説明

複合体、複合体の製造方法及び半導体装置

【課題】複合体の樹脂層に形成された高密着、高信頼性、高周波対応の微細配線やビアを有する複合体、複合体の製造方法及び半導体装置を提供する。
【解決手段】樹脂層1と導体層2とを含む第1の複合体100であって、前記樹脂層1の表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝3と当該溝3内部に導体層2を有し、当該導体層2と接する前記樹脂層1の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である、及び/又は、前記樹脂層1に直径が1μm以上、25μm以下のビア孔と当該ビア孔内部に導体層2を有し、前記ビア孔内部の樹脂層1の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線に用いられる複合体、複合体の製造方法及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化、軽量化、小型化、薄型化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、高密度実装化が進んでいる。これらの電子機器に使用されるプリント配線板の回路配線は高密度化する傾向にあり、ビルドアップした多層配線構造が採用されている。
【0003】
回路配線パターンを形成する方法として、一般的には銅箔をエッチングする手法(サブトラクティブ法)がある。サブトラクティブ法で形成される回路厚みは、使用する銅箔の厚みで規定されるという特徴があり、回路幅の精度は、エッチング液の反応特性及び使用するエッチング装置の能力に依存する。そのため、サブトラクティブ法は、極薄金属箔を用いる一部の用途を除くと、一般的には高密度化に不向きとされている。
【0004】
一方、ビルドアップ基板や多層配線板の製造に一般的に適用されている工法にセミアディティブ法がある。この工法では、樹脂表面をデスミア処理して表面を粗化し、パラジウム触媒を利用した無電解銅めっき層を表面に形成し、さらに該銅めっき層上に感光性レジストを形成して、露光・現像などのプロセスを経由してパターニングを行った後、電解銅めっきで回路パターンを形成し、最後にレジストを剥離し無電解銅めっき層をフラッシュエッチングで除去して微細配線を形成する方法である。(例えば、特許文献1参照)。この方法で微細配線を形成する場合、レジストの露光・現像精度や配線間のパラジウム触媒残渣によるめっき異常析出などの問題があり、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下で微細配線を形成することは困難である。
【0005】
また、サブトラクティブ法、及び、セミアディティブ法では樹脂層表面に凸型の配線が形成される。ビルドアップ基板や多層配線板においては、この後の工程に樹脂層を積層する工程が含まれるが、樹脂組成によっては樹脂の埋め込み性の問題が生じる。特に回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線領域では、樹脂の埋め込み性が悪くなると絶縁信頼性を確保するのが困難となる。
【0006】
また、スクライブ、プラズマ、又はレーザーなどによって樹脂層に溝を形成し、樹脂表面をデスミア処理して表面を粗化し、パラジウム触媒を利用した無電解銅めっき層を表面に形成後、電解銅めっきで導体を形成し、最後に溝部分以外の導体めっきをエッチングで除去して回路を形成する方法がある(例えば、特許文献2、3参照)。
【0007】
また、樹脂層を介して回路配線層間を接続する方法としては、例えば樹脂層に層間接続用のビアを形成する方法がある(例えば、特許文献4参照)。ビアを形成するには、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等のレーザーを樹脂層に照射し開口後、導電性樹脂の充填やめっきによって回路配線層間を接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−64930号公報
【特許文献2】特開平10−4253号公報
【特許文献3】特開2006−41029号公報
【特許文献4】特開2008−274210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スクライブ、プラズマ、又はレーザーなどによって樹脂層に溝を形成し、回路を形成する方法の場合、樹脂層の溝側壁面の凹凸が大きくなるため溝を形成する際の精度に問題があり、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線を形成するのが難しいことがわかった。また、レーザーでビア孔を形成する場合、樹脂層中の無機充填材の影響や樹脂のレーザー波長の吸収性から、ビア内部の樹脂面の凹凸が大きくなるためビアを形成する際の精度に問題があり、20μm以下のビアを形成するのが難しいことがわかった。
本発明は、上記実情に鑑み、複合体の樹脂層表面に形成された高密着、高信頼性、高周波対応の微細配線を有する複合体、複合体の樹脂層に形成されたビア及び、高密度、高信頼性、高周波対応のビアを有する複合体、及びこれらの複合体の製造方法、並びに当該複合体を用いた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記の本発明[1]〜[20]項により達成される。
[1]樹脂層と導体層とを含む複合体であって、
前記樹脂層表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝と当該溝内部に導体層を有し、当該導体層と接する前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である、
ことを特徴とする複合体。
[2]樹脂層と導体層とを含む複合体であって、
前記樹脂層に直径が1μm以上、25μm以下のビア孔と当該ビア孔内部に導体層を有し、前記ビア孔内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である、
ことを特徴とする複合体。
[3]更に、前記樹脂層表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝と当該溝内部に導体層を有し、当該導体層と接する前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であることを特徴とする[2]項に記載の複合体。
[4]前記樹脂層が無機充填材を含み、当該無機充填材は、2μm超過の粗粒が500ppm以下であることを特徴とする[1]ないし[3]項のいずれかに記載の複合体。
[5]前記樹脂層が無機充填材を含み、当該無機充填材の平均粒径が0.05μm以上、1.0μm以下であることを特徴とする[1]ないし[4]項のいずれかに記載の複合体。
[6]前記溝内部の導体層の断面形状が、略台形状、蒲鉾状又は三角形であることを特徴とする[1]ないし[5]項のいずれかに記載の複合体。
[7]前記ビア孔の断面形状が、略台形状であることを特徴とする[2]ないし[6]項のいずれかに記載の複合体。
[8]前記複合体が、プリント配線板、半導体素子、メタルコア配線板の中から選ばれた少なくともひとつであることを特徴とする、[1]ないし[7]項のいずれかに記載の複合体。
【0011】
[9]樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、
(A)レーザー光によって樹脂層表面に、内部表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である溝を形成する工程と、
(B)無電解めっきによって前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、
(C)前記導体の一部を除去することにより、前記樹脂層の前記溝部分のみに導体層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
[10]前記工程(C)の後に、
(D)前記樹脂層と前記導体層の上に別の樹脂層を形成する工程、
を含むことを特徴とする[9]項に記載の複合体の製造方法。
[11]樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、
(A)レーザー光によって、樹脂層に、内部の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であるビア孔を形成する工程と、
(B)無電解めっきによって前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、
(C)前記導体の一部を除去することにより、前記樹脂層のビア孔部分のみに導体層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
[12]前記工程(A)が、レーザー光によって、樹脂層に内部の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であるビア孔と、樹脂層表面に内部表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である溝とを形成する工程であり、且つ、
前記工程(C)が、前記導体の一部を除去することにより、前記樹脂層のビア孔及び前記樹脂層表面の溝部分のみに導体層を形成する工程、
であることを特徴とする[11]項に記載の複合体の製造方法。
[13]前記工程(C)の後に、
(D)前記樹脂層と前記導体層の上に別の樹脂層を形成する工程、
を含むことを特徴とする[11]又は[12]項に記載の複合体の製造方法。
[14]前記工程(A)と前記工程(B)の間に、プラズマ又は薬液によってデスミアする工程を含むことを特徴とする[9]ないし[13]項のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[15]前記工程(B)と前記工程(C)の間に、電解めっきでさらに導体形成する工程を含むことを特徴とする[9]ないし[14]項のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[16]前記レーザー光がエキシマレーザー又はYAGレーザーであることを特徴とする[9]ないし[15]項のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[17]前記工程(A)において、前記樹脂層に無機充填材が含まれ、当該無機充填材は、2μm超過の粗粒が500ppm以下であることを特徴とする[9]ないし[16]項のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[18]前記工程(A)において、前記樹脂層に無機充填材が含まれ、当該無機充填材の平均粒径が0.05μm以上、1.0μm以下であることを特徴とする[9]ないし[17]項のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[19]前記複合体が、プリント配線板、半導体素子、メタルコア配線板の中から選ばれた少なくともひとつであることを特徴とする、[9]ないし[18]項のいずれかに記載の複合体の製造方法。
[20][1]ないし[8]項のいずれかに記載の複合体がプリント配線板又はメタルコア配線板であって、当該複合体に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複合体の樹脂層表面に形成された高密着、高信頼性、高周波対応の微細配線を有する複合体、複合体の樹脂層に形成された高密度、高信頼性、高周波対応のビアを有する複合体、並びに当該複合体を用いた半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体の一例について示した模式的断面図である。
【図2】本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体の他の一例について示した模式的断面図である。
【図3】本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体の他の一例について示した模式的断面図である。
【図4】図4A〜図4Fは、本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法の一例について示した模式図である。
【図5】図5A〜図5Fは、本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法の他の一例について示した模式図である。
【図6】実施例I−1において、レーザーにより絶縁層に溝を形成し、無電解めっき・電解めっきで導体形成した段階での断面形状写真である。
【図7】比較例I−1において、レーザーにより絶縁層に溝を形成し、無電解めっき・電解めっきで導体形成した段階での断面形状写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第一の複合体は、樹脂層と導体層とを含む複合体であって、前記樹脂層表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝と当該溝内部に導体層を有し、当該導体層と接する前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の第二の複合体は、樹脂層と導体層とを含む複合体であって、前記樹脂層に直径が1μm以上、25μm以下のビア孔と当該ビア孔内部に導体層を有し、前記ビア孔内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の複合体の製造方法は、樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、(A)レーザー光によって樹脂層表面に内部の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である溝及び/または樹脂層に内部の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であるビア孔を形成する工程と、(B)無電解めっきによって前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、(C)前記導体の一部を除去することにより、前記樹脂層表面の溝部分及び/または前記樹脂層のビアのみに導体層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、導体層と接触する部分の樹脂層の表面粗さに着目し、当該樹脂層の表面粗さを特定の値としたことにより、微細配線及び微細ビアにおいて導体層と樹脂層の密着性を確保しながら、導体層の表面凹凸が小さくなり、1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減できる。これらにより、複合体の樹脂層表面に形成された高密着、高信頼性、高周波対応の微細配線、及び/又は、複合体の樹脂層に形成された高密度、高信頼性、高周波対応のビアを有する複合体を得ることができる。以下に本発明の複合体、複合体の製造方法、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の複合体について説明する。本発明の複合体は、樹脂層と導体層とを含み、配線板等として好適に用いられる。複合体としては例えば、基板上に形成された樹脂層と導体層からなるプリント配線板、プリント配線板上に形成された樹脂層(例えばビルドアップ層)と導体層からなるビルドアップ多層プリント配線板、金属基板上に形成された樹脂層と導体層からなるメタルコア配線板、及び、ウェハー表面に形成された樹脂層と導体層からなる半導体素子の再配線等が挙げられる。なお、プリント配線板に用いられる基板、メタルコア配線板に用いられる金属基板、半導体素子の再配線に用いられるウェハーとしては、通常用いられるものを適宜選択して用いることができる。
【0017】
プリント配線板に用いられる基板としては、特に限定はされないが、例えば基材に絶縁性樹脂を含浸または塗工したものの両面または片面に銅箔などの金属箔を重ね合わせ、加熱、加圧などにより加工し、必要により配線層を形成したものが挙げられる。基材としては例えばガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材などが挙げられ、絶縁性樹脂としては例えばシアネート樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂など、これらを単独、あるいは複数用いたものが挙げられる。フレキシブル基板に用いられる例えばポリイミド樹脂、液晶ポリマー、エポキシ樹脂などを絶縁性樹脂として用いる場合は、基材を含まなくても用いることもできる。
メタルコア配線板に用いられる金属基板としては、特に限定はされないが、例えば銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄および鉄系合金等が挙げられる。42アロイなどの線膨張係数の低い金属も用いてもよい。
半導体素子の再配線に用いられるウェハーとしては、特に限定はされないが、例えばシリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、炭化シリコン、リン化ガリウム、リン化アルミニウム、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウム、ヒ化インジウム、窒化インジウム、リン化インジウム、リン化ガリウムインジウム、リン化インジウムヒ素、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの半導体材料が挙げられる。
【0018】
図1は、本発明の第一の複合体の一例を示したものである。本発明の第一の複合体100は、基材10を有していても良く、樹脂層1と導体層2とを含む複合体であって、前記樹脂層1表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝3と当該溝内部に導体層2を有し、当該導体層2と接する前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である。ここで導体層2としては、図1の51及び61に示されるように、2種類以上の導体層からなるものであって良い。なお、溝の幅とは、溝の長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味する。
【0019】
前記樹脂層表面の溝内部に有する導体層の最大幅は、通常、前記溝の最大幅と同じになる。本発明の第一の複合体の態様において、前記樹脂層表面の溝及び導体層の最大幅は、1μm以上、10μm以下である。これにより、複合体の高密度化、高実装化、微細配線化が可能になる。また、特に限定はされないが、前記樹脂層表面の溝及び導体層の最大幅は、8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましく、4μm以下であることが特に好ましい。これにより高密度化、高実装化の作用を効果的に発現させることができる。
また、前記樹脂層表面の溝の深さは、1μm以上、20μm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明において、前記導体層2と接する溝内部の前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.45μm以下である。導体層と接する溝内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は、溝内部の導体層表面の算術平均粗さ(Ra)に反映される。樹脂層の溝内部の表面凹凸が最適化されたことにより、樹脂層と導体層との密着性を確保しながら、導体層の表面凹凸が小さくなり、1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減でき、高周波対応の微細配線を形成できる。高周波信号になると導体回路の表面の信号伝播となるが、導体層の表面凹凸が大きすぎると、伝送距離が伸びるため、伝達が遅くなったり、伝播中の損失が大きくなってしまう。また、特に限定はされないが、算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下であることが特に好ましい。これにより高周波数領域における伝送損失の低減作用を効果的に発現させることができる。
【0021】
算術平均粗さ(Ra)が上記下限値未満であると、半田耐熱試験、冷熱サイクル試験等において、導体層の剥離が生じるおそれがあり、上記上限値を超えると、高速信号伝達に支障をきたし、電気信頼性を害するおそれがある。
【0022】
なお、本発明において、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601で定義されているものである。樹脂層に形成された溝表面の算術平均粗さ(Ra)の測定は、JIS B0601に準じて行うことができ、例えばVeeco社製WYKO NT1100を用いて測定することもできる。
【0023】
また、本発明において、前記導体層2と接する溝内部の前記樹脂層表面の10点平均粗さ(Rz)は、6.0μm以下であることが好ましく、更に、4.0μm以下であることが好ましい。導体層と接する溝内部の樹脂層表面の10点平均粗さ(Rz)は、溝内部の導体層表面の10点平均粗さ(Rz)に反映される。10点平均粗さ(Rz)は、測定長間の最大山高さから5点の平均と、最大谷深さから5点の平均の和になるので、溝内部の導体層表面の最大凸部の評価ができる。10点平均粗さ(Rz)が大きすぎると、導体層の最大凸部の影響で、微細配線間の距離が著しく短くなる箇所が発生し、絶縁に不利となり、信頼性が低下する恐れがある。10点平均粗さ(Rz)は、更に、4.0μm以下であることが好ましい。これにより微細配線の信頼性を効果的に発現させることができる。
【0024】
なお、本発明において、10点平均粗さ(Rz)は、JIS B0601で定義されているものである。樹脂層に形成された溝表面の10点平均粗さ(Rz)の測定は、JIS B0601に準じて行うことができ、例えばVeeco社製WYKO NT1100を用いて測定することもできる。
【0025】
また、本発明の複合体の前記樹脂層表面の溝の断面形状、及び、当該溝内部に有する導体層の断面形状は、略台形状、蒲鉾状又は三角形であることが好ましい。これにより、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる。
【0026】
前記溝内部に有する導体層としては、導体であれば特に限定されず、めっきにより形成されることが好ましい。導体層としては、例えば、銅やニッケル等の金属を含むことが好ましい。
【0027】
図2は、本発明の第二の複合体の一例を示したものである。本発明の第二の複合体101は、導体層11付の基材10を有していても良く、樹脂層1と導体層2とを含む複合体であって、前記樹脂層1に直径が1μm以上、25μm以下のビア孔4と当該ビア孔内部に導体層2を有し、前記ビア孔内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である。ここで導体層2としては、図2の52及び62に示されるように、2種類以上の導体層からなるものであって良い。
【0028】
本発明の第二の複合体の態様において、ビア孔の直径は1μm以上、25μm以下である。これにより、複合体の高密度化、高実装化、微細配線化が可能となる。また、特に限定はされないが、ビアの直径は、20μm以下が好ましく、さらに、18μm以下であることが好ましく、さらには15μm以下であることが特に好ましい。これにより、高密度化、高実装化、微細配線化の作用を効果的に発現させることができる。
【0029】
ビア孔の直径が上記下限値未満であると、レーザー光で樹脂層にビア孔を形成できない箇所や接続不良が生じたり、めっき液の循環が悪化してめっきによる導体の形成ができなくなる場合があり、回路配線層間を接続できなくなるおそれがある。また、半田耐熱試験、冷熱サイクル試験等において、ビア孔内部の導体層と樹脂との界面で剥離が生じるおそれがある。また、上記上限値を超えると、レーザー光でビア孔を形成した際のビア形状がいびつになったり樹脂にクラックが入るおそれや、樹脂に熱が加わり過ぎることでビア孔間の絶縁信頼性が低下するおそれがある。また、複合体の高密度化、高実装化、微細配線化が困難になる。
【0030】
本発明の第二の複合体の態様においては、前記導体層2と接するビア孔内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.45μm以下である。樹脂層のビア孔内部の凹凸が最適化されたことにより、樹脂層と導体層との密着性を確保しながら、ビア孔内部の樹脂層表面の凹凸が小さくなり、1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減でき、またビア孔内部のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる。また、特に限定はされないが、算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下であることが特に好ましい。これにより高周波数領域における伝送損失の低減や、ビア孔内部のめっき付き不良や層間接続不良を低減する作用を効果的に発現させることができる。
【0031】
ビア内部の樹脂表面の算術平均粗さ(Ra)が上記下限値未満であると、半田耐熱試験、冷熱サイクル試験等において、ビアの導体と樹脂との界面で剥離が生じるおそれがあり、上記上限値を超えると、高速信号伝達に支障をきたし電気信頼性を害するおそれがあり、またビア孔内部のめっき付き不良や層間接続不良を生じるおそれがある。
【0032】
また、本発明の複合体のビア孔の断面形状は略台形状であることが好ましい。これにより、信号応答性や接続信頼性、めっき付き性に優れたビアを形成することが可能となる。
また、前記ビア孔内部に有する導体層としては、導体であれば特に限定されず、めっきにより形成されることが好ましい。導体層としては、例えば、銅やニッケル等の金属を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の第二の複合体においても、前記樹脂層表面に存在する導体層の最大幅は1μm以上、10μm以下であることが好ましい。これにより、複合体の高密度化、高実装化が可能になる。また、特に限定はされないが、導体層の最大幅は、8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましく、4μm以下であることが特に好ましい。これにより高密度化、高実装化の作用を効果的に発現させることができる。
【0034】
本発明の第二の複合体においても、更に、前記樹脂層表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝と当該溝内部に導体層を有し、当該導体層と接する前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であることが好ましい。このような複合体の例を図3に示す。本発明の第二の複合体102は、導体層11付の基材10を有していても良く、樹脂層1と導体層2とを含む複合体であって、前記樹脂層1に直径が1μm以上、25μm以下のビア孔4と当該ビア孔内部に導体層2を有し、前記ビア孔内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である。また、前記樹脂層1表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝3と当該溝内部に導体層2を有し、当該導体層2と接する前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である。
第二の複合体においてこのような樹脂層表面の溝及び溝内部の導体層を有する場合、第一の複合体において説明した樹脂層表面の溝及び溝内部の導体層と同様のものとすることができる。
【0035】
前記樹脂層の厚さは、特に限定されないが、1μm以上、60μm以下が好ましく、特に5μm以上、40μm以下が好ましい。樹脂層の厚さは、絶縁信頼性を向上させる上で前記下限値以上が好ましく、多層プリント配線板の薄膜化を達成する上で前記上限値以下が好ましい。これより、プリント配線板を製造する際に、内層回路基板の導体層の凹凸を充填した絶縁層を成形することができるとともに、好適な絶縁層の厚みを確保することができる。
【0036】
次に、樹脂層に用いられる樹脂組成物について説明する。樹脂層形成用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。すなわち、本発明の複合体において前記溝や前記ビア孔を有する樹脂層は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物で構成されていることが好ましい。熱硬化性樹脂の硬化物を含むことにより、樹脂層の耐熱性を向上させることができる。
【0037】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、トリアジン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂およびベンゾシクロブテン樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂を含むことが好ましく、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂及び/又はシアネート樹脂とを含むことが好ましく、特にシアネート樹脂を含むことが好ましい。これにより、樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができる。さらに、シアネート樹脂を含むと、樹脂層の電気特性(低誘電率、低誘電正接)、機機械強度、レーザー加工性、特にエキシマレーザーやYAGレーザー加工性等にも優れる。
【0038】
シアネート樹脂としては、具体的にはノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ビフェニルアラルキル型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。ノボラック型シアネート樹脂は、樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができ、樹脂層の機機械強度、電気特性(低誘電率、低誘電正接)にも優れる。また、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ビフェニルアラルキル型シアネート樹脂も低線膨張、低吸水性、機械強度に優れるため好ましく使うことができる。
【0039】
シアネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜4,500が好ましく、特に600〜3,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であると樹脂層を構成する硬化物の機械的強度が低下する場合があり、さらに樹脂層を作製した場合にタック性が生じ、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、重量平均分子量が前記上現値を超えると硬化反応が速くなり、基板(特に回路基板)とした場合に、成形不良が生じたり、層間ピール強度が低下したりする場合がある。尚、シアネート樹脂等の重量平均分子量は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0040】
また、特に限定されないが、シアネート樹脂はその誘導体も含め、1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の5〜50重量%が好ましく、特に10〜30重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると熱硬化性樹脂組成物の反応性、および低熱膨張性が低下したり、得られる製品の耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えると、耐湿性が低下したりする場合がある。
【0041】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂(特にノボラック型シアネート樹脂)を用いる場合は、エポキシ樹脂(実質的にハロゲン原子を含まない)を併用することが好ましい。
【0042】
上記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0043】
これらエポキシ樹脂の中でも特にアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性および難燃性を向上させることができる。アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。また、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂も低線膨張、低吸水性、機械強度に優れるため好ましく使うことができる。
【0044】
エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、特に5〜40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとシアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると低熱膨張性、耐熱性が低下する場合がある。
【0045】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜20,000が好ましく、特に800〜15,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であると樹脂層の表面にタック性が生じる場合が有り、前記上限値を超えると半田耐熱性が低下する場合がある。重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えばGPCで測定することができる。
【0046】
上記熱硬化性樹脂は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。通常は、硬化剤を組み合わせて熱硬化性樹脂として用いられる。
上記熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂層形成用樹脂組成物中の20〜90重量%、更に30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。含有量が下限値未満であると樹脂層を形成するのが困難となる場合があり、上限値を超えると樹脂層の強度が低下する場合がある。
【0047】
本発明のプリント配線板の樹脂層(乃至、樹脂層形成用樹脂組成物)は、無機充填材を含むものとすることができる。樹脂層に無機充填材を含む場合には低熱膨張、高弾性、低吸水となるため、実装信頼性、反り量が向上する点から好ましい。
上記無機充填材は、2μm超過の粗粒が500ppm以下であることが、配線板の絶縁層に用いた場合に、レーザー加工により、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線形成のための溝加工性や、微細なビアの加工性に優れ、形成された絶縁層と形成された導体回路との密着性に優れる点から好ましい。上記無機充填材は、更に、2μm超過の粗粒が300ppm以下、特に2μm超過の粗粒が5ppm以下であることが好ましい。
なお、2μm超過の粗粒が500ppm以下の無機充填材を得る方法は特に限定されない。例えば、2μm超過の粗粒を除去する方法として、有機溶剤、および/または水中のスラリー状態で、平均粒径の10倍以上の細孔径フィルターで粗粒を数回除去し、次いで2μmの細孔径フィルターで2μm超過の粗粒除去を繰り返して実施することにより得ることができる。
【0048】
前記無機充填材の粗粒径、および含有量の測定は、粒子画像解析装置(シスメックス社製FPIA−3000S)により測定することができる。無機充填材を水中または有機溶剤中で超音波により分散させ、得られた画像から、2μm超過の無機充填材の個数を算出して測定することができる。具体的には、無機充填材の円相当径で2μm超過の粒子数と解析総粒子数で含有量は規定される。
【0049】
中でも、上記無機充填材の最大粒径としては、2.0μm以下であることが好ましい。これにより、上記特定した樹脂層の表面粗さを実現しやすくなり、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる。また、特に限定はされないが、無機充填材の最大粒径は1.8μm以下がより好ましく、1.5μm以下が特に好ましい。これにより絶縁信頼性、信号応答性、ビアや溝内のめっき付き性や層間接続信頼性を高める作用を効果的に発現させることができる。
【0050】
また、上記無機充填材の平均粒径としては、0.05μm以上、1.0μm以下であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線形成を実現しやすくなる。また、無機充填材の平均粒径が上記範囲の場合には、レーザー加工により、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線形成するための溝加工性や、微細なビアの加工性に優れるようになり、上記特定した樹脂層の表面粗さを実現しやすくなる。無機充填材の平均粒径は0.05μm以上、0.60μmが好ましく、0.05μm以上、0.50μmがより好ましく、0.05μm以上、0.40μm以下が特に好ましい。これにより絶縁信頼性、信号応答性、ビアや溝内のめっき付き性や層間接続信頼性を高める作用を効果的に発現させることができる。
【0051】
無機充填材の平均粒子径の測定は、例えばレーザー回折散乱法により測定することができる。無機充填材を水中で超音波により分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。具体的には、無機充填材の平均粒子径はD50で規定される。
【0052】
上記無機充填材の2μm超過の粗粒量が上記上限値を上回ると、無機充填材がレーザー加工を阻害し、樹脂層に溝を形成できない箇所が生じたり、ビア形状がいびつになったり樹脂にクラックが入るおそれがあり、粗粒フィラーの脱落による絶縁信頼性やめっき付き性が低下するおそれがある。さらにはレーザー光でビアや溝を形成する時間が長くなるため、作業性が低下する可能性が生じる。また、レーザー加工後に溝側壁面に残留した無機充填材により、めっき後の導体層の表面凹凸が大きくなる。これにより、配線やビア形状の精度が悪くなり、高密度プリント配線板においては絶縁信頼性を害する場合がある。さらには1GHzを超える高周波数領域においては表皮効果により信号応答性を害する場合がある。無機充填材の平均粒径が上記上限値を上回っても同様の恐れがある。
【0053】
また、上記無機充填材の平均粒径が上記下限値未満となると、樹脂層の熱膨張係数・弾性率の物理的性質を低下させ、半導体素子搭載時の実装信頼性を害するおそれがあり、また樹脂層形成用樹脂組成物中の無機充填材の分散性の低下や、凝集の発生が生じたり、樹脂組成物のBステージ状態における柔軟性の低下による樹脂フィルム化が困難になるおそれがある。
【0054】
上記無機充填材としては、特に限定されるものではないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。無機充填材として、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したりすることもできる。これらの中でも特に、低熱膨張性、難燃性、及び弾性率に優れる点から、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。これらの中でもその形状は球状シリカが好ましい。
【0055】
樹脂層乃至樹脂層形成用樹脂組成物中に無機充填材を含む場合、無機充填材の含有量は、樹脂層乃至樹脂層形成用樹脂組成物中に10〜80重量%、更に20〜70重量%、特に30〜60重量%であることが、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れた微細配線形成が可能となる点から好ましい。
【0056】
また、樹脂層乃至樹脂層形成用樹脂組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂等の製膜性樹脂、硬化促進剤、カップリング剤、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0057】
次に本発明の複合体の製造方法について説明する。
まず、本発明の複合体の製造方法においては、樹脂層を準備する。本発明の複合体の製造方法において樹脂層を形成する方法について説明する。特に限定はされないが一例としてプリント配線板に樹脂層を形成させる方法について説明する。プリント配線板に樹脂層を形成させる方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂層形成用樹脂組成物を溶剤などに溶解、分散させて樹脂ワニスを調製して、各種コーター装置を用いて樹脂ワニスをキャリアフィルム等に塗工した後、これを乾燥する方法、スプレー装置を用いて、樹脂ワニスをキャリアフィルムに噴霧塗工した後、これを乾燥する方法等でキャリアフィルム付き樹脂シートを得る方法が挙げられる。これらの中でも、コンマコーター、ダイコーターなどの各種コーター装置を用いて、樹脂ワニスをキャリアフィルム等に塗工した後、これを乾燥する方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な樹脂層の厚みを有するキャリア付き樹脂シートを効率よく製造することができる。
【0058】
得られたキャリアフィルム付き樹脂シートを例えばラミネーター、真空プレス機などを用いて基板に熱圧着することで、樹脂層を形成することができる。また、基板に直接樹脂ワニスをコーティングすることでも樹脂層を形成することができる。プリント配線板以外にも、例えば、ウェハー上に樹脂層を形成する際についても、上記のようにキャリアフィルム付き樹脂シートを作製して熱圧着する方法や、樹脂ワニスをコーティングする方法により樹脂層を形成することができる。
【0059】
樹脂ワニスに用いられる溶媒は、樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系等が挙げられる。上記樹脂ワニス中の固形分含有量としては特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。
【0060】
また、複合体の樹脂層は、導体層が形成される前及び/又は形成された後に、必要に応じて加熱を行い、熱硬化性樹脂を硬化させて形成される。
【0061】
次に本発明の複合体の製造方法について、図を用いて説明する。
図4A〜図4Fは、本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体の第一の態様を製造する方法の一例について示した模式図である。本発明の複合体の製造方法は、樹脂層1と導体層2とを含む複合体の製造方法であって、(A)レーザー光5によって樹脂層1の表面に、内部表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である溝3を形成する工程(図4A、図4B)、(B)無電解めっきによって樹脂層1の表面に導体(無電解めっき層50)を形成する工程(図4C)、(C)導体70の一部を除去することにより、樹脂層1の溝3の部分のみに導体層2を形成する工程とを含むものとすることができる。
【0062】
また、図5A〜図5Fは、本発明に係る樹脂層と導体層とを含む複合体の第二の態様を製造する方法の一例について示した模式図である。本発明の複合体の製造方法は、樹脂層1と導体層2とを含む複合体の製造方法であって、(A)レーザー光5によって樹脂層1に、内部の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であるビア孔4を形成する工程(図5A、図5B)、(B)無電解めっきによって樹脂層1の表面に無電解めっき層50を形成する工程(図5C)、(C)導体70の一部を除去することにより、樹脂層1のビア孔4の部分のみに導体層2を形成する工程とを含むものとすることができる。
【0063】
工程(A)では、レーザー光5がエキシマレーザー又はYAGレーザーであることが好ましい。これらのレーザーを使用することにより、精度・形状よく溝3やビア孔4形成が可能となり、微細配線形成や高密度化が可能となる。特に限定はされないが、エキシマレーザーのレーザー波長は、193nm、248nm、308nmであることがより好ましく、193nm、248nmであることが特に好ましい。これにより、精度・形状よく溝やビア孔を形成できる作用を効果的に発現させることができる。YAGレーザーの波長は355nmであることが好ましい。他の波長では樹脂層1を構成する樹脂組成物がレーザー光5を吸収せず溝やビア孔が形成できない可能性がある。レーザー光5はマスク6を介して樹脂層1に照射される。
レーザー照射条件としては、樹脂層の表面に、内部表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である溝やビア孔内部表面できるように選択する。中でも、樹脂層の溝3やビア孔4の内部表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下となる条件であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下となる条件であることが特に好ましい。これにより、絶縁信頼性や信号応答性を高め、伝送損失を低減し、さらに溝3やビア孔4内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる作用を効果的に発現させることができる。
【0064】
本発明の複合体の製造方法では、工程(A)と工程(B)の間に、プラズマ又は薬液によってデスミアする工程を含むことが好ましい。これにより、レーザー光5による溝3やビア孔4の形成時に、溝3やビア孔4の側壁面に残留した炭化物を除き、電気信頼性の高い微細配線やビア形成が可能となる。
【0065】
特に限定されないが、プラズマは窒素プラズマ、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ、四フッ化メタンプラズマ、もしくはこれらの混合ガスのプラズマを使用することができる。また、プラズマの処理条件としては、プラズマ工程後の樹脂層表面乃至溝やビア孔内部表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.45μm以下となる条件であり、同時に、溝3やビア孔4の内部表面の残留した炭化物を十分に除ききる条件であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性に優れたビア形成が可能となる。1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減でき、さらにビア内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる。また、特に限定はされないが、プラズマ条件をプラズマ工程後の樹脂層の溝3やビア孔4の内部表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下となる条件であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下となる条件であることが特に好ましい。これにより、絶縁信頼性や信号応答性を高め、伝送損失を低減し、さらに溝3やビア孔4内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる作用を効果的に発現させることができる。
【0066】
特に限定されないが、薬液によるデスミアは過マンガン酸塩、重クロム酸等を使用することができる。また、デスミアの処理条件としては、デスミア工程後の樹脂層表面乃至溝やビア孔内部表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.05μm以上、0.45μm以下となる条件であり、同時に、溝3やビア孔4の内部表面の残留した炭化物を十分に除ききる条件であることが好ましい。これにより、絶縁信頼性が高く、信号応答性、さらにビア内のめっき付き不良や層間接続不良を低減に優れたビア形成が可能となる。1GHzを超える高周波数領域において、その表皮効果による伝送損失を低減できる。また、特に限定はされないが、デスミア条件をデスミア工程後の樹脂層の溝3やビア孔4の内部表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm以上、0.30μm以下となる条件であることがより好ましく、0.1μm以上、0.25μm以下となる条件であることが特に好ましい。これにより、絶縁信頼性や信号応答性を高め、伝送損失を低減し、さら溝3やビア孔4内のめっき付き不良や層間接続不良を低減する作用を効果的に発現させることができる。
【0067】
プラズマ又は薬液によるデスミア工程が不十分で炭化物が溝3やビア孔4の内部表面に残留した場合、複合体の絶縁信頼性が低下する恐れがある。プラズマ又は薬液によるデスミア工程が過度となると、導体層2と接する樹脂層1の溝3やビア孔4内部表面の算術平均粗さ(Ra)が粗くなり、導体層2の表面凹凸により、表皮効果による配線の信号応答性が悪くなったり、また溝3やビア孔4内のめっき付き不良や層間接続不良が発生するおそれがある。
【0068】
本発明の工程(B)では、樹脂層をプラズマ又は薬液によってデスミアする工程後、樹脂層1の表面に無電解めっき層50を形成する。
【0069】
無電解めっき層50の金属の種類は、特に限定されないが、銅やニッケル等が好ましい。これらの金属では樹脂層1と無電解めっき層50の密着が良好である。無電解めっき層の厚さも特に限定されないが、0.1μm以上、5μm以下程度とすることが好ましい。さらに無電解めっき後に、熱風乾燥装置にて150℃〜200℃で10分〜120分の熱処理を行うことにより、樹脂層と無電解めっき層との密着をより良好にすることができる。
【0070】
本発明の複合体の製造方法では、工程(B)と工程(C)の間に、電解めっきでさらに電解めっき層60を形成する工程を含むことが好ましい。この工程ではレーザー光5により形成された溝3やビア孔4の内部を電解めっき層60で埋めることができる。
【0071】
電解めっきには硫酸銅電解めっきが使用できる。また、特に限定されないが、めっき液中にはレベラー剤、ポリマー、ブライトナー剤等の添加剤が含まれることが好ましい。これにより、樹脂層1に形成された溝3やビア孔4の内部に対して優先的にめっきが析出し電解めっき層60で埋められ、電解めっき後の樹脂表層上と溝3やビア孔4上のめっき析出レベルが同等となる。電解めっき層の厚みは、特に限定されないが、樹脂層1の表面から5μm以上、25μm以下程度とするのが好ましい。
【0072】
本発明の工程(C)では、無電解めっき、電解めっきにより形成された導体70の一部を除去することにより、樹脂層1の溝3やビア孔4の部分のみに導体層2を形成する。特に限定はされないが、電解めっきにより形成された導体70の一部を除去する方法は、化学エッチング処理、研磨処理、バフ研磨処理等が好ましい。これにより、樹脂表層上の導体70のみを効果的に除去し、溝3やビア孔4の部分のみの導体層2を残すことが可能である。
こうして、電気信頼性、信号応答性、溝やビア孔内部のめっき付き性や層間接続性に優れた複合体を作製することが可能である。
【0073】
本発明の製造方法は工程(C)の後に、(D)樹脂層1及び導体層2の上に別の樹脂層40を形成する工程を含むことができる。
【0074】
本発明の工程(D)では、樹脂層1及び導体層2の上に別の樹脂層40を形成することで、多層プリント配線板の配線となる各導体層が樹脂層で覆われ配線間乃至ビア間の絶縁性が確保される。特に限定はされないが、樹脂層1及び導体層2の上に別の樹脂層40を形成する手法としては、上記樹脂層1を準備する時と同様に、キャリアフィルム付き樹脂シートを例えば真空加圧式ラミネーター装置、平板プレス装置等を用いる方法が挙げられる。
【0075】
こうして、上記工程(A)、(B)、(C)、(D)を繰り返すことで電気信頼性、信号応答性、溝やビア孔内部のめっき付き性や層間接続性に優れた多層の複合体を作製することが可能である。
【0076】
次に、半導体装置について説明する。
本発明の半導体装置は、前記本発明に係る複合体がプリント配線板又はメタルコア配線板であって、当該複合体に半導体素子を搭載してなることを特徴とする。
前記本発明に係るプリント配線板等の複合体に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンプを介して、前記プリント配線板等の複合体と半導体素子とを接続する。そして、プリント配線板等の複合体と半導体素子との間には液状封止樹脂を充填し、半導体装置を製造する。
【0077】
半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマスなどからなる合金で構成されることが好ましい。半導体素子とプリント配線板等の複合体との接続方法は、フリップチップボンダーなどを用いてプリント配線板等の複合体上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板等の複合体と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板等の複合体上の接続用電極部に半田ペースト等の比較的融点の低い金属の層を形成しておいても良い。この接合工程に先んじて、半田バンプ、及び/またはプリント配線板等の複合体上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
実施例シリーズI:第一の態様の複合体及び半導体装置の製造
<実施例I−1>
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセットPT−30、重量平均分子量約700)20重量部、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、EXA−7320)35重量部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、jER4275)5重量部、イミダゾール化合物(四国化成工業株式社製、キュアゾール1B2PZ(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール))0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。無機充填材/球状溶融シリカ(電気化学工業株式会社製、SFP−20M)を積層型カートリッジフィルター(住友スリーエム株式会社製)を用いて最大粒子径2.0μmを上回る粒子を濾過分離して除去し、平均粒子径が0.4μmとなった無機充填材/球状溶融シリカ40重量部を添加した。カップリング剤/エポキシシランカップリング剤(GE東芝シリコーン株式会社製、A−187)0.2重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分50重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0080】
上記で得られた樹脂ワニスを、厚さ25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の樹脂フィルムの厚さが40μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で10分間乾燥して、キャリア層付き樹脂層を作製した。
【0081】
このキャリア層付き樹脂層を導体層付きコア基板の表裏に重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置にて180℃で45分間加熱硬化行い樹脂層付き基板を得た。
なお、両面導体層付きコア基板としては、下記のものを使用した。
・樹脂層:ハロゲンフリー、コア基板、厚さ0.4mm
・導体層:銅箔厚み18μm、回路幅/回路間幅(L/S)=120/180μm、クリアランスホール1mmφ、3mmφ、スリット2mm
【0082】
193nmの波長を有するエキシマレーザーにより樹脂層付き基板の両面の樹脂層に狙い幅10μm、狙い深さ15μmの溝を形成した。
加工条件は以下の通りに設定した。
マスク:50μm幅のスリットマスク
周波数:100Hz
エネルギー:500mJ/cm2
スキャン速度:65μm/sec
【0083】
溝を形成した樹脂層付き基板をキャリア層付きのままで、60℃の膨潤液(アトテックジャパン株式会社製、スウェリングディップ セキュリガント P500)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン株式会社製、コンセントレート コンパクト CP)に20分浸漬後、中和してデスミア処理を行った。
【0084】
次にキャリアフィルムを剥離後、脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき層約0.2μmを形成させた。
【0085】
次に、無電解銅めっき層を電極として電解銅めっき(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナα)を3A/dm2、30分行って、樹脂表層の厚さ約5μmの導体層を形成した。
【0086】
樹脂表層に存在する導体層をクイックエッチング処理(荏原電産社製 SACプロセス)を行うことにより除去し、配線間の絶縁を確保した。次に絶縁樹脂層を温度200℃、60分間で完全硬化させた。
【0087】
最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ製造株式会社製、PSR4000/AUS308)を形成し、4層プリント配線板を作製した。
【0088】
<実施例I−2>
248nmの波長を有するエキシマレーザーにより樹脂層付き基板の樹脂層に幅10μm、深さ15μmの溝を形成した以外は実施例I−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0089】
<実施例I−3>
355nmの波長を有するYAGレーザーにより樹脂層付き基板の樹脂層に幅10μm、深さ15μmの溝を形成した以外は実施例I−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0090】
<比較例I−1>
汎用のエポキシ樹脂系のビルトアップ材(GX‐13、味の素株式会社製、無機充填材の最大粒径2.5μm、無機充填材の2μm超過の粗粒が8000ppm、無機充填材の平均粒径0.5μm)を樹脂層として使用した以外は実施例I−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0091】
<比較例I−2>
汎用のエポキシ樹脂系のビルトアップ材(GX‐13、味の素株式会社製、無機充填材の最大粒径2.5μm、無機充填材の2μm超過の粗粒が8000ppm、無機充填材の平均粒径0.5μm)を樹脂層として使用し、355nmの波長を有するYAGレーザーにより樹脂層付き基板の樹脂層に幅10μm、深さ15μmの溝を形成した以外は実施例I−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0092】
<評価内容>
各実施例及び比較例で得られた多層配線板を縦に切断し、切断面を顕微鏡により観察し、導体層の最大幅及び導体層の断面形状を求めた。また、樹脂層に形成された溝表面の算術平均粗さ(Ra)は、導体層をエッチング除去後、JIS B0601に準じて、Veeco社製WYKO NT1100を用いて測定を行った。得られた結果を表1に示す。また、実施例I−1及び比較例I−1については、レーザーにより樹脂層に溝を形成し、無電解めっき・電解めっきで導体形成した段階での断面形状写真を、それぞれ図6、図7に示した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1から明らかなように、実施例I−1〜I−3は、樹脂層平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下が達成され、導体層の最大幅が10μmで、配線ピッチ10μmのパターン形成が可能であり、且つ、絶縁信頼性及び高周波領域でも信号応答性に優れる良好な微細配線が形成できた。一方、比較例I−1〜I−2では、樹脂層平均粗さ(Ra)が0.5μm以上となったため、高周波領域では伝播中の損失が大きくなってしまう。また、比較例I−1〜I−2では、導体層の最大幅も大きくなってしまい、配線ピッチ10μmのパターン形成ができなかった。
【0095】
<半導体装置の製造>
上記実施例及び比較例で得られた各多層プリント配線板を用いて、半導体装置を製造した。
半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.725mm)としては、半田バンプは直径100μm、150μmピッチ、Sn/Pb組成の共晶で形成され、回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、上記実施例及び比較例で得られた各多層プリント配線板上に半導体素子を加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、各多層プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。
【0096】
<半導体装置の評価>
前記で得られた半導体装置を、IPC/JEDECのJ−STD−20に準拠して、温度30℃、湿度60%、時間192時間の前処理を行い、その後、260℃に達するリフロー炉に3回通し、後処理として−50℃30分、125℃30分の温度サイクルを500サイクル実施した。評価は、前処理後、と温度サイクルを500サイクル後処理後の半導体素子の導通抵抗評価、および断面観察を実施した。評価結果は、表1に合わせて示す。
各符号は以下の通りである。
◎:500サイクル後処理後の導通抵抗異常なし、および断面観察での導体回路、ビアの異常なし
○:500サイクル後処理後の導通抵抗が1〜10%未満の範囲で処理前より上がっているが、断面観察での導体回路、ビアの異常なし。
×:500サイクル後処理後の導通抵抗が、10%以上処理前より上がっている。または、導体回路と樹脂間、ビアと樹脂間のいずれかに、マイクロボイド、剥離クラック発生。
【0097】
表1から明らかなように、実施例I−1〜I−3では、高密着であり、高信頼性の半導体装置が得られた。一方、比較例I−1〜I−2では、導通抵抗が上がり、密着性も悪く、剥離クラックも発生してしまった。
【0098】
実施例シリーズII:第二の態様の複合体及び半導体装置の製造
<実施例II−1>
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセットPT−30、重量平均分子量約700)20重量部、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、EXA−7320)35重量部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、jER4275)5重量部、イミダゾール化合物(四国化成工業株式社製、キュアゾール1B2PZ(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール))0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。無機充填材/球状溶融シリカ(電気化学工業株式会社製、SFP−20M)を積層型カートリッジフィルター(住友スリーエム株式会社製)を用いて最大粒子径2.0μmを上回る粒子を濾過分離して除去し、平均粒子径が0.4μmとなった無機充填材/球状溶融シリカ40重量部を添加した。カップリング剤/エポキシシランカップリング剤(GE東芝シリコーン株式会社製、A−187)0.2重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分50重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0099】
上記で得られた樹脂ワニスを、厚さ25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の樹脂フィルムの厚さが20μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で10分間乾燥して、キャリアフィルム付き樹脂シートを作製した。
【0100】
このキャリアフィルム付き樹脂シートを両面導体層付きコア基板の表裏に重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置にて180℃で45分間加熱硬化行い樹脂層付き基板を得た。
なお、両面導体層付きコア基板としては、下記のものを使用した。
・樹脂層:ハロゲンフリー、コア基板厚さ0.4mm
・導体層:銅箔厚み18μm、回路幅/回路間幅(L/S)=120/180μm、クリアランスホール1mmφ、3mmφ、スリット2mm
【0101】
193nm(ArF)の波長を有するエキシマレーザー(ビーム株式会社製、ATLEX−300SI)を用いて樹脂層付き基板の両面の樹脂層に直径25μmのビア孔を0.1mm間隔で形成した。
加工条件は以下の通りに設定した。
マスク径:200μm
周波数:100Hz
エネルギー:100mJ/cm2
ショット数:90
【0102】
また、193nm(ArF)の波長を有するエキシマレーザーにより樹脂層付き基板の両面の樹脂層に狙い幅10μm、狙い深さ15μmの溝を形成した。
加工条件は以下の通りに設定した。
マスク:50μm幅のスリットマスク
周波数:100Hz
エネルギー:500mJ/cm2
スキャン速度:65μm/sec
【0103】
ビア孔と溝を形成した樹脂層付き基板をキャリアフィルム付きのままで、60℃の膨潤液(アトテックジャパン株式会社製、スウェリングディップ セキュリガント P500)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン株式会社製、コンセントレート コンパクト CP)に20分浸漬後、中和してデスミア処理を行った。
【0104】
次にキャリアフィルムを剥離後、脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき層約0.2μmを形成させた。
【0105】
次に、無電解銅めっき層を電極として電解銅めっき(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナα)を3A/dm、30分行って、樹脂表層での厚さが約5μmとなるように導体を形成した。
【0106】
樹脂表層に存在する導体をクイックエッチング処理(荏原電産社製 SACプロセス)を行うことにより除去し、ビア間の絶縁と配線間の絶縁を確保した。次に絶縁樹脂層を温度200℃、60分間で完全硬化させた。
【0107】
なお、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線とビアは引き出し導体層で接続された。
最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ製造株式会社製、PSR4000/AUS308)を形成し、4層プリント配線板を作製した。
【0108】
<実施例II−2>
ビア孔を形成する際のマスク径を150μmにした以外は実施例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0109】
<実施例II−3>
ビア孔を形成する際のマスク径を100μmにした以外は実施例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0110】
<実施例II−4>
ビア孔を形成する際のマスク径を50μmにした以外は実施例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0111】
<実施例II−5>
ビア孔と溝を形成する際に248nm(KrF)の波長を有するエキシマレーザーを用いた以外は実施例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0112】
<実施例II−6>
ビア孔と溝を形成する際に355nmの波長を有するYAGレーザー(日立ビアメカニクス株式会社製、LU−2G121/2C)を用いた以外は実施例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0113】
<実施例II−7>
樹脂フィルムの厚さを10μm、ビア孔を形成する際のショット数を50にした以外は実施例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0114】
<実施例II−8>
樹脂フィルムの厚さを15μm、ビア孔を形成する際のショット数を70にした以外は実施例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0115】
<比較例II−1>
エポキシ樹脂系のビルドアップ材(味の素株式会社製、GX−13、無機充填材の最大粒径2.5μm、無機充填材の2μm超過の粗粒が8000ppm、無機充填材の平均粒径0.5μm)を樹脂層として用いた以外は実施例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0116】
<比較例II−2>
355nmの波長を有するYAGレーザーを用いた以外は比較例II−1と同様にして4層プリント配線板を作製した。
【0117】
評価方法は以下の通りである。結果を表2に示した。
【0118】
1.ビアのトップ径
デスミア処理しキャリアフィルムを剥離後の樹脂層のビア上面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ビアのトップ径を測定した。
【0119】
2.ビア孔内部又は溝内部の樹脂表面の算術平均粗さ(Ra)
4層プリント配線板のビア断面を縦に切断し、導体層をエッチング除去後、ビア孔内部の樹脂表面をJIS B0601に準じて、Veeco社製WYKO NT1100を用いて測定を行った。
また、溝表面の算術平均粗さ(Ra)は、導体回路方向の切断断面について、エッチングにより導体層を除去後、JIS B0601に準じて、Veeco社製WYKO NT1100を用いて測定を行った。
【0120】
3.接続信頼性試験
ビア壁間距離0.1mmの4層プリント配線板を、135℃、85%RH、印加電圧50Vの条件下で200h処理しながら、ビア間の絶縁抵抗値をモニターした。
各符号は以下の通りである。
○:1.0×10Ω以上
×:1.0×10Ω未満
【0121】
4.めっき付き性
4層プリント配線板のビア断面を切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、ビア孔内のめっき付き性を調べた。各符号は以下の通りである。
○:ビア孔内にめっきが隙間なく充填され実用上問題なし。
×:ビア孔内にめっきに一部マイクロボイドがあり実用上問題あり。
【0122】
【表2】

【0123】
表2から明らかなように、実施例II−1〜II−8は、ビア孔内部及び溝内部の樹脂層平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下となり、ビアの直径が25μm以下で形成が可能であり、且つ、絶縁信頼性及び信号応答性、さらにビア内のめっき付き不良や層間接続不良を低減することができる作用に優れる良好なビアが形成できた。更に、導体層の最大幅が10μmで、配線ピッチ10μmのパターンが形成でき、且つ、絶縁信頼性及び高周波領域でも信号応答性に優れる良好な微細配線が形成できた。一方、比較例II−1〜II−2では、樹脂層平均粗さ(Ra)が0.5μm以上となり、接続信頼性試験やめっき付き性にも実用上問題が生じた。また、比較例II−1〜II−2では、導体層の最大幅も大きくなってしまい、配線ピッチ10μmのパターン形成ができなかった。
【0124】
<半導体装置の製造>
上記実施例及び比較例で得られた各多層プリント配線板を用いて、半導体装置を製造した。
半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.725mm)としては、半田バンプは直径120μm、150μmピッチ、Sn/Pb組成の共晶で形成され、回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、上記実施例及び比較例で得られた各多層プリント配線板上に半導体素子を加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、各多層プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。
【0125】
<半導体装置の評価>
前記で得られた半導体装置を、IPC/JEDECのJ−STD−20に準拠して、温度30℃、湿度60%、時間192時間の前処理を行い、その後、260℃に達するリフロー炉に3回通し、後処理として−50℃30分、125℃30分の温度サイクルを500サイクル実施した。評価は、前処理後、と温度サイクルを500サイクル後処理後の半導体素子の導通抵抗評価、および断面観察を実施した。評価結果は、表2に合わせて示す。
各符号は以下の通りである。
◎:500サイクル後処理後の導通抵抗異常なし、および断面観察での導体回路、ビアの異常なし
○:500サイクル後処理後の導通抵抗が1〜10%未満の範囲で処理前より上がっているが、断面観察での導体回路、ビアの異常なし。
×:500サイクル後処理後の導通抵抗が、10%以上処理前より上がっている。または、導体回路と樹脂間、ビアと樹脂間のいずれかに、マイクロボイド、剥離クラック発生。
【0126】
表2から明らかなように、実施例II−1〜II−8では、高密着であり、高信頼性の半導体装置が得られた。一方、比較例II−1〜II−2では、導通抵抗が上がり、密着性も悪く、剥離クラックも発生してしまった。
【0127】
実施例シリーズIII:種々の樹脂組成物を用いた第一の態様の複合体及び半導体装置の製造
<実施例III−1>
(1)ワニス作製
熱硬化性樹脂として、多官能エポキシ樹脂(ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂、DIC社製、HP−5000)13.4重量部、2官能エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828EL)13.4量部、フェノール樹脂(明和化成株式会社、MEH7851−4L)22.7重量部、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、YX−8100BH30、固形分30%)8.8重量部(固形分)、無機充填材として2μm以上の粗粒が5ppmの球状シリカ(トクヤマ社製、NSS−3N、平均粒径0.12μm)40.8重量部、イミダゾール化合物(四国化成工業社製、キュアゾール2E4MZ)0.3重量部、シランカップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、A−187)0.6重量部、をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。尚、樹脂組成物の無機充填材の比率は、約41重量%であり、無機充填材の粗粒は予めメチルエチルケトン中に分散させた状態で、2μmの細孔径フィルターで積層型カートリッジフィルター(住友スリーエム株式会社製)を用いて最大粒子径2.0μmを上回る粒子を濾過分離し、上記粗粒量及び平均粒径となった球状シリカを用いた。粗粒量は粒子画像解析装置(シスメックス社製FPIA−3000S)を用いて確認した。
【0128】
(2)樹脂シートの作製
上記で得られた樹脂ワニスを、厚さ37μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの片面に、コンマコーター装置を用いて乾燥後の樹脂層の厚さが40μmとなるように塗工し、これを160℃の乾燥装置で10分間乾燥して、樹脂シートを作製した。
【0129】
(3)プリント配線板の作製
上記で得られた樹脂シートをガラスエポキシ基材の両面回路が形成された内層回路基板に重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形し、PET基材剥離後、熱風乾燥装置にて180℃で45分間加熱硬化行い絶縁層を有する基板を得た(評価基板1)。
なお、内層回路基板としては、下記のものを使用した。
・ガラスエポキシ基材:住友ベークライト社製 ELC−4585GS−B、厚さ0.4mm
・導体層:銅箔厚み18μm、L/S=120/180μm、クリアランスホール1mmφ、3mmφ、スリット2mm
【0130】
次に、193nmの波長を有するエキシマレーザーにより絶縁層に狙い幅10μm、狙い深さ15μmの溝を形成し、得られた積層体を、60℃の膨潤液(アトテックジャパン株式会社製、スウェリングディップ セキュリガント P500)に10分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン株式会社製、コンセントレート コンパクト CP)に20分浸漬後、中和してデスミア処理を行った。
【0131】
次に前記積層体の絶縁層表面を脱脂し、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき層約0.2μmを形成させ、無電解銅めっき層を電極として電解銅めっき(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナα)を3A/dm2、30分行って、絶縁層表面から厚さ約5μmの高さの導体層を形成した(評価基板2)。
【0132】
最後にクイックエッチング処理(荏原電産社製 SACプロセス)を行うことにより導体層高さを、絶縁層表面と揃え、L/S=10/10の微細配線加工を施した。次に絶縁樹脂層を温度200℃、60分間で完全硬化した。最後に、同じ樹脂シートを両面に重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置にて200℃で60分間加熱硬化行い、プリント配線板を得た。
【0133】
(4)半導体装置
上記で得られたプリント配線板を用いて、半導体装置を製造した。
半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.725mm)としては、半田バンプは直径120μm、150μmピッチ、Sn/Pb組成の共晶で形成され、回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、上記プリント配線板上に半導体素子を加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。
【0134】
<実施例III−2〜4>
実施例III−2〜III−4は、表3の配合表に従い、実施例III−1と同様に樹脂シート、及びプリント配線板、並びに半導体装置を得た。
【0135】
<実施例III−5>
(1)ワニス作製
表3の配合表に従い、実施例III−1と同様に樹脂ワニスを作製した。
(2)樹脂シートの作製
ワニス作製後、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに代えて、極薄銅箔(三井金属鉱山社製、マイクロシンMT−Ex、3μm)を使用した以外は、実施例III−1と同様にして、極薄銅箔を有する樹脂シートを作製した。
【0136】
(3)プリント配線板の作製
前記極薄銅箔を有する樹脂シートをガラスエポキシ基材の両面回路が形成された内層回路基板に重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形し、熱風乾燥装置にて180℃で45分間加熱硬化行った。
次に銅箔をエッチング除去し、評価基板1を得た。また、実施例III−1と同様に前記評価基板1を用い、評価基板2を得た。更に、実施例III−1と同様に前記評価基板2を用い、プリント配線板を得た。
【0137】
(4) 半導体装置
実施例III−1と同様に前記プリント配線板を用い、半導体装置を得た。
【0138】
<実施例III−6>
実施例III−4で得られた樹脂シートを用いた絶縁層を有する基板に、355nmの波長を有するYAGレーザーにより絶縁層に幅10μm、深さ15μmの溝を形成した以外は実施例III−1と同様にして、評価基板1、2、およびプリント配線板、並びに半導体装置を得た。
【0139】
<実施例III−7〜14>
実施例III−7〜III−14は、表3の配合表に従い、実施例III−1と同様に樹脂シート、及び評価基板1、2、およびプリント配線板、並びに半導体装置を得た。
【0140】
<比較例III−1>
汎用のエポキシ樹脂系樹脂シート(GX‐13、味の素株式会社製、無機充填材の最大粒径2.5μm、無機充填材の平均粒径0.5μm)を用いた以外は実施例III−1と同様にして、評価基板、並びに半導体装置を得た。尚、評価基板1では、170℃で60分、プリント配線板では、180℃で60分の条件とした。また、無機充填材の粗粒量は、樹脂シートから樹脂を採り、溶剤に溶解した後、粒子画像解析装置(シスメックス社製FPIA−3000S)を用いて確認したところ、2μm超過の粗粒は8000ppmであった。
【0141】
<比較例III−2>
比較例III−2は、表3の配合表に従い、実施例III−1と同様に樹脂シート、及び評価基板1、2、およびプリント配線板、並びに半導体装置を得た。
【0142】
【表3】

【0143】
前記実施例、並びに比較例で得られた樹脂シート、評価基板1、評価基板2、およびプリント配線板を用い以下に示す評価を行った。得られた結果を表4に示す。
【0144】
(1)デスミア後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601に準じて、Veeco社製WYKO NT1100を用いて測定を行った。尚、評価サンプルは評価基板1を用いた。
【0145】
(2)導体層壁面の10点平均粗さ(Rz)
導体配線の断面から、JIS B0601に準じて、10点平均粗さ(Rz)を算出した。尚、評価サンプルは評価基板2を用いた。
【0146】
(3)線間絶縁信頼性(HAST)
印加電圧3.3VDC、温度130℃、湿度85%の条件で、線間絶縁信頼性試験を行った。尚、評価サンプルは、プリント配線板を用いた。
絶縁抵抗値が、1x10Ω未満となると不良と判断して試験を終了した。
各符号は、以下の通りである。
◎:良好 500時間以上
○:実質上問題なし 200時間以上500時間未満
×:使用不可 200時間未満
【0147】
(4)熱膨張率(α1)
厚さ40μm、5mm×20mmのテストピースを切り出し、TMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて5℃/分、5gの条件で、面方向(X方向)の線膨張係数を測定した。25℃から120℃までの平均線膨張係数をα1とした。尚、サンプルは得られた樹脂シートの両面に銅箔をラミネートし、200℃、1時間の条件で加熱硬化後、銅箔をエッチング除去したものを用いた。
【0148】
<半導体装置の評価>
前記で得られた半導体装置を、IPC/JEDECのJ−STD−20に準拠して、温度30℃、湿度60%、時間192時間の前処理を行い、その後、260℃に達するリフロー炉に3回通し、後処理として−50℃30分、125℃30分の温度サイクルを500サイクル実施した。評価は、前処理後、と温度サイクルを500サイクル後処理後の半導体素子の導通抵抗評価、および断面観察を実施した。評価結果は、表4に合わせて示す。
各符号は以下の通りである。
◎:500サイクル後処理後の導通抵抗異常なし、および断面観察での導体回路、ビアの異常なし
○:500サイクル後処理後の導通抵抗が1〜10%未満の範囲で上がっているが、断面観察での導体回路、ビアの異常なし。
×:500サイクル後処理後の導通抵抗が、10%上がっている。または、導体回路と樹脂間、ビアと樹脂間のいずれかに、マイクロボイド、剥離クラック発生。
【0149】
【表4】

【0150】
表4から明らかなように、実施例III−1〜III−14は、絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下の良好な低粗化であり、かつ導体層壁面の10点平均粗さ(Rz)が5.0μm以下であった。このように表面粗さが最適化されたため、微細配線の絶縁信頼性に優れる。また。信号応答性に優れる良好な微細配線が形成できた。
それに対して、比較例III−1、およびIII−2は無機充填材の粒径が大きいのに加えて粗粒除去が十分でないため、導体層壁面の10点平均荒さ(Rz)が大きく導体配線間の距離が非常に近くなっているため微細配線の絶縁信頼性に劣る。また、絶縁層表面のRaが大きく微細配線形成には不適格である。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明に従うと、複合体の樹脂層表面に形成された高密着、高信頼性、高周波対応、溝及びビア内のめっき付き性や層間接続性に優れた溝及びビアを有する複合体を得ることができるため、とりわけ、回路幅/回路間幅(L/S)が10μm/10μm以下の微細配線を有する例えばプリント配線板に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0152】
1 樹脂層
2 導体層
3 溝
4 ビア孔
5 レーザー光
6 マスク
10 基材
11 両面導体層付きコア基材の導体層
40 別の樹脂層
50 無電解めっき層
51 無電解めっき層
52 無電解めっき層
60 電解めっき層
61 電解めっき層
62 電解めっき層
70 導体
100 第一の複合体
101 第二の複合体
102 第二の複合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と導体層とを含む複合体であって、
前記樹脂層表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝と当該溝内部に導体層を有し、当該導体層と接する前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である、
ことを特徴とする複合体。
【請求項2】
樹脂層と導体層とを含む複合体であって、
前記樹脂層に直径が1μm以上、25μm以下のビア孔と当該ビア孔内部に導体層を有し、前記ビア孔内部の樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である、
ことを特徴とする複合体。
【請求項3】
更に、前記樹脂層表面に最大幅が1μm以上、10μm以下の溝と当該溝内部に導体層を有し、当該導体層と接する前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記樹脂層が無機充填材を含み、当該無機充填材は、2μm超過の粗粒が500ppm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
前記樹脂層が無機充填材を含み、当該無機充填材の平均粒径が0.05μm以上、1.0μm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
前記溝内部の導体層の断面形状が、略台形状、蒲鉾状又は三角形であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
前記ビア孔の断面形状が、略台形状であることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項8】
前記複合体が、プリント配線板、半導体素子、メタルコア配線板の中から選ばれた少なくともひとつであることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項9】
樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、
(A)レーザー光によって樹脂層表面に、内部表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である溝を形成する工程と、
(B)無電解めっきによって前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、
(C)前記導体の一部を除去することにより、前記樹脂層の前記溝部分のみに導体層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項10】
前記工程(C)の後に、
(D)前記樹脂層と前記導体層の上に別の樹脂層を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の複合体の製造方法。
【請求項11】
樹脂層と導体層とを含む複合体を製造する方法であって、
(A)レーザー光によって、樹脂層に、内部の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であるビア孔を形成する工程と、
(B)無電解めっきによって前記樹脂層表面に導体を形成する工程と、
(C)前記導体の一部を除去することにより、前記樹脂層のビア孔部分のみに導体層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項12】
前記工程(A)が、レーザー光によって、樹脂層に内部の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下であるビア孔と、樹脂層表面に内部表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以上、0.45μm以下である溝とを形成する工程であり、且つ、
前記工程(C)が、前記導体の一部を除去することにより、前記樹脂層のビア孔及び前記樹脂層表面の溝部分のみに導体層を形成する工程、
であることを特徴とする請求項11に記載の複合体の製造方法。
【請求項13】
前記工程(C)の後に、
(D)前記樹脂層と前記導体層の上に別の樹脂層を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の複合体の製造方法。
【請求項14】
前記工程(A)と前記工程(B)の間に、プラズマ又は薬液によってデスミアする工程を含むことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項15】
前記工程(B)と前記工程(C)の間に、電解めっきでさらに導体形成する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項16】
前記レーザー光がエキシマレーザー又はYAGレーザーであることを特徴とする請求項9ないし15のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項17】
前記工程(A)において、前記樹脂層に無機充填材が含まれ、当該無機充填材は、2μm超過の粗粒が500ppm以下であることを特徴とする請求項9ないし16のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項18】
前記工程(A)において、前記樹脂層に無機充填材が含まれ、当該無機充填材の平均粒径が0.05μm以上、1.0μm以下であることを特徴とする請求項9ないし17のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項19】
前記複合体が、プリント配線板、半導体素子、メタルコア配線板の中から選ばれた少なくともひとつであることを特徴とする、請求項9ないし18のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
【請求項20】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の複合体がプリント配線板又はメタルコア配線板であって、当該複合体に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−258415(P2010−258415A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28952(P2010−28952)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】