説明

蒸着用マスク、ならびにそれを用いる蒸着パターン作製方法、半導体ウェーハ評価用試料の作製方法、半導体ウェーハの評価方法および半導体ウェーハの製造方法

【課題】半導体ウェーハの特性を高精度かつ簡便に評価し得る手段を提供すること。
【解決手段】被蒸着面上に蒸着パターンを形成するための蒸着用マスク。少なくとも1つの開口を有し、かつ、絶縁性材料からなるマスク基材の一方の面に接着性層を有し、他方の面に一層以上の絶縁性層または金属層を、該基材と剥離可能に有する。前記蒸着用マスクを、蒸着用マスクが有する接着性層を介して被蒸着面と貼り合わせた後、被蒸着面に蒸着処理を施す蒸着パターン作製方法。前記マスクを使用する半導体ウェーハ評価用試料の作製方法。前記方法によって半導体ウェーハ表面上に金属パターンを作製し、半導体ウェーハ上の蒸着用マスク最表面にマスク基材表面を露出させた後、作製された金属パターンを介して半導体ウェーハの電気的特性を測定する半導体ウェーハの評価方法。前記評価方法を使用する半導体ウェーハの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着パターンを作製するための蒸着用マスクに関する。より詳しくは、半導体ウェーハの任意の位置の電気的特性、特に容量−電圧特性を高精度で測定するために、ウェーハ表面に金属電極を形成するために好適な蒸着用マスクに関するものである。
更に、本発明は、前記マスクを使用する蒸着パターン作製方法、半導体ウェーハ評価用試料の作製方法、半導体ウェーハの評価方法および半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体ウェーハの品質を評価する方法として、金属電極によるショットキー電極を形成し該ショットキー電極の容量―電圧特性を測定することにより、ウェーハの抵抗率を求める方法がある。
【0003】
ショットキー電極を形成するための方法としては、ウェーハ表面側全面に金属膜を形成し、フォトリソ法により所定の面積を有する電極パターンを作製する方法が知られている。しかし、フォトリソを利用する場合はパターンの露光、洗浄、リンス等の工程が必要であり時間が掛かるという問題がある。
【0004】
また、ショットキー電極を形成するための方法としては、真空蒸着法と呼ばれる方法も広く使用されている。真空蒸着法は、真空中にて抵抗加熱または電子照射により金属を蒸発させ被蒸着物に該金属膜を堆積させるものである(例えば特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2002−75638号公報
【特許文献2】特開平7−45662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ショットキー電極を形成して半導体ウェーハの電気的特性を評価する方法では、ショットキー電極の容量−電圧特性を測定した後、解析ソフトに電極パターン面積を入力してウェーハの抵抗率を求める。真空蒸着法により電極パターンを作製する場合は、通常、所望の電極パターンサイズと同サイズの開口を有する蒸着用マスクを使用するため、開口面積を解析ソフトに入力することにより、信頼性の高いデータを得ることができれば電極形成後に電極面積測定工程を行うことなくウェーハ抵抗率を求めることができ、評価時間の短縮化を図ることができる。
【0006】
しかし、金属マスクを使用する真空蒸着法によりショットキー電極を作製する方法では、金属マスクは電気伝導性を有するためマスクを載置したままでは電気的特性の評価を行うことができない。そのため、蒸着処理後に半導体ウェーハ上から金属マスクを取り除く必要があるが、マスク剥離時に金属電極膜のエッジ部分の金属マスクと接する部分が部分的に剥がれてしまうことがある。このような部分的な剥がれが生じると、金属電極パターンの大きさがマスク開口部の大きさと異なってしまうため、解析ソフトに電極面積としてマスク開口面積を入力すると、評価精度が低下するという問題があった。そのため、従来、正確な評価を行うためには、光学的装置(レーザー顕微鏡、CCDカメラ搭載の顕微鏡等)を使用して蒸着により形成した電極面積を測定し、この測定値を解析ソフトに入力してウェーハ抵抗率を求めていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、半導体ウェーハの特性を高精度かつ簡便に評価し得る手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、蒸着後にマスクの一部を剥離して絶縁性材料からなる層をマスク最表面に露出させることにより、ウェーハ表面からマスクを完全に取り除くことなく電気的特性の評価が可能となることを見出した。本発明者は、以上の知見に基づき更に検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、上記目的を達成する手段は、以下の通りである。
[1]被蒸着面上に蒸着パターンを形成するための蒸着用マスクであって、
少なくとも1つの開口を有し、かつ、
絶縁性材料からなるマスク基材の一方の面に接着性層を有し、他方の面に一層以上の絶縁性層または金属層を、該基材と剥離可能に有する蒸着用マスク。
[2]絶縁性材料は、セラミック、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂またはポリイミド樹脂である[1]に記載の蒸着用マスク。
[3]絶縁性層は、セラミック、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂またはポリイミド樹脂からなる層である[1]または[2]に記載の蒸着用マスク。
[4]接着性層はシリコーン系粘着剤からなる層である[1]〜[3]のいずれかに記載の蒸着用マスク。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の蒸着用マスクを、蒸着用マスクが有する接着性層を介して被蒸着面と貼り合わせた後、被蒸着面に蒸着処理を施す蒸着パターン作製方法。
[6]被蒸着面は半導体ウェーハ表面であり、蒸着処理によって半導体ウェーハ表面に金属パターンを形成する[5]に記載の蒸着パターン作製方法。
[7][6]に記載の方法によって半導体ウェーハ表面上に金属パターンを作製する半導体ウェーハ評価用試料の作製方法。
[8][6]に記載の方法によって半導体ウェーハ表面上に金属パターンを作製し、
半導体ウェーハ上の蒸着用マスク最表面にマスク基材表面を露出させた後、作製された金属パターンを介して半導体ウェーハの電気的特性を測定する半導体ウェーハの評価方法。
[9]複数の半導体ウェーハからなる半導体ウェーハのロットを準備する工程と、
前記ロットから少なくとも1つの半導体ウェーハを抽出する工程と、
前記抽出された半導体ウェーハの品質を評価する工程と、
前記評価により良品と判定された半導体ウェーハと同一ロット内の他の半導体ウェーハを製品ウェーハとして出荷することを含む、半導体ウェーハの製造方法であって、
前記抽出された半導体ウェーハの評価を、[8]に記載の方法によって行うことを特徴とする、前記方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハの品質を高精度かつ簡便に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[蒸着用マスク]
本発明の蒸着用マスクは、被蒸着面上に蒸着パターンを形成するための蒸着用マスクであって、少なくとも1つの開口を有し、かつ、絶縁性材料からなるマスク基材の一方の面に接着性層を有し、他方の面に一層以上の絶縁性層または金属層を、該基材と剥離可能に有するものである。ここで、「剥離可能」とは、本発明の蒸着用マスクを接着性層を介して被蒸着面と貼り合わせて蒸着処理を行った後、マスク基材とその上層とを分離できる程度の接着性で、基材上に絶縁性層または金属層が配置されていることをいう。またマスク基材上に2層以上の層(絶縁性層または金属層)が積層されている場合は少なくともマスク基材とマスク基材と隣接配置される層が剥離可能であればよいが、マスク基材上層に位置する複数の層がそれぞれ剥離可能であってもよい。
【0012】
従来マスク材料として使用されていた金属材料は、電気伝導性を有するため蒸着処理後、マスクを載置したままでは半導体ウェーハの電気的特性を評価することができない。そのため蒸着処理後に半導体ウェーハ上からマスク全体を取り除く必要があった。しかし前述のようにマスク剥離時に蒸着膜エッジ部分が部分的に剥がれてしまうという問題があった。そこで本発明では、蒸着用マスクを二層以上の構成とするとともにマスク基材を絶縁性材料から構成することとした。蒸着処理後にはマスク基材上層部のみを除去しマスク基材は剥離しなければ、蒸着膜のエッジ部分がマスク剥離とともに部分的に剥がれることがない。そしてマスク基材上層部を除去することにより露出するマスク基材は絶縁性であるので、マスク基材を配置したままで半導体ウェーハの電気的特性を評価することができる。これにより、マスク開口の面積と形成されるパターン面積との誤差を低減することができる。こうして、パターン面積を実測することなく、開口面積をパターン面積として半導体ウェーハの抵抗率を高精度で求めることが可能となる。
【0013】
マスク基材材料は絶縁性材料であるが、加工の容易性等の観点からは樹脂であることが好ましく、蒸着処理時の温度でも変質しない耐熱性樹脂を使用することが好ましい。耐熱性および絶縁性を有する樹脂としては、フッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)、ポリオレフィン樹脂(例えばポリエチレン)、ポリイミド樹脂を挙げることができる。またマスク基材を二層以上の層から構成してもよい。上記耐熱性とは、例えば100℃以上の温度下でも変形等を起こさないことをいう。また、上記絶縁性とは、例えば抵抗率が1E10Ωcm以上であることをいい、具体的にはH種絶縁(180℃)であることができる。また、フッ素系樹脂の抵抗率は、一般に1E15Ωcm程度である。
【0014】
接着性層は、樹脂基材の一方の面に接着剤または粘着剤を塗布することによって形成することができる。接着剤、粘着剤としては、耐熱性の点でシリコーン系粘着剤が好ましいが、これに限定されるものではない。優れた接着力を有するという点では、株式会社エス・エフ・シー製iシールを用いることが好ましい。この接着剤は一液加熱硬化型の接着剤であり高い接着力および耐熱性(例えば380℃にも耐え得る)を有する。また、接着性層上にはマスクとして使用するまで接着性層を保護するため易剥離性の保護フィルムを貼り合わせてもよい。
【0015】
マスク基材上に積層する層は、絶縁性樹脂、セラミック、等の絶縁性材料からなる層または金属層である。絶縁性樹脂(抵抗率:1E7Ωcm<)の詳細は、マスク基材を構成する樹脂について述べた通りである。セラミックとしては、例えばアルミナ、住金セラミックアンドクオーツ(株)のファインセラミックスAM997等を挙げることができる。また金属層を構成する金属としては、通常の金属マスクを構成する各種金属(例えばステンレス、モリブデン)を挙げることができる。これらの各層は、公知の薄膜形成技術によって作製することができる。マスク基材上に積層する層は少なくとも一層であるが二層以上設けることも可能である。
【0016】
次に、本発明の蒸着用マスクの厚さについて説明する。
一般に使用される真空蒸着装置は、抵抗加熱法を用いたものや電子ビームを利用したものであり、これらは通常蒸着源は1箇所である。図1に、一般的な真空蒸着装置の概略図を示す。一般に使用される真空蒸着装置は、図1に示すようにウェーハが固定配置される(固定型装置)。固定型装置は、チャンバーを小型化し、真空引きに要する時間を短縮化できるため、作業効率の面で好ましい。しかし、固定型装置では、該蒸着源直下の孔部分は陰が出来ることなく孔面積と同等の電極面積を有する電極を形成可能であるものの、蒸着源から離れた部分、つまりウェーハ外周部分ではマスク厚みによる陰ができる。この点について、以下に図面に基づきさらに説明する。
【0017】
図2に、蒸着源直下に位置するマスク開口部に蒸着膜を形成する場合(図2(a))と蒸着源から離れた場所に位置するマスク開口部に蒸着膜を形成する場合(図2(b))の蒸着膜形成状態の模式図を示す。図3に、図2(b)に示す態様の孔近傍の拡大模式図を示す。
図1に示すような蒸着源が一箇所の固定型装置では、抵抗加熱により蒸着源部分が加熱され金属塊が蒸発する。チャンバー内が真空であれば、金属塊の蒸発により発生する蒸着流は殆どが直進し、球状に拡散する。そのため、図2(a)に示すように、蒸着源直下では真上から蒸着流が来るため孔の陰はできないのに対し、図2(b)に示すように蒸着源から遠ざかる部分(ウェーハ外周部)では蒸着流が斜めに来るため孔の厚みにより陰ができる。この陰部分の領域では、図3に示すように蒸着流の分子同士の衝突や分子と残留空気分子の衝突が起こり、進行方向が変化した蒸着分子が陰部分に堆積するため、蒸着膜が形成されない部分や厚さが不均一な部分が生じる。蒸着膜が形成されていない部分は電極として機能しないことはもちろんであるが、厚さが薄い部分は電極として機能しないことがある。そのため陰部分が大きくなると、開口面積をパターン面積として入力すると測定誤差が生じる可能性がある。
【0018】
上記の点は、チャンバー内に設置したウェーハが回転する機構を備えた真空蒸着装置(回転型装置)を用いることにより回避することができる。しかし、回転型装置はチャンバーが大型となり真空引きに長時間を要するため作業効率が低下する点が課題である。また、蒸着源をマスク孔と同数設けて各孔の真上に蒸着源を配置することも考えられるが、蒸着源の個数を増やすと蒸着機の必要電力は該蒸着源増加数の和となるため大掛かりな電気回路変更工事を伴い多額の費用が必要である。また、蒸着源を増やすことで蒸着用金属の消費量も多くなりコストが増大する。そのため、蒸着源が1つの固定型蒸着装置を使用しウェーハの評価を高い信頼性をもって行うことができる評価用試料を作製することができることが好ましい。上記陰部分の領域はマスク厚みが薄くなるほど小さくなる。以上の観点から、本発明の蒸着用マスクは、マスク総厚が、例えば20〜70μmであり、20〜50μmであることが好ましい。より好ましくは20〜40μmの範囲である。またマスク基材の厚さは20μm以下であることが好ましく、10〜20μmであることが好ましい。接着性層の厚さは、マスク層厚を薄くするためには薄いことが好ましいが適度な接着力を得ることも考慮すると、10〜30μm程度とすることが好ましい。マスク基材上に積層する層(二層以上積層する場合はそれらの合計)は、厚さ20〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることが更に好ましい。なお、樹脂は薄型化が可能であるため、マスク基材上に積層する層は樹脂層であることが好ましいが、積層する層としてセラミック層や金属層を設ける場合は、蒸着時に陰となる部分を低減するために、表面に向かって開口が広くなるようにテーパーを設けることが好ましい。また、テーパー角度は、蒸着源とパターン形成位置の関係より、パターン形成面と平行な直線と蒸着源とパターン形成位置を結んだ直線とでできる鋭角な角度より小さい角度とすることが好ましい。
【0019】
本発明の蒸着用マスクは、マスク基材の一方の面に接着性層を設け、他方の面に絶縁性層または金属層を積層した後、公知の方法で被蒸着面上に形成するパターンに対応した開口を設けることによって作製することができる。開口の数は少なくとも1つであり特に限定されるものではなく、被蒸着面の用途等に応じて設定すればよい。本発明の蒸着用マスクが、樹脂製のマスク基材上に樹脂製の層を有するものであれば、パンチング等で容易に開口を形成することができ好ましい。開口の大きさは、形成する蒸着パターン1つあたりの大きさとほぼ同じとすればよく特に限定されるものではないが、例えば直径1〜3mm程度とすることができる。
【0020】
また、本発明の蒸着用マスクは、市販の接着シールまたは粘着シール(一方の面に接着層または粘着層を有する樹脂フィルム)に、絶縁性層または金属層を積層することによって作製することもできる。市販テープとしては、株式会社寺岡製作所製カプトン粘着テープを挙げることができる。カプトン粘着テープは、−269℃の極低温から+400℃の高温領域まで広い温度範囲にわたって、優れた機械的・電気的・化学的特性を有する米国デュポン社製のカプトン(Kapton;登録商標)・ポリイミドフィルムにシリコーン系粘着剤を塗布したテープであり、優れた耐熱性および絶縁性を有する。またカプトン粘着テープは、樹脂基材本体の厚さは12μmで粘着剤(シリコーン系粘着剤)層と併せて層厚が35μmであり薄型マスクとして好適である。また、日東電工株式会社製ニトフロンテープも好適である。このテープは、片面を接着処理した4ふっ化エチレン樹脂(PTFE)フィルムを基材とし、処理面に優れた耐熱性を有するシリコーン系粘着剤を塗布したものであり、電気特性をはじめ、耐熱性・耐薬品性・低摩擦係数・非粘着性など数々の優れた特長を備えているため蒸着用マスクとして好ましい。マスク基材と上層との接着のためには、微粘着コーティング剤(シリコーン粘着剤)を使用することが好ましい。具体例としては、信越化学製X−40−3102を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0021】
蒸着用マスクの大きさは、被蒸着面サイズとほぼ同じとすることができ、例えば6インチ半導体ウェーハに対する蒸着処理用マスクとして使用する場合は、直径6インチ程度の円形マスクとすることができる。ただし、例えば半導体ウェーハの評価を行うためにウェーハ表面にショットキー電極を作製する場合等はウェーハ表面全面に蒸着用マスクを配置せず、図4に示すように所定の開口を有する例えば数センチメートル角程度の蒸着用マスク片を1つまたは間隔を置いて複数貼り合わせてもよい。本発明の蒸着用マスクは少なくとも二層構造(マスク基材とその上層)を有し、蒸着後にマスク基材上層を剥離することができる。図4に示すように被蒸着面全面に蒸着用マスクを配置せず部分的に配置する場合、マスクが配置されていない部分には蒸着膜が堆積することになるが、マスク基材の上層を剥離し絶縁性のマスク基材を露出させることにより、マスク周囲の蒸着膜部分とマスク開口に堆積した蒸着膜は絶縁されるため、ショットキー接合の容量−電圧特性測定により半導体ウェーハの抵抗率を求めることが可能になる、
【0022】
[蒸着パターン作製方法]
更に、本発明は、本発明の蒸着用マスクを、蒸着用マスクが有する接着性層を介して被蒸着面と貼り合わせた後、被蒸着面に蒸着処理を施す蒸着パターン作製方法に関する。
【0023】
蒸着処理に使用する蒸着装置としては、通常使用されている真空蒸着装置を何ら制限なく使用することができる。先に説明したように蒸着装置には、回転型蒸着装置および固定型蒸着装置があるが、本発明の蒸着パターン作製方法ではいずれも使用可能である。またチャンバー内の蒸着源が1つである装置であっても複数ある装置であってもよい。本発明の蒸着用マスクを薄型化することにより、蒸着源が1つの固定型真空蒸着装置を使用する場合でも、前述のマスク厚みに起因する問題を生じることなく蒸着パターンを作製することができる。
【0024】
蒸着に使用する蒸着源は、目的に応じて選択されるものであり、例えば半導体ウェーハの評価用試料作製のためにウェーハ表面に金属電極を形成する場合は、金、アルミニウム、アンチモン等を用いることができる。また、本発明の蒸着パターン作製方法における蒸着処理条件は、所望の蒸着パターンの厚さやサイズ等を考慮して適宜設定すればよい。
【0025】
本発明の蒸着パターン作製方法により蒸着パターンを作製する対象は、通常蒸着処理が施される各種表面を挙げることができるが、半導体ウェーハが好適である。半導体ウェーハの詳細は後述する。半導体ウェーハ上に金属パターンを作製することによりショットキー電極を形成し、ショットキー接合の容量−電圧特性から空間電荷密度[(ドナー濃度)−(アクセプター濃度)]を求め、上記空間電荷密度と電極面積からウェーハの抵抗率を求めることができる。前述のように、本発明によれば電極面積としてマスク開口面積を用いて信頼性の高い測定を行うことができる。
【0026】
半導体ウェーハに対して蒸着処理を行う場合、蒸着処理後、蒸着用マスクからマスク基材の上層を剥離し、蒸着用マスク最表面にマスク基材表面を露出させた後、マスク基材付の半導体ウェーハの電気的特性を評価することにより、半導体ウェーハの評価を行うことができる。この点については後述する。
【0027】
[半導体ウェーハ評価用試料の作製方法]
更に本発明は、本発明の蒸着用パターン作製方法によって半導体ウェーハ表面上に金属パターンを作製する半導体ウェーハ評価用試料の作製方法に関する。
半導体ウェーハ評価用試料とは、例えば前述のようにショットキー接合の容量−電圧特性から半導体ウェーハの抵抗率を求めるために使用される試料であることができる。金属パターン(金属電極)を作製する半導体ウェーハとしては、シリコンエピタキシャルウェーハ、鏡面研磨ウェーハ等を挙げることができる。形成された半導体ウェーハ評価用試料は、本発明の半導体ウェーハの評価方法に使用することができる。その詳細は後述する。
【0028】
[半導体ウェーハの評価方法]
本発明の半導体ウェーハの評価方法は、本発明の蒸着パターン作製方法によって半導体ウェーハ表面上に金属パターンを作製し、半導体ウェーハ上の蒸着用マスク最表面にマスク基材表面を露出させた後、作製された金属パターンを介して半導体ウェーハの電気的特性を測定するものである。半導体ウェーハの抵抗率は、前述のようにショットキー接合の容量−電圧特性を測定する方法(C-V法)によって求めることができる。蒸着処理後、蒸着用マスクからマスク基材の上層を除去することにより半導体ウェーハ上の蒸着用マスク最表面にマスク基材表面を露出させる。上層を剥離するため、マスク基材表面の蒸着膜は上層とともに除去され、開口内のみに蒸着膜を残すことができる。そして、前記マスク基材は絶縁性であるため、マスク基材が配置された状態でショットキー接合の電気的特性を測定することが可能である。マスクを完全に剥がす必要がないため、マスクを剥がし取る際に生じるパターン外周の部分的な剥がれを起こすことがない。そのためウェーハ表面において、既知の開口面積と同等の面積を有するパターンを保持することができるため、パターン面積として開口面積を用いてウェーハ抵抗率を測定しても高精度の測定が可能である。
【0029】
以下に、図5に基づき本発明の半導体ウェーハの評価方法の作業フローを説明する。ただし、本発明は以下に記載する態様に限定されるものではない。
まず、絶縁性のマスク基材上に更に一層積層した蒸着用マスクをウェーハ表面に貼り付ける(図5(a)、(b)参照)。
この状態のウェーハに対して蒸着処理を施す。蒸着後のマスク全面には金属膜が蒸着されるため、このままでは電極部分(開口部)のみの容量−電圧特性を測定することはできない(図5(c)〜(f)参照)。
そこで蒸着機から取り出したウェーハ上からマスク基材上の層を剥離する。マスクの開口部分のみに蒸着された金属電極が残り、かつ開口周囲には絶縁性のマスク基材表面が露出するため電極同士が絶縁される(図5(g)参照)。そのためこの状態で電極部分(開口部)の容量−電圧特性を測定することができる。この方法によれば、マスクを完全に剥離する際に生じる電極外周の剥がれが生じないため、電極面積は既知のマスク開口面積と同一とみなすことができるため、測定した容量−電圧特性と開口面積からウェーハの抵抗率を高い信頼性をもって求めることができる。これにより電極面積を測定する工程を経ることなく高精度かつ簡便な測定が可能となる。
【0030】
[半導体ウェーハの製造方法]
本発明の半導体ウェーハの製造方法は、複数の半導体ウェーハからなる半導体ウェーハのロットを準備する工程と、前記ロットから少なくとも1つの半導体ウェーハを抽出する工程と、前記抽出された半導体ウェーハの品質を評価する工程と、前記評価により良品と判定された半導体ウェーハと同一ロット内の他の半導体ウェーハを製品ウェーハとして出荷することを含み、前記抽出された半導体ウェーハの評価を、本発明の半導体ウェーハの評価方法によって行うものである。
【0031】
本発明の半導体ウェーハの評価方法によれば、ウェーハの電気的特性を高精度で評価することができる。よって、前記評価によって、目標以上の品質を有することが確認されたシリコンウェーハと同ロットの半導体ウェーハを選択し製品ウェーハとして出荷することにより、高品質な半導体ウェーハを提供することが可能である。なお良品と判定される基準は、ウェーハの用途等に応じてウェーハに求められる物性を考慮して設定することができる。また評価用に抽出するウェーハ数は、少なくとも1つであればよく、2つ以上とすることによって高い信頼性をもって製品出荷を行うことが可能となる。なお半導体ウェーハのロットの準備は公知の方法で行うことができ、1ロットに含まれるウェーハ数は生産性等を考慮して決定すればよい。本発明の半導体ウェーハの評価方法によれば、蒸着処理後にパターン(電極)面積を測定する工程を経ることなく、ウェーハの電気的特性を高い信頼性をもって評価することができるため、本発明の半導体ウェーハの製造方法は簡便性の点でも優れている。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明を実施例に基づき更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
市販の接着シール(寺岡製作所製商品名カプトン粘着テープ)を二層積層し、直径6インチの円形に切断した。得られた円形シールに対し、直線状に、中心1点、r/2に2点、外周より内側5mmに2点(合計5点)、それぞれ3mmφの開口を設け蒸着用マスクを形成した。マスクの総厚は70μm、各樹脂層(マスク基材および上層)の厚さは12μm、マスク基材と上層樹脂層との間の接着層およびウェーハとの接着面となる接着層の厚さは、それぞれ23μmであった。
得られたマスクを6インチシリコンウェーハ上にウェーハの外周とマスク外周が一致するように配置した、その後マスク付きシリコンウェーハを真空蒸着装置内に配置し蒸着処理を行った。真空蒸着装置として、図1に示す抵抗加熱型(固定型)装置を使用した。抵抗加熱用フィラメントとしてタングステンフィラメント、蒸着金属は金、フィラメントとウェーハ間距離は20cmとした。
【0034】
[比較例1]
厚さ100μmであって、実施例1のマスクと同様の位置に開口を設けた金属マスクを使用し、実施例1と同様の方法でシリコンウェーハに対し蒸着処理を施した。なお比較例1では金属マスクは磁石によって固定した。
【0035】
面積測定
実施例1において、蒸着処理後にマスク基材上の樹脂層を剥離した後、コンフォーカルレーザー顕微鏡を用いて蒸着部分の面積を測定した。
比較例1において、蒸着処理後にシリコンウェーハ上から金属マスクを剥離した後、コンフォーカルレーザー顕微鏡を用いて蒸着部分の面積を測定した。
開口面積(設計値)からの面積誤差を図6に示す。図6に示すように、比較例1では、金属マスク剥離時に金属電極膜のエッジ部分の金属マスクと接する部分が部分的に剥がれたため、電極パターンの大きさがマスク開口部の大きさと大きく異なった。これに対し、実施例では、上記外周部分の部分的剥離が生じないため、設計値からの面積誤差がきわめて小さい電極を形成することができた。
【0036】
抵抗率測定
以下の方法によりシリコンウェーハの抵抗率を求めた。結果を図7に示す。
A:実施例1において、蒸着処理後にマスク基材上の樹脂層を剥離した後に、形成した電極の容量−電圧特性を測定した。解析ソフトにマスク開口面積を電極面積として入力し、抵抗率を求めた。
B:解析ソフトに電極面積としてコンフォーカルレーザー顕微鏡により実測した電極面積を入力した点以外は上記Aと同様の方法により抵抗率を求めた。
C:比較例1において、蒸着処理後にシリコンウェーハ上から金属マスクを剥離した後m形成した電極の容量−電圧特性を測定した。解析ソフトにマスク開口面積を電極面積として入力し、抵抗率を求めた。
D:解析ソフトに電極面積としてコンフォーカルレーザー顕微鏡により実測した電極面積を入力した点以外は上記Dと同様の方法により抵抗率を求めた。
【0037】
図7に示すように、実施例1ではAとBとの間で抵抗率に大きな違いはなかった。よって、実施例1によれば、解析ソフトにマスク開口面積を電極面積として入力することにより、マスク開口面積を実測することなく信頼性の高いデータを得ることができる。
これに対し、比較例1ではCとDとの間で抵抗率に大きな違いがあり、またCでは抵抗率にばらつきがみられた。この結果から、比較例1では、信頼性の高いデータを得るためには蒸着処理後に電極面積を実測すること必要があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば半導体ウェーハの品質を、簡便に、かつ高い信頼性をもって評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一般的な真空蒸着装置の概略図を示す。
【図2】蒸着源直下に位置するマスク開口部に蒸着膜を形成する場合(図2(a))と蒸着源から離れた場所に位置するマスク開口部に蒸着膜を形成する場合(図2(b))の蒸着膜形成状態の模式図を示す。
【図3】図2(b)に示す態様の孔近傍の拡大模式図を示す。
【図4】被蒸着面全面に蒸着用マスクを配置せず部分的に配置する態様の説明図である。
【図5】本発明の半導体ウェーハの評価方法の作業フローの説明図である。
【図6】使用マスクの違いによるウェーハ中心電極位置での電極面積測定値を示す。
【図7】使用マスクの違いおよび電極面積の測定の差による抵抗率値のばらつきを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被蒸着面上に蒸着パターンを形成するための蒸着用マスクであって、
少なくとも1つの開口を有し、かつ、
絶縁性材料からなるマスク基材の一方の面に接着性層を有し、他方の面に一層以上の絶縁性層または金属層を、該基材と剥離可能に有する蒸着用マスク。
【請求項2】
絶縁性材料は、セラミック、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂またはポリイミド樹脂である請求項1に記載の蒸着用マスク。
【請求項3】
絶縁性層は、セラミック、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂またはポリイミド樹脂からなる層である請求項1または2に記載の蒸着用マスク。
【請求項4】
接着性層はシリコーン系粘着剤からなる層である請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸着用マスク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸着用マスクを、蒸着用マスクが有する接着性層を介して被蒸着面と貼り合わせた後、被蒸着面に蒸着処理を施す蒸着パターン作製方法。
【請求項6】
被蒸着面は半導体ウェーハ表面であり、蒸着処理によって半導体ウェーハ表面に金属パターンを形成する請求項5に記載の蒸着パターン作製方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法によって半導体ウェーハ表面上に金属パターンを作製する半導体ウェーハ評価用試料の作製方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法によって半導体ウェーハ表面上に金属パターンを作製し、
半導体ウェーハ上の蒸着用マスク最表面にマスク基材表面を露出させた後、作製された金属パターンを介して半導体ウェーハの電気的特性を測定する半導体ウェーハの評価方法。
【請求項9】
複数の半導体ウェーハからなる半導体ウェーハのロットを準備する工程と、
前記ロットから少なくとも1つの半導体ウェーハを抽出する工程と、
前記抽出された半導体ウェーハの品質を評価する工程と、
前記評価により良品と判定された半導体ウェーハと同一ロット内の他の半導体ウェーハを製品ウェーハとして出荷することを含む、半導体ウェーハの製造方法であって、
前記抽出された半導体ウェーハの評価を、請求項8に記載の方法によって行うことを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−255435(P2008−255435A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100104(P2007−100104)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】