説明

表面検査装置及びその校正方法

【課題】検出感度の校正を容易に行うことができる表面検査装置及びその校正方法を提供する。
【解決手段】照明光学系2により標準異物ウエハ110の表面に照明光を照射しつつ、その照射光により標準異物ウエハ110の表面を走査し、検出光学系3の検出器31〜34により標準異物ウエハ110の表面からの散乱光を検出し、その散乱光の検出結果と予め定めた基準値とを用いて検出器31〜34の光電子増倍管331〜334の検出感度を補正するための補正パラメータCompを算出し、その補正パラメータCompを経時劣化パラメータP、光学的特性パラメータOpt、及びセンサ特性パラメータLrに分離して管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被検査物の表面に存在する異物、きず、欠陥、汚れ等(以下、これらを総称して異物と記載する)を検出する検査装置及びその校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、品質や歩留りの低下を抑制するためには、半導体ウエハ(以下、単にウエハと記載する)の表面上の異物、傷、欠陥、汚れ等(以下、これらを総称して異物と記載する)を検出し、その異物の種類、大きさ、或いは検出数等について統計管理を行うことにより、各種製造装置や工程の清浄度を定量的に把握し、製造工程を的確に管理することが重要である。そこで、従来から半導体デバイスの製造工程においては、表面検査装置によるウエハの表面検査が実施されている。
【0003】
ウエハ表面の異物を検出する表面検査装置としては、レーザ光等の検査光をウエハの表面に照射し、ウエハの表面で発生した反射光又は散乱光を検出することにより、ウエハの表面に存在する異物を検出するものが知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−304289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上に述べたような統計管理により製造工程の管理が的確に行われるためには、統計管理に用いる情報の精度の確保が条件である。そのため、表面検査装置の校正を定期的に行い、表面検査における検出精度を一定に保つことが必要不可欠である。
【0006】
表面検査装置における検出感度の校正としては、例えば、標準粒径の異物サンプルを表面に施したウエハ(以下、標準異物ウエハと記載する)に照明光を照射して異物サンプルからの散乱光を検出し、異物サンプルの粒径と散乱光の検出値の関係が予め定めた検量線に合うように検出感度を調整することにより行う校正がある。
【0007】
しかしながら、このような検出感度の校正においては、オペレータが表面検査装置を構成する各部材の劣化状態や温度ドリフト状態など、種々の条件を総合的に加味して検出感度の調整の妥当性を検証する必要があり、検出感度の校正が非常に複雑なものになっていた。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、検出感度の校正を容易に行うことができる表面検査装置及びその校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、被検査体の表面に照明光を照射する照射手段と、前記照射手段からの照射光を前記被検査体の表面に走査する走査手段と、前記被検査体の表面からの散乱光を検出する複数の光検出手段と、前記複数の光検出手段の検出感度を測定するための基準となる測定光を発生する測定光発生手段と、前記測定光発生手段から前記光検出手段に入射された測定光の検出結果と予め定めた基準値とを用いて前記光検出手段の検出感度を補正するための感度補正値を演算する補正値演算手段と、前記感度補正値を表面検査装置の検出感度に影響する複数の要因に対応する要素パラメータに分離する分離演算手段とを備えたものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、表面検査装置における検出感度の校正作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表面検査装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るウエハ及びその走査の様子を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る標準異物ウエハを示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る表面検査の校正処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態に係る表面検査装置の校正処理における補正パラメータ演算結果確認画面を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る表面検査装置の校正処理におけるサマリ確認画面を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る表面検査装置の校正処理における来歴確認画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(1)表面検査装置の構成
図1は、本実施の形態に係る表面検査装置の全体構成を示す図である。
【0014】
図1において、本実施の形態の表面検査装置は、被検査体(例えば、ウエハ、ハードディスク、液晶基板など)の一例であるウエハ10を載置するウエハ載置部1と、ウエハ10の表面(被検査面)に照明光を照射する照明光学系2と、ウエハ10の表面からの散乱光を検出する検出光学系3と、表面検査装置における駆動系を制御するメカ制御部4と、表面検査装置の全体の制御を行う全体制御部5とを備えている。
【0015】
ウエハ載置部1は、ウエハ10を吸着・保持するウエハチャック11と、ウエハチャック11を保持する回転ステージ12と、回転ステージ12を保持する直進ステージ13と、直進ステージ13を保持するベース14とを備えている。
【0016】
回転ステージ12は、直進ステージ13に対して回転駆動することにより、ウエハチャック11をウエハ10と共に回転駆動させる。また、直進ステージ13は、ベース14に対して直線駆動することにより、回転ステージ12を直線駆動させる。ウエハ10の表面(被検査面)に照明光を照射しながらウエハ10を回転駆動又は直進駆動、或いはその両方を行うことにより、照明光をウエハ10の表面に走査する。
【0017】
照明光学系2は、照明光であるレーザ(例えば、Arレーザ、窒素レーザ、He−Cdレーザ、エキシマレーザ、など)を生成して射出するレーザ光源20と、レーザ光源20から射出されたレーザを偏光に変換する照明光偏光フィルタ21と、照明光偏光フィルタ21を透過したレーザを反射する反射ミラー22,23と、図示しない駆動装置により駆動され、レーザの進行経路(光路)を切り換える照明角度切換ミラー24とを備えている。
【0018】
照明角度切換ミラー24が、駆動装置(図示せず)により照明光の光路上に配置された場合(図1の位置24aに配置された場合)、レーザ光源2から射出された照明光は、照明角度切換ミラー24及び反射ミラー22を介してウエハ10の表面に対して斜方(例えば、30°以下の角度)から照射される。また、照明角度切換ミラー24が照明光の光路上から退避させられた場合(図1の位置24bに配置された場合)、光源2から射出された照明光は、反射ミラー23を介してウエハ10の表面に対して略垂直に照射される。照明角度切換ミラー24の位置は、全体制御部5により制御される。
【0019】
ウエハ10における照明光の照射位置に異物が存在する場合は、その異物の大きさや形状に応じた散乱光が生じる。
【0020】
検出光学系3は、ウエハ10の表面からの散乱光を検出する複数の検出器31〜34と、検出器31〜34から出力されたアナログの検出信号をデジタルの検出信号に変換するA/D変換器341〜344と、A/D変換器341〜344からの検出信号に対してデータ処理(後述)を行い全体制御部5に入力するデータ処理部35と、全体制御部5からの指令に基づき検出器31〜34の光電子増倍管331〜334(後述)に印加する電圧(以下、印加電圧と記載する)を制御する印加電圧制御部36とを備えている。
【0021】
検出器31,32は、ウエハ10の表面を基準とした仰角が予め定めた基準角度(例えば、30°)以下の角度をなすように配置されている。以下、そのような検出器31,32を特に低角度検出光学系と記載する。また、検出器33,34は、基準角度よりも大きな仰角をなすように配置されている。以下、そのような検出器33,34を特に高角度検出光学系と記載する。
【0022】
なお、低角度検出光学系及び高角度検出光学系のそれぞれにおいては、ウエハ10上における照明光の照射位置を囲むように複数の検出器が配置されているが、図面の煩雑化を避けるため、図1においては低角度検出光学系の検出器として2つの検出器31,32を、高角度検出光学系の検出器として2つの検出器33,34をそれぞれ代表して示し、その他の検出器については図示及び説明を省略する。
【0023】
検出器31は、ウエハ10からの散乱光を集光する集光レンズ311と、集光レンズ311により集光された散乱光を偏光に変換する検出光偏光フィルタ321と、検出光偏光フィルタ321を透過した散乱光を受光して、その受光量に応じた量の電流に変換し、検出信号としてA/D変換器341に入力する光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)331とを備えている。また、検出器32〜34は検出器31と同様の構成を有しており、それぞれ、集光レンズ312〜314、検出光偏光フィルタ322〜324、及び光電子増倍管332〜334を備えている。
【0024】
A/D変換器341〜344は、検出器31〜34から出力されるアナログの検出信号(電流信号)をデジタルの検出信号(電圧信号)に変換し、データ処理部35に入力する。
【0025】
データ処理部35は、A/D変換器341〜344からの検出信号のうち、その検出信号の電圧値(以下、検出電圧値と記載する)が予め定めた閾値を越えたものを抽出するデータ処理を行い、抽出した検出信号を全体制御部5に入力する。データ処理部35のデータ処理に用いる閾値は、検出器31〜34のそれぞれからの検出信号に対して個別に設定されており、その閾値は全体制御部5の記憶部8(後述)に記憶されている。全体制御部5に入力された検出信号は記憶部8に記憶される。
【0026】
印加電圧制御部36は、予め定められ全体制御部5の記憶部8に記憶された設定値(後述)に基づいて、検出器31〜34の各光電子増倍管331〜334の印加電圧を制御する。
【0027】
光電子増倍管331〜334は、その印加電圧を変えることにより、検出感度を変えることができる。ここで、検出感度とは、受光量(光電子増倍管331〜334に到達した光量)と検出電圧値(A/D変換器341〜341の出力電圧)の関係で表されるものである。例えば、受光量が一定とした場合、光電子増倍管331〜334の印加電圧を高くすると、検出電圧値は高くなり(つまり、検出感度が高くなり)、逆に印加電圧を低くすると検出電圧は低くなる(つまり、検出感度が低くなる)。このような光電子増倍管331〜334において、受光量が一定の条件で印加電圧を変化させた場合、印加電圧変化前後の検出電圧値の比率(=変化後検出電圧値/変化前検出電圧値)をR、光電子増倍管によって定まる値(PMT乗数)をkと定義すると、印加電圧と検出電圧値の関係は下記の式で表される。
【0028】
R=(変化後印加電圧/変化前印加電圧)^k ・・・式1
上記式1に基づいて光電子増倍管331〜334の印加電圧を変化させることにより、検出電圧値を調整することができ、したがって、検出感度を調整することができる。
【0029】
メカ制御部4は、全体制御部5からの指令に基づいてウエハ載置部1、ロードポート41、及び搬送アーム42などに設けられた駆動装置の動作を制御する。
【0030】
ロードポート41は、表面検査を施す前後のウエハ10を収納した図示しない容器(例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)、ウエハカセット)を載置し、ウエハ1を表面検査装置に出し入れするインターフェース部である。
【0031】
搬送アーム42は、ウエハ10を保持して表面検査装置内を搬送するものであり、ロードポート41やウエハ載置部1の間におけるウエハ10の搬送を行う。
【0032】
図2は、本実施の形態に係わるウエハ10及びその走査の様子を示す図である。
【0033】
図2において、ウエハ10は、その周上にウエハ10の方向決めの基準となるノッチ15を有している。
【0034】
このようなウエハ10をノッチ15が下端となるように配置した場合において、そのウエハ10の中心を原点としたX−Y座標系を定義する。また、X−Y座標系の原点O(ウエハ10の中心)からの距離をR、X−Y座標系の原点Oを中心として時計回りに回転したときのX軸とのなす角(回転角)をθとするR−θ座標系を定義する。このように定義したX−Y座標系とR−θ座標系の関係は変化しないので、両座標系上の位置は互いに変換可能である。
【0035】
ウエハ10の表面(被検査面)に照明光を照射しながらウエハ10を回転駆動しつつ直進駆動することにより、照明光をウエハ10の表面に螺旋状に走査する。照明光の走査中、回転ステージ12及び直進ステージ13の位置情報(回転ステージ12の向き、及び直進ステージ13の可動方向における位置)は、ウエハ10上の照明光の照射位置の座標情報として、ウエハ載置部1の動作を制御するメカ制御部4から全体制御部5に出力される。
【0036】
全体制御部5は、ウエハ載置部1、照明光学系2、検出光学系3、及びメカ制御部4を含む表面検査装置全体の動作を制御するものであり、入力処理部6、情報表示部7、及び記憶部8を備えている。
【0037】
入力処理部6は、例えば、キーボードやマウス、或いはタッチパネルなどであり、ウエハ10の表面検査や表面検査装置の校正に用いる各種設定値、各種指令などの入力を行う。
【0038】
情報表示部7は、例えば、ディスプレイなどであり、ウエハ10の表面検査や表面検査装置の校正に用いる各種設定値の設定画面、表面検査や校正の結果(欠陥マップ、欠陥寸法別ヒストグラム)、ウエハのスロット番号、或いは、などを表示する。また、表面検査や校正の結果が異常と判定された場合は、異常が生じた旨の警告を表示する。
【0039】
記憶部8は、例えば、ハードディスクやメモリなどであり、回転ステージ12及び直進ステージ13の位置情報、及びその位置情報と関連付けられた検出器31〜34からの検出信号、表面検査に用いる設定値、自動分析装置の校正に用いる検査レシピ(後述)、各種パラメータ、各種ソフトウェア等が記憶されている。
【0040】
全体制御部5は、記憶部8に記憶されたにより入力された各種設定値やソフトウェア等に基づいて、表面検査装置の各構成装置を制御する。
【0041】
(2)検出感度の校正
次に、本実施の形態の表面検査装置における検出感度の校正について説明する。
【0042】
本実施の形態における検出感度の校正は、光学条件等を定めた検査レシピ(後述)に基づいて表面検査装置を設定し、標準粒径の異物サンプルを表面に施した標準異物ウエハ110(後述)に照明光を照射して異物サンプルからの散乱光を検出し、異物サンプルの粒径と各光電子増倍管331〜334の検出電圧値の関係が検量線に合うように各光電子増倍管331〜334の検出感度を補正する補正パラメータ(後述)を算出し、その補正パラメータを用いて各光電子増倍管331〜334の検出感度を補正する。
【0043】
なお、本実施の形態では、複数の光学条件(複数の照明角度、照明偏光条件および、受光偏光条件を組合せた、照明条件、受光条件)のそれぞれについて補正パラメータを算出し、管理を行う。
【0044】
(2−1)検査レシピ
検査レシピは、様々なプロセスを経て作成された光学条件や検査結果表示条件等の諸条件を一つの情報として管理するものである。検査レシピは、検査対象や検出したい情報等の種類毎に用意され、記憶部8に記憶されている。
【0045】
(2−2)標準異物ウエハ110
図3は、本実施の形態に係る標準異物ウエハ110を示す図である。
【0046】
図3において、標準異物ウエハ110は、その標準異物ウエハ110の方向を決める基準となるノッチ111を有しており、標準異物ウエハ110の中心としたX−Y座標系、及びR−θ座標系(図示せず)がウエハ10と同様に定義されている。標準異物ウエハ110の表面には、その中心から等距離で周方向に等間隔に配置された複数(例えば6つ)のPSL塗布領域112〜117が設けられている。つまり、標準異物ウエハ110上の予め定められた座標位置に各PSL塗布領域112〜117は配置されている。
【0047】
PSL塗布領域112〜117は、PSL(Poly Styrene Latex)粒子が塗布された領域である。PSL粒子は、粒径制御された異物サンプルである。PSL塗布領域112〜117には、それぞれ異なる粒径のPSL粒子が塗布されており、補正パラメータの算出に適した粒径のPSL粒子が塗布されたPSL塗布領域を照明光で走査し、散乱光を光電子増倍管331〜334により検出する。
【0048】
PSL塗布領域112〜117からの散乱光を検出する場合の検出電圧値は次のように求める。まず、PSL塗布領域112〜117のそれぞれについて検出電圧値と検出頻度のヒストグラムを作成する。そのヒストグラムはガウス分布またはそれに近い分布を示す。ピーク値を対象となるPSL領域に塗布されたPSL粒子の大きさの異物に対する検出電圧値とする。
【0049】
なお、本実施の形態においては、それぞれ異なるサイズのPSL粒子を塗布した複数のPSL塗布領域112〜117を設けた標準異物ウエハ110を用いたがこれに限られず、例えば、それぞれ異なるサイズのPSL粒子を塗布した複数の標準異物ウエハを用い、それら複数の標準異物ウエハのそれぞれにおける検出電圧値を求めても良い。
【0050】
(2−3)補正パラメータComp
補正パラメータは、各光電子増倍管331〜334の印加電圧として予め定められた初期値(例えば、仕様上の標準値、或いは、初回校正時の設定値)に対する補正値であり、初期値に対する比率で表される。
【0051】
検出感度の調整は、予め定められた光学条件において、検量線と検出電圧値の差が無くなるように各光電子増倍管331〜334の印加電圧を調整することにより行う。印加電圧の調整に用いる補正パラメータCompは、上記式1を用いて求められる。すなわち、検量線の示す電圧値と検出電圧値の比率を上記式1のRに代入し、変化後印加電圧を求め、初期値と変化後印加電圧との比率を補正パラメータCompとして算出する。
【0052】
ここで、各光学条件をCn(C1〜Cn:nは自然数)、各光電子増倍管をn(1〜n:nは自然数)と定義し、それらに関係する補正パラメータをComp(n,Cn)と定義し、さらに、影響する要因によって、経時劣化パラメータP、光学的特性パラメータOpt、及びセンサ特性パラメータLrの3つの要素パラメータを定義すると、補正パラメータComp(n,Cn)は下記の式で表される。
【0053】
Comp(n,Cn)
=P(n)×Opt(n,Cn)×Lr(n) ・・・式2
(2−3.1)経時劣化パラメータ:P
光電子増倍管331〜334のそれぞれの経時劣化の状態に関係する要素パラメータである。光電子増倍管331〜334は、使用開始時からの総受光量に応じて、検出電圧の低下が生じる。つまり、要素パラメータは、光電子増倍管の受光に伴う劣化を補正する項目であり、すべての光学条件に共通して影響するパラメータであり、したがって、校正処理時に用いる検査レシピの種類に関わらず、経時劣化パラメータによる検出感度の調整を行う。
【0054】
(2−3.2)光学的特性パラメータ:Opt
光電子増倍管331〜334における光学的特性のバラツキ状態に関係する要素パラメータであり、光学条件(各光電子増倍管、照明偏光条件、受光変更条件など)毎に調整される。この要素パラメータは、経時劣化パラメータによる検出感度の調整だけでは調整できない、光学条件に依存するパラメータである。
【0055】
(2−3.3)センサ特性パラメータ:Lr
光電子増倍管331〜334のそれぞれのセンサ特性、すなわち、入射光量に関する出力信号のリニアリティーのバラツキ状態に関係する要素パラメータである。この要素パラメータは、通常は装置の組み立て時、或いは、光電子増倍管331〜334を交換時の校正処理において算出され、記憶部8に記憶されているパラメータである。したがって、定期的な校正処理においては、個別に算出せず、記憶部8に記憶されているものを用いる。
【0056】
(2−4)校正処理手順
図4は、本実施の形態に係る表面検査装置の校正処理を示すフローチャートである。
【0057】
まず、記憶部8に記憶されている検査レシピの中から、校正処理に用いる1つ以上の検査レシピを設定し、校正処理を開始する。
【0058】
全体制御部5は、まず、検査レシピに基づいて表面検査装置の各光学系を設定し(ステップS10)、標準異物ウエハ110の表面を照射光により走査し、検出した散乱光のデータ(検出電圧値)と検出座標を関連付けて記憶部8に記憶する(ステップS20)。
【0059】
初めに選択した検査レシピの全てについて標準異物ウエハ110の走査を行い、検出電圧値を取得したかどうかを判定し(ステップS30)、NOであれば(すなわち、未実施の検査レシピがある場合)、ステップS10,S20を繰り返す。
【0060】
ステップS30での判定結果がYESである場合、補正パラメータComp及び関連する経時劣化パラメータP、光学的特性補正パラメータOptを算出し、記憶部8に補正パラメータ候補、及び要素パラメータ候補として一時的に記憶する(ステップS40)。
【0061】
次いで、記憶部8に候補として記憶された経時劣化パラメータPが予め定めた正常値範囲内(管理上限値P_maxと管理下限値P_minの間)かどうかと、光学系パラメータOpt予め定めた正常値範囲内(管理上限値Opt_maxと管理下限値Opt_minの間)かどうかを判定し(ステップS50,S60)、両方の判定結果がYESであれば、補正パラメータの演算結果確認画面(後の図5〜図7参照)においてオペレータが測定結果を確認する(ステップS70)。ステップS70での確認において、オペレータによる確認がOKであれば構成処理を終了し(正常終了)、NGであれば校正が異常であるとして処理を終了する(異常終了)。一方、ステップS50での判定結果がNOである場合、経時劣化パラメータPの異常を情報表示部7に表示して校正処理を終了する(ステップS55)。また、ステップS60での判定結果がNOである場合、光学系パラメータの異常を情報表示部7に表示して校正を終了する(ステップS65)。
【0062】
(2−5)補正パラメータ演算結果
校正処理における補正パラメータ演算結果は表面検査装置の情報表示部7に補正パラメータ演算結果確認画面として表示される。校正処理における補正パラメータの演算結果確認(図4のステップS70)では、この補正パラメータ演算結果確認画面を参照して演算結果の確認を行う。補正パラメータ演算結果確認画面は以下に示す3つの確認画面を備えている。
【0063】
(2−5.1)補正パラメータ演算結果確認画面171(メイン画面)
図5は校正処理における補正パラメータ演算結果確認画面を示す図である。
【0064】
図5において、補正パラメータ演算結果表示画面171は、検査レシピを一覧表示する検査レシピ表示部172と、補正パラメータの演算結果を表示する結果表示部173と、後述するサマリ確認画面271、又は来歴確認画面371を表示するためのボタン174,175と、演算された補正パラメータの候補を表面検査装置の補正値として反映するための更新ボタン176と、その補正値を反映せずに校正処理を終了するためのキャンセルボタン177とを有している。
【0065】
検査レシピ表示部172で例えば検査レシピ178を選択すると、表示部179,180に検査レシピ名および検査実行時間が表示され、結果表示部173には検査レシピ178に関する補正パラメータの演算結果が表示される。本例では、検査レシピとして経時劣化に関する補正パラメータ、つまり、光学的特性パラメータに依存せず、センサ特性パラメータが固定である補正パラメータを算出するための検査レシピを用いた場合を例に取り説明する。
【0066】
結果表示部173には、表面検査装置における各検出器(図5では一例として10個の検出器の場合を示す)の寸法、検出値の基準値、校正処理における検出値、補正パラメータの更新値(更新候補)、及び補正パラメータの前回値が表示される。
【0067】
検出器の寸法は、各検出器の光電子増倍管の直径であり、図5の例では検出器L1〜L6が直径50nm、検出器H1〜H4が直径60nmの光電子増倍管を用いることを示している。
【0068】
基準値は、選択された検査レシピにおいて標準値(例えば仕様値)とされる検出電圧値、及びその上下のずれ量の許容値(マージン)で表される。
【0069】
検出値は、校正処理における検出電圧値、及び検出電圧値と基準値との差分で表される。つまり、点線で示す領域181に表示された数値が検査レシピ172の条件における各光電子増倍管の検出電圧値である。差分の表示においては、その基準値に対する差分の割合に応じて、各差分の表示部を色分けして表示する。例えば、検出器L1,L3のように、差分がマージンの範囲内でありマージンの予め定めた割合を超えた場合(例えば、差分が15以上の場合)は、点線で示す領域183,184を黄色など注意を促す色で表示する。また、検出器L4のように、差分がマージンを超えた場合は、実線で示す領域185を赤色など警告を示す色で表示する。なお、注意や警告を表示する方法は上記に限られず、反転表示や点滅表示等、オペレータに注意、警告を促す表示であれば足りる。なお、検出値の表示部に、例えば、校正処理における検出電圧値、及び検出電圧値と基準値との比率で表し、その比率に対してマージンを設定しても良い。
【0070】
更新値は、校正処理において算出された補正値パラメータの候補値が表示される。画面上の更新ボタン176が押されることにより、更新値として点線で示す領域182に表示された数値が補正値として反映される。なお、図5では一例として経時劣化の要素パラメータの更新値を示す。
【0071】
前回値は、前回の校正結果(前回の更新値反映後)の補正パラメータを示しており、経時劣化パラメータ、光学的特性パラメータ、センサ特性パラメータのそれぞれが表示される。
【0072】
補正パラメータ演算結果表示画面171において、ボタン174が押される(選択される)と、サマリ確認画面271(後の図6参照)に切り換わり、ボタン175が押されると、来歴確認画面371(後の図7参照)に切り換わる。
【0073】
(2−5.2)サマリ確認画面271
図6は、校正処理におけるサマリ確認画面271を示す図である。
【0074】
図6において、サマリ確認画面271は、各検査レシピにおける検出電圧値の基準値との差分を一覧表示する差分一覧表示部272と、補正パラメータ演算結果表意画面171に戻るためのボタン273とを有している。
【0075】
一覧表示部は272には、表面検査装置における各検出器(図6では一例として8個の検出器の場合を示す)の検出値(電圧値)の基準値との差分が、光学条件毎(検査レシピ毎)に表示される。光学条件としては、検査レシピ番号(条件No.)の他に、それぞれの検査レシピにおける照明角度、偏光条件等が表示される。差分の表示においては、その基準値に対する差分の割合に応じて、各差分の表示部を色分けして表示する。例えば、検出器L1,L3,H1のように、差分がマージンの範囲内でありマージンの予め定めた割合を超えた場合(例えば、差分が15以上の場合)は、点線で示す領域275〜278,280を黄色など注意を促す色で表示する。また、検出器L4のように、差分がマージンを超えた場合は、点線で示す領域274、実線で表す領域279を赤色など警告を示す色で表示する。
【0076】
一覧表示部272において、例えば、検出器L4のように、光学条件(検査レシピ)によらず検出値の差分がマージンを超えている場合、その検出器L4の光電子増倍管が劣化し、交換必要であることがわかる。また、光学条件5に示すように、特定の光学条件において、検出器によらず検出値の差分がマージンを越えた場合は、その光学条件における感度変動が起こっていることがわかる。
【0077】
なお、一覧表示部272において、例えば、検出値電圧値と基準値の比率を表示しても良い。
【0078】
(2−5.3)来歴確認画面371
図7は、校正処理における来歴確認画面371を示す図である。
【0079】
図7において、来歴表示画面371は、検査レシピを一覧表示する検査レシピ表示部372と、補正パラメータの各要素パラメータを時系列的に表示するグラフ表示部373と、補正パラメータ演算結果表意画面171に戻るためのボタン374とを有している。
【0080】
検査レシピ表示部232で例えば検査レシピ375を選択すると、表示部376〜378に検査レシピ名、検査実行時間、及び要素パラメータ名が表示され、グラフ表示部373には検査レシピ372に関する補正パラメータの要素パラメータの演算結果が表示される。本例では、経時劣化パラメータPについて表示した場合を例に取り説明する。
【0081】
グラフ表示部373には、表面検査装置における各検出器(図7では一例として8個の検出器の場合を示す)の経時劣化パラメータを、過去複数回(例えば10回)の校正処理について時系列的にグラフとして表示する。また、経時劣化パラメータの管理上限値P_max及び管理下限値P_min(つまり、許容値の上限値及び下限値)をそれぞれ点線379,380で示す。この経時変化パラメータPについては、例えば、初期調整時は1.0に設定し、校正処理を行う毎に更新を行う。
【0082】
グラフ表示部373において、各検出器における経時劣化パラメータの左側の値(より古い値)は、初期値である1.0に近い値を示しているが、時間が経過するのに伴って、すなわち、検出器の光電子増倍管の総受光量が増加するのに伴って数値が増加しているのがわかる。例えば、検出器L4のように、経時劣化パラメータ許容値を超えている場合、その検出器L4の光電子増倍管が劣化し、交換必要であることがわかる。
【0083】
なお、光学的特性パラメータについて時系列的に表示した場合、光学系が正常である場合は、一定の範囲内で緩やかな変動を示すが、異常等が生じた場合は、その一定範囲を超えた変動を示すので、異常の発生及びその時期を確認することができる。
【0084】
(3)本発明の実施の形態の効果
以上のように構成した本実施の形態においては、検出器における光電子増倍管の印加電圧を補正する補正パラメータを、検出感度に影響する複数の要因のそれぞれに対応する要素パラメータに分離して管理するよう構成したので、オペレータが表面検査装置を構成する各部材の劣化状態や温度ドリフト状態など、種々の条件を総合的に加味して検出感度の調整の妥当性を検証することが容易となり、したがって、表面検査装置における検出感度の校正を容易に行うことができる。
【0085】
また、これにより、校正作業の熟練度の低いオペレータにおいても、熟練度の高いオペレータと同様に校正作業を行うことができるので、校正作業を行うオペレータに要求される熟練度を抑制することができ、校正作業、及び、それを含む表面検査全体の効率を向上することができる。
【0086】
(4)その他
以上に本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。
【0087】
本実施の形態においては、標準粒径の異物サンプルを表面に施した標準異物ウエハ110を用いて補正パラメータCompを算出するよう構成したがこれに限られず、予め定められた輝度の光を発生させる標準光源を用い、その標準光源からの光を検出器31〜34で検出し、標準光源からの光の輝度と各光電子増倍管331〜334の検出電圧値の関係が検量線に合うように各光電子増倍管331〜334の検出感度を補正する補正パラメータCompを算出しても良い。
【0088】
また、ウエハ10の表面(被検査面)に照明光を照射しながら、ウエハ10を回転ステージ12により回転駆動しつつ直進ステージ13により直線駆動することにより、照明光をウエハ10の表面に螺旋状に走査するよう校正したが、X軸方向及びY軸方向走査する構成であっても良い。
【0089】
さらに、照射光学系2によってウエハ10に照射される照明光のウエハ表面上における形状は線状であっても良い。
【0090】
また、検出光学系3は、ミラー、レンズ等を用いた結像系であっても良いし、散乱光における特定の回折光を除去する空間フィルタを備えていても良いし、楕円球を用いて散乱光を集光する構成としても良い。
【0091】
また、検出器として光電子増倍管を用いて散乱光を検出する構成としたが、時間遅延積分型センサやCCDセンサを用いて散乱光を検出する構成としても良い。
【符号の説明】
【0092】
1 ウエハ載置部
2 照明光学系
3 検出光学系
4 メカ制御部
5 全体制御部
6 入力処理部
7 情報表示部
8 記憶部
10 ウエハ
11 ウエハチャック
12 回転ステージ
13 直進ステージ
14 ベース
15 ノッチ
20 レーザ光源
21 照明光偏光フィルタ
22,23 反射ミラー
24 照明角度切換ミラー
31〜34 検出器
41 ロードポート
42 搬送アーム
110 標準異物ウエハ
111 ノッチ
113〜117 PSL塗布領域
311〜314 集光レンズ
321〜324 検出光偏光フィルタ
331〜334 光電子増倍管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の表面に照明光を照射する照射手段と、
前記照射手段からの照射光を前記被検査体の表面に走査する走査手段と、
前記被検査体の表面からの散乱光を検出する1つ以上の光検出手段と、
前記光検出手段の検出感度を測定するための基準となる測定光を発生する測定光発生手段から前記光検出手段に入射した測定光の検出結果と予め定めた基準値とを用いて前記光検出手段の検出感度を補正するための感度補正値を演算する補正値演算手段と、
前記感度補正値を表面検査装置の検出感度に影響する複数の要因に対応する要素パラメータに分離する分離演算手段と、
前記分離演算手段で分離した要素パラメータを記憶する記憶手段と
を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記測定光発生手段は、前記照射手段からの照明光に対して基準となる測定光を発生する基準被検査体を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記測定光発生手段は、基準となる測定光を前記光検出手段に入射する光源を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項4】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記複数の要素パラメータは、前記光検出手段の経時劣化状態に関する要素パラメータを含むことを特徴とする表面検査装置。
【請求項5】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記複数の要素パラメータは、前記光検出手段の光学特性に関する要素パラメータを含むことを特徴とする表面検査装置。
【請求項6】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記複数の要素パラメータは、前記光検出手段のリニアリティー特性に関する要素パラメータを含むことを特徴とする表面検査装置。
【請求項7】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記要素パラメータを時系列的に表示する表示手段を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項8】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記検出結果の基準値との差分、又は前記検出結果の基準値に対する比率を表示する表示手段を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項9】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記要素パラメータの少なくとも1つが予め定めた範囲外の場合、オペレータに警告を報知する警告手段を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項10】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記要素パラメータの少なくとも1つが予め定めた範囲外の場合、その原因が前記経時劣化であるか光学条件であるかを判定する判定手段を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項11】
被検査体の表面に照明光を照射する照射手段と、前記照射手段からの照射光を前記被検査体の表面に走査する走査手段と、前記被検査体の表面からの散乱光を検出する1つ以上の光検出手段とを備え、
前記光検出手段の検出感度を測定するための基準となる測定光を発生する測定光発生手段から前記光検出手段に入射した測定光の検出結果と予め定めた基準値とを用いて前記光検出手段の検出感度を補正するための感度補正値を演算し、該感度補正値を表面検査装置の検出感度に影響する複数の要因に対応する要素パラメータに分離して記憶することを特徴とする表面検査装置の校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−203776(P2010−203776A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46279(P2009−46279)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】