角膜手術装置
【課題】 手術を受ける状態での角膜の三次元形状をより精度良く測定でき、また、取扱いが容易で、装置のコンパクト化を可能にする。
【解決手段】 治療用レーザ光源からのレーザ光により角膜組織を切除するレーザ照射光学系を備える角膜手術装置は、該装置の内部に配置された角膜形状測定ユニットであって、広帯域の波長幅の光を出射する測定光源と,測定光源からの測定光を分割する分割ミラーと,分割された測定光の一方の光路に配置された参照ミラーと、角膜からの反射光と参照ミラーで反射された参照光とによる干渉光を受光する位置に配置された光検出器とを含み、光検出器で検出される干渉光によるOCTを用いて角膜の三次元形状を得る角膜形状測定ユニットを備え、角膜形状データに基づいて角膜切除データを得てレーザ照射光学系により角膜を切除する。治療用レーザ光源は角膜形状測定ユニットの測定用光源を兼ねると共に超短パルスレーザ光を発生する。
【解決手段】 治療用レーザ光源からのレーザ光により角膜組織を切除するレーザ照射光学系を備える角膜手術装置は、該装置の内部に配置された角膜形状測定ユニットであって、広帯域の波長幅の光を出射する測定光源と,測定光源からの測定光を分割する分割ミラーと,分割された測定光の一方の光路に配置された参照ミラーと、角膜からの反射光と参照ミラーで反射された参照光とによる干渉光を受光する位置に配置された光検出器とを含み、光検出器で検出される干渉光によるOCTを用いて角膜の三次元形状を得る角膜形状測定ユニットを備え、角膜形状データに基づいて角膜切除データを得てレーザ照射光学系により角膜を切除する。治療用レーザ光源は角膜形状測定ユニットの測定用光源を兼ねると共に超短パルスレーザ光を発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜を切除して屈折矯正を行う角膜手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜組織にアブレーションを引き起こすエキシマレーザビームを使用して角膜組織を切除し、角膜の屈折力を変化させて屈折異常を矯正する角膜手術装置が知られている。また、角膜切除には詳細な角膜形状データが必要であるため、プラチドリングを角膜に投影し、そのプラチドリング像を解析することで、角膜形状を詳細に測定するトポグラフィ装置が一般に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−79657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来装置には次のような問題があった。通常、トポグラフィ装置では患者を座らせて測定するのに対して、角膜手術装置では患者を仰向けに寝かせて手術を行うので、顔の傾きや眼の回旋等の様々な要因で、患者眼が角膜形状測定時と手術時とで同一の状態にならない場合が多い。このため、特許文献1においては、角膜形状測定時と手術時とで患者の体位の違いによる眼の回転ずれを検出して、角膜切除データを補正する方法を採用している。
【0004】
また、角膜のアブレーションに使用するエキシマレーザは紫外光のガスレーザであり、その扱いが難しい問題や、紫外光を導光する光学系の劣化の問題などがある。さらにこのエキシマ角膜手術装置に、トポグラフィ装置を組み組み込んで1つの装置にしようとすると、装置全体が大型化する問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑み、手術を受ける状態での角膜の三次元形状をより精度良く測定でき、また、取扱いが容易で、装置のコンパクト化が可能な角膜手術装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 治療用レーザ光源を持ち角膜組織を切除するレーザビームを角膜に照射するレーザ照射光学系を備える角膜手術装置において、角膜手術装置の内部に配置された角膜形状測定ユニットであって、広帯域の波長幅の光を出射する測定用光源と,該測定用光源からの測定光を分割する分割ミラーと,分割された測定光の一方の光路に配置された参照ミラーと、角膜からの反射光と前記参照ミラーで反射された参照光とによる干渉光を受光する位置に配置された光検出器とを含み、該光検出器で検出される干渉光による光コヒーレンストモグラフィを用いて角膜の三次元形状を得る角膜形状測定ユニットを備え、角膜形状データに基づいて角膜の切除データを得て前記レーザ照射光学系により角膜を切除することを特徴とする。
(2) (1)の角膜形状測定ユニットは、前記参照ミラーを光軸方向に移動する移動手段と,前記分割ミラーにより分割された他方の測定光を角膜上で二次元的に走査する走査光学系と,前記光検出器によって得られる二次元走査画像と前記参照ミラーの移動位置とに基づいて角膜の三次元形状を演算する演算手段とを備えることを特徴とする。
(3) (2)の角膜手術装置は、さらに前記角膜形状測定光学系による測定中に、患者眼の動きを検知する検知手段を持ち、前記演算手段は前記検知結果に基づいて前記二次元走査画像の位置ずれを補正して角膜の三次元形状を演算することを特徴とする。
(4) (1)〜(3)の何れかの角膜手術装置において、前記治療用レーザ光源は前記角膜形状測定ユニットの測定用光源を兼ねると共に、10フェムト秒〜100ピコ秒のパルス幅の超短パルスレーザ光を発生するレーザ光源であり、角膜切除時には前記超短パルスレーザ光を角膜組織内で微小スポットに集光する集光光学系を前記レーザ照射光学系の光路内に配置することを特徴とする。
(5) (1)の角膜手術装置において、角膜形状測定ユニットに偏光感受型コヒーレンストモグラフィを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、手術を受ける状態での角膜の三次元形状をより精度良く測定でき、角膜手術を適切に行える。また、取扱いが容易で、装置のコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のレーザ角膜手術装置の概略構成図である。1は手術装置本体であり、本体1からはアーム部2が延びている。アーム部2は、水平方向及び上下方向に移動可能である。後述するレーザ照射光学系及び角膜形状測定光学系は、本体1とアーム部2に収納されている。アーム部2には、患者眼を観察するための顕微鏡部3が設けられている。患者は、ベッド9に仰向けの状態で手術を受ける。手術装置本体1の内部には、光コヒーレンストモグラフィ(OCT:Optical coherence tomography)を用いて角膜の三次元形状を得る角膜形状測定ユニットが配置されている。
【0009】
図2は、角膜手術装置の光学系と制御系の概略構成図である。光学系は、角膜形状測定光学系、レーザ照射光学系、観察光学系、眼球位置検出光学系から大別構成される。
<角膜形状測定光学系> 角膜形状測定ユニットを構成する角膜形状測定光学系は、レーザ照射光学系と一部を共用する。10は角膜形状測定用のレーザ光を出射するレーザ光源であり、角膜手術用のレーザ光源を兼ねる。本実施形態では、広帯域の波長幅の赤外光で、超短パルスレーザ光を出射するフェムト秒レーザ光源を使用している。代表的なレーザ光は、波長約800nmのチタンサファイヤレーザである。レーザ光のパルス幅は、10フェムト秒〜数十ピコ秒が好ましく、例えば130フェムト秒である。角膜形状測定用のレーザ光は、帯域幅が狭くなるとコヒーレンス長が長くなり、それに伴って解像度が低下するので、広帯域の波長幅のものが有利である。レーザ光源10としては、波長幅が25nm程のSLD(スーパールミネッセンスダイオード)でも10〜15μm程の解像度を得ることができるが、これよりも波長幅の広帯域化が可能な超短パルスレーザ光を使用すると、さらに良い。超短パルスレーザ光であれば、1μm程の解像度も可能になる。
【0010】
12はレーザ光を2つに分割するハーフミラーであり、角膜形状測定時に光路に挿入される。ハーフミラー12で反射されたレーザ光の一方は、上方の参照ミラー13で反射され、ハーフミラー12へと戻ってくる。参照ミラー13は、駆動部23により光軸方向(図上の矢印方向)に移動されるようになっている。ハーフミラー12を透過したもう一方のレーザ光は、角膜上で2次元方向(X−Y方向)にスキャンするスキャニングミラー14,15へと達する。スキャニングミラー14,15としては、それぞれガルバノミラーを使用している。スキャニングミラー14,15は駆動部24,34により駆動される。
【0011】
測定光はスキャニングミラー14、15で偏向された後、ダイクロイックミラー16で偏向され、患者眼の角膜Ecに達する。患者眼角膜Ecで反射したレーザ光は、通過してきた光路を逆に戻り、ハーフミラー12で参照ミラー13からのレーザ光と共に光検出器17へと入射する。ダイクロイックミラー16は、レーザ光源10による広帯域の赤外レーザ光を反射し、可視光と後述する赤外照明光源45による赤外光(レーザ光源10の波長域とは異なる赤外波長)とを透過する。
【0012】
なお、レーザ光源10とハーフミラー12の間には、レーザ光の光束径とエネルギ密度を補正する補正光学系11が挿入されている。レーザ光源10から出射されたレーザ光は、補正光学系11により角膜Ec上でのレーザ光のスポットサイズが10μ程とされる。
【0013】
<治療レーザ照射光学系> 治療レーザ照射光学系は、角膜形状測定光学系のレーザ光源10、スキャニングミラー14,15、ダイクロイックミラー16を共用する。治療用レーザ光源としてはエネルギ密度の高いレーザ光を出射するものを使用する。角膜形状測定用のレーザ光は、角膜切除で必要とするエネルギより低いエネルギで良いので、角膜形状測定時には、レーザ光源10の出力を駆動部20により下げると共に、減衰器を持つ補正光学系11で調整する。また、治療時と角膜形状測定時とでは、必要とする光束径が異なるので、補正光学系11はこれを補正する。角膜手術時には、補正光学系11が駆動部21によって光路から外されると共に、ハーフミラー12が駆動部22によって光路からが外される。レーザ光源10から出射したレーザ光は、スキャニングミラー14に向かう。また、治療用レーザ照射時には、ダイクロイックミラー16と患者眼との間に照射端ユニット100が、駆動部120により配置される。
【0014】
図3は、照射端ユニット100の構成を説明する図である。照射端ユニット100のフレーム101の先端部には、下面が平坦である透明なプレート102が保持されている。プレート102は、レーザ光源10からのレーザ光及び可視光を透過する。プレート102の下面を角膜Ecに当接させることにより、レーザ照射の位置決めと患者眼の固定が行える。プレート102の上には集光光学系104が配置されている。集光光学系104は、微小な光スポットを得るための、複数のレンズを組み合わせてNAを高くしている。集光光学系104は、第1集光レンズ104a、両面非球面の第2集光レンズ10bより構成される。この集光光学系10は、レンズホルダ106に取り付けられている。レンズホルダ106はプレート102に対して光軸方向に移動可能に保持されている。レンズホルダ106の上部は支持部材108が取り付けられており、支持部材108は照射端ユニット100の上部に設けられた駆動部110により光軸方向に微小移動される。
【0015】
また、プレート102とレンズ104aの間には、屈折率調整液112が介在されている。屈折率調整液112は、レンズ104a及びプレート102を構成する材質と同じ程度の屈折率とすることにより、レーザ光の集光点でのNAを高くすると共に反射ロスを低減し、集光位置の調節を容易にする。集光光学系104により、プレート102の下に位置する角膜Ecの内部にレーザ光が微小スポットで集光される。レーザ光の集光点でのスポットサイズは、1μm程が好ましい。
【0016】
<観察光学系> ダイクロイックミラー16の上には、観察光学系が配置されている。観察光学系は、対物レンズ31、双眼の顕微鏡部3を備える。ダイクロイックミラー16と対物レンズ31との間には、固視灯33が配置されている。
【0017】
<眼球位置検出光学系> 眼球位置検出光学系は、対物レンズ31と顕微鏡部3との間に配置されたダイクロイックミラー41、レンズ42、赤外光透過フィルタ43、CCDカメラ44、赤外照明光源45を備える。光源45はレーザ光源10の波長域とは異なる950nmの赤外光を出射する。ダイクロイックミラー41は、可視光を透過し、光源45の赤外光を反射する。赤外光透過フィルタ43は、900nm以下の波長をカットする。光源45により照明された患者眼の前眼部はCCDカメラ44に撮像される。眼球位置は、例えば、前眼部画像を画像処理して瞳孔位置を検出することにより、基準光軸L1に対するX−Yの位置ずれとして検出される。
【0018】
<制御系> CCDカメラ44、光検出器17の出力は制御部50に入力される。また、制御部50には、各駆動部20,21,22,23,24,25,120と、アーム2を3次元移動する駆動部60、装置への各種指令信号を入力するためのスイッチが配置された入力部61、角膜形状や切除データを演算する演算処理部63等が接続されている。演算処理部63は表示部64、入力部65を備える。
【0019】
次に、以上のような構成の角膜手術装置の動作を説明する。まず、装置の動作モードを入力装置のモードスイッチにより角膜形状測定モードに設定する。角膜形状測定モードでは、照射端ユニット100が光路から外される。術者は、顕微鏡部3により図示なき可視照明ユニットにより照明された患者眼を観察しながら、入力部61が持つアーム駆動スイッチによりアーム部2を3次元移動し、レチクルと患者眼の瞳孔中心とを所定の関係に位置合わせすることで、測定光学系をアライメントする。
【0020】
アライメント完了後、レーザ光源10を駆動して角膜形状測定を開始する。角膜形状測定時には、レーザ光源10の出力が駆動部20により下げられ、また、補正光学系11により出力が減衰されると共に光束径が測定用に補正される。レーザ光源10から出射した広帯域の赤外レーザ光(測定光)は、ハーフミラー12によって参照ミラー13側に反射されるレーザ光と、ハーフミラー12を透過するレーザ光に分割される。ハーフミラー12を透過したレーザ光は、スキャニングミラー14,15で反射偏向され、角膜Ecに到達する。このとき、スキャニングミラー14,15の反射角をそれぞれ制御することにより、レーザ光が角膜上で2次元方向(X−Y方向)に走査される。
【0021】
角膜Ecで反射したレーザ光は、スキャニングミラー14,15で反射偏向され、参照ミラー13で反射して戻ってきたレーザ光とハーフミラー12で一緒になり、干渉光として光検出器17へと入射する。光検出器17へ入射する2つのレーザ光の光路長が等しいと、2つのレーザ光は干渉により強め合い、光検出器17で干渉信号として検出される。光検出器17へ入射する2つのレーザ光の光路長が等しくないと、2つのレーザ光は打ち消し合い干渉信号として検出されない。このとき、参照ミラー13を光軸方向へ移動させると、参照ミラー13側の光路長が変化し、それと等しい光路長の角膜部分からの反射光が干渉信号として検出される。つまり、レーザ光が角膜Ecの表面(前面または後面)で反射して戻ってきた光路長と、参照ミラー13で反射してきたレーザ光の光路長とが等しくなったときに、干渉信号として光検出器17で検出される。これにより、角膜Ecの高さ方向の強度分布を得ることができる。
【0022】
参照ミラー13を固定のまま、スキャニングミラー14,15でレーザ光をX−Y方向に2次元走査することにより、このX−Y平面での干渉信号の2次元走査画像を得ることができる(図4参照)。この2次元走査画像の強度分布から角膜の各点における表面部分の位置が検出できる。そして、参照ミラー13を光軸方向に移動させ、各移動位置での2次元走査画像を得ることで角膜の3次元形状を構築することができる。
【0023】
ここで、本装置では測定光源として、広帯域の波長幅のレーザ光を使用したことにより、奥行方向の解像度を上げることができる。単色光のように狭帯域の波長幅の光による干渉では、ほぼ同一波長同士の重ね合わせのため、長い光路差にわたって正弦波状の明暗の縞ができる。これに対し、広帯域の波長幅の光による干渉では、異なる波長の重ね合わせで光路差の外れた部分では干渉縞が打ち消し合い、短いコヒーレンス長の範囲のみで干渉縞が現われる。このため、特に超短パルスレーザ光を使用することで、1μm程までの解像度を得ることが可能になる。
【0024】
光検出器17からの検出信号、駆動部23による参照ミラー13の位置信号、及び駆動部24,25によるスキャニングミラー14,15の位置信号は、制御部50を介して演算処理部63に入力される。角膜形状測定ユニットの一部を構成する演算処理部63は、これらの信号に基づいて角膜の3次元形状データを演算する。角膜形状は表面形状の他、後面形状も得られるので、両者から角膜厚の分布データも得られる。
【0025】
なお、角膜形状測定時は、眼球位置検出光学系により患者眼の位置ずれを同時に検出している。CCDカメラ44からの画像信号は、制御部50を介して演算処理部63に入力される。演算処理部63は、CCDカメラ44で撮像される前眼部画像を画像処理して、瞳孔像や虹彩像等を検出することにより、角膜形状測定中の眼球の位置ずれを検知する。X−Y平面の走査画像と参照ミラー13の移動位置から角膜の3次元形状を構築する場合、患者眼の固視ずれ等があると、走査画像がX−Y方向でずれてしまうことになるので、これを補正することが好ましい。そこで、各走査画像の取得に同期して眼球の位置ずれを検知することで、演算処理部63はその位置ずれを補正処理する。
【0026】
図5は、走査画像位置ずれ補正を説明する図である。図5(a1),図5(a2)は、参照ミラー13が異なる位置にあるときにそれぞれ得られた走査画像の例である。図5(b1)は、図5(a1)の走査画像と同期して得た前眼部像である。一方、図5(b2)は、図5(a2)の走査画像と同期して得た前眼部像である。眼球の位置ずれは、例えば、瞳孔エッジの検出から瞳孔中心位置を求めて検知する。図5(b1)の前眼部像から求められた瞳孔中心位置P1に対して、図5(b2)の前眼部像から求められた瞳孔中心位置P2の位置ずれ(Δx,Δy)が検出されたとする。この場合、図5(a2)の走査画像の位置データを、図5(a1)の走査画像に対して位置ずれ(Δx,Δy)だけ補正する。これにより、これにより、より精度の高い3次元角膜形状データが得られる。なお、眼球の位置ずれが大きくなったときは、制御部50が駆動部60を駆動制御し、アーム部2を眼球の位置ずれに合わせて追尾させても良い。
【0027】
角膜形状データが得られると、その結果がカラーマップ等の形式で表示部64に表示される。角膜形状の測定ができたら、術者は患者眼の矯正に必要な屈折力値や切除領域等の切除条件データを入力部65により入力する。演算処理部63は、入力されたデータと角膜形状測定データとに基づいて切除データを演算する。その演算結果は表示部64に表示される。角膜形状測定時と角膜手術時とで、患者の体位は同じ体位であるので、体位に違いによる切除データの補正を行わなくても済む。
【0028】
切除データが得られたら、入力部61のスイッチにより手術モードを設定して角膜手術を実行する。手術モードに設定すると、補正光学系11及びハーフミラー12が光路から外される。代わりに、照射端ユニット100が光路上の所定の位置に配置される。手術時には、顕微鏡部3により患者眼を観察しながらアーム部2を3次元移動し、顕微鏡部3に配置された図示なきレチクルと患者眼の瞳孔中心とを所定の関係に位置合わせすると共に、プレート102を角膜Ecに当接させ、切除範囲の角膜表面をプレート102に沿わせて平坦とする。その後、入力部61によりレーザ照射の指令信号を入力してレーザ照射を行う。制御部50は、駆動部20によりレーザ光源10からレーザ光を出射させ、切除データに基づいてスキャニングミラー14,15及び集光光学系104の移動位置を制御する。例えば、図6に示すように、角膜の内部組織200をアブレーションするように、レーザ光のスポット位置を3次元的に制御する。
【0029】
スキャニングミラー14,15によるレーザ光の走査は、直線方向で走査しても良いし、螺旋状に走査しても良い。奥行方向は、集光光学系104の移動位置で制御する。超短パルスレーザ光では、角膜組織の内部までレーザ光を透過させ、角膜内部の極狭い領域にレーザ光を集光させることで、他光子吸収によりエネルギ密度の高い部分のみで選択的にアブレーション(内部改質)できる。アブレーションにより改質した微細片は生体内に吸収されるので、図6の斜線で示した内部組織200が切除されることにより、角膜表面の曲率が変えられる。
【0030】
なお、角膜切除の方法としては、集光光学系104による超短パルスレーザ光の集光でフラップを作成し、その後にレーザ光源10からのレーザ光を波長変器で紫外レーザ光に変換し、集光光学系104を光路から外して集光するスポット径を大きくし、スポットのスキャニングを重ね合わせで角膜組織を切除する方法でも良い。
【0031】
上記では角膜の三次元形状を得るための角膜形状測定ユニットとして参照ミラー13を光軸方向に移動する光コヒーレンストモグラフィの技術を用いたが、偏光感受型コヒーレンストモグラフィを用いることも可能である。偏光感受型コヒーレンストモグラフィは、測定光源からの測定光の偏光状態を選択的に異なる偏光状態にする1/2波長板、1/4波長板と、測定光を参照ミラーへの参照光と角膜への入射光とに分ける分割ミラーと、参照ミラーで反射された参照光と角膜で反射された反射光と干渉させる回折格子と、干渉光を受光する位置に配置された光検出器等を備え、角膜反射光のうち参照光と同じ偏光成分に基づく信号を取り出すことでOCT画像を得るものである。この技術は、特開2004−58970号公報に開示された技術を使用できる。この場合も測定光源として超短パルスレーザ光を出射するフェムト秒レーザ光源が有利であり、さらに角膜手術用のレーザ光源を兼ねると都合が良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】角膜手術装置の概略構成図である。
【図2】角膜手術装置の光学系と制御系の概略構成図である。
【図3】照射端ユニットの構成を説明する図である。
【図4】測定光のX−Y方向の2次元走査により、X−Y平面での2次元走査画像を得ることを説明する図である。
【図5】走査画像位置ずれ補正を説明する図である。
【図6】レーザ光のスポット位置を3次元的に制御することにより、角膜の内部組織をアブレーションする例を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1 手術装置本体
2 アーム部
10 レーザ光源
11 補正光学系
12 ハーフミラー
13 参照ミラー
14,15 スキャニングミラー
16 ダイクロイックミラー
17 光検出器
23 駆動部23
44 CCDカメラ
50 制御部
63 演算処理部
100 照射端ユニット
104 集光光学系
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜を切除して屈折矯正を行う角膜手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜組織にアブレーションを引き起こすエキシマレーザビームを使用して角膜組織を切除し、角膜の屈折力を変化させて屈折異常を矯正する角膜手術装置が知られている。また、角膜切除には詳細な角膜形状データが必要であるため、プラチドリングを角膜に投影し、そのプラチドリング像を解析することで、角膜形状を詳細に測定するトポグラフィ装置が一般に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−79657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来装置には次のような問題があった。通常、トポグラフィ装置では患者を座らせて測定するのに対して、角膜手術装置では患者を仰向けに寝かせて手術を行うので、顔の傾きや眼の回旋等の様々な要因で、患者眼が角膜形状測定時と手術時とで同一の状態にならない場合が多い。このため、特許文献1においては、角膜形状測定時と手術時とで患者の体位の違いによる眼の回転ずれを検出して、角膜切除データを補正する方法を採用している。
【0004】
また、角膜のアブレーションに使用するエキシマレーザは紫外光のガスレーザであり、その扱いが難しい問題や、紫外光を導光する光学系の劣化の問題などがある。さらにこのエキシマ角膜手術装置に、トポグラフィ装置を組み組み込んで1つの装置にしようとすると、装置全体が大型化する問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑み、手術を受ける状態での角膜の三次元形状をより精度良く測定でき、また、取扱いが容易で、装置のコンパクト化が可能な角膜手術装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 治療用レーザ光源を持ち角膜組織を切除するレーザビームを角膜に照射するレーザ照射光学系を備える角膜手術装置において、角膜手術装置の内部に配置された角膜形状測定ユニットであって、広帯域の波長幅の光を出射する測定用光源と,該測定用光源からの測定光を分割する分割ミラーと,分割された測定光の一方の光路に配置された参照ミラーと、角膜からの反射光と前記参照ミラーで反射された参照光とによる干渉光を受光する位置に配置された光検出器とを含み、該光検出器で検出される干渉光による光コヒーレンストモグラフィを用いて角膜の三次元形状を得る角膜形状測定ユニットを備え、角膜形状データに基づいて角膜の切除データを得て前記レーザ照射光学系により角膜を切除することを特徴とする。
(2) (1)の角膜形状測定ユニットは、前記参照ミラーを光軸方向に移動する移動手段と,前記分割ミラーにより分割された他方の測定光を角膜上で二次元的に走査する走査光学系と,前記光検出器によって得られる二次元走査画像と前記参照ミラーの移動位置とに基づいて角膜の三次元形状を演算する演算手段とを備えることを特徴とする。
(3) (2)の角膜手術装置は、さらに前記角膜形状測定光学系による測定中に、患者眼の動きを検知する検知手段を持ち、前記演算手段は前記検知結果に基づいて前記二次元走査画像の位置ずれを補正して角膜の三次元形状を演算することを特徴とする。
(4) (1)〜(3)の何れかの角膜手術装置において、前記治療用レーザ光源は前記角膜形状測定ユニットの測定用光源を兼ねると共に、10フェムト秒〜100ピコ秒のパルス幅の超短パルスレーザ光を発生するレーザ光源であり、角膜切除時には前記超短パルスレーザ光を角膜組織内で微小スポットに集光する集光光学系を前記レーザ照射光学系の光路内に配置することを特徴とする。
(5) (1)の角膜手術装置において、角膜形状測定ユニットに偏光感受型コヒーレンストモグラフィを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、手術を受ける状態での角膜の三次元形状をより精度良く測定でき、角膜手術を適切に行える。また、取扱いが容易で、装置のコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のレーザ角膜手術装置の概略構成図である。1は手術装置本体であり、本体1からはアーム部2が延びている。アーム部2は、水平方向及び上下方向に移動可能である。後述するレーザ照射光学系及び角膜形状測定光学系は、本体1とアーム部2に収納されている。アーム部2には、患者眼を観察するための顕微鏡部3が設けられている。患者は、ベッド9に仰向けの状態で手術を受ける。手術装置本体1の内部には、光コヒーレンストモグラフィ(OCT:Optical coherence tomography)を用いて角膜の三次元形状を得る角膜形状測定ユニットが配置されている。
【0009】
図2は、角膜手術装置の光学系と制御系の概略構成図である。光学系は、角膜形状測定光学系、レーザ照射光学系、観察光学系、眼球位置検出光学系から大別構成される。
<角膜形状測定光学系> 角膜形状測定ユニットを構成する角膜形状測定光学系は、レーザ照射光学系と一部を共用する。10は角膜形状測定用のレーザ光を出射するレーザ光源であり、角膜手術用のレーザ光源を兼ねる。本実施形態では、広帯域の波長幅の赤外光で、超短パルスレーザ光を出射するフェムト秒レーザ光源を使用している。代表的なレーザ光は、波長約800nmのチタンサファイヤレーザである。レーザ光のパルス幅は、10フェムト秒〜数十ピコ秒が好ましく、例えば130フェムト秒である。角膜形状測定用のレーザ光は、帯域幅が狭くなるとコヒーレンス長が長くなり、それに伴って解像度が低下するので、広帯域の波長幅のものが有利である。レーザ光源10としては、波長幅が25nm程のSLD(スーパールミネッセンスダイオード)でも10〜15μm程の解像度を得ることができるが、これよりも波長幅の広帯域化が可能な超短パルスレーザ光を使用すると、さらに良い。超短パルスレーザ光であれば、1μm程の解像度も可能になる。
【0010】
12はレーザ光を2つに分割するハーフミラーであり、角膜形状測定時に光路に挿入される。ハーフミラー12で反射されたレーザ光の一方は、上方の参照ミラー13で反射され、ハーフミラー12へと戻ってくる。参照ミラー13は、駆動部23により光軸方向(図上の矢印方向)に移動されるようになっている。ハーフミラー12を透過したもう一方のレーザ光は、角膜上で2次元方向(X−Y方向)にスキャンするスキャニングミラー14,15へと達する。スキャニングミラー14,15としては、それぞれガルバノミラーを使用している。スキャニングミラー14,15は駆動部24,34により駆動される。
【0011】
測定光はスキャニングミラー14、15で偏向された後、ダイクロイックミラー16で偏向され、患者眼の角膜Ecに達する。患者眼角膜Ecで反射したレーザ光は、通過してきた光路を逆に戻り、ハーフミラー12で参照ミラー13からのレーザ光と共に光検出器17へと入射する。ダイクロイックミラー16は、レーザ光源10による広帯域の赤外レーザ光を反射し、可視光と後述する赤外照明光源45による赤外光(レーザ光源10の波長域とは異なる赤外波長)とを透過する。
【0012】
なお、レーザ光源10とハーフミラー12の間には、レーザ光の光束径とエネルギ密度を補正する補正光学系11が挿入されている。レーザ光源10から出射されたレーザ光は、補正光学系11により角膜Ec上でのレーザ光のスポットサイズが10μ程とされる。
【0013】
<治療レーザ照射光学系> 治療レーザ照射光学系は、角膜形状測定光学系のレーザ光源10、スキャニングミラー14,15、ダイクロイックミラー16を共用する。治療用レーザ光源としてはエネルギ密度の高いレーザ光を出射するものを使用する。角膜形状測定用のレーザ光は、角膜切除で必要とするエネルギより低いエネルギで良いので、角膜形状測定時には、レーザ光源10の出力を駆動部20により下げると共に、減衰器を持つ補正光学系11で調整する。また、治療時と角膜形状測定時とでは、必要とする光束径が異なるので、補正光学系11はこれを補正する。角膜手術時には、補正光学系11が駆動部21によって光路から外されると共に、ハーフミラー12が駆動部22によって光路からが外される。レーザ光源10から出射したレーザ光は、スキャニングミラー14に向かう。また、治療用レーザ照射時には、ダイクロイックミラー16と患者眼との間に照射端ユニット100が、駆動部120により配置される。
【0014】
図3は、照射端ユニット100の構成を説明する図である。照射端ユニット100のフレーム101の先端部には、下面が平坦である透明なプレート102が保持されている。プレート102は、レーザ光源10からのレーザ光及び可視光を透過する。プレート102の下面を角膜Ecに当接させることにより、レーザ照射の位置決めと患者眼の固定が行える。プレート102の上には集光光学系104が配置されている。集光光学系104は、微小な光スポットを得るための、複数のレンズを組み合わせてNAを高くしている。集光光学系104は、第1集光レンズ104a、両面非球面の第2集光レンズ10bより構成される。この集光光学系10は、レンズホルダ106に取り付けられている。レンズホルダ106はプレート102に対して光軸方向に移動可能に保持されている。レンズホルダ106の上部は支持部材108が取り付けられており、支持部材108は照射端ユニット100の上部に設けられた駆動部110により光軸方向に微小移動される。
【0015】
また、プレート102とレンズ104aの間には、屈折率調整液112が介在されている。屈折率調整液112は、レンズ104a及びプレート102を構成する材質と同じ程度の屈折率とすることにより、レーザ光の集光点でのNAを高くすると共に反射ロスを低減し、集光位置の調節を容易にする。集光光学系104により、プレート102の下に位置する角膜Ecの内部にレーザ光が微小スポットで集光される。レーザ光の集光点でのスポットサイズは、1μm程が好ましい。
【0016】
<観察光学系> ダイクロイックミラー16の上には、観察光学系が配置されている。観察光学系は、対物レンズ31、双眼の顕微鏡部3を備える。ダイクロイックミラー16と対物レンズ31との間には、固視灯33が配置されている。
【0017】
<眼球位置検出光学系> 眼球位置検出光学系は、対物レンズ31と顕微鏡部3との間に配置されたダイクロイックミラー41、レンズ42、赤外光透過フィルタ43、CCDカメラ44、赤外照明光源45を備える。光源45はレーザ光源10の波長域とは異なる950nmの赤外光を出射する。ダイクロイックミラー41は、可視光を透過し、光源45の赤外光を反射する。赤外光透過フィルタ43は、900nm以下の波長をカットする。光源45により照明された患者眼の前眼部はCCDカメラ44に撮像される。眼球位置は、例えば、前眼部画像を画像処理して瞳孔位置を検出することにより、基準光軸L1に対するX−Yの位置ずれとして検出される。
【0018】
<制御系> CCDカメラ44、光検出器17の出力は制御部50に入力される。また、制御部50には、各駆動部20,21,22,23,24,25,120と、アーム2を3次元移動する駆動部60、装置への各種指令信号を入力するためのスイッチが配置された入力部61、角膜形状や切除データを演算する演算処理部63等が接続されている。演算処理部63は表示部64、入力部65を備える。
【0019】
次に、以上のような構成の角膜手術装置の動作を説明する。まず、装置の動作モードを入力装置のモードスイッチにより角膜形状測定モードに設定する。角膜形状測定モードでは、照射端ユニット100が光路から外される。術者は、顕微鏡部3により図示なき可視照明ユニットにより照明された患者眼を観察しながら、入力部61が持つアーム駆動スイッチによりアーム部2を3次元移動し、レチクルと患者眼の瞳孔中心とを所定の関係に位置合わせすることで、測定光学系をアライメントする。
【0020】
アライメント完了後、レーザ光源10を駆動して角膜形状測定を開始する。角膜形状測定時には、レーザ光源10の出力が駆動部20により下げられ、また、補正光学系11により出力が減衰されると共に光束径が測定用に補正される。レーザ光源10から出射した広帯域の赤外レーザ光(測定光)は、ハーフミラー12によって参照ミラー13側に反射されるレーザ光と、ハーフミラー12を透過するレーザ光に分割される。ハーフミラー12を透過したレーザ光は、スキャニングミラー14,15で反射偏向され、角膜Ecに到達する。このとき、スキャニングミラー14,15の反射角をそれぞれ制御することにより、レーザ光が角膜上で2次元方向(X−Y方向)に走査される。
【0021】
角膜Ecで反射したレーザ光は、スキャニングミラー14,15で反射偏向され、参照ミラー13で反射して戻ってきたレーザ光とハーフミラー12で一緒になり、干渉光として光検出器17へと入射する。光検出器17へ入射する2つのレーザ光の光路長が等しいと、2つのレーザ光は干渉により強め合い、光検出器17で干渉信号として検出される。光検出器17へ入射する2つのレーザ光の光路長が等しくないと、2つのレーザ光は打ち消し合い干渉信号として検出されない。このとき、参照ミラー13を光軸方向へ移動させると、参照ミラー13側の光路長が変化し、それと等しい光路長の角膜部分からの反射光が干渉信号として検出される。つまり、レーザ光が角膜Ecの表面(前面または後面)で反射して戻ってきた光路長と、参照ミラー13で反射してきたレーザ光の光路長とが等しくなったときに、干渉信号として光検出器17で検出される。これにより、角膜Ecの高さ方向の強度分布を得ることができる。
【0022】
参照ミラー13を固定のまま、スキャニングミラー14,15でレーザ光をX−Y方向に2次元走査することにより、このX−Y平面での干渉信号の2次元走査画像を得ることができる(図4参照)。この2次元走査画像の強度分布から角膜の各点における表面部分の位置が検出できる。そして、参照ミラー13を光軸方向に移動させ、各移動位置での2次元走査画像を得ることで角膜の3次元形状を構築することができる。
【0023】
ここで、本装置では測定光源として、広帯域の波長幅のレーザ光を使用したことにより、奥行方向の解像度を上げることができる。単色光のように狭帯域の波長幅の光による干渉では、ほぼ同一波長同士の重ね合わせのため、長い光路差にわたって正弦波状の明暗の縞ができる。これに対し、広帯域の波長幅の光による干渉では、異なる波長の重ね合わせで光路差の外れた部分では干渉縞が打ち消し合い、短いコヒーレンス長の範囲のみで干渉縞が現われる。このため、特に超短パルスレーザ光を使用することで、1μm程までの解像度を得ることが可能になる。
【0024】
光検出器17からの検出信号、駆動部23による参照ミラー13の位置信号、及び駆動部24,25によるスキャニングミラー14,15の位置信号は、制御部50を介して演算処理部63に入力される。角膜形状測定ユニットの一部を構成する演算処理部63は、これらの信号に基づいて角膜の3次元形状データを演算する。角膜形状は表面形状の他、後面形状も得られるので、両者から角膜厚の分布データも得られる。
【0025】
なお、角膜形状測定時は、眼球位置検出光学系により患者眼の位置ずれを同時に検出している。CCDカメラ44からの画像信号は、制御部50を介して演算処理部63に入力される。演算処理部63は、CCDカメラ44で撮像される前眼部画像を画像処理して、瞳孔像や虹彩像等を検出することにより、角膜形状測定中の眼球の位置ずれを検知する。X−Y平面の走査画像と参照ミラー13の移動位置から角膜の3次元形状を構築する場合、患者眼の固視ずれ等があると、走査画像がX−Y方向でずれてしまうことになるので、これを補正することが好ましい。そこで、各走査画像の取得に同期して眼球の位置ずれを検知することで、演算処理部63はその位置ずれを補正処理する。
【0026】
図5は、走査画像位置ずれ補正を説明する図である。図5(a1),図5(a2)は、参照ミラー13が異なる位置にあるときにそれぞれ得られた走査画像の例である。図5(b1)は、図5(a1)の走査画像と同期して得た前眼部像である。一方、図5(b2)は、図5(a2)の走査画像と同期して得た前眼部像である。眼球の位置ずれは、例えば、瞳孔エッジの検出から瞳孔中心位置を求めて検知する。図5(b1)の前眼部像から求められた瞳孔中心位置P1に対して、図5(b2)の前眼部像から求められた瞳孔中心位置P2の位置ずれ(Δx,Δy)が検出されたとする。この場合、図5(a2)の走査画像の位置データを、図5(a1)の走査画像に対して位置ずれ(Δx,Δy)だけ補正する。これにより、これにより、より精度の高い3次元角膜形状データが得られる。なお、眼球の位置ずれが大きくなったときは、制御部50が駆動部60を駆動制御し、アーム部2を眼球の位置ずれに合わせて追尾させても良い。
【0027】
角膜形状データが得られると、その結果がカラーマップ等の形式で表示部64に表示される。角膜形状の測定ができたら、術者は患者眼の矯正に必要な屈折力値や切除領域等の切除条件データを入力部65により入力する。演算処理部63は、入力されたデータと角膜形状測定データとに基づいて切除データを演算する。その演算結果は表示部64に表示される。角膜形状測定時と角膜手術時とで、患者の体位は同じ体位であるので、体位に違いによる切除データの補正を行わなくても済む。
【0028】
切除データが得られたら、入力部61のスイッチにより手術モードを設定して角膜手術を実行する。手術モードに設定すると、補正光学系11及びハーフミラー12が光路から外される。代わりに、照射端ユニット100が光路上の所定の位置に配置される。手術時には、顕微鏡部3により患者眼を観察しながらアーム部2を3次元移動し、顕微鏡部3に配置された図示なきレチクルと患者眼の瞳孔中心とを所定の関係に位置合わせすると共に、プレート102を角膜Ecに当接させ、切除範囲の角膜表面をプレート102に沿わせて平坦とする。その後、入力部61によりレーザ照射の指令信号を入力してレーザ照射を行う。制御部50は、駆動部20によりレーザ光源10からレーザ光を出射させ、切除データに基づいてスキャニングミラー14,15及び集光光学系104の移動位置を制御する。例えば、図6に示すように、角膜の内部組織200をアブレーションするように、レーザ光のスポット位置を3次元的に制御する。
【0029】
スキャニングミラー14,15によるレーザ光の走査は、直線方向で走査しても良いし、螺旋状に走査しても良い。奥行方向は、集光光学系104の移動位置で制御する。超短パルスレーザ光では、角膜組織の内部までレーザ光を透過させ、角膜内部の極狭い領域にレーザ光を集光させることで、他光子吸収によりエネルギ密度の高い部分のみで選択的にアブレーション(内部改質)できる。アブレーションにより改質した微細片は生体内に吸収されるので、図6の斜線で示した内部組織200が切除されることにより、角膜表面の曲率が変えられる。
【0030】
なお、角膜切除の方法としては、集光光学系104による超短パルスレーザ光の集光でフラップを作成し、その後にレーザ光源10からのレーザ光を波長変器で紫外レーザ光に変換し、集光光学系104を光路から外して集光するスポット径を大きくし、スポットのスキャニングを重ね合わせで角膜組織を切除する方法でも良い。
【0031】
上記では角膜の三次元形状を得るための角膜形状測定ユニットとして参照ミラー13を光軸方向に移動する光コヒーレンストモグラフィの技術を用いたが、偏光感受型コヒーレンストモグラフィを用いることも可能である。偏光感受型コヒーレンストモグラフィは、測定光源からの測定光の偏光状態を選択的に異なる偏光状態にする1/2波長板、1/4波長板と、測定光を参照ミラーへの参照光と角膜への入射光とに分ける分割ミラーと、参照ミラーで反射された参照光と角膜で反射された反射光と干渉させる回折格子と、干渉光を受光する位置に配置された光検出器等を備え、角膜反射光のうち参照光と同じ偏光成分に基づく信号を取り出すことでOCT画像を得るものである。この技術は、特開2004−58970号公報に開示された技術を使用できる。この場合も測定光源として超短パルスレーザ光を出射するフェムト秒レーザ光源が有利であり、さらに角膜手術用のレーザ光源を兼ねると都合が良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】角膜手術装置の概略構成図である。
【図2】角膜手術装置の光学系と制御系の概略構成図である。
【図3】照射端ユニットの構成を説明する図である。
【図4】測定光のX−Y方向の2次元走査により、X−Y平面での2次元走査画像を得ることを説明する図である。
【図5】走査画像位置ずれ補正を説明する図である。
【図6】レーザ光のスポット位置を3次元的に制御することにより、角膜の内部組織をアブレーションする例を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1 手術装置本体
2 アーム部
10 レーザ光源
11 補正光学系
12 ハーフミラー
13 参照ミラー
14,15 スキャニングミラー
16 ダイクロイックミラー
17 光検出器
23 駆動部23
44 CCDカメラ
50 制御部
63 演算処理部
100 照射端ユニット
104 集光光学系
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用レーザ光源を持ち角膜組織を切除するレーザビームを角膜に照射するレーザ照射光学系を備える角膜手術装置において、角膜手術装置の内部に配置された角膜形状測定ユニットであって、広帯域の波長幅の光を出射する測定用光源と,該測定用光源からの測定光を分割する分割ミラーと,分割された測定光の一方の光路に配置された参照ミラーと、角膜からの反射光と前記参照ミラーで反射された参照光とによる干渉光を受光する位置に配置された光検出器とを含み、該光検出器で検出される干渉光による光コヒーレンストモグラフィを用いて角膜の三次元形状を得る角膜形状測定ユニットを備え、角膜形状データに基づいて角膜の切除データを得て前記レーザ照射光学系により角膜を切除することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項2】
請求項1の角膜形状測定ユニットは、前記参照ミラーを光軸方向に移動する移動手段と,前記分割ミラーにより分割された他方の測定光を角膜上で二次元的に走査する走査光学系と,前記光検出器によって得られる二次元走査画像と前記参照ミラーの移動位置とに基づいて角膜の三次元形状を演算する演算手段とを備えることを特徴とする角膜手術装置。
【請求項3】
請求項2の角膜手術装置は、さらに前記角膜形状測定光学系による測定中に、患者眼の動きを検知する検知手段を持ち、前記演算手段は前記検知結果に基づいて前記二次元走査画像の位置ずれを補正して角膜の三次元形状を演算することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかの角膜手術装置において、前記治療用レーザ光源は前記角膜形状測定ユニットの測定用光源を兼ねると共に、10フェムト秒〜100ピコ秒のパルス幅の超短パルスレーザ光を発生するレーザ光源であり、角膜切除時には前記超短パルスレーザ光を角膜組織内で微小スポットに集光する集光光学系を前記レーザ照射光学系の光路内に配置することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項5】
請求項1の角膜手術装置において、角膜形状測定ユニットに偏光感受型コヒーレンストモグラフィを用いたことを特徴とする角膜手術装置。
【請求項1】
治療用レーザ光源を持ち角膜組織を切除するレーザビームを角膜に照射するレーザ照射光学系を備える角膜手術装置において、角膜手術装置の内部に配置された角膜形状測定ユニットであって、広帯域の波長幅の光を出射する測定用光源と,該測定用光源からの測定光を分割する分割ミラーと,分割された測定光の一方の光路に配置された参照ミラーと、角膜からの反射光と前記参照ミラーで反射された参照光とによる干渉光を受光する位置に配置された光検出器とを含み、該光検出器で検出される干渉光による光コヒーレンストモグラフィを用いて角膜の三次元形状を得る角膜形状測定ユニットを備え、角膜形状データに基づいて角膜の切除データを得て前記レーザ照射光学系により角膜を切除することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項2】
請求項1の角膜形状測定ユニットは、前記参照ミラーを光軸方向に移動する移動手段と,前記分割ミラーにより分割された他方の測定光を角膜上で二次元的に走査する走査光学系と,前記光検出器によって得られる二次元走査画像と前記参照ミラーの移動位置とに基づいて角膜の三次元形状を演算する演算手段とを備えることを特徴とする角膜手術装置。
【請求項3】
請求項2の角膜手術装置は、さらに前記角膜形状測定光学系による測定中に、患者眼の動きを検知する検知手段を持ち、前記演算手段は前記検知結果に基づいて前記二次元走査画像の位置ずれを補正して角膜の三次元形状を演算することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかの角膜手術装置において、前記治療用レーザ光源は前記角膜形状測定ユニットの測定用光源を兼ねると共に、10フェムト秒〜100ピコ秒のパルス幅の超短パルスレーザ光を発生するレーザ光源であり、角膜切除時には前記超短パルスレーザ光を角膜組織内で微小スポットに集光する集光光学系を前記レーザ照射光学系の光路内に配置することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項5】
請求項1の角膜手術装置において、角膜形状測定ユニットに偏光感受型コヒーレンストモグラフィを用いたことを特徴とする角膜手術装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2006−51101(P2006−51101A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233560(P2004−233560)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】
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