説明

蓄電体及びそのパッケージ構造

【課題】蓄電体を保護して取扱いを容易化すると共に、パッケージの小型・軽量化や耐振性の向上を図る事のできる蓄電体及びそのパッケージ構造を提供する。
【解決手段】電極端子4,5の付け根をアダプタ10で固定した蓄電体セルを、互いに結合される2つの枠体21内に収納し、枠体21によってアダプタ10を押圧・挟持し、アダプタ10を支点として蓄電部2を枠体21に対してフローティングさせる。これにより、蓄電体セルの取扱いを容易化して枠体21への位置合わせを容易とし、組付け作業性を向上することができる。また、枠体21に外力が加わった場合にも、蓄電体セル1に応力が直接加わることがなく、蓄電体セル1を効果的に保護することができ、蓄電体セル及び枠体を積層したパッケージの小型・軽量化や耐振性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電部を封止する封止部から電極端子を外部に突出した平面状の蓄電体及びそのパッケージ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池や電気二重層コンデンサ等の略平面矩形状をなす扁平な蓄電体が実用化され、エネルギー密度の高さ、コンパクト化等から、各種機器の電力源として有望視されている。この種の扁平な蓄電体は、内部電極及び電解質層の積層体を、例えばアルミニウム系の金属層の表面を樹脂層によって絶縁コーティングしたシート状のラミネートフィルムによって密閉・封止したものであり、電圧仕様や容量仕様等に応じて所定セル数を接続して枠体に収納し、パッケージ化した組電池として用いることが多い。
【0003】
しかしながら、ラミネート型蓄電体は、上述のようにラミネートフィルムで蓄電部を封止するだけの構成であることから、剛性に乏しく、物理的ストレスが加わった際に応力が一箇所に集中し易い。このため、パッケージ化する工程や、組電池として使用中に何らかの力が加わると、蓄電部(内部)が部分的に変形して不具合を発生する虞があった。
【0004】
さらに、ラミネート型蓄電体は、構造上、外形寸法がバラツキ易く、精度が期待できないため、枠体への位置固定がし難く、また、蓄電体と枠体を交互に積層してパッケージ化する場合には、蓄電体の厚さバラツキが積算され、パッケージの寸法が大きくバラついてしまう。
【0005】
例えば、図23に示すように、蓄電部101をラミネートフィルム等の封止部102で封止した蓄電体セル100を複数個直列接続してモジュールを構成する場合、蓄電体セル100の扱い方によっては、封止部102から外部に露呈する電極端子103,104が封止部102との境界部から折れ曲り、電極端子が折損したり、封止部102が開口して封止性能が低下する虞がある。
【0006】
また、図24,図25に示すように、蓄電体セル100を2つの枠体105を嵌合して収納する場合、蓄電部101の厚みのバラツキによっては、枠体105で蓄電部101を押圧する可能性があり、また、逆に、封止部102を枠体105で押圧する場合もある。従って、図26に示すように、枠体105を積層に対応した枠体106として蓄電体セル100と枠体106とを交互に積層して蓄電体モジュール110を構成した場合、蓄電部101の厚さバラツキが積算され、モジュールとしての高さ寸法Sのバラツキが大きくなる。
【0007】
また、蓄電体セル100の蓄電部101から封止部102にかけてのテーパ面の寸法精度を期待できないことから、枠体106に対する蓄電体セル100の位置合せが難しく、図27に示すように、各層毎に蓄電部101の位置がずれてしまい、モジュールに外力が加わった場合、蓄電体セル100に直接応力が加わり易いばかりでなく、封止部102と電極端子103,104との境界部に応力が集中してしまう。
【0008】
これに対処するに、特許文献1には、電極端子リードを挟む熱融着部(封止部)を、上下に設けた挟掴部材で固定することにより、熱融着部(封止部)のシール性を確保する技術が開示されており、また、特許文献2や特許文献3には、電池(蓄電体)とケースとの間に樹脂等の充填剤を配することにより、耐振動性を確保する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−63278号公報
【特許文献2】特開2003−272588号公報
【特許文献3】特開2004−71281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、封止部のシール性を確保することはできるものの、封止部と電極端子との境界部である付け根部分に応力が加わること自体を防止することはできず、電極端子の付け根部分への応力集中による折損等に対処することは困難である。
【0010】
特許文献2や特許文献3に開示の技術は、ケース内で蓄電体セルを固定することはできるが、ケースへの組付け性や組付け後の寸法バラツキといった問題には対処していない。また、樹脂の充填によってモジュール(パッケージ)の重量が増加するばかりでなく、低温下で蓄電体セルを保熱したい場合、蓄電体セルの熱が樹脂を通して外部に逃げるため不利である。更に、弾性を有する樹脂を充填しても、蓄電体セルとの接触面積が広いため樹脂が変形するには大きな応力が必要となり、振動吸収効果には限界がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、蓄電体を保護して取扱いを容易化すると共に、パッケージの小型・軽量化や耐振性の向上を図ることのできる蓄電体及びそのパッケージ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明による蓄電体は、蓄電部を封止する封止部から上記蓄電部に連結される電極端子を外部に突出した平面状の蓄電体であって、上記封止部と上記封止部から露呈する上記電極端子との境界部分に、この境界部分を固定するアダプタを介装したことを特徴とする。
【0013】
アダプタは、封止部と電極端子との境界部分を挟持して固定する2つの部材、或は電極端子を挿通して封止部を所定位置まで挿入可能なスリットを設けた1つの部材で形成することができる。また、アダプタには、電極端子に導通するコネクタ接点を設けることが可能であり、電極端子の温度を検出する温度センサを組込むことも可能である。蓄電体を複数個直列に接続したときには、互いに隣接するアダプタの間に、電極端子を固定するスペーサを介装することが望ましい。
【0014】
本発明による蓄電体のパッケージ構造は、上記した蓄電体を収納して保持する枠体を備え、アダプタを枠体で固定し、蓄電部を枠体からフローティングさせて保持することを特徴とする。
【0015】
枠体は、アダプタを一面側から押圧するための第1の枠体と、第1の枠体に対向してアダプタを他面側から押圧するための第2の枠体とによって構成することができ、アダプタを第1の枠体と第2の枠体とに嵌合させることで、第1の枠体と第2の枠体とを結合することができる。また、アダプタを弾性体で形成することにより、外力を吸収することができる。
【0016】
更に、蓄電体と枠体との間には、発泡体を充填しても良い。この発泡体を充填する場合には、封止部の電極端子が存在しない側の側面を丸或は鋭角状に折曲げて発泡体で三次元的に固定することにより、蓄電体の固定強度を向上することができる。
【0017】
また、蓄電体と枠体との間に発泡体を配さない部分を設けたことが望ましく、この発泡体を配さない部分を、流体を流す流体通路として用いることができる。更に、発泡体を配さない部分を封止部の一部に設けることで、蓄電体内部にガスが発生して膨張したときのガス抜き等に利用することが可能となる。
【0018】
また、蓄電体及びアダプタを収納した枠体を積層して蓄電体モジュールを構成する場合には、蓄電体を直列接続した最大電圧が感電に対して安全を確保可能な電圧となる接続数をモジュール単位として出力コネクタを設けることが望ましい。この蓄電体モジュールを複数連結して車両に設置する場合には、複数の蓄電体モジュールを外ケースで保持して弾性体を介して設置することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、蓄電体を保護して取扱いを容易化することができると共に、パッケージの小型・軽量化や耐振性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図22は本発明の実施の一形態に係わり、図1は直列接続された蓄電体セルの斜視図、図2は蓄電体セルの電極端子の状態を示す説明図、図3はコネクタとして利用したアダプタの説明図、図4はコネクタ接点を示す拡大図、図5は一体型のアダプタを示す説明図、図6は隣接するアダプタ間にスペーサを介装した例を示す説明図、図7はアダプタ及びスペーサの間隔と電極の曲げ位置とを示す説明図、図8は蓄電体セルの枠体への収納を示す説明図、図9は蓄電体セルを枠体に収納した状態の断面図、図10は蓄電体セル及び枠体を積層した蓄電体モジュールの説明図、図11は枠体の小型化を示す説明図、図12は蓄電体モジュールに対する外力の影響を示す説明図、図13は蓄電体セルに装着するアダプタの変形例を示す説明図、図14は図13のアダプタに対応する枠体を用いた蓄電体モジュールを示す説明図、図15はアダプタと枠体との嵌合性を向上した変形例を示す説明図、図16は蓄電体セルと枠体との間に発泡体を充填した例を示す断面図、図17は蓄電体セルの電極端子が存在しない側に充填した発泡体を示す断面図、図18は封止部と発泡体との三次元的な固定状態を示す説明図、図19は発泡体に流体通路を設けた例を示す説明図、図20はモジュール単位でのコネクタの配置を示す説明図、図21は蓄電体パッケージを示す説明図、図22は蓄電体パッケージの車両への設置例を示す説明図である。
【0021】
図1において、符号1は蓄電体セルであり、この蓄電体セル1を複数個接続してモジュール化し、更に複数の蓄電体モジュールを集合して蓄電体パッケージを構築することにより、例えば電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)等の電源装置として用いることができる。蓄電体セル1は、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ等の略平面矩形状をなす扁平な蓄電体であり、平面ラミネート型リチウムイオン二次電池に代表されるように、内部電極及び電解質層の積層体を、例えばアルミニウム系の金属層の表面を樹脂層によって絶縁コーティングしたシート状のラミネートフィルムによって密閉・封止したものである。
【0022】
蓄電体セル1の構成としては、電解質層及び電極の積層体からなる蓄電要素を包込んで周囲よりも若干肉厚の矩形状に形成された蓄電部2と、蓄電部2の周囲にシート状に延設される封止部3と、封止部3の両端から露呈される2つの金属製の正,負の電極端子4,5とが備えられている。
【0023】
更に、蓄電体セル1には、モジュール化(パッケージ化)する上での基本保持構造として、封止部3と各電極端子4,5との境界部である付け根部分に、略角柱状の細長のアダプタ10が装着されている。図1においては、電極端子4,5の付け根にそれぞれアダプタ10を装着した蓄電体セル1を2個直列に接続した例を示している。アダプタ10は、電極端子4,5の付け根部分を固定して応力が加わることを防止するものである。
【0024】
すなわち、蓄電体セル1は、電極端子4,5よりも封止部3の剛性が高いため、図2(a)に示すように、蓄電体セル1にアダプタ10を装着しない場合には、電極端子4,5の付け根部分(図中、丸印で囲む部分)に応力が集中し易く、電極端子4,5の付け根部分が外力によって折れ曲ったとき、封止部3が引張られて蓄電部2に対する封止能力が損われる虞がある。
【0025】
従って、図2(b)に示すように、アダプタ10によって電極端子4,5の付け根部分を固定することにより、本来、電極端子4,5の付け根部分に加わる応力を、電極端子4,5とアダプタ10との境界に移動させ、封止部3の境界部を保護して封止能力を確保することができる。これにより、蓄電体セル1の取扱いが容易となり、アダプタ10を装着した蓄電体セル1を基本構成として、各種パッケージ構造(モジュール構造)に柔軟に適用することができる。
【0026】
ここで、図1に示すアダプタ10は、アッパアダプタ11とロワーアダプタ12との上下分割構造を有しており、ロワーアダプタ12に立設されたピン状のボス12aを介してアッパアダプタ11とロワーアダプタ12とを嵌合・固定することにより、電極端子4,5の付け根部分を挟持する。これにより、アッパアダプタ11とロワーアダプタ12とを一体化して剛体化することができ、電極端子4,5に対する強力な折れ曲り防止効果を期待することができる。
【0027】
尚、アッパアダプタ11とロワーアダプタ12とは、ボス12aを介した嵌合の他、爪嵌合や圧入、ねじやリベット等による締結、樹脂の溶接等によって固定するようにしても良い。何れの場合においても、アダプタ10と蓄電体セル1との間には、接着テープや接着剤等を配して、アダプタ10と蓄電体セル1との密着性を高めることが望ましい。
【0028】
アダプタ10は、電気絶縁性に優れた材料、例えば、ゴムやベークライト等の樹脂によって形成することができ、電極の絶縁カバー機能を付加して安全性を向上することができる。この場合、アダプタ10内部に、コネクタ構造を形成することも可能であり、例えば、図3,図4に示すように、ロワーアダプタ12にコネクタ接点13を組込み、このコネクタ接点13に配線14を接続して外部に引出すことにより、セル電圧のセンシングが可能になり、電圧制御等に利用することができる。更に、アダプタ10内部に熱電対やサーミスタ等の温度センサを組込むことも可能であり、電極端子4,5の温度を測定することで、間接的にセル温度を検出することができる。
【0029】
一方、アダプタ10の材質を、金属材料、例えば、銅、鉄、ステンレス、アルミニウム、チタン、マグネシウム、その他の合金によって形成することも可能である。アダプタ10を金属材料で形成した場合には、電極からの熱を吸収して外部に放出することができ、蓄電体セル1の出力特性を安定化することが可能となる。更に、アダプタ10を、磁性体、例えば、フェライト、鉄、ニッケル、コバルト、または、これらを含んだ合金によって形成しても良く、電極から放出される電磁ノイスを吸収すると共に、外部から電極にノイズが入ることを防止することができる。
【0030】
また、アダプタ10は、上下分割構造に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、図5に示すように、一体成形構造のアダプタ10Aとしても良い。アダプタ10Aは、略角柱状の長手側の一側面に、蓄電体セル1の封止部3を差し込み可能な所定深さのスリットを設けると共に、このスリットから反対側の側面にかけて電極端子4,5を挿通可能なスリットを設けて構成されており、蓄電体セル1の各電極端子4,5の先端側から差し込むことにより、電極端子4,5の付け根部分を覆うことができる。この一体成形構造のアダプタ10Aは、上下分割構造のアダプタ10に比較して部品点数が少なく、生産性及びコスト低減を期待することができる。
【0031】
尚、この場合、蓄電体セル1の封止部3の厚み及び電極端子4,5の厚みのバラツキ如何によっては、アダプタ10Aとの間の隙間が大きくなり、封止部3及び電極端子4,5とアダプタ10Aとの密着性が低下する虞があることから、接着剤等を併用することが望ましい。
【0032】
以上の蓄電体セル1を複数個接続して積層する場合には、図6に示すように、隣接するアダプタ10の間に、2枚の板状部材15a,15bからなるスペーサ15を装着するようにしても良い。スペーサ15は、互いに接続された蓄電体セル1の電極部分を2枚の板状部材15a,15bで上下に挟持するものであり、図7に示すように、アダプタ10の幅aとスペーサ15を配置するアダプタ10の間隔bとの比率を可変することにより、剛性差を作り出して曲げたい位置の剛性を下げる。これにより、蓄電体セル1を葛折り状に配列して積層する場合等に、電極部分を所望の位置で曲げることができ、パッケージ(モジュール)の生産性を向上することができる。
【0033】
次に、以上の蓄電体セル1の保持構造を基本とする蓄電体モジュール及びパッケージについて説明する。尚、以下では、便宜上、アダプタ10による保持構造を基本として説明するが、上述したように、アダプタ10は種々変形可能である。
【0034】
複数の蓄電体セル1をモジュール化するには、図8に示すように、アダプタ10を装着した個々の蓄電体セル1を、4隅に配設したピン20を介した嵌合構造によって結合される2つの略矩形状の枠体21内に収納する。各枠体21には、蓄電体セル1の蓄電部2を収納する略矩形状の有底部23がそれぞれ設けられ、各有底部23の両側に、アダプタ10を収納して保持するための溝状の溝部24が設けられている。
【0035】
各枠体21の有底部23の深さ及び溝部24の深さは、図9に示すように、2つの有底部23によって形成される空間に蓄電体セル1の蓄電部2を収納すると共に、2つの溝部24によって形成される空間にアダプタ10を収納し、枠体21をピン20を介して嵌合したとき、枠体21によってアダプタ10が押圧・挟持され、アダプタ10を支点として、蓄電部2が各枠体21に対して若干の隙間をもってフローティングするように設定されている。
【0036】
すなわち、枠体21は、蓄電体セル1を直接保持することなく、アダプタ10を介して間接的に保持するようにしている。これにより、蓄電体セル1の枠体21への位置合わせが容易となって組付け作業性を向上することができるばかりでなく、枠体21に外力が加わった場合にも、蓄電体セル1に応力が直接加わることがなく、蓄電体セル1を効果的に保護することができる。
【0037】
この蓄電体セル1のフローティング構造は、図10に示すように、枠体21と、有底部23及び溝部24を両面に形成した枠体21Aとを積層して構成される蓄電体モジュール25に適用される。蓄電体モジュール25は、その高さ寸法Sが各蓄電体セル1の厚みによって影響されないため、安定した寸法を得ることができ、設置上の不都合を回避することができる。
【0038】
この場合、図11に示すように、モジュールを構成する枠体同士の結合にピン20を用いることなく、アダプタ10を嵌合ボスとして利用することが可能である。これにより、従来の枠体105に比較して、蓄電体セル1の電極端子4,5の各方向に枠体21(21A)をL寸法だけ短縮することができ、モジュールを小型化して搭載性を向上することができる。
【0039】
また、アダプタ10を弾性体で形成することにより、図12に示すように、蓄電体モジュール25に外力が加わった場合、弾性体からなるアダプタ10が変形し、外力を吸収することができる。これにより、枠体の軽量化が可能となる。
【0040】
更に、図13〜図15に示すように、アダプタ10の形状を若干変更することで、モジュールの組立作業性を向上することができる。図13は、アダプタ10を若干変更し、電極端子4,5が延出されるコーナ稜線部のエッジをフィレット処理し、所望の丸めR(面取りでも良い)を形成したアダプタ10Bとしたものであり、このアダプタ10Bに対応して、蓄電体モジュール25を構成する枠体21と枠体21Aとの組合せは、図14に示すように、溝部24の位置を端部に移動して溝壁の一方を開放した枠体21Bと枠体21Cとの組合わせに変更する。
【0041】
これにより、モジュールを構成する各蓄電体セル1の電極端子を所望の形状で折曲げることが容易となり、複数の蓄電体セル1間の電極の接続作業を迅速且つ正確に行うことが可能となる。
【0042】
また、図15は、アダプタ10の角柱形状におけるコーナ稜線部のエッジを処理して面取り(或は丸めRでも良い)を施したアダプタ10Cとしたものである。このアダプタ10Cに対応して、枠体21(21A)側は、溝部24の側壁をアダプタ10Cに合わせてテーパ状(或は側壁入口をR状)とした枠体21Dとする。これにより、アダプタ10Cの位置が溝部24に対して多少ずれていても、面取り或はRによって溝内に誘導され、アダプタと枠体との嵌合性を向上することができる。
【0043】
更に、蓄電体セル1と枠体21(21A〜21D)との間には、図16に示す電極端子4,5側から図17に示す封止部3の電極端子の存在しない側までの全面に渡って、多数の空気泡を含む発泡体26を配することが望ましい。この発泡体26を用いることにより、外形がイビツとなりがちな蓄電体セル1を広い面積で保持することができ、耐振性の高いモジュールを形成することができる。
【0044】
しかも、発泡体26は、通常の液状の充填剤に比較して圧倒的に比重が軽いため、モジュールの重量増加を抑制しつつ耐振性の向上を図ることができる。また、発泡体26は、通常の充填材よりも剛性が低いことから、蓄電体セルや枠体が熱膨張した際、その変位を吸収することができ、モジュールに外的応力が加わった際にも、発泡体26が変形することでセルを保護することができる。
【0045】
また、一般に、蓄電体セルは、低温時(例えば、0°C以下)に一時的に性能が劣化し、高温時(例えば、50°C以上)に永久的に性能が劣化する虞がある。 発泡体26は多くの空気泡を含むことから良質な断熱材となり、蓄電体セル1に対する断熱効果を持たせることができ、低温環境下や発熱体近傍の環境下において有効である。
【0046】
発泡体26としては、発泡ウレタン樹脂、発泡エポキシ樹脂、発泡ゴム等を用いることができる。発泡ウレタン樹脂や発泡エポキシ樹脂を用いる場合には、成形のための型が不要であり、モジュール組立後に充填が可能である。この樹脂の充填の際には、樹脂が広がりながら硬化するので、広い面積を均一に保持することができる。また、発泡ゴムを用いる場合には、発泡ゴムが有する大きな弾性により、耐振性能の向上を期待することができる。
【0047】
また、発泡体26を充填することにより、図18に示すように、蓄電体セル1の蓄電部2周囲の封止部3に対し、電極方向と直交する側面を丸或は鋭角状に折曲げて固定することが可能となる。これにより、枠体の幅方向(電極の延出方向と直交する方向)の寸法を寸法mだけ小さくして小型化を図ることができると共に、発泡体26と封止部3とが三次元的に固定されることになり、蓄電体セル1全体の固定強度を向上することができる。
【0048】
また、発泡体26を充填する場合には、蓄電体セル1の封止部3の一部に発泡体26を配さない部分を設けることが望ましい。すなわち、封止部3の一部に発泡体26を配さないことで封止部3の一部を相対的に弱くし、この弱い部分を、セル内部にガスが発生して膨張したときのガス抜き弁として機能させることができる。
【0049】
更に、図19に示すように、蓄電体セル1(特に、蓄電部2)に対して発泡体26を配さない部分を設け、この部分を空気や水等の流体を流す流体通路27として用いることにより、温度コントロールを行うようにしても良い。これにより、低温時にはセルの断熱効果(保熱効果)が得られる一方、高温時には流体による冷却を行うことができ、蓄電体セル1の特性を安定化することができる。
【0050】
以上の蓄電体モジュール25は、人が感電しない、或は感電しても危険性の低い電圧単位を1モジュールとすることにより、安全性と生産性とを両立させる。例えば、蓄電体セル1の直列接続の接続数が最大電圧が50V以下となる接続数を1モジュールとして、この1モジュール毎に出力コネクタを両端に設ける。この出力コネクタは、例えば、図20に示すように、一方を枠体21の端部から突出する雄コネクタ28、他方を枠体21の端部に埋込んだ雌コネクタ29とする。
【0051】
そして、図21に示すように、コネクタ28,29を設けた蓄電体モジュール25を2個以上連結させ、それらを外ケース30で保持して蓄電体パッケージ35を構成することにより、安全な作業で所望の電圧及び容量のパッケージを得ることができる。この蓄電体パッケージ35を車両に設置する場合には、図22に示すように、車体50との間に弾性体51を介在させることにより、軽量で耐振性の高い車載パッケージを実現することができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態においては、蓄電体セル1の封止部3と電極端子4,5との境界部分をアダプタ10(10A〜10C)で固定することにより、応力集中により電極端子4,5の折損や封止部3の開口による封止性能の低下を防止することができ、セルの扱いを容易としてパッケージ化(モジュール化)する上での生産性を向上させることができる。また、このアダプタによる蓄電体セルの基本保持構造を応用することで、小型軽量化や耐振性の向上を図ることができると共に、電圧制御や温度制御等の機能を付加することができ、車両等への搭載に適した蓄電体パッケージ(蓄電体モジュール)を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】直列接続された蓄電体セルの斜視図
【図2】蓄電体セルの電極端子の状態を示す説明図
【図3】コネクタとして利用したアダプタの説明図
【図4】コネクタ接点を示す拡大図
【図5】一体型のアダプタを示す説明図
【図6】隣接するアダプタ間にスペーサを介装した例を示す説明図
【図7】アダプタ及びスペーサの間隔と電極の曲げ位置とを示す説明図
【図8】蓄電体セルの枠体への収納を示す説明図
【図9】蓄電体セルを枠体に収納した状態の断面図
【図10】蓄電体セル及び枠体を積層した蓄電体モジュールの説明図
【図11】枠体の小型化を示す説明図
【図12】蓄電体モジュールに対する外力の影響を示す説明図
【図13】蓄電体セルに装着するアダプタの変形例を示す説明図
【図14】図13のアダプタに対応する枠体を用いた蓄電体モジュールを示す説明図
【図15】アダプタと枠体との嵌合性を向上した変形例を示す説明図
【図16】蓄電体セルと枠体との間に発泡体を充填した例を示す断面図
【図17】蓄電体セルの電極端子が存在しない側に充填した発泡体を示す断面図
【図18】封止部と発泡体との三次元的な固定状態を示す説明図
【図19】発泡体に流体通路を設けた例を示す説明図
【図20】モジュール単位でのコネクタの配置を示す説明図
【図21】蓄電体パッケージを示す説明図
【図22】蓄電体パッケージの車両への設置例を示す説明図
【図23】従来例に係わり、直列接続された蓄電体セルの斜視図
【図24】同上、蓄電体セルの枠体への収納を示す説明図
【図25】同上、蓄電体セルを枠体に収納した状態の断面図
【図26】同上、蓄電体セル及び枠体を積層した蓄電体モジュールの説明図
【図27】同上、蓄電体モジュールに対する外力の影響を示す説明図
【符号の説明】
【0054】
1 蓄電体セル
2 蓄電部
3 封止部
4,5 電極端子
10,10A,10B,10C アダプタ
13 コネクタ接点
15 スペーサ
21,21A,21B,21C,21D 枠体
25 蓄電体モジュール
26 発泡体
27 流体通路
28,29 コネクタ
30 外ケース
35 蓄電体パッケージ
50 車体
51 弾性体
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部を封止する封止部から上記蓄電部に連結される電極端子を外部に突出した平面状の蓄電体であって、
上記封止部と上記封止部から露呈する上記電極端子との境界部分に、この境界部分を固定するアダプタを介装したことを特徴とする蓄電体。
【請求項2】
上記アダプタを、上記境界部分を挟持して固定する2つの部材で構成したことを特徴とする請求項1記載の蓄電体。
【請求項3】
上記アダプタを1つの部材で形成し、該部材に上記電極端子を挿通して上記封止部を所定位置まで挿入可能な上記電極端子を挿通可能なスリットを設けたことを特徴とする請求項1記載の蓄電体。
【請求項4】
上記アダプタに、上記電極端子に導通するコネクタ接点を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の蓄電体。
【請求項5】
上記アダプタに、上記電極端子の温度を検出する温度センサを組込んだことを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の蓄電体。
【請求項6】
上記蓄電体を複数個直列に接続したとき、互いに隣接する上記アダプタの間に、上記電極端子を固定するスペーサを介装したことを特徴とする請求項1〜5の何れか一に記載の蓄電体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一に記載の蓄電体を収納して保持する枠体を備え、
上記アダプタを上記枠体で固定し、上記蓄電部を上記枠体からフローティングさせて保持することを特徴とする蓄電体のパッケージ構造。
【請求項8】
上記枠体を、上記アダプタを一面側から押圧するための第1の枠体と、上記第1の枠体に対向して上記アダプタを他面側から押圧するための第2の枠体とによって構成したことを特徴とする請求項7記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項9】
上記アダプタを上記第1の枠体と上記第2の枠体とに嵌合させ、上記第1の枠体と上記第2の枠体とを結合することを特徴とする請求項8記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項10】
上記アダプタを、弾性体で形成したことを特徴とする請求項7〜9の何れか一に記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項11】
上記蓄電体と上記枠体との間に、発泡体を充填したことを特徴とする請求項7〜10の何れか一に記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項12】
上記封止部の上記電極端子が存在しない側の側面を丸或は鋭角状に折曲げ、上記発泡体で三次元的に固定したことを特徴とする請求項11記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項13】
上記蓄電体と上記枠体との間に上記発泡体を配さない部分を設けたことを特徴とする請求項11又は12記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項14】
上記発泡体を配さない部分を、流体を流す流体通路として用いることを特徴とする請求項13記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項15】
上記発泡体を配さない部分を、上記封止部の一部に設けたことを特徴とする請求項13記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項16】
上記蓄電体及び上記アダプタを収納した上記枠体を積層し、上記蓄電体を直列接続した最大電圧が感電に対して安全を確保可能な電圧となる接続数を単位とする蓄電体モジュールを構成し、この蓄電体モジュールの両端に出力コネクタを設けたことを特徴とする請求項7〜15の何れか一に記載の蓄電体のパッケージ構造。
【請求項17】
上記蓄電体モジュールを複数連結して外ケースにより保持し、この外ケースを弾性体を介して車体に設置する車載パッケージを構成することを特徴とする請求項16記載の蓄電体のパッケージ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2006−278263(P2006−278263A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99283(P2005−99283)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】