説明

薄膜パターン基板、及び電気光学装置、並びに電子機器

【課題】細い線状の微細な薄膜パターンが精度良く安定して形成することができる薄膜パターン形成基板、デバイスの製造方法、及び電気光学装置、並びに電子機器を提供する。
【解決手段】基板表面に薄膜パターンが形成された基板Pであって、この基板Pは、機能液Lを注入することができる液体注入部A2と、機能液Lが流動するように接続して配置された液体流動部A1とが設けられている。これら、液体注入部A2と液体流動部A1との線幅において、液体注入部A2の幅dが、液体流動部A1の線幅bの2倍以下であり、機能液Lの直径より大きい構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば配線や素子などの所定形状の薄膜パターンが形成された薄膜パターン基板、及び電気光学装置、並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路または集積回路などに使われる配線などの薄膜パターンを形成する方法としては、例えばフォトリソグラフィ法が用いられる。このフォトリソグラフィ法は、真空装置などの大掛かりな設備と複雑な工程を必要とし、また材料使用効率も数%程度でそのほとんどを廃棄せざるを得ず、製造コストが高い。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1に開示されているように、液体吐出ヘッドから液体材料を液滴状に吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法を用いて基板上に薄膜パターンを形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、薄膜パターン用の液体材料(機能液)を、基板に設けられた撥液性のバンク(拡散防止パターン)内の凹状の領域(液体受容部)に吐出し、その後熱処理やレーザー照射を行って乾燥させ、薄膜パターンを形成する。この方法によれば、フォトリソグラフィが不要となり、プロセスが大幅に簡略化されるとともに、原材料の使用量も少なくてすむというメリットがある。
【特許文献1】特開昭59−75205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、デバイスを構成する回路の高密度化が進み、例えば配線についてもさらなる微細化、細線化が要求されている。上述した液滴吐出法を用いた薄膜パターン形成方法では、液体注入部に着弾させた機能液を、線幅の狭い液体流動部へ濡れ広がらせることにより、着弾径より狭い線幅の配線パターンが形成されるが、この場合、液体注入部に注入できる機能液量(最大注入量)が多ければ、液体流動部に流れ込む機能液量を多くできるので、少ない回数(例えば1回)の注入(吐出)で必要な膜厚の配線パターンを形成できる。しかし、液体注入部の最大注入量が少なければ、同一の液体注入部に時間をおいて複数回機能液を注入して、注入と濡れ広がりを複数回繰り返さなければならず、その繰り返し回数が多くなればなるほど、配線等の薄膜パターンを形成する基板の生産効率を低下させる原因となっていた。そして、より微細な配線パターンを形成する上では、液滴の広がりを均一にして、より膜厚が均一になるように形成する必要があった。しかし、吐出された液滴が着弾後に基板上で広がるときに、液滴の流れ具合や、着弾位置のばらつきによる機能液の蒸発速度が均一でないことによって、膜厚が均一に形成されない恐れがあった。
【0005】
特に、上述のように膜厚が均一でない場合には、形成された膜に凹凸ができてしまい、微細な薄膜パターンを安定的に形成するのが困難であった。そして、この形成された膜に凹凸ができることによって、さらに膜を積層して得られる積層構造を有するデバイスなどでは、断線やショートなどの品質の安定性を確保しながら、微細な薄膜パターンを形成することが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、細い線状の微細な薄膜パターンを精度良く安定して形成することができる薄膜パターン形成基板、デバイスの製造方法、及び電気光学装置、並びに電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薄膜パターン基板は、基板に凹設された領域に薄膜パターンが形成された薄膜パターン基板であって、前記凹設された領域は、幅が相対的に広く形成された拡幅部と、前記拡幅部に接続された線状部とを備え、前記拡幅部の平均径が前記線状部の線幅の2倍以下に設定されており、前記拡幅部は、前記薄膜パターンの乾燥前の材料である機能液が注入される液体注入部であり、前記線状部は、前記液体注入部に注入された前記機能液が流入可能に前記液体注入部に接続された線状の液体流動部であり、前記拡幅部の平均径が前記拡幅部に配される前記機能液の液滴の直径より大きいことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、前記凹設された領域は、幅が相対的に広く形成された拡幅部と、前記拡幅部に接続された線状部とを備え、前記拡幅部の平均径が前記線状部の線幅の2倍以下に設定されていることから、拡幅部に注入された機能液が、線状部に流れ込み、拡幅部に注入された機能液の表面張力による圧力と、線状部に流れ込んだ機能液の表面張力による圧力とが定常状態で釣り合うことになる。線幅が2倍以下なので、拡幅部の接触角が線状部の接触角より大きくなり、拡幅部の最大液体注入量が増える。しかも、機能液注入後の拡幅部の液面高さと、線状部の液面高さが2倍以内になり、乾燥して薄膜になったときの膜厚差は許容範囲内になることによって、凹凸の少ない薄膜パターンを形成できるので、膜厚の均一性が保持できる。よって、断線などの少ない薄膜パターンを形成できるから、品質の安定したデバイスを提供できる。
【0009】
本発明の薄膜パターン基板は、前記拡幅部は異なる方向で径が略等しい略等方形状を有しており、前記拡幅部の径が前記線状部の線幅の2倍以下に設定されていることが望ましい。
【0010】
この発明によれば、拡幅部に注入された機能液の表面張力による圧力と、線状部に流れ込んだ機能液の表面張力による圧力とが定常状態でほぼ釣り合うことになる。線幅が2倍以下なので、拡幅部の接触角が線状部の接触角より大きくなり、拡幅部の最大液体注入量が増える。しかも、機能液注入後の拡幅部の液面高さと、線状部の液面高さが2倍以内になり、乾燥して薄膜になったときの膜厚差は許容範囲内になることによって、凹凸の少ない薄膜パターンを形成できる。
【0011】
本発明の薄膜パターン基板は、前記拡幅部は異なる方向で径が異なる異方形状を有しており、前記拡幅部の平均径が前記線状部の線幅の2倍以下に設定されていることが望ましい。
【0012】
この発明によれば、拡幅部が異方形状になっても、拡幅部に注入された機能液の表面張力による圧力と、線状部に流れ込んだ機能液の表面張力による圧力とが定常状態でほぼ釣り合うことになる。線幅が2倍以下なので、拡幅部の接触角が線状部の接触角より大きくなり、拡幅部の最大液体注入量が増える。しかも、機能液注入後の拡幅部の液面高さと、線状部の液面高さが2倍以内になり、乾燥して薄膜になったときの膜厚差は許容範囲内になることによって、凹凸の少ない薄膜パターンを形成できる。
【0013】
本発明の薄膜パターン基板は、前記拡幅部の略等方形状は略円形状であることが望ましい。
【0014】
この発明によれば、拡幅部の形状が略円形状になっても、拡幅部に注入された機能液の表面張力による圧力と、線状部に流れ込んだ機能液の表面張力による圧力とが定常状態でほぼ釣り合うことになる。線幅が2倍以下なので、拡幅部の接触角が線状部の接触角より大きくなり、拡幅部の最大液体注入量が増える。しかも、機能液注入後の拡幅部の液面高さと、線状部の液面高さが2倍以内になり、乾燥して薄膜になったときの膜厚差は許容範囲内になることによって、凹凸の少ない薄膜パターンを形成できる。しかも、機能液を最大径にまで近づけることができるから機能液の吐出量を増やすことができるので、生産効率が向上する。
【0015】
本発明の薄膜パターン基板は、前記拡幅部の異方形状は楕円形状であり、前記拡幅部の長径と短径の調和平均が、前記線状部の線幅の2倍以下に設定されていることが望ましい。
【0016】
この発明によれば、拡幅部が楕円形状になっても、拡幅部に注入された機能液の表面張力による圧力と、線状部に流れ込んだ機能液の表面張力による圧力とが定常状態でほぼ釣り合うことになる。線幅が2倍以下なので、拡幅部の接触角が線状部の接触角より大きくなり、拡幅部の最大液体注入量が増える。しかも、機能液注入後の拡幅部の液面高さと、線状部の液面高さが2倍以内になり、乾燥して薄膜になったときの膜厚差は許容範囲内になることによって、凹凸の少ない薄膜パターンを形成できる。しかも、機能液の着弾位置が多少ずれても、拡幅部が楕円形状であるので、機能液が効率良く着弾できる。
【0017】
本発明の薄膜パターン基板は、前記拡幅部は前記薄膜パターンの乾燥前の材料である機能液が注入される液体注入部であり、前記線状部は、前記液体注入部に注入された前記機能液が流入可能に前記液体注入部に接続された線状の液体流動部であることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、拡幅部に注入された機能液の表面張力による圧力と、線状部に流れ込んだ機能液の表面張力による圧力とが定常状態でほぼ釣り合うことになる。線幅が2倍以下なので、拡幅部の接触角が線状部の接触角より大きくなり、拡幅部の最大液体注入量が増える。しかも、機能液注入後の拡幅部の液面高さと、線状部の液面高さが2倍以内になり、乾燥して薄膜になったときの膜厚差は許容範囲内になることによって、凹凸の少ない薄膜パターンを形成できる。しかも、線状の液体流動部と接続されているので、液体注入部に注入された機能液が液体流動部に流れやすくなる。
【0019】
本発明の薄膜パターン基板は、前記基板にはバンク部が形成されており、前記バンク部の内側が前記凹設された領域であることが望ましい。
【0020】
この発明によれば、バンク部の内側が凹設された領域に形成されているので、機能液がより流れやすくなる。
【0021】
本発明の薄膜パターン基板は、前記凹設された領域の内側が、親液性部であることが望ましい。
【0022】
この発明によれば、拡幅部に注入された機能液が、バンク部で囲まれた親液性部を流れるので、機能液が線状部に流れ込みやすくなる。したがって、より凹凸の少ない均一な薄膜パターンを形成できる。
【0023】
本発明の薄膜パターン基板は、前記拡幅部にインクジェット法によって機能液が注入されることが望ましい。
【0024】
この発明によれば、機能液が飛翔して基板に着弾するまでの液滴径をより微細にコントロールできるので、吐出する機能液を少なくすることによって、より微細で、均一な薄膜パターンを形成できる。
【0025】
本発明の薄膜パターン基板は、前記薄膜パターンが導電性のパターンであることが望ましい。
【0026】
この発明によれば、導電性を有する微細な薄膜パターンを形成できる。
【0027】
本発明のデバイスの製造方法は、基板表面に、薄膜パターンを形成してデバイスを製造する製造方法であって、拡幅部を形成する工程と、前記拡幅部に、機能液が流動するように接続して配置された線状部を形成する工程と、前記拡幅部に前記機能液を注入する工程と、前記拡幅部から前記機能液が線状部に流れ込む工程と、前記線状部に流れ込んだ前記機能液を乾燥して薄膜パターンを形成する乾燥工程とを備え、前記拡幅部の線幅の平均径が前記線状部の線幅の2倍以下になるようにしたことを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、拡幅部に注入された機能液の表面張力による圧力と、線状部に流れ込んだ機能液の表面張力による圧力とが定常状態でほぼ釣り合うことになる。線幅が2倍以下なので、拡幅部の接触角が線状部の接触角より大きくなり、拡幅部の最大液体注入量が増える。しかも、機能液注入後の拡幅部の液面高さと、線状部の液面高さが2倍以内になり、乾燥して薄膜になったときの膜厚差は許容範囲内になることによって、凹凸の少ない薄膜パターンを形成できる。そして、拡幅部から線状部へ液体が流れるようになっているので、凹凸の少ない均一な膜厚の薄膜パターンが形成できる。したがって、断線やショートなどの品質問題が少なくて、より微細化された薄膜パターンを有するデバイスを得ることができる。
【0029】
本発明の電気光学装置は、薄膜パターン基板を有するデバイスを備えていることを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、より微細化されたデバイスを有するので、より高精度で小型化が可能な電気光学装置を提供できる。
【0031】
本発明の電子機器は、前述の電気光学装置を備えていることを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、より高精度で小型化が可能な電気光学装置を有するので、より高精度な電子機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の薄膜パターンの形成方法、デバイスの製造方法の実施形態を挙げ、添付図面に沿って詳細に説明する。本実施形態では、液滴吐出法により液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから導電性微粒子を含むインク(機能液)(配線パターン(薄膜パターン)形成用インク)を液滴状に吐出し、基板上に導電性膜で形成された配線パターンを形成する場合の例を用いて説明する。
【0034】
(第1実施形態)
まず、使用するインク(機能液)について説明する。液体材料である配線パターン形成用インクは導電性微粒子を分散媒に分散した分散液からなるものである。本実施形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、及びニッケルのうちの少なくともいずれか1つを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上1.0μm以下であることが好ましい。1.0μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーテイング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0035】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0036】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0037】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0038】
配線パターンが形成される基板としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板、セラミックなど各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜、絶縁膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0039】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0040】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液体材料の一滴の量は例えば1〜300ナノグラムである。
【0041】
次に、本発明に係るデバイスを製造する際に用いられるデバイス製造装置について説明する。このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッド1から基板に対して液滴を吐出(滴下)することによりデバイスを製造する液滴吐出装置(インクジェット装置)IJが用いられる。
【0042】
図1は液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
【0043】
図1において、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
【0044】
ステージ7はこの液滴吐出装置IJによりインクを配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0045】
液滴吐出ヘッド1は複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0046】
X軸方向駆動軸4にはX軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
【0047】
Y軸方向ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0048】
制御装置CONTは液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。更に、制御装置CONTは、X軸方向駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、Y軸方向駆動モータ3に対してステージ7のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0049】
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しないY軸方向駆動モータを備えている。このY軸方向駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はY軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
【0050】
ヒータ15はここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布されたインクに含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0051】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、Y軸方向を走査方向、Y軸方向と直交するX軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルは、非走査方向であるX軸方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド1は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド1の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド1の角度を調整することでノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節可能としてもよい。
【0052】
図2はピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
【0053】
図2において、液体材料(配線パターン形成用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、吐出ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることによりピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることによりピエゾ素子22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0054】
次に、本発明の配線パターンの形成方法の一実施形態について図3、図4、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0055】
図3は本実施形態に係る配線パターンの形成方法の一例を示すフローチャート図、図4及び図5は形成手順を示す模式図、図6は薄膜パターン形成方法の概念図である。
【0056】
図3に示すように、本実施形態に係る配線パターンの形成方法は、上述した配線パターン形成用インクを基板上に配置し、基板上に導電膜配線パターンを形成するものであって、基板上に配線パターンに応じたバンクを突設するバンク形成工程S1と、基板に親液性を付与する親液化処理工程S2と、バンクに撥液性を付与する撥液化処理工程S3と、撥液性を付与されたバンク間にインクを配置する材料配置工程S4と、インクの液体成分の少なくとも一部を除去する中間乾燥工程S5と、焼成工程S6とを有している。以下、各工程毎に詳細に説明する。本実施形態では基板Pとしてガラス基板が用いられる。
【0057】
<バンク形成工程>
まず、有機材料塗布前に表面改質処理として、基板Pに対してHMDS処理が施される。HMDS処理は、ヘキサメチルジシラサン((CH)SiNHSi(CH))を蒸気状にして塗布する方法である。これにより、図4(a)に示すように、バンクと基板Pとの密着性を向上する密着層としてのHMDS層32が基板P上に形成される。
【0058】
バンクは仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はフォトリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、フォトリソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、基板PのHMDS層32上にバンクの高さに合わせて有機系感光性材料31を塗布し、その上にレジスト層を塗布する。そして、バンク形状(配線パターン)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することによりバンク形状に合わせたレジストを残す。最後にエッチングしてマスク以外の部分のバンク材料を除去する。また、下層が無機物で上層が有機物で構成された2層以上でバンク(凸部)を形成してもよい。これにより、図4(b)に示されるように、配線パターン形成予定領域の周辺を囲むようにバンクB、Bが突設される。なお、このようにして形成されるバンクB、Bとしては、その上部側の幅が狭く、底部側の幅が広いテーパ状とするのが、後述するようにバンク間の溝部にインクの液滴が流れ込みやすくなるため好ましい。
【0059】
バンクを形成する有機材料としては、インクに対して撥液性を示す材料でも良いし、後述するように、プラズマ処理による撥液化(フッ素化)が可能で下地基板との密着性が良くフォトリソグラフィによるパターニングがし易い絶縁有機材料でも良い。例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料を用いることが可能である。あるいは、無機骨格(シロキサン結合)を主鎖に有機基を持った材料でもよい。
【0060】
基板P上にバンクB、Bが形成されると、フッ酸処理が施される。フッ酸処理は、例えば2.5%フッ酸水溶液でエッチングを施すことでバンクB、B間のHMDS層32を除去する処理である。フッ酸処理では、バンクB、Bがマスクとして機能し、図4(c)に示すように、バンクB、B間に形成された溝部34の底部35にある有機物であるHMDS層32が除去され、基板Pが露出する。
【0061】
<親液化処理工程>
次に、バンクB、B間の底部35(基板Pの露出部)に親液性を付与する親液化処理工程が行われる。親液化処理工程としては、紫外線を照射する紫外線(UV)照射処理や大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするOプラズマ処理等を選択できる。ここではOプラズマ処理を実施する。
【0062】
プラズマ処理は、基板Pに対してプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射する。Oプラズマ処理の条件の一例として、例えばプラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基板1の相対移動速度が0.5〜10mm/sec、基板温度が70〜90℃である。
【0063】
そして、基板Pがガラス基板の場合、その表面は配線パターン形成用インクに対して親液性を有しているが、本実施形態のようにOプラズマ処理や紫外線照射処理を施すことで、バンクB、B間で露出する基板P表面(底部35)の親液性を更に高めることができる。ここで、バンク間の底部35のインクに対する接触角が15度以下となるように、Oプラズマ処理や紫外線照射処理が行われることが好ましい。
【0064】
図9はOプラズマ処理する際に用いるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。図9に示すプラズマ処理装置は、交流電源41に接続された電極42と、接地電極である試料テーブル40とを有している。試料テーブル40は試料である基板Pを支持しつつY軸方向に移動可能となっている。電極42の下面には、移動方向と直交するX軸方向に延在する2本の平行な放電発生部44,44が突設されているとともに、放電発生部44を囲むように誘電体部材45が設けられている。誘電体部材45は放電発生部44の異常放電を防止するものである。そして、誘電体部材45を含む電極42の下面は略平面状となっており、放電発生部44及び誘電体部材45と基板Pとの間には僅かな空間(放電ギャップ)が形成されるようになっている。また、電極42の中央にはX軸方向に細長く形成された処理ガス供給部の一部を構成するガス噴出口46が設けられている。ガス噴出口46は、電極内部のガス通路47及び中間チャンバ48を介してガス導入口49に接続している。
【0065】
ガス通路47を通ってガス噴出口46から噴射された処理ガスを含む所定ガスは、前記空間の中を移動方向(Y軸方向)の前方及び後方に分かれて流れ、誘電体部材45の前端及び後端から外部に排気される。これと同時に、電源41から電極42に所定の電圧が印加され、放電発生部44,44と試料テーブル40との間で気体放電が発生する。そして、この気体放電により生成されるプラズマで前記所定ガスの励起活性種が生成され、放電領域を通過する基板Pの表面全体が連続的に処理される。
【0066】
本実施形態では、前記所定ガスは、処理ガスである酸素(O)と、大気圧近傍の圧力下で放電を容易に開始させ且つ安定に維持するためのヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスや窒素(N)等の不活性ガスとを混合したものである。特に、処理ガスとして酸素を用いることにより、バンクB、B間の底部35におけるバンク形成時の有機物(レジストやHMDS)残渣を除去できる。すなわち、上記フッ酸処理ではバンクB、B間の底部35のHMDS(有機物)が完全に除去されない場合がある。あるいは、バンクB、B間の底部35にバンク形成時のレジスト(有機物)が残っている場合もある。そこで、Oプラズマ処理を行うことにより、バンクB、B間の底部35の残渣が除去される。
【0067】
なお、ここでは、フッ酸処理を行うことでHMDS層32を除去するように説明したが、Oプラズマ処理あるいは紫外線照射処理によりバンク間の底部35のHMDS層32を十分に除去できるため、フッ酸処理は行わなくてもよい。また、ここでは、親液化処理としてOプラズマ処理又は紫外線照射処理のいずれか一方を行うように説明したが、もちろん、Oプラズマ処理と紫外線照射処理とを組み合わせてもよい。
【0068】
<撥液化処理工程>
続いて、バンクBに対して撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。撥液化処理としては、四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)を処理ガスとするプラズマ処理法(CFプラズマ処理法)を採用する。CFプラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化炭素ガス流量が50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜20mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタンに限らず、他のフルオロカーボン系のガス、または、SFやSFCFなどのガスも用いることができる。CFプラズマ処理には、図9を参照して説明したプラズマ処理装置を用いることができる。
【0069】
このような撥液化処理を行うことにより、バンクB、Bにはこれを構成する樹脂中にフッ素基が導入され、バンクB、Bに対して高い撥液性が付与される。なお、上述した親液化処理としてのOプラズマ処理は、バンクBの形成前に行ってもよいが、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等は、Oプラズマによる前処理がなされた方がよりフッ素化(撥液化)されやすいという性質があるため、バンクBを形成した後にOプラズマ処理することが好ましい。
【0070】
なお、バンクB、Bに対する撥液化処理により、先に親液化処理したバンク間の基板P露出部に対し多少は影響があるものの、特に基板Pがガラス等からなる場合には、撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、基板Pはその親液性、すなわち濡れ性が実質上損なわれることはない。
【0071】
上述した親液化処理工程及び撥液化処理工程により、バンクBの撥液性がバンク間の底部35の撥液性より高くなるように表面改質処理されたことになる。なお、ここでは親液化処理としてOプラズマ処理を行っているが、上述したように、基板Pがガラス等からなる場合には撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、Oプラズマ処理を行わずにCFプラズマ処理のみを行うことによっても、バンクBの撥液性をバンク間の底部35より高くすることができる。
【0072】
<材料配置工程>
次に、液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成用インクの液滴が基板P上のバンクB、B間に配置される。なお、ここでは、導電性材料として有機銀化合物を用い、溶媒(分散媒)としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いた有機銀化合物からなるインクを吐出する。材料配置工程では、図5(d)に示すように、液滴吐出ヘッド1から配線パターン形成用材料を含むインクを液滴にして吐出する。液滴吐出ヘッド1は、バンクB、B間の溝部34に向け、インクの液滴を吐出して溝部34内にインクを配置する。このとき、液滴が吐出される配線パターン形成予定領域(すなわち溝部34)はバンクB、Bに囲まれているので、液滴が所定位置以外に拡がることを阻止できる。
【0073】
本実施形態では、バンクB、B間の溝部34の幅W(ここでは、溝部34の開口部における幅)はインク(機能液)の液滴の直径Dより小さく設定されている。なお、液滴を吐出する雰囲気は、温度60℃以下、湿度80%以下に設定されていることが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルが目詰まりすることなく安定した液滴吐出を行うことができる。
【0074】
このような液滴を液滴吐出ヘッド1から吐出し、溝部34内に配置すると、液滴はその直径Dが溝部34の幅Wより大きいことから、図5(e)の二点鎖線で示すようにその一部がバンクB、B上に乗る。ところが、バンクB、Bの表面が撥液性となっておりしかもテーパ状になっていることから、これらバンクB、B上に乗った液滴部分がバンクB、Bからはじかれ、更には毛細管現象によって溝部34内に流れ落ちることにより、図5(e)の実線で示すように液滴が溝部34内に入り込む。
【0075】
また、溝部34内に吐出され、あるいはバンクB、Bから流れ落ちたインクは、基板P(底部35)が親液化処理されていることから濡れ拡がり易くなっており、これによってインクはより均一に溝部34内を埋め込むようになる。
【0076】
<中間乾燥工程>
基板Pに液滴を吐出した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行なうこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。そして、この中間乾燥工程と上記材料配置工程とを繰り返し行うことにより、図5(f)に示すように、インクの液滴が複数層積層され、膜厚の厚い配線パターン(薄膜パターン)33が形成される。
【0077】
<焼成工程>
吐出工程後の乾燥膜は、有機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行い、有機銀化合物の有機分を除去し銀粒子を残留させる必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
【0078】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中、または水素などの還元雰囲気中で行なうこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。本実施形態では、吐出されパターンを形成したインクに対して、大気中クリーンオーブンにて280〜300℃で300分間の焼成工程が行われる。なお、例えば、有機銀化合物の有機分を除去するには、約200℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上250℃以下で行なうことが好ましい。以上の工程により吐出工程後の乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
【0079】
なお、焼成工程の後、基板P上に存在するバンクB、Bをアッシング剥離処理により除去することができる。アッシング処理としては、プラズマアッシングやオゾンアッシング等を採用できる。プラズマアッシングは、プラズマ化した酸素ガス等のガスとバンク(レジスト)とを反応させ、バンクを気化させて剥離・除去するものである。バンクは炭素、酸素、水素から構成される固体の物質であり、これが酸素プラズマと化学反応することでCO、HO、Oとなり、全て気体として剥離することができる。一方、オゾンアッシングの基本原理はプラズマアッシングと同じであり、O(オゾン)を分解して反応性ガスのO(酸素ラジカル)に変え、このOとバンクとを反応させる。Oと反応したバンクは、CO、HO、Oとなり、全て気体として剥離される。基板Pに対してアッシング剥離処理を施すことにより、基板Pからバンクが除去される。バンクの除去工程としてはアッシング剥離処理以外にも、バンクを溶剤に溶かす方法や物理的に除去する方法を行うこともできる。
【0080】
ここで、本発明の第1実施形態としての薄膜パターン形成方法について説明する。図6(a)に示すように、基板P上にバンクBを形成する際、バンクBによって区画される線状領域Aについて、一部の幅を広く設けておいて、薄膜パターンを形成する。また、液体注入部A2の形状が円になっていて、液体流動部A1の形状が細い溝になるように構成されている。なお、液体注入部A2と、液体流動部A1とが一直線上に配置され、しかも、液体注入部A2の幅dが液体流動部A1の線幅bに対して、2倍以下になるように構成されている。また、液体注入部A2と、液体流動部A1とが一直線上に配置されるように配置したがこれに限定されない。曲線上に配置されても良い。
【0081】
図6(b)に示すように、基板P上にバンクBが形成され、このバンクBによって区画された線状の領域A(液体注入部A2と、液体流動部A1とを構成する)に機能液Lを配置できるように構成されている。特に、液滴吐出ヘッド1のノズルから機能液Lが液体注入部A2に注入されることによって、この注入された機能液Lが液体流動部A1に流動していくように構成されている。
【0082】
また、この薄膜パターン形成方法では、バンクBによって区画された線状領域Aの内、液体注入部A2の幅dが液体流動部A1の幅bの2倍以下で形成されていることにより、機能液Lの配置時に機能液Lが液体注入部A2から液体流動部A1へ効率良く流れていく。液体注入部A2に機能液Lを続けて着弾させることによって、液体注入部A2に滞留した機能液Lが徐々に盛り上がり、次第に、液体注入部A2から液体流動部A1に機能液Lが流れ出していく。液体流動部A1に流れ出した機能液Lは、液体流動部A1に滞留する。
【0083】
ここで、バンクBによって区画された線状領域Aに機能液Lが配置され、この機能液Lが例えば乾燥することにより、基板P上に線状の膜パターンFが形成される。この場合、バンクBによって膜パターンFの形状が規定されることから、例えば、液体流動部A1部分の隣接するバンクB、B間の幅を狭くするなど、バンクBを適切に形成することにより、膜パターンFの微細化や細線化が図られている。
【0084】
また、基板P上にバンクBを形成する際、バンクBによって区画される線状領域Aについて、広い幅dで形成された液体注入部A2と、狭い幅bで形成された液体流動部A1を形成することができる。すなわち、線状領域Aの長手方向における所定の位置に、他の領域の幅bに比べて広い幅d(d>b)からなる部分を、単数あるいは複数設けることもできる。
【0085】
一般に、線状領域に液体を配置する際、液体の表面張力の作用などによって、液体注入部A2から液体流動部A1に液体が流入しにくかったり、その領域内で液体が広がりにくい場合がある。これに対して、本実施形態の薄膜パターン形成方法では、液体注入部A2と、液体流動部A1とでは線幅に差が設けられていて、しかも液体注入部A2の幅が、液体流動部A1の線幅の2倍以下に設定されているので、この部分での液体の動きが誘因となり、液体流動部A1への機能液Lの流入あるいは液体流動部A1内での機能液Lの広がりが促進される。
【0086】
このように、機能液Lの配置時におけるバンクBからの機能液Lの流入が促進されることから、膜パターンFが所望の形状に形成される。したがって、細い線状の膜パターンFを、精度よく安定的に形成することができる。
【0087】
ここで、図6(c)、図6(d)を参照しながら液体注入部A2の幅が液体流動部A1の線幅の2倍以下であることについて説明する。
【0088】
液体注入部A2に機能液Lが滴下し着弾すると、液体注入部A2に溜まった機能液滴L2は表面張力によって安定しようとする力が働いて半球状を呈する(図6(c)参照)。
【0089】
ここで、液体注入部A2の直径をd、液体流動部A1の線幅をb、液体注入部A2に溜まった機能液滴L2の圧力をP、表面張力をσ、液面曲率半径をRとすると、P、σ、Rの間には以下の関係が成り立ち、液体注入部A2に溜まった機能液滴L2の圧力Pは、下記の(1)式で与えられる。
【0090】
【数1】

【0091】
次に、液体注入部A2にある機能液滴L2が液体流動部A1に流れ出す。このとき、機能液滴L2は前述と同様に安定しようとするが、液体流動部A1が細い溝形状であるため、機能液滴L1は液体流動部A1の長手方向に沿って流れ出し、その形状が、略かまぼこ型(略半円柱)の形状になる(図6(d)参照)。
【0092】
ここで、液体流動部A1の機能液滴L1の圧力をP、表面張力をσ、幅方向の曲率半径をR、長手方向の曲率半径をRとすると曲率半径Rは∞とみなすことができ、P、σ、Rの間には以下の関係が成りたち、液体流動部A1の圧力Pは、下記の(2)式で与えられる。
【0093】
【数2】

【0094】
液体流動部A1の圧力Pと、液体注入部A2の圧力Pとが定常状態では釣り合うので、P=Pとなり、(1)式と(2)式から(3)式が得られる。
【0095】
【数3】

【0096】
ここで、図6(e)を参照しながら液体注入部A2と、液体流動部A1の接触角について説明する。
【0097】
図6(e)に示すように、液滴Lの曲率半径をR、液の高さをh、ベース部の幅をw、接触角をθとすると、接触角θは下記の(4)式で与えられる。
【0098】
【数4】

【0099】
同様に、液の高さhは(5)式で表せる。
【0100】
【数5】

【0101】
(4)式へ(3)式を適用することにより、液体流動部A1の接触角θと、液体注入部A2の接触角θは(6)式と(7)式で与えられる。
【0102】
【数6】

【0103】
【数7】

【0104】
ここで、d=2bの関係のときに、(6)式と(7)式より、θ=θが得られる。
【0105】
また、バンクBは撥液性なので液体の接触角が非常に大きくなることから、接触角が90度以上180度以下とすると、式(6)よりd>2bのときにはθ>θが成り立ち、d<2bのときにはθ<θが成り立つ。
なお、液滴を液体注入部A2に着弾させた際に、バンクBから液体がはみ出さないようにするためには、液体注入部A2における液体の接触角θが、液体流動部A1の液体の接触角θを超えないようにすることが必要要件である。そして、最終的に必要な膜厚から液体注入部A2に注入すべき液体総量がほぼ決まり、なるべく少ない回数の注入で薄膜を効率良く形成するためには、液体注入部A2の最大注入液量(最大充填液量)が多い方が有利である。また、液体流動部A1の線幅bは、必要な配線の線幅から決まり基本的に変更できない設計値であり、また液体流動部A2のサイズ(面積)も面積効率を考慮すると小さい方が好ましい。
ここで、液体注入部A2になるべく多量の液体を溜められるためには、液体注入部A2の容積(底面積×高さ(深さ))を多くすればよい。しかし、液体受容部の深さを決めるバンクBの高さは基板表面に凹凸を作り出す原因になるので、最終的に形成される薄膜の膜厚程度の高さ(膜厚より若干高い程度の高さ)に留めるのが好ましい。
つまり、接触角θ≦接触角θであれば、液体注入部A2の最大液体注入量を多くすることができる。
ゆえに、d≦2bのときがよく、なるべく多くの液体を短時間で液体注入部A2に注入することができる。
【0106】
また、(5)式へ(3)式を適用することにより、液体流動部A1の液の高さhと、液体注入部A2の液の高さhとは(8)式、(9)式で与えられる。
【0107】
【数8】

【0108】
【数9】

【0109】
ここで、d=2bの関係のときに、(8)式と(9)式より、h=2hが得られる。
【0110】
つまり、最終的な膜厚は、液の平均高さと正の相関関係にある。液体流動部A1に溜まる半円柱状の液の平均高さhは、その半円柱を幅方向に切断してできる半円(切断面)の高さをベース幅の範囲で積分することにより求まる半円の面積をベース幅dで割ることで得られる。一方、液体注入部A2にある半円球状の液の平均高さhA2は、図6(e)に示す半円を半円球の中心線を軸として半回転させる積分を計算することにより求まる半円球の体積をベース面積で割ることで得られる。したがって、半円柱と半円球の液の高さ(最大高さ)h,hが同じであるとすると(h=h)、平均高さhA1,hA2では、液体流動部A1の平均高さhA1の方が、液体注入部A2の平均高さhA2より大きくなり(hA2<hA1)、液の高さがh=2hの関係にある場合は、平均高さは2倍以下(hA2<2hA1)となる。
したがって、液体注入部A2の幅dと液体流動部A1の線幅bとの間に、d≦2bの関係が成立すれば、液体注入部A2と液体流動部A1のそれぞれに溜まった液体の平均高さは、hA2<2hA1の関係を満たす。このため、液体注入部A2と液体流動部A1のそれぞれに溜まった液体を乾燥させて最終的に得られる薄膜の各対応部分における膜厚の関係は、hA2<2hA1の関係と正の相関を有することから、膜厚においても2倍未満に収まり、液体注入部A2と液体流動部A1のそれぞれに形成される薄膜の膜厚差が許容範囲に収まり易くなる。
【0111】
したがって、液体注入部A2の直径(平均径)dは、液体流動部A1の線幅bに対して、好ましくは2倍以下(本実施形態ではb<do≦d≦2b(但しdoは着弾前の液滴の径))に設定することがよく、特に好ましい値としては2倍(d=2b)である。
【0112】
以上のような第1実施形態では、次のような効果が得られる。
【0113】
(1)液体注入部A2の幅dと液体流動部A1の線幅bの関係を、d≦2bにすることで、液体注入部A2における液体の接触角θが、液体流動部A1における液体の接触角θより大きくなり、液体注入部A2へ液体を注入するときの最大液体注入量をなるべく多くすることができる。つまり、なるべく少ない回数の注入で薄膜パターンを効率良く形成できる。
(2)液体注入部A2に注入された液体を効率良く液体流動部A1に流動させることができて、液体注入部A2と、液体流動部A1での液体の高さの比が2以下を満たすことができるので、膜厚を許容範囲内で一致させることが可能になる(液体注入部A2と、液体流動部A1での膜厚がほぼ等しくなる)。したがって、より微細な薄膜パターンが形成できる。
(3)液体注入部A2に液体が多く残ると、液体注入部A2と、液体流動部A1とでは蒸発速度が大きく異なるため、膜の均一性が損なわれてしまうことがあるが、本発明ではこの蒸発速度が同じ程度になるので、乾燥過程での膜の均一性を容易に得ることができる。つまり、液体注入部A2と、液体流動部A1との膜の厚さが同じ程度になるため、凹凸の少ない薄膜パターンが形成できる。
(4)さらに、この薄膜パターンの上に、後工程(乾式および、湿式での薄膜形成)で別な材質の膜を積層して得られる積層構造の積層膜でも、得られる膜が凹凸の少ない薄膜パターンであるので、断線やショートなどの品質問題を未然に防ぐことが可能な積層膜を形成できるので、安定した品質のデバイスを提供できる。
【0114】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は前述の第1実施形態における液体注入部A2が楕円形状になっていることが異なるものである。
なお、前述の第1実施形態と同じ部品及び同様な機能を有する部品には同一記号を付し、説明を省略する。
【0115】
図7は、第2実施形態としての薄膜パターン形成方法の概念図である。
【0116】
図7(a)に示すように、この薄膜パターンは、基板P上にバンクBを形成する際、バンクBによって区画される線状領域Aについて、液体注入部A2が楕円形状となるように構成されている。ここでは、液体注入部A2の短径mと、長径nとの2つの主直径の調和平均が、液体流動部A1の幅bに対して少なくとも2倍以下の広さになるように構成されている。
【0117】
図7(b)に示すように、基板P上に形成されたバンクBによって区画された線状の領域Aに機能液Lを配置できるように構成されている。滴下された機能液Lが液体注入部A2の範囲に広がろうとするときに、表面張力によって安定しようとする力が働いて、この液滴の表面が半球状を呈する(図6(c)参照)。
【0118】
ここで、機能液Lが液体注入部A2に満たされる前に、この機能液Lが液体注入部A2から液体流動部A1の長手方向に沿って流れ出し、液体流動部A1に溜まる。この液体流動部A1に溜まった機能液Lは、略かまぼこ型(略半円柱)の形状になる(図6(d)参照)。
【0119】
ここで、液体注入部A2の短径をmとし、長径をnとし、液体流動部A1の線幅をbとして、楕円の中心での液面曲率半径をR2m、R2nとすると、下記の(10)式が与えられる。この(10)式は近似式である。
【0120】
【数10】

【0121】
したがって、(10)式から(11)式が得られる。
【0122】
【数11】

【0123】
定常状態での圧力の釣り合い条件は、(12)式で与えられる。
【0124】
【数12】

【0125】
したがって、(12)式から(13)式が得られる。
【0126】
【数13】

【0127】
ここでm=nとすると、第1実施形態で得られた円の場合と同様になる((3)式参照)。
【0128】
また液体注入部A2では短径方向の縁が最大接触角を与えるので、短径方向の曲率半径R2mを使うことができる。
【0129】
ここで、楕円の場合の接触角について説明する。第1実施形態の(3)式の代わりに、(12)式を用いることで、液体流動部A1の接触角θは(14)式で表せる。
【0130】
【数14】

【0131】
同様に、(13)式を用いることで、液体注入部A2の接触角θは(15)式で与えられる。
【0132】
【数15】

【0133】
したがって、(14)式と、(15)式とから、液体流動部A1の線幅bは(16)式で与えられ、このときに、θ=θが得られる。
【0134】
【数16】

【0135】
したがって、この(16)式から(17)式が得られる。
【0136】
【数17】

【0137】
つまり、第1実施形態と同様に、液体注入部A2に溜まった機能液滴L2の圧力Pと、液体流動部A1に流れ出した機能液滴L1との圧力Pが、定常状態で釣り合う。P=Pとなり、液体注入部A2の短径mと、長径nとの2つの主直径の調和平均が、液体流動部A1の線幅bの、好ましくは2倍以下であり、特に好ましいのは2倍である。
【0138】
以上のような第2実施形態では、次のような効果が得られる。
【0139】
(5)液体注入部A2の形状が楕円になっても、液体注入部A2に滴下された機能液滴L2と、液体流動部A1に流れ出した機能液滴L1との関係が、第1実施形態とほぼ同様になるので、同種の効果が得られる。
【0140】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は前述の第1実施形態及び第2実施形態における液体注入部A2が正方形の形状になっていることが異なるものである。
なお、前述の第1実施形態及び第2実施形態と同じ部品及び同様な機能を有する部品には同一記号を付し、説明を省略する。
【0141】
図8は、第3実施形態としての薄膜パターン形成方法の概念図である。
【0142】
図8(a)に示すように、この薄膜パターンは、基板P上にバンクBを形成する際、バンクBによって区画される線状領域Aについて、液体注入部A2が正方形の形状となるように構成されている。しかも、液体注入部A2の一辺の長さKが、液体流動部A1の幅bに対して少なくとも2倍以下の広さになるように構成されている。
【0143】
図8(b)に示すように、基板P上に形成されたバンクBによって区画された線状の領域Aに機能液Lを配置できるように構成されている。滴下された機能液Lが液体注入部A2の範囲に広がろうとするときに、表面張力によって安定しようとする力が働いて、この液滴の表面が半球状を呈する。(図6(c)参照)。
【0144】
ここで、機能液Lが液体注入部A2に満たされると、この機能液Lが液体注入部A2から液体流動部A1の長手方向に沿って流れ出し、液体流動部A1に溜まる。液体流動部A1に溜まった機能液Lは、略かまぼこ型(略半円柱)の形状になる(図6(d)参照)。
【0145】
つまり、第1実施形態と同様に、液体注入部A2に溜まった機能液滴L2の圧力Pと、液体流動部1に流れ出した機能液滴L1との圧力Pが、定常状態で釣り合う。P=Pとなり、2R=R((3)式参照)から液体注入部A2の一辺の長さKと、液体流動部A1の線幅bとの違いが、好ましくはKはbの2倍以下であり、特に好ましいのは2倍である。
【0146】
以上のような第3実施形態では、次のような効果が得られる。
【0147】
(6)液体注入部A2の形状が正方形になっても、液体注入部A2に溜まった機能液滴L2と、液体流動部A1に流れ出した機能液滴L1との関係が、第1実施形態とほぼ同様になるので、同種の効果が得られる。
【0148】
<電気光学装置>
本発明の電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。図10は本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図11は図10のH−H'線に沿う断面図である。図12は液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図で、図13は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0149】
図10及び図11において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されている。
【0150】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0151】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated・Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted・Nematic)モード、STN(Super・Twisted・Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0152】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図12に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0153】
画素電極19はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図11に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0154】
図13はボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板Pには、上記実施形態の配線パターンの形成方法によりゲート配線61がガラス基板P上のバンクB、B間に形成されている。
【0155】
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層63が積層されている。このゲート配線部分に対向する半導体層63の部分がチャネル領域とされている。半導体層63上には、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積層されており、チャネル領域の中央部における半導体層63上には、チャネルを保護するためのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲート絶縁膜62、半導体層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジスト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニングされる。
【0156】
さらに、接合層64a、64b及びITOからなる画素電極19も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパターニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上にそれぞれバンク66…を突設し、これらバンク66…間に上述した液滴吐出装置IJを用いて、銀化合物の液滴を吐出することでソース線、ドレイン線を形成することができる。
【0157】
なお、上記実施形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものである。
【0158】
他の実施形態として、非接触型カード媒体の実施形態について説明する。図14に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。本実施形態では、上記アンテナ回路412が、上記実施形態に係る配線パターン形成方法によって形成されている。
【0159】
なお、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0160】
<電子機器>
本発明の電子機器の具体例について説明する。
図15(a)は携帯電話の一例を示した斜視図である。図15(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図15(b)はワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図15(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図15(c)は腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図15(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図15(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置を備えたものであり、良好に細線化された配線パターンを有している。
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0161】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。以下に変形例を示す。
【0162】
(変形例1)第1実施形態〜第3実施形態では、バンクを形成し、このバンクに撥液性を付与するように説明したが、本発明はこれに限らない。例えばバンクは無くてもよい。例えば基板に表面処理を施して配線パターン形成予定領域に親液化処理を施し、他の部分に撥液化処理を施し、この親液化処理部分に導電性微粒子を含むインクや有機銀化合物を配置してもよい。
【0163】
このようにすれば、所望の配線パターンを形成することができる。
【0164】
(変形例2)第1実施形態〜第3実施形態では、薄膜パターンを導電性膜とする構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば液晶表示装置において表示画像をカラー化するために用いられているカラーフィルタにも適用可能である。このカラーフィルタは、基板に対してR(赤)、G(緑)、B(赤)のインク(液体材料)を液滴として所定パターンで配置することで形成することができるが、基板に対して所定パターンに応じたバンクを形成し、このバンクに撥液性を付与してからインクを配置してカラーフィルタを形成してもよい。
【0165】
このようにすれば、高性能なカラーフィルタを有する液晶表示装置を製造することができる。
【0166】
(変形例3)第1実施形態〜第3実施形態で説明したように、液体注入部A2の周囲にバンクを設けた構成にしたが、本発明はこれに限らない。例えば、液体注入部A2と、液体流動部A1とをバンクを設けないで形成してもよい。
【0167】
このようにすれば、バンクがなくても液体注入部A2に滴下された液体の接触角θと、液体流動部A1に滴下された液体の接触角θとが、前述の第1実施形態と同様な関係が成り立つので、第1実施形態〜第3実施形態と同種の効果が得られる。
【0168】
(変形例4)第1実施形態〜第3実施形態で説明したように、液体注入部A2になるべく多くの液体(最大液体充填量近くまで)を供給するようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、液体注入部A2に供給される液体の量が最大液体充填量近くでなくてもよい。
【0169】
このようにすれば、液体注入部A2に滴下された液体がバンクBで囲まれた領域にゆっくりと充填されるので、バンクBから溢れ出すことがない。
【0170】
(変形例5)第1実施形態〜第3実施形態で説明したように、液体注入部A2の形状は円形状や楕円形状に限定されない。例えば略等方形状とは、円形状に限定されず、正方形、正五角形、正六角形、正八角形、正十二角形などの正多角形、長径と短径が略等しい楕円形状(略円形とみなせる形状)でもよい。また、異方形状とは、楕円形状に限定されず、長方形、菱形でもよい。要するに液体注入部A2は、略等方形状の場合はその幅が液体流動部A1の線幅の2倍以下となる形状であればよく、一方、異方形状の場合はその平均径が液体流動部A1の線幅の2倍以下となる形状であればよい。
【0171】
このようにすれば、液体注入部A2に滴下された液体の接触角θと、液体流動部A1に滴下された液体の接触角θとが、前述の第1実施形態と同様な関係が成り立つので、第1実施形態〜第3実施形態と同種の効果が得られる。
【0172】
また、上記の実施形態及び変形例で把握される技術的思想は、以下のとおりである。
【0173】
(技術的思想1)基板に凹設された領域に薄膜パターンが形成された薄膜パターン基板であって、前記凹設された領域は、前記薄膜パターンの乾燥前の材料である機能液が注入される液体注入部と、前記液体注入部に注入された前記機能液が流入可能に前記液体注入部に接続された線状の液体流動部とを備え、前記液体注入部の平均径が前記液体流動部の線幅の2倍以下に設定されていることを特徴とする薄膜パターン基板。
【0174】
このような構成にすれば、液体注入部A2の幅dが液体流動部A1の線幅bの2倍以下に設定されているから、液体注入部A2に滴下された液体の接触角θと、液体流動部A1に滴下された液体の接触角θとが、前述の第1実施形態と同様な関係が成り立つので、第1実施形態〜第3実施形態と同種の効果が得られる。
【0175】
(技術的思想2)基板に凹設された領域に薄膜パターンが形成された薄膜パターン基板であって、前記凹設された領域は、前記薄膜パターンの乾燥前の材料である機能液が注入される液体注入部と、前記液体注入部に注入された前記機能液が流入可能に前記液体注入部に接続された線状の液体流動部とを備え、前記液体注入部は異なる方向で径が略等しい略等方形状を有しており、前記液体注入部の幅が前記液体流動部の線幅の2倍以下に設定されていることを特徴とする薄膜パターン基板。
【0176】
このような構成にすれば、異なる方向でも液体注入部A2の径が略等しくて、液体注入部A2の幅dが液体流動部A1の線幅bの2倍以下に設定されているから、液体注入部A2に滴下された液体の接触角θと、液体流動部A1に滴下された液体の接触角θとが、前述の第1実施形態と同様な関係が成り立つので、第1実施形態〜第3実施形態と同種の効果が得られる。
【0177】
(技術的思想3)基板に凹設された領域に薄膜パターンが形成された薄膜パターン基板であって、前記凹設された領域は、前記薄膜パターンの乾燥前の材料である機能液が注入される液体注入部と、前記液体注入部に注入された前記機能液が流入可能に前記液体注入部に接続された線状の液体流動部とを備え、前記液体注入部は異なる方向で径が異なる異方形状を有しており、前記液体注入部の平均径が前記液体流動部の線幅の2倍以下に設定されていることを特徴とする薄膜パターン基板。
【0178】
このような構成にすれば、異なる方向で液体注入部A2が異方形状になっていても、液体注入部A2の幅dが液体流動部A1の線幅bの2倍以下に設定されているから、液体注入部A2に滴下された液体の接触角θと、液体流動部A1に滴下された液体の接触角θとが、前述の第1実施形態と同様な関係が成り立つので、第1実施形態〜第3実施形態と同種の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】液滴吐出装置の概略斜視図。
【図2】ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図。
【図3】薄膜パターン形成方法を示すフローチャート。
【図4】薄膜パターン形成手順を示す模式図。
【図5】薄膜パターン形成手順を示す模式図。
【図6】第1実施形態としての薄膜パターン形成方法を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は機能液が滴下された図、(c)は機能液滴の図、(d)は機能液滴の図、(e)は接触角を示す図。
【図7】第2実施形態としての薄膜パターン形成方法を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は機能液が滴下された図。
【図8】第3実施形態としての薄膜パターン形成方法を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は機能液が滴下された図。
【図9】残渣処理工程に用いるプラズマ処理装置の一例を示す図。
【図10】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図。
【図11】図10のH−H'線に沿う断面図。
【図12】液晶表示装置の等価回路図。
【図13】液晶表示装置の部分拡大断面図。
【図14】非接触型カード媒体の分解斜視図。
【図15】電子機器の具体例を示す図。
【符号の説明】
【0180】
1…液滴吐出ヘッド、P…基板、θ…接触角、θ…液体流動部の機能液滴の接触角、θ…液体注入部の機能液滴の接触角、機能液…L、機能液滴…L1、機能液滴…L2、B…バンク、A…線状領域A、A1…液体流動部、A2…液体注入部、d…液体注入部の線幅、b…液体流動部の線幅、R…液体注入部の液面曲率半径、R…液体流動部の液面曲率半径、P…液体流動部に滴下された機能液滴の圧力、P…液体注入部に滴下された機能液滴の圧力、σ…表面張力、m…液体注入部が楕円形状における短径の長さ、n…液体注入部が楕円形状における長径の長さ、K…液体注入部が正方形における一辺の長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に凹設された領域に薄膜パターンが形成された薄膜パターン基板であって、
前記凹設された領域は、幅が相対的に広く形成された拡幅部と、前記拡幅部に接続された線状部とを備え、
前記拡幅部の平均径が前記線状部の線幅の2倍以下に設定されており、
前記拡幅部は、前記薄膜パターンの乾燥前の材料である機能液が注入される液体注入部であり、
前記線状部は、前記液体注入部に注入された前記機能液が流入可能に前記液体注入部に接続された線状の液体流動部であり、
前記拡幅部の平均径が前記拡幅部に配される前記機能液の液滴の直径より大きいことを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜パターン基板において、
前記拡幅部は異なる方向で径が略等しい略等方形状を有しており、
前記拡幅部の径が前記線状部の線幅の2倍以下に設定されていることを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項3】
請求項1に記載の薄膜パターン基板において、
前記拡幅部は異なる方向で径が異なる異方形状を有しており、
前記拡幅部の平均径が前記線状部の線幅の2倍以下に設定されていることを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項4】
請求項2に記載の薄膜パターン基板において、
前記拡幅部の略等方形状は略円形状であることを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項5】
請求項3に記載の薄膜パターン基板において、
前記拡幅部の異方形状は楕円形状であり、前記拡幅部の長径と短径の調和平均が、前記線状部の線幅の2倍以下に設定されていることを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の薄膜パターン基板において、
前記基板にはバンク部が形成されており、前記バンク部の内側が前記凹設された領域であることを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の薄膜パターン基板において、
前記凹設された領域の内側が、親液性部であることを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の薄膜パターン基板において、
前記拡幅部にインクジェット法によって機能液が注入されることを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の薄膜パターン基板において、
前記薄膜パターンが導電性のパターンであることを特徴とする薄膜パターン基板。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の薄膜パターン基板を有するデバイスを備えていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−20930(P2008−20930A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222926(P2007−222926)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【分割の表示】特願2004−317558(P2004−317558)の分割
【原出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】