説明

船舶遠隔監視診断システム

【課題】本発明の目的は、通信衛星を用いずに外洋を航行中の船舶の遠隔監視又は遠隔診断を可能とする船舶遠隔監視診断システム及び船舶遠隔監視診断方法を提供することである。
【解決手段】船舶遠隔監視診断システム10は、第1船舶1−1と、第2船舶1−2、1−3と、陸上に設けられたコンピュータシステム2、3とを具備する。第1船舶1−1は、第1船舶1−1の状態に関する船舶状態データを無線送信する。第2船舶1−2、1−3は、船舶状態データを無線中継する。コンピュータシステム2、3は、船舶状態データを保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶を遠隔監視又は遠隔診断する船舶遠隔監視診断システム及び船舶遠隔監視診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のディーゼル主機関診断システムは、船舶の通信手段と、ディーゼル主機関メーカの通信手段と、ディーゼル主機関メーカの自動性能解析手段とを具備する。船舶の通信手段は、インマルサットを利用したネットワークを介してディーゼル主機関の性能データを送信する。ディーゼル主機関メーカの通信手段は、性能データを受信する。ディーゼル主機関メーカの自動性能解析手段は、性能データに基づいて性能解析を行う。ディーゼル主機関メーカの通信手段は、ネットワークを介して性能解析の結果を船舶の通信手段及び運航管理会社の通信手段へ送信する。性能データには、主機関回転数、機関負荷、ロードインジケータ値、シリンダ出口温度、過給機入口温度、過給機出口温度、筒内最高圧、圧縮圧力、掃気圧及び過給機回転数のデータが含まれる。
【0003】
特許文献2は、発電用ガスエンジンの潤滑用オイルの性状管理を行うオイル性状管理方法を開示している。オイル性状管理方法において、オイル流路に供給されるオイルの比誘電率とTBN(全塩基価)の相関関係が予め求められ、オイル流路に配置された2つの電極間に高周波交流電圧を印加したときに流れる電流及び電極間の電圧が測定され、測定された電流値及び電圧値に基づいてオイルの比誘電率が求められ、比誘電率が上記相関関係に基づいてTBN値に変換され、TBN値からオイルの劣化状態が判断される。
【0004】
特許文献3は、ディーゼルエンジンを搭載する車両から排出される有害物質を低減するために使用される機器を監視するディーゼルエンジン監視システムを開示している。ディーゼルエンジン監視システムは、ディーゼルエンジンシステムと診断手段とを備えた車両と、通信衛星を介した無線通信によって車両と通信可能なコンピュータシステムとを具備する。ディーゼルエンジンシステムは、ディーゼルエンジンと、ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置と、後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる有害物質の濃度を検知する第1検知装置とを備える。診断手段は、ディーゼルエンジンの負荷と第1検知装置によって検知された有害物資の濃度から、ディーゼルエンジンシステムの有害物質を低減する性能を診断してシステム診断データを生成し、システム診断データをコンピュータシステムに送信するように構成される。コンピュータシステムはシステム診断データを保存する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−221076号公報
【特許文献2】特開2009−198341号公報
【特許文献3】特開2009−215926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、通信衛星を用いずに外洋を航行中の船舶の遠隔監視又は遠隔診断を可能とする船舶遠隔監視診断システム及び船舶遠隔監視診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明による船舶遠隔監視診断システムは、第1船舶(1−1)と、第2船舶(1−2、1−3)と、陸上に設けられたコンピュータシステム(2、3)とを具備する。前記第1船舶は、前記第1船舶の状態に関する船舶状態データを無線送信する。前記第2船舶は、前記船舶状態データを無線中継する。前記コンピュータシステムは、前記船舶状態データを保存する。
【0009】
前記第1船舶は、ディーゼルエンジンシステム(21)と、前記船舶状態データを無線送信する無線機(24)とを備える。前記第2船舶は、前記船舶状態データを無線中継する中継器(25、93)を備える。前記船舶状態データは前記ディーゼルエンジンシステムの状態に関するデータである。
【0010】
前記ディーゼルエンジンシステムは、ディーゼルエンジン(31)と、前記ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置(36)と、前記後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる前記有害物質の濃度を検知する第1検知装置(59)とを備える。前記第1船舶は、前記ディーゼルエンジンの負荷と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度から、前記ディーゼルエンジンシステムの前記有害物質を低減する性能を診断して診断データを生成するコンピュータ(22)を備える。前記無線機は、前記診断データを前記船舶状態データとして送信する。
【0011】
前記ディーゼルエンジンシステムは、ディーゼルエンジン(31)と、前記ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置(36)と、前記後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる前記有害物質の濃度を検知する第1検知装置(59)とを備える。前記無線機は、前記ディーゼルエンジンの負荷を示す情報と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度を示す情報とを前記船舶状態データとして送信する。前記コンピュータシステムは、前記ディーゼルエンジンの負荷を示す情報と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度を示す情報とから、前記ディーゼルエンジンシステムの前記有害物質を低減する性能を診断して診断データを生成し、前記診断データを保存する。
【0012】
前記ディーゼルエンジンシステムはディーゼルエンジン(31)を備える。前記船舶状態データは、前記ディーゼルエンジンの潤滑用のオイルに関するデータである。
【0013】
前記ディーゼルエンジンシステムは、前記オイルが流れるオイル流路(68)と、前記オイル流路に配置された2つの電極(71、72)と、前記2つの電極間に高周波交流電圧を印加する高周波交流電源(73)と、前記2つの電極間の電流を測定する電流計(74)と、前記2つの電極間の電圧を測定する電圧計(75)とを備える。前記第1船舶は、前記オイルの比誘電率とTBN値(全塩基価)との相関関係を示す比誘電率−TBN相関関係データ(22e)を格納するコンピュータ(22)を備える。前記コンピュータは、前記電流計及び前記電圧計の測定結果から前記オイルの比誘電率としての実測比誘電率を算出し、前記実測比誘電率から前記比誘電率−TBN相関関係データに基づいて前記オイルの劣化を判断して診断データを生成する。前記無線機は、前記診断データを前記船舶状態データとして送信する。
【0014】
本発明による船舶遠隔監視診断方法は、第1船舶(1−1)が前記第1船舶の状態に関する船舶状態データを無線送信するステップと、第2船舶(1−2、1−3)が前記船舶状態データを無線中継するステップと、陸上に設けられたコンピュータシステム(2、3)が前記船舶状態データを保存するステップとを具備する。
【0015】
前記第1船舶は、ディーゼルエンジンシステム(21)と、無線機(24)とを備える。前記第2船舶は中継器(25、93)を備える。前記船舶状態データは前記ディーゼルエンジンシステムの状態に関するデータである。前記船舶状態データを無線送信する前記ステップにおいて、前記無線機は前記船舶状態データを無線送信する。前記船舶状態データを無線中継する前記ステップにおいて、前記中継器は前記船舶状態データを無線中継する。
【0016】
前記ディーゼルエンジンシステムは、ディーゼルエンジン(31)と、前記ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置(36)と、前記後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる前記有害物質の濃度を検知する第1検知装置(59)とを備える。船舶遠隔監視診断方法は、前記第1船舶のコンピュータが、前記ディーゼルエンジンの負荷と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度から、前記ディーゼルエンジンシステムの前記有害物質を低減する性能を診断して診断データを生成するステップを更に具備する。前記船舶状態データを無線送信する前記ステップにおいて、前記診断データを前記船舶状態データとして無線送信する。
【0017】
前記ディーゼルエンジンシステムは、ディーゼルエンジン(31)と、前記ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置(36)と、前記後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる前記有害物質の濃度を検知する第1検知装置(59)とを備える。前記船舶状態データを無線送信する前記ステップにおいて、前記ディーゼルエンジンの負荷を示す情報と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度を示す情報とを前記船舶状態データとして送信する。船舶遠隔監視診断方法は、前記コンピュータシステムが、前記ディーゼルエンジンの負荷を示す情報と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度を示す情報とから、前記ディーゼルエンジンシステムの前記有害物質を低減する性能を診断して診断データを生成するステップと、前記コンピュータシステムが、前記診断データを保存するステップとを更に具備する。
【0018】
前記ディーゼルエンジンシステムはディーゼルエンジン(31)を備える。前記船舶状態データは、前記ディーゼルエンジンの潤滑用のオイルに関するデータである。
【0019】
前記ディーゼルエンジンシステムは、前記オイルが流れるオイル流路(68)と、前記オイル流路に配置された2つの電極(71、72)とを備える。船舶遠隔監視診断方法は、前記2つの電極間に高周波交流電圧を印加するステップと、前記2つの電極間の電流を測定するステップと、前記2つの電極間の電圧を測定するステップと、前記電流を測定する前記ステップ及び前記電圧を測定する前記ステップの測定結果から前記オイルの比誘電率としての実測比誘電率を算出するステップと、前記オイルの比誘電率とTBN値(全塩基価)との相関関係を示す比誘電率−TBN相関関係データ(22e)に基づいて前記実測比誘電率から前記オイルの劣化を判断して診断データを生成するステップとを更に具備する。前記船舶状態データを前記無線送信するステップにおいて、前記診断データを前記船舶状態データとして無線送信する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通信衛星を用いずに外洋を航行中の船舶の遠隔監視又は遠隔診断を可能とする船舶遠隔監視診断システム及び船舶遠隔監視診断方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る船舶遠隔監視診断システムの概念図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る船舶遠隔監視診断システムが備える船舶監視システムのブロック図である。
【図3】図3は、ディーゼルエンジンシステムのブロック図である。
【図4A】図4Aは、マイクロコンピュータに用意されるNOx基礎データの内容を示す。
【図4B】図4Bは、マイクロコンピュータに用意されるNOx基礎データの内容を示す。
【図5A】図5Aは、NOx吸着触媒のNOx除去率の変化を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、DPFの差圧の変化を示すグラフである。
【図6】図6は、オイルの比誘電率とTBNの相関関係の一例を示すグラフである。
【図7】図7は、オイル性状センサのブロック図である。
【図8A】図8Aは、電極と電極に挟まれたオイルとから構成される素子を示す。
【図8B】図8Bは、図8Aに示された素子の等価回路図である。
【図8C】図8Cは、図8Aに示された素子の複素インピーダンスを説明する説明図である。
【図9A】図9Aは、図8Aに示された素子に印加される電圧波形を示す。
【図9B】図9Bは、図9Aの電圧波形のフーリエ変換結果を示す。
【図10】図10は、第1の実施形態の第1変形例に係る電極を示す。
【図11】図11は、第1の実施形態の第2変形例に係る電極を示す。
【図12】図12は、第1の実施形態の第2変形例による効果を説明するためのグラフである。
【図13A】図13Aは、第1の実施形態の第3変形例に係る電極を示す。
【図13B】図13Bは、第1の実施形態の第3変形例に係る電極間に異物が挟まった状態を示す。
【図14】図14は、オイルの抵抗率と温度との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、本発明の第2の実施形態に係る船舶遠隔監視診断システムが備える中継システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明による船舶遠隔監視診断システム及び船舶遠隔監視診断方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る船舶遠隔監視診断システム10は、複数の船舶1と、造船会社サーバーシステム2と、運航管理会社サーバーシステム3とを備える。複数の船舶1は、船舶1−1〜1−3を含む。造船会社サーバーシステム2は、船舶1−1を建造した造船会社によって使用されるコンピュータシステムであって、陸上に設置される。造船会社サーバーシステム2は、無線送受信器11と、データサーバー12と、保守計画サーバー13とを備える。運航管理会社サーバーシステム3は、複数の船舶1の運航を管理する運航管理会社によって使用されるコンピュータシステムであって陸上に設置される。運航管理会社サーバーシステム3は、無線送受信器14と、データサーバー15と、保守計画サーバー16とを備える。複数の船舶1、及び造船会社サーバーシステム2は、通信衛星を介さない無線通信によって互いに通信可能である。複数の船舶1、及び運航管理会社サーバーシステム3は、通信衛星を介さない無線通信によって互いに通信可能である。造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3は、インターネット17を介して互いに通信可能である。
【0024】
船舶1−1は、船舶1−1の状態に関する船舶状態データを無線送信する。船舶1−2及び1−3は、船舶状態データを無線中継する。
【0025】
無線送受信器11は、無線中継された船舶状態データを受信し、受信した船舶状態データをデータサーバー12及び保守計画サーバー13に転送する。無線送受信器11は、データサーバー12及び保守計画サーバー13から受け取った船舶1−1宛てのデータを無線送信する。データサーバー12は、船舶状態データを保存する。保守計画サーバー13は、データサーバー12に蓄積された船舶状態データを用いて船舶1−1の修理、保守及び部品の手配を電子的に行い、また、船舶1−1に所望の指示を送信するために使用される。
【0026】
無線送受信器14は、無線中継された船舶状態データを受信し、受信した船舶状態データをデータサーバー15及び保守計画サーバー16に転送する。無線送受信器14は、データサーバー15及び保守計画サーバー16から受け取った船舶1−1宛てのデータを無線送信する。データサーバー15は、船舶状態データを保存する。保守計画サーバー16は、データサーバー15に蓄積された船舶状態データを用いて船舶1−1の修理、保守及び部品の手配を電子的に行い、また、各船舶1に所望の指示を送信するために使用される。
【0027】
船舶1−2及び1−3は、無線送受信器11又は14から送信された船舶1−1宛てのデータを無線中継する。船舶1−1は、無線中継された船舶1−1宛てのデータを受信する。
【0028】
船舶遠隔監視診断システム10によれば、船舶1−1が外洋を航行中であっても、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3は通信衛星を用いない無線通信により船舶1−1を遠隔監視又は遠隔診断することが可能である。通信衛星を用いないため、通信費用が削減される。運航管理会社は、自社で所有する通信インフラのみを用いて外洋を航行中の船舶1−1と通信が可能である。
【0029】
以下、船舶遠隔監視診断システム10を詳細に説明する。
【0030】
図2を参照して、船舶1−1に設けられる船舶監視システム20を説明する。船舶監視システム20は、船舶1−1の主機関としてのディーゼルエンジンシステム21と、マイクロコンピュータ22と、報知装置23と、無線機24と、中継器25と、信号増幅器26と、受信アンテナ27と、送信アンテナ28と、GPS受信機29と、外部入力端子30とを備える。マイクロコンピュータ22は、外部入力端子30を介してディーゼルエンジンシステム21に接続される。マイクロコンピュータ22は、NOx基礎データ22a、アクチュエータ基礎データ22b、LNT履歴データ22c、DPF履歴データ22d、及び比誘電率―TBN相関関係データ22eを格納する。GPS受信機29は、GPS衛生からの信号に基づいて船舶監視システム20が搭載された船舶1−1のGPS位置データを算出し、GPS位置データをマイクロコンピュータ22に出力する。
【0031】
図3を参照して、ディーゼルエンジンシステム21は、ディーゼルエンジン及びその周辺機器から構成される。ディーゼルエンジンシステム21は、ディーゼルエンジン31と、吸気通路32と、排気通路33と、ターボチャージャ34と、EGR通路35と、後処理装置36とから構成されている。本実施形態のディーゼルエンジン31は、コモンレール方式を採用しており、燃料降圧ポンプ31aとコモンレール(蓄圧室)31bを使用して燃料を噴射するように構成されている。ディーゼルエンジン31の吸気及び排気は、吸気通路32と、排気通路33と、ターボチャージャ34とによって行われる。吸気通路32は、ディーゼルエンジン31の吸気ポート31cに接続され、排気通路33は、ディーゼルエンジン31の排気ポート31dに接続されている。ターボチャージャ34は、排気通路33に排出される排気によって駆動されて吸気を圧縮する役割を有している。ディーゼルエンジン31には、ターボチャージャ34によって圧縮された吸気が供給される。後処理装置36は、排気からNOxや粒子状物質(PM)のような有害物質を取り除く。EGR通路35は、排気を吸気ポート31dに還流するために使用される通路であり、排気ポート31dと吸気ポート31dとを接続するように設けられている。
【0032】
吸気通路32には、ターボチャージャ34のコンプレッサ34aと、インタークーラ37と、スロットル弁38とが設けられている。ターボチャージャ34によって圧縮された吸気は、インタークーラ37によって冷却された後、スロットル弁38を介してディーゼルエンジン31に供給される。スロットル弁38は吸気の量を制御するために使用される。
【0033】
一方、排気通路33には、VGT(variable geometry turbocharger)アクチュエータ39と、ターボチャージャ34のタービン34bとが設けられている。VGTアクチュエータ39は、ターボチャージャ34のタービン34bに導入される排気の量を制御するために使用される。タービン34bは、それに導入された排気によって駆動され、吸気通路32に設けられたコンプレッサ34aを駆動する。これにより、吸気通路32の吸気が圧縮される。ターボチャージャ34のタービン34bから排出された排気は、後処理装置36に導入される。
【0034】
後処理装置36は、NOx吸着触媒(LNT: lean NOx trap)40と、DPF(diesel particulate Filter)41とを備えている。NOx吸着触媒40は、排気からNOxを除去するために使用され、DPF41は、排気から粒子状物質を除去するために使用される。後述されるように、NOx吸着触媒40とDPF41とは、いずれも、定期的に再生、及び交換が必要な機器であり、本実施形態において重点的に監視される機器である。
【0035】
EGR通路35は、排気ポート31dから吸気ポート31cに排気を還流させることにより、NOxの排出を低減する役割を有している。EGR通路35には、EGRクーラ42とEGR弁43とが設けられている。EGRクーラ42は、還流される排気を冷却する。EGR弁43は、還流される排気の量を制御する。
【0036】
ディーゼルエンジンシステム21の状態を把握するために、ディーゼルエンジンシステム21の各所に様々なセンサが設けられる。具体的には、ディーゼルエンジン31には、エンジン回転数Neを計測する回転数センサ51が設けられ、吸気通路32には、吸気流量(即ち、吸気通路32の空気流量)を計測するエアフローメータ52がターボチャージャ34の上流に、吸気ポート31cにおけるブースト圧(過給圧)を計測するブースト圧計53がターボチャージャ34の下流に設けられる。排気通路33における後処理装置36の入口側の位置には、空燃比(又は、空気過剰率)を検出する空燃比センサ54と、排気のNOx濃度を検出するNOxセンサ55と、排気の温度を検出する排気温度センサ56とが設けられている。更に、後処理装置36には、後処理装置36内の排気の温度を検出する排気温度センサ57と、DPF41の差圧(DPF41の両面の圧力の差)を検出するDPF差圧センサ58とが設けられている。更に、後処理装置36の出口側には、後処理装置36から排出される排気のNOx濃度を検出するNOxセンサ59と、排気の温度を検出する排気温度センサ60とが設けられている。
【0037】
本実施形態において特に注目すべきパラメータは、
(1)後処理装置36の出口側に設けられたNOxセンサ59によって検出されるNOx濃度[NOx]
(2)後処理装置36の入口側に設けられたNOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]、及び
(3)DPF差圧センサ58によって測定されるDPF41の差圧PDPF
の3つである。
【0038】
NOxセンサ59によって検出されるNOx濃度[NOx]は、ディーゼルエンジンシステム21全体としてのNOx低減性能を表すパラメータである。ディーゼルエンジンシステム21全体としてのNOx低減性能が良好に保たれている場合には、NOx濃度[NOx]は低く保たれる。一方、後処理装置36が劣化し、及び/又は、ディーゼルエンジンシステム21においてEGRが有効に機能していない場合には、NOx濃度[NOx]が増加する。
【0039】
一方、NOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]は、ディーゼルエンジンシステム21において排ガス再循環(EGR)が有効に機能しているか否かを示している。ディーゼルエンジンシステム21において排ガス再循環が有効に機能している場合には、NOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]は低くなる。一方、何らかの原因により排ガス再循環が有効に機能していない場合(例えば、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、EGR弁43のいずれかが故障している場合)、NOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]が増加する。
【0040】
NOxセンサ59によって検出されるNOx濃度[NOx]とNOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]は、NOx吸着触媒40の状態を把握するためのパラメータとしても有効である。NOxセンサ59によって検出されるNOx濃度[NOx]とNOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]からは、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρが算出可能である。NOx除去率ρは、例えば、下記式(1):
ρ={1−[NOx]/[NOx]}×100(%), ・・・(1)
から算出可能である。NOx除去率ρは、NOx吸着触媒40の状態を示すパラメータとして有効である。
【0041】
更に、DPF41の差圧PDPFは、DPF41の状態を示すパラメータとして有効である。一般に、DPF41の差圧PDPFは、ディーゼルエンジンシステム21の運用時間と共に減少し、DPF41が再生されると回復する。DPF差圧センサ58によって測定されるDPF41の差圧は、DPF41の再生、交換の時期を判断するために使用される。
【0042】
ディーゼルエンジンシステム21の制御は、ディーゼルエンジン31に取り付けられたECU(engine control unit)44によって行われる。ECU44は、上述されているようなディーゼルエンジンシステム21の各所に設置されたセンサによって得られた測定データに応答して、ディーゼルエンジンシステム21を制御する。より具体的には、ECU44は、スロットルレバー位置を示すスロットルレバーポジション信号からトルク指令Tを生成し、そのトルク指令Tと回転数センサ51によって計測されたエンジン回転数Neとからディーゼルエンジン31の燃料の噴射量を決定する。ECU44は、インジェクタ(図示されない)を制御して、決定した噴射量だけ燃料を噴射する。加えて、ECU44は、ディーゼルエンジンシステム21の各所に設置されたセンサによって得られた測定データに応答して、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の開度を制御する。
【0043】
マイクロコンピュータ22は、ディーゼルエンジンシステム21の有害物質を低減する能力を診断し、又は有害物質の低減に関連する機器の故障を診断する機能を有している。ディーゼルエンジンシステム21の診断には、ディーゼルエンジンシステム21の各所に設置されたセンサの測定データ、ディーゼルエンジンシステム21に含まれるアクチュエータの変位を示す変位データ(即ち、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の開度を示すデータ)、及びECU44によって生成されたトルク指令Tが使用される。マイクロコンピュータ22は、これらのパラメータに基づいてディーゼルエンジンシステム21を診断する。マイクロコンピュータ22によるディーゼルエンジンシステム21の診断については、後に詳細に説明する。
【0044】
報知装置23は、ディーゼルエンジンシステム21の状態を、船舶1の乗組員に知らせる役割を有している。マイクロコンピュータ22によるディーゼルエンジンシステム21の診断結果は、報知装置23に表示され、また、報知装置23から警報音として出力される。
【0045】
無線機24は、マイクロコンピュータ22によるディーゼルエンジンシステム21の診断の結果を示すデータやマイクロコンピュータ22によって収集されたデータを、上述の船舶状態データとして、送信アンテナ28を用いて造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信する。このとき、船舶状態データと一緒にGPS位置データが送信されることが好ましく、船舶状態データ及びGPS位置データは暗号化されて送信されることが好ましい。暗号化を行うことでデータが部外者に漏れることが防止される。また、無線機24は、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3から送信されて船舶1−2及び1−3によって中継されたデータや指示を受信アンテナ27を用いて受信し、そのデータや指示をマイクロコンピュータ22に転送する。
【0046】
続いて、マイクロコンピュータ22の動作、特に、マイクロコンピュータ22によるディーゼルエンジンシステム21の診断について詳細に説明する。マイクロコンピュータ22には、NOx基礎データ22aと、アクチュエータ基礎データ22bとが予め用意されており、マイクロコンピュータ22は、これらのデータを用いてディーゼルエンジンシステム21を診断する。
【0047】
NOx基礎データ22aは、図4A及び図4Bに示されているように、
(1)ベンチテストで得られた、ディーゼルエンジンシステム21の負荷(トルク指令T及びエンジン回転数Ne)と後処理装置36の出口のNOx濃度(即ち、NOxセンサ59によって検出されたNOx濃度[NOx])との関係を示すデータテーブル、及び
(2)ベンチテストで得られた、ディーゼルエンジンシステム21の負荷と、ディーゼルエンジン31の出口におけるNOx濃度(即ち、NOxセンサ55によって検出されたNOx濃度[NOx])との関係を示すデータテーブル
とから構成されている。NOx基礎データ22aに記述されているNOx濃度は、ディーゼルエンジンシステム21が正常に運転されている場合のNOx濃度の目安として使用される。
【0048】
アクチュエータ基礎データ22bは、ベンチテストで得られた、所定のパターンでスロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43を動作させた場合のブースト圧及び空気過剰率を示すデータである。言い換えれば、アクチュエータ基礎データ22bは、ベンチテストで得られた、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の開度と、ブースト圧及び空気過剰率との関係を示すデータテーブルである。アクチュエータ基礎データ22bは、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43が正常に動作している場合のブースト圧及び空気過剰率の目安として使用される。
【0049】
本実施形態では、マイクロコンピュータ22は、下記の3つの観点でディーゼルエンジンシステム21を診断する。
【0050】
(1)ディーゼルエンジンシステム21全体のNOx低減性能
マイクロコンピュータ22は、後処理装置36の出口側に設けられたNOxセンサ59によって検出されるNOx濃度[NOx]から、ディーゼルエンジンシステム21全体のNOx低減性能を診断し、ディーゼルエンジンシステム21全体のNOx低減性能を示すシステム診断データを生成する。システム診断データは、上述の船舶状態データとして、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信され、データサーバー12、15に保存される。データサーバー12、15に保存されたシステム診断データは、保守計画サーバー13、15を介してデータサーバー12、15にアクセスすることによって閲覧することができ、ディーゼルエンジンシステム21の修理、保守、部品の手配に役立てることができる。
【0051】
この診断において留意すべき点は、後処理装置36の出口におけるNOx濃度の正常範囲は、ディーゼルエンジンシステム21の負荷(即ち、トルク指令T及びエンジン回転数Ne)によって変動することである。したがって、NOxセンサ59によって検出されたNOx濃度[NOx]を、特定の一定の閾値と比較するだけでは、ディーゼルエンジンシステム21のNOx低減性能を正確に診断することはできない。
【0052】
このような状況に対処するために、本実施形態では、ディーゼルエンジンシステム21の負荷とNOx基礎データ22aから後処理装置36の出口のNOx濃度の正常範囲が決定され、NOxセンサ59によって検出されたNOx濃度[NOx]がその正常範囲から外れている場合、ディーゼルエンジンシステム21のNOx低減性能に異常があると判断される。詳細には、ある時点におけるトルク指令T及びエンジン回転数NeがECU44から通知されると、マイクロコンピュータ22は、そのトルク指令T及びエンジン回転数Neを基にしてNOx基礎データ22aのデータテーブルに対してテーブルルックアップを行い(必要であれば更に補間を行い)、これにより、後処理装置36の出口の適正なNOx濃度[NOx]を算出する。NOxセンサ59によって検出されたNOx濃度[NOx]が、所定の係数K(0<K<1)について下記式:
[NOx]≦K・[NOx], ・・・(2)
を満足しない場合、マイクロコンピュータ22は、後処理装置36の出口のNOx濃度が異常であると診断する。
【0053】
マイクロコンピュータ22は、後処理装置36の出口のNOx濃度が異常であると診断すると、その旨を、報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。
【0054】
加えて、マイクロコンピュータ22は、後処理装置36の出口のNOx濃度が異常であると診断すると、その旨を示す情報をシステム診断データに挿入して造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信する。これにより、船舶1−1の製造業者(造船会社)及び管理者(運航管理会社)は、船舶1−1のディーゼルエンジンシステム21のNOx低減性能が低下していることを知ることができる。
【0055】
(2)後処理装置36の状態
更に、マイクロコンピュータ22は、後処理装置36の状態を診断し、後処理装置36の状態を示す後処理装置診断データを生成する。例えば、NOx吸着触媒40やDPF41に保守が必要な場合(例えば、再生や交換が必要な場合)は、マイクロコンピュータ22は、その旨を示す情報を含むように後処理装置診断データを生成する。後処理装置診断データは、上述の船舶状態データとして、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信され、データサーバー12、15に保存される。データサーバー12、15に保存された後処理装置診断データは、保守計画サーバー13、15を介してデータサーバー12、15にアクセスすることによって閲覧することができ、後処理装置36の修理、保守、部品の手配に役立てることができる。
【0056】
本実施形態では、後処理装置36の状態の診断は、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρ、及び、DPF差圧センサ58によって測定されたDPF41の差圧PDPFに基づいて行われる。上述のように、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρは、NOxセンサ59によって検出されるNOx濃度[NOx]とNOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]とから式(1)によって算出可能である。
【0057】
一般に、図5Aに示されているように、NOx除去率ρは、ディーゼルエンジンシステム21の運用時間と共に減少し、NOx吸着触媒40が再生されると回復する。マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρを逐次に算出し、算出したNOx除去率ρをLNT履歴データ22cとして保存する。
【0058】
マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρが所定の基準値よりも低い場合、NOx吸着触媒40の性能が低下したと診断し、その旨を報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。加えて、マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40の性能が低下した旨を示す情報を含む後処理装置診断データを生成して、上述の船舶状態データとして、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信する。これにより、船舶1の製造業者及び管理者は、NOx吸着触媒40のNOx低減性能が低下していることを知ることができる。
【0059】
同様に、マイクロコンピュータ22は、DPF41の差圧PDPFが所定の基準値よりも低い場合、DPF41のPM除去性能が低下したと診断し、その旨を報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。加えて、マイクロコンピュータ22は、DPF41の性能が低下した旨を示す情報を含む後処理装置診断データを生成して、上述の船舶状態データとして、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信する。これにより、船舶1の製造業者及び管理者は、DPF41の性能が低下していることを知ることができる。
【0060】
本実施形態では、マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρに応答してNOx吸着触媒40を自動的に再生するように構成される。典型的には、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρが所定の基準値ρminまで低下すると、マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40を自動的に再生する。NOx吸着触媒40を再生すると、マイクロコンピュータ22は、その旨をLNT履歴データ22cに記録する。
【0061】
加えて、マイクロコンピュータ22は、DPF41の差圧PDPFに応答してDPF41を自動的に再生するように構成されることが好ましい。典型的には、図5Bに示されているように、DPF41の差圧PDPFが所定の基準値βminまで低下すると、マイクロコンピュータ22は、DPF41を自動的に再生する。DPF41を再生すると、マイクロコンピュータ22は、その旨をDPF履歴データ22dに記録する。
【0062】
また、ディーゼルエンジンシステム21は、NOx吸着触媒40を手動で再生するように構成されてもよい。この場合、マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρに基づいてNOx吸着触媒40を再生すべきか否かを判断し、NOx吸着触媒40を再生すべきと判断した場合には、その旨を、報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。NOx吸着触媒40が手動で再生されると、マイクロコンピュータ22は、その旨をLNT履歴データ22cに記録する。
【0063】
同様に、ディーゼルエンジンシステム21は、DPF41を手動で再生するように構成されてもよい。この場合、マイクロコンピュータ22は、DPF41の差圧PDPFに基づいてDPF41を再生すべきか否かを判断し、DPF41を再生すべきと判断した場合には、その旨を、報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。DPF41が手動で再生されると、マイクロコンピュータ22は、その旨をDPF履歴データ22dに記録する。
【0064】
NOx吸着触媒40のNOx吸着能力はNOx吸着触媒40を再生しても完全には回復しないから、NOx吸着触媒40は適切な時期に交換する必要がある。したがって、マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40を交換すべき時期をNOx吸着触媒40のNOx除去率ρ及び/又はLNT履歴データ22cから判断するように構成されていることが好ましい。本実施形態では、NOx吸着触媒40が所定の回数だけ再生された後、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρが所定値まで低下すると、マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40を交換すべきであると判断する。そうするかわり、再生直後のNOx吸着触媒40のNOx除去率ρが所定値を超えない場合、マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40を交換すべきであると判断してもよい。マイクロコンピュータ22は、NOx吸着触媒40を交換すべきであると判断すると、その旨を報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。
【0065】
NOx吸着触媒40を交換すべき旨の警告は、段階的に行われてもよい。例えば、NOx吸着触媒40のNOx除去率ρ及び/又はLNT履歴データ22cからNOx吸着触媒40の交換まで所定時間である(例えば、1ヶ月である)と判断すると、その旨を報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。NOx吸着触媒40が交換されると、マイクロコンピュータ22は、その旨をLNT履歴データ22cに記録する。
【0066】
同様に、DPF41のPM除去性能はDPF41を再生しても完全には回復しないから、DPF41は適切な時期に交換する必要がある。したがって、マイクロコンピュータ22は、DPF41を交換すべき時期をDPF41の差圧PDPF及び/又はDPF履歴データ22dから判断するように構成されていることが好ましい。本実施形態では、DPF41が所定の回数だけ再生された後、DPF41の差圧PDPFが所定値まで低下すると、マイクロコンピュータ22は、DPF41を交換すべきであると判断する。そうするかわり、再生直後のDPF41の差圧PDPFが所定値を超えない場合、マイクロコンピュータ22は、DPF41を交換すべきであると判断してもより。マイクロコンピュータ22は、DPF41を交換すべきであると判断すると、その旨を報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。
【0067】
DPF41を交換すべき旨の警告は、段階的に行われてもよい。例えば、DPF41の差圧PDPF及び/又はDPF履歴データ22dからDPF41の交換まで所定時間である(例えば、1ヶ月である)と判断すると、その旨を報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。DPF41が交換されると、マイクロコンピュータ22は、その旨をDPF履歴データ22dに記録する。
【0068】
LNT履歴データ22c及びDPF履歴データ22dは、上述の船舶状態データとして、定期的に造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信される。これにより、船舶1の製造業者及び管理者は、NOx吸着触媒40のNOx低減性能及びDPF41のPM除去性能、並びに、後処理装置36になされた保守の状況を逐次に知ることができる。
【0069】
(3)排ガス再循環(EGR)の診断
NOx排出量を低減するためには、ディーゼルエンジンシステム21において排ガス再循環(EGR)が正しく機能していることが重要である。排ガス再循環を機能させるためには、排ガス再循環に関与するアクチュエータ、即ち、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43が正常に動作している必要がある。スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、又はEGR弁43のいずれかが故障していると、期待されている通りに排ガス再循環が行われず、ディーゼルエンジン31の出口のNOx濃度が増加してしまう。
【0070】
排ガス再循環を正しく機能させるために、マイクロコンピュータ22は、排ガス再循環に関与するアクチュエータ、即ち、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の故障を診断し、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の故障の有無を示すEGR診断データを生成する。EGR診断データは、上述の船舶状態データとして、無線通信によって造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信され、データサーバー12、15に保存される。データサーバー12、15に保存されたEGR診断データは、保守計画サーバー13、15を介してデータサーバー12、15にアクセスすることによって閲覧することができる。
【0071】
本実施形態では、マイクロコンピュータ22は、後処理装置36の入口側に設けられたNOxセンサ55によって検出されたNOx濃度[NOx]とNOx基礎データ22aとから、ディーゼルエンジンシステム21においてEGRが充分に機能しているか、即ち、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43が正常に動作しているかを診断する。ここで、ディーゼルエンジン31の出口におけるNOx濃度の正常範囲は、ディーゼルエンジンシステム21の負荷(即ち、トルク指令T及びエンジン回転数Ne)によって変動するから、ディーゼルエンジンシステム21においてEGRが充分に機能しているかの判断においては、NOxセンサ55によって検出されたNOx濃度[NOx]のみならず、ディーゼルエンジンシステム21の負荷が参照される。
【0072】
具体的には、マイクロコンピュータ22は、ディーゼルエンジンシステム21の負荷とNOx基礎データ22aからディーゼルエンジン31の出口におけるNOx濃度の正常範囲を決定する。後処理装置36の入口側に設けられたNOxセンサ55によって検出されたNOx濃度[NOx]がその正常範囲から外れている場合、マイクロコンピュータ22は、排ガス再循環が正しく機能していない、即ち、排ガス再循環に関与するアクチュエータに故障があると判断する。
【0073】
更に詳細には、ある時点におけるトルク指令T及びエンジン回転数NeがECU44から通知されると、マイクロコンピュータ22は、そのトルク指令T及びエンジン回転数Neを基にしてNOx基礎データ22aのデータテーブルに対してテーブルルックアップを行い(必要であれば更に補間を行い)、これにより、ディーゼルエンジン31の出口の適正なNOx濃度[NOx]を算出する。NOxセンサ55によって検出されたNOx濃度[NOx]が、所定の係数K(0<K<1)について下記式(3):
[NOx]≦K・[NOx], ・・・(3)
を満足しない場合、マイクロコンピュータ22は、EGRが十分に機能していない、即ち、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のうちの少なくとも一の機器に故障があると判断する。
【0074】
マイクロコンピュータ22は、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のうちの少なくとも一の機器に故障があると診断すると、その旨を、報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。加えて、マイクロコンピュータ22は、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のうちの少なくとも一の機器に故障があると診断すると、その旨を示す情報をEGR診断データに挿入して、上述の船舶状態データとして、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信する。これにより、船舶1−1の製造業者及び管理者は、船舶1−1のスロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のうちの少なくとも一の機器に故障があることを知ることができる。
【0075】
上述のように運用状態でスロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の故障の有無を判断することは、必ずしも容易なことではない。スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の故障の有無をより正確に判断するためには、マイクロコンピュータ22は、所定のパターンでスロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43を動作させた場合のブースト圧及び空気過剰率を測定し、測定されたブースト圧及び空気過剰率と、アクチュエータ基礎データ22bに記述されたブースト圧及び空気過剰率とを比較することによってスロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の故障の有無を判断することが好ましい。ブースト圧の測定は、ディーゼルエンジン31の吸気ポート31cに設けられたブースト圧計53によって行われ、空気過剰率の測定は、空燃比センサ54によって行われる。
【0076】
詳細には、マイクロコンピュータ22は、ECU44に、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43を所定開度に設定するように指示する。更に、マイクロコンピュータ22は、ブースト圧計53及び空燃比センサ54の出力から、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43が当該所定開度に設定された状態のブースト圧及び空気過剰率を取得する。
【0077】
一方、マイクロコンピュータ22は、アクチュエータ基礎データ22bから、ブースト圧及び空気過剰率の正常範囲を決定する。具体的には、マイクロコンピュータ22は、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43が設定された開度を基にしてアクチュエータ基礎データ22bのデータテーブルに対してテーブルルックアップを行い(必要であれば更に補間を行い)、これにより、適正なブースト圧PSTD及び空気過剰率γSTDを算出する。ブースト圧の正常範囲は、k・PSTD以上、k・PSTD以下と決定される。ここでkは、0より大きく1より小さい所定の定数であり、kは、1より大きい所定の定数である。同様に、空気過剰率の正常範囲は、k・γSTD以上、k・γSTD以下と決定される。ここでkは、0より大きく1より小さい所定の定数であり、kは、1より大きい所定の定数である。
【0078】
マイクロコンピュータ22は、ブースト圧計53によって測定されたブースト圧と、空燃比センサ54の出力から得られた空気過剰率とのうちの少なくとも一方が正常範囲から外れている場合、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のうちの少なくとも一が故障していると判断する。
【0079】
マイクロコンピュータ22は、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のうちの少なくとも一の機器に故障があると診断すると、その旨を、報知装置23の警告灯及び/又は報知装置23によって発せられた警告音によって乗組員に知らせる。加えて、マイクロコンピュータ22は、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のうちの少なくとも一の機器に故障があると診断すると、その旨を示す情報をEGR診断データに挿入して、上述の船舶状態データとして、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信する。これにより、船舶1−1の製造業者及び管理者は、船舶1−1のスロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のうちの少なくとも一の機器に故障があることを知ることができる。
【0080】
船舶内は、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43のような電子機器にとって過酷な使用環境であるため、上述のようにスロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の故障診断を行うことは重要である。
【0081】
なお、スロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の故障の判断においては、ブースト圧及び空気過剰率の両方が使用される必要はない。ブースト圧及び空気過剰率の一方のみがスロットル弁38、VGTアクチュエータ39、及びEGR弁43の故障の判断に使用されてもよい。また、空気過剰率の代わりに空燃比が使用されてもよい。空気過剰率と空燃比は等価のパラメータである。
【0082】
マイクロコンピュータ22は、ディーゼルエンジンシステム21に何らの異常がない場合でも、ディーゼルエンジンシステム21の状態を示す情報を、上述の船舶状態データとして、定期的に造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信することが好ましい。例えば、各時刻におけるディーゼルエンジン31の負荷(即ち、トルク指令T及びエンジン回転数)、NOxセンサ59によって検出されるNOx濃度[NOx]、NOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]、及びDPF差圧センサ58によって測定されるDPF41の差圧PDPFが造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信され、データサーバー12、15に保存される。データサーバー12、15に保存されたこれらのデータは、保守計画サーバー13、15を介してデータサーバー12、15にアクセスすることによって閲覧することができ、ディーゼルエンジンシステム21の修理、保守、部品の手配に役立てることができる。
【0083】
なお、本実施形態では、ディーゼルエンジン31の負荷を表すパラメータとして、回転数センサ51によって測定されたエンジン回転数Neと、ECU44によって生成されたトルク指令Tとが使用されているが、ディーゼルエンジン31の負荷は、他のパラメータ、またはパラメータの組み合わせによって表されてもよい。例えば、トルク指令Tの代わりに、スロットルレバーポジション信号に示されているスロットルレバー位置が使用されてもよい。この場合、NOx基礎データ22aは、
(1)ベンチテストで得られた、スロットルレバー位置及びエンジン回転数Neと、後処理装置36の出口のNOx濃度との関係を示すデータテーブルと、
(2)ベンチテストで得られた、スロットルレバー位置及びエンジン回転数Neと、ディーゼルエンジン31の出口におけるNOx濃度との関係を示すデータテーブル
とで構成される。マイクロコンピュータ22は、スロットルレバー位置及びエンジン回転数Neと、後処理装置36の出口のNOx濃度とからディーゼルエンジンシステム21全体のNOx低減性能を診断する。加えてマイクロコンピュータ22は、スロットルレバー位置及びエンジン回転数Neと後処理装置36の入口のNOx濃度とから排ガス再循環に関与するアクチュエータの故障を診断する。
【0084】
また、本実施形態では、後処理装置36におけるNOxの除去にNOx吸着触媒40が使用されているが、その代わりに、尿素SCR(Selective Cataryic Reduction)還元システムが使用されてもよい。尿素SCR還元システムが使用される場合には、尿素SCR還元システムのNOx低減性能が診断される。
【0085】
船舶1−2及び1−3にはそれぞれ他の船舶管理システム20が設けられている。船舶1−2に設けられた船舶管理システム20の中継器25は、船舶1−1から送信されたデータを無線中継する。このとき、船舶1−2に設けられた船舶管理システム20の信号増幅器26は、無線中継されるデータの信号を増幅する。船舶1−3に設けられた船舶管理システム20の中継器25は、船舶1−1から送信されて船舶1−2によって無線中継されたデータを無線中継する。このとき、船舶1−3に設けられた船舶管理システム20の信号増幅器26は、無線中継されるデータの信号を増幅する。造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3のデータサーバー12、15は、船舶1−1から送信されて船舶1−2及び1−3で無線中継されたデータを保存する。なお、データが船舶1−1から送信されてから造船会社サーバーシステム2又は運航管理会社サーバーシステム3に受信されるまでに無線中継する船舶の数は上述の例に限定されない。データが船舶1−1から送信されてから造船会社サーバーシステム2又は運航管理会社サーバーシステム3に受信されるまでに少なくとも一隻以上の船舶によって無線中継されればよい。
【0086】
本実施形態では、マイクロコンピュータ22が船舶1−1に設けられ、船舶1−1において、ディーゼルエンジンシステム21の診断が行われているが、マイクロコンピュータ22に相当する機能が、造船会社サーバーシステム2又は運航管理会社サーバーシステム3に用意されてもよい。この場合、ディーゼルエンジンシステム21の状態を示す情報が、上述の船舶状態データとして、定期的に造船会社サーバーシステム2又は運航管理会社サーバーシステム3に送信され、送信された情報に基づいてディーゼルエンジンシステム21の診断が行われる。造船会社サーバーシステム2又は運航管理会社サーバーシステム3は、診断結果を示す診断データを生成して保存する。本実施形態では、造船会社サーバーシステム2又は運航管理会社サーバーシステム3に送信される情報は、各時刻におけるディーゼルエンジン31の負荷(即ち、トルク指令T及びエンジン回転数)、NOxセンサ59によって検出されるNOx濃度[NOx]、NOxセンサ55によって検出されるNOx濃度[NOx]、及びDPF差圧センサ58によって測定されるDPF41の差圧PDPFを含んでいる。この場合でも、ディーゼルエンジンシステム21の診断は、上述されているように、
(1)ディーゼルエンジンシステム21全体のNOx低減性能
(2)後処理装置36の状態、及び
(3)排ガス再循環(EGR)の診断
の3つの観点から行われることが好ましい。
【0087】
本実施形態によれば、排気に含まれる有害物質を低減するための機器の故障が早期に検知されるので、又は、排気に含まれる有害物質を低減するための機器の保守が適切に行われるので、排気に含まれる有害物質が多い状態で船舶1−1が運航されることを防止できる。更に、排気に含まれる有害物質を低減する性能が悪化したことが、船舶1−1の乗組員だけでなく、運航管理会社や造船会社にも自動的に伝達されるため、排気に含まれる有害物質を低減する性能が悪化した状態で船舶1−1が運航されるリスクを大幅に下げることができる。
【0088】
次に、ディーゼルエンジン31の潤滑オイルの性状管理を説明する。
【0089】
図3に示すように、ディーゼルエンジンシステム21は、ディーゼルエンジン31の潤滑用のオイルを貯えるオイルタンク65と、オイルタンク65とディーゼルエンジン31を接続するオイル流路68と、オイル性状センサ70とを備える。オイルはオイルタンク65からオイル流路68を通ってディーゼルエンジン31に供給され、ディーゼルエンジン31からオイル流路68を通ってオイルタンク65に戻される。オイル性状センサ70は、ディーゼルエンジン31に供給されるオイルの性状を検出するために設けられてもよく、オイルタンク65に戻されるオイルの性状を検出するために設けられてもよい。
【0090】
オイルの性状管理は、オイルの比誘電率とTBN(全塩基価)の相関関係に基づいて実行される。TBNはオイルの酸中和能力と清浄度を示す基準として利用され、オイルが劣化するに従って低くなる値である。オイルの比誘電率とTBN値は、図6に示すように互いに相関関係がみられる。即ち、オイルのTBN値が低くなるにつれてオイルの比誘電率が上昇する。この相関関係は、オイルの種類によって固有のものである。予め実験等により相関関係を求めてもよいし、同一種類のオイルにおいては異なる船舶から相関関係を援用してもよい。
【0091】
図7を参照して、オイル性状センサ70は、オイル流路68を流れるオイル100の劣化を検出するものであり、オイル流路68に配置される2つの電極71、72と、2つの電極71、72間に高周波交流電圧を印加する高周波交流電源73と、高周波交流電圧を印加したときに電極71、72間に流れる電流を計測する電流計24と、高周波交流電圧を印加したときの電極71、72間の電圧を計測する電圧計25とを備える。電流計24は、計測した電流値をマイクロコンピュータ22に出力する。電圧計25は、計測した電圧値をマイクロコンピュータ22に出力する。尚、電流及び電圧は連続的或いは間欠的に測定されるが、好適には連続的に測定するとよい。
【0092】
電極71、72は、互いに対向配置される2つの電極であって、その形状は特に限定されず、板状電極であっても環状電極であってもよい。好適には、図8Aに示すように間隔dの並行平板で、平面の面積Sが既知で平面形状が同一のものを使用し、オイル流路68に設置する。尚、オイル流路68にオイルフィルタが設けられる場合には、2枚の電極71、72は、オイルフィルタの後方(オイル100の流れにおける下流)に設置することが望ましい。電流計24及び電圧計25は、例えば、それぞれ電流及び電圧の瞬時値を出力できる形態のものを使用する。高周波交流電源73としては、正弦波の交流電圧を出力するもので、その周波数は高周波領域に設定される。高周波領域に関しては後で詳述する。なお、オイル流路68に複数個のオイル性状センサ70が設けられてもよい。
【0093】
マイクロコンピュータ22は、電流値及び電圧値に基づいてオイル100の比誘電率を算出し、比誘電率と比誘電率―TBN相関関係データ22eとに基づいてオイル100の劣化状態を判断して診断データを生成する。比誘電率―TBN相関関係データ22eは、予め求められたオイル100の比誘電率とTBN(全塩基価)の相関関係を記述している。無線機24は、劣化状態の判断結果を示す診断データを、上記船舶状態データとして、造船会社サーバーシステム2及び運航管理会社サーバーシステム3に送信する。
【0094】
放置装置23は、劣化状態の判断結果を報知する。報知装置23は、劣化判断の結果を報知するものであればどのような形態でもよく、例えば、オイル100が劣化したと判断されたときに、アラーム(警報音)を出力するもの、表示パネル上に所定領域を点滅表示するもの、或いは、オイル100が劣化した旨のメッセージを表示出力するもの等、種々の様態が考えられる。
【0095】
次に、マイクロコンピュータ22におけるデータ処理及び判定処理について詳細に説明する。マイクロコンピュータ22は、記録媒体(不図示)に記録されたコンピュータプログラムに基づいて以下の処理を実行する。なお、電流計24からは電流の実効値が、また電圧計25からは電圧の実効値が、それぞれマイクロコンピュータ22に送られてくるものとする。
【0096】
マイクロコンピュータ22は、電流の実効値と電圧の実効値とに基づいて複素インピーダンスZの絶対値(|Z|=|V|/|I|)を求める。本実施形態では、電極71、72に印加される交流電圧の周波数を高周波領域に設定しているため、複素インピーダンスZの逆数1/|Z|のうち抵抗値Rは考慮せず、複素インピーダンスZの逆数1/|Z|から静電容量値Cのみを求める。
【0097】
マイクロコンピュータ22は、静電容量値Cからオイル100の比誘電率εを算出する。さらに、マイクロコンピュータ22は、比誘電率―TBN相関関係データ22eに基づいて、オイル100の比誘電率εからTBN値を求め、TBN値に基づいてオイルの劣化状態を判断する。
【0098】
尚、両電極71、72に印加する交流電圧の周波数を高周波領域内にて変化させて計測を行うことようにしてもよい。交流電圧の周波数を可変とすることで、比誘電率εの感度調節を行うことが可能となり、最適な周波数で比誘電率を測定することができ、測定精度を向上させることができる。例えば、予備実験により、高周波領域内にて複数の周波数における計測を行って、オイル100の性質に応じて、より比誘電率εの感度が高く、より適正に劣化判断を行い得る交流電圧の周波数帯を確認しておくことができる。
【0099】
ここで、比誘電率―TBN相関関係データ22eにおいてオイル100の劣化状態に基づいた比誘電率の管理限界値を図6に示されるように予め設定しておき、算出された比誘電率が管理限界値を超えたときに、報知装置23が報知を実行し、無線機24が送信を実行することが好ましい。
【0100】
上記したように、オイルの劣化が進むにつれてTBN値は低下するが、オイルが劣化したと判断されるTBN値に対応する比誘電率を管理限界値に設定しておき、比誘電率が管理限界値を上回った時に報知及び送信を実行することにより、船舶1−1の乗組員、造船会社、及び運航管理会社はオイル交換時期を的確に把握することが可能となる。
【0101】
次に、本実施形態に係るオイル性状管理装置における測定原理について説明する。
まず、図8Aに示した電極71、72及び電極間に介在するオイル100の等価電気モデルとして、図8Bに示すような、抵抗R(Rは構造体の抵抗値)及び静電容量C(電極間に介在するオイルの静電容量値)による並列回路を仮定する。交流電源73により印加される電圧をVとし、電圧Vの周波数をωとし、流れる電流をI、抵抗Rを流れる電流をI、静電容量Cを流れる電流をIとするとき、回路方程式は、次式で示される。
【0102】
I=I+I …(4)
V=R・I …(5)
V=(1/jωC)・I …(6)
【0103】
よって、式(4)〜(6)より、並列回路の複素インピーダンスZは次式で求められる。
Z=V/I=V/(((1/R)+jωC)・V) …(7)
=1/((1/R)+jωC)
【0104】
ここで、複素インピーダンスZの逆数1/Zを、複素平面上にプロットすると図8Cに示すごとくなる。同図において、横軸は複素インピーダンスZの逆数1/Zの実部Re[1/Z]であり、縦軸は複素インピーダンスZの逆数1/Zの虚部Im[1/Z]である。また、中心からプロットした点までの直線距離が複素インピーダンスZの逆数1/Zの大きさ1/|Z|であり、θは複素インピーダンスZの逆数1/Zの偏角である。
【0105】
図8Cに示すように、計測により得られた複素インピーダンスZについて、その逆数1/Zの実部が抵抗成分(1/R)に、逆数1/Zの虚部が容量成分(ωC)に対応するため、複素インピーダンスZの逆数1/|Z|及び偏角θがわかれば、抵抗値R及び静電容量値Cが求まる。さらに、電極71、72及び電極間に介在するオイル100について、電極71、72の間隔d及び平面の面積Sが一定で既知であるため、得られた抵抗値Rおよび静電容量値Cから、それぞれオイル100の導電率σ及び誘電率εを求めることができる。
【0106】
ここで、オイル100の導電率は油の劣化状態、温度、ベースオイルの種類などによってばらつきが見られることがあるため、本実施形態では上記式(7)から誘電率のみを精度良く求めるために、交流電圧の周波数を高周波領域に設定する。即ち、上記式(7)において、ωを高い値に設定することで、分母の第1項、すなわち抵抗成分を近似的に無視できることになる。図8Cで考えると、ωを十分大きく設定すると、抵抗成分より容量成分の方がはるかに大きくなり、近似的に電極間に介在するオイル100の等価電気モデルを一つのコンデンサに置き換えることができる。その場合は偏角θがπ/2となるため、偏角θの計測も不要となる。好適には、交流電圧の周波数域は、複素インピーダンスZの逆数1/Zの実部(1/R)が、虚部(jωC)の1/100以下となるような高周波領域とすることが好ましい。
【0107】
また、交流電圧の波形として正弦波を用いる場合を説明したが、矩形波、三角波、のこぎり波又は逆のこぎり波を用いてもよい。この場合、例えば、図9Aに示される交流電圧の波形をフーリエ変換すると、図9Bに示されるように基本周波数の整数倍となる高調波成分が得られ、それぞれの高調波成分について比誘電率を求めることにより、複数の周波数について比誘電率を同時に取得することができる。即ち、矩形波、三角波、のこぎり波又は逆のこぎり波を用いることにより複数の周波数における情報を獲得することができ、一度の計測でより適正な周波数の目安を付けることができ、また、複数の周波数ポイントでの比誘電率εを得て、オイル100の劣化判断に供することができるため、より高精度の劣化判断が可能となる。
【0108】
本実施形態によれば、ディーゼルエンジン31の運転を止めることなくリアルタイムでオイル100の劣化センシングが可能である。更に、TBN値に基づいて適切なオイル交換時期を把握するため、不必要なオイル交換を行わずにすむ。更に、オイル100が劣化したことが、船舶1−1の乗組員だけでなく運航管理会社や造船会社にも自動的に伝達されるため、オイル100が劣化した状態で船舶1−1が運航されるリスクを大幅に下げることができる。
【0109】
(第1の実施形態の第1変形例)
図10を参照して、本実施形態の第1変形例に係るオイル性状センサ70を説明する。オイル性状センサ70は、超音波振動子81と、重り82とを更に備える。超音波振動子81が電極の少なくとも何れか一方71(72)に接合され、超音波振動子81の電極71(72)との接合部とは異なる側の端部に重り82が取り付けられる。尚、超音波振動子81は、両電極71、72に設けることが好ましく、これにより両電極を洗浄することが可能となる。ここで超音波振動子81とは、電気エネルギをひずみに変換する素子であり、電歪振動子や磁歪振動子等が用いられるが、好適にはピエゾ素子等の圧電素子が好適に用いられる。誘電率の測定を停止して超音波振動子81に電圧を印加すると超音波振動子81の振動による慣性力により電極71(72)が加振される。これにより、電極71(72)に付着したすす等の異物が除去され、電極71(72)が洗浄される。
【0110】
(第1の実施形態の第2変形例)
図11を参照して、本実施形態の第2変形例に係るオイル性状センサ70を説明する。オイル性状センサ70は、少なくとも何れかの電極71(72)の電極面に設けられた高誘電率物質層83を更に備える。高誘電率物質層83により、両電極71、72により形成される仮想的なコンデンサの静電容量が大きくなる。高誘電率物質層83は、電極面に対して均一な肉厚となるように配置される。高誘電率物質層83は、例えばチタン酸バリウム(比誘電率:約1200)、二酸化チタン(比誘電率:約100)のようなオイル100より比誘電率の高い物質により形成される。高誘電率物質層83を備えるオイル性状センサ70を用いて比誘電率を求め、求めた比誘電率から高誘電率物質層83に相当する値を差し引くことでオイル100の比誘電率を算出することができる。
【0111】
一般に、オイルの比誘電率は約2と小さいが、高誘電率体を電極間に挿入することにより図12に示すように比誘電率をオフセットすることができ、高い精度で比誘電率を測定することが可能となる。
【0112】
(第1の実施形態の第3変形例)
図13A及び図13Bを参照して、本実施形態の第3変形例に係るオイル性状センサ70を説明する。オイル性状センサ70は、少なくとも何れかの電極71(72)の電極面に設けられた圧電効果物質層84を更に備える。圧電効果物質層84は、高誘電率と、超音波振動作用(圧電効果)とを有する。圧電効果物質層84は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含む。圧電効果物質層84は、電極面に対して均一な肉厚となるように配置され、薄板状に形成したものを複数積層してもよい。本変形例によれば、高誘電率を有する圧電効果物質層84を電極間に挿入しているため、比誘電率を高い精度で検出することができる。更に、本変形例によれば、超音波洗浄作用(圧電効果)を有する圧電効果物質層84が電極71(72)の電極面に設けられているため、鉄粉、カーボン等の異物85がオイル100を流れてきて電極間に詰まった場合に両電極間がショートして圧電効果物質層84に交流電圧が印加され、圧電効果により電極71、72が加振される。その結果、電極間に介在する異物85が超音波振動により取り除かれる。これにより、電極洗浄のために定期的にスイッチ操作等の作業を行うことなく、電極間がショートしたときに自動的に洗浄効果を発揮することが可能となる。
【0113】
(第1の実施形態の第4変形例)
本実施形態の第4変形例に係るオイル性状センサ70を説明する。オイル性状センサ70は、オイル流路68の電極71、72より上流側の部分に設けられた温度調節部(不図示)を更に備える。温度調節部は、例えばペルチェ素子である。温度調節部は、オイル100の温度を所定の一定温度に調節する。図14に示すように、オイルの抵抗率は温度の変化に敏感であるため、電流及び電圧を計測する前に、予め測定に適した温度にオイルを温度調整することにより、温度変化の影響を無くし、より安定した計測を実施することが可能となる。
【0114】
本実施形態及び本実施形態の変形例において、通信機24は、オイル100の比誘電率又はTBN値を上記船舶状態データとして送信してもよい。この場合、サーバーシステム2及び3が、マイクロコンピュータ22と同様に、オイル100の比誘電率又はTBN値に基づいて、オイル100の劣化状態を判断して診断データを生成する。サーバーシステム2及び3は、診断データを保存する。
【0115】
以上、受信アンテナ27及び送信アンテナ28が無線機24と中継器25とによって共用される場合を説明した。以下に述べるように、船舶監視システム20の無線送受信機能と無線中継機能とが別々の装置により実現されてもよい。
【0116】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態において、各船舶1には、船舶監視システム20から中継器25及び信号増幅器26を除いたものと、図15に示す中継システム90とを備える。中継システム90は、受信アンテナ91と、送信アンテナ92と、無線中継器93とを備える。無線中継器93は、中継器25の機能と、信号増幅器26の機能とを有する。
【0117】
上記実施の形態に様々な変更を加えることが可能である。例えば、船舶状態データは、船舶1−1に搭載されたディーゼルエンジンシステム21以外の設備の状態に関するデータであってもよい。
【符号の説明】
【0118】
10:船舶遠隔監視診断システム
1(1−1〜1−3):船舶
2:造船会社サーバーシステム
3:運航管理会社サーバーシステム
11:無線送受信器
12:データサーバー
13:保守計画サーバー
14:無線送受信器
15:データサーバー
16:保守計画サーバー
17:インターネット
20:船舶監視システム
21:ディーゼルエンジンシステム
22:マイクロコンピュータ
22a:NOx基礎データ
22b:アクチュエータ基礎データ
22c:LNT履歴データ
22d:DPF履歴データ
22e:比誘電率―TBN相関関係データ
23:報知装置
24:無線機
25:中継器
26:信号増幅器
27:受信アンテナ
28:送信アンテナ
29:GPS受信機
30:外部入力端子
31:ディーゼルエンジン
31a:燃料高圧ポンプ
31b:コモンレール
31c:吸気ポート
31d:排気ポート
32:給気通路
33:排気通路
34:ターボチャージャ
34a:コンプレッサ
34b:タービン
35:EGR通路
36:後処理装置
37:インタークーラ
38:スロットル弁
39:VGTアクチュエータ
40:NOx吸着触媒
41:DPF
42:EGRクーラ
43:EGR弁
44:ECU
51:回転数センサ
52:エアフローメータ
53:ブースト圧計
54:空燃比センサ
55:NOxセンサ
56、57:排気温度センサ
58:DPF差圧センサ
59:NOxセンサ
60…排気温度センサ
65…オイルタンク
68…オイル流路
70…オイル性状センサ
71、72:電極
73:高周波交流電源
74:電流計
75:電圧計
81:超音波振動子
82:重り
83:高誘電率物質層
84:圧電効果物質層
85:異物
90:中継システム
91:受信アンテナ
92:送信アンテナ
93:無線中継器
100…オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1船舶と、
第2船舶と、
陸上に設けられたコンピュータシステムと
を具備し、
前記第1船舶は、前記第1船舶の状態に関する船舶状態データを無線送信し、
前記第2船舶は、前記船舶状態データを無線中継し、
前記コンピュータシステムは、前記船舶状態データを保存する
船舶遠隔監視診断システム。
【請求項2】
前記第1船舶は、
ディーゼルエンジンシステムと、
前記船舶状態データを無線送信する無線機と
を備え、
前記第2船舶は、前記船舶状態データを無線中継する中継器を備え、
前記船舶状態データは前記ディーゼルエンジンシステムの状態に関するデータである
請求項1の船舶遠隔監視診断システム。
【請求項3】
前記ディーゼルエンジンシステムは、
ディーゼルエンジンと、
前記ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置と、
前記後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる前記有害物質の濃度を検知する第1検知装置と
を備え、
前記第1船舶は、前記ディーゼルエンジンの負荷と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度から、前記ディーゼルエンジンシステムの前記有害物質を低減する性能を診断して診断データを生成するコンピュータを備え、
前記無線機は、前記診断データを前記船舶状態データとして送信する
請求項2の船舶遠隔監視診断システム。
【請求項4】
前記ディーゼルエンジンシステムは、
ディーゼルエンジンと、
前記ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置と、
前記後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる前記有害物質の濃度を検知する第1検知装置と
を備え、
前記無線機は、前記ディーゼルエンジンの負荷を示す情報と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度を示す情報とを前記船舶状態データとして送信し、
前記コンピュータシステムは、前記ディーゼルエンジンの負荷を示す情報と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度を示す情報とから、前記ディーゼルエンジンシステムの前記有害物質を低減する性能を診断して診断データを生成し、前記診断データを保存する
請求項2の船舶遠隔監視診断システム。
【請求項5】
前記ディーゼルエンジンシステムはディーゼルエンジンを備え、
前記船舶状態データは、前記ディーゼルエンジンの潤滑用のオイルに関するデータである
請求項2の船舶遠隔監視診断システム。
【請求項6】
前記ディーゼルエンジンシステムは、
前記オイルが流れるオイル流路と、
前記オイル流路に配置された2つの電極と、
前記2つの電極間に高周波交流電圧を印加する高周波交流電源と、
前記2つの電極間の電流を測定する電流計と、
前記2つの電極間の電圧を測定する電圧計と
を備え、
前記第1船舶は、前記オイルの比誘電率とTBN値(全塩基価)との相関関係を示す比誘電率−TBN相関関係データを格納するコンピュータを備え、
前記コンピュータは、前記電流計及び前記電圧計の測定結果から前記オイルの比誘電率としての実測比誘電率を算出し、前記実測比誘電率から前記比誘電率−TBN相関関係データに基づいて前記オイルの劣化を判断して診断データを生成し、
前記無線機は、前記診断データを前記船舶状態データとして送信する
請求項5の船舶遠隔監視診断システム。
【請求項7】
第1船舶が前記第1船舶の状態に関する船舶状態データを無線送信するステップと、
第2船舶が前記船舶状態データを無線中継するステップと、
陸上に設けられたコンピュータシステムが前記船舶状態データを保存するステップと
を具備する
船舶遠隔監視診断方法。
【請求項8】
前記第1船舶は、
ディーゼルエンジンシステムと、
無線機と
を備え、
前記第2船舶は中継器を備え、
前記船舶状態データは前記ディーゼルエンジンシステムの状態に関するデータであり、
前記船舶状態データを無線送信する前記ステップにおいて、前記無線機は前記船舶状態データを無線送信し、
前記船舶状態データを無線中継する前記ステップにおいて、前記中継器は前記船舶状態データを無線中継する
請求項7の船舶遠隔監視診断方法。
【請求項9】
前記ディーゼルエンジンシステムは、
ディーゼルエンジンと、
前記ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置と、
前記後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる前記有害物質の濃度を検知する第1検知装置と
を備え、
前記第1船舶のコンピュータが、前記ディーゼルエンジンの負荷と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度から、前記ディーゼルエンジンシステムの前記有害物質を低減する性能を診断して診断データを生成するステップを更に具備し、
前記船舶状態データを無線送信する前記ステップにおいて、前記診断データを前記船舶状態データとして無線送信する
請求項8の船舶遠隔監視診断方法。
【請求項10】
前記ディーゼルエンジンシステムは、
ディーゼルエンジンと、
前記ディーゼルエンジンから排出される排気に含まれる有害物質を除去する後処理装置と、
前記後処理装置の出口から排出された処理後排ガスに含まれる前記有害物質の濃度を検知する第1検知装置と
を備え、
前記船舶状態データを無線送信する前記ステップにおいて、前記ディーゼルエンジンの負荷を示す情報と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度を示す情報とを前記船舶状態データとして送信し、
前記コンピュータシステムが、前記ディーゼルエンジンの負荷を示す情報と前記第1検知装置によって検知された前記有害物質の濃度を示す情報とから、前記ディーゼルエンジンシステムの前記有害物質を低減する性能を診断して診断データを生成するステップと、
前記コンピュータシステムが、前記診断データを保存するステップと
を更に具備する
請求項8の船舶遠隔監視診断方法。
【請求項11】
前記ディーゼルエンジンシステムはディーゼルエンジンを備え、
前記船舶状態データは、前記ディーゼルエンジンの潤滑用のオイルに関するデータである
請求項8の船舶遠隔監視診断方法。
【請求項12】
前記ディーゼルエンジンシステムは、
前記オイルが流れるオイル流路と、
前記オイル流路に配置された2つの電極と
を備え、
前記2つの電極間に高周波交流電圧を印加するステップと、
前記2つの電極間の電流を測定するステップと、
前記2つの電極間の電圧を測定するステップと、
前記電流を測定する前記ステップ及び前記電圧を測定する前記ステップの測定結果から前記オイルの比誘電率としての実測比誘電率を算出するステップと、
前記オイルの比誘電率とTBN値(全塩基価)との相関関係を示す比誘電率−TBN相関関係データに基づいて前記実測比誘電率から前記オイルの劣化を判断して診断データを生成するステップと
を更に具備し、
前記船舶状態データを無線送信する前記ステップにおいて、前記診断データを前記船舶状態データとして無線送信する
請求項11の船舶遠隔監視診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−214560(P2011−214560A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86045(P2010−86045)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】