説明

薄膜ガスセンサおよび薄膜ガスセンサの製造方法

【課題】ダイヤフラム部に生じる歪(熱による歪・割れによって生じた歪)を検出し、故障を自己診断するようにして、検出特性の変化により発生する事故の未然防止に寄与する薄膜ガスセンサを提供する。更にこのような薄膜ガスセンサを製造する薄膜ガスセンサの製造方法も併せて提供する。
【解決手段】ダイヤフラム部の上に歪感知層81を4個配置し、さらにホイートストンブリッジ回路を形成する。これにより、ピエゾ抵抗素子として機能する歪感知層81によりダイヤフラム部の歪を抵抗値の変化として検出することが可能になる。また、歪感知層81はガス感知層53と同じ材料とし、歪感知層81とガス感知層53とを同時に形成するため工数低減が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池駆動を念頭においた低消費電力型の薄膜ガスセンサ、および、この薄膜ガスセンサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にガスセンサは、ガス漏れ警報器等の用途に用いられ、ある特定ガス、例えば、CO,CH,C,CHOH等の還元性ガスに選択的に感応するデバイスであり、その性格上、高感度、高選択性、高応答性、高信頼性、低消費電力が必要不可欠である。
ところで、家庭用として普及しているガス漏れ警報器には、都市ガス用やプロパンガス用の可燃性ガスの検知を目的としたもの、燃焼機器の不完全燃焼ガスの検知を目的としたもの、または、これら両方の機能を併せ持ったもの等があるが、何れもコストや設置性の問題から普及率はそれほど高くない。
このため、ガス漏れ警報器の普及率を向上させる観点から、設置性の改善、具体的には、ガス漏れ警報器を電池駆動としてコードレス化することが望まれている。
【0003】
電池駆動を実現するためには低消費電力化が最も重要であるが、接触燃焼式や半導体式のガスセンサでCH、Cを検知する場合は、400℃〜500℃の高温に加熱して検知する必要がある。このため、ガス感知膜としてSnO等の粉体を焼結する従来の方法では、スクリーン印刷等の方法を用いても厚みを薄くするには限界があり、電池駆動に用いるには熱容量が大き過ぎるという問題があった。そこで、微細加工プロセスを用いてダイヤフラム構造等により超低熱容量構造とした薄膜ガスセンサの実現が待たれている。
【0004】
このような薄膜ガスセンサの従来技術としては、例えば、特許文献1(特開2008−46007号公報)に記載されたダイヤフラム構造の薄膜ガスセンサがある。
ここで、図3は、例えば特許文献1の図1に記載された薄膜ガスセンサとほぼ同様の、一般的なダイヤフラム構造の薄膜ガスセンサのB−B線断面図であり、図4は同じく薄膜ガスセンサの平面図である。
【0005】
薄膜ガスセンサ100は、図3のB−B線断面図で示すように、Si基板1の上側に、熱酸化SiO層21、CVD−Si層22、CVD−SiO層23によってダイヤフラム構造の熱絶縁支持層2が形成されている。また、ヒータ層3は、Pt−Wにより形成されており、熱絶縁支持層2の上側に設けられる。熱絶縁支持層2およびヒータ層3は、スパッタSiO層からなる電気絶縁層4により覆われる。Ptによる一対の感知電極層52の下側には、下地酸化膜である電気絶縁層4に対する中間層として、Taによる接合層51も形成されている。一対の感知電極層52にはSnOからなるガス感知層53が渡される。電気絶縁層4の一部、一対の感知電極層52およびガス感知層53はガス選択燃焼層54により覆われている。
【0006】
また、薄膜ガスセンサ100は、図4の平面図で示すように、ガス検出信号出力部6が形成されている。ガス検出用導電層61を通じてガス感知層53からの検出信号を伝え、ガス検出用端子部62に接続される導線(図示せず)を介して、ガス感知層53における検出信号を図示しない信号処理部へ出力する。また、薄膜ガスセンサ100は、ヒータ駆動信号入力部7も設けられており、図示しないヒータ駆動部からの駆動信号が導線を通じてヒータ駆動用端子部72から入力され、ヒータ駆動用導電層71を通じてヒータ駆動信号がヒータ層3に入力されてヒータ駆動を行う。そして、ヒータ層3により上記した温度まで加熱された状態でガス感知層53がガスに接触し、変化する電気抵抗値を検出信号として出力することでセンサとして機能する。前述した特許文献1の薄膜ガスセンサでも同様な原理によりセンシングを行う。従来技術はこのようなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−46007号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ダイヤフラム構造で低熱容量構造とした薄膜ガスセンサは、薄い膜状に形成されたダイヤフラム部の中心から半径方向外側へ向かって伝熱していくが、途中でダイヤフラム部に損傷(割れ・欠けなど)があると、機械的な歪みから均等に熱が伝わらず温度ムラが生じてセンサ特性が変化してしまうという問題があった。しかしながら、従来技術ではこのようなダイヤフラム部の損傷を検出する点については考慮されていなかった。この点は特許文献1の薄膜ガスセンサでも同様であった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされものであり、その目的は、ダイヤフラム部に生じる歪(熱による歪・割れによって生じた歪)を検出し、故障を自己診断するようにして、検出特性の変化により発生する事故の未然防止に寄与する薄膜ガスセンサを提供することにある。
更に本発明は、このような薄膜ガスセンサを製造する薄膜ガスセンサの製造方法も併せて提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、
貫通孔を有するSi基板と、
前記貫通孔の開口部に張られるダイヤフラム様の熱絶縁支持層と、
前記熱絶縁支持層上に設けられるヒータ層と、
前記熱絶縁支持層および前記ヒータ層を覆うように設けられる電気絶縁層と、
前記電気絶縁層上に設けられる一対の感知電極層と、前記電気絶縁層および前記一対の感知電極層の上に設けられ、吸着したガスによりその電気抵抗値が変化するガス感知層と、前記電気絶縁層の一部とともに前記一対の感知電極層および前記ガス感知層を覆うガス選択燃焼層と、を有するガス検出部と、
前記電気絶縁層の上に設けられて歪みによりその電気抵抗値が変化する歪感知層と、前記電気絶縁層の一部とともに前記歪感知層を覆うように設けられる保護層と、を有する歪検出部と、
前記歪感知層に電気的に接続される歪検出用導電層と、
を備えることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
ここに前記ヒータ層は、前記熱絶縁支持層上に直接設けられるか、または、接合層を介して設けられる。また、前記一対の感知電極層および前記歪検出用導電層は、前記電気絶縁層上に直接設けられるか、または、接合層を介して設けられる。
【0011】
また、請求項2に記載した発明は、
請求項1に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記歪検出部は、前記貫通孔の開口部を覆うダイヤフラム部の上側に位置することを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0012】
また、請求項3に記載した発明は、
請求項1または請求項2に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
n個の前記歪検出部が同一円上において360°/n毎に等角配置されることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0013】
また、請求項4に記載した発明は、
請求項3に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
4個の前記歪検出部が同一円上に90°毎に等角配置され、かつホイートストンブリッジ回路が形成されるように前記歪検出用導電層が接続されることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0014】
また、請求項5に記載した発明は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記ガス感知層および前記歪感知層は、SnOにより形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0015】
また、請求項6に記載した発明は、
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記電気絶縁層および前記保護層は、SiOにより形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0016】
また、請求項7に記載した発明は、
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記一対の感知電極層および前記歪検出用導電層は、Pd(パラジウム)、Pt(白金)またはPdとPtとを含む合金により形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0017】
また、請求項8に記載した発明は、
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記ガス選択燃焼層は、Pd(パラジウム)、Pt(白金)またはPdとPtとを含む合金を触媒として担持したAl焼結材による層であることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0018】
また、請求項9に記載した発明は、
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記歪感知層は、前記ガス感知層と同時形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0019】
また、請求項10に記載した発明は、
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記歪検出用導電層は、前記一対の感知電極層と同時形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサである。
【0020】
また、請求項11に記載した発明は、
シリコンウェハ上に熱絶縁支持層、ヒータ層、および、電気絶縁層が順次形成される工程と、
前記電気絶縁層上に一対の感知電極層と歪検出用導電層とが同時に形成される工程と、
前記一対の感知電極層を跨いでガス感知層が、および、前記歪検出用導電層に接するように歪感知層が、それぞれ同時に形成される工程と、
前記歪感知層を覆うように保護層が形成される工程と、
前記ガス感知層の表面を覆うようにガス選択燃焼層が形成される工程と、
を有することを特徴とする薄膜ガスセンサの製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ダイヤフラム部に生じる歪(熱による歪・割れによって生じた歪)を検出し、故障を自己診断するようにして、検出特性の変化により発生する事故の未然防止に寄与する薄膜ガスセンサを提供することができる。
更に本発明によれば、このような薄膜ガスセンサを製造する薄膜ガスセンサの製造方法も併せて提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を示す薄膜ガスセンサのA−A線断面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す薄膜ガスセンサの平面図である。
【図3】従来技術の薄膜ガスセンサのB−B線断面図である。
【図4】従来技術の薄膜ガスセンサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図に沿って本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本形態の薄膜ガスセンサのA−A線断面図、図2は本形態の薄膜ガスセンサの平面図である。この図1,図2を参照しながら、本形態の構成を製造方法と共に説明する。ここに本形態の薄膜ガスセンサ10は、先に図3,図4を用いて説明した薄膜ガスセンサ100と比較すると、特に歪検出部8,歪検出信号出力部9が追加されている点が相違する。本形態の説明では、従来技術の図3と同一の構成要素には同一の番号を付すが、各部については改めて詳細に説明する。
【0024】
この本形態の薄膜ガスセンサ10は、図1,図2に示すように、シリコン基板(以下Si基板)1、熱絶縁支持層2、ヒータ層3、電気絶縁層4、ガス検出部5、ガス検出信号出力部6、ヒータ駆動信号入力部7、歪検出部8、歪検出信号出力部9を備える。熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層21、CVD―Si層22、CVD―SiO層23の三層構造となっている。ガス検出部5は、詳しくは、接合層51、感知電極層52、ガス感知層53、ガス選択燃焼層54を備える。このガス感知層53はアンチモン(Sb)をドープした二酸化スズ層(以下、SnO層)であり、ガス選択燃焼層54は、詳しくはパラジウム(Pd)、白金(Pt)、または、パラジウム(Pd)と白金(Pt)とを含む合金の何れか触媒として担持した触媒担持多孔質アルミナ(触媒担持Al焼結材)である。
【0025】
そして、ヒータ層3は、ヒータ駆動信号入力部7を介して、図示しない信号処理・駆動部に電気的に接続されている。また、ガス検出部5(詳しくは一対の感知電極層52を介してガス感知層53)は、ガス検出信号出力部6を介して、図示しない信号処理・駆動部に電気的に接続されている。
【0026】
続いて各部構成について説明する。
Si基板1はシリコン(Si)により形成され、貫通孔を有するように形成される。
熱絶縁支持層2はこの貫通孔の開口部に張られてダイヤフラム様に形成されており、Si基板1の上側に設けられる。以下、貫通孔の上側で不支持状態で張り渡されている薄い熱絶縁支持層2および電気絶縁層4による薄膜部は、ダイヤフラム部であるとして説明する。
【0027】
この熱絶縁支持層2は、詳しくは、熱酸化SiO層21、CVD―Si層22、CVD―SiO層23の三層構造となっている。
熱酸化SiO層21は、熱絶縁層として形成され、ヒータ層3で発生する熱をSi基板1側へ熱伝導しないようにして熱容量を小さくする機能を有する。また、この熱酸化SiO層21はプラズマエッチングに対して高い抵抗力を示し、後述するプラズマエッチングによるSi基板1への貫通孔の形成を容易にする。
CVD―Si層22は、熱酸化SiO層21の上側に形成される。
CVD―SiO層23は、CVD―Si層22の上側に形成される。CVD―SiO層23は、ヒータ層3との密着性を向上させるとともに電気的絶縁を確保する。CVD(化学気相成長法)によるSiO層は内部応力が小さい。
【0028】
ヒータ層3は、薄膜状のPt−W(白金−タングステン)ヒータであって、熱絶縁支持層2のほぼ中央の上面に設けられる。ヒータ層3には、図2で示すように、ヒータ駆動信号入力部7が接続される。詳しくは、ヒータ駆動信号入力部7の二個のヒータ駆動用導電層71がヒータ層3に電気的に接続されている。ヒータ駆動用導電層71は電源供給ラインとなる。ヒータ駆動用導電層71の一端は電気絶縁層4内に埋設して二方向からヒータ層3に接続されるように設けられる。この二個のヒータ駆動用導電層71の他端はそれぞれヒータ駆動用端子部72に接続される。ヒータ駆動用端子部72は外界に露出する電極パッドとなる。このヒータ駆動用端子部72からワイヤ等で配線されて信号処理・駆動部(図示せず)に電気的に接続される。なお、ヒータ層3およびヒータ駆動信号入力部7と、熱絶縁支持層2と、の間にTa膜(タンタル膜)による接合層を介在させ、接合強度を高めている。
【0029】
電気絶縁層4は、電気的に絶縁を確保するスパッタSiO層からなり、熱絶縁支持層2、ヒータ層3およびヒータ駆動信号入力部7のヒータ駆動用導電層71を覆うように設けられる。また、電気絶縁層4は、ヒータ層3と一対の感知電極層52との間に電気的な絶縁を確保しつつガス感知層53との密着性を向上させる。
【0030】
接合層51は、電気絶縁層4の上に設けられたTa膜(タンタル膜)である。このTa膜による接合層51は、感知電極層52と電気絶縁層4との間に介在して接合強度を高める機能を有している。この接合層51は左右一対となるように二箇所に設けられる。
【0031】
感知電極層52は、接合層51の上面に、Pd(パラジウム)、Pt(白金)またはPdとPtとを含む合金により形成される層を設けたものである。以下、本形態では例示的にPtであるものとして説明する。このような感知電極層52も、ガス感知層53の感知電極となるように左右一対に二箇所に設けられる。一対の感知電極層52には、図2で示すように、ガス検出信号出力部6が接続される。詳しくは、ガス検出信号出力部6の二個のガス検出用導電層61が一対の感知電極層52にそれぞれ電気的に接続されている。ガス検出用導電層61は信号ラインとなる。ガス検出用導電層61は電気絶縁層4の上面で二方向へ設けられる。この二個のガス検出用導電層61はそれぞれガス検出用端子部62に接続される。ガス検出用端子部62は外界に露出する電極パッドとなる。このガス検出用端子部62からワイヤ等で配線されて信号処理・駆動部(図示せず)に電気的に接続される。ここで、ガス検出用導電層61は電気絶縁層4の表面にあるため、埋設されるヒータ駆動用導電層71とは間違えにくいという利点もある。
【0032】
ガス感知層53は、SbをドープしたSnO層からなり、図1,図2に示すように、一対の感知電極層52を渡されるように電気絶縁層4の上に形成される。
【0033】
ガス選択燃焼層54は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、または、白金(Pt)とパラジウム(Pd)とを含む合金である触媒を担持した焼結体であり、先に説明したように触媒担持多孔質アルミナである。本形態では例示的にPdを担持するPd担持Al焼結材であるとして説明する。多孔質体であるガス選択燃焼層54では、孔を通過する検出対象ガスが触媒に接触する機会を増加させており、燃焼反応を促進させる。ガス選択燃焼層54は、電気絶縁層4の一部、一対の感知電極層52およびガス感知層53の表面を覆うように設けられる。
このような薄膜ガスセンサ100はダイヤフラム構造により高断熱,低熱容量の構造としている。
【0034】
つづいて、本発明の特徴をなす部分であり、歪みを検出する構成について説明する。
歪検出部8は、歪感知層81と、保護層82と、を有する。
歪検出信号出力部9は、8箇所の歪検出用導電層91、4個の歪検出用端子部92を備える。
【0035】
歪検出部8の歪感知層81は、SbをドープしたSnO層からなり、図1に示されるように、電気絶縁層4の上に形成される。歪感知層81は、電気絶縁層4から受ける歪みによりその電気抵抗値が変化する。これは物体に応力を加えたときに電気抵抗が変化するピエゾ抵抗効果を利用するものであり、歪感知層81はピエゾ抵抗素子となる。
歪検出部8の保護層82は、電気的に絶縁を確保するスパッタSiO層からなる。保護層82は、歪感知層81を覆うように電気絶縁層4の一部および歪感知層81上に設けられる。
【0036】
そしてこのような歪検出部8は、図2でも明らかなように、4個設けられており、4個の歪検出部8が矢印Cで示される同一円の上にて90°毎に等角配置される。歪検出部8の配置であるが、図2で示すように、歪検出部8の長手方向が同一円の接線方向と同じ方向になるようにする。または、図示はしないが、歪検出部8の長手方向が同一円の半径方向と同じ方向になるようにしても良い。何れの場合であっても、長手方向を統一して配置する。なお、この円の中心にはガス感知層53・ヒータ層3が位置している。
【0037】
4個の歪検出部8には、図2で示すように、歪検出信号出力部9が接続される。詳しくは、歪検出信号出力部9の二個の歪検出用導電層91が歪感知層81にそれぞれ電気的に接続されている。この歪検出用導電層91は電気絶縁層4上であって外側付近に設けられる。歪検出用導電層91はいずれも略L字状に形成される信号ラインとなる。殆どの歪検出用導電層91が外側付近に位置し、歪感知層81との接続箇所のみ半径方向に伸びる歪検出用導電層91が接続されることとなる。これにより、歪検出用導電層91はダイヤフラム部の外側の厚みが大きい箇所に位置するため、歪検出用導電層91への歪みの影響を受けにくくしている。
【0038】
この二個の歪検出用導電層91はそれぞれ歪検出用端子部92に接続される。歪検出用端子部92は外界に露出する電極パッドとなる。この歪検出用端子部92から図示しないワイヤ等で配線されて信号処理・駆動部(図示せず)に電気的に接続される。
歪感知層81にダイヤフラム部を通じて応力が加わったときに歪感知層81は電気抵抗が変化するピエゾ抵抗素子として機能する。このため、4個の歪検出部8および歪検出信号出力部9は、歪検出を行う歪みセンサとして機能する。
【0039】
そして、ダイヤフラム上に配置された4個の歪感知層81に対し8個の歪検出用導電層91を接続したときは、図2からも明らかなように、ホイートストンブリッジ回路を形成している。このホイートストンブリッジ回路では例えば、180°対向する位置にある2個の歪検出用端子部92に電圧を印加し、180°対向する位置にある残る2個の歪検出用端子部92を流れる電流を検知すれば歪みの発生を検出できるようになる。
【0040】
ホイートストンブリッジ回路の性質上高感度(僅かな歪み)の検出が可能となる。初期状態では対向位置にある2個の歪検出用端子部92を流れる電流を0となるようにするか、または、初期状態でも流れる電流値を予め測定の上で登録しておけば、電流値の変化の有無から通常状態が異常状態かを検出できる。
【0041】
このように構成される歪検出部8では、特に貫通孔により機械的不支持となっているダイヤフラム部の上にのみ4個の歪感知層81が配置されるようにして、ダイヤフラム部の歪みを検出し易いように配慮している。また、矢印Cで示される同一円の上に配置しているが、これは半径位置により歪みが変化する傾向(一般にダイヤフラム部の中央の歪みが最も大きく、また、貫通孔の内壁近傍の歪みが小さい)に影響されないようにするためである。これにより検出精度を向上させている。
【0042】
また、前述のような歪感知層81の向きを統一したため、歪感知層81の電気抵抗値の増減は全て同じになる。したがって、ダイヤフラム部に歪が発生して歪感知層81の電気抵抗値が変化してもダイヤフラム部に異常がなければ直ちにブリッジ出力に大幅な変化は生じない。しかしダイヤフラム部に故障が存在して抵抗値の変化に大幅な違いが出てくると、ブリッジ出力も大幅に変化して直ちに故障を検知できるようになる。
また、図2からも明らかなように、4個の歪感知層81と、2個のガス検出用導電層61や2個のヒータ駆動用導電層71と、はそれぞれ交互に配置されるため機械的に無駄のない配置を実現している。
【0043】
ここに、ガス感知層53および歪感知層81は、ともにSnOにより形成される層とした。これにより、製造時にガス感知層53および歪感知層81を一括して形成できるため、製造工程の削減によりコストの大幅な削減に寄与する。
【0044】
また、電気絶縁層4および保護層82は、ともにSiOにより形成される層とした。これにより、電気絶縁層4と保護層82とは、密着性を向上させて、歪みからの影響を受けにくくしている。
【0045】
また、一対の感知電極層52および歪検出信号出力部9は、Pt(白金)により形成される層とした。これにより、製造時に一対の感知電極層52および歪検出信号出力部9を一括して形成できるため、やはり製造工程の削減によりコストの大幅な削減に寄与する。なお、Ptに代えてPd(パラジウム)またはPdとPtとを含む合金としても良いが、一対の感知電極層52および歪検出信号出力部9を共通の材料にて形成すれば良い。
【0046】
また、ヒータ層3およびヒータ駆動信号入力部7は、同じPt−W(白金−タングステン)により形成される層とした。これにより、製造時にヒータ層3およびヒータ駆動信号入力部7を一括して形成できるため、やはり製造工程の削減によりコストの大幅な削減に寄与する。
【0047】
続いて薄膜ガスセンサ10の使用について説明する。本形態のヒータ層3やガス感知層53は1μm以下の薄膜で形成し、かつダイヤフラム構造などを採用したため、低熱容量構造を実現しているが、電池駆動を実現するためには更なる低消費電力化が必要である。そこで、薄膜ガスセンサのパルス駆動が必須となる。通常、ガス漏れ警報器は30〜150秒の一定周期に一回の検知が必要であり、この周期に合わせて薄膜ガスセンサ10のガス感知層53を室温から400℃〜500℃の高温に加熱する。上述したように電池駆動実現のため、この加熱時間は数100ms以下が目標となる。
【0048】
パルス駆動の薄膜ガスセンサ10においても、低消費電力化のためには、検出温度の低温化、検出時間の短縮、検出サイクルの長期化(通電をoffする時間を長くする)が重要である。薄膜ガスセンサ10における検出温度は、検出対象のガス種に対する検出感度等から、例えばCHセンサでは400℃〜500℃程度(例えば450℃)とされ、検出時間はセンサの応答性から500ms以下、検出サイクルは、例えばCHセンサでは30秒とされている。このように昇温と降温とを繰り返すため、ダイヤフラム部にはストレスが加わることになる。
【0049】
また、このような薄膜ガスセンサ10の使用時において、ホイートストンブリッジ回路として形成される歪検出部8と歪検出信号出力部9により入力側の二個の歪検出用端子部92に電圧を印加し、また、残る出力側の二個の歪検出用端子部92から検出信号を取得した状態とし、図示しない駆動・信号処理部が電流値の変化を抵抗値の変化として検出し、割れなどのダイヤフラム部の異常として検出する。薄膜ガスセンサ10の使用はこのようなものである。
【0050】
続いて薄膜ガスセンサ10の製造について説明する。
最初は、シリコンウェハ上に熱絶縁支持層、ヒータ層、および、電気絶縁層が形成される工程が行われる。
まず、シリコンウェハ(図示せず)の表裏両面に熱酸化法により熱酸化が施されて例えば膜圧0.3μmの熱酸化SiO膜が形成される。熱酸化SiO層21は一方の面に形成された熱酸化SiO膜が該当する。
【0051】
このシリコンウェハの一方の面の熱酸化SiO層21に、プラズマCVD法を用いて、CVD−Si層22を形成する。このCVD―Si層22は、例えば平行平板型プラズマCVD装置で約300℃の温度でSiH+NH+Nガスの雰囲気下で堆積して形成した膜圧0.10μmのCVD―Si膜である。
【0052】
CVD―SiO層23は、CVD―Si層22の上面に設けられる。このCVD―SiO層23は、プラズマCVD法を用いるものであり、詳しくは平行平板型プラズマCVD装置において約300℃の温度でSiH+NO+Nガスの雰囲気下で堆積して形成した膜圧1μmのCVD―SiO膜である。
【0053】
ここまで製造したシリコンウェハは、管状炉で550℃×1時間(20%O/N)でアニールされる。このアニールによりシリコンウェハは、脱ガスされる。
これら熱酸化SiO層21、CVD−Si層22、CVD−SiO層23により熱絶縁支持層2が形成される。
【0054】
そして、CVD−SiO層23の表面に、Pt−Wからなるヒータ駆動信号入力部7およびPt−Wからなるヒータ層3が形成される。まず熱絶縁支持層2の上面に接合層として機能するTaを10nmの膜厚に形成する。次いでこの接合層の上面にヒータ駆動信号入力部およびヒータ層として機能するPt−W(Pt+4wt%W)膜を400nmの膜厚に形成する。これらTa,Pt−Wの成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング方法によって行う。Arガス圧力は1.0Pa、成膜温度は300℃、RFパワーは2W/cmである。
【0055】
このようにして形成したTa/Pt−W層に対し、さらに微細加工によりヒータパターンとなるヒータ層3およびヒータ駆動信号入力部7を形成する。ヒータパターンとして、中央のヒータ層3、電源供給ラインとしてのヒータ駆動信号入力部7のヒータ駆動用導電層71、電極パッドとしてのヒータ駆動信号入力部7のヒータ駆動用端子部72を含む。ウェットエッチングのエッチャントとして、Taには水酸化ナトリウムと過酸化水素混合液、Pt−Wには王水をそれぞれ90℃に加熱して用いた。
【0056】
続いて電気絶縁層4を形成する。ヒータパターンとなるヒータ層3およびヒータ駆動信号入力部7が形成されたTa/Pt−W層の上面に、スパッタ法によりSiO絶縁膜を1000nmの膜厚に形成してスパッタSiO層を設ける。これらの成膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行う。そして、このスパッタSiO層にHFにてエッチングによる微細加工によってヒータの電極パッドとなるヒータ駆動用端子部72部分を窓開けする。次いで窓内には、導通の確保とワイヤボンディング性を向上するため、水酸化ナトリウムと過酸化水素混合液で除去して電極パッドとなるヒータ駆動用端子部72を完成させる。
【0057】
次に、電気絶縁層4上に一対の感知電極層52と歪検出信号出力部9とが同時に形成される工程が行われる。
まず、下地の電気絶縁層4との密着性を向上させるため、電気絶縁層4の上に接合層となるTa層を形成する。この成膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行う。これらスパッタリング法によるTaの成膜条件は、Arガス圧力1.0Pa、基板温度300℃、RFパワー2W/cmとした。Taの膜圧は10nmとした。
【0058】
続いてTa層の上にPt層を形成する。この成膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行う。これらスパッタリング法によるPtの成膜条件は、Arガス圧力1.0Pa、基板温度300℃、RFパワー2W/cmとした。Ptの膜圧は200nmとした。
【0059】
そして、このようにして形成したTa/Pt層に対し、さらに微細加工により感知電極パターンを形成することで一対の接合層51、一対の感知電極層52、および、歪検出信号出力部9(歪検出用導電層91・歪検出用端子部92)を一括して形成する。このように感知電極パターンに歪検出信号出力部パターンを追加して、同時に形成する。
【0060】
ウェットエッチングのエッチャントとして、Taには水酸化ナトリウムと過酸化水素混合液、Ptには王水をそれぞれ90℃に加熱して用いた。最終的に、膜厚が10nmの接合層51、および、この接合層51の上に膜圧が200nmの感知電極層52が形成されるとともに、膜厚が10nmの接合層、およびこの接合層の上に膜圧が200nmの歪検出信号出力部9が形成される。すなわち、一対の接合層51、一対の感知電極層52、および、歪検出信号出力部9(歪検出用導電層91・ガス検出用端子部92)が一括形成される。
【0061】
そして、一対の感知電極層52を跨いでガス感知層53が、および、歪検出用導電層91に接するように歪感知層81が、それぞれ同時に形成される工程が行われる。
一対の感知電極層52を跨ぎつつその間の電気絶縁層4の表面を覆うようにガス感知層53を成膜し、また、同時に二本の歪検出用導電層91の両方の端部を跨ぐように歪感知層81が形成される。ガス感知層53および歪感知層81は、Sb―doped SnO膜である。これらはガス検知膜成膜時に歪感知膜用のパターンを追加して、同時に形成する。
【0062】
このガス感知層53の形成方法は、まず、レジストで全面を覆った後に、微細加工でガス感知層53を成膜する部分(一対の感知電極層52の上面、および、一対の感知電極層52の間の部分)と歪感知層81を成膜する部分(二本の歪検出用導電層91の端部の上側部分)のレジストを除去する。これにより、開口部以外をレジストで被覆したパターンを形成する。この開口部のサイズは、例えば、ガス感知層53で100μm□、また、歪感知層81で50μm□となる。なお、数値は一例である。
【0063】
次に、上記のパターニングが施されたウェハをスパッタチャンバにセットし、ガス感知層53および歪感知層81となるSnO薄膜をスパッタ成膜する。成膜条件はAr+Oガス圧力が2Pa、基板温度が150℃〜300℃、RFパワー2W/cmである。CHセンサ用のガス感知層53を含むSnO膜全体としては、Sbを0.5wt%含有する400nm厚のSnO膜(Sb−SnO膜)を成膜する。
【0064】
所定厚みとなるようにSnO薄膜をスパッタで成膜した後、レジストリフトオフ法でレジストの除去と同時に不要部分(レジスト上)に付着したSnO薄膜を除去する。そして400nm厚みのSnO薄膜が成膜される。このようにして形成されたガス感知層53の大きさは100μm□程度、歪感知層81の大きさは50μm□となる。
【0065】
次にダイヤフラム加工を行う前に、歪感知層81を覆うように保護層82が形成される工程が行われる。歪感知層81のみ露出するようなパターンを有するメタルマスクを使用してSnO薄膜がスパッタリングにより成膜される。この成膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリング法によって行う。これらスパッタリング法による成膜条件は、Arガス圧力1.0Pa、基板温度300℃、RFパワー2W/cmとした。また、保護層であるSiOの膜厚は1000nmである。
【0066】
次いで、シリコンウェハー(図示せず)の裏面よりその裏面から微細加工プロセスとしてドライエッチングにより円柱状のSiを除去し、ダイヤフラム構造を形成する。例えば、400μm径の貫通孔が形成される。
【0067】
その後、Pdによる触媒を担持したアルミナ粉末、バインダおよび有機溶剤を混合調製した印刷ペーストをスクリーン印刷でガス感知層53の表面を覆うように塗布印刷し、室温で乾燥後、空気中において550℃で1時間焼き付け、焼成(厚み20〜30μm)してガス選択燃焼層54を形成する。ガス選択燃焼層54は、電気絶縁層4の一部、一対の感知電極層52、ガス感知層53を覆うように形成される。なお、触媒としてPdに代えてPt、または、PdとPtとを含む合金としてもよい。
【0068】
ここで先に説明したように下地となる熱絶縁支持層2はアニールにより550℃まで脱ガスが施されており、このガス選択燃焼層54の焼成時に膨れ・剥離の発生は起こらない。このようにして形成したガス選択燃焼層54の大きさは、約30μm厚であり、ガス感知層53を十分に覆うような大きさとする。このガス選択燃焼層54により感度、ガス種選択性、信頼性が向上する。
【0069】
その後にシリコンウェハ(図示せず)からチップを切り出してシリコンウェハ(図示せず)はSi基板1となり、ダイヤフラム(DP)構造の薄膜ガスセンサ10となる。例えばCHセンサチップとしてパッケージに組み込むことによりCHセンサとなる。薄膜ガスセンサ10の製造方法はこのようなものである。
【0070】
この薄膜ガスセンサ10の製造方法において、歪感知層81は、ガス感知層53と同時形成される層としており、工程の簡略化に寄与する。
また、歪検出用導電層91は、一対の感知電極層52と同時形成される層であり、やはり工程の簡略化に寄与する。このように従来技術の薄膜ガスセンサの製造コストと比較してもコスト増大を抑止した薄膜ガスセンサとしている。
【0071】
このような薄膜ガスセンサでは以下のような改良形態が可能である。
先に説明した歪検出部8は、図2でも明らかなように、4個設けられており、4個の歪検出部8が矢印Cで示される同一円の上にて90°毎に等角配置されるものとして説明した。しかしながら、この歪検出部8は4個に限定する趣旨ではなく、例えば、n個の歪検出部8が同一円上において360°/n毎に等角配置されるようにしても良い。n個とは例えば2個、3個、6個などである。この場合、例えば、ホイートストンブリッジ回路を形成しなくても、n個の歪検出部8の歪感知層81を電気的に直列接続するような形式でも抵抗の変化の検出自体は可能である。このような薄膜ガスセンサとしても良い。
【0072】
また、ヒータ層3およびヒータ駆動信号入力部7の下側には密着性を向上させるため接合層(Ta層)を併せて形成する構成とした。しかしながら、この接合層(Ta層)を省略してもある程度の密着性を確保できるため、下地となるCVD―SiO層23に直接ヒータ層3およびヒータ駆動信号入力部7を形成した構成としても良い。
【0073】
また、感知電極層52および歪検出信号出力部9の下側にも密着性を向上させるため接合層(Ta層)を併せて形成する構成とした。しかしながら、この接合層(Ta層)を省略してもある程度の密着性を確保できるため、下地となる電気絶縁層4に直接感知電極層52および歪検出信号出力部9を形成した構成としても良い。
【0074】
以上本発明の薄膜ガスセンサについて説明した。このような薄膜ガスセンサによれば、特にダイヤフラム上に形成した歪感知層81で構成された回路(例えばホイートストンブリッジ回路)により歪を検出することにより、ダイヤフラム部に発生した故障が自己診断できるようになるので、信頼性の高い薄膜ガスセンサを提供する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、特にガス漏れ警報器等の適用が好ましい薄膜ガスセンサおよびこの薄膜ガスセンサの製造方法とした。
【符号の説明】
【0076】
1:Si基板
2:熱絶縁支持層
21:熱酸化SiO
22:CVD−Si
23:CVD−SiO
3:ヒータ層
4:電気絶縁層
5:ガス検出部
51:接合層
52:感知電極層
53:ガス感知層
54:選択燃焼層
6:ガス検出信号出力部
61:ガス検出用導電層
62:ガス検出用端子部
7:ヒータ駆動信号入力部
71:ヒータ駆動用導電層
72:ヒータ駆動用端子部
8:歪検出部
81:歪感知層
82:保護層
9:歪検出信号出力部
91:歪検出用導電層
92:歪検出用端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するSi基板と、
前記貫通孔の開口部に張られるダイヤフラム様の熱絶縁支持層と、
前記熱絶縁支持層上に設けられるヒータ層と、
前記熱絶縁支持層および前記ヒータ層を覆うように設けられる電気絶縁層と、
前記電気絶縁層上に設けられる一対の感知電極層と、前記電気絶縁層および前記一対の感知電極層の上に設けられ、吸着したガスによりその電気抵抗値が変化するガス感知層と、前記電気絶縁層の一部とともに前記一対の感知電極層および前記ガス感知層を覆うガス選択燃焼層と、を有するガス検出部と、
前記電気絶縁層の上に設けられて歪みによりその電気抵抗値が変化する歪感知層と、前記電気絶縁層の一部とともに前記歪感知層を覆うように設けられる保護層と、を有する歪検出部と、
前記歪感知層に電気的に接続される歪検出用導電層と、
を備えることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記歪検出部は、前記貫通孔の開口部を覆うダイヤフラム部の上側に位置することを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
n個の前記歪検出部が同一円上において360°/n毎に等角配置されることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項4】
請求項3に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
4個の前記歪検出部が同一円上に90°毎に等角配置され、かつホイートストンブリッジ回路が形成されるように前記歪検出用導電層が接続されることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記ガス感知層および前記歪感知層は、SnOにより形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記電気絶縁層および前記保護層は、SiOにより形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記一対の感知電極層および前記歪検出用導電層は、Pd(パラジウム)、Pt(白金)またはPdとPtとを含む合金により形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記ガス選択燃焼層は、Pd(パラジウム)、Pt(白金)またはPdとPtとを含む合金を触媒として担持したAl焼結材による層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記歪感知層は、前記ガス感知層と同時形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の薄膜ガスセンサにおいて、
前記歪検出用導電層は、前記一対の感知電極層と同時形成される層であることを特徴とする薄膜ガスセンサ。
【請求項11】
シリコンウェハ上に熱絶縁支持層、ヒータ層、および、電気絶縁層が順次形成される工程と、
前記電気絶縁層上に一対の感知電極層と歪検出用導電層とが同時に形成される工程と、
前記一対の感知電極層を跨いでガス感知層が、および、前記歪検出用導電層に接するように歪感知層が、それぞれ同時に形成される工程と、
前記歪感知層を覆うように保護層が形成される工程と、
前記ガス感知層の表面を覆うようにガス選択燃焼層が形成される工程と、
を有することを特徴とする薄膜ガスセンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−17624(P2011−17624A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162583(P2009−162583)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】