説明

表面検査装置および表面検査方法

【課題】移動物体を簡易な構成で正確に表面検査する表面検査装置を得ること。
【解決手段】移動物体を相対移動させながら移動物体の各部分を順次撮像し、撮像した各部分の画像を組み合わせることによって得られる移動物体の画像に基づいて、移動物体の表面検査を行う表面検査装置において、移動物体の実寸法および移動物体の画像上での画素数に基づいて、移動物体を撮像した際に移動物体の速度変化に起因して変化する画像上での伸縮率を、移動物体の所定領域毎に算出する伸縮率算出部12と、伸縮率に基づいて、移動物体の各領域の画像を移動物体の実寸法に応じた比率の画像に修正する画像修正部13と、修正後の画像を用いて移動物体の表面異常を抽出するとともに、抽出した表面異常部分の画像上での画素数に基づいて、抽出した表面異常部分の実寸法を算出する表面検査部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動物体の表面検査を行う表面検査装置および表面検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、列車の車両などの大型の移動物体は、移動物体の表面積が大きいので、その表面検査には多大な手間と労力を要していた。このため、移動物体の表面を容易に表面検査するための技術の開発が進められている。
【0003】
移動物体の表面を検査する方法として、例えばラインセンサカメラによって移動物体の表面を撮像し、撮像した画像に基づいて移動物体の表面検査(欠陥検出など)を行う方法がある。この方法では、画像を撮像するタイミング(サンプリング間隔)が一定であるので、一定の速度で移動している移動物体を撮像すると、移動物体の各部分は一定の伸縮率で撮像されることとなる。このため、移動物体の画像が歪むことはない。
【0004】
一方、速度が変化している移動物体をラインセンサカメラによって撮像すると、移動物体の画像は、移動物体の移動速度に反比例した伸縮率で移動速度方向に伸縮された画像となる。すなわち、速度が変化している移動物体を撮像すると、移動物体の速度が速い時に撮像した部分の画像と、移動物体の速度が遅い時に撮像した部分の画像と、で画像の伸縮率が異なる。このため、異なる速度で撮像された各画像に基づいて移動物体の表面検査を行うと、移動物体の表面検査を正しく行うことができない。
【0005】
特許文献1に記載の表面検査装置では、移動する車両外壁をラインセンサカメラによって撮影し、画像処理装置が、ラインセンサカメラからの撮影の入力信号を一定の時間ごとに記録して2次元画像データとして蓄積している。そして、画像処理装置が、車両外壁の移動速度、被撮影面の角度を考慮して平滑化フィルターのサイズを調整し、抽出したキズや汚れなどの欠陥部分の面積、輝度体積、数量を考慮して車両外壁の表面検査を行なっている。
【0006】
また、特許文献2に記載の移動物体の通過検出装置では、車両の台車に取付けられた2つの車輪の通過を電磁センサで検出し、その時間と車輪間の距離から通過速度を算出している。
【0007】
【特許文献1】特開2005−43222号公報
【特許文献2】特許第3457183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記前者の従来の技術では、画像処理装置とは別に、移動速度を検出するための装置が必要となるので、簡易な構成で表面検査を行うことができないという問題があった。
【0009】
また、上記後者の従来の技術では、遠く離れた2箇所に配置された車輪の通過を検出しているので、通過する車両の速度が急に変化する場合には、正確な通過速度を検出できなかった。例えば、第1組目の車輪の通過から、第2組目の車輪の通過までの間に速度が増減しても、速度の詳細な増減の変化を検出することはできない。このため、正確な速度に基づいて正確な表面検査を行うことはできないという問題があった。また、車両の速度を検出するための装置が必要となるので、簡易な構成で表面検査を行うことができないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、移動物体を簡易な構成で正確に表面検査する表面検査装置および表面検査方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、移動物体を相対移動させながら前記移動物体の各部分を順次撮像し、撮像した各部分の画像を組み合わせることによって得られる前記移動物体の画像に基づいて、前記移動物体の表面検査を行う表面検査装置において、前記移動物体の実寸法および前記移動物体の画像上での画素数に基づいて、前記移動物体を撮像した際に前記移動物体の速度変化に起因して変化する画像上での伸縮率を、前記移動物体の所定領域毎に算出する伸縮率算出部と、前記伸縮率算出部が算出した伸縮率に基づいて、前記移動物体の各領域の画像を前記移動物体の実寸法に応じた比率の画像に修正する画像修正部と、前記画像修正部が修正した移動物体の画像を用いて前記移動物体の表面異常を抽出するとともに、抽出した表面異常部分の画像上での画素数に基づいて、抽出した前記表面異常部分の実寸法を算出する表面検査部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、移動物体の速度変化に起因して変化する画像上での伸縮率に基づいて、移動物体の画像を移動物体の実寸法に応じた比率の画像に修正するので、移動物体を簡易な構成で正確に表面検査することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る表面検査装置および表面検査方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る表面検査システムの構成を示す図である。表面検査システム100は、表面検査装置1、ラインセンサカメラ3、移動物体である車両5を備えている。車両5は、例えば電車などの鉄道の車両である。
【0015】
ラインセンサカメラ3は、列マトリックス状に配置された複数の画素を内蔵しており、車両5の移動方向に対して垂直方向の撮像範囲(縦長の領域)を撮像するカメラである。ラインセンサカメラ3は、車両5を相対移動させながら車両5の各部分(縦長領域)を順次撮像し、撮像した画像を表面検査装置1に送る。図1では、ラインセンサカメラ3の光軸を、ラインセンサカメラ3から車両5の方向へ延びている矢印で示している。
【0016】
ラインセンサカメラ3は、所定の位置に固定設置され、移動してくる車両5の側面を撮像していく。ラインセンサカメラ3の光軸が指す位置を、車両5の先頭部から後端部まで通過することによって、ラインセンサカメラ3は車両5の移動方向の全長を撮像することが可能となる。
【0017】
なお、図1では、車両5を照明する照明手段を図示していないが、ラインセンサカメラ3で車両5を撮像する際に、車両5の表面(外壁)に照明光を照射してもよい。この場合、例えば、棒状蛍光灯または複数の電球を並べたものなどによって、車両5へのラインセンサカメラ3による撮像範囲よりも少し広い縦長の領域を照明する。また、ラインセンサカメラ3の背後に、遮光版を配設してもよい。これにより、背景光が車両5の表面に反射して撮像されることがなくなる。
【0018】
表面検査装置1は、ラインセンサカメラ3から送られてくる車両5の画像の信号を、所定の時間ごとに記録して2次元画像データとして蓄積するとともに、車両5の画像に基づいて、車両5の表面検査を行うコンピュータなどの装置である。ここで表面検査装置1の詳細な構成について説明する。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る表面検査装置の構成を示すブロック図である。表面検査装置1は、画像入力部11、伸縮率算出部12、画像修正部13、表面検査部14、出力部15、寸法情報記憶部16、画像蓄積部17、制御部19を備えている。
【0020】
寸法情報記憶部16は、撮像対象となっている車両5の実際の寸法(実寸法)に関する寸法情報などを記憶するメモリなどである。寸法情報は、例えば、車両5の側面に配置されている窓の横方向(移動方向)や縦方向(高さ方向)の実寸法、車両5の側面に配置されている窓と窓との横方向の実寸法(実配置間隔)、車両5の側面の縦方向の実寸法などである。
【0021】
画像入力部11へは、ラインセンサカメラ3によって撮像された車両5の画像として、車両5の各部分の画像(複数からなるスリット画像)が入力される。画像入力部11は、ラインセンサカメラ3からの画像を画像蓄積部17へ送る。
【0022】
画像蓄積部17は、画像入力部11から送られてくる車両5の各部分の画像を組み合わせることによって車両5の移動方向の全体画像を作成し、作成した車両5の画像を蓄積しておく。
【0023】
伸縮率算出部12は、画像蓄積部17に蓄積されている画像や、寸法情報記憶部16が記憶している寸法情報に基づいて、画像上の各領域(車両5の側面の所定範囲)(後述の窓W1を含む領域など)の移動方向の伸縮率を算出する。この伸縮率は、車両5の移動速度に起因するものであり、画像上の各領域(区間)は、車両5の移動速度に反比例した伸縮率で移動速度方向に伸縮された画像となる。換言すると、画像上の各領域の伸縮率は、この領域を撮像した際の車両5の移動速度に応じて変化する。
【0024】
画像修正部13は、車両5の各領域の画像上の寸法(画像寸法)が各領域の実寸法に応じた比率の寸法で表示されるよう、伸縮率算出部12が算出した画像上の各領域の伸縮率に基づいて、各領域の画像を修正する。具体的には、画像修正部13は、画像上における各領域の伸縮が打ち消されるよう、各領域の移動方向の画像寸法を修正する。例えば、車両5が低速で走行している際に撮像された領域は、他の領域と比べて間延びした画像となっているので、この間延びを解消するよう画像を修正する。
【0025】
表面検査部14は、画像修正部13によって移動方向の画像寸法が修正された画像に基づいて、車両5の側面の表面検査を行う。表面検査部14は、画像内から車両5の汚損部分などの表面異常に関する情報を抽出する。表面検査部14は、抽出した汚損部分の実寸法を、寸法情報記憶部16が記憶している寸法情報に基づいて算出する。表面検査部14は、抽出した汚損部分の情報と、算出した実寸法とを対応付けて出力部15へ送る。
【0026】
出力部15は、表面検査部14から送られてくる汚損部分の情報と、その汚損部分の実寸法を外部装置(プリンタや液晶モニタ)などに出力する。制御部19は、画像入力部11、伸縮率算出部12、画像修正部13、表面検査部14、出力部15、寸法情報記憶部16、画像蓄積部17を制御する。
【0027】
つぎに、寸法情報記憶部16が記憶する寸法情報について説明する。図3は、車両の実寸法を説明するための図である。車両5には、その側面に窓W1〜W6が配置されている。この窓W1〜W6や、各窓W1〜W6の配置間隔(窓間)の実寸法(以下、窓間実寸法という)は、全て同じ寸法である。車両5の各窓W1〜W6の移動方向の実寸法は、それぞれa1(mm)であり、縦方向の実寸法はそれぞれh(mm)である。また、窓W1〜W6の窓間実寸法はそれぞれb1(mm)である。寸法情報記憶部16へは、車両5の寸法情報として、窓W1〜W6の移動方向の実寸法a1や、窓W1〜W6の窓間実寸法b1などが格納される。
【0028】
つぎに、実施の形態1に係る表面検査装置1の動作手順について説明する。図4は、実施の形態1に係る表面検査装置の動作手順を示すフローチャートである。表面検査装置1の寸法情報記憶部16へは、予め車両5の実寸法に関する情報として寸法情報を記憶させておく。
【0029】
車両5は、線路上を移動すると、ラインセンサカメラ3の光軸が指す位置を、車両5の先頭部から後端部まで通過する。このとき、ラインセンサカメラ3は、車両5の側面の各部分を順次撮像し、撮像した画像を表面検査装置1に送る。
【0030】
(ステップS110)
表面検査装置1の画像入力部11へは、ラインセンサカメラ3によって撮像された車両5の各部分の画像が入力される。画像入力部11は、ラインセンサカメラ3からの各部分の画像を画像蓄積部17へ送る。
【0031】
画像蓄積部17は、画像入力部11から送られてくる車両5の各部分の画像を組み合わせることによって車両5の移動方向の全体画像を作成し、作成した車両5の画像を蓄積しておく。
【0032】
(ステップS120)
伸縮率算出部12は、画像蓄積部17に蓄積されている画像と寸法情報記憶部16が記憶している寸法情報に基づいて、画像上の各領域の移動方向の伸縮率を算出する。図5の上部に示した車両5の側面の画像は、ラインセンサカメラ3によって車両5の左方向から右方向へ連続的に撮像された車両5の画像の一例である。この画像は、車両5が少しずつ加速し、その後一定の移動速度になった場合の画像を示している。
【0033】
具体的には、窓W1を撮像した際の車両5の移動速度が低速(v1)であり、その後、車両5の移動速度が増加して、窓W3を撮像した際の車両5の移動速度が、窓W1を測定した際の移動速度の2倍(2v1)となっている。そして、窓W3を撮像した後の移動速度は、一定となり、この一定速度の状況下で窓W4〜W6が撮像されている。
【0034】
車両5は、低速時に撮像されると、高速時に撮像される場合よりも、移動方向の画像寸法が間延びする。換言すると、車両5は、移動速度が速いときは移動方向の画像寸法が短い寸法で撮像され、移動速度が遅いときは移動方向の画像寸法が長い寸法で撮像される。このため、上述のように車両5が移動速度を変化させると、画像上の窓W1〜W3の移動方向の各画像寸法A1〜A3は、画像寸法A1、画像寸法A2、画像寸法A3の順番で短くなる。また、窓W3〜W6の移動方向の各画像寸法は、窓W3の画像寸法と同じ画像寸法A3(図示せず)となる。
【0035】
同様に、画像上の窓W1と窓W2の窓間の画像寸法B1、窓W2と窓W3の窓間の画像寸法B2、窓W3と窓W4の窓間の画像寸法B3は、画像寸法B1、画像寸法B2、画像寸法B3の順番で短くなる。また、窓W4と窓W5の窓間の画像寸法、窓W5と窓W6の窓間の画像寸法は、窓W3と窓W4の窓間の画像寸法B3と同じ画像寸法B3(図示せず)となる。また、各窓W1〜W6の縦方向の画像寸法はそれぞれHである。なお、図5に示した各画像寸法のA1〜A3、B1〜B3、Hは、画像上の画素数(pix)に対応している。
【0036】
撮像中の車両5の移動速度が変化することによって、撮像された車両5の各部分で移動方向の画像が伸縮(画素数が増減)する場合に、各部分で同一の条件下で表面検査を行うためには、移動速度に起因する画像の伸縮を修正しなければならない。そこで、本実施の形態では、画像上の車両5の各領域が、車両5の各領域の実寸法に比例した画像寸法となるよう画像を修正する。換言すると、表面検査装置1は、車両5の実際の各領域が、移動速度に関わらず全て同じ伸縮率の画像として表示されるよう、車両5の画像を修正する。
【0037】
画像上での車両5の各領域の画像寸法のうち、縦方向の画像寸法は車両5の移動速度の影響を受けない。このため、窓W1〜W6の縦方向の実寸法hと、窓W1〜W6の画像上での縦方向の画素数Hと、の関係は、式(1)によって示すことができる。
H/h(pix/mm)=一定値・・・(1)
【0038】
ここでのH/hは、画像上の画像寸法(画素数)を、実寸法で除した値であり、画像の修正後(車両5の移動速度の影響を除外した修正後)には、全ての領域でこの関係が満たされる。本実施の形態では、この式(1)の画像寸法と実寸法の関係を基準にして、車両5の横方向の画像寸法を修正する。まず、伸縮率算出部12は、窓W1の横方向の画像上の画像寸法A1を、式(1)を用いて、縦方向の画素数Hと同じ縮尺の画素数に変換する。窓W1の横方向の画像上の画像寸法A1を、移動速度の影響を除外した画像上の画像寸法となるようA1t(修正後の寸法)に変換すると、A1tは、式(2)によって示すことができる。
A1t=a1・H/h・・・(2)
【0039】
画像上の他の画像寸法も同様に、以下の式(3)〜(6)によって示すことができる。式(3)と式(5)のB1t、B2tは、それぞれ窓W1と窓W2の窓間の画像寸法B1、窓W2と窓W3の窓間の画像寸法B2を、移動速度の影響を除外した画像上の画像寸法に変換した場合の画像寸法である。また、式(4)と式(6)のA2t、A3tは、それぞれ窓W2の画像上の画像寸法B2、窓W3の画像上の画像寸法B3を、移動速度の影響を除外した画像上の画像寸法に変換した場合の画像寸法である。
B1t=b1・H/h・・・(3)
A2t=a1・H/h・・・(4)
B2t=b1・H/h・・・(5)
A3t=a1・H/h・・・(6)
【0040】
なお、本実施の形態では、窓W1〜W6の横方向の実寸法a1が全ての窓で同じである場合について説明しているので、A1t〜A3tは、全て同じ値となる。また、各窓間実寸法b1も全て同じである場合について説明しているので、B1t,B2tは、同じ値となる。
【0041】
ここで、窓W1〜W6の横方向の実寸法や、各窓間実寸法が、それぞれの窓で異なる場合について説明する。この場合、例えば、窓W1と窓W2の窓間実寸法、窓W2と窓W3の窓間実寸法、がそれぞれb1,b2であり、窓W2,W3の横方向の実寸法がそれぞれa2,a3であるとすると、画像寸法のB1t、A2t、B2t、A3tは、それぞれ式(7)〜(10)によって示すことができる。
B1t=b1・H/h・・・(7)
A2t=a2・H/h・・・(8)
B2t=b2・H/h・・・(9)
A3t=a3・H/h・・・(10)
【0042】
伸縮率算出部12は、窓W1〜W3の伸縮率(低速時に撮像されたことによって間延びした割合)を、それぞれA1t/A1、A2t/A2、A3t/A3として算出する。同様に、伸縮率算出部12は、窓W1と窓W2の窓間の伸縮率、窓W2と窓W3の窓間の伸縮率を、それぞれB1t/B1、B2t/B2として算出する。
【0043】
(ステップS130)
つぎに、画像修正部13は、車両5の各領域の画像寸法が各領域の実寸法に応じた比率の寸法で表示されるよう、伸縮率算出部12が算出した画像上の各領域の伸縮率に基づいて、各領域の画像を修正する。
【0044】
本実施の形態の画像修正部13は、窓W1〜W3の画像寸法が、それぞれA1〜A3からA1t〜A3tとなるよう、車両5の移動方向の画像寸法のみを変換(伸縮処理)する。また、画像修正部13は、窓W4〜W6の画像寸法が、それぞれA3からA3tとなるよう、車両5の移動方向の画像寸法のみを変換する。
【0045】
また、画像修正部13は、窓W1と窓W2の窓間の画像寸法、窓W2と窓W3の窓間の画像寸法が、それぞれB1,B2からB1t,B2tとなるよう車両5の移動方向の画像寸法のみを変換する。また、画像修正部13は、窓W3と窓W4の窓間の画像寸法、窓W4と窓W5の窓間の画像寸法、窓W5と窓W6の窓間の画像寸法が、それぞれB3からB3tとなるよう車両5の移動方向の画像寸法のみを変換する。
【0046】
なお、変換前の画像寸法と、変換後の画像寸法が同じである場合(伸縮率がH/hと同じである場合)、この領域では車両5の画像寸法を変換する必要がない。本実施の形態では、窓W3〜W6の伸縮率、窓W3〜W6までの窓間の伸縮率が、それぞれH/hと同じである場合について説明する。したがって、本実施の形態では、窓W3〜W6までの画像には、寸法の変換処理を行なう必要がない。
【0047】
以上の処理によって、車両5の窓W1〜W6までの区間の画像は、縦横比が1:1の正規化画像に変換され、図5の下段に示した車両5の画像を得ることできる。図5の下段の画像では、窓W1〜W6の画像寸法が、それぞれA3である場合を示している。
【0048】
ここで、車両5の移動方向の画像寸法の変換処理について説明する。画像修正部13は、例えば画像寸法を縮小する場合には、横方向に並ぶ画素を間引きする。図6は、画素の間引きによる画像の縮小処理を説明するための図である。図6では、移動方向の画像寸法を、1/2倍に縮める場合の処理を示している。縮小前の画像を構成する各画素が、横方向(図内の左から右)にx1、x2、x3、x4、x5の順番で並んでいる場合、x2、x4を削除し、削除された位置に残りのx3、x5を移動させる。これにより、縮小処理後の画像を構成する各画素を横方向にy1、y2、y3、y4の順番で並べる場合、y1の画素の位置にはx1の画素が入り、y2の画素の位置にはx3の画素が入り、y3の画素の位置にはx5の画素が入ることとなる。
【0049】
このように、本実施の形態の画像修正部13は、窓W1の画像を構成する横方向の画素に対し、2つに1つの画素を抽出するとともに、残りの画素を削除することによって、窓W1の画像を間引きする。換言すると、横方向に並んだ画素に対し、残す画素、削除する画素、残す画素、削除する画素の順番で割り当てていくことによって画像を縮小する。また、画像を1/3に縮める場合には、3つに1つの画素を抽出すればよく、3/4に縮める場合には、4つのうちの3つの画素を抽出すればよい。
【0050】
また、画素を縮める処理としては、画素の間引きに限らず、所定の画素間で平均値をとり、この平均の画素を用いてもよい。図7は、画素間の平均値を用いた画像の縮小処理を説明するための図である。図7では、移動方向の画像寸法を、1/2倍に縮める場合の処理を示している。縮小前の画像を構成する各画素が、横方向(図内の左から右)にx1、x2、x3、x4、x5の順番で並んでいる場合、画像修正部13は、画像を構成する横方向の画素を、順番に2つずつ組み合わせる。具体的には、x1の画素とx2の画素を組合せ、x3の画素とx4の画素を組合せる。そして、各組の画素を、2つの画素の平均値を示す1つの画素に置き換える。これにより、縮小処理後の画像を構成する各画素を横方向にy1、y2、y3の順番で並べる場合、y1の画素の位置にはx1とx2の平均値の画素が入り、y2の画素の位置にはx3とx4の平均値の画素が入ることとなる。なお、画像を拡大させる場合には、所定の画素をコピーするとともに、コピー元の画素の横にコピーした画素を入れ込めばよい。
【0051】
なお、ここでは窓や窓間の配置されている領域の画像を修正する場合について説明したが、窓などが配置されていない領域(車両5の先頭部や後端部)は、窓などが配置されている領域の伸縮率を用いて修正する。例えば、1両目の車両5の後端部と2両目の車両5の先頭部の画像は、1両目の窓W6の伸縮率と2両目の窓W1の伸縮率との平均値を用いて修正を行う。また、1両目の車両5の先頭部の画像は、1両目の窓W1〜W6の伸縮率に基づいて画像の伸縮率を類推し、この類推した伸縮率に基づいて修正する。また、各車両5と車両5の連結部分の近傍(窓W1〜W6)が配置されていない箇所は、各車両5の窓W1〜W6を撮像した際の加速度(伸縮率の変化率)に基づいて類推してもよい。画像修正部13は、車両5の領域毎に画像を修正することによって、車両5の新たな画像を作成する。画像修正部13は、作成した車両5の画像を表面検査部14に送る。
【0052】
(ステップS140,S150)
表面検査部14は、画像修正部13から送られてくる車両5の画像と、寸法情報記憶部16が記憶している寸法情報と、に基づいて、車両5の表面検査を行う。表面検査部14は、画像修正部13から送られてくる車両5の画像の中から、車両5の汚損部分を抽出する。具体的には、表面検査部14は、車両5の画像をフィルターサイズの異なる2種類の平滑化フィルターによって平滑化処理し、平滑化処理で得られた2種類の画像間の差を算出する。そして、表面検査部14は、車両5の汚損部分における輝度分布に基づいて、所定の輝度分布を有した箇所であって、所定値以上の寸法を有した汚損部分を抽出する。
【0053】
表面検査部14は、抽出した各汚損部分の実寸法を、寸法情報記憶部16が記憶している寸法情報に基づいて算出する。図8は、汚損部分の実寸法の算出処理を説明するための図である。窓W1の近傍に、移動方向の画像寸法がL1である汚損部分d1がある場合、この汚損部分d1は、窓W1の伸縮率(A1t/A1)に基づいて画像寸法L3に修正される。ここでの画像寸法L3は、L3=L1・A1t/A1である。そして、表面検査部14は、修正後の画像寸法L3と、窓W1の実寸法とに、基づいて、汚損部分d1の実寸法を算出する。汚損部分d1の実寸法をl3とすると、l3=a1・L3/A1tである。
【0054】
また、窓W6の近傍に、移動方向の画像寸法がL2である汚損部分d2がある場合、この汚損部分d2は、窓W6の伸縮率が1であるので修正されることなく、そのままの画像となる。したがって、汚損部分d2は、修正後の画像も画像寸法がL2である。そして、表面検査部14は、修正後の画像寸法L2と、窓W6の実寸法a1とに、基づいて、汚損部分d2の実寸法を算出する。汚損部分d2の実寸法をl2とすると、l2=a1・L2/A1tである。
【0055】
表面検査部14は、抽出した汚損部分の情報と、算出した実寸法とを対応付けて出力部15へ送る。出力部15は、表面検査部14から送られてくる汚損部分の情報と、その汚損部分の実寸法を外部装置などに出力する。
【0056】
なお、本実施の形態では、寸法情報記憶部16が、寸法情報として窓の実寸法や窓間実寸法などを記憶している場合について説明したが、窓W1〜W6や窓間の実寸法が一定値であれば寸法情報記憶部16は寸法情報を記憶していなくてもよい。この場合、画像修正部13は、車両5の各領域の画像が同じ画像寸法となるよう、車両5の画像を修正する。例えば、各窓W1〜W6の横方向の画像寸法が全ての窓で等しくなるよう車両5の画像を修正する。図5では、画像寸法の縦横比が1:1である場合(画像の縦横比が実寸法の縦横比と同じである場合)について説明したが、各領域の画像が同じ画像寸法となるよう画像を修正する場合には、画像の縦横比と実寸法の縦横比とは独立した比率となる。このため、画像の縦横比の修正処理に用いるフィルター定数を、画像の縦と横とで独立して設定することによって、車両5の移動速度に応じた画像の修正を行うことができる。そして、表面検査部14は、汚損部分の寸法を、窓W1〜W6の実寸法に対する相対値として算出する。
【0057】
また、表面検査装置1は、例えば図4に示した窓W1〜W6の縦方向の実寸法(画像の縦方向の基準寸法)であるhを得ることができない場合や、図5に示した窓W1〜W6の画像寸法Hを取得できない場合に、横方向の基準の寸法に基づいて画像の横方向の伸縮を修正してもよい。具体的には、表面検査装置1は、車両5が縦縞模様である場合や窓の上下辺の輪郭が明確でない場合などに、横方向の基準の寸法に基づいて画像の横方向の伸縮を修正する。例えば、窓W3の横方向の画像寸法を基準とすると、窓W3の横方向の実寸法a1と、窓W3の画像上での縦方向の画素数A3と、の関係は、式(11)によって示すことができる。
A3/a1(pix/mm)=一定値・・・(11)
【0058】
ここでのA3/a1は、画像上の画像寸法を、実寸法で除した値であり、画像の修正後には、全ての領域でこの関係が満たされる。伸縮率算出部12は、窓W1,W2の横方向の画像上の画像寸法A1,A2を、式(11)を用いて、窓W3の横方向の画素数A3と同じ縮尺の画素数に変換する。窓W1,W2の横方向の画像上の画像寸法A1,A2を、移動速度の影響を除外した画像上の画像寸法であるA1t,A2tに変換すると、A1t,A2tは、式(12)、式(13)によって示すことができる。
A1t=a1・A3/a1・・・(12)
A2t=a1・A3/a1・・・(13)
【0059】
画像上の他の画像寸法も同様に、以下の式(14)〜(15)によって示すことができる。式(14)と式(15)のB1t、B2tは、それぞれ窓W1と窓W2の窓間の画像寸法B1、窓W2と窓W3の窓間の画像寸法B2を、移動速度の影響を除外した画像上の画像寸法に変換した場合の画像寸法である。
B1t=b1・A3/a1・・・(14)
B2t=b1・A3/a1・・・(15)
【0060】
なお、窓W1〜W6の横方向の実寸法や、各窓間実寸法が、それぞれの窓で異なる場合、例えば、窓W1と窓W2の窓間実寸法、窓W2と窓W3の窓間実寸法がそれぞれb1,b2であり、窓W2,W3の横方向の実寸法がそれぞれa2,a3であるとすると、画像寸法のB1t、A2t、B2t、A3tは、それぞれ式(16)〜(19)によって示すことができる。
B1t=b1・A3/a1・・・(16)
A2t=a2・A3/a1・・・(17)
B2t=b2・A3/a1・・・(18)
A3t=a3・A3/a1・・・(19)
【0061】
また、本実施の形態では、車両5の全ての領域の画像を修正する場合について説明したが、車両5の各領域の画像のうち、伸縮率の変化が小さな領域(移動速度の変化が小さい状況で撮像された箇所)については、修正処理を行うことなく、汚損部分の抽出と寸法算出をおこなってもよい。これにより、効率良く車両5の表面検査を行うことが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態では、車両5が窓W1〜W6の6つの窓を有している場合について説明したが、車両5に配置される窓は5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、車両5の全ての窓W1〜W6を用いて車両5の画像を修正したが、窓W1〜W6のうち所定の窓のみを用いて車両5の画像を修正してもよい。例えば、窓W1、窓W3、窓W5のように、奇数番目の窓のみを用いて車両5の画像を修正してもよい。この場合、偶数番目の窓の領域の伸縮率は、奇数番目の窓の領域に基づいて、類推する。
【0064】
また、本実施の形態では、車両5の側面の表面検査を行う場合について説明したが、表面検査装置1は、車両5の上面や底面の表面検査を行なってもよい。この場合、ラインセンサカメラ3は、車両5の上面や底面を撮像する。
【0065】
また、本実施の形態では、窓W1〜W6や窓W1〜W6の窓間を用いて車両5の画像を修正したが、窓や窓間以外の物を用いて車両5の画像を修正してもよい。表面検査装置1は、例えば、車両5の扉、連結部分、車輪、底面に配設されるボックスのカバー、底面や上面に配設されているボルト、外壁面の模様、空調室外機、パンタグラフ、車軸などに基づいて車両5の画像を修正してもよい。
【0066】
また、車両5の側面、上面、底面などに、予め伸縮率を検出するための検出用マークを配置しておき、表面検査装置1が、この検出用マークを用いて車両5の画像を修正してもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、車両5の画像に基づいて、車両5の移動速度に対応する画像の伸縮率を算出したが、予め車両5の移動速度に関するスケジュールが分かっている場合には、このスケジュールに基づいて車両5の画像を修正してもよい。
【0068】
また、表面検査装置1は、車両5の表面検査として車両5の汚損部分を抽出したが、表面検査装置1は、ネジの緩み、ネジが外れているか否かなどの車両5を表面から見た場合の異常を検査してもよい。この場合も、移動速度に応じて車両5の画像を修正することによって、ネジの緩み量などを検査することが可能となる。
【0069】
また、本実施の形態では、表面検査装置1が車両5の表面検査を行う場合について説明したが、表面検査装置1は、車両5以外の、バス、飛行機、ジェットコースターなどの移動物体の表面検査を行なってもよい。
【0070】
このように実施の形態1によれば、車両5の画像上での寸法(伸縮率)に基づいて、車両5の画像寸法を修正しているので、速度センサなどを用いることなく、簡易な構成で正確な車両5の画像を得ることができる。
【0071】
また、伸縮率に基づいて修正した後の画像から汚損部分を抽出して汚損部分の実寸法を算出しているので、汚損部分の抽出と汚損部分の実寸法の算出を正確に行うことが可能となる。したがって、簡易な構成で正確に車両5の表面を検査することが可能となる。
【0072】
また、窓W1〜W6や窓W1〜W6の窓間などの、車両5上に短かい間隔で配置されている物(車両5の構成要素)を用いて、車両5の画像寸法を修正しているので、車両5の画像を移動速度に応じて正確に修正することが可能となる。
【0073】
また、窓W1〜W6の縦方向の実寸法と、窓W1〜W6の縦方向の画像寸法を基準として、車両5の画像寸法を修正しているので、車両5の画像を移動速度に応じて正確かつ容易に修正することが可能となる。
【0074】
また、所定の窓(窓W3)の横方向の実寸法と、この所定の窓(窓W3)の横方向の画像寸法を基準として、車両5の画像寸法を修正しているので、車両5が縦縞模様などである場合や、窓の上下辺の輪郭が明確でない場合であっても、車両5の画像を移動速度に応じて正確かつ容易に修正することが可能となる。
【0075】
実施の形態2.
つぎに、図9および図10を用いてこの発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、汚損部分を抽出した後に、画像の伸縮率に基づいて汚損部分の実寸法を算出する。
【0076】
図9は、実施の形態2に係る表面検査装置の構成を示すブロック図である。図9の各構成要素のうち図2に示す実施の形態1の表面検査装置1と同一機能を達成する構成要素については同一番号を付しており、重複する説明は省略する。表面検査装置2は、画像入力部11、伸縮率算出部12、表面検査部14、出力部15、寸法情報記憶部16、画像蓄積部17、制御部19、寸法算出部21を備えている。
【0077】
寸法算出部21は、表面検査部14によって抽出された汚損部分の実寸法を、伸縮率算出部12が算出した画像の伸縮率に基づいて算出する。寸法算出部21は、表面検査部14が抽出した汚損部分の情報と、算出した実寸法とを対応付けて出力部15へ送る。制御部19は、画像入力部11、伸縮率算出部12、表面検査部14、出力部15、寸法情報記憶部16、画像蓄積部17、寸法算出部21を制御する。
【0078】
つぎに、実施の形態2に係る表面検査装置2の動作手順について説明する。図10は、実施の形態2に係る表面検査装置の動作手順を示すフローチャートである。なお、表面検査装置2の行う動作手順のうち、図4に示した実施の形態1の表面検査装置1と同様の処理を行う動作手順については、その説明を省略する。
【0079】
表面検査装置1の寸法情報記憶部16へは、予め車両5の実寸法に関する情報として寸法情報を記憶させておく。車両5は、ラインセンサカメラ3の光軸が指す位置を、車両5の先頭部から後端部まで通過する。このとき、ラインセンサカメラ3は、車両5の側面の各部分を順次撮像し、撮像した画像を表面検査装置1に送る。
【0080】
(ステップS210)
表面検査装置1の画像入力部11へは、ラインセンサカメラ3によって撮像された車両5の各部分の画像が入力される。画像入力部11は、ラインセンサカメラ3からの各部分の画像を画像蓄積部17へ送る。
【0081】
画像蓄積部17は、画像入力部11から送られてくる車両5の各部分の画像を組み合わせることによって車両5の移動方向の全体画像を作成し、作成した車両5の画像を蓄積しておく。
【0082】
(ステップS220,S230)
伸縮率算出部12は、画像蓄積部17に蓄積されている画像と寸法情報記憶部16が記憶している寸法情報に基づいて、画像上の各領域の移動方向の伸縮率を算出する。表面検査部14は、車両5の表面検査として、画像蓄積部17に蓄積されている画像から、車両5の汚損部分を抽出する。具体的には、表面検査部14は、車両5の画像をフィルターサイズの異なる2種類の平滑化フィルターによって平滑化処理し、平滑化処理で得られた2種類の画像間の差を算出する。このとき、表面検査部14は、算出した伸縮率に応じてフィルターサイズを変える。例えば、画像の縮小率が大きい場合、表面検査部14は、小さな汚損部分であっても抽出できるフィルターを用いて汚損部分を抽出し、画像の拡大率が大きい場合、表面検査部14は、大きな汚損部分のみを抽出できるフィルターを用いて汚損部分を抽出する。これにより、表面検査部14は、車両5の汚損部分における輝度分布に基づいて、所定の輝度分布を有した箇所であって、所定値以上の寸法を有した汚損部分を抽出する。
【0083】
(ステップS240,S250)
寸法算出部21は、表面検査部14によって抽出された汚損部分の実寸法を、伸縮率算出部12が算出した画像の伸縮率に基づいて算出する。例えば、表面検査部14によって抽出された汚損部分の画像寸法がL1であり、伸縮率算出部12が算出した画像の伸縮率がA1t/A1である場合、汚損部分の実寸法をl1とすると、実施の形態1と同様の算出処理によって、汚損部分の修正後の画像寸法L3は、L3=L1・A1t/A1となる。そして、汚損部分の実寸法をl1とすると、l1=a1・L3/A1tとなる。なお、汚損部分の実寸法をl1を、窓の画像寸法A1や汚損部分の画像寸法L1を用いて算出してもよい。この場合、伸縮率算出部12が算出した画像の伸縮率を間接的に用いることによって、実寸法をl1を算出する。換言すると、画像寸法Aと実寸法a1との比率を用いて実寸法をl1を算出する。具体的には、実寸法をl1は、l1=a1・L1/A1となる。
【0084】
寸法算出部21は、表面検査部14が抽出した汚損部分の情報と、算出した汚損部分の実寸法とを対応付けて出力部15へ送る。出力部15は、表面検査部14から送られてくる汚損部分の情報と、その汚損部分の実寸法を外部装置などに出力する。
【0085】
表面検査部14は、移動方向の画像寸法が所定値以上である汚損部分のみを、車両5の画像から抽出してもよい。また、表面検査部14は、伸縮率算出部12が算出した画像の伸縮率に応じた寸法の汚損部分のみを、車両5の画像から抽出してもよい。この場合、表面検査部14は、例えば、車両5が高速で移動している際に撮像された画像からは、車両5が低速で移動している際に撮像された画像から抽出する汚損部分の画像寸法よりも小さな画像寸法の汚損部分を抽出する。これにより、車両5の移動速度によらず、所定値以上の実寸法を有した汚損部分を抽出することが可能となる。
【0086】
なお、本実施の形態では、寸法算出部21が、表面検査部14によって抽出された汚損部分の実寸法を算出する場合について説明したが、表面検査部14が汚損部分の実寸法を算出してもよい。この場合は、表面検査部14が、寸法算出部21を備える構成とする。
【0087】
このように実施の形態2によれば、画像蓄積部17に蓄積されている(伸縮率に応じた寸法処理を行なう前の)もとの車両5の画像から車両5の汚損部分を抽出した後、車両5の画像上での寸法(伸縮率)に基づいて、車両5の汚損部分の実寸法を算出しているので、実施の形態1の場合と同様に、速度センサなどを用いることなく、簡易な構成で正確に車両5の表面を検査することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明に係る表面検査装置および表面検査方法は、移動物体の表面検査に適している。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1に係る表面検査システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る表面検査装置の構成を示すブロック図である。
【図3】車両の実寸法を説明するための図である。
【図4】実施の形態1に係る表面検査装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図5】画像の修正処理を説明するための図である。
【図6】画素の間引きによる画像の縮小処理を説明するための図である。
【図7】画素間の平均値を用いた画像の縮小処理を説明するための図である。
【図8】汚損部分の実寸法の算出処理を説明するための図である。
【図9】実施の形態2に係る表面検査装置の構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態2に係る表面検査装置の動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1,2 表面検査装置
3 ラインセンサカメラ
5 車両
11 画像入力部
12 伸縮率算出部
13 画像修正部
14 表面検査部
15 出力部
16 寸法情報記憶部
17 画像蓄積部
19 制御部
21 寸法算出部
100 表面検査システム
A1〜A3,B1〜B3,H 画像寸法
a1,b1,h 実寸法
W1〜W6 窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体を相対移動させながら前記移動物体の各部分を順次撮像し、撮像した各部分の画像を組み合わせることによって得られる前記移動物体の画像に基づいて、前記移動物体の表面検査を行う表面検査装置において、
前記移動物体の実寸法および前記移動物体の画像上での画素数に基づいて、前記移動物体を撮像した際に前記移動物体の速度変化に起因して変化する画像上での伸縮率を、前記移動物体の所定領域毎に算出する伸縮率算出部と、
前記伸縮率算出部が算出した伸縮率に基づいて、前記移動物体の各領域の画像を前記移動物体の実寸法に応じた比率の画像に修正する画像修正部と、
前記画像修正部が修正した移動物体の画像を用いて前記移動物体の表面異常を抽出するとともに、抽出した表面異常部分の画像上での画素数に基づいて、抽出した前記表面異常部分の実寸法を算出する表面検査部と、
を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
移動物体を相対移動させながら前記移動物体の各部分を順次撮像し、撮像した各部分の画像を組み合わせることによって得られる前記移動物体の画像に基づいて、前記移動物体の表面検査を行う表面検査装置において、
前記移動物体の実寸法および前記移動物体の画像上での画素数に基づいて、前記移動物体を撮像した際に前記移動物体の速度変化に起因して変化する画像上での伸縮率を、前記移動物体の所定領域毎に算出する伸縮率算出部と、
前記移動物体の画像から前記移動物体の表面異常を抽出するとともに、前記伸縮率算出部が算出した伸縮率に基づいて、抽出した表面異常部分の実寸法を算出する表面検査部と、
を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
前記伸縮率算出部は、前記移動物体の表面に複数配設されている前記移動物体の構成要素を用いて前記伸縮率を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記伸縮率算出部は、前記所定領域の実寸法のうち前記移動物体の移動方向と垂直な方向である縦方向の実寸法と、前記所定領域の画像上の縦方向の画素数と、の比率に基づいて、前記移動物体の移動方向である横方向の画像上での伸縮率を前記所定領域毎に算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記伸縮率算出部は、前記所定領域の実寸法のうち前記移動物体の移動方向である横方向の実寸法と、前記所定領域の画像上の横方向の画素数と、の比率に基づいて、前記移動物体の横方向の画像上での伸縮率を前記所定領域毎に算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の表面検査装置。
【請求項6】
移動物体を相対移動させながら前記移動物体の各部分を順次撮像し、撮像した各部分の画像を組み合わせることによって得られる前記移動物体の画像に基づいて、前記移動物体の表面検査を行う表面検査方法において、
前記移動物体の実寸法および前記移動物体の画像上での画素数に基づいて、前記移動物体を撮像した際に前記移動物体の速度変化に起因して変化する画像上での伸縮率を、前記移動物体の所定領域毎に算出する伸縮率算出ステップと、
前記伸縮率に基づいて、前記移動物体の各領域の画像を前記移動物体の実寸法に応じた比率の画像に修正する画像修正ステップと、
修正した移動物体の画像を用いて前記移動物体の表面異常を抽出するとともに、抽出した表面異常部分の画像上での画素数に基づいて、抽出した前記表面異常部分の実寸法を算出する表面検査ステップと、
を含むことを特徴とする表面検査方法。
【請求項7】
移動物体を相対移動させながら前記移動物体の各部分を順次撮像し、撮像した各部分の画像を組み合わせることによって得られる前記移動物体の画像に基づいて、前記移動物体の表面検査を行う表面検査方法において、
前記移動物体の実寸法および前記移動物体の画像上での画素数に基づいて、前記移動物体を撮像した際に前記移動物体の速度変化に起因して変化する画像上での伸縮率を、前記移動物体の所定領域毎に算出する伸縮率算出ステップと、
前記移動物体の画像から前記移動物体の表面異常を抽出するとともに、前記伸縮率算出部が算出した伸縮率に基づいて、抽出した表面異常部分の実寸法を算出する表面検査ステップと、
を含むことを特徴とする表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−174923(P2009−174923A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11994(P2008−11994)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】