説明

薄膜トランジスタ基板およびその製造方法

【課題】液晶パネルの表示品質を高める。
【解決手段】TFT基板を、絶縁性基板1に形成した凹部1aを含む領域にTFTのゲート電極2aを形成し、その上に絶縁膜層5を形成して、その凹部1aの直上の領域にソース電極3bが配置されるようにする。これにより、ゲート電極2aとソース電極3bとの間の距離が広がって寄生容量Cgsが小さく抑えられ、露光時にズレが生じた場合でも画素間の寄生容量Cgsの差が小さく、ショットムラの程度を軽減することが可能になる。さらに、フィードスルー電圧Vを低減して液晶パネル面内での輝度分布を目立たなくすることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)基板およびその製造方法に関し、特に液晶表示装置の液晶パネルに用いられるTFT基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に液晶表示装置に搭載される液晶パネルには、ガラス基板等の透明絶縁性基板の上に画素電極や画素電極を駆動するTFT等が形成されたTFT基板が用いられ、このようなTFT基板と、同じくガラス基板等の上に共通電極やカラーフィルタ(CF)等が形成された対向基板との間に液晶層が挟まれ、液晶パネルが構成されている。このような液晶パネルに用いられるTFT基板には、アクティブマトリクス型をはじめ、これまで種々の形態のものが提案されている。
【0003】
図6は従来のTFT基板の一例の要部平面模式図、図7は図6のC−C断面模式図、図8は図6のD−D断面模式図である。
【0004】
なお、図6〜図8に示すTFT基板は、アクティブマトリクス型とし、マトリクス状に配列されたTFTのうちの1つのみを図示している。また、図6では、TFT基板の構成要素のうち、絶縁性基板、絶縁膜層、活性層、エッチングストッパ層および保護膜層は、便宜上、その図示を省略している。
【0005】
アクティブマトリクス型のTFT基板の場合、絶縁性基板100上には複数のゲートバスライン(スキャンバスライン)101とドレインバスライン(信号印加ライン)102が直交するように形成され、それらの各交差部にTFT103が配置されている。
【0006】
TFT103は、絶縁性基板100上にゲートバスライン101と同時に同じ材料で形成されるゲート電極101aを有し、その上には絶縁膜層104を介して動作層105が形成され、さらにその上には活性層106、およびドレインバスライン102と同時に同じ材料で形成されるドレイン電極102a並びにソース電極102bが形成されている。なお、動作層105は、TFT103のチャネルとして機能し、その上に形成されているエッチングストッパ層107は、活性層106を形成するエッチングの際に動作層105を保護する役割を果たす。
【0007】
このようなトランジスタ構造の上には、ほぼ全面に保護膜層108が形成されており、そこに設けられたコンタクトホール108aを介して、透明導電膜からなる画素電極109がソース電極102bに接続されている。
【0008】
なお、ここではゲート電極と画素電極の形成領域が重なっていない、すなわちゲート電極の直上に画素電極が配置されていない構成のTFT基板を例示したが、従来は、画素面積を増加させるため、両者の形成領域をそれらの間に絶縁膜層を挟んで重ねるようにしたTFT基板等も提案されている。
【0009】
さらに、従来は、このようにゲート電極と画素電極の形成領域が絶縁膜層を挟んで重なっているような場合に、そこに生じる寄生容量を低減する目的で、ゲート電極を絶縁性基板に設けた溝内に形成してゲート電極から画素電極までの距離を延ばすようにした提案もなされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−83550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、TFT基板内の電極間に生じる寄生容量は、上記のようなゲート電極と画素電極との間に限らず、TFT基板の構成によっては、TFT基板内のその他の電極間においても同様に生じ得る。
【0012】
例えば、上記図6〜図8に示したような構成のTFT基板の場合、ゲート電極101aと画素電極109とはその形成領域が互いに重ならないものの、ゲート電極101aの直上にソース電極102bを配置したことで、そこに寄生容量Cgsが生じてしまう。この寄生容量Cgsの値は、ゲート電極101aとソース電極102bとの重なり面積の大小に比例し、ゲート電極101aとソース電極102bとの間の距離に反比例する。
【0013】
寄生容量Cgsは、ゲートスキャンパルスの立下りによって画素に保持されるデータ電圧が引き下げられる現象、いわゆるフィードスルーに大きく関係してくる。フィードスルー電圧Vは、Csを保持容量、Clcを液晶容量、△Vgをゲートパルス振幅電圧とすると、V=(Cgs/(Cgs+Cs+Clc))×△Vg、と表すことができる。このように、フィードスルー電圧Vは、寄生容量Cgsが大きくなるほど、大きくなる。
【0014】
ところで、TFT基板にマトリクス状に配列される複数のTFTは、製造上、フォトリソグラフィ技術を用いて絶縁性基板上に繰り返しパターンとして形成される。しかし、フォトリソグラフィ工程では、露光時に隣り合う画素のパターン同士が繋がるようにして、すなわち画素間に余分な隙間ができないようにして、所定領域に露光光のショットを行っていく。そのため、露光パターンにズレが発生すると、最終的にはいわゆるショットムラと呼ばれる表示ムラが発生してしまうようになる。
【0015】
さらに、そのような露光パターンのズレが、上記図6〜図8に示したようなゲート電極101aとソース電極102bが絶縁膜層104を挟んで重なるような構成のTFT基板の形成時に発生した場合には、画素によって寄生容量Cgsに差が生じてしまうといったことも起こる。その場合、表示ムラがより顕著に現れやすく、液晶パネルの表示品質を低下させる一因となる。
【0016】
また、近年では、液晶パネルの大型化、高精細化が進んでいる。しかし、それに伴い、ゲートバスラインの回路遅延によってゲートスキャンパルスの立下りが鈍ってフィードスルー電圧Vに分布が生じ、液晶パネル面内に輝度ムラが発生するといった問題も発生する可能性がある。したがって、上記図6〜図8に示したようなゲート電極101aとソース電極102bが絶縁膜層104を挟んで重なるような構成のTFT基板を用いたときには、その寄生容量Cgsを小さくすれば、フィードスルー電圧Vを小さくしてその分布の発生を抑制することも可能になる。
【0017】
このように、TFT基板内のゲート電極とソース電極との間に生じる寄生容量Cgsは、そのTFT基板を液晶パネルに用いたとき、その表示特性に少なからず影響を及ぼすようになる。また、ここに例示したTFT基板とはソースとドレインが入れ替わっているような構成のTFT基板についても同様のことが言える。
【0018】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、高い表示品質を得ることのできるTFT基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明では、上記課題を解決するために、ゲート電極直上にドレイン電極を配置したTFTが絶縁性基板上に形成されたTFT基板において、凹部が形成された絶縁性基板と、前記絶縁性基板上の前記凹部を含む領域に形成されたゲート電極と、前記ゲート電極が形成された前記凹部を埋め込むように前記絶縁性基板上に形成された絶縁膜層と、前記絶縁膜層で埋め込まれた前記凹部の直上の領域を含む領域に形成されたドレイン電極と、を有することを特徴とするTFT基板が提供される。
【0020】
このようなTFT基板によれば、絶縁性基板に凹部が形成され、その凹部を含む領域にTFTのゲート電極が形成され、そのゲート電極が形成された凹部が絶縁膜層で埋め込まれて、その凹部直上の領域を含む領域にドレイン電極が形成されている。それにより、絶縁性基板に凹部を設けなかった場合に比べ、絶縁膜層を挟んだゲート電極とドレイン電極との間の距離が広がるため、その間の寄生容量が小さく抑えられるようになる。
【0021】
また、本発明では、ゲート電極直上にドレイン電極を配置したTFTが絶縁性基板上に形成されたTFT基板の製造方法において、絶縁性基板に凹部を形成する工程と、前記絶縁性基板上の前記凹部を含む領域にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極が形成された前記凹部を埋め込むように前記絶縁性基板上に絶縁膜層を形成する工程と、前記絶縁膜層で埋め込まれた前記凹部の直上の領域を含む領域にドレイン電極を形成する工程と、を有することを特徴とするTFT基板の製造方法が提供される。
【0022】
このようなTFT基板の製造方法によれば、絶縁性基板に凹部を形成し、その凹部を含む領域にTFTのゲート電極を形成し、そのゲート電極が形成された凹部を絶縁膜層で埋め込み、その凹部直上の領域を含む領域にドレイン電極を形成する。それにより、ゲート電極とドレイン電極との間の寄生容量を小さく抑えたTFT基板が形成されるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、TFT基板を、絶縁性基板に形成した凹部を含む領域にTFTのゲート電極を形成して、その上に絶縁膜層を形成し、その凹部直上の領域にドレイン電極が配置されるように構成した。これにより、絶縁膜層を挟んで形成されたゲート電極とドレイン電極との間の寄生容量が、絶縁性基板に凹部を設けなかった場合に比べて小さく抑えられるようになる。
【0024】
そのため、TFT基板の形成時に各画素領域の露光パターンにズレが生じてしまったような場合であっても、画素間の寄生容量の差が小さく抑えられるため、ショットムラの程度を軽減することが可能になる。
【0025】
さらに、ゲート電極とドレイン電極との間の寄生容量を小さく抑えることでフィードスルー電圧を低減することが可能になるため、大型で高精細の液晶パネルにおいても、ゲートバスラインの回路遅延に起因するフィードスルー電圧の分布の発生を抑え、液晶パネル面内での輝度分布を目立たなくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】TFT基板の一例の要部平面模式図である。
【図2】図1のA−A断面模式図である。
【図3】図1のB−B断面模式図である。
【図4】ゲート電極の形成工程の要部斜視模式図である。
【図5】絶縁膜層の形成工程の要部断面模式図である。
【図6】従来のTFT基板の一例の要部平面模式図である。
【図7】図6のC−C断面模式図である。
【図8】図6のD−D断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。ここでは本発明が参考とする参考例について、まず説明する。
【0028】
〔参考例〕
図1はTFT基板の一例の要部平面模式図、図2は図1のA−A断面模式図、図3は図1のB−B断面模式図である。
【0029】
なお、図1〜図3に示すTFT基板は、アクティブマトリクス型とし、マトリクス状に配列されたTFTのうちの1つ、すなわち1画素分のみを図示している。また、図1では、TFT基板の構成要素のうち、絶縁性基板、絶縁膜層、活性層、エッチングストッパ層および保護膜層は、便宜上、その図示を省略している。
【0030】
図1〜図3に示すTFT基板は、ガラス基板等の透明な絶縁性基板1上に、アルミニウム(Al)やモリブデン(Mo)等の金属を用いてゲートバスライン2とドレインバスライン3が直交するように形成され、それらの各交差部に、後述する画素電極10を駆動するためのTFT4が配置された構造を有している。
【0031】
絶縁性基板1には、TFT4が形成される領域内に所定寸法の凹部1aが形成されており、このような絶縁性基板1上にゲートバスライン2と同じ材料を用いてゲート電極2aが形成されている。ゲートバスライン2は、絶縁性基板1上の凹部1a外に形成され、一方、ゲート電極2aは、そのようなゲートバスライン2から連続して凹部1a内にまで形成されている。
【0032】
ゲートバスライン2およびゲート電極2aが形成された絶縁性基板1上には、全面に窒化シリコン(SiN)膜等を用いて絶縁膜層5が形成され、その上には、TFT4のチャネルとして機能する動作層6がアモルファスシリコン(a−Si)等を用いて形成されている。
【0033】
さらに、この動作層6の上には、所定の不純物をドープしたa−Si等を用いて活性層7が形成され、その活性層7の上には、ドレインバスライン3と同じ材料を用いてドレイン電極3aおよびソース電極3bが形成されている。このうちドレイン電極3aは、ドレインバスライン3に連続して形成されている。
【0034】
なお、動作層6の上に形成されているエッチングストッパ層8は、SiN膜等を用いて形成され、動作層6と活性層7との間にエッチング選択性がないような場合に、後述のように、ドレイン電極3aおよびソース電極3bの下層に活性層7を形成するエッチングの際に動作層6のチャネル領域を保護する役割を果たす。
【0035】
このようなトランジスタ構造の上には、ほぼ全面にSiN膜等を用いて保護膜層9が形成されており、そこに設けられたコンタクトホール9aを介して、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜からなる画素電極10がソース電極3bに接続された状態で形成されている。
【0036】
このような構造が絶縁性基板1上にマトリクス状に配列され、TFT基板が構成されている。上記構成を有するTFT基板は、例えば次のような手順で形成することができる。TFT基板の形成方法を、上記図1〜図3、および次の図4、図5を参照して説明する。ここで、図4および図5はTFT基板の形成方法の説明図であって、図4はゲート電極の形成工程の要部斜視模式図、図5は絶縁膜層の形成工程の要部断面模式図である。
【0037】
TFT基板を形成する際には、まず、各画素領域について、図4に示すように、TFT4を形成する絶縁性基板1上の領域のうち、後に形成するソース電極3bの直下にあたる領域に、所定寸法の凹部1aを形成する。その後、すべての画素領域を含む全面にAlやMo等のメタル層を膜厚150nm〜200nm程度で形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて各画素領域に対して露光を行い、各画素領域にそれぞれゲートバスライン2とゲート電極2aを同時に形成する。
【0038】
絶縁性基板1に形成する凹部1aは、ゲートバスライン2およびゲート電極2aの形成後にその上にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用いて形成される絶縁膜層5の凹部1a以外の領域での膜厚以上の深さで形成する。凹部1aをそのような深さで形成することにより、ゲート電極2aとソース電極3bとの間に存在する絶縁膜層5の厚みを確保し、凹部1aを設けなかった場合に比べて寄生容量Cgsを十分小さくすることが可能になる。
【0039】
さらに、凹部1aは、絶縁膜層5の凹部1a以外の領域での膜厚以上の幅で形成する。凹部1aをこのような幅で形成することにより、ゲートバスライン2およびゲート電極2aの形成後その上にプラズマCVD法等を用いて絶縁膜層5を形成したときに、凹部1a内を絶縁膜層5で確実に埋め、また、絶縁膜層5で埋められた凹部1a内に不要な空隙が形成されるのを防ぐことが可能になる。その結果、ゲート電極2aとソース電極3bとの間における空隙に起因した容量変動等を防止し、絶縁性基板1上に各TFT4を均質に形成することが可能になる。
【0040】
さらにまた、この凹部1aは、図4に示したように、絶縁性基板1の表面から内部に向かってその断面が順テーパ形状となるように形成する。その際、凹部1aの側壁のテーパ角θは、垂直から45°までの範囲とすることが望ましい。凹部1aをこのような形状とすることにより、絶縁膜層5を形成する際、凹部1a内に空隙が形成されるのを防ぎ、TFT4の均質化を図ることが可能になる。凹部1aの断面が逆テーパ形状であると、絶縁膜層5の形成時に空隙が形成される可能性が高くなり、均質なTFT4の形成が難しくなる。また、テーパ角が45°よりも大きくなると、TFT4の形成面積が必要以上に大きくなってしまう。
【0041】
凹部1a、ゲートバスライン2およびゲート電極2aの形成後は、それらの表面を覆うようすべての画素領域を含む全面にSiN等の絶縁膜で絶縁膜層5を形成する。この絶縁膜層5の形成の際は、前述のようにプラズマCVD法等を用い、図5に示すように、まず絶縁膜を膜厚400nm程度で堆積し、その後さらにその上に絶縁膜を膜厚400nm程度で堆積する。この堆積処理を繰り返して順次絶縁膜を積層していき、最終的に所定膜厚の絶縁膜層5を形成する。
【0042】
凹部1aを上記のような寸法あるいは形状とすることに加え、このような方法で絶縁膜層5を形成することにより、一気に所定膜厚まで絶縁膜を堆積していった場合に比べ、凹部1aの底面や側壁あるいは凹部1a内に形成されたゲート電極2aの表面にも隙間なく絶縁膜が堆積され、画素間の寄生容量Cgsの変動を抑え、TFT4のいっそうの均質化を図ることが可能になる。
【0043】
絶縁膜層5の形成後は、すべての画素領域を含む全面にa−Si等を形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて各画素領域に対して露光を行い、各画素領域にそれぞれ動作層6を形成する。その後、全面にSiN膜等の絶縁膜を形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて各画素領域にそれぞれエッチングストッパ層8を形成する。
【0044】
次いで、すべての画素領域を含む全面に、不純物をドープしたa−Si等の層およびAl等のメタル層を順に積層形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて各画素領域に対して露光を行う。それにより、各画素領域にそれぞれ活性層7を形成すると共に、ドレインバスライン3およびドレイン電極3a並びにソース電極3bを同時に形成する。
【0045】
最後に、すべての画素領域に渡って全面に保護膜層9を形成し、各画素領域にコンタクトホール9aを形成した後、全面にITO等の透明導電膜を形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて各画素領域に対して露光を行い、各画素領域にそれぞれ、コンタクトホール9aを介してTFT4のソース電極3bに接続された画素電極10を形成する。
【0046】
このように、上記構成のTFT基板では、絶縁性基板1上にマトリクス状に配列されている各TFT4についてそれぞれ、絶縁性基板1に設けた凹部1aを含む領域にゲート電極2aを形成し、絶縁膜層5で埋め込まれた凹部1aの直上にソース電極3bを形成するようにしている。そのため、このような凹部1aが設けられていないような場合(図6〜図8参照)に比べ、ゲート電極2aとそれに対向するソース電極3bとの間隔を広げることができ、寄生容量Cgsを低減することが可能になる。
【0047】
このようにしてTFT基板内に生じる寄生容量Cgsを低減することにより、たとえTFT基板形成時に各画素領域の露光パターンにズレが生じた場合であっても、画素間の寄生容量Cgsの差が小さく抑えられるために、ショットムラの程度を軽減することができるようになる。
【0048】
さらに、TFT基板内に生じる寄生容量Cgsを低減することにより、フィードスルー電圧Vを低減することが可能になる。そのため、上記構成のTFT基板を例えば大型で高精細の液晶パネルに適用した場合には、ゲートバスライン2の回路遅延によって生じるスキャンパルスの鈍りが引き起こすフィードスルー電圧Vの分布の発生を抑えることが可能になる。その結果、液晶パネル面内での輝度分布を目立たなくすることができるようになる。
【実施例】
【0049】
なお、以上の参考例の説明では、ゲート電極とソース電極が絶縁膜層を挟んで重なるように配置されたTFTについて述べたが、本発明は、ソースとドレインが入れ替わった構成、すなわちゲート電極とドレイン電極が絶縁膜層を挟んで重なるように配置されたTFTを備えるTFT基板に係るものである。
【0050】
以上述べたようなTFT基板を液晶パネルに用いることにより、その表示品質を高めることが可能になる。また、そのような液晶パネルを用いることにより、表示品質の高い液晶表示装置を実現することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の薄膜トランジスタ基板およびその製造方法は、液晶表示装置の液晶パネルおよび液晶パネルの製造方法に用いることができる。
【0052】
(付記1) 基板上にTFTが形成されたTFT基板において、
凹部が形成された絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上の前記凹部を含む領域に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極が形成された前記凹部を埋め込むように前記絶縁性基板上に形成された絶縁膜層と、
前記絶縁膜層で埋め込まれた前記凹部の直上の領域を含む領域に形成されたソース・ドレイン電極と、
を有することを特徴とするTFT基板。
【0053】
(付記2) 前記凹部は、深さが前記絶縁性基板の前記凹部以外の領域上に形成された前記絶縁膜層の膜厚以上であることを特徴とする付記1記載のTFT基板。
【0054】
(付記3) 前記凹部は、幅が前記絶縁性基板の前記凹部以外の領域上に形成された前記絶縁膜層の膜厚以上であることを特徴とする付記1記載のTFT基板。
【0055】
(付記4) 前記凹部は、断面が前記絶縁性基板の表面から内部に向かって順テーパ形状であることを特徴とする付記1記載のTFT基板。
【0056】
(付記5) 前記凹部は、側壁のテーパ角が垂直から45°までの範囲であることを特徴とする付記4記載のTFT基板。
【0057】
(付記6) 基板上にTFTが形成されたTFT基板の製造方法において、
絶縁性基板に凹部を形成する工程と、
前記絶縁性基板上の前記凹部を含む領域にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極が形成された前記凹部を埋め込むように前記絶縁性基板上に絶縁膜層を形成する工程と、
前記絶縁膜層で埋め込まれた前記凹部の直上の領域を含む領域にソース・ドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とするTFT基板の製造方法。
【0058】
(付記7) 前記絶縁性基板に前記凹部を形成する工程においては、
前記凹部を、深さが前記絶縁性基板の前記凹部以外の領域上に形成された前記絶縁膜層の膜厚以上になるように形成することを特徴とする付記6記載のTFT基板の製造方法。
【0059】
(付記8) 前記絶縁性基板に前記凹部を形成する工程においては、
前記凹部を、幅が前記絶縁性基板の前記凹部以外の領域上に形成された前記絶縁膜層の膜厚以上になるように形成することを特徴とする付記6記載のTFT基板の製造方法。
【0060】
(付記9) 前記絶縁性基板に前記凹部を形成する工程においては、
前記凹部を、断面が前記絶縁性基板の表面から内部に向かって順テーパ形状になるように形成することを特徴とする付記6記載のTFT基板の製造方法。
【0061】
(付記10) 前記凹部を、断面が前記絶縁性基板の表面から内部に向かって順テーパ形状になるように形成する際には、
前記凹部を、側壁のテーパ角が垂直から45°までの範囲になるように形成することを特徴とする付記9記載のTFT基板の製造方法。
【0062】
(付記11) TFT基板を用いた液晶パネルにおいて、
前記TFT基板は、凹部が形成された絶縁性基板と、前記絶縁性基板上の前記凹部を含む領域に形成されたゲート電極と、前記絶縁性基板上に前記ゲート電極が形成された前記凹部を埋め込むように形成された絶縁膜層と、前記絶縁膜層で埋め込まれた前記凹部の直上の領域を含む領域に形成されたソース・ドレイン電極と、を有することを特徴とする液晶パネル。
【0063】
(付記12) TFT基板を用いた液晶表示装置において、
前記TFT基板は、凹部が形成された絶縁性基板と、前記絶縁性基板上の前記凹部を含む領域に形成されたゲート電極と、前記絶縁性基板上に前記ゲート電極が形成された前記凹部を埋め込むように形成された絶縁膜層と、前記絶縁膜層で埋め込まれた前記凹部の直上の領域を含む領域に形成されたソース・ドレイン電極と、を有することを特徴とする液晶表示装置。
【符号の説明】
【0064】
1 絶縁性基板
1a 凹部
2 ゲートバスライン
2a ゲート電極
3 ドレインバスライン
3a ドレイン電極
3b ソース電極
4 TFT
5 絶縁膜層
6 動作層
7 活性層
8 エッチングストッパ層
9 保護膜層
9a コンタクトホール
10 画素電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極直上にドレイン電極を配置した薄膜トランジスタが絶縁性基板上に形成された薄膜トランジスタ基板において、
凹部が形成された絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上の前記凹部を含む領域に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極が形成された前記凹部を埋め込むように前記絶縁性基板上に形成された絶縁膜層と、
前記絶縁膜層で埋め込まれた前記凹部の直上の領域を含む領域に形成されたドレイン電極と、
を有することを特徴とする薄膜トランジスタ基板。
【請求項2】
前記凹部は、深さが前記絶縁性基板の前記凹部以外の領域上に形成された前記絶縁膜層の膜厚以上であることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項3】
前記凹部は、幅が前記絶縁性基板の前記凹部以外の領域上に形成された前記絶縁膜層の膜厚以上であることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項4】
前記凹部は、断面が前記絶縁性基板の表面から内部に向かって順テーパ形状であることを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項5】
ゲート電極直上にドレイン電極を配置した薄膜トランジスタが絶縁性基板上に形成された薄膜トランジスタ基板の製造方法において、
絶縁性基板に凹部を形成する工程と、
前記絶縁性基板上の前記凹部を含む領域にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極が形成された前記凹部を埋め込むように前記絶縁性基板上に絶縁膜層を形成する工程と、
前記絶縁膜層で埋め込まれた前記凹部の直上の領域を含む領域にドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする薄膜トランジスタ基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−182345(P2009−182345A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117869(P2009−117869)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【分割の表示】特願2005−156924(P2005−156924)の分割
【原出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】