説明

表示パネルの製造方法

【課題】本発明は、一定の力でマスクと基板の間に力を加えてパターン精度の高い真空成膜を可能にすることを目的としている。
【解決手段】基板12とマスク10を重ねて配置する。基板12を、錘26の重さによってマスク10の方向に押圧して撓ませる。基板12の撓んだ部分によって、マスク10を押圧して撓ませる。撓んだ基板12と撓んだマスク10とを密着させて真空成膜を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクを使用した真空成膜方法が知られている(特許文献1参照)。例えば、有機エレクトロルミネッセンス表示パネルの製造プロセスでは、マスクを使用することで3色の発光層を別々に蒸着している。マスクは、成膜対象の基板と密着していることが望ましく、両者の間隔が大きくなるとマスクの開口よりも大きく蒸着されてしまって成膜の精度が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−059757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスクと基板とを密着させるために磁石を使用することが知られているが、磁力の影響でマスクパターンが変形するおそれがある。また、バネによって基板をマスクに押しつけると、バネは伸縮距離によって力が変化するため、基板又はマスクの種類によって調整する必要がある。
【0005】
本発明は、一定の力でマスクと基板の間に力を加えてパターン精度の高い真空成膜を可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る表示パネルの製造方法は、基板とマスクを重ねて配置すること、前記基板を、錘の重さによって前記マスクの方向に押圧して撓ませること、前記基板の撓んだ部分によって、前記マスクを押圧して撓ませること、及び、撓んだ前記基板と撓んだ前記マスクとを密着させて真空成膜を行うこと、を含むことを特徴とする。本発明によれば、基板とマスクを密着させる力は、錘の重さによって加えられ、その力が一定であることから、基板又はマスクの種類にかかわらず一定の力でマスクと基板の間に力を加えることができ、パターン精度の高い真空成膜が可能になる。
【0007】
(2)(1)に記載された表示パネルの製造方法において、前記マスクの一方の面は、マスク支持体によって支持され、前記マスクは、前記マスク支持体によって支持される第1マスク領域と、前記マスク支持体に支持されない第2マスク領域と、を有し、前記基板の一方の面は、前記マスクを介して、前記マスク支持体によって支持され、前記基板は、前記マスク支持体によって支持される第1基板領域と、前記マスク支持体に支持されない第2基板領域と、を有し、前記基板を、前記第2基板領域の少なくとも1箇所で押圧し、前記少なくとも1箇所は、前記第2基板領域の範囲内で、前記第1基板領域からの距離が最も離れた部分を含むことを特徴としてもよい。
【0008】
(3)(2)に記載された表示パネルの製造方法において、前記少なくとも1箇所は、第1箇所及び複数の第2箇所を含み、前記第1箇所は、前記第2基板領域の範囲内で、前記第1基板領域からの距離が最も離れた部分であり、前記複数の第2箇所は、それぞれ、前記第1箇所からの距離が等しい位置であり、前記第1箇所での前記錘は、それぞれの前記第2箇所での前記錘よりも重いことを特徴としてもよい。
【0009】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載された表示パネルの製造方法において、前記錘は、錘支持体によって、水平方向の移動が規制され、鉛直方向の移動が許容されることを特徴としてもよい。
【0010】
(5)(1)から(3)のいずれか1項に記載された表示パネルの製造方法において、前記錘は、線状に延びる形状であり、間隔をあけた2箇所で支持され、前記2箇所の間の部分が前記基板に接触することを特徴としてもよい。
【0011】
(6)(1)から(3)のいずれか1項に記載された表示パネルの製造方法において、前記錘は、錘支持体によって、水平に配置された軸の周りを回転可能に支持され、重力によって前記軸の周りを回転して、前記基板を押圧することを特徴としてもよい。
【0012】
(7)(1)から(3)のいずれか1項に記載された表示パネルの製造方法において、前記基板及び前記マスクは立てて配置され、前記錘は、錘支持体によって、水平方向及び鉛直方向の移動が規制され、鉛直線に対して斜め方向の移動が許容され、前記基板を斜めに押圧することを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態の第1変形例に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態の第2変形例に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態の第3変形例に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態の第4変形例に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。
【0016】
本実施の形態では、マスク10を使用して、基板12に対して真空成膜(蒸着、スパッタリング等)を行う。有機エレクトロルミネッセンス表示パネルの製造プロセスでは、有機色素材料の蒸着によって発光層を形成する。液晶表示パネルの製造プロセスでは、酸化インジウムスズ又は酸化インジウム亜鉛のスパッタリングによって透明電極を形成する。いずれの場合も、成膜しようとする領域が開口し、成膜しない領域を覆う形状のマスク10を使用し、パターニングしながら成膜を行う。真空成膜の対象となる基板12は、図示しない薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)が形成されたTFT基板である。
【0017】
基板12とマスク10は、重ねて配置する。一般的には、マスク10が基板12よりも大きい。実際には、基板12は、図示しない薄膜トランジスタ及びこれに接続された配線並びに絶縁膜などの膜応力によって歪んだ形状になっている。
【0018】
マスク10の一方の面は、マスク支持体14によって支持される。マスク10は、マスク支持体14によって支持される第1マスク領域16と、マスク支持体14に支持されない第2マスク領域18と、を有する。第2マスク領域18は、浮いた状態になっているので、重力で下方に撓む。
【0019】
基板12の一方の面(薄膜トランジスタ等が形成された面)は、下を向いて、マスク10を介して、マスク支持体14によって支持される。基板12は、マスク支持体14によって支持される第1基板領域20と、マスク支持体14に支持されない第2基板領域22と、を有する。第2基板領域22は、浮いた状態になっているので、重力で下方に撓む。
【0020】
本実施の形態では、押圧器24を使用する。押圧器24は、錘26を含む。錘26は、1つの第1錘28と、複数(偶数個)の第2錘30と、を含む。第1錘28は、第2錘30よりも重い。押圧器24は、錘支持体32を含む。錘支持体32は、錘26(第1錘28及び第2錘30)の、下端を避けた部分を支持する。錘26は、錘支持体32によって、水平方向の移動が規制され、鉛直方向の移動が許容される。
【0021】
具体的には、錘支持体32は、球状の第1錘28の直径よりも小さい第1穴34を有する。第1錘28は、その下端部が第1穴34の下から突出するように、第1穴34の内側で支持されている。錘支持体32は、球状の第2錘30の直径よりも小さい第2穴36を有する。第2錘30は、その下端部が第2穴36の下から突出するように、第2穴36の内側で支持されている。第1錘28の下端部が第1穴34から突出する長さは、第2錘30の下端部が第2穴36から突出する長さよりも長い。
【0022】
図2に示すように、基板12を、錘26の重さによってマスク10の方向に押圧して撓ませる。言い換えると、基板12を、第2基板領域22の少なくとも1箇所で押圧する。錘26と基板12は少なくとも1つの点状に接触する。基板12の第1基板領域20は、錘26によって押さえない。
【0023】
本実施の形態では、第1錘28を、基板12の第2基板領域22の、第1基板領域20からの距離が最も離れた第1箇所38(図2の例では基板12の中央部)に載せる。そして、第1錘28によって基板12を押圧する。押圧によって基板12が撓む。第1錘28の押圧力はその重さのみによるものなので、撓み量にかかわらず一定の大きさで加えられる。
【0024】
また、複数の第2錘30を複数の第2箇所40にそれぞれ載せる。複数の第2箇所40は、それぞれ、第2基板領域22の範囲内で、第1箇所38からの距離が等しい位置にある。そして、第2錘30によっても基板12を押圧する。第2錘30の押圧によっても基板12が撓む。第2錘30の押圧力はその重さのみによるものなので、撓み量にかかわらず一定の大きさで加えられる。第2錘30が第1錘28よりも軽いので、第2箇所40の撓み量は第1箇所38の撓み量よりも少ない。そのため、第2箇所40の撓みによって、第1箇所38を浮き上がらせる(撓みの反対方向に戻らせる)作用が小さい。
【0025】
基板12の撓んだ部分によって、マスク10を押圧して撓ませる。こうして、基板12及びマスク10の両方を撓ませる。そして、撓んだ基板12と撓んだマスク10とを密着させて真空成膜を行う。
【0026】
本実施の形態によれば、基板12とマスク10を密着させる力は、錘26の重さによって加えられ、その力が一定であることから、基板12又はマスク10の種類にかかわらず一定の力でマスク10と基板12の間に力を加えることができ、パターン精度の高い真空成膜が可能になる。
【0027】
[第1変形例]
図3は、本発明の実施の形態の第1変形例に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。図3に示す錘126は、チェーンであって、線状に延びる形状をしており、1つの平面(図3の紙面)に平行に屈曲するが、これに交差する他の平面に沿った方向には屈曲しない。錘126は、間隔をあけた2箇所で支持され、2箇所の間の部分が基板12に接触(線状に接触)する。上記実施の形態で説明した錘26の代わりに、図3に示す錘126を使用してもよい。
【0028】
[第2変形例]
図4は、本発明の実施の形態の第2変形例に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。図4に示す錘226は、ボールチェーンであって、線状に延びる形状をしており、自在に屈曲するようになっている。錘226は、間隔をあけた2箇所で支持され、2箇所の間の部分が基板12に接触(線状に接触)する。また、錘226は、基板12の表面上で屈曲させて配置することで、基板12の1箇所に加える押圧力を大きくすることができる。上記実施の形態で説明した錘26の代わりに、図4に示す錘226を使用してもよい。
【0029】
[第3変形例]
図5は、本発明の実施の形態の第3変形例に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。錘326は、錘支持体332によって、水平に配置された軸の周りを回転可能に支持されている。錘326は、重力によって軸の周りを回転して、基板12を押圧する。この変形例でも、錘326は、1つの第1錘328及び複数の第2錘330を含み、第1錘328が第2錘330よりも重い。上記実施の形態で説明した錘26の代わりに、図5に示す錘326を使用してもよい。
【0030】
[第4変形例]
図6は、本発明の実施の形態の第4変形例に係る表示パネルの製造方法を説明する図である。本変形例では、基板12及びマスク10を立てて配置して、撓んだ基板12と撓んだマスク10とを密着させて真空成膜を行う。第1錘428及び第2錘430を含む錘426は、錘支持体432によって、水平方向及び鉛直方向の移動が規制され、鉛直線に対して斜め方向の移動が許容され、基板12を斜めに押圧する。錘426及び錘支持体432のその他の詳細は、上記実施の形態で説明した内容が該当する。
【0031】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施の形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 マスク、12 基板、14 マスク支持体、16 第1マスク領域、18 第2マスク領域、20 第1基板領域、22 第2基板領域、24 押圧器、26 錘、28 第1錘、30 第2錘、32 錘支持体、34 第1穴、36 第2穴、38 第1箇所、40 第2箇所、126 錘、226 錘、326 錘、328 第1錘、330 第2錘、332 錘支持体、426 錘、428 第1錘、430 第2錘、432 錘支持体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板とマスクを重ねて配置すること、
前記基板を、錘の重さによって前記マスクの方向に押圧して撓ませること、
前記基板の撓んだ部分によって、前記マスクを押圧して撓ませること、及び、
撓んだ前記基板と撓んだ前記マスクとを密着させて真空成膜を行うこと、
を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された表示パネルの製造方法において、
前記マスクの一方の面は、マスク支持体によって支持され、
前記マスクは、前記マスク支持体によって支持される第1マスク領域と、前記マスク支持体に支持されない第2マスク領域と、を有し、
前記基板の一方の面は、前記マスクを介して、前記マスク支持体によって支持され、
前記基板は、前記マスク支持体によって支持される第1基板領域と、前記マスク支持体に支持されない第2基板領域と、を有し、
前記基板を、前記第2基板領域の少なくとも1箇所で押圧し、
前記少なくとも1箇所は、前記第2基板領域の範囲内で、前記第1基板領域からの距離が最も離れた部分を含むことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載された表示パネルの製造方法において、
前記少なくとも1箇所は、第1箇所及び複数の第2箇所を含み、
前記第1箇所は、前記第2基板領域の範囲内で、前記第1基板領域からの距離が最も離れた部分であり、
前記複数の第2箇所は、それぞれ、前記第1箇所からの距離が等しい位置であり、
前記第1箇所での前記錘は、それぞれの前記第2箇所での前記錘よりも重いことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された表示パネルの製造方法において、
前記錘は、錘支持体によって、水平方向の移動が規制され、鉛直方向の移動が許容されることを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載された表示パネルの製造方法において、
前記錘は、線状に延びる形状であり、間隔をあけた2箇所で支持され、前記2箇所の間の部分が前記基板に接触することを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載された表示パネルの製造方法において、
前記錘は、錘支持体によって、水平に配置された軸の周りを回転可能に支持され、重力によって前記軸の周りを回転して、前記基板を押圧することを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載された表示パネルの製造方法において、
前記基板及び前記マスクは立てて配置され、
前記錘は、錘支持体によって、水平方向及び鉛直方向の移動が規制され、鉛直線に対して斜め方向の移動が許容され、前記基板を斜めに押圧することを特徴とする表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−28172(P2011−28172A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176449(P2009−176449)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】