説明

蓄電手段劣化推定方法及び電源装置,鉄道車両

【課題】蓄電手段の抵抗劣化を簡便に精度よく推定し、蓄電手段の交換時期を的確に把握すると共に蓄電手段を過負荷にさせず安定した動作を実現する。
【解決手段】あらかじめ運転方法が決定されている鉄道車両の路線走行時の蓄電手段の電流,表面温度,電圧,環境温度を記録し、最大電圧と最小電圧の差ΔVを初期値ΔViniと比較し、閾値ΔVthとの比較で劣化を算出し、制御に劣化を反映させると共に運転台に劣化度と点検警告の表示をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池,ニッケル水素電池,鉛電池,電気二重層キャパシタなどの充放電が可能な蓄電手段の制御方法に関し、特に、蓄電手段を駆動用電力の一部又はすべてとして使用する鉄道車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道分野においても環境問題を考慮し省エネルギー化の流れがあり、車両に二次電池を搭載し、ブレーキ時の回生電流を蓄電,力行時に駆動用電力の全部あるいは一部として利用する蓄電手段搭載車両が開発されている。電動車両やハイブリッド車両、蓄電手段搭載電車の駆動用蓄電手段としては、ニッケル水素電池,リチウム二次電池などの二次電池や、キャパシタなどの高出力電池が搭載されている。特にニッケル水素電池やリチウム二次電池は鉛電池に比べてエネルギー密度が高いため、多直列・多並列構成として、概蓄電システムとして使用される。
【0003】
ここで本発明における蓄電手段の定義を説明する。繰り返し充放電可能な蓄電デバイスにおいて、1対の正極負極から構成される最小の蓄電素子を単電池とする。この単電池を複数直列化して組電池としたユニット、或いはこれをさらに複数接続した構成で、外観上、単一のブロック状、或いは筐体に収容された形状で、一組の正極端子,負極端子で電流入出力経路を有するモジュールを狭義の蓄電池とする。
【0004】
二次電池は充放電を繰り返すことで、充電状態(SOC:State of Charge)や、劣化状態(SOH:State of Health)が変化し、二次電池は劣化が進行すると、充放電容量の低下や電池内部抵抗の増加を生じる。そのため、劣化に伴い、システムの出力が次第に低下する。また、保存時に自己放電による劣化が進行し、電圧の低下があることは良く知られている。
【0005】
一方、鉄道車両に使用される蓄電手段は大型で大容量が要求され、蓄電手段のコストがシステム全体に占める割合が高く、蓄電手段の性能を生かす制御が必要であり、また、蓄電手段の交換期間は長いことが望ましい。
【0006】
よって、蓄電手段の入出力は劣化に応じて変化するので、劣化状態を適切に検出し、種々の制御を行う必要がある。
【0007】
蓄電池の劣化状態を検出するために、ハイブリッド自動車においては、特許文献1に記載されているような内部抵抗測定による方法がある。蓄電手段のSOCが略同一であると推定される時点での電流と電圧を測定し、それらの放電時と充電時の電圧と電流の測定値に基づいて内部抵抗を検出する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−21455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に代表される方法では、車両の走行中に内部抵抗が検出,演算される。
【0010】
ハイブリッド自動車は加減速が頻繁であり、蓄電手段の充放電電流は図2に示すように単位時間当たりの充放電の切り替わりが多く、また使用される電流値も大きいため入出力変動が大きい。特許文献1では、その特性を利用し、放電時および充電時の電圧と対応する電流を複数収集しその電圧−電流直線の傾きにより内部抵抗を演算している。
【0011】
一方、鉄道車両やEV等においては、より大電流が必要とされ、図3に例示されるような電流パターンが蓄電手段に要求され、入力、または出力の単位時間あたりの切り替わりが少なく、蓄電手段にとっては放電又は充電の継続時間が長くなる。そのため、走行中に単位時間当たりで放電及び充電の両方のデータを数多く収集して劣化度を演算する方式では、ハイブリッド自動車と同等量のデータを得ることが難しく、短時間走行では、蓄電手段の劣化度(SOH:State of Health)を精度良く求めることが難しいという問題がある。また、同様に蓄電手段の概略同一SOCまで充電量と放電量を積算する方式においても、略同一積算容量の時点で、抵抗値が計算できる電流変化が必ずしも起こるとは限らない。また、充電電力の積算値等からSOHを求める方法では電流の測定誤差が、積算値に影響するため、電流計測手段は高精度のものが必要とされるため、コストを抑えて精度良く求めることが難しいという問題があった。更には、特にリチウム電池に見られるが、大電流充放電が継続すると一時的に抵抗値が上昇する現象が見られる。一時的な抵抗上昇であるため、前回走行終了後から始動までの期間が長く、システム停止中に抵抗値が減少した場合、前回走行時の抵抗値を利用したSOC演算や、許容入出力電流,電力について、誤差が大きくなる問題がある。そのため、蓄電手段の交換を適切な時期に交換する指標を簡便に得ることが難しかった。
【0012】
また、基準抵抗を用いて比較する場合には、特定条件、たとえば、計測制御周期で数十msで電流が大きく変化する場合から算出される抵抗値を使用する場合では、数十msでの初期蓄電手段の抵抗基準として、抵抗劣化の上昇率を推定SOCにおける抵抗と温度の関係から算出するが、実際の鉄道車両の充放電は数十秒継続する場合が多く、抵抗値が時間と共に上昇する。そのため、数十msでの抵抗値や、数秒での抵抗値で劣化を予測した場合に、動作上下限電圧からの限界予測抵抗値から算出される抵抗上昇率と、数十秒の充放電時の限界抵抗から算出される抵抗上昇率とは一致せず、システム上の定格動作が可能な期間が実際よりも長く見積られる問題が明らかとなった。そのため、寿命判定前にシステム上の定格動作が損なわれ、ハイブリッド車両でいえば燃費が低下するなどの問題が起こりうることがわかった。
【0013】
本発明は、従来のこのような問題の少なくともいずれかを解決することを目的に開発されたものであって、蓄電手段の劣化を簡便な方法で測定するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記蓄電手段の電圧を計測し、計測された電圧計測値を記録し、記録された電圧計測値から電圧変動幅を算出し、算出された電圧変動幅を予め算出された初期電圧変動幅と比較することにより蓄電手段の劣化状態を推定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、蓄電手段の劣化をより簡便な方法で計測することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の動作フロー概要図である。
【図2】ハイブリッド自動車の蓄電池電流の例を示した図である。
【図3】鉄道,EV等の蓄電池電流の例を示した図である。
【図4】本発明を適用した蓄電システムの構成例である。
【図5】本発明を適用した蓄電システムの構成例である。
【図6】本発明における実施形態である動作フローを示した図である。
【図7】本発明の実施形態である蓄電手段からの測定データ処理の概要図である。
【図8】蓄電手段の電圧動作を示した図である。
【図9】蓄電手段の特性を示した図である。
【図10】蓄電手段の特性を示した図である。
【図11】本発明の実施形態である蓄電システムの構成例である。
【図12】本発明の実施形態である蓄電システムの表示装置の例である。
【図13】本発明における実施形態である動作フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における実施例では、あらかじめ決められた運転を定期的に実施することが多い鉄道車両において、走行中に得られる、蓄電手段を流れる電流,蓄電手段の電圧,蓄電手段温度,環境温度の計測データから、同一走行路線における、運転時の蓄電手段電圧の最大値Vmaxと最小値Vminを記録し、その差ΔVを指標として、劣化を判定する。
【0018】
さらに、一定路線における走行初期のΔViniと走行時のΔVを比較することにより、蓄電手段の劣化を判定し、交換指標を運転台に表示,視認できる手段を搭載するものである。
【0019】
ここで、電圧の計測手段は本発明において必須の構成である。電流や蓄電手段温度,環境温度の計測手段は劣化判定の精度を向上させるために必要な構成である。電圧を計測する際の電流,蓄電手段温度,環境温度によって劣化演算結果は異なるため、これらの各パラメータは電圧計測値と関連付けて記憶される。例えば、図9に示すように蓄電手段の温度によって蓄電手段の内部抵抗値は大きく変動する。そのため、例えば、蓄電手段の温度が25度以上の場合に計測した電圧値を劣化推定に用いると良い。
【0020】
本発明における実施例の鉄道車両は、少なくとも1つ以上の蓄電手段と制御回路を備えた蓄電手段の情報制御システムであり、図4に示す、少なくともひとつ以上の蓄電手段20を充放電させる充放電手段60と、蓄電手段20の電圧を検出する電圧計測手段30と、ホールCTやシャント抵抗型の電流センサ等を備えて各蓄電手段の電流値を計測する電流検出手段40と、電圧計測手段30の検出電圧及び電流検出手段40の電流値を記録するデータ記録部10と、データ記録部10に記録された電圧情報から前記蓄電手段の抵抗値を演算する演算部分(図示せず)と、を有し、劣化判定プログラムを有した構成であり、鉄道車両の運転中は制御指令発生手段70から運転指令を出力して、充放電手段60で負荷電流を印加する。
【0021】
本発明における実施例では、システム起動開始とともに、図1に示すように、初期電圧Vini,電流I,蓄電手段の温度Tc,環境温度Taを計測,記録を開始、(S1)、その後、車両走行開始(S5)後も電圧V,電流I,温度Tc,Taを記録(S6)、走行終了(S7)時までデータを蓄積する。その後、充電時の最大電圧Vmax、放電時の最小電圧Vminを抽出する。ここで、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminの抽出は、放電動作と充電動作を少なくとも各1回以上行う走行後に実施するものとし、例えば1日に1回の抽出を行うと良い。また、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminの抽出は、電圧Vと関連付けて記録された電流I,温度Tc,Taがそれぞれ所定範囲である場合の電圧Vから抽出される。このように電流I,温度Tc,Taが所定範囲を逸脱した際の電圧Vを除外して最大電圧Vmaxと最小電圧Vminを抽出することにより、劣化推定の誤差を抑えることができる。
【0022】
電圧変動を充電時の最大電圧Vmaxと放電時の最小電圧Vminの差分を取り、ΔVとする(S8)。初期に得られるΔVをΔViniとし、ΔVとΔViniを比較することで蓄電手段の劣化度SOHを算出する(S10)。ここで、ΔViniの算出も、蓄電手段が放電動作と充電動作を少なくとも各1回以上行った後に実施される。
【0023】
SOHを閾値とΔVthと比較判定(S12)し、閾値よりも大きい場合は、交換警告表示(S13)、閾値よりも小さい場合は履歴を記録(S14)し終了する。
【0024】
以上により蓄電手段の劣化判定を実施し、正常,異常の判定及び交換時期の表示を実施することで本発明の課題を解決する。
【0025】
ここで図8により、電圧変動幅ΔVについて説明する。走行時の蓄電手段の電圧波形は、放電時に電圧低下し、充電時に電圧が上昇する。このとき、図8に示すように蓄電手段のシステムの初期の蓄電手段電圧波形(A)に対し、劣化進行時の蓄電手段電圧波形は(B)に示すようになる。初期は、最大充電電圧Vmax0,最小放電電圧Vmin0で、電圧変動幅はΔVini=(Vmax0−Vmin0)である。劣化進行時は最大電圧Vmax,最小電圧はVminとなり、ΔV=(Vmax−Vmin)である。ここで、Vclimは充電動作時における最大動作電圧、Vdlimは放電動作時における最小動作電圧、ΔVthは電圧変動幅の閾値である。
【0026】
前記のデータ記録部10は、一次的な記録を実施するRAM、演算データを記録するROM(Read Only Memory)、書き換え可能な大容量記録媒体の少なくとも1つ以上を有する。
【0027】
走行の時期,乗客数の増減,天候による運転条件の違い等から発生する電流誤差を軽減するため、乗客が不在となる営業前の路線走行時の蓄電手段の電流および電圧データを同路線で複数取得し、路線に対し、平均の蓄電手段電流パターンI(t)を取得する。得られた電流パターンI(t)と、路線走行パターンはほぼ同等の走行をすると考えられるため、走行時の電流I(t)′は初期に得られる電流パターンI(t)をある一定の範囲内で逸脱しないことになる。
【0028】
そのため、電流パターンは同一とみなすことができ、蓄電手段の劣化を相対的に評価することが可能となる。
【0029】
また、蓄電手段においては許容される充放電における最大電流値が充電側Icmax,放電側Idmaxともあらかじめ決定されている。そのため最大電流と、動作時の蓄電手段のSOCの関係から得られる限界時の開回路電圧をもとに、電圧変動幅の閾値ΔVthを計算することが可能である。
【0030】
蓄電手段の温度が室温以上の場合においては、最大電流までの範囲で、SOC変動が1%以内の範囲では 特許文献1の理論を使用すれば、直流抵抗Rは電流によらず一定である。しかし、SOC変動を大きく伴う場合には分極を含む抵抗値が大きくなる傾向が顕著となる。しかしながら、その情報は電圧変動に含まれるため、電圧変動の監視が重要となる。動作時の最大電圧Vmax,最小電圧Vminはそれぞれ式(1),(2)で示される。ここで、i1(R),i2(R)は充電電流i1、放電電流i2のときの分極を含む全体の抵抗値を反映した電圧分極幅を示している。
【0031】
【数1】

【0032】
【数2】

【0033】
初期の電圧変動ΔV0、走行時の電圧変動幅ΔVはそれぞれ式(3),式(4)で示される。ここで初期の抵抗R1、走行時の抵抗R2とすると、この状態の電圧分極は動作時の上限SOC,下限SOCが同じ場合、電圧差は定数aとおける。式(5)。変動幅ΔVから定数aを引いた差分が、劣化情報を含んだ電圧変動式(6)となる。
【0034】
【数3】

【0035】
【数4】

【0036】
【数5】

【0037】
【数6】

【0038】
よって、電圧変動幅ΔVは劣化情報を直接含み、しかも、確認が容易である。この電圧変動幅ΔVの値が大きくなればなるほど劣化は進行しているということになる。例えば、電圧変動幅ΔVの絶対値を劣化の段階分けしたテーブル値と比較することによって、交換,異常の判断を実施することが可能である。
【0039】
また、蓄電手段の温度を測定する温度検出部(図示せず)の検出温度の情報から、あらかじめ内部情報として持っている抵抗値の温度換算を実施、基準値と比較することにより、蓄電手段の劣化状態を走行中のデータから検出することで上記の課題を解決するものである。
【0040】
または、得られた電圧変動幅ΔVの値とシステム寿命時に想定される電圧変動幅ΔVthと比較することにより、蓄電手段の劣化度を判定,交換,異常の警告を運転台に表示する。本手法により運転手に視認させることができることにより、適切な蓄電手段の交換を促す。さらには、判定した劣化度を蓄電手段の入出力制御に反映し、劣化進行時には電流の絶対値を小さくすることで、蓄電手段への負担を軽減し、蓄電手段の長寿命化にも寄与するものである。
【0041】
実走行時の日々走行データの2つ以上の計測データの平均値から算出された電圧変動幅ΔVを用いて劣化度を算出することで、蓄電手段の劣化度の演算ばらつきを抑制し、精度よく劣化度を推定し、一時的な抵抗変化を劣化と分離することができる。
【0042】
または、さらに停車時の抵抗測定手法により算出された蓄電手段の抵抗値や、別アルゴリズムで演算した劣化データと、上記した劣化推定方法を組み合わせることにより、蓄電手段の電圧を走行中に別アルゴリズムで演算した劣化データとさらに比較し、検出した抵抗値に応じて蓄電手段の制御用パラメータを変更し、劣化及び異常を判定することによっても本発明の課題を解決できる。
【0043】
本発明の実施例では、図3に示されたような単位時間当たりに充電又は放電に切り替わる回数が少なく、電流変化も急峻でない電流変化をする蓄電手段の使用用途においても、蓄電手段の劣化状態を簡便に推定することが可能で、点検・交換時期を適切に管理できる。充放電時間が長く、統計的に処理を実施するため、マクロな蓄電手段の動作全体での劣化状態が確認できるため、SOCの推定演算の精度に影響を受けずに、劣化を判定することが可能になる。また、別アルゴリズムで算出したSOHとの対比により、蓄電手段の状態が判別可能であり、蓄電手段の劣化に合わせた充放電制御が可能となる。
【0044】
マクロに蓄電手段の劣化を捕らえることで、蓄電手段の抵抗を使用したSOC演算の精度が向上し、蓄電手段の許容入出力を超える入出力命令が起こることがなくなり、蓄電手段が過負荷になることが防止できる。過負荷によってシステム停止を引き起こすエラーがなくなり、システムがより安定すると共に、蓄電手段の性能を十分引き出すことが可能となり、その時々の状態に合わせた最適使用が可能になる。
【0045】
また、劣化確認操作部を有することにより、オペレータが簡便に蓄電手段劣化を確認することが可能であり、蓄電手段の劣化が激しいものについては走行開始前に交換することが可能となる。さらには、読み出し値と現状劣化状態との比較が出来、蓄電手段の状態が確認できるため、蓄電手段の充放電量を蓄電手段の劣化状態に合わせて制御することが可能になる。よって、より安定した制御が可能となり、安定走行につながり、ハイブリッドシステムの場合は燃費も向上する。
【0046】
鉄道車両などに本発明を適用した場合、営業前の始業時に電圧変動幅の算出を実施することが可能であり、走行前の一連の点検に盛り込むことにより、特別な保守なく、蓄電手段の精度よい劣化推定が可能となる。そして、より安定な運行を維持することが可能となる。
【0047】
また、リチウム蓄電手段の場合、SOCに応じて抵抗値が変化する特性を持っているが本方法によれば、劣化測定は、ほぼ同一のSOC値における劣化比較も可能で、前回値との比較から、複雑なアルゴリズムを有しなくても劣化を推定反映させることが可能である。
【0048】
また、大電流の継続による一時的な抵抗増加についても、電圧情報に含まれているため、本発明の電圧管理を実施することにより、電流を継続して流す時間の長短に関わらず、蓄電手段の劣化を検出することが可能になる。また、SOC推定演算によって求めたSOCと、推定OCVを使用する劣化演算方式の場合に比較して、本発明では稼動時のSOCが完全に同一でなくても、変動幅ΔVはほぼ一定であるから、劣化進行時の推定誤差が小さくできる利点がある。
【0049】
また、推定SOCの値や推定OCVを利用した演算を実施し、リアルタイムでのSOH演算で得られた走行終了直後の蓄電手段の劣化状態を次回走行に反映する方式では、前回走行終了後から始動までの期間が長く、システム停止中に一時的に上昇した抵抗値が減少した場合、前回値の反映では、SOC演算や、許容入出力電流、電力について、誤差が大きくなる問題があったがこの問題に対し、本発明を適用することにより、蓄電手段の実抵抗をより反映した入出力指令が可能となりSOC推定に基準抵抗値を使用する演算方法の場合は推定精度が向上する。更に学習による制御パラメータ補正と組み合わせることにより、電池の状態検知精度が向上する。
【0050】
蓄電手段の制御精度が向上することにより、蓄電手段については過負荷を回避することが可能になり、より安定した走行を実現できる。
【0051】
蓄電手段の劣化が停車時に容易に判別でき保守もしやすくなるという利点がある。特に一定電流での走行パターンの場合に、上下限電圧と時間の関係から、定量的に劣化が判定できる
【0052】
以下図面を用いて本発明に関わる実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0053】
図5のように構成された、エンジン201と蓄電手段206によって駆動されるハイブリッドシステムに適用する場合について説明する。車両システムの構成例を以下に示す。エンジン201及びエンジン201に軸で直結された発電機202はU,V,Wの3相の交流電力を発生し、コンバータ装置203はこの交流電力を直流電力に変換して出力する。インバータ装置204はコンバータ装置203から出力される直流電力を可変電圧,可変周波数の3相交流電力に変換し、誘導電動機205に供給する。蓄電装置206はコンバータ装置203の出力側(直流側)に並列に接続され、車両の起動時に電力を補給する。平滑コンデンサ207はインバータ装置204の入力側(直流側)に並列に接続され、インバータ入力電圧の変動を抑制する。
【0054】
一方、制御部210は、電流検出器209aで検出したコンバータ出力電流Isと電圧検出器208で検出した平滑コンデンサ電圧及び発電機回転周波数によりコンバータ制御演算を実行し、コンバータ装置203に対して、コンバータPWM制御信号を出力する。また、制御部210は、電流検出器209b,209c,209dで検出した電動機電流Iu,Iv,Iwと電圧検出器208で検出した平滑コンデンサ電圧、及び電動機回転周波数よりインバータ制御演算を実行し、インバータ装置204に対して、インバータPWM制御信号を出力する。蓄電手段の電池状態演算部では、蓄電装置206の入出力電流,電圧,蓄電装置の温度と、環境温度から、蓄電装置206の稼動状態を演算する。さらに、制御部210は、蓄電手段の電池状態演算部から出力される蓄電装置206の情報から、蓄電装置206の稼動状態を判断,蓄電装置の充放電制御信号を出力する構成となっている。
【0055】
電池状態演算部で実行される蓄電装置の劣化推定手順を図6を使用して説明する。まず、蓄電システムの起動後、初期電圧Vini,電流I,蓄電手段の温度Tc,環境温度Taを測定し(S1)、開始充電状態SOCiniを演算する(S2)。開始電圧Viniと、SOCiniを記録し(S3)、始動電圧に満たない場合は、充電により始動時の電圧を調整(S4)してから走行を開始する(S5)。走行中は電圧V,電流I,温度Tc,Taの測定値を関連付けて記録し(S6)、走行終了(S7)後、走行時の最大電圧Vmax,最小電圧Vminをそのときの電流値I及び温度Tc,Taとともに抽出し、ΔVを求める(S8)。求めたΔVを予め定められた初期値ΔViniと比較する(S9)。ΔVの閾値ΔVthとも比較をし、劣化度SOHの算出(S10)後、オペレータ確認画面へ表示する(S11)。更にSOHを閾値と比較し(S12)、閾値よりも大きい場合を劣化とみなし、交換点検警告表示をし(S13)履歴を記録する(S14)。閾値よりも劣化度SOHが小さい場合は交換点検警告表示を行わずに、そのまま履歴を記録する(S14)。
【0056】
このとき劣化度SOHの算出は、ΔVとΔViniの絶対値で比較により算出することができる。もしくはΔV/ΔViniにより算出しても良いし、またはΔVからSOC変動分の電圧幅を減じ電流値で除した値での比較により算出しても良い。
【0057】
さらに、図7に電池状態演算部における劣化演算のデータ処理を示す。図7に示すように、劣化演算は、各センサからの電圧V,電流I,温度Tc,Taの入力をA/D変換後、関連付けて記録部に記録し、記録部からデータを選択,抽出して劣化度SOHを算出した後、劣化度SOHの算出結果を表示部へ表示するとともに、劣化度SOHの算出結果を制御部210へ反映させる。制御部210は、劣化度SOHの算出結果により、蓄電手段の現在の抵抗値を算出し、得られた抵抗値から許容される電流値を計算、更にはSOC演算補正を実施する。尚、SOC演算や許容電流計算は特許第4157317号の段落[0028]から[0079]に開示されている技術が適用できる。
【0058】
路線走行時の劣化度SOH演算は、車庫から始発駅まで、あるいは終着駅から車庫までの走行時のように車両重量が一定の場合に行う方が好ましい。車両重量が一定の場合には出力変動が少なく、電流パターンもほぼ一定で得られるため、より精度の高い劣化診断が実施できる。
【実施例2】
【0059】
他の実施例として、図11に示すように複数の蓄電手段それぞれに電圧計測手段を備えた実施形態について説明する。本実施例で言及しない部分は、実施例1と同様の構成であるものとする。
【0060】
図11に示す複数の蓄電手段211と212が直列に接続された蓄電手段に直列に各蓄電手段の電流値を計測する電流検出手段40と,各蓄電手段の電圧を計測する電圧計測手段31,32および、総電圧検出手段の検出電圧及び電流検出手段の電流値を記録するデータ記録部10と、データ記録部10に記録された電圧情報から前記蓄電手段の抵抗値を演算する演算部分(図示せず)とを有し、劣化判定プログラムを有した構成で、走行中は制御指令発生手段70から指令を実施して、充放電手段60で負荷電流を印加する車両構成において、蓄電手段211は電圧計測手段31の電圧を、蓄電手段212は電圧計測手段32の電圧をモニタし、記録することにより、蓄電手段ごとの電圧変動幅ΔVをそれぞれ演算する。初期あるいはシステムの代表値のΔVini と比較し、それぞれの蓄電手段の劣化度を算出し、ΔVが閾値以上の場合に,各蓄電手段について個別に劣化情報を表示する。これにより、各蓄電手段の異常や、蓄電手段の劣化ばらつきが判定でき、蓄電手段の交換やメインテナンスの要否を簡便に知ることができる。また各蓄電手段の劣化状態に応じて、充放電電流を制御したり、部分保守を容易に行うことができる。
【実施例3】
【0061】
他の実施例として、システムの安定維持運用に関する実施形態について説明する。本実施例で言及しない部分は、実施例1と同様の構成であるものとする。走行時の蓄電手段の電圧波形は放電時に電圧低下し、充電時に電圧が上昇する。このとき、図8に示すように蓄電手段のシステムの初期の蓄電手段電圧波形(A)に対し、劣化進行時の蓄電手段電圧波形は(B)に示すようになる。初期は、最大充電電圧Vmax0,最小放電電圧Vmin0で、電圧変動幅はΔVini=(Vmax0−Vmin0)である。劣化進行時は最大電圧Vmax、最小電圧はVminとなり、ΔV=(Vmax−Vmin)である。ここで、Vclimは充電動作時における最大動作電圧、Vdlimは放電動作時における最小動作電圧である。
【0062】
蓄電手段の劣化時には、蓄電手段の過充電、あるいは過放電の保護のため、電圧が最大電圧Vclimまたは最小電圧Vdlimに到達した場合に電流を減じることが一般に行われている。本実施例においても、劣化時のΔVが閾値ΔVthを超えた場合に、蓄電手段の充放電電流をあらかじめ設計されている電流閾値よりも小さくすることができる。また、図8に示すように、上限のVclimから決定される電流閾値の場合、開始電圧を下げることで、電流閾値による許容範囲内の電流値を得ることが可能である。よって、走行中に電圧変動幅ΔVが閾値ΔVthに達し、VmaxがVclimに達した場合には、ひとまず走行時の充電電流を減少させて走行する。走行終了後、次回走行開始時に、開始電圧を下げることにより、VmaxをVclim以下とすることができ、電流値はもとの規定の電流値を得ることが可能となる。電圧変動幅ΔVが閾値ΔVthに達した時点で即座に蓄電手段を交換せずみ、継続して蓄電手段を使用することが可能で、蓄電手段を有効利用できる制御が可能となる。尚、ΔVがΔVthに達し,かつ,最大電圧Vmaxが上限電圧Vclim、あるいは最小電圧Vminが下限電圧Vdlimに達した場合の電流制限は、ΔVthに所定の回数達した場合に実施することも出来る。これによりノイズなどによる誤検知により無駄に電流制限を実施することを防ぐことができる。
【実施例4】
【0063】
本発明の他の実施例として、電圧変動幅ΔVの算出に用いる電圧計測値の計測時間を選択する例を示す。本実施例で言及しない部分は、実施例1と同様の構成であるものとする。
【0064】
本発明の蓄電システムにおいて、特定路線を車両が走行した際の蓄電手段の電流I,電圧V,温度Tcの記録データから、温度Tcが所定温度以上、且つ複数の電流値Iの前後の電流範囲I±αで選択された電流値を使用し、走行開始時間から所定時間経過後の時間tの前途の時間範囲t±t′での走行区間を選択し、路線のデータを時間とともに記録しておいた記録データの中から、選択した路線における放電電流,充電電流が最も大きくなると想定されている、あらかじめ決められた時間の範囲内で演算箇所を選択し、ΔVを算出し、劣化度を判定する。
【0065】
このとき、温度範囲もT±tの範囲で限定、更に複数値での平均値として、複数状態での蓄電手段の劣化情報を含むように設定する。
【0066】
この実施例によると、ΔVの算出に用いる電圧値の計測条件を特定できるため、劣化判定の精度をより向上させることができる。
【実施例5】
【0067】
本発明の他の実施例として、劣化度をより精度よく算出する実施形態を説明する。本実施例で言及しない部分は、実施例1と同様の構成であるものとする。劣化度の測定区間として定電流で運行される区間を選択し、一定秒数tの時点の充電電圧V1と、放電側でも一定秒数t′の時点でのV2と、でΔV=(V1−V2)を算出し、このΔVと、同条件で算出された初期値ΔViniを比較し、閾値ΔVthとの差から劣化度を算出する。
【0068】
この実施例によると、同じ電流値の条件で電圧値を検出できるため、劣化度を精度良く算出することができる。
【実施例6】
【0069】
定期的な走行により、平均化することで初期ΔVoを基準とし、走行劣化時のΔVを比較する。蓄電手段の電圧が放電時間(SOC)に伴い一様に変化する蓄電デバイスであれば、使用範囲内で、最大電圧,最小電圧が決まる。更に、一日の運行路線が決定している場合は、最大電圧と最小電圧の幅が決定している。
【0070】
蓄電手段がリチウムイオン電池の場合は、図9,図10に示すように温度による抵抗値変化が大きいが、蓄電手段の温度が25℃以上であれば、SOCによらず、抵抗値はほぼ一定である。
【0071】
このSOCと温度の範囲内で動作する蓄電手段のシステムにおいては、開始電圧が数%異なり、走行時のSOCが全体的数%上下しても、電圧変動幅で抵抗値の変動を見積もることが可能である。
【0072】
蓄電手段の劣化は緩やかに進行するため、1走行、1走行での比較よりも、同じ路線を複数回走行したときの平均値から、初期走行の代表値を求め、更に蓄電手段の温度ごとに代表値を蓄積する。初期走行で取得できない温度範囲については、蓄電手段の初期の温度特性から換算テーブルを作成して利用することができる。
【0073】
初期蓄電手段のΔViniの代表値と、複数走行、たとえば10日間のデータを蓄積しての移動平均から求めた走行時のΔVを比較すると、計測異常値やデータ変換異常の値をフィルタすることができ、これにより信頼性の高い劣化判定が実施できる。
【0074】
図13を用いて本発明の測定時の動作を説明する。システム起動時に初期電圧Viniを測定(S1)、電圧V,電流I,温度Tの情報から初期の蓄電手段の状態SOCiniを演算(S2)、その後開始電圧Vini,SOCiniをデータ記録部に記録後(S3)、走行開始する(S5)。実行時の電圧,電流,温度をデータ記録し(S6)、選択した電圧,電流データでのΔVを算出する(S8)。ΔVから(使用した電流データを用いて得られる抵抗値より)SOHを算出(S10)し、オペレータ確認用画面に表示する(S11)。また、算出されたSOHを基準のSOHからの変動ΔSOHとして、ΔSOHの閾値と比較し(S12)、ΔSOHの閾値より大きい場合は蓄電手段の充放電制御に用いられる制御パラメータへ劣化を反映し(S13)、履歴を記録する(S14)。S12においてΔSOH≦閾値の場合は、履歴を記録するのみでパラメータには反映しない。
【0075】
また、走行毎の蓄電手段電圧,電流,温度などを記録するデータ保管装置は、車両内における二次電池システムの状態検知演算部にあるのが望ましいが、車両内の任意のデータ保管装置や、あるいは、LAN等の通信を利用して、車両外の車両基地にあっても良い。
【0076】
路線、あるいは区間毎に走行時の日時,蓄電手段電流,電圧,蓄電手段の温度,環境温度を記録しておき、図12に示すような運転台にある視認操作パネルにおいて、路線選択,温度範囲選択,日時指定を実施することで、所望の期間における蓄電手段のΔVを算出し、任意の劣化度を確認することができ、蓄電手段の保守時に異常の有無を確認することを可能とする。
【0077】
図12に運転台の視認操作パネルの例を示す。操作表示盤には点検警告表示、交換表示を表示する部位を備え、第1の蓄電手段状態表示装置と、任意測定SOH表示装置の少なくとも1つ以上を備え、温度範囲選択部,路線選択部により、条件設定を実施し、蓄電手段の劣化確認処理スイッチにより蓄電手段の状態を演算し、結果を表示装置に表示させる。点検警告表示は運転台の操作パネルの他、各蓄電手段にそれぞれ配置されていてもよい。
【0078】
以上のように、電流I,電圧V,蓄電手段の温度Tの情報から、蓄電手段の状態を検出し、および蓄電手段の劣化状態(SOH)を演算する。演算されたSOHを制御用パラメータに反映し、検出された蓄電手段の状態の許容電流・許容電力演算を実施、これに基づいた入出力指令により、蓄電手段を充放電することで安定した出力を得、蓄電システムを長寿命化することが出来、システムの安定維持が可能となる。
【0079】
なお、本実施例における蓄電手段2は、蓄電手段のシステムを構成する要素であって、単電池でも適用可能であり、該単電池を組み合わせた組電池であっても良い。
【0080】
さらに、通信により、蓄電手段の組電池の筐体内に例えば内蔵された制御回路等にデータ保存領域がある場合、履歴を保存し、保守時に活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明における蓄電手段はリチウム二次電池に限らず、ニッケル水素電池,NAS電池,鉛電池,電気二重層キャパシタなどの充放電可能な蓄電素子で構成される電池システムすべてに適用可能である。これらの電池システムを使用でき、電流の入出力パターンがほぼ決まっている、路線走行するシステムにおける移動体である鉄道車両,地上給電設備,電力貯蔵システムなどの大規模電池システムの安定維持について有効である。電池を制御するシステム及び方法において電池の劣化度を精度良く求めることを実現して、電池制御システムの製造,販売,メインテナンスに寄与し、電池システムの信頼性を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0082】
10 データ記録部
20,211,212 蓄電手段
30,31,32 電圧計測手段
40 電流検出手段
50 状態検知手段
60 充放電手段
70 制御指令発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電手段の充放電を制御する充放電手段と接続された充放電可能な蓄電手段の劣化を推定する蓄電手段劣化推定方法において、
前記蓄電手段の電圧を計測し、
計測された電圧計測値を記録し、
所定期間に記録された電圧計測値の最大値及び最小値から電圧変動幅を算出し、
算出された前記電圧変動幅を基準電圧変動幅と比較することにより蓄電手段の劣化状態を推定することを特徴とする蓄電手段劣化推定方法。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電手段劣化推定方法において、
前記蓄電手段の電圧を計測する際に、前記蓄電手段を流れる電流と、前記蓄電手段の動作時温度と、環境温度の少なくともいずれかを計測し、
前記電圧計測値を、前記電流計測値及び前記動作時温度計測値及び環境温度計測値の少なくともいずれかと関連付けて記録し、
所定範囲を逸脱していない前記計測値と関連付けて記憶されている前記電圧計測値の最大値及び最小値から電圧変動幅を算出し、前記基準電圧変動幅と比較することにより蓄電手段の劣化状態を推定することを特徴とする蓄電手段劣化推定方法。
【請求項3】
請求項1記載の蓄電手段劣化推定方法において、
前記蓄電手段の温度を検出し、
電圧計測値を温度検出値と関連付けて記憶し、
所定の温度範囲の温度検出値と関連付けられた電圧計測値の最大値及び最小値から電圧変動幅を算出することを特徴とする蓄電手段劣化推定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の蓄電手段劣化推定方法において、
前記基準電圧変動幅は、前記蓄電手段の初期状態における電圧計測値の最大値及び最小値から算出される電圧変動幅であることを特徴とする蓄電手段劣化推定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の蓄電手段劣化推定方法において、
前記電圧計測値の最大値が最大許容電圧以上であり、前記電圧計測値の最小値が最小許容電圧値よりも大きい場合に、次回の走行開始時の前記蓄電手段の電圧を下げることを特徴とする蓄電手段劣化推定方法。
【請求項6】
請求項5記載の蓄電手段劣化推定方法において、
所定回数以上の演算により前記電圧変動幅が前記基準電圧変動幅以上となった場合に、前記蓄電手段の許容電流値を減少させることを特徴とする蓄電手段劣化推定方法。
【請求項7】
充放電可能な蓄電手段と、当該蓄電手段の充放電を制御する充放電手段と、備えた電源装置において、
前記蓄電手段の電圧値を計測する電圧計測手段と、
前記電圧計測値を記録する記録手段と、
所定期間に前記記録手段に記録された電圧計測値の最大値と最小値により電圧変動幅を算出し、算出された電圧変動幅を基準電圧変動幅と比較することにより前記蓄電手段の劣化状態を判定する劣化判定手段と、を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項7記載の電源装置において、
前記蓄電手段を流れる電流を計測する電流計測手段と、
前記蓄電手段の動作時温度を計測する温度計測手段と、
環境温度を計測する環境温度計測手段と、の少なくともいずれかの計測手段を有し、
前記計測手段の計測値は、前記電圧計測手段で計測された電圧計測値と関連付けて前記記録手段に記録され、
前記劣化判定手段は、所定の温度範囲を逸脱していない前記計測手段の計測値と関連付けて記録された前記電圧計測値の最大値および最小値から電圧変動幅を算出することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の電源装置において、
劣化判定の条件を指定可能な条件指定手段を備え、
前記劣化判定手段は、前記条件指定手段で入力された条件に一致する電圧計測値を前記記録手段から抽出し、当該電圧計測値を用いて電圧変動幅を算出して前記蓄電手段の劣化状態を判定することを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項9記載の電源装置において、
前記条件指定手段で入力された条件に基づいて判定された劣化状態を抵抗上昇率または容量維持率で表示する表示装置を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項11】
請求項7または請求項8記載の電源装置において、
前記劣化判定手段で判定された劣化状態が所定劣化度を超えた場合に、警告表示を行う表示装置を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項12】
請求項11記載の電源装置において、
前記表示装置は、劣化状態を抵抗上昇率または容量維持率で表示することを特徴とする電源装置。
【請求項13】
充放電可能な蓄電手段と、当該蓄電手段から電力の供給を受けるインバータ装置と、該インバータ装置により駆動される電動機と、備えた鉄道車両において、
前記蓄電手段の電圧値を計測する電圧計測手段と、
前記電圧計測値を記録する記録手段と、
所定期間に前記記録手段に記録された電圧計測値の最大値と最小値により電圧変動幅を算出し、算出された電圧変動幅を基準電圧変動幅と比較することにより前記蓄電手段の劣化状態を判定する劣化判定手段と、
判定された劣化状態の情報を用いて前記インバータ装置を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項14】
請求項13記載の鉄道車両において、
前記蓄電手段の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記記録手段は、温度検出値を前記電圧計測値と関連付けて記録し、
前記劣化判定手段は、所定の温度範囲の前記温度検出値と関連付けて記録された電圧計測値であって、所定期間に前記記録手段に記録された電圧計測値の最大値と最小値により電圧変動幅を算出することを特徴とする鉄道車両。
【請求項15】
請求項13記載の鉄道車両において、
前記蓄電手段を流れる電流を計測する電流計測手段と、
前記蓄電手段の動作時温度を計測する温度計測手段と、
環境温度を計測する環境温度計測手段と、
前記電圧計測値に加えて、路線情報,電流計測値,蓄電手段温度計測値,環境温度計測値を記録する前記記録手段と、を備え、
前記劣化判定手段は、路線,電流値,蓄電手段温度,環境温度の指定された範囲内で、前記記録手段から電圧計測値を抽出し、当該電圧計測値の最大値と最小値により電圧変動幅を算出し、算出された電圧変動幅と基準電圧変動幅とに比率を劣化指標とし、
前記電圧計測値の最大値が予め定められた最大許容電圧値に達し、かつ前記電圧変動幅が予め定められた最大許容電圧値に複数回達した場合に、予め定められた許容電流値を減少させることを特徴する鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−13472(P2012−13472A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148467(P2010−148467)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】