説明

膜形成用組成物、該組成物を用いた絶縁膜及び電子デバイス

【課題】電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の膜特性が良好であるとともに、経時保存後も良好な膜を提供できる膜形成用組成物、さらには該組成物を用いて得られる絶縁膜およびそれを有する電子デバイスに関する。
【解決手段】カゴ型構造を有する化合物を含有する膜形成用組成物であって、該組成物から塗布成膜によって得られる膜のハロゲン含量が100×1010atom/cm2以下であることを特徴とする膜形成用組成物、さらには該組成物を用いて得られる絶縁膜およびそれを有する電子デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜形成用組成物に関し、さらに詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度、耐熱性等の膜特性が良好な絶縁膜形成用組成物に関し、さらには該組成物を用いて得られる絶縁膜を有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐えうる優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
高耐熱性の絶縁膜として古くからポリベンゾオキサゾール、ポリイミドが広く知られている。また、ポリアリーレンエーテルからなる高耐熱性の絶縁膜が開示されている。(特許文献1、特許文献2)しかしながら、高速デバイスを実現するためには更なる誘電率の低減が強く要望されている。
ポリエチレンのような飽和炭化水素をベースとするポリマーは電子分極が小さい構造に起因して低い誘電率を有する特徴があるが、一方で結合解離エネルギーの小さい炭素−炭素単結合で構成されるため一般的に耐熱性が低いことが課題となっている。
【0004】
絶縁膜の比誘電率を低下させるためには、電子分極の小さい飽和炭化水素で重合体骨格を構成することが有効である。特許文献3にはジアマンタンにエチニル基が置換した化合物をモノマーとする熱重合体が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載された方法で合成した重合体はシクロヘキサノン等の半導体デバイス製造に好適に用いられる塗布溶剤に不溶であるため、スピンコート法による膜形成に供することは不可能である。
【0005】
【特許文献1】米国特許6380347号明細書
【特許文献2】米国特許5965679号明細書
【特許文献3】米国特許5017734号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点を解決するための膜形成用組成物に関し、詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の膜特性が良好であるとともに、経時保存後も良好な膜を提供できる膜形成用組成物、さらには該組成物を用いて得られる絶縁膜および該絶縁膜を有する電子デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題が下記の<1>〜<10>の構成により解決されることを見出した。
<1> カゴ型構造を有する化合物を含有する膜形成用組成物であって、該組成物から塗布成膜によって得られる膜のハロゲン含量が100×1010atom/cm2以下である
ことを特徴とする膜形成用組成物。
【0008】
<2> カゴ型構造を有する化合物が、カゴ型構造を有するモノマーの重合体であることを特徴とする上記<1>に記載の膜形成用組成物。
<3> カゴ型構造を有するモノマーが炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有することを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の膜形成用組成物。
<4> カゴ型構造がアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタンから選択されることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<5> カゴ型構造を有するモノマーが下記式(I)〜(VI)の群から選択されることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
式(I)〜(VI)中、
〜Xは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基等を表す。
〜Yは、アルキル基、アリール基またはシリル基を表す。
1〜mは1〜14の整数を表す。
1〜nは0〜13の整数を表す。
【0011】
<6> カゴ型構造を有する化合物が、カゴ型構造を有するモノマーを遷移金属触媒存在下またはラジカル開始剤存在下で重合して得られたものであることを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<7> カゴ型構造を有する化合物がシクロヘキサノンまたはアニソールに25℃で3質量%以上溶解することを特徴とする上記<1>〜<6>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<8> 有機溶剤を含む上記<1>〜<7>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<9> 上記<1>〜<8>のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて膜を形成し、焼成することを特徴とするハロゲン含量が100×1010atom/cm2以下である絶縁膜の製造方法。
【0012】
<10>
上記<1>〜<8>のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成したハロゲン含量が100×1010atom/cm2以下である絶縁膜。
<11> 請求項10に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0013】
本発明の膜形成用組成物は、電子デバイスなどにおける層間絶縁膜として適する低い誘電率、高い機械強度、および耐久性を有し、ハロゲン含量が低い膜を提供でき、さらに経
時保存後であっても同様に良好な性能の膜を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の膜形成用組成物は、カゴ型構造を有する化合物を含有し、該組成物の経時保存後においても、低い誘電率、高い機械強度、および耐久性を有する膜を提供できる。
【0015】
膜形成用組成物中のハロゲン含量は、塩素原子、臭素原子、塩素イオン、臭素イオン、塩化物イオン、臭化物イオンを膜形成用組成物あるいは重合体など添加成分の段階で、化学的、あるいは物理的に除くことにより低減することができる。
たとえば、再結晶、昇華精製、蒸留、透析、再沈殿精製、超純水による固液洗浄、超純水による液液抽出による洗浄などがイオンを除くのに有効である。
また、陰イオン交換樹脂を用いることにより、塩化物イオンあるいは臭化物イオンを除くこともできる。
さらに、サブミクロン孔径のメンブレンフィルターにより、ハロゲンを含有するパーティクルを除くことによってもハロゲン含量を低減することもできる。
さらに、重合溶媒および塗布溶剤に、塩素あるいは臭素を含有しない溶剤を用いることはハロゲン含量を低下させるために有効である。さらに重合溶媒、塗布溶剤から塩素原子、臭素原子、塩素イオン、臭素イオン、塩化物イオン、臭化物を除く処理をすることによってもハロゲン含量を低減することができる。
ハロゲンを除く処理としては、蒸留精製が有効であり、その他超純水による液液抽出による洗浄、イオン交換樹脂による処理等も有効である。
【0016】
本発明での膜形成用組成物を使用して得られる膜は、好ましくはハロゲン含量が30×1010atom/cm2以下であり、さらに好ましくは、ハロゲン含量が10×1010atom/cm2以下である。
ハロゲン含量は膜の全反射蛍光X線測定によって求めることができる。たとえば、タングステンを線源としてCl−Kα、Br−Lαを検出することにより求めることができる。
【0017】
また、膜形成用組成物による塗膜の乾燥工程、焼成工程において、雰囲気の厳密な制御を実施することで、ハロゲン量を低減することもできる。
【0018】
本発明の膜形成用組成物は、カゴ型構造を有する化合物を含有する。
本発明で述べる「カゴ型構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。例えば、アダマンタン構造はカゴ型構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ型構造とは考えられない。
【0019】
本発明のカゴ型構造は飽和、不飽和結合のいずれを含んでいても良く、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を含んでも良いが、低誘電率の見地から飽和炭化水素が好ましい。
【0020】
本発明のカゴ型構造は、好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドランであり、より好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタンであり、低誘電率である点で特にビアダマンタン、ジアマンタンが好ましい。
【0021】
本発明におけるカゴ型構造は1つ以上の置換基を有していても良く、置換基の例としては、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペン
チル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)等である。
【0022】
本発明におけるカゴ型構造は2〜4価であることが好ましい。このとき、カゴ型構造に結合する基は1価以上の置換基でも2価以上の連結基でも良い。カゴ型構造は好ましくは、2または3価であり、特に好ましくは2価である。ここで「価」とは、結合手の数の意である。
【0023】
本発明のカゴ型構造を有する化合物とは、カゴ型構造を有するモノマーの重合体であることが好ましい。ここでモノマーとは、互いに重合して2量体以上の重合体になるものを指す。この重合体は、ホモポリマーでもコポリマーでも良い。
【0024】
モノマーの重合反応はモノマーに置換した重合性基によって起こる。ここで重合性基とは、モノマーを重合せしめる反応性の置換基を指す。該重合反応としてはどのような重合反応でも良いが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合等が挙げられる。
【0025】
本発明のモノマーの重合反応は非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することが出来る。
【0026】
本発明で使用できる重合開始剤は加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示すものが好ましい。特に有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ‐n‐プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ‐sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ‐2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ‐2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)
−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ‐(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ‐3,5,5、−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ‐メチル‐2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジー(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル4,4−ジーt−ブチルパーオキシバレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、シ゛‐t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル‐2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーイキサイド、ジ‐t−ブチルパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル-2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス‐(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α‐クミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジーt−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ‐t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ‐3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ‐イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート等が好ましく用いられる。
【0027】
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類、2,2−アゾビス(4−メトキシ‐2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、1−〔(1−シアノ‐1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2,2−アゾビス{2−メチル‐N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス〔2−メチル‐N−(2−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド〕、2,2−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2−アゾビス(N−ブチルー2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル‐2−メチルプロピオアミド)、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン‐2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン‐2−イル)プロパン〕ジスルフェートジヒドレート、2,2−アゾビス[2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン‐2−イル〕プロパン]ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔2−〔2−イミダゾリン‐2−イル〕プロパン〕、2,2−アゾビス(1−イミノー1−ピロリジノ‐2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕テトラヒドレート、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリックア
シッド)、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が好ましく用いられる。
【0028】
本発明の重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の重合開始剤の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0029】
本発明のモノマーの重合反応は遷移金属触媒存在下で行うことも好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを例えばPd(PPh3)4、Pd(OAc)2等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl等のW系触媒、MoCl等のMo系触媒、TaCl等のTa系触媒、NbCl等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0030】
本発明の遷移金属触媒は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の遷移金属触媒の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
なお、本発明においては、上述の重合開始剤がより好ましい。
【0031】
本発明におけるカゴ型構造はポリマー中にペンダント基として置換していて良く、ポリマー主鎖の一部となっていても良いが、ポリマー主鎖の一部となっている形態がより好ましい。ここで、ポリマー主鎖の一部になっている形態とは、本ポリマーからかご化合物を除去するとポリマー鎖が切断されることを意味する。この形態においては、カゴ型構造は直接単結合するかまたは適当な2価の連結基によって連結される。連結基の例としては例えば、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=C(R14)−、−C≡C−、アリーレン基、−CO−、−O−、−SO2−、−N(R15)−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。ここで、R11〜R17はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。これらの連結基は置換基で置換されていてもよく、例えば前述の置換基が好ましい例として挙げられる。
この中でより好ましい連結基は、−C(R11)(R12)−、−CH=CH−、−C≡C−、アリーレン基、−O−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基であり、特に好ましいものは、低誘電率である見地から−C(R11)(R12)−、−CH=CH−である。
【0032】
本発明のカゴ型構造を有する化合物とは、低分子化合物であっても高分子化合物(たとえばポリマー)であっても良いが、好ましいものはポリマーである。カゴ型構造を有する化合物がポリマーである場合、その重量平均分子量は好ましくは1000〜500000、より好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。カゴ型構造を有するポリマーは分子量分布を有する樹脂組成物として絶縁膜形成用塗布液に含まれていても良い。カゴ型構造を有する化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3000、より好ましくは200〜2000、特に好ましくは220〜1000である。
【0033】
本発明のカゴ型構造を有する化合物は、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーの重合体であることが好ましい。さらには、下記式(I)〜(VI)で表される化合物の重合体であることがより好ましい。
【0034】
【化2】

【0035】
式(I)〜(VI)中、
〜Xはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜10)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20)、シリル基(好ましくは炭素数0〜20)、アシル基(好ましくは炭素数2〜10)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜10)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20)等を表す。このうち、好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは水素原子である。
〜Yはそれぞれ独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20)またはシリル基(好ましくは炭素数0〜20)を表し、より好ましくは置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくはアルキル基(メチル基等)である。
〜X、Y〜Yはさらに別の置換基で置換されていてもよい。
1〜mは1〜14の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり特に好ましくは2である。
1〜nは0〜13の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり特に好ましくは0である。
【0036】
本発明のカゴ型構造を有するモノマーは好ましくは上記式(II)、(III)、(V)又は(VI)で表される化合物であり、より好ましくは上記式(II)又は(III)で表される化合物であり、特に好ましくは上記式(III)で表される化合物である。
【0037】
本発明のカゴ型構造を有する化合物は2つ以上を併用しても良く、また、本発明のカゴ型構造を有するモノマーを2種以上共重合しても良い。
本発明のカゴ型構造を有するモノマーの分子量は、好ましくは160〜1500、より好ましくは160〜1100、更に好ましくは160〜800、特に好ましくは160〜220である。
【0038】
本発明のカゴ構造を有する化合物は有機溶剤へ十分な溶解性を有することが好ましい。溶解度は25℃でシクロヘキサノンまたはアニソールに3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0039】
本発明のカゴ型構造を有する化合物としては、例えば特開平11−322929号、特開2003−12802号、特開2004−18593号記載のポリベンゾオキサゾール、特開2001−2899号に記載のキノリン樹脂、特表2003−530464号、特
表2004−535497号、特表2004−504424号、特表2004−504455号、特表2005−501131号、特表2005−516382号、特表2005−514479号、特表2005−522528号、特開2000−100808号、米国特許6509415号に記載のポリアリール樹脂、特開平11−214382号、特開2001−332542号、特開2003−252982号、特開2003−292878号、特開2004−2787号、特開2004−67877号、特開2004−59444号に記載のポリアダマンタン、特開2003−252992号、特開2004−26850号に記載のポリイミド等が挙げられる。
【0040】
以下に本発明で使用できるカゴ構造を有するモノマーの具体例を記載するが、本発明はこれらに限定はされない。
【0041】
【化3】



【0042】
【化4】



【0043】
【化5】

【0044】
【化6】



【0045】
【化7】



【0046】
【化8】

【0047】
重合反応で使用する溶媒は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、,t−ブチルベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中のモノマーの濃度は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0048】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0049】
本発明のカゴ構造を有する化合物は、例えば市販のジアマンタンを原料として、臭化アルミニウム触媒存在下または非存在下で臭素と反応させて臭素原子を所望の位置に導入、続けて臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化してエチニル基に変換することで合成することができる。具体的にはマクロモルキュールズ (Macromolecules), 1991年,第24巻,5266〜5268頁、1995年,第28巻,5554〜5560頁、ジャーナル・オブ・オーガニックケミストリー(Journal of Organic Chemistry),
39, 2995-3003 (1974) 等に記載された方法に準じて合成することが出来る。
また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウム等でアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
【0050】
本発明の重合体はシクロヘキサノンもしくはアニソールに25℃で3質量%以上溶解することが好ましい。
塗布液の保存経時で不溶物の析出を防止する観点から、重合体の溶解度は高いほうが好ましい。本発明の重合体はさらに好ましくはシクロヘキサノンもしくはアニソールに25℃で7質量%以上溶解することがより好ましく、10質量%以上溶解することが特に好ましい。
【0051】
本発明の重合体は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
本発明に用いられる塗布溶剤は特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール、1−メトキシー2−プロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
より好ましい塗布溶剤は、1−メトキシー2−プロパノール、プロパノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンであり、特に好ましくは1−メトキシー2−プロパノール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、t−ブチルベンゼン、アニソールである。
本発明の膜形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%である。
【0053】
本発明の膜形成用組成物には不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。膜形成用組成物の金属濃度はICP−MS法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は好ましくは30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。また、遷移金属に関しては酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量がより少ないほうがよく、好ましくは10p
pm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
【0054】
膜形成用組成物の金属濃度は本発明の膜形成用組成物を用いて得た膜に対して全反射蛍光X線測定を行うことによっても評価できる。
X線源としてW線を用いた場合、金属元素としてK、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pdが観測可能であり、それぞれ100×1010atom・cm−2以下が好ましく、より好ましくは50×1010atom・cm−2以下、特に好ましくは10×1010atom・cm−2以下である。
【0055】
更に、本発明の膜形成用組成物には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
【0056】
本発明にいかなるコロイド状シリカを使用してもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒もしくは水に分散した分散液であり、通常、平均粒径5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が5〜40質量%程度のものである。
【0057】
本発明にいかなる界面活性剤を使用してもよいが、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明で使用する界面活性剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0058】
本発明で使用する界面活性剤の添加量は、膜形成塗布液の全量に対して0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0059】
本発明において、シリコン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に使用するシリコン系界面活性剤としては、いかなるシリコン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることが更に好ましい。
【0060】
【化9】

【0061】
式中Rは水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜5)であり、xは1〜20の整数であり、m、nはそれぞれ独立に2〜100の整数である。複数のx及びRは同じでも異なっていてもよい。
【0062】
本発明に使用するシリコン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ
・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0063】
本発明に使用するノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0064】
本発明に使用する含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0065】
本発明に使用するアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0066】
本発明にいかなるシランカップリング剤を使用してもよいが、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本発明で使用するシランカップリング剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。
【0067】
本発明にはいかなる密着促進剤を使用してもよいが、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾ
ール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。官能性シランカップリング剤が密着促進剤として好ましい。密着促進剤の好ましい使用量は、全固形分100質量部に対して10質量部以下、特に0.05〜5質量部であることが好ましい。
【0068】
本発明の膜形成用組成物には膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して、膜を多孔質化し、低誘電率化を図ることができる。
空孔形成剤となる添加剤としての空孔形成因子としては特に限定はされないが、非金属化合物が好適に用いられ、膜形成用塗布液で使用される溶剤との溶解性、本発明重合体との相溶性を同時に満たすことが必要である。またこの空孔形成剤の沸点若しくは分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。分子量としては、200〜50000であることが好ましく、より好ましくは300〜10000、特に好ましくは400〜5000である。添加量は膜を形成する重合体に対して、質量%で好ましくは0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1%〜20%である。また、空孔形成因子として、重合体の中に分解性基を含んでいても良く、その分解温度は好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃であると良い。分解性基の含有率は膜を形成する重合体に対して、モル%で0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1〜20%である。
【0069】
空孔形成剤として使用できるポリマーとしては、例えば、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ハロゲン化ポリビニル芳香族化合物など)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドなど)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリメタクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)またはポリメタクリル酸、ポリアクリレート(ポリメチルアクリレートなど)およびポリアクリル酸、ポリジエン(ポリブタジエンおよびポリイソプレンなど)、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、およびアミンキャップドアルキレンオキシドなどが挙げられる。
その他、ポリフェニレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピリジン、ポリカプロラクトン等であってもよい。
特にポリスチレンは、空孔形成剤として好適に使用できる。ポリスチレンはとしては、たとえば、アニオン性重合ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、未置換および置換ポリスチレン(たとえば、ポリ(α−メチルスチレン))が挙げられ、未置換ポリスチレンが好ましい。
熱可塑性空孔形成用ポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸およびポリビニルピリジン等が挙げられる。
【0070】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去、乾燥することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D-スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(
東京応化工業製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1300rpm程度の回転速度が好ましい。
また組成物溶液の吐出方法においては、回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出、静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、αシリーズ(東京エレクトロン製)等が好ましく使用できる。
【0071】
本発明の重合体は基板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化(焼成)させることが特に好ましい。例えば重合体中に残存する炭素三重結合の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行っても良い。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合の重合反応を起こして硬化(焼成)させても良い。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは50keV以下が好ましく、より好ましくは30keV以下、特に好ましくは20keV以下である。電子線の総ドーズ量は好ましくは5μC/cm 2以下 、より好ましくは2μC/cm 2以下 、特に好ましくは1μC/cm 2以下である。電子線を照射する際の基板温度は0〜450℃が好ましく、より好ましくは0〜400℃、特に好ましくは0〜350℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基盤周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明における電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm−2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基盤周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0072】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層
があっても良く、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)での剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けても良い。
【0073】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、さらにはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0074】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMP(化学的機械的研磨)をすることができる。CMPスラリー(薬液)としては、市販のスラリー(例えば、フジミ製、ロデールニッタ製、JSR製、日立化成製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製、荏原製作所製等)を適宜使用することができる。さらにCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0075】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
さらに、別の用途として本発明の膜に電子ドナーまたはアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することも出来る。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0077】
<実施例1>
マクロモルキュールズ (Macromolecules), 1991年,第24巻,5266〜5268頁に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成し、さらに昇華精製を実施した。次に、4,9−ジエチニルジアマンタン2gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.22g、t−ブチルベンゼン10mlを窒素気流下で内温150℃で7時間攪拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール60mlに添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで十分に洗浄した。重量平均分子量約1.5万の重合体(A)を0.8g得た。重合体(A)の1H−NMRのチャートを示す。
重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で15質量%以上であった。
重合体(A)1.0gをシクロヘキサノン10gに完全に溶解させて塗布液(組成物)を調製した。この液を0.05ミクロン孔のポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、この液を、ブルーム処理し、洗浄により異物管理をしたガラス瓶に入れた。瓶より取り出したこの溶液を、0.1ミクロンのナイロン製フィルターでろ過した後シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
【0078】
膜のハロゲン含量(Br及びClの合計量)を全反射蛍光X線(タングステン線源、40kV、40mA)を用いて測定したところ、併せて2×1010atom/cm2であった。膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.42であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、8.0GPaであった。測定温度はいずれも25℃であり、以降の実施例、比較例及び参考例においても同様である。
本サンプルを400℃で10時間加熱処理したところ、膜の比誘電率は2.42であった。また、上記ガラス瓶で23℃で2ヶ月で保存した塗布液を用いで同様な実験を実施したところ、同じ結果が得られた。
【0079】
<実施例2>
昇華精製を実施した4,9−ジエチニルジアマンタン2gと1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(V−40、和光純薬工業製)、アニソール10mlを窒素気流下で内温100℃で8時間攪拌、重合した。反応液を室温にした後、メタノール100mlに添加した。析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。さらに固体をTHF10mlに溶解し、メタノール100mlに添加した。析出した固体をろ過して集め、メタノールで洗浄し、乾燥して重量平均分子量約1万の重合体(B)を1.0g得た。
重合体(B)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で15質量%以上であった。
【0080】
重合体(B)1.0gをシクロヘキサノン10gに完全に溶解させて塗布液(組成物)を調製し、洗浄により異物管理をしたアイセロ化学製ポリ瓶およびコダマ樹脂工業製ポリ瓶にそれぞれ入れ、このそれぞれの溶液を0.1ミクロン孔のポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、いずれも膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
【0081】
膜のハロゲン含量を全反射蛍光X線(タングステン線源、40kV、40mA)を用いて測定したところ、併せて1×1010atom/cm2であった。膜の比誘電率は、いずれも2.43であった。また、ヤング率はいずれも7.8GPaであった。このサンプルをそれぞれ400℃10時間の加熱を窒素下において実施したところ、比誘電率はそれぞれ2.43であった。また、それぞれの液を23℃で3ヶ月保存した後、同様の実験を実施したところ同等な結果が得られた。
【0082】
<実施例3>
4,9−ジエチニルジアマンタンの代わりに昇華精製を実施した1,6−ジエチニルジアマンタンを使用した以外は実施例1と同じ方法で重合体(C)を0.9g合成した。GPC測定の結果、重量平均分子量は約2万であった。
重合体(C)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で15質量%以上であった。
重合体のシクロヘキサノンの10質量%溶液を調製して0.05ミクロン孔のポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、ATMI社製ポリテトラフルオロエチレン内装パックに入れた。この液を、0.1ミクロン孔のポリテトラフルオロエチレン製フィルターを通して、シリコンウェハー上にスピンコートし、塗膜を窒素置換したファーネス中で400℃で60分間焼成した。膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
【0083】
膜のハロゲン含量を全反射蛍光X線(タングステン線源、40kV、40mA)を用いて測定したところ、併せて1×1010atom/cm2であった。膜の比誘電率は、2.43で
あった。得られた膜の比誘電率は2.37であった。また、ヤング率は7.5GPaであった。このサンプルをさらに400℃10時間加熱したところ、比誘電率は2.37であった。さらに上記内装パックにて3ヶ月保存した液を用いて、同様な実験を実施したところ、同様な結果を得られた。
【0084】
なお,得られた膜の応力を、KLAテンコール製FLX2320にて測定したところ、35Mpa(tensile)であった。膜の微少硬度をナノインデンターSA2により測定したところ、1.0GPaであった。得られた膜の直径方向に25等分した各点の膜厚、屈折率(約1.5)を測定し、膜厚の変動係数を求めたところ、それぞれ、0.6%、0.3%であった。
膜の密度、表面粗さ、CTEを薄膜反射X線により求めたところ、それぞれ、0.99g/cm3、0.8nm、50ppm/℃であった。得られた膜の脱ガス量を測定したところ、成膜直後の膜と、23℃40%で3日間放置した後の膜で、400℃までの水の脱ガス量において同じであった。また得られた膜の空孔について、窒素ガスのガス吸着測定をしたところ、空孔径1nm以下、空孔率10%以下の結果を得た。さらにえら得た膜の金属含量を全反射蛍光X線で測定したところ、Ka、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znについていずれも検出限界以下であった。
また、膜の硬化において、焼成条件を、200℃60秒の後、250℃60秒とした場合、110℃60秒の後、200℃60秒とし、さらに後に250℃60秒とした場合にいずれも物性に変化はなかった。さらに焼成条件を380℃1時間とした場合、赤外線炉にて400℃1時間焼成した場合、焼成時に酸素濃度を30ppmとした場合のいずれ膜物性値に変化はなかった。さらに400℃1時間焼成を200nm以下の波長の光を照射しながら350℃15分焼成に変更した場合、400℃1時間の焼成後10秒で室温に戻した場合、400℃まで10秒で昇温してから1時間焼成した場合のいずれも物性値に変化がなかった。
【0085】
<比較例1>
米国特許5,017,734号の実施例11に記載の方法に準じて4,9−ジエチニルジアマンタンの重合体を合成した。得られた重合体はシクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、ジクロロベンゼン等の溶剤に不溶であり、塗布可能な塗布液は得られなかった。
【0086】
<参考例1>
昇華精製していない4,9−ジエチニルジアマンタンを使用した他は実施例1と同じ方法で重合体(D)を0.7g合成した。GPC測定の結果、重量平均分子量は約2万であった。
重合体(D)を用いて、実施例1の方法に準じて膜を作成した。膜のハロゲン含量を全反射蛍光X線(タングステン線源、40kV、40mA)を用いて測定したところ、併せて120×1010atom/cm2であった。膜の比誘電率は、2.43であった。ヤング率は8.0GPa、であった。本サンプルを400℃で10時間加熱したところ、膜の表面に若干のブツが観測され、膜の比誘電率は2.50であった。
【0087】
<参考例2>
t−ブチルベンゼンの代わりに1,2−ジクロロベンゼンを重合溶媒として使用したこと以外は実施例1と同じ方法で重合体(D)を0.7g合成した。GPC測定の結果、重量平均分子量は約2万であった。膜のハロゲン含量を全反射蛍光X線(タングステン線源、40kV、40mA)を用いて測定したところ、併せて200×1010atom/cm2であった。
重合体(D)を用いて、実施例1の方法に準じて膜を作成した。得られた膜の比誘電率は2.42、ヤング率は7.8GPaであった。本サンプルを400℃で10時間加熱処
理したところ、膜の表面に微少なブツが観察され、膜の比誘電率は2.60であった。
【0088】
本発明の重合体は溶剤への溶解性が高くスピンコートによる膜形成が容易であり、得られた絶縁膜はブツの発生がなく、比誘電率、ヤング率が優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゴ型構造を有する化合物を含有する膜形成用組成物であって、該組成物から塗布成膜によって得られる膜のハロゲン含量が100×1010atom/cm2以下であることを特徴とする膜形成用組成物。
【請求項2】
カゴ型構造を有する化合物が、カゴ型構造を有するモノマーの重合体であることを特徴とする請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
カゴ型構造を有するモノマーが炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
カゴ型構造がアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタンから選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
カゴ型構造を有するモノマーが下記式(I)〜(VI)の群から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【化1】



式(I)〜(VI)中、
〜Xは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基等を表す。
〜Yは、アルキル基、アリール基またはシリル基を表す。
1〜mは1〜14の整数を表す。
1〜nは0〜13の整数を表す。
【請求項6】
カゴ型構造を有する化合物が、カゴ型構造を有するモノマーを遷移金属触媒存在下またはラジカル開始剤存在下で重合して得られたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
カゴ型構造を有する化合物がシクロヘキサノンまたはアニソールに25℃で3質量%以上溶解することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項8】
有機溶剤を含む請求項1〜7のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて膜を形成し、焼成することを特徴とするハロゲン含量が100×1010atom/cm2以下である絶縁膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成したハロゲン含量が100×1010atom/cm2以下である絶縁膜。
【請求項11】
請求項10に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2007−161782(P2007−161782A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356811(P2005−356811)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】