説明

線状ナノ材料の製造方法及びこれによる線状ナノ材料、線状ナノ材料を利用した薄膜トランジスタ基板

【課題】壁厚さの調節と多層形成が容易な線状ナノ材料の製造方法、これによる線状ナノ材料、その線状ナノ材料を利用した薄膜トランジスタ基板を提供する。
【解決手段】本発明による線状ナノ材料の製造方法は、直径200nm以下の孔隙が形成されている鋳型を設ける工程と;気相の有機物質を導入して、前記孔隙内に線状ナノ材料を形成する工程と;を含むことを特徴とする。また、本発明の線状ナノ材料は、直径が200nm以下であり、内部が空いているチューブ形状のシェルと、前記シェルの内部に形成されているコアとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状ナノ材料の製造方法及びこれによる線状ナノ材料、線状ナノ材料を利用した薄膜トランジスタ基板に関する。さらに詳しくは、気相の有機物質を利用した線状ナノ材料の製造方法及びこれによる線状ナノ材料、線状ナノ材料を利用した薄膜トランジスタ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、高分子ナノチューブ及び高分子ナノワイヤー等の有機線状ナノ材料がナノサイズトランジスタ、センサー、分子ワイヤー、電界放出表示装置等多様な応用分野において大きな関心を集めている。
従来は、無機鋳型(テンプレート)または有機鋳型を利用した溶液重合法(solution-based polymerization)で有機線状ナノ材料を製造していた(例えば、特許文献1)。しかし、溶液重合では、毛細管凝縮現象と、単量体と鋳型との間の強い界面張力によって、有機線状ナノ材料の壁厚さを調節することなどが難しいという問題があった。特に、多層の有機線状ナノ材料を製造する工程では、液状単量体の段階的注入による鋳型の孔隙詰り現象によって有機線状ナノ材料の壁厚さの調節がさらに難しくなる。
【特許文献1】韓国特許公開2004−104227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、壁厚さの調節と多層形成が容易な線状ナノ材料の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、壁厚さの調節と多層形成が容易な線状ナノ材料の製造方法によって製造された線状ナノ材料を提供することにある。
本発明のまた他の目的は、壁厚さの調節と多層形成が容易な線状ナノ材料の製造方法によって製造された線状ナノ材料を利用した薄膜トランジスタ基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記本発明の目的は、直径200nm以下の孔隙が形成されている鋳型(template)を設ける工程と;気相の有機物質を導入して、前記孔隙内に線状ナノ材料を形成する工程と;を含む線状ナノ材料の製造方法によって達成される。
前記有機物質の導入は真空状態で行われるのが好ましい。
前記有機物質は液状の前記有機物質から蒸発されて導入されるのが好ましい。
【0005】
前記有機物質と異なる追加の有機物質を導入する工程をさらに含むのが好ましい。
前記有機物質は、メチルメタクリレート(metylmethacrylate)、スチレン(styrene)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、ビニルフェノール(vinylphenol)、ピロール(pyrrole)、アニリン(aniline)、チオフェン(thiophene)、ペンタセン(pentacene)及びルブレン(rubrene)からなる群より選択される1種以上の化合物を含むのが好ましい。
【0006】
前記有機物質は、有機半導体を構成する低分子物質であり、前記線状ナノ材料は低分子凝集体(assembly)であるのが好ましい。
前記有機物質はペンタセン及びルブレンのうちのいずれか一つを含むのが好ましい。
前記有機物質はモノマーであり、前記モノマーを前記孔隙内で重合する工程をさらに含むのが好ましい。
【0007】
前記重合は50〜200℃で行われるのが好ましい。
前記有機物質を導入する前に、前記孔隙内に開始剤を導入する工程をさらに含むのが好ましい。
前記開始剤はラジカル重合開始剤であるのが好ましい。
前記有機物質は、メチルメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン及びビニルフェノールからなる群より選択される1種以上の化合物を含むのが好ましい。
【0008】
前記開始剤は、AIBN(2,2’−イゾビスイソブリトニトリル、azobisisobutyronitrile)及び/又はBPO(ベンゾイルパーオキシド、benzoyl peroxide)を含むのが好ましい。
前記開始剤は酸化剤であるのが好ましい。
前記有機物質は、ピロール、アニリン及びチオフェンのうちのいずれか一つを含むのが好ましい。
【0009】
前記開始剤はFeCl3を含むのが好ましい。
前記鋳型は酸化アルミニウム膜(anodic aluminum oxide membrane)からなるのが好ましい。
前記線状ナノ材料と前記鋳型とを分離する工程をさらに含むのが好ましい。
前記鋳型は酸化アルミニウム膜からなっており、前記線状ナノ材料と前記鋳型との分離は、前記鋳型をエッチングを通じて除去して行われるのが好ましい。
【0010】
前記鋳型のエッチングには水酸化ナトリウム及び塩酸のうちの少なくともいずれか一つを使用するのが好ましい。
前記孔隙内に形成された前記線状ナノ材料は、コアと、前記コアを囲んでいるチューブ形状のシェルとを含み、前記シェルの両端部を除去する工程をさらに含むのが好ましい。
前記コアは有機半導体であり、前記シェルは有機絶縁体であるのが好ましい。
【0011】
前記シェルの両端部の除去は、前記鋳型内に形成された前記線状ナノ材料の両端に前記シェルを選択的に溶解させる溶媒を導入して行われるのが好ましい。
前記溶媒は、アセトン及び/又はメチレンクロライドのうちのいずれか一つを含むのが好ましい。
前記本発明の目的は、直径200nm以下の孔隙が形成されている鋳型を設ける工程と;前記孔隙内に開始剤を導入する工程と;前記孔隙内に気相のモノマーを導入し重合して線状ナノ材料を形成する工程と;前記線状ナノ材料と前記鋳型とを分離する工程と;を含む線状ナノ材料の製造方法によっても達成されることができる。
【0012】
前記モノマーは液状の前記モノマーから蒸発されて導入されるのが好ましい。
前記本発明の他の目的は、直径が200nm以下であり、内部が空いているチューブ形状のシェルと;前記シェルの内部に形成されているコアと;を含む線状ナノ材料によって達成される。
前記シェルと前記コアのうちの少なくともいずれか一つは伝導性高分子からなるのが好ましい。
【0013】
前記伝導性高分子は、ポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェンからなる群より選択される1種以上の化合物であるのが好ましい。
前記シェルと前記コアのうちの少なくともいずれか一つは有機半導体であるのが好ましい。
前記有機半導体は、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ペンタセン及びルブレンからなる群より選択される1種以上の化合物であるのが好ましい。
【0014】
前記シェルと前記コアのうちのいずれか一つは有機絶縁体であるのが好ましい。
前記有機絶縁体は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン及びポリビニルフェノールからなる群より選択される1種以上の化合物であるのが好ましい。
前記シェルは有機絶縁体であり、前記コアは有機半導体であるのが好ましい。
【0015】
前記シェルは前記コアの両端部で除去されているのが好ましい。
前記コアはソリッドタイプであるのが好ましい。
前記コアと前記シェルの間に形成されている追加のシェルをさらに含むのが好ましい。
前記コアは有機半導体であり、前記シェルは有機絶縁体であり、前記追加のシェルは伝導性高分子であるのが好ましい。
【0016】
前記コアはソリッドタイプであるのが好ましい。
前記本発明の他の目的は、有機半導体コアと;前記有機半導体コアを囲んでいる有機絶縁体シェルと;前記有機絶縁体シェルを囲んでおり、直径が200nm以下である伝導性高分子シェルと;を含む線状ナノ材料によっても達成される。
前記有機半導体コアは、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ペンタセン及びルブレンからなる群より選択される1種以上の化合物からなるのが好ましい。
【0017】
前記有機絶縁体シェルは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン及びポリビニルフェノールからなる群より選択される1種以上の化合物からなるのが好ましい。
前記伝導性高分子シェルは、ポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェンからなる群より選択される1種以上の化合物からなっており、ドーピングされているのが好ましい。
【0018】
前記本発明のまた他の目的は、チューブ形状であり有機絶縁体からなるシェル、及び前記シェルの内部に形成されており有機半導体からなるコアを含み、両端部の前記有機半導体層が露出されている直径200nm以下の線状ナノ材料と;前記シェルによって覆われている前記コアに対応するゲート電極と;前記コアの一端部に連結されているソース電極と;前記コアの他端部に連結されているドレイン電極と;を含む薄膜トランジスタ基板によって達成される。
【0019】
前記ゲート電極は前記シェルに接しているのが好ましい。
前記コアはソリッドタイプであるのが好ましい。
前記線状ナノ材料は、前記シェルを収容するチューブ形状であり伝導性高分子からなる追加のシェルをさらに含むのが好ましい。
前記ゲート電極は前記追加のシェルに接しているのが好ましい。
【0020】
前記追加のシェルは、ポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェンからなる群より選択される1種以上の化合物からなるのが好ましい。
前記コアは、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ペンタセン及びルブレンからなる群より選択される1種以上の化合物であるのが好ましい。
前記シェルは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン及びポリビニルフェノールからなる群より選択される1種以上の化合物からなるのが好ましい。
【0021】
本発明で使用される‘線状ナノ材料’は、中空のチューブタイプの‘ナノチューブ’、ソリッドタイプの‘ナノワイヤー(ナノ繊維)’の全てを包含する。
‘線状ナノ材料’が多重層である場合、‘シェル’は中空の線状ナノ材料をいい、‘コア’は最も内部に位置した線状ナノ材料をいう。‘コア’はチューブタイプであってもよいし、ソリッドタイプであってもよい。
【0022】
線状ナノ材料が多重層でない単一層からなる場合、その単一層を‘コア’と表現し、そのとき、‘コア’は中空のものであってもよいし、ソリッドタイプであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、壁厚さの調節と多層形成が容易な線状ナノ材料の製造方法が提供される。
また、壁厚さの調節と多層形成が容易な線状ナノ材料の製造方法によって製造された線状ナノ材料が提供される。
さらに、壁厚さの調節と多層形成が容易な線状ナノ材料の製造方法によって製造された線状ナノ材料を利用した薄膜トランジスタ基板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
いろいろな実施形態において同一な構成要素に対しては同一な参照番号を付与し、同一な構成要素については第1実施形態で代表的に説明し他の実施形態では省略できる。
図1及び図2は本発明による線状ナノ材料の製造方法を説明するための図面である。本発明による線状ナノ材料の製造方法は高分子線状ナノ材料を製造する方法と低分子線状ナノ材料を製造する方法を含む。
【0025】
図1は気相重合法で高分子線状ナノ材料を製造する方法を示す。
まず、(a)のように、複数の孔隙110が形成されている鋳型100を設ける。孔隙110の直径d1は200nm以下とすることが好ましく、100nm以下としてもよい。鋳型100は、これに限定されないが、酸化アルミニウム膜(特に、陽極酸化アルミニウム膜)であることが好ましく、厚さd2は数十μm程度である。
【0026】
次に、(b)のように開始剤151を孔隙110内に導入する。開始剤151はラジカル重合または酸化還元重合を開始させる。ラジカル重合を開始させる場合、開始剤151は、これに限定されないが、AIBNまたはBPOとすることができ、酸化還元重合を開始させる場合、これに限定されないが、開始剤151はFeCl3または過酸化水素とすることができる。
【0027】
開始剤151は、溶媒に溶けた状態で孔隙110内に導入するか、気相で孔隙110内に導入することができる。
次いで、(c)のように雰囲気を真空とし、このために鋳型100を真空チャンバーまたは真空が可能なガラス容器に位置させる。真空はモノマー152が蒸発するのに有利である。真空は、これに限定されないが、10〜2Torr以下であるのが好ましい。
【0028】
次に、(d)のように気相のモノマー152を孔隙110内に導入する。モノマー152が常温で液状または固状である場合、真空と加熱を通じて気化させる。モノマー152は、これに限定されないが、メチルメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノール、ピロール、アニリン、チオフェンからなる群より選択される1種以上の化合物であることが好ましい。具体的には、ラジカル重合を開始する開始剤151の場合、メチルメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノールとすることができ、酸化還元重合を開始する開始剤151の場合、ピロール、アニリン、チオフェンとすることができる。
【0029】
続いて、(e)のようにモノマー152を重合して、高分子からなる線状ナノ材料150を製造する。重合過程で、鋳型100はモノマー152の種類によって50〜200℃で加熱されることができる。線状ナノ材料150は、モノマー152の種類によって、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルフェノール、ポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェン等となる。
【0030】
このうち、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルフェノールは有機絶縁体となり、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンはドーピングの程度によって有機半導体または伝導性高分子となる。
ピロール、アニリン、チオフェンをFeCl3を開始剤として用いて酸化還元重合する場合、FeCl3を一定の水準以上に用いると、FeCl3の塩素がドーパントとなって、生成される高分子にドーピングされて伝導性を付与する。反対に、FeCl3を一定の水準以下に用いると、生成される高分子は伝導性を有さずに、有機半導体となる。
【0031】
これとは異なり、伝導性高分子ナノチューブの場合、直径が小いほど伝導体から半導体を経て不導体に変化する現象が報告されたことがあり、これは有効共役長(effective conjugation length)の変化と関連すると知られている。このような性質を利用して伝導性高分子と有機半導体を製造することもできる。
図示された線状ナノ材料150はチューブタイプであるが、投入されるモノマー152の量を増加させるとソリッドタイプに製造することもできる。線状ナノ材料150の太さは孔隙110の直径に対応する。
【0032】
その後、線状ナノ材料150を鋳型100から分離する。鋳型100が酸化アルミニウム膜からなる場合、鋳型100を塩酸または水酸化ナトリウムでエッチングし除去して、線状ナノ材料150と鋳型100とを分離する。必要に応じて、分離過程を経ずに、孔隙110に線状ナノ材料150が形成されている鋳型100自体を利用することもできる。
以上説明した気相蒸着法による高分子線状ナノ材料の製造方法を実験例を通じてさらに詳しく説明する。次の実験例ではポリピロールナノチューブが製造される。
【0033】
100nm直径の孔隙を有し厚さが60μmであるアルミニウム膜を有する鋳型を0.21MのFeCl3水溶液に十分に浸した後、取り出して水を蒸発させた。その後、形成されるポリピロールナノチューブの詰りと相互連結される現象を防止するために、鋳型の孔隙以外に上面と下面に残っているFeCl3を紙やすりなどを用いて除去した。
その後、鋳型を、シーリング装置とモノマー注入管を有する100mL反応容器に移した。反応容器内部を10〜2Torr以下に常温で減圧させた後、ピロール単量体0.1mL〜0.3mL程度をピペットを用いて入れる。単量体は減圧下で飽和蒸気圧になるまで常温でも蒸発させるが、全て蒸発させるために70℃程度で加熱する。
【0034】
蒸発されたピロールは重合が行われて孔隙内にポリピロールナノチューブが形成され、鋳型の色は白色から黒色に変わる。約12時間後、温度を低くして、真空を解除する。その後、ポリピロールナノチューブを含む鋳型を3M水酸化ナトリウム水溶液でエッチングして除去する。鋳型の塩は水溶液に溶け、ポリピロールナノチューブは沈殿する。沈殿したポリピロールナノチューブは常温で真空乾燥して回収する。
【0035】
図2は気相蒸着法で低分子線状ナノ材料を製造する方法を示す。
まず、(a)のように複数の孔隙110が形成されている鋳型100を設ける。孔隙110の直径d1は200nm以下とすることができ、100nm以下であってもよい。鋳型100は、これに限定されないが、酸化アルミニウム膜とすることができ、厚さd2は数十μm程度である。
【0036】
次に、(b)のように雰囲気を真空とし、このために鋳型100を真空チャンバーまたは真空が可能なガラス容器に位置させる。真空は低分子物質161が蒸発するのに有利である。真空は、これに限定されないが、10〜2Torr以下であるのが好ましい。
次いで、(c)のように気相の低分子物質161を孔隙110内に導入する。低分子物質161が常温で液状または固状である場合、真空と加熱を通じて気化させる。低分子物質とは、いわゆる有機半導体を構成し得る化合物であり、通常、複数(例えば、2〜30程度)のベンゼン環が縮合されて構成されるものの全てを包含する。具体的には、ペンタセン及びルブレンが挙げられる。
【0037】
その次に、(d)のように孔隙110内に低分子物質161を蒸着させて、低分子凝集体である低分子線状ナノ材料160を製造する。蒸着過程で、鋳型100は低分子物質161の種類によって加熱することができる。線状ナノ材料160は低分子物質161の種類によってペンタセンまたはルブレンなどの有機半導体となる。
【0038】
図示された線状ナノ材料160はチューブタイプであるが、投入される低分子物質161の量を増加させるとソリッドタイプに製造することもできる。線状ナノ材料160の太さは孔隙110の直径に対応する。
その後、線状ナノ材料160を鋳型100から分離する。鋳型100が酸化アルミニウム膜からなる場合、鋳型100を塩酸または水酸化ナトリウムでエッチングし除去して、線状ナノ材料160と鋳型100とを分離する。必要に応じて、分離過程を経ずに、孔隙110に線状ナノ材料160が形成されている鋳型100自体を利用することもできる。
【0039】
前述した線状ナノ材料の製造方法は次のような長所を有する。
第一に、高分子線状ナノ材料製造時、従来の液状重合法と異なり気相重合法を用いるので、溶媒が必要でなく、重合後に回収過程が必要でない。第二に、気相重合法及び及び気相蒸着法を用いるので、線状ナノ材料の厚さの調節が容易である。第三に、厚さの調節が容易であるので、さらに柔らかく均一な表面及び界面を有する多重線状ナノ材料を製造することができる。
【0040】
図3a〜図3fはそれぞれ本発明の第1〜第6実施形態による線状ナノ材料の斜視図である。
図3aに示した第1実施形態による線状ナノ材料10aはチューブタイプのコア11の単一層からなっている。コア11は気相重合法で作られた有機半導体、有機絶縁体または伝導性高分子とすることができ、気相蒸着法で作られた有機半導体とすることもできる。
【0041】
図3bに示した第2実施形態による線状ナノ材料10bは2層で構成されており、ソリッドタイプのコア11と、コア11を囲んでいるシェル12とからなっている。コア11は気相重合法または気相蒸着法で作られた有機半導体、シェル12は気相重合法で作られた有機絶縁体とすることができる。
図3cに示した第3実施形態による線状ナノ材料10cは2層で構成されており、チューブタイプのコア11と、コア11を囲んでいるシェル12とからなっている。コア11は気相重合法または気相蒸着法で作られた有機半導体、シェル12は気相重合法で作られた有機絶縁体とすることができる。
【0042】
図3dに示した第4実施形態による線状ナノ材料10dは3層で構成されており、ソリッドタイプのコア11、コア11を順に囲んでいる第1シェル12、第1シェル12を囲んでいる第2シェル13からなっている。コア11は気相重合法または気相蒸着法で作られた有機半導体、第1シェル12は気相重合法で作られた有機絶縁体、第2シェル13は気相重合法で作られた有機絶縁体とすることができる。
【0043】
図3eに示した第5実施形態による線状ナノ材料10eは2層で構成されており、ソリッドタイプのコア11と、コア11を囲んでいるシェル12とからなっている。コア11の両端でシェル12が除去されて、コア11が外部に露出されている。コア11は気相重合法または気相蒸着法で作られた有機半導体、シェル12は気相重合法で作られた有機絶縁体とすることができる。
【0044】
図3fに示した第6実施形態による線状ナノ材料10fは3層で構成されており、ソリッドタイプのコア11、コア11を順に囲んでいる第1シェル12、第1シェル12を囲んでいる第2シェル13からなっている。コア11の両端で第1シェル12と第2シェル13が除去されて、コア11が外部に露出されている。コア11は気相重合法または気相蒸着法で作られた有機半導体、第1シェル12は気相重合法で作られた有機絶縁体、第2シェル13は気相重合法で作られた有機絶縁体とすることができる。
【0045】
第5実施形態及び第6実施形態による線状ナノ材料10e、10fは、有機半導体であるコア11の両端が露出していて、線状ナノ材料10e、10fを薄膜トランジスタに利用する場合、ソース電極及びドレイン電極との連結のための別途の絶縁膜パターニング工程を省略することができる。
本発明による線状ナノ材料は前述の実施形態に限られない。例えば、4層以上の線状ナノ材料も可能であり、コアとシェルの構成成分も多様に変形できる。
【0046】
以下、本発明の実施形態による線状ナノ材料の製造方法を詳しく説明する。
図4a及び図4bを参照して、2層からなる本発明の第2及び第3実施形態による線状ナノ材料の製造方法を説明する。説明のために、線状ナノ材料10b、10cのコア11は有機半導体、これを囲むシェル12は有機絶縁体とする。図4aはコア11を成す有機半導体を気相重合法で製造する場合のフローチャートであり、図4bはコア11を成す有機半導体を気相蒸着法で製造する場合のフローチャートである。
【0047】
図4aを参照して、コア11が高分子である線状ナノ材料10b、10cの製造方法を説明する。
まず、直径が200nm以下である複数の孔隙が形成されている鋳型に第1開始剤を導入する(S100)。第1開始剤はラジカル重合反応を開始できるAIBNまたはBPOであり、鋳型をAIBN溶液またはBPO溶液に浸漬する方法などで導入されることができる。
【0048】
次に、第1モノマーの気化を容易にするために鋳型の周囲を真空にする(S200)。
次いで、第1モノマーを導入し、重合して孔隙内にシェル12を形成する(S300)。第1モノマーとしてはメチルメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン及びビニルフェノールのうちのいずれか一つを使用することができ、これからポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン及びポリビニルフェノールのうちのいずれか一つからなるシェル12が形成される。この時、シェル12がソリッド形状にならないように第1モノマーの導入量、重合時間、重合条件を調節しなければならない。シェル12の形成後、気相の第1モノマーが残留する場合、真空を利用して第1モノマーを除去する。
【0049】
続いて、シェル12が形成されている孔隙内に第2開始剤を導入する(S400)。
第2開始剤は酸化還元重合を開始できるFeCl3とする。この時、FeCl3は生成されるコア11が伝導性高分子にならないように一定の水準以下に導入する。
次に、第2モノマーの気化を容易にするために鋳型の周囲を真空にする(S500)。
続いて、第2モノマーを投入し、重合してシェル12内部にコア11を形成する(S600)。第2モノマーとしてはピロール、アニリン)、チオフェンのうちのいずれか一つを使用することができ、これからポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンのうちのいずれか一つからなるコア11が形成される。
【0050】
これによって、孔隙内で線状ナノ材料10b、10cが完成される。コア11がソリッドタイプであれば第2実施形態による線状ナノ材料10bが形成され、コア11がチューブタイプであれば第3実施形態による線状ナノ材料10cが形成され、これは第2モノマーの導入量、重合時間、重合条件などによって決定される。
最後に、線状ナノ材料10b、10cと鋳型とを分離する(S700)。鋳型が酸化アルミニウム膜からなる場合、鋳型を塩酸または水酸化ナトリウムでエッチングして除去し、線状ナノ材料10b、10cと鋳型とを分離する。
以上説明したコアが高分子である線状ナノ材料10b、10cの製造方法を実験例を通じてさらに詳しく説明する。次の実験例では、シェルはポリメチルメタクリレートであり、コアはソリッドタイプのポリピロールである。
【0051】
100nm直径の孔隙を有し厚さが60μmであるアルミニウム膜鋳型をAIBN/ヘプタン溶液に浸漬した後、乾燥する。その後、鋳型の孔隙以外に上面と下面に残っているAIBNを紙やすりなどを用いて除去した。
その後、鋳型をシーリング装置とモノマー注入管を有する100mL反応容器に移した。反応容器内部を10〜2Torr以下に減圧させた後、メチルメタクリレートモノマーを0.2mL注入した後、70℃で加熱した。蒸発したメチルメタクリレートモノマーは重合が行われてポリメチルメタクリレートシェルを形成する。
【0052】
その後、孔隙内にポリメチルメタクリレートシェルが形成されている鋳型を0.1モルのFeCl3水溶液に浸漬し、乾燥する。
反応容器内部を10〜2Torr以下に減圧させた後、ピロールモノマー0.4mLをピペットを用いて入れ、70℃程度で加熱する。蒸発したピロールは重合が行われポリメチルメタクリレートシェル内にソリッドタイプのポリピロールコアを形成する。約12時間後に、温度を低くして真空を解除し、線状ナノ材料を含む鋳型を3M水酸化ナトリウム水溶液でエッチングして除去する。鋳型の塩は水溶液に溶け、線状ナノ材料は沈殿する。沈殿した線状ナノ材料は常温で真空乾燥して回収する。
【0053】
図4bを参照して、コア11が低分子物質である線状ナノ材料10b、10cの製造方法を説明する。
まず、直径が200nm以下である複数の孔隙が形成されている鋳型に開始剤を導入する(S101)。開始剤はラジカル重合反応を開始できるAIBNまたはBPOであり、鋳型をAIBN溶液またはBPO溶液に浸漬する方法などで導入されることができる。
【0054】
次に、モノマーの気化を容易にするために鋳型の周囲を真空とする(S201)。
次いで、モノマーを投入し重合して、孔隙内にシェル12を形成する(S301)。モノマーとしてはメチルメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノールのうちのいずれか一つを使用することができ、これからポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルフェノールのうちのいずれか一つからなるシェル12が形成される。この時、シェル12がソリッド形状にならないようにモノマーの導入量、重合時間、重合条件を調節しなければならない。シェル12の形成後、残留する気相のモノマーが存在する場合、真空を利用して気相のモノマーを除去する。
【0055】
次に、気相の低分子物質をシェル12が形成されている孔隙内に導入し、蒸着してコア11を形成する(S401)。低分子物質はペンタセン及びルブレンのうちの一つとすることができ、コア11もペンタセン及びルブレンのうちの一つとすることができる。これによって、孔隙内に線状ナノ材料10b、10cが完成される。コア11がソリッドタイプであれば第2実施形態による線状ナノ材料10bが形成され、コア11がチューブタイプであれば第3実施形態による線状ナノ材料10cが形成され、これは低分子物質の導入量、重合時間、重合条件などによって決定される。
【0056】
最後に、線状ナノ材料10b、10cと鋳型とを分離する(S501)。鋳型が酸化アルミニウム膜からなる場合、鋳型を塩酸または水酸化ナトリウムでエッチングし除去して、線状ナノ材料10b、10cと鋳型とを分離する。
図5a及び図5bを参照して本発明の第4実施形態による線状ナノ材料の製造方法を説明する。説明のために、線状ナノ材料10dのコア11は有機半導体、第1シェル12は有機半導体、第2シェル13は伝導性高分子であるとする。図5aはコア11を成す有機半導体を気相重合法で製造する場合のフローチャートであり、図5bはコア11を成す有機半導体を気相蒸着法で製造する場合のフローチャートである。
【0057】
図5aを参照して、コア11が高分子である線状ナノ材料10dの製造方法を説明する。
まず、直径が200nm以下である複数の孔隙が形成されている鋳型に第1開始剤を導入する(S103)。第1開始剤は酸化還元重合を開始できるFeCl3である。この時、FeCl3は生成される第2シェル13が伝導性高分子になるように一定の水準以上に導入する。
【0058】
次に、第1モノマーの気化を容易にするために鋳型の周囲を真空にする(S203)。
次いで、第1モノマーを投入し重合して、孔隙内に第2シェル13を形成する(S303)。第1モノマーとしてはピロール、アニリン、チオフェンのうちのいずれか一つを使用することができ、これからポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンのうちのいずれか一つからなっており、伝導性を有する第2シェル13が完成される。この時、第2シェル13がソリッド形状にならないように第1モノマーの導入量、重合時間、重合条件を調節しなければならない。第2シェル13の形成後、気相の第1モノマーが残留する場合、真空を利用して第1モノマーを除去する。
【0059】
続いて、第2シェル13が形成されている孔隙内に第2開始剤を導入する(S403)。第2開始剤はラジカル重合反応を開始できるAIBNまたはBPOであり、鋳型をAIBN溶液またはBPO溶液に浸漬する方法などで導入することができる。
次に、第2モノマーの気化を容易にするために鋳型の周囲を真空にする(S503)。
次いで、第2モノマーを投入し重合して、第2シェル13内に第1シェル12を形成する(S603)。第2モノマーとしてはメチルメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノールのうちのいずれか一つを使用することができ、これからポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルフェノールのうちのいずれか一つからなる第1シェル12が形成される。この時、第1シェル12がソリッド形状にならないように第2モノマーの導入量、重合時間、重合条件を調節しなければならない。第1シェル12の形成後、気相の第2モノマーが残留する場合、真空を利用して第2モノマーを除去する。
【0060】
次に、第1シェル12が形成されている孔隙内に第3開始剤を導入する(S703)。第3開始剤は酸化還元重合を開始できるFeCl3である。この時、FeCl3は生成されるコア11が伝導性高分子にならないように一定の水準以下に導入する。
続いて、第3モノマーの気化を容易にするために鋳型の周囲を真空にする(S803)。
【0061】
次いで、第3モノマーを投入し重合して、第1シェル12内部にコア11を形成する(S903)。第3モノマーとしてはピロール、アニリン、チオフェンのうちのいずれか一つを使用することができ、これからポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンのうちのいずれか一つからなるコア11が形成される。これによって、孔隙内に線状ナノ材料10dが完成される。
【0062】
最後に、線状ナノ材料10dと鋳型とを分離する(S1003)。鋳型が酸化アルミニウム膜からなる場合、鋳型を塩酸または水酸化ナトリウムでエッチングし除去して、線状ナノ材料と鋳型とを分離する。
図5bを参照して、コア11が低分子物質である線状ナノ材料10dの製造方法を説明する。
【0063】
第2シェル13と第1シェル12を形成する過程(S104ないしS604)は図5aで説明したものと同一である。
第1シェル12を形成した後、気相の低分子物質を第1シェル12が形成されている孔隙内に導入、蒸着してコア11を形成する(S704)。低分子物質はペンタセン及びルブレンのうちの一つであることができ、コア11もペンタセン及びルブレンのうちの一つとなる。これによって、孔隙内に線状ナノ材料10dが完成される。
【0064】
最後に、線状ナノ材料10dと鋳型とを分離する(S804)。鋳型が酸化アルミニウム膜からなる場合、鋳型を塩酸または水酸化ナトリウムでエッチングし除去して、線状ナノ材料10d)と鋳型とを分離する。
図6は本発明の第5実施形態による線状ナノ材料の製造方法を説明するための図面である。説明のために、線状ナノ材料10eのコア11は有機半導体でありシェル12は高分子絶縁体であると限定する。
【0065】
まず、(a)のように第2実施形態による線状ナノ材料10bが鋳型100の孔隙110内に形成されている。線状ナノ材料10bは図4a及び図4bで説明した方法で形成することができる。
次に、(b)のように線状ナノ材料10bが鋳型100に挿入された状態で、鋳型100の一側をシェル12を成す高分子絶縁体を選択的に溶解させる溶媒121が含まれているバス120に浸漬させる。溶媒121はアセトンまたはメチレンクロライドとすることができる。
【0066】
浸漬によって、溶媒121は毛細管現象を通じて上昇しながら線状ナノ材料10bのシェル12を選択的に溶解させる。これによって、コア11の一端が露出されている線状ナノ材料10gが製造される。
次いで、(c)のように線状ナノ材料10gが鋳型100に挿入された状態で、鋳型100の他側を溶媒121が含まれているバス120に浸漬させる。浸漬によって、溶媒121は毛細管現象を通じて上昇しながら線状ナノ材料10gのシェル12を選択的に溶解させる。これによって、コア11の両端が露出されている線状ナノ材料10eが製造される。
【0067】
図7a〜図7cはそれぞれ本発明によって製造された線状ナノ材料の透過電子顕微鏡写真である。
図7aは、チューブタイプのコアとこれを囲むシェルとからなる2層線状ナノ材料の透過電子顕微鏡TEM)写真である。
図7bは、ソリッドタイプのコアとこれを囲んでいるシェルとからなる2層線状ナノ材料の透過電子顕微鏡写真である。
【0068】
図7cは、ソリッドタイプのコアとこれを囲んでいる一対のシェルとからなる3層線状ナノ材料の透過電子顕微鏡写真である。
製造された線状ナノ材料の周りは100nm前後であり、コアとシェル、シェルとシェルの間の境界が柔らかく均一であることを確認することができる。
本発明による線状ナノ材料は液晶表示装置(LCD)、有機電気発光装置(OLED)等のディスプレイ装置に用いることができる。具体的には、ディスプレイ装置のスイッチング素子である薄膜トランジスタを形成するのに用いることができる。
【0069】
図8〜図10はそれぞれ本発明の第7〜第9実施形態による薄膜トランジスタ基板の断面図である。
図8に示した第7実施形態による薄膜トランジスタ基板20aを見ると、絶縁基板21上に線状ナノ材料10hが位置している。
絶縁基板21はプラスチックで作ることができ、この場合、薄膜トランジスタ基板20aはフレキシブルな特性を有する。プラスチック種類としては、ポリカーボネート、ポリカーボン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が可能である。
【0070】
線状ナノ材料10hは、有機半導体からなるコア11と、コア11を囲んでおり有機絶縁体からなるシェル12とからなる。また、線状ナノ材料10hの両端でシェル12が除去されて、コア11が露出されている。
両端のコア11が露出されている線状ナノ材料10hは図6に説明した方法で形成するか、または、第2実施形態による線状ナノ材料10bを絶縁基板21に配置した後、フォトエッチングによって形成することができる。
【0071】
シェル12上部にはゲート電極22が形成されている。ゲート電極22は有機絶縁体からなるシェル12を介してコア11と分離されている。ゲート電極22はアルミニウム(Al)または金(Au)により形成することができる。
シェル12で覆われていないコア11とゲート電極22上部には絶縁膜23が形成されている。絶縁膜23は窒化ケイ素または酸化ケイ素などの無機物或いはベンゾシクロブテン(BCB)のような有機物によって形成することができる。絶縁膜23には両端に露出されているコア11を露出させる接触孔24、25が設けられている。
【0072】
絶縁膜23上部にはソース電極26とドレイン電極27が形成されている。ソース電極26とドレイン電極27はゲート電極22を中心に両側に分けられており、接触孔24、25を通じてコア11の一端と他端にそれぞれ連結されている。
第7実施形態による薄膜トランジスタ基板20aでは有機半導体、有機半導体とゲート電極の間の絶縁層が線状ナノ材料10hで形成されている。したがって、製造過程が簡単になり、プラスチック素材の絶縁基板21を使用する場合、絶縁基板21に加えられる熱工程を減らすことができる。
【0073】
図9に示した第8実施形態による薄膜トランジスタ基板20bを第7実施形態による薄膜トランジスタ基板20aと異なる点を中心に説明すると、次の通りである。
線状ナノ材料10hとゲート電極22の間には層間絶縁膜28がさらに形成されている。ゲート電極22は、層間絶縁膜28上にゲート金属を全面蒸着した後、写真エッチング工程によって形成することができる。
【0074】
図10に示した第9実施形態による薄膜トランジスタ基板20bを第7実施形態による薄膜トランジスタ基板20aと異なる点を中心に説明すると、次の通りである。
線状ナノ材料10iは、有機半導体からなるコア11、コア11を囲んでおり有機絶縁体からなる第1シェル12、第1シェル12を囲んでおり伝導性高分子からなる第2シェル13からなっている。また、線状ナノ材料10iの両端で第1シェル12と第2シェル13が除去されて、コア11が露出されている。
【0075】
線状ナノ材料10iは、第4実施形態による線状ナノ材料10dを絶縁基板21に配置した後、フォトエッチングによって形成することができる。
線状ナノ材料10iは図6に説明した方法で設けられることもできる。この時、溶媒121は第1シェル12と第2シェル13を同時に溶解させることができるものでなければならない。これとは異なり、第1シェル12と第2シェル23をそれぞれ溶解する溶媒121を使用することもでき、この場合には溶媒121別に浸漬が別途に行われる。
【0076】
ゲート電極22は伝導性高分子からなる第2シェル13に接している。
本発明による薄膜トランジスタ基板は液晶表示装置または有機発光装置等の表示装置に使用することができる。本発明による線状ナノ材料を用いると、線幅を減少させることができ、低電圧駆動が可能になる。これによって、画素のサイズを減少させることができる。また、線状ナノ材料はコアとシェルの厚さの調節が比較的に容易であって、有機半導体のバンドギャップエネルギーと有機絶縁体の漏れ電流レベルを容易に変化させることができる。
【0077】
有機電気発光装置は、電気的な信号を受けて発光する有機物を利用した自発光型素子である。有機電気発光装置には陰極層(画素電極)、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陽極層(対向電極)が積層されている。本発明による薄膜トランジスタ基板のドレイン電極は陰極層と電気的に接続されて、データ信号を印加することができる。
本発明のいくつかの実施形態を図示し、説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する当業者であれば、本発明の原則や精神から外れずに、本実施形態を変形できることが分かる。発明の範囲は添付された請求項とその均等物によって決められる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明による線状ナノ材料の製造方法を説明するための図面である。
【図2】本発明による線状ナノ材料の製造方法を説明するための図面である。
【図3a】本発明の第1実施形態による線状ナノ材料の斜視図である。
【図3b】本発明の第2実施形態による線状ナノ材料の斜視図である。
【図3c】本発明の第3実施形態による線状ナノ材料の斜視図である。
【図3d】本発明の第4実施形態による線状ナノ材料の斜視図である。
【図3e】本発明の第5実施形態による線状ナノ材料の斜視図である。
【図3f】本発明の第6実施形態による線状ナノ材料の斜視図である。
【図4a】本発明の第2実施形態による線状ナノ材料の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4b】本発明の第3実施形態による線状ナノ材料の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5a】本発明の第4実施形態による線状ナノ材料の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5b】本発明の第4実施形態による線状ナノ材料の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第5実施形態による線状ナノ材料の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図7a】本発明によって製造された線状ナノ材料の透過電子顕微鏡写真である。
【図7b】本発明によって製造された線状ナノ材料の透過電子顕微鏡写真である。
【図7c】本発明によって製造された線状ナノ材料の透過電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明の第7実施形態による薄膜トランジスタ基板の断面図である。
【図9】本発明の第8実施形態による薄膜トランジスタ基板の断面図である。
【図10】本発明の第9実施形態による薄膜トランジスタ基板の断面図である。
【符号の説明】
【0079】
10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、150、160 線状ナノ材料
11 コア
12、13 シェル
20a、20b 薄膜トランジスタ基板
21 絶縁基板
22 ゲート電極
23 絶縁膜
24、25 接触孔
26 ソース電極
27 ドレイン電極
28 層間絶縁膜
100 鋳型
110 孔隙
120 バス
121 溶媒
151 開始剤
152 モノマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径200nm以下の孔隙が形成されている鋳型を設ける工程と、
気相の有機物質を導入して、前記孔隙内に線状ナノ材料を形成する工程と、
を含むことを特徴とする線状ナノ材料の製造方法。
【請求項2】
前記有機物質の導入を真空状態で行う請求項1に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項3】
前記有機物質は、液状の前記有機物質を蒸発させて導入する請求項1又は2に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項4】
前記有機物質と異なる追加の有機物質を導入する工程をさらに含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項5】
前記有機物質は、メチルメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノール、ピロール、アニリン、チオフェン、ペンタセン及びルブレンからなる群より選択される1種以上の化合物を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項6】
前記有機物質は、有機半導体を構成する低分子物質であり、前記線状ナノ材料は低分子凝集体である請求項1〜4いずれか1つに記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項7】
前記有機物質はペンタセン及び/又はルブレンを含む請求項6に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項8】
前記有機物質はモノマーであり、
前記モノマーを前記孔隙内で重合する工程をさらに含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項9】
前記重合を50〜200℃で行う請求項8に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項10】
前記有機物質を導入する前に、前記孔隙内に開始剤を導入する工程をさらに含む請求項8又は9に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項11】
前記開始剤は、ラジカル重合開始剤である請求項10に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項12】
前記有機物質は、メチルメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン及びビニルフェノールからなる群から選択される1種以上の化合物を含む請求項11に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項13】
前記開始剤は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び/又はベンゾイルパーオキシドを含む請求項11に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項14】
前記開始剤は酸化剤である請求項10に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項15】
前記酸化剤はFeCl3を含む請求項14に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項16】
前記有機物質は、ピロール、アニリン及びチオフェンからなる群より選択される1種以上の化合物を含む請求項14又は15に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項17】
前記鋳型は酸化アルミニウム膜からなる請求項1〜16のいずれか1つに記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項18】
前記線状ナノ材料と前記鋳型とを分離する工程をさらに含む請求項1〜17のいずれか1つに記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項19】
前記鋳型は酸化アルミニウム膜からなり、
前記線状ナノ材料と前記鋳型との分離を、前記鋳型をエッチングによって除去して行う請求項18に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項20】
前記鋳型のエッチングには水酸化ナトリウム及び/又は塩酸を使用する請求項19に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項21】
前記孔隙内に形成された前記線状ナノ材料は、コアと、前記コアを囲むチューブ形状のシェルとを含み、
前記シェルの両端部を除去する工程をさらに含む請求項1〜20のいずれか1つに記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項22】
前記コアは有機半導体であり、前記シェルは有機絶縁体である請求項21に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項23】
前記シェルの両端部の除去を、前記鋳型内に形成された前記線状ナノ材料の両端に前記シェルを選択的に溶解させる溶媒を導入して行う請求項21に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項24】
前記溶媒は、アセトン及び/又はメチレンクロライドを含む請求項22に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項25】
直径200nm以下の孔隙が形成されている鋳型を設ける工程と、
前記孔隙内に開始剤を導入する工程と、
前記孔隙内に気相のモノマーを導入し、重合して線状ナノ材料を形成する工程と、
前記線状ナノ材料と前記鋳型とを分離する工程とを含むことを特徴とする線状ナノ材料の製造方法。
【請求項26】
前記モノマーは、液状の前記モノマーを蒸発されて導入する請求項25に記載の線状ナノ材料の製造方法。
【請求項27】
直径が200nm以下であり、内部が空いているチューブ形状のシェルと、
前記シェルの内部に形成されているコアとを含むことを特徴とする線状ナノ材料。
【請求項28】
前記シェルと前記コアのうちの少なくともいずれか一つは伝導性高分子からなる請求項27に記載の線状ナノ材料。
【請求項29】
前記伝導性高分子は、ポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェンからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項28に記載の線状ナノ材料。
【請求項30】
前記シェルと前記コアのうちの少なくともいずれか一つは有機半導体である請求項27に記載の線状ナノ材料。
【請求項31】
前記有機半導体は、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ペンタセン及びルブレンからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項30に記載の線状ナノ材料。
【請求項32】
前記シェルと前記コアのうちのいずれか一つは有機絶縁体である請求項27に記載の線状ナノ材料。
【請求項33】
前記有機絶縁体は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン及びポリビニルフェノールからなる群より選択される1種以上の化合物請求項29に記載の線状ナノ材料。
【請求項34】
前記シェルは有機絶縁体であり、前記コアは有機半導体である請求項27に記載の線状ナノ材料。
【請求項35】
前記シェルは前記コアの両端部で除去されている請求項34に記載の線状ナノ材料。
【請求項36】
前記コアはソリッドタイプであることを特徴とする、請求項34に記載の線状ナノ材料。
【請求項37】
前記コアと前記シェルの間に形成されている追加のシェルをさらに含むことを特徴とする、請求項27に記載の線状ナノ材料。
【請求項38】
前記コアは有機半導体であり、前記シェルは有機絶縁体であり、前記追加のシェルは伝導性高分子であることを特徴とする、請求項37に記載の線状ナノ材料。
【請求項39】
前記コアはソリッドタイプである請求項37に記載の線状ナノ材料。
【請求項40】
有機半導体コアと、
前記有機半導体コアを囲む有機絶縁体シェルと、
前記有機絶縁体シェルを囲み、直径が200nm以下である伝導性高分子シェルとを含むことを特徴とする線状ナノ材料。
【請求項41】
前記有機半導体コアは、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ペンタセン及びルブレンからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項40に記載の線状ナノ材料。
【請求項42】
前記有機絶縁体シェルは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン及びポリビニルフェノールからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項40に記載の線状ナノ材料。
【請求項43】
前記伝導性高分子シェルは、ポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェンからなる群より選択される1種以上の化合物であり、ドーピングされている請求項40に記載の線状ナノ材料。
【請求項44】
チューブ形状であり有機絶縁体からなるシェル及び前記シェルの内部に形成されており有機半導体からなるコアを含み、両端部の前記有機半導体層が露出されている直径200nm以下の線状ナノ材料と、
前記シェルによって覆われている前記コアに対応するゲート電極と、
前記コアの一端部に連結されているソース電極と、
前記コアの他端部に連結されているドレイン電極とを含むことを特徴とする薄膜トランジスタ基板。
【請求項45】
前記ゲート電極は前記シェルに接している請求項44に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項46】
前記コアはソリッドタイプである請求項44又は45に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項47】
前記線状ナノ材料は、前記シェルを収容するチューブ形状であり、伝導性高分子からなる追加のシェルをさらに含む請求項44〜46のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項48】
前記ゲート電極は前記追加のシェルに接している請求項47に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項49】
前記追加のシェルは、ポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェンからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項47に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項50】
前記コアは、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ペンタセン及びルブレンからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項44〜49のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項51】
前記シェルは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン及びポリビニルフェノールからなる群より選択される1種以上の化合物である請求項44〜50のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ基板。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−39683(P2007−39683A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200304(P2006−200304)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】