説明

経路案内装置及び経路案内方法

【課題】車両の経路案内表示において、煩わしさや情報処理負荷を感じさせることなく分岐先の位置を運転者に直感的に認識させる。
【解決手段】経路案内装置は、運転者に対し車両前方の分岐先を指示する場合、分岐先の道路の入口から所定距離先の位置に目標位置Pを設定し、車両の現在位置からの目標位置Pの方向(図中矢印方向)と距離を示す表示パターンを表示する。すなわち、前記経路案内装置では表示パターンが分岐先を直接的に指示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者に車両の走行経路を案内する経路案内装置及び経路案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地図情報,現在地情報,目的地情報,交通情報等に基づいて算出された走行経路を走行する車両の運転者に対し右左折等の分岐の指示を表示する場合、運転者が見ている走行シーンと表示内容との間に矛盾があったり,表示内容に曖昧さや多義性があったりしてはならない。このような背景から、運転者の前方風景に重畳するようにウインドシールド上に仮想の先行車の画像を表示することにより走行シーンと表示内容との照合を容易にする経路案内装置(特許文献1〜3参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2005−127995号公報
【特許文献2】特開2006−284195号公報
【特許文献3】特開2000−275057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1〜3記載の経路案内装置によれば、運転者が見ている走行シーンとは視距離が異なる情報が表示されるので、運転者の視線移動や焦点調節反応を誘発し、表示情報に対し運転者が煩わしさを感じることがある。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、煩わしさを感じさせることなく分岐先の位置を運転者に直感的に認識させることが可能な経路案内装置及び経路案内方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る経路案内方法及び経路案内装置は、運転者に車両進行方向の分岐先を指示する場合、分岐先の道路の入口から所定距離先の位置に目標位置を設定し、車両の現在位置からの目標位置の方向と距離を示す表示パターンを運転者の周辺視野内に表示する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る経路案内装置及び経路案内方法によれば、中心視を要求しない周辺視で視認可能な表示パターンによって車両進行方向の分岐先を直接指示するので、運転者は煩わしさを感じることなく分岐先の位置を直感的に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる経路案内装置の構成及び動作について説明する。
【0008】
〔経路案内装置の全体構成〕
本発明の実施形態となる経路案内装置1は、車両に設けられ、図1に示すように、交通情報収集部2,現在値検出部3,地図データベース4,目的地入力部5,ルート決定部6,進路決定部7,指示方向決定部8,低時空間周波数パターン生成部9,及び表示部10を主な構成要素として備える。
【0009】
交通情報収集部2は、光ビーコンやFM多重放送等の媒体を利用して交通情報を取得すると共に、所定区間の車速に従って車両周辺の交通情報を推測する。現在値検出部3は、GPSアンテナを介して測位用衛星が発信する電波を受信し、受信電波に基づいて車両の現在位置を特定する。地図データベース4は、表示部10に地図情報を描画するために、道路の位置情報を示すノード情報,道路の接続状態を示すリンク情報,道路の大きさや道路の管理運営元等によって決定される道路リンク毎の道路レベル情報,道路の名称情報,道路リンク毎の制限速度,及び経路計算を行うために走行距離又は平均走行時間等の条件をノード毎にコストと関連付けさせた経路探索用道路ネットワークデータを記憶する。
【0010】
目的地入力部5は、タッチパネルや操作ボタン等の入力装置により構成され、運転者により入力された目的地の情報をルート決定部6に出力する。ルート決定部6,進路決定部7,指示方向決定部8,及び低時空間周波数パターン生成部9の機能は、CPUが予め記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。各部の機能の詳細については後述する。
【0011】
表示部10は、車両のフロントダッシュボード内部に設けられ、フロントウインドガラスの内側表面に向けて視覚情報としての映像を出力する。表示部10から出力された映像は運転者の眼球位置方向に向けて反射され、運転者は映像を視認する。このように表示部10は所謂ヘッドアップディスプレイ装置により構成され、運転者の前方視界には視覚情報としての映像が重畳表示される。
【0012】
〔経路案内処理〕
このような構成を有する経路案内装置1は、地図情報,現在地情報,目的地情報,交通情報等に基づいて算出された走行経路を運転する運転者に対し右左折等の分岐の指示を与える場合、以下に示す経路案内処理を実行することにより煩わしさや情報処理負荷を感じさせることなく分岐先の位置を運転者に直感的に認識させる。以下、図2に示すフローチャートを参照して、この経路案内処理を実行する際の経路案内装置1の動作について詳しく説明する。
【0013】
図2に示すフローチャートは、ルート決定部6が交通情報収集部2,現在値検出部3,地図データベース4,及び目的地入力部5からの入力に基づいて車両の走行経路を算出したタイミングで開始となり、経路案内処理はステップS1の処理に進む。
【0014】
ステップS1の処理では、進路決定部7が、車両周辺の地図情報と車両の現在位置及び走行経路とに基づいて車両の分岐先を検索し、図3(a)〜(e)に示すように検索された分岐先の道路の入口から所定距離先の位置に目標位置Pを設定する。なお走行経路内に複数の分岐先が連続して存在する場合、進路決定部7は所定距離を隣接する分岐点間の距離よりも短く設定する。また進路決定部7は、車両の現在位置から所定距離先の位置を目標位置Pに設定してもよい。これにより、ステップS1の処理は完了し、経路案内処理はステップS2の処理に進む。
【0015】
ステップS2の処理では、指示方向決定部8が、図3(a),(d),(e)に示すように車両の現在位置からみた目標位置Pの方向(図中矢印方向)を算出する。なお車両の現在位置から分岐点までの道路が直線道路でない場合、指示方向決定部8は、図3(b),(c)に示すように、現在の車両の走行路の接線方向に伸びる道路L1,L2を仮定し、車両の現在位置から目標位置Pまでの距離と同じ距離だけ離れた仮定した道路L1〜L3上の点P1〜P3の方向を目標位置Pの方向(図中矢印方向)として算出する。また指示方向決定部8は、車両の進行方向が変化する度毎に目標位置Pの方向を連続的に算出する。これにより、ステップS2の処理は完了し、経路案内処理はステップS3の処理に進む。
【0016】
ステップS3の処理では、低時空間周波数パターン生成部9が、図4に示すように向き及び色がそれぞれ目標位置Pの方向及び距離を示す低時空間周波数の表示パターンを生成し、生成した表示パターンを運転者の視点の正面から離心角5[度]以上の周辺視野部に表示するように表示部10を制御する。なお本明細書中において、低時空周波数の表示パターンとは、空間的に鮮鋭なエッジを含まないぼやけた表示パターンを意味し、時空間的にローパスフィルタリング処理することにより得られる。より具体的には、低時空間周波数の表示パターンとは、1[サイクル/度]以上の高空間周波数成分(エッジ)が排除されたガウシアン関数とサイン関数の積により記述される輝度変調プロファイルを有し、且つ、サイン関数成分が作り出す縞パターンが表示パターン全体の向きと同方向に時間周波数10[Hz]以下の速度で動作する表示パターンを意味する。
【0017】
表示パターンの色は、目標位置Pまでの距離が短くなるのに従って例えば白色,黄色,橙色,赤色の順に変化させる。表示パターンの向きは、表示パターンが表示される位置や表示画面の向きによって補正を加える。表示パターンが運転者の正面のダッシュボードやウインドシールド下端や上端に表示されている場合は表示パターンの向きを補正する必要はないが、表示画面が運転者の正面からずれて直立している場合には、運転者の視点に応じて表示パターンの向きを補正する。
【0018】
運転者の視点は、運転者として標準的な体形を有する運転者を設定し、設定された運転者の眼の位置を任意の固定値として出力することにより推定することができる。なお、運転者の視点は、運転席の位置とミラーの角度を検出し、運転席のシートセット位置及びミラーの角度と運転者の眼球位置の対応関係を示すテーブルデータの中から検出された運転席のシートセット位置及びミラー(サイドミラーとルームミラーの少なくとも一方)の角度に対応する運転者の眼球位置を検索することにより推定してもよい。また運転者の顔画像を撮像,解析することにより運転者の視点を推定してもよい。これにより、ステップS3の処理は完了し、一連の経路案内処理は終了する。
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる経路案内装置1は、運転者に対し車両前方の分岐先を指示する場合、分岐先の道路の入口から所定距離先の位置に目標位置Pを設定し、車両の現在位置からの目標位置Pの方向と距離を示す表示パターンを表示する。すなわち経路案内装置1では表示パターンが分岐先を直接的に指示する。従って、本発明の実施形態となる経路案内装置1によれば、運転者は、目の前の走行シーンと表示内容とを照合することなく、分岐点で交差する道路の数が2以上であったり、交差する道路の交差角が鋭角である場合であっても、分岐先を手前から直感的に認識することができる。また本発明の実施形態となる経路案内装置1は、運転者の周辺視野部に表示パターンを表示するので、煩わしさや情報処理負荷を感じさせることなく分岐先の位置を運転者に認識させることができる。
【0020】
本発明の実施形態となる経路案内装置1は、低時空間周波数の表示パターンにより目標位置Pの方向と距離を表示するので、運転者は表示パターンが周辺視野部に表示されている場合であっても表示パターンの位置,向き,大きさ,色,運動等を視認することができる。また表示パターンが投影される網膜部位の違いによって表示パターンの見え方の変化が小さくなるので、運転者の視線移動を誘発しない。さらに、運転者の焦点調節状態の変化による表示パターンの見え方の変化が小さくなるので焦点調節反応を誘発しない。従って、運転者は、前方視認を中断されることなく、周辺視によって表示パターンを並列的、連続的に視認することができる。
【0021】
本発明の実施形態となる経路案内装置1は、車両の進行方向の変化に合わせて表示パターンが示す目標位置の方向及び距離を連続的に変化させるので、運転者は車線変更等の分岐のための準備を早めに行うことができる。また本発明の実施形態となる経路案内装置1は、車両の現在位置から分岐点までの道路が直線道路でない場合、現在の車両の走行路の接線方向に伸びる道路を仮定し、車両の現在位置から目標位置Pまでの距離と同じ距離だけ離れた仮定した道路上の点の方向を目標位置Pの方向として表示するので、走行路が曲線路であり、車両の現在位置が分岐点から離れている場合であっても、運転者は分岐点における分岐方向を知ることができる。
【0022】
本発明の実施形態となる経路案内装置1は、向き及び色がそれぞれ目標位置Pの方向及び距離を示す表示パターンを表示するので、道路形状が複雑であるために表示パターンの向きから分岐点の方向を認識しづらい場合であっても、運転者は表示パターンの色によって分岐点への接近を知ることができる。
【0023】
なお車両の現在位置から所定距離の範囲内に分岐先がない場合、経路案内装置1は車両の進行方向を示す表示パターンを表示することが望ましい。このような経路案内処理によれば、表示パターンが示す向きが車両の進行方向に対しずれていないことから、運転者は所定距離の範囲内に分岐先がないことを知ることができる。また複数の分岐先が連続して存在する場合には、分岐先の道路の入口から目標位置Pまでの距離を隣接する分岐点間の距離よりも短く設定してもよい。このような処理によれば、次の分岐先を確実に運転者に認識させることができる。
【0024】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態となる経路案内の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態となる経路案内処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】目標位置の方向及び距離の算出方法を説明するための図である。
【図4】低時空間周波数の表示パターンの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1:経路案内装置
2:交通情報収集部
3:現在地検出部
4:地図データベース
5:目的地入力部
6:ルート決定部
7:進路決定部
8:指示方向決定部
9:低時空間周波数パターン生成部
10:表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者に車両の走行経路を案内する経路案内装置であって、前記運転者に車両進行方向の分岐先を指示する場合、当該分岐先の道路の入口から所定距離先の位置に目標位置を設定し、車両の現在位置からの当該目標位置の方向と距離を示す表示パターンを運転者の周辺視野内に表示する表示制御手段を備えることを特徴とする経路案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路案内装置において、前記表示パターンは低時空間周波数の表示パターンであることを特徴とする経路案内装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の経路案内装置において、前記表示制御手段は、車両の現在位置の変化に合わせて前記表示パターンが示す目標位置の方向と距離を連続的に変化させることを特徴とする経路案内装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の経路案内装置において、前記表示制御手段は、前記車両の現在位置から分岐点までの道路が直線道路でない場合、現在の車両の走行路の接線方向に伸びる道路を仮定し、車両の現在位置から前記目標位置までの距離と同じ距離だけ離れた仮定した道路上の点の方向を目標位置の方向として表示することを特徴とする経路案内装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の経路案内装置において、前記表示制御手段は、向き及び色がそれぞれ前記目標位置の方向及び距離を示す表示パターンを表示することを特徴とする経路案内装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の経路案内装置において、前記表示制御手段は、前記車両の現在位置から所定距離の範囲内に分岐先がない場合、車両の進行方向を示す表示パターンを表示することを特徴とする経路案内装置。
【請求項7】
運転者に車両の走行経路を案内する経路案内方法であって、前記運転者に車両進行方向の分岐先を指示する場合、当該分岐先の道路の入口から所定距離先の位置に目標位置を設定し、車両の現在位置からの当該目標位置の方向と距離を示す表示パターンを運転者の周辺視野内に表示することを特徴とする経路案内方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−98061(P2009−98061A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271315(P2007−271315)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】