複合押出成形品及びその製造方法
【課題】装飾カバー部とモール本体部とを一体化したベルトモールディングの湾曲や反りを防止しながら端末に加工や処理を容易に施すことができるようにする。
【解決手段】ベルトモールディング10は、モール本体部12の外面形状のうちの装飾カバー部11の内面に対向する部分が装飾カバー部11の内面形状の相似的縮小形に形成されて、装飾カバー部11の内部空間内にモール本体部12の一部が非接着状態で嵌め込まれていて、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止されている。更に、モール本体部12の押出成形後の冷却に伴う長手方向の収縮によりモール本体部12の長さが装飾カバー部11の長さよりも短くなることで、装飾カバー部11の端末に装飾カバー部11の内部空間内にモール本体部12が存在しない端末段差部が形成されている。
【解決手段】ベルトモールディング10は、モール本体部12の外面形状のうちの装飾カバー部11の内面に対向する部分が装飾カバー部11の内面形状の相似的縮小形に形成されて、装飾カバー部11の内部空間内にモール本体部12の一部が非接着状態で嵌め込まれていて、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止されている。更に、モール本体部12の押出成形後の冷却に伴う長手方向の収縮によりモール本体部12の長さが装飾カバー部11の長さよりも短くなることで、装飾カバー部11の端末に装飾カバー部11の内部空間内にモール本体部12が存在しない端末段差部が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料で成形された長尺な第1部材とポリマー材料で押出成形された長尺な第2部材とを一体化した複合押出成形品及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特開2003−182373号公報)に記載されているように、ステンレス芯材と硬質樹脂材料(例えばポリプロピレン)と弾性接触材料(例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー)とを一体化したモールディングにおいて、ステンレス芯材に接着剤を塗布した後、硬質樹脂材料と弾性接触材料を共押出成形して、ステンレス芯材に硬質樹脂材料と弾性接触材料を接着して一体化するようにしたものがある。
【0003】
また、金属板材料で横断面C字形に成形されたカバー部材と、ポリマー材料で押出成形された本体部材とを一体化したモールディングにおいて、カバー部材と本体部材をそれぞれ別々の工程で別々に製造した後、カバー部材の長手方向の端末からカバー部材の横断面C字形の溝内に本体部材を押し込んで挿入して、カバー部材と本体部材とを一体化するようにしたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−182373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のモールディング(ステンレス芯材に硬質樹脂材料と弾性接触材料を接着して一体化したモールディング)では、次のような不具合が発生する。以下、ステンレス芯材を「第1部材」と表記し、硬質樹脂材料と弾性接触材料を「第2部材」と表記する。
【0006】
(1) ポリマー材料製の第2部材は、金属材料製の第1部材よりも熱膨張係数が大きいため、第1部材よりも冷却による長手方向の収縮量が大きくなる。このため、モールディングを製造する際の押出成形後に第1部材と第2部材が接着された状態で冷却されると、収縮量が大きい第2部材に長手方向の引張応力が発生して、バイメタルに似た作用により第2部材側を半径方向内側にしてモールディングが湾曲したり、モールディングに反りが生じたりする。
【0007】
(2) この対策として、モールディングを製造する際に押出後のモールディングを直線状にした状態でアニール処理を施して湾曲や反りを防止することが知られているが、アニール処理を施したモールディングであっても、製品として使用中に温度変化に晒されると、第1部材と第2部材の熱膨張係数の違いにより湾曲や反りが生じることがある。
【0008】
(3) また、第1部材の長手方向の端末に所定の加工や処理を施す必要がある場合に、第1部材の端末に第2部材の端末が接着された状態で存在していると、第1部材と第2部材の両方を含めて加工や処理を行う必要があり、加工や処理の容易性と正確性を阻害することがある。
【0009】
(4) 第1部材の端末部分(所定の加工や処理を施す部分)に第2部材の端末が存在しないようにするために、第1部材の端末部分から第2部材を除去する方法も考えられるが、第1部材に接着された第2部材を除去する作業は極めて困難である。
【0010】
一方、カバー部材の溝内に本体部材を長手方向の端末から挿入してカバー部材と本体部材とを一体化したモールディングでは、次のような不具合が発生する。以下、カバー部材を「第1部材」と表記し、本体部材を「第2部材」と表記する。
【0011】
第1部材と第2部材は、それぞれ別々の工程で別々に製造されるため、例えば、第1部材の横断面形状の寸法が小さい側にばらついて、第2部材の横断面形状の寸法が大きい側にばらつくこともあり、このような場合、第1部材の溝内に第2部材を挿入して一体化する作業が困難になる。また、第2部材の挿入性をよくするために、第2部材の横断面形状を第1部材よりも小さく設定すると、第1部材と第2部材とを一体化した後、第1部材と第2部材との間の隙間が大きくなり過ぎて両部材間に、がたつきがでることがある。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、第1部材と第2部材とを一体化した複合押出成形品において、第1部材と第2部材の熱膨張係数の違いによる湾曲や反りを防止しながら、端末に加工や処理を容易に施すことができると共に、第1部材と第2部材を容易に一体化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、金属材料で所定の横断面形状に成形されて幅方向の両端から内側に向けて突出するフランジの先端間の開口幅寸法よりも大きい幅寸法の内部空間を有する長尺な第1部材と、第1部材の少なくとも内部空間内に金属材料とは熱膨張係数が異なるポリマー材料で所定の横断面形状に直接に押出成形された長尺な第2部材とを備え、第1部材の内部空間内に第2部材が嵌合された長尺な複合押出成形品であって、第1部材の内部空間内には前記金属材料よりも熱膨張係数が大きいポリマー材料が第1部材の内面に接して長手方向に連続して押し出されて第2部材が形成され、金属材料とポリマー材料の熱膨張係数の違いによる収縮量の差に対応して第2部材の外面形状のうちの第1部材の内面に対向する部分が第1部材の横断面形状における内面形状の相似的縮小形の一定横断面形状に形成されて第1部材の内部空間内に第2部材が第1部材の内面との間に隙間が生じて非接着状態で嵌め込まれていて、第1部材と第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止されており、第2部材の押出成形後の冷却に伴う長手方向の収縮により第2部材の長さが第1部材の長さよりも短くなることで第1部材の長手方向の少なくとも一方の端末に第1部材の内部空間内に第2部材が存在しない端末段差部が形成され、端末段差部に第2部材とは独立した適宜の加工又は処理が施されている構成としたものである。
【0014】
この構成では、第1部材と第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されているので、複合押出成形品を製造する際や製品として使用中に温度変化に晒されても、第1部材と第2部材がそれぞれ独立して伸縮することができて、第1部材や第2部材に長手方向の引張応力や圧縮応力が発生せず、第1部材と第2部材の熱膨張係数の違い(伸縮量の違い)による湾曲や反りを防止することができる。また、第1部材と第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向と交差する方向には移動が阻止されているので、複合押出成形品を製品として使用中に第1部材と第2部材が外れない。更に、第1部材の端末に第2部材が存在しない端末段差部が形成されているので、第1部材の端末(端末段差部)に加工や処理を容易に施すことができる。また、第1部材の内部空間内にはポリマー材料が第1部材の内面と密接して押し出されて第2部材が成形され、第2部材の外面形状は、第1部材の内面形状が許容公差の範囲でばらついても、そのばらつきに応じて第1部材の内面形状と1対1のテーラーメイド的関係を有して形成される。従って、第2部材の外面は、第1部材の内面と微小な隙間を保って嵌め合わされて一体化されているので、第1部材と第2部材の間に過度の隙間が生じず、両部材の間に過度のがたつきが生じない。
【0015】
この場合、請求項2のように、第1部材は、内部空間が内側となるように横断面形状が湾曲した異形形状(例えば「C」字形状や「L」字形状等)に成形すると良い。このようにすれば、第1部材の異形形状の内部空間内に第2部材を安定して嵌め合わせた状態にすることができる。
【0016】
また、請求項3のように、第1部材は、一定厚さのステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板から所定横断面形状に折り曲げられて成形されているようにしても良い。ステンレス鋼板やアルミニウム板の表面には化学的に安定して不活性で他の物質と接着しにくい酸化皮膜(以下「不動態皮膜」という)が形成されているため、第2部材との非着性を高めることができる。また、第1部材の外表面に光輝色を呈させることができ、外表面に金属光輝色を求められる特定の用途に有利である。
【0017】
或は、請求項4のように、第1部材は、所定の長さに切断されたアルミニウム合金の長尺な異形押出材を用いるようにしても良い。アルミニウム合金の表面には陽性酸化皮膜等の不動態皮膜が形成されているため、第2部材との非着性を高めることができる。また、この場合にも前記と同様に光輝色を呈させることができ、有利である。
【0018】
また、請求項5のように、第1部材の少なくとも内面になる部分に平滑処理が施されていても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との界面に物理的な引っ掛かりが生じないので、第1部材と第2部材の相手部材に対する長手方向の移動に支障が生じない。尚、平滑処理は、冷間圧延により表面が平滑化された鋼板等を第1部材の材料として使用すれば、製造工程中で別途の平滑処理は省略できる。
【0019】
更に、請求項6のように、第1部材の内面と第2部材の外面との間に離型剤層を形成するようにしても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との間の非着性を更に高めることができる。
【0020】
また、請求項7のように、第1部材の幅方向の両端のフランジをそれぞれ相手方に向けて突出するフック状に形成するようにしても良い。このようにすれば、第1部材から第2部材が外れることを効果的に防止することができる。
【0021】
また、請求項8のように、第1部材の端末(端末段差部)に施す適宜の加工は、第1部材の長さが所定の最終寸法になるように端末段差部が切断された加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部にエンドキャップが装着された加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部が内側方向に折り曲げられた加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部を内側方向へ絞った加工のうちの少なくとも1つを行うようにすると良い。このようにすれば、端末段差部に容易に加工を行うことができる。
【0022】
更に、請求項9のように、第2部材を成形するポリマー材料は、ゴム又は熱可塑性合成樹脂を用いるようにすると良い。このようにすれば、第2部材を容易に押出成形することができる。
【0023】
また、本発明の複合押出成形品を製造する場合には、請求項10のように、第1部材を準備する第1部材準備工程と、第2部材を成形する押出成形型に第1部材を長手方向に供給しながら押出成形型内で第1部材の内部空間内では第1部材の内面を成形型面として第1部材を形成する金属材料よりも熱膨張係数が大きいポリマー材料を第1部材の横断面形状における内面に接して長手方向に連続して押し出して第1部材の内面と非接着状態で密接させて第1部材の内面形状が反転した外面形状の横断面形状を有するように第2部材を連続して成形して、第1部材と第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止された直線状の複合押出成形品を常温を越える温度に加熱された状態で成形する押出成形工程と、第1部材の上流側の端末と第2部材の上流側の端末とが同一位置になるように複合押出成形品を所定の長さに切断する切断工程と、複合押出成形品を冷却してポリマー材料で成形された第2部材を収縮させて第2部材の外面形状のうちの第1部材の内面に対向する部分を第1部材の内面形状の相似的縮小形に形成すると共に、第2部材の長手方向の収縮により第2部材の長さが第1部材の長さよりも短くなることで第1部材の長手方向の少なくとも一方の端末に第1部材の内部空間内に第2部材が存在しない端末段差部を形成する収縮工程と、端末段差部に第2部材とは独立した適宜の加工又は処理を施す端末加工工程とを実行するようにすると良い。このようにすれば、本発明の複合押出成形品を容易に製造することができる。尚、上記の切断工程と収縮工程は順序が逆であっても良い。
【0024】
この場合、請求項11のように、押出成形工程の後で且つ切断工程の前にポリマー材料で成形された第2部材を硬化又は固化させる処理工程を実行するようにすると良い。この処理工程では、ポリマー材料がゴムの場合には加硫によって第2部材を硬化させることができ、ポリマー材料が熱可塑性合成樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の場合には冷却によって第2部材を固化させることができる。
【0025】
また、請求項12のように、収縮工程において、第2部材を自然冷却させるようにしても良い。このようにすれば、格別の処理を必要とせずに第2部材を自然冷却させて収縮させることができる。
【0026】
本発明は、所定の横断面形状の第1部材を外部から入手するようにしても良いが、請求項13のように、第1部材準備工程において、金属材料として金属帯板を長手方向に連続して供給しながら冷間ロール成形で所定の横断面形状の第1部材を成形し、冷間ロール成形と同期して第1部材を押出成形型に連続して供給するようにしても良い。このようにすれば、複合押出成形品の製造ラインで第1部材を製造して押出成形型に供給することができ、効率的に製造できる。
【0027】
この場合、請求項14のように、金属帯板は、厚さが0.1〜0.75mmの範囲内のステンレス鋼板又はアルミニウム板を用いるようにすると良い。このようにすれば、ステンレス鋼板やアルミニウム板の表面には不動態皮膜が形成されているため、第2部材との非着性を高めることができる。
【0028】
更に、請求項15のように、金属帯板のうちの少なくとも第1部材の内面になる部分に平滑処理を施すようにしても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との間の引っ掛かりを生じず、第1部材や第2部材の相手部材に対する長手方向の移動に支障が生じない。
【0029】
また、請求項16のように、第1部材の内部空間内にポリマー材料が充填される前に第1部材の内面に離型剤層を形成する工程を実行するようにしても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との間に離型剤層を形成することができ、第1部材の内面と第2部材の外面との間の非着性を更に高めることができる。
【0030】
また、請求項17のように、押出成形工程において、第1部材の長手方向の供給速度よりも遅い速度でポリマー材料を押し出して第2部材を成形することで第2部材を長手方向に伸長させながら第1部材と一体化させるようにしても良い。このようにすれば、第2部材に長手方向の引張応力を発生させ、内蔵させることができ、複合押出成形品を所定の長さに切断した後の第2部材の長手方向の収縮量を大きくすることができる。
【0031】
更に、請求項18のように、押出成形工程の後に複合押出成形品の長手方向と交差する方向に外力を加えて第1部材の内面と該内面に密接している第2部材の外面との間に長手方向でずれ力を作用させる分離促進工程を実行するようにしても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との分離を促進して、確実に第1部材や第2部材の相手部材に対する長手方向の移動が許容された状態にすることができる。
【0032】
また、請求項19のように、端末加工工程において、第1部材の長さが所定の最終寸法になるように端末段差部を切断する加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部にキャップを装着する加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部を内側方向に折り曲げる加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部を内側方向へ絞る加工のうちの少なくとも1つを行うようにすると良い。このようにすれば、端末段差部に容易に加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるベルトモールディングの横断面図である。
【図2】図2は装飾カバー部の横断面図である。
【図3】図3はベルトモールディングの製造装置の前半部分の概略構成図である。
【図4】図4はベルトモールディングの製造装置の後半部分の概略構成図である。
【図5】図5は端末処理装置を上流側から見た横断面図である。
【図6】図6はストリップ材の幅方向の端末及びその周辺部の端末処理前の状態を示す横断面図である。
【図7】図7はストリップ材の幅方向の端末及びその周辺部の端末処理後の状態を示す横断面図である。
【図8】図8はストリップ材の幅方向の端末及びその周辺部の端末処理後の状態の他の例を示す横断面図である。
【図9】図9は離型剤塗布装置を上流側から見た横断面図である。
【図10】図10は押出成形装置を側方から見た縦断面図である。
【図11】図11はベルトモールディングの切断直後の状態を示す縦断面図である。
【図12】図12はベルトモールディングのモール本体部の収縮後の状態を示す縦断面図である。
【図13】図13は装飾カバー部の端末段差部にエンドキャップを装着するための加工を施した状態を示す部分斜視図である。
【図14】図14は装飾カバー部の端末段差部にエンドキャップを装着した状態を示す部分縦断面図である。
【図15】図15は装飾カバー部の端末段差部にエンドキャップを装着した状態の他の例(その1)を示す部分縦断面図である。
【図16】図16は装飾カバー部の端末段差部にエンドキャップを装着した状態の他の例(その2)を示す部分縦断面図である。
【図17】図17は装飾カバー部の端末段差部を折り曲げ加工するための加工を施した状態を示す部分斜視図である。
【図18】図18は装飾カバー部の端末段差部に折り曲げ加工を施した状態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
図1に示すように、車両の窓開口縁(例えばアウタードアパネルの上縁)に沿って装着される長尺なベルトモールディング10(複合押出成形品)は、金属材料で成形された装飾カバー部11(第1部材)と、ポリマー材料で押出成形されたモール本体部12(第2部材)とが一体化されている。
【0035】
装飾カバー部11は、後述する第1部材準備工程で、実用的には、板厚が0.05mm以上1.0mm以下の金属帯板を冷間ロール成形で折り曲げ成形することで所定の横断面形状(例えば横断面が「C」字形状又は「L」字形状に湾曲した異形形状)に成形され、幅方向の両端から内側に向けて折り返し状に突出するフランジ13,13が設けられている。これらのフランジ13は、装飾カバー部11の両端から開口11bを隔ててそれぞれ相手方のフランジ13に向けて突出するように湾曲したフック状に形成され、装飾カバー部11の開口11bからモール本体部12が外れることを効果的に防止するようになっている。
【0036】
図2に示すように、装飾カバー部11の内面側(裏面側)には、装飾カバー部11の内面11cによって囲まれた内部空間11aがフランジ13の先端間の開口11bの幅寸法W1 よりも大きい幅寸法W2 (例えば5〜70mm)で形成されている。また、各フランジ13の突出長さ寸法T1 ,T2 がそれぞれ折り曲げ加工の容易性の理由から板厚の3倍以上の長さ(板厚が0.3mmのときは1mm以上)になるようにフランジ13が形成されている(ここで、W2 =W1 +T1 +T2 )。
【0037】
装飾カバー部11は、厚さ寸法が0.05〜1.0mmの範囲内の一定厚さのステンレス鋼板又はアルミニウム合金板の金属帯板が用いられ、少なくとも装飾カバー部11の内面11cになる部分に圧延等による平滑処理が施されている。装飾カバー部11の内面11cは、モール本体部12を成形するポリマー材料に対して非着性を有する。ステンレス鋼板やアルミニウム合金板の場合には、表裏両面に他の物質と接着しにくい酸化皮膜(不動態皮膜)が形成されているので、本発明においては特に有利な材料である。
【0038】
図1に示すように、モール本体部12(第2部材)は、後述する押出成形工程で、ポリマー材料を押出成形することで所定の横断面形状(例えば横断面U字形状)に成形され、車内側側壁部14と車外側側壁部15と両側壁部14,15を連結する頂壁部16とが一体的に設けられている。装飾カバー部11は、主として金属光輝色を呈させるためにモール本体部12の車外側側壁部15から頂壁部16にかけての表面に配置され、車内側側壁部14には存在しない。
【0039】
また、車内側側壁部14の外側面には、車内側(窓板側)に向けて突出するシールリップ17が一体的に形成され、車内側側壁部14の上端には、車内側(窓板側)に向けて突出する遮蔽リップ18が一体的に形成されている。本実施例では、車内側側壁部14に2つのシールリップ17が形成されている。更に、車内側側壁部14の内側面と車外側側壁部15の内側面には、それぞれ互いに対向する方向に向けて突出する保持リップ19,20が一体的に形成され、車外側側壁部15の下端には、ドアパネル側に向けて突出するクッションリップ21が一体的に形成されている。本実施例では、車内側側壁部14に2つの保持リップ19が形成され、車外側側壁部15に1つの保持リップ20が形成されている。
【0040】
また、車内側側壁部14の上端と車外側側壁部15の下端には、それぞれ装飾カバー部11のフランジ13,13の内面側に嵌まり込む凸条22,22と、装飾カバー部11のフランジ13,13が嵌まり込む凹溝23,23が形成され、装飾カバー部11のフランジ13,13とモール本体部12の凹溝23,23とが係合している。モール本体部12の各壁部14〜16を成形するポリマー材料は、装飾カバー部11を成形する金属材料よりも熱膨張係数が大きいゴム(例えば、EPDMゴム等)又は熱可塑性合成樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等)の後述するリップよりも硬度が高い材料が用いられている。モール本体部12の各リップ17〜21は、各壁部14〜16よりも軟質のポリマー材料(装飾カバー部11を成形する金属材料よりも熱膨張係数が大きいゴム又は熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマー等)で形成されている。尚、リップ19,20は、各壁部14〜16と同程度の硬質のポリマー材料で形成されても良い。
【0041】
また、モール本体部12のポリマー材料は、タルクやカーボンファイバー(炭素繊維)等のフィラー(充填材)をブレンドした強化ポリマー材料であっても良く、そのブレンド量が多くなると、線膨張係数が小さくなるが、収縮量や求められる強度との関連で、このような強化ポリマー材料でモール本体部12を成形するようにしても良い。
【0042】
ベルトモールディング10は、モール本体部12の外面形状のうちの装飾カバー部11の内面11cに対向する部分(車外側側壁部15及び頂壁部16の外面12aの形状)が押出成形後の材料の成形収縮(大半が温度低下に伴う収縮)により装飾カバー部11の内面11cの形状の相似的縮小形の一定横断面形状に形成されて、装飾カバー部11の内部空間11a内にモール本体部12の一部(車外側側壁部15と頂壁部16)が装飾カバー部11の内面11cと周方向で微小な隙間(使用するポリマー材料の熱膨張係数に対応して、実用的には0.01mm〜0.5mmの隙間)を保って非接着状態で嵌め込まれていて、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向(開口11bから抜け出す方向)には移動が阻止されている。また、後述する離型剤塗布工程で、装飾カバー部11の内面11cに液状の離型剤を塗布して形成することで、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に離型剤層24(図2の点線参照)が形成されている。
【0043】
以下、図3乃至図18を用いて、ベルトモールディング10の製造方法を説明する。まず、図3乃至図9に示す第1部材準備工程の説明をする。
図3に示すように、長尺なストリップ材25(例えば幅広の原反コイル材から所定の一定幅にスリッタロールでスリットされたステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板)が巻き付けられたアンコイラ26が配置され、このアンコイラ26からストリップ材25を解いて送出ローラ27で長手方向に連続して送り出して、ストリップ材25を端末処理装置29に連続して供給する。
【0044】
送出ローラ27と端末処理装置29との間には、抵抗溶接機又は接合接着テープ貼着機等の接合機28が配置され、アンコイラ26に巻き付けられたストリップ材25を全て供給し終えて次のアンコイラ26に交換する場合に、接合機28により、先のアンコイラ26から供給したストリップ材25の終端部と、次のアンコイラ26から供給されるストリップ材25の始端部とを溶接又は接合接着テープ等で接続して連続させる。
【0045】
図5に示すように、端末処理装置29は、ストリップ材25を表裏両側から挟んで自由回転又は回転駆動される一対の押えローラ30,31と、ストリップ材25を幅方向両側から挟んで自由回転する一対の処理ローラ32,33が配置されている。各処理ローラ32,33の外周面には、それぞれストリップ材25の幅方向の端末を加工するためのV形溝34が外周方向に沿って設けられている。
【0046】
図6に示すように、端末処理前のストリップ材25の幅方向の端末(後の折り曲げ成形でフランジ13に成形される部分)には、前述したスリット加工の際に長手方向に連続してシャープエッジ状のバリ25a(「反り」ともいう)が発生していることがあるが、端末処理装置29は、押えローラ30,31の間にストリップ材25を表裏両側から挟んで送り出しながら、処理ローラ32,33のV形溝34の間にストリップ材25を幅方向両側から挟んで加圧することで、図7に示すように、ストリップ材25の幅方向の端末のバリ25aを処理ローラ32,33のV形溝34で塑性変形させて端末を丸くし、バリ25aが存在しない状態にする面取り加工を行う。尚、前記に代えて、図示しない折り曲げ成形ローラを用いて、図8に示すように、ストリップ材25の幅方向の端末を折り返して丸くする加工を行うようにしても良い。
【0047】
このようにして、ストリップ材25の幅方向の端末をシャープなバリが存在しない丸形にすることで、ストリップ材25から成形した装飾カバー部11のフランジ13の先端を丸くすることができ、これにより、装飾カバー部11のフランジ13の先端がモール本体部12に食い込むことを防止して、装飾カバー部11とモール本体部12の相手部材に対する長手方向の移動が阻害されないようすることができる。
【0048】
この後、図3に示すように、端末処理装置29から送り出されるストリップ材25をガイドローラ35を介して冷間ロール成形装置36に連続して供給する。この冷間ロール成形装置36により、ストリップ材25を長手方向に連続して供給しながら冷間ロール成形で折り曲げ成形して所定の横断面形状の装飾カバー部11(図2参照)を成形し、この冷間ロール成形と同期して装飾カバー部11を後述する押出成形装置44に供給する。冷間ロール成形装置36は、複数対(例えば8〜12対)の成形ローラでストリップ材25の横断面形状を徐々に変形させて、最終的に所定の横断面形状の装飾カバー部11(第1部材)を成形する。
【0049】
この後、冷間ロール成形装置36から送り出される装飾カバー部11を離型剤塗布装置37に連続して供給する。この離型剤塗布装置37により、装飾カバー部11の内面11cに離型剤層24(図2の点線参照)を形成する離型剤塗布工程を実行する。以上の工程が第1部材準備工程に相当する。
【0050】
図9に示すように、離型剤塗布装置37には、装飾カバー部11のフランジ13の先端間の開口11bを上向きにした状態で、外表面に装飾カバー部11の外面形状に対応した外面形状の横断面形状を有し装飾カバー部11を下側から支持する支持ローラ38が装飾カバー部11の下側に配置され、この支持ローラ38の上方に、離型剤を塗布するための塗布ヘッド39が配置されている。この塗布ヘッド39には、スポンジやフェルト等で装飾カバー部11の内部空間11aに対応した形状に形成された塗布部40が設けられ、この塗布部40を装飾カバー部11の内部空間11aに挿入した状態で、離型剤タンク(図示せず)内に貯溜した液状の離型剤をポンプ41により連結パイプ42を介して塗布ヘッド39の塗布部40に供給し、この塗布部40の表面から染み出る離型剤を装飾カバー部11の内面11cに塗布することで、装飾カバー部11の内面11cに離型剤層24を形成する。
【0051】
このようにして、装飾カバー部11の内面11cに離型剤層24を形成することで、モール本体部12の押出成形後に装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に離型剤層24を介在させることができ、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間の非着性を更に高めることができる。
【0052】
尚、離型剤塗布装置37を冷間ロール成形装置36と同じ位置に又はその上流側(例えば端末処理装置29とガイドローラ35との間)に配置して、平板状のストリップ材25のうちの装飾カバー部11の内面11cになる部分に離型剤として潤滑兼冷却剤を塗布することで、ロール成形を円滑に行うと共に装飾カバー部11の内面11cになる部分に離型剤層を形成するようにしても良い。尚、冷間ロール成形装置36の位置で離型成分を含むクーラントを使用すると、冷間ロール成形の際に発生する熱を取り去ると同時に離型剤層を形成できて有利である。
【0053】
この後、図3に示すように、装飾カバー部11を乾燥機43に連続して供給して、この乾燥機43で装飾カバー部11を所定温度に加熱して離型剤層24中の液体成分を乾燥させた状態で、装飾カバー部11を押出成形装置44の押出成形型45に連続して供給する。この押出成形装置44により、所定の横断面形状のモール本体部12(第2部材,図1参照)を押出成形して、装飾カバー部11とモール本体部12とを一体化したベルトモールディング10を成形する押出成形工程を実行する。
【0054】
図10に示すように、押出成形装置44は、所定の横断面形状のモール本体部12を押出成形する開口部を備えた押出成形型45を備え、この押出成形型45内に装飾カバー部11を長手方向に連続して供給しながら、押出成形型45内にポリマー材料を供給口46から連続して供給して第2部材であるモール本体部12を押出成形する。尚、リップ17〜21を形成する軟質ポリマー材料は、前記の供給口46とは別の供給口から押出成形型45内に供給されるが、説明は省略する。この際、押出成形型45内で装飾カバー部11の内部空間11a内では装飾カバー部11の内面11cを成形型面としてポリマー材料を装飾カバー部11の内面11cに接して長手方向に連続して押し出して装飾カバー部11の内面11cと非接着状態で密接させて装飾カバー部11の内面11cの形状が反転した外面12aの形状の横断面形状を有するようにモール本体部12を連続して成形することで、装飾カバー部11の内部空間11a内にモール本体部12の車外側側壁部15と頂壁部16の外面12aが装飾カバー部11の内面11cと密接して非接着状態で嵌め込まれて、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向(本実施例1ではフランジ13の開口11bから抜け出す方向)には移動が阻止された直線状の長尺のベルトモールディング10を成形する。
【0055】
更に、この押出成形工程では、装飾カバー部11の長手方向の供給速度V1 よりも遅い押出速度V2 でポリマー材料を押し出してモール本体部12を成形することでモール本体部12を長手方向に伸長させながら装飾カバー部11と一体化させる。これにより、モール本体部12に長手方向の引張応力を発生させ、内蔵させて、後述する切断工程で、ベルトモールディング10を所定の長さに切断した後のモール本体部12の長手方向の収縮量を大きくする。以上の工程において(以下の工程においても)、装飾カバー部11とモール本体部12との間に接着剤を形成する工程は含まれていない。
【0056】
この後、図4に示すように、モール本体部12を押出成形するポリマー材料が未加硫のEPDMゴムの場合には、押出成形型45から押し出されるベルトモールディング10を硬化処理装置47に供給する。この硬化処理装置47は、加熱機48(例えば高周波加熱機と熱風加熱機)でベルトモールディング10を通常は150℃〜250℃の温度に加熱して数十秒〜数分間維持し、モール本体部12(押出成形型45で押出成形された未加硫状態のゴム部分)を加硫させて硬化させる処理工程を実行する。モール本体部12を常温を越える温度に加熱させた状態で加硫させて硬化させてベルトモールディング10を成形した後、必要に応じて冷却水槽等の冷却機49でベルトモールディング10(モール本体部12)を冷却する。
【0057】
尚、モール本体部12を押出成形するポリマー材料が熱可塑性合成樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の場合には、通常は150℃〜250℃の温度に加熱されて溶融状態で、押出成形型45から押し出されて成形されるベルトモールディング10を冷却水槽等の冷却機49で冷却してモール本体部12(押出成形型45で押出成形された溶融状態の樹脂部分)を固化させる処理工程を実行して、モール本体部12を冷却固化させる。
【0058】
熱膨張係数は、装飾カバー部11の金属材料の方がモール本体部12のポリマー材料よりも小さいので、温度低下に伴う収縮量は、モール本体部12の方が装飾カバー部11よりも大きくなる。従って、前記のいずれの場合にも、遅くとも冷却工程を経た段階で、成形収縮(大半が温度低下に伴う収縮)によりモール本体部12の内部には長手方向の寸法を短くしようとする長手方向の収縮応力及び横断面形状を小さくしようとする断面方向の収縮応力が発生している。
【0059】
この後、ベルトモールディング10を引取機50で引き取りながら分離促進装置51に連続して供給する。この分離促進装置51は、ベルトモールディング10を支持する2対の支持ローラ52,52が上流側と下流側に配置され、これらの支持ローラ52,52の間に配置された加振機53によってベルトモールディング10を弾性変形の範囲内で長手方向と交差する方向(例えば上下方向)に振動させることで、ベルトモールディング10の長手方向と交差する方向に外力を加えて装飾カバー部11の内面11cと該内面11cに密接しているモール本体部12の外面12aとの間に長手方向のずれ力(剪断力)を作用させる分離促進工程を実行する。これにより、密接している装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの分離を発生させ、又は既に発生しているときは分離を促進して、装飾カバー部11やモール本体部12の相手部材に対する長手方向の移動が許容された状態にする。
【0060】
尚、この時点において、モール本体部12は、冷却に伴う成形収縮により長手方向で収縮させて、装飾カバー部11に対して長手方向で位置移動を生じさせていても良い。更に、同様にモール本体部12を、横断面形状が小さくなる方向にも収縮させて、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に周方向で微小な隙間を生じさせても良い。この場合、モール本体部12の外面12aの横断面形状は、装飾カバー部11の内面11cの形状に対して相似的縮小形に変化する。
【0061】
この後、分離促進装置51から送り出されるベルトモールディング10を植毛装置54に連続して供給し、この植毛装置54により、ベルトモールディング10の所定箇所(例えばモール本体部12の2つのシールリップ17,17の表面)に、接着剤を塗布した後、ナイロンパイル等の植毛を施す。尚、植毛を施す必要がない場合や別のラインで植毛を施す場合には、植毛装置54は省略される。また、モール本体部12を押出成形するポリマー材料がゴムの場合には、硬化処理装置47の上流側に、液状の低摩擦材(例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等を溶剤に溶解させた液状の低摩擦材)を塗布する塗布装置を配置し、この塗布装置でシールリップ17に液状の低摩擦材を塗布して低摩擦材層を形成した後に、硬化処理装置47の加熱機48でシールリップ17に塗布して形成した低摩擦材層を焼き付けて又は乾燥させて低摩擦材層を形成するようにしても良い。一方、モール本体部12が熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)よりなる場合は、シールリップ17表面に押出成形型45内で低摩擦樹脂材層を共押出成形により形成しても良い。
【0062】
この後、ベルトモールディング10を切断機55に供給し、この切断機55から下流側に所定間隔だけ離れて配置された位置センサ56(例えば、発光素子56aと受光素子56bとからなる光センサ)でベルトモールディング10の先端部を検出する毎に切断機55でベルトモールディング10を切断することで、図11に示すように、装飾カバー部11の上流側の端末とモール本体部12の上流側の端末とが同一位置になるようにベルトモールディング10を所定の長さ寸法L1 (最終寸法Lよりも少し長い寸法)で予備的に切断する切断工程を実行する。
【0063】
この後、ベルトモールディング10を自然冷却してポリマー材料で成形されたモール本体部12の横断面形状と長さを収縮させてモール本体部12の外面形状のうちの装飾カバー部11の内面11cに対向する部分12a(車外側側壁部15及び頂壁部16の外面形状)を装飾カバー部11の内面形状の相似的縮小形に形成すると共に、図12に示すように、モール本体部12の長手方向の収縮によりモール本体部12の長さ寸法L2 が装飾カバー部11の長さ寸法L1 よりも短くなることで、装飾カバー部11の長手方向の両方の端末(又は一方の端末)に、装飾カバー部11の内部空間11a内にモール本体部12が存在しない端末段差部57を形成する収縮工程を実行する。
【0064】
上記の収縮工程は、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間で長手方向及び/又は周方向の一部分で収縮が既に発生しているときは、収縮の範囲を拡大させる工程であり、収縮が発生していないときは、収縮を発生させると共に収縮の及ぶ範囲を拡大させる工程である。
【0065】
ここで、ポリマー材料製のモール本体部12は、金属材料よりなる装飾カバー部11よりも線膨張率が大きく、モール本体部12の外面12aが接着剤を介さずに装飾カバー部11の内面11cに嵌め込まれ、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向に移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止され、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ独立して伸縮することができるため、押出成形後の冷却によって湾曲や反りを発生することなくモール本体部12は装飾カバー部11よりも長手方向に大きく収縮し、その結果、端末段差部57が形成される。尚、アニール処理によってモール本体部12の収縮を促進させるようにしても良い。
【0066】
結晶性ポリマー材料(例えばポリプロピレン樹脂)は、非晶性ポリマー材料(例えばABS樹脂)よりも成形収縮率が大きい。モール本体部12に結晶性ポリマー材料を用いたときに装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間の隙間が大きくなり過ぎるときは、ポリマー材料に適宜のフィラーを適宜の量だけ混合しておくか、装飾カバー部11が押出成形型の中に供給される前に加熱して横断面形状を拡大しておいて、冷却時により大きな量だけ収縮させるか、これらを併用して前記隙間の問題を解消し得る。
【0067】
例えば、図2における装飾カバー部11の内部空間11aの幅寸法W2 =300mmとし、モール本体部12の成形材料として、成形収縮率1.1%のポリプロピレン樹脂と成形収縮率0.5%のABS樹脂を用いたときで、冷却後に装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に発生する隙間は、計算値でそれぞれ0.33mmと0.15mmとなる。
【0068】
この後、装飾カバー部11の端末段差部57(端末段差部57以外の部分も含む)にモール本体部12とは独立した適宜の加工又は処理を施す端末加工工程を実行する。
【0069】
具体的には、図13に示すように、装飾カバー部11の長さが所定の最終寸法Lになるように装飾カバー部11の端末段差部57を最終切断する加工を行った後、装飾カバー部11の端末段差部57(内部空間11a内にモール本体部12が存在しない部分)の各フランジ13に、プレス加工でそれぞれ内部空間11aに向けて突出する切り起こし突片58を設けると共に、装飾カバー部11の端末段差部57以外の部分(内部空間11a内にモール本体部12が存在する部分)の端末段差部57近傍の各フランジ13に、それぞれ内部空間11aに向けて突出する突起59を設ける。
【0070】
この後、図14に示すように、装飾カバー部11の端末11Eを塞ぐように別体のエンドキャップ60を矢印X方向から端末段差部57の内部空間11a内に挿入して、エンドキャップ60に形成した係合凹部61に装飾カバー部11の切り起こし突片58を係合させることで、装飾カバー部11の端末段差部57にエンドキャップ60を抜け止め保持した状態で装着する。尚、エンドキャップ60が装飾カバー部11よりも軟質材料で形成されている場合には、エンドキャップ60に係合凹部61を設けずに装飾カバー部11の切り起こし突片58をエンドキャップ60に食い込ませるようにしても良い。また、装飾カバー部11の突起59がモール本体部12に食い込む或は強く押し当たることで、モール本体部12が固定され、突起59の位置を基準として(突起59の位置で固定された状態で)装飾カバー部11に対して長手方向に伸縮可能になっている。
【0071】
或は、図15に示すように、装飾カバー部11の端末段差部57の各フランジ13に、それぞれ係合孔62を設け、エンドキャップ60に形成した係合突起63を装飾カバー部11の係合孔62に係合させることで、装飾カバー部11の端末段差部57にエンドキャップ60を抜け止め保持した状態で装着するようにしても良い。尚、差し込み方向Xは、図14の説明の場合と同一なので、以降の説明は省略する。
【0072】
また、図16に示すように、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の端末とを接着剤64で接着することで、モール本体部12を端末(接着位置)を基準として(端末が固定された状態で)長手方向に伸縮可能にすると共に、装飾カバー部11の端末段差部57の内面とエンドキャップ60とを接着剤64で接着することで、装飾カバー部11の端末段差部57にエンドキャップ60を抜け止め保持して固定した状態で装着するようにしても良い。尚、図16で示した例は、図14及び図15に基づいて説明した例と併用すると、エンドキャップ60を更に安定して固着できる。
【0073】
また、図17に示すように、装飾カバー部11の端末段差部57の各フランジ13を長手方向で所定寸法だけ切除した後、図18に示すように、装飾カバー部11の端末を塞ぐように端末段差部57を内側方向に折り曲げ加工(又は絞り加工)することで、エンドキャップ60を省略した構成としても良い。
【0074】
尚、上記の装飾カバー部11の突起59の形成や、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の端末との接着は、ベルトモールディング10の長手方向の一方の端末段差部57近傍で行うことが好ましい。長手方向の両方の端末で行うと、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向への移動が阻害され、ベルトモールディング10として使用中に温度変化に晒されたときに、モール本体部12の伸縮によってベルトモールディング10に湾曲や反りが発生するおそれがあるからである。
【0075】
以上説明した本実施例では、ベルトモールディング10の装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されているので、ベルトモールディング10を製造する際や製品として使用中に温度変化に晒されても、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ独立して伸縮することができて、装飾カバー部11やモール本体部12に長手方向の引張応力や圧縮応力が発生又は内蔵せず、装飾カバー部11とモール本体部12の熱膨張係数の違い(伸縮量の違い)による湾曲や反りを防止することができる。また、装飾カバー部11とモール本体部12とを密接した状態で押出成形し、両者がそれぞれ相手部材に対して長手方向と交差する方向には移動が阻止されているので、ベルトモールディング10を製品として使用中に温度変化に晒されても装飾カバー部11とモール本体部12との間に過度の隙間が生じず、装飾カバー部11とモール本体部12との間にがたつきが生じない。更に、装飾カバー部11の端末にモール本体部12が存在しない端末段差部57が形成されているので、装飾カバー部11の端末(端末段差部57)に加工や処理を容易に施すことができる。また、押出成形型45内に装飾カバー部11を連続して供給しながら装飾カバー部11の内部空間11a内にポリマー材料を直接に押し出してモール本体部12を押出成形するので、装飾カバー部11の内面11cにモール本体部12の外面12aを密接させて一体化することができる。
【0076】
また、本実施例では、ステンレス鋼板やアルミニウム板の表面には不動態皮膜が形成されていることに着目して、装飾カバー部11をステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板から所定横断面形状に成形するようにしたので、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12との非着性を高めることができる。
【0077】
しかしながら、装飾カバー部11を、ステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板から所定横断面形状に成形したが、これに限定されず、例えば、所定の長さに切断されたアルミニウム合金の異形押出材を用いるようにしても良い。アルミニウム合金の表面にも不動態皮膜が形成されているため、装飾カバー部11とモール本体部12との非着性を高めることができる。
【0078】
更に、本実施例では、装飾カバー部11を成形する金属材料のうちの少なくとも装飾カバー部11の内面になる部分に平滑処理を施すと共に、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に離型剤層24を形成するようにしたので、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間の非着性を高めることができ、装飾カバー部11やモール本体部12の相手部材に対する長手方向の移動に支障が生じない。
【0079】
尚、上記実施例では、ベルトモールディング10の製造ラインで装飾カバー部11を所定の横断面形状に成形して押出成形型45に供給するようにしたが、所定の横断面形状に成形した装飾カバー部11を外部から入手したものを押出成形型45に供給するようにしても良い。
【0080】
また、ベルトモールディング10の断面形状は上記(図1)のものに限定されない。図17,図18に示すような装飾カバー部11の折り曲げ加工を行わない場合は、遮蔽リップ18やクッションリップ21が装飾カバー部11に接合して一体的に共押出成形されていても良い。また、遮蔽リップ、クッションリップ、保持リップ及びシールリップのうちの一部又は全部のリップがないものであっても良い。
【0081】
また、上記実施例では、車両用のベルトモールディングに本発明を適用したが、これに限定されず、車両用の各種モールディングやトリム(例えば、ボディサイドモールディング、ピラーモールディング、ルーフモールディング、ガイドレール等)やフレームや枠材、家電製品や家具用の各種トリム(例えば、縁飾りトリム、ガイドレール等)、建築用の各種トリム(例えば、目地材、縁覆いガスケット等)やフレームや枠材等の種々の複合押出成形品に本発明を適用して実施しても良い。
【符号の説明】
【0082】
10…ベルトモールディング(複合押出成形品)、11…装飾カバー部(第1部材)、11c…内面、11E…長手方向の端末、12…モール本体部(第2部材)、12a…外面、12E…長手方向の端末、13…フランジ、24…離型剤層、25…ストリップ材、29…端末処理装置、36…冷間ロール成形装置、37…離型剤塗布装置、43…乾燥機、44…押出成形装置、45…押出成形型、47…硬化処理装置、48…加熱機、49…冷却機、51…分離促進装置、54…植毛装置、55…切断機、57…端末段差部、60…エンドキャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料で成形された長尺な第1部材とポリマー材料で押出成形された長尺な第2部材とを一体化した複合押出成形品及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特開2003−182373号公報)に記載されているように、ステンレス芯材と硬質樹脂材料(例えばポリプロピレン)と弾性接触材料(例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー)とを一体化したモールディングにおいて、ステンレス芯材に接着剤を塗布した後、硬質樹脂材料と弾性接触材料を共押出成形して、ステンレス芯材に硬質樹脂材料と弾性接触材料を接着して一体化するようにしたものがある。
【0003】
また、金属板材料で横断面C字形に成形されたカバー部材と、ポリマー材料で押出成形された本体部材とを一体化したモールディングにおいて、カバー部材と本体部材をそれぞれ別々の工程で別々に製造した後、カバー部材の長手方向の端末からカバー部材の横断面C字形の溝内に本体部材を押し込んで挿入して、カバー部材と本体部材とを一体化するようにしたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−182373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のモールディング(ステンレス芯材に硬質樹脂材料と弾性接触材料を接着して一体化したモールディング)では、次のような不具合が発生する。以下、ステンレス芯材を「第1部材」と表記し、硬質樹脂材料と弾性接触材料を「第2部材」と表記する。
【0006】
(1) ポリマー材料製の第2部材は、金属材料製の第1部材よりも熱膨張係数が大きいため、第1部材よりも冷却による長手方向の収縮量が大きくなる。このため、モールディングを製造する際の押出成形後に第1部材と第2部材が接着された状態で冷却されると、収縮量が大きい第2部材に長手方向の引張応力が発生して、バイメタルに似た作用により第2部材側を半径方向内側にしてモールディングが湾曲したり、モールディングに反りが生じたりする。
【0007】
(2) この対策として、モールディングを製造する際に押出後のモールディングを直線状にした状態でアニール処理を施して湾曲や反りを防止することが知られているが、アニール処理を施したモールディングであっても、製品として使用中に温度変化に晒されると、第1部材と第2部材の熱膨張係数の違いにより湾曲や反りが生じることがある。
【0008】
(3) また、第1部材の長手方向の端末に所定の加工や処理を施す必要がある場合に、第1部材の端末に第2部材の端末が接着された状態で存在していると、第1部材と第2部材の両方を含めて加工や処理を行う必要があり、加工や処理の容易性と正確性を阻害することがある。
【0009】
(4) 第1部材の端末部分(所定の加工や処理を施す部分)に第2部材の端末が存在しないようにするために、第1部材の端末部分から第2部材を除去する方法も考えられるが、第1部材に接着された第2部材を除去する作業は極めて困難である。
【0010】
一方、カバー部材の溝内に本体部材を長手方向の端末から挿入してカバー部材と本体部材とを一体化したモールディングでは、次のような不具合が発生する。以下、カバー部材を「第1部材」と表記し、本体部材を「第2部材」と表記する。
【0011】
第1部材と第2部材は、それぞれ別々の工程で別々に製造されるため、例えば、第1部材の横断面形状の寸法が小さい側にばらついて、第2部材の横断面形状の寸法が大きい側にばらつくこともあり、このような場合、第1部材の溝内に第2部材を挿入して一体化する作業が困難になる。また、第2部材の挿入性をよくするために、第2部材の横断面形状を第1部材よりも小さく設定すると、第1部材と第2部材とを一体化した後、第1部材と第2部材との間の隙間が大きくなり過ぎて両部材間に、がたつきがでることがある。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、第1部材と第2部材とを一体化した複合押出成形品において、第1部材と第2部材の熱膨張係数の違いによる湾曲や反りを防止しながら、端末に加工や処理を容易に施すことができると共に、第1部材と第2部材を容易に一体化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、金属材料で所定の横断面形状に成形されて幅方向の両端から内側に向けて突出するフランジの先端間の開口幅寸法よりも大きい幅寸法の内部空間を有する長尺な第1部材と、第1部材の少なくとも内部空間内に金属材料とは熱膨張係数が異なるポリマー材料で所定の横断面形状に直接に押出成形された長尺な第2部材とを備え、第1部材の内部空間内に第2部材が嵌合された長尺な複合押出成形品であって、第1部材の内部空間内には前記金属材料よりも熱膨張係数が大きいポリマー材料が第1部材の内面に接して長手方向に連続して押し出されて第2部材が形成され、金属材料とポリマー材料の熱膨張係数の違いによる収縮量の差に対応して第2部材の外面形状のうちの第1部材の内面に対向する部分が第1部材の横断面形状における内面形状の相似的縮小形の一定横断面形状に形成されて第1部材の内部空間内に第2部材が第1部材の内面との間に隙間が生じて非接着状態で嵌め込まれていて、第1部材と第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止されており、第2部材の押出成形後の冷却に伴う長手方向の収縮により第2部材の長さが第1部材の長さよりも短くなることで第1部材の長手方向の少なくとも一方の端末に第1部材の内部空間内に第2部材が存在しない端末段差部が形成され、端末段差部に第2部材とは独立した適宜の加工又は処理が施されている構成としたものである。
【0014】
この構成では、第1部材と第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されているので、複合押出成形品を製造する際や製品として使用中に温度変化に晒されても、第1部材と第2部材がそれぞれ独立して伸縮することができて、第1部材や第2部材に長手方向の引張応力や圧縮応力が発生せず、第1部材と第2部材の熱膨張係数の違い(伸縮量の違い)による湾曲や反りを防止することができる。また、第1部材と第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向と交差する方向には移動が阻止されているので、複合押出成形品を製品として使用中に第1部材と第2部材が外れない。更に、第1部材の端末に第2部材が存在しない端末段差部が形成されているので、第1部材の端末(端末段差部)に加工や処理を容易に施すことができる。また、第1部材の内部空間内にはポリマー材料が第1部材の内面と密接して押し出されて第2部材が成形され、第2部材の外面形状は、第1部材の内面形状が許容公差の範囲でばらついても、そのばらつきに応じて第1部材の内面形状と1対1のテーラーメイド的関係を有して形成される。従って、第2部材の外面は、第1部材の内面と微小な隙間を保って嵌め合わされて一体化されているので、第1部材と第2部材の間に過度の隙間が生じず、両部材の間に過度のがたつきが生じない。
【0015】
この場合、請求項2のように、第1部材は、内部空間が内側となるように横断面形状が湾曲した異形形状(例えば「C」字形状や「L」字形状等)に成形すると良い。このようにすれば、第1部材の異形形状の内部空間内に第2部材を安定して嵌め合わせた状態にすることができる。
【0016】
また、請求項3のように、第1部材は、一定厚さのステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板から所定横断面形状に折り曲げられて成形されているようにしても良い。ステンレス鋼板やアルミニウム板の表面には化学的に安定して不活性で他の物質と接着しにくい酸化皮膜(以下「不動態皮膜」という)が形成されているため、第2部材との非着性を高めることができる。また、第1部材の外表面に光輝色を呈させることができ、外表面に金属光輝色を求められる特定の用途に有利である。
【0017】
或は、請求項4のように、第1部材は、所定の長さに切断されたアルミニウム合金の長尺な異形押出材を用いるようにしても良い。アルミニウム合金の表面には陽性酸化皮膜等の不動態皮膜が形成されているため、第2部材との非着性を高めることができる。また、この場合にも前記と同様に光輝色を呈させることができ、有利である。
【0018】
また、請求項5のように、第1部材の少なくとも内面になる部分に平滑処理が施されていても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との界面に物理的な引っ掛かりが生じないので、第1部材と第2部材の相手部材に対する長手方向の移動に支障が生じない。尚、平滑処理は、冷間圧延により表面が平滑化された鋼板等を第1部材の材料として使用すれば、製造工程中で別途の平滑処理は省略できる。
【0019】
更に、請求項6のように、第1部材の内面と第2部材の外面との間に離型剤層を形成するようにしても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との間の非着性を更に高めることができる。
【0020】
また、請求項7のように、第1部材の幅方向の両端のフランジをそれぞれ相手方に向けて突出するフック状に形成するようにしても良い。このようにすれば、第1部材から第2部材が外れることを効果的に防止することができる。
【0021】
また、請求項8のように、第1部材の端末(端末段差部)に施す適宜の加工は、第1部材の長さが所定の最終寸法になるように端末段差部が切断された加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部にエンドキャップが装着された加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部が内側方向に折り曲げられた加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部を内側方向へ絞った加工のうちの少なくとも1つを行うようにすると良い。このようにすれば、端末段差部に容易に加工を行うことができる。
【0022】
更に、請求項9のように、第2部材を成形するポリマー材料は、ゴム又は熱可塑性合成樹脂を用いるようにすると良い。このようにすれば、第2部材を容易に押出成形することができる。
【0023】
また、本発明の複合押出成形品を製造する場合には、請求項10のように、第1部材を準備する第1部材準備工程と、第2部材を成形する押出成形型に第1部材を長手方向に供給しながら押出成形型内で第1部材の内部空間内では第1部材の内面を成形型面として第1部材を形成する金属材料よりも熱膨張係数が大きいポリマー材料を第1部材の横断面形状における内面に接して長手方向に連続して押し出して第1部材の内面と非接着状態で密接させて第1部材の内面形状が反転した外面形状の横断面形状を有するように第2部材を連続して成形して、第1部材と第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止された直線状の複合押出成形品を常温を越える温度に加熱された状態で成形する押出成形工程と、第1部材の上流側の端末と第2部材の上流側の端末とが同一位置になるように複合押出成形品を所定の長さに切断する切断工程と、複合押出成形品を冷却してポリマー材料で成形された第2部材を収縮させて第2部材の外面形状のうちの第1部材の内面に対向する部分を第1部材の内面形状の相似的縮小形に形成すると共に、第2部材の長手方向の収縮により第2部材の長さが第1部材の長さよりも短くなることで第1部材の長手方向の少なくとも一方の端末に第1部材の内部空間内に第2部材が存在しない端末段差部を形成する収縮工程と、端末段差部に第2部材とは独立した適宜の加工又は処理を施す端末加工工程とを実行するようにすると良い。このようにすれば、本発明の複合押出成形品を容易に製造することができる。尚、上記の切断工程と収縮工程は順序が逆であっても良い。
【0024】
この場合、請求項11のように、押出成形工程の後で且つ切断工程の前にポリマー材料で成形された第2部材を硬化又は固化させる処理工程を実行するようにすると良い。この処理工程では、ポリマー材料がゴムの場合には加硫によって第2部材を硬化させることができ、ポリマー材料が熱可塑性合成樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の場合には冷却によって第2部材を固化させることができる。
【0025】
また、請求項12のように、収縮工程において、第2部材を自然冷却させるようにしても良い。このようにすれば、格別の処理を必要とせずに第2部材を自然冷却させて収縮させることができる。
【0026】
本発明は、所定の横断面形状の第1部材を外部から入手するようにしても良いが、請求項13のように、第1部材準備工程において、金属材料として金属帯板を長手方向に連続して供給しながら冷間ロール成形で所定の横断面形状の第1部材を成形し、冷間ロール成形と同期して第1部材を押出成形型に連続して供給するようにしても良い。このようにすれば、複合押出成形品の製造ラインで第1部材を製造して押出成形型に供給することができ、効率的に製造できる。
【0027】
この場合、請求項14のように、金属帯板は、厚さが0.1〜0.75mmの範囲内のステンレス鋼板又はアルミニウム板を用いるようにすると良い。このようにすれば、ステンレス鋼板やアルミニウム板の表面には不動態皮膜が形成されているため、第2部材との非着性を高めることができる。
【0028】
更に、請求項15のように、金属帯板のうちの少なくとも第1部材の内面になる部分に平滑処理を施すようにしても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との間の引っ掛かりを生じず、第1部材や第2部材の相手部材に対する長手方向の移動に支障が生じない。
【0029】
また、請求項16のように、第1部材の内部空間内にポリマー材料が充填される前に第1部材の内面に離型剤層を形成する工程を実行するようにしても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との間に離型剤層を形成することができ、第1部材の内面と第2部材の外面との間の非着性を更に高めることができる。
【0030】
また、請求項17のように、押出成形工程において、第1部材の長手方向の供給速度よりも遅い速度でポリマー材料を押し出して第2部材を成形することで第2部材を長手方向に伸長させながら第1部材と一体化させるようにしても良い。このようにすれば、第2部材に長手方向の引張応力を発生させ、内蔵させることができ、複合押出成形品を所定の長さに切断した後の第2部材の長手方向の収縮量を大きくすることができる。
【0031】
更に、請求項18のように、押出成形工程の後に複合押出成形品の長手方向と交差する方向に外力を加えて第1部材の内面と該内面に密接している第2部材の外面との間に長手方向でずれ力を作用させる分離促進工程を実行するようにしても良い。このようにすれば、第1部材の内面と第2部材の外面との分離を促進して、確実に第1部材や第2部材の相手部材に対する長手方向の移動が許容された状態にすることができる。
【0032】
また、請求項19のように、端末加工工程において、第1部材の長さが所定の最終寸法になるように端末段差部を切断する加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部にキャップを装着する加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部を内側方向に折り曲げる加工、第1部材の端末を塞ぐように端末段差部を内側方向へ絞る加工のうちの少なくとも1つを行うようにすると良い。このようにすれば、端末段差部に容易に加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるベルトモールディングの横断面図である。
【図2】図2は装飾カバー部の横断面図である。
【図3】図3はベルトモールディングの製造装置の前半部分の概略構成図である。
【図4】図4はベルトモールディングの製造装置の後半部分の概略構成図である。
【図5】図5は端末処理装置を上流側から見た横断面図である。
【図6】図6はストリップ材の幅方向の端末及びその周辺部の端末処理前の状態を示す横断面図である。
【図7】図7はストリップ材の幅方向の端末及びその周辺部の端末処理後の状態を示す横断面図である。
【図8】図8はストリップ材の幅方向の端末及びその周辺部の端末処理後の状態の他の例を示す横断面図である。
【図9】図9は離型剤塗布装置を上流側から見た横断面図である。
【図10】図10は押出成形装置を側方から見た縦断面図である。
【図11】図11はベルトモールディングの切断直後の状態を示す縦断面図である。
【図12】図12はベルトモールディングのモール本体部の収縮後の状態を示す縦断面図である。
【図13】図13は装飾カバー部の端末段差部にエンドキャップを装着するための加工を施した状態を示す部分斜視図である。
【図14】図14は装飾カバー部の端末段差部にエンドキャップを装着した状態を示す部分縦断面図である。
【図15】図15は装飾カバー部の端末段差部にエンドキャップを装着した状態の他の例(その1)を示す部分縦断面図である。
【図16】図16は装飾カバー部の端末段差部にエンドキャップを装着した状態の他の例(その2)を示す部分縦断面図である。
【図17】図17は装飾カバー部の端末段差部を折り曲げ加工するための加工を施した状態を示す部分斜視図である。
【図18】図18は装飾カバー部の端末段差部に折り曲げ加工を施した状態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
図1に示すように、車両の窓開口縁(例えばアウタードアパネルの上縁)に沿って装着される長尺なベルトモールディング10(複合押出成形品)は、金属材料で成形された装飾カバー部11(第1部材)と、ポリマー材料で押出成形されたモール本体部12(第2部材)とが一体化されている。
【0035】
装飾カバー部11は、後述する第1部材準備工程で、実用的には、板厚が0.05mm以上1.0mm以下の金属帯板を冷間ロール成形で折り曲げ成形することで所定の横断面形状(例えば横断面が「C」字形状又は「L」字形状に湾曲した異形形状)に成形され、幅方向の両端から内側に向けて折り返し状に突出するフランジ13,13が設けられている。これらのフランジ13は、装飾カバー部11の両端から開口11bを隔ててそれぞれ相手方のフランジ13に向けて突出するように湾曲したフック状に形成され、装飾カバー部11の開口11bからモール本体部12が外れることを効果的に防止するようになっている。
【0036】
図2に示すように、装飾カバー部11の内面側(裏面側)には、装飾カバー部11の内面11cによって囲まれた内部空間11aがフランジ13の先端間の開口11bの幅寸法W1 よりも大きい幅寸法W2 (例えば5〜70mm)で形成されている。また、各フランジ13の突出長さ寸法T1 ,T2 がそれぞれ折り曲げ加工の容易性の理由から板厚の3倍以上の長さ(板厚が0.3mmのときは1mm以上)になるようにフランジ13が形成されている(ここで、W2 =W1 +T1 +T2 )。
【0037】
装飾カバー部11は、厚さ寸法が0.05〜1.0mmの範囲内の一定厚さのステンレス鋼板又はアルミニウム合金板の金属帯板が用いられ、少なくとも装飾カバー部11の内面11cになる部分に圧延等による平滑処理が施されている。装飾カバー部11の内面11cは、モール本体部12を成形するポリマー材料に対して非着性を有する。ステンレス鋼板やアルミニウム合金板の場合には、表裏両面に他の物質と接着しにくい酸化皮膜(不動態皮膜)が形成されているので、本発明においては特に有利な材料である。
【0038】
図1に示すように、モール本体部12(第2部材)は、後述する押出成形工程で、ポリマー材料を押出成形することで所定の横断面形状(例えば横断面U字形状)に成形され、車内側側壁部14と車外側側壁部15と両側壁部14,15を連結する頂壁部16とが一体的に設けられている。装飾カバー部11は、主として金属光輝色を呈させるためにモール本体部12の車外側側壁部15から頂壁部16にかけての表面に配置され、車内側側壁部14には存在しない。
【0039】
また、車内側側壁部14の外側面には、車内側(窓板側)に向けて突出するシールリップ17が一体的に形成され、車内側側壁部14の上端には、車内側(窓板側)に向けて突出する遮蔽リップ18が一体的に形成されている。本実施例では、車内側側壁部14に2つのシールリップ17が形成されている。更に、車内側側壁部14の内側面と車外側側壁部15の内側面には、それぞれ互いに対向する方向に向けて突出する保持リップ19,20が一体的に形成され、車外側側壁部15の下端には、ドアパネル側に向けて突出するクッションリップ21が一体的に形成されている。本実施例では、車内側側壁部14に2つの保持リップ19が形成され、車外側側壁部15に1つの保持リップ20が形成されている。
【0040】
また、車内側側壁部14の上端と車外側側壁部15の下端には、それぞれ装飾カバー部11のフランジ13,13の内面側に嵌まり込む凸条22,22と、装飾カバー部11のフランジ13,13が嵌まり込む凹溝23,23が形成され、装飾カバー部11のフランジ13,13とモール本体部12の凹溝23,23とが係合している。モール本体部12の各壁部14〜16を成形するポリマー材料は、装飾カバー部11を成形する金属材料よりも熱膨張係数が大きいゴム(例えば、EPDMゴム等)又は熱可塑性合成樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等)の後述するリップよりも硬度が高い材料が用いられている。モール本体部12の各リップ17〜21は、各壁部14〜16よりも軟質のポリマー材料(装飾カバー部11を成形する金属材料よりも熱膨張係数が大きいゴム又は熱可塑性合成樹脂、熱可塑性エラストマー等)で形成されている。尚、リップ19,20は、各壁部14〜16と同程度の硬質のポリマー材料で形成されても良い。
【0041】
また、モール本体部12のポリマー材料は、タルクやカーボンファイバー(炭素繊維)等のフィラー(充填材)をブレンドした強化ポリマー材料であっても良く、そのブレンド量が多くなると、線膨張係数が小さくなるが、収縮量や求められる強度との関連で、このような強化ポリマー材料でモール本体部12を成形するようにしても良い。
【0042】
ベルトモールディング10は、モール本体部12の外面形状のうちの装飾カバー部11の内面11cに対向する部分(車外側側壁部15及び頂壁部16の外面12aの形状)が押出成形後の材料の成形収縮(大半が温度低下に伴う収縮)により装飾カバー部11の内面11cの形状の相似的縮小形の一定横断面形状に形成されて、装飾カバー部11の内部空間11a内にモール本体部12の一部(車外側側壁部15と頂壁部16)が装飾カバー部11の内面11cと周方向で微小な隙間(使用するポリマー材料の熱膨張係数に対応して、実用的には0.01mm〜0.5mmの隙間)を保って非接着状態で嵌め込まれていて、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向(開口11bから抜け出す方向)には移動が阻止されている。また、後述する離型剤塗布工程で、装飾カバー部11の内面11cに液状の離型剤を塗布して形成することで、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に離型剤層24(図2の点線参照)が形成されている。
【0043】
以下、図3乃至図18を用いて、ベルトモールディング10の製造方法を説明する。まず、図3乃至図9に示す第1部材準備工程の説明をする。
図3に示すように、長尺なストリップ材25(例えば幅広の原反コイル材から所定の一定幅にスリッタロールでスリットされたステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板)が巻き付けられたアンコイラ26が配置され、このアンコイラ26からストリップ材25を解いて送出ローラ27で長手方向に連続して送り出して、ストリップ材25を端末処理装置29に連続して供給する。
【0044】
送出ローラ27と端末処理装置29との間には、抵抗溶接機又は接合接着テープ貼着機等の接合機28が配置され、アンコイラ26に巻き付けられたストリップ材25を全て供給し終えて次のアンコイラ26に交換する場合に、接合機28により、先のアンコイラ26から供給したストリップ材25の終端部と、次のアンコイラ26から供給されるストリップ材25の始端部とを溶接又は接合接着テープ等で接続して連続させる。
【0045】
図5に示すように、端末処理装置29は、ストリップ材25を表裏両側から挟んで自由回転又は回転駆動される一対の押えローラ30,31と、ストリップ材25を幅方向両側から挟んで自由回転する一対の処理ローラ32,33が配置されている。各処理ローラ32,33の外周面には、それぞれストリップ材25の幅方向の端末を加工するためのV形溝34が外周方向に沿って設けられている。
【0046】
図6に示すように、端末処理前のストリップ材25の幅方向の端末(後の折り曲げ成形でフランジ13に成形される部分)には、前述したスリット加工の際に長手方向に連続してシャープエッジ状のバリ25a(「反り」ともいう)が発生していることがあるが、端末処理装置29は、押えローラ30,31の間にストリップ材25を表裏両側から挟んで送り出しながら、処理ローラ32,33のV形溝34の間にストリップ材25を幅方向両側から挟んで加圧することで、図7に示すように、ストリップ材25の幅方向の端末のバリ25aを処理ローラ32,33のV形溝34で塑性変形させて端末を丸くし、バリ25aが存在しない状態にする面取り加工を行う。尚、前記に代えて、図示しない折り曲げ成形ローラを用いて、図8に示すように、ストリップ材25の幅方向の端末を折り返して丸くする加工を行うようにしても良い。
【0047】
このようにして、ストリップ材25の幅方向の端末をシャープなバリが存在しない丸形にすることで、ストリップ材25から成形した装飾カバー部11のフランジ13の先端を丸くすることができ、これにより、装飾カバー部11のフランジ13の先端がモール本体部12に食い込むことを防止して、装飾カバー部11とモール本体部12の相手部材に対する長手方向の移動が阻害されないようすることができる。
【0048】
この後、図3に示すように、端末処理装置29から送り出されるストリップ材25をガイドローラ35を介して冷間ロール成形装置36に連続して供給する。この冷間ロール成形装置36により、ストリップ材25を長手方向に連続して供給しながら冷間ロール成形で折り曲げ成形して所定の横断面形状の装飾カバー部11(図2参照)を成形し、この冷間ロール成形と同期して装飾カバー部11を後述する押出成形装置44に供給する。冷間ロール成形装置36は、複数対(例えば8〜12対)の成形ローラでストリップ材25の横断面形状を徐々に変形させて、最終的に所定の横断面形状の装飾カバー部11(第1部材)を成形する。
【0049】
この後、冷間ロール成形装置36から送り出される装飾カバー部11を離型剤塗布装置37に連続して供給する。この離型剤塗布装置37により、装飾カバー部11の内面11cに離型剤層24(図2の点線参照)を形成する離型剤塗布工程を実行する。以上の工程が第1部材準備工程に相当する。
【0050】
図9に示すように、離型剤塗布装置37には、装飾カバー部11のフランジ13の先端間の開口11bを上向きにした状態で、外表面に装飾カバー部11の外面形状に対応した外面形状の横断面形状を有し装飾カバー部11を下側から支持する支持ローラ38が装飾カバー部11の下側に配置され、この支持ローラ38の上方に、離型剤を塗布するための塗布ヘッド39が配置されている。この塗布ヘッド39には、スポンジやフェルト等で装飾カバー部11の内部空間11aに対応した形状に形成された塗布部40が設けられ、この塗布部40を装飾カバー部11の内部空間11aに挿入した状態で、離型剤タンク(図示せず)内に貯溜した液状の離型剤をポンプ41により連結パイプ42を介して塗布ヘッド39の塗布部40に供給し、この塗布部40の表面から染み出る離型剤を装飾カバー部11の内面11cに塗布することで、装飾カバー部11の内面11cに離型剤層24を形成する。
【0051】
このようにして、装飾カバー部11の内面11cに離型剤層24を形成することで、モール本体部12の押出成形後に装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に離型剤層24を介在させることができ、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間の非着性を更に高めることができる。
【0052】
尚、離型剤塗布装置37を冷間ロール成形装置36と同じ位置に又はその上流側(例えば端末処理装置29とガイドローラ35との間)に配置して、平板状のストリップ材25のうちの装飾カバー部11の内面11cになる部分に離型剤として潤滑兼冷却剤を塗布することで、ロール成形を円滑に行うと共に装飾カバー部11の内面11cになる部分に離型剤層を形成するようにしても良い。尚、冷間ロール成形装置36の位置で離型成分を含むクーラントを使用すると、冷間ロール成形の際に発生する熱を取り去ると同時に離型剤層を形成できて有利である。
【0053】
この後、図3に示すように、装飾カバー部11を乾燥機43に連続して供給して、この乾燥機43で装飾カバー部11を所定温度に加熱して離型剤層24中の液体成分を乾燥させた状態で、装飾カバー部11を押出成形装置44の押出成形型45に連続して供給する。この押出成形装置44により、所定の横断面形状のモール本体部12(第2部材,図1参照)を押出成形して、装飾カバー部11とモール本体部12とを一体化したベルトモールディング10を成形する押出成形工程を実行する。
【0054】
図10に示すように、押出成形装置44は、所定の横断面形状のモール本体部12を押出成形する開口部を備えた押出成形型45を備え、この押出成形型45内に装飾カバー部11を長手方向に連続して供給しながら、押出成形型45内にポリマー材料を供給口46から連続して供給して第2部材であるモール本体部12を押出成形する。尚、リップ17〜21を形成する軟質ポリマー材料は、前記の供給口46とは別の供給口から押出成形型45内に供給されるが、説明は省略する。この際、押出成形型45内で装飾カバー部11の内部空間11a内では装飾カバー部11の内面11cを成形型面としてポリマー材料を装飾カバー部11の内面11cに接して長手方向に連続して押し出して装飾カバー部11の内面11cと非接着状態で密接させて装飾カバー部11の内面11cの形状が反転した外面12aの形状の横断面形状を有するようにモール本体部12を連続して成形することで、装飾カバー部11の内部空間11a内にモール本体部12の車外側側壁部15と頂壁部16の外面12aが装飾カバー部11の内面11cと密接して非接着状態で嵌め込まれて、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向(本実施例1ではフランジ13の開口11bから抜け出す方向)には移動が阻止された直線状の長尺のベルトモールディング10を成形する。
【0055】
更に、この押出成形工程では、装飾カバー部11の長手方向の供給速度V1 よりも遅い押出速度V2 でポリマー材料を押し出してモール本体部12を成形することでモール本体部12を長手方向に伸長させながら装飾カバー部11と一体化させる。これにより、モール本体部12に長手方向の引張応力を発生させ、内蔵させて、後述する切断工程で、ベルトモールディング10を所定の長さに切断した後のモール本体部12の長手方向の収縮量を大きくする。以上の工程において(以下の工程においても)、装飾カバー部11とモール本体部12との間に接着剤を形成する工程は含まれていない。
【0056】
この後、図4に示すように、モール本体部12を押出成形するポリマー材料が未加硫のEPDMゴムの場合には、押出成形型45から押し出されるベルトモールディング10を硬化処理装置47に供給する。この硬化処理装置47は、加熱機48(例えば高周波加熱機と熱風加熱機)でベルトモールディング10を通常は150℃〜250℃の温度に加熱して数十秒〜数分間維持し、モール本体部12(押出成形型45で押出成形された未加硫状態のゴム部分)を加硫させて硬化させる処理工程を実行する。モール本体部12を常温を越える温度に加熱させた状態で加硫させて硬化させてベルトモールディング10を成形した後、必要に応じて冷却水槽等の冷却機49でベルトモールディング10(モール本体部12)を冷却する。
【0057】
尚、モール本体部12を押出成形するポリマー材料が熱可塑性合成樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の場合には、通常は150℃〜250℃の温度に加熱されて溶融状態で、押出成形型45から押し出されて成形されるベルトモールディング10を冷却水槽等の冷却機49で冷却してモール本体部12(押出成形型45で押出成形された溶融状態の樹脂部分)を固化させる処理工程を実行して、モール本体部12を冷却固化させる。
【0058】
熱膨張係数は、装飾カバー部11の金属材料の方がモール本体部12のポリマー材料よりも小さいので、温度低下に伴う収縮量は、モール本体部12の方が装飾カバー部11よりも大きくなる。従って、前記のいずれの場合にも、遅くとも冷却工程を経た段階で、成形収縮(大半が温度低下に伴う収縮)によりモール本体部12の内部には長手方向の寸法を短くしようとする長手方向の収縮応力及び横断面形状を小さくしようとする断面方向の収縮応力が発生している。
【0059】
この後、ベルトモールディング10を引取機50で引き取りながら分離促進装置51に連続して供給する。この分離促進装置51は、ベルトモールディング10を支持する2対の支持ローラ52,52が上流側と下流側に配置され、これらの支持ローラ52,52の間に配置された加振機53によってベルトモールディング10を弾性変形の範囲内で長手方向と交差する方向(例えば上下方向)に振動させることで、ベルトモールディング10の長手方向と交差する方向に外力を加えて装飾カバー部11の内面11cと該内面11cに密接しているモール本体部12の外面12aとの間に長手方向のずれ力(剪断力)を作用させる分離促進工程を実行する。これにより、密接している装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの分離を発生させ、又は既に発生しているときは分離を促進して、装飾カバー部11やモール本体部12の相手部材に対する長手方向の移動が許容された状態にする。
【0060】
尚、この時点において、モール本体部12は、冷却に伴う成形収縮により長手方向で収縮させて、装飾カバー部11に対して長手方向で位置移動を生じさせていても良い。更に、同様にモール本体部12を、横断面形状が小さくなる方向にも収縮させて、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に周方向で微小な隙間を生じさせても良い。この場合、モール本体部12の外面12aの横断面形状は、装飾カバー部11の内面11cの形状に対して相似的縮小形に変化する。
【0061】
この後、分離促進装置51から送り出されるベルトモールディング10を植毛装置54に連続して供給し、この植毛装置54により、ベルトモールディング10の所定箇所(例えばモール本体部12の2つのシールリップ17,17の表面)に、接着剤を塗布した後、ナイロンパイル等の植毛を施す。尚、植毛を施す必要がない場合や別のラインで植毛を施す場合には、植毛装置54は省略される。また、モール本体部12を押出成形するポリマー材料がゴムの場合には、硬化処理装置47の上流側に、液状の低摩擦材(例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等を溶剤に溶解させた液状の低摩擦材)を塗布する塗布装置を配置し、この塗布装置でシールリップ17に液状の低摩擦材を塗布して低摩擦材層を形成した後に、硬化処理装置47の加熱機48でシールリップ17に塗布して形成した低摩擦材層を焼き付けて又は乾燥させて低摩擦材層を形成するようにしても良い。一方、モール本体部12が熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)よりなる場合は、シールリップ17表面に押出成形型45内で低摩擦樹脂材層を共押出成形により形成しても良い。
【0062】
この後、ベルトモールディング10を切断機55に供給し、この切断機55から下流側に所定間隔だけ離れて配置された位置センサ56(例えば、発光素子56aと受光素子56bとからなる光センサ)でベルトモールディング10の先端部を検出する毎に切断機55でベルトモールディング10を切断することで、図11に示すように、装飾カバー部11の上流側の端末とモール本体部12の上流側の端末とが同一位置になるようにベルトモールディング10を所定の長さ寸法L1 (最終寸法Lよりも少し長い寸法)で予備的に切断する切断工程を実行する。
【0063】
この後、ベルトモールディング10を自然冷却してポリマー材料で成形されたモール本体部12の横断面形状と長さを収縮させてモール本体部12の外面形状のうちの装飾カバー部11の内面11cに対向する部分12a(車外側側壁部15及び頂壁部16の外面形状)を装飾カバー部11の内面形状の相似的縮小形に形成すると共に、図12に示すように、モール本体部12の長手方向の収縮によりモール本体部12の長さ寸法L2 が装飾カバー部11の長さ寸法L1 よりも短くなることで、装飾カバー部11の長手方向の両方の端末(又は一方の端末)に、装飾カバー部11の内部空間11a内にモール本体部12が存在しない端末段差部57を形成する収縮工程を実行する。
【0064】
上記の収縮工程は、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間で長手方向及び/又は周方向の一部分で収縮が既に発生しているときは、収縮の範囲を拡大させる工程であり、収縮が発生していないときは、収縮を発生させると共に収縮の及ぶ範囲を拡大させる工程である。
【0065】
ここで、ポリマー材料製のモール本体部12は、金属材料よりなる装飾カバー部11よりも線膨張率が大きく、モール本体部12の外面12aが接着剤を介さずに装飾カバー部11の内面11cに嵌め込まれ、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向に移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止され、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ独立して伸縮することができるため、押出成形後の冷却によって湾曲や反りを発生することなくモール本体部12は装飾カバー部11よりも長手方向に大きく収縮し、その結果、端末段差部57が形成される。尚、アニール処理によってモール本体部12の収縮を促進させるようにしても良い。
【0066】
結晶性ポリマー材料(例えばポリプロピレン樹脂)は、非晶性ポリマー材料(例えばABS樹脂)よりも成形収縮率が大きい。モール本体部12に結晶性ポリマー材料を用いたときに装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間の隙間が大きくなり過ぎるときは、ポリマー材料に適宜のフィラーを適宜の量だけ混合しておくか、装飾カバー部11が押出成形型の中に供給される前に加熱して横断面形状を拡大しておいて、冷却時により大きな量だけ収縮させるか、これらを併用して前記隙間の問題を解消し得る。
【0067】
例えば、図2における装飾カバー部11の内部空間11aの幅寸法W2 =300mmとし、モール本体部12の成形材料として、成形収縮率1.1%のポリプロピレン樹脂と成形収縮率0.5%のABS樹脂を用いたときで、冷却後に装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に発生する隙間は、計算値でそれぞれ0.33mmと0.15mmとなる。
【0068】
この後、装飾カバー部11の端末段差部57(端末段差部57以外の部分も含む)にモール本体部12とは独立した適宜の加工又は処理を施す端末加工工程を実行する。
【0069】
具体的には、図13に示すように、装飾カバー部11の長さが所定の最終寸法Lになるように装飾カバー部11の端末段差部57を最終切断する加工を行った後、装飾カバー部11の端末段差部57(内部空間11a内にモール本体部12が存在しない部分)の各フランジ13に、プレス加工でそれぞれ内部空間11aに向けて突出する切り起こし突片58を設けると共に、装飾カバー部11の端末段差部57以外の部分(内部空間11a内にモール本体部12が存在する部分)の端末段差部57近傍の各フランジ13に、それぞれ内部空間11aに向けて突出する突起59を設ける。
【0070】
この後、図14に示すように、装飾カバー部11の端末11Eを塞ぐように別体のエンドキャップ60を矢印X方向から端末段差部57の内部空間11a内に挿入して、エンドキャップ60に形成した係合凹部61に装飾カバー部11の切り起こし突片58を係合させることで、装飾カバー部11の端末段差部57にエンドキャップ60を抜け止め保持した状態で装着する。尚、エンドキャップ60が装飾カバー部11よりも軟質材料で形成されている場合には、エンドキャップ60に係合凹部61を設けずに装飾カバー部11の切り起こし突片58をエンドキャップ60に食い込ませるようにしても良い。また、装飾カバー部11の突起59がモール本体部12に食い込む或は強く押し当たることで、モール本体部12が固定され、突起59の位置を基準として(突起59の位置で固定された状態で)装飾カバー部11に対して長手方向に伸縮可能になっている。
【0071】
或は、図15に示すように、装飾カバー部11の端末段差部57の各フランジ13に、それぞれ係合孔62を設け、エンドキャップ60に形成した係合突起63を装飾カバー部11の係合孔62に係合させることで、装飾カバー部11の端末段差部57にエンドキャップ60を抜け止め保持した状態で装着するようにしても良い。尚、差し込み方向Xは、図14の説明の場合と同一なので、以降の説明は省略する。
【0072】
また、図16に示すように、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の端末とを接着剤64で接着することで、モール本体部12を端末(接着位置)を基準として(端末が固定された状態で)長手方向に伸縮可能にすると共に、装飾カバー部11の端末段差部57の内面とエンドキャップ60とを接着剤64で接着することで、装飾カバー部11の端末段差部57にエンドキャップ60を抜け止め保持して固定した状態で装着するようにしても良い。尚、図16で示した例は、図14及び図15に基づいて説明した例と併用すると、エンドキャップ60を更に安定して固着できる。
【0073】
また、図17に示すように、装飾カバー部11の端末段差部57の各フランジ13を長手方向で所定寸法だけ切除した後、図18に示すように、装飾カバー部11の端末を塞ぐように端末段差部57を内側方向に折り曲げ加工(又は絞り加工)することで、エンドキャップ60を省略した構成としても良い。
【0074】
尚、上記の装飾カバー部11の突起59の形成や、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の端末との接着は、ベルトモールディング10の長手方向の一方の端末段差部57近傍で行うことが好ましい。長手方向の両方の端末で行うと、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向への移動が阻害され、ベルトモールディング10として使用中に温度変化に晒されたときに、モール本体部12の伸縮によってベルトモールディング10に湾曲や反りが発生するおそれがあるからである。
【0075】
以上説明した本実施例では、ベルトモールディング10の装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されているので、ベルトモールディング10を製造する際や製品として使用中に温度変化に晒されても、装飾カバー部11とモール本体部12がそれぞれ独立して伸縮することができて、装飾カバー部11やモール本体部12に長手方向の引張応力や圧縮応力が発生又は内蔵せず、装飾カバー部11とモール本体部12の熱膨張係数の違い(伸縮量の違い)による湾曲や反りを防止することができる。また、装飾カバー部11とモール本体部12とを密接した状態で押出成形し、両者がそれぞれ相手部材に対して長手方向と交差する方向には移動が阻止されているので、ベルトモールディング10を製品として使用中に温度変化に晒されても装飾カバー部11とモール本体部12との間に過度の隙間が生じず、装飾カバー部11とモール本体部12との間にがたつきが生じない。更に、装飾カバー部11の端末にモール本体部12が存在しない端末段差部57が形成されているので、装飾カバー部11の端末(端末段差部57)に加工や処理を容易に施すことができる。また、押出成形型45内に装飾カバー部11を連続して供給しながら装飾カバー部11の内部空間11a内にポリマー材料を直接に押し出してモール本体部12を押出成形するので、装飾カバー部11の内面11cにモール本体部12の外面12aを密接させて一体化することができる。
【0076】
また、本実施例では、ステンレス鋼板やアルミニウム板の表面には不動態皮膜が形成されていることに着目して、装飾カバー部11をステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板から所定横断面形状に成形するようにしたので、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12との非着性を高めることができる。
【0077】
しかしながら、装飾カバー部11を、ステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板から所定横断面形状に成形したが、これに限定されず、例えば、所定の長さに切断されたアルミニウム合金の異形押出材を用いるようにしても良い。アルミニウム合金の表面にも不動態皮膜が形成されているため、装飾カバー部11とモール本体部12との非着性を高めることができる。
【0078】
更に、本実施例では、装飾カバー部11を成形する金属材料のうちの少なくとも装飾カバー部11の内面になる部分に平滑処理を施すと共に、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間に離型剤層24を形成するようにしたので、装飾カバー部11の内面11cとモール本体部12の外面12aとの間の非着性を高めることができ、装飾カバー部11やモール本体部12の相手部材に対する長手方向の移動に支障が生じない。
【0079】
尚、上記実施例では、ベルトモールディング10の製造ラインで装飾カバー部11を所定の横断面形状に成形して押出成形型45に供給するようにしたが、所定の横断面形状に成形した装飾カバー部11を外部から入手したものを押出成形型45に供給するようにしても良い。
【0080】
また、ベルトモールディング10の断面形状は上記(図1)のものに限定されない。図17,図18に示すような装飾カバー部11の折り曲げ加工を行わない場合は、遮蔽リップ18やクッションリップ21が装飾カバー部11に接合して一体的に共押出成形されていても良い。また、遮蔽リップ、クッションリップ、保持リップ及びシールリップのうちの一部又は全部のリップがないものであっても良い。
【0081】
また、上記実施例では、車両用のベルトモールディングに本発明を適用したが、これに限定されず、車両用の各種モールディングやトリム(例えば、ボディサイドモールディング、ピラーモールディング、ルーフモールディング、ガイドレール等)やフレームや枠材、家電製品や家具用の各種トリム(例えば、縁飾りトリム、ガイドレール等)、建築用の各種トリム(例えば、目地材、縁覆いガスケット等)やフレームや枠材等の種々の複合押出成形品に本発明を適用して実施しても良い。
【符号の説明】
【0082】
10…ベルトモールディング(複合押出成形品)、11…装飾カバー部(第1部材)、11c…内面、11E…長手方向の端末、12…モール本体部(第2部材)、12a…外面、12E…長手方向の端末、13…フランジ、24…離型剤層、25…ストリップ材、29…端末処理装置、36…冷間ロール成形装置、37…離型剤塗布装置、43…乾燥機、44…押出成形装置、45…押出成形型、47…硬化処理装置、48…加熱機、49…冷却機、51…分離促進装置、54…植毛装置、55…切断機、57…端末段差部、60…エンドキャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料で所定の横断面形状に成形されて幅方向の両端から内側に向けて突出するフランジの先端間の開口幅寸法よりも大きい幅寸法の内部空間を有する長尺な第1部材と、前記第1部材の少なくとも内部空間内に前記金属材料とは熱膨張係数が異なるポリマー材料で所定の横断面形状に直接に押出成形された長尺な第2部材とを備え、前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が嵌合された長尺な複合押出成形品であって、
前記第1部材の内部空間内には前記金属材料よりも熱膨張係数が大きい前記ポリマー材料が前記第1部材の内面に接して長手方向に連続して押し出されて前記第2部材が成形され、前記金属材料と前記ポリマー材料の熱膨張係数の違いによる収縮量の差に対応して前記第2部材の外面形状のうちの前記第1部材の内面に対向する部分が前記第1部材の横断面形状における内面形状の相似的縮小形の一定横断面形状に形成されて前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が前記第1部材の内面との間に隙間が生じて非接着状態で嵌め込まれていて、前記第1部材と前記第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止されており、
前記第2部材の押出成形後の冷却に伴う長手方向の収縮により前記第2部材の長さが前記第1部材の長さよりも短くなることで前記第1部材の長手方向の少なくとも一方の端末に前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が存在しない端末段差部が形成され、前記端末段差部に前記第2部材とは独立した適宜の加工又は処理が施されていることを特徴とする複合押出成形品。
【請求項2】
前記第1部材は、内部空間が内側となるように前記横断面形状が湾曲した異形形状に成形されていることを特徴とする請求項1に記載の複合押出成形品。
【請求項3】
前記第1部材は、一定厚さのステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板から所定横断面形状に折り曲げられて成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合押出成形品。
【請求項4】
前記第1部材は、所定の長さに切断されたアルミニウム合金の長尺な異形押出材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合押出成形品。
【請求項5】
前記第1部材の少なくとも内面になる部分に平滑処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項6】
前記第1部材の内面と前記第2部材の外面との間に離型剤層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項7】
前記第1部材の幅方向の両端のフランジがそれぞれ相手方に向けて突出するフック状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項8】
前記適宜の加工は、前記第1部材の長さが所定の最終寸法になるように前記端末段差部が切断された加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部にエンドキャップが装着された加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部が内側方向に折り曲げられた加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部を内側方向へ絞った加工のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項9】
前記ポリマー材料は、ゴム又は熱可塑性合成樹脂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項10】
金属材料で所定の横断面形状に成形されて幅方向の両端から内側に向けて突出するフランジの先端間の開口幅寸法よりも大きい幅寸法の内部空間を有する長尺な第1部材と、前記第1部材の少なくとも内部空間内に前記金属材料とは熱膨張係数が異なるポリマー材料で所定の横断面形状に直接に押出成形された長尺な第2部材とを備え、前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が嵌合された長尺な複合押出成形品を製造する方法であって、
前記第1部材を準備する第1部材準備工程と、
前記第2部材を成形する押出成形型に前記第1部材を長手方向に供給しながら前記押出成形型内で前記第1部材の内部空間内では前記第1部材の内面を成形型面として前記金属材料よりも熱膨張係数が大きい前記ポリマー材料を前記第1部材の横断面形状における内面に接して長手方向に連続して押し出して前記第1部材の内面と非接着状態で密接させて前記第1部材の内面形状が反転した外面形状の横断面形状を有するように前記第2部材を連続して成形して、前記第1部材と前記第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止された直線状の複合押出成形品を常温を越える温度に加熱された状態で成形する押出成形工程と、
前記第1部材の上流側の端末と前記第2部材の上流側の端末とが同一位置になるように前記複合押出成形品を所定の長さに切断する切断工程と、
前記複合押出成形品を冷却して前記ポリマー材料で成形された第2部材を収縮させて前記第2部材の外面形状のうちの前記第1部材の内面に対向する部分を前記第1部材の内面形状の相似的縮小形に形成すると共に、前記第2部材の長手方向の収縮により前記第2部材の長さが前記第1部材の長さよりも短くなることで前記第1部材の長手方向の少なくとも一方の端末に前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が存在しない端末段差部を形成する収縮工程と、
前記端末段差部に前記第2部材とは独立した適宜の加工又は処理を施す端末加工工程と
を含むことを特徴とする複合押出成形品の製造方法。
【請求項11】
前記押出成形工程の後で且つ前記切断工程の前に前記ポリマー材料で成形された第2部材を硬化又は固化させる処理工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項12】
前記収縮工程において、前記第2部材を自然冷却させることを特徴とする請求項10又は11に記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項13】
前記第1部材準備工程において、前記金属材料として金属帯板を長手方向に連続して供給しながら冷間ロール成形で前記横断面形状の第1部材を成形し、前記冷間ロール成形と同期して前記第1部材を前記押出成形型に供給することを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項14】
前記金属帯板は、厚さが0.1〜0.75mmの範囲内のステンレス鋼板又はアルミニウム板であることを特徴とする請求項13に記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項15】
前記金属帯板のうちの少なくとも前記第1部材の内面になる部分に平滑処理が施されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項16】
前記第1部材の内部空間内に前記ポリマー材料が充填される前に前記第1部材の内面に離型剤層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項10乃至15のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項17】
前記押出成形工程において、前記第1部材の長手方向の供給速度よりも遅い速度で前記ポリマー材料を押し出して前記第2部材を成形することで前記第2部材を長手方向に伸長させながら前記第1部材と一体化させることを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項18】
前記押出成形工程の後に前記複合押出成形品の長手方向と交差する方向に外力を加えて前記第1部材の内面と該内面に密接している前記第2部材の外面との間にずれ力を作用させる分離促進工程を含むことを特徴とする請求項10乃至17のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項19】
前記端末加工工程において、前記第1部材の長さが所定の最終寸法になるように前記端末段差部を切断する加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部にキャップを装着する加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部を内側方向に折り曲げる加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部を内側方向へ絞る加工のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項10乃至18のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項1】
金属材料で所定の横断面形状に成形されて幅方向の両端から内側に向けて突出するフランジの先端間の開口幅寸法よりも大きい幅寸法の内部空間を有する長尺な第1部材と、前記第1部材の少なくとも内部空間内に前記金属材料とは熱膨張係数が異なるポリマー材料で所定の横断面形状に直接に押出成形された長尺な第2部材とを備え、前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が嵌合された長尺な複合押出成形品であって、
前記第1部材の内部空間内には前記金属材料よりも熱膨張係数が大きい前記ポリマー材料が前記第1部材の内面に接して長手方向に連続して押し出されて前記第2部材が成形され、前記金属材料と前記ポリマー材料の熱膨張係数の違いによる収縮量の差に対応して前記第2部材の外面形状のうちの前記第1部材の内面に対向する部分が前記第1部材の横断面形状における内面形状の相似的縮小形の一定横断面形状に形成されて前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が前記第1部材の内面との間に隙間が生じて非接着状態で嵌め込まれていて、前記第1部材と前記第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止されており、
前記第2部材の押出成形後の冷却に伴う長手方向の収縮により前記第2部材の長さが前記第1部材の長さよりも短くなることで前記第1部材の長手方向の少なくとも一方の端末に前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が存在しない端末段差部が形成され、前記端末段差部に前記第2部材とは独立した適宜の加工又は処理が施されていることを特徴とする複合押出成形品。
【請求項2】
前記第1部材は、内部空間が内側となるように前記横断面形状が湾曲した異形形状に成形されていることを特徴とする請求項1に記載の複合押出成形品。
【請求項3】
前記第1部材は、一定厚さのステンレス鋼板又はアルミニウム板の金属帯板から所定横断面形状に折り曲げられて成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合押出成形品。
【請求項4】
前記第1部材は、所定の長さに切断されたアルミニウム合金の長尺な異形押出材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合押出成形品。
【請求項5】
前記第1部材の少なくとも内面になる部分に平滑処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項6】
前記第1部材の内面と前記第2部材の外面との間に離型剤層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項7】
前記第1部材の幅方向の両端のフランジがそれぞれ相手方に向けて突出するフック状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項8】
前記適宜の加工は、前記第1部材の長さが所定の最終寸法になるように前記端末段差部が切断された加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部にエンドキャップが装着された加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部が内側方向に折り曲げられた加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部を内側方向へ絞った加工のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項9】
前記ポリマー材料は、ゴム又は熱可塑性合成樹脂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の複合押出成形品。
【請求項10】
金属材料で所定の横断面形状に成形されて幅方向の両端から内側に向けて突出するフランジの先端間の開口幅寸法よりも大きい幅寸法の内部空間を有する長尺な第1部材と、前記第1部材の少なくとも内部空間内に前記金属材料とは熱膨張係数が異なるポリマー材料で所定の横断面形状に直接に押出成形された長尺な第2部材とを備え、前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が嵌合された長尺な複合押出成形品を製造する方法であって、
前記第1部材を準備する第1部材準備工程と、
前記第2部材を成形する押出成形型に前記第1部材を長手方向に供給しながら前記押出成形型内で前記第1部材の内部空間内では前記第1部材の内面を成形型面として前記金属材料よりも熱膨張係数が大きい前記ポリマー材料を前記第1部材の横断面形状における内面に接して長手方向に連続して押し出して前記第1部材の内面と非接着状態で密接させて前記第1部材の内面形状が反転した外面形状の横断面形状を有するように前記第2部材を連続して成形して、前記第1部材と前記第2部材がそれぞれ相手部材に対して長手方向には移動が許容されて長手方向と交差する方向には移動が阻止された直線状の複合押出成形品を常温を越える温度に加熱された状態で成形する押出成形工程と、
前記第1部材の上流側の端末と前記第2部材の上流側の端末とが同一位置になるように前記複合押出成形品を所定の長さに切断する切断工程と、
前記複合押出成形品を冷却して前記ポリマー材料で成形された第2部材を収縮させて前記第2部材の外面形状のうちの前記第1部材の内面に対向する部分を前記第1部材の内面形状の相似的縮小形に形成すると共に、前記第2部材の長手方向の収縮により前記第2部材の長さが前記第1部材の長さよりも短くなることで前記第1部材の長手方向の少なくとも一方の端末に前記第1部材の内部空間内に前記第2部材が存在しない端末段差部を形成する収縮工程と、
前記端末段差部に前記第2部材とは独立した適宜の加工又は処理を施す端末加工工程と
を含むことを特徴とする複合押出成形品の製造方法。
【請求項11】
前記押出成形工程の後で且つ前記切断工程の前に前記ポリマー材料で成形された第2部材を硬化又は固化させる処理工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項12】
前記収縮工程において、前記第2部材を自然冷却させることを特徴とする請求項10又は11に記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項13】
前記第1部材準備工程において、前記金属材料として金属帯板を長手方向に連続して供給しながら冷間ロール成形で前記横断面形状の第1部材を成形し、前記冷間ロール成形と同期して前記第1部材を前記押出成形型に供給することを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項14】
前記金属帯板は、厚さが0.1〜0.75mmの範囲内のステンレス鋼板又はアルミニウム板であることを特徴とする請求項13に記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項15】
前記金属帯板のうちの少なくとも前記第1部材の内面になる部分に平滑処理が施されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項16】
前記第1部材の内部空間内に前記ポリマー材料が充填される前に前記第1部材の内面に離型剤層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項10乃至15のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項17】
前記押出成形工程において、前記第1部材の長手方向の供給速度よりも遅い速度で前記ポリマー材料を押し出して前記第2部材を成形することで前記第2部材を長手方向に伸長させながら前記第1部材と一体化させることを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項18】
前記押出成形工程の後に前記複合押出成形品の長手方向と交差する方向に外力を加えて前記第1部材の内面と該内面に密接している前記第2部材の外面との間にずれ力を作用させる分離促進工程を含むことを特徴とする請求項10乃至17のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【請求項19】
前記端末加工工程において、前記第1部材の長さが所定の最終寸法になるように前記端末段差部を切断する加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部にキャップを装着する加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部を内側方向に折り曲げる加工、前記第1部材の端末を塞ぐように前記端末段差部を内側方向へ絞る加工のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項10乃至18のいずれかに記載の複合押出成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
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【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−25575(P2011−25575A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174797(P2009−174797)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
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