説明

見当検出装置の検査装置及び検査方法

【課題】投光部を支持する支持部のウエブに対する相対的な位置を確実に検出できる見当検出装置の検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】一対のガイドローラ15に案内されて走行するウエブWに対して光を照射するとともに、印刷機に備えられた支持部21に支持される投光部23を有する見当検出装置20の検査を、一対のガイドローラ15の外周面であって印刷時にウエブWに当接する領域にそれぞれ接触する一対の接触部、及び、この一対の接触部の間に設けられ接触部に対して実質的な剛体によって接続された測定対象部を有する測定基準部40と、測定対象部に対向して支持部21に支持され、測定対象部に対する支持部21の相対的な位置を検出する位置検出部50とを備える見当検出装置の検査装置20によって行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に備えられた見当検出装置の検査装置及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多色刷りの印刷機は、色ごとに独立した印刷部を備え、例えば、透明な樹脂フィルムによって形成されたウエブをこれらの印刷部に順番に供給することによって多色印刷を行う。
このような多色刷りの印刷機は、「見当合わせ」と通称される印刷位置の精度調整を行う見当装置を備えている。この見当装置は、ウエブに印刷された見当マークに基づいて見当誤差量を測定する見当検出装置と、この見当検出装置からの出力に応じてローラ等を移動させる見当制御装置とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
見当検出装置は、投受光器、及び、反射板を備え、印刷部に備えられた一対のガイドローラの間において見当マークを測定する。投受光器は、版胴の軸線方向(ウエブの幅方向)と平行な方向に延在して設けられたレールに支持され、レールに沿って移動可能になっている。一方の反射板は、投受光器に対してウエブを挟んだ反対側に設けられ、投受光器の発光素子から照射されウエブを透過した光線を投受光器の受光素子に向けて反射する。
ここで、見当誤差量を正確に測定するためには、レール及び反射板は、平行でなければならず、かつ、ウエブとも平行でなければならないが、例えば、印刷機の振動等によってレールが傾いてレールとウエブとの平行度が低下する場合があり、レールの設置位置を修正する必要がある。
【0004】
レールの設置位置の修正を行う際には、まず、ウエブに対するレールの相対的な位置を把握する必要があり、従来は、一対のガイドローラにウエブをわたし、このウエブとレールとの距離を定規によって測定していた。
しかし、この従来の測定方法は、測定中にウエブがたわんだり、定規がずれたりする可能性があり、かつ、人間が目視によって定規の目盛を読み取っていたため、測定値に誤差が生ずることがあった。このため、印刷機のユーザは、刷り出しの際に見当制御装置を操作し、手動によって印刷位置を修正しており、修正が完了するまでに見当不良のウエブが大量に発生する問題があった。
【特許文献1】特開平11−129452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、投光部を支持する支持部のウエブに対する相対的な位置を確実に検出できる見当検出装置の検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
請求項1の発明は、一対のローラに案内されて走行するウエブに対して光を照射するとともに、印刷機に備えられた支持部に支持される投光部を有する見当検出装置の検査を行う見当検出装置の検査装置において、前記一対のローラの外周面であって印刷時に前記ウエブに当接する領域にそれぞれ接触する一対の接触部、及び、前記一対の接触部の間に設けられ前記接触部に対して実質的な剛体によって接続された測定対象部を有する測定基準部と、前記測定対象部に対向して前記支持部に支持され、前記測定対象部に対する前記支持部の相対的な位置を検出する位置検出部とを備えることを特徴とする見当検出装置の検査装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の見当検出装置の検査装置において、前記位置検出部は、前記ウエブの幅方向の位置が異なる箇所に移動可能とされたことを特徴とする見当検出装置の検査装置である。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の見当検出装置の検査装置において、前記位置検出部は、前記ウエブの幅方向と異なる方向に沿って複数備えられることを特徴とする見当検出装置の検査装置である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の見当検出装置の検査装置において、前記位置検出部は、ダイヤルゲージであることを特徴とする見当検出装置の検査装置である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の見当検出装置の検査装置において、前記位置検出部は、非接触式の距離測定装置であることを特徴とする見当検出装置の検査装置である。
請求項6の発明は、一対のローラに案内されて走行するウエブに対して光を照射するとともに、印刷機に備えられた支持部に支持される投光部を備える見当検出装置の検査方法において、前記一対のローラの外周面であって印刷時に前記ウエブに当接する領域に実質的な剛体を接触させてわたすとともに、前記支持部に前記実質的な剛体に対向させて位置検出装置を装着し、前記位置検出装置によって前記実質的な剛体に対する前記支持部の相対的な位置を検出することを特徴とする見当検出装置の検査方法である。
請求項7の発明は、請求項6に記載の見当検出装置の検査方法において、前記検出を前記ウエブの長手方向、幅方向の少なくとも一方の方向に離間した複数箇所において行うことを特徴とする見当検出装置の検査方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
(1)測定基準部は、一対の接触部が一対のローラの外周面であってウエブに当接する部分に接触するから、ウエブに代わってウエブに対する支持部の相対的な位置の検出の基準として機能する。この測定基準部において、位置検出部に対向して設けられた測定対象部を接触部に対し実質的な剛体によって接続したから、ウエブに対する支持部の相対的な位置を確実に検出できる。
(2)位置検出部は、ウエブの幅方向の位置が異なる複数の箇所においてウエブに対する支持部の相対的な位置を検出するから、これらの検出箇所を結ぶ線がウエブに対して傾いているか否かを検査でき、例えば、位置検出部がレールに移動可能に支持されている場合には、このレールのウエブとの平行度を検査できる。
(3)位置検出部をウエブの幅方向とは異なる方向(例えば、ウエブの長手方向)に沿って複数設けたから、ウエブの長手方向の位置が異なる複数の箇所においてウエブに対する支持部の相対的な位置を検出でき、これらの検出箇所を結ぶ線がウエブに対して傾いているかを検査できる。位置検出装置が、例えば、レールに支持されている場合には、このレールの回転やねじれを検査できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、投光部を支持する支持部のウエブに対する相対的な位置を確実に検出することができる見当検出装置の検査装置及び検査方法を提供するという目的を、実質的な剛体である基準板を見当検出装置を挟んで設けられた一対のガイドローラにわたして設置するとともに、ダイヤルゲージをレールに装着し、このダイヤルゲージによってレールの基準板に対する相対的な位置を検出することによって実現する。
【実施例】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を適用した見当検出装置の検査装置及び検査方法の実施例について説明する。
実施例の見当検出装置の検査装置及び検査方法は、例えば、グラビア印刷機の印刷部に設けられた見当検出装置が備えるレールの設置精度の検査に使用するものである。
図1は、グラビア印刷機の一部であって実施例の見当検出装置の検査装置によって検査される見当検出装置を備える印刷部の構成を示す側面図である。また、図2は、図1の印刷部の構成を示す斜視図である。図3は、見当検出装置の検査装置を示す図であって、(a)は、上方から見た図、(b)は、側面図、(c)は、正面部である。
【0011】
グラビア印刷機は、例えば、CMYKの4色刷りの印刷機であり、印刷部10は、各色に対応して、例えば、4台設けられている。また、グラビア印刷機は、印刷部10以外にも、ロール状に加工されたウエブWを巻き出して印刷部10に供給するウエブ巻出部、画像が印刷されたウエブWをロール状に巻き取るウエブ巻取部等を備えている(図示省略)。
この印刷機によって画像が印刷されるウエブWは、略透明な樹脂材料によって形成されたシート材であり、4台の印刷部に順番に供給されて多色印刷がされる。
ここで、見当検出装置20は、これらの4台の印刷部10のうち、ウエブWの走行方向からみて2台目(2色目)以降の印刷部10に備えられている。また、これらの印刷部10の構成は、図1に示すように各色において実質的に同じとなっている。以下、見当検出装置20を備えた印刷部10について説明する。
【0012】
印刷部10は、版胴11、圧胴12、機枠部13、乾燥部14、ガイドローラ15、見当検出装置20を備えている。
版胴11は、両端部が閉塞された円筒形状に形成されるとともに、両端部の中央部分に図示しない一対の軸部を備え、この軸部回りに回転可能とされている。印刷部10は、略水平な設置面に設置され、版胴11の軸線方向は、略水平になっている。この版胴11は、外周面部に画像が形成され、この画像は、版胴11の下方に配置された図示しないインク皿から供給されるインクによってウエブWに印刷されるようになっている。
圧胴12も、版胴11と同様に円筒形状に形成されるとともに、両端部の中央部分に図示しない一対の軸部を備え、この軸部回りに回転可能なローラである。この圧胴12は、版胴11の上方に配置され、回転軸線が版胴11と略平行にされるとともに、その外周面部によって版胴11の外周面部を押圧することによって、版胴11と圧胴12との間を通過するウエブWに印圧を与えるものである。
【0013】
機枠部13は、版胴11及び圧胴12の両端部に対向して一対配置された印刷部10の筐体の一部である(図2参照)。これらの機枠部13は、図示しない軸受部を備え、この軸受部によって版胴11及び圧胴12を支持している。
乾燥部14は、版胴11及び圧胴12を通過した印刷済みのウエブWに対して熱風を吹き付けてインクを乾燥させるものであり、版胴11、圧胴12の上方に設けられている。
ガイドローラ15は、版胴11及び圧胴12を通過したウエブWを乾燥部14に案内するものであり、この印刷部10は、ウエブWの走行方向に版胴11及び圧胴12、ガイドローラ15、乾燥部14がこの順番に配置されている。このガイドローラ15は、後述する見当検出装置20を挟んで一対設けられており、軸線方向が平行とされ、ウエブWの走行方向に沿って離間して配置されている。これらのガイドローラ15も、版胴11等と同様にその両端部に軸部16を備えるとともにこれらの軸部16が機枠部13に支持され、軸部16回りに回転可能とされた円筒形状のローラである(図3(a)参照)。
【0014】
見当検出装置20は、一対のガイドローラ15に挟まれた領域に配置され、一対のガイドローラ15に案内されて走行するウエブWに印刷された見当マークに基づいて見当誤差量を測定するものである。この見当検出装置20は、レール21、スライド部22、投受光部23、反射板24を備えている。
レール21は、後述するスライド部22を介して投受光器23を支持する支持部であり、ウエブWの印刷面に対向して配置されている。このレール21は、角柱状に形成され、ガイドローラ15の軸線方向(ウエブWの幅方向)と平行な方向に延在して設けられ、その両端部がボルトBによって機枠部13に固定されている(図3(a)参照)。
スライド部22は、レール21に装着されるとともに、レール21に沿ってウエブWの幅方向にスライド可能になっている。このスライド部22は、レール21との接触部とは反対側の部分にスライド方向(ガイドローラ15の軸線方向)に対して直交する方向のあり溝が形成されており、投受光器23及び後述する位置検出部50を選択して装着することができるようになっている。
【0015】
投受光器23は、図示しない発光素子及び受光素子を備え、反射板24と組み合わせて使用される回帰反射型の光電センサである。この投受光器23は、発光素子からウエブWの印刷面に向けて光線を照射する投光部であるとともに、この光線のうちウエブWを透過しかつ反射板24において反射された光線を受光素子が検出する受光部である。
この投受光器23は、スライド部22に形成されたあり溝に対応するありが形成されており、スライド部22に装着されることによってウエブWの幅方向に移動可能になっている。これにより投受光器23は、ウエブWに対しその幅方向に離間した複数の箇所において光線を照射できるようになっている。
反射板24は、上述のように投受光器23から照射された光線を反射するものであり、投受光器23に対してウエブWを挟んだ反対側に設けられ、ウエブWの裏面(印刷面とは反対側の面)に対向している。この反射板24は、レール21と同様にガイドローラ15の軸線方向と平行な方向に延在する帯状に形成され、その両端部が機枠部13に図示しないボルトによって固定されている。
【0016】
見当マークは、ウエブWに画像が印刷される際に画像の印刷領域より外側の領域(いわゆる、「トンボ」が設けられる領域)に画像と同時に印刷される。この見当マークは、その形状が、例えば、直角三角形とされ、1台上流側の印刷部10において印刷された見当マークに対し、ウエブWの長手方向に沿って、例えば、20mmの間隔をおいて設けられる。
この印刷部10において、ウエブWが走行して投受光器23及び反射板24との間に見当マークが位置すると、発光素子から照射された光線、及び、反射板24から反射された光線がそれぞれ見当マークによって遮られるため、受光素子が検出する光量が周期的に変化する。見当検出装置20は、この受光素子が検出する光量の周期的変化及びウエブWの走行速度に基づいてウエブWの流れ方向及びウエブWの幅方向の見当誤差量を測定する。
見当検出装置20は、この測定結果を印刷部10の外部に備えられた見当制御装置に出力し、見当制御装置は、この出力に応じて、版胴11やコンペンセータローラ17を移動させて印刷位置を修正するようになっている。
【0017】
この見当検出装置20は、レール21と反射板24とが平行とされ、かつ、これらがともにガイドローラ15とも平行でなければならない。すなわち、投受光器23から照射される光線は、ウエブWに対して予め設定された正しい角度で入射しなければならないが、例えば、振動等によってレール21を固定するボルトBが緩む等してレール21がウエブWに対して傾くことがある。このようにレール21とウエブWとの平行度が低下すると、発光素子から照射された光線がウエブWに対して正しい角度で入射しなくなる。また、これらが平行であっても、レール21がねじれたり、その中心線回りに回転した場合には、同様に入射光の角度がずれる。これらの場合、版胴11に対してウエブWがずれていなくても見当検出装置20は、見当制御装置に誤った見当誤差量を出力する。
ここで、「レール21と反射板24とが平行である」とは、レール21に沿って移動する投受光器23上の1点が描く軌跡を含む直線と反射板24の反射面部を含む平面とが交わらないという意味である。また、「これら(レール21及び反射板24)とウエブWとが平行である」とは、上記直線及び平面がウエブWの面部を含む平面とも交わらないという意味である。
見当制御装置は、この出力に応じてウエブWが版胴11に対してずれていると判断し、行う必要がない見当合わせを行い、これにより見当不良の生じた印刷物が発生する。このような無駄を防止するためには、レール21のウエブWに対する傾き及びレール21のねじれの検査を定期的に行う必要があり、この検査は、具体的には、ウエブWに対するレール21の相対的な位置を検出して行う。
【0018】
以下、見当検出装置の検査装置30について説明する。
見当検出装置の検査装置30は、図3に示すように基準板40、位置検出部50を備えている。
基準板40は、レール21の設置精度(レール21とウエブWとの平行度)を検査する際の基準となるものであり、一対のガイドローラ15の外周面に接触してわたされる測定基準部である。この基準板40は、平面形が略矩形のボード状に形成され、その中間部分が容易に撓むことがないように材料、寸法が設定された実質的な剛体である。この基準板40は、その両面部が凹凸を無視できる程度に平滑化され、かつ、全体的な厚さ方向寸法が略一定とされている。また、この基準板40の長手方向の寸法は、一対のガイドローラ15の軸線間の寸法より大きく設定されている。
また、基準板40は、ガイドローラ15に接触する面部(以下、「接触面部」という)とは反対側の面部(以下、「測定面部」という)における長手方向の両端部に一対の把持部41を備えている。この把持部41は、略U字状に形成された鋼管であり、その両端部が、例えば、ネジによって基準板40に着脱可能に接続されている。
【0019】
位置検出部50は、基部51、取付部52、ダイヤルゲージ53、セットカラー54を備えている。
基部51は、見当検出装置の検査時に投受光器23に代えてスライド部22に装着される板状の部材であり、スライド部22と対向する面部に投受光器23と同様なスライド部22のあり溝に嵌合するありが形成されている(図3(c)参照)。
取付部52は、ダイヤルゲージ53が装着される部分であり、基部51に対して固定されている。この取付部52は、矩形の板状に形成され、基部51に固定された状態で一方の面部が基準板40の測定面部と対向している(図3(a)、(b)参照)。
この取付部52は、その厚さ方向に貫通して形成された一対の孔部を備えている。これらの孔部は、ダイヤルゲージ53の後述するスピンドル56を貫通させるものであり、レール15の長手方向に対して傾斜した直線上の2点に形成されている。
この取付部52及び前述の基準板40は、基準板40をガイドローラ15にわたし、かつ、位置検出部50をスライド部22に装着した状態において、これらが所定の距離をおいて離間するようにその厚さ方向寸法、装着位置がそれぞれ設定されている。
【0020】
ダイヤルゲージ53は、ダイヤルインジケータとも称される位置検出部である。このダイヤルゲージ53は、基準板40をガイドローラ15にわたした状態で基準板40の測定面部と取付部52との間隔(図3(b)に示す距離L)を測定するものであり、取付部52に形成された孔部に対応してふたつ設けられ、それぞれが読取部55、スピンドル56、ステム57を備えている。
読取部55は、周縁部に2種類の目盛が形成された円盤状のダイヤル、及び、このダイヤルの中央部分に形成された回転軸回りに回転して上記目盛を指し示す図示しない長短2本の指針を備えている。
スピンドル56は、鋼材等によって形成されたダイヤルゲージ53の中心軸部である。このスピンドル56は、読取部55に備えられた歯車機構を介して指針に接続されている。読取部55の2本の指針のうち、長針は、スピンドル56が、例えば、1mm移動するごとにダイヤルを、例えば、1周するようになっている。長針用の目盛は、ダイヤルの周縁部を、例えば、100等分しており、ダイヤルゲージ53の分解能は、例えば、0.01mmとなっている。
【0021】
一方、短針用の目盛は、長針用の目盛より内周側に、例えば、0mmから10mmまで設けられており、短針は、長針が1周するごとに所定の角度だけ回転して長針が回転した数をカウントするようになっている。このように、このダイヤルゲージ53は、例えば、0mmから10mmまでの範囲内において、例えば、0.01mm刻みの距離の測定ができるようになっている。
ステム57は、円筒状に形成され、その一方の端部が読取部55に対して固定されている。このステム57は、その内径側にスピンドル56が貫通しており、スピンドル56は、ステム57に対して摺動しながら往復運動可能になっている。
【0022】
セットカラー54は、シャフト等の長尺物をその長手方向が垂直となるように平面部に対して固定する公知の締結具である。このセットカラー54は、ダイヤルゲージ53のステム57を保持してダイヤルゲージ53を取付部52に固定するものである。
セットカラー54は、環状の部材の周方向の一部にスリットが設けられ、全体的に略C字状に形成されるとともに、このスリットを閉塞させるネジを備えており、このネジが締め付けられることによってダイヤルゲージ53(ステム57)をその内径側に保持するようになっている。
このセットカラー54は、その厚さ方向に貫通する図示しない取付孔が中心を挟んで一対設けられており、この取付孔を貫通するボルトによって取付部52の基準板40に対向する面部とは反対側の面部に取り付けられている。これにより、ダイヤルゲージ53は、スピンドル56の移動方向を取付部52の面部に対して垂直にして取付部52に固定される。
ダイヤルゲージ53は、スピンドル56の先端部が取付部52における基準板40の測定面部に対向する面部と同一面上となった場合に測定距離がゼロとなるように原点が調整されており、上記取付部52の面部からのスピンドル56の突出量によって取付部52と基準板40との距離Lを測定するようになっている。取付部52のこの面部とレール21の中心線との距離は、一定であり、これによって、見当検出装置の検査装置30は、実質的にレール21と基準板40との距離を測定することになっている。
【0023】
以下、この見当検出装置の検査装置30を使用した見当検出装置の検査について説明する。
印刷機のユーザである検査者は、まず、スライド部22から投受光器23を取り外し、これに代えて位置検出部50をスライド部22に装着する。
次いで、検査者は、基準板40に設けられた把持部41を把持して、基準板40を一対のガイドローラ15の外周面であって印刷時にウエブWに当接する部分にわたして押し当てる。このとき、スピンドル56の先端部は、基準板40の測定面部の略中央部分に当接される。
なお、ガイドローラ15の「印刷時においてウエブWに当接する部分」とは、ガイドローラ15の外周面の特定の部分を意味するものではなく、印刷部10内をウエブWが走行する際にウエブWをガイドする位置にある部分という意味である。
これによって、基準板40は、ウエブWの代わりとしてウエブWに対するレール21の相対的な位置を検出する際の基準として機能し、基準板40の長手方向の両端部分は接触部として、中央部分は測定対象部としてそれぞれ機能する。
【0024】
ここで、前述のように、レール21とウエブWとが平行でなくなった場合には、投受光器23からウエブWに入射する光線がウエブWに対して正しい角度で入射しなくなる。
この見当検出装置の検査装置30は、スライド部22(位置検出部50)をレール21に沿ってスライドさせるとともに、スライド部22に追従して基準板40をスライドさせれば、レール21とウエブWとの平行度を検査することができる。具体的には、レール21の一方の端部側における測定値と他方の端部側における測定値との間に差がある場合、レール21と基準板40(ウエブW)とが平行ではないことが分かる。
一方、ダイヤルゲージ53は、レール21の長手方向(ウエブWの幅方向)に対して傾斜した線上の2箇所、すなわち、ウエブWの長手方向に沿った方向の位置が異なる2点においてレール21の基準板40に対する距離を測定する。したがって、これらの測定値に差がある場合、取付板52は、基準板40(ウエブW)に対して、投受光器23からウエブWに入射する光がウエブWの長手方向にずれるように傾いていることが分かる。これにより、見当検出装置の検査装置30は、レール21のねじれ、回転を検査することができる。
【0025】
検査者は、上記のようにレール21の傾きやねじれ、回転が検出された場合には、レール21を機枠部13に固定しているボルトBを緩め、ダイヤルゲージ53の測定値がレール21上の全ての位置において同じとなるようにスペーサ等を使用してレール21の傾き等を調整し、この後にボルトを締めてレール21を機枠部13に固定する。
【0026】
以上説明したように、本実施例の見当検出装置の検査装置30によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)基準板40の両端部を一対のガイドローラ15の外周面であって印刷時にウエブWと当接する部分に接触させるから、基準板40は、ウエブWの代わりとしてウエブWに対するレール21の相対的な位置を検出する際の基準として機能する。この基準板40を実質的な剛体としたから、レール21に支持された位置検出部50(ダイヤルゲージ53)によって基準板40とレール21との距離を測定する際に基準板40が撓んだりすることがなく、基準板40(ウエブW)とレール21との距離を確実に測定できる。
(2)基準板40は、レール21に沿って移動する位置検出部50に追従してスライドできるから、レール21の長手方向(ウエブWの幅方向)の全体にわたって、レール21とウエブWとの距離を測定でき、レール21のウエブWとの平行度を検査できる。また、基準板の面部を平滑化加工し、その厚さ方向寸法を略一定にしたから、測定精度が向上する。
(3)ダイヤルゲージ53をウエブWの幅方向に対して傾斜した線上に一対設けたから、レール21のねじれ、回転を検出できる。
(4)一般的な定規に比べて分解能が高く、かつ、高精度の読取が可能なダイヤルゲージ53を備えているから、レール21の基準板40に対する距離を精度よく測定できる。
(5)基準板40に把持部41を設けたから、検査中に基準板40がずれることを防止でき、より確実な検査が可能となる。
【0027】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)実施例において、位置検出部は、ダイヤルゲージであったが、これに限らず、例えば、レーザ光を照射し、非接触による距離の測定が可能なレーザ変位センサ等であってもよい。この場合、実施例のセットカラーに代えてセンサ固定用の部品を用いてこのレーザ変位センサを取付部に固定する。また、位置検出部は、デジタル式の表示部を備えたデジタルダイヤルゲージであってもよい。
(2)実施例は、基準板とレールとの実際の距離を計測していたが、これに限らず、基準板に対するレールの相対的な位置が検出できればよく、レール上の2点間における基準板に対する距離差を計測して、この距離差がゼロとなるようにレールを調整してもよい。
(3)実施例において、一対のダイヤルゲージは、ウエブの幅方向に対し傾斜する線上に設けられていたが、これに限らず、ダイヤルゲージの配列方向は、ウエブの幅方向以外であればよく、例えば、ダイヤルゲージをウエブの長手方向に沿って配列してもよい。この場合、ダイヤルゲージの読取部の視認性を確保するため、指針の回転軸がガイドレールの回転軸と平行になるようにダイヤルゲージを設置する。
(4)実施例において、見当検出装置は、圧胴(版胴)と乾燥部との間に設けられた一対のガイドローラの間に設置されていたが、ウエブを走行させる一対のローラの間であれば見当検出装置の設置位置は、これに限らず、例えば、圧胴とガイドローラとの間であってもよい。
(5)実施例の見当検出装置の検査装置は、グラビア印刷機に備えられた見当検出装置がその検査対象であったが、これに限らず、例えば、オフセット印刷機に備えられた見当検出装置の検査に使用してもよい。
(6)実施例において、投受光器は、レールに移動可能に支持されていたが、これに限らず、例えば、投受光器が印刷部の所定の位置に据え置かれたタイプの見当検出装置であっても本発明の見当検出装置の検査装置の検査対象となる。この場合、投光器を印刷部に支持する支持部材の設置精度を測定、修正する。
(7)実施例の見当検出装置は、反射板を備える回帰反射型の光電センサを備えていたが、これに限らず、投光器と受光器とがウエブを挟んで設けられる透過型の光電センサでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】グラビア印刷機の一部であって、実施例の見当検出装置の検査装置によって検査される見当検出装置を備える印刷部の構成を示す側面図である。
【図2】図1の印刷部の構成を示す斜視図である。
【図3】見当検出装置の検査装置を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 印刷部
15 ガイドローラ
20 見当検出装置
21 レール
22 スライド部
23 投受光器
24 反射板
30 見当検出装置の検査装置
40 基準板
50 位置検出部
51 基部
52 取付部
53 ダイヤルゲージ
54 セットカラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のローラに案内されて走行するウエブに対して光を照射するとともに、印刷機に備えられた支持部に支持される投光部を有する見当検出装置の検査を行う見当検出装置の検査装置において、
前記一対のローラの外周面であって印刷時に前記ウエブに当接する領域にそれぞれ接触する一対の接触部、及び、前記一対の接触部の間に設けられ前記接触部に対して実質的な剛体によって接続された測定対象部を有する測定基準部と、
前記測定対象部に対向して前記支持部に支持され、前記測定対象部に対する前記支持部の相対的な位置を検出する位置検出部とを備えること
を特徴とする見当検出装置の検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の見当検出装置の検査装置において、
前記位置検出部は、前記ウエブの幅方向の位置が異なる箇所に移動可能とされたこと
を特徴とする見当検出装置の検査装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の見当検出装置の検査装置において、
前記位置検出部は、前記ウエブの幅方向と異なる方向に沿って複数備えられること
を特徴とする見当検出装置の検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の見当検出装置の検査装置において、
前記位置検出部は、ダイヤルゲージであること
を特徴とする見当検出装置の検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の見当検出装置の検査装置において、
前記位置検出部は、非接触式の距離測定装置であること
を特徴とする見当検出装置の検査装置。
【請求項6】
一対のローラに案内されて走行するウエブに対して光を照射するとともに、印刷機に備えられた支持部に支持される投光部を備える見当検出装置の検査方法において、
前記一対のローラの外周面であって印刷時に前記ウエブに当接する領域に実質的な剛体を接触させてわたすとともに、
前記支持部に前記実質的な剛体に対向させて位置検出装置を装着し、
前記位置検出装置によって前記実質的な剛体に対する前記支持部の相対的な位置を検出すること
を特徴とする見当検出装置の検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の見当検出装置の検査方法において、
前記検出を前記ウエブの長手方向、幅方向の少なくとも一方の方向に離間した複数箇所において行うこと
を特徴とする見当検出装置の検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−216399(P2007−216399A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36218(P2006−36218)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】