説明

表面の乾燥方法

洗浄液で円盤状物品の表面を覆い、これにより閉じられた液体層(L)が形成され、更に前記洗浄液を除去することを含んだ前記表面の乾燥方法であって、前記洗浄液が少なくも50重量%の水と少なくも5重量%の物質とを含み、この物質は水の表面エネルギーを低下させ、前記液体の除去が前記液体層の上への気体の吹き付けにより開始され、これにより閉じられた液体層が孤立した区域(A)において開かれる前記方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の乾燥方法に関する。より特別には、本発明は、洗浄液で表面を覆うこと及び前記洗浄液を排除することを含んだ円板状物品の表面の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円板状物品の表面の乾燥方法は、半導体工業において、生産工程中のシリコンウェーハの洗浄(例えば、フォトプロセス前の洗浄、CMP後の洗浄、及びプラズマ加工後の洗浄など)のために典型的に使用される。しかし、かかる乾燥方法は、CD、フォトマスク、レチクル、磁気ディスク又はフラットパネルディスプレイのようなその他の板状物品に適用することができる。半導体工業において使用されるときは、これは、ガラス基板(例えば、イン・シリコン・オン・インシュレーター(in silicon−on−insulator)工程、III−V基板(例えばGaAs)又は適宜のその他の基板或いは集積回路製造用のキャリアに対しても適用することができる。
【0003】
半導体工業においては種々の乾燥方法が知られている。多くの乾燥方法は、定められた液体/気体の境界層を使用する。かかる乾燥方法はマランゴニ乾燥方法として熟知されている。
【0004】
特許文献1は、組み合わせられたマランゴニ旋回乾燥方法を明らかにする。これにより、ウェーハ上に脱イオン水が分配され、同時に窒素と2プロパノ−ルとの混合物が分配される。窒素中の2プロパノールは、液体/気体の境界層に影響を与え表面勾配が生じ、これがウェーハ上に水滴を残すことなくウェーハの水が走る効果(マランゴニ効果)を導く。気体分配装置は液体分配装置に直接的に追随するが、液体分配装置はウェーハの中心から縁に動かされ、この間、ウェーハが旋回されそしてこれにより気体が液体をウェーハから直接移動させる。
【特許文献1】米国特許第5,882,433号 明細書
【特許文献2】米国特許第6,536,454B2号 明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この乾燥方法は、制御が極めて難しい。例えば、液体から気体分散装置までの距離、温度、気体の流量、液体の流量は厳密なパラメーターである。このため、特に直径300mmのような大きい半導体ウェーハのような円板状物品及びフラットパネルディスプレイ並びに例えばデバイスサイズが90nm 65nmの高集積化半導体ウェーハに対しては工程における許容範囲が非常に狭い。
【0006】
現在使用される方法の別の難点は、有機の、従って可燃性の溶剤蒸気が、高度に清浄化されたキャリアガスと必然的に混合することである。これは、一方では火災の危険な状況を導き、他方では乾燥気体を、達成し得たよりも純度の低いものにする。
【0007】
更に、溶剤の蒸気が気体配管中で凝結し、乾燥された基板表面に滴ることがあり、これは更に、特に基板が高集積化された構造化半導体ウェーハである場合にプロセス製品を悪化させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の目的は、より高度のプロセス能力で達成し得る、より良いプロセス結果を得る方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、高度に純化された気体内の不純物を避けることである。
【0010】
本発明は、円板状物品の表面を洗浄液で覆い、これにより閉じた液体層を形成し、そして前記洗浄液を除去することを含んだ前記表面の乾燥方法であって、前記洗浄液は少なくも50重量%の水と少なくも5重量%の物質とを含み、物質は水の表面エネルギーを低下させ、液体の前記除去は前記閉じた液体層の上に気体を吹き付けることにより開始され、これにより閉じた液体層が分離した区域において開かれる前記乾燥方法を提供することにより本発明の目的に合致する。
【0011】
かかる物質は表面活性物質と呼ぶことができる。しかし、ここでは、表面活性物質は水の表面エネルギー(表面張力)を下げ得る物質と定義する。これは、必ずしも石鹸のような表面活性剤又は界面活性剤でなければならないというわけではない。これは、単に極性又は無極性の端部を有する分子よりなることを意味するだけである。
【0012】
環境及び費用の点から、洗浄液は水と物質とだけを含むべきである。しかし、上述の基準を満たす限りその他の適宜の水溶液を使用することができる。
【0013】
少なくも50重量%の水の使用により、残りの50重量%が有機質溶剤のときでも、混合物が室温(25℃)以上の引火点を持つという有利な効果が導かれる。2プロピノール又はアセトンが使用された場合は、引火点を20℃以上に上げるために、水の含量を75%以上とすべきである。
【0014】
かかる新規な乾燥方法の使用により、驚くことに、1工程で円板状物品上に滴を少しも残さずに洗浄液を除去することができた。
【0015】
この乾燥方法は、半導体ウェーハの親水性の表面を乾燥できるだけでなく、親水性の区域と疎水性の区域とを有する構造化された表面も乾燥することができる。
【0016】
いかなる理論にも縛られることなく、洗浄液が表面上の液体薄膜(液体メニスカス(liquid meniscus))を形成し、これは容易には除去できないことが信じられる。前記液体薄膜上への気体の吹き付けが液体層を部分的に開く。そのとき、水と物質とよりなる混合物の特別な表面エネルギーのために、洗浄液は僅かな追加的支持(例えば、重力、遠心力、空気流、毛管現象の力)だけで表面から自動的に流れ去る。しかし、表面に液がないことを維持するために表面上に更に気体を吹き付けることが有益である。
【0017】
本発明の好ましい実施例においては、物質は、(例えば、アルコール(例えばエタノール、2プロパノール)、ケトン(例えば、アセトン)、及びこれらの混合物からなるグループから選出された)二極性有機溶剤である。
【0018】
20℃において15hPa以上の蒸気圧を有する二極性有機溶剤は、表面上に残りが付着してもこれが容易に蒸発するため有利に使用される。2プロパノールは表面活性物質として作用すると同時に残りが表面に付着した場合に容易に蒸発するので好ましい。
【0019】
気体は、いかなる気体でも使用することができるが(例えば清浄な空気)、希ガス、二酸化炭素、及び窒素のグループから選ばれた不活性気体よりなることが有利である。その理由は、これが火災の危険を更に制限しかつ不活性雰囲気で表面を覆いウオーターマークの形成を回避するためである。
【0020】
単に火災の危険を避けるためだけでなく、費用を最低にするためにも、気体は、(2プロパノールのような)いかなる表面活性物質からも実質的に制約されない。
【0021】
表面上に形成された前記閉じた液体層は、これを板で覆い、この板と円板状物品とにより間隙を形成し、この間隙内に液体層を保持することができる。この場合、液体は、液体層に気体を吹き付けることにより直接移動される。このとき、気体の流量は、液体が液滴を作る程大きく加速されないように正確に管理されねばならない。従って、液体層が気体に暴露される(例えば、液体層が雰囲気に暴露される)場合は、これが有用である。
【0022】
好ましい実施例においては、表面は、前記洗浄液が表面に適用されるより前に第1の洗浄液により洗浄される。この第1の洗浄液はいかなる表面活性物質からも実質的に制約されない。これが、追加の物質を使用することなく前に適用された液体の洗浄を助ける。
【0023】
なお別の実施例においては、前記洗浄は少なくも10重量%の物質(好ましくは少なくも15重量%の物質)を含む。
【0024】
気体は、単に気体を強力な形で供給する形式で表面に吹き付けることが有利である。これは、気体を供給するノズルの口の断面積が1cmより大きくない(好ましくは0.2cmより大きくない)ことを意味する。
【0025】
表面を覆っている液体層を開くためには最小の機械的撹拌が役立つため、気体の速度は3m/s以上、好ましくは10m/s以上とすべきである。
【0026】
一実施例においては、前記気体はノズルにより表面上に吹き付けられ、このノズルは表面の衝突区域に向けられ、そしてこの区域の中心は円板状物品の中心から30mm以内にある。
【0027】
乾燥方法の効率は、洗浄液が移動している時間の少なくも一部分の間、前記円板状物品が円板状物品の前記表面と実質的に垂直な軸線まわりに回転された場合に更に高くすることができる。
【0028】
本発明の更なる詳細は以下の詳細な例から明らかとなるであろう。
【0029】
構成された半導体ウェーハ(直径300mm)が旋回チャック上に置かれ、偏心的に動き得るピンによりしっかりと保持される。続いて、幾つかの異なった水性の洗浄液(例えば、SC1、SC2)がチャックとは反対側のウェーハ表面上に分配される。ウェーハ上に脱イオン水を毎分2リットルの流量で30秒間分配することにより、最後の洗浄液(例えば希釈された弗化水素酸(DHF))が直接移動される。脱イオン水を分配している間、ウェーハは約150rpmで旋回する。DHFは、最終洗浄液として、表面を疎水性に又は部分的に疎水性にする。
【0030】
脱イオン水の分配を中断することなしに脱イオン水の流れに2プロパノールが加えられ、これにより75重量%の水と25重量%との混合物を形成する。同時に旋回速度が50rpmに減速される。混合物は5秒間ウェーハの中心上に分配される。この直後に旋回速度が30rpmに減速され、そして、オリフィス直径が5mm(断面積0.2cm)のノズルから毎分20リットルの流量(気体速度は17m/s)でウェーハの中心に窒素が吹き付けられる。
【0031】
これにより、洗浄液の液体薄膜が開かれ、そして洗浄液は、ウェーハのゆっくりした旋
回により優しく保持されてウェーハから滑らかに流れ出る。
【0032】
旋回チャック又はウェーハ端部の斜面に残っているかもしれない残留洗浄液を除去するために、前回速度を再び1300rpmに加速し、すべての残留物(旋回チャック又はウェーハ端部の斜面の上の液滴)を振り飛ばす。
【0033】
別の例においては、窒素を吹き出すノズルは、1.5mmのオリフィス直径(断面積1.8mm)を有し、そして毎分5リットルの流量(気体速度47m/s)が使用される。
【0034】
図1から図4は上述の例を示す。
【0035】
図1において、洗浄液が液体分配装置1を経て回転中のウェーハ上に分配される。気体分配装置2は待機位置にある。洗浄液がウェーハを完全に覆い、これにより液体層Lを形成する。
【0036】
図2において、気体が気体分配装置2を経て吹き出され、そしてこれにより一つの小さい中央区域Aにおいて液体層が開かれる。液体の分配が平均時間で停止され、そして液体分配装置1が待機位置に置かれる。
【0037】
図3において、約10秒後の状態が示される。乾燥された区域が自動的に大きくなっている。気体はなお分配される(必須ではない)。
【0038】
図4において、ウェーハ面は全体的に乾燥される。
【0039】
別の例においては、ウェーハは、旋回チャック上に裏返しに保持され、これは、気体が下方からウェーハに供給されることを意味する。或いは、例えば特許文献2に明らかにされたような旋回チャックにより、同じ方法によりウェーハの両面を同時に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】液体分配装置によりウェーハ上に洗浄液を分配している状態を示す。
【図2】気体分配装置により気体を吹き付け、ウェーハ中心部において液体層が開かれた状態を示す。
【図3】時間の経過による乾燥区域の拡大を示す。
【図4】乾燥完了時の状態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状物品の表面を洗浄液で覆い、これにより閉じられた液体層が形成され、そして前記洗浄液を除去することを含んだ前記表面の乾燥方法であって、前記洗浄液は少なくも50重量%の水と少なくも5重量%の物質とを含み、物質は水の表面エネルギーを低下させ、液体の前記除去は前記閉じられた液体層の上に気体を吹き付けることにより開始され、これにより閉じられた液体層が分離した区域において開かれる前記乾燥方法。
【請求項2】
物質が、(例えば、アルコール(例えばエタノール、2プロパノール)、ケトン(例えば、アセトン)、及びこれらの混合物からなるグループから選出された)二極性有機溶剤である請求項1による方法。
【請求項3】
二極性有機溶剤が、20℃において15hPa以上の蒸気圧を有する請求項2による方法。
【請求項4】
気体が、希ガス、二酸化炭素、及び窒素のグループから選ばれた不活性気体よりなる請求項1による方法。
【請求項5】
気体は、いかなる表面活性物質からも実質的に制約されない請求項1による方法。
【請求項6】
表面上に形成された前記閉じられた液体層が気体に暴露される請求項1による方法。
【請求項7】
前記洗浄液が表面に適用される前に、前記表面が第1の洗浄液により洗浄され、前記第1の洗浄液がいかなる表面活性物質からも実質的に制約されない請求項1による方法。
【請求項8】
前記洗浄液が少なくも10重量%の物質を含む請求項1による方法。
【請求項9】
前記洗浄液が少なくも15重量%の物質を含む請求項7による方法。
【請求項10】
気体がノズルを経て表面に吹き付けられ、ノズルの口の断面積は1cmより大きくすべきでない請求項1による方法。
【請求項11】
前記気体は、円板状物品の中心から30mm以内の表面の衝突区域に向けられノズルにより表面上に吹き付けられる請求項9による方法。
【請求項12】
表面に吹き付けられる前記気体の気体速度が3m/s以上であるべき請求項1による方法。
【請求項13】
洗浄液が移動している時間の少なくも一部分の間、前記円板状物品が、円板状物品の前記表面と実質的に垂直な軸線まわりで回転される請求項1による方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−540994(P2008−540994A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510527(P2008−510527)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061522
【国際公開番号】WO2007/054377
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(507161226)エスイーゼツト・アクチエンゲゼルシヤフト (18)
【Fターム(参考)】