説明

薄膜形成装置及び薄膜形成方法

【課題】結晶性の高い微結晶シリコン薄膜を安定して基板上に成膜することができる薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、成膜容器と、薄膜の原料であるシランガスを成膜容器に供給するシランガス供給部と、シランガスを希釈する希釈ガスを成膜容器に供給する希釈ガス供給部と、成膜容器の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、成膜容器の内部に配置されるシリコン基材と、シランガス供給部がシランガスを供給するタイミング、及び、希釈ガス供給部が希釈ガスを供給するタイミングを制御する制御部と、を備えることを特徴とする薄膜形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて基板に薄膜を形成する薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に薄膜を形成するためにCVD(Chemical Vapor Deposition)装置が用いられる。特に、CVD装置を用いて薄膜太陽電池やTFT(Thin Film Transistor)に用いられるSi薄膜をガラス基板に形成するプロセスが注目されている。Si薄膜の形成では、例えば、モノシラン(SiH)をプラズマ化して、ガラス基板上にSi薄膜を形成する。近年、薄膜太陽電池用パネルは大型化しており、大型のガラス基板に、品質特性が高くしかも均質な特性を有する微結晶Si薄膜を低コストで形成することが望まれている。
【0003】
例えば、微結晶Si薄膜を形成する際の製造コストを下げるためには、成膜する基板の温度を250℃以下にすることが望まれる。しかし、基板の温度を250℃以下にして微結晶Si薄膜を形成するとき、薄膜の結晶性が悪くキャリアの移動度が低い、といった微結晶Si薄膜の特性上の問題がある。
【0004】
一方、従来に比べて高い品質の微結晶シリコン薄膜を形成する法方が知られている(非特許文献1)。
当該方法では、核形成工程において、Hガスの流量を150sccm、SiHガスの流量を0sccmとし、微結晶シリコン成長工程において、Hガスの流量を150sccm、SiHガスの流量を25sccmとすることにより、SiO基板の上にSiが核形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics Vol. 43, No. 12, 2004, pp. 7909-7933, Low-Temperature Microcrystalline Silicon Film Deposited by High-Density and Low-Potential Plasma Technique Using Hydrogen Radicals
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記方法では、核形成工程において、成膜容器の内壁に堆積しているSi薄膜が水素原子や水素ラジカルによってスパッタされるため、SiHガスを流さないにもかかわらずSiの核が形成されると考えられている。
【0007】
しかしながら、当該方法では、核形成工程において、成膜容器の内壁に堆積したSi薄膜の分布などにより、基板上に成膜される薄膜の特性が変化するため、安定した成膜が難しいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、結晶性の高い微結晶シリコン薄膜を安定して基板上に成膜することができる薄膜形成装置及び薄膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の薄膜形成装置は、基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、成膜容器と、前記薄膜の原料であるシランガスを前記成膜容器に供給するシランガス供給部と、前記シランガスを希釈する希釈ガスを前記成膜容器に供給する希釈ガス供給部と、前記成膜容器の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、前記成膜容器の内部に配置されるシリコン基材と、前記シランガス供給部が前記シランガスを供給するタイミング、及び、前記希釈ガス供給部が前記希釈ガスを供給するタイミングを制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記成膜容器は、前記シリコン基材を支持する支持部を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記シリコン基材の厚さは、1mm以上であることが好ましい。
【0012】
また、前記制御部は、前記希釈ガスのみを前記成膜容器に供給した後に、前記シランガスと前記希釈ガスとを前記成膜容器に供給するように、前記シランガス供給部及び前記希釈ガス供給部を制御することが好ましい。
【0013】
また、前記希釈ガスは水素ガスであることが好ましい。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明の薄膜形成方法は、基板上に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、内部にシリコン基材が配置された成膜容器に希釈ガスを供給する第1成膜工程と、前記成膜容器にシランガスと前記希釈ガスとを供給する第2成膜工程と、前記成膜容器の内部に前記希釈ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、前記シリコン基材の厚さは、1mm以上であることが好ましい。
【0016】
また、前記希釈ガスは水素ガスであることが好ましい。
【0017】
また、第1成膜工程は、更に、成膜容器に前記シランガスを供給し、第1成膜工程において前記成膜容器に供給されるシランガスの流量は、第2成膜工程において前記成膜容器に供給されるシランガスの流量よりも少ないことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、結晶性の高い微結晶シリコン薄膜を安定して基板上に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の薄膜形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施形態の薄膜形成方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
(薄膜形成装置の構成)
まず、図1を参照して、本実施形態の薄膜形成装置の構成を説明する。図1は、本実施形態の薄膜形成装置の一例を示す概略構成図である。本実施形態の薄膜形成装置10は、成膜容器内に成膜ガスを供給するとともにプラズマを発生させることができ、プラズマCVD法により基板S上に微結晶シリコンの薄膜を形成する。本実施形態では、プラズマの発生に平行平板電極を用いるが、この方式に限定されない。
本実施形態の薄膜形成装置10は、成膜容器20と、シリコン基材24と、排気部40と、高周波電源50と、シランガス供給部60と、希釈ガス供給部62と、制御部70と、を備える。
【0021】
成膜容器20は、基板支持部32と、上側電極36と、下側電極38と、を備える。基板支持部32の上面には下側電極38が設けられている。ここで、下側電極38は接地されている。基板Sは、成膜容器20の下方から基板支持部32を貫通するリフトピン44によって支持される。リフトピン44は昇降機構46によって上下方向に昇降可能であり、リフトピン44が基板Sを支持した状態で昇降機構46がリフトピン44を下方向に移動させることにより、基板Sは下側電極38の上に設置される。
また、基板支持部32の内部には加熱ヒータ34が設けられており、加熱ヒータ34により基板Sの温度を調整することができる。
【0022】
上側電極36は基板Sの上方に設けられ、高周波電源50と接続されている。高周波電源50が所定の周波数の高周波電流を供給することにより、上側電極36と下側電極38との間でプラズマが生成される。
また、高周波電源50は制御部70と接続されている。高周波電源50が上側電極36に高周波電流を供給するタイミングは、制御部70により制御される。
【0023】
また、成膜容器20は、基板Sの上方にシリコン基材24とを備える。シリコン基材24は、成膜容器20に設けられた支持部26によって支持されている。シリコン基材24は、例えば、単結晶シリコンや多結晶シリコンである。また、シリコン基材24の厚さは、例えば、1mm以上であることが好ましい。
【0024】
なお、図1に示される例では、シリコン基材24は、基板Sと上側電極36との間に設けられている例を説明したが、例えば、成膜容器20の側面に設けられていてもよい。
【0025】
排気部40は、排気管42を介して成膜容器20内に供給されたシランガスや希釈ガスなどの成膜ガスを排気する。排気部40は、例えば、ドライポンプである。排気部40が成膜容器20内を排気することにより、成膜ガスが成膜容器20内に供給されても、成膜容器20内の真空度は、0.1Pa〜100Pa程度に維持される。
【0026】
シランガス供給部60は、基板S上に形成する微結晶シリコン薄膜の原料であるシランガス(SiH)を成膜容器20の内部に供給する。また、シランガス供給部60は制御部70と接続されており、シランガス供給部60がシランガスを供給するタイミングやシランガスの流量は、制御部70により制御される。
【0027】
希釈ガス供給部62は、希釈ガスを成膜容器20の内部に供給する。希釈ガスは、例えば、水素ガスである。また、希釈ガス供給部62は制御部70と接続されており、希釈ガス供給部62が希釈ガスを供給するタイミングや希釈ガスの流量は、制御部70により制御される。
【0028】
制御部70は、高周波電源50が上側電極36に高周波電流を供給するタイミング、シランガス供給部60がシランガスを供給するタイミング、希釈ガス供給部62が希釈ガスを供給するタイミングを制御する。また、制御部70は、シランガス供給部60から供給されるシランガスの流量、希釈ガス供給部62から供給される希釈ガスの流量を制御する。
以上が本実施形態の薄膜形成装置10の概略構成である。
【0029】
(薄膜形成方法)
次に、図2を参照して、本実施形態の薄膜形成装置10を用いた薄膜形成方法について説明する。図2は、本実施形態の薄膜形成方法の一例を示すフローチャートである。
【0030】
まず、第1成膜工程が行われる(ステップS101)。第1成膜工程では、希釈ガス供給部62が成膜容器20の内部に希釈ガスとして水素ガスを供給する。例えば、水素ガスの流量は、200sccmである。
【0031】
次に、第1成膜工程中に高周波電源50が高周波電流を供給することにより、上側電極36と下側電極38との間でプラズマを発生する(ステップS102)。成膜容器20の内部で水素ガスのプラズマが発生することにより、シリコン基材24がスパッタされ、成膜容器20の内部空間にシリコンが供給され、シリコン雰囲気が形成される。
また、第1成膜工程だけでなく、後述する第2成膜工程中も、上側電極36と下側電極38との間でプラズマは発生し続ける。
【0032】
なお、本実施形態において、第1成膜工程では、シランガス供給部60は成膜容器20の内部にシランガスを供給しない。しかしながら、第1成膜工程において、加熱ヒータ34により加熱された基板Sの上には微結晶シリコンの核が形成される。これは、シリコン基材24や成膜容器20の内壁に堆積しているSi薄膜がプラズマによりスパッタされ、成膜容器20の内部空間がシリコン雰囲気になっていることによるものである。
本実施形態では、成膜容器20の内部にシリコン基材24が設けられているため、成膜容器20の内壁面に堆積しているSi薄膜の分布などにより、基板Sに形成される微結晶シリコン薄膜の特性が変化するのを抑制することができる。
【0033】
次に、プラズマの発生を維持した状態で、第2成膜工程が行われる(ステップS103)。第2成膜工程では、シランガス供給部60が成膜容器20の内部にシランガスを供給する。例えば、シランガスの流量は、10sccmである。また、第2成膜工程では、希釈ガス供給部62が成膜容器20の内部に水素ガスを供給する。例えば、水素ガスの流量は、10sccmである。
【0034】
上述したように、ステップS102において、基板Sの上に微結晶シリコンの核が形成されているため、ステップS103において、シリコンの核の上に結晶性の高い微結晶シリコンの膜が成膜される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の薄膜形成方法によれば、成膜容器20の内部にシリコン基材24が設けられているため、結晶性の高い微結晶シリコン薄膜を安定して基板S上に成膜することができる。
【0036】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、第1成膜工程において、シランガス供給部60が成膜容器20の内部にシランガスを供給しない例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。本実施形態では、第1成膜工程においても、シランガス供給部60が成膜容器20の内部にシランガスを供給する点が第1の実施形態と異なる。その他、薄膜形成装置10の構成は第1の実施形態と同様であるため、以下、本実施形態の薄膜形成方法について説明する。
【0037】
まず、第1成膜工程が行われる(ステップS101)。本実施形態の第1成膜工程では、シランガス供給部60が成膜容器20の内部にシランガスを供給する。例えば、シランガスの流量は5sccmである。また、希釈ガス供給部62が成膜容器20の内部に希釈ガスとして水素ガスを供給する。例えば、水素ガスの流量は、200sccmである。
【0038】
次に、第1成膜工程中に高周波電源50が高周波電流を供給することにより、上側電極36と下側電極38との間でプラズマを発生する(ステップS102)。成膜容器20の内部で水素ガスのプラズマが発生することによって、シリコン基材24がスパッタされ、成膜容器20の内部空間にシリコンが供給され、シリコン雰囲気が形成される。
【0039】
本実施形態においても、第1成膜工程において、加熱ヒータ34により加熱された基板Sの上には微結晶シリコンの核が形成される。これは、シリコン基材24や成膜容器20の内壁に堆積しているSi薄膜がプラズマによりスパッタされるものや、第1成膜工程においてシランガス供給部60から供給されるシランガスによるものである。
しかしながら、第1成膜工程において、加熱された基板Sの上に微結晶シリコンの核を効率よく形成するためには、シランガスと希釈ガスの合計流量に対するシランガスの流量の割合が小さいことが好ましい。例えば、第1成膜工程において、シランガスと希釈ガスの合計流量に対するシランガスの流量は、1%以上10%以下であることが好ましい。
【0040】
次に、プラズマの発生を維持した状態で、第2成膜工程が行われる(ステップS103)。第2成膜工程では、シランガス供給部60が成膜容器20の内部にシランガスを供給する。例えば、シランガスの流量は、10sccmである。また、第2成膜工程では、希釈ガス供給部62が成膜容器20の内部に水素ガスを供給する。例えば、水素ガスの流量は、10sccmである。
第2成膜工程において、結晶性の高い微結晶シリコンの膜を成膜するためには、シランガスと希釈ガスの合計流量に対するシランガスの流量の割合を第1成膜工程よりも大きくすることが好ましい。例えば、第2成膜工程において、シランガスと希釈ガスの合計流量に対するシランガスの流量は、10%以上50%以下であることが好ましい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の薄膜形成方法においても、成膜容器20の内部にシリコン基材24が設けられているため、結晶性の高い微結晶シリコン薄膜を安定して基板Sに成膜することができる。
【0042】
以上、本発明の薄膜形成装置、及び、薄膜形成方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0043】
10 薄膜形成装置
20 成膜容器
24 シリコン基材
26 支持部
32 基板支持部
34 加熱ヒータ
36 上側電極
38 下側電極
40 排気部
42 排気管
44 リフトピン
46 昇降機構
50 高周波電源
60 シランガス供給部
62 希釈ガス供給部
70 制御部
S 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、
成膜容器と、
前記薄膜の原料であるシランガスを前記成膜容器に供給するシランガス供給部と、
前記シランガスを希釈する希釈ガスを前記成膜容器に供給する希釈ガス供給部と、
前記成膜容器の内部にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記成膜容器の内部に配置されるシリコン基材と、
前記シランガス供給部が前記シランガスを供給するタイミング、及び、前記希釈ガス供給部が前記希釈ガスを供給するタイミングを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
前記成膜容器は、前記シリコン基材を支持する支持部を備える、請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記シリコン基材の厚さは、1mm以上である、請求項1又は2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記希釈ガスのみを前記成膜容器に供給した後に、前記シランガスと前記希釈ガスとを前記成膜容器に供給するように、前記シランガス供給部及び前記希釈ガス供給部を制御する、請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記希釈ガスは水素ガスである、請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
基板上に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
内部にシリコン基材が配置された成膜容器に希釈ガスを供給する第1成膜工程と、
前記成膜容器にシランガスと前記希釈ガスとを供給する第2成膜工程と、
前記成膜容器の内部に前記希釈ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生工程と、
を有することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項7】
前記シリコン基材の厚さは、1mm以上である、請求項6に記載の薄膜形成方法。
【請求項8】
前記希釈ガスは水素ガスである、請求項6又は7に記載の薄膜形成方法。
【請求項9】
第1成膜工程は、更に、成膜容器に前記シランガスを供給し、
第1成膜工程において前記成膜容器に供給されるシランガスの流量は、第2成膜工程において前記成膜容器に供給されるシランガスの流量よりも少ない、請求項6乃至8のいずれかに記載の薄膜形成方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−199473(P2012−199473A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63786(P2011−63786)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】