説明

絶縁性熱伝導シートの製造方法、絶縁性熱伝導シート及び放熱部材

【課題】電子機器へ適用した際に悪影響を及ぼさず、高い放熱性能と機械的強度とを有する絶縁性熱伝導シートを提供する。
【解決手段】本発明の絶縁性熱伝導シートの製造方法は、(I)実質的に、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子と、成形助剤と、からなるシート状成形体を複数準備する工程と、(II)複数の前記シート状成形体を重ね合わせて圧延する工程と、(III)前記成形助剤を除去する工程と、を含む。本発明の製造方法では、工程(I)と工程(II)とが交互に繰り返されてもよい。また、本発明の製造方法において用いられるシート状成形体として、例えば、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素樹脂、熱伝導性無機粒子及び成形助剤からなる混合物をシート状に成形した母シートを用いることもできるし、母シートを複数重ね合わせて圧延することによって得られる積層シートを用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性熱伝導シートの製造方法と、絶縁性熱伝導シートと、放熱部材とに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルコンピュータ及び携帯電話に代表される電子機器では、処理能力向上による部材自体の発熱、さらには小型化にともなう高密度実装により、「放熱」が大きな課題となっている。
【0003】
そこで、半導体素子等の動作特性や信頼性等を保つために、効率的な熱拡散・熱輸送システムなる概念が生まれ、種々の手法が提案されている。
【0004】
例えば、熱伝導性の充填材を含有したシリコーン系グリースやシリコーンゲルを用いて形成されたシート等が、放熱部材として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
シリコーン系グリース等のペースト状の材料は、接触熱抵抗を低く抑えることができる等の点で優れている。しかし、ペースト状であるため塗布工程が必要であり、この塗布工程のばらつきが放熱部材の熱伝導性に影響を及ぼすという問題があった。さらに、塗布したペーストが流れてしまう等、取り扱いの点での問題もあった。
【0006】
一方、シリコーンゲルは取り扱いの点で優れているものの、熱伝導率を高くするために充填材を高充填すると、シート強度が低下して弱い力で破断してしまうという問題があった。
【0007】
また、合成ゴム及びポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する。)を含む結着剤と、熱伝導性無機質粉体とを含む組成物によって形成された、熱伝導性に優れた絶縁シートも提案されている(特許文献2参照)。このような絶縁シートは、シートの成形加工性や機械的強度に優れ、さらに高い熱伝導性を実現することも可能であった。
【0008】
しかし、上記のように合成ゴムを含む絶縁シートの場合、加硫工程が必要であり、さらに加硫剤として添加された過酸化物等の残留により、電子機器へ適用した際に当該機器へ悪影響を及ぼすという問題があった。さらに、ゴム成分の存在により熱抵抗を十分に低くすることができず、熱伝導性無機質粉体を高充填しても熱抵抗を0.3K/W程度までしか下げることができなかった。そのため、十分な放熱性能を得ることが困難であった。
【0009】
さらに、導電材料ではあるが、高熱伝導性を有する材料として、グラファイトがある。携帯電話機等のような薄型の電子機器においては、厚さが薄くても面内方向の熱伝導率が370〜1500W/mKと大きく、熱の拡散や放熱に最適な、グラファイトシートが好んで用いられている(特許文献3及び4参照)。
【0010】
携帯電話に限らず、モバイル機器全体がより薄さと軽さとに開発の重点を置いてきたことで、ヒートスポット対策が重要となっており、グラファイトシートの放熱機能がこの用途に適していたことで採用が広がっている。
【0011】
しかしながら、グラファイトシートは表面強度が弱く、表面からの剥離及び傷が問題となる。さらに、導電材料であるために、電子機器内で基板等と接触した場合には支障をきたす。このために、グラファイトシートの表裏面を別部材の薄いカバー層で覆った放熱部品が用いられることとなる。すなわち、グラファイト自体の放熱性が高くとも、表裏面を絶縁層で覆わなければ使うことができず、ハンドリング性に劣るという問題があった。
【0012】
ヒートスポット対策にセラミックを利用することも考えられる。しかし、セラミックには柔軟性がないため、取り付けの際に割れる、輸送時の振動で割れるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−228955号公報
【特許文献2】特公昭63−46524号公報
【特許文献3】特開2008−60527公報
【特許文献4】特開2008−78380公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明では、電子機器へ適用した際に悪影響を及ぼさず、高い放熱性能と機械的強度とを有し、さらにハンドリング性に優れた絶縁性熱伝導シートを提供することを目的とする。さらに、本発明は、発熱部品からの熱を速やかに拡散(輸送)して発熱部品の温度上昇を緩和できる、ハンドリング性に優れた放熱部材を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の絶縁性熱伝導シートは、
(I)実質的に、PTFEを含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子と、成形助剤と、からなるシート状成形体を複数準備する工程と、
(II)複数の前記シート状成形体を重ね合わせて圧延する工程と、
(III)前記成形助剤を除去する工程と、
を含む。なお、本発明の製造方法において、「実質的に、PTFEを含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子と、成形助剤と、からなるシート状成形体」とは、シート状成形体にフッ素樹脂、熱伝導性無機粒子及び成形助剤以外の材料が含まれないか、又は、他の材料が含まれる場合でも、その含有量は、他の材料を含まない絶縁性熱伝導シートの特性(熱伝導特性)を大きく低下させない程度のごく少量(例えば10重量%以下)であることを意味する。
【0016】
本発明の絶縁性熱伝導シートは、実質的に、PTFEを含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子とからなるシートであって、面内方向の熱伝導率が5〜50W/mKで厚さ方向の熱伝導率が1〜15W/mKであり、且つ、耐電圧が5kV/mm以上である。なお、本発明の絶縁性熱伝導シートにおいて、「実質的に、PTFEを含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子とからなるシート」とは、シートにフッ素樹脂及び熱伝導性無機粒子以外の材料が含まれないか、又は、他の材料が含まれる場合でも、その含有量は、他の材料を含まない絶縁性熱伝導シートの特性(熱伝導特性)を大きく低下させない程度のごく少量(例えば10重量%以下)であることを意味する。
【0017】
本発明は、上記本発明の絶縁性熱伝導シートの製造方法によって得られる絶縁性熱伝導シートをさらに提供する。
【0018】
本発明は、上記本発明の絶縁性熱伝導シートを備えた放熱部材をさらに提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によって得られる絶縁性熱伝導シートでは、マトリックスとして実質的にフッ素樹脂のみが用いられており、他の有機材料、ゴム成分及び加硫剤等の不純物が含まれない。そのため、電子機器へ適用した際に当該機器に及ぼす影響を考慮する必要がない。さらに、本発明の製造方法によって得られる絶縁性熱伝導シートは、シートの面内方向における熱伝導率が厚さ方向における熱伝導率よりも高いシートとなる。このような熱伝導異方性により、面内方向に熱がすばやく拡散して放熱面積が大きくなり、高い放熱性能を実現できる。さらに、本発明の製造方法によれば、熱伝導性無機粒子を高い割合で配合した場合であっても、十分な機械的強度を有する絶縁性熱伝導シートを実現できる。このように、本発明によれば、電子機器へ適用した際に悪影響を及ぼさず、高い放熱性能と機械的強度とを有し、さらにハンドリング性に優れた絶縁性熱伝導シートを提供できる。
【0020】
本発明の放熱部材は、上記の性能を有する絶縁性熱伝導シートを備えているので、絶縁性と高い放熱性能とを共に有している。したがって、本発明の放熱部材は、絶縁性が必要とされる電子機器にも利用でき、ハンドリング性に優れ、かつ、発熱部品からの熱を速やかに拡散(輸送)させて発熱部品の温度を低下させ、部分的な温度上昇を緩和することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の記載は本発明を限定するものではない。
【0022】
本実施の形態の絶縁性熱伝導シートの製造方法は、
(I)実質的に、PTFEを含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子と、成形助剤と、からなるシート状成形体を複数準備する工程と、
(II)複数の前記シート状成形体を重ね合わせて圧延する工程と、
(III)前記成形助剤を除去する工程と、
を含む。
【0023】
また、本実施の形態の絶縁性熱伝導シートの製造方法は、前記工程(III)によって得られたシート状物を加圧成形する工程(工程(IV))をさらに含んでもよい。工程(IV)では、PTFEの焼成温度範囲内の温度で加圧成形を行うことが望ましい。
【0024】
工程(I)の例について説明する。
【0025】
まず、工程(I)において準備するシート状成形体の一例について説明する。
【0026】
まず、PTFEを含むフッ素樹脂を準備する。このフッ素樹脂は、PTFEのみによって構成されていてもよいし、PTFEと他のフッ素樹脂との混合物であってもよい。フッ素樹脂は、PTFEを少なくとも5重量%以上含むことが好ましく、10重量%以上含むことがより好ましい。PTFEと混合する他のフッ素樹脂は、熱分解生成物の理由から、250℃以上の融点を有するものが好ましい。他のフッ素樹脂には、例えばテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAと記載する。)や、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPと記載する。)等の、PTFEと相溶性の良い溶融系フッ素樹脂を用いることが好ましい。このような溶融系フッ素樹脂を用いると、後の熱プレス工程(工程IV)において効率良く気孔率を低下させることができるので、熱伝導率をより向上させることが可能となる。そこで、シート状成形体の作製に用いられるフッ素樹脂としては、例えば、
(A)PTFEによって構成されているフッ素樹脂、
(B)PTFEとPFAとによって構成されているフッ素樹脂、又は、
(C)PTFEとFEPとによって構成されているフッ素樹脂、
が好適である。
【0027】
上記のように準備したフッ素樹脂に、熱伝導性無機粒子及び成形助剤を混合して、ペースト状の混合物を作製する。この混合は、PTFEの繊維化を極力抑制する条件で行うことが望ましい。具体的には、PTFEにせん断力を加えないように、回転数を小さくし、混合時間を短くして、混練せずに混合することが望ましい。材料を混合する段階でPTFEの繊維化が起こると、工程(II)において圧延する際に、既に形成されているPTFEの繊維が切断されてPTFEの網目構造が破壊されてしまう可能性があり、シート形状を保つことが困難となる場合がある。したがって、本実施の形態のように、PTFEの繊維化を抑制するように混合することによって、後の工程でのPTFEをマトリックスとするシート状物の加工が容易となる。
【0028】
熱伝導性無機粒子は、絶縁性熱伝導シートに十分な熱伝導性を付与するために、熱伝導率が1〜200W/mKの無機材料によって形成されていることが好ましい。また、絶縁性熱伝導シートに高い電気絶縁性を付与するために、熱伝導性無機粒子は電気抵抗率が1010〜1017Ω・mの無機材料によって形成されていることが好ましい。本実施の形態における熱伝導性無機粒子には、熱伝導率が高く且つ電気抵抗率も大きいことから、窒化ホウ素が好適に用いられる。したがって、本実施の形態における熱伝導性無機粒子は、実質的に窒化ホウ素からなることが好ましい。なお、「実質的に窒化ホウ素からなる熱伝導性無機粒子」とは、熱伝導性無機粒子に窒化ホウ素以外の物質が含まれないか、又は、他の物質が含まれる場合でも、その含有量が、他の物質を含まない熱伝導性無機粒子(窒化ホウ素粒子)を用いた際の特性(熱伝導特性)を大きく低下させない程度のごく少量(例えば10重量%以下)であることを意味する。
【0029】
熱伝導性無機粒子の形状は、特には限定されないが、熱伝導異方性を有する絶縁性熱伝導シートを得るために、圧延により面内方向に整列しやすい平板状や鱗片状であることが好ましい。また、同様の理由から、熱伝導性無機粒子自体が熱伝導異方性を有している方が好ましい。また、厚さ方向の熱伝導率を向上させる場合には、各社から販売されている凝集形状の熱伝導性無機粒子を用いてもよい。
【0030】
熱伝導性無機粒子は、絶縁性熱伝導シートの状態でその含有率が40〜95重量%となるように配合されることが好ましく、60重量%以上配合されることがより好ましい。熱伝導性無機粒子の配合量をこのような範囲とすることにより、シートの面内方向における熱伝導率を十分高くできるので、より良好な放熱性能を実現できる。
【0031】
熱伝導性無機粒子は、脱落することなくPTFEマトリックスに担持され、且つ、得られる絶縁性熱伝導シートに十分な熱伝導性を付与することができればよいため、その粒径は特には限定されないが、例えば粒径0.3〜500μmのものが望ましい。ただし、熱伝導性無機粒子は、高熱伝導化においては、粒径が大きい方が好ましい。これは、熱伝導性無機粒子の含有量が同じであっても、粒径が大きい方が界面の数が少なくなり、熱抵抗を低くできるためである。なお、ここでの粒径とは、レーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置(マイクロトラック)によって測定される値のことである。
【0032】
成形助剤には、例えばドデカンやデカン等の飽和炭化水素を使用できる。成形助剤は、全重量に対して20〜55重量%となるように添加すればよい。このような混合物を押出し及び圧延によってシート状に成形して得られる母シートを、本発明のシート状成形体(シート状成形体の第1の例)として用いることができる。このようにして得られるシート状成形体の厚さは、例えば0.5〜5mmである。
【0033】
また、工程(I)において準備するシート状成形体の別の例として、上記母シートが複数重ね合わされて圧延されることによって得られた積層シート(シート状成形体の第2の例)も挙げられる。積層シートの積層数は、特には限定されず、製造しようとする絶縁性熱伝導シートの構成層数(絶縁性熱伝導シートを構成する層の数)を考慮して、適宜決定することができる。
【0034】
なお、シート状成形体がフッ素樹脂、熱伝導性無機粒子及び成形助剤以外の他の材料を微量に含んでいてもよいが、本発明の効果を効率良く得るためには、フッ素樹脂、熱伝導性無機粒子及び成形助剤のみによってシート状成形体を作製することが好ましい。
【0035】
以上のようにして、シート状成形体を準備できる。
【0036】
次に、工程(II)の例について説明する。
【0037】
工程(II)では、工程(I)で準備した複数のシート状成形体を重ね合わせて圧延する。具体的には、工程(I)で準備した複数のシート状成形体を積層し、この積層物を圧延して積層シートを得る。上述したように、シート状成形体は、上記母シート(第1の例のシート状成形体)であってもよいし、母シートを複数重ね合わせて圧延することによって得られた積層シート(第2の例のシート状成形体)であってもよい。工程(II)において重ね合わせるシート状成形体の数は、特には限定されず、例えば2〜10枚程度が可能である。高い強度を実現するために、シート状成形体を1つずつ重ね合わせて圧延することが望ましい。
【0038】
本実施の形態の絶縁性熱伝導シートの製造方法では、工程(I)と工程(II)とが交互に繰り返されてもよい。この場合の具体例を、以下に説明する。
【0039】
まず、複数(例えば2〜10枚)の母シートを準備する(工程(I))。次に、複数の母シートを積層し、この積層物を圧延して積層シート(第1の積層シート)を得る(工程(II))。ここで得られた第1の積層シートをさらに複数(例えば2〜10枚)準備し、当該第1の積層シートを工程(I)におけるシート状成形体として用いる。次に、複数(例えば2〜10枚)の第1の積層シートを積層し、この積層物を圧延して積層シート(第2の積層シート)を得る(工程(II))。さらに、得られた第2の積層シートを複数(例えば2〜10枚)準備し、当該第2の積層シートを工程(I)におけるシート状成形体として用いる。次に、複数(例えば2〜10枚)の第2の積層シートを積層し、この積層物を圧延して積層シート(第3の積層シート)を得る(工程(II))。このように、目的とする絶縁性熱伝導シートの構成層数になるまで、工程(I)と工程(II)とを交互に繰り返すことができる。なお、ここで説明した例では、積層数が同じである積層シート同士(第1の積層シート同士、第2の積層シート同士等)を重ね合わせて圧延しているが、積層数が互いに異なる積層シート同士を重ね合わせて圧延することも可能である。
【0040】
工程(II)を繰り返す際に、圧延方向を変更することが望ましい。例えば、第2の積層シートを得るために行う圧延では、その圧延方向を、第1の積層シートを得るために行った圧延の方向から90度変更するとよい。このように方向を変えながら圧延することによって、PTFEのネットワークが縦横に延び、シート強度の向上及び熱伝導性無機粒子のPTFEマトリックスへの強固な固定が可能になる。
【0041】
絶縁性熱伝導シートの構成層数を、当該絶縁性熱伝導シートに含まれる母シートの総数で表すとき、構成層数は、例えば2〜5000層とできる。シート強度を上げるためには、層数は200層以上が望ましい。また、薄膜化(例えば1mm以下のシートとする)ためには、層数は1500層以下が望ましい。構成層数を多くするほど、得られるシートの強度を高くできる。
【0042】
圧延初期(含まれる母シートの総数が少ない段階)は、強度が低く高倍率の圧延に耐えることが困難であるが、シート状成形体の積層及び圧延を繰り返すにしたがって圧延倍率が上がり、シート強度の向上及び熱伝導性無機粒子のPTFEマトリックスへの強固な固定が可能になる。また、積層構造(構成層数)は、得られるシートの熱伝導性や絶縁性にも関係する。したがって、十分な熱伝導性と絶縁性とを備えたシートを得るために、構成層数は10〜1000層が好ましい。
【0043】
最終的に、厚さ0.1〜3mm程度のシートを作製し、その後、工程(III)として、加熱して成形助剤を除去することによって、本発明の絶縁性熱伝導シートを得ることができる。
【0044】
成形助剤を除去した後に、工程(III)によって得られたシート状物を加圧成形してもよい(工程(IV))。このような加圧成形の工程を含むことにより、気孔をなくすことができ、熱伝導性の向上に寄与する。すなわち、得られる絶縁性熱伝導シートの熱伝導性をさらに向上させるためには、気孔率を小さくすることが望ましく、例えば気孔率を30%以下とすることが望ましい。なお、ここでいう気孔率とは、後述の実施例で行った測定方法によって求められる値である。また、工程(III)では、PTFEの焼成温度範囲内の温度で加圧成形を行うことが望ましい。このような焼成温度で加圧成形することにより、効率よく気孔率を低下させることができる。
【0045】
本実施の形態の製造方法では、工程(I)において、フッ素樹脂、熱伝導性無機粒子及び成形助剤を混合してペースト状の混合物を作製する際に、PTFEの繊維化を極力抑制する条件で混合を行っている。これにより、後に続く工程(II)の圧延において、シート形状への変化とPTFEの繊維化が同時に進行する。したがって、工程(II)の圧延では、熱伝導性無機粒子はPTFEの繊維に拘束されていない状態で圧延の押圧にさらされて、シートに対してほぼ平行な状態に配置されることとなる。また、熱伝導性無機粒子として鱗片状粒子を用いる場合は、圧延の際に当該粒子が流れ方向に向くので、面内方向の熱伝導率がより高くなる。さらに、例えば窒化ホウ素粒子のように粒子自体が熱伝導異方性を有する粒子を用いることにより、面内方向の熱伝導率をより高くできる。熱伝導性無機粒子がこのような状態で配置されることにより、得られる絶縁性熱伝導シートには熱伝導に異方性が現れる。すなわち、本実施の形態の製造方法によれば、シートの面内方向における熱伝導率が厚さ方向における熱伝導率よりも高い絶縁性熱伝導シートを得ることができる。例えば、実質的に、PTFEを含むフッ素樹脂と熱伝導性無機粒子とからなるシートであって、面内方向の熱伝導率が5〜50W/mKで厚さ方向の熱伝導率が1〜15W/mKであり、且つ、耐電圧が5kV/mm以上の絶縁性熱伝導シートが得られる。この絶縁性熱伝導シートは、厚さ方向に比べて面内方向の熱伝導率が高いので、面内方向に熱がすばやく拡散して放熱面積が大きくなり、高い放熱性能を実現できる。すなわち、本発明の製造方法によって作製されるシートが、絶縁性を有し、熱拡散性に優れていることが見出された。
【0046】
本実施の形態の製造方法によって作製された絶縁性熱伝導シートには、マトリックスとしてフッ素樹脂のみが用いられており、他の有機材料、ゴム成分及び加硫剤等の不純物が含まれない。そのため、電子機器へ適用した際に当該機器に及ぼす影響を考慮する必要がない。また、面内方向の熱伝導率が高く、熱の拡散や放熱に最適である。したがって、これまでになかった、絶縁性と高い熱拡散機能とを共に備えたシートを実現できる。さらに、この絶縁性熱伝導シートは機械的強度も高く、たとえ熱伝導性無機粒子を高い割合で配合した場合であっても、十分な機械的強度を実現できる。
【0047】
本実施の形態の製造方法によれば、引張り伸び率が1〜400%である絶縁性熱伝導シートを作製できる。なお、ここでの引張り伸び率とは、引張り試験機を用いて試験片を速度100mm/minで引っ張った際に、試験片が切断(破断)した時の当該試験片の伸び率のことである。引張り伸び率は、次の式によって算出できる。
引張り伸び率(%)=100×(L−L0)/L0
(L0:試験前の試験片の長さ、 L:破断時の試験片の長さ)
【0048】
このような高い引張り伸び率を実現できるので、この絶縁性熱伝導シートを放熱部材として電子機器内に設置する場合でも、設置箇所の形状に撚らずに所望の箇所に配置することが可能となる。
【0049】
なお、本実施の形態の製造方法では、材料の混合時にPTFEの繊維化がそれほど起こらないため、工程(II)の圧延工程が繰り返されても、PTFEの繊維が切断されて形状を保てなくなるという問題が生じず、シート形状の維持が容易である。また、本実施の形態では、複数のシート状成形体を積層して圧延するので、圧延によってある層に欠陥が生じた場合でも、他の層によってその欠陥を補うことができる。したがって、シート形状が保てなくなるという問題が生じない。さらに、本実施の形態では、工程(II)を繰り返す際に圧延方向を変更しているので、PTFEが等方的に結着して綺麗なシートが得られる。これらの理由により、本実施の形態の製造方法によれば、長尺シートや連続シートを得ることも可能である。
【0050】
また、上記のとおり、本実施の形態の製造方法で作製された絶縁性熱伝導シートは、絶縁性と高い熱拡散機能とを備えているので、このような絶縁性熱伝導シートを備えた放熱部材を提供することも可能である。この放熱部材は、絶縁性熱伝導シートからなる放熱シートとしてもよいし、絶縁性熱伝導シートと金属板等の他の構成要素とによって構成されていてもよい。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の絶縁性熱伝導シートの製造方法及び絶縁性熱伝導シートについて、実施例を用いて具体的に説明する。
【0052】
(実施例1)
熱伝導性無機粒子としての窒化ホウ素(BN)粒子(水島合金鉄株式会社製、品番「HP−40」)と、PTFE(ダイキン工業株式会社製、品番「F104U」)とを、90:10(重量比)の割合で混合した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が90重量%となるようにした。これに、成形助剤としてデカンを40重量%となるように添加し、PTFEの繊維化が極力起こらないような条件で混合した。混合条件は、V型ミキサーで、回転数10rpm、温度24℃、混合時間5分間とした。この混合物を一対の圧延ロール間に通して、厚さ3mm、幅50mm、長さ150mmの楕円状の母シート(シート状成形体)を得た。
【0053】
まず、母シートを2枚積層し、この積層物を上記圧延ロール間に通して圧延し、積層シート(第1の積層シート)を作製した。次に、得られた第1の積層シートをシート状成形体として2枚準備した。これら2枚の第1の積層シートを重ね合わせて積層し、この積層物を圧延して、新たな積層シート(第2の積層シート)を作製した。次に、得られた第2の積層シートをシート状成形体として2枚準備した。これら2枚の第2の積層シートを重ね合わせて積層し、この積層物を、1回目の圧延方向から90度変更した方向に圧延して新たな積層シート(第3の積層シート)を作製した。このように、得られた積層シートをシート状成形体として用いて重ね合わせて圧延する工程を、圧延方向を90度ずつ変更しながら5回繰り返した後、上記圧延ロール間のギャップを0.5mmずつ狭めて複数回圧延し、最終的に厚さ約1mmのシート状物を得た。
【0054】
次に、得られたシート状物を150℃で30分間加熱して、成形助剤を除去した。次に、このシート状物に対し、380℃で10MPaの加圧成形を5分間行って、実施例1の絶縁性熱伝導シートを得た。
【0055】
以上のように作製された実施例1の絶縁性熱伝導シートについて、熱伝導率、引張り伸び率及び絶縁破壊電圧を以下の方法で測定した。測定結果は、表1に示すとおりである。
【0056】
<熱伝導率の測定>
熱伝導率は、レーザフラッシュ法を利用して、シートの面内方向及び厚さ方向についてそれぞれ求めた。まず、キセノンフラッシュアナライザー「LFA 447 NanoFlash(登録商標)」(NETZSCH社製)を用いて熱拡散率を測定した。この熱拡散率の測定値を用いて、以下の式により熱伝導率を求めた。なお、以下の式において、密度には重量/体積で算出した値を用いた。比熱は、DSC(「DSC 200 F3 Maia(登録商標)」(NETZSCH社製))で追加測定した結果、0.8とみなした。表1に、密度と比熱の値も併せて示す。
熱伝導率(W/mK)
=熱拡散率(mm2/s)×比熱(J/g・K)×密度(g/cm3
【0057】
<引張り伸び率>
引張り試験機「テンシロン」(オリエント株式会社製)を用いて、試験片(幅10mm、長さ50mm(=L0))を、長さ方向に速度100mm/minで引っ張り、試験片が切断(破断)した時の当該試験片の長さ(L)を測定した。なお、測定は室温で行い、チャック間距離は20mmであった。引張り伸び率は、次の式によって求めた。
引張り伸び率(%)=100×(L−L0)/L0
【0058】
<絶縁破壊電圧>
JIS K 6245に準拠して求めた。
【0059】
(実施例2)
BN粒子とPTFEとを70:30(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が70重量%となるようにした。得られた絶縁性熱伝導シートについて、実施例1と同様の方法で、熱伝導率、引張り伸び率及び絶縁破壊電圧を測定した。測定結果は、表1に示すとおりである。
【0060】
(実施例3)
BN粒子とPTFEとを50:50(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が50重量%となるようにした。得られた絶縁性熱伝導シートについて、実施例1と同様の方法で、熱伝導率、引張り伸び率及び絶縁破壊電圧を測定した。測定結果は、表1に示すとおりである。
【0061】
(実施例4)
BN粒子とPTFEとを80:20(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が80重量%となるようにした。得られた絶縁性熱伝導シートについて、実施例1と同様の方法で、熱伝導率、引張り伸び率及び絶縁破壊電圧を測定した。測定結果は、表1に示すとおりである。
【0062】
(実施例5)
成形助剤除去後の加圧成形時の圧力を25MPaとした点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5の絶縁性熱伝導シートを作製した。得られた絶縁性熱伝導シートについて、実施例1と同様の方法で、熱伝導率、引張り伸び率及び絶縁破壊電圧を測定した。測定結果は、表1に示すとおりである。
【0063】
(比較例1)
シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製、品番「SE1886」)、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、品番「KF96−100CS」)及びBN粒子(水島合金鉄株式会社製、品番「HP−40」)を、10:50:80(重量比)の割合で混合した。この混合物をカプトンフィルム上に塗布し、150℃、2MPaで加圧成形を行い、厚さ約1mmのシートを得た。このシートについても、実施例1と同様の方法で、熱伝導率、引張り伸び率及び絶縁破壊電圧を測定した。測定結果は、表1に示すとおりである。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示された結果から、本発明の製造方法によって作製されたPTFEと熱伝導性無機粒子(BN粒子)とからなる絶縁性熱伝導シートは、面内方向の熱伝導率が5〜50W/mKで厚さ方向の熱伝導率が1〜15W/mKであり、且つ、絶縁破壊電圧(耐電圧)が5kV/mm以上を実現できることが確認された。また、熱伝導性無機粒子(BN粒子)が60重量%以上含まれる実施例1,2,4,5の絶縁性熱伝導シートは、面内方向及び厚さ方向の熱伝導率が共に高く、また面内方向と厚さ方向の熱伝導率の差も大きいので、高い放熱性能を備えていると考えられる。
【0066】
次に、以下に示す実施例6〜11で、フッ素樹脂及び熱伝導性無機粒子の種類を変化させて、得られた絶縁性熱伝導シートの熱伝導率及び気孔率を測定した。
【0067】
(実施例6)
BN粒子とPTFEとを80:20(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が80重量%となるようにした。このシートについても、実施例1と同様の方法で熱伝導率を測定し、さらに以下に示す方法で気孔率を求めた。測定結果は、表2に示すとおりである。なお、実施例6の絶縁性熱伝導シートは、実施例4の絶縁性熱伝導シートと同じである。
【0068】
<気孔率>
絶縁性熱伝導シートの重量と体積とを測定し、その結果から実測密度を求めた。この実測密度と真密度とを用いて、以下の式により気孔率を求めた。
気孔率(%)=(1−実測密度/真密度)×100
【0069】
(実施例7)
BN粒子とPTFEとPFA(三井デュポン株式会社製、品番「MP−10」)を80:10:10(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が80重量%となるようにした。このシートについても、実施例6と同様に熱伝導率及び気孔率を測定した。測定結果は、表2に示すとおりである。
【0070】
(実施例8)
BN粒子(昭和電工製、品番「UHP−1」)とPTFEとを80:20(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例8の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が80重量%となるようにした。このシートについても、実施例6と同様に熱伝導率及び気孔率を測定した。測定結果は、表2に示すとおりである。
【0071】
(実施例9)
BN粒子(昭和電工製、品番「UHP−1」)とPTFEとPFAを80:10:10(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例7と同様の方法で、実施例9の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率80重量%となるようにした。このシートについても、実施例6と同様に熱伝導率及び気孔率を測定した。測定結果は、表2に示すとおりである。
【0072】
(実施例10)
BN粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、品番「PT620」)とPTFEとPFAを80:10:10(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例7と同様の方法で、実施例10の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が80重量%となるようにした。このシートについても、実施例6と同様に熱伝導率及び気孔率を測定した。測定結果は、表2に示すとおりである。
【0073】
(実施例11)
BN粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、品番「PT110」)とPTFEとPFAを80:10:10(重量比)の割合で混合した点以外は、実施例7と同様の方法で、実施例11の絶縁性熱伝導シートを作製した。すなわち、絶縁性熱伝導シートの状態でBN粒子の含有率が80重量%となるようにした。このシートについても、実施例6と同様に熱伝導率及び気孔率を測定した。測定結果は、表2に示すとおりである。
【0074】
【表2】

【0075】
表2に示された結果から、含有されているBN粒子の量及び種類が同じもの同士を比較すると、フッ素樹脂がPTFEのみで構成されているものよりも、PTFEとPFAとによって構成されているものを使用した場合の方が、気孔率が小さく熱伝導率がより高い絶縁性熱伝導シートが得られることが確認された。また、実施例10と実施例11との比較から、凝集しているBN粒子、すなわち粒径が大きいBN粒子を用いることで、熱伝導率がより高くなった。
【0076】
次に、本発明の絶縁性熱伝導シート(実施例7)と、以下に示す従来の放熱シート(比較例2〜5)とについて、それぞれ放熱性能の評価を行った。また、実施例1と同様の方法で熱伝導率も測定した。その結果を表3に示す。なお、放熱性能の評価方法についても、以下に説明する。
【0077】
(比較例2)
TYK社製のグラファイトシート(GS)を比較例2の放熱シートとして使用した。
【0078】
(比較例3)
Alシートを比較例3の放熱シートとして使用した。
【0079】
(比較例4)
ポリイミド(PI)フィルム(宇部興産株式会社製、品番「Upilex」)を比較例4の放熱シートとして使用した。
【0080】
(比較例5)
PI及びBN粒子からなるシートを比較例5の放熱シートとして作製した。BN粒子(昭和電工製、品番「UHP−1」)が45vol%となるように、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸(PMDA−ODA)にBN粒子を配合した。これをガラス板に塗布し、320℃でフルキュアを行い、イミド化を行った。このようにして得られたシートを、比較例5の放熱シートとして使用した。
【0081】
<放熱性能の評価>
評価対象のシートを50mm×50mmの正方形に切断し、試験片とした。この試験片を、粘着剤(日東電工株式会社製,品番「No.501H」)にて、セメント抵抗器(TAKMAN電子株式会社製、品番「RWB−5W−47ohm」、サイズ10mm×8mm×22mm)に接合した。4.8W(0.32A×15V)で、セメント抵抗器表面、試験片表面(セメント抵抗器と接合されている面と反対側の面、試験片の裏面)、外気(セメント抵抗器3の表面から5mm離れた位置)の温度を、それぞれK熱電対を用いて測定し、データロガー(株式会社キーエンス製、「NR600」)でモニタリングした。
【0082】
【表3】

【0083】
その結果、実施例7の絶縁性熱伝導シートは、比較例2のグラファイトシート及び比較例3のAlシートに比べて放熱性能が劣るものの、比較例4のPIフィルム及び比較例5のPIとBN粒子とからなるシートよりも優れた放熱性能を有するという結果が得られた。ただし、実施例7の絶縁性熱伝導シートは絶縁性であるのに対し、比較例2のグラファイトシート及び比較例3のAlシートは導電性である。このため、比較例2のグラファイトシート及び比較例3のAlシートを電子機器等に適用する場合には、絶縁層を別途設けなければならないという問題がある。また、比較例5のPIとBN粒子とからなるシートでは、外気温度の上昇が確認されたが、実施例7の絶縁性熱伝導シートではシートの面内方向に熱拡散が認められ、比較例5の場合よりも外気温度が低かった。
【0084】
以上の結果から、本発明の絶縁性熱伝導シートは、従来にはない、絶縁性と優れた放熱性能とを共に有するシートであることが確認された。これより、本発明の絶縁性熱伝導シートは、放熱シートとして従来用いられていたものと比較して、電子機器等の放熱部材としてより優れているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によって得られる絶縁性熱伝導シートは、高い放熱性能と機械的強度とを有し、且つ、電子機器へ適用した際に悪影響を及ぼすような成分を含んでいないため、放熱部材としてあらゆる機器へ適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)実質的に、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子と、成形助剤と、からなるシート状成形体を複数準備する工程と、
(II)複数の前記シート状成形体を重ね合わせて圧延する工程と、
(III)前記成形助剤を除去する工程と、
を含む、絶縁性熱伝導シートの製造方法。
【請求項2】
前記熱伝導性無機粒子が実質的に窒化ホウ素からなる、請求項1に記載の絶縁性熱伝導シートの製造方法。
【請求項3】
(IV)前記工程(III)によって得られたシート状物を加圧成形する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の絶縁性熱伝導シートの製造方法。
【請求項4】
前記工程(IV)において、ポリテトラフルオロエチレンの焼成温度範囲内の温度で加圧成形を行う、請求項3に記載の絶縁性熱伝導シートの製造方法。
【請求項5】
前記工程(I)と前記工程(II)とが交互に繰り返される、請求項1〜4の何れか1項に記載の絶縁性熱伝導シートの製造方法。
【請求項6】
前記工程(II)を繰り返す際に、圧延方向を変更する、請求項5に記載の絶縁性熱伝導シートの製造方法。
【請求項7】
前記フッ素樹脂が、
(A)ポリテトラフルオロエチレンによって構成されている、
(B)ポリテトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体とによって構成されている、
又は、
(C)ポリテトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体とによって構成されている、
請求項1〜6の何れか1項に記載の絶縁性熱伝導シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の方法によって得られる絶縁性熱伝導シート。
【請求項9】
実質的に、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素樹脂と、熱伝導性無機粒子とからなるシートであって、
面内方向の熱伝導率が5〜50W/mKで厚さ方向の熱伝導率が1〜15W/mKであり、且つ、耐電圧が5kV/mm以上である、絶縁性熱伝導シート。
【請求項10】
面内方向の熱伝導率が、厚さ方向の熱伝導率よりも大きい、請求項9に記載の絶縁性熱伝導シート。
【請求項11】
前記熱伝導性無機粒子が実質的に窒化ホウ素からなる、請求項9又は10に記載の絶縁性熱伝導シート。
【請求項12】
前記フッ素樹脂が、
(A)ポリテトラフルオロエチレンによって構成されている、
(B)ポリテトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体とによって構成されている、
又は、
(C)ポリテトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体とによって構成されている、
請求項9〜11の何れか1項に記載の絶縁性熱伝導シート。
【請求項13】
引張り伸び率が1〜400%である、請求項8〜12の何れか1項に記載の絶縁性熱伝導シート。
【請求項14】
前記熱伝導性無機粒子の含有率が40〜95重量%である、請求項8〜13の何れか1項に記載の絶縁性熱伝導シート。
【請求項15】
請求項8〜14の何れか1項に記載の絶縁性熱伝導シートを備えた放熱部材。


【公開番号】特開2010−137562(P2010−137562A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258758(P2009−258758)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】