説明

複合発泡シート、その積層構造体及びそれらを用いたハニカム吸音構造体

【課題】吸音性能が高いが剛性に劣る熱可塑性樹脂の柔軟素材発泡体に、剛性を付与し、かつ、軽量性も付与することで、各種工業資材等の吸音材として使用可能な複合発泡シート、その積層構造体、及びそれらを用いたハニカム吸音構造体の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)の発泡体からなるハニカム構造コアの各セル内に熱可塑性樹脂(B)の発泡体が充填された複合発泡体シートであり、好ましくは熱可塑性樹脂(A)の曲げ弾性率が、熱可塑性樹脂(B)の曲げ弾性率より大きい複合発泡シート及びその積層構造体、それらを用いたハニカム吸音構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合発泡シート、その積層構造体及びそれらを用いたハニカム吸音構造体に関し、より詳細には、ハニカム構造コアを形成する材料とハニカム構造コアの各セル内に充填されている材料が異なる2種類以上の熱可塑性樹脂の発泡体で形成された、吸音性能が高く、剛性を有し、軽量性に優れた複合発泡シート、その積層構造体及びそれらを用いたハニカム吸音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、騒音問題がクローズアップされることが多く、快適性の観点から吸音が注目されており、建材、自動車用内装材等に吸音材料が幅広く用いられている。その吸音材料の一つとして、樹脂フォーム材があり、軽量性、断熱性、柔軟性、浮揚性及び成形性に優れていることもあり、フォーム材を用いた材料の用途は広がってきている。
しかし、吸音性能は、基材に音があたるとその空気振動が基材内部の空孔部分の空気に伝わり、この空孔部分で空気の粘性摩擦が生じて音のエネルギーの一部が熱エネルギーに変換され吸音性能が生じるものであるから、音が材料表面で反射することなく材料内に進入しなくてはならないため、吸音性能を有する樹脂フォームは、通気性が必要であることが知られている。すなわち、フォームの気泡が連通する必要がある。そのため、熱硬化性樹脂である連泡性ウレタンフォームや連泡構造構築が困難である熱可塑性樹脂の独立気泡構造のフォームにエンボス加工等を行うことにより通気性を付与したものが用いられている。例えば、発泡成形されるフォーム材に隙間を生じさせ、特定の範囲の空気流れ抵抗値を有することにより、吸音性能が付加された熱可塑性樹脂フォーム材(例えば、特許文献1参照。)、面積が1mm以上の孔が、開孔率3%以上あるように成形された吸音性能を付与した発泡プラスチック樹脂フォーム材(例えば、特許文献2参照。)等が挙げられる。
【0003】
一方、既に本発明者らは、柔軟素材からなる独立気泡構造の発泡体は、硬質素材にはない、800〜5000Hzの周波数範囲において、特徴的な吸音率ピークが存在し、高い吸音性能を有することを見出し、その材料に剛性を付与して、建材や自動車用途に用いることができる、高い剛性を有する熱可塑性樹脂と柔軟素材の発泡体を複合したハニカム吸音構造体(例えば、特許文献3参照。)を開発したが、車両用内装材等に要求される軽量性の点には若干劣っているという問題があった。
【特許文献1】特開2003−25362号公報
【特許文献2】特開2003−25361号公報
【特許文献3】特願2005−110750
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、吸音性能が高いが剛性に劣る熱可塑性樹脂の柔軟素材発泡体に、剛性を付与し、かつ、軽量性も付与することで、各種工業資材等の吸音材として使用可能な複合発泡シート、その積層構造体及びそれらを用いたハニカム吸音構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、吸音性能が高いが剛性に劣る熱可塑性樹脂からなる柔軟素材発泡体に、軽量かつ剛性である熱可塑性樹脂の発泡体からなるハニカム構造コアを複合化させることにより得られる複合発泡シートは、柔軟素材からなる発泡体をハニカム構造コア内に充填し、吸音性能を有し、かつ軽量高剛性であるので、吸音構造体として使用可能であり、さらに通気性を有する表皮層と積層することにより、特に自動車内装材等として使用可能であることを見出し本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、熱可塑性樹脂(A)の発泡体からなるハニカム構造コアの各セル内に1種類以上の他の熱可塑性樹脂(B)の発泡体が充填されてなることを特徴とする複合発泡シートが提供される。
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ハニカム構造コアの発泡体を形成する熱可塑性樹脂(A)の曲げ弾性率が、コアセル内に充填されている発泡体を形成する他の熱可塑性樹脂(B)の曲げ弾性率より大きいことを特徴とする複合発泡シートが提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、比重の逆数である発泡倍率が2〜60倍であることを特徴とする複合発泡シートが提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、ハニカム構造コアの発泡体を形成する熱可塑性樹脂(A)が結晶性ポリプロピレン又は高密度ポリエチレンであり、かつ、コアセル内に充填されている発泡体を形成する他の熱可塑性樹脂(B)がエチレン−酢酸ビニル共重合体又は低密度ポリエチレンであることを特徴とする複合発泡シートが提供される。
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、コアセル内に充填されている1種類以上の熱可塑性樹脂(B)の発泡体が、多角形状、または同心円状に分布していることを特徴とする複合発泡シートが提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、複合発泡シートの厚さ方向の断面において、外表面側の他の熱可塑性樹脂(B)の発泡体の面積の全体面積に対する割合が、任意の厚さで発泡体表面に平行にスライスしたその断面における他の熱可塑性樹脂(B)の発泡体の面積の全体面積に対する割合よりも大きいことを特徴とする複合発泡シートが提供される。
【0012】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、吸音性能が800〜5000Hzの周波数範囲において、吸音率ピークを有し、そのピーク吸音率が30%以上であることを特徴とする複合発泡シートが提供される。
【0013】
また、本発明の第8の発明によれば、表面に複数の発泡性熱可塑性樹脂(B)粒状体が連結された発泡性熱可塑性樹脂シートを形成する工程、該シートの粒状体側の表面を1種類以上の発泡性熱可塑性樹脂(A)によりコーティングする工程、続いて全体を発泡させる工程からなることを特徴とする第1〜7のいずれかの発明の複合発泡シートの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明の複合発泡シートの少なくとも一方の面に通気性を有する表皮層(C)を積層してなることを特徴とする積層構造体が提供される。
【0015】
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、表皮層の流れ抵抗値が1.0×10〜1.0×10Pa・S/mであることを特徴とする積層構造体が提供される。
【0016】
また、本発明の第11の発明によれば、第9又は10の発明において、表皮層が、通気性を有する発泡体層であることを特徴とする積層構造体が提供される。
【0017】
また、本発明の第12の発明によれば、第9又は10の発明において、表皮層が、通気性を有する不織布であることを特徴とする積層構造体が提供される。
【0018】
また、本発明の第13の発明によれば、第1〜7、9〜12のいずれかの発明の複合発泡シート又は積層構造体からなることを特徴とするハニカム吸音構造体が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる発泡体が該熱可塑性樹脂とは異なる、好ましくはより剛性の高い熱可塑性樹脂の発泡体からなるハニカムコア内に充填された複合発泡シートであるので、柔軟性、軽量性、及び剛性を有し、かつ吸音機能に優れたハニカム吸音構造体とすることができ、また、該複合発泡シートに通気性を有する表皮を積層した積層体は、柔軟性、軽量性、及び剛性を有し、かつ吸音機能に優れ、かつ、その吸音の周波数特性が広範囲にわたるものであるので、自動車内装材等の吸音構造体として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、熱可塑性樹脂(A)からなる発泡体で構成された蜂の巣状をしたハニカム構造のコアのセル内に、熱可塑性樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂(B)の発泡体が充填された複合発泡シート、該複合発泡シートの少なくとも一方の片面に通気性を有する表皮層を積層した積層構造体、及びそれらからなハニカム吸音構造体である。以下、本発明を構造、材料樹脂、製造法等について詳細を説明する。
【0021】
1.複合発泡シート
本発明の複合発泡シートは、熱可塑性樹脂(A)の発泡体からなるハニカム構造コアのセル内に、熱可塑性樹脂(B)の発泡体が充填された構造を有する。
【0022】
(1)ハニカムコア
(i)熱可塑性樹脂(A)
ハニカム構造コアの発泡体を形成する熱可塑性樹脂(A)は、ハニカム構造のコア内に充填される熱可塑性樹脂発泡体に剛性を付与するために用いる。熱可塑性樹脂(A)としては、発泡可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂(A)の曲げ弾性率は、充填される熱可塑性樹脂(B)の曲げ弾性率以上の樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂(A)の曲げ弾性率が、充填される熱可塑性樹脂(B)のそれより小さいと剛性を付与することができず好ましくない。
熱可塑性樹脂(A)の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン(以下、「ポリプロピレン(PP)」とは、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、またはこれらの混合物をいう。)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、及びこれらの共重合体等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、得られる発泡体の剛性という観点では、結晶性のPP、HDPEを用いることが好ましい。
【0023】
また、ハニカムコアを形成する熱可塑性樹脂(A)は、発泡することで、ハニカムコアを構成すると同時に、ハニカム構造コアのセル内に充填された発泡体の表面をコーティングするシートとしても用いられることからも、流動性の指標であるMIが大きい熱可塑性樹脂ほどコーティングにかかる時間を短縮することができ、好ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂(A)は、必要に応じて、架橋されていてもよい。架橋された熱可塑性樹脂を用いることにより、発泡倍率を向上させることができる。得られる発泡体の軽量化は発泡倍率を上げることにより達成でき、その点からも架橋されたものを用いることが好ましい。架橋する方法としては、熱可塑性樹脂に過酸化物を該過酸化物の分解温度より低い温度で溶融混練後、過酸化物の分解温度以上に加熱して架橋する方法が挙げられる。
この方法において用いられる過酸化物は、特に限定されず、例えば、ジブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ターシャルブチルクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド等が挙げられ、分解温度が適正温度範囲であるので、ジクミルパーオキサイド、ターシャルブチルクミルパーオキサイドが好ましく、ジクミルパーオキサイドが特に好ましい。
【0025】
過酸化物の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、過酸化物の添加量は0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部が特に好ましい。多すぎると、樹脂分解反応が進行しやすくなり、得られる発泡体が着色し、また、少なすぎると、熱可塑性樹脂の架橋が不十分となることがあるので、好ましくない。
【0026】
(ii)熱可塑性樹脂(A)の発泡体
本発明において、熱可塑性樹脂(A)の発泡体は、熱可塑性樹脂に発泡剤を添加して発泡させて得られる。発泡剤としては、加熱により分解ガスを発生する熱分解型化学発泡剤を好適に用いることができる。熱分解型化学発泡剤の具体例としては、用いられる熱可塑性樹脂の溶融温度より高い分解温度を有するものであれば、特に限定されず、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アジド化合物、ほう水素化ナトリウム等の無機系熱分解型発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボン酸バリウム、トリヒドラジノトリアジン等が挙げられる。その中でも、分解温度や分解速度の調整が容易でガス発生量が多く、衛生上優れているアゾジカルボンアミドが好ましい。
【0027】
熱分解型化学発泡剤の添加量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、1〜25重量部の割合で含有させることが好ましい。熱分解型発泡剤の添加量が多すぎると、破泡し、均一なセルが形成されず、逆に少なすぎると十分に発泡しなくなることがある。
熱可塑性樹脂(A)発泡体の発泡倍率は、2〜60倍が好ましく、より好ましくは5〜40倍である。発泡倍率が2倍未満では、十分な軽量性を得ることができず、また、得られる発泡体の吸音性能も低下する。一方、発泡倍率が60倍を超えると均一なセルは形成できず、良好な発泡体を得ることが難しい。
なお、発泡倍率は、比重の逆数として表す値である。
【0028】
(2)コア充填体
(i)熱可塑性樹脂(B)
ハニカム構造コア内に充填される発泡体の熱可塑性樹脂(B)は、発泡可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではないが、発泡体が柔軟性を有し、曲げ弾性率が1〜100MPaであるものが好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPDM)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中では、特に、直鎖状低密度ポリエチレン、EVAが望ましい。
なお、本発明において、熱可塑性樹脂の柔軟性とは、樹脂の曲げ弾性率の値に基づくもので、曲げ弾性率が1〜100MPaのものをいう。
【0029】
上記好ましく用いられる直鎖状低密度ポリエチレンの密度としては、0.860〜0.920g/cmのものが好ましい。密度が0.860g/cm未満であると、成形性の低下とともに生産性が低下してしまい、0.920g/cmを超えると、発泡性が低下してしまい良好な発泡体を得ることができない。
【0030】
また、好ましく用いられるEVAの酢酸ビニル(VA)含量は、40%以下が望ましい。EVAのVA含量が40%以上になると発泡性が著しく低下してしまい良好な発泡体を得ることができない。
【0031】
さらに、熱可塑性樹脂(B)のMIの範囲としては、0.1〜10g/10minが好ましい。MIが0.1g/10min未満になると成型性の低下とともに生産性が低下してしまい、10g/10minを超えると発泡性が低下してしまう。上記熱可塑性樹脂の中でも、得られる発泡体の柔軟性を高めるという観点では、EVAが特に好ましい。
なお、発泡体樹脂の柔軟性はその発泡体を形成する樹脂の曲げ弾性率を用いて規定し(JIS K7106)、MIはJIS K7210に準拠して、230℃、21.18N荷重で測定する値である。
【0032】
熱可塑性樹脂(B)は、必要に応じて架橋されていてもよい。架橋された熱可塑性樹脂を用いることにより、発泡倍率の向上及び得られる発泡体の軽量化を図り得るため、架橋されたものを用いることが好ましい。架橋する方法としては、熱可塑性樹脂に過酸化物を該過酸化物の分解温度より低い温度で溶融混練後、過酸化物の分解温度以上に加熱して架橋する方法が挙げられる。
この方法において用いられる過酸化物は特に限定されず、例えば、ジブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ターシャルブチルクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド等が挙げられ、分解温度が適正温度範囲であるので、ジクミルパーオキサイド、ターシャルブチルクミルパーオキサイドが好ましく、ジクミルパーオキサイドが特に好ましい。
【0033】
過酸化物の添加量は、熱可塑性樹脂(B)100重量部に対して、過酸化物の添加量は0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部が特に好ましい。多すぎると、樹脂分解反応が進行しやすくなり、得られる発泡体が着色し、また、少なすぎると、熱可塑性樹脂の架橋が不十分となることがあるので、好ましくない。
【0034】
(ii)熱可塑性樹脂(B)の発泡体
本発明において、熱可塑性樹脂(B)の発泡体を得るためには、熱可塑性樹脂(B)に発泡剤を添加する。上記発泡層樹脂に含有される発泡剤としては、加熱により分解ガスを発生する熱分解型化学発泡剤を好適に用いることができる。上記熱分解型発泡剤としては、用いられる熱可塑性樹脂の溶融温度より高い分解温度を有するものであれば、特に限定されず、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アジド化合物、ほう水素化ナトリウム等の無機系熱分解型発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボン酸バリウム、トリヒドラジノトリアジン等が挙げられ、分解温度や分解速度の調整が容易でガス発生量が多く、衛生上優れているアゾジカルボンアミドが好ましい。
【0035】
熱分解型化学発泡剤の添加量は、熱可塑性樹脂(B)100重量部に対し、1〜25重量部の割合で含有させることが好ましい。熱分解型発泡剤の添加量が多すぎると、破泡し、均一なセルが形成されず、逆に少なすぎると十分に発泡しなくなることがある。
本発明の発泡体は、上記熱可塑性樹脂に上記発泡剤を用いて発泡させたものであり、発泡剤の添加量を上記範囲にすることにより、発泡倍率が好ましくは2〜60倍の発泡体、より好ましくは5〜40倍の発泡体が得られる。発泡倍率が2倍未満では、充分な軽量性を得ることができず、また、得られる発泡体の吸音性能も低下してしまい、60倍を超えると均一なセルが形成できず、良好な発泡体を得ることが難しい。特に、発泡倍率が、5倍以下であると軽量性が得られ難く、かつ、十分な吸音性が得られ難い。
なお、発泡倍率は、比重の逆数として表す値である。
【0036】
(3)複合発泡シート構造
本発明の複合発泡シート構造の一例を図で説明する。図1は本発明の複合発泡シートの厚さ方向の断面図であり、図2は、図1のX−X’方向の断面図である。図1及び2において、複合発泡シート1は、ハニカムコア隔壁2、それから形成されるハニカムセル3から形成され、ハニカムコア隔壁2は熱可塑性樹脂(A)の発泡体からなり、ハニカムセル3には熱可塑性樹脂(B)の発泡体が充填された形状になっている。
【0037】
なお、ハニカムセル内に充填される熱可塑性樹脂(B)の発泡体は、一種類の熱可塑性樹脂の発泡体に限られず、二種類以上の熱可塑性樹脂の発泡体であっても良い。二種類以上の熱可塑性樹脂の発泡体を用いる場合は、各熱可塑性樹脂発泡体が層状に形成されているものが好ましい。例えば、図1及び図2と同様の断面図として、図3及び図4として表すことができる。図3及び4において、ハニカム吸音構造体1は、熱可塑性樹脂(A)の発泡体からなるハニカムコア隔壁2、ハニカムセル3内には、熱可塑性樹脂(B)の発泡体31、もう一種類の熱可塑性樹脂(B)の発泡体32が充填された形状となる。
【0038】
本発明の複合発泡シートのハニカム構造コアは、いわゆる蜂の巣状のコアが上記熱可塑性樹脂発泡体で構成された形状であり、ハニカム構造コアの隔壁の厚さは、特に制限がないが、0.1〜4.0mmが好ましい。また、ハニカム構造コア内に形成されるセルの大きさは、6.0〜20.0mmが好ましい。さらに、ハニカム構造体全体1の厚さは、4.0〜20.0mmが好ましい。それぞれが上記範囲を外れると、柔軟性、剛性、吸音性の点から好ましくない。
なお、ハニカムセルの大きさは、セル形状が6角形の場合は、図2で示すdの幅をいう。
【0039】
本発明の複合発泡シートは、図1〜4に示すようなハニカム構造であるので、吸音特性を有する柔軟素材フォームに、高剛性素材のハニカム構造コアにより剛性が付与され、吸音性能と剛性を両立させた構造体となる。
ここで、セル内に充填される発泡体における樹脂は、柔軟であればあるほど吸音性は優れており、ハニカム構造コア樹脂の発泡体が柔軟素材の発泡体の間に柱状構造を形成し、剛性を高めている。
なお、さらに、構造全体の剛性を向上させるために、図5に示すように熱可塑性樹脂(A)の発泡体層4を存在させることもできる。
【0040】
また、さらに、構造全体の剛性を損なうことなく、吸音性能を向上させるために、図6に示すように、高剛性素材のハニカム構造コアの複合発泡シートの厚さ方向に傾斜をつけ、複合発泡シートの外表面に近づくにつれて、柔軟性素材の熱可塑性樹脂(B)の断面積を増加させる構造をとることもできる。吸音性能は、前述したように、音の入射面が柔軟であるほど高く、その面積が広いほど高い。また、複合発泡シート下部に近づくに従い、高剛性である熱可塑性樹脂(A)の断面積が増加していくために、剛性は低下しないという特徴を有する。
【0041】
また、本発明の複合発泡シートは、吸音性能が800〜5000Hz、好ましくは2000〜4500Hzの周波数範囲において、吸音率ピークを有し、そのピーク吸音率が30%以上、好ましくは40%以上である。
このような周波数範囲における吸音率ピークを有する材料は、特に、軽量高剛性および吸音性能が求められる自動車内装材分野の吸音材として有効に用いることができる。
【0042】
(4)複合発泡シートの製造方法
本発明の複合発泡シートは、表面に複数の発泡性熱可塑性樹脂(B)粒状体が連結された発泡性熱可塑性樹脂シートを形成する工程(i)、該シートの粒状体側の表面を発泡性熱可塑性樹脂(A)をコーティングする工程(ii)、続いて全体を発泡させる工程(iii)からなる。各工程について詳細に説明する。
【0043】
(i)発泡性熱可塑樹脂シートの形成工程
本発明の複合発泡シートの製造の第1の工程は、表面に複数の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が連結された発泡性熱可塑性樹脂シートを形成する工程である。表面に複数の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が連結されたシートとは、例えば、図7にその断面を示すような形状のシートである。図7において、発泡性熱可塑性樹脂シート10は、発泡性熱可塑性樹脂薄膜11の表面に複数の発泡性樹脂粒状体12が連結されている形状のシートである。
発泡性熱可塑性樹脂薄膜は、熱可塑性樹脂(B)に、熱分解型発泡剤、必要に応じて、架橋剤を押出機に供給し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練し、得られた発泡性熱可塑性樹脂組成物をTダイ等から押し出して形成される。薄膜の厚さは、0.1〜0.6mmが好ましく、より好ましくは0.3〜0.5mmである。発泡性熱可塑性樹脂薄膜の厚みが厚すぎると加熱時に発泡性熱可塑性樹脂シートの波打ちが生じ易くなり、薄すぎると発泡性熱可塑性樹脂シートを製造するに際し発泡性熱可塑性樹脂薄膜が破れやすくなる。
【0044】
薄膜表面に発泡性熱可塑性樹脂粒状体を連結させる方法は、特に制限されないが、上記で得られた薄膜に、複数の凹部を有するフッ素系樹脂シートや金型を重ねて熱プレスする方法等が挙げられる。複数の凹部を有するフッ素系樹脂シートを重ねて熱プレスする方法としては、例えば、図8に示す平面を有するフッ素系樹脂シートを上記薄膜に重ね熱プレスする方法が挙げられる。図8において、フッ素系樹脂シート14は、複数の孔15を有しており、薄膜11上の発泡性粒状体12の形状は、孔14の形状に依存するようになる。発泡性熱可塑性樹脂粒状体12の形状は、特に限定されず、例えば六方体、円柱状などにすることができ、発泡性熱可塑性樹脂粒状体12の発泡に際し均一に発泡させやすいため、円柱状のものか、発泡体表面側における熱可塑性樹脂(B)の発泡体部分の面積の割合を増加させることができるため、吸音性能の高い円錐台状にすることが最も好ましい。
【0045】
薄膜11上の発泡性粒状体12の配置、大きさは、フッ素系樹脂シートや金型の凹部を調節することにより変化させることができ、この配置や大きさにより、後述の発泡後のハニカム構造コアの形状および大きさが決定される。
また、孔15の形状、配置の方法により、発泡後のハニカム構造コアの形状を三角形、四角形、六角形、八角形などの多角形に変化させることができるが、剛性の観点からハニカム形状を六角形にすることが望ましい。さらに、ハニカムコアの大きさが、剛性の観点から5〜20mmになるように孔の形状、配置、発泡倍率を制御する方法が好ましい。ここで、ハニカムコアの大きさとは、例えば、ハニカムコアが6角形の場合は、図2に示す距離dを示す。
【0046】
(ii)発泡性シートの粒状体側の表面に発泡性熱可塑性樹脂(A)をコーティングする工程
上記のようにして得られた発泡性熱可塑性樹脂(B)シートの粒状体側の表面に溶融した発泡性熱可塑性樹脂(A)をコーティングして複合発泡性熱可塑性シートを形成する。発泡性熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性樹脂(A)に、熱分解型発泡剤、必要に応じて、架橋剤を押出機に供給し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度で溶融混練し得られる。発泡性熱可塑性樹脂(A)のコーティング方法としては、コーティングする発泡性樹脂シートを上記発泡性熱可塑樹脂(B)シート上に積層し、熱分解型発泡剤の分解温度より低い温度でありながら、かつ、コーティングする樹脂の融点以上の温度で処理を行う。この加熱処理の方法については、特に限定されるものではなく、例えば、電気ヒーター、遠赤外線ヒーター、加熱された油や空気等の加熱媒体を循環させてなる加熱装置などを用いて加熱する方法を挙げることができる。
【0047】
また、別の複合発泡性熱可塑樹脂シートの製造方法として、コーティングする発泡性熱可塑性樹脂(A)シートとセル内で発泡層を形成する発泡性熱可塑性樹脂(B)のシートを積層した上で上記のように凹部を有するフッ素系樹脂シートや金型を重ねて、熱プレスする方法が挙げられる。この方法においては、コーティング時間を必要としないために生産性が向上する。
【0048】
積層シートを熱プレスして複合発泡性熱可塑性樹脂シートを製造する方法を図9で説明する。コーティングする発泡性熱可塑性樹脂(A)シートとセル内で発泡層を形成する発泡性熱可塑性樹脂(B)のシートを積層し(図9(a))、フッ素系樹脂シートや金型を重ねて熱プレスして、発泡性熱可塑性樹脂(A)シートの粒状体側の表面に発泡性熱可塑性樹脂(B)をコーティングした複合シート(図9(c))を得ることができる。なお、前述の図5に示す底面に熱可塑性樹脂(A)の発泡体を積層した構造にするためには、最初の積層体として、発泡性熱可塑性樹脂(A)シート、発泡性熱可塑性樹脂(B)シート、発泡性熱可塑性樹脂(A)シートの三層の積層シート(図9(b))を用いることにより得ることができる。
【0049】
(iii)発泡工程
上記で得られた複合発泡性熱可塑樹脂シートを発泡させてハニカム吸音構造体を製造する。複合発泡性熱可塑樹脂シートを発泡させるための加熱方法については、含有されている熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱し得る限り、特に限定されるものではなく、例えば、電気ヒーター、遠赤外線ヒーター、加熱された油や空気等の加熱媒体を循環させてなる加熱装置などを用いて加熱する方法を挙げることができる。
特に連続式発泡装置として、加熱炉の出口側で発泡体を引き取りながら発泡させる引き取り式発泡器の他、ベルト式発泡器、縦型または横型発泡炉、熱風恒温槽や、あるいはオイルバス、メタルバス、ソルトバスなどの熱浴が用いられる。
加熱により、発泡性熱可塑性樹脂(B)粒状体が、熱可塑性樹脂(A)の発泡体の間の間隙を埋めるように発泡する。その結果、熱可塑性樹脂(A)の発泡体が柔軟素材の粒状発泡体の間に柱状構造を形成するようにハニカム状のセルを形成し、発泡性熱可塑性樹脂(B)粒状体の発泡後の形状が正六角形等のハニカム構造となり、剛性を高めることができる。
【0050】
3.積層構造体
本発明の積層構造体は、上記複合発泡シートの少なくとも一方の面に通気性を有する表皮層(C)を積層したものである。
本発明の上記複合発泡シートは、柔軟性、軽量性、及び剛性を有し、かつ吸音機能に優れたシートであるので、その少なくとも片面に通気性を有する表皮層(C)を積層することにより、広範囲の周波数にわたる吸音特性という機能を付与された積層構造体とすることができる。
【0051】
本発明で用いる通気性を有する表皮層は、その流れ抵抗値が1.0×10〜1.0×10Pa・S/mであることが好ましく、より好ましくは1.0×10〜1.0×10Pa・S/mである。流れ抵抗値が1.0×10Pa・S/m未満であると音波が容易に材料内に入り、音波のエネルギー損失が低下し、吸音性能が損なわれ、1.0×10Pa・S/mを超えると通気性が乏しく、音波が材料内に入らないため、吸音性能が損なわれる。また、表皮層の厚さは、0.5〜3.5mmが好ましい。
なお、流れ抵抗値は、ISO 9053の測定法によって測定する値である。
【0052】
本発明で用いる表皮層としては、通気性を有する発泡体または通気性を有する不織布が挙げられる。上記通気性を有する発泡体としては、具体的には、連泡ポリエチレンフォーム、軟質ウレタンフォーム等が挙げられ、上記通気性を有する不織布としては、具体的には、ガラス不織布、PET不織布、ポリプロピレンやポリエチレン繊維不織布等が挙げられる。
【0053】
積層構造体の製造は、上記複合発泡シートに通気性を有する発泡体または通気性を有する不織布を、従来公知の方法で積層することにより得ることができる。
【0054】
4.吸音ハニカム構造体
本発明の吸音ハニカム構造体は、上記複合発泡シートまたはその積層構造体から得られる。
本発明の吸音ハニカム構造体は、前述のように上記複合発泡シートが、吸音性能が800〜5000Hz、好ましくは2000〜4500の周波数範囲において、吸音率ピークを有し、そのピーク吸音率が30%以上、好ましくは40%以上であるので、このような周波数範囲における吸音率ピークを有する材料は、特に、軽量高剛性および吸音性能が求められる自動車内装材分野の吸音材として有効に用いることができる。特に上記複合発泡シートに通気性発泡体または不織布の表皮層を積層した積層構造体は、広範囲の周波数にわたる吸音特性に優れ、自動車内装材分野の吸音材として有効に用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた測定方法は、以下の通りである。
(1)発泡倍率:JIS K6767に従って測定した。
(2)発泡体の厚み:ノギスで測定した。
(3)曲げ弾性率:JIS K7106に従って測定した。
(4)圧縮強度:JIS K6767に従って測定した。
(5)ピーク吸音率:JIS A1405に従って測定した。
【0056】
(実施例1〜5)
(1)複合発泡性熱可塑性シートの製造
セル内に充填する発泡性熱可塑性樹脂として、表1に示す割合で、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA;住友化学社製H1011(商品名)、曲げ弾性率=48MPa、MI=0.6g/10min、VA含量=15%)、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製パークミルD(商品名))、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学社製SO−20(商品名))を、2軸押出機に供給し、130℃で溶融混練し、面長300mm、リップ1.5mmのTダイでシート状に押し出した。
一方、ハニカムコアを形成する発泡性熱可塑性樹脂として、表1に示す割合で、ポリプロピレン(PP;日本ポリプロ社製MA3(商品名))、架橋剤としてキノンジオキシム(大内新興化学社製)、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(大塚化学社製SO−20(商品名))を、2軸押出機に供給し、130℃で溶融混練し、面長300mm、リップ1.5mmのTダイでシート状に押し出した。
上記で得られた両発泡性熱可塑性樹脂シートを積層し、直径4.0mmの大きさの孔が図8のように設けられたフッ素系樹脂シートを積層し、そのフッ素系樹脂シートの上から170℃で加熱プレスを行い、架橋および賦型を行った。次に、25℃の冷却プレスにて冷却行い、図9(c)に示す形状の複合発泡性熱可塑性樹脂シートを得た。表1に物性を示す。
なお、実施例2〜5において、複合発泡性熱可塑性樹脂シートにおける発泡性熱可塑樹脂粒状体の形状、配置および貫通孔の形状、配置等については、上記フッ素系樹脂シートに設けられている孔を調整することにより調節した。
上記のようにして得た実施例1の複合発泡性熱可塑性樹脂シートでは、孔空きフッ素系樹脂シートにて加熱プレスを行うことにより賦形されており、複数の発泡性熱可塑性樹脂粒状体が発泡性熱可塑性樹脂により連結されている発泡性熱可塑性樹脂シートが構成されていた。
【0057】
(2)ハニカム構造体の製造
上記で得られた複合発泡性熱可塑性樹脂シートをフッ素樹脂シート上に配置して、その上にフッ素樹脂シートを重ね、230℃のハンドプレスを用いて10分間加熱し、発泡させた。しかる後、25℃の冷却プレスに移し、10分間冷却することで本発明の複合発泡シートを得た。
【0058】
得られた複合発泡シートは、図1及び図2に示すように、加熱により、発泡性熱可塑性樹脂粒状体がコア隔壁を形成する熱可塑性樹脂発泡体の隙間を埋めるようにして発泡し、粒状体の発泡後の形状が正六角形状のハニカム構造となっており、それぞれの発泡体間にポリプロピレン樹脂発泡体がハニカム状のセルを形成していた。得られた発泡体の発泡倍率、発泡体厚み、圧縮強度、ピーク吸音率を測定した。結果を表1及び図10(実施例2のみ)に示す。
【0059】
(比較例1)
孔空きフッ素樹脂シートにてプレスを行なわなかったこと以外は、実施例1と同様にして厚さ1.0mmの平坦な発泡性熱可塑性樹脂シートを得、実施例1と同様にして複合発泡シートを得た。得られた発泡体の発泡倍率、発泡体厚み、圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例2)
原料樹脂の曲げ弾性率が1500MPaであるポリプロピレン発泡体を用いて吸音性能を測定した。結果を表1及び図10に示す。
【0061】
(比較例3)
ハニカムコアを発泡させていない複合発泡シートを用いて吸音性能を測定した。結果を表1及び図10に示す。
【0062】
(実施例6)
実施例2で得られた複合発泡シートの片面に、流れ抵抗値が4.6×10Pa・S/m、厚さ2mmの連泡性軟質ウレタンフォームをホットメルト等の接着剤にて貼り付け、積層構造体を作成した。得られた積層構造体の発泡倍率、発泡体厚み、圧縮強度、吸音率を測定した。結果を表2及び図10に示す。
【0063】
(実施例7)
発泡性熱可塑性樹脂粒状体の形状が円錐台になるようにする以外は、実施例6と同様にして積層構造体を作成した。得られた積層構造体の発泡倍率、発泡体厚み、圧縮強度、吸音率を測定した。結果を表2及び図10に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1、表2および図10の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7において得られる複合発泡シート、積層構造体は、50%圧縮強度において優れており、軽量でかつ優れた吸音性能率、特に2000〜5000Hzの周波数範囲においてピーク吸音率を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の複合発泡シートは、軽量性、剛性および柔軟素材、及び吸音性能に優れ、吸音材料として種々の材料分野で用いることができ、特に、吸音性能が800〜5000Hzの周波数範囲において、ピーク吸音率が30%以上であることから、自動車分野の吸音材として有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の複合発泡シートの一例の断面図である。
【図2】図1のX−X’方向の断面図である。
【図3】本発明の複合発泡シートの他の例の断面図である。
【図4】図2のX−X’方向の断面図である。
【図5】本発明の複合発泡シートの他の例の断面図である。
【図6】本発明の複合発泡シートの他の例の断面図である。
【図7】本発明の発泡性熱可塑樹脂シートの一例の断面図である。
【図8】本発明で用いるフッ素系樹脂シートの一例の平面図である。
【図9】本発明の複合発泡シートの製造方法の一例を説明する図である。
【図10】実施例及び比較例の複合発泡シートの吸音測定結果である。
【符号の説明】
【0069】
1 複合発泡シート
2 ハニカムコア隔壁
3 ハニカムセル
10 発泡性熱可塑性樹脂シート
11 発泡性熱可塑性樹脂薄膜
12 発泡性樹脂粒状体
14 フッ素系樹脂シート
15 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)の発泡体からなるハニカム構造コアの各セル内に1種類以上の他の熱可塑性樹脂(B)の発泡体が充填されてなることを特徴とする複合発泡シート。
【請求項2】
ハニカム構造コアの発泡体を形成する熱可塑性樹脂(A)の曲げ弾性率が、コアセル内に充填されている発泡体を形成する他の熱可塑性樹脂(B)の曲げ弾性率より大きいことを特徴とする請求項1に記載の複合発泡シート。
【請求項3】
比重の逆数である発泡倍率が2〜60倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合発泡シート。
【請求項4】
ハニカム構造コアの発泡体を形成する熱可塑性樹脂(A)が結晶性ポリプロピレン又は高密度ポリエチレンであり、かつ、コアセル内に充填されている発泡体を形成する他の熱可塑性樹脂(B)がエチレン−酢酸ビニル共重合体又は低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合発泡シート。
【請求項5】
コアセル内に充填されている1種類以上の熱可塑性樹脂(B)の発泡体が、多角形状、または同心円状に分布していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合発泡シート。
【請求項6】
複合発泡シートの厚さ方向の断面において、外表面側の他の熱可塑性樹脂(B)の発泡体の面積の全体面積に対する割合が、任意の厚さで発泡体表面に平行にスライスしたその断面における他の熱可塑性樹脂(B)の発泡体の面積の全体面積に対する割合よりも大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合発泡シート。
【請求項7】
吸音性能が800〜5000Hzの周波数範囲において、吸音率ピークを有し、そのピーク吸音率が30%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合発泡シート。
【請求項8】
表面に複数の発泡性熱可塑性樹脂(B)粒状体が連結された発泡性熱可塑性樹脂シートを形成する工程、該シートの粒状体側の表面を1種類以上の発泡性熱可塑性樹脂(A)によりコーティングする工程、続いて全体を発泡させる工程からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合発泡シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合発泡シートの少なくとも一方の面に通気性を有する表皮層(C)を積層してなることを特徴とする積層構造体。
【請求項10】
表皮層の流れ抵抗値が1.0×10〜1.0×10Pa・S/mであることを特徴とする請求項9に記載の積層構造体。
【請求項11】
表皮層が、通気性を有する発泡体層であることを特徴とする請求項9又は10に記載の積層構造体。
【請求項12】
表皮層が、通気性を有する不織布であることを特徴とする請求項9又は10に記載の積層構造体。
【請求項13】
請求項1〜7、9〜12のいずれか1項に記載の複合発泡シート又は積層構造体からなることを特徴とするハニカム吸音構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−137045(P2007−137045A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29342(P2006−29342)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】