等により形成した後、空気中で約300℃、5〜30分間の熱処理によってTi膜を酸化することにより得られる。このとき、RESP20は完全な絶縁膜とみなせる2酸化チタン(TiO2)ではなく、TiO2よりも酸素が少ない所謂酸素プアーなチタン酸化物TiOX(Xは2より小さい数値)となっていると考えられる。
【0058】
以上に説明したように、本発明の第3の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置によれば、有機半導体層7を半導体層2とゲート電極5間に形成することにより、ゲートリーク電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制するとともに、RESP20を配置することよりにドレイン電極4−ゲート電極5間に集中するバイアス電界を緩和して、耐圧を向上することができる。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であるので、重複した記載を省略する。
【0059】
なお、本発明の第3の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置においても、図6〜図10に示した第1の実施の形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置と同様に、有機半導体層7の配置を変更した変形例が採用可能であることは勿論である。また、図13に示すように、RESP20をゲート電極5直下の有機半導体層7と接触させ、ドレイン電極4から離間して配置してもよい。図13に示した構造によっても、ドレイン電極4とゲート電極5間の電界集中を緩和することができる。
【0060】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第3の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0061】
既に述べた第1乃至第3の実施の形態の説明においては、キャリア供給層23が電子を供給したが、キャリア供給層23をp型半導体からなる正孔(ホール)供給層に置き換えることができる。この場合、2DEG層221に対応する領域に2次元キャリアガス層として2次元正孔ガス層が生じる。
【0062】
また、既に述べた第1乃至第3の実施の形態において2DEG層221を有するHEMTを例に示してきたが、MESFETにおいても本発明によってゲート電流の増大、及び電流コラプス現象によるオン抵抗の増大を抑制できる。
【0063】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例(第1の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例(第2の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の変形例(第3の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の変形例(第4の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の変形例(第5の変形例)に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態の変形例に係る窒化物系化合物半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1…基板
2…半導体層
3…ソース電極
4…ドレイン電極
5…ゲート電極
6…絶縁膜
7、7a、7b…有機半導体層
10…層間絶縁膜
11…フィールドプレート電極
20…抵抗性ショットキーフィールドプレート(RESP)
21…バッファ層
22…キャリア走行層
23…キャリア供給層
60…開口部
221…2次元電子ガス層(2DEG層)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層と、
前記半導体層上に配置されたソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層上に配置されたゲート電極
とを備えることを特徴とする窒化物系化合物半導体装置。
【請求項2】
III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層と、
前記半導体層上に配置されたソース電極及びドレイン電極と、
前記半導体層上に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜に設けられた開口部で前記半導体層に接する有機半導体層と、
前記開口部の前記有機半導体層上に配置されたゲート電極
とを備えることを特徴とする窒化物系化合物半導体装置。
【請求項3】
前記有機半導体層が前記絶縁膜上に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項4】
前記有機半導体層のドレイン端は前記ゲート電極のドレイン端よりも前記ドレイン電極側に延伸して形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層が、
キャリア供給層と、
前記キャリア供給層とヘテロ接合を形成するキャリア走行層
とを備え、前記キャリア走行層中の前記キャリア供給層との境界面近傍に2次元キャリアガス層が形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁膜上に前記有機半導体層及び前記ゲート電極が延伸していることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁膜がシリコン酸化膜からなることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層と前記絶縁膜間に、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に配置された抵抗性ショットキーフィールドプレートを更に備えることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項1】
III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層と、
前記半導体層上に配置されたソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置された有機半導体層と、
前記有機半導体層上に配置されたゲート電極
とを備えることを特徴とする窒化物系化合物半導体装置。
【請求項2】
III族窒化物系化合物半導体からなる半導体層と、
前記半導体層上に配置されたソース電極及びドレイン電極と、
前記半導体層上に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜に設けられた開口部で前記半導体層に接する有機半導体層と、
前記開口部の前記有機半導体層上に配置されたゲート電極
とを備えることを特徴とする窒化物系化合物半導体装置。
【請求項3】
前記有機半導体層が前記絶縁膜上に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項4】
前記有機半導体層のドレイン端は前記ゲート電極のドレイン端よりも前記ドレイン電極側に延伸して形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層が、
キャリア供給層と、
前記キャリア供給層とヘテロ接合を形成するキャリア走行層
とを備え、前記キャリア走行層中の前記キャリア供給層との境界面近傍に2次元キャリアガス層が形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁膜上に前記有機半導体層及び前記ゲート電極が延伸していることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁膜がシリコン酸化膜からなることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層と前記絶縁膜間に、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に配置された抵抗性ショットキーフィールドプレートを更に備えることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の窒化物系化合物半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−117712(P2009−117712A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291152(P2007−291152)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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