説明

結晶製造装置及び結晶製造方法

【課題】例えばGaN等の結晶を成長させる場合において、多数の基板を効率的に切り出せる結晶を短時間で製造させ、結晶製造の生産性を向上させることが可能な結晶製造装置及び結晶製造方法を提供する。
【解決手段】棒状に形成された種結晶材200を保持する種結晶材保持台217と、種結晶材保持台217に保持された種結晶材200が搬入され、種結晶材200の表面に結晶を成長させる処理室201と、処理室201の外側に配置され、処理室201内を加熱する加熱部206と、処理室201内に所定のガスを供給する原料ガス供給部と、処理室内の雰囲気を排出するガス排出部231と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶製造装置及び結晶製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)等の物質の単結晶は、溶融液から成長させることが困難である。GaNの単結晶を製造する方法として、例えば、GaNと格子定数の近いサファイヤ等の単結晶からなる下地基板の上に、ガリウム(Ga)を含むガスと窒素(N)を含むガスとを供給し、この下地基板上にGaNの単結晶をヘテロエピタキシャル成長させた後、得られたGaNの単結晶を下地基板から剥離する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−225180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に示すような従来技術では、多数の基板を効率的に切り出せる結晶を短時間で製造することは困難であり、高い生産性が得られ難いという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、例えばGaN等の結晶を成長させる場合において、多数の基板を効率的に切り出せる結晶を短時間で製造することができ、結晶製造の生産性を向上させることが可能な結晶製造装置及び結晶製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
棒状に形成された種結晶材を保持する種結晶材保持台と、
前記種結晶材保持台に保持された前記種結晶材が搬入され、前記種結晶材の表面に結晶を成長させる処理室と、
前記処理室の外側に配置され、前記処理室内を加熱する加熱部と、
前記処理室内に所定のガスを供給する原料ガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排出するガス排出部と、を備える
結晶製造装置である。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
種結晶材保持台に保持され、棒状に形成された種結晶材を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室の外側に配置された加熱部で前記処理室内を加熱し、原料ガス供給部から所定のガスを前記処理室内に供給しつつ、前記処理室内の雰囲気をガス排出部から排出して前記種結晶材の表面に結晶を成長させる工程と、を有する
結晶製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る結晶製造装置及び結晶製造方法によれば、例えばGaN等の結晶を成長させる場合において、多数の基板を効率的に切り出せる結晶を短時間で製造することができ、結晶製造の生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る結晶製造装置の処理炉の縦断面図であり、結晶成長前の状態を示している。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る結晶製造装置の処理炉の縦断面図であり、結晶成長後の状態を示している。
【図3】従来の結晶製造装置を示す模式図である。
【図4】従来技術に係る結晶成長の様子を表わす基板の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る結晶成長の様子を表わす模式図である。
【図6】従来技術に係る結晶成長の様子を表わす模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る結晶製造装置の処理炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を、以下に説明する。
【0011】
(1)結晶製造装置の構成
図1は、本実施形態に係る結晶製造装置のホットウォール型の処理炉202の縦断面図であり、結晶成長前の状態を示している。図2は、本実施形態に係る結晶製造装置のホットウォール型の処理炉202の縦断面図であり、結晶成長後の状態を示している。図1、図2に示すように、処理炉202は、種結晶材としての単結晶棒材200を収容する処理室201と、処理室201内で単結晶棒材200を保持する種結晶材保持台としてのボート217と、処理室201内に所定のガスを供給する後述のガス供給部と、処理室201内のガスを排出するガス排出部231と、を備えている。なお、単結晶棒材200は、例えばGaN単結晶を棒状に形成したものである。単結晶棒材200の表面は例えば円筒形状を成すよう平坦に成形されており、この表面上に例えばGaNの結晶300をエピタキシャル成長させる。
【0012】
(処理室)
処理室201は処理容器としての反応管204内に設けられている。反応管204は、上端が閉塞し、下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管204は、例えばSi酸化膜(SiO膜)で表面がコーティングされた、石英(SiO)やシリコン(Si)等の耐熱性材料により構成されている。処理室201内には単結晶棒材200を保持した上述のボート217が収容可能に構成されている。
【0013】
反応管204の下端部には、反応管204の下端開口を気密に閉塞可能な保持体としてのベース257が設けられている。ベース257は、例えばステンレス等の金属により、円盤状に形成されている。ベース257の上面には、反応管204の下端に当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。
【0014】
ベース257の下には、炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属により円盤状に形成されている。シールキャップ219は、ボートエレベータ115により後述するボート217を処理室201内に搬入する際に、ベース257、Oリング220を介して反応管204の下端を気密に閉塞するように構成されている。
【0015】
シールキャップ219の下側中心付近には、ボート217を回転させる回転機構254が設置されている。回転機構254の回転軸255は、シールキャップ219とベース257とを貫通し、後述する断熱筒218を介してボート217に接続されている。
【0016】
(ボート)
種結晶材保持台としてのボート217は、円盤状に形成された種結晶材保持棚217aと、その中央に単結晶棒材200を種結晶材保持棚217aに対して垂直に保持する種結晶材保持部217bとを備えている。種結晶材保持部217bには、単結晶棒材200の下端を差し込んで固定する穴部(図示せず)が設けられている。ボート217はこのほか、単結晶棒材200の下端だけでなく、上端も固定するように構成されていてもよい。したがってボート217は、例えば処理室201内に立設されるよう複数本の支柱(図示せず)を備えていてもよく、例えば支柱の両端に、種結晶材保持部217bを備える種結晶材保持棚217aがそれぞれ設けられていてもよい。これによって、より安定的に単結晶棒材200を保持することができる。ボート217を構成する各部は、例えばSi酸化膜(SiO膜)で表面がコーティングされた、石英や炭化珪素(SiC)等の耐熱性非金属材料により構成されている。
【0017】
(回転機構及びボートエレベータ)
ボート217の下方には、断熱部材としての断熱筒218が、ボート217を下方から支持するように設けられている。断熱筒218は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料により、円筒形状に形成されている。断熱筒218は、後述するヒータ206からの熱を反応管204の下端側に伝達し難く構成されている。断熱筒218は、回転機構254の回転軸255により下方から支持されている。回転機構254を作動させることにより、ボート217に保持された単結晶棒材200を、処理室201内で回転させることが可能に構成されている。
【0018】
シールキャップ219の下側周縁は、昇降機構であるボートエレベータ115のアームに連結されている。ボートエレベータ115は、反応管204の外部に垂直に設置されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を垂直方向に昇降させるように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、処理室201内に対してボート217を搬入搬出可能となっている。ボートエレベータ115により処理室201内に搬入されたボート217は、予め種結晶材保持部217bに固定された単結晶棒材200を、処理室201の軸心方向に延在するように処理室201内に保持する。回転機構254及びボートエレベータ115は、後述するコントローラ240の駆動制御部237に電気的に接続されている。
【0019】
(ガス供給部)
反応管204の下端部には、ガス導入部230a、230bが設けられている。ガス導入部230a、230bの下流端には、細管233a、233bの上流端が接続されている。細管233a、233bは、反応管204の下方から反応管204の天井部に至るまで、反応管204の外壁に沿って垂直に設けられている。細管233a、233bの下流端は、反応管204の天井部に開口するように形成されたガス導入口234a、234bにそれぞれ接続されている。ガス導入部230a、230bから導入されたガスは、細管233a、233b内を流通し、ガス導入口234a、234bから処理室201内に導入されるようになっている。
【0020】
ガス導入部230aの上流端には、ガス供給管232aの下流端が接続されている。ガス供給管232aは、ガリウム含有ガスとして例えば塩化ガリウム(GaCl)を含むガスを供給するガリウム含有ガス供給管として構成されている。ガス供給管232aの上流端には、ガリウム(Ga)融液を貯留したGa融液タンク265が設けられている。Ga融液タンク265には、塩素含有ガスとして例えば塩化水素(HCl)ガスを供給する塩素含有ガス供給管261の下流端が接続されている。
【0021】
塩素含有ガス供給管261には、上流側から順に、HClガス供給源262、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ263、開閉弁であるバルブ264が
設けられている。HClガス供給源262から供給されるHClガスは、バルブ264の開動作により、マスフローコントローラ263で所定の流量に調整されつつ、塩素含有ガス供給管261内を流通し、Ga融液タンク265内に供給される。Ga融液タンク265内では、供給されたHClガスと貯留されていたGa融液とが反応し、GaClが生成される。GaClを含むガスはガス供給管232aを流れ、ガス導入部230a、細管233a、ガス導入口234aを介して処理室201内に導入されるようになっている。
【0022】
ガス導入部230bの上流端には、ガス供給管232bの下流端が接続されている。ガス供給管232bの上流端には、窒素含有ガスとして例えばアンモニア(NH)ガスを供給する窒素含有ガス供給管271が接続されている。
【0023】
窒素含有ガス供給管271には、上流側から順に、NHガス供給源272、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ273、開閉弁であるバルブ274が設けられている。NHガス供給源272から供給されるNHガスは、バルブ274の開動作により、マスフローコントローラ273で所定の流量に調整されつつ、窒素含有ガス供給管271内を流通し、ガス供給管232b、ガス導入部230b、細管233b、ガス導入口234bを介して処理室201内に導入されるようになっている。
【0024】
主に、塩素含有ガス供給管261、HClガス供給源262、マスフローコントローラ263、バルブ264、Ga融液タンク265、ガス供給管232a、ガス導入部230a、細管233a、ガス導入口234aにより、本実施形態に係るガリウム含有ガス供給部が構成されている。また主に、窒素含有ガス供給管271、NHガス供給源272、マスフローコントローラ273、バルブ274、ガス供給管232b、ガス導入部230b、細管233b、ガス導入口234bにより、本実施形態に係る窒素含有ガス供給部が構成されている。そして主に、ガリウム含有ガス供給部、窒素含有ガス供給部により処理室201内に所定のガスを供給する原料ガス供給部が構成されている。そして、マスフローコントローラ263、273及びバルブ264、274は、後述するコントローラ240のガス流量制御部235に電気的に接続されている。
【0025】
(ガス排出部)
また、反応管204の下端部であってガス導入部230a、230bと対向する位置に排気口231aが設けられている。排気口231aには、排気管229が接続されている。排気管229には、上流側から順に、圧力検出器としての圧力センサ245、圧力調整装置としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ242の弁開度をフィードバック制御することにより、処理室201内の圧力を所定の圧力に調整可能なように構成されている。
【0026】
主に、排気口231a、排気管229、圧力センサ245、APCバルブ242及び真空ポンプ246により、処理室201内のガス(雰囲気)を排出するガス排出部231が構成されている。圧力センサ245及びAPCバルブ242は、後述するコントローラ240の圧力制御部236に電気的に接続されている。
【0027】
(加熱部)
ヒータ206の下端部には、ヒータベース251が設けられている。ヒータベース251は、加熱部としてのヒータ206を下方から支持している。ヒータ206は、円筒形状に形成されている。ヒータ206は、反応管204の外側に同心円状に配設されている。ヒータ206は、反応管204を介して、処理室201内の単結晶棒材200を加熱するようになっている。なお、ヒータ206は鉛直方向に複数のゾーンに分割されている。ヒ
ータ206を構成する複数のゾーンの温度は、それぞれ独立して制御できるように構成されている。これにより、処理室201内での均熱性が向上する。なお、ヒータ206は、好適には二珪化モリブデン(MoSi)材料等で形成される、抵抗加熱式の発熱体として構成されている。
【0028】
また、ヒータ206と反応管204との間には、温度検出器としての温度センサ206aが設置されている。ヒータ206は、温度センサ206aの温度情報に基づき制御されるようになっている。ヒータ206及び温度センサ206aは、後述するコントローラ240の温度制御部238に電気的に接続されている。
【0029】
(制御部)
制御部としてのコントローラ240は、駆動制御部237、ガス流量制御部235、圧力制御部236、温度制御部238、及びこれらを制御して結晶製造装置全体を制御する主制御部239を備えている。また、コントローラ240は、操作部及び入出力部(共に図示しない)を更に備えている。
【0030】
駆動制御部237は、回転機構254及びボートエレベータ115にそれぞれ電気的に接続されている。駆動制御部237は、回転機構254の動作を制御し、所定のタイミングにてボート217を回転させるようにしている。また、駆動制御部237は、ボートエレベータ115の動作を制御し、処理室201内外に所定のタイミングでボート217を搬送するようにしている。
【0031】
ガス流量制御部235は、マスフローコントローラ263、273及びバルブ264、274にそれぞれ電気的に接続されている。ガス流量制御部235は、マスフローコントローラ263、273による流量調整動作と、バルブ264、274の開閉動作を制御することにより、処理室201内へのガス供給を所定のタイミングかつ所定の流量で行なうようにしている。
【0032】
圧力制御部236は、圧力センサ245及びAPCバルブ242にそれぞれ電気的に接続されている。圧力制御部236は、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ242の弁開度を制御し、処理室201内の圧力が所定のタイミングで所定の圧力となるようにしている。
【0033】
温度制御部238は、温度センサ206a及びヒータ206にそれぞれ電気的に接続されている。温度制御部238は、温度センサ206aにより検出された温度情報に基づいてヒータ206への通電具合を制御し、処理室201内の温度及び単結晶棒材200の温度が所定のタイミングで所定の温度となるようにしている。
【0034】
(2)結晶製造工程
次に、上記構成に係る処理炉202を用いて、単結晶棒材200の表面に例えばGaNの結晶300を成長させる工程を有する結晶製造工程について説明する。尚、以下の説明において、結晶製造装置を構成する各部の動作はコントローラ240により制御される。
【0035】
(搬入工程(S10))
まず、ボート217が備える種結晶材保持部217bに、単結晶棒材200を保持させる。次に、コントローラ240(駆動制御部237)の制御に基づいてボートエレベータ115を駆動させ、ボート217を上昇させる。これにより、図1に示すように、単結晶棒材200を保持したボート217が処理室201内に搬入(ボートローディング)される。このとき、シールキャップ219は、ベース257、Oリング220を介して反応管204の下端を閉塞する。これにより、処理室201は気密に封止される。
【0036】
(減圧工程(S20)及び昇温工程(S30))
処理室201内へのボート217の搬入が完了したら、処理室201内の雰囲気を真空ポンプ246により排気して、処理室201内を減圧する。そして、回転機構254を作動させ、処理室201内に搬入された単結晶棒材200の回転を開始する。なお、単結晶棒材200の回転は、後述する結晶成長工程(S40)が終了するまで継続する。
【0037】
また、処理室201内が所定温度となるようヒータ206によって加熱する。具体的には、温度センサ206aにより検出された温度情報に基づいてヒータ206への通電具合を制御して、処理室201内を所定の温度とする。
【0038】
(結晶成長工程(S40))
結晶成長工程(S40)では、処理室201内に原料ガス供給部から所定のガスを供給しつつ、処理室201内の雰囲気をガス排出部231から排出して、単結晶棒材200の表面にGaNの結晶300を成長させる。
【0039】
具体的にはまず、処理室201内へ、ガリウム含有ガスとしてのGaClを含むガスの供給を開始する。すなわち、バルブ264を開け、HClガス供給源262から供給されたHClガスを、マスフローコントローラ263により所定の流量に調整しつつ、塩素含有ガス供給管261内を流通させ、Ga融液タンク265内に供給する。Ga融液タンク265内では、供給されたHClガスと貯留されていたGa融液とが反応し、GaClが生成される。ガス供給管232aを流れたGaClを含むガスは、ガス導入部230a、細管233a、ガス導入口234aを介して処理室201内に供給される。
【0040】
処理室201内へのGaClを含むガスの供給と並行して、処理室201内へ、窒素含有ガスとしてのNHガスの供給を開始する。すなわち、バルブ274を開け、NHガス供給源272から供給されたNHガスを、マスフローコントローラ273により所定の流量に調整しつつ、窒素含有ガス供給管271内を流通させ、ガス供給管232b、ガス導入部230b、細管233b、ガス導入口234bを介して処理室201内に供給する。
【0041】
このとき、処理室201内へ上記所定のガスを供給しつつ真空ポンプ246により排気して、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて圧力調整装置242のバルブの開度をフィードバック制御し、処理室201内を所定の圧力とする。なお、処理室201内の圧力条件及び温度条件は、単結晶棒材200の表面にのみGaNの結晶300が選択的に成長し、反応管204内壁面などにはGaN(窒化ガリウム)の結晶が成長しない条件とすることが好ましい。
【0042】
GaClを含むガスとNHガスとが処理室201内で気相反応することにより、単結晶棒材200の表面にてGaNの結晶300の成長(気相成長)が開始される。成長が開始されると、GaNの結晶300は主に、単結晶棒材200の表面全体に延び広がる方向、すなわち、単結晶棒材200の表面を覆うように成長する。その後、単結晶棒材200の円筒形状を成す表面に対して半径方向(垂直方向)に成長する。そして結晶成長を継続させると、図2に示すように、結晶300は単結晶棒材200を中心軸とする柱状結晶となる。つまり、柱状結晶の半径分の成長時間で結晶300が形成される。なお、単結晶棒材200は、柱状となった結晶300の中に包含されることになる。
【0043】
処理室201内の圧力は、減圧〜大気圧の範囲内(例えば50Pa以上0.1MPa以下)とするのが好ましく、成長領域におけるGaClを含むガス、NHガス及びHClガスの各分圧を、常圧下においてそれぞれ100〜2000Pa、2900〜1000
Pa及び10〜700Paとするのが好ましい。これにより結晶欠陥の少ないGaNの結晶300が得られる。例えば、GaClを含むガスの供給流量を20〜200sccmとし、NHガスの供給流量を300〜1000sccmとし、HClガスの供給流量を2〜70sccmとするのが好ましい。
【0044】
成長領域の温度は800℃以上1150℃未満の範囲内に制御するのが好ましい。成長領域の温度を800℃未満とすると、GaNの結晶300の成長速度が遅くなり過ぎてしまう。一方、成長領域の温度を1150℃以上とすると、GaClを含むガスとNHガスとの反応性が高くなり過ぎてしまう。なお、成長領域の温度は850℃以上1100℃以下に制御するのがより好ましい。
【0045】
結晶300が所定の大きさに成長したら、バルブ264を閉めて処理室201内へのGaClを含むガスの供給を停止すると共に、バルブ274を閉めて処理室201内へのNHガスの供給を停止する。そして、処理室201内の排気を継続し、処理室201内に残留しているGaClを含むガス、NHガス、反応生成物等を排気する。
【0046】
(大気圧復帰工程(S50))
結晶成長工程(S40)が完了したら、ボート217の回転を停止させて単結晶棒材200の回転を停止する。そして、処理室201内の圧力を大気圧に復帰させつつ、単結晶棒材200を降温させる。具体的には、図示しないパージガス供給部から処理室201内に不活性ガスとしてのNガスを供給しつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて圧力調整装置242のバルブの開度をフィードバック制御し、処理室201内の圧力を大気圧に昇圧する。そして、ヒータ206への通電量を制御して、柱状に成長した結晶300の温度を降温させる。
【0047】
(搬出工程(S60))
その後、コントローラ240(駆動制御部237)の制御に基づいてボートエレベータ115を駆動させ、ボート217を降下させる。そして、成長させた柱状の結晶300をボート217から取り出す。
【0048】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示すひとつまたは複数の効果を奏する。
【0049】
(a)本実施形態に係る結晶製造装置は、棒状に形成された単結晶棒材200を保持するボート217と、単結晶棒材200の表面に結晶300を成長させる処理室201と、処理室201内に所定のガスを供給する原料ガス供給部と、処理室201内の雰囲気を排出するガス排出部231と、を備える構成となっている。そして、ボート217に保持された単結晶棒材200が搬入された処理室201内に、原料ガス供給部から所定のガスを供給しつつ、処理室201内の雰囲気をガス排出部231から排出して棒状の単結晶棒材200の表面に結晶300を成長させる。これによって、多数の基板を効率的に切り出せる結晶300を短時間で製造することができ、結晶製造の生産性を向上させることができる。
【0050】
参考までに、従来の結晶製造装置の構成、及び係る装置を用いた従来の結晶製造工程について、図3、図4を用いて説明する。
【0051】
図3に示すように、従来の結晶製造装置は、反応管410内の一端側(図中右側)に炭化珪素(SiC)から成るサセプタ420を備えていた。サセプタ420は、サファイヤ(Al)からなる下地基板400を保持するように構成されていた。サセプタ420上に保持された下地基板400は、反応管410の外周を囲うように設けられたヒータ
(RFコイル)450により加熱されるように構成されていた。また、反応管410内には、反応管410内の他端(図中左側)側から下地基板400に向けて延在するGaClガス供給管430と、NHガス供給管440と、が設けられていた。GaClガス供給管430には、Ga融液を貯留するGa融液タンク431が設けられていた。そして、下地基板400をヒータ450により加熱しつつ、反応管410内にGaClガス供給管430からGaClガスを供給すると共に、反応管410内にNHガス供給管440からNHガスを供給することにより、下地基板400上にGaNの結晶500を製造するようにしていた。
【0052】
なお、図4(a)に示すように、結晶500を製造する際には、下層側の結晶500bを成長させた後、結晶500b上に微細孔マスク(ナノマスク)500nを自己形成させ、その後、上層側の結晶500aを成長させるようにする場合もあった。係る場合、下層側の結晶500bに発生した転位500eが、上層側の結晶500aに継承されてしまうことを抑制できる。また、微細孔マスク500nと上層側の結晶500aとの界面にボイド500vが形成されることから、結晶500を冷却する際に、図4(b)に示すように、熱応力により上層側の結晶500aを自然剥離させることができる。
【0053】
しかしながら上述の従来技術では、下地基板400の表面全体に結晶500が延び広がった後は、概ね一方向、すなわち図6に示すように下地基板400の表面に対して垂直方向gへしか、結晶500は成長していかない。このため、所定の厚さの結晶500を成長させるには時間がかかるので、例えば多数の基板が切り出せるような厚みを持った結晶500を製造することは事実上困難であり、高い生産性が得られ難いという課題があった。
【0054】
これに対して本実施形態によれば、種結晶材としての単結晶棒材200の表面に結晶300を成長させるから、図5に示すように、例えば単結晶棒材200の表面が円筒形状を成す場合には、単結晶棒材200の表面に対して垂直方向(法線の方向)g、g、g・・・に放射状に結晶300が成長していく。このため、所定の大きさの結晶300を効率よく成長させることができる。また、結晶300を例えば柱状に成長させるため、多数の基板を効率的に切り出せる結晶300を短時間、つまり、柱状結晶の半径分の成長時間で製造することができ、結晶製造の生産性を向上させることが可能となる。
【0055】
なお、所定の大きさの結晶を効率よく成長させる方法として、例えば複数の下地基板を用いる方法等も考えられる。処理室内に、例えば複数の下地基板を多段に収容し、各々の下地基板表面に結晶を成長させるのである。この状態で結晶成長を継続させると、下地基板の数に応じて複数の球状の結晶が得られる。しかしこの場合であっても、各下地基板の間は結晶が形成されないデッドスペースとなるので、こと効率面でいえば本実施形態による結晶製造方法がより有利である。また、球状に対して柱状の結晶のほうが、基板に切り出すときの切り出し効率もよい。
【0056】
(b)本実施形態によれば、処理室201は筒状に構成され、単結晶棒材200は処理室201の軸心方向に延在するように保持される構成となっている。これにより、処理室201内に供給される所定のガスの流量や組成比、処理室201内の温度等が均一になり、より均質で高品質の結晶300が得られる。
【0057】
(c)また本実施形態によれば、単結晶棒材200の表面は円筒形状に構成され、円筒形状の表面に対して半径方向に結晶300を成長させる。これにより、凹凸や角部のない平坦な表面上に結晶300が成長するから結晶欠陥を低減できる。また放射状に成長が進むので所定の大きさの結晶300をより効率よく成長させることができる。
【0058】
(d)本実施形態によれば、抵抗加熱方式等のホットウォール型の処理炉において、反応管204内壁やボート217等の表面をSi酸化膜で構成する。そして、結晶成長工程(S40)における処理室201内の圧力条件及び温度条件を、GaN等からなる単結晶棒材200の表面にのみ結晶300が選択的に成長し、処理室201内壁上やボート217表面上には結晶が成長しない条件とすることができる。すなわち、反応管204内壁やボート217等にGaN等からなる薄膜を成膜させないようにしつつ、種結晶材としての単結晶棒材200の表面にのみGaN等を厚く成膜させることができ、バルクの結晶300を容易に製造することが可能となる。
【0059】
(e)本実施形態によれば、種結晶材としての単結晶棒材200の材料として、例えばGaN単結晶を用いるようにしている。このように、同じ物質の上にエピタキシャル成長させると、成長による幾何学的選択効果(ジオメトリカルセレクション)によって欠陥を減少させることができる。そして、GaNを厚く成長させるほど欠陥を減少させることができる。
【0060】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る結晶製造装置について、図7を用いて説明する。本実施形態においては、上述の結晶成長工程(S40)に加えて、処理室201内にエッチングガスとして例えばHClガスを供給し、成長した結晶300の一部を除去するエッチング工程(S41)を行なう点が、上述の実施形態と異なる。つまり、結晶成長工程(S40)とエッチング工程(S41)とを交互に繰り返したり、あるいは並行して実施したりする。したがってそれ以外の構成についての詳細な説明は、前記結晶製造装置と同様の機能を有する構成要件に同一の符号を付して省略する。
【0061】
ここでは一例として、第1の実施形態と同様、GaN単結晶を単結晶棒材200として用い、GaNの結晶300を成長させる場合について述べる。図7に示す結晶製造装置には、第1の実施形態に記載のガリウム含有ガス供給部及び窒素含有ガス供給部に加えて、エッチングガス供給部が設けられている。すなわち、HClガス供給源282から供給されるHClガスは、バルブ284の開動作により、マスフローコントローラ283で所定の流量に調整されつつ、エッチングガス供給管281内を流通し、ガス供給管232c、ガス導入部230c、細管233c、ガス導入口234cを介して処理室201内に導入されるようになっている。
【0062】
主に、エッチングガス供給管281、HClガス供給源282、マスフローコントローラ283、バルブ284、ガス供給管232c、ガス導入部230c、細管233c、ガス導入口234cにより、本実施形態に係るエッチングガス供給部が構成されている。また、マスフローコントローラ283及びバルブ284は、上述のマスフローコントローラ263、273及びバルブ264、274と同様、コントローラ240のガス流量制御部235に電気的に接続され、処理室201内へのガス供給を所定のタイミングかつ所定の流量で行なうようにしている。
【0063】
上述の構成を持つ結晶製造装置を用いて結晶300を成長させる場合、上述の結晶成長工程(S40)を所定時間実施した後、処理室201内にエッチングガスとしてのHClガスを供給するエッチング工程(S41)を所定時間実施することとし、結晶成長工程(S40)とエッチング工程(S41)とを1サイクルとしてこのサイクルを繰り返すようにする。または、結晶300が所望の大きさに到達するまで、上述の結晶成長工程(S40)とエッチング工程(S41)とを並行して同時に実施するようにする。
【0064】
なお、エッチング工程(S40)では、バルブ284を開け、HClガス供給源282から供給されたHClガスを、マスフローコントローラ283により所定の流量に調整し
つつ、エッチングガス供給管281内を流通させ、ガス供給管232c、ガス導入部230c、細管233c、ガス導入口234cを介して処理室201内に供給させるようにする。
【0065】
このように、成長した結晶300の一部を除去するエッチング工程(S41)を行なうことで、成長の初期段階で発生する初期成長核の比較的小さいものを除去することができ、結晶300中の欠陥の発生を抑制することができる。
【0066】
なお、エッチング工程(S41)を実施することにより、結晶300の成長速度が低下してしまう場合もある。そのため、結晶300の成長の初期段階でのみエッチング工程(S41)を実施することとしてもよい。
【0067】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0068】
また本実施形態によれば、エッチングガス供給部からエッチングガスを前記処理室201内に供給し、単結晶棒材200の表面に成長した結晶300の一部を除去する構成としている。これにより、結晶300中の欠陥発生を抑制することができる。
【0069】
すなわち、結晶300は、単結晶棒材200の表面に形成された初期成長核を基に成長していく。本実施形態のように、結晶成長工程(S40)と交互に、或いは並行してエッチング工程(S41)を実施することにより、単結晶棒材200の表面に形成された初期成長核のうち、比較的小さな初期成長核を除去することができる。そして、大きな初期成長核のみが単結晶棒材200の表面に存在する状態(低初期核密度の状態)を得ることができる。係る状態で結晶300を成長させることにより、例えば結晶300中における転位密度を抑制することができるなど、結晶300中の欠陥の発生を抑制することが可能となる。
【0070】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る結晶製造装置について説明する。本実施形態に係る結晶製造装置は、種結晶材としてGaN単結晶の替わりに例えばSi単結晶の単結晶棒材210を用い、原料ガス供給部によってGaClを含むガス及びNHガスの替わりに例えばシラン系ガスを供給し、Siの結晶310を製造する点が上述の実施の形態と異なる。したがって、それ以外の構成については第1の実施形態に係る説明及び図1、図2を参照するものとし、詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施形態において、種結晶材として例えばSi単結晶を棒状に形成した単結晶棒材210を用いる。このSiの単結晶棒材210を、第1の実施形態と同様の方法により処理室201内に収容し、単結晶棒材210の表面に例えばSiの結晶310をエピタキシャル成長させる。
【0072】
原料ガスとしては、例えばシラン系ガスやクロル系のシランガス等のシリコン含有ガスを用いることができ、より具体的には例えばモノシラン(SiH)ガスやトリクロロシラン(SiHCl)ガス等を用いることができる。SiHガスやSiHClガスは、例えば金属級Siから生成することができる。シリコン含有ガスを供給する装置構成としては、例えば第1の実施形態における窒素含有ガス供給部と同態様のシリコン含有ガス供給部を用いればよい。
【0073】
上記構成により、ボート217に保持されたSiの単結晶棒材210を処理室201内に搬入し、ヒータ206で処理室201内を所定温度に加熱し、シリコン含有ガス供給部からシリコン含有ガスを処理室201内に供給しつつ、処理室201内の雰囲気をガス排
出部231から排出して単結晶棒材210の表面にSiの結晶310を成長させる。
【0074】
このようにして、図2に示すように、単結晶棒材210の表面に例えばSiの柱状の結晶310が得られる。
【0075】
本実施形態によれば、ボート217に保持したSiより成る単結晶棒材210を処理室201内に搬入し、ガス供給部からシリコン含有ガスを処理室201内に供給して単結晶棒材210の表面にSiの結晶310を成長させている。これにより、金属級Siから生成したシリコン含有ガスから直接的にSiの結晶310を製造することができ、工程やコストの大幅削減が可能となる。
【0076】
従来において、半導体デバイス用として高品質の単結晶Siを得るには高コストの工程を多数、経ていた。すなわち、まず金属級SiからSiHガスやSiHClガス等のシリコン含有ガスを製造し、これをCVD法で析出させて高純度Siを得ていた。この高純度Siから、チョコラルスキー法等を用いて単結晶Siのインゴットを製造し、基板に切り出していた。半導体デバイス製造においてはSi基板の寸法精度等の規格も厳しく、上述のような製造方法を用いて単結晶SiやSi基板を製造すると、高価であった。
【0077】
しかし、太陽電池用で使用される単結晶Siにおいてはそこまでの品質は求められておらず、また更にコストを抑制しなければならない。そこで従来は、半導体デバイス用の単結晶SiやSi基板の規格外品が太陽電池用として使用されていた。ところが近年、太陽電池用の単結晶Siの需要が高まり、上記のような半導体デバイス用の規格外品だけではその需要をまかなえないことから、別途、価格や品質を抑えた太陽電池用の単結晶Siを製造する必要が生じてきた。このため、半導体デバイス用の単結晶Siよりも簡便で安価に単結晶Siが得られる製造方法が求められていた。
【0078】
本実施形態によれば、金属級Siから生成したSiHガスやSiHClガス等を用いて、直接、Siの結晶310を製造することができるので、工程やコストを大幅に削減することができる。これにより、低コストをひとつの理由に太陽電池に多用されてきた多結晶シリコンに対抗しうる低コストで、発電効率のより高い単結晶Siを製造することができる。
【0079】
また、本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0080】
[第4の実施の形態]
上述の実施形態では、単結晶棒材200、210の材質として、GaN単結晶、Si単結晶を例に挙げて説明したが、単結晶棒材の材質は所望の結晶の種類に応じて種々変更可能である。具体的には、単結晶棒材の材質は、例えば炭化珪素(SiC)単結晶や、窒化アルミニウム(AlN)単結晶等であってもよい。
【0081】
これらの単結晶棒材を基に、それぞ結晶を成長させる場合は、使用する原料ガスも適宜、変更するものとする。具体的には、例えばSiCの結晶を成長させる場合は、シリコン含有ガスおよび炭素(C)含有ガスを処理室201内に供給し、SiC単結晶の単結晶棒材の表面にSiCの結晶を成長させる。係る場合、単結晶棒材の表面にのみSiCの結晶を選択的に成長させ、反応管204内壁面等にはSiCの結晶を成長させないようにするために、シリコン含有ガスや炭素含有ガスとして、塩素(Cl)やフッ素(F)を更に含有するガスを用いるか、或いは、処理室201内に塩素(Cl)やフッ素(F)を含有するガスを別途供給するようにすることが好ましい。
【0082】
また、例えばAlNの結晶を成長させる場合は、アルミニウム(Al)含有ガスおよび
窒素含有ガスを処理室201内に供給し、AlN単結晶の単結晶棒材の表面にAlNの結晶を成長させる。
【0083】
[第5の実施の形態]
また、処理室201内に搬入する単結晶棒材200等は、一度に1本のみであっても複数本であってもよい。例えばGaNにより形成された複数の単結晶棒材200を、処理室201内に搬入してGaNの結晶300を成長させる場合について説明すると、複数の単結晶棒材200の表面にそれぞれ結晶300を成長させて、複数の結晶300を製造することができ、より効率的である。その場合、処理室201内において、互いの単結晶棒材200の距離や反応管204内壁までの距離が一定になるよう、それぞれの単結晶棒材200を配置することで、より均質で高品質の結晶300が複数得られる。また、各々の単結晶棒材200を独立に自己の中心軸周りに回転(自転)させる構成としてもよく、上記自転に替えて、あるいは上記自転に加えて、各々の単結晶棒材200の互いの位置関係を保ったまま全体を回転(公転)させる構成としてもよい。
【0084】
[他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0085】
上述の実施形態では、単結晶棒材200は棒状に形成され、単結晶棒材200の表面は例えば円筒形状を成すよう平坦に成形されるとしたが、単結晶棒材200は処理室201内に延在させて収容される形状、例えば断面が楕円形となるような棒材のほか、板材や角材のように表面に角部を持つものであってもよく、その角部に丸みを持たせたものでもよい。但し、上述の実施形態のように単結晶棒材200を凹凸や角部のない平坦な表面にすることで、結晶300中の結晶欠陥を低減できる。
【0086】
上述の実施形態では、ガス供給管232a〜232c、ガス導入部230a〜230c、細管233a〜233c、ガス導入口234a〜234cを介して処理室201内にそれぞれ供給することとした。しかしながら、本発明は係る形態に限定されない。例えば、エッチングガスと窒素含有ガスとを同じガス供給管、細管、ガス導入部、ガス導入口を介して供給するようにしてもよい。但し、GaClとNH等の原料ガス同士の組み合わせは互いに反応し易いため、上述の実施形態のように処理室201内に別々に供給するようにすることで、ガス供給管、細管、ガス導入部、ガス導入口内が詰まってしまったり、これらの内部にて異物が発生してしまったりすることを抑制できる。
【0087】
上述の実施形態では、処理室201内へのガス供給を、ガス供給管232a〜232c、ガス導入部230a〜230c、細管233a〜233c、ガス導入口234a〜234cを介して行なうようにしていたが、本発明は係る形態に限定されない。すなわち、ヒータ206上端に複数の貫通孔を設け、該貫通孔を貫通させるようにガス供給管232a〜232cを設け、該ガス供給管232a〜232cの下流端を反応管204の天井部に設けたガス導入口234a〜234cにそれぞれ接続するように構成してもよい。
【0088】
また、本発明は、反応管204やボート217が上述の部材により構成されている場合に限らず、SiC、Si、Si含浸SiC、SiCコートカーボンのいずれか1種類、もしくは2種類以上で構成されており、これらの表面がSi酸化膜によりコーティングされている場合にも好適に適用可能である。これらいずれの部材を使用した場合においてもSi酸化膜によりコーティングすることで、反応管204やボート217の表面にGaN等の結晶を成長させないようにすることができる。
【0089】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
【0090】
本発明の一の態様は、
棒状に形成された種結晶材を保持する種結晶材保持台と、
前記種結晶材保持台に保持された前記種結晶材が搬入され、前記種結晶材の表面に結晶を成長させる処理室と、
前記処理室の外側に配置され、前記処理室内を加熱する加熱部と、
前記処理室内に所定のガスを供給する原料ガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排出するガス排出部と、を備える
結晶製造装置である。
【0091】
本発明の他の態様は、
種結晶材保持台に保持され、棒状に形成された種結晶材を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室の外側に配置された加熱部で前記処理室内を加熱し、原料ガス供給部から所定のガスを前記処理室内に供給しつつ、前記処理室内の雰囲気をガス排出部から排出して前記種結晶材の表面に結晶を成長させる工程と、を有する
結晶製造方法である。
【0092】
好ましくは、前記処理室は筒状に構成され、
前記種結晶材は前記処理室の軸心方向に延在するように保持される。
【0093】
また好ましくは、
前記種結晶材はGaN、Si、SiC、又はAlNのいずれかにより成る。
【0094】
また好ましくは、
前記種結晶材保持台に複数の前記種結晶材を保持させて前記処理室内に搬入し、
複数の前記種結晶材の前記表面にそれぞれ前記結晶を成長させて、複数の結晶を製造する。
【0095】
また好ましくは、
前記種結晶材の前記表面は円筒形状に構成され、
前記円筒形状の前記表面に対して半径方向に前記結晶を成長させる。
【0096】
また好ましくは、
エッチングガス供給部を備え、
前記処理容器の外側に配置された加熱部で前記処理室内を加熱し、エッチングガス供給部からエッチングガスを前記処理室内に供給し、前記種結晶材の前記表面に成長した前記結晶の一部を除去する。
【0097】
本発明の更に他の態様は、
棒状に形成された種結晶材を保持する種結晶材保持台と、
前記種結晶材保持台に保持された前記種結晶材が搬入され、前記種結晶材の表面に結晶を成長させる処理室と、
前記処理室の外側に配置され、前記処理室内を加熱する加熱部と、
前記処理室内に所定のガスを供給する原料ガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排出するガス排出部と、を備える結晶製造装置にて処理され、
円筒形状を成す表面を有し、
前記円筒形状の前記表面に対して半径方向に結晶をエピタキシャル成長させる
種結晶材である。
【符号の説明】
【0098】
200 単結晶棒材(種結晶材)
201 処理室
206 ヒータ(加熱部)
217 ボート(種結晶保持台)
231 ガス排出部
300 結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に形成された種結晶材を保持する種結晶材保持台と、
前記種結晶材保持台に保持された前記種結晶材が搬入され、前記種結晶材の表面に結晶を成長させる処理室と、
前記処理室の外側に配置され、前記処理室内を加熱する加熱部と、
前記処理室内に所定のガスを供給する原料ガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排出するガス排出部と、を備える
ことを特徴とする結晶製造装置。
【請求項2】
種結晶材保持台に保持され、棒状に形成された種結晶材を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室の外側に配置された加熱部で前記処理室内を加熱し、原料ガス供給部から所定のガスを前記処理室内に供給しつつ、前記処理室内の雰囲気をガス排出部から排出して前記種結晶材の表面に結晶を成長させる工程と、を有する
ことを特徴とする結晶製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157235(P2011−157235A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21171(P2010−21171)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】