説明

被測定物の温度検出装置、温度検出方法及び温度検出装置を備えた加熱調理器

【課題】被測定物がプランクの法則に基づく黒色体又は灰色体若しくは被測定物がプランクの法則に基づかない非灰色体の何れに拘わらず、被測定物の温度測定の際に当該被測定物を構成する物質の放射率を設定することなく被測定物の温度を高精度に測定する。
【課題手段】被測定物に対して赤外線領域における複数の異なる波長領域を含む赤外線を照射する赤外線照射手段と前記赤外線照射手段のオフ時に前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線強度と前記赤外線照射手段のオン時に前記被測定物から放射及び反射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線強度と、を検出する赤外線検出手段と、前記赤外線照射手段のオン/オフ時のそれぞれにおける前記赤外線検出手段により検出された前記複数の異なる波長領域の赤外線強度に基づいて前記被測定物の温度を算出する演算制御手段と有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出装置及び温度検出方法に関し、さらに、ガス又は電気等のエネルギにより加熱される鍋、フライパン等の調理器具の底面温度又は加熱調理される料理等の被加熱物を非接触で検出する温度検出装置を備えたガス調理装置及び電気調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度測定対象の物体(本願では、「被測定物」という)の表面温度(以下、適宜単に「温度」という)を非接触状態で測定する温度測定技術が、従来から種々知られている。
【0003】
被測定物はその温度に依存した赤外線領域のエネルギを放射するため、被測定物の温度を非接触状態で測定するためには、赤外線センサを使用して被測定物が放射する赤外線強度を測定することとなる。
【0004】
しかし、従来の放射温度計においては、被測定物を構成する物質の種類により放射率が異なることから、被測定物の放射率が既知の場合には当該既知の放射率を設定し、被測定物の放射率が未知の場合には当該被測定物の放射率を温度測定に先立って測定し測定した放射率を設定する必要があった。
【0005】
一方、被測定物の温度測定に先立って当該被測定物固有の放射率を設定するのは煩雑であることから、被測定物から放射される赤外線放射エネルギを異なる複数の波長域においてそれぞれ測定し、それらの比を求め、比と温度との対応関係から被測定物の温度を測定するようにした温度測定方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、鍋やフライパン等の被加熱物の温度を検出するために、被加熱物から放射された赤外線の赤外線強度を検出する検出手段が、異なる複数(2つ)の赤外線波長域における夫々の赤外線強度を検出し、当該複数の赤外線強度の関係に基づいて被加熱物の温度を測定するようにした温度測定技術も知られている(例えば、特許文献2)。
【0007】
一方、上記のように被測定物から放射される赤外線エネルギだけを検出するのではなく、被測定物からの赤外線反射光を測定することにより被測定物の温度をより正確に測定しようとした温度測定技術も知られている。
【0008】
特許文献3は、調理用の鍋やフライパンが載置された天板からの赤外線を検出する第1のセンサと、前記天板に反射板を貼った部位からの赤外線を検出する第2のセンサとを設け、両センサが検出した温度の差分に基づいて加熱手段の加熱を制御するようにした調理器を開示している。
【0009】
また、特許文献4及び5は、被測定物に所定の赤外線波長域の光を照射する発光手段とその反射光を検出する反射光検知手段とを設けて、発光手段からの照射光の強さと反射光検知手段が検出した反射光の強さに基づいて当該被測定物の赤外線波長域の反射率を求め、この反射率に基づいて被測定物の放射率を算出することにより被測定物の温度を検出する温度測定方式を備えた加熱調理器を開示している。
【特許文献1】特開平6−137953号公報
【特許文献2】特開2002−340339号公報
【特許文献3】特開2003−347028号公報
【特許文献4】特開2003−243141号公報
【特許文献5】特開2004−227838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の特許文献1又は2に記載された温度測定方法においては、被測定物がプランクの法則に従う物質(黒体または灰色体)の場合には比較的高い精度で温度が測定可能であるものの、被測定物がプランクの法則に従わない物質(すなわち「非灰色体」)の場合には、測定誤差が大きく高精度な温度測定はできない。すなわち、被測定物が非灰色体の場合は、異なる赤外線波長域で物質の放射率が異なることから赤外線検出素子の出力比から算出した温度はその真値から大きく離れてしまうこととなるのである。
【0011】
また、特許文献3乃至5に記載した温度測定方法では、放射率を算出することから、被測定物が黒体、灰色体又は非灰色体の区別なく定常状態であれば比較的精度良く温度を測定することが可能であるものの、赤外線を検知する部分の窓やレンズが汚れたり、視野欠け等によりセンサの出力が低下すると、算出される放射率と温度は、その真値から離れてしまう。
【0012】
本発明は、被測定物がプランクの法則に基づく黒色体又は灰色体若しくは被測定物がプランクの法則に基づかない非灰色体の何れに拘わらず、被測定物の温度測定の際に当該被測定物を構成する物質の放射率を設定することなく、被測定物の温度を高精度に測定することが可能な温度検出装置、温度検出方法及び温度検出装置を備えた調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このため、本発明は、被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出装置であって、前記被測定物に対して、赤外線領域における複数の異なる波長領域を含む赤外線を照射する赤外線照射手段と、前記赤外線照射手段のオフ時に前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線強度と、前記赤外線照射手段のオン時に前記被測定物から放射及び反射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線強度と、を検出する赤外線検出手段と、前記赤外線照射手段のオン/オフ制御を行うと共に前記赤外線照射手段のオン時及びオフ時のそれぞれにおける前記赤外線検出手段により検出された前記複数の異なる波長領域の赤外線強度に基づいて前記被測定物の温度を算出する演算制御手段と、の各手段を備えたことを特徴とする温度検出装置を提供するものである。
【0014】
このように、本発明は、被測定物からの複数の異なる波長領域の赤外線輻射光の強度と赤外線反射光の強度とに基づいて被測定物の温度を算出することを特徴とするものであり、前記赤外線照射手段のオン時に検出された前記赤外線強度から前記赤外線照射手段のオフ時に検出された前記赤外線強度を差し引くことにより前記被測定物からの反射光の赤外線強度を算出するようにしている。
【0015】
ここで、前記赤外線検出手段は、前記赤外線照射手段のオフ時において、前記被測定物から放射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線を受光する輻射量検出手段と、前記赤外線照射手段のオン時において、前記被測定物から放射及び反射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線を受光する反射光検出手段とにより構成される。
【0016】
そして、前記輻射光検出手段と前記反射光検出手段は、同一の赤外線検出素子により構成することが可能であるが、別個の複数の赤外線センサで構成するようにしてもよい。
【0017】
ところで、前記赤外線照射手段は、前記複数の異なる赤外線波長領域の赤外線を発光する発熱体又は発光ダイオード等の発光手段により構成される。そして、前記赤外線照射手段を発熱体で構成した場合には、前記発熱体が発光した赤外線光を前記被測定物の被測定箇所に向けさせるための光学手段を含む。
【0018】
また、前記反射光検出手段は、前記複数の異なる赤外線波長領域の各々の赤外線光を透過させる複数のフィルタ手段と前記複数のフィルタ手段を透過した各々の赤外線光を受光する複数の反射光受光手段とから構成される。同様に、前記輻射量検出手段も、前記複数の異なる赤外線波長領域の各々の赤外線光を透過させる複数のフィルタ手段と、前記複数のフィルタ手段を透過した各々の赤外線光を受光する複数の反射光受光手段とから構成される。
【0019】
ここで、前記複数の異なる赤外線波長領域は、0.7乃至4.2μm又は8.0乃至20μmの中から選択される。
【0020】
本発明の演算制御手段は、前記被測定物の温度算出値をデジタル値又はアナログ値の電気信号に変換して出力する出力手段を備え、本発明の温度検出装置は、外部からエネルギが与えられて加熱される鍋、フライパン等の調理器具の温度測定を行うガス調理装置又は電気調理装置に適用可能である。この場合、前記複数の異なる赤外線波長領域は、1.5乃至1.8μm、2.0乃至2.4μm、3.1乃至4.2μm又は8.0乃至12.0μmの中から選択される。
【0021】
本発明は、さらに、被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出方法であって、(a)前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における第1の波長領域と第2の波長領域の赤外線強度を検出するステップと、(b)前記被測定物に対して、前記第1の波長領域の赤外線を照射するステップと、(c)前記被測定物からの前記第1の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、(d)前記被測定物に対して、前記第2の波長領域の赤外線を照射するステップと、(e)前記被測定物からの前記第2の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、(f)各波長領域における赤外線の放射と赤外線強度の差に基づいて前記被測定物の温度を算出するステップと、の各ステップを有することを特徴とする温度検出方法を提供するものである。
【0022】
ここで、前記ステップ(f)における前記被測定物の温度を算出するステップは、前記ステップ(c)において検出された前記第1の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第1の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、前記ステップ(e)において検出された前記第2の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第2の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、の各ステップを含む。
【0023】
本発明に係る温度測定方法は、被測定物からの3つの異なる波長領域の赤外線の放射及び輻射光の強度と赤外線反射光の強度の差に基づいて被測定物の温度を算出することにより、より高精度の温度測定を可能にするものである。
【0024】
また、被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における2又は3の複数の異なる波長領域の赤外線強度を測定するステップは、その測定結果が記憶装置に一時的に格納させておくことにより、被測定物に対して2又は3の複数の異なる波長領域の赤外線を照射するステップとその反射光強度を検出するステップとの前後は問わない。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明においては、被測定物からの複数の異なる波長領域の赤外線輻射光の強度と赤外線反射光の強度とに基づいて被測定物の温度を算出することにより、被測定物がプランクの法則に基づく黒色体又は灰色体若しくは被測定物がプランクの法則に基づかない非灰色体の何れに拘わらず、被測定物の温度測定の際に当該被測定物を構成する物質の放射率を設定することなく、被測定物の温度を高精度に測定することを可能にしたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る温度検出装置及び温度検出方法の詳細を説明する。最初に、本発明に係る温度検出方式に関する原理的事項の簡単な説明を行う。
【0027】
上述したように、従来技術において被測定物の温度を非接触状態で測定しようとする場合、温度測定を行う際に当該被測定物を構成する物質の放射率を調べてマニュアル操作により設定する必要があったが、本発明では、被測定物からの複数(例えば、2又は3)の異なる波長領域の赤外線輻射光の強度と赤外線反射光の強度とに基づいて被測定物の温度を算出することにより、物質の放射率を設定しなければならない従来技術の煩雑性を排除している。
【0028】
プランクの法則によれば、Tを絶対温度〔K〕、第1放射定数Cを3.74×104〔W/μm/cm〕、第2放射定数Cを1.44×104〔μmK〕、波長をλ〔μm〕としたとき、黒体の分光放射発散度M〔W/cmμm〕は、下記の数式(1)で示される。
M=Cλ−5{exp(C/λT)−1}−1……………(1)
【0029】
図14は、プランクの法則に基づく波長−放射強度のグラフを示す。図14に示した例では、波長(μm)による赤外線放射エネルギを、3通りの温度(100℃、200℃、300℃)毎にプロットして示している。そして、図14に示すグラフには、以下の特徴がある。
(1)黒体温度が上昇すると、全ての波長で赤外線放射エネルギが増大する。
(2)温度上昇に伴って、赤外線放射エネルギのピーク波長がより短い波長の方向に遷移する。
【0030】
一般の物質は、理想的な黒体ではないため、その分光放射発散度をM′とすれ数式(2)が成立する。
M′=εM ………………………………………………………(2)
ここで、定数εは1よりも小さい係数であり、放射率と呼ばれている。
【0031】
異なる2波長に対応した赤外線センサの出力比から加熱物の温度を検知する前述の手段は、(1)式と(2)式に基づく検知手段であるが、実際には、前述したとおり、2波長域で放射率の異常を示す物質(非灰色体)が存在するので、非灰色体乃至は非灰色体の傾向を示す物質についての補正を行う必要がある。
【0032】
図15に記載のグラフは、種々の物質の200℃における波長−赤外線放射エネルギを外部光源式赤外分光計(FT−IR)で測定した測定結果を示す。図15のグラフにおいて、黒体炉、黒色塗料、及び銀色塗料の物質は、前述のプランクの法則に従った波長−赤外線放射エネルギ特性を示し、黒体炉を基準値「1」として放射率を算出すると、黒色塗料、及び銀色塗料は、それぞれ0.94、0.60となり、波長に依存しない灰色体であることが分かる。しかし、アルマイト処理又は有機塗料をコーティングした物質は、波長により赤外線放射エネルギが不連続に変化している。
【0033】
図16は、図15に示した「波長−赤外線放射エネルギ特性」を、「波長−放射率特性」に変換したグラフである。図16に示すとおり、アルマイト処理又は有機塗料をコーティングした物質は、波長が5〜6〔μm〕の帯域を境界にして放射率が大きく変化していることが理解できる。
【0034】
図17は、前述の各物質について、2波長式放射温度計で測定した温度−出力比を示すグラフである。図17に示すように、2波長のうち、一方の波長域は3.6〜4〔μm〕帯、他方が9.1〜9.7〔μm〕帯である。図17に示すグラフから、黒色塗料及び銀色塗料の物質は、放射率が異なっても2波長の出力比が1本の特性線上に在ることから所定の換算式により正確に温度測定を行うことが可能である。しかし、アルマイト処理又は有機塗料をコーティングした物質は、黒色塗料、及び銀色塗料の物質に比べて出力比が上方にシフトしており、測定誤差が大きくなってしまうことが理解される。このため、何らかの方法によって被測定物が非灰色体乃至は非灰色体の傾向を示す物質についての補正を行う必要がある。尚、図16に示した2波長式放射温度計で測定した温度−出力比を示すグラフから分かるように、2波長のうち、一方の波長域は3.6〜4〔μm〕帯、他方が9.1〜9.7〔μm〕帯である。
【0035】
このため、本発明においては、光源を設け、複数の異なる赤外線波長域の赤外線反射光の強さを測定することにより被測定物の放射率及び温度を算出する方式(複数波長式放射温度測定方式)を採用することにより、例えば、アルマイト処理又は有機塗料をコーティングした物質であっても、温度測定の際にその放射率を入力設定することなく正確にその温度を測定することができるのである。
【0036】
以下、本発明に係る温度検出装置について図面の記載に基づいて詳細に説明する。図1は、本温度検出装置の全体構成の一例を示すものである。図1においては、本発明の構成を理解し易くするために2つの異なる赤外線波長領域における赤外線強度を検出するようにした実施の形態を記載しているが、3つ又はそれ以上の赤外線波長領域における赤外線強度を検出する構成の場合は、赤外線検出手段の構成数が赤外線波長領域の数に応じて増加することとなる。これにより温度測定をより精緻に行うことが可能である。
【0037】
図1に示すように、本温度検出装置は、被測定物Nに対して、一つの例として赤外線領域における2つの異なる波長領域を含む赤外線を照射する赤外線照射手段11と、赤外線照射手段11のオフ時に被測定物Nからその表面温度に応じて放射される赤外線領域における2つの異なる波長領域の赤外線強度を測定すると共に、赤外線照射手段11のオン時に被測定物Nから放射及び反射される赤外線領域における2つの異なる波長領域の赤外線強度とを検出する赤外線検出手段21と、赤外線照射手段11のオン/オフ制御を行うと共に、赤外線照射手段11のオン時及びオフ時のそれぞれにおける赤外線検出手段21により検出された2つの異なる波長領域の赤外線強度に基づいて被測定物Nの温度を算出する演算制御手段31の各手段を備える。
【0038】
演算制御手段31は、本温度検出装置の全体制御を司るCPU32と、制御プログラムや固定値を格納するROM33と、赤外線検出手段21の出力信号であってA/D変換回路37の信号値等を一時的に格納するRAM34、及び押釦やキースイッチ等から構成される入力手段35と、から構成され、さらに、赤外線検出手段21の出力信号を増幅する増幅回路(AMP)36と、AMP36のアナログ出力信号をデジタル値に変換するA/D変換回路37とから構成される入力インタフェースと、赤外線照射手段11に直接接続されて赤外線照射手段をオン/オフするための出力インタフェース38とを含む。ところで、本演算制御手段31は、これを構成するCPU32、ROM33、RAM34及び入出力インタフェース37、38等は、これらの機能を一つの集積回路内に収納したいわゆるワンチッププロセッサで構成するようにしてもよい。
【0039】
そして、この出力インタフェース38には、本温度検出装置が測定した被測定物の測定結果をデジタル又はアナログ表示する表示器100や、若しくは温度測定結果に基づいて被加熱物に対して供給する燃焼ガス量や電気エネルギ量を調整する調理装置101が接続されることとなる。
【0040】
演算制御手段31は、赤外線照射手段11のオン時に赤外線検出手段21により検出された第1及び第2の波長領域の赤外線強度から赤外線照射手段11のオフ時に赤外線検出手段21により検出された第1及び第2の波長領域の赤外線強度をそれぞれ差し引いて、それぞれの差を求めることにより被測定物Nからの反射光の赤外線強度を算出するのである。
【0041】
図2は、図1に示した赤外線照射手段11と赤外線検出手段の構成の例を模式的に表したものである。
図2(a)は、赤外線照射手段11が単一の発光体により構成され、赤外線検出手段21を構成する輻射量検出手段と反射光検出手段とが同一の受光素子で構成された例を示す。ここで、後述するように、輻射量検出手段とは、赤外線照射手段11のオフ時において被測定物Nから放射される赤外線領域における2つの異なる波長領域の赤外線を受光する受光センサであり、反射光検出手段とは、赤外線照射手段11のオン時において被測定物Nから放射及び反射される赤外線領域における2つの異なる波長領域の赤外線を受光する受光センサを、それぞれ意味する。
【0042】
図2(a)において、赤外線照射手段11は、単一の発光体12と、発光体12から放射された赤外線を被測定物Nの測定ポイントに向けるレンズ等の光学手段13とから構成される。図2(a)の例では、発光体12として、本発明において必要な赤外線領域をカバーする赤外線光を照射する発熱体を使用しているが、広域の赤外線領域をカバーする他の発光手段であっても良い。また、光学手段13は、凸レンズや凹レンズの光線を屈折させる手段の他、スリット、反射鏡等により構成するようにしても良い。
【0043】
図2(a)に示す赤外線検出手段21は、第1の赤外線波長領域の赤外線光を受光するための第1の赤外線検出器21aと第2の赤外線波長領域の赤外線光を受光するための第2の赤外線検出器21bとから構成されている。第1の赤外線検出器21aと第2の赤外線検出器21bは、上述した輻射量検出手段と反射光検出手段とを兼ねている。すなわち、第1の赤外線検出器21aと第2の赤外線検出器21bは、赤外線照射手段11のオフ時において被測定物Nから放射される赤外線領域における2つの異なる波長領域の赤外線をそれぞれ受光すると共に、赤外線照射手段11のオン時において被測定物Nから放射及び反射される赤外線領域における2つの異なる波長領域の赤外線をそれぞれ受光するようにしている。
【0044】
そして、第1の赤外線検出器21aと第2の赤外線検出器21bは、それぞれ、第1及び第2の赤外線波長領域の各々の赤外線光を透過させるフィルタ手段25a、25bと、当該フィルタ手段25a、25bをそれぞれ透過した2つの赤外線光を受光する反射光受光素子24a、24bとから構成され、必要に応じて外乱光の反射光受光素子24a、24bへの侵入を防止する窓手段26a、26bを備える。
【0045】
ここで、前記した2つの異なる赤外線波長領域は、0.7乃至4.2μm又は8.0乃至20μmの中から選択される。但し、被測定物が調理器又は食物等の被加熱物の場合は、1.5乃至1.8μm、2.0乃至2.4μm、3.1乃至4.2μm又は8.0乃至12.0μmの中から選択されようにすると良い。
【0046】
図2(b)は、赤外線照射手段11が2つの異なる赤外線域の赤外線光を個別に照射する2つの発光手段12a、12bにより構成され、赤外線検出手段21を構成する輻射量検出手段22と反射光検出手段23とを別個の受光手段で構成された例を示す。ここで、輻射量検出手段22は、赤外線照射手段12のオフ時において被測定物Nから放射される赤外線領域における2つの異なる波長領域の赤外線を受光する。そして、反射光検出手段23は、赤外線照射手段11のオン時において被測定物Nから放射及び反射される赤外線領域における2つの異なる波長領域の赤外線を受光する。
【0047】
図2(b)において、赤外線照射手段11は、第1の赤外線領域の赤外線光を照射する第1の発光手段12aと、第2の赤外線領域の赤外線光を照射する第1の発光手段12bと、から構成されている。そして、必要に応じて、発光手段体12a、12bからそれぞれ放射された赤外線を被測定物Nの測定ポイントに向けるレンズ等の光学手段13a、13bと含む。尚、図2(a)に示した赤外線照射手段11を、図2(a)に記載した単一の発光体12と光学手段13により構成するようにしても良い。
【0048】
図2(b)に示す赤外線検出手段21は、先に説明したように、輻射量検出手段22と反射光検出手段23とにより構成され、それぞれが図2(a)で説明した第1の赤外線波長領域の赤外線光を受光するための第1の赤外線検出器21aと第2の赤外線検出器21bとで構成される。この場合、各赤外線検出器21はそれぞれが、図2(a)で示した第1及び第2の赤外線波長領域の各々の赤外線光を透過させるフィルタ手段25a、25bと、当該フィルタ手段25a、25bをそれぞれ透過した2つの赤外線光を受光する反射光受光素子24a、24bとから構成され、必要に応じて外乱光の反射光受光素子24a、24bへの侵入を防止する窓手段26a、26bを備えることとなる。
【0049】
次に、本発明に係る温度制御方法について説明する。
【0050】
図3は、本発明に係る温度検出方法の制御フローの第1の例を示す。以下説明する制御フローの第1の例と第2の例(図4に示す)は、被測定物からの2つの異なる波長領域の赤外線輻射光の強度、放射及び赤外線反射光の強度とに基づいて被測定物の温度を算出する例である。
【0051】
図3において、最初に、温度測定開始ボタン(図1に示す入力手段35)の押圧操作等により被測定物の第1の波長領域と第2の波長領域とにおける輻射赤外線強度を検出する(ステップS1)。次に、被測定物に対して、第1の波長領域の赤外線を照射し(ステップS2)、被測定物からの第1の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS3)。
【0052】
次に、被測定物に対して、第2の波長領域の赤外線を照射し(ステップS4)、被測定物からの第2の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS5)。そして、後述するサブルーチンAに制御を移し、各波長領域における赤外線の放射及び赤外線強度の差に基づいて被測定物の温度を算出するのである(ステップS6)。
【0053】
図4は、本発明の温度検出方法の制御フローにおけるサブルーチンAの処理の例を示す。
最初に、検出された第1の波長領域の照射赤外線の反射光における赤外線強度と、検出された第1の波長領域における輻射赤外線強度との差を検出する(ステップS21)。そして、検出された第2の波長領域の照射赤外線の反射光における赤外線強度と、検出された第2の波長領域における輻射赤外線強度との差を検出し(ステップS22)、最後に、前記した二つの各波長領域における放射と赤外線強度の差に基づいて、被測定物の温度を算出するのである(ステップS23)。
【0054】
図5は、本発明に係る温度検出方法の制御フローの第2の例を示す。
最初に、温度測定開始ボタン(図1に示す入力手段35)の押圧操作等により、被測定物の第1の波長領域における輻射赤外線強度を検出する(ステップS11)。次に、被測定物に対して、第1の波長領域の赤外線を照射し(ステップS12)、被測定物からの第1の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS13)。
【0055】
次に、被測定物の第2の波長領域における輻射赤外線強度を検出する(ステップS14)。そして、被測定物に対して第2の波長領域の赤外線を照射し(ステップS15)、被測定物からの第2の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS16)。
【0056】
最後に、図4に示したサブルーチンAに制御を移し、上記ステップ(ステップS11,S13,S14,S16)で検出された各々の赤外線強度と放射に基づいて被測定物の温度を算出するのである(ステップS17)。
【0057】
以下説明する制御フローの第3の例(図6に示す)と第2の例(図7に示す)は、被測定物からの3つの異なる波長領域の赤外線輻射光の強度と赤外線反射光の強度とに基づいて被測定物の温度を算出する例である。
【0058】
図6は、本発明に係る温度検出方法の制御フローの第3の例を示す。
【0059】
最初に、温度測定開始ボタン(図1に示す入力手段35)の押圧操作等により、被測定物の第1の波長領域、第2の波長領域、及び第3の波長領域における輻射赤外線強度を検出する(ステップS31)。そして、被測定物に対して、第1の波長領域の赤外線を照射し(ステップS32)、被測定物からの、第1の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS33)。
【0060】
次に、被測定物に対して第2の波長領域の赤外線を照射し(ステップS34)、被測定物からの、第2の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS35)。さらに、被測定物に対して第3の波長領域の赤外線を照射し(ステップS36)、被測定物からの第3の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS37)。
【0061】
最後に、供述するサブルーチンB(図7)に制御を移し、上記ステップ(ステップS31,S33,S35,S37)で検出された各々の赤外線強度及び放射に基づいて被測定物の温度を算出するのである(ステップS38)。
【0062】
図7は、本発明の温度検出方法の制御フローにおけるサブルーチンBの処理の例を示す。
最初に、検出された第1の波長領域の照射赤外線の反射光における赤外線強度と、検出された第1の波長領域における輻射赤外線強度との差を検出する(ステップS61)。次に、検出された第2の波長領域の照射赤外線の反射光における赤外線強度と、検出された第2の波長領域における輻射赤外線強度との差を検出する(ステップS62)。さらに、検出された第3の波長領域の照射赤外線の反射光における赤外線強度と、検出された第3の波長領域における輻射赤外線強度との差を検出する(ステップS63)。
【0063】
そして最後に、上記各ステップで検出された各々の赤外線強度の差と放射に基づいて、被測定物の温度を算出するのである(ステップS64)。
【0064】
図8は、本発明の温度検出方法の制御フローの第4の例を示す。
最初に、温度測定開始ボタン(図1に示す入力手段35)の押圧操作等により、被測定物の第1の波長領域における輻射赤外線強度を検出する(ステップS41)。そして、被測定物に対して、第1の波長領域の赤外線を照射し(ステップS42)、被測定物からの第1の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS43)。次に、被測定物の第2の波長領域における輻射赤外線強度を検出する(ステップS44)。そして、被測定物に対して、第2の波長領域の赤外線を照射し(ステップS45)、被測定物からの第2の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS46)。
【0065】
さらに、被測定物の第3の波長領域における輻射赤外線強度を検出する(ステップS47)。そして、被測定物に対して第3の波長領域の赤外線を照射し(ステップS48)、被測定物からの第3の波長領域の赤外線の放射及び反射強度を検出する(ステップS49)。
【0066】
最後に、上記したサブルーチンB(図7)に制御を移し、前記した3つの波長領域における放射と赤外線強度の差に基づいて被測定物の温度を算出するのである(ステップS50)。
【0067】
以下、赤外線検出手段21の検出素子の出力値に基づいて被測定物の温度算出の際に必要となる技術的関連事項について説明する。
【0068】
図9に示すグラフは、被測定物を構成する種々の物質の鍋底からの2つの異なる波長領域(2波長帯域)の赤外線の放射と反射光を、当該2つの異なる波長領域に対応した2つの受光素子が受光し、各波長領域における放射分を差し引いた時の受光素子の出力を示す。図9に示す素子出力は、図2で示した赤外線検出手段21を構成する受光素子24a、24bのそれぞれの出力値(但し、所定の増幅率で増幅した値)を示す。
【0069】
図10は、図9に示すグラフを放射率に換算して示したグラフである。
図10において、銅鍋の放射率を0.1として、図9に示すグラフをキルヒホッフの法則で換算している。この図10からは、ステンレス鍋、黒色鍋、銀色鍋は、それぞれ2つの異なる波長域における放射率が近接しており、よって、これらの鍋は灰色体であることが判別できる。一方、アルマイト鍋及び有機塗料をコーティングした鍋は、2つの波長域における放射率に前記灰色体よりも大きな差が有り、従って、これらの鍋は非灰色体であると判別できる。これにより、本発明の温度検出装置は、被測定物Nが灰色体であるか、或いは非灰色体であるかを判別することができる。
【0070】
図11は、アルマイト鍋及び有機塗料がコーティグされた鍋に関する図10のデータを補間して求めた非灰色体乃至は非灰色体の傾向を示す物質を、灰色体の物質に補正するための出力比−補正値を示すグラフである。
【0071】
図12は、図11に示すグラフに基づいて補正された出力比と温度との関係を示すグラフである。図12からは、加熱物Nが非灰色体乃至は非灰色体の傾向を示す物質であっても、図11に示すグラフに基づいて加熱物Nから放射される2波長帯域の赤外線の出力比を補正すれば、プランクの法則に従う黒体または灰色体と同様に、前記補正された出力比に基づいて正確な温度を求めることができることが理解されよう。
【0072】
図13は、本発明が適用される加熱調理装置101(図1)としてガスコンロの例を説明するものである。ここで、本発明の赤外線検出装置を構成する赤外線照射手段11と2波長域の赤外線検出手段21の配置位置は、ガスの燃焼炎自体から放射される赤外線を受けても支障が生じない波長領域を使用しているため、図13に示した位置に限定されるものではない。図1において説明したように、上記した本発明の演算制御装置31は、2波長域の赤外線検出手段21の出力値を入力する。図13に示す加熱調理器101は、ガスコンロに限らず電気コンロ等の他の加熱調理器であってもよい。
【0073】
図13において、ガスコンロ又は電気コンロ101には、平面状の上面を有する天板1と、天板1に設けられた加熱口2と、加熱口2の上方に離間させて鍋等の被測定物Nを搭載可能な五徳4と、燃料ガスGを燃焼させ加熱口2から上方に燃焼ガスFを排出して被測定物Nを加熱するバーナ3とが設けられている。また、加熱口2は、天板1に形成された円形の開口であり、バーナ3からの燃焼ガスFが良好に上方に排出される大きさに形成されている。
【0074】
図13において、バーナ3はブンゼン燃焼式の内炎式バーナであり、燃料ガスGを噴出させるガスノズル6と、ガスノズル6からの燃料ガスGの噴出により、内部に燃料ガスGと空気との混合気が供給される混合管5と、加熱口2の下方に設けられ混合気が内部に供給される環状ケーシング部材3bと、環状ケーシング部材3bの環状の内面に形成され、混合気を環状の内向きに噴出させて燃焼させる複数の炎口3aとを有して構成されている。
【0075】
このようなバーナ3においては、混合管5から環状ケーシング部材3b内に供給された燃料ガスGと空気との混合気は炎口3aから環状の内向きの概略水平方向に噴出され、その噴出された燃料ガスGと空気との混合気が燃焼した一次火炎は浮力により上方の加熱口2側に向きを変えて加熱口2を良好に通過し、二次火炎が加熱口から上方に向かって形成されることになり、燃焼ガスFは、加熱口2を介して被測定物N側に良好に排出される。さらに、コンロ101には、ガスノズル6に供給される燃料ガスGの流量を調整可能なバーナ調整弁51と、この調整弁51を制御してバーナ3における燃焼量を調整制御する燃焼制御回路50が設けられている。また、バーナ3の環状ケーシング部材3b内の下方には、加熱口2を介して落下した煮零れ等を受けるための汁受け皿8が設けられている。
【0076】
以上詳しく説明したとおり、本発明に係る温度検出装置及び温度検出方法においては、被測定物Nからの複数の異なる波長領域の赤外線輻射光の強度と赤外線反射光の強度とに基づいて被測定物Nの温度を算出するものであり、赤外線照射手段11のオン時に検出された赤外線強度から、赤外線照射手段11のオフ時に検出された赤外線強度を差し引くことにより前記被測定物からの反射光の赤外線強度を算出するようにしている。
【0077】
これにより、本発明は、被測定物がプランクの法則に基づく黒色体又は灰色体若しくは被測定物がプランクの法則に基づかない非灰色体の何れに拘わらず、被測定物の温度測定の際に当該被測定物を構成する物質の放射率を設定することなく、被測定物の温度を高精度に測定することを可能にしたのである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出装置及び温度検出方法に関し、さらに、ガス又は電気等のエネルギにより加熱される鍋、フライパン等の調理器具の底面温度又は加熱調理される料理等の被加熱物を非接触で検出する温度検出装置を備えたガス調理装置及び電気調理装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本温度検出装置の全体構成の一例を示す。
【図2】本発明を構成する赤外線照射手段と赤外線検出手段の構成の例を模式的に表した図である。
【図3】本発明に係る温度検出方法の制御フローの第1の例を示す。
【図4】本発明の温度検出方法の制御フローにおけるサブルーチンAの処理の例を示す。
【図5】本発明に係る温度検出方法の制御フローの第2の例を示す。
【図6】本発明に係る温度検出方法の制御フローの第3の例を示す。
【図7】本発明の温度検出方法の制御フローにおけるサブルーチンBの処理の例を示す。
【図8】本発明に係る温度検出方法の制御フローの第4の例を示す。
【図9】被測定物を構成する種々の物質の鍋底からの2つの異なる波長領域(2波長帯域)の赤外線反射光を2つの受光素子が受光した時の受光素子の出力を示すグラフである。
【図10】図9に示すグラフを放射率に換算して示したグラフである。
【図11】アルマイト鍋及び有機塗料がコーティグされた鍋に関する図10のデータを補間して求めた非灰色体乃至は非灰色体の傾向を示す物質を、灰色体の物質に補正するための出力比−補正値を示すグラフである。
【図12】図11に示すグラフに基づいて補正された出力比と温度との関係を示すグラフである。
【図13】本発明が適用される加熱調理装置としてガスコンロの例を説明する図である。
【図14】プランクの法則に基づく波長−放射強度のグラフを示す。
【図15】種々の物質の200℃における波長−赤外線放射エネルギを外部光源式赤外分光計(FT−IR)で測定した測定結果を示すグラフである。
【図16】図15に示した「波長−赤外線放射エネルギ特性」を、「波長−放射率特性」に変換したグラフである。
【図17】種々の物質について2波長式放射温度計で測定した温度−出力比を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
11:赤外線照射手段
12:赤外発光体(発熱体)
13:光学手段
21:赤外線検出手段
22:輻射量検出手段
23:反射光検出手段
24:受光素子
25:フィルタ手段
26:検出窓
31:演算制御手段
32:CPU
33:ROM
34:RAM
35:入力手段
36:増幅器(AMP)
37:アナログ/デジタル変換器(A/D変換器)
38:出力手段(出力インタフェース)
100:温度表示器
101:調理装置(コンロ)
N :非測定物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出装置であって、
前記被測定物に対して、赤外線領域における複数の異なる波長領域を含む赤外線を照射する赤外線照射手段と、
前記赤外線照射手段のオフ時に前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線強度と、前記赤外線照射手段のオン時に前記被測定物から放射及び反射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線強度と、を検出する赤外線検出手段と、
前記赤外線照射手段のオン/オフ制御を行うと共に、前記赤外線照射手段のオン時及びオフ時のそれぞれにおける前記赤外線検出手段により検出された前記複数の異なる波長領域の赤外線強度に基づいて前記被測定物の温度を算出する演算制御手段と、
の各手段を備えたことを特徴とする温度検出装置。
【請求項2】
前記赤外線検出手段は、
前記赤外線照射手段のオフ時において、前記被測定物から放射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線を受光する輻射量検出手段と、
前記赤外線照射手段のオン時において、前記被測定物から放射及び反射される赤外線領域における前記複数の異なる波長領域の赤外線を受光する反射光検出手段と、により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項3】
前記輻射量検出手段と前記反射光検出手段は、同一の赤外線検出素子により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の温度検出装置。
【請求項4】
前記演算制御手段は、前記赤外線照射手段のオン時に検出された前記赤外線強度から前記赤外線照射手段のオフ時に検出された前記赤外線強度を差し引くことにより前記被測定物からの反射光の赤外線強度を算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の温度検出装置。
【請求項5】
前記赤外線照射手段は、前記複数の異なる赤外線波長領域の赤外線を発光する発熱体により構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかの項に記載の温度検出装置。
【請求項6】
前記赤外線照射手段は、前記発熱体が発光した赤外線光を前記被測定物の被測定箇所に向けさせるための光学手段を含むことを特徴とする請求項5に記載の温度検出装置。
【請求項7】
前記赤外線照射手段は、前記複数の異なる赤外線波長領域の各々の赤外線光を発光する複数の発光手段により構成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかの項に記載の温度検出装置。
【請求項8】
前記反射光検出手段は、
前記複数の異なる赤外線波長領域の各々の赤外線光を透過させる複数のフィルタ手段と、
前記複数のフィルタ手段を透過した各々の赤外線光を受光する複数の反射光受光手段と、
から構成されたことを特徴とする請求項2乃至7の何れかの項に記載の温度検出装置。
【請求項9】
前記輻射量検出手段は、
前記複数の異なる赤外線波長領域の各々の赤外線光を透過させる複数のフィルタ手段と、
前記複数のフィルタ手段を透過した各々の赤外線光を受光する複数の反射光受光手段と、
から構成されたことを特徴とする請求項2乃至8の何れかの項に記載の温度検出装置。
【請求項10】
前記複数の異なる赤外線波長領域は、0.7乃至4.2μm又は8.0乃至20μmの中から選択されることを特徴とする請求項1乃至9の何れかの項に記載の温度検出装置。
【請求項11】
前記演算制御手段は、前記被測定物の温度算出値をデジタル値又はアナログ値の電気信号に変換して出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項1乃至10の何れかの項に記載の温度検出装置。
【請求項12】
前記被測定物は、外部からエネルギが与えられて加熱される鍋、フライパン等の調理器具若しくは当該調理器具上の食物等の被加熱物であることを特徴とする請求項1乃至9又は11の何れかの項に記載の温度検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の温度検出装置を備えたガス調理装置又は電気調理装置。
【請求項14】
前記複数の異なる赤外線波長領域は、1.5乃至1.8μm、2.0乃至2.4μm、3.1乃至4.2μm又は8.0乃至12.0μmの中から選択されることを特徴とする請求項13に記載のガス調理装置又は電気調理装置。
【請求項15】
被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出方法であって、
(a)前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における第1の波長領域と第2の波長領域の赤外線強度を検出するステップと、
(b)前記被測定物に対して、前記第1の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(c)前記被測定物からの前記第1の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(d)前記被測定物に対して、前記第2の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(e)前記被測定物からの前記第2の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(f)前記ステップ(a)、(c)及び(e)にて検出された放射及び赤外線強度に基づいて前記被測定物の温度を算出するステップと、
の各ステップを有することを特徴とする温度検出方法。
【請求項16】
前記ステップ(f)における前記被測定物の温度を算出するステップは、
前記ステップ(c)において検出された前記第1の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第1の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
前記ステップ(e)において検出された前記第2の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第2の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
の各ステップを含むことを特徴とする請求項15に記載の温度検出方法。
【請求項17】
被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出方法であって、
(a)前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における第1の波長領域の赤外線強度を検出するステップと、
(b)前記被測定物に対して、前記第1の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(c)前記被測定物からの前記第1の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(d)前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における第2の波長領域の赤外線強度を検出するステップと、
(e)前記被測定物に対して、前記第2の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(f)前記被測定物からの前記第2の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(g)前記ステップ(a)、(c)、(d)及び(f)において検出された放射及び赤外線強度に基づいて前記被測定物の温度を算出するステップと、
の各ステップを有することを特徴とする温度検出方法。
【請求項18】
前記ステップ(g)における前記被測定物の温度を算出するステップは、
前記ステップ(c)において検出された前記第1の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第1の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
前記ステップ(f)において検出された前記第2の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(d)において検出された前記第2の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
の各ステップを含むことを特徴とする請求項17に記載の温度検出方法。
【請求項19】
被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出方法であって、
(a)前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における第1の波長領域、第2の波長領域及び第3の波長領域の赤外線強度を検出するステップと、
(b)前記被測定物に対して、前記第1の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(c)前記被測定物からの前記第1の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(d)前記被測定物に対して、前記第2の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(e)前記被測定物からの前記第2の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(f)前記被測定物に対して、前記第3の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(g)前記被測定物からの前記第3の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(h)前記ステップ(a)、(c)、(e)及び(g)にて検出された放射及び赤外線強度に基づいて前記被測定物の温度を算出するステップと、
の各ステップを有することを特徴とする温度検出方法。
【請求項20】
前記ステップ(h)における前記被測定物の温度を算出するステップは、
前記ステップ(c)において検出された前記第1の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第1の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
前記ステップ(e)において検出された前記第2の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第2の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
前記ステップ(g)において検出された前記第3の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第3の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
の各ステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の温度検出方法。
【請求項21】
被測定物の温度を非接触状態で検出する温度検出方法であって、
(a)前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における第1の波長領域の赤外線強度を検出するステップと、
(b)前記被測定物に対して、前記第1の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(c)前記被測定物からの前記第1の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(d)前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における第2の波長領域の赤外線の強度を検出するステップと、
(e)前記被測定物に対して、前記第2の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(f)前記被測定物からの前記第2の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(g)前記被測定物からその表面温度に応じて放射される赤外線領域における第3の波長領域の赤外線の強度を検出するステップと、
(h)前記被測定物に対して、前記第3の波長領域の赤外線を照射するステップと、
(i)前記被測定物からの前記第3の波長領域の赤外線の放射及び反射光強度を検出するステップと、
(j)前記ステップ(a)、(c)、(d)、(f)、(g)及び(i)において検出された放射及び赤外線強度に基づいて前記被測定物の温度を算出するステップと、
の各ステップを有することを特徴とする温度検出方法。
【請求項22】
前記ステップ(j)における前記被測定物の温度を算出するステップは、
前記ステップ(c)において検出された前記第1の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(a)において検出された前記第1の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
前記ステップ(f)において検出された前記第2の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(d)において検出された前記第2の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
前記ステップ(i)において検出された前記第3の波長領域の赤外線の反射光強度と前記ステップ(g)において検出された前記第3の波長領域の赤外線強度との差を求めるステップと、
の各ステップを含むことを特徴とする請求項20に記載の温度検出方法。
【請求項23】
前記複数の異なる赤外線波長領域は、0.7乃至4.2μm又は8.0乃至20μmの中から選択されることを特徴とする請求項15乃至22の何れかの項に記載の温度検出方法。
【請求項24】
前記演算制御手段は、前記被測定物の温度算出値をデジタル値又はアナログ値の電気信号に変換して出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項15乃至23の何れかの項に記載の温度検出方法。
【請求項25】
前記被測定物は、外部からエネルギが与えられて加熱される鍋、フライパン等の調理器具若しくは当該調理器具上の食物等の被加熱物であることを特徴とする請求項15乃22又は24の何れかの項に記載の温度検出方法。
【請求項26】
前記複数の異なる赤外線波長領域は、1.5乃至1.8μm、2.0乃至2.4μm、3.1乃至4.2μm又は8.0乃至12.0μmの中から選択されることを特徴とする請求項25に記載の温度検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−263583(P2007−263583A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85300(P2006−85300)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】