説明

自動二輪車

【課題】燃料の消費を抑制することのできる自動二輪車を実現する。
【解決手段】自動二輪車は、エンジン29と、後輪26と、エンジン29から後輪26への回転力をエンジン29の回転速度に応じて断続する遠心式クラッチ41と、エンジン29の回転速度を規制するブレーキロックスイッチ802aと、を備えている。前記自動二輪車では、ブレーキロックスイッチ802aが入力されていないときは、エンジン29の始動を禁止するエンジン始動禁止制御Prを実行し、ブレーキロックスイッチ802aが入力されているときは、遠心式クラッチ41が接続しないように、エンジン29の回転速度を規制するエンジン回転速度規制制御Rsを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの始動に際し、エンジンの始動を規制するスイッチを有した自動二輪車が、下記特許文献1に記載されている。下記特許文献1の自動二輪車は、エンジンの始動を規制する構成として、ブレーキレバーと、スイッチケースと、スイングプレートと、プッシュロッドと、プッシュロッド作動に対応するスイッチと、を備えている。前記スイングプレートは、前記ブレーキレバーにより作動する。前記プッシュロッドは、前記スイングプレートにより作動する。前記スイッチは、前記プッシュロッドにより作動する。
【0003】
具体的な前記構成の作動として、まず、ライダーが前記ブレーキレバーを握る。前記ブレーキレバーの作動に応じて、前記スイングプレートが定位置の回転中心から所定の回転により、前記プッシュロッドを押す。これにより、前記プッシュロッドが前記スイッチを作動させ、前記スイッチが入力状態となる。前記スイッチが入力状態となると、自動二輪車は、エンジンの始動が可能な状態となる。
【特許文献1】特開平10−297364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記スイッチは、エンジンの始動後と自動二輪車の発進前において、エンジン回転数が規制されているものではないため、いわゆる空吹かしがライダーにより行われると、無駄に燃料を消費してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料の消費を抑制することのできる自動二輪車を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における自動二輪車は、エンジンと、前記エンジンの回転力により駆動する駆動輪と、前記エンジンから前記駆動輪への回転力を前記エンジンの回転速度に応じて断続する遠心式クラッチと、前記エンジンの回転速度を規制するスイッチと、前記スイッチが入力されていないときは、前記エンジンの始動を禁止するエンジン始動禁止部と、前記スイッチが入力されているときは、前記遠心式クラッチが接続しないように前記エンジンの回転速度を規制するエンジン回転速度規制部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、自動二輪車において、燃料の消費を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
《実施形態》
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る鞍乗型車両は自動二輪車10である。自動二輪車10は、骨格をなす車体フレーム11と、乗員が着座するシート16とを備えている。この自動二輪車10は、いわゆるモペット型の自動二輪車である。すなわち、自動二輪車10は、シート16の前方に下方に窪んだ側面視凹状空間17が形成され、シート16に着座した乗員が車体フレーム11を跨いで乗車するものである。なお、ここでいう「モペット型」は、単に車両の形状上の種類を表しているに過ぎず、車両の最高速度や排気量等を限定するものではなく、車両の大小等も何ら限定するものではない。
【0009】
また、本発明に係る鞍乗型車両は、モペット型の自動二輪車に限らず、シートの前方に燃料タンクが配置されているいわゆるモーターサイクル型等の他の形式の自動二輪車等であってもよい。
【0010】
以下の説明では、前後左右の方向は、シート16に着座した乗員から見た方向を言うものとする。車体フレーム11は、ステアリングヘッドパイプ12と、ステアリングヘッドパイプ12から後方斜め下向きに延びる一本のメインフレーム13と、メインフレーム13の中途部から後方斜め上向きに延びる左右のシートレール14L,14Rと、メインフレーム13の後端部とシートレール14L,14Rの中途部とに接続された左右のシートピラーチューブ15L,15Rとを備えている。
【0011】
車体フレーム11の上方及び左右の側方は、車体カバー21によって覆われている。車体カバー21の上側かつシート16の前方には、下方に窪んだ側面視凹状空間17が区画されている。また、車体カバー21の下側には、メインフレーム13の通り道となるセンタートンネル11aが区画されている。
【0012】
ステアリングヘッドパイプ12には、フロントフォーク18を介して前輪19が支持されている。シートレール14L,14Rの上には、燃料タンク20及びシート16が支持されている。シート16は、燃料タンク20の上方からシートレール14L,14Rの後端部に向かって延びている。燃料タンク20は、シートレール14L,14Rの前半部の上方に配置され、車体カバー21及びシート16によって覆われている。
【0013】
メインフレーム13の中途部には、下向きに突出した左右一対の第1エンジンブラケット22L,22Rが設けられている。メインフレーム13の後端部には、それぞれ左右一対の第2エンジンブラケット23L,23R及びリヤアームブラケット24L,24Rが設けられている。なお、ここではメインフレーム13等に設けられたブラケット、具体的には、第1エンジンブラケット22L,22R、第2エンジンブラケット23L,23R、及びリヤアームブラケット24L,24R等は、車体フレーム11の一部をなすものとする。
【0014】
図3に示すように、リヤアーム25は、左右一対のアーム部25aと、これら両アーム部25aを連結する連結部25bとを備えている。各アーム部25aの前端には、ピボット軸38が挿通されるピボット部25cが設けられている。
【0015】
リヤアームブラケット24L,24Rは、メインフレーム13の後端部から下向きに突出している。図4に示すように、これらリヤアームブラケット24L,24Rにはパイプ24aが設けられ、ピボット軸38は、このパイプ24aと左右のピボット部25cとを貫通している。なお、本実施形態では、ピボット軸38は長尺ボルトで形成されており、ピボット軸38の左端はナット38bによって固定されている。これにより、ピボット軸38にリヤアーム25の前端部が揺動自在に支持されている。リヤアーム25の後端部には後輪26が支持されている。リヤアーム25の後半部は、クッションユニット27を介して車体フレーム11に懸架されている。
【0016】
図7に示すように、第2エンジンブラケット23L,23Rは、メインフレーム13の後端部から下向きに突出している。これら左右の第2エンジンブラケット23L,23Rは、車幅方向に間隔を空けて向かい合っている。
【0017】
図1に示すように、車体フレーム11には、後輪26を駆動するエンジンユニット28が支持されている。具体的には、図6に示すように、エンジンユニット28はクランクケース35とシリンダ43とシリンダヘッド44とを備えている。クランクケース35は第1及び第2のエンジンマウント部36,37を有している。第1エンジンマウント部36は、クランクケース35の前端部の上側から上向きに突出し、第1エンジンブラケット22L,22Rに支持されている。第2エンジンマウント部37は、クランクケース35の後端部の上側から後方斜め上向きに突出し、第2エンジンブラケット23L,23Rに支持されている(図7も参照)。このため、クランクケース35は、メインフレーム13に吊り下げられた状態で支持されている。
【0018】
詳細は後述するように、エンジンユニット28は、エンジン29とベルト式無段変速機(以下、CVTという)30とを備えている(図8参照)。エンジン29の形式は何ら限定されないが、本実施形態では、エンジン29は4サイクル単気筒エンジンによって構成されている。
【0019】
図1に示すように、自動二輪車10は、前輪19の上方及び後方を覆うフロントフェンダー31と、後輪26の後方斜め上側を覆うリヤフェンダー32とを備えている。
【0020】
自動二輪車10は、前述の車体カバー21に加えて、フロントカウル33と、左右のレッグシールド34L,34Rとを備えている。レッグシールド34L,34Rは運転者の脚部の前方を覆うカバー部材であり、側方から見て斜め上下方向に延びている。
【0021】
図3に示すように、レッグシールド34L,34Rの水平断面形状は、後方に向かって開いた凹形状に形成されている。言い換えると、レッグシールド34L,34Rの横断面形状は、前方に向かって先細りの略C字状の湾曲形状に形成されている。
【0022】
図2および図4に示すように、リヤアーム25の右側のアーム部25aにおける前側部分25fの上方には、エアチャンバ154が配置されている。なお、ここでアーム部25aの前側部分25fとは、アーム部25aの前後方向中間位置よりも前側の部分のことをいう。
【0023】
エアチャンバ154には吸気ダクト153が接続されている。吸気ダクト153のエアチャンバ154側の一部も、リヤアーム25のアーム部25aの前側部分25fの上方に配置されている。ただし、吸気ダクト153はアーム部25aの前側部分25fの上方から外れた位置にあってもよい。また、吸気ダクト153の大部分がアーム部25aの前側部分25fの上方に配置されていてもよい。
【0024】
図2に示すように、エアチャンバ154の上部には、吸入ダクト156が設けられている。吸入ダクト156は曲がり管からなり、吸入ダクト156の吸気口157は前方斜め下向きに開口している。ただし、吸気口157の開口方向は何ら限定されない。吸気口157は前方に開口していてもよく、前方斜め上向きに開口していてもよく、その他の方向に開口していてもよい。エアチャンバ154の内部には、フィルタ155が収納されている。
【0025】
図1に示すように、エアチャンバ154の上部の右側方及び吸入ダクト156の右側方は、カバー160で覆われている。なお、このカバー160は、メインフレーム13及びシートピラーチューブ15Rの一部を側方から覆っているが、シートレール14L,14Rを覆っている車体カバー21とは別個のものである。ただし、車両のスリム化に反しない限り、カバー160を車体カバー21と一体化することも可能である。すなわち、カバー160は車体カバー21の一部であってもよい。
【0026】
図3に示すように、エンジンユニット28の左側及び右側には、ゴム等からなるフットレスト85L,85Rが配置されている。フットレスト85L,85Rは、運転者の足を支持する足載せ部材である。左右のフットレスト85L,85Rは、金属製の連結棒87と、この連結棒87に固定された取り付け板88(図5及び図6参照)とを介して、エンジンユニット28のクランクケース35に支持されている。
【0027】
連結棒87は、クランクケース35の後半部の下方を通って車幅方向に延びている。連結棒87の左端は、クランクケース35の左側に突出し、左側のフットレスト85Lを支持している。連結棒87の右端は、変速機ケース53の右側に突出し、右側のフットレスト85Rを支持している。図5に示すように、取り付け板88は金属板をプレス成形したものであり、取り付け板88の前後方向の中間部には、連結棒87を嵌め込む凹部89が形成されている。凹部89は、連結棒87に下方から突き合わされるとともに、連結棒87の外周面に溶接されている。
【0028】
取り付け板88は、連結棒87の前方に張り出すフランジ状の第1取付部90と、連結棒87の後方に張り出すフランジ状の第2取付部91とを有している。第1取付部90及び第2取付部91は、連結棒87の軸方向(左右方向)に延びるとともに、クランクケース35の後半部の下面83と向かい合っている。
【0029】
クランクケース35の後半部の下面83は、4つ(図5では2つのみ図示)のボス部92を有している。これらボス部92は、クランクケース35の下面83から下向きに突出しており、このクランクケース35に一体に形成されている。各ボス部92には、ボルト孔(図示せず)が形成されている。フットレスト85L,85Rの取り付け板88にも、これらボス部92に対応する位置にボルト孔(図示せず)が形成されている。そして、取り付け板88とボス部92とは、ボルト99によって締結されている。このように、フットレスト85L,85Rは、連結棒87及び取り付け板88を介して、ボルト99によってクランクケース35に固定されている。
【0030】
次に、エンジンユニット28の内部構成を説明する。図8に示すように、エンジンユニット28は、エンジン29と、CVT30と、遠心式クラッチ41と、減速機構42とを備えている。
【0031】
エンジン29は、クランクケース35と、クランクケース35に接続されたシリンダ43と、シリンダ43に接続されたシリンダヘッド44とを備えている。クランクケース35は、分割された2つのケースブロック、すなわち、左側に位置する第1のケースブロック35aと、右側に位置する第2のケースブロック35bとを有している。第1ケースブロック35aと第2ケースブロック35bとは、車幅方向に沿って互いに突き合わされている。
【0032】
クランクケース35内には、クランク軸46が収容されている。クランク軸46は、車幅方向に延びており、水平に配置されている。クランク軸46は、軸受47を介して第1ケースブロック35aに支持され、軸受48を介して第2ケースブロック35bに支持されている。
【0033】
シリンダ43内には、ピストン50が摺動可能に挿入されている。このピストン50には、コンロッド51の一端部が連結されている。クランク軸46の左側クランクアーム46aと右側クランクアーム46bとの間には、クランクピン59が設けられている。コンロッド51の他端部は、クランクピン59に連結されている。
【0034】
シリンダヘッド44には、凹部44aと、凹部44aに連通する図示しない吸気ポート及び排気ポートとが形成されている。シリンダヘッド44の凹部44aの内部には、点火プラグ55が挿入されている。図5に示すように、前記吸気ポートには吸気管52aが接続され、前記排気ポートには排気管52が接続されている。図1及び図3に示すように、排気管52はシリンダヘッド44から後方かつ右斜め下向きに延びた後、エンジンユニット28の変速機ケース53の下方を通ってさらに後方に延び、後輪26の右側方に配置されたマフラ54に接続されている。
【0035】
図8に示すように、シリンダ43内の左側部には、クランクケース35の内部とシリンダヘッド44の内部とをつなぐカムチェーン室56が形成されている。このカムチェーン室56には、タイミングチェーン57が配設されている。タイミングチェーン57は、クランク軸46とカム軸58とに巻き掛けられている。カム軸58は、クランク軸46の回転に従って回転し、図示しない吸気バルブ及び排気バルブを開閉させる。
【0036】
第1ケースブロック35aの前半部の左側には、発電機63を収容する発電機ケース66が着脱自在に取り付けられている。第2ケースブロック35bの右側には、CVT30を収容する変速機ケース53が取り付けられている。
【0037】
第2ケースブロック35bの後半部の右側には開口が形成され、この開口はクラッチカバー60によって塞がれている。クラッチカバー60は、ボルト61(図9参照)により、第2ケースブロック35bに対して着脱可能に固定されている。
【0038】
変速機ケース53は、クランクケース35から独立して形成されており、CVT30の車幅方向内側(左側)を覆う内側ケース53aと、CVT30の車幅方向外側(右側)を覆う外側ケース53bとから構成されている。内側ケース53aはクランクケース35の右側に取り付けられ、外側ケース53bは内側ケース53aの右側に取り付けられている。これら内側ケース53aと外側ケース53bとの内部には、CVT30を収容するベルト室67が形成されている。
【0039】
図8に示すように、クランク軸46の右側端部は、第2ケースブロック35b及び内側ケース53aを貫通し、ベルト室67にまで延びている。このクランク軸46の右側端部には、CVT30のプライマリシーブ71が嵌め込まれている。そのため、プライマリシーブ71は、クランク軸46の回転に従って回転する。このクランク軸46の右側部分(厳密には、軸受48よりも右側の部分)は、プライマリシーブ軸46cを形成している。
【0040】
一方、クランク軸46の左側端部は、第1ケースブロック35aを貫通し、発電機ケース66内に延びている。このクランク軸46の左側端部には、発電機63が取り付けられている。発電機63は、ステータ64と、ステータ64に対向するロータ65とを備えている。ロータ65は、クランク軸46と共に回転するスリーブ74に固定されている。ステータ64は、発電機ケース66に固定されている。
【0041】
クランクケース35内の後半部には、クランク軸46と平行にセカンダリシーブ軸62が配置されている。図9に示すように、セカンダリシーブ軸62の中央部の右側部分は、軸受75を介してクラッチカバー60に支持されている。セカンダリシーブ軸62の左側部分は、軸受76を介して第2ケースブロック35bの左端部に支持されている。セカンダリシーブ軸62の右側端部は、第2ケースブロック35b及びクラッチカバー60を貫通し、ベルト室67にまで延びている。このセカンダリシーブ軸62の右側端部には、CVT30のセカンダリシーブ72が連結されている。
【0042】
図8に示すように、CVT30は、プライマリシーブ71と、セカンダリシーブ72と、これらプライマリシーブ71とセカンダリシーブ72とに巻き掛けられたVベルト73とを備えている。前述したように、プライマリシーブ71はクランク軸46の右側部に取り付けられている。セカンダリシーブ72はセカンダリシーブ軸62の右側部に連結されている。
【0043】
プライマリシーブ71は、車幅方向の外側に位置する固定シーブ半体71aと、車幅方向の内側に位置し、固定シーブ半体71aに対向する可動シーブ半体71bとを備えている。固定シーブ半体71aは、プライマリシーブ軸46cの右端部に固定されており、プライマリシーブ軸46cと共に回転する。可動シーブ半体71bは、固定シーブ半体71aの左側に配置されており、プライマリシーブ軸46cにスライド自在に取り付けられている。したがって、可動シーブ半体71bは、プライマリシーブ軸46cと共に回転し、かつ、プライマリシーブ軸46cの軸方向にスライド自在である。固定シーブ半体71aと可動シーブ半体71bとの間には、ベルト溝が形成されている。可動シーブ半体71bの左側部分にはカム面111が形成され、カム面111の左側にはカムプレート112が配設されている。可動シーブ半体71bのカム面111とカムプレート112との間には、ローラウエイト113が配設されている。
【0044】
セカンダリシーブ72は、車幅方向の内側に位置する固定シーブ半体72aと、車幅方向の外側に位置し、固定シーブ半体72aに対向する可動シーブ半体72bとを備えている。可動シーブ半体72bは、セカンダリシーブ軸62の右端部に取り付けられている。可動シーブ半体72bは、セカンダリシーブ軸62と共に回転し、かつ、セカンダリシーブ軸62の軸方向にスライド自在である。セカンダリシーブ軸62の右端には圧縮コイルスプリング114が設けられており、可動シーブ半体72bは圧縮コイルスプリング114から左向きの付勢力を受けている。固定シーブ半体72aの軸心部は円筒状のスライドカラーとなっており、セカンダリシーブ軸62にスプライン嵌合されている。
【0045】
セカンダリシーブ72の可動シーブ半体72bの右側部分には、送風用の複数の羽根158が形成されている。これらの羽根158は、吸気ダクト153からベルト室67に空気を導き、また、ベルト室67内の空気を外部に搬送する。本実施形態では、羽根158は、側面視において、可動シーブ半体72bの中心部から径方向外側に螺旋状に延びるように形成されている。
【0046】
CVT30では、ローラウエイト113がプライマリシーブ71の可動シーブ半体71bを右向きに押す力と、圧縮コイルスプリング114がセカンダリシーブ72の可動シーブ半体72bを左向きに押す力との大小関係によって、減速比が決定される。
【0047】
すなわち、プライマリシーブ軸46cの回転数が上昇すると、ローラウエイト113が遠心力を受けて径方向外側に移動し、可動シーブ半体71bを右向きに押す。すると、可動シーブ半体71bは右側に移動し、プライマリシーブ71のベルト巻き掛け径が大きくなる。これに伴い、セカンダリシーブ72のベルト巻き掛け径が小さくなり、セカンダリシーブ72の可動シーブ半体72bは、圧縮コイルスプリング114の付勢力に対抗して右側に移動する。この結果、プライマリシーブ71におけるVベルト73の巻き掛け径が大きくなる一方、セカンダリシーブ72における巻き掛け径が小さくなり、減速比は小さくなる。
【0048】
一方、プライマリシーブ軸46cの回転数が低下すると、ローラウエイト113の遠心力が小さくなるので、ローラウエイト113は可動シーブ半体71bのカム面111及びカムプレート112に沿って径方向内側に移動する。そのため、ローラウエイト113が可動シーブ半体71bを右向きに押す力が小さくなる。すると、圧縮コイルスプリング114の付勢力が相対的に前記力を上回り、セカンダリシーブ72の可動シーブ半体72bは左側に移動し、それに応じてプライマリシーブ71の可動シーブ半体71bも左側に移動する。その結果、プライマリシーブ71におけるベルト巻き掛け径が小さくなる一方、セカンダリシーブ72におけるベルト巻き掛け径が大きくなり、減速比は大きくなる。
【0049】
図8に示すように、外側ケース53bにおけるセカンダリシーブ軸62の先端側には、車幅方向外側(右側)に膨出する碗状の膨出部94が形成されている。図2に示すように、膨出部94の後方斜め上側には接続管152が形成されている。この接続管152は、外側ケース53bと一体化されている。接続管152には、吸気ダクト153を介してエアチャンバ154が接続されている。なお、接続管152と吸気ダクト153との接続態様は何ら限定されない。図8に示すように、本実施形態では、接続管152と吸気ダクト153とは、バンド135によって固定されている。
【0050】
図8に示すように、接続管152の右端と膨出部94の右端とは、車幅方向に関して互いにほぼ揃った位置にある。また、図3に示すように、エアチャンバ154の右端も変速機ケース53の膨出部94の右端とほぼ揃った位置にある。そのため、接続管152、吸気ダクト153及びエアチャンバ154は、膨出部94よりも外側(右側)に出っ張ってはいない。すなわち、吸気ダクト153及びエアチャンバ154は、変速機ケース53よりも外側に出っ張ってはいない。したがって、吸気ダクト153及びエアチャンバ154を設けているにも拘わらず、自動二輪車10の最大幅は実質的に増加しておらず、車両のスリム化が図られている。
【0051】
図8に示すように、内側ケース53aの周縁部の左側にはシール溝68aが形成され、このシール溝68aに第2ケースブロック35bの右側の周縁部が嵌め込まれている。なお、シール溝68a内における内側ケース53aと第2ケースブロック35bとの間には、Oリング68が挿入されている。また、内側ケース53aの周縁部の右側にもシール溝69aが形成され、このシール溝69aには外側ケース53bの周縁部が嵌め込まれている。シール溝69a内における内側ケース53aと外側ケース53bとの間には、Oリング69が挿入されている。外側ケース53bと第2ケースブロック35bとは、それらの間に内側ケース53aを挟み込んだ状態でボルト70によって締結されている。
【0052】
図10に示すように、内側ケース53aの前半部121は左側に膨出する碗状に形成され、内側ケース53aの後半部122は右側に膨出する碗状に形成されている。前半部121には、CVT30のプライマリシーブ軸46cを挿通させる孔121aが形成されている。後半部122には、CVT30のセカンダリシーブ軸62を挿通させる孔122aが形成されている。なお、図10では、内側ケース53aと第2ケースブロック35bとの間に介在するクラッチカバー60(図8参照)の図示は省略している。
【0053】
内側ケース53aには、通風口123が設けられている。本実施形態では、通風口123は円形状に形成され、内側ケース53aの上下方向中間位置よりも上側に3個形成されている。ただし、通風口123の形状は何ら限定されない。また、通風口123の位置は、必ずしも内側ケース53aの上側部分に限られない。本実施形態では、通風口123は、内側ケース53aの前半部121及び後半部122のそれぞれに設けられている。ただし、通風口123は、前半部121及び後半部122のいずれか一方のみに形成されていてもよい。通風口123の個数も特に限定される訳ではない。
【0054】
第2ケースブロック35bの右側部分の下側には、複数の通風口124が形成されている。詳しくは、第2ケースブロック35bは、右側方に向かって立設された周縁部125を備えており、この周縁部125は変速機ケース53の輪郭形状に応じた形状を有している。そして、周縁部125の下側は、その一部が切り欠かれたようなスリット状に形成され、いわゆる櫛状になっている。そのため、第2ケースブロック35bと内側ケース53aとによって区画される空間126は、通風口124を通じてエンジンユニット28の外部と連通している。なお、第2ケースブロック35bの後半部の右側はクラッチカバー60によって覆われているので、第2ケースブロック35bの後半部にあっては、前記空間126はクラッチカバー60と内側ケース53aとの間に形成されることになる。
【0055】
周縁部125の櫛状部分には、補強リブ128が設けられている。通風口124の下方には、オイルパン127が設けられている。
【0056】
以上のような構成により、図11に示すように、ベルト室67内の空気は、内側ケース53aの通風口123を通じて空間126に導かれ、さらに第2ケースブロック35bの通風口124を通じて、オイルパン127に向かって排出される。その結果、前記空気はエンジンユニット28の外部に排出されることになる。
【0057】
図9に示すように、遠心式クラッチ41は、セカンダリシーブ軸62の左側部分に取り付けられている。遠心式クラッチ41は、湿式多板式のクラッチであり、略円筒状のクラッチハウジング78とクラッチボス77とを備えている。クラッチハウジング78はセカンダリシーブ軸62にスプライン嵌合され、セカンダリシーブ軸62と一体となって回転する。クラッチハウジング78には、リング状の複数のクラッチ板79が取り付けられている。これらクラッチ板79は、セカンダリシーブ軸62の軸方向に間隔を空けて並んでいる。
【0058】
セカンダリシーブ軸62の左側部分の周囲には、軸受81を介して円筒状の歯車80が回転自在に嵌め込まれている。クラッチボス77は、クラッチ板79の径方向内側かつ歯車80の径方向外側に配置され、この歯車80と噛み合っている。そのため、歯車80はクラッチボス77と共に回転する。クラッチボス77の径方向外側には、リング状の複数のフリクションプレート82が取り付けられている。これらフリクションプレート82は、セカンダリシーブ軸62の軸方向に沿って間隔を空けて並んでおり、各フリクションプレート82は隣り合うクラッチ板79の間に配置されている。
【0059】
クラッチハウジング78の左側には、複数のカム面83aが形成されている。カム面83aと、このカム面83aに対向する最も右側のクラッチ板79との間には、ローラウエイト84aが配置されている。
【0060】
この遠心式クラッチ41では、ローラウエイト84aに作用する遠心力の大小によって、クラッチインの状態(接続状態)とクラッチオフの状態(遮断状態)とが自動的に切り替えられる。
【0061】
すなわち、クラッチハウジング78の回転速度が所定速度以上になると、ローラウエイト84aが遠心力を受けて径方向外側に移動し、クラッチ板79はローラウエイト84aによって左方向に押される。その結果、クラッチ板79とフリクションプレート82とが圧着し、セカンダリシーブ軸62の駆動力が遠心式クラッチ41を経て出力軸85に伝達されるクラッチイン状態となる。
【0062】
一方、クラッチハウジング78の回転速度が所定速度未満になると、ローラウエイト84aに作用する遠心力が小さくなり、ローラウエイト84aは径方向内側に移動する。その結果、クラッチ板79とフリクションプレート82との圧着が解除され、セカンダリシーブ軸62の駆動力が出力軸85に伝達されないクラッチオフ状態となる。なお、図9において、遠心式クラッチ41における前側(図9における上側)の部分はクラッチオフ状態を表し、後側(図9における下側)の部分はクラッチイン状態を表している。
【0063】
減速機構42は、遠心式クラッチ41と出力軸85との間に介在している。減速機構42は、セカンダリシーブ軸62及び出力軸85と平行に配置された変速軸100を有している。変速軸100は、軸受101を介して第1ケースブロック35aに回転自在に支持されるとともに、軸受102を介して第2ケースブロック35bに回転自在に支持されている。変速軸100の右端部には、歯車80と噛み合う第1変速歯車103が設けられている。
【0064】
変速軸100の中央部には、第1変速歯車103よりも小径の第2変速歯車104が設けられている。出力軸85の右端部の外周側には、第2変速歯車104と噛み合う第3変速歯車105が形成されている。出力軸85の右端部の内周側は、軸受106を介してセカンダリシーブ軸62の左端部に支持されている。したがって、出力軸85は、軸受106を介してセカンダリシーブ軸62に回転自在に支持され、セカンダリシーブ軸62と同軸状(一直線上)に配置されている。また、出力軸85の中央部は、軸受107を介して第2ケースブロック35bの左端部に回転自在に支持されている。
【0065】
このような構成により、クラッチボス77と出力軸85とは、歯車80、第1変速歯車103、変速軸100、第2変速歯車104、及び第3変速歯車105を介して連結されている。そのため、出力軸85は、クラッチボス77の回転に従って回転する。
【0066】
出力軸85の左端部は第1ケースブロック35aを貫通し、クランクケース35の外側に突出している。出力軸85の左端部には、ドライブスプロケット108が固定されている。ドライブスプロケット108には、出力軸85の駆動力を後輪26に伝達する動力伝達機構としてチェーン109が巻き掛けられている。なお、動力伝達機構はチェーン109に限られず、伝動ベルト、複数の歯車を組み合わせてなる歯車機構、ドライブシャフト等、その他の部材であってもよい。
【0067】
次に、本実施形態における、セカンダリシーブ軸62へ潤滑油が供給される仕組みについて、図5および図8を参照しながら説明する。図5に示すように、クランクケース35の底部には潤滑油を溜めておくオイルパン127が形成されている。
【0068】
オイルパン127に溜められた潤滑油は、クランクケース35内のオイルパン127の上に配置された、潤滑油供給機構としてのオイルポンプ130によってクランク軸46とコンロッド51との連結部45に供給される。具体的に、オイルポンプ130によって吸い上げられた潤滑油はクランク軸46の左端面に開口する平面視略円形の1または複数のオイル供給路129に導かれ、オイル供給路129を経由して連結部45に供給される。
【0069】
連結部45に供給された潤滑油は、クランク軸46の回転に伴って、連結部45から飛散する。クランク軸46の回転に伴って飛散する潤滑油は、遠心式クラッチ41の内部に導かれる。
【0070】
遠心式クラッチ41の内部に導入された潤滑油は、セカンダリシーブ軸62に供給される。その後、潤滑油は、第2ケースブロック35bの下方やや後方に設けられたオイル排出孔131から再びオイルパン127に戻るようになっている。
【0071】
次に、エンジン29の始動装置について説明する。図12は、キックスタータ300及びセルモータ240が備えられたエンジンユニット28の部分断面図である。図12に示すように、エンジンユニット28には、キックスタータ300が設けられている。自動二輪車10のライダーは、このキックスタータ300を操作することによってエンジン29を始動させることができる。
【0072】
キックスタータ300は、キックペダル301を有する。キックペダル301は、キック軸302に取り付けられている。キック軸302には、ギア304が設けられている。一方、軸305には、ギア306が回転自在に設けられている。ギア304は、ギア306と噛合している。このギア304等を介して、キック軸302の回転がクランク軸46に伝達される。本実施形態において、キックペダル301が配置される位置は、自動二輪車10の車体で左右いずれかは限定されない。また、クランク軸46に対する前後および上下の位置は、特に限定されない。キックペダル301は、前述したキックペダル301の作動が行われるように配置される。
【0073】
また、エンジンユニット28には、セルモータ240が設けられている。セルモータ240は、クランクケース35に対して取り付けられている。このセルモータ240の回転は、ギア241、242及び243を介してクランク軸46に伝達される。これにより、ライダーのセルスイッチ140aの操作によってセルモータ240が駆動し、エンジン29が始動する。
【0074】
次に、自動二輪車10のメインスタンド200について説明する。図13、図14に示すように、自動二輪車10には、メインスタンド200が取り付けられている。図13、図14は、図1および図2より、車体カバー21等の部材を取り外した自動二輪車10を示している。図13は、後輪26が浮き、後輪26と路面とが離れたメインスタンド200の起立状態を示している。また、図14は、後輪26と路面とが接したメインスタンド200の収納状態を示している。メインスタンド200は、起立状態と収納状態との間の所定の範囲で揺動する。メインスタンド200は、ピボット部200bを中心として揺動自在に取り付けられている。また、図15に示すように、ピボット軸204が、リヤアームブラケット24Rおよびリヤアームブラケット24Lに枢支されている。ピボット軸204は、軸心を中心として回転可能である。メインスタンド200の起立または収納の作動は、ピボット軸204の回転と連動している。
【0075】
メインスタンド200には、ピン200aが設けられている。また、リヤアームブラケット24Rには、ピン203が設けられている。ピン203には、連結板202が取り付けられている。また、メインスタンドスイッチ201は、ブラケット201aを介して、車体フレーム11(図1参照)に取り付けられている。メインスタンドスイッチ201が取り付けられる位置は、自動二輪車10において、特に限定されない。例えば、メインスタンドスイッチ201が取り付けられる位置は、車体フレーム11のいずれかであればよい。本実施形態において、ブラケット201aは、シートレール14Rの一部に設けられている。また、メインスタンドスイッチ201は、図15には図示していない制御装置162とリード線201bにより接続されている。メインスタンドスイッチ201と連結板202とは、連結体206を介して接続されている。連結体206の形態は、特に限定されない。連結体206は、例えばワイヤであってもよく、ロッド状のものであってもよい。また、弾性体205は、ピン200aと連結板202とに支持されている。図15のように、メインスタンド200が収納状態であるとき、弾性体205の伸縮方向の付勢力により、メインスタンド200の収納状態が保持される。また、図示していないが、メインスタンド200が起立状態であるとき、弾性体205の伸縮方向の付勢力により、メインスタンド200の起立状態が保持される。本実施形態において、弾性体205は、コイルスプリングを採用している。しかし、弾性体205は、前記起立状態または前記収納状態を保持する機能を有していれば、特にその形態は限定されない。
【0076】
メインスタンドスイッチ201は、連結体206に引っ張られることにより作動する。つまり、図15に示すように、メインスタンド200が収納状態であるとき、連結体206は下方に引っ張られていない。このとき、メインスタンドスイッチ201の内部の機構により、メインスタンドスイッチ201は、入力状態となる。また、図13のように、メインスタンド200が起立状態であるとき、メインスタンドスイッチ201は、連結体202(図15参照)の形状により、連結体206が下方に所定量だけ移動する。このとき、メインスタンドスイッチ201は、スイッチが作動していない非入力状態となる。メインスタンドスイッチ201が入力状態であるとき、メインスタンドスイッチ201は、メインスタンドSW信号174の検出が可能な通電状態である。また、メインスタンドスイッチ201が非入力状態であるとき、メインスタンドスイッチ201は、メインスタンドSW信号174の検出が不能な非通電状態である。
【0077】
次に、自動二輪車10のブレーキ装置等について説明する。図16は、ハンドル4の概略構成図である。ハンドル4は、図示しないステアリングヘッドパイプに接続されたハンドルバー4dを備えている。ハンドル4は、ハンドルバー4dの左端部に位置する左グリップ部4aと、ハンドルバー4dの右端部に位置する右グリップ部4bとを備えている。右グリップ部4bは、ハンドルバー4dに対して回転可能である。ライダーが、この右グリップ部4bを回転させることで、図示しないスロットルが操作され、エンジン29のスロットル開度が調整される。
【0078】
右グリップ部4b近傍には、ブレーキレバー4cが配置されている。また、左グリップ部4a近傍には、ブレーキレバー4eが配置されている。ライダーがブレーキレバー4cまたはブレーキレバー4eを操作することで、自動二輪車1のブレーキ(図示せず)が駆動される。本実施形態において、ブレーキレバー4cの駆動により、前輪ブレーキ401が作動する。また、ブレーキレバー4eの駆動により、後輪ブレーキ402が作動する。しかし、ブレーキレバー4eの駆動により、前輪ブレーキ401が作動する形態であってもよい。また、ブレーキレバー4cの駆動により、後輪ブレーキ402が作動する形態であってもよい。
【0079】
右グリップ部4bの左側部分には、スイッチボックス140が配置されている。スイッチボックス140には、セルスイッチ140aが配置されている。後述するように、ライダーのセルスイッチ140aの操作によって、制御装置162はセルSW信号を入力する。制御装置162は、セルSW信号に基づき、セルモータ240を駆動させる。
【0080】
さらに、ブレーキレバー4eを含む左ハンドル部について、詳述する。図17に示すように、アーム5がハンドルバー4dに固定されている。ブレーキレバー4eは、ボルト6によってアーム5に取り付けられている。ブレーキレバー4eは、ボルト6が取り付けられた位置を中心にG方向またはR方向に揺動する。このG方向またはR方向の揺動は、所定の範囲で設定されている。また、ケーブル7が、取付部7aを介して、アーム5に取り付けられている。ケーブル7の内部には、ワイヤ7bが通っている。ブレーキレバー4eが、G方向に揺動する際、ケーブル7の内部のワイヤ7bが引っ張られ、後輪ブレーキ402が作動する。
【0081】
しかし、後輪ブレーキ402の作動は、ワイヤ7bの作用によるものに限定されない。これは、例えば、油圧で作動するブレーキ機構であってもよい。この場合、自動二輪車は、液体が封入されるマスタシリンダや、マスタシリンダにある液体が流れるチューブ等の部材(図示せず)を備える。前記は、前輪ブレーキ401が油圧で作動する場合も同様である。本実施形態において、前輪ブレーキ401の作動は、特に限定しない。そのため、前輪ブレーキ401の作動についての説明は省略する。
【0082】
ヒンジレバー8eは、ピン9の作動により、スイッチレバー8dを押す。まず、図17(a)のG方向に、ライダーがブレーキレバー4eを握る。ブレーキレバー4eは、図17のG方向にボルト6を中心として回転し、左グリップ4aに近付く。ブレーキレバー4eがG方向に所定の位置まで回転すると、ピン9が作動可能な位置となる。ピン9が作動可能である所定範囲の位置にあるとき、ライダーは、図18(a)に示すようにピン9を下向きに押す。ピン9を押す指がどの指であるか、また、右手か左手かは限定されない。ピン9が下向きに押されると、軸9bと、ピン9の下部のフランジ部9cとが、ブレーキレバー4eより押し出される。フランジ部9cが支持板8aよりも下面に位置するまでピン9が押されると、ライダーは、ブレーキレバー4eに対するライダーからの負荷を解除させる。このとき、ブレーキレバー4eは、R方向に回転し、元の位置まで戻ることはない。このとき、ブレーキレバー4eは、左グリップ4aに対して、所定の位置で仮固定される。また、ピン9は、フランジ部9cがヒンジレバー8eと当接する所定の位置で仮固定される。このようなピン9の仮固定は、ブレーキレバー4eが、ピン9が仮固定された現状の位置から、さらにG方向に回転することで解除される。
【0083】
図18(b)は、ブレーキレバー4eおよびピン9が仮固定される位置である。この位置では、フランジ部9cが支持板8aに引っ掛かることでピン9が仮固定される。また、フランジ部9cは、ヒンジレバー8eを図の右側から左側へ押している。これにより、スイッチレバー8dの一部は、スイッチケース8bへ埋没する。
【0084】
スイッチレバー8dの一部がスイッチケース8b埋没することで、スイッチケース8bの内部の機構により、ブレーキロックスイッチ802aが作動する。後述するように、制御装置162は、ブレーキロックスイッチ802aの作動に基づくブレーキロックSW信号を入力する。また、ブレーキレバー4eをG方向に所定の範囲で握ったときは、ブレーキスイッチ801aが入力される。スイッチケース8bの内部の機構により、ブレーキスイッチ801aが作動する。後述するように、制御装置162は、ブレーキスイッチ801aの作動に基づくブレーキSW信号を入力する。また、制御装置162は、ライダーがブレーキレバー4cを操作することによっても、ブレーキSW信号を入力する。制御装置162は、ブレーキロックSW信号に基づき、以下のエンジン29の始動についての制御、エンジン29の回転速度の規制についての制御、および、エンジン29の運転禁止についての制御を実行する。
【0085】
図19に示すように、自動二輪車10は、主電源161、制御装置162を備えている。主電源161は、制御装置162と接続している。ライダーによって主電源161が入力状態(電源オン)とされたとき、制御装置162が作動するようになる。前述したように、制御装置162は、ブレーキスイッチ801aからブレーキSW信号171aを入力する。制御装置162は、ブレーキレバー4cの操作に基づき、ブレーキSW信号171bを入力する。また、制御装置162は、ブレーキレバー4eの操作に基づき、ブレーキロックSW信号172を入力する。さらに、制御装置162は、セルスイッチ140aの操作に基づき、セルSW信号173を入力する。制御装置162は、メインスタンド200の作動により、メインスタンドSW信号174を入力する。
【0086】
また、制御装置162は、セルSW信号173に基づき、セルモータ240を駆動させる。セルモータ240の駆動により、エンジン29が始動する。また、エンジン29の始動は、キックスタータ300によっても行われる。本実施形態において、エンジン29の始動は、セルスイッチ140aとセルモータ240とを含むセル式またはキックスタータ300により行われる。しかし、エンジン29の始動は、キックスタータ300のみによって行われる形態であってもよい。また、エンジン29の始動は、前記セル式のみによって行われる形態であってもよい。
【0087】
エンジン29の始動により、エンジン29の回転は、CVT30に伝達される。さらに、CVT30の作動により、エンジン29の回転は、遠心式クラッチ41に伝達される。遠心式クラッチ41は、前述したように、セカンダリシーブ軸62(図示せず)の回転速度に応じてエンジン29の回転を断続する。そのため、遠心式クラッチ41は、セカンダリシーブ軸62の回転速度が所定速度以上である場合、セカンダリシーブ軸62の回転を動力伝達機構40に伝達する。動力伝達機構40の作動により、後輪26が回転する。自動二輪車10は、後輪26の回転に基づいて走行する。
【0088】
前輪ブレーキ401および後輪ブレーキ402の形態は、特に限定されない。前輪ブレーキ401および後輪ブレーキ402は、ディスクロータとブレーキパッドとを備えた、ディスク式のブレーキあってもよい。また、前輪ブレーキ401および後輪ブレーキ402は、ブレーキドラムを備えた、ドラム式のブレーキであってもよい。また、前輪ブレーキ401と後輪ブレーキ402とが、互いに異なった形態を用いる形態であってもよい。前輪ブレーキ401および後輪ブレーキ402は、自動二輪車10の走行時に作動する際、路面と前輪19および後輪26との摩擦が増大するものであればよい。
【0089】
後輪26の回転は、後輪ブレーキ402により規制される。また、前輪19の回転は、前輪ブレーキ401により規制される。実際に自動二輪車10が走行するとき、後輪ブレーキ402が前輪19と接触することはないが、後輪ブレーキ402の作動により前輪19と路面との摩擦が増加する場合がある。同様に、前輪ブレーキ401が後輪26と接触することはないが、前輪ブレーキ401の作動により後輪26と路面との摩擦が増加する場合がある。このため、後輪ブレーキ402のみの作動により、自動二輪車10を制動させることができる場合がある。また、前輪ブレーキ401のみの作動により、自動二輪車10を制動させることができる場合がある。
【0090】
前輪ブレーキ401は、ライダーのブレーキレバー4cの操作に基づいて作動する。後輪ブレーキ402は、ライダーのブレーキレバー4eの操作に基づいて作動する。また、ブレーキレバー4cの操作に基づき、ブレーキスイッチ801bが作動する。ブレーキレバー4eの作動に基づき、ブレーキスイッチ801aが作動する。さらに、ブレーキスイッチ801bの作動により、制御装置162がブレーキSW信号171bを入力する。ブレーキスイッチ801aの作動により、制御装置162がブレーキSW信号171aを入力する。また、前述したように、ブレーキレバー4eの作動に基づき、ブレーキロックスイッチ802aが作動する。ブレーキロックスイッチ802aの作動に基づき、制御装置162がブレーキロックSW信号172を入力する。また、ライダーがブレーキレバー4eを操作し、且つ、前述したブレーキロック連動スイッチ8におけるピン9を操作することにより、後輪ブレーキ402が常に作動した状態になる。このことは、ブレーキレバー4eが左グリップ4aに対して所定の位置で仮固定されるためである(図18参照)。
【0091】
制御装置162は、これらブレーキSW信号171a、ブレーキSW信号171b、ブレーキロックSW信号172、セルSW信号173、およびメインスタンドSW信号174を用いて、エンジン回転速度規制制御Rs、エンジン始動禁止制御Pr、およびエンジン運転禁止制御Peを実行する。エンジン回転速度規制制御Rsは、制御装置162に入力する前記各信号に基づき、制御装置162がエンジン29の回転速度を規制する制御である。また、エンジン始動禁止制御Prは、制御装置162に入力する前記各信号に基づき、制御装置162がエンジン29の始動を禁止する制御である。さらに、エンジン運転禁止制御Peは、制御装置162に入力する前記各信号に基づき、制御装置162が始動後のエンジン29の運転を停止する制御である。以下に、エンジン回転速度規制制御Rs、エンジン始動禁止制御Pr、およびエンジン運転禁止制御Peについて、図を用いて説明する。
【0092】
図20は、自動二輪車10のエンジン回転速度規制制御Rs、エンジン始動禁止制御Pr、およびエンジン運転禁止制御Peのフローチャート図である。まず、ステップS1において、主電源161が入力される。主電源161は、ライダーによって、イグニッションスイッチ150が操作されることで入力状態となる。イグニッションスイッチ150は、例えば、図1に示すように、車体カバー21の表面に配置されている。
【0093】
ステップS2において、ブレーキロックスイッチ802aが作動し、入力状態であるか否かが判断される。ブレーキロックスイッチ802aは、主電源161を入力する前に作動され、入力状態となってもよい。また、ブレーキロックスイッチ802aは、ステップS1の後に作動され、入力状態となってもよい。ブレーキロックスイッチ802aが入力状態である場合は、ステップS3へ進む。ブレーキロックスイッチ802aが入力状態でない場合は、ステップS2aへ進む。また、主電源161が入力状態であり、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態である場合は、ブレーキロックランプLr(図示せず)が、メータ表示部151で点灯する。主電源161が入力状態であり、ブレーキロックスイッチ802aが非入力状態である場合は、ブレーキロックランプLrが、メータ表示部151で点滅する。メータ表示部151は、例えば、図1に示すように、フロントマスク33aの上面に配置されている。
【0094】
ステップS2aにおいて、ブレーキスイッチ801aが作動し、ブレーキスイッチ801aが入力状態であるか否かが判断される。或いは、ブレーキスイッチ801bが作動し、ブレーキスイッチ801bが入力状態であるか否かが判断される。ブレーキスイッチ801aまたはブレーキスイッチ801bが入力状態である場合、ステップS3へ進む。ブレーキスイッチ801aおよびブレーキスイッチ801bが非入力状態である場合、ステップS2bへ進む。ステップS2aにおいて、ブレーキスイッチ801aが作動し、ブレーキスイッチ801aが入力状態である場合、制御装置162は、ブレーキSW信号171aを入力している。ブレーキスイッチ801bが作動し、ブレーキスイッチ801bが入力状態である場合、制御装置162は、ブレーキSW信号171bを入力している。ブレーキスイッチ801aおよびブレーキスイッチ801bが作動し、ブレーキスイッチ801aおよびブレーキスイッチ801bが入力状態である場合、制御装置162は、ブレーキSW信号171aおよびブレーキSW信号171bを入力している。ブレーキスイッチ801aまたはブレーキスイッチ801bが入力状態である場合、エンジン29は始動することができる。
【0095】
ステップS2bにおいて、ライダーは、ブレーキレバー4eまたはブレーキレバー4cを操作する。ブレーキレバー4eの操作により、ブレーキスイッチ801aが作動し、入力状態となる。ブレーキレバー4cの操作により、ブレーキスイッチ801bが作動し、入力状態となる。このとき、ブレーキロックランプLrは、メータ表示部151において点滅している。ブレーキスイッチ801aまたはブレーキスイッチ801bが入力状態になると、エンジン29は、始動することができる。
【0096】
ステップS2cにおいて、ライダーは、ブレーキロック連動スイッチ8を操作する。ブレーキロック連動スイッチ8の操作により、ブレーキロックスイッチ802aが作動し、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態となる。このとき、ブレーキロックランプLrは、メータ表示部151において点滅していた状態より、点灯する状態に変化する。
【0097】
ブレーキロックスイッチ802aが作動しているときは、前述したブレーキロック連動スイッチ8の構造により、ブレーキスイッチ801aが作動している。そのため、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態であるときは、ブレーキスイッチ801aが入力状態になっている。ただし、図19に示すように、ブレーキSW信号171aとブレーキロックSW信号172とは、別々の信号である。
【0098】
ステップS3において、ライダーは、エンジン29を始動させる。前述したように、本実施形態において、エンジン29は、セルスイッチ140aおよびセルモータ240を用いて始動することができる。もしくは、エンジン29は、キックスタータ300を用いて始動することができる。
【0099】
まず、セルスイッチ140aおよびセルモータ240を用いてエンジン29を始動する方法を説明する。ライダーは、セルスイッチ140aを操作する。セルスイッチ140aの操作に基づき、制御装置162は、セルモータ240を駆動させる。しかし、ライダーは、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態でないときにエンジン29を始動させようとしても、エンジン始動禁止制御Prによりエンジン29は始動しない。図19に示すように、このときの自動二輪車10の作動として、制御装置162は、セルスイッチ140aが操作されてもセルモータ240を駆動させないエンジン始動禁止制御Prを行う。これにより、エンジン29は始動することができない。或いは、制御装置162は、点火プラグ55(図8参照)を含むエンジン29の点火装置550に対し、点火プラグ55が火花を発生しないエンジン始動禁止制御Prを行う。これにより、エンジン29は始動することができない。もしくは、制御装置162は、燃料供給装置20aに対し、エンジン29に燃料を供給させないエンジン始動禁止制御Prを行う。これにより、エンジン29は始動することができない。燃料供給装置20aは、例えば、エンジン29での燃料の燃焼に必要な空気やエンジン29の燃料が通る通路を含んで構成されている。
【0100】
点火プラグ55に火花を発生しないエンジン始動禁止制御Prは、キックスタータ300を用いてエンジン29を始動する場合にも有効である。この場合、キックスタータ300によってエンジン29のクランク軸46(図8参照)が外部より強制的に回転させられても、点火プラグ55では火花は発生しない。そのため、エンジン29は始動することができない。また、エンジン29に燃料を供給させないエンジン始動禁止制御Prは、キックスタータ300を用いてエンジン29を始動する場合にも有効である。この場合、キックスタータ300によってエンジン29のクランク軸46(図8参照)が外部より強制的に回転させられても、燃料は、エンジン29には届けられていない。そのため、エンジン29は始動することができない。
【0101】
エンジン29の始動後は、エンジン運転禁止制御Peへ移行する。ステップS4では、メインスタンド200が起立しておらず、メインスタンドスイッチ201が入力されているかが判断される。前述したように、メインスタンド200が起立状態であるときは、メインスタンドスイッチ201は入力状態ではない。逆に、メインスタンド200が収納状態であるときは、メインスタンドスイッチ201は、入力状態である。メインスタンド200が起立しておらず、メインスタンドスイッチ201が入力されている場合、ステップS6へ進む。また、メインスタンド200が起立し、メインスタンドスイッチ201が入力されていない場合、ステップS5aへ進む。ステップS4においてメインスタンド200が起立状態であるとき、メインスタンド200は、ステップS4に至る間に使用され、起立状態とされていればよい。例えば、メインスタンド200は、ステップS1での主電源161が入力される前に起立されてもよい。また、メインスタンド200は、ステップS3でのエンジン29の始動前に起立されてもよい。
【0102】
ステップS5aでは、ステップS4でメインスタンド200が起立状態であると判断された場合、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態であるかが判断される。ステップS5aにおいて、ブレーキロックスイッチ802aが入力されていない場合は、ステップS5bへ進む。ステップS5aにおいて、ブレーキロックスイッチ802aが入力されている場合は、ステップS5cへ進む。
【0103】
ステップS5bでは、ステップS3にて始動されたエンジン29が停止される。つまり、自動二輪車10において、エンジン29の始動後、メインスタンド200が起立して後輪26が路面から浮いた状態であり、且つ、ブレーキロックスイッチ802aが非入力状態であるとき、エンジン29の運転は禁止される。このため、自動二輪車10は、メインスタンド200が使用され、スタンド起立状態であるときは、後輪26の連れ回りを防止することができる。
【0104】
ステップS5cでは、メインスタンドスイッチ201が入力される。つまり、メインスタンド200が起立状態から収納状態へと変化を受ける。これは、ライダーにより、図13のメインスタンド200が起立している状態から、図14のように、自動二輪車10の車体側面にメインスタンド200が収納される。メインスタンド200が自動二輪車10の車体側面に収納されると、メインスタンドスイッチ201が入力状態となる。ステップS5cにてメインスタンドスイッチ201が入力されると、ステップS6へ進む。
【0105】
ステップS6では、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態である場合、ブレーキロックスイッチ802aの入力状態を解除する。これは、ライダーによりブレーキレバー4eが操作され、ブレーキロック連動スイッチ8のうちブレーキロックスイッチ802aの入力状態が解除されることによる。ブレーキロックスイッチ802aの入力状態が解除されると、エンジン回転速度規制制御Rsは終了する。言い換えると、エンジン29が運転中であるときにブレーキロックスイッチ802aが入力状態である場合、エンジン29は回転速度が規制されている。
【0106】
エンジン29の始動後、ブレーキロックスイッチ802aの入力状態が解除されると、エンジン29の回転速度の規制は解除される。また、ブレーキロックスイッチ802aの入力状態が解除されると、ブレーキロックランプLrは消灯する。これにより、自動二輪車10は、発進および走行することができる。
【0107】
エンジン回転速度規制制御Rsの具体的な制御としては、以下のものがある。制御装置162は、点火プラグ55(図8参照)を含むエンジン29の点火装置550に対し、点火プラグ55の火花の発生回数を抑制するエンジン回転速度規制制御Rsを行う。これにより、エンジン29は回転速度が規制される。もしくは、制御装置162は、燃料供給装置20aに対し、エンジン29に燃料の供給を抑制するエンジン回転速度規制制御Rsを行う。これにより、エンジン29は回転速度が規制される。
【0108】
前述したように、メインスタンドスイッチ201は、メインスタンド200が収納状態であるとき、スイッチが作動した入力状態である。また、メインスタンドスイッチ201は、メインスタンド200が起立状態であるとき、スイッチが作動していない非入力状態である。このため、本実施形態において、メインスタンドスイッチ201が断線による故障をした場合、エンジン運転禁止制御Peの効果は損なわれることがない。
【0109】
(作用および効果)
以上のように、本実施形態において、自動二輪車10は、エンジン29が運転中であり、ブレーキロックスイッチ802aが作動して入力状態であるときは、エンジン29の回転速度が規制されている。つまり、エンジン回転速度規制制御Rsは、エンジン29の運転中に、ブレーキロックスイッチ802aが作動して入力状態であるときに実行される。これにより、ライダーがアクセル操作を行い、エンジン29のスロットル開度を開けようとしても、スロットル開度に拘わらず、エンジン29の回転速度は上がらない。そのため、自動二輪車10は、エンジン29が運転中であり、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態である場合、燃料の消費が抑制される。したがって、自動二輪車10は、燃料の消費を抑制することができる。
【0110】
以上のように、本実施形態において、自動二輪車10は、エンジン29が運転中であり、ブレーキロックスイッチ802aが作動して入力状態であるときは、エンジン29の回転速度が規制されている。つまり、エンジン回転速度規制制御Rsは、エンジン29の運転中に、ブレーキロックスイッチ802aが作動して入力状態であるときに実行される。これにより、ライダーによるアクセル操作に拘わらず、エンジン29の回転速度は上がらない。そのため、自動二輪車10は、エンジン29が運転中であり、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態である場合、燃料の消費が抑制される。したがって、自動二輪車10は、燃料の消費を抑制することができる。
【0111】
また、本実施形態において、自動二輪車10は、エンジン始動禁止制御Prを実行することができる。自動二輪車10は、主電源161が入力状態された後、ブレーキロックスイッチ802aが非入力状態である場合には、エンジン29を始動させない。エンジン29が始動しない限り、自動二輪車10は、燃料をほとんど消費しない。そのため、自動二輪車10は、燃料の消費を抑制することができる。
【0112】
また、エンジン29の回転速度は、メインスタンド200が起立している場合でも規制される。自動二輪車10の走行時において、自動二輪車10の車両速度は、エンジン29の回転速度に基づいて調整される。しかし、メインスタンド200が起立した状態であるとき、自動二輪車10の後輪26が路面より離れている。後輪26が路面より離れている間は、アクセル操作による後輪26の回転は、路面に伝わることがない。そのため、メインスタンド200が立てられた状態であるとき、エンジン29の回転速度は、自動二輪車10の走行速度に何ら影響しない。ゆえに、メインスタンド200が起立状態であるときにライダーがアクセル操作を行っていると、それだけ燃料が無駄に消費してしまう。しかし、本実施形態に係る自動二輪車10によれば、メインスタンド200が起立している場合、エンジン29の回転速度を規制している。したがって、自動二輪車10は、燃料の消費を抑制することができる。
【0113】
また、本実施形態において、エンジン回転速度規制制御Rsは、容易に解除することができる。ブレーキロックスイッチ802aが入力状態であるとき、エンジン回転速度規制制御Rsが実行され、エンジン29の回転速度が規制されている。しかし、メインスタンド200が収納状態であり、且つ、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態である場合、ブレーキロックスイッチ802aを非入力状態にすることで、エンジン回転速度規制制御Rsは解除される。また、メインスタンド200が起立状態であり、且つ、ブレーキロックスイッチ802aが入力状態である場合、順に、メインスタンドスイッチ201を非入力状態にし、次いで、ブレーキロックスイッチ802aを非入力状態にすることで、エンジン回転速度規制制御Rsは解除される。このように、エンジン回転速度規制制御Rsは、簡単に解除が可能である。エンジン回転速度規制制御Rsが解除された自動二輪車10は、発進および走行が可能となる。
【0114】
本実施形態において、エンジン29の始動を禁止することは、点火装置550を用いてエンジン始動禁止制御Prを実行することにより、実現可能である。これにより、エンジン29の始動を簡単に禁止することができる。
【0115】
また、本実施形態において、エンジン29の始動を禁止することは、燃料供給装置20aを用いてエンジン始動禁止制御Prを実行することにより、実現可能である。これにより、エンジン29の始動を簡単に禁止することができる。また、エンジン回転速度規制制御Rsが、エンジン29への燃料供給を抑制することで実行されるため、さらに燃料の消費を抑えることができる。
【0116】
本実施形態において、制御装置162は、ライダーのブレーキレバー4cの操作に基づき、ブレーキSW信号171bを入力する。また、制御装置162は、ライダーのブレーキレバー4eの操作に基づき、ブレーキSW信号171aを入力する。さらに、ブレーキレバー4eの作動およびブレーキロック連動スイッチ8の作動に基づき、ブレーキロックスイッチ802aが作動する。ブレーキロックスイッチ802aの作動に基づき、制御装置162がブレーキロックSW信号172を入力する。ただし、ブレーキロックスイッチ802aが作動するとき、制御装置162は、ブレーキロックSW信号172を入力すると同時に、ブレーキSW信号171aを入力している。エンジン始動禁止制御Prは、ブレーキSW信号171bまたはブレーキSW信号171aが入力されているときは実行されない。このように、エンジン回転速度規制制御Rsとエンジン始動禁止制御Prとは、それぞれ別の信号の検知により、実行される。そのため、自動二輪車10は、容易にエンジン回転速度規制制御Rsを実行することができる。また、自動二輪車10は、容易にエンジン始動禁止制御Prを実行することができる。
【0117】
また、本実施形態において、エンジン29の始動後にエンジン29の回転速度を規制するスイッチは、後輪ブレーキ402を作動状態でロックするブレーキロックスイッチ802aを兼ねている。このため、1つのスイッチの入力のみで、後輪ブレーキ402をロックさせておくことと、エンジン29の回転速度の規制を同時に行うことができる。よって、ライダーは簡単な操作で燃料の消費抑制を実現できる。また、後輪ブレーキ402を作動状態でロックするスイッチが、エンジン29の回転速度を規制するスイッチを兼ねる構造にしたため、後輪ブレーキ402が作動していてもエンジン29の回転速度が高くなることがなく、ブレーキ焼けを抑制することができる。
【0118】
また、自動二輪車10は、メータ表示部151を備えている。メータ表示部151では、ブレーキロックランプLrが点灯する。ブレーキロックランプLrは、ブレーキロックスイッチ802aの作動に基づいて点灯する。主電源161が入力状態であり、ブレーキロックスイッチ802aが作動し制御装置162がブレーキロックSW信号172を入力している間は、ブレーキロックランプLrは点灯することができる。また、主電源161が入力状態であり、ブレーキロックスイッチ802aが非入力状態である場合は、ブレーキロックランプLrが点滅する。そのため、自動二輪車10に乗車するライダーは、車体のブレーキロックの状態を容易に視認することができる。さらに、ライダーは、自動二輪車10のブレーキロック状態を知ることにより、ブレーキロックがなされていない場合はブレーキロック連動スイッチ8を操作し、ブレーキロックを行う。したがって、自動二輪車10は、ブレーキロックスイッチ802aを確実に入力状態にすることができ、エンジン回転速度規制制御Rsを適正に実行することができる。
【0119】
本実施形態において、エンジン29の回転速度の規制は、点火装置550を用いてエンジン回転速度規制制御Rsを実行することにより、実現可能である。これにより、エンジン29の回転速度を簡単に規制することができる。
【0120】
また、本実施形態において、エンジン29の回転速度の規制は、燃料供給装置20aを用いてエンジン回転速度規制制御Rsを実行することにより、実現可能である。これにより、エンジン29の回転速度を簡単に規制することができる。また、エンジン回転速度規制制御Rsが、エンジン29への燃料供給を抑制することで実行されるため、さらに燃料の消費を抑えることができる。
【0121】
《その他の変形例》
前記実施形態において、ブレーキロックスイッチ802aは、後輪ブレーキ402をロックさせるスイッチと、エンジン29の回転速度を規制するスイッチとを兼ねていた。しかし、エンジン29の回転速度を規制するスイッチは、ブレーキロックスイッチ802aに限定されない。エンジン29の回転速度を規制するスイッチは、他のスイッチを用いることも可能である。
【0122】
例えば、自動二輪車10は、図示しないエンジン回転速度規制スイッチ803を有している。エンジン回転速度規制スイッチ803は、自動二輪車10において、ライダーに操作される。エンジン29の回転速度を規制するスイッチ803の形状および配置は、ライダーに操作されるように配置されていれば、特にその形状および位置は限定されない。エンジン回転速度規制スイッチ803は、前記実施形態のブレーキロック連動スイッチ8に含まれることに限定されない。
【0123】
エンジン回転速度規制スイッチ803が入力されることで、前記実施形態におけるエンジン回転速度規制制御Rs、エンジン始動禁止制御Pr、およびエンジン運転禁止制御Peが実行可能となる。エンジン回転速度規制スイッチ803が入力状態であるとき、制御装置162において図示しないEG回転速度規制SW信号180の検出が可能な通電状態となる。また、エンジン回転速度規制スイッチ803が非入力状態であるとき、制御装置162においてEG回転速度規制SW信号180の検出が不能な非通電状態となる。
【0124】
本変形例のように、エンジン回転速度規制スイッチ803を用いる場合、エンジン回転速度規制制御Rs、エンジン始動禁止制御Pr、およびエンジン運転禁止制御Peは、図20において、ブレーキロックスイッチをエンジン回転速度規制スイッチに読み替えることにする。また、図20に示す制御において、ブレーキロックSW信号172をEG回転速度規制SW信号180に読み替えることにする。ただし、この場合、エンジン回転速度規制スイッチ803が入力状態であるとき、ブレーキスイッチ801aが入力状態であるとは限らない。この場合、ブレーキスイッチ801aの入力状態または非入力状態は、あくまでブレーキレバー4eの操作により切り換わるものとする。また、前述のとおり、エンジン回転速度規制スイッチ803の取り付け位置は、自動二輪車10において、特に限定されない。ただし、エンジン回転速度規制スイッチ803は、ブレーキレバー4eまたはブレーキレバー4cとの操作を容易にするため、比較的ハンドル4に近い位置に配置されていることが望ましい。
【0125】
また、この場合、エンジン回転速度規制スイッチ803が入力状態であれば、キックスタータ300によるエンジン29の始動が可能であるとする。また、エンジン回転速度規制スイッチ803が入力状態であり、ブレーキスイッチ801aもしくはブレーキスイッチ801bが入力状態であれば、セルモータ240によるエンジン29の始動が可能であるとする。このように、本変形例において、ブレーキスイッチ801aまたはブレーキスイッチ801bと、エンジン回転速度規制スイッチ803とのスイッチ入力状態に応じ、エンジン29の始動方法を選択することができる。このとき、いずれの方法においてもエンジン回転速度規制スイッチ803が非入力状態である場合、エンジン29を始動することはできない。そのため、自動二輪車10は、エンジン29が運転中であり、エンジン回転速度規制スイッチ803が作動して入力状態であるときは、エンジン29の回転速度が規制される。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によれば、自動二輪車に関して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
【図2】本実施形態に係るクッションユニットの作動を示す側面図である。
【図3】車体フレーム、エンジンユニット、及びエアチャンバ等の位置関係を示す平面図である。
【図4】メインフレームとリヤアームとエアチャンバ等の位置関係を表す図1のIV−IV線断面図である。
【図5】エンジンユニットの右側面図である。
【図6】エンジンユニットの左側面図である。
【図7】エンジンユニットの取付状態を示す断面図である。
【図8】エンジンユニットの内部構造を示す断面図である。
【図9】エンジンユニットの一部の内部構造を示す断面図である。
【図10】第2ケースブロック及び変速機ケースの内側ケースの分解斜視図である。
【図11】第2ケースブロック及び変速機ケース内の断面図である。
【図12】エンジンユニットの一部の内部構造を示す断面図である。
【図13】本実施形態に係るカバーを省略して示す自動二輪車の側面図であり、メインスタンドの起立状態である。
【図14】本実施形態に係るカバーを省略して示す自動二輪車の側面図であり、メインスタンドの収納状態である。
【図15】本実施形態に係るメインスタンドスイッチを示す車体フレームの分解斜視図である。
【図16】ハンドル部分の概略構成図である。
【図17】左側ハンドルの一部を示す図である。
【図18】左側ハンドルの一部を示す図であり、ブレーキロック連動スイッチが仮固定される様子を示す図である。
【図19】本実施形態に係る自動二輪車の制御系統図である。
【図20】本実施形態に係るエンジン回転速度規制制御、エンジン始動禁止制御、およびエンジン運転禁止制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0128】
4c ブレーキレバー
4e ブレーキレバー
8 ブレーキロック連動スイッチ(ブレーキロック機構)
10 自動二輪車
19 前輪(非駆動輪)
20a 燃料供給装置
26 後輪(駆動輪)
28 エンジンユニット
29 エンジン
35 クランクケース
40 動力伝達機構
41 遠心式クラッチ
46 クランク軸
55 点火プラグ
79 クラッチ板(第2のプレート)
82 フリクションプレート(第1のプレート)
84a 遠心ウエイト
140a セルスイッチ
127 オイルパン(潤滑材供給機構)
129 オイル供給路(潤滑材供給機構)
130 オイルポンプ(潤滑材供給機構)
131 オイル排出孔(潤滑材供給機構)
151 メータ表示部(スイッチ入力報知装置)
161 主電源
162 制御装置
171a ブレーキSW信号
171b ブレーキSW信号
172 ブレーキロックSW信号
173 セルSW信号
174 メインスタンドSW信号
200 メインスタンド
201 メインスタンドスイッチ
240 セルモータ(電動モータ)(第2の始動装置)
300 キックスタータ(第1の始動装置)
301 キックペダル
302 キック軸
401 前輪ブレーキ(ブレーキ機構)
402 後輪ブレーキ(ブレーキ機構)(駆動輪ブレーキ機構)
550 点火装置
801a ブレーキスイッチ
801b ブレーキスイッチ
802a ブレーキロックスイッチ(スイッチ)
803 エンジン回転速度規制スイッチ(スイッチ)
Rs エンジン回転速度規制制御(エンジン回転速度規制部)
Pr エンジン始動禁止制御(エンジン始動禁止部)
Pe エンジン運転禁止制御(エンジン運転禁止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの回転力により駆動する駆動輪と、
前記エンジンから前記駆動輪への回転力を前記エンジンの回転速度に応じて断続する遠心式クラッチと、
前記エンジンの回転速度を規制するスイッチと、
前記スイッチが入力されていないときは、前記エンジンの始動を禁止するエンジン始動禁止部と、
前記スイッチが入力されているときは、前記遠心式クラッチが接続しないように前記エンジンの回転速度を規制するエンジン回転速度規制部と、
を備えた自動二輪車。
【請求項2】
前記駆動輪を路面と接地させる収納状態と前記駆動輪を路面から浮かせる起立状態とに切り換え可能なメインスタンドをさらに備え、
前記エンジン回転速度規制部は、前記起立状態において作動する、
請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記スイッチが入力された状態および前記起立状態から、まず前記収納状態となり、さらに前記スイッチが非入力となった状態で、前記エンジン回転速度規制部の動作を規制する、
請求項2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記エンジンの点火装置をさらに備え、
前記エンジン始動禁止部は、前記スイッチが入力されていないとき、前記点火装置による点火を禁止する、
請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記エンジンの燃料を供給する燃料供給装置をさらに備え、
前記エンジン始動禁止部は、前記スイッチが入力されていないとき、前記燃料供給装置による燃料供給を禁止する、
請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記駆動輪または非駆動輪の回転を規制するブレーキ機構と、
前記ブレーキ機構の作動状態を検知するブレーキスイッチと、
をさらに備えた、
請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記エンジンのクランク軸および前記クランク軸に連結されたキック軸を外部より強制的に回転させる第1の始動装置と、
前記エンジンのクランク軸を電動モータにより強制的に回転させる第2の始動装置と、を備え、
前記エンジン始動禁止部は、
前記スイッチが入力されたときに第1の始動装置による始動を許可し、
前記スイッチが入力され、且つ、前記ブレーキスイッチが入力されたときに第2の始動装置による始動を許可することを特徴とする、
請求項6に記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記ブレーキ機構は、前記駆動輪の回転を規制する駆動輪ブレーキ機構を有し、
前記駆動輪ブレーキ機構を作動させるブレーキレバーと、
前記ブレーキレバーを作動状態で固定するブレーキロック機構と、
をさらに備え、
前記スイッチは、前記ブレーキロック機構の作動または非作動によりスイッチ入力状態が変化するブレーキロックスイッチであることを特徴とする、
請求項6に記載の自動二輪車。
【請求項9】
前記スイッチの入力または非入力状態を報知するスイッチ入力報知装置をさらに備えた、
請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項10】
前記エンジンの点火装置をさらに備え、
前記エンジン回転速度規制部は、前記スイッチが入力されている状態において、前記遠心式クラッチが接続しないように前記点火装置による点火を規制する、
請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項11】
前記エンジンの燃料を供給する燃料供給装置をさらに備え、
前記エンジン回転速度規制部は、前記スイッチが入力されている状態において、前記遠心式クラッチが接続しないように前記燃料供給装置による燃料供給を規制する、
請求項1に記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−236004(P2009−236004A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83232(P2008−83232)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】