説明

端材の管理方法および管理システム

【課題】切断装置の準備作業による占有時間の減少、大量の端材の一括準備作業による作業効率の向上、作業者のスケジュール調整を無くしての人的コスト低減、及び歩留まりを向上させる端材の管理方法および管理システムを提供する。
【解決手段】1または複数の切断装置によって生成された端材が切断装置から取り外され、端材置き場に格納される。格納されていた端材にマーカが付与され、撮像手段によって撮像され、切断すべき製品を示す図形が割り当てられた後に、端材が切断装置に据え付けられる。さらに、当該端材が撮像され、機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータが取得され、制御手段の指示に従って、機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータに基づき、この製品を示す図形が割り当てられた端材から製品が切断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置で被切断材から製品を切断して生成された端材を管理する端材の管理方法および管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
切断装置によって鋼板などの被切断材から製品を切断すると、スクラップとしての端材が生成される。このように一度切断された被切断材である端材を有効利用し省資源化に役立たせるために、端材の空き領域(製品が抜かれた部分以外の領域)に更に、切断すべき製品を示す図形を割り当て、再度切断加工することが従来より行われている。
【0003】
下記特許文献1、2には、切断装置にCCDカメラを搭載し、被切断材を配置した切断装置の切断領域をCCDカメラによって撮像し、つぎに、撮像した画像から切断領域に配置された被切断材に対応する領域を切断可能領域として認識し、つぎに、認識した切断可能領域に対し切断すべき図形を割り当て、つぎに切断装置を駆動して被切断材から割り当てた図形を切断するという発明が記載されている。
【0004】
この発明では、「被切断材の撮像」、「切断可能領域の認識」、「切断可能領域に対する図形の割り当て」、「図形の切断」といった一連の各処理が被切断材(端材)を切断装置上に配置した状態のまま行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2548648号公報
【特許文献2】特開2003−251464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献記載の発明によるときは、確かに、端材を有効利用し省資源化に役立たせることができる。しかし、切断装置の稼動率は著しく低下し、作業者のスケジュール調整が非常に困難なものとなる。
【0007】
まず、上述したように、「被切断材の撮像」、「切断可能領域の認識」、「切断可能領域に対する図形の割り当て」、「図形の切断」といった一連の各処理が、被切断材(端材)を切断装置上に配置した状態のまま行われる。これら各処理のうち、「図形の切断」を除く「被切断材の撮像」、「切断可能領域の認識」、「切断可能領域に対する図形の割り当て」の各処理は、切断装置で行われる本来の切断加工作業とは別の準備段階の作業であり、それら準備段階の作業が行われている間、切断装置が占有されてしまい、本来の加工作業を実施することができない。
【0008】
また、「被切断材の撮像」、「切断可能領域の認識」、「切断可能領域に対する図形の割り当て」といった各処理は、具体的にはCAD操作によって行われることから、CAD操作に習熟した専門家が必要となる。一方、「図形の切断」の処理には、切断装置の操作に習熟した専門家が必要となる。よって、CAD専門家と切断加工専門家が切断装置に張り付き、協同作業で、「被切断材の撮像」、「切断可能領域の認識」、「切断可能領域に対する図形の割り当て」、「図形の切断」といった一連の各処理を粉なさればならない。このため各専門家を同じ時期に同じ場所に集める必要があり、作業者のスケジュール調整が非常に困難なものとなる。また、可能であれば切断加工の操作者一人で作業を運用できる方が望ましい。
【0009】
また、「被切断材の撮像」、「切断可能領域の認識」、「切断可能領域に対する図形の割り当て」、「図形の切断」といった一連の各処理は、一台の切断装置で扱うことができる端材単位でしか行うことができず、作業効率が著しく損ねられている。すなわち、切断装置の切断領域の範囲内でしか被切断材を一度に、「被切断材の撮像」、「切断可能領域の認識」、「切断可能領域に対する図形の割り当て」といった準備作業を実施することができない。このため1回の準備作業で扱うことができる端材の面積、枚数が限られ、作業効率が低下することになる。そして、これに引き続き行われる切断加工についても、一台の切断装置に据付け可能な範囲、量の端材に限定され、再度、切断を行うには、準備作業、切断作業を繰り返し行なわなければならない。
【0010】
さらに、図形を割り当てる前の段階で、端材を切断装置に搬入しなければならず、搬入前に端材にどのように図形を割り当てるか、そして、図形が割り当てられた端材を、いつ、どの切断装置に搬入するかを検討する余地が全くない。このため適切な端材(適切に図形が割り当てられた端材)を適切な時期に適切な切断装置に搬入することが困難となり、歩留まりが低下することになる。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、切断装置が切断加工作業以外の準備作業によって占有されてしまう時間を極力減らして切断装置の稼動率を向上させ、一括して大量の端材の準備作業を行うことができるようにして作業効率を向上させ、各専門家が同時期、同じ場所に張り付き協同作業を行うことを不要としてこれにより作業者のスケジュール調整を不要として人的コストを著しく低減させ、さらには、端材を切断装置に搬入する前に、図形を割り当てる作業を行うことができるようにして適切な端材を適切な時期に適切な切断装置に搬入することを可能ならしめ、もって、歩留まりを向上させることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明は、
1または複数の切断装置によって被切断材から製品を切断して端材を生成するステップと、
生成された端材を、切断装置から取り外すステップと、
切断装置から取り外された端材に、少なくとも2点のマーカを付与するステップと、
マーカが付与された端材を第1の撮像手段によって撮像するステップと、
第1の撮像手段による第1の画像の上に、切断すべき製品を示す図形を割り当てるステップと、
切断すべき製品を示す図形が割り当てられた端材を切断装置に据え付けるステップと、
切断装置に取り付けられた第2の撮像手段によって、切断装置に据え付けられた端材を第2の画像として撮像するステップと、
第1の画像上における少なくとも2点のマーカの位置と切断すべき製品を示す図形の位置を示すデータと、第2の画像上における少なくとも2点のマーカの位置のデータとに基づき、機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータを取得するステップと、
機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータに基づき、切断装置によって、当該製品を示す図形が割り当てられた端材から製品を切断するステップと
を含む端材の管理方法であることを特徴とする。
【0013】
第2発明は、第1発明において、
切断装置から取り外された端材を、切断装置に据え付けられるまでの所定期間、格納しておくことを特徴とする。
【0014】
第3発明は、
被切断材から製品を切断して端材を生成する1または複数の切断装置と、
切断装置から取り外された端材に、少なくとも2点のマーカを付与した上で、端材を第1の画像として撮像する第1の撮像手段と、
第1の画像の上に、切断すべき製品を示す図形を割り当てる図形割り当て手段と、
前記1または複数の切断装置の内、少なくとも1つの切断装置に取り付けられた撮像手段であって、切断すべき製品を示す図形が割り当てられた端材を当該切断装置に据え付けた上で、当該端材を第2の画像として撮像する第2の撮像手段と、
第1の画像上における少なくとも2点のマーカの位置と切断すべき製品を示す図形の位置を示すデータと、第2の画像上における少なくとも2点のマーカの位置のデータとに基づき、機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータを取得する位置補正手段と、
第2の撮像手段が取り付けられた切断装置を制御する手段であって、位置補正手段によって取得された機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータに基づき、当該製品を示す図形が割り当てられた端材から製品を切断するように制御する制御手段と
が備えられた端材の管理システムであることを特徴とする。
【0015】
第4発明は、第3発明において、
切断装置から取り外された端材を、第2の撮像手段が取り付けられた切断装置に据え付けられるまでの所定期間、格納する端材置き場が備えられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、つぎの効果が得られる。
【0017】
a)切断装置が切断加工作業以外の準備作業によって占有されてしまう時間が極力減り、切断装置の稼働率が向上する。
【0018】
端材が切断装置に据え付けられる前に、端材に、切断すべき製品を示す図形が割り当てられる。このため端材が切断装置に据え付けられた後に切断装置が切断加工作業以外の準備作業によって占有されてしまう時間が極力減り、切断装置の稼働率が向上する。
【0019】
b)一括して大量の端材の準備作業、大量の端材の加工作業を行うことができるようになり、作業効率が向上する。
【0020】
1または複数の切断装置によって被切断材から製品を切断することで生成された端材は、切断装置から取り外されて、製品を示す図形を割り当てる作業が行われる。このため切断装置以外の場所で一括して大量の端材に、図形を割り当てる等の準備作業を行うことができるようになる。そして、準備作業が行われた大量の端材を、一括して切断装置で切断加工することが可能となり(大量の端材を連続して切断加工を行うことが可能となり)、作業効率が向上する。
【0021】
c)各専門家が同時期、同じ場所に張り付き協同作業を行うことが不要となり、これにより作業者のスケジュール調整が不要となり、人的コストを著しく低減させることができる。また切断加工の操作者一人で作業を運用することができる。
【0022】
製品を示す図形を端材に割り当てるといった準備作業は、切断装置以外の場所で任意の時期(切断加工を行う時期に限定されない)に行うことができるともに、端材から製品を示す図形を切断加工する作業は、準備作業終了後であれば任意の時期に行うことができる。このため各専門家が同時期、同じ場所に張り付き協同作業を行うことが不要となり、これにより作業者のスケジュール調整が不要となり、人的コストを著しく低減させることができる。また、端材を切断装置に据え付けた後は、製品を示す図形を端材に割り当てるといった準備作業を行う必要がなくなるので、切断加工の操作者一人で作業を運用することができる。
【0023】
d)端材を切断装置に搬入する前に、製品を示す図形を端材に割り当てる作業を行うことができるようになり、適切な端材を適切な時期に適切な切断装置に搬入することが可能となり、歩留まりが向上する。
【0024】
1または複数の切断装置によって被切断材から製品を切断することで生成された端材は、切断装置から取り外される。望ましくは、切断装置から取り外された端材は、切断装置に据え付けられるまでの所定期間、端材置き場に格納されておかれる(第2発明、第4発明)。よって大量にストックされた端材の中から適切な端材を選択して適切に製品を示す図形を割り当てることが可能となる。そして、適切な時期に適切な切断装置に端材を搬入して、切断加工を行うことが可能となる。このように切断装置への搬入前に、大量の端材のどれに、どのように図形を割り当てるか、そして、製品を示す図形が割り当てられた端材を、いつ、どの切断装置に搬入するかを検討することが可能となり、適切な端材を適切な時期に適切な切断装置に搬入することができるようになる。この結果、歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例の管理システムの全体構成を示す図である。
【図2】図2は、切断用ロボットを用いた切断装置の構成例を示す図である。
【図3】図3は、NC切断機を用いた切断装置の構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施例の端材の管理方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、図4に示す一部の処理の具体的な処理内容を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)は、端材に付与されたマーカを示す図で、図6(b)は、マーカの拡大図である。
【図7】図7(a)は、機械座標系のX−Y平面を示した図で、図7(b)は、第2の画像の撮像座標系のX−Y平面を示した図で、図7(c)は、第1の画像の撮像座標系のX−Y平面を示した図である。
【図8】図8は、第1の撮像手段、第2の撮像手段の撮像範囲を示す図である。
【図9】図9(a)、(b)、(c)は、第1の画像上の端材に割り当てられた製品を示す図形を、第2の画像上に写像する原理を説明する図である。
【図10】図10は、パーソナルコンピュータのディスプレイに表示される内容を例示した図で、端材の写真に製品を示す図形を割り当てる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係る端材の管理方法および管理システムの実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、実施例の管理システム100の全体構成を示す。
【0028】
管理システム100は、1または複数の切断装置1´、1、1…と、第1の撮像手段2と、図形割り当て手段3と、位置補正手段6と、端材置き場7と、制御手段12を含んで構成される。
【0029】
切断装置1´、1は、被切断材Rから製品を切断して端材R´を生成する装置である。なお、切断装置1´、1は、たとえばプラズマ切断装置である。しかし、本発明は、プラズマ切断以外のガス切断、レーザ切断といった他の熱切断方法を利用した切断装置にも当然適用することができる。被切断材Rは、たとえば軟鋼、ステンレス、アルミなどの材料の定尺板が用いられる。なお、本明細書では、切断加工がなされていない未切断の「被切断材」に符号「R」を付与するとともに、切断加工が一度以上行われている「端材」に符号「R´」を付与して、両者を区別するものとする。
【0030】
第1の撮像手段2は、たとえばデジタルカメラで構成される。第1の撮像手段2は、切断装置1から取り外された端材R´に、少なくとも2点のマーカM1、M2を付与した上で、端材R´を第1の画像として撮像する。なお、第1の撮像手段2は、携行自在のデジタルカメラを三脚などに固定して撮影するものであってもよく、支柱などにカメラ本体が固定され被写体である端材R´との距離を調整できる撮影装置として構成されたものであってもよい。第1の撮像手段2は、広角のデジタルカメラを用いて端材R´の割り当て情報を得ることが望ましい。この際、三脚の高さを高くしないと全ての端材画像が画角に入らないケースがある。この場合には、斜めから撮影して、画像処理で正射影変換(オルソ変換)して真上から撮影した画像に変換すればよい。
【0031】
図形割り当て手段3は、たとえばパーソナルコンピュータ8で構成される。
【0032】
図形割り当て手段3は、第1の画像上に、切断すべき製品を示す図形PRを割り当てる処理を行う。
【0033】
1または複数の切断装置1´、1、1…のうち、少なくとも1つの切断装置1´には、第2の撮像手段9が取付けられている。第2の撮像手段9は、たとえばCCDカメラで構成される。なお、本明細書では、第2の撮像手段9が取付けられていない「切断装置」に符号「1」を付与するとともに、第2の撮像手段9が取付けられた「切断装置」に符号「R´」を付与して、両者を区別するものとする。複数の切断装置1´、1´、1´…の全てに第2の撮像手段9を取付ける実施も可能である。
【0034】
第2の撮像手段9は、切断すべき製品を示す図形PRが割り当てられた端材R´を切断装置1に据え付けた上で、端材R´を第2の画像として撮像する。
【0035】
位置補正手段6は、第1の画像上における少なくとも2点のマーカM1、M2の位置と切断すべき製品を示す図形PRの位置を示すデータと、第2の画像上における少なくとも2点のマーカM1、M2の位置のデータとに基づき、機械座標系における切断すべき製品を示す図形PRの位置のデータを取得する。
【0036】
第2の撮像手段9は、狭角のCCDカメラを用いても2点のマーカM1、M2を撮影できる範囲であれば、カメラ位置を低くすることができる。これによりカメラ固定用の支柱25を低くして対振動、対衝撃の影響を小さくできる。また低画素のCCDカメラを用いることができ、コストダウンが可能になる。
【0037】
制御手段12は、第2の撮像手段9が取り付けられた切断装置1´を制御する手段であって、位置補正手段6によって取得された機械座標系における切断すべき製品を示す図形PRの位置のデータに基づき、この製品を示す図形PRが割り当てられた端材R´から製品を切断するように制御する。
【0038】
位置補正手段6、制御手段12は、第2の撮像手段9が取付けられた切断装置1´に付設して設けられる。
【0039】
端材置き場7は、切断装置1´、1から取り外された端材を、第2の撮像手段9が取り付けられた切断装置1´に据え付けられるまでの所定期間、格納する場所である。端材置き場7は、切断装置1´、1と同じ建屋内にあってもよく、別の建屋に設けてもよい。
【0040】
切断装置1´、1には、NCデータ(数値制御データ)にしたがい駆動制御される切断機(NC切断機)を用いてもよく、ロボットジョブデータに従い駆動制御される切断用ロボット(多関節ロボット)を用いてもよい。
【0041】
図2は、切断用ロボット10を用いた切断装置1´の構成例を示している。図2に示すように、ロボットジョブに必要なデータを作成するために、X−Y−Zの3次元座標系のZ軸を鉛直軸方向に定め、X−Y平面を被切断材R(端材R´)の面に一致させるように定めている。3次元座標系の原点は、後述するように、被切断材R(端材R´)上の所定位置に定められる。
【0042】
図2に示すように、切断装置1´は、切断用トーチ11がアーム先端に取付けられた切断用ロボット10と、被切断材R(あるいは端材R´)が据え付けられる定盤である架台20と、切断用ロボット10を駆動制御するコントローラ30と、切断用トーチ11の電極と母材としての被切断材R(あるいは端材R´)との間にアーク電圧を印加するプラズマ電源40と、架台20に取付けられたカメラ固定用の支柱25と、支柱25に固定され、架台20に据え付けられた端材R´を撮像する第2の撮像手段9とを含んで構成される。本実施例では、さらに切断装置1´に付設して、位置補正手段6、制御手段12が設けられる。
【0043】
切断用ロボット10は、たとえば6軸多関節の産業用ロボットであり、アームの先端にツールとしての切断用トーチ11が取付けられている。コントローラ30は、ロボットジョブデータにしたがいロボット各軸を駆動制御して、切断用トーチ11の先端位置および姿勢を調整して、切断線に沿って切断用トーチ11の先端を移動させる。
【0044】
位置補正手段6は、情報処理装置13として構成される。情報処理装置13には、画像を表示するディスプレイ、入力操作を行う入力操作手段が備えられている。制御手段12は、コントローラ30の機能の一部として組み入れられる。
【0045】
なお、切断装置1は、図2に示す構成から、支柱25、第2の撮像手段9、情報処理装置13(位置補正手段6)、制御手段12を取り除いた構成のものである。
【0046】
一方、図3(a)、(b)は、NC切断機50を用いた切断装置1´の構成例を示している。
【0047】
図3に示すように、切断装置1´は、NC切断機101を含んで構成されている。NC切断機101は、その上面がX−Y平面と平行になるように配置され、被切断材R(あるいは端材R´)が据え付けられる架台20と、架台20を挟んで左右にX軸方向が長手方向となるように配置された配置された左右のガイドレール110、110と、ガイドレール110、110に沿って移動自在に、架台20上に架けわたされたキャリッジ120と、キャリッジ120の上面に長手方向であるY軸方向に沿って配置されたガイドレール130と、ガイドレール130に沿って移動自在に設けられた台車140と、台車140に対してZ軸方向に昇降移動自在に取付けられた切断用トーチ11とを含んで構成される。
【0048】
切断装置1´は、上述のNC切断機101以外に、さらにNC切断機101を駆動制御するコントローラ(NC制御装置)130と、切断用トーチ11の電極と母材としての被切断材R(あるいは端材R´)との間にアーク電圧を印加するプラズマ電源40と、台車140に固定され、架台20に据え付けられた端材R´を撮像する第2の撮像手段9とを含んで構成される。本実施例では、さらに切断装置1´に付設して、位置補正手段6、制御手段12が設けられる。
【0049】
コントローラ130は、NCデータにしたがいNC切断機101の各軸を駆動制御して、切断用トーチ11の先端位置を調整して、切断線に沿って切断用トーチ11の先端を移動させる。
【0050】
位置補正手段6は、情報処理装置13として構成される。制御手段12は、コントローラ130の機能の一部として組み入れられる。
【0051】
なお、切断装置1は、図3に示す構成から、第2の撮像手段9、情報処理装置13(位置補正手段6)、制御手段12を取り除いた構成のものである。
【0052】
図4は、実施例の端材の管理方法の手順を示すフローチャートである。
【0053】
(端材の生成)
すなわち、まず、1または複数の切断装置1´、1、1…によって被切断材Rから製品が切断され、端材R´が生成される(ステップ201)。
【0054】
(端材の取り外し)、
つぎに、生成された端材R´が、切断装置1´、1、1…から取り外される(ステップ202)。
【0055】
(端材の格納)
つぎに、切断装置1´、1、1…から取り外された端材R´が、切断装置1´に据え付けられるまでの所定期間、端材置き場7に、格納される。この間に、各切断装置1´、1、1…によって生成された端材R´が大量にストックされる(ステップ203)。
【0056】
(マーカの付与)
つぎに、切断装置1´、1、1…から取り外され、端材置き場7に格納されていた端材R´に、少なくとも2点のマーカM1、M2が付与される。すなわち、図6(a)に示すように、端材R´のうち、製品が切断によって抜かれた部分(切断済み領域)を除く空き領域に、マーカM1、M2を所定距離離間させて、貼り付ける。
【0057】
マーカM1、M2は、図6(b)に拡大して示すように、外枠が長方形で、その内部に画像認識可能な一定以上の面積を有する円が表記され、この円の中心には、十字中心が位置するように、十字が表記されてなるものである。マーカM1、M2は、端材R´の材質の表面色に影響されない色に塗色される。円の色と、円を除いた長方形内部の色は、両者を識別可能な異なる色であり、かつ端材R´の材質(軟鋼、ステンレス、アルミニウム)の光沢に応じて、端材R´の地色と識別可能な色を選択する(ステップ204)。
【0058】
(第1の撮像手段2による撮像)
つぎに、マーカM1、M2が付与された端材R´が第1の撮像手段2によって撮像される(ステップ205)。
【0059】
(製品を示す図形の割り当て)
つぎに、図形割り当て手段3によって、第1の撮像手段2による第1の画像の上に、切断すべき製品を示す図形PRが割り当てられる(ステップ206)。
【0060】
(端材の据付け)
つぎに、切断すべき製品を示す図形PRが割り当てられた端材R´が切断装置1´に据え付けられる(ステップ207)。
【0061】
(第2の撮像手段9による撮像)
つぎに、切断装置1´に取り付けられた第2の撮像手段9によって、切断装置1´に据え付けられた端材R´が第2の画像として撮像される(ステップ208)。
【0062】
(製品を示す図形の位置補正)
つぎに、位置補正手段6によって、第1の画像上における少なくとも2点のマーカM1、M2の位置と切断すべき製品を示す図形PRの位置を示すデータと、第2の画像上における少なくとも2点のマーカM1、M2の位置のデータとに基づき、機械座標系における切断すべき製品を示す図形PRの位置のデータが取得される(ステップ209)。
【0063】
(切断の制御)
つぎに、制御手段12によって、機械座標系における切断すべき製品を示す図形PRの位置のデータに基づき、切断装置1´によって、この製品を示す図形PRが割り当てられた端材R´から製品が切断される(ステップ210)。
【0064】
ここで、第1の撮像手段2によって撮像される第1の画像上における座標系(撮像座標系)と、第2の撮像手段9によって撮像される第2の画像上における座標系(撮像座標系)と、切断装置1´上における座標系(機械座標系)との関係について図7を用いて説明する。
【0065】
図7(a)は、機械座標系のX−Y平面を示しており、図7(b)は、第2の画像の撮像座標系のX−Y平面を示しており、図7(c)は、第1の画像の撮像座標系のX−Y平面を示している。
【0066】
第2の画像は、切断装置1´に固定された第2の撮像手段9によって撮像される画像である。よって、切断装置1´における第2の撮像手段9の既知の位置と、既知の座標原点と、第2の撮像手段9の撮像時のデータとに基づき、第2の画像の撮像座標系のX−Y座標位置を、機械座標系のX−Y座標位置に変換することができる。そして、機械座標系の座標位置のデータに基づき切断を行えば、正確に製品を示す図形PRを切断することができる。
【0067】
これに対して、第1の画像は、切断装置1´に固定されていない第1の撮像手段2によって撮像される画像である。よって第1の撮像手段2の撮像時のデータとに基づき、第1の画像の撮像座標系のX−Y座標位置を、機械座標系のX−Y座標位置に変換して、機械座標系の座標位置のデータに基づき切断を行っても、ずれが生じ、正確に製品を示す図形PRを切断することができない。そこで、後述するように、このずれをなくす補正が行われる。第1の撮像手段2、第2の撮像手段9を用いて撮像し、撮像結果から演算処理を行うにあたり以下のように考慮すべき点がある。
【0068】
(撮像範囲)
第1の撮像手段2は、端材R´の全体を撮像する必要がある。そこで、図8のように撮像範囲が定められる。ただし、第2の撮像手段9は、端材R´の全体を撮像してもよく、端材R´の一部を撮像してもよい。
【0069】
図8において、第1の撮像手段2、第2の撮像手段9のX軸方向、Y軸方向における画素数をgx、gy、画素長をGpit、焦点距離をf、レンズと端材R´との距離をΔZとすると、画幅ΔX、ΔYは、以下の式で表される。
【0070】
ΔX=ΔZ/f・(Gpit・gx)
ΔY=ΔZ/f・(Gpit・gy) …(1)
よって、画幅ΔX、ΔY内に端材R´の全体が入るように撮像範囲が定められる。
【0071】
(歪み補正)
第1の撮像手段2、第2の撮像手段9のレンズは、焦点距離が短いほど歪が大きくなり、撮像画像では、実際の端材R´の寸法と一致しない。画像上の寸法は、設置された光学系で計算された1画素当たりの長さで定まる。このため高精度を要求される光学測定では、事前にレンズとカメラの歪特性を測定して補正することが望ましい。歪は、画像の中心で小さく、画像の外側で大きいので、画角を端材R´よりも大きく余裕をみて設定すれば、歪誤差の影響を回避することができる。
【0072】
(撮像位置誤差)
第1の撮像手段2、第2の撮像手段9で撮像した画像から正確に長さを求めるには、カメラを下方に向けて固定して、カメラの光軸と被写体である端材R´を正対させる必要がある。精密な計測、たとえばステレオ計測を行うには、カメラを取付け固定したときに、マーカM1、M2を撮影して光の束の計算(バンドル法)から、3次元空間でのカメラの端材R´に対する傾き(ピッチ角、ロール角、ヨー角)を求め、カメラの撮像座標から機械座標に変換する。端材R´の計測における目的は、製品を示す図形PRを空き領域部分に割り当てることであり、切断作業においては5mm以上の間隔が必要である。よって精密な補正は不要である。それゆえに撮像時には水準器を用いて正対させるだけでよい。固定カメラではないデジタルカメラを用いる場合には、三脚にカメラを取り付け、気泡式の簡易水準器で正対させれば、十分である。
【0073】
(機械座標と撮像座標)
NC切断機では、機械座標のX−Yの2軸の座標系は、固定されていない。操作性を向上させるには、撮像座標系のX−Yの2軸の座標系は、固定する。
【0074】
(割り当てられた図形の写像)
図9は、第1の画像上の端材R´に割り当てられた製品を示す図形PRを、第2の画像上に写像する原理を説明する図である。
【0075】
図9(a)は、第1の画像のX−Y撮像座標系(図7(c))を、X−Y機械座標系に変換した内容を示しており、マーカM1、マーカM2の重心座標位置P1、P2、製品を示す図形PRの任意の座標位置Pi(Xi、Yi)が機械座標位置(NCデータ)で記述されている。
【0076】
図9(b)は、図7(a)に相当する図で、写像前の第2の画像のX−Y撮像座標系(図7(b))を、X−Y機械座標系に変換した内容を示しており、マーカM1、マーカM2の重心座標位置P3、P4が機械座標位置(NCデータ)で記述されている。
【0077】
図9(c)は、写像後の第2の画像のX−Y撮像座標系を、X−Y機械座標系に変換した内容を示しており、マーカM1、マーカM2の座標位置P3、P4、写像後の製品を示す図形PRの任意の座標位置Pj(Xj、Yj)が機械座標位置(NCデータ)で記述されている。
【0078】
図9において、マーカ重心位置P1、P2、P3、P4とは、図6(b)における円中心、十字の中心の位置である。
【0079】
図9(a)において、マーカM1、M2の各位置P1、P2間を結ぶ線分L1の式は、
Y=a1.・X+b1 …(2)
で表され、図9(b)において、マーカM1、M2の各位置P3、P4間を結ぶ線分L2の式は、
Y=a2.・X+b2 …(3)
で表される。
【0080】
よって、これら2線分L1、L2間の回転角(傾きの差)θは、
θ=atan(a1−a2)/(1+a1・a2) …(4)
となる。
【0081】
一方、図9(a)、図9(b)の対応するマーカ位置、たとえばマーカM1の位置P1、P3がそれぞれ(x1、y1)、(x2、y2)で表されるとすると、図9(a)、図9(b)の座標位置のシフト量dx、dyは、下記のとおりとなる。
【0082】
dx=x1−x2
dy=y1−y2 …(5)
よって、上記(2)〜(5)式を用いて、図9(a)に示す機械座標系に割り当てられた製品を示す図形PRの任意位置Pi(Xi、Yi)は、図9(c)の機械座標系に、下記式で表される座標位置Pj(Xj、Yj)に写像される。
【0083】
Xj=sqrt(Xi^2+Yi^2)・cos(θ+Yi/Xi)+dx
Yj=sqrt(Xi^2+Yi^2)・sin(θ+Yi/Xi)+dy …(6)
(異なるカメラ(第1の撮像手段2、第2の撮像手段9)による補正計算)
上述した写像を行うには、異なるカメラで撮像した2回の画像(第1の画像、第2の画像)の1画素当たりの長さを得る必要がある。
【0084】
CCDカメラの1画素当たりの長さは、レンズの焦点距離、CCDカメラの画素数、CCD素子の長さ、端材R´とレンズ間の距離から計算することができる。デジタルカメラを用いる場合も同様に計算することが可能である。また、CCDカメラで撮像された第2の画像上におけるマーカM1、M2間距離と、デジタルカメラで撮像された第1の画像上におけるマーカM1、M2間距離と、CCDカメラの1画素当たりの長さとを用いて、デジタルカメラの1画素当たりの長さを求めるようにしてもよい。
【0085】
つぎに、図4に示すステップ204、205、206、208、209、210の具体的な処理内容を、図5のフローチャートを併せ参照して説明する。
【0086】
すなわち、端材置き場7から必要な端材R´を選択して取り出し、図6(a)に示すように、端材R´のうち、製品が切断によって抜かれた部分(切断済み領域)を除く空き領域に、マーカM1、M2を所定距離離間させて、貼り付ける(ステップ301)。
【0087】
つぎに、端材R´の全景が入るように画角を設定、つまり高さ(第1の撮像手段2と端材R´との距離)、ピントを調整し、端材R´を、第1の撮像手段2によって第1の画像を撮像する。第1の撮像手段2がデジタルカメラの場合には、画像のデータは、所定の内部メモリあるいは取り外し携行自在のメモリに記憶される。(ステップ302)。
【0088】
つぎに、第1の撮像手段2による第1の画像撮像時のデータ(撮影高さΔZ、焦点距離f等)および撮像した端材R´(端材写真)を特定するID番号(端材IDという)を記録する(ステップ303)。
【0089】
撮像済みの端材R´は、再び、端材置き場7に格納される(ステップ304)。
【0090】
つぎに、第1の撮像手段2の画像データを、内部メモリから専用ケーブルを介して、あるいは取り外し携行自在のメモリから直接に、パーソナルコンピュータ8(図形割り当て手段3)にアップロードする(ステップ305)。
【0091】
つぎに、第1の撮像手段2による第1の画像撮像時のデータ(撮影高さΔZ、焦点距離f等)をパーソナルコンピュータ8に入力する。このデータは、第1の画像を、撮像座標系(図7(c))から機械座標系(図9(a))に変換するために用いられる(ステップ306)。
【0092】
つぎに、端材IDを入力する(ステップ307)。
【0093】
ここで、図10は、パーソナルコンピュータ8のディスプレイに表示される内容を例示している。ディスプレイ画面には、端材IDに対応する端材R´の写真が表示される。
【0094】
図形PRの割り当ては、つぎのようにして行われる。
【0095】
(専用CADを用いない割り当て処理)
個々の製品(部品)を示す図形PRは、NCデータで記述されている。また個々の部品(個々の図形PR)には、個々の部品を特定するID番号(部品IDという)が付与されている。そこで、部品IDを指定して、部品を呼び出し、画面上で、マウス、キーボードなどの操作入力手段を用いて手動で、割り当てるべき図形PRを選択し(ステップ308)、画面上の端材R´の写真を見ながら、空き領域に、図形PRを割り当てる。こうして図9(a)に示すように、端材R´の空き領域に、図形PRが割り当てられる(ステップ309)。この場合には、操作性が重要な課題となるが、上記のごとくマウスなどを用いたCAD操作(図形PRの移動、回転、コピー、削除等)によって行うことで、容易に作業を行うことができる。図形PRを正確に配置するには、画像を拡大して行うが、同時に図形PRも同じ比率で拡大する必要がある。
【0096】
(専用CADを用いた割り当て処理)
NCデータで記述された図形PRを割り当てるには、専用CADを用いることができ、その場合、自動割当(オートネスト)と手動割当を行うことができる。自動割当では、複数の異種の図形PRが所定個数、端材R´上に自動的に配置される。手動割当では、複数異種の図形PRがある場合、図形PR個々に配置する位置を指示して行う。手動割当は、自動割当では難しい複雑な図形に対して行われる。通常のCADでは、未切断の材料(被切断材R´)を対象としている。被切断材Rは、材質、寸法毎に登録され、割り当てる図形PR(異種、複数)を選択することで割り当てる。専用CADでは、切断済みの材料(端材R´)を対象として特別のソフトウエアが組み込まれる。端材R´は、撮像した端材R´を画像処理して、端材R´の全体図形と切断済み領域を認識して登録する。この場合、重要なのは切断済み領域は、全て閉領域(図形の開始位置と終了位置が一致する)でなければ、登録が却下されるということである。また、CADの種類によっては、端材R´の登録が不可能なものもある。この場合、端材R´を登録しない方法で、図形PRを割り当てる手法がとられる。
【0097】
以上のようにして図形PRの割当て処理が終了すると、つぎに、割り当てられた部品が複数の場合には、これら複数の図形(複数の部品)PR、PR…の切断順序を指定する。すなわち、プラズマやガスを用いて熱切断を行う切断装置にあっては、熱歪みを考慮して、個々の部品(個々の図形PR)毎に切断順序を指定する必要があるからである(ステップ310)。
【0098】
つぎに、割り当てられた図形PR(部品)のNCデータは、ファイルにセーブされる。すなわち、1部品のNCデータは、複数の図形(NCでは複数のN番号)から構成される。割当て前の図形PRのNCデータに対して、移動、回転等が施されたX、Y座標が計算される。NCコードには、X、Y座標以外にM、T、Fコード等が付与されているが、生成された新しいNCデータは、X、Y座標以外は不変(ただし、N番号は変わる)であり、そのままそのデータを用いて切断することが可能である。
【0099】
ファイルの番号は、端材IDが使用される。
【0100】
すなわち、座標位置を再計算された複数の部品(複数の図形PR)はそれぞれ、ファイルに、部品IDが付与されて登録される。このときファイルに、ファイル名(ファイル番号)として、端材IDをキーワードとして付与しておけば、端材IDと部品IDがリンクされ、端材R´と、その端材R´に割り当てられた個々の部品(個々の図形PR)とを一元的に管理することができる。
【0101】
つぎに、端材置き場7から端材R´が取り出され、指定された端材IDの端材R´が切断機1´の架台20に据え付けられる(ステップ312)。
【0102】
情報処理装置13(位置補正手段6)には、据え付けられた端材R´の端材IDが入力される。また、切断加工しようとする部品(図形PR)の部品IDが選択され、情報処理装置13(位置補正手段6)に入力される(ステップ313)。
【0103】
つぎに、切断装置1´に取り付けられた第2の撮像手段9によって、切断装置1´に据え付けられた端材R´が第2の画像として撮像される(ステップ314)。
【0104】
情報処理装置13のディスプレイには、第1の画像、第2の画像が並べて表示される。すなわち、図9(a)、(b)に示す内容の各画像が並べてディスプレイ画面上に表示される(ステップ315)。
【0105】
つぎに、第1の画像、第2の画像上におけるマーカM1、M2を情報処理装置13の入力操作手段(たとえばマウス)を操作して、指定することで、マーカM1、M2の位置P1、P2および位置P3、P4(重心)が演算される。
【0106】
マーカM1、M2の位置を認識する方法としては、たとえばつぎの「自動マーカ認識」、「半自動マーカ認識」、「手動マーカ認識」の3段階のステップが採用される。
【0107】
(自動マーカ認識)
2点のマーカM1、M2の光学的な特徴を変えて、そのマーカM1、M2の重心(中心)を画像処理で正確に計算する。色2値化法を用い、閉領域の面積誤差が規定内である図形が、マーカM1、M2であると検出する。なお、色2値化法は、色の明度、彩度、色相を計算するが、光学環境によって大きく変動するため、光学環境が安定しない場合には不向きである。
【0108】
(半自動マーカ認識)
自動マーカ認識で正確に認識できない、つまり複数のマーカを認識したり、マーカの認識が0である場合には、画像を拡大してマーカM1、M2を示す円の位置を正確に指示して、重心位置を正確に求める。
【0109】
(手動マーカ認識)
半自動マーカ認識で、マーカM1、M2を示す円を正確に検出できなく、規定値以上の歪みを検出したときには、更に拡大した画像にして、十字の中心を指示して、マーカM1、M2の中心位置座標とする(ステップ316)。
【0110】
つぎに、ステップ315で求められたマーカ位置P1、P2、P3、P4に基づき、前述の(2)〜(5)式の演算を行い、回転角(傾きの差)θおよびシフト量dx、dyを演算する(ステップ317)。
【0111】
つぎに、機械座標系における原点の位置が指定される。すなわち、図9(b)、(c)に示される機械座標系の原点位置が指定される。NC機械座標系における座標原点は、G90のコードで定義される。第2の画像上で原点を指示すると、NC切断機101では、その原点位置がNC座標原点となって、NCデータにしたがい切断加工を行うことができる。
よって、指示された点を座標原点として、ステップ312で選択された図9(c)の機械座標系上の部品(図形PR)の座標位置Pj(Xj、Yj)が、前述の(6)式のごとく演算される(ステップ318)。
【0112】
こうして、部品(図形PR)の切断加工に必要なNCデータが得られると、NCデータは、図2に示すコントローラ30あるいは図3に示すコントローラ130の内部記憶媒体あるいは外部記憶媒体、たとえばUSBメモリ、FDにコピーされる(ステップ319)。
【0113】
つぎに、切断用ロボット10を空運転し異常動作が無いことを確認した上で、制御手段12は、NCデータをロボットジョブデータに変換し、ロボットジョブデータにしたがいロボット各軸を駆動制御して、切断用トーチ11の先端位置および姿勢を調整して、切断線に沿って切断用トーチ11の先端を移動させる。NC切断機101を運転する場合には、同様に、NC切断機101を空運転し異常動作が無いことを確認した上で、制御手段12は、NCデータにしたがいNC切断機101の各軸を駆動制御して、切断用トーチ11の先端位置および姿勢を調整して、切断線に沿って切断用トーチ11の先端を移動させる。これにより選択された部品(図形PR)が端材R´から正確に切断され、製品として取り出される(ステップ320)。
【0114】
以上説明した本実施例によれば、つぎのような効果が得られる。
【0115】
a)切断装置1´が切断加工作業以外の準備作業によって占有されてしまう時間が極力減り、切断装置1´の稼働率が向上する。
【0116】
端材R´が切断装置1´に据え付けられる前に、端材R´に、切断すべき製品を示す図形PRが割り当てられる。このため端材R´が切断装置1´に据え付けられた後に切断装置1´が切断加工作業以外の準備作業によって占有されてしまう時間が極力減り、切断装置1´の稼働率が向上する。
【0117】
b)一括して大量の端材R´の準備作業、大量の端材R´の加工作業を行うことができるようになり、作業効率が向上する。
【0118】
1または複数の切断装置1´、1、1…によって被切断材Rから製品を切断することで生成された端材R´は、切断装置1´、1、1…から取り外されて、製品を示す図形PRを割り当てる作業が行われる。このため切断装置1´、1、1…以外の場所で一括して大量の端材R´に、図形PRを割り当てる等の準備作業を行うことができるようになる。そして、準備作業が行われた大量の端材R´を、一括して切断装置1´で切断加工することが可能となり(大量の端材R´を連続して切断加工を行うことが可能となり)、作業効率が向上する。
【0119】
c)各専門家が同時期、同じ場所に張り付き協同作業を行うことが不要となり、これにより作業者のスケジュール調整が不要となり、人的コストを著しく低減させることができる。また切断加工の操作者一人で作業を運用することができる。
【0120】
製品を示す図形PRを端材R´に割り当てるといった準備作業は、切断装置1´、1、1…以外の場所で任意の時期(切断加工を行う時期に限定されない)に行うことができるともに、端材R´から製品を示す図形PRを切断加工する作業は、準備作業終了後であれば任意の時期に行うことができる。このため各専門家が同時期、同じ場所に張り付き協同作業を行うことが不要となり、これにより作業者のスケジュール調整が不要となり、人的コストを著しく低減させることができる。また、端材R´を切断装置1´に据え付けた後は、製品を示す図形を端材PRに割り当てるといった準備作業を行う必要がなくなるので、切断加工の操作者一人で作業を運用することができる。とりわり本実施例のステップ313〜319に示される準備作業で必要とされる操作は、熟練を要する割り当て処理と比較すれば簡単であり、切断加工の操作者のみで行うことができる。
【0121】
d)端材R´を切断装置1´に搬入する前に、製品を示す図形PRを端材Rに割り当てる作業を行うことができるようになり、適切な端材R´を適切な時期に適切な切断装置1´に搬入することが可能となり、歩留まりが向上する。
【0122】
1または複数の切断装置1´、1、1…によって被切断材Rから製品を切断することで生成された端材R´は、切断装置1´、1、1…から取り外され、切断装置1´に据え付けられるまでの所定期間、端材置き場7に格納されておかれる。よって大量にストックされた端材R´の中から適切な端材R´を選択して適切に製品を示す図形PRを割り当てることが可能となる。そして、適切な時期に適切な切断装置1´に端材R´を搬入して、切断加工を行うことが可能となる。このように切断装置1´への搬入前に、大量の端材R´のどれに、どのように図形PRを割り当てるか、そして、製品を示す図形PRが割り当てられた端材R´を、いつ、どの切断装置1´に搬入するかを検討することが可能となり、適切な端材R´を適切な時期に適切な切断装置1´に搬入することができるようになる。この結果、歩留まりが向上する。
【0123】
以上のとおり本発明は、従来技術では得られない顕著な効果を奏効するものである。
【符号の説明】
【0124】
1、1´ 切断装置、2 第1の撮像手段、3 図形割り当て手段、6 位置補正手段、7 端材置き場、9 第2の撮像手段、12 制御手段、100 管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の切断装置によって被切断材から製品を切断して端材を生成するステップと、
生成された端材を、切断装置から取り外すステップと、
切断装置から取り外された端材に、少なくとも2点のマーカを付与するステップと、
マーカが付与された端材を第1の撮像手段によって撮像するステップと、
第1の撮像手段による第1の画像の上に、切断すべき製品を示す図形を割り当てるステップと、
切断すべき製品を示す図形が割り当てられた端材を切断装置に据え付けるステップと、
切断装置に取り付けられた第2の撮像手段によって、切断装置に据え付けられた端材を第2の画像として撮像するステップと、
第1の画像上における少なくとも2点のマーカの位置と切断すべき製品を示す図形の位置を示すデータと、第2の画像上における少なくとも2点のマーカの位置のデータとに基づき、機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータを取得するステップと、
機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータに基づき、切断装置によって、当該製品を示す図形が割り当てられた端材から製品を切断するステップと
を含む端材の管理方法。
【請求項2】
切断装置から取り外された端材を、切断装置に据え付けられるまでの所定期間、格納しておくことを特徴とする請求項1記載の端材の管理方法。
【請求項3】
被切断材から製品を切断して端材を生成する1または複数の切断装置と、
切断装置から取り外された端材に、少なくとも2点のマーカを付与した上で、端材を第1の画像として撮像する第1の撮像手段と、
第1の画像の上に、切断すべき製品を示す図形を割り当てる図形割り当て手段と、
前記1または複数の切断装置の内、少なくとも1つの切断装置に取り付けられた撮像手段であって、切断すべき製品を示す図形が割り当てられた端材を当該切断装置に据え付けた上で、当該端材を第2の画像として撮像する第2の撮像手段と、
第1の画像上における少なくとも2点のマーカの位置と切断すべき製品を示す図形の位置を示すデータと、第2の画像上における少なくとも2点のマーカの位置のデータとに基づき、機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータを取得する位置補正手段と、
第2の撮像手段が取り付けられた切断装置を制御する手段であって、位置補正手段によって取得された機械座標系における切断すべき製品を示す図形の位置のデータに基づき、当該製品を示す図形が割り当てられた端材から製品を切断するように制御する制御手段と
が備えられたことを特徴とする端材の管理システム。
【請求項4】
切断装置から取り外された端材を、第2の撮像手段が取り付けられた切断装置に据え付けられるまでの所定期間、格納する端材置き場が備えられたことを特徴とする端材の管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−141807(P2011−141807A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2887(P2010−2887)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(510009500)株式会社テクエイト (3)
【出願人】(000105394)コータキ精機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】