説明

腸送達系のためのナフトキノンベース化合物を含有する医薬組成物

活性成分としての特定のナフトキノンベースの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体の腸標的処方を介して、活性成分の生体吸収速度および生体内保持時間を増加させることによって薬物の生物学的利用能および薬物速度論的特性が改善された経口医薬組成物が提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフトキノンベースの化合物を含む腸標的医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は、活性成分としての或る種のナフタキノンベースの化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体の腸送達系の処方物を伴う経口医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人の最近の研究によって、代謝性疾患の予防および治療のために、或る種のナフトキノンベースの化合物が有効であることが明らかにされた(特許文献1および特許文献2)。
【0003】
しかしながら、上述のナフトキノンベースの化合物は、CHCl、CHCl、CHClCHCl、CHCCl、モノグリム(Monoglyme)およびジグリム(Diglyme)といったような高溶解度の溶媒中で約2〜10%という低い度合でのみ可溶であり、その他の普通の極性または非極性溶媒中ではほとんど不溶性である難溶性材料である。このような理由で、前述のナフトキノンベースの化合物は、すぐれた薬理効果を有するにも関わらず、生体内投与向けの調製物の処方に付随するさまざまな問題点をかかえている。
【0004】
目下の現状では、きわめて不溶性が高い上述のナフトキノンベースの化合物は、化合物を所望の薬学調製物へと処方する上での著しい制限という欠点を有する。ナフトキノンベースの化合物の生理学的活性が本出願人により解明されているにせよ、ナフトキノンベースの化合物の剤形は、静脈内注射を介した生体内投与向けの処方物に限定されている。
【0005】
難溶性薬物であるナフトキノンベースの化合物が単独でまたは従来の単純な処方物の形で経口投与される場合、体内への化合物の吸収は実質的に全く存在しない。即ち薬物の生物学的利用能は非常に低く、従って薬物の固有の効能をもたらすことは不可能である。
【0006】
これらの事実は、ナフトキノンベースの化合物であるクリプトタンシノンを経口投与した場合のその吸収速度が非常に低いものである(2.05%)ことを報告したジング(Jing)らにより実施された最近の研究によって裏づけされている。これは、クリプトタンシノンの吸収が、薬物の低い溶解度およびP−糖タンパク質(PgP)用の基質として使用されていることに起因する初回通過代謝の問題により大きな影響を受けるためである、ということがわかっている(非特許文献1)。
【0007】
一方、活性成分としてナフトキノンベースの化合物を含有する薬物は、或る一定の濃度を超える量で体内に吸収されるまではいかなる治療的効果ももたらさない。投与の後標的組織が薬物またはその他の物質を利用できるようになる度合である生物学的利用能には、さまざまな要因が関与している。薬物または物質の低い生物学的利用能は、薬物組成物の開発において重大な問題をひき起こす。
【0008】
従って、ナフトキノンベースの化合物の固有の薬理学的特性を充分にかつ満足のいく形で開発利用するためには、これらの薬物の生物学的利用能を最大にすることのできる方法を開発し導入することが緊急に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願第2004−0116339号明細書
【特許文献2】韓国特許出願第2006−14541号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of pharmacology & Experimental Therapeutics 第23号、2006年
【非特許文献2】V.ナイアー(Nair)ら、Tetrahedron Lett.第42号(2001年)、4549〜4551頁
【非特許文献3】A.C.ベーリー(Baillie)ら、(J.Chem.Soc.(C)、1968年、48〜52頁)
【非特許文献4】J.K.スナイダー(Snyder)ら、(Tetrahedron Letters、第28号(1987年)、3427〜3430頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、更に解決しなければならない上述の問題およびその他の技術的問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の通りの問題を解決するためのさまざまな広範囲かつ集中的な研究および実験の結果として、本発明の発明人らは、難溶性のナフトキノンベースの化合物が腸標的医薬組成物に処方された場合、胃といったような体内環境に起因して起こり得る活性成分の不活性化を最小限におさえることが可能であり、従来の経口投与がもつ低い生物学的利用能という問題を解決することが可能であり、そして最終的に、ナフトキノンベースの化合物の薬物速度論的特性を大幅に改善することが可能である、ということを発見した。本発明は、これらの発見事実に基づいて完成されたものである。
【0013】
本発明の一態様に従うと、上述のおよびその他の目的は、活性成分として、以下の構造式(1):
【化1】

によって表わされるナフトキノンベースの化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体が、腸を標的とする処方物に調製されている経口医薬組成物において、
上式中
とRが各々独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、またはC−C低級アルキルまたはアルコキシであり;
、R、R、R、RおよびRが各々独立して水素、ヒドロキシ、C−C20アルキル、アルケンまたはアルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、そうでなければR〜Rのうちの2つの置換基が合わされて、飽和状態または部分不飽和または完全不飽和状態となっていてよい環式構造を形成してよく;
XがC(R)(R’)、N(R’’)、OおよびSからなる群から選択され、好ましくは0であり、R、R’およびR’’が各々独立して水素またはC−C低級アルキルであり;
nが0である場合nに隣接する炭素原子は直接結合を介して環式構造を形成することを条件として、nは0または1である、
経口医薬組成物を提供することによって達成可能である。
【0014】
本開示で使用される通り、「薬学的に許容可能な塩」というのは、それが投与される生体に著しい刺激をひき起こすことがなく、かつ化合物の生物活性および特性を無効にしない化合物の処方物を意味する。薬学的塩の例としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸といったような無機酸;酒石酸、蟻酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸およびサリチル酸といった有機酸;またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸といったようなスルホン酸などの薬学的に許容可能なアニオンを含有する非毒性酸付加塩を形成することのできる酸と化合物(I)の酸付加塩が含まれ得る。具体的には、薬学的に許容可能なカルボン酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムといったようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩、アルギニン、リジンおよびグアニジンといったようなアミノ酸との塩、ジクロロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジエタノールアミン、コリンおよびトリエチルアミンといったような有機塩基との塩が含まれる。本発明に従った化合物は、当該技術分野において周知の従来の方法によってその塩に転換されてよい。
【0015】
本書で使用される「プロドラッグ」という用語は、生体内で親薬物へと転換される作用物質を意味する。プロドラッグは、或る種の状況下で親薬物よりも容易に投与できるという理由で、有用であることが多い。これらは例えば、親薬物がそうでない場合でも、経口投与によって生物学的利用能を有する。プロドラッグは同様に、親薬物に比べて改善された医薬組成物中の溶解度をも有し得る。プロドラッグの1つの例は、限定的な意味なく、水溶性が移動性にとって不利である場合に細胞膜を横断しての輸送を容易にするべくエステル(「プロドラッグ」)として投与されるもののその後ひとたび水溶性が有益である細胞の内部に入った時点で活性実体であるカルボン酸へと代謝的に加水分解させられる本発明の化合物であると考えられる。プロドラッグの更なる例は、酸性基に結合された短鎖ペプチド(ポリアミド酸)であってもよく、ここでペプチドは活性部分を曝すために代謝される。
【0016】
このようなプロドラッグの一例として、本発明に従った薬学化合物は、活性材料として、以下の構造式(1a)により表されるプロドラッグを含み得る。
【化2】

上式中、
、R、R、R、R、R、R、R、Xおよびnは構造式(1)に定義されている通りである。
【0017】
およびR10は、各々独立して−SO−Naまたは以下の構造式(2):
【化3】

で表わされる置換基またはその塩であり、
上式中、
11およびR12は各々独立して水素或いは置換または未置換のC〜C20直鎖アルキルまたはC〜C20分岐アルキルであり、
13は、以下の置換基i)〜viii):
i)水素;
ii)置換または未置換のC〜C20直鎖アルキルまたはC〜C20分岐アルキル;
iii)置換または未置換アミン;
iv)置換または未置換のC〜C10シクロアルキルまたはC〜C10ヘテロシクロアルキル;
v)置換または未置換のC〜C10アリールまたはC〜C10ヘテロアリール;
vi)R、R’およびR’’が各々独立して水素、または置換または未置換のC〜C20直鎖アルキルまたはC〜C20分岐アルキルであり、R14が水素、置換または未置換アミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択されており、lが1〜5の中から選択されている、−(CRR’−NR’’CO)−R14
vii)置換または未置換カルボキシル;
viii)−OSO−Na
からなる群から選択されており;
kが0である場合、R11およびR12は存在せず、R13は直接カルボニル基に対し結合されていることを条件として、kは0〜20の中から選択されている。
【0018】
本書で使用されている「溶媒和物」という用語は、非共有分子間力により結合させられた化学量論的または非化学量論的量の溶媒を更に含む本発明の化合物またはその塩を意味する。好ましい溶媒は、揮発性、非毒性でかつ/またはヒトへの投与のために許容できるものである。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物を意味する。
【0019】
本書で使用されている「異性体」という用語は、同じ化学式または分子式を有するものの光学的または立体的に異なっている本発明の化合物またはその塩を意味する。D型光学異性体およびL型光学異性体が、選択された置換体のR〜R型に応じて構造式(1)中に存在し得る。
【0020】
特別の定めのないかぎり、「ナフトキノンベースの化合物」という用語は、化合物自体およびその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物および異性体を包含するように意図されている。
【0021】
本書で使用されている通り、「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル部分は、「飽和アルキル」基であってよく、これはそれがいかなるアルケン部分もアルキン部分も含まないことを意味している。代替的には、アルキル部分は「不飽和アルキル」部分であってもよく、これは、それが少なくとも1つのアルケンまたはアルキン部分を含むことを意味している。「アルケン」部分という用語は、少なくとも2つの炭素原子が少なくとも1つの炭素−炭素2重結合を形成している基を意味し、「アルキン」部分というのは、少なくとも2つの炭素原子が少なくとも1つの炭素−炭素3重結合を形成している基を意味する。アルキル部分は、それが置換されているか未置換であるかに関わらず、分岐、直鎖または環式であってよい。
【0022】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、内部で1つ以上の環炭素原子が酸素、窒素または硫黄で置換され、かつ限定されるわけではないが例えばフラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソチアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジンおよびトリアジンを含む炭素環基を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、共役パイ(π)電子系を有する少なくとも1つの環を有し、炭素環式アリール(例えばフェニル)および複素環アリール(例えばピリジン)基の両方共を含む芳香族置換基を意味する。この用語には、単環式または縮合環多環式(即ち隣接する炭素原子対を共有する環)基が含まれる。
【0024】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの複素環を含む芳香族基を意味する。
【0025】
アリールまたはヘテロアリールの例としては、フェニル、フラン、ピラン、ピリジル、ピリミジル及びトリアジルが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0026】
本発明に従った構造式(1)のR、R、R、R、R、R、RおよびRは、任意に置換されていてよい。置換される場合、1つまたは複数の置換基は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂肪環、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N カルバミル、0−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト(isocyanato)、チオシアナト(thiocyanato)、イソチオシアナート(isothiocyanato)、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、並びに1置換および2置換アミノを含むアミノ、およびその保護誘導体の中から個別にかつ独立して選択された1つ以上の基である。
【0027】
構造式(1)の化合物のうち、好ましいのは、以下の構造式(3)および(4)の化合物である。
【0028】
構造式(3)の化合物は、nが0であり、隣接する炭素原子がその間の直接結合を介して1つの環式構造(フラン環)を形成する化合物であり、以下では「フラン化合物」または「フラノ−o−ナフトキノン誘導体」と呼ばれることが多い。
【化4】

【0029】
構造式(4)の化合物は、nが1である化合物であり、以下では「ピラン化合物」または「ピラノ−o−ナフトキノン」と呼ばれることが多い。
【化5】

【0030】
構造式(1)では、RおよびRの各々が水素であることが特に好ましい。
【0031】
構造式(3)のフラン化合物のうち、特に好ましいのは、R、RおよびRが水素である構造式(3a)の化合物、または、R、RおよびRが水素である構造式(3b)の化合物である。
【化6】

【化7】

【0032】
更に、構造式(4)のピラン化合物のうち、特に好ましいのは、R、R、R、R、RおよびRが水素である構造式(4a)の化合物である。
【化8】

【0033】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、活性材料としての構造式(1)の化合物と腸標的処方物のために必要とされるその他の構成要素との混合物を意味する。
【0034】
活性材料の調製
本発明に従った医薬組成物においては、以下で示すように活性材料である構造式(1)の化合物は、当該技術分野において公知の従来の方法および/または有機化学合成の分野における一般的技術および実践法に基づいたさまざまなプロセスによって調製可能である。以下で記述されている調製プロセスは、単に一例にすぎず、その他のプロセスを利用することも可能である。従って、本発明の範囲は以下のプロセスに限定されない。
【0035】
調製方法1:酸触媒環化による活性材料の合成
比較的単純な化学構造をもつ三環系ナフトキノン(ピラノ−o−ナフトキノンおよびフラノ−o−ナフトキノン)誘導体が、硫酸を触媒として使用する環化を介して比較的高い収量で一般的に合成されている。このプロセスに基づいて、構造式(1)のさまざまな化合物を合成することができる。
【0036】
更に具体的には、上述の合成プロセスを以下のように要約することができる。
【化9】

【0037】
即ち、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを1つの塩基の存在下でさまざまなアリル臭化物またはその等価物と反応させた場合、C−アルキル化生成物およびO−アルキル化生成物が同時に得られる。反応条件に応じて2つの誘導体のうちのいずれか一方のみを合成することも可能である。O−アルキル化誘導体は、トルエンまたはキシレンといったような溶媒を用いてO−アルキル化誘導体を還流させることによって、クライゼン転位を通してもう1つのタイプのC−アルキル化誘導体に転換されることから、さまざまなタイプの3置換−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体を得ることが可能である。このようにして得られたさまざまなタイプのC−アルキル化誘導体を、触媒として硫酸を用いた環化に付してもよく、かくして構造式(1)の化合物の中でもピラノ−o−ナフトキノンまたはフラノ−o−ナフトキノン誘導体を合成することができる。
【0038】
調製方法2:3−メチレン−1,2,4−[3H]ナフタレントリオンを用いたディールス・アルダー反応
非特許文献2によって教示されている通り、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンとホルムアルデヒドを合わせて加熱した結果生成された3−メチレン−1,2,4−[3H]ナフタレントリオンをさまざまなオレフィン化合物とのディールス・アルダー反応に付すことによって、さまざまなピラノ−o−ナフトキノン誘導体を比較的容易に合成できるということが報告されている。この方法は、触媒として硫酸を用いた環化の誘発に比較して、比較的単純な形でさまざまな形態のピラノ−o−ナフトキノン誘導体を合成することができる、という点で有利である。
【化10】

【0039】
調製方法3:ラジカル反応によるハロアキル化
クリプトタンシノンと15,16−ジヒドロ−タンシノンの合成で用いられたものと同じ方法を、フラノ−o−ナフトキノン誘導体の合成のためにも適切に利用することができる。即ち、非特許文献3によって教示されている通り、3−ハロプロパン酸または4−ハロブタン酸誘導体から誘導された2−ハロエチルまたは3−ハロエチルラジカル化学種を2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンと反応させ、かくして3−(2−ハロエチルまたは3−ハロプロピル)−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを合成し、これを次に、適切な酸性触媒条件下で環化させてさまざまなピラノ−o−ナフトキノンまたはフラノ−o−ナフトキノン誘導体を合成することができる。
【化11】

【0040】
調製方法4:ディールス・アルダー反応による4,5−ベンゾフランジオンの環化
クリプトタンシノンおよび15,16−ジヒドロ−タンシノンの合成において用いられたもう1つの方法は、非特許文献4により教示されている方法であってよい。この方法にしたがうと、4,5−ベンゾフランジオン誘導体とさまざまなジオン誘導体の間のディールス・アルダー反応を介した付加環化によって、フラノ−o−ナフトキノン誘導体を合成することができる。
【化12】

1)加熱
2)脱水素化
【0041】
更に、上述の調製方法に基づいて、置換基の種類に応じて適切な合成方法を用いてさまざまな誘導体を合成することができる。かくして合成される誘導体および方法の具体例が下表1に例証されている。具体的調製方法は、以下の実施例の中で記述される。
【0042】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【0043】
一般に、経口医薬組成物は、経口投与すると胃を通過し、小腸により大部分が吸収され、次に体の全ての組織中に拡散され、かくして、標的組織に対して治療効果をもたらす。
【0044】
これに関連して、本発明に従った経口医薬組成物は、活性成分の腸標的処方を介して或る種のナフトキノンベースの化合物活性成分の生体吸収性および生物学的利用能を増強する。より具体的には、本発明に従った医薬組成物内の活性成分が主として胃および小腸の上部部分で吸収される場合、体内に吸収された活性成分は直接肝臓代謝を受け、このときこの代謝にはこの活性成分の実質的分解が付随し、従って、所望のレベルの治療的効果をもたらすことは不可能である。一方、活性成分が概ね下部小腸の周囲およびその下流側で吸収される場合には、吸収された活性成分はリンパ管を介して標的組織まで移動し、かくして高い治療効果をもたらすと予想される。
【0045】
更に、本発明に従った医薬組成物は、それが消化プロセスの最終目標である結腸までターゲティングするような形で構築されていることから、薬物の生体内保持時間を増大させることが可能であり、かつ体内へ薬物を投与した結果としての体の代謝に起因して発生し得る薬の分解を最小限におさえることも同様に可能である。その結果、薬物の薬物速度論的特性を改善すること、疾病の治療にとって必要な活性成分の臨界有効用量を著しく低下させること、そして微量の活性成分を投与しただけでも所望の治療的効果を得ること、が可能である。更にこの経口医薬組成物においては、胃内pH変化および食糧摂取パターンの結果としてもたらされるかもしれない生物学的利用能の個体間および個体内での変動を低減させることにより薬物の吸収変動を最小限におさえることも可能である。
【0046】
従って、本発明に従った腸標的処方物は、活性成分が小腸および大腸内そしてより好ましくは空腸そして下部小腸に対応する回腸および結腸内、特に好ましくは回腸または結腸内で概ね吸収されるような形で構成されている。
【0047】
腸標的処方は、さまざまな方法を通して、消化管の数多くの生理学的パラメータを利用することによって設計することができる。本発明の1つの好ましい実施形態においては、腸標的処方物は、(1)pH感受性重合体に基づく処方方法、(2)腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性重合体に基づく処方方法、(3)腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性マトリクスに基づく処方方法、または(4)所与の遅延時間後の薬物の放出を可能にする処方方法、およびその任意の組合せによって調製され得る。
【0048】
具体的には、pH感受性重合体を用いた腸標的処方(1)は、消化管のpH変化に基づく薬物送達系である。胃のpHは1〜3の範囲内にあり、一方小腸および大腸のpHは、胃のものと比べ7以上の値を有する。この事実に基づいて、医薬組成物が消化管のpH変動に影響されることなく下部小腸部分に確実に到達するようにするために、pH感受性重合体を使用することができる。pH感受性重合体の例としては、メタクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(オイドラギット:ロームファルマ社の登録商標)、ヒドロキシプロピルメチルフタル酸セルロース(HPMCP)およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのものが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0049】
好ましくは、pH感受性重合体をコーティングプロセスにより付加してよい。例えば、重合体の添加は、溶媒内に重合体を混合して水性コーティング懸濁液を形成させること、結果としてのコーティング懸濁液を噴射してフィルムコーティングを形成させること、そしてフィルムコーティングを乾燥させることによって実施可能である。
【0050】
腸特異的細菌酵素によって分解可能である生分解性重合体を用いた腸標的処方(2)は、腸内細菌によって産生され得る特異的酵素の分解能力を利用することに基づくものである。特異的酵素の例としては、アゾレダクターゼ、細菌ヒドロラーゼグリコシダーゼ、エステラーゼ、ポリサッカリダーゼなどが含まれていてよい。
【0051】
標的としてアゾレダクダーゼを用いた腸標的処方を設計することが望まれる場合には、生分解性重合体は、アゾ芳香族連結を含む重合体例えばスチレンとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の共重合体であり得る。活性成分を含有する処方物に重合体が添加される場合、例えばバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)およびユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)といった腸内細菌によって特異的に分泌されるアゾレダクターゼの作用を介して重合体のアゾ基の還元によって活性成分を腸内に解放させることができる。
【0052】
標的としてグリコシダーゼ、エステラーゼ、またはポリサッカリダーゼを用いた腸標的処方を設計することが望まれる場合、生分解性重合体は、天然多糖またはその置換誘導体であってよい。例えば、生分解性重合体は、デキストランエステル、ペクチン、アミラーゼ、エチルセルロースおよびその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。重合体が活性成分に添加される場合、例えばビフィドバクテリア(Bifidobacteria)およびバクテロイデス(Bacteroides)菌株といった腸内細菌によって特異的に分泌される各酵素の作用を介して重合体の加水分解により腸内に活性成分を解放することができる。これらの重合体は天然材料であり、生体内毒性のリスクが低いという利点をもつ。
【0053】
腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性マトリクスを用いた腸標的処方(3)は、生分解性重合体が互いに架橋され活性成分または活性成分含有処方物に添加されている1つの形態であり得る。生分解性重合体の例としては、硫酸コンドロイチン、グアーガム、キトサン、ペクチンなどといった天然に発生する重合体が含まれ得る。薬物放出度は、マトリクス構成重合体の架橋度に応じて変動し得る。
【0054】
天然に発生する重合体に加えて、生分解性マトリクスは、N置換アクリルアミドに基づく合成ヒドロゲルであってよい。例えば、N−tert−ブチルアクリルアミドとアクリル酸との架橋または2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび4−メタクリロイルオキシアゾベンゼンの共重合により合成されるヒドロゲルをマトリクスとして使用してよい。架橋は以上で言及した通り例えばアゾ連結であり得、処方は、腸薬物送達のための最適な条件を提供するべく架橋密度が維持され、腸に薬物が送達された時点で腸粘膜と相互作用するべく連結が分解される1つの形態である。
【0055】
更に、遅延時間の後の薬物の経時的放出を伴う腸標的処方(4)は、pHの変化とは無関係に予め定められた時間の後活性成分を放出することができるようになっている1つの機序を利用する薬物送達系である。活性薬物の腸内放出を達成するためには、処方物は、胃内pH環境に対し耐性がなくてはならず、腸内への活性成分の放出に先立ち、体から腸への薬物の送達にかかる時限に対応する5〜6時間の間、サイレント期(silent phase)にあるべきである。時間特異的遅延放出処方物は、酸化ポリエチレンとポリウレタンとの共重合に基づいて調製されたヒドロゲルの付加により調製可能である。
【0056】
具体的には、遅延放出処方物は、不溶性重合体に対して薬物を適用した後以上で言及した組成を有するヒドロゲルを添加した結果、胃および小腸の上部消化管内にとどまる間に処方物が水を吸収し次に膨潤し、その後下部消化管である小腸の下部部分まで移動し薬物を解放する構成を有しており、この薬物の遅延時間はヒドロゲルの長さに応じて決定される。
【0057】
重合体のもう1つの例としては、エチルセルロース(EC)を、遅延放出投薬量処方において使用することができる。ECは不溶性重合体であり、水の浸透に起因する膨潤媒質の膨潤または蠕動運動に起因する腸の内部圧力の変化に応答して、薬物放出時間を遅延させるための因子として役立ち得る。遅延時間は、ECの厚みにより制御され得る。付加的な例としては、重合体の厚み制御により所与の時限の後に薬物を放出できるようにする遅延剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用してもよく、これは5〜10時間の遅延時間を有し得る。
【0058】
本発明に従った医薬組成物においては、活性成分は、高い結晶化度を伴う結晶構造、または低い結晶化度を伴う結晶構造を有していてよい。
【0059】
本明細書で使用される「結晶化度」という用語は、合計化合物の結晶部分の重量分率として定義づけされ、当該技術分野において公知の従来の方法によって決定され得る。例えば、結晶化度の測定は、結晶部分と非晶質部分の各密度に対してまたはそこから適切な値を加算および/または減算することによって得られる予め設定された値を予め仮定することにより結晶化度を計算する密度法または沈澱法、融解熱の測定が関与する方法、X線回折解析の時点でX線回折速度分布から結晶質回折分率と非晶質回折分率を分離することによって結晶化度が計算されるX線方法、または赤外吸収スペクトルの結晶性バンドの間の幅のピークから結晶化度を計算する赤外線方法によって実施することができる。
【0060】
本発明に従った経口医薬組成物中では、活性成分の結晶化度は好ましくは50%以下である。より好ましくは、活性成分は、材料の固有の結晶性が完全に失なわれた非晶質構造を有し得る。非晶質ナフトキノン化合物は、結晶質ナフトキノン化合物に比べて比較的高い溶解度を示し、薬物の溶解速度および生体内吸収を著しく改善することができる。
【0061】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、非晶質構造は、活性成分を微細粒子または細粒の形へ調製(活性成分の微粉化)する間に形成され得る。微細粒子は、例えば活性成分の噴霧乾燥、重合体との活性成分の融解物の形成が関与する融解方法、溶媒中への活性成物の溶解後の重合体と活性成分との共沈物の形成が関与する共沈、封入体形成、溶媒の揮発などによって調製可能である。活性成分が非晶質構造でない場合即ち結晶構造または半結晶構造を有している場合でも、活性成分の機械的粉砕を介した細粒への微粉化が、粒子の大きな比表面積に起因して、溶解度の改善に寄与し、その結果として、活性薬物の溶解速度および生体吸収速度は改善される。
【0062】
噴霧乾燥は、或る種の溶媒中に活性成分を溶解させ、結果として得た溶液を噴霧乾燥させることによって、細粒を作る方法である。噴霧乾燥プロセスの間に、ナフトキノン化合物の結晶性が高い率で失われ、そのため、非晶質状態がもたらされ、従って、細かい粉末の形での噴霧乾燥された生成物が得られる。
【0063】
機械的粉砕は、活性成分粒子に対し強い物理的力を適用することにより活性成分を細粒へと粉砕する方法である。機械的粉砕は、ジェット粉砕、ボール粉砕、振動粉砕、ハンマー粉砕などといったさまざまな粉砕プロセスを使用することによって実施可能である。特に好ましいのは、40℃未満の温度で空気圧を用いて実施され得るジェット粉砕である。
【0064】
その一方で、結晶構造の如何に関わらず、微粒子状活性成分の粒径の減少は、比表面積の増加、ひいては、溶解速度および溶解度の増加を導く。しかしながら、粒径が小さすぎるとこのようなサイズをもつ細粒の調製が困難になり、それと同時に、溶解度の劣化を結果としてもたらしかねない粒子の集塊または凝集をもたらす。従って、1つの好ましい実施形態においては、活性成分の粒径は、5nm〜500μmの範囲内にあってよい。この範囲内であれば、粒子の集塊または凝集を最大限に阻害でき、粒子の高い比表面積に起因して溶解速度および溶解度を最大限にすることができる。
【0065】
好ましくは、細粒の形成中に発生し得る粒子の集塊または凝集を防ぐための付加的に界面活性剤を添加してもよく、かつ/または、静電気の発生を防ぐために帯電防止剤を更に添加してもよい。
【0066】
必要な場合には、粉砕プロセス中に吸湿材料を更に添加することができる。構造式(1)のナフトキノンベースの化合物は水により結晶化される傾向を有し、従って、吸湿材料の取込みは、経時的なナフトキノンベースの化合物の再結晶化を阻害し、微粉化に起因する化合物粒子の溶解度の増加を維持することができる。更に、吸湿材料は、活性成分の治療効果に不利な影響を及ぼすことなく、医薬組成物の凝固および凝集を抑制するのに役立つ。
【0067】
界面活性剤の例としては、界面活性剤が、ドキュセートナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウムといったようなアニオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよびセトリミドといったようなカチオン界面活性剤;モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびソルビタンエステルという非イオン性界面活性剤;ポリエチレン−ポリプロピレン重合体およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン重合体(ポロキサマー)およびGelucireTMシリーズ(ガットフォスコーポレーション(Gattefosse Corporation)、米国)といったような両親媒性重合体;モノカプリル酸プロピレングリコール、オレオイル・マクロゴール−6−グリセリド、リノレオイル・マクロゴール−6−グリセリド、カプリロカプロイル・マクロゴール−8−グリセリド、モノラウリン酸プロピレングリコールおよびポリグリセリル−6−ジオレエートが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は単独でも、その任意の組合せの形ででも使用することができる。
【0068】
吸湿剤の例としては、コロイダルシリカ、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸カリウム、およびアルミノケイ酸カルシウムなどが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は単独でも、その任意の組合せの形ででも使用することができる。
【0069】
上述の吸湿剤の一部を帯電防止剤として使用してもよい。
【0070】
界面活性剤、帯電防止剤および吸湿剤は、上述の効果を達成することのできる一定の量で添加され、かかる量は、微粉化条件に応じて適切に調整されてよい。好ましくは、活性成分の合計重量に基づいて0.05〜20重量%の範囲内で添加物を使用してよい。
【0071】
1つの好ましい実施形態においては、本発明に従った医薬組成物の経口投与向け調製物への処方中に、水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤を更に添加してもよい。好ましくは、所望の剤形への組成物の処方は、溶媒中で添加物および微粒子状の活性成分を混合し、混合物を噴霧乾燥することによって行なってよい。
【0072】
水溶性重合体は、ナフトキノンベースの化合物の分子または粒子の周囲を親水性にしてその結果として水溶性を増強することによって微粒子状の活性成分の凝集を防ぎ、かつ好ましくは活性成分のナフトキノンベースの化合物の非晶質状態を維持するために役立つ。
【0073】
好ましくは、水溶性重合体はpH非依存性重合体であり、胃腸内pHの個体間および個体内変動の下でさえ、活性成分の結晶性喪失および親水性の増強をもたらすことができる。
【0074】
水溶性重合体の好ましい例としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルエチルセルロースといったようなセルロース誘導体;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリビニルピロリドン(PVP)およびこれらを含有する重合体;ポリアルケンオキシドまたはポリアルケングリコールおよびこれらを含有する重合体からなる群から選択される少なくとも1つが含まれ得る。好ましいのはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0075】
本発明の医薬組成物においては、所与のレベルよりも高い水溶性重合体を過剰に含有することによって更に高い溶解度が提供されることは全くなく、不利なことに、処方物の硬度が全体的に増大することそして、溶離剤に対する曝露の時点での水溶性重合体の過度の膨潤に起因する処方物のまわりのフィルム形成により、処方物中に溶離剤が浸透しないことといったさまざまな問題をもたらす。従って、可溶化剤は好ましくは、ナフトキノンベースの化合物の物理的特性を修飾することによって処方物の溶解度を最大限にするように添加される。
【0076】
この点に関して、可溶化剤は、難溶性ナフトキノンベースの化合物の可溶化および湿潤性を増強するために役立ち、食習慣および食糧摂取後の薬物投与の時間差に由来するナフトキノンベースの化合物の生物学的利用能の変動を著しく低減させることができる。可溶化剤は、従来広く用いられてきた界面活性剤または両親媒性化合物から選択してよく、可溶化剤の具体例は、以上で定義づけした界面活性剤を意味し得る。
【0077】
崩壊促進剤は、薬物放出速度を改善するのに役立ち、標的部位における薬物の急速な放出を可能にして、薬物の生物学的利用能を増大させる。
【0078】
崩壊促進剤の好ましい例としては、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つのものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましいのは、クロスカルメロースナトリウムである。
【0079】
以上で記述した通りのさまざまな要因を考慮に入れた上で、活性成分100重量部に基づいて、10〜1000重量部の水溶性重合体、1〜30重量部の崩壊促進剤および0.1〜20重量部の可溶化剤を添加することが好ましい。
【0080】
上述の成分に加えて、処方に関連して当該技術分野において公知のその他の材料を、必要とあれば任意に添加してもよい。
【0081】
噴霧乾燥用溶媒は、その物理的特性の修飾の無い高い溶解度および噴霧乾燥プロセス中の容易な揮発性を示す材料である。かかる溶媒の好ましい例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノールおよびエタノールが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は、単独でも、その任意の組合せの形ででも使用できる。好ましくは、噴霧溶液中の固体含有量は、噴霧溶液の合計重量に基づいて、5〜50重量%の範囲内にある。
【0082】
上述の腸標的処方プロセスは、好ましくは、以上の通りに調製された処方粒子のために実施される。
【0083】
好ましい1つの実施形態においては、本発明に従った経口医薬組成物は、
(a)構造式(1)のナフトキノンベースの化合物を単独で、または界面活性剤および吸湿剤材料と組み合わせた形で添加し、構造式(1)のナフトキノンベースの化合物をジェットミルで粉砕して活性成分微細粒子を調製する工程;
(b)水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤と併せて活性成分微細粒子を溶媒中に溶解させ、結果として得られた溶液を噴霧乾燥して処方物粒子を調製する工程;および
(c)pH感受性重合体および可塑化剤と併せて処方剤粒子を溶媒中に溶解させ、結果として得られた溶液を噴霧乾燥して、処方物粒子上に腸標的コーティングを実施する工程、
を含むプロセスによって調製され得る。
【0084】
界面活性剤、吸湿材料、水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤は、以上で定義づけした通りである。可塑化剤は、コーティングの硬化を防止するために添加される添加剤であり、例えばポリエチレングリコールといったような重合体を含み得る。
【0085】
代替的には、工程(a)のジェット粉砕されたシードとしての活性成分粒子上へ、工程(b)のビヒクルおよび工程(c)の腸標的コーティング材料を逐次的にまたは同時に噴霧することによって活性成分の処方を実施してもよい。
【0086】
本発明における使用に適した経口医薬組成物は、その意図された目的即ち治療目的を達成するために有効な量で活性成分を含有する。より具体的には、治療上有効な量というのは、疾病の症候を防止、軽減または改善するのに有効な化合物の量を意味する。治療上有効な量の判定は、特に本書で提供されている詳細な開示に照らして、当業者の能力範囲内に充分入るものである。
【0087】
更に、本発明に従った経口医薬組成物は、特に、代謝性疾患、変性疾患、およびミトコンドリア機能障害関連疾患の治療および/または予防のために有効である。代謝性疾患の例としては、肥満、肥満合併症、肝臓疾患、動脈硬化症、脳卒中、心筋梗塞、心臓血管疾患、虚血性疾患、糖尿病、糖尿病関連合併症および炎症性疾患が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0088】
肥満によってひき起こされる合併症には、例えば高血圧症、心筋梗塞、静脈努張、肺塞栓症、冠動脈疾患、脳内出血、老人性認知症、パーキンソン病、2型糖尿病、高脂血症、脳卒中、さまざまな癌(例えば子宮癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌など)、心臓疾患、胆のう疾患、睡眠時無呼吸症候群、関節炎、不妊症、静脈性潰瘍、突然死、脂肪肝、肥大型心筋症(HCM)、血栓塞栓症、食道炎、腹壁ヘルニア(Ventral Hernia)、尿失禁、心臓血管疾患、内分泌疾患などが含まれる。
【0089】
糖尿病合併症としては、例えば高脂血症、高血圧症、網膜症、腎不全などが含まれる。
【0090】
変性疾患の例としては、アルツハイマ病、パーキンソン病およびハンチントン病が含まれる。
【0091】
ミトコンドリア機能障害から発生する疾病としては、例えば、多発性硬化症、脳脊髄炎、脳神経根炎、末梢神経障害、ライ症候群、フリードライヒ運動失調症、アルパース症候群、MELAS、偏頭痛、精神病、うつ病、発作および認知症、麻卑症状発現、視神経萎縮、視神経症、網膜色素変性症、白内障、高アルドステロン血症、副甲状腺機能低下症、筋疾患、筋萎縮症、ミオグロビン尿症、筋緊張低下、筋痛症、運動耐容減少、腎尿細管疾患、腎不全、肝不全、肝機能異常、肝腫張、鉄芽球性貧血(鉄欠乏性貧血)、好中球減少症、血小板減少症、下痢、絨毛萎縮、多発性嘔吐、嚥下障害、便秘、感音難聴(SNHL)、知能発育遅延、てんかんなどが含まれ得る。
【0092】
本明細書で使用される「治療」という用語は、発病の症候を示す対象において薬物が使用された場合の疾病の進行の停止または遅延を意味する。「予防」という用語は、発病の症候を全く示さないものの発病の危険性が高い対象において薬物が使用された場合の発病症候の停止または遅延を意味する。
【0093】
本発明の上述のおよびその他の目的、特徴およびその他の利点は、添付の図面と合わせて以下の詳細な説明から更に明確に理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実験例4に従ってシングルパス腸内かん流が実施された場合の、それぞれ空腸、回腸および大腸内のナフトキノンベースの化合物の残留量を示すグラフである。
【図2】実験例4におけるかん流下のナフトキノンベースの化合物の出口定常状態濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0095】
ここで、本発明について、以下の実施例を参考にしながら更に詳細に記述する。これらの実施例は、本発明を例示することのみを目的として提供されており、本発明の範囲および精神を制限するものとみなされるべきではない。
【0096】
実験例1:分配係数の判定
オクタノールおよびリン酸緩衝液(pH7.4)を24時間以上にわたり対溶媒で飽和させた。所与の量のナフトキノンベースの化合物(下表1の化合物1)を、このように飽和させたオクタノール中で溶解させ、3倍の蒸留水(triple−distilled water)と混合し、13時間以上の間200rpmで磁気撹拌機を用いて撹拌した。試料を取り出し、0.45μmのRC膜フィルタを通してろ過し、メタノールで希釈させた。希釈した試料材料をHPLCで分析した。分配係数と化合物1の量の関係を判定した。こうして得た結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表1からわかるように、分配係数の値は2.299であり、かくして化合物1が比較的脂溶性であることを表わしている。この結果は、化合物1が、水溶解度の100倍のオクタノール溶解度を有し、細胞膜の内部を疎水層を充分通過し、その後細胞内で吸収されることを意味している。
【実施例】
【0099】
実施例1:ジェットミルを用いた活性成分の微粉化
活性成分の微粉化は、ジェットミル(SJ−100、日新エンジニアリング(Nisshin)、日本)を用いて実施した。0.65Mpaの供給圧力および50〜100g/時の補給速度で作業を行なった。0.2gのラウリル硫酸ナトリウム(SLS)および10gのナフトキノンベースの化合物(表1の化合物1)を混合し粉砕した。微粉化した粒子を回収し、粒子サイズをゼータ電位測定によって判定した。平均粒径は1500nmであった。
【0100】
実施例2:噴霧乾燥生成物の調製
(微粉化済みおよび未微粉化粒子を含む)実施例1のナフトキノンベースの化合物または合成のナフトキノンベースの化合物(表1の化合物1)を塩化メチレンに添加し、塩化ナトリウムといったような塩、白糖またはラクトースといったようなサッカリド、または微晶質セルロース、第一リン酸カルシウム、でんぷんまたはマンニトールといったビヒクル、ステアリン酸マグネシウムといったような潤滑剤、タルクまたはベヘン酸グリセリルといったような潤滑剤、そしてポロキサマーといった可溶化剤を、所与の量のエタノールに添加し、その後均一に分散させて、その後の噴霧乾燥のために用いられる噴霧乾燥溶液を調製した。
【0101】
実験例2:噴霧乾燥した処方物の溶解
実施例2の噴霧乾燥した生成物に対して、活性成分との関係においてほぼ等量の水溶性重合体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)とクロスカルメロースナトリウムおよび軽質無水ケイ酸といったビヒクルとを添加し、崩壊干渉(interferense of disintegration)をひき起こすことなく混合物を処方した。緩衝液(pH6.8)中で薬物溶解試験を実施した。全ての組成物は、6時間後に90%以上の薬物溶解を示した。
【0102】
実験例3:処方物の相対的生物学的利用能の評価
10匹の雄のSD(Sprague−Dawley)ラットを絶食させ、動物の体内の相対的生物学的利用能をさまざまな処方物について評価した。具体的には、ナフトキノンベースの化合物を粗粉砕して2重量%のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と併せて水溶液に添加した調製物(活性成分の粉砕に先立つ調製物)、ナフトキノンベースの化合物をジェットミルで微細粒子へと粉砕して2重量%のSLSと併せて水溶液に添加した調製物(活性成分の粉砕後の調製物)、実施例2の噴霧乾燥生成物と実験例2のビヒクルから成る処方物を水溶液に添加した調製物(噴霧乾燥調製物)およびナフトキノンベースの化合物をジェットミルで微粉末に粉砕し、実験例2のビヒクルを用いて処方して水溶液に添加した調製物(固体分散調製物)について、相対的生物学的利用能の評価を行なった。
【0103】
各動物グループに対し50mg/kgの活性成分を投与することによって、生物学的利用能のランダム化クロスオーバー評価(crossover evaluation)を実施した。かくして得られた活性成分の血中濃度プロファイルは、下表3で示されている。
【0104】
【表3】

【0105】
表3の結果からわかるように、水溶液に付加された噴霧乾燥処方物および固体分散処方物は、同量の活性成分を含有する比較用処方物、特に活性成分の粉砕に先立つ処方物に比べて、絶食状態での生物学的利用能の約3倍の増加を示した。
【0106】
実験例4:化合物の腸内吸収
ナフトキノンベースの化合物の腸内吸収(%)を判定するために、空腸、回腸および大腸を含むラットの内部器官の中で、シングルパス腸内かん流技法を実施した。
【0107】
定常状態腸内有効浸透率(Peff)は、以下の等式によって表わすことができる。
eff=[−Qin・In(Cout/Cin)]/A
− Peff:定常状態腸内有効浸透率(cm/秒)
− Qin:かん流流速(0.4mL/分)
− Cin、Cout:入口溶液濃度および流体輸送補正済み出口溶液濃度
− A:腸管物質移動表面積(2πrL)
− r、L:腸管の半径および長さ
【0108】
実験内で用いられた空腸、回腸および大腸の半径(r)および長さ(L)は以下の通りである(r:空腸、0.21cm;回腸、0.22cm;大腸、0.23cmおよびL:10cm)。
【0109】
出口濃度対入口濃度の比(Cout/Cin)と時間の関係により定常状態を確認した。定常状態は、ナフトキノンベースの化合物のCout/Cin比が恒常値(n=3、S.D.(標準偏差)との関係におけるエラーバー)に維持されている場合に立証される。
【0110】
以上の3つの腸器官内でのナフトキノンベースの化合物の残留量を異なる時点で測定した。結果は図1に示されている。
【0111】
図1に示されているように、最初の20分間は比較的大量のナフトキノンベースの化合物が腸内組織を通して浸透し、その後は実質的に全く浸透のない状態にとどまった。更に、腸内浸透率は、大腸、回腸そして空腸の順序で高いものであった。
【0112】
かん流下の化合物の出口定常状態濃度を計算した。かくして得られた結果は、それぞれ表4と図2に示されている。各腸内組織の4ヵ所で有効浸透率を測定した。表4と図2に示されているように、最高の浸透率は大腸内で見られたということがわかる。
【0113】
【表4】

【0114】
実施例3:腸標的処方物の調製
実験例2で調製した噴霧乾燥処方物を、pH感受性重合体としての約20重量%のオイドラギットS−100および可塑化剤としての約2重量%のPEG#6000を含有するエタノール溶液に添加し、次に混合物を噴霧乾燥して腸標的処方物を調製した。
【0115】
実験例5:腸標的処方物の耐酸性
実施例3で調製した腸標的処方物をそれぞれpH1.2とpH6.8に曝露した。6時間後に、腸標的処方物を除去し、洗浄し、活性成分の含有量をHPLCによって分析した。活性成分の有効量を、耐酸性の尺度として査定した。耐酸性は、90〜100%という非常にすぐれた結果を示し、かくして、腸標的処方物が胃内または小腸内で化学的に安定していることを示唆した。
【0116】
実験例6:薬物溶解プロファイルの測定
実験例5の場合と同様に、腸標的処方物をpH1.2の酸性環境に曝露した後、人工的な環境内でpH6.8の値に酸性度を変更した。溶解した活性成分の残留量をHPLCで測定した。かくして得られた結果を下表5に示す。
【0117】
【表5】

【0118】
実験例7:腸標的処方物の治療的効能
活性成分含有量に関して200mg/kgの腸標的処方物を毎日一回ob/obマウスに投与し、動物の体重(BW)の変化を検査した。
【0119】
2型糖尿病の肥満マウスモデルとして10週令のob/ob雄マウス(ジャクソンラボ(Jackson Lab))をオリエント(株)(OrientCo.)(Kyungki−do、韓国)から、購入し、実験に先立ち10日間、飼育室の新しい環境に順応させた。動物に、実験動物飼料として固形飼料(P5053、ラブダイエット(Labdiet))を与えた。ob/ob雄マウスを、温度22±2℃、湿度55±5%そして12時間の明/暗(L/D)サイクル(午前8時から午後8時まで明)に維持した飼育室の中に収容し、10日間新しい環境に順応させた。乱塊法に従って、このように順応させた動物を、各々7匹ずつからなる4つのグループ、即ちラウリル硫酸ナトリウム(10mg/kg)が投与される対照グループ、ナフトキノンベースの化合物(200mg/kg)の単に細かく分割されただけの粉末が投与されるグループ、ジェット粉砕されたナフトキノンベースの化合物が投与されるグループ、および粉砕されたナフトキノンベースの化合物の腸標的処方物が投与されるグループへと、無作為に分けた。動物の各グループに試料200mg/kgを経口(PO)により与えた。動物は固形飼料ペレットと水を随意に給餌された。動物の体重における変化の結果を、以下の表6に挙げる。表6を見るとわかるように、粉砕されたナフトキノンベースの化合物の腸標的処方物が投与されたラットグループが、有意な体重減少を示すことが確認された。
【0120】
【表6】

【0121】
表6を見るとわかるように、腸標的処方物が投与されたグループは、最高の体重減少(%)を示し、かくしてすぐれた生物学的利用能が得られたことを表わしている。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上の記述から明らかであるように、本発明に従った経口医薬組成物は活性成分の生体吸収速度および生体内保持時間を増大させ、かくして薬物の薬物速度論的特性を改善させる。その結果、活性成分としての或る種のナフトキノンベースの化合物の生物学的利用能を増加させることによって所望の治療的効果を達成することが可能である。
【0123】
本発明の好ましい実施形態を例示目的で開示してきたが、当業者は、添付のクレームで開示されている通りの本発明の範囲および精神から逸脱することなく、さまざまな修正、付加および置換が可能であるということを認識するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として、下記式(1):
【化1】

(式中、
およびRは、各々独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、またはC−C低級アルキルまたはアルコキシであり;
、R、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、ヒドロキシ、C−C20アルキル、アルケンまたはアルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、そうでなければ、R〜Rのうち2つの置換基が合わされて、飽和、部分不飽和または完全不飽和となっていてよい環状構造を形成してよく;
Xは、C(R)(R’)、N(R’’)、OおよびSからなる群から選択され(式中、R、R’およびR’’は、各々独立して水素またはC−C低級アルキルである);
nは0または1であり、ただし、nが0である場合、nに隣接する炭素原子が直接結合を介して環状構造を形成する)
によって表わされるナフトキノンベースの化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体が、腸を標的とする処方物に調製されている経口医薬組成物。
【請求項2】
XがOであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロドラッグが、下記式(1a):
【化2】

(式中、
、R、R、R、R、R、R、R、Xおよびnは、前記構造式(1)に定義されている通りであり;
およびR10は、各々独立して、−SO−Na、または下記式(2):
【化3】

(式中、
11およびR12は、各々独立して、水素或いは置換または未置換のC〜C20直鎖アルキルまたはC〜C20分岐アルキルであり、
13は、下記置換基i)〜viii):
i)水素;
ii)置換または未置換のC〜C20直鎖アルキルまたはC〜C20分岐アルキル;
iii)置換または未置換アミン;
iv)置換または未置換のC〜C10シクロアルキルまたはC〜C10ヘテロシクロアルキル;
v)置換または未置換のC〜C10アリールまたはC〜C10ヘテロアリール;
vi)式−(CRR’−NR’’CO)−R14(式中、R、R’およびR’’は、各々独立して、水素、または置換または未置換のC〜C20直鎖アルキルまたはC〜C20分岐アルキルであり、R14は、水素、置換または未置換アミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、lは、1〜5から選択される)で表わされる置換基;
vii)置換または未置換カルボキシル;
viii)−OSO−Na
からなる群から選択され、
kは、0〜20から選択され、ただし、kが0である場合、R11およびR12は存在せず、R13はカルボニル基に直接結合する)
で表わされる置換基またはその塩である)
で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)の化合物が、下記式(3)および(4):
【化4】

【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、前記式(1)において定義されている通りである)
で表わされる化合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
およびRが、各々水素であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(3)の化合物が、
、RおよびRがそれぞれ水素である、下記式(3a):
【化6】

で表わされる化合物、または、
、RおよびRが各々水素である、下記式(3b):
【化7】

で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(4)の化合物が、R、R、R、R、RおよびRが各々水素である、下記式(4a):
【化8】

で表わされる化合物であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
腸を標的とする処方が、pH感受性重合体の付加によって実施されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記pH感受性重合体が、メタクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(オイドラギット(Eudragit):ロームファルマ社(Rohm Pharma GmbH)の登録商標)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)およびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記pH感受性重合体が、コーティングプロセスによって添加されることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
腸を標的とする処方が、腸特異的細菌酵素によって分解可能である生分解性重合体の付加によって実施されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記重合体が、アゾ芳香族連結を含有することを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記アゾ芳香族連結を含有する前記重合体が、スチレンとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の共重合体であることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記重合体が、天然多糖またはその置換誘導体であることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記多糖またはその置換誘導体が、デキストランエステル、ペクチン、アミラーゼおよびエチルセルロースまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
腸を標的とする処方が、腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性マトリクスの付加によって実施されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記マトリクスが、N置換アクリルアミドをベースとする合成ヒドロゲルであることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
腸を標的とする処方が、一定の遅延時間後に薬物が経時的に放出される構成(「時間特異的遅延放出型処方」)によって実施されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記時間特異的遅延放出型処方が、ヒドロゲルの付加によって実施されることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記活性成分が、結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記活性成分が、結晶化度が50%以下である結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記活性成分が、非晶質構造を有することを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記活性成分が、細粒の形で含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記細粒が、5nm〜500μmの範囲内の粒径を有することを特徴とする請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記細粒が、前記活性成分の噴霧乾燥または機械的粉砕によって調製されることを特徴とする請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記機械的粉砕が、ジェット粉砕によって実施されることを特徴とする請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
界面活性剤、帯電防止剤および吸湿剤からなる群から選択される1種以上が、前記細粒の形成中に添加されることを特徴とする請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
前記界面活性剤が、ドキュセートナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウムというアニオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよびセトリミドというカチオン界面活性剤;モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびソルビタンエステルという非イオン性界面活性剤;ポリエチレン−ポリプロピレン重合体およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン重合体(ポロキサマー(Poloxamer))およびGelucireTMシリーズ(ガットフォスコーポレーション(Gattofosse Corporation)、米国)という両親媒性重合体;モノカプリル酸プロピレングリコール;オレオイル・マクロゴール−6−グリセリド、リノレオイル・マクロゴール−6−グリセリド、カプリロカプロイル・マクロゴール−8−グリセリド、モノラウリン酸プロピレングリコールおよびポリグリセリル−6−ジオレエートからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記吸湿剤が、コロイダルシリカ、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸カリウムおよびアルミノケイ酸カルシウムからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
経口投与用の前記処方物の調製中に、水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤が添加されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記処方物が、細粒の形で前記添加剤と前記活性成分を溶媒中で混合し、次いで得られた混合物を噴霧乾燥させることによって製造されることを特徴とする請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記水溶性重合体が、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルエチルセルロースからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
前記水溶性重合体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記崩壊促進剤が、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項30に記載の組成物。
【請求項35】
前記崩壊促進剤が、クロスカルメロースナトリウムであることを特徴とする請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記可溶化剤が、界面活性剤または両親媒性化合物であることを特徴とする請求項30に記載の組成物。
【請求項37】
前記活性成分100重量部に基づいて、10〜1000重量部の前記水溶性重合体、1〜30重量部の前記崩壊促進剤および0.1〜20重量部の前記可溶化剤が添加されることを特徴とする請求項30に記載の組成物。
【請求項38】
(a)前記式(1)のナフトキノンベースの化合物を単独で、または界面活性剤および吸湿剤材料と組み合わせた形で添加し、前記式(1)の前記ナフトキノンベースの化合物をジェットミルで粉砕して活性成分微細粒子を調製する工程;
(b)水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤と併せて前記活性成分の微細粒子を溶媒中に溶解させ、得られた溶液を噴霧乾燥して処方物粒子を調製する工程;および
(c)pH感受性重合体および可塑化剤と併せて前記処方物粒子を溶媒中に溶解させ、得られた溶液を噴霧乾燥して、前記処方物粒子上に腸標的コーティングを実施する工程
を含むプロセスによって前記腸標的処方物が調製されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
前記活性成分が、代謝性疾患、変性疾患およびミトコンドリア機能障害関連疾患の治療および/または予防のための治療的効果をもたらすことを特徴とする請求項1に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−510980(P2010−510980A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538337(P2009−538337)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006008
【国際公開番号】WO2008/066295
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(509010436)マゼンス インコーポレイテッド (11)
【出願人】(506222797)ケーティ アンド ジー カンパニー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】