説明

表面実装型圧電振動デバイス

【課題】 小型化を実現するだけでなく、より安定した温度特性が得られ、より信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 セラミックパッケージ1に蓋5を被せてなる平面視矩形状の容器の内部に励振電極が形成された圧電振動板2を収納された表面実装型圧電振動デバイスであって、前記容器内部の圧電振動板を加熱するヒータ3と、容器の内部温度を検知するセンサ4とを具備し、前記セラミックパッケージにヒータを形成し、当該ヒータと熱的に接続され容器内部の圧電振動板を加熱する伝熱部12,13が容器の各辺に対応する側壁に各々1つ以上形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽付の表面実装型圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に示すように、外部の温度変化に影響することなく、圧電振動子を恒温槽内で温度制御することにより周波数の高安定化を行った恒温槽付圧電振動デバイスが従来から存在している。このような恒温槽付圧電振動デバイスでは周波数安定度として1×10-7〜1×10-10程度の圧電振動子で得られる最高水準の周波数安定度を得ることができるため、無線基地局や伝送ラインなどの基準周波数として利用されている。このような恒温槽付圧電振動デバイスは、単体で気密封止された圧電振動子に対して加熱手段やセンサを取り付けて恒温槽を構成するとともに、当該恒温槽とその他の回路部品を別個に回路基板に搭載して蓋を被せることで最終的な容器が得られるため、他の圧電振動デバイスに比べて大型化してしまうという問題点があった。大型の容器では温度を保持しようとする温度マスも低下するので、結果として加熱に要する消費電力も増加することも懸念されていた。
【0003】
このような恒温槽付圧電振動デバイスの分野でもさらなる小型化が求められているのが現状であり、特許文献3に示すような、圧電振動デバイスが提案されている。すなわち、セラミック積層基板からなる容器に対してセラミックヒータなどの加熱手段を一体形成し、このように構成された容器に対して圧電振動板などの圧電部品と発振回路部品を収納することで飛躍的な小型化を実現した構成のものが提案されている。
【特許文献1】特開平2−305004号
【特許文献2】特開2002−223122号
【特許文献3】特開2003−224422号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献3に開示する圧電振動デバイスでは容器内部の温度分布にバラツキが生じやすくなり、結果として恒温制御する際の精度にもバラツキが生じて周波数安定度に影響することが懸念される。すなわち、容器内部のうちセラミックヒータの存在する容器の底面側のみが加熱されるので、容器内部に配置される圧電部品、センサ、あるいは他の発振回路部品の間でも温度差が生じるだけでなく、セラミックヒータから最も離れた容器の上面側では外部環境温度の影響を受けやすくなる。つまり、容器内部の温度分布ばらつきが生じ、容器内部の温度勾配が周囲温度によって変化することがあった。特に、セラミック積層基板の容器では、素材自体の熱伝導効率と熱追従性が従来からの金属容器に比べて悪いので上述のような問題点がより顕著に現れやすくなる。結果として恒温槽付圧電振動デバイスの温度特性のさらなる高精度化を阻害するといった問題点があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型化を実現するだけでなく、より安定した温度特性が得られ、より信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は次の構成により実現をすることができる。
【0007】
すなわち請求項1に示すように、セラミックパッケージに蓋を被せてなる平面視矩形状の容器の内部に励振電極が形成された圧電振動板を収納された表面実装型圧電振動デバイスであって、前記容器内部の圧電振動板を加熱するヒータと、容器の内部温度を検知するセンサとを具備し、前記セラミックパッケージにヒータを形成し、当該ヒータと熱的に接続され容器内部の圧電振動板を加熱する伝熱部が容器の各辺に対応する側壁に各々1つ以上形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項1により、前記容器内部の圧電振動板を加熱するヒータと、容器の内部温度を検知するセンサとを具備し、前記セラミックパッケージにヒータを形成し、当該ヒータと熱的に接続され容器内部の圧電振動板を加熱する伝熱部が容器の各辺に対応する側壁に各々1つ以上形成されているので、セラミックパッケージに蓋を被せてなる容器を用いて飛躍的な小型化・低背化が実現されるとともに、恒温槽の機能が加味された表面実装型圧電振動デバイスが得られる。加えて、ヒータの熱が伝熱部により容器内部全体に伝播し加熱するため、外部環境温度の影響を受けることなく、容器内部の温度分布にバラツキを与えることなく、恒温制御する際の温度精度も高めることができる。また、セラミックパッケージ側壁に伝熱部があることでセラミックパッケージ側壁からの熱放射を抑制でき、容器内部恒温制御が容易になる。結果として、小型化を実現するだけでなく、より安定した温度特性が得られる、より信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスを提供するができる。
【0009】
また請求項2に示すように、前記伝熱部と熱的に接続された熱伝導性の高い蓋、または前記伝熱部と熱的に接続された熱伝導膜が形成された蓋を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項2により、上述の作用効果に加え、蓋に補助ヒータとしての加熱機能を具備させることができる。つまり、ヒータの熱が伝熱部と蓋によって容器内全体をより均一に伝播し加熱することができるので、外部環境温度の影響をより一層受けることなく、容器内部の温度分布にバラツキを与えることなく、恒温制御する際の温度精度も飛躍的に高めることができる。前記熱伝導性の高い蓋として金属部材などを用いることで、加熱効率の高い安価な補助ヒータが得られる。前記熱伝導性の低い蓋ではメタライズ技術や厚膜印刷技術などにより熱伝導膜を構成することで、設計自由度の高い安価な補助ヒータが得られる。特に、これらの金属部材の蓋と伝熱部、あるいは蓋の熱伝導膜と伝熱部とは溶接やろう接などによりお互いに金属間接合させることで、熱伝播に損失を生じることがなくなりより好ましい。
【0011】
上述の各構成において、前記蓋が多層部材からなり外表面側の部材層が内表面側の部材層より熱伝導性が低い材質により構成してもよい。これにより、熱伝導性の低い外表面側の部材層で容器外部への放熱を遮断あるいは抑制しながら、熱伝導性の高い内表面側の部材層で容器内部への加熱を促進することができるので、加熱効率を高め省電力化が実現できる。例えば、蓋を金属部材で構成する場合、コバール部材(19.7W/m・K程度、室温)の内側に銅部材(403W/m・K程度、0℃)が積層されたクラッド部材を用いるとよい。蓋をセラミック部材(12W/m・K程度、室温)で構成する場合、当該セラミックパッケージに対してタングステン(177W/m・K程度、0℃)やモリブデン(139W/m・K程度、0℃)・Auメッキ(319W/m・K程度、0℃)等のメタライズ部材を形成するだけでもよく、より好ましくはメタライズ部材の上面に熱伝導性の高い金属膜を形成するとよい。また、セラミックパッケージやガラスパッケージ(0.55〜0.75W/m・K程度、室温)に対して銅の厚膜印刷部材(403W/m・K程度、0℃)を形成してもよい。
【0012】
また請求項3に示すように、上述の構成に加え、前記ヒータが膜抵抗体からなることを特徴とする。
【0013】
請求項3により、上述の作用効果に加え、前記ヒータが膜抵抗体からなることで、メタライズ技術を活用してセラミックパッケージに対するヒータの取り付けの自由度と低背化が飛躍的に向上する。また、セラミックヒータのようにヒータ線を引き回す必要がないため、より薄くかつ容易に配線することができる。
【0014】
また請求項4に示すように、上述の構成に加え、前記圧電振動板を発振子として圧電発振回路を構成する集積回路素子がセラミックパッケージに収納されており、当該集積回路素子にヒータが一体で構成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項4により、上述の作用効果に加え、集積回路素子にヒータを一体形成することで、部品点数を減らし、小型化、低背化の実現と省電力が可能となる。特に、通電されて発振している際の集積回路素子は単体で高温に発熱することが知られており、集積回路素子自体の発熱と当該集積回路素子に組み込まれたヒータの発熱を同時に利用することで、加熱効率が飛躍的に高まり、より短時間かつ省電力での加熱が可能となる。加えて、前記集積回路素子が加熱開始領域として容器の一箇所のみに配置されることになるので、集積回路素子とヒータとが容器の別位置に配置される構成に比べて加熱要素が分散することがなく、容器内部の温度勾配の変動を低減させることができる。結果として、温度特性の調整が行いやすくなり、より安定した温度特性が得られる。また、集積回路素子の温度を一定温度に保つことができるので、より安定した温度特性が得られる。
【0016】
上述の特許請求項4の構成に加えて、前記集積回路素子に容器の内部温度を検知するセンサも一体で構成してもよい。これにより、部品点数を減らし、さらなる小型化、低背化の実現と省電力化が可能となる。
【0017】
また請求項5に示すように、上記構成に加え、前記セラミックパッケージの上面には前記圧電振動板を支持する搭載部が形成されており、当該搭載部の真下にセンサを配置してなることを特徴とする。
【0018】
請求項5により、上述の作用効果に加え、前記セラミックパッケージの上面には前記圧電振動板を支持する搭載部が形成されており、当該搭載部の真下にセンサを配置してなることで、圧電振動板の振動を阻害することなく圧電振動板に最も近接した状態で温度管理が行えるので、恒温制御する際の温度精度もより高めることができる。
【0019】
上述の各構成において、セラミックパッケージまたは蓋の側壁に設けられた伝熱部をスルーホール、もしくはキャスタレーションの内部に形成されたメタライズ部材で構成してもよい。これにより、セラミックの積層技術とメタライズ技術を用いて極めて容易かつ安価に伝熱部を構成することができる。
【0020】
上述の各構成において、セラミックパッケージまたは蓋の側壁に設けられた伝熱部をスルーホール、もしくはキャスタレーションの内部に形成された銅またはアルミからなるバルク部材で構成してもよい。これにより、極めて伝熱性が高くかつ加熱効率の高い伝熱部を構成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、小型化を実現するだけでなく、より安定した温度特性が得られるより信頼性の高い表面実装型圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。本発明による第1の実施形態につき表面実装型圧電振動子を例にとり図1、図2とともに説明する。図1は本発明の第1実施の形態を示す断面図である。図2(a)は図1の平面図を示し、図2(b)と図2(c)は図2(a)の変形例を示す平面図である。
【0023】
表面実装型圧電振動子は、上部が開口した凹部を有するセラミック基板(セラミックパッケージ)1と、当該セラミック基板の中に収納される圧電振動板2と、前記圧電振動板を加熱するヒータ3と、当該ヒータの温度を検知するセンサ4と、前記セラミック基板の開口部に接合される蓋5とからなる。
【0024】
セラミック基板1は全体として直方体で、アルミナ等のセラミックとタングステンやモリブデン等の導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形の収納部10を有する構成である。収納部周囲には堤部11が形成されており、堤部11の上面は平坦であり、当該堤部上に図示しない封止部材や金属層が形成されている。本形態では、例えば、金属層としてタングステンやモリブデン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。
【0025】
セラミック基板1内部において、後述する圧電振動板2の端部を保持する保持台10aと、保持台10aの上面には圧電振動板と接続される図示しない配線パターンが形成されている。当該配線パターンは図示しない導電ビアやキャスタレーションにより反対面にあるセラミック基板下面に形成された図示しない外部接続端子電極にそれぞれ入出力端子として引き出される。このような構成のセラミック基板は周知のセラミック積層技術やメタライズ技術を用いて形成され、配線パターンはタングステンやモリブデン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。
【0026】
前記配線パターンの上方には圧電振動板2が搭載される。圧電振動板2は、図示しない励振電極と引出電極が形成されたATカットやSCカットなどの水晶振動板であり、これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。圧電振動板2とセラミック基板1との接合は、図示しない金属バンプやろう材・接着剤などの導電性接合材を介在させて前記配線パターンと電気的機械的に接合される。
【0027】
セラミック基板を気密封止する蓋5は、金属部材やセラミック部材・ガラス部材や水晶部材などからなり、封止構造に応じて材料が使い分けられる。本形態では、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材等の封止材が形成された金属部材の構成のものを用いた。より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、金メッキ層の順の多層構成であり、金メッキ層がセラミック基板の前記金属層と接合される構成となる。蓋5の平面視外形はセラミック基板1の当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。なお、金属部材の場合、金メッキに限らず他の封止用ろう材で構成してもよい。
【0028】
セラミック基板1の収納部10に圧電振動板2を格納し、前記蓋5にて被覆して気密封止を行う。本実施の形態においては、セラミック基板1の堤部上面の金メッキ層と蓋5の金メッキ層とを熱拡散接合することで気密封止しているので、ろう材等の溶融ガスが発生することのないより高安定で高精度な圧電振動デバイスの気密封止を実現している。なお、金属部材からなる蓋の封止形態として、金の熱拡散接合に限ることなく、シーム溶接、レーザや電子ビームなどのビーム溶接による封止や、金錫などのろう材封止による雰囲気加熱封止であってもよい。但し、高安定で高精度向けの圧電振動デバイスの気密封止では溶融ガス抜きを実施することが好ましい。
【0029】
本発明では上述のようなセラミック基板1と蓋5とからなる容器内部の圧電振動板2を加熱するヒータ3と、容器の内部温度を検知するセンサ4とを具備しており、前記セラミック基板1にヒータ3を形成し、当該ヒータ3と熱的に接続され容器内部の圧電振動板2を加熱する第1の伝熱部12が、セラミック基板の底面、内部表面、またはセラミック基板の積層間のいずれかにおいて形成されているとともに、当該第1の伝熱部12と熱的に接続され容器内部の圧電振動板2を加熱する第2の伝熱部13が容器の各辺に対応する側壁に各々1つ以上形成していることが特徴的な構成となっている。以下、本発明の特徴点を中心に図面とともに説明する。
【0030】
図1に示すようにヒータ3は厚膜印刷抵抗などの膜抵抗体を印刷形成しており、メタライズ部材などからなる第1の伝熱部12とともに前記セラミック基板1の積層間に形成されている。この膜抵抗体によるヒータ3と第1の伝熱部12は前記セラミック基板1の積層間に限ることなく、セラミック基板の底面、内部表面(収納部の上面)のいずれかに形成することができる。前記第1の伝熱部12は各4辺の堤部11の領域まで引き出されており、各辺の堤部に1つ以上形成されメタライズ部材などからなる第2の伝熱部13に熱的に接続されている。本形態の第2の伝熱部13は、例えば、図2(a)に示すように各辺の堤部内部を上下に貫通する複数のビアにより構成している。堤部内部に第2の伝熱部を構成することで、容器外部への熱的な損失が抑えられ、かつ容器内部の各種配線パターンの設計を妨げないものとできる。
【0031】
なお、第2の伝熱部13は、図2(b)に示すように各辺の堤部の外端部を上下方向に伸長する複数のキャスタレーションの表面に構成したり、図2(c)に示すように各辺の堤部の内端部を上下方向に伸長する幅広の1つのキャスタレーションの表面に構成してもよい。さらに堤部の内部と外端・内端のいずれか2つ以上を組み合わせて構成してもよい。第2の伝熱部はできるだけ表面積を大きくし、且つ容器の内側に配置した方がより熱放射を少なくすることができる点で望ましい。特に、図2(c)では各辺の堤部の内端部に幅広の第2の伝熱部を構成しているので、容器外部への熱的な損失が抑えられ、かつ容器内部への加熱効率が最も高くすることができる。
【0032】
前記第1の伝熱部12や第2の伝熱部13は、例えばタングステンやモリブデンなどのメタライズ部材で構成しており、厚膜印刷技術やセラミック積層技術を活用したメタライズ技術により形成することができる。なお、各伝熱部のメタライズ材料は銅や金等の伝熱効果の高い材料に変更したり、アルミや銀等の伝熱性の高い材料を含有させてもよい、さらに第1の伝熱部の上面には金や銅等の伝熱効果の高い金属膜を積層してもよい。
【0033】
センサ4は例えばチップ型のサーミスタからなり、前記セラミック基板1の底面側の凹部14に密着配置しており、伝熱性の高いシリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂などの熱伝導性樹脂Nにより当該センサ4の周囲と凹部14の一部を被膜形成している。このため、周辺環境温度の変動の影響を抑制することができ、容器内部の温度差をなくしたより正確な温度検知が行える。なお、センサ4は、図3に示すように、前記セラミック基板の保持台10a(前記圧電振動板を支持する搭載部)の真下に配置するとより好ましい。圧電振動板2の振動を阻害することなく圧電振動板2に最も近接した状態で温度管理が行えるので、恒温制御する際の温度精度もより高めることができる。
【0034】
本発明の実施形態では、これらの構成に加えて前記堤11の上面に第2の伝熱部13が露出しており、気密封止の際に銀ろう材が溶融接合されることで金属部材よりなる蓋5とお互いに金属間接合しており熱的に接続されている。つまり、前記第2の伝熱部13の熱が前記熱伝導性の高い金属部材の蓋5に伝わることで容器内部の圧電振動板2を加熱することができる。また本形態では、前記金属部材の蓋5が多層部材からなり、例えば、コバール等からなるコア材の容器内側に銅層を構成している。すなわち、外表面側のコバール部材層(19.7W/m・K程度、室温)が内表面側の銅部材層(403W/m・K程度、0℃)より熱伝導性が低い材質により構成されているため、熱伝導性の低い外表面側のコバール部材層で容器外部への放熱を遮断あるいは抑制しながら、熱伝導性の高い内表面側の銅部材層で容器内部への加熱を促進することができる。結果として、加熱効率を高め省電力化が実現できる。以上により、本形態による表面実装型圧電振動子(表面実装型圧電振動デバイス)の完成となる。
【0035】
本発明の第1の実施形態により、収納部を有するセラミック基板1に蓋5を被せてなる容器を用いて飛躍的な小型化・低背化が実現されるとともに恒温槽の機能が加味された表面実装型圧電振動デバイスが得られる。加えて、ヒータ3の熱が第1の伝熱部12と第2の伝熱部13・蓋5によって容器内全体を均一に伝播し加熱することができるので、外部環境温度の影響を受けることなく、容器内部の温度分布にバラツキを与えることなく、恒温制御する際の温度精度も飛躍的に高めることができる。加えて、前記ヒータ3が膜抵抗体からなることで、セラミック基板1に対するヒータ3の取り付けの自由度と低背化が飛躍的に向上する。
【0036】
図4は本発明の実施形態の変形例を示している。この変形例では、ヒータとして膜抵抗体を用いたものに限ることとなく、チップ抵抗体からなるヒータ3を用いている。前記セラミック基板1の底面側の凹部14にチップ抵抗体からなるヒータ3が密着配置しており、伝熱性の高いシリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂などの熱伝導性樹脂Nにより当該ヒータ3の周囲と凹部14の一部を被膜形成している。このため、周辺環境温度の変動の影響を抑制することができ、より広範囲かつ均一な加熱が実現でき、容器内部の温度勾配の変動を低減させることができる。
【0037】
加えて、図4の変形例では、セラミック基板を気密封止する蓋5は、セラミック部材・ガラス部材などの熱伝導性の低い蓋からなり、例えば容器内面側にメタライズ技術や厚膜印刷技術などにより熱伝導膜51を構成している。例えば、蓋5をセラミック部材(12W/m・K程度、室温)で構成する場合、当該セラミック基板の蓋に対してタングステン(177W/m・K程度、0℃)やモリブデン(139W/m・K程度、0℃)等のメタライズ部材を形成するだけでもよく、より好ましくはメタライズ部材の上面にAu、等の熱伝導性の高い金属膜を形成してもよい。また、セラミック基板やガラス基板(0.55〜0.75W/m・K程度、室温)に対して銅の厚膜印刷部材(403W/m・K程度、0℃)を形成してもよい。
【0038】
次に、本発明による第2の実施形態につき表面実装型圧電発振器を例にとり図5とともに説明する。図5は本発明の第2の実施形態を示す断面図である。なお、上記第1の実施形態と同様の部分は同番号を付すとともに説明の一部を割愛する。
【0039】
表面実装型圧電発振器、上部が開口した凹部を有するセラミック基板(セラミックパッケージ)1と、当該セラミック基板の中に収納される集積回路素子6と、同じく当該セラミック基板中の上部に収納される圧電振動板2と、前記圧電振動板を加熱するヒータ3と、当該ヒータの温度を検知するセンサ4と、前記セラミック基板の開口部に接合される蓋5とからなる。
【0040】
セラミック基板1は全体として直方体で、アルミナ等のセラミックとタングステンやモリブデン等の導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形の収納部10を有する構成である。収納部10は下部側に第1の収納部10bと上部側に第2の収納部10cが形成されている。堤部11の上面は平坦であり、当該堤部上に図示しない封止部材や金属層が形成されている。
【0041】
セラミック基板1内部において、下方面には前述のとおり集積回路素子6を収納する第1の収納部10bと、後述する圧電振動板の一端を保持する保持台10aが形成されており、前記第1の収納部10bの上方には、保持台10aに搭載された圧電振動板2を収納する第2の収納部10cが形成されている。
【0042】
セラミック基板1内部において、前記保持台10aの上面には圧電振動板2と接続される図示しない配線パターンが形成され、前記第1の収納部10bの上面部分には、後述する集積回路素子6と接続される図示しない配線パターンと第1の伝熱部12が形成されている。前記第1の伝熱部12は各4辺の堤部11の領域まで引き出されており、各辺の堤部に1つ以上形成されメタライズ部材などからなる第2の伝熱部13に熱的に接続されている。本形態の第2の伝熱部13は、例えば、各辺の堤部内部を上下に貫通する1つ以上のビアにより構成することで得られる。前記各配線パターンは図示しない導電ビアやキャスタレーションにより必要な接続がなされ反対面にあるセラミック基板下面に形成された図示しない外部接続端子電極にそれぞれ入出力端子として引き出される。これらの配線パターン、前記第1の伝熱部12、および第2の伝熱部13は、例えばタングステンやモリブデンなどのメタライズ部材で構成しており、厚膜印刷技術やセラミック積層技術を活用したメタライズ技術により形成することができる。なお、配線パターンはメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成であり、各伝熱部はメタライズ材料に銅や金等の伝熱効果の高い材料に変更したり、アルミや銀等の伝熱性の高い材料を含有させてもよい、さらに第1の伝熱部の上面には金や銅等の伝熱効果の高い金属膜を積層してもよい。
【0043】
前記下部収納部に搭載される集積回路素子6は、圧電振動板2とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、全体として直方体形状である。その下側の能動回路面には図示しない接続端子が複数形成されている。ヒータ3は薄膜印刷抵抗などの膜抵抗体からなり必要な配線パターン(図示せず)とともにICの非能動面側に形成されている。センサ4はサーミスタなどからなりICの一部に形成されている。前記セラミック基板1の複数の配線パターンと集積回路素子6の接続端子との接合は、周知のフェイスダウンボンディング技術により電気的機械的な接合が行われるが、必要に応じて集積回路素子6と第1の収納部10bの底面間には、絶縁性樹脂材によるアンダーフィルを形成してもよい。アンダーフィルの形成により集積回路素子6の機械的接合強度を向上させることができる。
【0044】
前記集積回路素子6の上方には所定の間隔を持って圧電振動板2が前記保持台10aに搭載される。
【0045】
セラミック基板を気密封止する蓋5は、金属部材やセラミック部材・ガラス部材などのからなり、封止構造に応じて材料が使い分けられる。本形態では、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材等の封止材が形成された金属部材の構成のものを用いた。より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成であり、銀ろう層がセラミック基板の前記金属層と接合される構成となる。
【0046】
セラミック基板1の収納部10に集積回路素子6と圧電振動板2を格納し、前記蓋5にて被覆し、蓋の封止材を溶融硬化させ、気密封止を行う。本実施の形態においては、封止用の金属リングを用いないシーム溶接による気密封止を行っており、前記金属蓋の長辺と短辺の稜部に沿ってシームローラを走行させることで、蓋に形成された銀ろうとセラミック基板の金属層を溶接させ、気密封止が行われる。なお、金属部材からなる蓋の封止形態として、シーム溶接に限ることなく、レーザや電子ビームなどのビーム溶接による封止や、金錫などのろう材封止による雰囲気加熱封止であってもよい。
【0047】
本発明の実施形態では、これらの構成に加えて前記堤の上面に伝熱部13を露出しており、気密封止の際に銀ろう材が溶融接合されることで金属部材よりなる蓋5とお互いに金属間接合しており熱的に接続されている。つまり、前記第2の伝熱部13の熱が前記熱伝導性の高い金属部材の蓋5伝わることで容器内部の圧電振動板2を加熱することができる。また本形態では、前記金属部材の蓋5が多層部材からなり、例えば、コバール等からなるコア材の容器内側に銅層を構成している。すなわち、外表面側のコバール部材層(19.7W/m・K程度、室温)が内表面側の銅部材層(403W/m・K程度、0℃)より熱伝導性が低い材質により構成されているため、熱伝導性の低い外表面側のコバール部材層で容器外部への放熱を遮断あるいは抑制しながら、熱伝導性の高い内表面側の銅部材層で容器内部への加熱を促進することができる。結果として、加熱効率を高め省電力化が実現できる。以上により、本形態による表面実装型圧電発振器(表面実装型圧電振動デバイス)の完成となる。
【0048】
なお、上記第2の実施形態では、ICにヒータ3とセンサ4を内蔵したものを説明しているが、センサについてはセラミック基板に別途取り付けてもよい。例えば、セラミック基板の底部、またはセラミック基板の内部に別途取り付けてもよい。
【0049】
本発明の第2の実施形態により、セラミック基板1に蓋5を被せてなる容器を用いて飛躍的な小型化・低背化が実現されるとともに恒温槽の機能が加味された表面実装型圧電振動デバイスが得られる。加えて、ヒータ3の熱が第1の伝熱部12と第2の伝熱部13・蓋5によって容器内全体を均一に伝播し加熱することができるので、外部環境温度の影響を受けることなく、容器内部の温度分布にバラツキを与えることなく、恒温制御する際の温度精度も飛躍的に高めることができる。加えて、前記ヒータ3が膜抵抗体からなることで、セラミック基板1に対するヒータ3の取り付けの自由度と低背化が飛躍的に向上する。加えて、集積回路素子6に膜抵抗体を組み込みヒータ3として機能させることで、部品点数を減らし、小型化の実現と省電力が可能となる。特に、通電されて発振している際の集積回路素子は単体で高温に発熱することが知られており、集積回路素子自体の発熱と当該集積回路素子に組み込まれた膜抵抗体の発熱を同時に利用することで、加熱効率が飛躍的に高まり、より短時間かつ省電力での加熱が可能となる。加えて、前記集積回路素子6が加熱開始領域として容器の一箇所のみに配置されることになるので、集積回路素子6とヒータ3とが容器の別位置に配置される構成に比べて加熱要素が分散することがなく、容器内部の温度勾配の変動を低減させることができる。結果として温度特性の調整が行いやすくなり、より安定した温度特性が得られる。さらに、前記集積回路素子6に容器の内部温度を検知するセンサ4も一体で構成しているので、部品点数を減らし、さらなる小型化の実現と省電力化が可能となる。
【0050】
上記実施形態では、蓋5にもヒータ3の熱が伝わり容器内部の圧電振動板2を加熱するように構成しているが、必ずしも蓋5に加熱機能を具備させる必要はない。加えて、ヒータ3の熱が伝わり蓋自身あるいは蓋に形成された熱伝導膜に伝わり容器内部の圧電振動板2を加熱するように構成しているが、蓋5にヒータ3を加味構成したものであってもよい。また、前記第2の伝熱部13としてメタライズで形成したものを説明したが、セラミック基板1または蓋5の側壁に設けられたスルーホール、もしくはキャスタレーションの内部に銅またはアルミからなるバルク部材を埋設して構成してもよい。この構成では極めて伝熱性が高くかつ加熱効率の高い伝熱部を得ることができる。前記第1の伝熱部12としてメタライズで形成したものを説明したが、銅やアルミなどの熱伝導性の高い厚膜を印刷形成してもよい。
【0051】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できるので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の平面図とその変形例を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 セラミック基板
2 圧電振動板
3 ヒータ
4 センサ
5 蓋
6 集積回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックパッケージに蓋を被せてなる平面視矩形状の容器の内部に励振電極が形成された圧電振動板を収納された表面実装型圧電振動デバイスであって、
前記容器内部の圧電振動板を加熱するヒータと、容器の内部温度を検知するセンサとを具備し、
前記セラミックパッケージにヒータを形成し、当該ヒータと熱的に接続され容器内部の圧電振動板を加熱する伝熱部が容器の各辺に対応する側壁に各々1つ以上形成されたことを特徴とする表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記伝熱部と熱的に接続された熱伝導性の高い蓋、または前記伝熱部と熱的に接続された熱伝導膜が形成された蓋を具備することを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記ヒータが膜抵抗体からなることを特徴とする特許請求項1または特許請求項2記載の表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記圧電振動板を発振子として圧電発振回路を構成する集積回路素子がセラミックパッケージに収納されており、当該集積回路素子にヒータが一体で構成されたことを特徴とする特許請求項1または特許請求項2記載の表面実装型圧電振動デバイス。
【請求項5】
前記セラミックパッケージの上面には前記圧電振動板を支持する搭載部が形成されており、当該搭載部の真下に前記センサを配置してなることを特徴とする特許請求項1乃至4記載の表面実装型圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−5117(P2009−5117A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164473(P2007−164473)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】