説明

紫外線照射装置

【課題】
本発明の目的は、電装部を密閉しつつ、その密閉された電装部の内部を冷却する紫外線照射装置を提供することである。
【解決手段】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、放電容器と該放電容器の放電空間を介して対向配置された電極とからなるエキシマランプと、複数の該エキシマランプにそれぞれ電気的に接続されたトランスと、該複数のエキシマランプと該複数のトランスとを保持すると共に、該複数のエキシマランプと該複数のトランスとの間に設けられた隔壁を具備する筐体と、該筐体内で該隔壁を介して該複数のトランスを取り囲む電装部と、からなる紫外線照射装置において、該電装部には、冷却液の流路を具備する冷却手段が設けられ、該各トランスの外方には、該各トランスを個別に囲うと共に、該トランスを介して対向された一対の開口部を具備した風洞体が設けられ、該電装部の内部には、該風洞体の一方の開口部から他方の開口部に送風する送風手段が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマ発光するエキシマランプを備えた紫外線照射装置であって、特に複数のエキシマランプを備えた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板や液晶基板の製造工程には、これら基板の洗浄を目的として真空紫外線を照射するエキシマランプを備えた紫外線照射装置が用いられる。このようなエキシマランプを備えた紫外線照射装置には、特許文献1に記載されるものがあった。
【0003】
従来に係る紫外線照射装置1について、図6を用いて説明する。
図6は、従来に係る紫外線照射装置1の説明図であり、紫外線照射装置1に具備されたエキシマランプ2の管軸方向に対して直交する断面図である。
【0004】
従来に係る紫外線照射装置1は、真空紫外線を照射するエキシマランプ2を具備したランプユニット11と、被照射物Wを搬送する搬送ユニット12とにより構成される。
【0005】
ランプユニット11は、エキシマランプ2と、エキシマランプ2への給電電圧を昇圧するトランス6と、エキシマランプ2とトランス6とを保持する筐体3とにより構成され、その詳細な構成について、以下に述べる。
【0006】
筐体3には、その内部にエキシマランプ2とトランス6とが配置されており、エキシマランプ2とトランス6との間に隔壁32が設けられ、エキシマランプ2が配置される光源部35とトランス6が配置される電装部34とが設けられる。
【0007】
筐体3の電装部34は、トランス6を載置する隔壁32と、隔壁32に連接されると共にトランス6の四方を取り囲む電装部側側壁341(図6におけるトランス6の紙面左右方向の電装部側側壁341と、紙面奥手前に位置する図示しない電装部側側壁)と、電装部側側壁341に蓋をするように設けられた天板31とにより構成される。
【0008】
筐体3の光源部35は、エキシマランプ2を保持するランプ保持体36と、ランプ保持体36が設けられた隔壁32と、隔壁32に連接されると共にエキシマランプ2の四方を取り囲む光源部側側壁351(図6におけるエキシマランプ2の紙面左右方向の光源部側側壁351と、紙面奥手前に位置する図示しない光源部側側壁)とにより構成される。
また、光源部35には、光源部側側壁351に蓋をするように、光透過窓4が設けられる。
【0009】
トランス6とエキシマランプ2とを電気的に接続するため、隔壁32には、電装部34と光源部35とを連通する貫通孔331が設けられ、この貫通孔331には、トランス6とエキシマランプ2とを電気的に接続した給電線5が挿通される。
隔壁32の貫通孔331には、光源部35の内部と電装部34の内部とを空間的に隔てるため、給電線5を挿通した状態で封止体332が設けられる。
【0010】
上述したランプユニット11は、搬送ユニット12上に載置されるように設けられる。
搬送ユニット12は、被照射物Wを搬送する複数のローラ121と、各ローラ121を回転駆動させる駆動体121により構成される。
複数のローラ121は、ランプユニット11の光透過窓4の平面に並行するように配列される。
【0011】
上述エキシマランプ2は、例えばキセノンガスのような発光ガスが封入された例えば石英ガラスからなる放電容器と、放電容器の外周面に設けられた外側電極と、放電容器の内周面に設けられた内側電極により構成される。
エキシマランプ2の内側電極には、上述のトランス6が給電線5を介して電気的に接続される。また、エキシマランプ2の外側電極には、例えばステンレスのような電気伝導性を有する金属部材からなるランプ保持体36が設けられる。
【0012】
エキシマランプ2の内側電極及び外側電極には、トランス6を介して図示しない高周波電源が接続されており、外側電極は、当接するランプ保持体36を介して接地される。このため、ランプ点灯時には、エキシマランプ2の内側電極に図示しない高周波電源から給電され、給電された内側電極と接地された外側電極との間に位置する放電容器21の内部でエキシマ発光が開始され、放電容器21の外方に例えば200nm以下にピーク波長を有する真空紫外線が照射される。
エキシマランプ2から照射された真空紫外線は、光透過窓4を透過し、光透過窓4に対向するように搬送された被照射物Wに照射される。
搬送ユニット12の内部は大気状態であり、光透過窓4を透過した真空紫外線は、搬送ユニット12の内部で大気中の酸素に吸収され、オゾンガスを発生される。このため、被照射物Wは、真空紫外線とオゾンによって処理される。
【0013】
エキシマランプ2に設けられるトランス6としては、例えば特許文献2に記載されるものが挙げられ、トランス6を構成する部材に例えばシリコン樹脂のような樹脂部材を含むものがある。樹脂部材は、真空紫外線を直接照射されると分解されてしまい劣化する問題があり、またオゾンによっても分解されて劣化する問題がある。
このため、トランス6とエキシマランプ2との間には、真空紫外線を透過しない例えばアルミニウムのような金属部材により構成された隔壁32が設けられる。また、トランス6を配置する電装部34は、オゾンの流入を防止するため、密閉構造を構成する。
【0014】
なお、上述においては、光透過窓4を有する紫外線照射装置1について説明したが、従来に係る紫外線照射装置には、特許文献3に記載されるような光透過窓を有しないものもある。また、特許文献3に記載されるエキシマランプは、一対の電極が放電容器の外面に設けられたものが記載されている。
また、上述においては、エキシマランプ2を一本具備する紫外線照射装置1について説明したが、従来に係る紫外線照射装置には、特許文献4に記載されるような複数のエキシマランプを設けるものもあり、各エキシマランプには個別のトランスが設けられることが記載されている。
【0015】
【特許文献1】特開2001−243923公報
【特許文献2】特開2005−260007公報
【特許文献3】特開2004−097986公報
【特許文献4】特開2003−303694公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
近時の要望としては、被照射物Wの大型化に合わせてエキシマランプ2の長尺化があり、また処理時間短縮のためにエキシマランプ2からの真空紫外線の照度向上がある。このため、エキシマランプ2に入力される電力の向上を目的として、トランス6への入力電力を向上させる必要がある。トランス6への入力電力が例えば500Wのような高入力になったとき、電装部34のような密閉空間に配置されたトランス6は加熱されてしまい、トランス6を構成する部材に樹脂が含まれるとき、この樹脂を加熱によって劣化させてしまう問題があった。
【0017】
特に、複数のエキシマランプ2を具備し、各エキシマランプ2に個別のトランス6を設けた場合、ランプ点灯時に各トランス6がそれぞれ加熱されることから、各トランス6が隣接するトランス6から加熱されてしまい、樹脂の劣化が早まってしまう問題があった。
【0018】
このため、トランス6を配置した電装部34の内部を冷却するため、例えば電装部34の電装部側側壁341に通風口を設けると共にこの通風口にダクトを設けることで、冷却風をダクトから電装部34の内部に向かって送風し、トランス6を冷却することが考えられる。
しかしながら、トランス6を構成する部材に樹脂が含まれるとき、前述のように、トランス6を劣化させる例えばオゾンガスのような腐食性ガスが冷却風に混入しないように、腐食性ガスを取り除くフィルタを設けるなど、装置が複雑化する問題があった。また、ダクトを設けると装置が大型化するという問題もあった。
【0019】
そこで、本発明の目的は、電装部を密閉しつつ、その密閉された電装部の内部を冷却する紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、放電容器と該放電容器の放電空間を介して対向配置された電極とからなるエキシマランプと、複数の該エキシマランプにそれぞれ電気的に接続されたトランスと、該複数のエキシマランプと該複数のトランスとを保持すると共に、該複数のエキシマランプと該複数のトランスとの間に設けられた隔壁を具備する筐体と、該筐体内で該隔壁を介して該複数のトランスを取り囲む電装部と、からなる紫外線照射装置において、該電装部には、冷却液の流路を具備する冷却手段が設けられ、該各トランスの外方には、該各トランスを個別に囲うと共に、該トランスを介して対向された一対の開口部を具備した風洞体が設けられ、該電装部の内部には、該風洞体の一方の開口部から他方の開口部に送風する送風手段が設けられたことを特徴とする。
【0021】
第2の発明に係る紫外線照射装置は、第1の発明に係る紫外線照射装置において、該隔壁は、その内部に冷却液の流路を具備した冷却手段で構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明に係る紫外線照射装置は、上記特徴により、トランスを冷却することができる。
【0023】
第2の発明に係る紫外線照射装置は、上記特徴により、エキシマランプからの照射熱を冷却手段で構成した隔壁によって冷却し、トランスが照射熱で加熱されることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る紫外線照射装置は、トランスを取り囲む電装部に冷却液の流路を具備する冷却手段が設けられ、トランスの外方に一対の開口部を有する風洞体が設けられ、風洞体の一方の開口部から他方の開口部に送風する送風手段が設けられる。
まず、本発明の第1の実施例に係る紫外線照射装置は、冷却手段が電装部側側壁に設けられた構成について説明する。
【0025】
図1は、第1の実施例に係る紫外線照射装置1の説明図であり、紫外線照射装置1に具備されたエキシマランプ2の管軸方向に対して直交する断面図である。図2は、図1の紫外線照射装置1のエキシマランプ2の管軸方向に沿った断面図(図1において紫外線照射装置1のA−A断面図)である。
なお、図1及び図2には、図6に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0026】
第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、真空紫外線を照射するエキシマランプ2を具備したランプユニット11と、被照射物Wを搬送する搬送ユニット12とにより構成される。
【0027】
ランプユニット11は、エキシマランプ2と、エキシマランプ2への給電電圧を昇圧するトランス6と、エキシマランプ2とトランス6とを保持する筐体3とにより構成され、その詳細な構成について以下に述べる。
【0028】
筐体3には、その内部にエキシマランプ2とトランス6とが配置されており、エキシマランプ2とトランス6との間に隔壁32が設けられ、エキシマランプ2が位置する光源部35とトランス6が位置する電装部34とが設けられる。
【0029】
筐体3の電装部34は、トランス6を載置する長方形平面を有する板状の隔壁32と、隔壁32の長方形平面の周縁に連接されると共にトランス6の四方を取り囲む電装部側側壁341(図1における隔壁32の長方形平面に対して垂直方向の紙面上方に伸びる電装部側側壁341と、図2における隔壁32の長方形平面に対して垂直方向の紙面上方に伸びる電装部側側壁341)と、電装部側側壁341に蓋をするように設けられた天板31とにより構成された六面構造からなり、その内部に密閉空間を有する。
電装部34の密閉空間に複数のトランス6が配置されることで、複数のトランス6は電装部34に取り囲まれた状態になる。
【0030】
電装部34を構成する部材としては、例えばアルマイト処理を施したアルミニウム又はステンレスからなる耐オゾン性を有する金属部材が挙げられる。
【0031】
筐体3の光源部35は、エキシマランプ2の両端を保持するランプ保持体36と、ランプ保持体36が設けられると共に長方形平面を有する板状の隔壁32と、隔壁32の長方形平面の周縁に連接されると共にエキシマランプ2の四方を取り囲む光源部側側壁351(図1における隔壁32の長方形平面に対して垂直方向の紙面下方に伸びる光源部側側壁351と、図2における隔壁32の長方形平面に対して垂直方向の紙面下方に伸びる光源部側側壁351)とにより構成された五面構造からなる。
光源部35には、光源部側側壁351に蓋をすると共に隔壁32に対向するように、例えば石英ガラスのような真空紫外線を透過する部材からなる板状の光透過窓4が設けられる。
光透過窓4が設けられた光源部35は、その内部に複数のエキシマランプ2が配置されることで、複数のエキシマランプ2は光源部35と光透過窓4に取り囲まれた状態になる。
【0032】
光源部35を構成する部材としては、例えばアルマイト処理を施したアルミニウム又はステンレスからなる耐紫外線性及び耐オゾン性を有する金属部材が挙げられる。
【0033】
複数のエキシマランプ2には、それぞれ個別のトランス6が設けられる。例えば図1においては、三本のエキシマランプ2が記載されており、各エキシマランプ2の後述する内側電極(図1及び図2には不図示、後述する図3における符号222)にそれぞれ給電線5を介して個別のトランス6が電気的に接続される。
【0034】
各エキシマランプ2と各トランス6とを電気的に接続する給電線5を挿通するため、隔壁32には、電装部34と光源部35とを連通する貫通孔331が設けられる。隔壁32に設けた貫通孔331は、エキシマランプ2とトランス6との間に位置する隔壁32の一部を削除するように設けられ、例えば図1のようにエキシマランプ2が三本設けられた場合には、各エキシマランプ2に対応した三箇所の貫通孔331が設けられる。
隔壁32に設けた貫通孔331には、エキシマランプ2とトランス6とを電気的に接続する給電線5が挿通された状態で、光源部35の内部と電装部34の内部とを連通しないように空間的に隔てるため、例えばポリプロピレンからなる耐オゾン性を有する封止体332が設けられる。
【0035】
電装部34の内部において、複数のトランス6は、隔壁32に載置されると共に、その外方を囲うように風洞体72が設けられる。
風洞体72は、図1に示す断面コ字状部材が、図2に示すようにトランス6の外方を囲うように、エキシマランプ2の管軸方向に沿って伸びるように設けられる。風洞体72には、トランス6を介して対向する一対の開口部721,722が設けられる。風洞体72は、電装部34の内部に配置された複数のトランス6を個別に囲うように複数設けられる。例えば、図1のように三つのトランス6が設けられている場合、風洞体72もトランス6毎に設けられ、合計三つの風洞体72が設けられる。風洞体72を構成する部材としては、例えばガラスエポキシからなる電気絶縁性を有する樹脂部材が挙げられる。
【0036】
風洞体72の一方の開口部721の外方には、一方の開口部721から他方の開口部722に向かって送風する例えば冷却ファンのような送風手段71が設けられている。送風手段71は、トランス6を冷却するために設けられるため、各トランス6に対応する風洞体72毎に設けられる。
【0037】
電装部34の内部には、例えばラジエータなどの熱交換器のような冷却手段73が設けられる。
冷却手段73は、電装部34の内部において、送風手段71を介して一方の開口部721に対向するように配置される。また、第1の実施例に示すように、複数のトランス6を具備する場合、冷却手段73は、複数のトランス6を効率良く冷却するために、各トランスに設けた各風洞体の各一方の開口部72に対向するように、複数配置される。(後述する図4(b)を参照)
冷却手段73には、その内部に冷却液Lが供給・排出されるように、流路731が設けられている。
冷却手段73の流路731は、図2に示すように、電装部34の内部から外部に延びるように、電装部側側壁341に設けた貫通孔342から導出される。
電装部側側壁341の貫通孔342と冷却手段73の流路731との間には、例えばアルミニウムからなる封止体343が設けられ、電装部34の内部を密閉空間に構成する。
電装部34から導出された流路731は、電装部34の外部において、図示しない循環手段が設けられることで、流路731の内部の冷却液Lが循環される。
【0038】
上述したランプユニット11は、搬送ユニット12上に載置されるように設けられる。
搬送ユニット12は、被照射物Wを搬送する複数の円筒状のローラ121と、各ローラ121の中心軸に対して回転駆動させる駆動体121により構成される。
複数の円筒状のローラ121は、ランプユニット11に設けた光透過窓4の平面に並行するように配列される。
【0039】
上述したランプユニット11に具備されるエキシマランプ2の構成の一例について、図3を用いて説明する。
図3は、図1に記載したエキシマランプ2の説明図である。図3(a)はエキシマランプ2を構成する放電容器21の管軸方向に沿った断面図であり、図3(b)はエキシマランプ2を構成する放電容器21の管軸方向に対して直交する拡大断面図(図3(a)のB−B断面の拡大図)である。
なお、図3には、図1及び図2に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0040】
エキシマランプ2は、発光ガスを封入する放電空間214を有した放電容器21と、放電空間214を介して対向配置された電極221,222により構成される。
【0041】
放電容器21は、円筒状の外側管211と、外側管211の内部に位置すると共に外側管211の直径より小径な直径を有する円筒状の内側管212と、円筒状の外側管211の管軸と円筒状の内側管212の管軸とを一致するように保持すると共に外側管211と内側管212との管軸方向の両端に設けた円環状の端壁部213とにより構成された二重管構造からなる。
放電容器21には、外側管211と内側管212と一対の端壁部213とにより取り囲まれた放電空間214が構成され、この放電空間214に例えばキセノンガスのような希ガスが発光ガスとして封入される。
【0042】
放電容器21を構成する部材としては、例えば石英ガラスのように誘電性を有すると共に、200nm以下のピーク波長を有する真空紫外線に対して光透過性を有する部材が挙げられる。
【0043】
放電容器21を構成する内側管212の内周面には、その長手方向に亘って密着するように円筒状の内側電極222が設けられる。
また、放電容器21を構成する外側管211の外周面には、その長手方向に亘って密着するように網状の外側電極221が設けられる。
外側電極221と内側電極222とは、このように設けられることにより、誘電体からなる放電容器21の外側管211と内側管212と放電空間214とを介して対向される。
内側電極222及び外側電極221を構成する部材としては、例えば銅・ニッケル合金のような電気伝導性を有する金属部材が挙げられる。
【0044】
図3で示した内側電極222及び外側電極221には、図1で示したトランス6の不図示の二次側が電気的に接続され、トランス6の不図示の一次側が不図示の高周波電源に電気的に接続される。
また、外側電極221の外周には、例えばアルマイト処理を施したアルミニウム又はステンレスのような金属部材からなるランプ保持体36が設けられることで、外側電極221はランプ保持体36を介して接地される。
【0045】
上述の第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、ランプ点灯時において、図示しない高周波電源からの給電電圧がトランス6によって昇圧され、エキシマランプ2に給電される。
給電されたエキシマランプ2は、一対の電極221,222間の電位差によって、放電容器21の内部に封入した発光ガスによるエキシマ発光が開始され、発光ガスが例えばキセノンガスのとき172nm以下にピーク波長を有する真空紫外線が生じる。放電空間214で生じた真空紫外線は、放電容器21を透過し、エキシマランプ2の外方に照射される。
筐体3の光源部35は例えば窒素ガスのような不活性ガスが充填されるので、エキシマランプ2からの真空紫外線は、不活性ガスに吸収されること無く、光透過窓4を透過して搬送ユニット12側を照射する。
【0046】
搬送ユニット12の駆動体121は、図示しない電源に接続されており、各ローラ121を回転駆動させる。ローラ121上に載置された被照射物Wは、ローラ121の回転駆動によって搬送され、光透過窓4に対向される。例えば、図1においては、被照射物Wは、紙面右側から紙面左側に搬送され、光透過窓4に対向する下方側に移動される。
搬送ユニット12の内部は大気雰囲気であるので、光透過窓4を透過した真空紫外線は、大気中の酸素に一部吸収されるが、搬送された被照射物Wと光透過窓4とが近接配置されることで、酸素に全て吸収される前に被照射物Wに照射される。
【0047】
被照射物Wは、図2に示すように、紙面左右方向において大型であった場合、エキシマランプ2を千鳥状に配置(図2においては、紙面手前側で一方のエキシマランプ2を紙面右側に配置し、紙面奥側で他方のエキシマランプ2を紙面左側に配置)することにより、エキシマランプ2からの真空紫外線が被照射物W全体に照射され、処理される。また、搬送ユニット12の内部において、真空紫外線が酸素に吸収されることでオゾンが生じ、このオゾンによっても被照射物Wは処理される。
【0048】
第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、上述のように、筐体3の電装部34の内部が密閉空間となっていることから、搬送ユニット12で生じたオゾンが電装部34に流入することが防止され、電装部34の内部に配置されたトランス6がオゾンに曝されることを防止できる。
【0049】
第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、ランプ点灯時において、エキシマランプ2への給電電圧をトランス6によって昇圧するため、トランス6が加熱される。第1の実施例に係る紫外線照射装置1におけるトランス6を冷却する構成及びその作用・効果について、風洞体72を示し、これと比較することで説明する。
図4(a)は、比較例に係る紫外線照射装置1の説明図であり、電装部側側壁341の長手方向に沿った断面図である。図4(b)は、第1の実施例に係る紫外線照射装置1の説明図であり、電装部側側壁341の長手方向に沿った断面図(図1におけるC−C断面図)である。
なお、図4には、図1及び図2に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0050】
比較例に係る紫外線照射装置1は、風洞体72を設けていない点で、第1の実施例と相違する。
比較例及び第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、エキシマランプ2が千鳥状に配置されていることから、トランス6もエキシマランプ2の配列に合わせて千鳥状に配置される。これにより、エキシマランプ2とトランス6とを電気的に接続する給電線5は、不所望に長くなることがなく、その取り回しを簡便にすることができる。
【0051】
比較例及び第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、ランプ点灯時において、図示しない電源によって送風手段71及び冷却手段73が稼動される。
比較例及び第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、具備する送風手段71によって、トランス6に冷却風Aを送風する。
比較例に係る紫外線照射装置1のように、具備した複数のエキシマランプ2に個別のトランス6を設ける場合、送風手段71によって送風した冷却風Aがトランス6に衝突したのち拡散してしまう。具体的には、図4(a)に示すように、トランス6に冷却風Aが衝突した後、紙面上側及び下側のトランス6は、電装部側側壁341が無い側に冷却風Aが拡散しており、紙面真ん中側のトランス6に至っては、紙面上下方向に冷却風Aが拡散してしまっている。このように、比較例に係る紫外線照射装置1の場合、トランス6における冷却手段73に対向する側に対して反対側の冷却が不十分となってしまう。
【0052】
第1の実施例に係る紫外線照射装置1の場合は、比較例と同じく具備した複数のエキシマランプ2に個別のトランス6を設けると共に、風洞体72を具備することにより、送風手段71によって送風した冷却風Aがトランス6に衝突したのちの拡散を防止することができる。具体的には、図4(b)に示すように、筐体3の電装部34に、各トランス6を個別に囲うと共にトランス6を介して対向された一対の開口部721,722を具備した風洞体72が設けられ、且つ、送風手段71が風洞体72の一方の開口部721に設けられると共に、送風手段71によって風洞体72の一方の開口部721から他方の開口部722に向かって冷却風Aが送風される。この構成により、送風手段71からの冷却風Aは、風洞体72の内方を通ることで拡散されること無く、風洞体72の内方に配置されたトランス6に好適に吹付けられ、加熱されたトランス6を好適に冷却することができる。
第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、筐体3の電装部34が密閉空間に構成されることにより、風洞体72の他方の開口部722から加熱されたトランス6によって高温になった排熱風が導出され、筐体3の内部を循環される。第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、電装部34の密閉空間に、冷却液Lの流路731を具備する冷却手段73が設けられることにより、加熱されたトランス6からの排熱風が冷却手段73によって熱交換され、密閉された電装部34を冷却することができる。この冷却手段73は、送風手段721を介して、各トランス6に個別に対向配置されることから、冷却手段73によって熱交換された冷却風Aを各トランス6に好適に吹付けることができる。
【0053】
上述のように、第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、電装部34を密閉空間に構成しつつ、該電装部34には、冷却液Lの流路731を具備する冷却手段73が設けられ、該各トランス6の外方には、該各トランス6を個別に囲うと共に、該トランス6を介して対向された開口部721,722を具備した風洞体72が設けられ、該電装部34の内部には、該風洞体72の一方の開口部721から他方の開口部722に送風する送風手段71が設けられたことを特徴とする。これにより、第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、電装部34の内部を外部からの腐食性ガスの進入が防止されつつ、電装部34の内部を冷却手段73によって熱交換して高温になることを防止でき、高温になることを防止された電装部34の内部で風洞体72の内方に配置したトランス6を送風手段71によって冷却することができる。
【0054】
なお、第1の実施例に係る紫外線照射装置1は、光透過窓4を設けた構成について説明したが、本発明に係る紫外線照射装置1は、電装部34に配置したトランス6が腐食性ガスに曝されることを防止できればよく、電装部34の内部と光源部35との内部とが大気的に連通していない構成であれば、光透過窓を設けなくてもかまわない。
また、本発明に係る紫外線照射装置1に具備されるエキシマランプ2は、放電空間214と誘電体21を介して一対の電極221,222が対向配置され、真空紫外線を照射するものであればかまわなく、例えば、上述した特許文献3のように、一対の電極221,222が放電容器21の外面に設けられたエキシマランプ2であってもかまわない。
【0055】
上述の第1の実施例に係る紫外線照射装置1においては、電装部34の内部に冷却手段73を設けたが、隔壁32を冷却手段73で構成した紫外線照射装置1について、第2の実施例として説明する。
【0056】
図5は、第2の実施例に係る紫外線照射装置1の説明図であり、紫外線照射装置1に具備されたエキシマランプ2の管軸方向に対して直交する断面図である。
なお、図5には、図1に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0057】
図5に示した紫外線照射装置1は、隔壁32を冷却手段73で構成した点で、図1に示した紫外線照射装置1と相違する。
図5に示した紫外線照射装置1の説明として、図1で示した紫外線照射装置1の説明と共通する部分を省略し、図1との相違点について述べる。
【0058】
トランス6を載置する隔壁32は、例えばアルマイト処理を施したアルミニウムからなる熱伝導性を有する金属部材により構成され、その内部に冷却液Lを流通される流路731が設けられることで、冷却手段73として構成される。
【0059】
このように、第2の実施例に係る紫外線照射装置1は、隔壁32が、冷却手段73で構成されると共に、電装部34の密閉空間の熱交換を可能とする熱伝導性を有する部材で構成されることで、ランプ点灯時において、トランス6の熱を奪った排熱風が隔壁32を構成する冷却手段73によって熱交換され、密閉された電装部34を冷却することができる。
【0060】
また、エキシマランプ2から照射される光には、真空紫外線以外にも異なる波長域の光が含まれており、その光の中には、隔壁32を加熱する光も含まれている。また、エキシマランプ2からは、給電されることで加熱されるので、その輻射熱が放射されている。
第2の実施例に係る紫外線照射装置1は、エキシマランプ2とトランス6との間に位置する隔壁32を冷却手段73によって構成することにより、エキシマランプ2からの照射熱や輻射熱を隔壁32によって熱交換され、トランス6が加熱されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施例に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る紫外線照射装置に具備されるエキシマランプの説明図である。
【図4】比較例に係る紫外線照射装置と本発明の第1の実施例に係る紫外線照射装置とを比較した説明図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係る紫外線照射装置の説明図である。
【図6】従来に係る紫外線照射装置の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 紫外線照射装置
11 ランプユニット
12 搬送ユニット
121 ローラ
122 駆動体
2 エキシマランプ
21 放電容器
211 外側管
212 内側管
213 端壁部
214 放電空間
221 外側電極
222 内側電極
3 筐体
31 天板
32 隔壁
331 貫通孔
332 封止体
34 電装部
341 電装部側側壁
342 貫通孔
343 封止体
35 光源部
351 光源部側側壁
36 ランプ保持体
4 光透過窓
5 給電線
6 トランス
71 送風手段
72 風洞体
721 一方の開口部
722 他方の開口部
73 冷却手段
731 流路
A 冷却風の流れ
L 冷却液の流れ
W 被照射物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器と該放電容器の放電空間を介して対向配置された電極とからなるエキシマランプと、
複数の該エキシマランプにそれぞれ電気的に接続されたトランスと、
該複数のエキシマランプと該複数のトランスとを保持すると共に、該複数のエキシマランプと該複数のトランスとの間に設けられた隔壁を具備する筐体と、
該筐体内で該隔壁を介して該複数のトランスを取り囲む電装部と、
からなる紫外線照射装置において、
該電装部には、冷却液の流路を具備する冷却手段が設けられ、
該各トランスの外方には、該各トランスを個別に囲うと共に、該トランスを介して対向された一対の開口部を具備した風洞体が設けられ、
該電装部の内部には、該風洞体の一方の開口部から他方の開口部に送風する送風手段が設けられた
ことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
該隔壁は、その内部に冷却液の流路を具備した冷却手段で構成された
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−295923(P2009−295923A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150748(P2008−150748)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】