説明

細菌感染症処置に適用するための有機化合物

本明細書は、ヒト疾患の処置、予防および/または改善に有用な有機化合物を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
発明の分野
本発明は、一般に細菌感染症の処置に関する。ある面において、本発明は、グラム陰性細菌により発症する感染症の処置に関する。より具体的に、ここに記載する本発明は、UDP−3−O−(R−3−ヒドロキシデカノイル)−N−アセチルグルコサミンデアセチラーゼ(LpxC)の活性の阻害によるグラム陰性感染症の処置に関する。本発明は、LpxCの小分子阻害剤、かかる阻害剤を含む医薬製剤、かかる医薬製剤で患者を処置する方法、およびかかる医薬製剤および阻害剤の製造方法に関する。本阻害剤は、グラム陰性感染症の患者を、単独で、および他の抗細菌剤と組み合わせて処置するために使用できる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
過去数十年、抗菌剤耐性の頻度および重篤な感染症への耐性の関与が、憂慮すべき速度で増加している。とりわけ院内病原菌における耐性伝搬の拡大は特に厄介である。米国で毎年発生する200万例を超える院内感染症の中で、50〜60%が細菌の抗菌剤耐性株が原因である。このように、高い割合の耐性菌が、院内感染症に関連する罹病率、死亡率、および費用を増加させる。米国において、院内感染症は、毎年77,000人を超える死亡に関係するかもしくは死亡原因であると考えられ、毎年約50億〜100億ドルの費用に関係するかもしくはかかる費用の原因であると考えられる。グラム陽性菌の中で、最も重要な耐性病原菌はメチシリン(オキサシリン)耐性黄色ブドウ球菌、β−ラクタム耐性および多剤耐性肺炎球菌、およびバンコマイシン耐性腸球菌である。グラム陰性耐性の重要な原因は、クレブシエラ・ニューモニエ、大腸菌、およびプロテウス・ミラビリスにおける広域スペクトルβ−ラクタマーゼ類(ESBLs)、エンテロバクター種およびシトロバクター・フロインデイの間の高レベル第三世代セファロスポリン(Amp C)β−ラクタマーゼ耐性、およびシュードモナス、アシネトバクター、およびステノトロホモナスで観察される多剤耐性遺伝子である。
【0003】
抗細菌耐性の問題は、複数の抗細菌剤に耐性の細菌株の存在により複雑になる。例えば、フルオロキノロン類に耐性であるシュードモナス・エルギノーサ単離株は、事実上別の抗細菌剤に対しても全て耐性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故に、新規抗細菌剤、特に新規作用機序を有する抗細菌剤の必要性がある。医薬品業界での抗細菌剤発見に対する努力のほとんどは、グラム陽性細菌の開発を目的とする。しかしながら、新規グラム陰性抗細菌剤に対する必要性もある。グラム陰性細菌は、一般にグラム陽性細菌よりも遙かに多数の抗細菌剤および化学療法剤に耐性である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
本発明は、新規化合物、該化合物を含む医薬製剤、UDP−3−O−(R−3−ヒドロキシデカノイル)−N−アセチルグルコサミンデアセチラーゼ(LpxC)の阻害方法、およびグラム陰性細菌感染症の処置方法を提供する。
【0006】
一面において、本発明は、式I:
【化1】

〔式中、
Aは、シクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンから選択される2価環基であって、各々水素、ハロゲン、C−Cアルキル、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、アミノ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、および5−7員ヘテロ環からなる群から独立して選択される0〜4個の基で置換されており;
Rは水素、ハロゲン、ヒドロキシルまたはアミノであるか、またはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、ヒドロキシC−Cアルキル、シクロアルキルC−Cアルキル、ヘテロ環C−Cアルキル、シクロアルキルC−Cアルコキシ、ヘテロ環C−Cアルキルオキシ、COOH、CONH、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシカルボニル、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノからなる群から選択され、各々水素、ハロゲン、C−Cアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C−Cアルコキシ、アミノ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、および5−7員ヘテロ環からなる群から独立して選択される0〜4個の基で置換されており;
は水素またはC−Cアルキルであり;
【0007】
は次のものからなる群から選択され:
a) −(CH)C(R2a2b)(CH)OR
b) −(CH)C(R2a2b)(CH)NR
c) −(CH)C(R2a2b)(CH)N(R)COR
d) −(CH)C(R2a2b)(CH)N(R)CONR
e) −(CH)C(R2a2b)(CH)N(R)C(=NH)NR
f) −CHR2a2b
g) −(CH)C(R2a2b)CN
h) −(CH)C(R2a2b)CO
i) −(CH)C(R2a2b)CONR;ここで
2a、R2b、R、R、およびRの各々は、それぞれで独立して以下からなる群から選択され
a) 水素;
b) 置換または非置換C−Cアルキル;
c) 置換または非置換C−Cハロアルキル
d) 置換または非置換アリールC−Cアルキル;
e) 置換または非置換C−CシクロアルキルC−Cアルキル
f) 置換または非置換ヘテロシクリルC−Cアルキル;および
g) 置換または非置換ヘテロアリールC−Cアルキル;または
ジェミナルRおよびRは、それらが結合しているN原子と一体となって、3〜8個の環原子と、N、OおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換ヘテロ環式環を形成し;または
2aおよびR2bは、それらが結合しているC原子と一体となって、3〜8個の環原子と、N、OおよびSからなる群から独立して選択される0〜2個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換飽和環を形成し;
【0008】
は水素またはC−Cアルキルであるか;または
およびRは、介在している原子と共に、3〜8個の環原子を有し、N、OまたはSから独立して選択される0個、1個または2個のさらなる環ヘテロ原子を有する置換または非置換ヘテロ環式環を形成し;
はOH、NH、およびNHOHから選択され;
およびXは独立してO、S(O)、およびNRからなる群から選択され;
は水素、C−Cアルキル、C−CシクロアルキルC−Cアルキル、またはC−Cアルカノイルであり;
およびYは独立して、非置換であるか、または1個以上のRで置換されているC−Cアルキレン基であり;
は結合であるか、または非置換であるか、または1個以上のRで置換されているC−Cアルキレン基であり;
Zは存在しないか、エテニレン(例えば、−CR=CR−)またはエチニレン(例えば、−C≡C−)であり;
は、それぞれ水素およびC−Cアルキルからなる群から独立して選択され;
mおよびnは0、1および2からなる群から選択され、ここで、m+nは1または2であり;
qは0、1、または2であり;そして
rおよびsは独立して0、1、2、3、および4からなる群から選択される。〕
の化合物およびその塩類を提供する。
【0009】
一面において、本発明は、グラム陰性細菌におけるデアセチラーゼ酵素を阻害し、それにより細菌増殖に作用する方法であって、かかる阻害を必要とする患者に式Iの化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0010】
他の面において、本発明は、LpxCを阻害し、それにより細菌感染症の重篤性を調節する方法であって、かかる阻害を必要とする患者に式Iの化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
他の面において、本発明はグラム陰性細菌感染症を有する対象の処置方法であって、それを必要とする対象に抗細菌有効量の式Iの化合物を薬学的に許容される担体と共に投与することを含む、方法を提供する。ある態様において、対象は哺乳動物であり、いくつかの他の態様において、対象はヒトである。
【0012】
他の面において、本発明は、発酵性または非発酵性グラム陰性細菌に阻害量の式Iの化合物を投与する方法を提供する。阻害量の式Iの化合物を発酵性または非発酵性グラム陰性細菌に投与する方法のある態様において、グラム陰性細菌は、シュードモナス・エルギノーサおよび他のシュードモナス種、ステノトロホモナス・マルトフィリア、バークホルデリア・セパシアおよび他のバークホルデリア種、アルカリゲネス・キシロソキシダンス、アシネトバクターの種、腸内細菌科、ヘモフィルス属、モラクセラ属、バクテロイド属、フランシセラ属(Fransicella)、赤痢菌属、プロテウス属、ビブリオ属、サルモネラ属、ボルデテラ属、ヘリコバクター属(Helicobactor)、レジオネラ属、シトロバクター属(Citrobactor)、セラチア属、カンピロバクター属(Campylobactor)、エルシニア属およびナイセリア属からなる群から選択される。
【0013】
他の態様において、本発明は、阻害量の式Iの化合物を、セラチア属、プロテウス属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、シトロバクター属、サルモネラ属、プロビデンシア属、モルガネラ属、セデセア属(Cedecea)、およびエドワージエラ属のような生物からなる群から選択される腸内細菌科および大腸菌のようなグラム陰性細菌に投与する方法を提供する。
【0014】
本発明の他の態様は、有効量の式Iの化合物と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
上に記載したいずれかの化合物を薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、本発明の医薬製剤を提供する。
【0016】
本発明の他の態様は、式Iの化合物と、処置する状態に対する特定の有用性について選択された他の治療剤を併用投与する方法を提供する。
【0017】
例えば、式Iの化合物は、広範な細菌感染症を処置するために他の抗細菌剤と組み合わせて有用である。式Iの化合物は、グラム陰性細菌の既存の抗細菌剤群に対する感受性を高める。ここに開示する化合物と他の抗細菌剤の組合せは、本発明の範囲内である。かかる抗細菌剤は、アンピシリン、ピペラシリン、ペニシリンG、チカルシリン、イミペネム、メロペネム、アジスロマイシン、エリスロマイシン、アズトレオナム、セフェピム、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、テトラサイクリン、テガサイクリン(Tegacyclin)、リファンピシン、およびポリミキシンを含み、これらに限定されない。
本発明の他の面を以下に記載する。
【0018】
発明の詳細な記載
本発明は、新規化合物、グラム陰性細菌のLpxCを阻害する方法、および細菌感染症の新規処置方法を提供する。ここに提供する化合物は、本発明の方法に有用な医薬製剤および医薬に製剤できる。本発明はまた、医薬および医薬製剤、の製造における本化合物の使用、LpxCの阻害における本化合物の使用、および対象の細菌感染症処置における本化合物の使用も提供する。
【0019】
以下の略語および定義を本明細書を通して使用する:
“LpxC”は、UDP−3−O−(R−3−ヒドロキシデカノイル)−N−アセチルグルコサミンデアセチラーゼを意味する略語である。
【0020】
本発明は、式Iの化合物およびその下位式、およびそれへの中間体、ならびに細菌感染症の処置に使用するための本化合物を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、LpxC阻害剤としての本発明の化合物またはその組成物に関する。本化合物は、グラム陰性細菌の生活環の妨害におよびグラム陰性細菌感染症またはそれに関連する生理学的状態の処置または予防に特に有用である。本発明はまた、本発明の化合物または医薬組成物、またはそのキットを少なくとも1種の他の治療剤と組み合わせて使用し、患者におけるグラム陰性細菌感染症の処置または予防のための、組み合わせ治療の方法にも関する。
【0021】
ある種の本発明の化合物は、mが1であり、そしてnが0である式Iの化合物またはその塩類を含む。他の式Iの化合物において、XがOまたはSである。ある種の他の式Iの化合物において、mが1であり、nが0であり、XがOまたはSであり;YがC−Cアルキレンであり;そしてYが結合である。さらに他の式Iの化合物において、mが1であり、nが0であり、XがOまたはSであり;YがC−Cアルキレンであり;Yが結合であり;そしてZがエチニレンである。
【0022】
ある種の他の態様において、式Iの化合物は、mが1であり、nが0であり、XがOまたはSであり;YがC−Cアルキレンであり;Yが結合であり;Zがエチニレンであり;そして
RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cハロアルキル、ヒドロキシC−Cアルキル、シクロアルキルC−Cアルキル、およびヘテロ環C−Cアルキルからなる群から選択され、各々水素、ハロゲン、C−Cアルキル、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、アミノ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、および5−7員ヘテロ環からなる群から独立して選択される0〜4個の基で置換されている、化合物を含む。
【0023】
ある種の他の式Iの化合物は、Aがシクロヘキシレン、フェニレンまたはピリジレンであり、その各々はハロゲン、メチル、ヒドロキシ、アミノまたはメトキシから独立して選択される1個または2個の基で置換されている化合物を含む。ある種の他の式Iの化合物は、Aが非置換であるか、またはフルオロ、クロロ、またはメチルで置換されているフェニレンである化合物を含む。
【0024】
さらに他の式Iの化合物は、Zがエチニレンであり、mが1であり、nが0であり、そしてRがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、ヒドロキシC−Cアルキル、シクロアルキルC−Cアルキル、ヘテロ環C−Cアルキル、COOH、CONH、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシカルボニル、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノからなる群から選択される化合物を提供する。
【0025】
ある種の他の式Iの化合物は、Rがヒドロキシである化合物を含む。
ある種の他の式Iの化合物は、Rが独立して水素またはメチルから選択される化合物を含む。さらに他の式Iの化合物において、Rのそれぞれが水素である。
【0026】
ある種の他の式Iの化合物は、Rが水素またはC−Cアルキルであり、
が:
a) −(CH)C(R2a2b)(CH)OR
b) −(CH)C(R2a2b)(CH)NR
c) −CHR2a2b
からなる群から選択され、R2a、R2b、R、R、およびRの各々が、それぞれで独立して以下からなる群から選択され
a) 水素;
b) 置換または非置換C−Cアルキル;
c) 置換または非置換C−Cハロアルキル;
d) 置換または非置換C−CシクロアルキルC−Cアルキル;および
e) 置換または非置換ヘテロシクリルC−Cアルキル;または
ジェミナルRおよびRは、それらが結合しているN原子と一体となって、3〜8個の環原子と、N、OおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換ヘテロ環式環を形成し;または
2aおよびR2bは、それらが結合しているC原子と一体となって、3〜8個の環原子と、N、OおよびSからなる群から独立して選択される0〜2個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換飽和環を形成し;
rは0または1であり;そして
sは0である
化合物を含む。
【0027】
ある種の他の式Iの化合物は、式II:
【化2】

〔式中、
RはC−CアルキルまたはC−Cシクロアルキルであり;
はCR2a2bORまたはCR2a2bNRであり;
2aは水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、またはC−Cシクロアルキルであり;
2bは水素またはC−Cアルキルであり;
およびRは独立して水素またはC−Cアルキルから選択され;そして
およびRは独立して水素、C−Cアルキル、およびC−Cアルカノイルからなる群から選択される。〕
で示される化合物またはその塩類、およびその互変異性体、塩類、および異性体を含む。
【0028】
ある面において、式IIの化合物は、Rがメチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、またはシクロペンチルである化合物を含む。
【0029】
ある面において、式IIの化合物は、RがCHOH、CHNH、CHMeNH、CMeNH、CH(CF)NH、CH(シクロプロピル)NH、CHNHMe、CHMeNHMe、CMeNHMe、CH(CF)NHMe、CH(シクロプロピル)NHMe、CHNHEt、CHMeNHEt、CMeNHEt、CH(CF)NHEt、CH(シクロプロピル)NHEt、CHNH(シクロプロピル)、CHMeNH(シクロプロピル)、CMeNH(シクロプロピル)、CH(CF)NH(シクロプロピル)、およびCH(シクロプロピル)NH(シクロプロピル)である化合物を含む。
【0030】
ある面において、式IIの化合物は、Rが水素である化合物を含む。
【0031】
ある面において、式IまたはIIの化合物は、Rがメチル、エチル、シクロプロピル、シクロブチル、またはシクロペンチルであり;
がCHOH、CHNH、CHMeNH、CMeNH、CH(CF)NH、CH(シクロプロピル)NH、CHNHMe、CHMeNHMe、CMeNHMe、CH(CF)NHMe、CH(シクロプロピル)NHMe、CHNHEt、CHMeNHEt、CMeNHEt、CH(CF)NHEt、CH(シクロプロピル)NHEt、CHNH(シクロプロピル)、CHMeNH(シクロプロピル)、CMeNH(シクロプロピル)、CH(CF)NH(シクロプロピル)、およびCH(シクロプロピル)NH(シクロプロピル)であり;そして
が水素である
化合物を含む。
【0032】
ある面において、式IまたはIIの化合物は、
が水素、重水素、またはC1−4アルキルであり;そして
がCHOH、CHNH、CHMeNH、CMeNH、CH(CF)NH、CH(シクロプロピル)NH、CHNHMe、CHMeNHMe、CMeNHMe、CH(CF)NHMe、CH(シクロプロピル)NHMe、CHNHEt、CHMeNHEt、CMeNHEt、CH(CF)NHEt、CH(シクロプロピル)NHEt、CHNH(シクロプロピル)、CHMeNH(シクロプロピル)、CMeNH(シクロプロピル)、CH(CF)NH(シクロプロピル)、およびCH(シクロプロピル)NH(シクロプロピル)である、
化合物またはその塩類を含む。
【0033】
さらに他の面において、式IまたはIIの化合物は、
が水素または重水素であり;そして
がCHMeNH、CMeNH、CH(CF)NH、CH(シクロプロピル)NH、CHNHMe、CHMeNHMe、またはCMeNHMeである、
化合物またはその塩類を含む。
【0034】
ある種の他の式Iの化合物において、A基の環水素原子はH、H、およびHおよびそれらの組合せから選択される。ある種の式Iの化合物において、A環の環水素原子は、少なくとも約50%H、または少なくとも約75%、90%、95%、または99%Hである。
【0035】
ある種の他の式IIの化合物において、酸素とR−C≡C−の間に入るメチレン(例えば、YがC−アルキレンであるときの式IのY基)の水素原子は、H、H、およびHおよびそれらの組合せから選択される。ある化合物においてメチレン水素原子は、少なくとも約50%H、または少なくとも約75%、90%、95%、または99%Hである。ある種の他の式IIの化合物において、ヒドロキサム酸に対してα位のメチン水素はH、H、およびHから選択される。ある化合物においてメチン水素は少なくとも約50%H、または少なくとも約75%、90%、95%、または99%H原子である。
【0036】
ある他の面において、本発明は、以下の表Aまたは表Bの化合物から選択される。
【0037】
他の面において、本発明は、グラム陰性細菌におけるデアセチラーゼ酵素を阻害する方法を提供し、該方法は、グラム陰性細菌と本発明の化合物、例えば、式Iの化合物またはその塩を接触させる工程を含む。
【0038】
さらに別の面において、本発明は、グラム陰性細菌に感染している対象を処置する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に抗細菌有効量の本発明の化合物、例えば、式Iの化合物またはその塩と薬学的に許容される担体を投与する工程を含む。
【0039】
ここで使用し、用語“対象”は動物を意味する。ある面において、動物は哺乳動物である。対象はまた例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚類、鳥類なども意味する。ある態様において、対象はヒトである。
【0040】
ここで使用し、用語“阻害”または“阻害する”は、ある状態、症状、または障害、または疾患の減少または抑制、または生物学的活性または過程のベースライン活性の顕著な減少を意味する。
【0041】
ここで使用し、何らかの疾患または障害を“処置する”または“処置”なる用語は、一つの態様において、疾患または障害を軽減すること(すなわち、疾患または少なくともその臨床症状の一つの進行の遅延または停止または軽減)を意味する。他の態様において、“処置する”または“処置”は、少なくとも1個の患者が認識し得ないものも含む物理的パラメータの軽減または回復を意味する。さらに別の態様において、“処置する”または“処置”は、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれか、または両方で疾患または障害を調節することを意味する。さらに別の態様において、“処置する”または“処置”は、疾患または障害の予防または発症もしくは進行の遅延を意味する。
【0042】
ここで使用し、単数表現および本明細書の文脈で使用する類似の用語(特に特許請求の範囲の文脈で)は、ここで特にことわらない限り、または文脈から明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈すべきである。
【0043】
ここに記載する方法はここで特にことわらない限りまたは他の点で明らかに状況に反しない限り、任意の適当な順番で行うことができる。ここに提供する任意のかつ全ての例、または例示的用語(例えば“のような”)は、単に本発明をより明らかにすることを意図し、他に主張されていない限り本発明の範囲を限定する主張ではない。
【0044】
用語“抗細菌剤”は、殺菌または静菌活性を有する実験室で合成されたまたは修飾された薬剤を意味する。この文脈での“活性”剤は、緑膿菌および/または他のグラム陰性細菌の増殖を阻止する。用語“増殖を阻止する”は、特定の細菌の集団の数の増加率が低下することを示す。それ故、本用語は、細菌集団が増加するが、率が低下した状況、ならびに集団の増殖が停止した状況、ならびに集団中の細菌数が減少したまたは集団が除かれさえした状況を含む。酵素活性アッセイを阻害剤のスクリーニングに使用するならば、酵素阻害を増殖阻害と相関させるために、化合物の取り込み/流出、溶解度、半減期などを修飾できる。抗細菌剤の活性は必ずしも細菌に限定されず、寄生虫、ウイルス、および真菌の活性も包含し得る。
【0045】
用語“アルキル”は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基を含む。さらに、表現“C−C−アルキル”(ここで、xは1−5であり、そしてyは2−10である)は、特定の範囲の炭素数の特定のアルキル基(直鎖または分枝鎖)を示す。例えば、表現C−C−アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルおよびsec−ブチルを含み、これらに限定されない。さらに、用語C−C−シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを含み、これらに限定されない。下に記載する通り、これらのアルキル基、ならびにシクロアルキル基はさらに置換されていてよい。“C−Cアルキル”は、1個の共有結合(C)または1〜n個の炭素原子を有するアルキル基を意味する;例えば“C−Cアルキル”は1個の共有結合またはC−Cアルキル基を意味する;“C−Cアルキル”は、1個の共有結合またはC−Cアルキル基を意味する。幾つかの例において、アルキル基の置換基が特定されている。例えば、“C−Cヒドロキシアルキル”は、少なくとも1個のヒドロキシ置換基を有するC−Cアルキル基を意味する。
【0046】
“アルキレン”は、上に定義した、二価アルキル基を意味する。C−Cアルキレンは、1個の共有結合または1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり;そしてC−Cアルキレンは1個の共有結合または1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0047】
“シクロアルキル”は、全環員が炭素である、1個以上の飽和および/または部分的に飽和された環からなる基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、デカヒドロ−ナフタレニル、オクタヒドロ−インデニル、および前記の部分的に飽和された異形、例えばシクロヘキセニルである。シクロアルキル基は芳香環またはヘテロ環式環を含まない。ある種のシクロアルキル基は3〜8個の環員を有する単環を含む基である、C−Cシクロアルキルである。“(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル”は、1個の共有結合またはC−Cアルキレン基を介して結合したC−Cシクロアルキル基である。
【0048】
さらに、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルなど)は、“非置換アルキル”および“置換アルキル”の両方を含み、その後者は、分子に意図する機能を発揮させる、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素に置き換わった置換基を有するアルキル部分を意味する。
【0049】
用語“置換”は、分子上の1個以上の原子、例えばC、OまたはNの水素に置き換わった置換基を有する部分を言うことを意図する。かかる置換基は、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、モルホリノ、フェノール、ベンジル、フェニル、ピペラジン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ピリジン、5H−テトラゾール、トリアゾール、ピペリジン、または芳香族性またはヘテロ芳香族性部分を含み得る。
【0050】
本発明の置換基のさらなる例は、直鎖または分枝鎖アルキル(好ましくはC−C)、シクロアルキル(好ましくはC−C)、アルコキシ(好ましくはC−C)、チオアルキル(好ましくはC−C)、アルケニル(好ましくはC−C)、アルキニル(好ましくはC−C)、ヘテロ環式、炭素環式、アリール(例えば、フェニル)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニルおよびアリールカルボニルまたは他のこのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル、またはヘテロアリール基、(CR’R”)0−3NR’R”(例えば、−NH)、(CR’R”)0−3CN(例えば、−CN)、−NO、ハロゲン(例えば、−F、−Cl、−Br、または−I)、(CR’R”)0−3C(ハロゲン)(例えば、−CF)、(CR’R”)0−3CH(ハロゲン)、(CR’R”)0−3CH(ハロゲン)、(CR’R”)0−3CONR’R”、(CR’R”)0−3(CNH)NR’R”、(CR’R”)0−3S(O)1−2NR’R”、(CR’R”)0−3CHO、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H、(CR’R”)0−3S(O)0−3R’(例えば、−SOH、−OSOH)、(CR’R”)0−3O(CR’R”)0−3H(例えば、−CHOCHおよび−OCH)、(CR’R”)0−3S(CR’R”)0−3H(例えば、−SHおよび−SCH)、(CR’R”)0−3OH(例えば、−OH)、(CR’R”)0−3COR’、(CR’R”)0−3(置換または非置換フェニル)、(CR’R”)0−3(C−Cシクロアルキル)、(CR’R”)0−3COR’(例えば、−COH)、または(CR’R”)0−3OR’基、または天然に存在する任意のアミノ酸の側鎖から選択される部分を含み;ここで、R’およびR”は独立して水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、またはアリール基である。かかる置換基は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、オキシム、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート類、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、または芳香族性またはヘテロ芳香族性部分を含み得る。ある態様において、カルボニル部分(C=Oをさらにオキシム部分で誘導体化してよく、例えばアルデヒド部分をそのオキシム(−C=N−OH)アナログとして誘導体化し得る。当業者には、炭化水素鎖上の置換部分が、適当であればさらに置換され得ることを理解しよう。シクロアルキル類は、例えば、上記置換基でさらに置換され得る。“アラルキル”部分は、アリールで置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(すなわち、ベンジル))である。
【0051】
用語“アルケニル”は、長さおよび可能な置換基は上記アルキル類に準じるが、少なくとも1個の二重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。
【0052】
例えば、用語“アルケニル”は、直鎖アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。用語アルケニルは、さらに炭化水素骨格の1個以上の炭素に置き換わる酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルケニル基を含む。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルケニル基は、その骨格に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC−C、分枝鎖についてはC−C)。同様に、シクロアルケニル基はその環構造中に3−8個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造中に5個または6個の炭素を有する。用語C−Cアルケニルは、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
【0053】
さらに、用語アルケニルは、“非置換アルケニル類”および“置換アルケニル類”の両方を含み、その後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素に置き換わった置換基を有するアルケニル部分を意味する。かかる置換基は、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン類、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族性またはヘテロ芳香族性部分を含み得る。
【0054】
用語“アルキニル”は、長さおよび可能な置換基は上記アルキル類に準じるが、少なくとも1個の三重結合を含む不飽和脂肪族基を含む。
【0055】
例えば、用語“アルキニル”は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分枝鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。用語アルキニルは、さらに、に炭化水素骨格の1個以上の炭素に置き換わる酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含むアルキニル基を含む。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルキニル基は、その骨格に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC−C、分枝鎖についてはC−C)。用語C−Cアルキニルは、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
【0056】
さらに、用語アルキニルは、“非置換アルキニル類”および“置換アルキニル類”の両方を含み、その後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素に置き換わった置換基を有するアルキニル部分を意味する。かかる置換基は、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン類、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族性またはヘテロ芳香族性部分を含み得る。
【0057】
用語“アミン”または“アミノ”は、一般に当分野で理解されている通り、ある分子、または部分または官能基の両方に広く適用されると解釈すべきであり、1級、2級、または3級であり得る。用語“アミン”または“アミノ”は、窒素原子が少なくとも1個の炭素、水素またはヘテロ原子に共有結合している化合物を含む。本用語は、例えば、“アルキルアミノ”、“アリールアミノ”、“ジアリールアミノ”、“アルキルアリールアミノ”、“アルキルアミノアリール”、“アリールアミノアルキル”、“アルカミノアルキル”、“アミド”、“アミド”、および“アミノカルボニル”を含み、これらに限定されない。用語“アルキルアミノ”は、窒素が少なくとも1個のさらなるアルキル基に結合している基および化合物を含む。用語“ジアルキルアミノ”は、窒素原子が少なくとも2個のさらなるアルキル基に結合している基を含む。用語“アリールアミノ”および“ジアリールアミノ”は、窒素が各々少なくとも1個または2個のアリール基に結合している基を含む。用語“アルキルアリールアミノ”、“アルキルアミノアリール”または“アリールアミノアルキル”は、少なくとも1個のアルキル基および少なくとも1個のアリール基に結合したアミノ基を意味する。用語“アルカミノアルキル”は、アルキル基にも結合する窒素原子に結合するアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する。
【0058】
用語“アミド”、“アミド”または“アミノカルボニル”は、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含む化合物または部分を含む。本用語は、カルボニル基に結合したアミノ基に結合したアルキル基、アルケニル基、アリールまたはアルキニル基を含む“アルカミノカルボニル”基または“アルキルアミノカルボニル”基を含む。それは、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合したアミノ基に結合したアリール部分またはヘテロアリール部分を含むアリールアミノカルボニル基およびアリールカルボニルアミノ基を含む。用語“アルキルアミノカルボニル”、“アルケニルアミノカルボニル”、“アルキニルアミノカルボニル”、“アリールアミノカルボニル”、“アルキルカルボニルアミノ”、“アルケニルカルボニルアミノ”、“アルキニルカルボニルアミノ”、および“アリールカルボニルアミノ”は“アミド”の語に包含される。アミド類はまたウレア基(アミノカルボニルアミノ)およびカルバメート類(オキシカルボニルアミノ)を含む。
【0059】
用語“アリール”は、0〜4個のヘテロ原子を含み得る5および6員単環芳香族基、例えば、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアチアゾール(isothiaozole)、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどを含む。さらに、用語“アリール”は多環状アリール基、例えば、三環式、二環式、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、アントリル、フェナントリル、ナプトリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンを含む。環構造にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は、“アリールヘテロ環”、“ヘテロ環”、“ヘテロアリール類”または“ヘテロ芳香族”とも呼び得る。芳香環は、例えば、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル(alkylaminoacarbonyl)、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族性またはヘテロ芳香族性部分のような置換基で、1個以上の環位置を置換され得る。アリール基はまた芳香族ではない脂環式環またはヘテロ環式環と縮合または架橋して、多環(例えば、テトラリン)を形成できる。
【0060】
ここに記載するある種のアリール基は、C−C10アリールC−Cアルキル基(すなわち、少なくとも1個の芳香環を含む6〜10員炭素環式基が1個の共有結合またはC−Cアルキレン基を介して結合している基)である。かかる基は、例えば、フェニルおよびインダニル、ならびにC−Cアルキレン、好ましくはC−Cアルキレンを介して結合している上記のいずれかの基を含む。1個の共有結合またはC−Cアルキレン基を介して結合したフェニル基は、フェニルC−Cアルキル(例えば、ベンジル、1−フェニル−エチル、1−フェニル−プロピルおよび2−フェニル−エチル)と呼ぶ。
【0061】
ここで使用する用語ヘテロアリールは、少なくとも1個の環が芳香族性であり、1〜4個のO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子を含む、各環が最大7個までの原子の安定な単環式または二環式環を意味する。この定義に入るヘテロアリール基は次のものを含み、これらに限定されない:アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリン。以下のヘテロ環と同様、“ヘテロアリール”はまた全ての窒素含有ヘテロアリールのN−オキシド誘導体を含むと理解される。ヘテロアリール置換基が二環式であり、1個の環が非芳香族性であるかまたはヘテロ原子を含まない場合、結合は各々芳香環またはヘテロ原子含有環を介すると解釈される。
【0062】
ここで使用する用語“ヘテロ環”または“ヘテロシクリル”は、1〜4個のO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子を含む5〜10員芳香族性または非芳香族性ヘテロ環を意味し、二環式基を含むことを意図する。“ヘテロシクリル”は、それ故に、上記ヘテロアリール類、ならびにそのジヒドロおよびテトラヒドロ(tetrathydro)アナログを含む。“ヘテロシクリル”のさらなる例は、以下のものを含み、これらに限定されない:ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、およびそれらのN−オキシド類。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子またはヘテロ原子を介して起こり得る。
【0063】
“ヘテロ環C−Cアルキル”は、1個の共有結合またはC−Cアルキレン基を介して結合するヘテロ環式基である。(4〜7員ヘテロ環)C−Cアルキルは、1個の共有結合または1〜8個の炭素原子を有するアルキレン基を介して結合する4〜7個の環員を有するヘテロ環式基(例えば、単環式または二環式)である。“(6員ヘテロアリール)C−Cアルキル”は、直接結合またはC−Cアルキル基を介して結合するヘテロアリール基である。
【0064】
用語“アシル”は、アシル基(CHCO−)またはカルボニル基を含む化合物および部分を含む。用語“置換アシル”は、水素原子の1個以上が例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン類、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族性またはヘテロ芳香族性部分で置き換えられているアシル基を含む。
【0065】
用語“アシルアミノ”は、アシル部分がアミノ基に結合している部分を含む。例えば、本用語はアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド基を含む。
【0066】
用語“アルコキシ”は、酸素原子に共有結合した置換および非置換アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例はメトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基を含み、シクロペントキシのような環状基を含み得る。置換アルコキシ基の例は、ハロゲン化アルコキシ基を含む。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族性またはヘテロ芳香族性部分のような基で置換されていてよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシなどを含み、これらに限定されない。
【0067】
用語“カルボニル”または“カルボキシ”は、二重結合で酸素原子に結合した炭素を含む化合物および部分、およびその互変異性形態を含む。カルボニルを含む部分の例は、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、アミド類、エステル類、無水物などを含む。用語“カルボキシ部分”または“カルボニル部分”は、アルキル基がカルボニル基に共有結合した“アルキルカルボニル”基、アルケニル基がカルボニル基に共有結合した“アルケニルカルボニル”基、アルキニル基がカルボニル基に共有結合した“アルキニルカルボニル”基、アリール基がカルボニル基に共有結合した“アリールカルボニル”基のような基を意味する。さらに、本用語はまた、1個以上のヘテロ原子がカルボニル部分に共有結合している基も意味する。例えば、本用語は、例えば、アミノカルボニル部分(窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している、例えば、アミド)、酸素および窒素原子が両方ともカルボニル基の炭素に結合しているアミノカルボニルオキシ部分(例えば、“カルバメート”とも呼ぶ)のような部分を含む。さらに、アミノカルボニルアミノ基(例えば、ウレア類)ならびにヘテロ原子に結合したカルボニル基(例えば、窒素、酸素、硫黄などならびに炭素原子)の他の組合せも同様に包含される。さらに、ヘテロ原子は、1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシルなどの部分でさらに置換され得る。
【0068】
用語“チオカルボニル”または“チオカルボキシ”は、二重結合で硫黄原子に結合した炭素を含む化合物および部分を含む。用語“チオカルボニル部分”は、カルボニル部分に類似する部分を含む。例えば、“チオカルボニル”部分は、アミノ基がチオカルボニル基の炭素原子に結合したアミノチオカルボニルを含み、さらに他のチオカルボニル部分は、オキシチオカルボニル類(炭素原子に結合した酸素)、アミノチオカルボニルアミノ基などを含む。
【0069】
用語“エーテル”は、2個の異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物または部分を含む。例えば、本用語は、他のアルキル基に共有結合した酸素原子に共有結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する“アルコキシアルキル”を含む。
【0070】
用語“エステル”は、カルボニル基の炭素原子に結合した酸素原子に結合した炭素原子またはヘテロ原子を含む化合物および部分を含む。用語“エステル”は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどのようなアルコキシカルボキシ基を含む。アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は上で定義した通りである。
【0071】
用語“ヒドロキシ”または“ヒドロキシル”は、−OHまたは−Oを有する基を意味する。
用語“ハロゲン”は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。用語“過ハロゲン化”は、一般に全水素がハロゲン原子に置き換わった部分を意味する。
【0072】
用語“多環状”または“多環基”は、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通する2個以上の環(例えば、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類および/またはヘテロシクリル類)を有する部分を含み、例えば、本環は“縮合環”であり得る。非隣接原子を介して結合した複数環は“架橋”環である。多環の環のいずれも上記したような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノaカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、または芳香族性またはヘテロ芳香族性部分で置換され得る。
【0073】
用語“ヘテロ原子”は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄およびリンである。
【0074】
さらに、句“その任意の組合せ”は、記載された官能基および分子の任意の数を組み合わせて、大きな分子構造を形成し得ることを意味する。例えば、用語“フェニル”、“カルボニル”(または“=O”)、“−O−”、“−OH”、およびC1−6(すなわち、−CHおよび−CHCHCH−)を組み合わせて3−メトキシ−4−プロポキシ安息香酸置換基を形成できる。官能基および分子を組み合わせて大きな分子構造を形成するとき、各原子の原子価を充足するために必要に応じて水素を除去したり付加したりできると解釈されるべきである。
【0075】
ここに記載する本発明の化合物の全ては、さらに各原子の原子価を充足するために必要に応じて隣接原子および/または水素への結合を含むと解釈すべきである。すなわち、結合および/または水素原子を、以下の各原子について以下の総結合数を提供するよう付加する:炭素:4個の結合;窒素:3個の結合;酸素:2個の結合;および硫黄:2個の結合。
【0076】
“場合により置換されていてよい”基は、非置換であるか、または水素以外で、1個所以上の利用可能な位置を、典型的に1個所、2個所、3個所、4個所または5個所を1個以上の適当な基(これは同一でも異なってもよい)で置換されている。場合による置換はまた句“置0〜X個の置換で基換されている”(ここで、Xは可能な置換基の最大数である)によっても示される。ある種の場合により置換されていてよい基は、0〜2個、3個または4個の独立して選択される置換基で置換されている(すなわち、非置換であるか、または記載された最大数までの置換基で置換されている)。
【0077】
本発明の化合物のいくつかの構造は不斉炭素原子を含むことに注意すべきである。従って、かかる不斉により生じる異性体(例えば、全ての鏡像体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体)は本発明の範囲内に含まれると解釈すべきである。かかる異性体は、古典的分離方法によりおよび立体化学的に制御された合成により実質的に純粋な形態で得ることができる。さらに、本明細書に記載した構造および他の化合物および部分はまたその互変異性体の全てを含む。ここに記載する化合物は当分野で認識されている合成法により得られ得る。
【0078】
本発明の化合物の全ての不斉原子(例えば、炭素など)はラセミ体で、または鏡像体富化されて、例えば(R)−、(S)−または(R,S)−配置で存在できる。ある態様において、各不斉原子は、(R)−または(S)−配置で少なくとも50%鏡像体過剰、少なくとも60%鏡像体過剰、少なくとも70%鏡像体過剰、少なくとも80%鏡像体過剰、少なくとも90%鏡像体過剰、少なくとも95%鏡像体過剰、または少なくとも99%鏡像体過剰である。不飽和結合を有する原子の置換基は、可能であれば、cis−(Z)−またはtrans−(E)−形態で存在し得る。
【0079】
従って、ここで使用する本発明の化合物は、可能な異性体、回転異性体、アトロプ異性体、互変異性体またはそれらの混合物の一つ、例えば、実質的に純粋な幾何(cisまたはtrans)異性体、ジアステレオマー、光学異性体(アンチポード)、ラセミ体またはそれらの混合物の形態であり得る。
【0080】
異性体の全ての得られる混合物は、成分の物理化学的差異に基づき、純粋なまたは実質的に純粋な幾何または光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ体に、例えば、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶により分離できる。
【0081】
最終生成物または中間体の全ての得られるラセミ体は、既知方法により、例えば、光学活性酸または塩基と得たそのジアステレオマー塩類を分離し、光学活性酸性または塩基性化合物を遊離することにより、光学アンチポードに分割できる。特に、塩基性部分をこのように用いて、本発明の化合物を、例えば、光学活性酸、例えば、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジ−O,O’−p−トルオイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸またはカンファー−10−スルホン酸と形成した塩の分別結晶により光学アンチポードに分割するために用い得る。ラセミ生成物もキラルクロマトグラフィー、例えば、キラル吸着剤を使用する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分割できる。
【0082】
本発明の化合物は遊離形、その塩、またはそのプロドラッグ誘導体として得られる。
本発明の化合物のいくつかの置換基は異性体環状構造を含むことも注意すべきである。従って特定の置換基の構成異性体は、特にことわらない限り本発明の範囲内に包含されると解釈すべきである。例えば、用語“テトラゾール”はテトラゾール、2H−テトラゾール、3H−テトラゾール、4H−テトラゾールおよび5H−テトラゾールを含む。
本発明の化合物はまた分子内塩、例えば、双性イオン分子も形成し得る。
【0083】
本発明はまた、インビボで本発明の化合物に変換する本発明の化合物のプロドラッグも提供する。プロドラッグは、対象へのプロドラッグの投与後に、インビボでの加水分解、代謝などの生理学的作用を介して本発明の化合物へと化学的に修飾される活性なまたは不活性な化合物である。プロドラッグを製造および使用する適性および方法は当業者に周知である。プロドラッグは概念的に2個の非排他的カテゴリー、生物学的前駆体プロドラッグおよび担体プロドラッグに分けることができる。The Practice of Medicinal Chemistry, Ch. 31-32 (Ed. Wermuth, Academic Press, San Diego, Calif., 2001)参照。一般に、生物学的前駆体プロドラッグは、不活性であるか対応する活性医薬化合物と比較して活性が低く、1個以上の保護基を含み、代謝または加溶媒分解により活性形態に変換される化合物である。活性医薬形態および全ての遊離される代謝産物は許容できる低毒性でなければならない。
【0084】
担体プロドラッグは、例えば、取り込みおよび/または作用部位への局在化送達を改善し、輸送部分を含む医薬化合物である。かかる担体プロドラッグに望まれるのは、医薬部分と輸送部分の間の結合が級友結合であり、プロドラッグは不活性であるかまたは医薬化合物より活性が低く、そして全ての遊離される輸送部分は許容される非毒性でなければならない。輸送部分が取り込みを改善することが意図されるプロドラッグについて、典型的に輸送部分の遊離は急速でなければならない。他の場合に、ゆっくりした放出を提供する部分、例えば、ある種のポリマー類またはシクロデキストリン類のような他の部分を利用することが望ましい。担体プロドラッグは、例えば、以下の特性の1個以上を改善するために使用し得る:親油性増加、薬理学的作用時間延長、部位特異性増大、毒性および有害反応減少、および/または薬剤の製剤改善(例えば、安定性、水溶解度、望まない感覚刺激性または物理化学的特性の抑制)。例えば、親油性は、(a)親油性カルボン酸類(例えば、少なくとも1個の親油性部分を有するカルボン酸)のヒドロキシル基での、または(b)親油性アルコール類(例えば、少なくとも1個の親油性部分を有するアルコール、例えば脂肪族アルコール類)のカルボン酸基でのエステル化により増加できる。
【0085】
例示的プロドラッグは、例えば、遊離カルボン酸類のエステル類およびチオール類のS−アシル誘導体およびアルコール類またはフェノール類のO−アシル誘導体であって、ここで、アシルはここに定義した意味を有する。好ましいのは、生理学的条件下での加溶媒分解により親カルボン酸に変換可能な薬学的に許容されるエステル誘導体、例えば、当分野で慣用的に使用される低級アルキルエステル類、シクロアルキルエステル類、低級アルケニルエステル類、ベンジルエステル類、モノ−またはジ−置換低級アルキルエステル類、例えばα−(アミノ、モノ−またはジ−低級アルキルアミノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル)−低級アルキルエステル類、α−(低級アルカノイルオキシ、低級アルコキシカルボニルまたはジ−低級アルキルアミノカルボニル)−低級アルキルエステル類、例えばピバロイルオキシメチルエステルなどである。加えて、アミン類は、インビボでエステラーゼ類により開裂され、遊離医薬およびホルムアルデヒドを放出するアリールカルボニルオキシメチル置換誘導体としてマスクされている(Bundgaard, J. Med. Chem. 2503 (1989))。さらに、イミダゾール、イミド、インドールなどのような酸性NH基を含む医薬は、N−アシルオキシメチル基でマスクされている(Bundgaard, Design of Prodrugs, Elsevier (1985))。ヒドロキシ基は、エステル類およびエーテル類としてマスクされている。EP039,051(Sloan and Little)は、マンニッヒ塩基ヒドロキサム酸プロドラッグ、その製造および使用を開示する。
【0086】
さらに、本発明の化合物は、その塩類を含み、その水和物の形態で得ることができ、またはその結晶化に使用した他の溶媒を含む。
【0087】
ここで使用し、用語“異性体”は、同じ分子式を有するが、原子の配列および配置が異なる、異なる化合物を意味する。またここで使用し、用語“光学異性体”または“立体異性体”は、ある本発明の化合物に存在し得る種々の立体異性体配置の全てを意味し、幾何異性体を含む。置換基は、炭素原子のキラル中心に結合し得ると解釈すべきである。それ故に、本発明は、本化合物の鏡像体、ジアステレオマーまたはラセミ体を含む。“鏡像体”は、互いに重なり合わない鏡像の立体異性体の対である。鏡像体対の1:1混合物は“ラセミ”混合物である。本用語は、適当であればラセミ混合物を指定するために使用する。“ジアステレオ異性体”は、少なくとも2個の不斉原子を有するが、互いに鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学は、カーン・インゴルド・プレローグR−Sシステムに従い特定される。化合物が純粋な鏡像体であるとき、各キラル炭素での立体化学はRまたはSにより特定され得る。絶対配置が未知の分割された化合物は、ナトリウムD線波長で平面偏光を回転させる方向(右旋性または左旋性)によって(+)または(−)と指定できる。ある種のここに記載する化合物は1個以上の不斉中心を有し、それ故に鏡像体、ジアステレオマー、および絶対立体化学の点で(R)−または(S)−と指定し得る他の立体異性形態を生じ得る。本発明は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態および中間混合物を含む、全ての可能なかかる異性体を包含することを意図する。光学活性(R)−および(S)−異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して製造でき、または慣用の技術を使用して分割できる。化合物が二重結合を含むならば、置換基はEまたはZ配置であり得る。化合物が二置換シクロアルキルを含むならば、シクロアルキル置換基はcis−またはtrans−配置を有し得る。全ての互変異性形態も包含することを意図する。
【0088】
ここで使用し、用語“薬学的に許容される塩類”は、本発明の化合物の生物学的有効性および特性を維持し、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない塩類を意味する。多くの場合、本発明の化合物は、アミノおよび/またはカルボキシル基またはそれに類する基が存在するため酸および/または塩基塩類を形成できる。薬学的に許容される酸付加塩類が、無機酸類および有機酸類と形成でき、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エディシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプチン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/クロライド、臭化水素酸塩/ブロマイド、ヨウ化水素酸塩/アイオダイド、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ塩酸、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナパシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、サッカラート、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびトリフルオロ酢酸塩である。塩類をもたらし得る無機酸類は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含む。塩類をもたらし得る有機酸類は、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイヒ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などを含む。薬学的に許容される塩基付加塩類は、無機および有機塩基類と形成され得る。塩類をもたらし得る無機塩基類は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどを含む;特に好ましいのはアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩である。塩類をもたらし得る有機塩基類は、例えば、1級、2級、および3級アミン類、天然に存在する置換アミン類を含む置換アミン類、環状アミン類、塩基性イオン交換樹脂など、特に例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンを含む。本発明の薬学的に許容される塩類は親化合物から、塩基性または酸性部分で、慣用の化学法により合成できる。一般に、かかる塩類は遊離酸形態のこれらの化合物と化学量論量の適当な塩基(例えばNa、Ca、Mg、またはKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)を反応させることにより、または遊離塩基形態のこれらの化合物と化学量論量の適当な酸を反応させることにより製造できる。かかる反応は、典型的に水中または有機溶媒中、またはこれら2種の混合物中で行う。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が、許容されるとき、好ましい。さらなる適当な塩類の一覧は、例えば、“Remington's Pharmaceutical Sciences”, 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., (1985); and in “Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use” by Stahl and Wermuth (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)に見ることができる。
【0089】
本発明は全ての薬学的に許容される同位体標識された本発明の化合物、すなわち、1個以上の原子が同じ原子番号を有するが、原子質量または質量数が天然に通常見られる原子質量または質量数と異なる原子で置換されている式Iの化合物を含む。
【0090】
本発明の対象は、1個以上の原子が通常天然に見られる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられている事実以外、上に記載したものと構造は同一である、同位体標識されたLpxC阻害剤も含む。本発明の化合物に包含するのに適当な同位体の例は、水素の同位体、例えばHおよびH、炭素の同位体、例えば11C、13Cおよび14C、塩素の同位体、例えば36Cl、フッ素の同位体、例えば18F、ヨウ素の同位体、例えば123Iおよび125I、窒素の同位体、例えば13Nおよび15N、酸素の同位体、例えば15O、17Oおよび18O、リンの同位体、例えば32P、および硫黄の同位体、例えば35Sを含む。
【0091】
上記した同位体および/または他の原子の他の同位体を含む本発明の化合物、そのプロドラッグ、および該化合物および該プロドラッグの薬学的に許容される塩類は本発明の範囲内にある。ある種の同位体標識された本発明の化合物、例えばHおよび14Cのような放射性同位体が取り込まれた化合物は、薬物および/または基質組織分布アッセイに有用である。トリチウム、すなわち、H、および炭素−14、すなわち、14C、同位体が、その製造の容易さおよび検出能のために特に好ましい。同位体標識された本発明の化合物およびそのプロドラッグは、一般に既知のまたは参照した方法を実施することにより、そして非同位体標識された試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識された試薬を使用して製造できる。
【0092】
本発明は、新規化合物、該化合物を含む医薬製剤、UDP−3−O−(R−3−ヒドロキシデカノイル)−N−アセチルグルコサミンデアセチラーゼ(LpxC)を阻害する方法、およびグラム陰性細菌感染症の処置方法を提供する。
【0093】
重水素、すなわちHのような重い同位体への置換は、大きな代謝安定性に起因するある種の治療的利点、例えば、インビボ半減期延長または必要投与量減少を提供し得て、それ故に、ある状況下で好ましいことがある。例えば、非交換可能炭化水素結合(例えば、C−H)での重水素置換はエピマー化および/またはインビボでの代謝的酸化を遅らせ得る。
【0094】
同位体標識された本発明の化合物、すなわち式Iの化合物は、一般に当分野に既知の慣用法を使用して、または添付する実施例および製造セクションに記載した方法に準じて、適当な同位体標識された反応材を先の標識されていない反応材に変えて使用して製造できる。
【0095】
本発明の化合物を、細菌のエンドトキシン産生により、特に、リポポリサッカライド(LPS)またはエンドトキシンの生合成にLpxCを使用するグラム陰性細菌および細菌により引き起こされる状態の処置に使用できる。
【0096】
本発明の化合物はまた肺炎、敗血症、嚢胞性線維症、または尿路(urinary track)感染症に罹患したまたは罹患した疑いのある患者の処置にも有用である。本発明の化合物はまた敗血症、敗血症性ショック、全身性炎症、局所炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性気管支炎(AECB)の急性増悪のような細菌が産生するリピドAおよびLPSまたはエンドトキシンにより引き起こされる、または悪化する状態に有用である。これらの状態のために、処置は本発明の化合物、または本発明の化合物と場合により第二抗細菌剤または第二非抗細菌剤である第二薬剤の組合せを投与することを含む。
【0097】
敗血症、敗血症性ショック、全身性炎症、局所炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性気管支炎(AECB)の急性増悪について、好ましい第二非抗細菌剤は、エンドトキシン受容体結合抗体、エンドトキシン結合抗体、抗CD14結合タンパク質抗体抗リポポリサッカライド結合タンパク質抗体およびチロシンキナーゼ阻害剤を含む、抗エンドトキシン類を含む。
【0098】
重篤なまたは慢性の呼吸器感染症の処置のために、本発明の化合物をまた吸入により投与される第二非抗細菌剤と共に使用し得る。この処置に使用する好ましい非抗細菌剤は、抗炎症性ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、気管支拡張剤、粘液溶解剤、抗喘息治療剤および肺液体界面活性剤を含む。特に、非抗細菌剤はアルブテロール、サルブテロール、ブデソニド、ベクロメタゾン、デキサメサゾン、ネドクロミル、ベクロメタゾン、フルチカゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、イブプロフェン(ibuprofin)、ロフェコキシブ、ナプロキセン、セレコキシブ、ネドクロミル、イプラトロピウム、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルメテロール(salneterol)、気管支拡張剤、粘液溶解剤、カルファクタント、ベラクタント、ポラクタント・アルファ、サーファキシンおよびパルモザイム(別名ドマーゼ・アルファ)からなる群から選択され得る。
【0099】
本発明の化合物は、単独でまたは第二抗細菌剤と組み合わせて、エンテロバクター・エロゲネス、エンテロバクター・クロアカ、大腸菌、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、プロテウス・ミラビリス、セラチア・マルセセンス、ステノトロホモナス・マルトフィリア、シュードモナス・エルギノーサ、バークホルデリア・セパシア、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)、アルカリゲネス・キシロソキシダンス、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム、プロビデンシア・スチュアルティイおよびシトロバクター・フロインデイにより引き起こされるような重篤な肺および院内感染症を含む重篤なまたは慢性呼吸器感染症、ヘモフィルス・インフルエンザエ、レジオネラ属、モラクセラ・カタラーリス、エンテロバクター属、アシネトバクター属、クレブシエラ属、およびプロテウス属が引き起こすような市中肺感染症、およびナイセリア属、赤痢菌属、サルモネラ属、ヘリコバクター・ピロリ、ビブリオ科およびボルデテラ属のような他の細菌種が引き起こす感染症、ならびにブルセラ属、フランシセラ・ツラレンシスおよび/またはエルシニア・ペスティスにより引き起こされる感染症の処置に使用できる。
【0100】
本発明の化合物は、また他の薬剤、例えば、式Iのものであるまたは式Iのものではないさらなる抗生物質と組み合わせて、対象の細菌感染症の処置にも使用し得る。
【0101】
用語“組合せ”により、一つの投与単位形態での固定された組合せ、または本発明の化合物と組合せ相手を独立して同時にまたは別々に、特に組合せ相手が協調的な、例えば、相乗効果を示す間隔で投与し得る複数パーツのキット、またはその任意の組合せを意味する。
【0102】
グラム陰性細菌の処置に使用するとき、本発明の化合物は、第二薬剤の作用に対してグラム陰性細菌を増感させるために使用できる。
【0103】
本発明の化合物を第二抗細菌剤と組み合わせて使用するとき、抗細菌剤の非限定的例は以下の群から選択され得る:
(1) マクロライド系またはケトライド系、例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシンおよびテリスロマイシン;
(2) ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン、アズロシリン、テモシリンのようなペニシリン、セファロチン(cepalothin)、セファピリン、セフラジン、セファロリジン、セファゾリン、セファマンドール、セフロキシム、セファレキシン、セフプロジル、セファクロル、ロラカルベフ、セフォキシチン、セフメタゾール(cefinetazole)、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフジニル、セフピロム、セフェピムのようなセファロスポリン、およびカルバペネム、イミペネム、メロペネムおよびPZ−601のような系を含むベータ−ラクタム系;
(3) サズトレオナムのようなモノバクタム系;
(4) キノロン系、例えばナリジクス酸、オキソリニン酸、ノルフロキサシン、ペフロキサシン、エノキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、テマフロキサシン、ロメフロキサシン、フレロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、シタフロキサシン、ガネフロキサシン(ganefloxacin)、ゲミフロキサシンおよびパズフロキサシン;
(5) パラ−アミノ安息香酸、スルファジアジン、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールおよびスルファサリジンを含む抗細菌剤スルホンアミド類および抗細菌剤スルファニルアミド類;
(6) アミノグリコシド系、例えばストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、パロマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、シソマイシン、ジベカシン(dibekalin)およびイセパマイシン;
(7) テトラサイクリン系、例えばテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、テガサイクリン(Tegacycline);
(8) リパンフィリン系、例えばリファンピシン(別名リファンピン)、リファペンチン、リファブチン、ベンゾキサジノリファマイシン(bezoxazinorifamycin)およびリファキシミン;
(9) リンコサミド系、例えばリンコマイシンおよびクリンダマイシン;
(10) グリコペプチド系、例えばバンコマイシンおよびテイコプラニン;
(11) ストレプトグラミン系、例えばキヌプリスチンおよびダルホプリスチン(daflopristin);
(12) オキサゾリジオン系、例えばリネゾリド;
(13) ポリミキシン、コリスチンおよびコリマイシン;
(14) トリメトプリムおよびバシトラシン;
(15) 排出ポンプ阻害剤。
【0104】
第二抗細菌剤を本発明の化合物と組み合わせて投与してよく、ここで、第二抗細菌剤は1種または複数種の本発明の化合物の前に、同時にまたは後に投与する。本発明の化合物と第二薬剤の投与が望ましく、投与経路が同じであるならば、本発明の化合物を、第二薬剤と同じ投与形態に製剤できる。本発明の化合物および第二薬剤を含む投与形態の例は、錠剤またはカプセル剤である。
【0105】
重篤なまたは慢性呼吸器感染症の処置に使用するとき、本発明の化合物を単独で、または吸入を介して投与する第二抗細菌剤と組み合わせて使用し得る。吸入の場合、好ましい第二抗細菌剤はトブラマイシン、ゲンタマイシン、アズトレオナム、シプロフロキサシン、ポリミキシン、コリスチン、コリマイシン、アジスロマイシンおよびクラリスロマイシンからなる群から選択される。
【0106】
用語“有効量”の本化合物は、ここに記載する細菌感染症および/または疾患または状態の処置または予防に必要なまたは充分な量である。一例として、有効量のLPXC阻害剤は対象の細菌感染症を処置するのに充分な量である。他の例として、有効量のLPXC阻害剤は、対象のシュードモナス・エルギノーサなどを含み、これに限定されない細菌感染症の処置に充分な量である。有効量は対象の大きさおよび体重、病気のタイプ、または特定の本発明の化合物のような因子により変わり得る。例えば、本発明の化合物の選択は、何が“有効量”を構成するかに影響する。当業者はここに含まれる因子を試験し、過度の実験をせずとも有効量の本発明の化合物の有効量に関する決定をなし得る。
【0107】
投与レジメンは、何が有効量を構成するかに影響する。本発明の化合物を、対象に細菌感染症の発症前にまたは後に投与できる。さらに、数回に分けた投与、ならびにずらした投与量を、毎日または連続的に投与でき、またはその投与は連続的点滴であり得るか、またはボラス注射であり得る。さらに、本発明の化合物の投与量は、治療または予防状況の緊急性により指示される通り比例的に増加または減少できる。
【0108】
本発明の化合物を、ここに記載の状態、障害または疾患の処置に、またはこれらの疾患の処置用医薬組成物の製造に使用し得る。これらの疾患の処置における本発明の化合物の使用方法、またはこれらの疾患の処置のための本発明の化合物を有する医薬製剤。
【0109】
用語“医薬組成物”は、哺乳動物、例えば、ヒトへの投与に適する製剤を含む。本発明の化合物を哺乳動物、例えば、ヒトに医薬として投与するとき、そのままでまたは、例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物として投与できる。
【0110】
句“薬学的に許容される担体”は当分野で認識されており、本発明の化合物を哺乳動物に投与するために適当な薬学的に許容される物質、組成物または媒体を含む。担体は、対象薬剤を一つの臓器または身体の部分から他の臓器または身体の他の部分に運搬または輸送することに関与し、液体または固体増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入物質を含む。各担体は、製剤中の他の成分と適合性であり、患者に有害ではない点で“許容される”ものでなければならない。薬学的に許容される担体として作用し得る物質の幾つかの例は:糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン類、例えばコーンデンプンおよびポテトデンプン;セルロース、およびその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバターおよび坐薬蝋;油類、例えばピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油;グリコール類、例えばプロピレングリコール;ポリオール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル類、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;無発熱源水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;および医薬製剤で用いられる他の非毒性適合性物質を含む。
【0111】
湿潤剤、乳化剤および滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤も本組成物に存在し得る。
【0112】
薬学的に許容される抗酸化剤の例は:水可溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システインヒドロクロライド、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油可溶性抗酸化剤、例えばアスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど;および金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含む。
【0113】
本発明の製剤は、経口、経鼻、吸入、局所、経皮、バッカル、舌下、直腸、膣および/または非経腸投与に適するものを含む。製剤好都合には単位投与量形態で提示され、医薬の分野で周知の任意の方法により製造し得る。一投与量形態を製造するために担体物質と組合せ得る活性成分の量は、一般に治療効果を生じる化合物の量である。一般に、100%ではないが、この量は約1パーセント〜約99パーセント、好ましくは約5パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント〜約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0114】
これらの製剤または組成物を製造する方得は、本発明の化合物と担体および場合により、1個以上の補助成分を結合させる工程を含む。一般に、製剤は、本発明の化合物と液体担体、または微粉砕固体担体、または両方を均一にかつ密接に結合させ、必要であれば、製品を形作ることにより製造する。
【0115】
経口投与に適当な本発明の製剤はカプセル剤、カシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ剤(香味基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用する)、散剤、顆粒剤、または水性または非水性液体中の溶液または懸濁液、または水中油型または油中水型液体エマルジョン剤、またはエリキシル剤またはシロップ剤、または芳香錠(不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用)および/または洗口剤などの形であってよく、各々予定された量の本発明の化合物を活性成分として含む。本発明の化合物はまた大丸薬、舐剤またはペースト剤としても投与してよい。
【0116】
本発明の経口投与用固体投与量形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)において、活性成分を1個以上の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または以下のいずれかと混合する:増量剤またはエキステンダー剤、例えばデンプン類、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸;例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアのような結合剤;湿潤剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天−寒天、炭酸カルシウム、ポテトまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケート類、および炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収加速剤、例えば4級アンモニウム化合物;例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレイ;滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物;および着色剤。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合、医薬組成物は緩衝剤も含み得る。類似のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖類のような賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコール類などを使用する軟または硬充填ゼラチンカプセルにおける充填剤としても用い得る。
【0117】
錠剤は、場合により1個以上の補助成分と共に圧縮または鋳造することにより製造し得る。圧縮錠剤は結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコーレートまたは架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、界面活性または分散剤を使用して製造し得る。鋳造錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械で鋳造することにより製造し得る。
【0118】
本発明の医薬組成物の錠剤、および他の固体投与量形態、例えば糖衣錠、カプセル剤、丸薬および顆粒剤は、場合により割線を入れてよく、またはコーティングおよび殻、例えば腸溶性コーティングおよび製剤分野で周知の他のコーティングを施してよい。それらはまた、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために種々の比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマー物質、リポソーム類および/またはマイクロスフェア類を使用して活性成分のゆっくりしたまたは制御された放出を提供するように製剤してもよい。それらはまた、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過、または滅菌水、またはいくつかの他の滅菌注射可能媒体に使用直前に溶解できる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を包含させることにより、滅菌してよい。これらの組成物はまた場合により乳白剤も含んでよく、活性成分を胃腸管の特定部位にのみまたはそこに優先的に、場合により、遅延された方法で遊離する組成物であってよい。使用できる包埋組成物の例は重合物質および蝋を含む。活性成分を、適当であれば、上記賦形剤の1個以上とマイクロカプセル化もできる。
【0119】
本発明の化合物の経口投与用液体投与量形態は、薬学的に許容されるエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。活性成分に加えて、液体投与量形態は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール類およびソルビタンの脂肪酸エステル類、およびそれらの混合物のような、当分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。
【0120】
不活性希釈剤以外に、経口組成物はアジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および防腐剤を含み得る。
【0121】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキル化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天およびトラガカント、およびそれらの混合物のような、懸濁化剤を含み得る。
【0122】
直腸または膣投与用の本発明の医薬組成物の製剤は、室温で固体であるが体温で液体であり、それ故に直腸または膣腔で融解し活性化合物を放出し、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐薬蝋またはサリチレートを含む、1個以上の本発明の化合物と1個以上の適当な非刺激性賦形剤または担体と混合することにより製造し得る坐薬として提示し得る。
【0123】
膣投与に適当な本発明の製剤はまた、適切であることが当分野で既知のような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤も含む。
【0124】
本発明の化合物の局所または経皮投与用投与量形態は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤を含む。活性化合物を滅菌条件下に薬学的に許容される担体と、必要であろう任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と混合し得る。
【0125】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば動物および植物性脂肪、油類、蝋、パラフィン類、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール類、シリコン類、ベントナイト類、珪酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物を含み得る。
【0126】
粉末およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、賦形剤、例えばラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含み得る。スプレーは、さらに慣用的噴射剤、例えばクロロフルオロハイドロカーボン類および揮発性非置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンを含み得る。
【0127】
経皮パッチは、本発明の化合物の身体への制御された送達を提供するさらなる利点がある。かかる投与量形態は、適当な媒体に化合物を溶解または分散させることにより製造できる。吸収促進剤も化合物の皮膚を通過する流入を増加するために使用できる。かかる流入の速度は、速度制御膜の提供により、または活性化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることにより制御できる。
【0128】
眼科用製剤、眼軟膏、粉末、溶液なども本発明の範囲内であることが意図される。
【0129】
非経腸投与に適当な本発明の医薬組成物は、1個以上の薬学的に許容される滅菌等張水性または非水性溶液、分散剤、懸濁液またはエマルジョンと組み合わせた1個以上の本発明の化合物であるか、または使用直前に滅菌注射可能溶液または分散剤に再構成し得る滅菌粉末であり、それは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図する受け手の血液と製剤を等張にするための溶質または懸濁化剤または濃化剤を含み得る。
【0130】
本発明の医薬組成物に用い得る適当な水性および非水性担体は、水、エタノール、ポリオール類(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適当なそれらの混合物、植物油類、例えばオリーブ油、および注射可能有機エステル類、例えばオレイン酸エチルを含む。例えば、コーティング剤、例えばレシチンの使用により、分散剤の場合必要な粒子径を維持することにより、および界面活性剤の使用により適切な流動性を維持できる。
【0131】
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。微生物の活動の予防は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含により確実にし得る。等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウムなどを組成物に包含させることが望ましいこともある。加えて、注射可能医薬形態の持続した吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延する薬剤の包含により達成され得る。
【0132】
いくつかの場合、薬剤の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水溶解度が低い結晶性または非非晶性物質の液体懸濁液の使用により達成され得る。薬剤の吸収速度は、その溶解速度に依存し、それは結晶サイズおよび結晶形に依存する。あるいは、非経腸的に投与した医薬形態の吸収遅延を、油性媒体に薬剤を溶解または懸濁させることにより達成する。
【0133】
注射可能デポ形態を、対象化合物のマイクロカプセルマトリックスを生分解性ポリマー類、例えばポリラクチド−ポリグリコリド中に形成することにより製造する。薬剤対ポリマーの比率、および用いる特定のポリマーの性質によって、薬剤放出速度が制御できる。他の生分解性ポリマー類の例は、ポリ(オルトエステル類)およびポリ(無水物)を含む。デポ注射可能製剤はまた薬剤を身体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに包含させることにより製造できる。
【0134】
本発明の製剤は、経口的、非経腸的、局所的、または直腸的に投与し得る。それらは当然各投与経路に適する形態で投与する。例えば、それらは錠剤またはカプセル形態で、注射、吸入、眼ローション、軟膏、坐薬などにより投与され、注射、輸液または吸入により;ローションまたは軟膏により局所に;および坐薬により直腸に投与される。経口投与が好ましい。
【0135】
ここで使用する句“非経腸投与”および“非経腸的に投与する”は、経腸および局所投与以外の、通常注射による投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内および胸骨内注射および輸液を含む。
【0136】
ここで使用する句“全身投与”、“全身に投与”、“末梢投与”および“末梢に投与”は、化合物、薬剤または他の物質の、中枢神経系に直接以外の、患者の全身に入り、それ故、代謝等の過程に付されるような投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0137】
これらの化合物を、ヒトおよび他の動物に、経口、例えば、スプレーにより鼻に、直腸に、膣内に、非経腸的に、大槽内におよび局所的に粉末、軟膏または液滴により、バッカルおよび舌下を含む適当な投与経路で投与し得る。
【0138】
選択した投与経路に関係なく、適当な水和された形態で使用し得る本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物を、当業者に既知の慣用法で薬学的に許容される投与量形態に製剤する。
【0139】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性ではなく、特定の患者、組成物、および投与方式の所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変わり得る。
【0140】
選択した投与量レベルは、用いる特定の本発明の化合物、またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排泄速度、処置期間、用いる特定の化合物と併用して使用される他の薬剤、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および以前の薬歴および医薬分野で既知の類似の因子を含む種々の因子による。
【0141】
当分野の通常の技術を有する医師または獣医師は、必要な有効量の医薬組成物を容易に決定し、処方できる。例えば、医師または獣医師は、本発明の化合物の投薬を、所望の効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで医薬組成物で用いることにより開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させ得る。
【0142】
一般に、本発明の化合物の適当な一日量は、治療効果を生じるために有効な最低投与量の化合物の量である。このような有効投与量は、一般に上に記載した因子による。一般に、患者への本発明の化合物の静脈内および皮下投与は、示される鎮痛剤効果を得るために、約0.0001〜約100mg/体重キログラム/日、より好ましくは約0.01〜約50mg/kg/日、なお好ましくは約1.0〜約100mg/kg/日の範囲である。有効量は細菌感染症を処置する量である。
【0143】
望むならば、活性化合物の有効1日投与量を、1日を通して適当な間隔で2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の分割量で、場合により、単位投与量形態で別々に投与してよい。
【0144】
本発明の化合物を単独で投与することは可能であるが、本化合物を医薬組成物として投与することが好ましい。
【0145】
合成法
本発明の化合物を、一般的に利用可能な化合物から、限定はせずに以下の1個以上の条件を含む、当分野で既知の方法を使用して製造する:
【0146】
本明細書の範囲内で、文脈から他の解釈が必要ではない限り、本発明の化合物の特定の所望の最終生成物の構成要素ではない容易に除去できる基のみを、“保護基”と呼ぶ。官能基のかかる保護基による保護、保護基それら自体、およびその開裂は、例えば標準参考書、例えば、Science of Synthesis: Houben-Weyl Methods of Molecular Transformation. Georg Thieme Verlag, Stuttgart, Germany. 2005. 41627 pp. (URL: http://www.science-of-synthesis.com (Electronic Version, 48 Volumes)); J. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973, in T. W. Greene and P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999, in “The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981, in “Methoden der organischen Chemie” (Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, in H.-D. Jakubke and H. Jeschkeit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine” (Amino acids, Peptides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982, and in Jochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate” (Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974に記載されている。保護基の特徴は、容易に(すなわち、望まない副次反応が起こらずに)、例えば加溶媒分解、還元、光分解により、またはあるいは生理学的条件下(例えば、酵素開裂により)除去できることである。
【0147】
少なくとも1個の塩形成基を有する本発明の化合物の塩類は、それ自体既知の方法により製造し得る。例えば、酸基を有する本発明の化合物の塩類は、例えば、化合物を金属化合物、例えば適当な有機カルボン酸類のアルカリ金属塩類、例えば、2−エチルヘキサン酸のナトリウム塩、有機アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物、例えば対応する水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩、例えばナトリウムまたはカリウムの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩、対応するカルシウム化合物またはアンモニアまたは適当な有機アミンと反応させることにより製造し得て、化学量論量または僅かに過剰な塩形成剤を好ましくは使用する。本発明の化合物の酸付加塩類は、慣用法で、例えば、化合物を酸または適当なアニオン交換試薬で処理することにより得る。酸および塩基性塩形成基、例えば、遊離カルボキシ基と遊離アミノ基を含む本発明の化合物の分子内塩を、例えば、塩類、例えば酸付加塩類の、例えば、弱塩基類での等電点までの中和により、またはイオン交換体での処理により形成し得る。
【0148】
塩類を、慣用法で遊離化合物に変換できる;金属およびアンモニウム塩類を、例えば、適当な酸類での処理により変換でき、そして酸付加塩類を、例えば、適当な塩基性試薬での処理により変換できる。
【0149】
本発明により得られる異性体混合物をそれ自体既知の方法で個々の異性体に分離できる;ジアステレオ異性体を、例えば、多相溶媒混合物に分配し、再結晶しおよび/または、例えばシリカゲルクロマトグラフィー分離または、例えば、逆相カラムでの中速液体クロマトグラフィーにより分離でき、ラセミ体を、例えば、光学的に純粋な塩形成試薬と塩を形成させ、このようにして得られるジアステレオ異性体混合物を、例えば分別結晶、または光学活性カラム材でのクロマトグラフィーにより分離することにより分割できる。
【0150】
中間体および最終生成物を、標準法に従い、例えばクロマトグラフィー法、分配法、(再)結晶などを使用して後処理および/または精製できる。
【0151】
一般的方法条件
以下を、本明細書を通して記載される全ての工程に一般に適用する。
本発明の化合物を合成するための工程は、具体的に記載したものを含むそれ自体既知の反応条件下、例えば、使用する反応材に不活性であり、それらを溶解する溶媒または希釈剤を含む溶媒または希釈剤の非存在下、または習慣的に存在下、反応および/または反応体の性質によって触媒、縮合剤または中和剤、例えばイオン交換体、例えば、H形態の、例えばカチオン交換体の非存在下または存在下、低温、常温または高温で、例えば、約−80℃〜約150℃、例えば−80〜−60℃、室温、−20〜40℃または還流温度を含む、例えば約−100℃〜約190℃の温度範囲で、大気圧下または密閉容器中、適当であれば加圧下、および/または不活性雰囲気中、例えばアルゴンまたは窒素雰囲気下に実施できる。
【0152】
反応の全段階で、形成された異性体混合物を個々の異性体、例えばジアステレオ異性体または鏡像体に、または任意の所望の異性体混合物、例えばラセミ体またはジアステレオ異性体の混合物に、例えばScience of Synthesis:Houben-Weyl Methods of Molecular Transformation. Georg Thieme Verlag, Stuttgart, Germany. 2005に記載された方法に準じて分離できる。
【0153】
何らかの特定の反応について適切な溶媒を選択し得る溶媒は具体的に記載しているものを含むものから選択されるか、または、工程の記載において特にことわらない限り、例えば、水、エステル類、例えば低級アルキル−低級アルカノエート類、例えば酢酸エチル、エーテル類、例えば脂肪族エーテル類、例えばジエチルエーテル、または環状エーテル類、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン、液体芳香族性炭化水素、例えばベンゼンまたはトルエン、アルコール類、例えばメタノール、エタノールまたは1−または2−プロパノール、ニトリル類、例えばアセトニトリル、ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレンまたはクロロホルム、酸アミド類、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド、塩基類、例えばヘテロ環式窒素塩基類、例えばピリジンまたはN−メチルピロリジン−2−オン、カルボン酸無水物、例えば低級アルカン酸無水物、例えば酢酸無水物、環状、直鎖または分枝鎖炭化水素、例えばシクロヘキサン、ヘキサンまたはイソペンタン、またはこれらの溶媒の混合物、例えば水性溶液から選択され得る。かかる溶媒混合物はまた、例えばクロマトグラフィーまたは分配による後処理にも使用し得る。
【0154】
本化合物は、その塩類を含み、水和物の形態で得ることもでき、またはそれらの結晶は、例えば、結晶化に使用した溶媒を含み得る。種々の結晶形が存在し得る。
【0155】
本発明はまた、方法の任意の段階で中間体として得られる化合物を出発物質として使用して残りの工程を行うか、または出発物質を本反応条件下で形成させるか、または誘導体の形態、例えば保護された形態または塩の形態で使用するか、または本発明に従う方法で得られる化合物を本方法条件下で使用し、更にそのまま加工する方法の形態にも関する。
【0156】
本発明ははた、インビボでここに記載する本発明の化合物に変換する本発明の化合物のプロドラッグにも関する。本発明の化合物についての全ての記載は、それ故に適切であり、好都合である限り、対応する本発明の化合物のプロドラッグに関する記載としても解釈すべきである。
【0157】
前記によって本発明はさらに別の面において次のものを提供する:
・ a)本発明の化合物、例えば式Iの化合物または任意のその下位式である第一剤、およびb)併用剤、例えば上に定義した第二医薬を含む、医薬組合せ剤。
・ 治療有効量の本発明の化合物、例えば式Iの化合物または任意のその下位式、および併用剤、例えば上に定義した第二医薬を、例えば、同時にまたは連続的に併用投与することを含む、上に定義した方法。
【0158】
ここで用いられる用語“併用投与”または“組合せ投与”などは、選択した複数治療剤の一患者への投与を包含することを意図し、複数薬剤を必ずしも同じ投与経路で、または同時に投与しない処置レジメンを含むことを意図する。固定された組合せも本発明の範囲内である。本発明の医薬組合せの投与は、その薬学的活性成分の1個のみを適用する単剤療法と比較して、有益な効果、例えば相乗的治療効果をもたらす。
【0159】
本発明の組合せの各成分は別々に、一緒に、またはその任意の組合せで投与し得る。
【0160】
本発明の化合物および任意のさらなる医薬を別々の投与量形態で製剤してよい。あるいは、患者に投与する投与量形態の数を減らすために、本発明の化合物および任意のさらなる医薬を任意の組合せで一緒に製剤してよい。例えば、本発明の化合物阻害剤を一つの投与量形態に製剤し、さらなる医薬を一緒に他の投与量形態に製剤してよい。任意の別々の投与量形態を同時にまたは別々の時点で投与してよい。
【0161】
あるいは、本発明の組成物はここに記載するさらなる医薬を含む。各成分は独立した組成物として、組合せ組成物として、または一組成物に存在し得る。
【0162】
発明の例示
本発明を以下の実施例によりさらに説明し、それはさらなる限定と解釈してはならない。実施例を通して使用するアッセイは認められている。これらのアッセイにおける効果の証明は、対象における効果の予測である。
【0163】
一般的合成法
本発明の化合物の合成に使用する全ての出発物質、構成要素、反応剤、酸類、塩基類、脱水剤、溶媒、および触媒は市販されているか、または当業者に既知の有機合成法により製造できる(Houben-Weyl 4th Ed. 1952, Methods of Organic Synthesis, Thieme, Volume 21)。さらに、本発明の化合物を、以下の実施例に示す通り、当業者に既知の有機合成法により製造できる。
【0164】
略語の一覧
【表1】

【表2】

【0165】
HPLC方法:
方法A:
HPLC装置:Gilson
カラム:Waters SunFireTM Prep. C18 OBDTM、5μm、30×100mm。
溶媒:CHCN(0.1%TFA);HO(0.1%TFA)
勾配:0−12分:20−35%CHCN;40mL/分。
【0166】
方法B:
HPLC装置:Gilson
カラム:Waters XTerraR Prep MS C18 OBDTM、5μm、30×100mm。
溶媒:CHCN(3%n−プロパノール);HO(3%n−プロパノール)
勾配:0−15分:10−90%CHCN;20mL/分。
【0167】
LC−MS方法:
方法1:
酸移動相(0.1%ギ酸)の広範な(5−95%)勾配を用いるLC−MS方法。エレクトロスプレー質量スペクトル(+)および(−)、DAD−UVクロマトグラム200−400nm、走査範囲120−1500Da。勾配:5−95%MeCNを2分間(2mL/分)、2μL注入。カラム:Inertsil C8-3、3.0cm×33mm×3.0μm、40℃。
【0168】
方法2:
中性移動相(5mM NH+HCOO−)の広範な(5−95%)勾配を用いるLC−MS方法。エレクトロスプレー質量スペクトル(+)および(−)、DAD−UVクロマトグラム200−400nm、走査範囲120−1500Da。勾配:5−95%MeCNを2分間(2mL/分)、2μL注入。カラム:Inertsil C8-3、3cm×33mm×3.0μm、40℃。
【0169】
方法3:
酸移動相(0.1%ギ酸)および速い勾配を用いる一般的LC−MS方法。エレクトロスプレー質量スペクトル(+)および(−)、DAD−UVクロマトグラム200−400nm、走査範囲120−1500Da。勾配:20−80%MeCNを2分間(2mL/分)、2μL注入。カラム:Inertsil ODS3、3cm×33mm×3.0μm、40℃。
【0170】
方法4:
酸移動相(0.1%ギ酸)およびゆっくりした(0−100%)勾配を用いる極性化合物用LC−MS方法。エレクトロスプレー質量スペクトル(+)および(−)、DAD−UVクロマトグラム200−400nm、走査範囲120−1500Da。勾配:0−100%MeCNを2分間(2mL/分)、2μL注入。カラム:Inertsil ODS3、3cm×33mm×3.0μm、40℃。
【0171】
方法5:
中性移動相(5mM NH+HCOO−)およびゆっくりした(0−100%)勾配を用いる極性化合物用LC−MS方法。エレクトロスプレー質量スペクトル(+)および(−)、DAD−UVクロマトグラム200−400nm、走査範囲120−1500Da。勾配:0−100%MeCNを2分間(2mL/分)、2μL注入。カラム:Inertsil ODS-3、3cm×33mm×3.0μm、40℃
【実施例】
【0172】
実施例1:N−(1−(1−アミノシクロプロピル)−2−(ヒドロキシアミノ)−2−オキソエチル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド(化合物1)
【化3】

【0173】
工程1−A:
【化4】

水素化ナトリウムの鉱油分散液(60重量%、0.17g、7.23mmol)を、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート(1.0g、6.57mmol)のジメチルホルムアミド(20mL)溶液に0℃で添加する。混合物を1時間撹拌し、1−ブロモ−2−ブチン(0.96g、7.23mmol)を添加する。反応混合物を徐々に室温まで温め、一夜撹拌する。反応を塩化アンモニウムの飽和溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機層を塩水で洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:EtOAc/ヘキサン;0:1〜1:1)して、1a(0.79g)を得る。実測値m/z ES+=205。
【0174】
工程1−B:
【化5】

水酸化カリウムの70%メタノール水溶液(1N、19mL)を1a(0.79g、3.87mmol)のTHF(20mL)溶液に添加する。反応を室温で24時間撹拌する。溶媒を真空下で除去し、酢酸エチル(200mL)で希釈し、HClの1N溶液(25mL)でpH2に酸性化する。合わせた有機層を塩水で洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、1b(0.71g)を得る。実測値m/z ES−=189。
【0175】
工程1−C:
【化6】

1c(5.0g、25.0mmol)の塩化メチレン(40mL)およびDMF(10mL)溶液に、連続的にHATU(10.5g、27.5mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(12.0mL、75.0mmol)を添加する。反応を室温で1時間撹拌し、N,O−ジメチルヒドロキシルアミンHCl塩(2.80g、28.0mmol)を添加する。反応を室温で24時間撹拌する。反応を酢酸エチル(200mL)で希釈し、10%クエン酸、重炭酸ナトリウムの飽和溶液および塩水で洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:EtOAc/ヘキサン;0:1〜1:1)して、1d(5.24g)を得る。実測値m/z ES+=245。
【0176】
工程1−D:
【化7】

1d(1.39g、5.73mmol)の塩化メチレン(20mL)溶液を−78℃に冷却し、塩化メチレン中DiBAl−Hの1M溶液に滴下する。反応を−78℃で3時間撹拌し、ロッセル塩の1N溶液(25mL)でクエンチする。水性相を塩化メチレンで抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:EtOAc/ヘキサン;0:1〜1:1)して、1e(0.57g)を得る。実測値m/z ES+=186。
【0177】
工程1−E:
【化8】

化合物1eの水(20mL)およびメタノール(16mL)中の溶液にカリウムシアニド(401mg、6.15mmol)および塩化アンモニウム(329mg、6.15mmol)を添加する。反応を45℃で12時間加熱する。反応を重炭酸ナトリウムの飽和溶液の添加によりクエンチする。水性相を酢酸エチルで抽出する。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、1f(0.20g)を得る。実測値m/z ES+=212。
【0178】
工程1−F:
【化9】

1b(250mg、1.31mmol)の塩化メチレン(10mL)およびDMF(10mL)中の溶液に連続的にHATU(500mg、1.31mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.68mL、3.93mmol)を添加する。反応を室温で1時間撹拌し、1f(200mg、1.0mmol)を反応に添加する。反応を室温で24時間撹拌する。反応を酢酸エチル(100mL)で希釈し、10%クエン酸、重炭酸ナトリウムの飽和溶液および塩水で洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:EtOAc/ヘキサン;0:1〜1:1)して、1g(125mg)を得る。実測値m/z ES+=384。
【0179】
工程1−G:
【化10】

1g(24mg、0.0625mmol)のCHCl(2mL)溶液に乾燥MeOH中HClの飽和溶液(2mL)を添加する。反応を一夜撹拌する。反応を真空で濃縮して、1h(20mg)を得る。実測値m/z ES+=317。
【0180】
工程1−H:
【化11】

1h(20mg、0.079mmol)のメタノール(2mL)およびアセトニトリル(2mL)中の溶液に、ヒドロキシルアミンの50%水溶液(2mL)を添加する。一夜撹拌後、粗反応混合物を逆相クロマトグラフィー(方法A)で直接精製する。生成物の凍結乾燥により、表題化合物1(10mg)を得る。LC−MS方法4、Rt=0.90分;実測値m/z ES+=318およびES−=316。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, TFA塩):δ=9.16 (s, 1H), 8.46 (d, 1H), 7.88 (d, 2H), 7.07 (d, 2H), 4.83 (s, 2H), 4.29 (d, 1H), 1.84 (s, 3H), 1.25 (m, 1H), 1.03 (m, 1H), 0.92-0.82 (m, 5H)。
【0181】
実施例2:N−(3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド(化合物2)
【化12】

【0182】
工程2−A:
【化13】

化合物2aをJ. Chem. Soc. Perkin. Trans. 1, 1999, 2659-2660に記載された方法に従い合成する。
【0183】
工程2−B:
【化14】

塩化チオニル(11.0g、92.4mmol)を、2a(3.00g、18.5mmol)のMeOH(50mL)中の混合物にゆっくり添加し、溶液を8日間、70℃〜75℃で撹拌する。さらにMeOH(5mL)およびSOCl(1.0g)を毎日反応混合物に添加する。揮発物を減圧下除去して、3.90g 固体を生成物2bとして得る。
【0184】
工程2−C:
【化15】

1b(400mg、2.11mmol)、2b(692mg、3.26mmol)、HATU(1.20g、3.16mmol)およびDIPEA(876mg、6.77mmol)の混合物を、ジクロロメタン(20mL)中、60℃で1日間加熱する。揮発物を除去し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、560mg 生成物2cを得る。実測値m/z ES+=349、ES−=347。
【0185】
工程2−D:
【化16】

酢酸(5.86g、9.77mmol)を、2c(690mg、1.98mmol)、EtOH(25mL)、水(1mL)および亜鉛粉末(2.82g、43.4mmol)の反応混合物に添加する。反応混合物を室温で40分間撹拌する。固体を濾過により除去し、EtOHで洗浄する。揮発物を合わせた溶離剤から減圧下除去する。THF(10mL)、DCM(10mL)、NaHCO(飽和水性溶液、15mL)および(Boc)O(950mg、4.36mmol)を蒸発残留物に添加し、混合物を60℃で7時間撹拌する。反応混合物を3回DCMで抽出する。合わせたDCM層をNaSOで乾燥させ、濃縮する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(10%〜30%EtOAc/ヘプタン)により精製して、605mgの2dを得る。実測値m/z ES+=419。
【0186】
工程2−E:
【化17】

2dのキラル分離(カラム:ChiralPak AS-H 21mm×250mm;80%ヘプタン、20%IPA;14mL/分.;22分間ラン分間ラン)により、2個の純粋な鏡像体2e.1(キラルカラムでの最初のピーク)および2e.2(キラルカラムでの二番目のピーク)を得る。
【0187】
工程2−F:
【化18】

トリフルオロ酢酸(2mL)を、2e.2(440mg、1.05mmol)のDCM(10mL)溶液に添加し、反応混合物をrtで半時間撹拌する。揮発物を減圧下除去する。MeOH(5mL)およびNHOH(水性50%、3mL)を残留物に添加後、混合物を一夜室温で撹拌する。反応混合物HPLC(HPLC方法A)で精製し、2含有単離フラクションを凍結乾燥により乾燥させて、391mgをTFA塩として得る。実測値m/z ES+=320およびES−=318。
【0188】
工程2−G
2のTFA塩(153mg)のACN/HO(3:1、15mL)溶液に、HCl(1.0M、水性、530μL、1.5当量)を添加し、混合物をフリーズドライ凍結乾燥する。50μLのHCl(1.0M、水性)を使用する以外この工程を繰り返して、2のHCl塩として白色固体を得る。LC−MS方法1、Rt=0.58分;実測値m/z ES+=320およびES−=318。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, HCl塩) δ=11.2 (s, 1H), 9.21 (s, 1H), 8.33 (d, 1H), 8.04 (bs, 3H), 7.94 (d, 2H), 7.06 (d, 2H), 4.83 (q, 2H), 4.68 (d, 1H), 1.83 (t, 3H), 1.33 (s, 3H), 1.29 (s, 3H)
【0189】
実施例3:N−(3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド(化合物3)
【化19】

例えば、化合物2の他方の鏡像体である化合物3、例えば、他の鏡像体を、化合物2の製造に使用したのと同じ方法で、工程2−Eで製造した鏡像体的に純粋な出発物質2e.1から製造する。LC−MS方法1、Rt=0.59分;実測値m/z ES+=320およびES−=318。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, HCl塩) δ=11.2 (s, 1H), 9.20 (bs, 1H), 8.39 (bs, 1H), 8.11 (bs, 3H), 7.96 (d, 2H), 7.05 (d, 2H), 4.83 (q, 2H), 4.68 (d, 1H), 1.83 (t, 3H), 1.34 (s, 3H), 1.30 (s, 3H)。
【0190】
実施例4:N−(3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−4−(4,4−ジメチルペント−2−イニルオキシ)ベンズアミド(化合物4)
【化20】

【0191】
工程4−A:
【化21】

3,3−ジメチル−ブト−1−イン(1.50g、18.3mmol)のTHF(10mL)中の溶液に、エチルマグネシウムブロマイド(7.32mL、EtO中3M、22.0mmol)を−78℃で添加し、混合物を−78℃で半時間撹拌する。パラホルムアルデヒド(1.02g)を反応混合物に添加し、混合物をrtで2日間撹拌する。水を添加して反応をクエンチし、反応混合物をDCMで3回抽出する。合わせたDCM層をNaSOで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(10%〜20%EtOAc/ヘプタン)で精製して、4a(340mg)を得る。
【0192】
工程4−B:
【化22】

4a(330mg、2.95mmol)、メチル4−ヒドロキシベンゾエート(680mg、4.47mmol)、PhP(2.36g、9.00mmol)のTHF(15mL)およびジクロロメタン(15mL)中の混合物に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.92g、95%、9.02mmol)を0℃で添加する。混合物を0℃で3時間、そしてrtで一夜撹拌する。THFおよびジクロロメタンを減圧下除去する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(10%〜20%EtOAc/ヘプタン)で精製して、0.37g 固体を生成物として得る。
【0193】
工程4−C:
【化23】

4b(370mg、1.50mmol)、NaOH(5mL、1N、水性)、THF(5mL)およびMeOH(5mL)の混合物をrtで一夜撹拌する。THFおよびMeOHを真空下除去し、残留物をHCl(水性1N)でクエンチする。溶液から沈殿した固体を濾過し、水で濯ぎ、真空下で乾燥させて、4c(300mg)を得る。実測値m/z ES−=231。
【0194】
工程4−D
【化24】

化合物4dを4cおよび2bから、工程2−Cの2cを合成する方法に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES+=391およびES−=389
【0195】
工程4−E:
【化25】

酢酸(1.52g、25.3mmol)を4d(220mg、0.56mmol)、EtOH(10mL)、水(1mL)および亜鉛末(733mg、11.3mmol)の混合物に添加する。反応混合物をrtで1.5時間撹拌する。混合物を濾過し、固体残留物をEtOHで洗浄する。合わせた濾液を減圧下に濃縮する。残留物にMeOH(2mL)およびNHOH(50%、水性、1.5mL)を添加し、混合物をrtで一夜撹拌する。反応混合物をHPLC(HPLC方法A)を使用して精製する。4のTFA塩を含むフラクションを凍結乾燥により乾燥させる。化合物4の塩酸塩を工程2−Gの条件を使用して製造する。LC−MS方法2、Rt=0.94分;実測値m/z ES+=362およびES−=360。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, HCl塩) δ=11.2 (s, 1H), 9.20 (s, 1H), 8.35 (d, 1H), 8.05 (bs, 3H), 7.94 (d, 2H), 7.06 (d, 2H), 4.82 (s, 2H), 4.68 (d, 1H), 1.34 (s, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.18 (s, 9H)
【0196】
実施例5:N−((1R,2S)−1−アミノ−1−シクロプロピル−3−(ヒドロキシアミノ)−3−オキソプロパン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド(化合物5)
【化26】

5の絶対立体化学の割り当ては類似のマンニッヒ反応に基づく:Org. Lett., Vol.6 (16), 2004, 2789-2792参照。
【0197】
工程5−A:
【化27】

シクロプロパンカルボキシアルデヒド5a(0.902g、12.88mmol)、R−(−)−p−トルエンスルホンアミド5b(2.0g、12.88mmol)およびチタン(IV)エトキシド(14.7g、64.4mmol)の無水ジクロロメタン(200mL)中の溶液を8時間加熱還流し、反応を0℃に冷却し、水(200mL)でクエンチする。白色ケーキを濾取し、ジクロロメタンで洗浄し、合わせた濾液を濃縮する。粗濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:EtOAc/ヘプタン;10%〜40%)で精製して、5c(1.35g)を得る。
【0198】
工程5−B:
【化28】

エチル(ジベンジルアミノ)アセテート5d(9.15g、32.3mmol)の無水THF(170mL)溶液に、−78℃でTHF中1N LiHMDS(32.3mL、32.3mmol)を滴下する。混合物を1時間撹拌し、5cのTHF溶液(10mL)を滴下する。反応混合物を−78℃で30分間撹拌し、飽和水性NHClの添加によりクエンチし、室温に温める。水性相をEtOAcで抽出し、合わせた有機相を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空で濃縮する。残留物をシリカゲル(勾配:EtOAc/ヘプタン;0%〜40%)でクロマトグラフィーして、5e(3.11g)を主異性体として得る。実測値m/z ES+=491。
【0199】
工程5−C:
【化29】

5e(2.69g、5.49mmol)のエタノール(130mL)溶液を0℃に冷却し、TFA(2.1mL、27.45mmol)を添加する。氷浴を除き、反応を室温で2時間撹拌し、濃縮する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:EtOAc/ヘプタン;非極性副産物を除去するために10%、そしてメタノールで溶出)して、5f(2.5g)をTFA塩として得て、それを工程5−Dにさらに精製せずに使用する。実測値m/z ES+=353。
【0200】
工程5−D:
【化30】

5f(2.5g、5.49mmol)の酢酸エチル(125mL)溶液、BocO(1.44g、6.59mL)およびNaCO(1.89g、17.8mmol)および水(75mL)の混合物を室温で24時間撹拌し、水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、5g(2.53g)を得て、それをさらに精製せずに工程5−Eに使用する。実測値m/z ES+=453。
【0201】
工程5−E:
【化31】

触媒量のPd(OH)を、5g(2.53g、5.59mmol)のエタノール(75mL)に添加し、Hのバルーン雰囲気下、12時間水素化する。混合物をセライトを通して濾過し、濃縮して、5h(1.54g)を得て、それをさらに精製せずに工程5−Fに使用する。実測値m/z ES+=273。
【0202】
工程5−F:
【化32】

5h(100mg、0.37mmol)および1b(70.3mg、0.37mmol)のジクロロメタン(2.0mL)溶液にHATU(169mg、0.44mmol)、DIPEA(0.19mL、1.11mmol)を添加し、室温で1時間撹拌する。混合物を直接シリカカラムに載せ、EtOAc/ヘプタン(5%〜40%)で溶出して、5i(143mg)を得る。実測値m/z ES+=445。
【0203】
工程5−G:
【化33】

5i(143mg、0.322mmol)のジクロロメタン(2mL)溶液に、TFA(1mL)を室温で添加する。混合物を2時間撹拌し、溶媒を真空で蒸発して、5j(126mg)を得て、それをさらに精製せずに工程5−Hに使用する。実測値m/z ES+=345。
【0204】
工程5−H:
【化34】

5j(350mg、0.53mmol)の2:1アセトニトリル/メタノール(1.5mL)溶液に、50%水性NHOH(1.5mL)を添加し、一夜室温で撹拌する。混合物をHPLC(3%n−プロパノール/アセトニトリル/HO)で精製して、5k(46mg)を得る。LC−MS方法2、Rt=0.81分;実測値m/z ES+=332。1H NMR (400 MHz, DMSO-D6, 遊離塩基) δ 7.86 (d, 2H), 7.03 (d, 2H), 4.81 (s, 2H), 4.39 (m, 1H), 3.30 (s, 2H), 2.43 (m, 1H), 1.83 (s, 3H), 0.78 (m, 1H), 0.37 (m, 2H), 0.23 (m, 2H)。
【0205】
実施例6:N−((2S,3R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロ−1−(ヒドロキシアミノ)−1−オキソブタン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド(化合物6)
【化35】

6の絶対立体化学の割り当ては類似のマンニッヒ反応に基づく:Org. Lett., Vol.6 (16), 2004, 2789-2792参照。
【0206】
工程6−A:
【化36】

スルフィンアミド6aの合成をOrg. Lett., Vol 9, No.4, (2007) 683-685に記載の通り行う。
N−(ジフェニルメチレングリシン)エチルエステル6b(11.68g、43.68mmol)の無水THF(400mL)溶液に、−78℃でTHF中1N LiHMDS(43.68mL、43.68mmol)を滴下する。溶液を1時間熟成させ(aged)、6aのトルエン(27.3mmol、53mL;Org. Lett., Vol. 9, No. 4, pp 683-685に従い製造)中の反応混合物をゆっくり添加する。反応混合物を30分間、−78℃で撹拌し、飽和水性NHCl(150mL)の添加によりクエンチし、室温に温める。水性相をEtOAcで抽出する。合わせた有機相を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空で濃縮する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:EtOAc/ヘプタン;10%〜40%)して、6c(2.15g)を主異性体として得る。実測値m/z ES+=468。
【0207】
工程6−B:
【化37】

6c(200mg、0.427mmol)の無水エタノール(1.15mL)溶液に、1,4−ジオキサン中4M HCl(0.32mL、1.28mmol)を添加する。混合物を1時間を室温で撹拌する。揮発物を減圧下蒸発させる。残留物に連続的にTHF(2mL)および水性2M HCl(0.43mL)を添加する。反応を2時間を室温で撹拌する。反応混合物を水性1M HCl(15mL)で希釈する。水性相をジエチルエーテルで洗浄する。水性層をフリーズドライして、2d(90mg;m/z ES+=146)を得る。
【0208】
工程6−C:
【化38】

酸クロライド6eを、カルボン酸1b(2.0g、10.53mmol)、塩化チオニル(10.2mL)および触媒量のDMFのジクロロメタン(50mL)溶液を一夜還流することにより製造する。揮発物を減圧下除去する。
6d(40mg、0.147mmol)の1,4−ジオキサン(1.1mL)溶液、6e(30.65mg、0.147mmol)、NaHCO(49.4mg、0.588mmol)および水(1.1mL)の混合物を室温で36時間撹拌し、水で希釈し、ジクロロメタンで抽出する。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。粗残留物をHPLC(3%n−プロパノール/アセトニトリル/HO)で精製して、2f(18mg)を得る。実測値m/z ES+=373。
【0209】
工程6−D:
【化39】

6f(18mg、0.05mmol)の2:1アセトニトリル/メタノール(2.25mL)溶液に、50%水性ヒドロキシルアミン(2mL)を添加し、一夜室温で撹拌する。混合物をHPLC(3%n−プロパノール/アセトニトリル/HO)で精製して、6(5mg)を得る。LC−MS方法2、Rt=0.96分;実測値m/z ES+=360。1H NMR (400 MHz, MeOD, 遊離塩基) δ 7.84 (d, 2H), 7.03 (d, 2H), 5.00 (d, 1H), 4.73 (s, 2H), 3.91 (m, 1H), 1.81 (s, 3H)。
【0210】
実施例7:N−((2S,3R)−3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−1−オキソブタン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)シクロヘキサンカルボキサミド(化合物7)
【化40】

【0211】
工程7−A:
【化41】

4−ヒドロキシル−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(cisおよびtrans、963mg、5.60mmol)溶液に、LiHMDS(ヘキサン中1.6M、3.67mL、5.87mmol)を−78℃でゆっくり添加する。HMPA(5.0g)を混合物に添加し、混合物を−78℃で1時間撹拌する。反応混合物に1−ブロモ−ブト−2−イン(1.12g、8.42mmol)を添加し、混合物を−78℃で2時間、そしてrtで一夜撹拌する。水性NHCl(10mL)溶液を添加して反応をクエンチする。混合物をDCMで3回抽出する。DCM層を合わせ、NaSOで乾燥させ、濃縮して、シリカゲルクロマトグラフィー(10%EtOAc/ヘプタン)して、7a(442mg)を得る。実測値m/z ES+=225。
【0212】
工程7−B:
【化42】

水酸化カリウムの70%メタノール水溶液(1N、5mL)を、7a(0.35g、1.56mmol)のTHF(5mL)溶液に添加する。反応を室温で24時間撹拌する。溶媒を真空下除去する。残留物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、HClの1N溶液(10mL)でpH2に酸性化する。合わせた有機層を塩水で洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、7b(0.29g)を得る。実測値m/z ES−=195
【0213】
工程7−C:
【化43】

臭化トリチル(41g、127mmol)のCHCl(630ml)溶液に、撹拌している7c(25g、147mmol)およびDIEA(55ml、316mmol)のCHCl(525ml)溶液を、0℃でN下に滴下する。添加後、反応をrtに温める。反応を、EtOAc/Hex(40:60)で溶出するTLCにより追跡することができよう(R=0.3)。12時間撹拌後、反応を濃縮して、褐色油状物を得る。粗生成物をEtOAc(500ml)で希釈し、0.2N クエン酸(2×100ml)、水(2×100ml、pH=7になるまで水で洗浄)、塩水(100ml)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、減圧下濃縮して、44.1gの7dを得る。MS(ES+) m/z 376.2。
【0214】
工程7−D
【化44】

純粋なDEAD(50ml、304mmol)のTHF(70ml)溶液を、30分間にわたり、機械撹拌しているPPh(79g、301mmol)のTHF(400ml)溶液に、0℃でN下ゆっくり滴下する。30分間、0℃で撹拌後、固体沈殿が形成され、さらにTHF(400ml)を添加する。機械的撹拌を懸濁液の混合に調節する。7d(75g、200mmol)およびDPPA(67ml、310mmol)のTHF(460ml)中の混合物を約45分間にわたり、撹拌しているDEADおよびPPhの懸濁液に添加する。反応は添加中に透明となる。撹拌を12時間、0℃でN下に続ける。反応がTLC(DCM(R=0.6)、EtOAc/ヘキサン(1:12)(R=0.3))およびLCMSで終了している。黄色溶液を濃縮して、307gの粗物質を赤色シロップとして得て、それをDCM/ヘキサン(1:1)で溶出するカラムクロマトグラフィー(4Kg シリカ)で精製して、80gの7eを得て、それをさらに精製せずに使用する。
【0215】
工程7−E
【化45】

HClのエーテル溶液(60ml)を、THF(300ml)に溶解した7e(43.2g、108mmol(〜65%純度))の溶液に、rtで撹拌しながら添加する。5分間後に沈殿が形成され、濁った混合物となる。出発物質はLCMSによると1.5時間後にほとんど消費されているが、反応はその3時間後に停止したと考えられる。5時間後、さらにエーテル中のHClを反応に一度に添加する。反応は3.5時間後に終了する。固体を吸引濾過により回収して、14gの7fを得る。MS(ES+) m/z 159.3 (C10 +Hは159.08である)。
【0216】
工程7−F
【化46】

BocO(22.5g、103mmol)のTHF(400ml)溶液に、7f(13.3g、68.4mmol)およびDIEA(36ml、205mmol)のTHF(1000ml)溶液をrtで撹拌しながら添加する。残ったBocO残留物をTHF(150ml)を使用して洗浄する。反応は22時間後に終了する。pHを3にするために充分な2%水性NaHSOを反応に添加し、THFを30−35℃で減圧下除去する。水性残留物をEtOAc(3×100ml)で抽出する。有機層を合わせ、水(2×100ml)、塩水(1×100ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮する。濃いシロップをDCM(200ml)に溶解し、蒸発させて濃いシロップを得て、それを真空で一夜乾燥させて、20.2gの7gを得る。
【0217】
工程7−G
【化47】

7g(20.1g、68.4mmol)および10%Pd炭素(2g)のMeOH(350ml)中の混合物を脱酸素し、rtでH下にバルーン圧で撹拌する。24時間後、TLCによると反応は終了している。H雰囲気をアルゴンに変え、Pd/Cを濾過により除去する。反応を減圧下濃縮する。過剰のBocOが少量のジBoc物質を形成させた。この副生成物を残留物をEtOAc(100ml)に溶解し、生成物を2%水性NaHSO(2×100ml)で抽出することにより生成物から分離する。酸性水性層を固体NaHCOで塩基性化し、生成物をEtOAc(7×100ml)で抽出する。有機フラクションを合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮する。濃いシロップをDCM(200ml)に溶解し、蒸発させて、再び濃いシロップを得る。純粋な生成物を真空で一夜乾燥させて、9.5g(〜40.9mmol、〜60%収率)の粘性ガラス状物を得る。
Fmoc−OSu(15.2g、45mmol)を、THF(200ml)に溶解した撹拌している遊離アミン(9.5g、〜40.9mmol)の溶液に、0℃でアルゴン下に添加する。DIEA(8.5ml、49mmol)のTHF(50ml)溶液を20分間にわたり撹拌している反応に0℃でアルゴン下に滴下する。TLCによると反応は30分間後に終了する。反応を減圧下濃縮する。残留物をEtOAc(200ml)に溶解し、水(60ml)、2%水性NaHSO(2×60ml)、水(2×60ml)、塩水(60ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮する。濃いシロップをDCM(200ml)に溶解し、蒸発させて、ガラス状物を得る。ガラス状物を一夜真空で固化させて、23g(〜41mmol、>100%収率)の7hを幾分かの捕捉された溶媒と共に得る。
【0218】
工程7−H
【化48】

HClのエーテル溶液(600ml)を、THF(150ml)に溶解した7h(22.5g、41mmol)溶液に、rtで撹拌しながら添加する。5分間後に沈殿が形成され、濁った混合物となる。生成物は、溶離剤としてDCM/MeOH/水(85:10:5 (R=0.4))を使用するTLCで見ることができる。12時間後、固体を吸引濾過により回収する。真空で一夜乾燥後、7i(13.75g)を白色固体HCl塩として得る。
【0219】
工程7−I:
【化49】

7b(290mg、1.48mmol)の塩化メチレン(10mL)およびDMF(1mL)中の溶液に、連続的にHATU(618mg、1.62mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.54mL、3.93mmol)を添加する。反応を室温で1時間撹拌し、7i(633mg、1.62mmol)を反応に添加する。反応を室温で24時間撹拌する。反応を酢酸エチル(100mL)で希釈し、10%クエン酸、重炭酸ナトリウムの飽和溶液および塩水で洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配:EtOAc/ヘキサン;0:1〜1:1)して、7j(359mg)を得る。実測値m/z ES+=533。
【0220】
工程7−J:
【化50】

7jのキラル分離(カラム:ChiralPak IA-H 21mm×250mm;75%ヘプタン、25%IPA;15mL/分.;18分間ラン)により、2個のジアステレオマー7k(キラルカラムでの最初のピーク)および7l(キラルカラムでの二番目のピーク)を得る。
【0221】
工程7−K:
【化51】

7k(67mg、0.125mmol)のメタノール(1mL)およびアセトニトリル(2mL)中の溶液に、ヒドロキシルアミンの50%水溶液(1.25mL)およびピペリジン(0.07mL、0.625mmol)を添加する。一夜撹拌後、粗反応混合物を逆相クロマトグラフィー(方法A)で直接精製する。生成物の凍結乾燥により、表題化合物7(12mg)を得る。LC−MS方法4、Rt=0.69分;実測値m/z ES+=312およびES−=310。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, TFA塩):δ=10.0 (s, 1H), 9.12 (s, 1H), 8.15 (d, 1H), 7.85 (s, 2H), 4.28 (t, 1H), 4.09 (s, 2H), 2.05 (t, 1H), 2.02 (d, 2H), 1.91-1.80 (m, 2H), 1.83 (s, 3H), 1.37-1.27 (m, 2H), 1.15-1.03 (m, 5H)。
【0222】
実施例8:N−(3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペント−2−イニルオキシ)ベンズアミド(化合物8)
【化52】

【0223】
工程8−A:
【化53】

化合物8aを、メチル4−ヒドロキシベンゾnateおよびプロパルギルブロマイドから、工程1−Aの1aの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES+=191
【0224】
工程8−B:
【化54】

8a(200mg、1.05mmol)のTHF(5mL)にLiHMDS(THF中1M、1.11mL、1.11mmol)を添加し、混合物を−78℃で10分間撹拌する。乾燥アセトン(1mL)を混合物に添加し、反応混合物をrtで一夜撹拌する。さらにLiHMDS/THF(0.3mL)を反応混合物に添加し、さらに3時間rtで撹拌する。水(50mL)を反応混合物に添加し、それをDCMで3回抽出する。DCM層を合わせ、NaSOで乾燥させ、濃縮して、シリカゲルクロマトグラフィー(10%〜30%EtOAc/ヘプタン)して、8(208mg)を得る。
【0225】
工程8−C:
【化55】

化合物8cを8bから、工程4−Cの4cの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES−=233。
【0226】
工程8−D:
【化56】

化合物8dを8cから、工程4−Dの4dの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES+=393およびES−=391。
【0227】
工程8−E:
【化57】

化合物8を8dから、工程4−Eの4の合成に準じる方法を使用して製造する。LC−MS方法1、Rt=0.63分;実測値m/z ES+=364およびES−=362。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, HCl塩) δ=11.22 (s, 1H), 9.23 (s, 1H), 8.43 (d, 1H), 8.13 (bs, 3H), 7.97 (m, 2H), 7.06 (d, 2H), 5.39 (bs, 1H), 4.88 (s, 2H), 4.67 (d, 1H), 1.35 (s, 6H), 1.34 (s, 3H), 1.30 (s, 3H)。
【0228】
実施例9:N−((1S,2R)−2−アミノ−1−ヒドロキシカルバモイル−プロピル)−4−ブト−2−イニルオキシ−2−フルオロ−ベンズアミド(化合物9)
【化58】

【0229】
工程9−A:
【化59】

2−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸(500mg、3.2mmol)をDMF(20ml)に溶解し、炭酸カリウム(1.79g、12.8mmol)を添加する。混合物を0℃に冷却し、1−ブロモ−2−ブチン(1.7g、12.8mmol)を添加する。混合物をRTで8時間撹拌する。反応を塩化アンモニウムの飽和溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機層を塩水で洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮し、薄黄色結晶性残留物を得る。残留物をジエチルエーテル(10mL)に再懸濁する。懸濁液を濾過し、象牙色の結晶を得て、乾燥させて、9a(0.79g)を得る。実測値m/z ES+=261。
【0230】
工程9−B:
【化60】

水酸化カリウムの70%メタノール水溶液(1N、19mL)を、9a(0.79g、3.0mmol)のTHF(20mL)溶液に添加する。反応を室温で24時間撹拌する。溶媒を真空下で除去し、酢酸エチル(200mL)で希釈し、HClの1N溶液(25mL)でpH2に酸性化する。合わせた有機層を塩水で洗浄する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、9b(0.62g)を得る。実測値m/z ES−=207。
【0231】
工程9−C:
【化61】

9b(42.57mg、0.205mmol)のDMF(2.0mL)溶液に、HATU(93.56mg、0.246mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.11mL、0.615mmol)を添加する。反応を室温で5分間撹拌し、7i(80mg、0.205mmol)を反応に添加する。混合物を室温で1時間撹拌する。粗残留物をHPLC(3%n−プロパノール/CHCN/HO)で精製して、9c(0.087g)を得る。実測値m/z ES+=545。
【0232】
工程9−D:
【化62】

9c(87mg、0.16mmol)のメタノール(1mL)およびDMF(2mL)中の溶液に、50%NHOH(水性)(1.1mL、17.5mmol)、ピペリジン(0.08mL、0.799mmol)を添加する。反応を室温で2時間撹拌する。反応混合物を直接載せ、HPLC(3%n−プロパノール/CHCN/HO)で精製して、9(29mg)を得る。LC−MS方法2、Rt=0.80分;実測値m/z ES+=324。1H NMR (400 MHz, DMSO-D6, 遊離塩基) δ 11.14 (s, 1H), 9.15 (s, 1H), 8.23 (m, 1H), 7.98 (s, br, 2H), 7.77 (m, 1H), 6.94 (m, 2H), 4.84 (s, 2H), 4.53 (t, 1H), 3.54 (m, 1H), 1.83 (s, 3H), 1.20 (d, 3H)。
【0233】
実施例10:N−((S)−4−アミノ−1−ヒドロキシカルバモイル−ブチル)−4−ブト−2−イニルオキシ−ベンズアミド(化合物10)
【化63】

【0234】
工程10−A:
【化64】

1b(100mg、0.526mmol)、10−a(155mg、0.631mmol)、HATU(220mg、0.578mmol)およびDIPEA(204mg、1.58mmol)のDCM(5mL)中の混合物をrtで一夜撹拌する。揮発物を減圧下除去し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(10〜30%EtOAc/ヘプタン)で精製して、10−b(180mg)を得る。実測値m/z ES+=419およびES−=417。
【0235】
工程10−B:
【化65】

10b(180mg、0.43mmol)、NHOH(水性50%、1mL)のMeOH(2mL)中の混合物をrtで2日間撹拌する。反応混合物をHPLC(島津システム、10%〜70%ACN/水+0.1%TFAを12分;40mL/分.;Phenomex hydro-RP 4u 100×30mmカラム)で精製して、生成物10c(70mg)を得る。実測値m/z ES+=420およびES−=418。
【0236】
工程10−C:
【化66】

10−c(50mg、0.119mmol)、TFA(0.2mL)のDCM(1mL)中の混合物をrtで1時間撹拌する。揮発物を減圧下除去し、残留物をHPLC(Gilsonシステム;SunfireTM Pre C8 OBD 5 um 30×50mmカラム;10%〜60%ACN/水+0.1%TFAを10分;20mL/分)で精製して、生成物10のTFA塩(10mg)を得る。LC−MS方法1、Rt=0.56分間。実測値m/z ES+=320およびES−=318。1H NMR (400 MHz, MeOD):δ=7.84 (d, 2H), 7.03 (d, 2H), 4.74 (m, 2H), 4.53 (m, 1H), 2.96 (m, 2H), 1.69-1.99 (m, 7H)。
【0237】
実施例11:N−((S)−2−アミノ−1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−4−(3−シクロペント−1−エニル−プロプ−2−イニルオキシ)−ベンズアミド(化合物11)
【化67】

【0238】
工程11−A:
【化68】

鏡像体的に純粋な化合物11aを化合物2aから、化合物2e.2(工程2−B〜工程2−E)の製造に準じる方法を使用して、CBZ付加物の分割により製造する。実測値m/z ES−=379。
【0239】
工程11−B:
【化69】

化合物11a(1.49g、3.92mmol)のMeOH(50mL)溶液をPd/C(10%、1.67g)と丸底フラスコ中で混合し、それをHバルーンに繋げる。混合物をrtで一夜撹拌する。Pd/Cをセライト床を通して濾取し、濾液中の揮発物を減圧下除去して、粘性油状物を生成物11b(0.96g)として得る。実測値m/z ES+=247。
【0240】
工程11−C:
【化70】

11c(348mg、2.37mmol)、8a(300mg、1.58mmol)、Pd(PPh)(182mg、0.158mmol)およびCuI(60mg、0.315mmol)のTEA(Nで1時間予めバブリング)中の混合物を、rtでN保護下に6日間撹拌する。揮発物を減圧下除去し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(10〜30%EtOAc/ヘプタン)で精製して、11d(72mg)を得る。実測値m/z ES+=257。
【0241】
工程11−D:
【化71】

化合物11eを11dから、工程4−Cの4cの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES+=243およびES−=241。
【0242】
工程11−E:
【化72】

11e(50mg、0.206mmol)、11b(56mg、0.227mmol)、HATU(86mg、0.227mmol)およびDIPEA(80mg、0.619mmol)のDCM(3mL)中の混合物をrtで一夜撹拌する。揮発物を減圧下除去し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(30%EtOAc/ヘプタン)で精製して、11f(82mg)を得る。実測値m/z ES+=471およびES−=469。
【0243】
工程11−F:
【化73】

化合物11のTFA塩を、11fから、工程2−Fの2の合成に準じる方法を使用して製造する。LC−MS方法1、Rt=0.98分間。実測値m/z ES+=372およびES−=370。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, TFA塩) δ=11.2 (s, 1H), 9.24 (s, 1H), 8.30 (d, 1H), 7.98 (s, 3H), 7.91 (d, 2H), 7.09 (d, 2H), 6.11 (m, 1H), 5.04 (s, 2H), 4.69 (d, 1H), 2.36 (m, 4H), 1.84 (m, 2H), 1.33 (s, 3H), 1.28 (s, 3H)。
【0244】
実施例12:N−((S)−2−アミノ−1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−4−[3−(3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−プロプ−2−イニルオキシ]−ベンズアミド(化合物12)
【化74】

【0245】
工程12−A:
【化75】

8a(250mg、1.31mmol)のTHF(10mL)溶液に、LiHMDS(THF中1M、1.71mL、1.71mmol)を−78℃で添加し、混合物を−78℃(アセトン/ドライアイス浴)で半時間撹拌する。12a(166mg、1.97mmol)を混合物に添加し、反応混合物を一夜撹拌し、その環に温度をrtまでゆっくり上昇させる。NHCl(水性飽和)溶液を添加して反応混合物をクエンチする。混合物中のTHFを減圧下除去し、残りの溶液をDCMで3回抽出する。DCM層を合わせ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(10〜30%EtOAc/ヘプタン)で精製して、12−b(356mg)を得る。
【0246】
工程12−B:
【化76】

12b(200mg、0.689mmol)およびTEA(209mg、2.07mmol)のDCM(5mL)中の混合物に、メタンスルホニルクロライド(MsCl、95mg、0.827mmol)を0℃で添加し、混合物をrtで3日間撹拌する。水を混合物に添加し、反応混合物をDCMで3回抽出する。DCM層を合わせ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(10〜30%EtOAC/ヘプタン)で精製して、12c(180mg)を得る。実測値m/z ES+=273。
【0247】
工程12−C:
【化77】

化合物12dを12cから、工程4−Cの4cの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES−=257。
【0248】
工程12−D:
【化78】

化合物12eを12dから、工程11−Eの11fの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES+=487およびES−=485。
【0249】
工程12−E:
【化79】

化合物12のTFA塩を12eから、工程2−Fの2の合成に準じる方法を使用して製造する。LC−MS方法1、Rt=0.70分。実測値m/z ES+=388およびES−=386。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, TFA塩) δ=11.2 (s, 1H), 9.21 (s, 1H), 8.27 (d, 1H), 7.96 (s, 3H), 7.91 (d, 2H), 7.09 (d, 2H), 6.15 (s, 1H), 5.02 (s, 2H), 4.69 (d, 1H), 4.09 (m, 2H), 3.67 (t, 2H), 2.10 (m, 2H), 1.33 (s, 3H), 1.28 (s, 3H)。
【0250】
実施例13:N−((S)−2−アミノ−1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−4−(3−d3−メチルプロプ−2−イニルオキシ−ベンズアミド(化合物13)
【化80】

【0251】
工程13−A:
【化81】

8a(400mg、2.10mmol)のTHF(10mL)溶液に、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(NaHMDS、トルエン中0.6M、3.86mL、2.31mmol)を−78℃で添加し、溶液を−78℃で半時間撹拌する。13a(CD3I、1.52g、10.5mmol)を添加し、反応混合物をrtで3日間撹拌する。水を添加して反応混合物をクエンチし、THFを減圧下除去する。残った混合物をDCMで3回抽出する。DCM層を合わせ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘプタン)で精製して、13b(267mg)を得る。実測値m/z ES+=208。
【0252】
工程13−B:
【化82】

化合物13cを13bから、工程4−Cの4cの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES+=194およびES−=192。
【0253】
工程13−C:
【化83】

化合物13dを13cから、工程11−Eの11fの合成に準じる方法を使用して製造する。
【0254】
工程13−D:
【化84】

化合物13のTFA塩を13dから、工程2−Fの2の合成に準じる方法を使用して製造する。TFAのMeOH溶液をポリマー支持ハイドロゲンカーボネート・カートリッジ(SratoSpheresTM SPE PL-HCO3 MP-Resinカートリッジ、溶離剤溶媒としてMeOHを使用)を通し、溶媒を減圧下除去して、中性形態の13を得る。13のHCl塩をその中性形態から、1.05当量のみのHCl(水性1N)を使用し、1回フリーズドライ凍結乾燥する以外工程2−Gに準じる方法を使用して製造する。LC−MS方法1、Rt=0.65分間。実測値m/z ES+=323およびES−=321。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, HCl塩) δ=11.2 (s, 1H), 9.20 (s, 1H), 8.38 (d, 1H), 8.10 (bs, 3H), 7.96 (d, 2H), 7.05 (d, 2H), 4.83 (s, 2H), 4.68 (d, 1H), 1.34 (s, 3H), 1.30 (s, 3H)。
【0255】
実施例14:N−((S)−2−アミノ−1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−4−ブト−1−d2−メチレン−2−イニルオキシ−ベンズアミド(化合物14)
【化85】

【0256】
工程14−A:
【化86】

LiAlD4(160mg、3.82mmol)の無水ジエチルエーテル(EtO、20mL、Nで10分間予めバブリング)懸濁液に、14a(500mg、5.10mmol)を−78℃でN保護下に添加する。反応−45℃ ACN/ドライアイス浴に入れ、−45℃で2時間撹拌し、反応をNaOH(水性0.3N、6mL)を−45℃で滴下することによりクエンチする。反応混合物を反応およびクエンチの間N保護下に維持する。得られた白色スラリーを濾取し、EtO(40mL)で濯ぐ。濾液をNaSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下除去して、14bを得て、それをさらに精製せずに次工程に直接使用する。
【0257】
工程14−B:
【化87】

化合物14cを14bから、工程4−Bの4bの合成に準じる方法を使用して製造する。
【0258】
工程14−C:
【化88】

化合物14dを14cから、工程4−Cの4cの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値ES+=193およびES−=191。
【0259】
工程14−D:
【化89】

化合物14eを14dから、工程11−Eの11fの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値ES+=421およびES−=419。
【0260】
工程14−E:
【化90】

14のHCl塩14eから、工程13−Dの13の合成に準じる方法を使用して製造する。LC−MS方法1、Rt=0.64分。実測値m/z ES+=322およびES−=320。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, HCl塩) δ=11.2 (s, 1H), 9.21 (s, 1H), 8.33 (bs, 1H), 8.01 (bs, 3H), 7.92 (d, 2H), 7.06 (d, 2H), 4.68 (d, 1H), 1.83 (s, 3H), 1.33 (s, 3H), 1.28 (s, 3H)。
【0261】
実施例15:N−((S)−2−アミノ−1−ヒドロキシカルバモイル−2−メチル−プロピル)−4−((E)−7−ヒドロキシ−ヘプト−2−エン−4−イニルオキシ)−ベンズアミド(化合物15)
【化91】

【0262】
工程15−A:
【化92】

trans−1,3−ジクロロプロペン(2.19g、19.7mmol)、炭酸カリウム(3.63g、26.3mmol)、およびヨウ化カリウム(0.109g、0.657mmol)のアセトニトリル(200mL)予液に、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート(2.0g、13.2mmol)を添加した。反応を80℃で4時間撹拌し、それを塩水でクエンチし、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、シリカゲルクロマトグラフィー(0−50%酢酸エチル/ヘプタン)で精製して、15b(2.77g)を得た。実測値m/z ES+=227。
【0263】
工程15−B:
【化93】

15b(400mg、1.765mmol)のピペリジン(8.8mL)溶液を窒素でバブリングし、PdCl(PhCN)触媒(67.7mg、0.176mmol)、ヨウ化銅(I)(16.8mg、0.088mmol)、および3−ブチン−1−オール(15c、247mg、3.53mmol)をこの順番で添加する。反応混合物を50℃で窒素保護下に約10分間撹拌する。反応混合物は明紫色、続いて明黄色、そして暗い不透明な黄色に変わる。反応混合物を飽和塩化アンモニウム(水性)で直ぐにクエンチする(生成物を得るために暗い、不透明黄色の間にクエンチしなければならない)。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、重炭酸ナトリウムおよび水で洗浄する。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮して、シリカゲルクロマトグラフィー(0−70%酢酸エチル/ヘプタン)で精製して、15d(200mg)を得る。実測値m/z ES+=261。
【0264】
工程15−C:
【化94】

化合物15eを15dから、工程1−Bの化合物1bの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES+=247およびES−=245。
【0265】
工程15−D:
【化95】

化合物15fを15eから、工程11−eの11fの合成に準じる方法を使用して製造する。実測値m/z ES+=475およびES−=473。
【0266】
工程15−E:
【化96】

化合物15のHCl塩を15fから、工程2−Fおよび工程2−Gの化合物2の合成に準じる方法を使用して製造する。LC−MS方法2、Rt=0.81分。実測値m/z ES+=376およびES−=374。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, HCl塩) δ=11.2 (s, 1H), 9.0 (bs, 1H), 8.17 (s, 3H), 7.97 (d, 2H), 7.03 (d, 2H), 6.19 (m, 1H), 5.91 (d, 1H), 4.68 (m, 3H), 3.45 (t, 2H), 2.43 (m, 2H), 1.30 (s, 3H), 1.28 (s, 3H)。
【0267】
表Aは、さらに本発明の化合物、例えば、実施例16−83(その薬学的に許容されるその塩類、ならびに鏡像体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、またはラセミ体を含む)を提供する。実施例16−83の化合物を遊離塩基または酸付加塩として単離する。
【0268】
【表3】

【表4】

【0269】
【表5】

【表6】

【0270】
【表7】

【表8】

【0271】
【表9】

【表10】

【0272】
【表11】

【表12】

【0273】
【表13】

【表14】

【0274】
【表15】

【表16】

【0275】
【表17】

【表18】

【0276】
【表19】

【0277】
表Bは、本発明の方法および製剤への使用が意図されるさらなる本発明の化合物を提供する。
【0278】
【表20】

【表21】

【0279】
実施例54:緑膿菌LpxC阻害アッセイ
緑膿菌LpxCタンパク質をHyland et al (Journal of Bacteriology 1997 179, 2029-2037: Cloning, expression and purification of UDP-3-O-acyl-GlcNAc deacetylase from Pseudomonas aeruginosa: a metalloamidase of the lipid A biosynthesis pathway)の一般的方法に従い製造する。LpxC生成物の定量用LC−MS/MS方法は、Applied Biosystems MDS Sciex 4000QTRAP質量分光計に連結したAgilent 1200 Capillary HPLCシステムを使用して開発された。両方の装置をApplied Biosystems MDS Sciex Analystソフトウェアを使用して制御する。LpxC反応生成物(UDP−3−O−(R−3−ヒドロキシアシル)−グルコサミン)を、緑膿菌LpxCにより触媒されるLpxC基質の加水分解により製造し、Phenomenex Luna C18(2) 4.6×50mmカラムでの逆相クロマトグラフィーにより精製した。LpxC生成物検量線を、LC−MS/MS法の感受性および動的範囲を評価するために作成した。簡単に言うと、化合物を1nM 緑膿菌LpxCと30分間、室温でプレインキュベートする。反応を2μM UDP−3−O−(R−3−ヒドロキシデカノイル)−GlcNAcの添加により開始する。反応を96ウェルプレートで、各ウェル50mM リン酸ナトリウムpH7.5、0.005%Trition X-100を含む総量100μLで20分間、室温で行う。1.8%HOAc(10μLの20%HOAcを各ウェルに添加)で添加後、反応混合物をLC−MS/MS法を使用して分析し、ピーク面積をLpxC生成物検量線を使用して生成物濃度に変換する。総活性(0%阻害対照)を阻害剤無しの反応から得て、100%阻害対照は反応開始前のクエンチしたサンプルを使用したバックグラウンドである。IC50決定のために、ピーク面積をMicrosoft Excelを使用して阻害パーセントに変換する。阻害パーセント値をXLfitを使用して対数化合物濃度に対してプロットする。データをXLfitで非線形回帰を使用する4パラメータロジスティック方程式に適合させ、IC50およびヒル傾斜値を得る。実施例1−84の化合物のLpxC阻害活性を表Cに報告する。
【0280】
【表22】

【0281】
実施例84:細菌スクリーニングおよび培養
細菌単離株を、−70℃凍結ストックから、35℃で大気中、5%血液寒天での連続二日間の一夜継代により培養する(Remel, Lenexa, Kans.)。試験する臨床単離株は、臨床試験中に回収した単離株および種々の米国および他国の地理的に多様な種々の病院から得た最近の臨床単離株から成るコレクション由来である。品質対照および一次パネル株は、Dr. K. Pooleから得たmexABoprM遺伝子を欠損させた緑膿菌K119株(PAO1バックグラウンド)以外、American Type Culture Collection(ATCC;Rockville, Md.)から得る。この株は主要な多剤排出ポンプを発現せず、多くの抗細菌剤に過感受性である。株Z61(ATCC 35151)もまた抗細菌剤に過感受性である。この株の過感受性は、その外膜の等価製造課に由来すると考えられている(Angus B L et al, Antimicrobial Agents and Chemotherapy 1982 21, 299-309: Outer membrane permeability in Pseudomonas aeruginosa: Comparison of a wild-type with an antibacterial-supersusceptible mutant)。
【0282】
実施例85:感受性試験
最小阻止濃度(MIC)を、CLSI(Clinical and Laboratories Institute;以前はNational Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS))ガイドラインに従う微量液体希釈法により決定する。簡単に言うと、細菌懸濁液を、滅菌生理食塩水中、0.5マックファーランド比濁標準に調節し、カチオン調節MHB(Mueller-Hinton Broth;Remel)で10倍希釈して、約5×10コロニー形成単位(CFU)/mLの最終接種物を得た。医薬の2倍連続希釈を滅菌ジメチルスルホキシド中、最高最終アッセイ濃度の100倍で製造する。1μlの医薬希釈シリーズを100μlのMHBブロスを含むマイクロタイターウェルに添加し、1.5μlの細菌懸濁液をウェルに接種した。全ての接種した微量希釈トレーを、大気中、35℃で18−24時間インキュベートした。インキュベーション後、可視増殖を阻害した医薬の最低濃度をMICとして記録する。アッセイの実施を、CLSIガイドラインに従い、定義されたMICスペクトルを有するトブラマイシンに対する研究室品質管理株に対して実施する。実施例1−6、8−19、21、23−26および28−53の化合物はPAO1およびATCC27853から選択される緑膿菌(P. aerugnosa)株の少なくとも1種に対して64μg/mLの、MICを示す。
【0283】
実施例86:全身性シュードモナス・エルギノーサ感染症のマウスモデルにおける効果
雌CD1マウス(20−25g)に、緑膿菌株NB52019の、動物の50%を殺すであろう用量(LD50)の約100倍の細菌懸濁液0.3mlを腹腔内注射する。感染1時間および5時間後、試験化合物を<0.1mg/kg〜100mg/kgの範囲で、典型的に1群あたり5−6匹のマウスに静脈内注射する。マウスを5日間観察し、マウスの50%の生存をもたらす化合物投与量(ED50)をProbit解析により計算する。
【0284】
実施例87:シュードモナス・エルギノーサにより引き起こされるマウス肺感染症モデルに対する効果
雌BALB/cマウス(17−20g)を、シクロホスファミド(−4日目に150mg/kgおよび−1日目に100mg/kg、i.p.)の2回の注射により好中球減少症にする。マウスを、約5×10CFU/マウスの緑膿菌株で麻酔下に経鼻的に感染させる。マウスを、典型的に1群あたり5匹のマウスを使用して、>0.1mg/kg〜200mg/kgの範囲の投与量を、i.v、p.oまたはs.c投与経路を介して、試験化合物または比較薬剤で、24時間の間種々の感覚で処置する。マウスを感染後24時間で殺し、肺を細菌計数のために摘出する。媒体処置動物と比較して、2または3対数減少するのに必要な投与量を計算する。
【0285】
実施例88:医薬組合せ(相乗性)試験
I. 原則
チェッカーボード実験を、目的の一次薬(#1)および他の関連抗細菌剤(#2)の間の相互作用の可能性を評価するために実施できる。緑膿菌ATCC27853、黄色ブドウ球菌ATCC29213および他の生物ならびに選択した臨床単離株を試験株として使用できる。微量液体希釈形式を使用して、医薬#1および試験化合物のみおよび組合せの活性の評価に使用できる。試験する2種の化合物の2倍希釈(各々予測されるMIC値を包含する(bracketing))を使用する。部分阻止濃度(FIC)を、第二化合物と組み合わせた化合物#1のMICを化合物#1のみのMICで割った数字として珪酸する。総和FIC(ΣFIC)を、化合物#1および#2の個々のFICの合計として各医薬組合せについて計算する。ΣFIC≦0.5を相乗性として、1〜2のΣFICを無関係、ΣFIC>2を拮抗として定義する。最低ΣFICを医薬組合せ試験の最終解釈に使用する。
総和(ΣFIC)の解釈
a) 相乗性、x≦0.5
b) 相加性、x>0.5−1
b) 無関係、x>1−2
c) 拮抗、x>2
【0286】
当業者は、慣用の実験以上のものを使用せずとも、ここに記載する特定の態様の多くの均等物を認識するか、確認できる。かかる均等物は、添付する特許請求の範囲の範囲内に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

〔式中、
Aはシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンから選択される2価環基であって、各々水素、ハロゲン、C−Cアルキル、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、アミノ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、および5−7員ヘテロ環からなる群から独立して選択される0〜4個の基で置換されており;
Rは水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノであるか、またはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cハロアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、ヒドロキシC−Cアルキル、シクロアルキルC−Cアルキル、ヘテロ環C−Cアルキル、シクロアルキルC−Cアルコキシ、ヘテロ環C−Cアルキルオキシ、COOH、CONH、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシカルボニル、モノ−およびジ−C−CアルキルアミノおよびフェニルC−Cアルキル、各々水素、ハロゲン、C−Cアルキル、ヒドロキシC−Cアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C−Cアルコキシ、アミノ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、および5−7員ヘテロ環からなる群から独立して選択される0〜4個の基で置換されており;
およびRは、それらが結合しているC原子と一体となって、3〜7員炭素環式またはヘテロ環式環を形成し、それは非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルキル、またはC−Cアルコキシから選択される1個、2個、または3個の基で置換されているか;または
は水素またはC−Cアルキルであり;
は次のものからなる群から選択され:
a) −(CH)C(R2a2b)(CH)OR
b) −(CH)C(R2a2b)(CH)NR
c) −(CH)C(R2a2b)(CH)N(R)COR
d) −(CH)C(R2a2b)(CH)N(R)CONR
e) −(CH)C(R2a2b)(CH)N(R)C(=NH)NR
f) −CHR2a2b
g) −(CH)C(R2a2b)CN;
h) −(CH)C(R2a2b)CO
i) −(CH)C(R2a2b)CONR;ここで
2a、R2b、R、R、およびRの各々は、それぞれで独立して以下からなる群から選択され
a) 水素;
b) 置換または非置換C−Cアルキル;
c) 置換または非置換C−Cハロアルキル;
d) 置換または非置換アリールC−Cアルキル;
e) 置換または非置換C−CシクロアルキルC−Cアルキル;
f) 置換または非置換ヘテロシクリルC−Cアルキル;および
g) 置換または非置換ヘテロアリールC−Cアルキル;または
ジェミナルRおよびRは、それらが結合しているN原子と一体となって、3〜8個の環原子と、N、OおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換ヘテロ環式環を形成し;または
2aおよびR2bは、それらが結合しているC原子と一体となって、3〜8個の環原子と、N、OおよびSからなる群から独立して選択される0〜2個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換飽和環を形成し;
は水素またはC−Cアルキルであるか;または
およびRは、介在している原子と共に、3〜8個の環原子を有し、N、OまたはSから独立して選択される0個、1個または2個のさらなる環ヘテロ原子を有する置換または非置換ヘテロ環式環を形成し;
はOH、NH、およびNHOHから選択され;
およびXはO、S(O)、およびNRから成る群から独立して選択され;
は水素、C−Cアルキル、C−CシクロアルキルC−Cアルキル、またはC−Cアルカノイルであり;
およびYは非置換であるか、または1個以上のRで置換されているC−Cアルキレン基から独立して選択され;
は結合であるか、または非置換であるか、または1個以上のRで置換されているC−Cアルキレン基から選択され;
Zは存在しないか、−CR=CR−またはエチニレンであり;
は、それぞれ水素およびC−Cアルキルからなる群から独立して選択され;
mおよびnは0、1および2から成る群から独立して選択され、ここで、m+nは1または2であり;
qは0、1、または2であり;そして
rおよびsは0、1、2、3、および4から成る群から独立して選択される。〕
の化合物、およびその塩類。
【請求項2】
mが1であり、そしてnが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
mが1であり、nが0であり、XがOまたはSであり;YがC−Cアルキレンであり;そしてYが結合である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
mが1であり、nが0であり、XがOまたはSであり;YがC−Cアルキレンであり;Yが結合であり;そしてZがエチニレンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
mが1であり、nが0であり、XがOまたはSであり;YがC−Cアルキレンであり;Yが結合であり;Zがエチニレンであり;そして
RがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cハロアルキル、ヒドロキシC−Cアルキル、シクロアルキルC−Cアルキル、およびヘテロ環C−Cアルキルからなる群から選択され、各々水素、ハロゲン、C−Cアルキル、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、アミノ、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノ、および5−7員ヘテロ環からなる群から独立して選択される0〜4個の基で置換されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Aがシクロヘキシレン、フェニレンまたはピリジレンであり、その各々がハロゲン、メチル、ヒドロキシ、アミノまたはメトキシから独立して選択される1個または2個の基で置換されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
Aが非置換であるか、またはフルオロ、クロロ、またはメチルで置換されているフェニレンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Aが非置換であるか、または1個、2個、3個、または4個の重水素原子で置換されたフェニレンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
Rが重水素化C−Cアルキルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
またはYが重水素化C−Cアルキレンである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Zがエチニレンであり、mが1であり、nが0であり、そしてRがC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルケニル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、ヒドロキシC−Cアルキル、シクロアルキルC−Cアルキル、ヘテロ環C−Cアルキル、COOH、CONH、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシカルボニル、モノ−およびジ−C−Cアルキルアミノからなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
がヒドロキシである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
が水素またはC−Cアルキルであり、

a) −(CH)C(R2a2b)(CH)OR
b) −(CH)C(R2a2b)(CH)NR
c) −CHR2a2b
からなる群から選択され、R2a、R2b、R、R、およびRの各々が、それぞれで独立して以下からなる群から選択され
a) 水素;
b) 置換または非置換C−Cアルキル;
c) 置換または非置換C−Cハロアルキル;
d) 置換または非置換C−CシクロアルキルC−Cアルキル;および
e) 置換または非置換ヘテロシクリルC−Cアルキル;または
ジェミナルRおよびRは、それらが結合しているN原子と一体となって、3〜8個の環原子と、N、OおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換ヘテロ環式環を形成し;または
2aおよびR2bは、それらが結合しているC原子と一体となって、3〜8個の環原子と、N、OおよびSからなる群から独立して選択される0〜2個の環ヘテロ原子を有する置換または非置換飽和環を形成し;
rが0または1であり;そして
sが0である、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
式II:
【化2】

〔式中、
RはC−CアルキルまたはC−Cシクロアルキルであり;
はCR2a2bORまたはCR2a2bNRであり;
2aは水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、またはC−Cシクロアルキルであり;
2bは水素またはC−Cアルキルから選択され;
およびRは水素またはC−Cアルキルから独立して選択されそして
およびRは水素、C−Cアルキル、およびC−Cアルカノイルから成る群から独立して選択される。〕
の化合物およびその互変異性体、塩類、および異性体によって表される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
以下のものからなる群から選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物:
N−(1−(1−アミノシクロプロピル)−2−(ヒドロキシアミノ)−2−オキソエチル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド;
N−(3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド;
N−(3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−4−(4,4−ジメチルペント−2−イニルオキシ)ベンズアミド;
N−((1R,2S)−1−アミノ−1−シクロプロピル−3−(ヒドロキシアミノ)−3−オキソプロパン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド;
N−((2S,3R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロ−1−(ヒドロキシアミノ)−1−オキソブタン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)ベンズアミド;
N−((2S,3R)−3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−1−オキソブタン−2−イル)−4−(ブト−2−イニルオキシ)シクロヘキサンカルボキサミド;
N−(3−アミノ−1−(ヒドロキシアミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペント−2−イニルオキシ)ベンズアミド;
N−((1S,2R)−2−アミノ−1−ヒドロキシカルバモイル−プロピル)−4−ブト−2−イニルオキシ−2−フルオロ−ベンズアミド;およびそのラセミ体、ジアステレオ異性体、および鏡像体;およびその塩類。
【請求項16】
グラム陰性細菌のデアセチラーゼ酵素を阻害する方法であって、グラム陰性細菌と請求項1に記載の化合物を接触させる工程を含む、方法。
【請求項17】
グラム陰性細菌感染症の対象を処置する方法であって、それを必要とする対象に抗細菌有効量の請求項1に記載の化合物と薬学的に許容される担体を投与することを含む、方法。
【請求項18】
グラム陰性細菌感染症が、シュードモナス、ステノトロホモナス・マルトフィリア、バークホルデリア属、アルカリゲネス・キシロソキシダンス、アシネトバクター、腸内細菌科、ヘモフィルス属、モラクセラ属、バクテロイド属、フランシセラ属(Fransicella)、赤痢菌属、プロテウス属、ビブリオ属、サルモネラ属、ボルデテラ属、ヘリコバクター属(Helicobactor)、レジオネラ属、シトロバクター属(Citrobactor)、セラチア属、カンピロバクター属(Campylobactor)、エルシニア属およびナイセリア属からなる群から選択される少なくとも1種の細菌を含む感染症である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
細菌がセラチア属、プロテウス属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、シトロバクター属、サルモネラ属、プロビデンシア属、モルガネラ属、セデセア属(Cedecea)、エルシニア属、およびエドワージエラ属および大腸菌から選択される腸内細菌科である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象に抗細菌有効量の請求項1に記載の化合物を第二治療剤と組み合わせて投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
第二治療剤が排出ポンプ阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第二治療剤がアンピシリン、ピペラシリン、ペニシリンG、チカルシリン、イミペネム、メロペネム、アジスロマイシン、エリスロマイシン、アズトレオナム、セフェピム、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、テトラサイクリン、テガサイクリン(Tegacyclin)、リファンピシン、およびポリミキシンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
医薬として使用するための、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項24】
対象の細菌感染症の処置用医薬の製造のための、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項25】
対象のグラム陰性細菌感染症処置用医薬の製造のための、請求項1に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項26】
細菌感染症がシュードモナス・エルギノーサ、ステノトロホモナス・マルトフィリア、バークホルデリア・セパシア、アルカリゲネス・キシロソキシダンス、アシネトバクター、腸内細菌科、ヘモフィルス属、およびナイセリア属から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
細菌感染症がセラチア属、プロテウス属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、シトロバクター属、サルモネラ属、プロビデンシア属、モルガネラ属、セデセア属(Cedecea)、およびエドワージエラ属および大腸菌からなる群から選択される腸内細菌科である、請求項24に記載の使用。

【公表番号】特表2012−502946(P2012−502946A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527300(P2011−527300)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061905
【国際公開番号】WO2010/031750
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】